包装体
【課題】被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ被包装物の取り出し後の廃棄が極めて容易であるとともに、被包装物を展示販売するのに好適な包装体を提供する。
【解決手段】被包装物20の厚み相当分の幅を有する底面板3と、底面板3の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板6及び背面板7とを備え、被包装物20を、底面板3に当接させながら前面板6及び背面板7の各下側部分の間に挟み且つ前面板6及び背面板7の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、前面板6の下側部分に、被包装物20の少なくとも一部を露出させるための窓部9を穿設し、前面板6及び背面板7と底面板3との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成した。
【解決手段】被包装物20の厚み相当分の幅を有する底面板3と、底面板3の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板6及び背面板7とを備え、被包装物20を、底面板3に当接させながら前面板6及び背面板7の各下側部分の間に挟み且つ前面板6及び背面板7の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、前面板6の下側部分に、被包装物20の少なくとも一部を露出させるための窓部9を穿設し、前面板6及び背面板7と底面板3との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関し、さらに詳しくは例えば乾電池を展示可能に包装するための包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乾電池は、複数本を一括して購入する購入者が多いために、2本、4本、8本、12本及び14本等に複数包装されての展示販売が主体となっている。
図13に、複数本の乾電池を展示販売するための包装体の一例を示す。図13の包装体は、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate: PET)等の透明樹脂シート製の容器32の周縁部を台紙31に貼り付けて複数本の乾電池33を包装するものである。台紙31には、吊下げ孔34が穿設されており、これにより包装体を吊下げて展示販売することができる(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の包装体は、台紙と貼り合わされた樹脂製容器に乾電池を収容するものであるために、電池を取り出す際に困難を伴う場合がある。また、包装体を廃棄する際にも、樹脂部分と台紙との分別が必要とされる場合があり、廃棄に手間を要するといった問題がある(また、下記特許文献3〜8参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9‐255030号公報
【特許文献2】特開2000‐191037号公報
【特許文献3】特開平11‐59724号公報
【特許文献4】特開平11‐124168号公報
【特許文献5】特開2001‐240049号公報
【特許文献6】特開2002‐128140号公報
【特許文献7】特開2005‐93334号公報
【特許文献8】実登第3054577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ被包装物の取り出し後の廃棄が極めて容易であるとともに、被包装物を展示販売するのに好適な包装体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の包装体は、1以上の物品からなる被包装物を包装する、1枚の板紙からなる包装体であって、
前記被包装物の厚み相当分の幅を有する底面板と、前記底面板の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板及び背面板とを備え、
前記被包装物を、前記底面板に当接させながら前記前面板及び前記背面板の各下側部分の間に挟み且つ前記前面板及び前記背面板の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、
前記前面板の下側部分に、前記被包装物の少なくとも一部を露出させるための窓部を穿設し、
前記前面板及び前記背面板と前記底面板との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、包装体から被包装物を取り出すときには前面板及び背面板と底面板との間の各折り目の少なくとも一方に設けられたミシン目を破断することにより被包装物を包装体の底側から取り出すことができる。したがって、被包装物の包装体からの取り出しが極めて容易となる。また、包装体は1枚の板紙から形成されたものであるために、被包装物を取り出した後、廃棄する際に材料を分別する必要がない。
更にまた、上側部分が貼り合わされた前面板と背面板との中間にある底面板と、前面板及び背面板との連結部分(折り目)を破断するので、被包装物を取り出した後の包装体が、そのままで平面的に折り畳まれた状態となる。このため、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。ここで、上側とは底面板から離れた側をいい、下側とは底面板に近い側をいう。
【0008】
また、前面板の被包装物と対応する位置に窓部が設けられているために、不透明である紙だけを用いて包装しているにもかかわらず、物品を直接に視認させて展示販売することが可能となる。また、樹脂製シートを使用していないので、燃焼廃棄する場合にも有害物質の排出がなく、環境保全に資することが可能である。更にまた、例えば背面板と底面板との間の折り目にミシン目を設けるとともに、この折り目から背面板側にミシン目を円弧状に形成すれば(図1の符合19参照)、この円弧状の部分を指で押圧するだけでミシン目を破ることができる。したがって、更に被包装物の取り出しが容易となる。また、これにより、破断部を極めて奇麗な状態とすることができる。
【0009】
また、本発明の包装体においては、前記窓部は、前記被包装物の上側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅と略同一に形成され、且つ当該部位の左右の各縁部が前記被包装物の左右両端面とそれぞれ当接して、前記被包装物を固定するように形成されているのが好ましい。
これにより、被包装物が左右に移動して、側面から抜け落ちたり、窓部に対して位置がずれたりするのを防止することができる。
【0010】
また、本発明の包装体においては、前記前面板が、前記窓部の上側の左右両隅から上側に切れ込む切欠き部を有しており、この左右の各切欠き部の間に形成される舌板部が前記被包装物を前記背面板の方向及び前記底面板の方向に押圧するのが好ましい。
このように、窓部上側の左右両隅の各切欠き部の間に形成されたフレキシブルな構造の舌板部により被包装物を押えるものとすることによって、特に被包装物の上下方向の移動に対してクッション機能(可変性)ないしは緩衝効果を発揮しつつ被包装物を固定することが可能となる。すなわち、被包装物が上下方向に移動しても、これを押さえる窓部上側が破断し難く、この破断により被包装物が抜け落ちるのを防止することができる。
また、窓部上側の左右両隅から上側に切れ込むように切欠き部を設けることによって、その部位から被包装物の上端部を前側にはみ出させることが可能となる(図5及び図6参照)。これにより、窓部の上側左右両隅において、左右の各縁部を被包装物の上端部の左右両端面とそれぞれ当接させて、被包装物を左右方向に固定することが可能となる。
【0011】
また、本発明の包装体においては、前記窓部は、前記被包装物の下側部分と対応する部位において左右の長さが前記被包装物の左右の長さよりも短くされているのが好ましい。
これにより、被包装物が窓部から前面板の前側に抜け落ちるのを防止することができる。
【0012】
また、本発明の包装体においては、前記背面板の下側部分の左右両端に、当該背面板の前面に貼着される糊代板、並びに前記被包装物の対応する左右端面及び前記前面板の裏面と当接して前記被包装物の対応する左右端面を被覆する被覆板が、それぞれ折り目を介して順に連設されているのが好ましい。
この構成により、被包装物の左右方向の移動をより完全に阻止して、被包装物が包装体側面から抜け落ちるのを防止するとともに、被覆板により前面板を裏面側から支持して、包装体全体の強度(堅牢性)を向上させることができる。したがって、外部からの衝撃に対して被包装物を保護することができる。
また、被包装物を取り出した後には、被覆板と糊代板との間の折り目を伸ばして、被覆板を背面板と平行な状態とすることができる。これにより、被覆板、糊代板、前面板及び背面板を全て平行にして、包装体全体を平面的に畳み込むことが可能となる。したがって、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。
【0013】
また、本発明の包装体においては、前記前面板及び前記背面板の上側部分の相対する位置に吊下げ孔が穿設されているのが好ましい。
これにより、包装体をフック等に吊下げることが可能となる。したがって、被包装物を吊下げた状態で店舗等に陳列・展示することが可能となり、陳列スペースを節約することが可能となる。
【0014】
また、本発明の包装体においては、前記被包装物が熱収縮性フィルムにより包装されているのが好ましい。
これにより、予めフェーシング(顔揃え)された複数個の物品を一体的に緊縛固定することが可能となる。したがって、包装体内で個々の物品がずれるのを防止して、フェーシングされた状態を維持することが可能となる。これにより、物品の購買者に好ましい印象を与えることができる。
【0015】
また、本発明の包装体においては、前記前面板に、前記窓部上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目が形成されているのが好ましい。
これにより、前面板を窓部上側から引き破って、被包装物を取り出すことが可能となる。したがって、包装体の底側からのみならず被包装物を前側からも取り出すことが可能となり、更に取り出し性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ被包装物の取り出し後の廃棄が極めて容易であるとともに、被包装物を展示販売するのに好適な包装体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施の形態を、図1〜6を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る包装体を展開した平面図、図2は、図1の包装体により包装される被包装物の斜視図、図3は、図1の包装体により被包装物を包装する手順を示す平面図、図4は、図1の包装体に被包装物を包装した状態を示す正面図、図5は、その斜視図、図6は、図4の部分Xを側方から見た要部拡大図である。
【0018】
図1の包装体1は、予めフェーシング(顔揃え)された複数の乾電池21(図2参照。図示例では、横並びにされた4本の単3形の乾電池)を熱収縮性フィルムにより包装(シュリンク包装)してなる被包装物20を包装する包装体であって、1枚の板紙2から構成されている。板紙2は、被包装物20の厚み相当分の幅を有する略矩形の底面板3と、この底面板3の幅方向両端に、それぞれ折り目(5、4)を介して連設された前面板6及び背面板7とを含んでいる。ここで、背面板7と底面板3との間の折り目には、全長にわたって第1ミシン目4が形成され、前面板6と底面板3との間の折り目には、全長にわたって第2ミシン目5が形成されている。
【0019】
前面板6は、底面板3から離れた側である上側部分6aと底面板3に近い側である下側部分6bとに、第1折り目10により区分されている。そして、前面板6及び背面板7は、第1ミシン目4の折り目及び第2ミシン目5の折り目にて図1の紙面から立ち上がるようにそれぞれが折られて、前面板6の上側部分6aと、背面板7の上側部分(符号なし)とが貼り合わされる。このとき、被包装物20は、前面板6の下側部分6bと背面板7の下側部分(符号なし)との間に挟まれるようにして包装される。
ここで、前面板6の上側部分6a及び背面板7の上側部分には、両者が貼り合わされた状態で吊下げ孔8(図4参照)を形成するように、相対する位置に透孔8a、8bがそれぞれ穿設されている。
【0020】
また、前面板6の下側部分6bには、被包装物20を包装体1の外部から視認可能に露出するための略矩形の窓部9が穿設してある。
窓部9は、上下の長さが被包装物20の上下の長さよりも若干短くされるとともに、被包装物20の上側部分と対応する上側部分の左右の幅Wa(図3参照)が、被包装物20の幅Wbと略等しくされている。一方、窓部9下側の両隅には、窓部9の内方に突き出すようにして略矩形の当片部14が設けられている。これにより、窓部9の左右の幅が被包装物20の左右の幅よりも短くなっている。また、窓部9は、下端縁9aと第2ミシン目5の折り目との間に若干の距離を置くようにして前面板6に設けられる。
【0021】
更に、窓部9上側の左右両隅には、上側に切れ込むように切欠き部12が設けられており、左右の各切欠き部12の間に、略台形状の舌板部11が形成されている。ここで、図には明瞭に表れていないが、切欠き部12は、上端の位置が、被包装物20を包装した状態で被包装物20の上端よりも若干下となるように形成されている。
【0022】
背面板7は、下側部分の左右両端に、当該背面板7の前面(包装体1が組み立てられたときに前面板6と対向する面)に貼着される略矩形の糊代板16が折り目15を介して連設されている。更に、左右の各糊代板16の側端には、被包装物20の対応する左右端面及び前面板6の裏面(包装体1が組み立てられたときに背面板7と対向する面)と当接して被包装物20の対応する左右端面を被覆する被覆板18が、それぞれ折り目17を介して連設されている。被覆板18は、下側(底面板3に近い側)で左右の幅が最大となり、上側(底面板3から離れた側)に向かって左右の幅が円弧状に小さくなり、上端部で左右の幅が消失するように形成されている。
また、背面板7の下端部には、第1ミシン目4の折り目から円弧状に突出して形成された第3ミシン目19が設けられている。
【0023】
係る構成の包装体により被包装物20を包装する際には、図3に示すように、被包装物20の下端を第1ミシン目4の折り目と揃えるようにして、被包装物20を背面板7の前面の上に載置する。これとともに、折り目15にて各糊代板16を背面板7の前面側に折り返して貼着した後、各被覆板18が背面板7の前面に垂直に立つように折り目17を折る。この状態で、前面板6の下側部分6aと背面板7の下側部分との間に被包装物20を挟むように、第1ミシン目4の折り目及び第2ミシン目5の折り目を順に折るとともに、各透孔8a、8bを合致させて前面板6の上側部分6aと背面板7の上側部分とを貼り合わせる。
これにより、図4及び図5に示すように、被包装物20は、底面板3に当接しながら前面板6及び背面板7の各下側部分の間に挟まれた状態で包装される。
【0024】
このとき、図5及び図6に示すように、窓部9の上側部分の左右の幅Waが被包装物20の左右の幅Wbと略等しくされ、且つ窓部9上側の左右両隅に切欠き部12が設けられているために、被包装物20の上端部が窓部9から前面板6の前側に若干突出する。これにより、被包装物20上端部の左右の端面が、窓部9の対応する部位の左右の各縁部と当接して、被包装物20の左右の移動が阻止される。したがって、被包装物20が左右に移動して、包装体1の側面から抜け落ちたり、窓部9に対して位置がずれたりするのを防止することができる。
【0025】
また、左右の各切欠き部12の間に形成された舌板部11が被包装物20を背面板7の方向及び底面板3の方向に押圧するようになっている。このように、各切欠き部12の間に形成されたフレキシブルな構造の舌板部11により被包装物20を押えるものとすることによって、特に被包装物の上下方向の移動に対してクッション機能(可変性)ないしは緩衝効果を発揮しつつ被包装物20を固定することが可能となる。すなわち、被包装物が上下方向に移動しても、これを押さえる窓部9上側が破断し難く、この破断により被包装物20が抜け落ちるのを防止することができる。
【0026】
また、窓部9下側の両隅に設けられた当片部14が、被包装物20の下側部分と当接するとともに、前面板6の下端(第2ミシン目5の折り目の位置)と窓部9の下端縁9aとの間に若干の距離が置かれており、この部分が、被包装物20の下端部と当接する。これによって被包装物20が窓部9から前側に抜け落ちるのが防止される。
【0027】
また、背面板7の前面に貼着される各糊代板16に連設された各被覆板18が、被包装物20の両端面とそれぞれ当接しているために、被包装物20の左右方向の移動がより完全に阻止されて、被包装物20が包装体1の側面から抜け落ちるのをより完全に防止することができる。また、被覆板18の円弧状に丸みを帯びた側縁部が前面板6の裏面と当接して、前面板6を裏面側から支持しているので、包装体1全体の強度(堅牢性)を向上させることができる。したがって、外部からの衝撃に対して被包装物20を保護することができる。
【0028】
また、前面板6及び背面板7の各上側部分を貼り合わせた状態で、当該部分に吊下げ孔8が形成されるので、被包装物20を吊下げた状態で店舗等に陳列・展示することが可能となり、陳列スペースを節約することが可能となる。
【0029】
また、被包装物20はシュリンク包装されており、予めフェーシング(顔揃え)された複数個の乾電池を一体的に緊縛固定することが可能となる。したがって、包装体1内で個々の乾電池がずれるのを防止して、フェーシングされた状態を維持することが可能となる。これにより、乾電池の購買者に好ましい印象を与えることができる。
【0030】
ここで、被包装物20をシュリンク包装するための熱収縮性フィルムには、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用するのが好ましい。その理由は、二軸延伸PETフィルムが、1)寸法安定性がよく、機械適性もよい、2)引張り弾性率が大きく、印刷等の二次加工に適している、という特徴を有しているからである。
【0031】
また、板紙2は、表面の美粧化及び保護、並びに包装体1全体の補強のために、表面にコーティングを施すのがよい。具体的には、水性コート、UVコート及びラミネートのいずれかのコーティングを施すのがよい。
【0032】
水性コートは、例えばアクリル樹脂エマルジョンを主成分とする水性ニスを使用するコーティングであり、耐摩擦性に優れている。水性コートは、UVコート及びラミネートよりも低コストである反面、美麗さでは両者に劣る。
UVコートは、紫外線硬化型インク、ないしは高光沢なUVニスによるコーティングであり、耐摩擦性、耐水性及び耐湿性に優れている。UVコートのコスト及び美麗さは水性コートとラミネートの中間である。また、UVコート及び水性コートによる場合は、ビニールやPP(ポリプロピレン)フィルムによるコーティングと異なり、コーティングを剥さずに紙の再生利用が可能である。
ラミネートは、PPやPE(ポリエチレン)などのプラスチックフィルムを板紙2の表面に貼り合せたコーティングであり、耐摩擦性、耐水性、耐湿性、耐油性、耐候性及び耐折性にすぐれている。ラミネートは、美麗さでは最も優れている反面、コストは水性コート及びUVコートよりも高くなる。
【0033】
しかして、係る構成の包装体1から被包装物20を取り出す際には、背面板7下端部の円弧状の第3ミシン目19により囲まれた部分を親指等で押圧する。これにより第3ミシン目19が破断し、連れて第3ミシン目19よりも外方の第1ミシン目4が破断して、包装体1の底部が開放される。これにより、被包装物20を包装体1の底部から容易に取り出すことができる。また、この破り方は、例えば第1ミシン目4及び第2ミシン目5の両方を破断しながら底面板3を側方から引き剥す場合と比較して、破断部を極めて奇麗な状態とすることができる。したがって、乾電池の使用者に好ましい印象を与えることができる。
また、被包装物20を取り出した後は、底面板3と前面板6との間の折り目(5)、並びに被覆板18と糊代板16との間の折り目17を伸ばすことによって、被覆板、糊代板、底面板、前面板及び背面板の全てを平行にして、包装体全体を平面的に畳むことが可能となる。したがって、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。また、包装体1は1枚の板紙2から形成されたものであるために、被包装物を取り出した後、廃棄する際に材料を分別する必要がない。
【0034】
また、包装体1においては、前面板6の被包装物20と対応する位置に窓部9が設けられているために、不透明である紙だけを用いて包装しているにもかかわらず、被包装物20を直接に視認させるようにして展示販売することが可能となる。また、樹脂製シートを使用していないので、燃焼廃棄する場合にも有害物質の排出がなく、環境保全に資することが可能である。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく種々改変が可能である。例えば、上記実施形態では、被包装物20が4本の単3形の乾電池を横並びにシュリンク包装したものである場合を示したが、乾電池は単3形に限られないとともに、本数は4本に限られない。例えば、1本のみでもよい。また、乾電池の形状は丸棒状のものに限られず、例えば、9V乾電池のような箱型のものであってもよい。更に、1枚の板紙製の包装体に収容可能な物品であれば、乾電池に限らず、文房具、化粧品等の包装体としても使用できる。また、箱型の物品のようにフェーシングがくずれにくい物品であれば、シュリンク包装ではなく通常の包装でもよい。
また、上記実施形態では、各乾電池の長軸方向が包装体の左右方向と一致するように被包装物20を包装体に収容する(横置きという)ものとしたが、各乾電池の長軸方向が包装体の上下方向と一致するように被包装物20を包装体に収容する(縦置きという)ものとしてもよい。
【0036】
図7に、2本の乾電池を横置きに収容する包装体の一例を示す。図8に、図7の包装体により包装される、横置きの2本の乾電池21Aからなる被包装物20Aの斜視図を示す。図9に、2本の乾電池を縦置きに収容する包装体の一例を示す。図10に、図9の包装体により包装される、縦置きの2本の乾電池21Bからなる被包装物20Bの斜視図を示す。図11に、1本の箱型の乾電池(9V乾電池)を縦置きに収容する包装体の一例を示す。図12に、図11の包装体により包装される、縦置きの1本の乾電池(9V乾電池)21Cからなる被包装物20Cの斜視図を示す。図7、図9及び図11の各包装体においては、図1の包装体1と対応する部分に、対応する符号を付してある。
また、図7に示すように、本発明の包装体においては、前面板6Aに、窓部9A上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目25を形成してもよい。これにより、前面板6Aを窓部9A上側から引き破って、被包装物を取り出すことが可能となる。したがって、底板側3Aからのみならず被包装物を前側からも取り出すことが可能となり、更に取り出し性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の包装体は、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ取り出し後の廃棄が極めて容易であり、被包装物を展示販売するのに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体を展開した平面図である。
【図2】図1の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図3】図1の包装体により被包装物を包装する手順を示す平面図である。
【図4】図1の包装体により被包装物を包装した状態を示す正面図である。
【図5】図1の包装体により被包装物を包装した状態を示す斜視図である。
【図6】図1の包装体により被包装物を包装した状態の要部を拡大した側面図である。
【図7】上記実施形態の一変形例の包装体を展開した平面図である。
【図8】図7の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図9】上記実施形態の他の変形例の包装体を展開した平面図である。
【図10】図9の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図11】上記実施形態の更に他の変形例の包装体を展開した平面図である。
【図12】図11の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図13】従来の包装体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 包装体
2 板紙
3 底面板
4 第1ミシン目
5 第2ミシン目
6 前面板
7 背面板
8 吊下げ孔
11 舌板部
12 切欠き部
14 当片部
16 糊代板
18 被覆板
19 第3ミシン目
20 被包装物
21 乾電池
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関し、さらに詳しくは例えば乾電池を展示可能に包装するための包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乾電池は、複数本を一括して購入する購入者が多いために、2本、4本、8本、12本及び14本等に複数包装されての展示販売が主体となっている。
図13に、複数本の乾電池を展示販売するための包装体の一例を示す。図13の包装体は、ポリエチレンテレフタラート(Polyethylene terephthalate: PET)等の透明樹脂シート製の容器32の周縁部を台紙31に貼り付けて複数本の乾電池33を包装するものである。台紙31には、吊下げ孔34が穿設されており、これにより包装体を吊下げて展示販売することができる(下記特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来の包装体は、台紙と貼り合わされた樹脂製容器に乾電池を収容するものであるために、電池を取り出す際に困難を伴う場合がある。また、包装体を廃棄する際にも、樹脂部分と台紙との分別が必要とされる場合があり、廃棄に手間を要するといった問題がある(また、下記特許文献3〜8参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平9‐255030号公報
【特許文献2】特開2000‐191037号公報
【特許文献3】特開平11‐59724号公報
【特許文献4】特開平11‐124168号公報
【特許文献5】特開2001‐240049号公報
【特許文献6】特開2002‐128140号公報
【特許文献7】特開2005‐93334号公報
【特許文献8】実登第3054577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ被包装物の取り出し後の廃棄が極めて容易であるとともに、被包装物を展示販売するのに好適な包装体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の包装体は、1以上の物品からなる被包装物を包装する、1枚の板紙からなる包装体であって、
前記被包装物の厚み相当分の幅を有する底面板と、前記底面板の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板及び背面板とを備え、
前記被包装物を、前記底面板に当接させながら前記前面板及び前記背面板の各下側部分の間に挟み且つ前記前面板及び前記背面板の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、
前記前面板の下側部分に、前記被包装物の少なくとも一部を露出させるための窓部を穿設し、
前記前面板及び前記背面板と前記底面板との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、包装体から被包装物を取り出すときには前面板及び背面板と底面板との間の各折り目の少なくとも一方に設けられたミシン目を破断することにより被包装物を包装体の底側から取り出すことができる。したがって、被包装物の包装体からの取り出しが極めて容易となる。また、包装体は1枚の板紙から形成されたものであるために、被包装物を取り出した後、廃棄する際に材料を分別する必要がない。
更にまた、上側部分が貼り合わされた前面板と背面板との中間にある底面板と、前面板及び背面板との連結部分(折り目)を破断するので、被包装物を取り出した後の包装体が、そのままで平面的に折り畳まれた状態となる。このため、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。ここで、上側とは底面板から離れた側をいい、下側とは底面板に近い側をいう。
【0008】
また、前面板の被包装物と対応する位置に窓部が設けられているために、不透明である紙だけを用いて包装しているにもかかわらず、物品を直接に視認させて展示販売することが可能となる。また、樹脂製シートを使用していないので、燃焼廃棄する場合にも有害物質の排出がなく、環境保全に資することが可能である。更にまた、例えば背面板と底面板との間の折り目にミシン目を設けるとともに、この折り目から背面板側にミシン目を円弧状に形成すれば(図1の符合19参照)、この円弧状の部分を指で押圧するだけでミシン目を破ることができる。したがって、更に被包装物の取り出しが容易となる。また、これにより、破断部を極めて奇麗な状態とすることができる。
【0009】
また、本発明の包装体においては、前記窓部は、前記被包装物の上側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅と略同一に形成され、且つ当該部位の左右の各縁部が前記被包装物の左右両端面とそれぞれ当接して、前記被包装物を固定するように形成されているのが好ましい。
これにより、被包装物が左右に移動して、側面から抜け落ちたり、窓部に対して位置がずれたりするのを防止することができる。
【0010】
また、本発明の包装体においては、前記前面板が、前記窓部の上側の左右両隅から上側に切れ込む切欠き部を有しており、この左右の各切欠き部の間に形成される舌板部が前記被包装物を前記背面板の方向及び前記底面板の方向に押圧するのが好ましい。
このように、窓部上側の左右両隅の各切欠き部の間に形成されたフレキシブルな構造の舌板部により被包装物を押えるものとすることによって、特に被包装物の上下方向の移動に対してクッション機能(可変性)ないしは緩衝効果を発揮しつつ被包装物を固定することが可能となる。すなわち、被包装物が上下方向に移動しても、これを押さえる窓部上側が破断し難く、この破断により被包装物が抜け落ちるのを防止することができる。
また、窓部上側の左右両隅から上側に切れ込むように切欠き部を設けることによって、その部位から被包装物の上端部を前側にはみ出させることが可能となる(図5及び図6参照)。これにより、窓部の上側左右両隅において、左右の各縁部を被包装物の上端部の左右両端面とそれぞれ当接させて、被包装物を左右方向に固定することが可能となる。
【0011】
また、本発明の包装体においては、前記窓部は、前記被包装物の下側部分と対応する部位において左右の長さが前記被包装物の左右の長さよりも短くされているのが好ましい。
これにより、被包装物が窓部から前面板の前側に抜け落ちるのを防止することができる。
【0012】
また、本発明の包装体においては、前記背面板の下側部分の左右両端に、当該背面板の前面に貼着される糊代板、並びに前記被包装物の対応する左右端面及び前記前面板の裏面と当接して前記被包装物の対応する左右端面を被覆する被覆板が、それぞれ折り目を介して順に連設されているのが好ましい。
この構成により、被包装物の左右方向の移動をより完全に阻止して、被包装物が包装体側面から抜け落ちるのを防止するとともに、被覆板により前面板を裏面側から支持して、包装体全体の強度(堅牢性)を向上させることができる。したがって、外部からの衝撃に対して被包装物を保護することができる。
また、被包装物を取り出した後には、被覆板と糊代板との間の折り目を伸ばして、被覆板を背面板と平行な状態とすることができる。これにより、被覆板、糊代板、前面板及び背面板を全て平行にして、包装体全体を平面的に畳み込むことが可能となる。したがって、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。
【0013】
また、本発明の包装体においては、前記前面板及び前記背面板の上側部分の相対する位置に吊下げ孔が穿設されているのが好ましい。
これにより、包装体をフック等に吊下げることが可能となる。したがって、被包装物を吊下げた状態で店舗等に陳列・展示することが可能となり、陳列スペースを節約することが可能となる。
【0014】
また、本発明の包装体においては、前記被包装物が熱収縮性フィルムにより包装されているのが好ましい。
これにより、予めフェーシング(顔揃え)された複数個の物品を一体的に緊縛固定することが可能となる。したがって、包装体内で個々の物品がずれるのを防止して、フェーシングされた状態を維持することが可能となる。これにより、物品の購買者に好ましい印象を与えることができる。
【0015】
また、本発明の包装体においては、前記前面板に、前記窓部上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目が形成されているのが好ましい。
これにより、前面板を窓部上側から引き破って、被包装物を取り出すことが可能となる。したがって、包装体の底側からのみならず被包装物を前側からも取り出すことが可能となり、更に取り出し性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ被包装物の取り出し後の廃棄が極めて容易であるとともに、被包装物を展示販売するのに好適な包装体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一実施の形態を、図1〜6を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る包装体を展開した平面図、図2は、図1の包装体により包装される被包装物の斜視図、図3は、図1の包装体により被包装物を包装する手順を示す平面図、図4は、図1の包装体に被包装物を包装した状態を示す正面図、図5は、その斜視図、図6は、図4の部分Xを側方から見た要部拡大図である。
【0018】
図1の包装体1は、予めフェーシング(顔揃え)された複数の乾電池21(図2参照。図示例では、横並びにされた4本の単3形の乾電池)を熱収縮性フィルムにより包装(シュリンク包装)してなる被包装物20を包装する包装体であって、1枚の板紙2から構成されている。板紙2は、被包装物20の厚み相当分の幅を有する略矩形の底面板3と、この底面板3の幅方向両端に、それぞれ折り目(5、4)を介して連設された前面板6及び背面板7とを含んでいる。ここで、背面板7と底面板3との間の折り目には、全長にわたって第1ミシン目4が形成され、前面板6と底面板3との間の折り目には、全長にわたって第2ミシン目5が形成されている。
【0019】
前面板6は、底面板3から離れた側である上側部分6aと底面板3に近い側である下側部分6bとに、第1折り目10により区分されている。そして、前面板6及び背面板7は、第1ミシン目4の折り目及び第2ミシン目5の折り目にて図1の紙面から立ち上がるようにそれぞれが折られて、前面板6の上側部分6aと、背面板7の上側部分(符号なし)とが貼り合わされる。このとき、被包装物20は、前面板6の下側部分6bと背面板7の下側部分(符号なし)との間に挟まれるようにして包装される。
ここで、前面板6の上側部分6a及び背面板7の上側部分には、両者が貼り合わされた状態で吊下げ孔8(図4参照)を形成するように、相対する位置に透孔8a、8bがそれぞれ穿設されている。
【0020】
また、前面板6の下側部分6bには、被包装物20を包装体1の外部から視認可能に露出するための略矩形の窓部9が穿設してある。
窓部9は、上下の長さが被包装物20の上下の長さよりも若干短くされるとともに、被包装物20の上側部分と対応する上側部分の左右の幅Wa(図3参照)が、被包装物20の幅Wbと略等しくされている。一方、窓部9下側の両隅には、窓部9の内方に突き出すようにして略矩形の当片部14が設けられている。これにより、窓部9の左右の幅が被包装物20の左右の幅よりも短くなっている。また、窓部9は、下端縁9aと第2ミシン目5の折り目との間に若干の距離を置くようにして前面板6に設けられる。
【0021】
更に、窓部9上側の左右両隅には、上側に切れ込むように切欠き部12が設けられており、左右の各切欠き部12の間に、略台形状の舌板部11が形成されている。ここで、図には明瞭に表れていないが、切欠き部12は、上端の位置が、被包装物20を包装した状態で被包装物20の上端よりも若干下となるように形成されている。
【0022】
背面板7は、下側部分の左右両端に、当該背面板7の前面(包装体1が組み立てられたときに前面板6と対向する面)に貼着される略矩形の糊代板16が折り目15を介して連設されている。更に、左右の各糊代板16の側端には、被包装物20の対応する左右端面及び前面板6の裏面(包装体1が組み立てられたときに背面板7と対向する面)と当接して被包装物20の対応する左右端面を被覆する被覆板18が、それぞれ折り目17を介して連設されている。被覆板18は、下側(底面板3に近い側)で左右の幅が最大となり、上側(底面板3から離れた側)に向かって左右の幅が円弧状に小さくなり、上端部で左右の幅が消失するように形成されている。
また、背面板7の下端部には、第1ミシン目4の折り目から円弧状に突出して形成された第3ミシン目19が設けられている。
【0023】
係る構成の包装体により被包装物20を包装する際には、図3に示すように、被包装物20の下端を第1ミシン目4の折り目と揃えるようにして、被包装物20を背面板7の前面の上に載置する。これとともに、折り目15にて各糊代板16を背面板7の前面側に折り返して貼着した後、各被覆板18が背面板7の前面に垂直に立つように折り目17を折る。この状態で、前面板6の下側部分6aと背面板7の下側部分との間に被包装物20を挟むように、第1ミシン目4の折り目及び第2ミシン目5の折り目を順に折るとともに、各透孔8a、8bを合致させて前面板6の上側部分6aと背面板7の上側部分とを貼り合わせる。
これにより、図4及び図5に示すように、被包装物20は、底面板3に当接しながら前面板6及び背面板7の各下側部分の間に挟まれた状態で包装される。
【0024】
このとき、図5及び図6に示すように、窓部9の上側部分の左右の幅Waが被包装物20の左右の幅Wbと略等しくされ、且つ窓部9上側の左右両隅に切欠き部12が設けられているために、被包装物20の上端部が窓部9から前面板6の前側に若干突出する。これにより、被包装物20上端部の左右の端面が、窓部9の対応する部位の左右の各縁部と当接して、被包装物20の左右の移動が阻止される。したがって、被包装物20が左右に移動して、包装体1の側面から抜け落ちたり、窓部9に対して位置がずれたりするのを防止することができる。
【0025】
また、左右の各切欠き部12の間に形成された舌板部11が被包装物20を背面板7の方向及び底面板3の方向に押圧するようになっている。このように、各切欠き部12の間に形成されたフレキシブルな構造の舌板部11により被包装物20を押えるものとすることによって、特に被包装物の上下方向の移動に対してクッション機能(可変性)ないしは緩衝効果を発揮しつつ被包装物20を固定することが可能となる。すなわち、被包装物が上下方向に移動しても、これを押さえる窓部9上側が破断し難く、この破断により被包装物20が抜け落ちるのを防止することができる。
【0026】
また、窓部9下側の両隅に設けられた当片部14が、被包装物20の下側部分と当接するとともに、前面板6の下端(第2ミシン目5の折り目の位置)と窓部9の下端縁9aとの間に若干の距離が置かれており、この部分が、被包装物20の下端部と当接する。これによって被包装物20が窓部9から前側に抜け落ちるのが防止される。
【0027】
また、背面板7の前面に貼着される各糊代板16に連設された各被覆板18が、被包装物20の両端面とそれぞれ当接しているために、被包装物20の左右方向の移動がより完全に阻止されて、被包装物20が包装体1の側面から抜け落ちるのをより完全に防止することができる。また、被覆板18の円弧状に丸みを帯びた側縁部が前面板6の裏面と当接して、前面板6を裏面側から支持しているので、包装体1全体の強度(堅牢性)を向上させることができる。したがって、外部からの衝撃に対して被包装物20を保護することができる。
【0028】
また、前面板6及び背面板7の各上側部分を貼り合わせた状態で、当該部分に吊下げ孔8が形成されるので、被包装物20を吊下げた状態で店舗等に陳列・展示することが可能となり、陳列スペースを節約することが可能となる。
【0029】
また、被包装物20はシュリンク包装されており、予めフェーシング(顔揃え)された複数個の乾電池を一体的に緊縛固定することが可能となる。したがって、包装体1内で個々の乾電池がずれるのを防止して、フェーシングされた状態を維持することが可能となる。これにより、乾電池の購買者に好ましい印象を与えることができる。
【0030】
ここで、被包装物20をシュリンク包装するための熱収縮性フィルムには、二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用するのが好ましい。その理由は、二軸延伸PETフィルムが、1)寸法安定性がよく、機械適性もよい、2)引張り弾性率が大きく、印刷等の二次加工に適している、という特徴を有しているからである。
【0031】
また、板紙2は、表面の美粧化及び保護、並びに包装体1全体の補強のために、表面にコーティングを施すのがよい。具体的には、水性コート、UVコート及びラミネートのいずれかのコーティングを施すのがよい。
【0032】
水性コートは、例えばアクリル樹脂エマルジョンを主成分とする水性ニスを使用するコーティングであり、耐摩擦性に優れている。水性コートは、UVコート及びラミネートよりも低コストである反面、美麗さでは両者に劣る。
UVコートは、紫外線硬化型インク、ないしは高光沢なUVニスによるコーティングであり、耐摩擦性、耐水性及び耐湿性に優れている。UVコートのコスト及び美麗さは水性コートとラミネートの中間である。また、UVコート及び水性コートによる場合は、ビニールやPP(ポリプロピレン)フィルムによるコーティングと異なり、コーティングを剥さずに紙の再生利用が可能である。
ラミネートは、PPやPE(ポリエチレン)などのプラスチックフィルムを板紙2の表面に貼り合せたコーティングであり、耐摩擦性、耐水性、耐湿性、耐油性、耐候性及び耐折性にすぐれている。ラミネートは、美麗さでは最も優れている反面、コストは水性コート及びUVコートよりも高くなる。
【0033】
しかして、係る構成の包装体1から被包装物20を取り出す際には、背面板7下端部の円弧状の第3ミシン目19により囲まれた部分を親指等で押圧する。これにより第3ミシン目19が破断し、連れて第3ミシン目19よりも外方の第1ミシン目4が破断して、包装体1の底部が開放される。これにより、被包装物20を包装体1の底部から容易に取り出すことができる。また、この破り方は、例えば第1ミシン目4及び第2ミシン目5の両方を破断しながら底面板3を側方から引き剥す場合と比較して、破断部を極めて奇麗な状態とすることができる。したがって、乾電池の使用者に好ましい印象を与えることができる。
また、被包装物20を取り出した後は、底面板3と前面板6との間の折り目(5)、並びに被覆板18と糊代板16との間の折り目17を伸ばすことによって、被覆板、糊代板、底面板、前面板及び背面板の全てを平行にして、包装体全体を平面的に畳むことが可能となる。したがって、全く手間を要することなく、包装体の容積を最小として嵩張らせずに廃棄することができる。また、包装体1は1枚の板紙2から形成されたものであるために、被包装物を取り出した後、廃棄する際に材料を分別する必要がない。
【0034】
また、包装体1においては、前面板6の被包装物20と対応する位置に窓部9が設けられているために、不透明である紙だけを用いて包装しているにもかかわらず、被包装物20を直接に視認させるようにして展示販売することが可能となる。また、樹脂製シートを使用していないので、燃焼廃棄する場合にも有害物質の排出がなく、環境保全に資することが可能である。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく種々改変が可能である。例えば、上記実施形態では、被包装物20が4本の単3形の乾電池を横並びにシュリンク包装したものである場合を示したが、乾電池は単3形に限られないとともに、本数は4本に限られない。例えば、1本のみでもよい。また、乾電池の形状は丸棒状のものに限られず、例えば、9V乾電池のような箱型のものであってもよい。更に、1枚の板紙製の包装体に収容可能な物品であれば、乾電池に限らず、文房具、化粧品等の包装体としても使用できる。また、箱型の物品のようにフェーシングがくずれにくい物品であれば、シュリンク包装ではなく通常の包装でもよい。
また、上記実施形態では、各乾電池の長軸方向が包装体の左右方向と一致するように被包装物20を包装体に収容する(横置きという)ものとしたが、各乾電池の長軸方向が包装体の上下方向と一致するように被包装物20を包装体に収容する(縦置きという)ものとしてもよい。
【0036】
図7に、2本の乾電池を横置きに収容する包装体の一例を示す。図8に、図7の包装体により包装される、横置きの2本の乾電池21Aからなる被包装物20Aの斜視図を示す。図9に、2本の乾電池を縦置きに収容する包装体の一例を示す。図10に、図9の包装体により包装される、縦置きの2本の乾電池21Bからなる被包装物20Bの斜視図を示す。図11に、1本の箱型の乾電池(9V乾電池)を縦置きに収容する包装体の一例を示す。図12に、図11の包装体により包装される、縦置きの1本の乾電池(9V乾電池)21Cからなる被包装物20Cの斜視図を示す。図7、図9及び図11の各包装体においては、図1の包装体1と対応する部分に、対応する符号を付してある。
また、図7に示すように、本発明の包装体においては、前面板6Aに、窓部9A上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目25を形成してもよい。これにより、前面板6Aを窓部9A上側から引き破って、被包装物を取り出すことが可能となる。したがって、底板側3Aからのみならず被包装物を前側からも取り出すことが可能となり、更に取り出し性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の包装体は、被包装物の取り出しが極めて容易であり、且つ取り出し後の廃棄が極めて容易であり、被包装物を展示販売するのに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る包装体を展開した平面図である。
【図2】図1の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図3】図1の包装体により被包装物を包装する手順を示す平面図である。
【図4】図1の包装体により被包装物を包装した状態を示す正面図である。
【図5】図1の包装体により被包装物を包装した状態を示す斜視図である。
【図6】図1の包装体により被包装物を包装した状態の要部を拡大した側面図である。
【図7】上記実施形態の一変形例の包装体を展開した平面図である。
【図8】図7の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図9】上記実施形態の他の変形例の包装体を展開した平面図である。
【図10】図9の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図11】上記実施形態の更に他の変形例の包装体を展開した平面図である。
【図12】図11の包装体により包装される被包装物の斜視図である。
【図13】従来の包装体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 包装体
2 板紙
3 底面板
4 第1ミシン目
5 第2ミシン目
6 前面板
7 背面板
8 吊下げ孔
11 舌板部
12 切欠き部
14 当片部
16 糊代板
18 被覆板
19 第3ミシン目
20 被包装物
21 乾電池
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の物品からなる被包装物を包装する、1枚の板紙からなる包装体であって、
前記被包装物の厚み相当分の幅を有する底面板と、前記底面板の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板及び背面板とを備え、
前記被包装物を、前記底面板に当接させながら前記前面板及び前記背面板の各下側部分の間に挟み且つ前記前面板及び前記背面板の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、
前記前面板の下側部分に、前記被包装物の少なくとも一部を露出させるための窓部を穿設し、
前記前面板及び前記背面板と前記底面板との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成したことを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記窓部が、前記被包装物の上側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅と略同一に形成され、且つ当該部位の左右の各縁部が前記被包装物の左右両端面とそれぞれ当接して、前記被包装物を固定するように形成されている請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記前面板が、前記窓部の上側の左右両隅から上側に切れ込む切欠き部を有しており、この左右の各切欠き部の間に形成される舌板部が前記被包装物を前記背面板の方向及び前記底面板の方向に押圧する請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記窓部は、前記被包装物の下側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅よりも短くされている請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
前記背面板の下側部分の左右両端に、当該背面板の前面に貼着される糊代板、並びに前記被包装物の対応する左右端面及び前記前面板の裏面と当接して前記被包装物の対応する左右端面を被覆する被覆板が、それぞれ折り目を介して順に連設されている請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
【請求項6】
前記前面板及び前記背面板の各上側部分の相対する位置に吊下げ孔が穿設されている請求項1〜5のいずれかに記載の包装体。
【請求項7】
前記被包装物が熱収縮性フィルムにより包装されている請求項1〜6のいずれかに記載の包装体。
【請求項8】
前記前面板に、前記窓部の上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の包装体。
【請求項1】
1以上の物品からなる被包装物を包装する、1枚の板紙からなる包装体であって、
前記被包装物の厚み相当分の幅を有する底面板と、前記底面板の幅方向両端に、それぞれ折り目を介して連設された前面板及び背面板とを備え、
前記被包装物を、前記底面板に当接させながら前記前面板及び前記背面板の各下側部分の間に挟み且つ前記前面板及び前記背面板の各上側部分を貼り合わせて包装するとともに、
前記前面板の下側部分に、前記被包装物の少なくとも一部を露出させるための窓部を穿設し、
前記前面板及び前記背面板と前記底面板との間の各折り目の少なくとも一方にミシン目を形成したことを特徴とする包装体。
【請求項2】
前記窓部が、前記被包装物の上側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅と略同一に形成され、且つ当該部位の左右の各縁部が前記被包装物の左右両端面とそれぞれ当接して、前記被包装物を固定するように形成されている請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記前面板が、前記窓部の上側の左右両隅から上側に切れ込む切欠き部を有しており、この左右の各切欠き部の間に形成される舌板部が前記被包装物を前記背面板の方向及び前記底面板の方向に押圧する請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記窓部は、前記被包装物の下側部分と対応する部位において左右の幅が前記被包装物の左右の幅よりも短くされている請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
前記背面板の下側部分の左右両端に、当該背面板の前面に貼着される糊代板、並びに前記被包装物の対応する左右端面及び前記前面板の裏面と当接して前記被包装物の対応する左右端面を被覆する被覆板が、それぞれ折り目を介して順に連設されている請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
【請求項6】
前記前面板及び前記背面板の各上側部分の相対する位置に吊下げ孔が穿設されている請求項1〜5のいずれかに記載の包装体。
【請求項7】
前記被包装物が熱収縮性フィルムにより包装されている請求項1〜6のいずれかに記載の包装体。
【請求項8】
前記前面板に、前記窓部の上側の左右両隅から更に上側に延びるようにミシン目が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の包装体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−67447(P2009−67447A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238221(P2007−238221)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(599150137)ハリマ紙器印刷工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(599150137)ハリマ紙器印刷工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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