説明

包装材料および紙容器

【課題】紙容器形成時の加熱によるピンホールの発生を防止し、バリア性が高く、かつ製造効率を向上させることができる包装材料および紙容器を提供することを目的とする。
【解決手段】包装材料10は外側面から内側面に順に配置された、最外層であるポリエチレン層11と、紙基材層12と、バリア性コート層13と、接着剤層14と、最内層であるポリエチレン層15とを備えている。バリア性コート層13は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装材料および紙容器に係り、とりわけ紙容器の内側にピンホールが発生しないようにすることができる包装材料および紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に紙容器とりわけ液体用紙容器は、内容物の保存性、容器としての強度やガスバリア性等を確保するため、各種の積層体からなる包装材料を用いて形成されている。
【0003】
このような液体用紙容器の包装材料として、接着性ポリオレフィン系樹脂を含有する内面層と、該内面層の外側に位置しポリアミド樹脂を含有するバリア層と、紙を主体とする支持体の両面にオレフィン系樹脂層を設けてなり該バリア層の外側に位置する紙基材層と、を有する包装材料が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−179543号公報
【0005】
上述の液体用紙容器の包装材料を組み立てて接着する際、通常、充填機上において接着位置にホットエアー(熱風)を吹き付けて接着性のポリオレフィン系樹脂を溶融させ、プレスして熱溶着する。その際に紙から水分が蒸発して液体用紙容器の内面層の接着性のポリオレフィン系樹脂を通過することにより、当該内面層においてピンホール(包装材料の内面から紙に達する微少な穴)が発生することがある。液体用紙容器の包装材料において、加熱によりピンホールが発生した場合には、バリア機能が低下し、内容物の漏れや胴膨れが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、加熱によるピンホールの発生を防止し、バリア性の高い包装材料および紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、外側面から内側面に順に配置されたポリエチレン層と、紙基材層と、バリア性コート層と、ポリエチレン層とを備え、バリア性コート層は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分としていることを特徴とする包装材料である。
【0008】
本発明は、前記バリア性コート層は20〜80mgKOH/gの樹脂酸価、及び20℃〜80℃のガラス転移点をもつアクリル系樹脂を5〜50重量%を含有し、かつ該アクリル性樹脂が水溶性アクリル系樹脂及び水分散性アクリル系樹脂からなることを特徴とする包装材料である。
【0009】
本発明は、アクリル系樹脂がメタクリル酸エステル系共重合体、及び/又はアクリル酸エステル系共重合体からなることを特徴とする包装材料である。
【0010】
本発明は、前記バリア性コート層は、0.5〜10μmの厚さをもつことを特徴とする包装材料である。
【0011】
本発明は、前記バリア性コート層と内側面のポリエチレン層との間に、ポリエチレンイミン、ブタジエンイミン、または有機チタン系の接着剤層が介在されていることを特徴とする包装材料である。
【0012】
本発明は上記記載の包装材料から作製された紙容器である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、包装材料は紙基材層と、バリア性コート層を有するとともに、このバリア性コート層は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分としているので、紙容器を包装材料から組み立てる際に、加熱により紙基材層から生じる水蒸気が、最内層のポリエチレン層に達することを防止することができ、このためピンホールの発生が抑えられた液体用紙容器を提供することができる。この場合、バリア性コート層は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分とするため、バリア性コート層用の塗工液を塗工する際、印刷適性を向上させることができる。このため包装材料の製造効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明による包装材料を構成する層構成を示す側断面図。
【図2】図2は包装材料を用いて作製された紙容器を示す斜視図。
【図3】図3は図2に示す紙容器を作製するためのブランク材を示す平面図。
【図4】図4は本発明の変形例よる包装材料を構成する層構成を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1乃至図3は、本発明による包装材料及び包装材料により作製された紙容器の一実施の形態を示す図である。
【0017】
まず図2および図3により、紙容器について説明する。
【0018】
従来より、例えば牛乳、酒、清涼飲料等を収納するものとして、ゲーベルトップ型の紙容器1が用いられている(図2)。
【0019】
このようなゲーベルトップ型の紙容器1は、胴部2と、屋根部3と、屋根部3を密閉する密閉部4とを有している。そして紙容器1は、図3に示すブランク材5を折り畳み、端部ののりしろ部5aにより接着することにより作製される。
【0020】
紙容器1を作製するためのブランク材5は、図1に示す層構成の包装材料10からなっている。
【0021】
すなわち、包装材料10は、外面側から内面側に向って順次配置された以下の層を含む。
【0022】
ポリエチレン層(PE)11/紙基材層12/バリア性コート層13/接着剤層14/ポリエチレン層(PE)15
次に各層について以下説明する。
【0023】
(ポリエチレン層11)
最外層であるポリエチレン層11は、主にポリエチレンを含み、紙基材層12の外部を保護すると共に、液体用紙容器用包装材料10の端部においては、加熱されて後述する最内層となるポリエチレン層14と貼り合わせられる。
【0024】
ここで使用するポリエチレンとして、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が具体的に挙げられる。シール性、加工適正等の観点から低密度ポリエチレンが好ましい。低密度ポリエチレンとしては、具体的に高圧法エチレン単独重合体が好適に用いられる。
【0025】
また、エチレンとプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、4−メチルペンテン−1等のエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)も好適に使用できる。
【0026】
低密度ポリエチレンの密度は、通常、低密度ポリエチレンといわれる範囲であれば特に限定されないが、0.90〜0.925g/cm3であり、そのメルトインデックスM.I.も特に限定されないが、通常、1〜20であり、また融点は95℃〜130℃である。
【0027】
最外層であるポリエチレン層11の形成方法は、特に限定されないが、例えば、紙基材層12の一方の面に押出コーティングすることにより形成される。通常、押出コーティングの加工条件としての押出温度は280〜330℃、ラインスピードは100〜300m/min.の範囲で設定される。該ポリエチレン層11の厚さも特に限定されないが、通常、10〜60μmである。
【0028】
最外層であるポリエチレン層11は液体用紙容器の外側表面となる層であるが、さらにその上に印刷層を設けてもよい。印刷層に用いられる印刷インキの密着性向上を図るために、該ポリエチレン層11の表面に表面処理(例えば、コロナ処理等)を施すことが好ましい。
【0029】
(紙基材層12)
紙基材層12は、本発明の液体用紙容器を構成する基本素材となることから、賦型性、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができる。紙としては、主強度材であり、強サイズ性の晒または未晒の紙基材、あるいは純白ロール紙、クラフト紙、板紙、加工紙、ミルク原紙等の各種紙器材を使用することができる。紙基材層12はこれらの紙を複数層重ねたものであってよい。また使用する紙は、坪量80〜600g/m2、好ましくは坪量100〜450gm/2のものを使用することができる。紙の厚さは、110〜860μm、好ましくは140〜640μmのものを使用することができる。
【0030】
なお、紙基材には、例えば、文字、図形、記号その他の所望の絵柄を通常の印刷方法により任意に形成することができる。
【0031】
(バリア性コート層13)
バリア性コート層13は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分として構成され、十分な水蒸気バリア性をもつ。
【0032】
バリア性コート層13は20〜80mgKOH/gの樹脂酸価、及び20℃〜80℃のガラス転移点をもつアクリル系樹脂を5〜50重量%含有しており、このアクリル系樹脂は水溶性アクリル系樹脂及び水分酸性アクリル系樹脂の共重合体からなることが好ましい。
【0033】
この場合、アクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル系共重合体、及び/又はアクリル酸エステル系共重合体からなることが好ましい。
【0034】
このような構成からなるバリア性コート層13は、バリア性コート層を形成するための塗工液をグラビア版胴により塗工することにより得られる。
【0035】
バリア性コート層13を構成するアクリル系樹脂は、上述のように20〜80mgKOH/gの樹脂酸価、及び20℃〜80℃のガラス転移点をもっていることが好ましい。
【0036】
アクリル系樹脂の樹脂酸価が20mgKOH/g以下では、バリア性コート層13を形成するための塗工液をグラビア版胴によって塗工する際、グラビア版胴のセルが目詰りしてしまう。一方、樹脂酸価が80mgKOH/g以上では、紙基材層12に対するバリア性コート層13の密着性が低下してしまう。
【0037】
またアクリル系樹脂のガラス転移点が20℃以下では、バリア性コート層13を形成するための塗工液中にブロッキングが発生してしまう。一方、ガラス転移点が80℃以上では、紙基材層12に対するバリア性コート層13の密着性が低下してしまう。
【0038】
さらにバリア性コート層13の厚みは0.5〜10μmとなっている。この場合、バリア性コート層13の厚みが0.5μm以下では、ガスバリア性を十分発揮することはできず、バリア性コート層13の厚みが10μm以上では、バリア性コート層13を形成するための塗工液を用いてグラビア版胴によって塗工する際、厚すぎて印刷ムラ(塗工ムラ)が生じてしまう。また、コート層が厚くなるほど乾燥性も悪くなるので、コート層の乾燥が不十分な為に、製造設備にコート層が転移して汚れることも考えられる。
【0039】
上述のように、バリア性コート層13は、バリア性コート層13を形成するための塗工液を用いてグラビア版胴によって塗工することにより得られる。この場合、バリア性コート層13は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分としており、十分な水蒸気バリア性をもつとともに、グラビア版胴による塗工時(印刷時)において、グラビア版胴のセルに目詰りが生じることもない。
【0040】
すなわち、バリア性コート層が酸化チタンを含む場合、バリア性コート層を形成するための塗工液を用いてグラビア版胴によって塗工する際、酸化チタンによってグラビア版胴のセルに目詰りが生じたり、酸化チタンによってグラビア版胴回りが汚れることも考えられる。
【0041】
これに対して、本願発明によれば、例えばグラビア版胴を50,000から60,000m運転しても、バリア性コート層13は酸化チタンを含まないため、グラビア版胴のセルに目詰りが生じることなく、印刷適性が向上する。
【0042】
なお紙基材層12にバリア性コート層13が予め形成された材料を用いて、ポリエチレン層などの他の層を積層することができ、また、紙基材層12にバリア性コート層13用の塗工液でコートして、インラインで他の層を形成させることもできる。
【0043】
またバリア性コート層13は、紙基材層12から発生する水分が最内層であるポリエチレン層15に通過することを防止して、ピンホールの発生を防止している。
【0044】
(接着剤層14)
接着剤層14は、バリア性コート層13と最内層であるポリエチレン層15との密着性を高めるものであり、ポリエチレンイミン、ブタジエンイミン、有機チタン等のアンカーコートとして機能する。但し、接着剤層14は必ずしも設けなくてもよい。
【0045】
(ポリエチレン層15)
最内層であるポリエチレン層15は、図1に示すように、バリア性コート層13の接着剤層14側に設けられる。
【0046】
この最内層であるポリエチレン層15は、このポリエチレン層15同士、もしくは最外層であるポリエチレン層11と熱融着することにより、容器の形状に形成される。
【0047】
使用可能なポリエチレンとしては、上述の最外層であるポリエチレン層11として使用するものと同じである。
【0048】
なお、最内層であるポリエチレン層15としてメタロセン触媒により合成されたLLDPEを用いた場合は、現状と比較して約20〜60℃低温シールが可能になる。
【0049】
また、最内層であるポリエチレン層15は、本発明の液体用紙容器の内容物に接するため、内容物が牛乳等の飲料である場合は、使用するポリエチレンは添加物を含まないことが好ましい。
【0050】
最内層であるポリエチレン層15の形成方法は特に制限されないが、通常、押出コーティング、予め作製したフィルムをラミネートする方法、ドライラミネーション等が用いられる。このポリエチレン層15の厚さも特に限定されないが、通常、20〜100μmとなっている。
【0051】
(バリア性コート層13の接着性)
ところで、バリア性コート層13を形成するための塗工液としては、「FCA7330(東京インキ株式会社)」または「PW318(日本化工塗料株式会社)」がある。これらの塗工液について最内層としてのポリエチレン層15との層間接着性を高めるため、バリア性コート層13上に、ポリエチレンイミン、ブタジエンイミン、有機チタン系の接着剤層14を介在させている。
【0052】
次に図4により、包装材料の変形例について説明する。
【0053】
すなわち、図4に示す変形例としての包装材料10Aは、外面側から内面側に向って順次配置された以下の層を含む。
ポリエチレン層(PE)11/紙基材層12/バリア性コート層13/接着剤層14/バリア層13A/ポリエチレン層(PE)15
ここで最外層であるポリエチレン層11、紙基材層12、バリア性コート層13、接着剤層14および最内層であるポリエチレン層15は、図1における最外層であるポリエチレン層11、紙基材層12、バリア性コート層13、接着剤層14および最内層であるポリエチレン層15に対応し、同様な条件、材料を使用することができる。
【0054】
バリア層13Aは、包装材料10Aにより包装された内容物の風味が外側に逃げ、内容物の風味が変わってしまうことを防止することが可能である。
【0055】
バリア層13Aとして、特に制限されるものではないが、アルミや無機酸化物が蒸着されたPETフィルム、金属フィルム、アルミニウム等の金属箔、ナイロンMXD6等のバリア性樹脂を使用することができる。
【0056】
ナイロンMXD6を使用する場合は、バリア層13Aを形成する樹脂の20〜100質量%含有することが好ましい。ナイロンMXD6の含有量が20質量%未満の場合、十分なバリア性が認められない場合がある。また、ナイロンMXD6と他の樹脂とを用いてバリア層13Aを形成する場合は、他の樹脂として、脂肪族ナイロン、芳香族ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体、芳香族ポリアミド系ナノコンポジット(例えば、三菱ガス化学株式会社、Imperm103)、ポリアミドナノコンポジット(例えば、宇部興産株式会社、UBE NCH NYON 1022C2、5034C2)等が用いられる。
【0057】
バリア層13Aの形成方法は、従来の方法を使用することができ、特に制限されない。押出コーティング、他の層と共に共押出コーティング、予めフィルムとして作成してラミネートする方法、ドライラミネーション等が使用できる。このとき、バリア層13Aの上下の面に必要に応じて接着層を設けてもよい。
【0058】
バリア層13Aの厚さも、特に制限されないが、通常、3〜60μmである。
【0059】
包装材料10および10Aの厚さは特に制限されないが、通常150〜700μmである。
【0060】
なお、包装材料10および10Aは上記各層の他に必要に応じて他の層を設けてもよい。
【0061】
本発明の包装材料10の製造方法は、特に制限されないが、通常、まず紙基材層12にバリア性コート層13を形成するための塗工液を塗布して乾燥させる(80〜120℃)。これに最外層であるポリエチレン層11と、接着剤層14および最内層であるポリエチレン層15とを積層することにより調製する。
【0062】
本発明の包装材料10Aの製造方法は、通常、まず紙基材層12にバリア性コート層13を形成するための塗工液を塗布して乾燥させ、最外層となるポリエチレン層11を形成した後、バリア層13Aを接着剤層14を介してバリア性コート層13側に形成し、最内層となるポリエチレン層15を設ける。なお、このときバリア層13Aと最内層となるポリエチレン層15は共押出コーティングで形成してもよい。
【0063】
次に、紙容器の製造方法について説明する。
【0064】
まず、上述のような層構成をもつ包装材料10,10Aを準備する。
【0065】
次いで、包装材料10,10Aを公知の方法で加工することにより、ゲーベルトップ型の紙製容器を製造する。具体的には、包装材料10,10Aをブランク材5に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設ける。次に胴部をフレームシール又はホットエアーシールにより貼り合わせたものを充填機に供給し、充填機上で成形、充填、シールを行う。
【0066】
従来の包装材料を用いて紙容器を形成する場合、シールを行う際に紙基材層内部に含まれている水分が水蒸気となったり、空気が膨張したりして、最内層のポリエチレン層にピンホールを発生させ、これが内容物漏れの原因となることがあった。
【0067】
本願発明によれば、紙基材層12と最内層のポリエチレン層15との間にバリア性コート層13が設けられているので、シールの際に紙基材層12中の水分が水蒸気となっても、この水蒸気はバリア性コート層13により最内層のポリエチレン層15側へ移行することはない。このため最内層15に紙基材層12中の水分に起因するピンホールが生じることはない。
【0068】
本実施の形態に係る紙容器1の用途は特に限定されないが、例えば、日本酒、焼酎、ワインなどのアルコール類、牛乳などの乳飲料、オレンジジュースやお茶などの清涼飲料等の食品からカーワックス、シャンプーや洗剤などの化学製品にわたる液体状のもの全般と、香辛料や農薬など穎粒状のものの紙製容器として好適に用いることができる。
【実施例】
【0069】
次に本発明の具体的実施例について説明する。
【0070】
実施例1
坪量320g/mの液体用紙容器用原紙(クリアウォーター社)からなる紙基材層12を準備した。この紙基材層12の一方の面に、FCA7330(東京インキ(株))にメタノールにて20重量%加えて希釈したものをグラビア印刷方式によりコーティングした。この後、100℃で乾燥させ、バリア性コート層13を得た。FCA7330のバリア性コート層の厚さは平均1μmであった。
【0071】
更に、前記FCA7330のバリア性コート層13の上にイミン系アンカーコート剤を乾燥重量で0.5g/mとなるようにグラビア印刷方式によりコーティングした。この後、100℃で乾燥させ、接着剤層14を得た。
【0072】
紙基材層12におけるFCA7330のバリアコート層13および接着剤層14と反対側の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃)を押出コーティング(押出し温度300〜320℃、速度200m/min.)して厚さ17μmの最外層であるポリエチレン層11を形成した。
【0073】
また、前記イミン系アンカーコート剤からなる接着剤層14上に、添加剤を含まない低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃)を押出コーティング(押出し温度300〜320℃、速度200m/min.)して厚さ37μmの最外層であるポリエチレン層15を形成して、本発明の包装材料10を得た。
【0074】
実施例1における包装材料は最外層から最内層に向かって順に、低密度ポリエチレン(LDPE)層17μm/紙基材層(坪量320g/m)/FCA7330層(メタノール20重量%希釈)1μm/イミン系アンカーコート層0.5g/m/LDPE層37μm(無添加)の層構成をもつ。
【0075】
実施例2
実施例2では、FCA7330からなるバリア性コート層13の厚さを5μmとした他は実施例1と同様にして、包装材料10を作製した。
【0076】
実施例3
実施例3では、FCA7330からなるバリア性コート層13の厚さを9μmとした他は実施例1と同様にして、包装材料10を作製した。
【0077】
実施例4
実施例4では、イミン系アンカーコート剤からなる接着剤層14を形成しなかった他は実施例3と同様にして、包装材料10を作製した。
【0078】
比較例1
比較例1では、FCA7330からなるバリア性コート層13及びイミン系アンカーコート剤からなる接着剤層14を形成しなかった他は実施例1と同様にして、包装材料を作製した。
【0079】
(評価方法1)耐ピンホール性
実施例1−4及び比較例1の包装材料について、ピンホールの発生状況を評価した。その評価結果を表1に示す。
【0080】
充填機(ディー・エヌ・ケー社製、型番:DR−10)を用い、熱風により各包装材料を各温度に熱し、ピンホールの発生状況を調べた。その評価結果を表1に示す。なお、ピンホールの発生が認められない、もしくは少ないもの(具体的に面積1cmあたり0〜1個)を○、ピンホールの発生が若干認められるもの(面積1cmあたり2〜5個)を△、ピンホールの発生が多いもの(面積1cmあたり5個以上)を×とした。
【表1】

【0081】
(評価方法2)接着強度
実施例1〜4および比較例1にて作製した包装材料から、幅15mm、長さ100mmの試験片を切り出し、切り出した試験片の一端から測定対象とする層間を50mm剥がし、テンシロン引張り試験機の両チャックにそれぞれチャッキングした。25℃雰囲気下、50mm/minの引張り速度で180度方向に剥がし、最大荷重を測定した。
【0082】
実施例1〜3、及び比較例1の包装材料については、FCA7330層/LDPE層の間のラミネート強度を測定しようと試みたが、ラミネート強度が高過ぎて基材破壊が起きた(剥離不可能)。
【0083】
実施例4の包装材料についてはFCA7330層/LDPE層の間のラミネート強度が0.5N/15mmであった。
【0084】
このように実施例1〜4および比較例1のいずれも、使用に耐えるだけの層間接着強度を得た。
【0085】
(充填機適性の検討)
次に充填機適性の検討を行うため、新たに以下のような実施例5を作製した。
【0086】
実施例5
実施例1により製造された包装材料10を準備した。
【0087】
次に得られた包装材料10にオフセット印刷法により所望の絵柄・表示等の印刷を行った後、所定の形状に打ち抜くと同時に必要箇所に罫線を設けてブランクシートとし、次いで、フレームシールにより胴部を貼り合わせて筒状スリーブとし、この筒状スリーブを充填機に供給し、充填機上でボトム部を形成した後、内容物を充填し、トップ部をシールすることにより実施例5のゲーブルトップ型の紙容器を作製した。
【0088】
次に、上述した比較例1の包装材料を用いて、紙容器を得た。
【0089】
この場合、得られた紙容器の上方部(TOP)と、下方部(BOTTOM)に関して、紙容器1の接着性とピンホール有無を検討した。その検討結果を表2および表3に示す。
【0090】
表2および表3において、良好なものは○、実用上問題なしを△、不良を×とした。
【表2】

【表3】

【0091】
実施例6
坪量320g/mの液体用紙容器用原紙(クリアウォーター社)からなる紙基材層12を準備した。この紙基材層12の一方の面に、FCA7330(東京インキ(株))にメタノールにて20重量%加えて希釈したものをグラビア印刷方式によりコーティングした。この後、100℃で乾燥させた。FCA7330のバリア性コート層13の厚さは平均1μmであった。
【0092】
更に、前記FCA7330のバリア性コート層13の上にイミン系アンカーコート剤を乾燥重量で0.5g/mとなるようにグラビア印刷方式によりコーティングした。この後、100℃で乾燥させ、接着剤層14を得た。
【0093】
紙基材層12におけるFCA7330のバリアコート層13および接着剤層14と反対側の面に、低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃)を押出コーティング(押出し温度300〜320℃、速度200m/min.)して厚さ17μmの最外層であるポリエチレン層11を形成した。
【0094】
また、前記イミン系アンカーコート剤からなる接着剤層14の面とバリア層13A(蒸着PET層)を対向させ、その間に接着性樹脂層として厚さ20μmのエチレン−メタクリル酸エステル共重合体(三井デュポンポリケミカル株式会社製N0908C、酸含量9%)を押出してサンドラミネートし、ポリエチレン層/紙基材層/接着性樹脂層/蒸着PET層という積層体を形成した。更に、蒸着PET層の上に添加剤を含まない低密度ポリエチレン樹脂(密度;0.923g/cm、メルトインデックスM.I.;3.8、融点109℃)を押出コーティング(押出し温度300〜320℃、速度200m/min.)して厚さ60μmの最内層であるポリエチレン層15を形成して、本発明の包装材料10Aを得た。評価結果は示さないが, (評価方法1)耐ピンホール性、(評価方法2)接着強度を評価した。実施例1と同様の結果を得た。
【0095】
実施例7
実施例6で得られた包装材料10Aを用い、実施例5と同様の手順で実施例7のゲーベルトップ型の紙容器を作成した。評価結果は示さないが,充填適正についても,実施例5と同様の結果を得た。
【符号の説明】
【0096】
1 紙容器
5 ブランク剤
10 包装材料
11 ポリエチレン層
12 紙基材層
13 バリア性コート層
14 接着剤層
15 ポリエチレン層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側面から内側面に順に配置されたポリエチレン層と、紙基材層と、バリア性コート層と、ポリエチレン層とを備え、
バリア性コート層は酸化チタンを含まないアクリル系樹脂を主成分としていることを特徴とする包装材料。
【請求項2】
前記バリア性コート層は20〜80mgKOH/gの樹脂酸価、及び20℃〜80℃のガラス転移点をもつアクリル系樹脂を5〜50重量%を含有し、かつ該アクリル性樹脂が水溶性アクリル系樹脂及び水分散性アクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
アクリル系樹脂がメタクリル酸エステル系共重合体、及び/又はアクリル酸エステル系共重合体からなることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項4】
前記バリア性コート層は、0.5〜10μmの厚さをもつことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項5】
前記バリア性コート層と内側面のポリエチレン層との間に、ポリエチレンイミン、ブタジエンイミン、または有機チタン系の接着剤層が介在されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項6】
請求項1に記載の包装材料から作製された紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235926(P2011−235926A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108554(P2010−108554)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】