説明

包装材料及びその製造方法

【課題】高湿度条件でも優れた酸素ガスバリヤー性及び耐水性を付与するポリカルボン酸系重合体層を含み、ポリオレフィン層をヒートシール面として製袋される包装材料において、当該包装材料に食用油を含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理に付したり、長期保存したりしても、ポリオレフィン層に由来する防湿性が低下しない包装材料の提供。
【解決手段】包装材料を、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)の一方の面と、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)が、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して得られる複合フィルム(B)の(B−1)面が接着された積層体からなるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(メタ)アクリル酸に代表されるポリカルボン酸系重合体がコーティングされた酸素ガスバリヤー層を含有する積層体からなる包装材料とその製造方法に関する。本発明の包装材料は、酸素ガスバリヤー層により、高湿度条件でも優れた酸素ガスバリヤー性と耐水性(水や沸騰水に対する不溶性)が付与されており、他の層により防湿性、ヒートシール性等が付与されているものであり、酸化等の酸素による品質の劣化を受けやすい、食用油を多量に含む食品の包装に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
酸化劣化しやすい食品の包装材料には、優れた酸素ガスバリヤー性が求められる。更に、レトルト処理やボイル処理される食品の包装材料には、耐水性が求められる。酸素ガスバリヤー性が優れる包装材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルムが例示される。しかしながら、PVAフィルムは、乾燥状態での酸素ガスバリヤー性が優れているが、高湿度条件下での酸素ガスバリヤー性が著しく低下し、沸騰水に溶解するものであり、また、PVDCフィルムは、酸素ガスバリヤー性が十分であるとは言えない。
そこで、湿度に依存しない酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有する食品包装材料として、PVAフィルム及びPVDCフィルムに代わる下記(1)〜(4)のポリカルボン酸系重合体層を含む積層体等が検討された。
【0003】
(1)ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂から形成された耐熱性フィルム(B)の上に、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーと糖類を含有する溶液を塗工し、乾燥して被膜を形成させた後、該被膜を100℃以上の温度で熱処理してガスバリヤー性フィルム(A)を形成し、耐熱性フィルム(B)に隣接してポリプロピレン、ポリエチレン等のヒートシール性を有するシール性層(C)が形成されて得られる積層体(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
(2)ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール類との混合物からなる成形物表面に金属化合物を含む層を塗工したものを100℃以上の温度で熱処理して得られたガスバリヤ性フィルム、又は、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール類との混合物からなる成形物を100℃以上の温度で熱処理した後、成形物表面に金属化合物を含む層を塗工して得られたフィルムの金属化合物を含む層が塗工されていない面にポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムが固定されているガスバリヤ性フィルムの一方の外層にポリプロピレン、ポリエチレン等のヒートシール性を有する樹脂層が形成された積層体(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
(3)ポリエチレンテレフタレートフィルム上に接着剤、ポリアクリル酸と溶剤の混合物、酸化亜鉛含有塗料の順に塗工、乾燥して積層体を得、積層体の酸化亜鉛含有塗料面に接着剤を介して未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネートして得られるラミネートフィルム(例えば、特許文献3、実施例33参照)。
【0006】
(4)ポリエチレンテレフタレート等の第一の高分子フィルムにポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコールとの混合物から形成されるコーティング層が積層されている第一の複合フィルムと、延伸ナイロンフィルム等の第二の高分子フィルム上に無機材料からなる薄膜が積層されている第二の複合フィルムと、エチレン系共重合体、ポリプロピレン等の第三の高分子フィルムを備え、第一の高分子複合フィルム、第二の高分子複合フィルム及び第三の高分子フィルムが互いに接着剤を介して積層されている積層フィルム(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
上記(1)〜(4)の積層体のポリオレフィン面をヒートシールして製袋して得られる包装材料は、ポリオレフィン層に由来する防湿性を持っている。しかしながら、これらの包装材料に、食用油を多く含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理したり、長期保存すると、包装材料の水蒸気透過度が大きくなり防湿性が低下するという問題があった。本発明の発明者は、この理由を検討し、ポリオレフィン層に食用油が浸透し、ポリオレフィンの結晶構造が破壊される結果、ポリオレフィン層の防湿性が低下してくることを見出した。また、本発明の発明者は、上記(4)の積層フィルムの延伸ナイロンフィルムが、食用油を浸透させないものであることが見出した。更に、本発明の発明者は、ナイロン以外にも、SP値が9.5〜20の樹脂には食用油が浸透してこないことを見出して本発明を完成させた。
【特許文献1】特開平7−251485号公報
【特許文献2】特開2000−931号公報
【特許文献3】国際公開第03/091317号パンフレット
【特許文献4】特開2002−67237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、相対湿度が80%以上のような高湿度条件でも酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有するポリカルボン酸系重合体層を含み、ポリオレフィン層をヒートシール面として製袋される包装材料において、当該包装材料に食用油を含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理に付したり、長期保存すると、ポリオレフィン層に由来する防湿性が低下するという問題を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)の一方の面と、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)が、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して得られる複合フィルム(B)の(B−1)面が接着された積層体からなる包装材料を提供する。
本発明は、上記包装材料において、酸素ガスバリヤー層(A)が、基材フィルム上に接着剤層、ポリカルボン酸系重合体層、多価金属化合物含有層の順に積層されているものであり、多価金属化合物含有層と(B−1)面が接着されている包装材料を提供する。
本発明は、上記包装材料において、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の総厚みに対する(B−1)の厚みが20〜60%の範囲である包装材料を提供する。
本発明は、上記包装材料において、酸素ガスバリヤー層(A)と複合フィルム(B)がポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む接着剤により接着されている包装材料を提供する。
本発明は、上記包装材料において、SP値が9.5〜20の樹脂が、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物である包装材料を提供する。
本発明は、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂をコーティング法によって積層して酸素ガスバリヤー層(A)を得る工程、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)を、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して複合フィルム(B)を得る工程、酸素ガスバリヤー層(A)の一方の面と複合フィルム(B)の(B−1)面を接着する工程を実施して積層体を得る、包装材料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の包装材料は、ポリカルボン酸系樹脂層を含み、相対湿度80%以上のような高湿度条件でも優れた酸素ガスバリヤー性及び耐水性を有するものである。更に、本発明の包装材料は、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)をヒートシール面として製袋し、食用油を含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理に付したり、長期保存しても、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)に浸透してくる食用油が、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)には浸透してこないから、層(B−2)の外側のポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)に食用油が浸透することはなく、本発明の包装材料は、(B−1)に由来する防湿性を保持するものである。また、本発明の包装材料の製造方法は、ドライラミネーションによる接着工程を、酸素ガスバリヤー層(A)と複合フィルム(B)を接着する時の1回にすることができるので、包装材料の製造コストを低減できると共に、接着に使用する接着剤に由来する溶剤の包装材料中の残留量を低減できる。更に、本発明の包装材料の製造方法は、複合フィルム(B)を共押出により得ているので、複合フィルム(B)を構成する3つの層(B−1)、(B−2)、(B−3)の厚みを自由に設定することができる。なお、複合フィルム(B)を市販されているフィルムをドライラミネートして製造すると、3つの層(B−1)、(B−2)、(B−3)の厚みの選択幅が狭い。また、ドライラミネートに使用する接着剤に由来する溶剤の包装材料中の残留量が増大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明に使用される酸素ガスバリヤー層(A)は、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層されることにより得られる。
【0012】
基材フィルムとしては、特に限定されないが、金属類、紙類、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)が例示され、熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)が好ましい。熱可塑性樹脂(金属が蒸着された熱可塑性樹脂を含む)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体などのポリアミド、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸塩共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられ、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン6、ポリプロピレンが挙げられ、これらの未延伸フィルム、1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムを基材フィルムとして用いることができる。また、基材フィルムの厚さは特に限定されないが、0.001〜1000μmの範囲が好ましい。更に好ましくは0.01〜200μm、最も好ましくは0.1〜50μmの範囲である。また、基材フィルムの少なくとも片方の面にはコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的処理が施されていてもよい。
【0013】
ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体のことである。具体的には、重合性単量体として、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、少なくとも2種類のα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体の共重合体、更にアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類を例示することができる。これらのポリカルボン酸系重合体は、それぞれ単独で、又は少なくとも2種を混合して用いることができる。
【0014】
α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等が挙げられる。α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、スチレン等が挙げられる。ポリカルボン酸系重合体がα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸と酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類との共重合体の場合には、さらにケン化することにより、飽和カルボン酸ビニルエステル部分をビニルアルコールに変換して使用することができる。ポリカルボン酸系重合体がα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸とその他のエチレン性不飽和単量体との共重合体である場合には、ガスバリアー性、耐水性の観点から、α、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合割合は60モル%以上、より好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは100モル%であることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体がα、β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のみからなる重合体の場合には、その好適な具体例は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られる重合体、それらの混合物が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸から選ばれる少なくとも1種の重合体単量体によって得られる単独重合体、共重合体及び/又はそれらの混合物を用いることができる。より好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸及び/又はそれらの混合物を使用することができる。ポリカルボン酸系重合体が酸性多糖類の場合には、アルギン酸を好ましく用いることができる。ポリカルボン酸系重合体の数平均分子量については、特に限定されないが、コーティング性の観点から2,000〜10,000,000の範囲であることが好ましく、5,000〜1,000,000であることが更に好ましい。ポリカルボン酸系重合体には、ガスバリヤー性、耐水性を損なわない範囲で他の重合体を混合することが可能であるが、ポリカルボン酸系重合体単独で用いることが好ましい。
【0015】
本発明では、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層が、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類の混合物からなるものであってもよい。
本発明で用いるポリアルコール類とは、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物からアルコール系重合体までを含み、ポリビニルアルコール(PVA)や糖類および澱粉類を含むものである。前記分子内に2個以上の水酸基を有する低分子量化合物としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ペンタエリトリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを例示できる。また、PVAはケン化度が通常95%以上、好ましくは98%以上であり、平均重合度が通常300〜1500である。また、ポリカルボン酸系重合体との相溶性の観点からビニルアルコールを主成分とするビニルアルコールとポリ(メタ)アクリル酸との共重合体を用いることもできる。糖類としては、単糖類、オリゴ糖類および多糖類を使用する。これらの糖類には、特開平7−165942号公報に記載のソルビトール、マンニトール、ズルシトール、キシリトール、エリトリトール等の糖アルコールや各種置換体・誘導体なども含まれる。これらの糖類は、水、アルコール、あるいは水とアルコールの混合溶剤に溶解性のものが好ましい。澱粉類は、前記多糖類に含まれるが、本発明で使用される澱粉類としては、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉などの生澱粉(未変性澱粉)のほか、各種の加工澱粉がある。加工澱粉としては、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉などが挙げられる。これらの澱粉類の中でも、馬鈴薯澱粉を酸で加水分解した水に可溶性の加工澱粉、澱粉の末端基(アルデヒド基)を水酸基に置換することにより得られる糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。また、これらの澱粉類は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類との混合比(質量比)は、高湿度条件下でも優れた酸素ガスバリヤー性を有する成形物を得るという観点から、好ましくは99:1〜20:80、さらに好ましくは95:5〜40:60、最も好ましくは95:5〜50:50である。
【0017】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1、又は、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール類と溶媒を含むコーティング液2を基材フィルム上にコーティングし、溶媒を蒸発乾燥することにより、基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層を形成することができる。ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1を基材フィルム上にコーティングする方法には、単量体を含むコーティング液を基材フィルム上にコーティングして紫外線又は電子線を照射して重合しポリカルボン酸系重合体を含む層を形成する方法、単量体を基材上に蒸着すると同時に電子線を照射して重合しポリカルボン酸系重合体を含む層を形成する方法が含まれる。
【0018】
ポリカルボン酸系重合体と溶媒を含むコーティング液1は、ポリカルボン酸系重合体を溶媒に溶解又は分散させることにより調製することができる。溶媒はポリカルボン酸系重合体を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチエルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げることができるが、非水系溶媒、非水系溶媒と水の混合物が好ましく使用される。当該コーティング液中のポリカルボン酸系重合体の濃度は0.1〜50質量%であることが好ましい。
【0019】
ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール類と溶媒を含むコーティング液2を得る方法は特に限定されないが、各成分を溶媒に溶解させる方法、各成分の溶液を混合する方法、ポリアルコール類溶液中でカルボキシル基を含有するモノマーを重合させる方法、その場合、所望により重合後アルカリで中和する方法などが採用される。溶媒としては、水、アルコール、水とアルコールの混合物等が挙げられる。当該コーティング液中の固形分濃度は1〜30質量%であることが好ましい。
【0020】
上記コーティング液1及び2には、本発明の防湿性食品包装材のガスバリヤー性を損なわない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤(分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物は除く)、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、モンモリロナイト等の無機層状化合物等を適宜添加することができる。
また、コーティング液1には、本発明の食品包装材のガスバリヤー性及び耐水性の観点から1価及び/又は2価の金属を含む化合物を添加することができる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物としてはナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、銅を含む化合物が例示できる。具体的には、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化カルシウムが例示できる。1価及び/又は2価の金属を含む化合物の添加量は、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の0〜50モル%の範囲であることが好ましい。更に好ましくは0〜30モル%の範囲である。
【0021】
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類を含む樹脂層の耐水性とガスバリヤー性を向上させるため、基材フィルム上にコーティングされたコーティング液2を乾燥して得られた被膜は熱処理される場合があり、その条件を緩和するためにコーティング液2調製の際に、水に可溶な無機酸または有機酸の金属塩を適宜添加することができる。金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属を挙げることができる。無機酸または有機酸の金属塩の具体的な例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、ホスフィン酸カルシウム(次亜リン酸カルシウム)等のホスフィン酸金属塩(次亜リン酸金属塩)が使用される。無機酸および有機酸の金属塩の添加量は、コーティング液中の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜40質量部、さらに好ましくは1〜30質量部である。
【0022】
コーティング液1又は2は、基材フィルム上に、エアーナイフコーター、キスロールコーター、メタリングバーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、デイップコーター、ダイコーター、スプレー等の装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いてコーティングされる。次いで、アーチドライヤー、ストレートバスドライヤー、タワードライヤー、フローティングドライヤー、ドラムドライヤー、赤外線ドライヤーなどの装置、あるいは、それらを組み合わせた装置を用いた熱風の吹き付けや赤外線照射、自然乾燥、オーブン中での乾燥などにより溶媒を蒸発させて乾燥させ皮膜を形成させる。
【0023】
本発明では、コーティング液1又は2から得られたポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層に隣接して多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)を設けることができる。多価金属イオンにより、ポリカルボン酸系重合体が架橋される。
本発明で用いる多価金属化合物は、金属イオンの価数が2以上の多価金属原子単体及びその化合物である。多価金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属、アルミニウム等を挙げることができる。多価金属化合物の具体例としては、前記多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩、アンモニウム錯体、2〜4級アミン錯体、錯体の炭酸塩、錯体の有機酸塩、アルキルアルコキシド等が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩等が挙げられる。無機酸塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。こられの多価金属化合物はそれぞれ単独で、また少なくとも2種の多価金属化合物を混合して用いることができる。多価金属化合物の中でも、2価の金属化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、(a)アルカリ土類金属、コバルト、ニッケル、銅又は亜鉛の酸化物、水酸化物又は炭酸塩、(b)コバルト、ニッケル、銅、亜鉛のアンモニウム錯体又はアンモニウム錯体炭酸塩が用いられる。最も好ましくは、(c)マグネシウム、カルシウム、銅又は亜鉛の酸化物、水酸化物又は炭酸塩、(d)銅又は亜鉛のアンモニウム錯体又はアンモニウム錯体炭酸塩が用いられる。
【0024】
多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)は、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層に、多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3をコーティングして溶媒を乾燥させる方法により形成することができる。また、多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)は、基材フィルム上に上記コーティング液3をコーティングする方法、あるいは蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の気相コーティング法により多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)を形成してから、ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層をコーティングして形成することもできる。
【0025】
多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3は、多価金属化合物を溶媒に溶解又は分散させることにより調製することができる。溶媒は、多価金属化合物を均一に溶解又は分散できるものであれば特に限定されない。溶媒としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、これらの混合物等が挙げられるが、非水系溶媒、非水系溶媒と水の混合溶媒を使用することが好ましい。
【0026】
多価金属化合物と溶媒を含むコーティング液3には、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤等を適宜添加することができる。特に多価金属化合物の分散性、コーティング性を向上させるために、用いた溶媒系に可溶な樹脂を混合した樹脂組成物(多価金属化合物含有樹脂組成物)として使用することが好ましい。樹脂としては、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の塗料に用いる樹脂を挙げることができる。また、コーティング液3中の多価金属化合物と樹脂の構成比は特に限定されないが、コーティング液3中の多価金属化合物、樹脂、その他の添加剤の総量は、コーティング性の観点から1〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
コーティング液3は、コーティング液1及び2のコーティング方法と乾燥方法により、コーティングされ乾燥される。
ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール類を含む樹脂層に隣接して多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)が設けられる場合、コーティング液2を乾燥して得られる被膜にコーティング液3をコーティングして熱処理してもよいし、当該被膜を熱処理した後コーティング液3をコーティングしてもよい。
【0028】
基材フィルム上にコーティング液1、2又は3をコーティングする際、基材フィルムとポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層又は多価金属化合物を含む層(多価金属化合物含有層)との接着性を向上させるため、予め接着剤を基材フィルム上にコーティングすることができる。接着剤は特に限定されないが、ドライラミネート、アンカーコート、プライマーとして用いられている溶媒に可溶なアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含むものが例示される。
【0029】
ポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層の厚みは10μm以下であり、好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
酸素ガスバリヤー層(A)は、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)が、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して得られる複合フィルム(B)の(B−1)面と接着される。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)は防湿性及びヒートシール性を有するものであり、本発明の包装材料を製袋する際のヒートシール面となり、被包装物と接触する。本発明の包装材料を製袋して食用油を多く含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理したり、長期保存すると、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)には食用油が浸透し、防湿性が低下する。
【0031】
本発明の発明者は、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層に浸透する食用油がナイロン層には浸透しないことを見出し、ナイロン以外の食用油が浸透しない樹脂を検討した結果、SP値が9.5〜20の樹脂には食用油が浸透してこないことを見出した。
【0032】
SP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)であり、J. H. Hildebrandにより展開された正則溶液の理論によるものである。SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)は、食用油が浸透しないものである。従って、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)に浸透した食用は、樹脂層(B−2)より外側の層、すなわちポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)には浸透しない。SP値が9.5〜20の樹脂は特に限定されないが、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体、ナイロン6・12共重合体、メタキシリレンアジパミド・ナイロン6共重合体、非晶性ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が例示され、好ましくは、ナイロン6、ポリエチレンテレフタレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物である。表1に、主な熱可塑性樹脂のSP値を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)は、本発明の包装材料に防湿性を与えるものである。ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)に食用油は浸透してこないから、本発明の包装材料を製袋して食用油を多く含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理したり、長期保存しても、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)の防湿性は維持される。
【0035】
(B−1)及び(B−3)を構成する樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸塩共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレンープロピレン共重合体等が例示される。
【0036】
複合フィルム(B)は、厚みの選択幅が制限される市販のフィルムをドライラミネートにより接着して製造されるものではなく、(B−1)、(B−2)及び(B−3)を共押出して製造されるものであるから、(B−1)、(B−2)、(B−3)のそれぞれの厚みを自由設定することができる。また、複合フィルム(B)の製造コストも安価である。
【0037】
(B−1)の厚みは、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の総厚みの合計に対して20〜60%の範囲である。(B−1)の厚みが、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の総厚みの合計に対して20%未満であると、包装材料の水蒸気透過度が大きくなり防湿性が低下する。(B−1)の厚みが、(B−1)、(B−2)及び(B−3)の総厚みの合計に対して60%を超えると、(B−3)が相対的に薄くなり、包装材料のシール強度が低下する。また、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)の厚みは0.01〜30μm、好ましくは0.1〜20μm、最も好ましくは1〜10μmの範囲である。また、(B−1)の表面には、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線等の物理的処理が施されていてもよい。
【0038】
(B−1)と(B−2)の間、(B−2)と(B−3)の間には、接着剤層が設けられていてもよい。接着剤は特に限定されないが、無水マレイン酸又はマレイン酸で変性されたポリプロピレン系樹脂又はポリエチレン系樹脂を含む接着剤が例示される。
酸素ガスバリヤー層(A)と複合フィルム(B)の接着に使用される接着剤は特に限定されないが、アルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含むものが例示され、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂を含む接着剤が好ましく使用される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、評価方法について説明する。
1.残留溶剤量
レトルト処理前の包装材料40000mm2をバイアル瓶(50ml)に封入し、オーブンにて90℃で20分間加熱し、包装材料中の残留溶剤を抽出した。その後、バイアル瓶のヘッドスペースより0.2mlの気体を取り出し、(株)島津製作所製GC−2010を使用してASTM F1884−04に準拠して、残留溶剤量を測定した。
【0040】
2.三点比較法による官能試験
レトルト処理後にかつお油漬をパウチから取り出し、三点比較法により異味の有無を評価した。三点比較法とは、2つの試料のいずれか一方を2個、他方を1個、合計3個を1組とし、パネラーにどれが異なる試料か(味が異なるものはどれか)選ばせる方法である。比較用の試料にはアルミ缶に入れられた状態でレトルト処理したかつお油漬を使用した。
【0041】
3.水蒸気透過度(WVTR)
レトルト処理後の包装材料の水蒸気透過度は、Modern Control社製PERMATRAN−W3/31を用いて、40℃、90%RHの条件で、ASTM F1249−01の規定に従って測定した。測定値は、単位g/m2・dayで表記した。
【0042】
4.酸素ガス透過度(OTR)
レトルト処理後の包装材料の酸素透過度は、Modern Control社製酸素透過試験器OXTRANTM2/20を用いて、20℃、80%RHの条件で、ASTM F1927−98(2004)の規定に従って測定した。測定値は、単位cm3(STP)/m2・day・MPaで表記した。ここで(STP)は酸素の体積を規定するための標準状態(0℃、1気圧)を意味する。
【0043】
5.シール強度
包装材料によって作られたパウチのシール強度をToyo Boldwin製引張り試験機RTM−100を用いて23℃、50%RHの条件でASTM F88−05の規定に従い、サンプル巾15mm、クロスヘッドスピード300mm/minで測定した。
【0044】
(実施例1)
(酸素ガスバリヤー層の作製)
まず、下記構成の塗液1、2、3を調製した。塗液1は、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムと、ポリカルボン酸系重合体層との接着性を向上させるためのアンカーコート(AC)塗液である。塗液2は、ポリカルボン酸系重合体として用いたポリアクリル酸塗液、塗液3は、ポリアクリル酸層上に多価金属化合物含有層を配するための酸化亜鉛含有樹脂組成物塗液である。
【0045】
塗液1:三井化学ポリウレタン(株)製接着剤溶液
主剤:タケラックA−525(内 ウレタン樹脂の前駆体50質量%、酢酸エチル50質量%)/硬化剤:タケネートA−52(内 ウレタン樹脂の硬化剤55質量%、酢酸エチル45質量%)/溶媒:酢酸エチル
(配合)A−525 9質量部
A−52 1質量部
酢酸エチル 165質量部
合計 175質量部(固形分濃度3質量%)
塗液2:東亜合成(株)製ポリアクリル酸(PAA)水溶液
ポリアクリル酸:アロンTMA−10H(数平均分子量20万、25質量%水溶液)/中和剤:NaOH/溶剤:水、イソプロピルアルコール(IPA)
(配合)アロンTMA−10H 10質量部
NaOH 0.03質量部
水 66質量部
IPA 7質量部
合計 83質量部(固形分濃度15質量%)
塗液3:住友大阪セメント(株)製酸化亜鉛含有樹脂組成物(ZnO)溶液
酸化亜鉛含有樹脂組成物:K035A(内 酸化亜鉛16.6質量%、ウレタン樹脂の前駆体1.74質量%、分散剤1.66質量%、トルエン72質量%、メチルエチルケトン8質量%)/硬化剤:C−320(内 ウレタン樹脂の硬化剤75質量%、酢酸エチル25質量%)/溶媒:トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、IPA
(配合)K035A 100質量部
C−320 3質量部
トルエン 24質量部
MEK 3質量部
IPA 3質量部
合計 133質量部(固形分濃度15質量%)
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製ルミラーTMP60、厚さ12μm、片面コロナ処理)を基材とし、上記塗液1、2、3をこの順番でグラビアコーターを用いて基材のコロナ処理面に塗工、乾燥することにより、PET/AC(0.1g/m2)/PAA(0.5g/m2、0.4μm)/ZnO(ZnOとして0.5g/m2)からなる酸素ガスバリヤー層を得た。( )内に各層の乾燥塗布量を示した。
【0046】
(複合フィルムの共押出しによる作製)
5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて、PP(30μm)/接着剤(5μm)/Ny(5μm)/接着剤(5μm)/PP(60μm)からなる複合フィルムを得た。PPは日本ポリプロ(株)製ポリプロピレンのノバテックFB3HAT、接着剤は三井化学(株)製ポリプロピレン系接着剤のアドマーQF500、Nyは東レ(株)製ナイロン6のアミランCM1021XFである。( )内に各層の厚みを示した。
【0047】
(酸素ガスバリヤー層と複合フィルムのドライラミネートによる接着)
得られた複合フィルムのPP(30μm)の濡れ性を向上させるため、(株)西村製作所製高周波電源AGI−040にてコロナ強度23W/m2・minで、PP(30μm)の表面にコロナ処理を実施した。その後、東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用接着剤TM−250HV(主剤:ポリエステル系樹脂)/CAT−RT86−L60(硬化剤:ポリイソシアネート)を用い、ヒラノテクシード(株)製マルチコーターTM−MCにて、酸素ガスバリヤー層の酸化亜鉛含有樹脂組成物(ZnO)側と複合フィルムのPP(30μm)側を接着し、40℃で3日間養生して包装材料を得た。
【0048】
(製袋、食品充填及びレトルト処理)
得られた包装材料のPP(60μm)側をインパルスシーラーで貼り合わせることにより100mm×140mmの平パウチを作製し、かつお油漬(はごろもフーズ(株)製シーチキン)80gを充填した。得られたパウチは日阪製作所(株)貯湯式レトルト釜RCS−60/10TGにて120℃、処理槽圧力2kgで30分間レトルト処理され、包装材料の水蒸気透過度及び酸素ガス透過度の測定とかつお油漬の官能試験が実施された。
【0049】
本発明で得られた包装材料の、上記操作後の水蒸気透過度は0〜50g/m2・dayの範囲であり、好ましくは0〜40g/m2・dayの範囲であり、更に好ましくは0〜30g/m2・dayの範囲である。酸素透過度は0〜1000cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、好ましくは0〜500cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、更に好ましくは0〜100cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲であり、最も好ましくは0〜50cm3(STP)/m2・day・MPaの範囲である。
【0050】
(実施例2)
実施例1におけるNyに代えて、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物((株)クラレ製エバールL101)を使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0051】
(実施例3)
実施例1におけるNyに代えて、ポリエチレンテレフタレート(カネボウ合繊(株)製ベルペットIFG8L)を使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0052】
(実施例4)
実施例1におけるNyに代えて、ポリ塩化ビニリデン((株)クレハ製クレハロンFM−10)を使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0053】
(実施例5)
実施例1における複合フィルムに代えて、5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて作製した、PE(30μm)/接着剤(5μm)/Ny(5μm)/接着剤(5μm)/PE(60μm)からなる複合フィルムを使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。PEは日本ポリケム(株)製低密度ポリエチレンのノバテックLD LF420M、接着剤は三井化学(株)製線状低密度ポリエチレン系接着剤のアドマーNF500である。( )内に各層の厚みを示した。
【0054】
(実施例6)
実施例1における複合フィルムに代えて、5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて作製した、PP(30μm)/接着剤a(5μm)/Ny(5μm)/接着剤b(5μm)/PE(60μm)からなる複合フィルムを使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。PPは日本ポリプロ(株)製ポリプロピレンのノバテックFB3HAT、接着剤aは三井化学(株)製ポリプロピレン系接着剤のアドマーQF500、Nyは東レ(株)製ナイロン6のアミランCM1021XF、接着剤bは三井化学(株)製線状低密度ポリエチレン系接着剤のアドマーNF500、PEは日本ポリケム(株)製低密度ポリエチレンのノバテックLD LF420Mである。( )内に各層の厚みを示した。
【0055】
(実施例7)
実施例1における複合フィルムに代えて、5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて作製した、PE(30μm)/接着剤b(5μm)/Ny(5μm)/接着剤a(5μm)/PP(60μm)からなる複合フィルムを使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。PEは日本ポリケム(株)製低密度ポリエチレンのノバテックLD LF420M、接着剤bは三井化学(株)製線状低密度ポリエチレン系接着剤のアドマーNF500、Nyは東レ(株)製ナイロン6のアミランCM1021XF、接着剤aは三井化学(株)製ポリプロピレン系接着剤のアドマーQF500、PPは日本ポリプロ(株)製ポリプロピレンのノバテックFB3HATである。( )内に各層の厚みを示した。
【0056】
(実施例8)
実施例1における酸素ガスバリヤー層と複合フィルムのドライラミネートによる接着時に使用した接着剤に代えて、東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用接着剤AD811(主剤:ポリウレタン系樹脂)/(CAT−RT−L60(硬化剤:ポリイソシアネート)を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0057】
(実施例9)
実施例1における酸素ガスバリヤー層に使用される2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、2軸延伸ポリアミドフィルム(ユニチカ(株)製2軸延伸ナイロン6フィルム、エンブレムON)のコロナ処理面を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0058】
(実施例10)
実施例1における酸素ガスバリヤー層に使用される2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに代えて、2軸延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績(株)製パイレンフィルム−OT P2102)のコロナ処理面を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0059】
(実施例11)
実施例1における酸素ガスバリヤー層の作製に使用される塗液2に酸化亜鉛を加えてポリアクリル酸のカルボキシル基の15モル%を中和した塗液を用いた以外は実施例1と同じ操作を行った。
【0060】
(比較例1)
実施例1における酸素ガスバリヤー層と複合フィルムのドライラミネートによる接着に代えて、実施例1における酸素ガスバリヤー層/接着剤/Ny(15μ)/接着剤/CPP(60μm)の順番で、ヒラノテクシード(株)製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートによる接着を行った。接着剤は東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用接着剤TM−250HV(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)、Nyは(株)興人製ナイロンフィルムのボニールQC、CPP(60μm)はオカモト(株)製未延伸ポリプロピレンフィルムのアロマーET20である。( )内に各層の厚みを示した。
【0061】
(比較例2)
実施例1における酸素ガスバリヤー層と複合フィルムのドライラミネートによる接着に代えて、実施例1における酸素ガスバリヤー層/接着剤/CPP(30μm)/接着剤/Ny(15μ)/接着剤/CPP(60μm)の順番で、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにてドライラミネートによる接着を行った。接着剤は東洋モートン(株)製2液硬化型ドライラミネート用接着剤TM−250HV(主剤)/CAT−RT86−L60(硬化剤)、CPP(30μm)及び(60μm)はオカモト(株)製未延伸ポリプロピレンフィルムのアロマーET20、Nyは(株)興人製ナイロンフィルムのボニールQCである。( )内に各層の厚みを示した。
【0062】
(比較例3)
実施例1における複合フィルムに代えて、5種5層のフィードブロック方式Tダイ(MT−2押出し設備)にて作製した、PP(30μm)/接着剤(5μm)/PE(5μm)/接着剤(5μm)/PP(60μm)からなる複合フィルムを使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。PPは日本ポリプロ(株)製ポリプロピレンのノバテックFB3HAT、接着剤は三井化学(株)製ポリプロピレン系接着剤のアドマーQF500、PEは日本ポリケム(株)製低密度ポリエチレンのノバテックLD LF420Mである。( )内に各層の厚みを示した。
【0063】
(比較例4)
比較例1における酸素ガスバリヤー層に代えて、酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷(株)製GL−AEH)を使用する以外は、比較例1と同じ操作を行った。
【0064】
(比較例5)
実施例1における複合フィルムPP(30μm)/接着剤(5μm)/Ny(5μm)/接着剤(5μm)/PP(60μm)の厚みを変更し、PP(30μm)/接着剤(5μm)/Ny(0μm)/接着剤(5μm)/PP(60μm)からなる複合フィルムを使用した以外は実施例1と同じ操作を行った。( )内に各層の厚みを示した。
【0065】
実施例1〜11及び比較例1〜5の結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例1〜11の包装材料は、酸素バリヤー層と複合フィルムを接着剤を使用して1回のドライラミネートで接着して得たものであるが、比較例1、2及び4の包装材料は、酸素ガスバリヤー層又は酸化アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムに未延伸ポリプロピレンフィルム及びナイロンフィルムを接着剤を使用して2回以上のドライラミネートで接着して得たものである。比較例1、2及び4の包装材料は、実施例1〜11の包装材料よりも接着剤の溶剤に由来する残留溶剤を多く含むものであり、比較例1、2及び4の包装材料に充填されたかつお油漬はレトルト処理後に味が変化していた。
【0068】
また、本発明の(B−1)が設けられていない比較例1及び(B−2)が設けられていない比較例5の包装材料は、レトルト処理中にかつお油漬に接触しているポリプロピレン層の結晶構造がかつお油漬に含まれる食用油により破壊され、その結果、レトルト処理後の包装材料の水蒸気透過度が、実施例1〜11のレトルト処理後の包装材料よりも大きくなっている。本発明の(B−2)に位置する層が、SP値が9.5〜20の範囲にないポリエチレン層である比較例3の包装材料も、レトルト処理中にかつお油漬に接触しているポリプロピレン層の結晶構造がかつお油に含まれる食用油により破壊され、更に、かつお油漬に接触しているポリプロピレン層よりも外側のポリエチレン層及びポリプロピレン層にまでかつお油に含まれる食用油が浸透して、当該ポリエチレン層及びポリプロピレン層の結晶構造が破壊された結果、レトルト処理後の包装材料の水蒸気透過度が、実施例1〜11のレトルト処理後の包装材料よりも大きくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、高湿度条件でも優れた酸素ガスバリヤー性と耐水性を有し、食用油を多く含む食品を充填してレトルト処理、ボイル処理又は長期保存しても耐湿性が低下せず、残存有機溶剤量が小さい包装材料を安価に提供できる。本発明の包装材料は、酸素により劣化を受けやすい食品、飲料、薬品、電子部品等の包装に適したものであり、特に食用油を多く含む食品の包装に好ましく使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂層がコーティング法によって積層された酸素ガスバリヤー層(A)の一方の面と、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)が、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して得られる複合フィルム(B)の(B−1)面が接着された積層体からなることを特徴とする包装材料。
【請求項2】
酸素ガスバリヤー層(A)が、基材フィルム上に接着剤層、ポリカルボン酸系重合体層、多価金属化合物含有層の順に積層されているものであり、多価金属化合物含有層と(B−1)面が接着されていることを特徴とする請求項1に記載された包装材料。
【請求項3】
(B−1)、(B−2)及び(B−3)の総厚みに対する(B−1)の厚みが20〜60%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装材料。
【請求項4】
酸素ガスバリヤー層(A)と複合フィルム(B)がポリエステル樹脂又はポリウレタン樹脂を含む接着剤により接着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載された包装材料。
【請求項5】
SP値が9.5〜20の樹脂が、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニリデン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載された包装材料。
【請求項6】
基材フィルム上にポリカルボン酸系重合体を含む樹脂をコーティング法によって積層して酸素ガスバリヤー層(A)を得る工程、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−1)、SP値が9.5〜20の樹脂層(B−2)、ポリプロピレン系樹脂層又はポリエチレン系樹脂層(B−3)を、(B−1)、(B−2)、(B−3)の順に共押出して複合フィルム(B)を得る工程、酸素ガスバリヤー層(A)の一方の面と複合フィルム(B)の(B−1)面を接着する工程を実施して積層体を得ることを特徴とする請求項1に記載の包装材料の製造方法。

【公開番号】特開2008−68574(P2008−68574A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250976(P2006−250976)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】