説明

包装用フィルム、包装用袋、及び包装体

【課題】 密封性しても、余分な水蒸気を外部に放出でき、しかも、酸素バリア性が高く、内容物を長期保存を可能とし、さらに、包装作業時には内容物の冷却工程を省略することのできる包装用フィルム、包装用袋、及び包装体を提供する。
【解決手段】 基材、アンカーコート層、及び熱可塑性樹脂層からなり、前記基材が酸素バリア性かつ透湿性を有し、前記熱可塑性樹脂層が前記アンカーコート層とヒートシール性を有し、かつ、厚さ5μm〜100μmの前記熱可塑性樹脂層が、幅0.25〜5mm、ピッチ0.5mm〜10mmのストライプ状に形成してなり、かつまた、JIS K−0208に準拠した透湿度が100g/m2・day以上であり、JIS K−7126に準拠した酸素透過度が200cm3/m2・MPa・day以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用フィルムに関し、さらに詳しくは、酸素バリア性を有するが、透湿性も有し、包装体の内部に結露を生じない包装用フィルム、包装用袋、及び包装体に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PA」は「ポリアミド」、「LDPE」は「低密度ポリエチレン」、「LLDPE」は「直鎖状低密度ポリエチレン」、「PP」は「ポリプロピレン」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)従来、例えば飲食品、医薬品、化粧品、洗剤、化学品、雑貨品、その他等の種々の内容物を保管、輸送、販売され消費者に届き、消費されるまで、内容物の品質が維持されるように、包装されている。内容物を充填包装するために、プラスチック基材、紙基材、あるいは金属箔、その他等を使用し、これらを任意に積層して、種々の包装用材料が開発され、提案されている。これらの包装用材料は、通常、その最内層にヒートシール性(HS性ともいう)のシーラント層(HS層ともいう)を設け、当該シーラント層を対向させて重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールして、種々の形態の包装用袋が製造されている。しかしながら、水分活性の高い飲食品、医薬品等の内容物を包装すると、内容物自身から蒸散される水蒸気によって袋の内部表面で結露し、かび、酵母、細菌などの微生物が繁殖してしまうという欠点があった。
従って、水分活性の高い飲食品、医薬品等の内容物の包装用フィルムは、密封性できて、余分な水蒸気を外部に放出できて微生物の繁殖から保護し、しかも、酸素バリア性が高く、内容物の酸化劣化を防止して、長期保存を可能とし、さらに、包装作業時には内容物の冷却工程を省略することができ、内容物の外観、衛生性、品質保持性、生産性、コスト面に優れることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−205854号公報
【特許文献2】特開2006−282240号公報
【特許文献3】実公昭51−15682号公報
【特許文献4】特開2006−282240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術)従来、微生物、植物等の培養用培地の包装分野において、通常、滅菌した寒天培地を無菌状態で分注したシャーレをプラスチック製袋に収納して密封した状態で、生培地と称して市販されているものがある。上記の市販されている生培地の包装に使用するプラスチック製袋は、通常、基材フィルムである二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、シーラント層である未延伸ポリプロピレンフィルム、または、直鎖状ポリエチレンフィルムとを貼り合わせた積層フィルムから構成されている。例えば、従来の培養用培地の包装袋としては、延伸ポリプロピレンとポリエチレンの積層フィルムを使用したプラスチック製袋が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、プラスチック製袋では、例えば、寒天培地や青果物等を収納し、密封すると、内容物自身から蒸散される水蒸気や、寒天培地が固化する際に発生する水滴を外部に十分に放出することができず、袋の内面やシャーレの表面で結露を生じて腐敗するという問題点がある。
このようなことから、従来、シャーレの表面に結露を生じた寒天培地を使用する際、寒天培地を分注したシャーレをプラスチック製袋から取り出し、クリーンベンチ内にシャーレの蓋を開けた状態で寒天培地を分注したシャーレを放置して、乾燥させることが一般的に行われている。しかしながら、前者の包装形態では、クリーンベンチ内で乾燥中に、寒天培地を分注したシャーレに空気中に浮遊する微生物や塵等の異物が混入するおそれがあり、コンタミの原因となり、食品中の大腸菌等の細菌の有無を検出する検体数が多いと、シャーレの取り扱いに手間取り、作業効率が低下してしまい、また、長期間、結露を生じた状態で寒天培地を分注したシャーレを保管しておくと、腐敗してしまう可能性が高まるという問題点がある。
また、内容物と脱酸素剤を酸素バリア性を有するフィルムで包装し、袋内の酸素を除去することによって、カビの繁殖や、内容物の酸化劣化を防止する方法は以前から広く用いられており、特に、半生菓子のように、水分活性が高く、流通過程でカビが繁殖し易い食品を常温で長期間流通させるための手段として大きな成果を上げている。しかしながら、焼成直後に菓子やパンを一般的なフィルムで包装すると、袋内で結露が生じてしまい、内容物表面に結露水が付着して食感を低下させてしまうのみならず、脱酸素剤で繁殖を抑制することができない酵母が繁殖してしまうため、焼成後、包装する前に冷却工程を挟み込む必要があり、放冷時の細菌、異物による汚染を防止するための、クリーントンネル、冷風発生装置等の冷却設備、および、それら設備の運用に必要な、スペース、エネルギー、人件費等は企業にとって大きな負担となっているという欠点がある。
また、青果物の包装分野において、フィルムで作った包装袋に例えば青果物を個包装し、密封すると、それ自身から蒸散される水蒸気を外部に十分に放出することができないため、袋の内面で結露を生じてしまい、そのまま長時間保存しておくと、その部分から傷んでしまうという問題があった。このことから、袋を密封した状態で、袋内の結露水を袋外に排出することを可能にした、透湿性包装フィルム、透湿性包装用袋、及び透湿性包装体が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、透湿性包装体において、特に結露水の多い生培地包装体であっても、袋内の結露水を放出する効果が充分に得られているが、アンカーコート剤が剥き出しになっている部分のヒートシール性はアンカーコート剤のヒートシール性に依存しているため熱間シール性が極端に低く、袋内に内容物を収納した後、開口部をヒートシールにより密封する包装機においては、ヒートシール直後にアンカーコート剤剥き出しの部分同士のヒートシール部でシール抜けが生じ易く、虫や異物が入り込む隙間は生じないまでも、密封性を保証することは困難であった。
更に、酸素バリア性フィルムの殆どは水蒸気バリア性も高く、放湿フィルムとして用いることはできないが、一般的にバリア性ポリアミドフィルムと称される、MXDポリアミドフィルム、MXDポリアミド共押し出しポリアミドフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体共押し出しポリアミドフィルム、および、水蒸気バリア性が低いコート膜を有するコーティングタイプバリア性ポリアミドフィルムは、酸素バリア性を有しながら水蒸気バリア性が低いという性質をもつため、これらのフィルムに線状に熱可塑性樹脂を押し出しコートすれば酸素は通し難いが水蒸気は通すという、言わば選択透過膜からなり、かつ、ヒートシール性を有するため袋体を形成することができるフィルムを製造することが可能となる。しかし、前述の通り、熱可塑性樹脂を線状に押し出したフィルムは密封性を保証できないため、密封性が要求される、脱酸素剤を収納する袋体に用いることができなかった。
さらに、通気性袋として、内面に熱接着性膜を有する包材の両端縁の接合部の内面にフィルターテープ(滅菌紙)を熱接着してなる構造のものが知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、滅菌紙が通気性を有するため袋体に酸素バリア性が無く、脱酸素剤を収納する袋体に用いることができないという欠点がある。
さらにまた、本出願人も、透湿性基材フィルムの片側に、熱可塑性樹脂を直線状に多数平行に形成してなるフィルムであって、かつ、当該フィルムの40℃、90%RHでの水蒸気透過量が、100g/m2・24hr以上である透湿性包装用フィルム(特許文献4参照。)を出願している。しかしながら、酸素バリアー性、シール部のヒートシール性、開口部の構成やヒートシール性については記載も示唆もされていない。そこで、これらの課題を解消するために、本発明に至ったものである。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、水分活性の高い飲食品、医薬品等の内容物の包装用フィルムで、密封性を保証できて、余分な水蒸気を外部に放出できて微生物の繁殖から保護し、しかも、酸素バリア性が高く、内容物の酸化劣化を防止して、長期保存を可能とし、さらに、包装作業時には内容物の冷却工程を省略することができ、内容物の外観、衛生性、品質保持性、生産性、コスト面に優れる包装用フィルム、包装用袋、及び包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わる包装用フィルムは、基材、アンカーコート層、及び熱可塑性樹脂層からなる包装用フィルムにおいて、前記基材が酸素バリア性かつ透湿性を有し、前記熱可塑性樹脂層が前記アンカーコート層とヒートシール性を有し、かつ、厚さ5μm〜100μmの前記熱可塑性樹脂層が、幅0.25〜5mm、ピッチ0.5mm〜10mmのストライプ状に形成してなり、かつまた、JIS K−0208に準拠した透湿度が100g/m2・day以上であり、JIS K−7126に準拠した酸素透過度が200cm3/m2・MPa・day以下であるように、したものである。
請求項2の発明に係わる包装用袋は、請求項1に記載の包装用フィルムの熱可塑性樹脂層面を内側にして、3方シール袋製袋機を用いて製袋してなる1方が開口部の3方シール袋形態の包装用袋であって、前記開口部が前記熱可塑性樹脂層のストライプと平行であるように、したものである。
請求項3の発明に係わる包装体は、請求項2に記載の包装用袋の開口部から内容物と脱酸素剤を収納し、前記開口部をヒートシールしてなる包装体であって、かつ、前記開口部のヒートシール幅が前記熱可塑性樹脂層のストライプのピッチ以上であるように、したものである。
請求項4の発明に係わる包装体は、請求項3に記載の包装体の内容物が嫌気性菌用生培地であるように、したものである。
請求項5の発明に係わる100℃以下の食品又は医薬品の製造方法は、請求項3に記載の包装体の内容物が100℃以下の食品又は医薬品の製造方法であって、内容物が製造され、冷却工程を経ず、直ちに収納し、前記開口部をヒートシールするように、したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、水分活性の高い飲食品、医薬品等の内容物を本発明に係る包装用フィルムで、密封しても、余分な水蒸気を外部に放出できて微生物の繁殖から保護し、しかも、酸素バリア性が高く、内容物の酸化劣化を防止して、長期保存できる効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、より密封性に優れる効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、請求項1〜2の効果に加えて、内容物を収納後の開口部のヒートシールにおいても、密封性により優れる効果を奏する。
請求項4の本発明によれば、嫌気性菌用生培地でも微生物の繁殖から保護して長期保存できる効果を奏する。
請求項5の本発明によれば、内容物を製造直後に包装できるので、内容物の冷却工程を省略することができ、内容物の外観、衛生性、品質保持性、生産性、コスト面に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本願発明の1実施例を示す包装用フィルムの断面図である。
【図2】本願発明の包装用フィルムの製造工程の一部を示す説明図である。
【図3】本願発明の包装用袋の平面図である。
【図4】本願発明の包装体の平面図である。
【図5】図3のX−Xの拡大断面図である。
【図6】図4のY−Yの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(包装用フィルム)本願発明の包装用フィルム1は、図1に示すように、基材2、アンカーコート層11、及び熱可塑性樹脂層3からなる包装用フィルムにおいて、基材2が酸素バリア性かつ透湿性を有し、熱可塑性樹脂層3がアンカーコート層11とヒートシール性を有している。かつ、厚さ5μm〜100μmの前記熱可塑性樹脂層3が、幅0.25〜5mm、ピッチ0.5mm〜10mmのストライプ状に形成してある、即ち、熱可塑性樹脂を直線状に多数平行に形成してストライプ状とした層(以下、ストライプ熱可塑性樹脂層と呼称し、さらに、熱可塑性樹脂層がPEの場合にはストライプPEと呼称する)ストライプPEと呼称する)である。かつまた、JIS K−0208に準拠した透湿度が100g/m2・day以上であり、JIS K−7126に準拠した酸素透過度が200cm3/m2・MPa・day以下とする。
【0012】
(基材)基材2は水蒸気は透過することが必要であり、JIS K−0208に準拠した透湿度が100g/m2・MPa・day以上が必要である。透湿度が100g/m2・day未満であると、内容物自身から蒸散される余分な水蒸気を外部へ放出する量が不十分となるので好ましくない。基材2としては、具体的に、MXDポリアミドフィルム、MXDポリアミド共押し出しポリアミドフィルム、エチレンビニルアルコール共重合体共押し出しポリアミドフィルム、および、水蒸気バリア性が低いコート膜を有するコーティングタイプバリア性ポリアミドフィルムを好適に使用できる。尚、水蒸気バリア性が低いコート膜を有するコーティングタイプバリア性ポリアミドフィルムの製品名を具体的に列挙すると、現在日本国内で入手可能なものとして、「コーバリア」(興人株式会社製)、「ベセーラ」(株式会社クレハ製)、「クラリスタ」(株式会社クラレ製)、「HON」(ダイセルバリューコーティング株式会社製)等があるが、その他のフィルムは、使用に際して予めフィルムメーカーに透湿度を尋ねる必要がある。
【0013】
また、コーティングタイプバリア性ポリアミドフィルムであっても、水蒸気バリア性が高い、ポリ塩化ビニリデンコーティングポリアミドフィルム、金属酸化物蒸着ポリアミドフィルム、金属蒸着ポリアミドフィルム等は、本発明に用いることができない。上記の基材2の厚みは、15μm〜25μmのものしか市販されていないが、特に限定する必要はない。また、水蒸気バリア性が低いコート膜を有するコーティングタイプバリア性ポリアミドフィルムが開発されれば、それらを用いても構わない。
【0014】
(複数基材)特に図示しないが、透湿度100g/m2・MPa・day以上となるのであれば、前記の基材を複数枚貼りあわせてもよい。酸素バリア性を有する透湿性基材フィルムに透湿性フィルムを貼り合わせて基材2とすることもできる。貼り合わせ方法は、接着剤を用いたドライラミネーション、ウェットラミネーション等を好適に用いることができ、溶融樹脂による押出しラミネーションは、押し出した樹脂の膜が透湿度を低下させるため、用いることができない。ただし、直線状に、間欠的に溶融樹脂を押出して貼り合わせる場合は、その限りではない。
【0015】
(透湿性フィルム)透湿性フィルムとしては、紙、スパンボンド、孔空けフィルム等の通気性フィルムを始め、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸塩、N−メトキシ−6−ナイロン、ポオリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セロハン等の樹脂をフィルム化したシート、および、これらのシートに水蒸気バリア性が低いコート膜を設けたシートを使用できる。尚、酸素バリア性を有する透湿性基材フィルムの複層化に際しては、アンカーコート剤の接着性、内容物との相性等を勘案して、直線状の熱可塑性樹脂を設ける面を決定すべきである。例えば、通気性フィルム面に直線状の熱可塑性樹脂を設けると、接着剤の成分や残留溶剤が通気性フィルムを通して内容物にまで達してしまうため、食品包装には好ましくなく、また、プレーンセロハンフィルム面に直線状の熱可塑性樹脂を設けると、内容物から発した水分によって、アンカーコート剤が容易に剥離してしまうため好ましくない、等である。
【0016】
(印刷)また、本発明の包装用フィルム1には印刷を施すこともできる。基材2が単層の場合、熱可塑性樹脂面の反対面に表刷りして、内容物にインキの臭いなどが移らないようにすることができる。また、基材2が複層の場合、表側のフィルムが透明であれば、貼り合わせ面に印刷して裏刷りとすることができ、インキの脱落を防止できる。また、表側のフィルムが不透明な場合は表刷りとすれば良い。また、いずれの場合であっても、印刷を施さず、製品名その他の表示事項を印刷したラベルシールを貼付しても良い。
【0017】
(熱可塑性樹脂層)熱可塑性樹脂層3は、基材の片面に間欠的にストライプ状に形成することによって、酸素バリア性と透湿性とヒートシール性に優れる包装用袋10を製造することができる。熱可塑性樹脂層3としては、加熱によって溶融し相互に融着し得るヒートシール性を有し、押出機等により溶融押出して形成する樹脂であればよく、例えば、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、メタロセン触媒を利用して重合したエチレン・αオレフィンとの共重合体樹脂、エチレン・ポリプロピレン共重合体樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸共重合体樹脂、エチレン・アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン・マレイン酸共重合体樹脂、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体をグラフト重合、または、共重合した樹脂、無水マレイン酸をポリオレフィン樹脂にグラフト変性した樹脂等を一種ないしそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
(露出面積)包装用フィルム1において、ストライプ状の熱可塑性樹脂層3のストライプのない部分はアンカーコート層11が露出しており、その露出面積は、全体の10%〜80%の範囲内にあることが、袋内の内容物から蒸発した水蒸気が透湿するのに必要な透過量が得られると共に、包装用袋10に必要なシール強度が得られるので好ましい。基材2フィルムの露出面積が10%未満であると、袋内の内容物から蒸発した水蒸気が透湿するのに必要な透過量が得られないので好ましくなく、また、基材フィルムの露出面積が80%未満であると、包装用袋10に必要なシール強度が得られないため、好ましくない。ここで、基材2の露出面積が80%もある場合、熱可塑性樹脂層3の厚みを増やすことで、ヒートシール圧力を上げるか、ヒートシール温度を上げるか、時間を長くすることで、シールバーに挟まれた熱可塑性樹脂層3が潰れて広がり、ヒートシール性を有するアンカーコート剤と熱融着するので、使用可能なシール強度を得ることが可能となる。次に、包装用フィルム1において、所定の水蒸気透過量となるように、基材2のフィルム自体の透湿度と、熱可塑性樹脂層3自体の透湿度と、基材2のフィルムの露出面積とから直線状の熱可塑性樹脂層3の厚さと幅と間隔を必要に応じて任意に選定することが可能である。
【0019】
(ストライプの幅、ピッチ)具体的に、例えば、透湿度100g/m2・24hr以上とするためには、例えば、厚み25μmにおける水蒸気透過度が20g/(m2・24h)の熱可塑性樹脂層3と、水蒸気透過度、300g/m2・dayの基材2(厚み15μm)とを使用する場合、厚さ5μm〜100μm、幅、0.5mm〜3mmの直線状の熱可塑性樹脂を、平行に0.5mm〜10mmの間隔をあけて多数形成されることが好ましい。
【0020】
(ヒートシール強度)また、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装用フィルム1のヒートシール強度は、3N/15mm〜100N/15mmの範囲にあることが包装袋として使用するために必要なシール強度であり、6N/15mm〜60N/15mm程度が好ましい。
【0021】
(面積比)包装用フィルム1は、基材2の総面積に対して、直線状に多数平行に形成される熱可塑性樹脂層3の総面積の比率を調整することで、酸素バリア性を有する透湿性包装袋の水蒸気の透過量を制御することが可能である。包装用フィルム1の透湿性は、用途によって所定の範囲から適宜選択すればよい。具体的に、例えば、上記の酸素バリア性を有する基材2のフィルムの水蒸気透過度(透湿度と同義)、300g/(m2・24h)の片面に、上記の押出し熱可塑性樹脂として、厚み25μmのポリエチレン樹脂において水蒸気透過度、20g/(m2・24h)であるポリエチレン樹脂を用いて、厚み、50μm、線状押し出し巾、2mmを形成し、(1)線状押し出しポリエチレンの間隔が1mmの場合、水蒸気透過度、110g/m2・dayであり、(2)線状押し出しポリエチレンの間隔が2mmの場合、水蒸気透過度、160g/m2・dayであり、(3)線状押し出しポリエチレンの間隔が4mmの場合、水蒸気透過度、200g/m2・dayである。このことによって、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥しすぎるのを防ぐことができるという利点がある。
【0022】
(酸素バリアー性)また、基材2のフィルムの酸素透過度は、袋体の大きさ、内容物の保存期間、脱酸素剤の酸素吸収容量等にもよるが、200cm3/m2・MPa・day以下、好ましくは50cm3/m2・MPa・day以下である。また、熱可塑性樹脂層3の酸素バリア性は比較的低いので、包装用フィルム1への影響はほとんどなく、基材2に依存する。
【0023】
(アンカーコート層)本発明に係る包装用フィルム1において、基材2の熱可塑性樹脂層3の形成面側に、両者の密着性を向上させるために、ヒートシール性を有するアンカーコート層11を形成する必要がある。このことによって、熱可塑性樹脂層3の非形成部分に、アンカーコーティング剤の形成部分の表面が露出する部分においても、巻取後にブロッキングすることがなく、また、ヒートシール性があるため、袋体のヒートシール部の熱可塑性樹脂層3の非形成部分を密封できる。ヒートシール性を有するアンカーコート剤11としては、衛生面において問題なければ、特に限定されないが、具体的には、例えば、有機チタン系アンカーコート剤、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、ポリブタジェン系アンカーコート剤等を使用することができる。
【0024】
好ましくは、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤、および、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下になるように分散した水性分散液であって、かつ、その水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液からなるアンカーコート剤を使用することが好ましい。ポリアミドフィルムには吸水性があり、前記アンカーコート剤を使用した場合、ポリアミドフィルムが吸水した時にアンカーコート剤が剥離し、ヒートシール層が剥離してしまう現象が生じるため、一般的にはポリアミドフィルムにはヒートシール性の無い二液硬化型イソシアネート系アンカーコート剤を使用するが、本発明においては、フィルムの透湿度が高く、フィルムが水でずぶ濡れになることは殆どないため、前記アンカーコート剤でも問題なく使用することができる。そして、本発明においては、上記のようなアンカーコート剤を使用して、例えば、グラビアコート、ロールコート等の通常のコーティング法でコーティングしてプライマー層を形成することができる。また、そのコート量としては、0.1〜5g/m2位が好ましい。また、このような基材2の熱可塑性樹脂層3を形成する面側には、熱可塑性樹脂層3との接着力を高めるために、予め、コロナ放電処理、オゾン処理などの易接着処理を施してもよい。
【0025】
(ストライプ形成)次に、熱可塑性樹脂層3のストライプ形成方法について説明する。図2は、本発明に係る包装用フィルム1の製造工程の一部を示す概略図である。図2に示すように、基材2の片面に、熱可塑性合成樹脂3の溶融押出によって、直線状に多数平行に形成しストライプ状とする。包装用フィルム1は、基材2を冷却ロールに当接し、冷却ロールの上方に設置された押出機としてTダイ先端に取り付けた多数のノズルから溶融押出しされることによって形成される。多数のノズルは基材2フィルムの巻取りの供給方向と交差する方向に一列に多数設けられている。また、長く平行に延びた熱可塑性合成樹脂3のない部分は、基材2に塗布したアンカーコート剤が露出している。その後、巻取機により巻き取られ、包装用フィルム1が製造できる。
【0026】
(包装用袋)図3は、本発明に係る包装用袋10の外観平面図である。図3に示すように、包装用袋10は、包装用フィルム1を用い、当該熱可塑性樹脂層3の形成面が内側になるように開口部6を残して3方が閉じられた袋体を、縦シール部4、横シール部5共に、ヒートシールと冷却が同一張力の下で実施される、3方シール袋製袋機で形成された3方シール袋であって、かつ、前記開口部6は、開口辺と平行に前記直線状熱可塑性樹脂層3が形成されている。
【0027】
この熱可塑性樹脂層3は直線状に多数平行に形成してなるストライプ状のため、基材2の表面が一定間隔で露出して構成されているため、包装用袋10の内容物自身から蒸散される水蒸気によって包装用フィルム1の内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥しすぎるのを防ぐことができる。また、少なくとも横シール部5が、同一張力の下にヒートシールと冷却が連続的に実施される、3方シール袋製袋機で形成されているため、直線状に多数形成された熱可塑性樹脂層3の間の、アンカーコート剤が剥き出しになっている部分も、ヒートシール直後にヒートシールバーがフィルムから離れた瞬間のフィルムの収縮が殆ど無いまま冷却されることによって固定されるので、密閉可能である。
【0028】
この、直線状の熱可塑性樹脂層3と直交する方向のヒートシール部を、包装機で形成しようとすると、包装機では常に一定の張力をヒートシール部にかけることができないため、ヒートシールバーがフィルムから離れた瞬間の、フィルムがまだ高温の時にフィルムが収縮してしまうので、熱間シール性が低い、ヒートシール性を有するアンカーコート剤のヒートシール部が剥離してしまい、密閉することができない。即ち、横シール部5がヒートシールと冷却が連続的に実施する製袋機で行い、縦シール部4を内容物を収納後の密封(ヒートシール)する開口部6とすることで、横シール部5及び縦シール部4の両方を容易にヒートシールすることができて、密封性がよいのである。
【0029】
また、図3に示すように、本発明の包装用袋10は、開口部6において、開口辺と平行に前記直線状熱可塑性樹脂層3が形成されているので、包装機でヒートシールした時に、高温のヒートシールバーでフィルムが挟まれた狭い空間に、熱可塑性樹脂層3が溶けて流動し、広がって、熱可塑性樹脂層3同士のヒートシール部が形成されるため、密封性を保証することが可能となる。この際、図6に示したように、熱可塑性樹脂層3と平行に、直線状にエア噛み部8が、ヒートシール部に形成されるが、エア噛み部は熱可塑性樹脂層3に挟まれて存在するため、包装体となったときにもシール抜けは生じないで密封性に優れる。
【0030】
(開口部)上記の例示は、本発明にかかる袋体の例を例示したものであり、これによって本発明は限定されるものではなく、袋体の開口部6において、開口辺と平行に前記直線状熱可塑性樹脂層3が形成されていれば良い。開口辺とストライプの長さ方向が平行していればよい。また、3方シ−ル袋以外に、通常の製袋方法で良い形態として、2方シール袋、スタンドパックが該当し、ピロー袋であれば、天地シールと背シールを施した後、背シールと平行に袋体側端を化粧裁ちする。片ガゼット袋の場合、ガゼット側の反対の側端部を化粧裁ちする。要するに、横シール部5のヒートシールを製袋機で行えば、袋体の形状によらない。
【0031】
(包装体)図4は、本発明に係る包装用袋10に内容物を収納した状態(包装体20)の外観平面図である。図4に示すように、本発明に係る包装体20は、青菜、茸等の生鮮食料品、加工食品等の含水食品、微生物、植物等の培養用培地、医薬品等を内容物として収納することにより、内容物自身から蒸散される水蒸気によって包装用フィルム1の内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥しすぎるのを防ぐことが可能であり、内容物の衛生性、外観、フィルム強度、シール強度に優れるため、流通適性に優れ、内容物の保存・解凍・鮮度保持等の適性に優れ、更には電子レンジによる加熱調理の用途に用いることができる優れるものである。また、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、かまぼこ、ちくわ等の魚練り製品等の包装フィルムに用いられる、袋体内面の結露によるフィルムの曇りを防止するための防曇フィルムが不要となり、更に、焼成半生菓子、蒸し菓子、パン、等で製造直後の熱いままの製品を包装することが可能となり、放冷工程が不要になるので、冷却工程に要する設備、時間、スペースが不要になるのみならず、冷却工程における製品の二次汚染を防止することができ、かつ、製品表面の酵母の繁殖を防止できる。
【0032】
(効果)本発明によれば、次のような効果を奏することができる。本発明の包装用フィルム1は酸素バリア性かつ透湿性を有しており、酸素バリア性と放湿性能を両立させることができ、しかも、内容物を収納し密封性よく包装体とすることができる。また、包装用袋10を製造するに際し、当該熱可塑性樹脂層3の形成面が内側になるように開口部6を残して3方が閉じられた袋体を、縦シール部4、横シール部5共に、ヒートシールと冷却が同一張力の下で実施される、3方シール袋製袋機で形成された3方シール袋(包装用袋10)とし、かつ、前記開口部6は、開口辺と平行にストライプ状の熱可塑性樹脂層3が形成されているようにすることで、包装機上ではヒートシールでは密閉性を保証できないが、ストライプ状の熱可塑性樹脂層3と直交する方向のヒートシール部の密閉性を保証できるようになる。
【0033】
また、本発明の包装体20は、上記の包装用袋10の開口部6より、内容物と脱酸素剤を収納し、開口部6を熱シールしてヒートシール部を設け密封するに際し、当該ヒートシール部の幅を、少なくとも前記直線状熱可塑性樹脂層3の間隔以上とされていることにより、密封性を保証することができるので、内容物と脱酸素剤を共に収納することで、包装体20内部の無酸素状態を維持することができるため、内容物へのカビの繁殖、および、酸化劣化を防止しつつ、酵母の繁殖や、内容物が結露水によって変質することを防止できる。
【0034】
また、脱酸素剤が生培地中の酸素を吸収するため、嫌気性菌用生培地のように、酸素の存在下では発育ができないか、または、阻害される微生物を培養するための生培地の包装に好適である。
【0035】
また、製造した直後の熱い生菓子などを放熱させずに、すぐに包装できるため、冷却工程を省くことが可能となり、従って放冷時の細菌、異物による汚染を防止するための、クリーントンネル、冷風発生装置等の冷却設備、および、それら設備の運用に必要な、スペース、エネルギー、人件費等を省いた製造方法を提供できる。
【0036】
このように、本発明によれば、衛生性、生産性、コスト面に優れ、飲食品、医薬品、化粧品等の内容物の鮮度維持、保存性に優れた包装体を提供できるものである。また、飲食品、医薬品等の内容物を収納した状態で、電子レンジで加熱しても、横シール部の、ヒートシールによってアンカーコート剤と熱可塑性樹脂が熱融着した箇所でシール抜けが発生し、袋が破裂を起こさず、速やかに水蒸気が排出される優れるものである。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1)(1)基材2のフィルムとして、厚み15μmのエチレンビニルアルコール共重合体共押し出しポリアミドフィルム(商品名「スーパーニールE」、三菱樹脂株式会社製)を使用し、その片面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤を塗布した後、熱可塑性樹脂層3として、ポリエチレン樹脂(製品名「LC604」、日本ポリエチレン株式会社製)を用いて、Tダイの多数のノズルから、直線状に厚さ60μm、幅1mmを有し、ピッチ1.8mmでストライプ状に形成して、実施例1の包装用フィルム1を製造した。
(2)上記で得られた酸素バリア性を有する透湿性包装用フィルム1を製袋機に掛け、縦280mm、横360mm、ヒートシール幅10mmの、本発明に係る横取り三方シール袋(包装用袋10)を製造した。
(3)一方、内容物として、直径90mm、高さ14mmのポリスチレン製シャーレに普通寒天培地(栄研化学株式会社製)を調製、分注したものを用いた。
しかる後、内容物である上記の普通寒天培地を分注し、倒置したシャーレを10枚重ねた状態で、上記で得られた包装用袋10の開口部から脱酸素剤(製品名「エージレスFX100」、三菱瓦斯化学株式会社製)と共に収納し、しかる後、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装体(包装体20)を作製した。尚、前記三方シール袋に赤色浸透液(製品名「エージレスシールチェック」、三菱瓦斯化学株式会社製)を用いてヒートシール部のシール抜けの有無を確認したが、シール抜けは認められなかった。
(4)上記で得られた包装体を庫内温度約3℃の冷蔵庫中に2週間保存した。
その結果、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であった。
更に、袋内の酸素濃度を酸素濃度計(東レエンジニアリング株式会社製、機種名:LC−750F)で測定した結果、酸素濃度は0.01%以下であった。
また、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装体は、外部からの異物混入を防止し、衛生性、外観、フィルム強度、シール強度、生産性、コスト面に優れ、内容物である普通寒天培地の鮮度維持、保存性に優れるものであった。
【0039】
(比較例1)(1)基材2として、厚み15μmのエチレンビニルアルコール共重合体共押し出しポリアミドフィルム(製品名「スーパーニールE」、三菱樹脂株式会社製)を使用し、その片面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤を塗布した後、熱可塑性樹脂層3として、厚さ30μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(製品名「L4102」、東洋紡績株式会社製)を、厚さ15μmの溶融ポリエチレン樹脂で押し出しラミネートし、比較例1の包装用フィルムを得た。
上記で得られた酸素バリア性を有する包装用フィルムを製袋機に掛け、実施例1と同じ、縦280mm、横360mm、ヒートシール幅10mmの、比較例1の横取り三方シール袋を製造した。
(2)上記で得られた酸素バリア性を有する、比較例1の横取り三方シール袋に、実施例1と同じ普通寒天培地を分注し、倒置したシャーレを10枚と、脱酸素剤を袋の開口部から収納し、しかる後、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、比較例1の酸素バリア性を有する包装体を作製した。尚、前記三方シール袋に赤色浸透液(製品名「エージレスシールチェック」、三菱瓦斯化学株式会社製)を用いてヒートシール部のシール抜けの有無を確認したが、シール抜けは認められなかった。
(3)上記で得られた包装体を庫内温度約3℃の冷蔵庫中に2週間保存した。
その結果、袋内酸素濃度は、実施例1同様0.01%以下であったが、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面に結露した水が大量に袋内に溜まり、かつ、培地表面に水の膜が形成されていたため、そのまま使用することができず、袋からシャーレを取り出し、クリーンルーム内で一晩乾燥させないと使用できない状況であった。
【0040】
(実施例2)(1)実施例1で得られた、本発明に係る横取り三方シール袋(包装用袋10)に、焼きたてのクロワッサン6個と脱酸素剤(製品名「エージレスFX200」、三菱瓦斯化学株式会社製)とを収納した後、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装体(包装体20)を作製した。
上記で得られた包装体を30℃の恒温槽中で5日間保存した。
その結果、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、また、内容物が乾燥しすぎることなく、余分な水蒸気を外部に放出可能で、焼きたてのサクサク感を維持した状態であった。
この結果から、焼きたてパンの包装が可能であることが明らかとなり、通常の焼きたてパンの販売店において裸でお盆に載せて販売されているものを、包装した状態で販売できるため、本発明によって衛生性に優れる販売方法を提供できることが分かった。
【0041】
(比較例2)(1)厚さ40μm、折り径280mmのインフレーション製ポリプロピレンチューブにボトムシールを施した後、長さ360mmにカットして、比較例2の袋体を得た
(2)上記袋体に焼きたてのクロワッサン6個を収納し、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、比較例2の包装体を作製した。
上記で得られた包装体を30℃の恒温槽中で1日のみ保存したが、袋内に結露が生じ、クロワッサンもフニャフニャになってしまい、食感が著しく劣化していた。
【0042】
(実施例3)(1)基材2として、厚み15μm の水蒸気バリア性が低いコート膜を有するコーティングタイプバリア性ポリアミドフィルム(商品名「コーバリア」、興人株式会社製)を使用し、そのコーティング面にポリアミドフィルム(商品名「NAP22」、東洋紡績株式会社製)を2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせた後、そのポリアミドフィルム面に不飽和カルボン酸を0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂をその数平均粒子径が1μm以下になるように分散した水性分散液であって、かつ、その水性分散体中には不揮発性水性化助剤を実質的に含まないように形成された水性分散液からなるアンカーコート剤を塗布しアンカーコート層11を形成した後、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂(商品名「LC604」、日本ポリエチレン株式会社製)を用いて、Tダイの多数のノズルから、直線状に厚さ40μm、幅、1mmを有し、平行に1.1mm間隔で線状に形成して、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装用フィルム(包装用フィルム1)を製造した。
(2)上記で得られた酸素バリア性を有する透湿性包装用フィルムを製袋機に掛け、縦280mm、横360mm、ヒートシール幅10mmの、本発明に係る横取り三方シール袋(包装用袋10)を製造した。
(3)また、内容物として、市販のウインナーソーセージ(200g)を用い、上記で得られた本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装用袋の開口部から脱酸素剤(製品名「エージレスFX100」、三菱瓦斯化学株式会社製)と共に収納し、しかる後、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装体(包装体20)を作製した。尚、前記三方シール袋に赤色浸透液(製品名「エージレスシールチェック」、三菱瓦斯化学株式会社製)を用いてヒートシール部のシール抜けの有無を確認したが、シール抜けは認められなかった。
上記で得られた包装体を庫内温度約30℃の恒温槽に1週間保存した。
その結果、内容物自身から蒸散される水蒸気によってフィルムの内部表面で結露することなく、また、酵母の繁殖による異臭も発生しなかった。ただし、内容物の表面が乾燥しすぎてしまったが、ウインナーソーセージは元来勳煙食品であり、乾燥しているのが本来の姿であり、食味にも問題は無かった。
また、本発明に係る酸素バリア性を有する透湿性包装体は、外部からの異物混入を防止し、衛生性、外観、フィルム強度、シール強度、生産性、コスト面に優れ、内容物である畜肉製品の鮮度維持、保存性に優れるものであった。
【0043】
(比較例2)(1)厚さ15μmの透明蒸着ポリアミドフィルム(商品名「IB−ON−SC」、大日本印刷株式会社製)の蒸着面に2液硬化型ウレタン樹脂系アンカーコート剤を塗布し、当該面に厚さ15μmの溶融ポリエチレン樹脂を用いて厚さ35μmの防曇性直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(製品名「L140NC」、アイセロ化学株式会社製)を押し出しラミネートして、比較例3の酸素バリア性を有する包装用フィルムを得た。
(2)上記で得られた酸素バリア性を有する包装用フィルムを製袋機に掛け、実施例1と同じ、縦280mm、横360mm、ヒートシール幅10mmの、比較例3の横取り三方シール袋を製造した後、内容物として、実施例3と同じ市販のウインナーソーセージ(200g)を用い、上記で得られた比較例3の袋体の開口部から脱酸素剤(製品名「エージレスFX100」、三菱瓦斯化学株式会社製)と共に収納し、しかる後、インパルスシーラー(製品名「FA−450−5W」、富士インパルス株式会社製)を用いて袋開口部に5mm巾のヒートシールを施して密封し、比較例3の包装体を作製した。尚、前記三方シール袋に赤色浸透液(製品名「エージレスシールチェック」、三菱瓦斯化学株式会社製)を用いてヒートシール部のシール抜けの有無を確認したが、シール抜けは認められなかった。
上記で得られた包装体を庫内温度約30℃の恒温槽に1週間保存した。
その結果、防曇フィルムを使用しているため、フィルムの曇りは認められなかったが、結露した水が袋内に溜まっており、また、酵母の繁殖によって、アルコール臭その他の異臭が発生し、摂食には適さない状況であった。
【0044】
(実施例4)ストライプ状形成を厚さ30μm、幅2mmを有し、ピッチ3.0mmとする以外は実施例1と同様にして、実施例4の包装用フィルム1を得、実施例1と同様にして、包装用袋10及び包装体20を作成したが、実施例1と同様に問題はなく良好であった。
【0045】
(実施例5)ストライプ状形成を厚さ80μm、幅3mmを有し、ピッチ4.5mmとする以外は実施例1と同様にして、実施例4の包装用フィルム1を得、実施例1と同様にして、包装用袋10及び包装体20を作成したが、実施例1と同様に問題はなく良好であった。
【0046】
(測定方法)なお、透湿度(水蒸気バリア性)の測定法としてははJIS K−0208(g/m2・MPa・day)に準拠し、酸素バリア性はJIS K−7126のB法(cm3/m2・MPa・day)に準拠した。実施例及び比較例の層構成、透湿度(水蒸気バリア性)、酸素バリア性を表1に示す。
【0047】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0048】
(産業上の利用可能性)本発明の包装用フィルム、包装用袋、及び包装体の主なる用途としては、青菜、茸等の生鮮食料品、加工食品等の含水食品、微生物、植物等の培養用培地、医薬品等を内容物として収納することにより、内容物自身から蒸散される水蒸気によって包装用フィルム1の内部表面で結露することなく、余分な水蒸気を外部に放出可能であり、かつ、内容物が乾燥しすぎるのを防ぐことが可能であり、内容物の衛生性、外観、フィルム強度、シール強度に優れるため、流通適性に優れ、内容物の保存・解凍・鮮度保持等の適性に優れ、更には電子レンジによる加熱調理の用途に用いることができる優れるものである。また、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、かまぼこ、ちくわ等の魚練り製品等の包装フィルムに用いられる、袋体内面の結露によるフィルムの曇りを防止するための防曇フィルムが不要となり、更に、焼成半生菓子、蒸し菓子、パン、等で製造直後の熱いままの製品を包装することが可能となり、放冷工程が不要になるので、冷却工程に要する設備、時間、スペースが不要になるのみならず、冷却工程における製品の二次汚染を防止することができ、かつ、製品表面の酵母の繁殖を防止できるものである。しかしながら、酸素バリア性を有し、透湿性も必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1:包装用フィルム
2:基材
3:熱可塑性樹脂層
4:縦シール部
5:横シール部
6:開口部
7:包装機によるヒートシール部
8:エア咬み部
9:ノッチ
10:包装用袋
11:アンカーコート剤
12 コーティングロール
13:乾燥ゾーン
14:冷却ロール
15:ニップロール
16:Tダイ
17:巻取り
20:包装体
M:内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、アンカーコート層、及び熱可塑性樹脂層からなる包装用フィルムにおいて、前記基材が酸素バリア性かつ透湿性を有し、前記熱可塑性樹脂層が前記アンカーコート層とヒートシール性を有し、かつ、厚さ5μm〜100μmの前記熱可塑性樹脂層が、幅0.25〜5mm、ピッチ0.5mm〜10mmのストライプ状に形成してなり、かつまた、JIS K−0208に準拠した透湿度が100g/m2・day以上であり、JIS K−7126に準拠した酸素透過度が200cm3/m2・MPa・day以下であることを特徴とする酸素バリア性透湿性の包装用フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の包装用フィルムの熱可塑性樹脂層面を内側にして、3方シール袋製袋機を用いて製袋してなる1方が開口部の3方シール袋形態の包装用袋であって、前記開口部が前記熱可塑性樹脂層のストライプと平行であることを特徴とする包装用袋。
【請求項3】
請求項2に記載の包装用袋の開口部から内容物と脱酸素剤を収納し、前記開口部をヒートシールしてなる包装体であり、かつ、前記開口部のヒートシール幅が前記熱可塑性樹脂層のストライプのピッチ以上でることを特徴とする包装体。
【請求項4】
請求項3に記載の包装体の内容物が嫌気性菌用生培地であることを特徴とする包装体。
【請求項5】
請求項3に記載の包装体の内容物が100℃以下の食品又は医薬品の製造方法であって、内容物が製造され、冷却工程を経ず、直ちに収納し、前記開口部をヒートシールすることを特徴とする100℃以下の食品又は医薬品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−6084(P2011−6084A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149279(P2009−149279)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】