説明

包装用容器

【課題】蟹等の包装用容器として、前方上方から見易い斜め姿勢に保持して収納でき、陳列する際の見栄えがよく、しかも輸送時の振動等による魚介類の動きを規制できて並列状態を良好に保持できるようにする。
【解決手段】容器体10内の底部11上面に、収納される包装対象物Bを斜めに支持できる前下がりの傾斜受支面15aを有する支持用凸部15を、容器前側壁12との間及び各支持用凸部15,15間に包装対象物Bの前側部を収容するための間隔をあけて前後に並列して複数突設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として蟹等の甲殻類その他の魚介類の保存、出荷用に好適な発泡樹脂製の包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂製の容器は、軽量で断熱性や緩衝性に優れていることから、各種の魚介類の保存、出荷用に広く使用されており、例えば蟹の出荷用の包装にも使用されている。
【0003】
例えば、ボイルし冷却した蟹あるいは冷凍した蟹を包装用容器に収納して出荷する場合、高級食材のズワイガニの雄は、甲羅を含む胴体部分が比較的大きく、足も大きく張り出しいることから、1つの容器に1杯もしくは数杯の蟹を収納しているが、通称セコガニと呼ばれる雌蟹は、雄蟹に比べてかなり小さい(1/2程度)ことから、1つの包装用容器の中に、例えば5〜15杯の蟹を収納して保存、出荷され、輸送先の小売店等ではその容器に収納したままで陳列されることが多い。
【0004】
この場合、包装対象物の蟹は、容器内に前後左右に並べて収納されるが、容器内の平坦な底部上に載置されているだけであるため、輸送中の振動等によって収納されている蟹が動き易くて収納状態が乱れ易いものである。また、容器内に収納したままで店頭等に陳列した場合に前方上方から見難く不体裁であり、見栄えがしないものになる。
【0005】
従来より、大きい蟹を収納する場合の容器として、特許文献1のように、長い足が飛び出さないように工夫した発泡樹脂製の容器が提案されているが、あくまで長い足が容器外部にはみ出るのを防止するようにしたものであって、輸送時の振動等による動きを規制するものではなく、特に複数の蟹を並べて収納した場合の動き規制については考えられていない。
【0006】
また、蟹用の容器として、輸送時の振動による蟹の動きを規制するために、蟹の胴体部を上から押さえるようにした容器も提案されているが(特許文献2)、この場合も、比較的大きい蟹を収納する場合に、胴体部を上下から挟んで動きを規制するというものであって、複数の蟹を左右前後に並べて収納する場合の並列状態及び収納状態を外観的に体裁よく保持することについては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−272581号公報
【特許文献2】登録実用新案第3024453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消するためになしたものであり、包装対象の各種の魚介類、例えば蟹等の甲殻類を複数並べて収納する場合に、前方上方から見易い斜め姿勢に保持して収納でき、陳列する際の見栄えがよく、しかも輸送時の振動等による魚介類の動きを規制できて並列状態を良好に保持できる包装用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する本発明の包装用容器は、発泡樹脂製の平面矩形の容器であり、容器体内の底部上面に、収納される包装対象物を斜めに支持できる支持用凸部が、容器体の前側壁との間及び各支持用凸部間に包装対象物の前側部を収容するための間隔をあけて前後に並列して複数突設されてなることを特徴とする。前記支持用凸部は、包装対象物を斜めにして受支できる前下がりの傾斜受支面を有するものが好ましい。
【0010】
この包装用容器によれば、収納する包装対象物の後側部、例えば蟹の胴体部の後側部を各支持用凸部に載せ、該胴体部の前側端を前方の支持用凸部あるいは前側壁に当接させて並列して収納する。こうして収納された蟹等の各包装対象物は、それぞれ前端部が前側壁あるいは支持用凸部に当接することで前方への移動が規制され、かつ後側部が前記支持用凸部により受支されることで、後方への動きが規制されて、前下がりの斜め姿勢に保持される。特に、支持用凸部に有する前下がりの傾斜受支面で包装対象物の後部側を受支することで、該包装対象物を斜め姿勢を安定性よく良好に保持できる。そのため、輸送時の振動や外部衝撃等によっても容易に動かず、斜め姿勢で並列した収納状態に良好に保持される。
【0011】
前記の包装用容器において、前記支持用凸部は、容器体の前側壁との間及び各支持用凸部間の間隔が包装対象物の前後方向幅より小さく、該間隔内に包装対象物の前側部を収納した状態において包装対象物の後側部を前記支持用凸部の傾斜受支面で受支することで包装対象物を斜め姿勢に支持できるように設けられてなるものとするのが好ましい。これにより、包装対象物を斜め姿勢に保持して収納できる。
【0012】
前記の包装用容器において、容器体内部を左右部に二分した両側領域の幅方向中央部の底部上面に、それぞれ前記支持用凸部が前後に並列して複数突設され、両側領域にそれぞれ複数の包装対象物を並列して収納できるものとすることができる。この場合、包装対象物を左右両側領域にそれぞれ複数並列して収納できる。
【0013】
前記の包装用容器において、包装対象物が蟹であり、前記支持用凸部が蟹の胴体部の腹側を前記傾斜受支面で受支することにより、収納した蟹を斜めに支持するように設けられてなるものとすることができる。これにより蟹を見栄えよく収納できる。
【0014】
前記の包装用容器において、容器体の底部の周端部の所要の個所に水抜き孔が形成されてなるものが好ましく、さらに、側壁上端の開口端部には、外側が切欠されて内側に嵌合突縁が形成され、底部下面の周縁部には容器体の段積み時に下段の容器体の嵌合突縁が嵌合し得る嵌合溝が形成されてなるものとすることができる。これにより、包装対象物を収納した複数の容器体を安定性よく段積みできる。
【発明の効果】
【0015】
上記したように本発明の包装用容器によれば、包装対象の各種の魚介類、例えば蟹等の甲殻類を複数並べて収納する場合に、輸送時の振動等による魚介類の動きを規制できて並列して収納した状態を良好に保持でき、輸送先で蓋を開けたときの体裁もよく、しかも前方上方から見易い斜め姿勢に保持して収納できるため、包装対象物を収納した状態のままで陳列する際に前方からの見栄えがよく、内容物の確認も容易に行えることになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の包装用容器の1実施例を示す斜視図である。
【図2】同上の容器体の平面図である。
【図3】同上の容器体の底面図である。
【図4】図2のA1−A1線での断面図である。
【図5】図2のA2−A2線での断面図である。
【図6】包装対象物の蟹を収納した状態の容器体に蓋を被着する前の斜視図である。
【図7】包装対象物を収納して段積みした使用状態の断面図である。
【図8】同上の一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0018】
この実施例の包装用容器Aは、発泡ポリスチレン等の発泡樹脂を素材として成形されてなるもので、底部11と四方の側壁12,13とにより上方に開口する平面矩形の容器体10からなる。この容器体10は、これを単独で蓋なしの包装用容器Aとして使用することもできるが、通常、図6のように、該開口端部14に対し被着自在な蓋30と組み合わせた包装用容器Aとして使用され、さらに必要な場合には、図7のように、同形の複数の容器体10が段積み使用される。
【0019】
本発明の包装用容器Aにおける容器体10は、容器体内の底部11の上面11aに、収納される包装対象物Bを斜めに支持できる支持用凸部15、特に好ましくは、図のように上面側に前下がりの傾斜受支面15aを有する支持用凸部15が、容器体10の前側壁12との間及び各支持用凸部15,15間に、蟹等の包装対象物Bの前側部を収容するための間隔Sをあけて前後に並列して複数突設されている。
【0020】
前記支持用凸部15としては、包装対象物Bの主として後側部を支持できるものであれば、どのような形態のものであってもよいが、実施上は、図のように上面側に傾斜受支面15aを有し、該傾斜受支面15aにより包装対象物Bを斜め姿勢に安定性よく受支できるものが好ましい。
【0021】
前記支持用凸部15は、容器体10の平面形状や横幅寸法によっては、横幅方向の中央部に一列に設けておくこともできるが、図示する実施例の場合は、容器体内を左右部に二分した両側領域10a、10bの幅方向中央部の底部11の上面に、それぞれ前記支持用凸部15が前後に並列して複数突設され、両側領域10a、10bにそれぞれ複数の包装対象物Bを並列して収納できるように形成されている。
【0022】
このほか、図示していないが、容器体内を左右方向に3等分した三つの領域、あるいはそれ以上の複数の領域に区分して、各領域の幅方向中央部に前記同様の支持用凸部を前後に並列して突設しておき、包装対象物を3列以上の複数列に並列して収納し保持できるように形成して実施することもできる。各領域の支持用凸部は必ずしも左右方向に並列して配置する必要はない。
【0023】
いずれにしても、前記各支持用凸部15の間隔、すなわち最前部の支持用凸部15と前側壁12との間、及び各支持用凸部15,15間の各間隔Sは、包装対象物Bのサイズに応じて適宜設定されるが、通常、包装対象物Bの前後方向幅Wより小さく、該間隔S内に包装対象物Bの前側部を収納した状態において、包装対象物Bの後側部を前記支持用凸部15の例えば傾斜受支面15aで受支することにより、包装対象物Bを斜めに支持できるように設けられる。
【0024】
また、前記各支持用凸部15の傾斜受支面15aの傾斜角度や高さは、包装対象物Bの種類や大きさに応じて、前方上方から見栄えよく見える斜め姿勢に安定性よく保持できるように設定される。例えば、包装対象物Bがボイルし冷却した蟹の場合、15°〜45°の斜め姿勢に保持できるように前記傾斜受支面15aの傾斜角度や高さが設定される。また、前記支持用凸部15の大きさ、特に傾斜受支面15aの面積は、蟹の胴体部の後側部の腹側を安定性よく受支できるように設定される。また支持用凸部15の形状は、図のように平面四角形で頂部に丸みの付いた断面三角形状をなし、後面が左右方向に直線状をなしているものが好ましいが、包装対象物Bの形態によっては他の形状とすることも可能である。
【0025】
前記の包装用容器の容器体10において、側壁12,13上端の開口端部14には、図のように全周にわたって外側に切欠されることにより内側に嵌合突縁16が形成されており、これに対応して、底部11の下面11bの周縁部が切欠形成されるとともに、この切欠部17に、複数の容器体10の段積み時に下段の容器体10の嵌合突縁16が嵌合し得る嵌合溝18が形成されている。これにより、包装対象物Bを収納した複数の容器体10を、前記嵌合突縁16と嵌合溝18の嵌合構造により安定性よく段積みすることができるようになっている。符号19は前記嵌合突縁16の外側の切欠段部を示す。
【0026】
図中の符号20は前記容器体10の底部11の周端部、例えば前後両端部の所要の個所に形成された凹欠部21から前記嵌合溝18の一部に連通する水抜き孔である。この水抜き孔20は、図8に拡大して示すように、前記嵌合溝18の部分の一部に形成した凹部から、溝外周壁の一部に有する切欠部22を経て容器外部に連通するように形成されており、前記前記嵌合突縁16と嵌合溝18とが嵌合する段積み時にも、容器外部に水抜きできるようになっている。
【0027】
また、前記容器体10と組み合わせ使用される蓋30は、前記容器体10と同様の発泡樹脂を素材として成形され、容器体10の開口端部14に対する嵌合による被着構造として、蓋30の下面周縁部には、前記開口端部14に有する嵌合突縁16に対し嵌合する嵌合溝31が形成されている。図の場合、前記嵌合溝31の内側壁面には周方向の凸条32が形成され、他方、嵌合突縁16の内周面には前記凸条32に対応した周方向の凹条23が形成されており、前記嵌合溝21と嵌合突縁18との嵌合による蓋30の被着時に、前記凸条32と凹条23が弾力的に嵌合し係合することで、蓋30が容易に外れないようにして安定性のよい被着状態を保持できるようになっている。
【0028】
前記蓋20の上面における周縁部には、容器体10に蓋30を被着した状態で段積みする際に、容器体10の底部の切欠部17が嵌合する突縁33が設けられている。
【0029】
前記容器体10及び蓋30の構成材である発泡樹脂としては、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、スチレン改質ポリオレフィン系樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。中でも発泡倍率が10〜65倍のものが好適に用いられる。
【0030】
上記した実施例の包装用容器の使用状態について、包装対象物Bがボイル後に冷凍した蟹である場合を例にして説明する。
【0031】
包装対象物Bである蟹を収納する場合、図7の鎖線のように、蟹の胴体部の後側部を各支持用凸部15の傾斜受支面15aに載せて受支させるとともに、該胴体部の前側端を前方の支持用凸部15の背面あるいは前側壁12に当接させ、図6のように前後に並列させて収納する。こうして収納された各包装対象物Bの蟹は、それぞれ前側端が前側壁12あるいは支持用凸部15に当接することで前方への移動が規制され、かつ後側部が前記支持用凸部15の傾斜受支面15aにより受支されることで、後方への動きが規制されるとともに、前下がりの斜め姿勢に保持される。そのため、左右部の両側領域において、それぞれ収納した蟹を斜め姿勢にして前後に並列した状態に保持できる。しかも収納された蟹は拡がりを持った傾斜受支面15aで受支されるために傷みが生じることもない。なお、容器体10内には必要に応じて、蟹を収納した後、砕氷等の冷却材を入れて包装する。
【0032】
1つの容器体10を単独で使用する場合、そのまま上部開口を覆うように開口端部14に蓋30を嵌合し被着して出荷に供するが、通常は、図7のように複数の同形の容器体10を開口端部14の嵌合突縁16と底部11下面の嵌合溝18との嵌合構造により段積みし、最上段の容器体10に蓋30を被着して梱包し出荷する。
【0033】
この輸送において、前記のように、容器体10内に収納された蟹は動きが規制されて保持されているため、輸送時の振動や外部衝撃等によっても容易に動かず、斜め姿勢の並列状態を良好に保持で、輸送先で蓋30を開けたときの体裁もよく、しかも前方から見易い斜め姿勢に保持されているため、容器体10内に包装対象物Bを収納した状態のままで陳列する際に前方からの見栄えがよく、収納されている蟹等の確認も容易に行えることになる。
【0034】
本発明の包装用容器は、ボイルし冷却した蟹や冷凍した蟹のほか、アワビ等の平面的な拡がりを持った甲殻類その他の各種の魚介類を並列して斜め姿勢に保持して収納する場合に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0035】
10…容器体、10a、10b…両側領域、11…底部、11a…上面、12,13…側壁、14…開口端部、15…支持用凸部、15a…傾斜受支面、16…嵌合突縁、17…切欠部、18…嵌合溝、19…切欠段部、20…水抜き孔、21…凹欠部、22…切欠部、23…凹条、30…蓋、31…嵌合溝、32…凸条、33…突縁、A…包装用容器、B…包装対象物、S…間隔、W…包装対象物の前後方向幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製の平面矩形の容器であり、容器体内の底部上面に、収納される包装対象物を斜めに支持できる支持用凸部が、容器体の前側壁との間及び各支持用凸部間に包装対象物の前側部を収容するための間隔をあけて前後に並列して複数突設されてなることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記支持用凸部が、包装対象物を斜めにして受支できる前下がりの傾斜受支面を有するものである請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
前記支持用凸部は、容器体の前側壁との間及び各支持用凸部間の間隔が包装対象物の前後方向幅より小さく、該間隔内に包装対象物の前側部を収納した状態において包装対象物の後側部を前記支持用凸部の傾斜受支面で受支することで包装対象物を斜め姿勢に支持できるように設けられてなる請求項2に記載の包装用容器。
【請求項4】
容器体内部を左右部に二分した両側領域の幅方向中央部の底部上面に、それぞれ前記支持用凸部が前後に並列して複数突設され、両側領域にそれぞれ複数の包装対象物を並列して収納できることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の包装用容器。
【請求項5】
包装対象物が蟹であり、前記支持用凸部が蟹の胴体部の腹側を前記傾斜受支面で受支することにより、収納した蟹を斜めに支持するように設けられてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の包装用容器。
【請求項6】
容器体の底部の周端部の所要の個所に水抜き孔が形成されてなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の包装用容器。
【請求項7】
側壁上端の開口端部には、外側が切欠されて内側に嵌合突縁が形成され、底部下面の周縁部には容器体の段積み時に下段の容器体の嵌合突縁が嵌合し得る嵌合溝が形成されてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の包装用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−131528(P2012−131528A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284824(P2010−284824)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】(505471978)株式会社積水化成品山口 (4)
【Fターム(参考)】