説明

包装袋

【課題】本発明は、輸液などの液体の入ったバッグ等を自重によって充填することができる包装袋を提供することを目的とする。
【解決手段】輸液などの液体の入ったバッグ用の包装袋(20)であって、少なくとも、フィルム基材(1)とシーラントフィルム(2)とからなる積層体(10)により形成され、該シーラントフィルム(2)が2層以上の共押出し多層フィルムからなり、該共押出し多層フィルムの内容物側の下層(2c)にスリップ剤(3)が1〜500ppm、無機粒子からなるアンチブロッキング剤(4)が10,000〜20,000ppm、含有していて、該積層体(10)の腰強度が100〜300mN/15mm幅であることを特徴とする包装袋である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液などの液体の入ったバッグ用の包装袋に関するものであり、さらに詳しくは、輸液などの液体の入ったバッグ等を自重によって充填することができる包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、輸液などの液体の入ったバッグ用の包装袋においては、該内容物である輸液などの液体の入ったバッグを自重によって充填することができるように、該包装袋の内面側に滑り性を付与しているのが一般的である。
【0003】
通常、各種の内容物からなる商品を収納する包装袋は、内容物の保護性、保存性、流通適性等を考慮して、少なくとも、フィルム基材とシーラントフィルムからなる積層体により形成されている。このような積層体を構成している前記シーラントフィルムには、内容物を充填する際の充填包装適性、すなわち該袋の充填口の開口性を良くするために、適度の滑り性を付与している。具体的には、前記シーラントフィルムにスリップ剤を添加している。
【0004】
しかしながら、前記フィルム基材とのラミネーション後に、スリップ剤が接着剤或いは他の基材層等に経時的に移行してシーラント面表面におけるスリップ剤の濃度が低下するので、得られた積層体の滑り性、耐ブロッキング性が悪化して製袋工程、内容物の充填工程等でトラブルが発生するといった問題点があった。
【0005】
特に、ポリエーテル系のウレタン系接着剤を用いたドライラミネーションにおいては、この問題点が顕著に現れることが知られていた。これらの対策として、コーンスターチ等のパウダーをシーラント面に塗布して滑り性、耐ブロッキング性を付与することが行なわれている。しかし、この方法は、製造工程の増加、材料費のアップなどのためトータル包装コストのアップにつながるばかりでなく、該シーラント面表面に付着しているパウダーが内容物に混入するという問題があった。
【0006】
また、前記シーラントフィルムにスリップ剤を多く添加した場合は、該スリップ剤はブリードアウトして、フィルム表面に現れて機能を発揮するため、滑り性にバラツキが出易いという問題点もあった。
【0007】
このような問題点を解消するための方法が提案(例えば、特許文献1参照。)されている。すなわち、ラミネーション用シーラントフィルムを多層化し、且つそれぞれの表面層に異なる配合のスリップ剤とアンチブロッキング剤を使用することにより、滑り性、耐ブロッキング性の解決を図っている。しかし、このようなシーラントフィルムを用いて包装袋を作製することは、非常に製造工程が複雑になり実用的ではない。
【0008】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開平6−93250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、輸液などの液体の入ったバッグ等を自重によって充填することができる包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、輸液などの液体の入ったバッグ用の包装袋(20)であって、少なくとも、フィルム基材(1)とシーラントフィルム(2)とからなる積層体(10)により形成され、該シーラントフィルム(2)が2層以上の共押出し多層フィルムからなり、該共押出し多層フィルムの内容物側の下層(2c)にスリップ剤(3)が1〜500ppm、無機粒子からなるアンチブロッキング剤(4)が10,000〜20,000ppm、含有していて、該積層体(10)の腰強度が100〜300mN/15mm幅であることを特徴とする包装袋である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る包装袋は、少なくとも、フィルム基材とシーラントフィルムとからなる積層体により形成され、該シーラントフィルムが2層以上の共押出し多層フィルムからなり、該共押出しフィルムの内容物側の層にスリップ剤が1〜500ppm、無機粒子からなるアンチブロッキング剤が10,000〜20,000ppm、含有していて、該積層体の腰強度が100〜300mN/15mm幅であることにより、該袋内面の滑り性、耐ブロッキング性が向上し、内容物を充填する際の充填包装適性、すなわち該袋の充填口の開口性が良くなり、輸液などの液体の入ったバッグ等を自重によって充填することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明に係る包装袋を形成する積層体の層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る包装袋の1実施例を示す平面図であり、図3は本発明に係る包装袋を充填包装機に具備されたチャックにより掴む状態を示す平面図であり、図4は本発明に係る包装袋を開封し、内容物を充填する状態を示す平面図であり、図5は本発明に係る包装袋に内容物を充填した状態を示す平面図であり、図6は本発明に係る包装袋に内容物を充填した後、充填口をヒートシールした状態を示す平面図であり、図7は本発明に係る包装袋の充填口をヒートシール後、冷却し密封すると同時に引裂き開始部を設けた状態を示す平面図である。
【0014】
本発明に係る包装袋(20)は、図2に示すように、輸液などの液体状の内容物の入ったバッグ用の包装袋(20)であって、図1に示すように、少なくとも、フィルム基材(1)とシーラントフィルム(2)とからなる積層体(10)により形成され、該シーラントフィルム(2)が2層以上の共押出し多層フィルムからなり、該共押出し多層フィルムの内容物側の下層(2c)にスリップ剤(3)が1〜500ppm、無機粒子からなるアンチブロッキング剤(4)が10,000〜20,000ppm、含有していて、該積層体(10)の腰強度が100〜300mN/15mm幅であることを特徴とする包装袋である。
【0015】
前記フィルム基材(1)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムを用いることができる。
【0016】
ところで、本発明の包装袋(20)は、収納されている内容物を容易に取り出すことが
できるように、該包装袋(20)を構成する積層体(10)のフィルム基材(1)には、直線引き裂き性を有するフィルムを用いることが好ましい。
【0017】
該直線引裂き性を有するフィルムとは、一方向に延伸した一軸延伸フィルムや縦横の延伸倍率を変えた二軸延伸フィルムなどがあり、本発明の包装袋(20)では、直線引裂き性を有する二軸延伸フィルムが好ましい。
【0018】
一般的にプラスチックフィルムは、延伸フィルムと無延伸フィルムに大別されるが、延伸フィルムは、プラスチックフィルムを融点以下の温度に加熱しながら縦横二方向、或いはそのいずれか一方向に引き伸ばして配向させたフィルムであり、無延伸フィルムは延伸をしていない未延伸状態のフィルムで分子鎖の配向がなく分子運動が自由なため熱溶融による接着(熱シール)ができる。延伸によるフィルムの分子鎖は、一軸延伸では一方向に、二軸延伸では面方向に配向し、無延伸フィルムの物性改善が可能となる。また、延伸することにより、腰(剛度)、透明性、引張り強さ、収縮性は増加し、光沢、防湿性、バリア性は改善するが、伸び、引裂き強度は減少する。
【0019】
このような直線引裂き性を有するフィルムとしては、通常、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)や二軸延伸ポリアミドフィルム(ON)などが多用されている。直線引裂き性を有するフィルムは、フィルムの長手(縦)方向[MD(machine
direction、押し出し方向)方向]および幅(横)方向[TD(transverse direction)方向)の少なくとも、いずれかの方向に直線的に容易に引き裂かれ得る性能(易引き裂き性)を有している。
【0020】
前記直線引裂き性を有するフィルムである二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)は、例えば、重量平均分子量600〜4000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)の単位を5〜20重量%含有したポリブチレンテレフタレート(変性PBT)と、ポリエチレンテレフタレート(PET)とを、PET/変性PBT=70/30〜95/5(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を挙げることができる。
【0021】
前記ポリブチレンテレフタレート(変性PBT)は、PBTの重合工程においてPTMGを添加し、重縮合して得られるものであってもよいし、PBTとPTMGを押出機で溶融混練することによって得られるものであってもよい。
【0022】
該二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)の原料樹脂には、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどの他のポリマーを混合することができる。
【0023】
次に、前記直線引裂き性を有するフィルムである二軸延伸ポリアミドフィルム(ON)としては、例えば、脂肪族ポリアミド(PA)とポリメタキシレンアジパミド(MXD6)とを、PA/MXD6=80/20〜95/5(重量比)の割合で混合した原料を用いて製造された二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)を挙げることができる。
【0024】
具体的には、PAとしては、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン610(N610)、ナイロン12(N12)などの脂肪族ポリアミドが挙げられる。ホモポリマーの他、それぞれの単位を90モル%以上含有するコポリマーを含むものである。
【0025】
MXD6は、メタキシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応で生成する構造単位を90モル%以上含有したものであり、ホモポリマーまたは他の成分を10モル%以下含
有するコポリマーを含むものである。
【0026】
該二軸延伸ポリアミドフィルム(ON)は、例えば、PAとMXD6とを混合したものを使用し、冷却ドラムによる冷却後、40〜60℃の温水による浸水処理を施し、延伸温度150〜220℃で縦方向および横方向に延伸倍率3〜4倍として延伸することによって製造することができる。
【0027】
これらの直線引裂き性を有するフィルムの厚さは、強度、加工性(ラミネーション適性等)などを考慮すると、3〜200μmの範囲内であることが好ましく、6〜30μmの範囲内がより好ましい。
【0028】
次に、前記シーラントフィルム(2)としては、積層体(10)を熱融着によってシールするための最内層に構成されるフィルムである。そのようなシーラントフィルム(2)としては、従来からの公知の熱可塑性樹脂が使用できる。具体的には、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などからなるフィルムを使用することができるが、中でも強靭性、ヒートシール強度、夾雑物シール性、ホットタック性、耐ストレスクラック性、耐熱性、耐油性、耐臭気性などに優れる直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)が好ましい。
【0029】
しかし、本発明の包装袋(20)を形成する積層体(10)のシーラントフィルム(2)は、前述のように1層からなる単層フィルムよりも、2層以上の共押出し多層フィルムから構成されることが好ましい。例えば、図1に示すように、上層(2a)と、中層(2b)と、下層(2c)とが順次積層された3層等の複数層からなる共押出し多層フィルムである。
【0030】
さらに、該共押出し多層フィルムの内容物側の最内層である下層(2c)のみにスリップ剤(3)を1〜500ppmの範囲内で、無機粒子からなるアンチブロッキング剤(4)を10,000〜20,000ppm範囲内で、含有させる。
【0031】
前記スリップ剤(3)の添加量が1ppm未満の場合は、積層体の滑り性、耐ブロッキング性が不足し、逆に500ppmを超えると、滑り性が過剰になって、積層体の巻きズレが生じたり、ブリードしたスリップ剤によるフィルム搬送ロール等への白粉付着等、ラミネーション前の工程でのトラブルが発生するので好ましくない。
【0032】
また、内容物の充填時に機械にスリップ剤が付着し、それが溜まることでスリップ剤のぼた落ち等のトラブルも発生するので好ましくない。
【0033】
前記スリップ剤(3)には、例えば、ステアリン酸アミド、エルシン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド等のアミド系化合物など、もしくはこの混合物が挙げられる。また、前記アンチブロッキング剤(4)には、シリカ、ゼオライト、タルク等が挙げられる。
【0034】
前記共押出し多層フィルムの製造方法は、特に制限はなく、例えば、フラットダイ法(Tダイ法)多層押出し成形法、インフレーション多層押出し成形法等、多層ダイを用いて製造する方法である。
【0035】
これには、二つの方法があり、その一つは、複数の押出機から溶融樹脂をフィードブロック(複数の樹脂を合流させ、単層の流れにしてダイ内に供給するため押出機先端とダイの中間に取付ける部品)で層状に組合せ、その後、それを広幅化するための、通常の単層のフラットダイ(Tダイ)に送り込んで多層フィルムとして押出す、フィードブロック法である。
【0036】
他の一つは、マニホールド[樹脂の流量や圧力を均等にするため、フラットダイ内に設ける円筒状の空間(樹脂溜め部)]式多層ダイを用いる方法で、複数の溶融樹脂が1個のフラットダイ中の別々のマニホールドに送り込まれ、ダイリップの直前で合流、接合して多層フィルムとするマルチマニホールド法である。これはダイ内で合流して多層化する方法であるが、ダイリップを出た後で圧着し、多層化するダイ外法もある。また同じ方法がインフレーション法の多層フィルム成形にも利用される。
【0037】
次に、該シーラントフィルム(2)の厚さは、強度、加工性(ラミネ−ション、製袋などの)を考慮すると、15〜200μmの範囲内であることが好ましく、30〜90μmの範囲内がより好ましい。
【0038】
以上のような、前記シーラントフィルム(2)とフィルム基材(1)とをラミネーションする方法としては、例えば、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、ホットメルトラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチラミネーション方法などの公知の方法を適宜使用することができる。
【0039】
以上のようにして得られた積層体(10)を用いて包装袋(20)の充填包装適性をさらに向上させるために、該積層体(10)の腰強度を100〜300mN/15mm幅にすることが必要である。
【0040】
このように包装袋(20)に腰強度を付与するために、フィルム基材(1)とシーラントフィルム(2)との間に中間層(図示せず)を設けてもよく、通常、前記中間層は前記フィルム基材(1)と前記シーラントフィルム(2)だけでは該包装袋(20)としての機能を十分に果たすことができない場合などに設けられる。
【0041】
前記の機能としては、強度、機械的強靭性、耐屈曲性、耐突き刺し性、耐衝撃性、耐摩耗性、耐寒性、耐熱性、ガスバリア性、耐薬品性などであり、該包装袋(20)として要求されるこれらの機能を中間層として設けることで達成するものである。
【0042】
前記中間層を形成する材料は、包装袋(20)に求められる機能によって任意に選択される。前述の包装袋(20)に腰強度を付与する機能のみを求める場合は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムが挙げられるが、中でもナイロン−6/ナイロンMXD6(メタキシリレンジアミンとアジピン酸塩を主成分とするナイロン)/ナイロン6の共押出し延伸フィルムが好ましい。
【0043】
次に、本発明の包装袋(20)に収納する内容物によって、特に酸素ガス、水蒸気、光などに対する耐性や長期常温流通などが求められる場合には、前記中間層には、ガスバリア層(図示せず)を設ける必要がある。
【0044】
前記ガスバリア層には、ガスバリア樹脂フィルムやフィルム基材にガスバリア層を設けたガスバリアフィルムが用いられる。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ケン化物などのフィルム、或いはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルム、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着層、無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けたフィルムやまたこれらフィルムの1種乃至それ以上を組み合わせた積層フィルムを使用することができるが、これらの中でも、フィルム基材に易引き裂き性を有するアルミニウム箔、アルミニウム蒸着層、廃棄処分が容易な無機酸化物(酸化珪素、酸化アルミニウムなど)の蒸着薄膜層を設けたガスバリアフィルムが好ましいが、特に、近年の環境問題を考慮すると、使用後の廃棄処分が容易な前記無機酸化物を蒸着した無機酸化物蒸着フィルムがより好ましく多用されている。
【0045】
尚、前記積層体(10)は、上記の構成の他に印刷層(図示せず)を施したり、アンカーコーティング層(図示せず)などを含んでいてもよい。
【0046】
先ず、フィルム基材(1)への印刷を設ける場合、該フィルム基材(1)の印刷面は表裏どちらでも印刷可能であるが、一般的なプラスチックフィルム袋への印刷の場合と同様に、インキの耐摩擦性、耐候性などを考慮してフィルム基材(1)の内面に商品の販売促進効果を向上させるなどの理由で美麗な絵柄の印刷を設けることが好ましい。
【0047】
該印刷を施す印刷インキとしては、インキに色彩を与える顔料や染料などからなる色材と該色材を微細な粒子に分散・保持しつつ、被印刷体に固着させる樹脂と該樹脂を安定して溶解し、該顔料や染料などの分散性、インキの流動性を保持し、かつ印刷の版からインキの適正量を転移できる溶剤とから構成されるビヒクル、更に色材の分散性、発色性向上や沈殿防止、流動性の改良を目的に界面活性剤などからなる助剤から形成されているが、特に色材は、耐候性の良い顔料が好ましい。
【0048】
前記フィルム基材(1)に印刷を施す印刷方式は、該フィルム基材(1)に印刷できる印刷方式ならば、特に制約はないが、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内の印刷インキを該フィルムに転移させ、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高いグラビア印刷方式が好ましい。
【0049】
尚、該フィルム基材(1)に印刷する際、該フィルム基材(1)とインキとの密着性を向上させるため必要ならば、該フィルム基材(1)の印刷面にオゾン処理、コロナ処理などの前処理を施すか、更には、該フィルム基材(1)とインキとの密着性をより向上させるために、該フィルム基材(1)の印刷面にアンカーコート剤などをコーティングしてもよい。
【0050】
次に、前記包装袋(20)は、図2に示すように、2枚の積層体(10、10´)を内面側同士重ね合せて、左・右シール部(21、21)と下シール部(22)とをヒートシールし、上部の未シール部から内容物を充填した後、該未シール部をヒートシールして、上シール部(23)を形成し、内容物が収納された包装袋が完成する。
【0051】
次に、前記包装袋(20)を引き裂いて開封するための開封手段として、前記上シール部(23)の上部端縁左右の任意の位置に引き裂き開始部(24)を設けるか、または、左・右シール部(21、21)の上部端縁の任意の位置に設けることができる。これら任
意の位置に設けられた引き裂き開始部(24)の延長方向には、内容物取り出し口となる未シール部が位置している。
【0052】
前記引き裂き開始部(24)の形状と形成方法は、引き裂きが可能なきっかけの機能さえあれば、特に制約されないが、例えば、V字形状やU字形状等のノッチ、切れ目線、傷加工などをレーザー光線発振切断装置や切刃を組み込んだロータリーダイカッター装置などを製袋機などに組み込んで形成する方法が使用できる。
【0053】
次に、前記包装袋を用いて、内容物である輸液バッグを充填包装する工程について、図3〜7に基づいて詳細に説明する。
【0054】
先ず、図3に示すように、上シール部(23)が未シール状態の包装袋の上部両端の任意の箇所を充填包装機に具備されているチャック(25)によりつかむ。
【0055】
次に、図4に示すように、包装袋(20)の前面と後面に配置された吸盤(28、28)で該包装袋(20)の上部両端を開封後、該開口部にバッグ投入用治具(ホッパー)(26)を挿入し、該ホッパー(26)を介して、内容物である輸液入りのバッグ(27)を投入する。
【0056】
次に、図5に示すように、該包装袋(20)にバッグ(27)が充填される。引き続いて、図6に示すように、該包装袋(20)の未シール状態の上シール部(23)をヒートシール用バー(29)によりヒートシールする。
【0057】
さらに、図7に示すように、前記ヒートシールされた上シール部(23)を冷却バー(30)で冷却し、完全に密封すると同時に引き裂き開始部(24)を両端に入れて、輸液入りのバッグ(27)を収納した包装袋(20)が得られる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明の包装袋(20)について、具体的にいくつかの実施例を挙げて、さらに詳しく説明する。
【0059】
<実施例1>
本発明の包装袋を構成するフィルム基材としては、厚さ30μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムを使用し、該OPP裏面に押出ラミネーション法により、厚さ20μmの低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を介して、中間層である厚さ25μmの共押出し延伸ナイロンフィルム(ナイロン6/ナイロンMXD6/ナイロン6)を積層し、引き続いて、内容物側の最内層である下層のみにスリップ剤として、エルカ酸アミドを500ppm、アンチブロッキング剤として、シリカ粒子を10,000ppm添加した直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)を用いた厚さ50μmの3層共押出し多層フィルム[L−LDPE/L−LDPE/L−LDPE(エルカ酸アミド500ppm、シリカ粒子を10,000ppm含有)]をウレタン系接着剤の接着層を介して、ドライラミネーション方法により積層して、OPP30μm/LDPE20μm/共押出し延伸Nyフィルム25μm/接着剤/3層共押出し多層フィルム[L−LDPE/L−LDPE/L−LDPE(エルカ酸アミド500ppm、シリカ粒子を10,000ppm含有)]50μmからなる巻取状の積層体を作製した。この積層体を製袋機により、上シール部が未シール状態の包装袋を得た。
【0060】
<実施例2>
実施例1において、シリカ粒子の添加量を2,000ppmにした以外は実施例1と同様にして実施例2の包装袋を得た。
【0061】
<実施例3>
実施例1において、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルムの厚さを20μmにして、中間層と積層するための該OPP裏面に押出ラミネーション法により押出す低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)の厚さを15μmにした以外は実施例1と同様にして実施例3の包装袋を得た。
【0062】
(評価)
実施例1〜3で得た包装袋を用いて、各々の包装袋に輸液入りバッグを充填し、該充填性の評価と腰強度(mN/15mm)を測定した。充填性の評価基準は、次の通りである。○:輸液入りバッグが包装袋に支障なく充填された。×:輸液入りバッグが包装袋の途中で止まり充填不可だった。その評価結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

表1は、実施例1〜3で得た包装袋を用いて、各々の包装袋に輸液入りバッグを充填し、該充填性を評価した結果と腰強度の測定結果を記す。
【0064】
(評価結果)
実施例1は、シーラントフィルムにスリップ剤の添加量より、アンチブロッキング剤を多量に入れたこと、且つ3層構成とし滑りを必要とする面(充填内容物に接する面)の1層のみに入れることで、フィルムの滑り性を上げ、さらに積層体は、腰強度100mN/15mm以上とすることで、滑り性をさらに高め、自重による内容物充填を円滑に行なえる結果となった。実施例2は、アンチブロッキング剤の量が少ないので滑り性が不足し、内容物の充填性が悪かった。実施例3は、腰の強度が少し弱く充填性が悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る包装袋を形成する積層体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る包装袋の1実施例を示す平面図である。
【図3】本発明に係る包装袋を充填包装機に具備されたチャックにより掴む状態を示す平面図である。
【図4】本発明に係る包装袋を開封し、内容物を充填する状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る包装袋に内容物を充填した状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る包装袋に内容物を充填した後、充填口をヒートシールした状態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る包装袋の充填口をヒートシール後、冷却し密封すると同時に引裂き開始部を設けた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・フィルム基材
2・・・シーラントフィルム
2a・・・上層
2b・・・中層
2c・・・下層
10、10´・・・積層体
20・・・包装袋
21・・・左・右シール部
22・・・下シール部
23・・・上シール部
24・・・引き裂き開始部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸液などの液体の入ったバッグ用の包装袋であって、少なくとも、フィルム基材とシーラントフィルムとからなる積層体により形成され、該シーラントフィルムが2層以上の共押出し多層フィルムからなり、該共押出し多層フィルムの内容物側の下層にスリップ剤が1〜500ppm、無機粒子からなるアンチブロッキング剤が10,000〜20,000ppm、含有していて、該積層体の腰強度が100〜300mN/15mm幅であることを特徴とする包装袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254758(P2008−254758A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97166(P2007−97166)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】