包装装置
【課題】 ロール径に拘わらず、良好な包装状態を安定して得られる包装装置を提供する。
【解決手段】 巻出ローラ70に装着したフィルムロールFrからフィルムFの幅方向Xの両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムFを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムFの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムFで覆って包装する包装装置に関する。前記巻出ローラFrの角速度に相当する角速度を検出する検出器80と、前記巻出ローラ70を回転駆動させるモータ78と、前記検出器80で検出された巻出ローラ70の角速度に応じて前記モータ78の角速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】 巻出ローラ70に装着したフィルムロールFrからフィルムFの幅方向Xの両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムFを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムFの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムFで覆って包装する包装装置に関する。前記巻出ローラFrの角速度に相当する角速度を検出する検出器80と、前記巻出ローラ70を回転駆動させるモータ78と、前記検出器80で検出された巻出ローラ70の角速度に応じて前記モータ78の角速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装部に張設したストレッチフィルムに向って下方から被包装物を押し上げた後、フィルムで被包装物を包装する包装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の包装装置では、フィルムロールからフィルムの搬送方向に沿った両側縁部を上下一対の搬送ベルトで挟持して引き出す。引き出されたフィルムは被包装物の大きさに応じてカッタで切断された後、包装部まで搬送される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−128010(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図12は、従来のフィルムの引出方法を示す概略斜視図である。図12の二点鎖線で示すフィルムロールFrから、一対の搬送ベルト3,3により、フィルムFが引き出される。すなわち、フィルムFの幅方向Xの両側縁部Feを左右の搬送ベルト3,3が、それぞれ挟んで、該フィルムFを引き出し、引き出されたフィルムFは、所定の長さに切断された後、包装部Sに搬送されて包装に用いられる。
【0004】
かかる包装が繰り返されることでフィルムロールFrの径が小さくなる。ロール径が小さくなるのに対し、フィルムの引出速度は一定であるから、フィルムロールFrが装着された巻出ローラ70の角速度(回転速度)が徐々に速くなる。
【0005】
一方、前記巻出ローラ70は、図示しないモータによって回転駆動されることにより、フィルムFの引き出しを助長している。従来の包装装置では、前記モータは一定の角速度でフィルムロールFrを回転させるように設定されている。フィルムに弛みが生じないように、前記モータの角速度は、フィルムロールFrの径が最大時の角速度に合わせて設定されている。
【0006】
しかし、搬送ベルト3によって引き出されるフィルムFの速度は一定であるから、ロール径が小さくなるに従い、巻出ローラ70の角速度が大きくなるので、フィルムFにかかる負荷が大きくなる。フィルムFにかかる負荷が大きくなると、搬送ベルト3に挟持されたフィルムFが滑り易くなる。また、ロール径に応じて、フィルムFの負荷も変動するため、搬送ベルト3でのフィルムFの滑り具合も変化する。そのため、フィルム送りの精度が著しく低下する。したがって、良好な包装状態を安定して得ることが難しくなる。
【0007】
また、前述のように、ロール径が小さくなり、フィルムFにかかる負荷が大きくなると、図10に示すように、搬送ベルト3によって引き出されるフィルムFの両側縁部Feに伸びが生じ、フィルムFの先端の中央部Fcが歪み、フィルムの先端が搬送ベルト3から外れた状態になる(以下、「ネッキング」という)おそれがある。かかるネッキングが生じると、包装時において、フィルムの上流端と下流端とでは、搬送ベルト3からフィルムFが抜けるタイミングが異なり、良好な包装状態を得ることができなくなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ロール径に拘わらず、良好な包装状態を安定して得られる包装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の包装装置は、巻出ローラに装着したフィルムロールからフィルムの幅方向の両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、前記巻出ローラの角速度に相当する角速度を検出する検出器と、前記巻出ローラを回転駆動させるモータと、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度に応じて前記モータの角速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール径が大きい場合、フィルム引出時の巻出ローラの角速度は小さいので、モータの角速度も小さな値に設定される。一方、ロール径が小さい場合、フィルム引出時の巻出ローラの角速度は大きいので、モータの角速度も大きな値に設定される。そのため、ロール径が小さくなって巻出ローラの角速度が増大しても、フィルム引出時の搬送ベルトの負荷が増大するのを抑制できるから、フィルムの負荷が増大するのを抑制できる。したがって、フィルムの滑りや、いわゆるネッキングが生じにくくなるので、美しい包装の仕上り状態が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度よりも、前記モータの回転により与えられる巻出ローラの角速度の方が小さくなるように、前記制御手段が前記モータを制御するのが好ましい。
この態様によれば、フィルム引出時のフィルムの弛みを防止し得ると共に、フィルムの巻き込み等のトラブルを防止し得る。
【0012】
本発明において、前記モータの出力軸と前記巻出ローラとの間に介挿され、前記フィルムロールからフィルムが巻き出される方向に前記巻出ローラが回転するのを許容すると共に、前記巻出ローラが反対方向に回転するのを防止するワンウェイクラッチを更に備えているのが好ましい。
この態様によれば、搬送ベルトによるフィルムの引出速度と、モータによるフィルムの巻出速度との差を吸収し得る。
【0013】
本発明において、前記巻出ローラから前記ワンウェイクラッチまでの間に設けられた回転軸の角速度を前記検出器が検出するのが好ましい。
この態様によれば、回転軸の角速度を検出するのが容易となる。
【0014】
本発明において、前回の包装時における前記検出器による検出値に応じて、前記モータの今回の包装時の角速度を前記制御手段が制御するのが好ましい。
フィルムに伸びがあるため、リアルタイムな制御では、フィルム引出当初においてフィルムが伸び易いので、正確な角速度を検出できないから、ネッキングを十分に防止し得ない。これに対し、この態様では、かかる不具合が生じにくい。
【0015】
本発明において、前記検出器による検出値と所定の閾値とを比較し、この比較結果に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が複数段階に制御するのが好ましい。
この態様によれば、ロールの幅、フィルムの種類の変化等により生じる検出値のバラツキが生じても、モータの角速度を適正に制御することができる。
【0016】
本発明において、前記検出器による検出値に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が無段階に制御するのが好ましい。
この態様において、精密な検出を行えば、フィルム引出時のフィルムの張力のバラツキを小さくすることが可能となる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
以下の説明では被包装物の一例として内容物の収容されたトレーTを例示して説明するが、被包装物としては、トレーTに載せられていない商品であってもよい。
【0018】
まず、本包装装置の基本的な構造および動作について説明する。
図1に示すように、本包装装置は、被包装物を正面側2aから搬入して包装した後、正面側2aに排出する包装装置であって、正面2aには、コンベヤなどの供給装置20が設けてある。
【0019】
図2において、供給装置20は、内容物Mの載ったトレー(被包装物)Tをリフタ201上に供給する。リフタ201の各ポスト210は、包装機構200の包装ステーション(包装部)Sの直下に配置されていると共に、昇降手段208により上下昇降自在とされている。このリフタ201は、供給装置20からトレーTが供給されると、上昇してトレーTを包装ステーションSまで持ち上げる。
【0020】
一方、包装動作に先立ち、前記包装ステーションSには、張設状態のフィルムFが一対の搬送ベルト3,3によって供給されている。このフィルムFは、トレーTが押し上げられると、トレーTの上面に密着する。この状態で、フィルム折込み機構203は、図3の一対の左右折込板204,204と、後折込板205と、丸棒状の前折込部材206と、プッシャー207(図2)によって、フィルムFの前後左右の各側縁部を、トレーTの底面側に折り込んで包装すると共に、図2の熱溶着コンベヤ10上に包装済のトレーTを搬送する。熱溶着コンベヤ10は、底面に折り込まれたフィルムF同士を互いに溶着し、その後、トレーTが排出台209上に排出される。
なお、排出される包装済の商品Mには、ラベル貼付機12(図1)によってラベルが貼付される。
【0021】
フィルム供給機構:
図4の概略断面図に示すように、本装置の左右方向の両側には、フィルム渡し手段5および切断装置6からなるフィルム供給機構と、フィルムロールFrとが、それぞれ一対設けられている。前記左右のフィルム供給機構のうち、いずれか一方のフィルム供給機構が選択されてフィルムFが、搬送ベルト(供給手段)3,3により包装ステーションSに供給される。
【0022】
フィルム渡し手段5は、フィルムロールFrから引き出されたフィルムFを前記搬送ベルト3,3に受け渡す。搬送ベルト3,3は、フィルムFの搬送方向Yに沿った図3の両側縁部Feを挟持し、該フィルムFを図4の包装ステーションSに向って引き出す。
切断装置6は、フィルムFが搬送ベルト3,3により所定量だけ引き出された後に、フィルム渡し手段5と搬送ベルト3,3との間においてフィルムFを切断する。
なお、前記フィルム供給機構は概ね左右対称に構成されており、以下の説明では主に右側の部分について説明する。
【0023】
図5に示すように、前記フィルム渡し手段5は、一対のフィルム差込板51,52と、フィルム差込板51に支持される複数のワンウェイローラ53とを備えている。
図5はフィルム差込板51,52を側面側から描いたものである。図5に示す前記フィルム差込板51,52は、搬送ベルト3,3に渡すフィルムFの先端側を挟み付け、図5の破線で示す進入端位置P2と実線で示す退避端位置P1の間を上下に移動する。フィルム差込板51,52は、前記進入端位置P2において、搬送ベルト3,3にフィルムの先端部F2を差し渡す。
【0024】
なお、ワンウェイローラ53は、フィルム差込板51,52に挟まれたフィルムFが下方に抜け落ちないようにフィルムFの表面に接触していると共に、一方向にのみ回転可能となっていることで、フィルムFの引き出しを許容する。
【0025】
図6および図7は、フィルムFの供給および切断動作を示す概略正面図である。
図6(a)に示すように、切断装置6は、カッタ61とチョッピングベース62とを備えている。カッタ61は、押え板63,63と、カッタ刃64とを備えている。図7(b)に示すように、押え板63,63が、略「コ」字状のチョッピングベース62との間にフィルムFを挟持した後、カッタ刃64によりフィルムFが切断される。
【0026】
図6(a)に示すように、前記搬送ベルト3,3は、それぞれ一組の下駆動ベルト31、上従動ベルト32および導入ベルト33を備えている。前記導入ベルト33は上従動ベルト32の上流端部に設けられており、破線および実線で示すように開閉駆動する。すなわち、導入ベルト33は、フィルム渡し手段5によって下方から送られてくるフィルムFを下駆動ベルト31の上流端部34との間で挟持して、このフィルムFを下駆動ベルト31と上従動ベルト32との間へと導く。
【0027】
巻出装置7:
図4において、前記フィルムロールFrは巻出装置7によって、以下に説明するように引出可能となっている。巻出装置7は、前記フィルムFの引出時において該フィルムロールFrの回転を助長するための装置であり、左右に一対設けられている。以下の説明では右側の巻出装置7について例示して説明する。
【0028】
図8に示すように、前記巻出装置7は、フィルムロールFrが装填される巻出ローラ70を巻出方向(フィルムが巻き出される方向)に回転させるものであり、駆動軸(中心線のみを一点鎖線で図示)74およびモータ78を備えている。前記巻出ローラ70と回転軸74との間や、回転軸74とモータ78の出力軸75との間には、それぞれベルト72,77が架け渡されており、前記モータ78の出力軸75の回転により回転軸74を介して巻出ローラ70が回転される。
【0029】
前記回転軸74にはブレーキ85およびワンウェイクラッチ86が設けられている。
前記ワンウェイクラッチ86は、たとえば、ラチェットを用いたフリーホイールからなり、回転軸74の巻出方向のみの回転を巻出ローラ70に伝える。ワンウェイクラッチ86は、フィルムFがフィルムロールFrから引き出される方向に巻出ローラ70が回転するのを許容すると共に、巻出ローラ70が反対方向に回転するのを防止するように設定されている。
【0030】
回転軸74には該回転軸74の回転を検出する角速度検出器80が設けられている。角速度検出器80は、たとえば、ロータリーエンコーダ等により構成されている。ロータリーエンコーダは、たとえば、スリット付きの円板の回転を光学的に検出することにより、当該スリットを検出したパルス数に基づいた検出信号を送信するものである。
【0031】
なお、ワンウェイクラッチ86により、搬送ベルト3のフィルムFの引出速度と、モータ78によるフィルムFの巻出速度との差が吸収されるため、角速度検出器80は、巻出ローラ70からワンウェイクラッチ86までの間に設けるのが好ましい。
【0032】
前記ブレーキ85は、たとえば電磁ブレーキからなり、前記巻出ローラ70が慣性で回転するのを防止する。
【0033】
図9(a)に示すように、本装置はマイクロコンピュータ(マイコン:制御手段)40を備えている。マイコン40には、角速度検出器80や、種々の駆動回路81,82i 等が図示しないインターフェイスを介して接続されている。駆動回路81には、前記モータ78が接続されている。他の駆動回路82i には、たとえば、搬送ベルト3やリフタ201、各折込板204,205などを駆動する他のモータ83i 等が、それぞれ接続されている。
【0034】
角速度検出器80は、図8の回転軸74の回転を検出した検出信号をマイコン40に送信する。マイコン40は、当該検出信号に基づき、回転軸74の角速度αを算出する。マイコン40は、後述するように、回転軸74の角速度αに基づき、モータ78の角速度βの制御を行う。
【0035】
図9(a)のマイコン40は、CPU40aおよびメモリ40bを備えている。メモリ40bには、閾値記憶部40cおよび角速度記憶部40dが設けられている。
閾値記憶部40cには第1および第2閾値SL1,SL2などの閾値が予め記憶されている。
図9(b)に示すように、角速度記憶部40dには、前記閾値SL1,SL2に対する回転軸74の角速度αの範囲とモータ78の角速度β1〜β3とがそれぞれ関連付けられて予め記憶されている。
【0036】
フィルムの供給方法:
つぎに、フィルムFの供給方法について説明する。
フィルムFがセットされた後、図5のフィルム渡し手段5によってフィルムFの引き出しが行われる。
すなわち、図6(a)のフィルム渡し手段5が退避端位置P1から、図6(b)に示す進入端位置P2まで上昇し、導入ベルト33と上流端部34との間にフィルムFの先端部F2を差し入れる。
【0037】
前記差し入れ後、図7(a)に示すように、導入ベルト33が閉じて、下駆動ベルト31と導入ベルト33との間にフィルムFの先端部F2(図6)が挟み付けられる。これにより、フィルムFが前記各ベルト31,32,33によってフィルムロールFrから所定の長さ(フィルム長に近く、該フィルム長よりも若干短い長さ)だけ引き出される。一方、フィルム渡し手段5は、退避端位置P1まで下降して停止する。
【0038】
その後、図7(b)に示す押え板63,63が、チョッピングベース62の上下の突出部との間にフィルムFを挟持した後、カッタ刃64が前進することにより、フィルムFが切断される。
【0039】
前記切断後、図4の搬送ベルト3,3によって、切断されたフィルムFの搬送が行われ、当該切断されたフィルムFが図3の包装ステーションSの所定の位置まで搬送される。
前記搬送後、フィルムFが包装ステーションSに張設され、トレーTの包装が開始される。
【0040】
ここで、前記フィルムFの引出時において、角速度検出器80から検出信号がマイコン40に送信される。マイコン40は、当該検出信号に基づき、回転軸74の角速度αを算出する。
マイコン40は、閾値記憶部40cから第1および第2閾値SH1,SH2を読み出し、回転軸74の角速度αとの比較を行う。なお、第1および第2閾値SH1,SH2は、第1閾値SH1<第2閾値SH2の関係に設定されている。
【0041】
前記比較の結果、図9(b)に示すように、回転軸74の角速度αが第1閾値SH1よりも小さい場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「大」であると判別して、モータ78の角速度を小さい第1角速度β1に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
回転軸74の角速度αが第1閾値SH1以上、かつ、第2閾値SH2よりも小さい場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「中」であると判別して、モータ78の角速度を前記第1角速度β1よりも大きい中程度の第2角速度β2に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
回転軸74の角速度αが第2閾値SH1以上の場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「小」であると判別して、モータ78の角速度を前記第2角速度β2よりも大きい第3角速度β3に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
【0042】
このように、巻出ローラ70の角速度に対応する回転軸74の角速度に応じて、モータ78の角速度βが変更される。そのため、フィルムロールFrの径が小さくなって巻出ローラ70の角速度が増大しても、フィルム引出時の搬送ベルト3の負荷が増大するのを抑制できるから、フィルムの伸びが増大するのを抑制できる。したがって、搬送ベルト3でのフィルムFの滑りや、いわゆるネッキングが生じにくくなるので、美しい仕上り状態が期待できる。
【0043】
ここで、モータ78の回転により与えられる巻出ローラ70の角速度は、角速度検出器80で間接的に検出された巻出ローラ70の角速度よりも常に小さくなるように制御される。その際、巻出ローラ70の角速度がモータ78の角速度を越えているので、その速度差に相当する分だけ、ワンウェイクラッチ86が空回りする。
したがって、フィルム引出時のフィルムの弛みを防止し得ると共に、フィルムFの巻き込み等のトラブルを防止し得る。
【0044】
フィルムロールFrのセット:
ところで、トレーサイズ等に応じて、フィルムロールFrを交換する場合がある。フィルムロールFrの交換を繰り返すと、途中まで使用したフィルムロールFrが再びセットされる場合が生じる。そのため、本装置では、フィルムロールFrのセット時に、フィルムロールFrの径を求めることにより、当該ロール径に応じて、初回のフィルム搬送時におけるモータ78の角速度βの設定を行っている。
【0045】
フィルムロールFrの交換時において、作業者が、図8に示すフィルムロールFrを巻出ローラ70にセットすると、フィルムローディングが行われ、図4に示すフィルム渡し手段5によりフィルムロールFrからフィルムFが引き出されて、巻出ローラ70が回転され、フィルムFが搬送ベルト3にセットされる。
【0046】
前記フィルム引出当初時において、図8の巻出ローラ70の回転に伴い、回転軸74が回転される。前記角速度検出器80が回転軸74の回転を検出した検出信号をマイコン40に送信する。マイコン40は、当該検出信号に基づき、フィルムロールFrの径を判別する。具体的には、角速度検出器(ロータリーエンコーダ)80のカウント数と、当該カウント数を検出した時間(サンプリングタイム)などに基づき、ロール径の判別を行う。
【0047】
マイコン40は、閾値記憶部40cから所定の閾値を読み出し、当該閾値と角速度αとを比較することにより、実質的にロール径の判別を行いモータ78の角速度βを、前記角速度αに対応する第1〜第3角速度β1〜β3の何れかの速度に設定し、初回の包装動作を行う。
【0048】
なお、前述の実施例では、ロール径つまり回転軸74の角速度を大・中・小の3種類に判別することとしたが、2種類であってもよいし、4種類以上から無段階であってもよい。
【0049】
また、モータ78に別のロータリーエンコーダなどからなる検出器を設け、モータ78の角速度βによる巻出量と回転軸74の角速度αによる巻出量とを比較することにより、モータ78の角速度βの制御を行ってもよい。たとえば、モータ78の角速度βによる巻出量が回転軸74の角速度αによる巻出量以下になるように、かつ、当該回転軸74の角速度αに近づけるように制御して、ワンウェイクラッチ86における滑りが小さくなるようにしてもよい。
【0050】
切断装置6:
ところで、フィルムFの切断は、搬送ベルト3がフィルムFを所定距離搬送した後、搬送ベルト3が停止し、切断が開始される。しかし、搬送ベルト3が急停止されると、フィルムFが慣性により若干回転し、図8の二点鎖線に示すように、搬送ベルト3からフィルムロールFrまでの間にフィルムFが弛んだ状態となる。
【0051】
従来の包装装置では、このようなフィルムFが弛んだ状態で切断を行うため、フィルムFのカットラインを直線状に切断できない不具合が生じていた。特に、包装時の皺を無くすためにフィルムFの張りを大きくしたり、特殊なフィルムを用いてフィルムを幅方向に大きく伸ばして用いる場合などには、フィルムFのカットラインからフィルムFが裂けるおそれがある。
【0052】
そこで、本包装装置では、フィルムFのカットラインを直線状にするために、以下の機構を備えている。
図10に示すように、切断装置6は、カッタ61とチョッピングベース62とを備えている。切断装置6は、チョッピングベース62に当接してフィルムFを切断する。
【0053】
カッタ61は、その上下に押え板63,63を備えている。下側の押え板63の先端には、チョッピングベース62との間でフィルムFを押える下押え部63aが形成されている。一方、上側の押え板63の先端には、チョッピングベース62との間でフィルムFを押える上押え部63bが形成されている。該上押え部63bの上部にはフィルムFをチョッピングベース62側に押す突出部63cが突設されている。
【0054】
図11は、フィルムFの切断方法を示している。
図11(a)に示すように、押え板63、63およびカッタ61がチョッピングベース62に向って移動を開始する。
その後、図11(b)に示すように、まず、下側の押え板63の先端の下押え部63aがフィルムFをチョッピングベース62との間に挟み固定する。この際、突出部63cがフィルムFをチョッピングベース62の方向に押しながら、下押え部63aがチョッピングベース62との間にフィルムFを挟み付ける。
【0055】
前記固定後、図11(c)に示すように、上側の押え板63の上押え部63bがチョッピングベース62との間にフィルムFを挟む。
【0056】
ここで、フィルムFの下方はチョッピングベース62と下押え部63aとによって挟持されて固定されているので、突出部63cがフィルムFをチョッピングベース62の方向に向って押すことにより、下押え部63aと上押え部63bとの間でフィルムFが張設される。
前記張設後、図11(d)に示すように、カッタ61が前進してフィルムFを切断する。
【0057】
このように、切断時において、カッタ61の上流および下流を、上押え部63bおよび下押え部63aが挟む。フィルムFを切断する前に、両押え部63a,63bによってフィルムFを厚さ方向に押し付けると共に、突出部63cによってフィルムFをチョッピングベース62側に向って押すことにより、フィルムFに張力を与える。これにより、搬送ベルト3とフィルムロールFrとの間のフィルムFには弛みがなくなり、該フィルムFに張力がかかった状態でフィルムFのカットを行うことができる。そのため、フィルムFのカットラインを直線状にすることができる。
【0058】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ワンウェイクラッチおよびブレーキは、巻出ローラの同軸上に設けてもよい。
また、ワンウェイクラッチは、一定の方向のみの回転を許容するものであればよく、ラチェット式の他に、たとえば、ボールを利用したフリーホイールなどであってもよい。
また、本発明は上記特願平11−137025号のように、フィルムに突き上げたトレーの上端部分をヒータローラで加熱溶着しつつ溶断するような、いわゆるトップシール式の包装装置にも適用し得る。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、フィルムロールから引き出したフィルムを用いて被包装物を包装する包装装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例にかかる包装装置の概略斜視図である。
【図2】包装機構を示す概略側面図である。
【図3】フィルムの折り込み動作を示す斜視図である。
【図4】フィルムの供給機構を示す概略断面図である。
【図5】フィルムの渡し手段を示す概略側面図である。
【図6】フィルムの渡し動作を示す概略正面図である。
【図7】フィルムの切断動作を示す概略正面図である。
【図8】巻出装置を示す概略斜視図である。
【図9】本装置の概略構成図である。
【図10】フィルムの他の切断装置を示す概略側面図である。
【図11】フィルムの他の切断方法を示す概略側面図である。
【図12】従来のフィルムの巻出方法により生じる問題を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
3:搬送ベルト
40:マイコン(制御手段)
70:巻出ローラ
78:モータ
80:角速度検出器
86:ワンウェイクラッチ
208:昇降手段(エレベータ機構)
Fr:フィルムロール
S:包装ステーション(包装部)
SL1:第1閾値
SL2:第2閾値
T:トレー
X:幅方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装部に張設したストレッチフィルムに向って下方から被包装物を押し上げた後、フィルムで被包装物を包装する包装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の包装装置では、フィルムロールからフィルムの搬送方向に沿った両側縁部を上下一対の搬送ベルトで挟持して引き出す。引き出されたフィルムは被包装物の大きさに応じてカッタで切断された後、包装部まで搬送される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−128010(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図12は、従来のフィルムの引出方法を示す概略斜視図である。図12の二点鎖線で示すフィルムロールFrから、一対の搬送ベルト3,3により、フィルムFが引き出される。すなわち、フィルムFの幅方向Xの両側縁部Feを左右の搬送ベルト3,3が、それぞれ挟んで、該フィルムFを引き出し、引き出されたフィルムFは、所定の長さに切断された後、包装部Sに搬送されて包装に用いられる。
【0004】
かかる包装が繰り返されることでフィルムロールFrの径が小さくなる。ロール径が小さくなるのに対し、フィルムの引出速度は一定であるから、フィルムロールFrが装着された巻出ローラ70の角速度(回転速度)が徐々に速くなる。
【0005】
一方、前記巻出ローラ70は、図示しないモータによって回転駆動されることにより、フィルムFの引き出しを助長している。従来の包装装置では、前記モータは一定の角速度でフィルムロールFrを回転させるように設定されている。フィルムに弛みが生じないように、前記モータの角速度は、フィルムロールFrの径が最大時の角速度に合わせて設定されている。
【0006】
しかし、搬送ベルト3によって引き出されるフィルムFの速度は一定であるから、ロール径が小さくなるに従い、巻出ローラ70の角速度が大きくなるので、フィルムFにかかる負荷が大きくなる。フィルムFにかかる負荷が大きくなると、搬送ベルト3に挟持されたフィルムFが滑り易くなる。また、ロール径に応じて、フィルムFの負荷も変動するため、搬送ベルト3でのフィルムFの滑り具合も変化する。そのため、フィルム送りの精度が著しく低下する。したがって、良好な包装状態を安定して得ることが難しくなる。
【0007】
また、前述のように、ロール径が小さくなり、フィルムFにかかる負荷が大きくなると、図10に示すように、搬送ベルト3によって引き出されるフィルムFの両側縁部Feに伸びが生じ、フィルムFの先端の中央部Fcが歪み、フィルムの先端が搬送ベルト3から外れた状態になる(以下、「ネッキング」という)おそれがある。かかるネッキングが生じると、包装時において、フィルムの上流端と下流端とでは、搬送ベルト3からフィルムFが抜けるタイミングが異なり、良好な包装状態を得ることができなくなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ロール径に拘わらず、良好な包装状態を安定して得られる包装装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の包装装置は、巻出ローラに装着したフィルムロールからフィルムの幅方向の両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、前記巻出ローラの角速度に相当する角速度を検出する検出器と、前記巻出ローラを回転駆動させるモータと、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度に応じて前記モータの角速度を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ロール径が大きい場合、フィルム引出時の巻出ローラの角速度は小さいので、モータの角速度も小さな値に設定される。一方、ロール径が小さい場合、フィルム引出時の巻出ローラの角速度は大きいので、モータの角速度も大きな値に設定される。そのため、ロール径が小さくなって巻出ローラの角速度が増大しても、フィルム引出時の搬送ベルトの負荷が増大するのを抑制できるから、フィルムの負荷が増大するのを抑制できる。したがって、フィルムの滑りや、いわゆるネッキングが生じにくくなるので、美しい包装の仕上り状態が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明においては、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度よりも、前記モータの回転により与えられる巻出ローラの角速度の方が小さくなるように、前記制御手段が前記モータを制御するのが好ましい。
この態様によれば、フィルム引出時のフィルムの弛みを防止し得ると共に、フィルムの巻き込み等のトラブルを防止し得る。
【0012】
本発明において、前記モータの出力軸と前記巻出ローラとの間に介挿され、前記フィルムロールからフィルムが巻き出される方向に前記巻出ローラが回転するのを許容すると共に、前記巻出ローラが反対方向に回転するのを防止するワンウェイクラッチを更に備えているのが好ましい。
この態様によれば、搬送ベルトによるフィルムの引出速度と、モータによるフィルムの巻出速度との差を吸収し得る。
【0013】
本発明において、前記巻出ローラから前記ワンウェイクラッチまでの間に設けられた回転軸の角速度を前記検出器が検出するのが好ましい。
この態様によれば、回転軸の角速度を検出するのが容易となる。
【0014】
本発明において、前回の包装時における前記検出器による検出値に応じて、前記モータの今回の包装時の角速度を前記制御手段が制御するのが好ましい。
フィルムに伸びがあるため、リアルタイムな制御では、フィルム引出当初においてフィルムが伸び易いので、正確な角速度を検出できないから、ネッキングを十分に防止し得ない。これに対し、この態様では、かかる不具合が生じにくい。
【0015】
本発明において、前記検出器による検出値と所定の閾値とを比較し、この比較結果に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が複数段階に制御するのが好ましい。
この態様によれば、ロールの幅、フィルムの種類の変化等により生じる検出値のバラツキが生じても、モータの角速度を適正に制御することができる。
【0016】
本発明において、前記検出器による検出値に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が無段階に制御するのが好ましい。
この態様において、精密な検出を行えば、フィルム引出時のフィルムの張力のバラツキを小さくすることが可能となる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面にしたがって説明する。
以下の説明では被包装物の一例として内容物の収容されたトレーTを例示して説明するが、被包装物としては、トレーTに載せられていない商品であってもよい。
【0018】
まず、本包装装置の基本的な構造および動作について説明する。
図1に示すように、本包装装置は、被包装物を正面側2aから搬入して包装した後、正面側2aに排出する包装装置であって、正面2aには、コンベヤなどの供給装置20が設けてある。
【0019】
図2において、供給装置20は、内容物Mの載ったトレー(被包装物)Tをリフタ201上に供給する。リフタ201の各ポスト210は、包装機構200の包装ステーション(包装部)Sの直下に配置されていると共に、昇降手段208により上下昇降自在とされている。このリフタ201は、供給装置20からトレーTが供給されると、上昇してトレーTを包装ステーションSまで持ち上げる。
【0020】
一方、包装動作に先立ち、前記包装ステーションSには、張設状態のフィルムFが一対の搬送ベルト3,3によって供給されている。このフィルムFは、トレーTが押し上げられると、トレーTの上面に密着する。この状態で、フィルム折込み機構203は、図3の一対の左右折込板204,204と、後折込板205と、丸棒状の前折込部材206と、プッシャー207(図2)によって、フィルムFの前後左右の各側縁部を、トレーTの底面側に折り込んで包装すると共に、図2の熱溶着コンベヤ10上に包装済のトレーTを搬送する。熱溶着コンベヤ10は、底面に折り込まれたフィルムF同士を互いに溶着し、その後、トレーTが排出台209上に排出される。
なお、排出される包装済の商品Mには、ラベル貼付機12(図1)によってラベルが貼付される。
【0021】
フィルム供給機構:
図4の概略断面図に示すように、本装置の左右方向の両側には、フィルム渡し手段5および切断装置6からなるフィルム供給機構と、フィルムロールFrとが、それぞれ一対設けられている。前記左右のフィルム供給機構のうち、いずれか一方のフィルム供給機構が選択されてフィルムFが、搬送ベルト(供給手段)3,3により包装ステーションSに供給される。
【0022】
フィルム渡し手段5は、フィルムロールFrから引き出されたフィルムFを前記搬送ベルト3,3に受け渡す。搬送ベルト3,3は、フィルムFの搬送方向Yに沿った図3の両側縁部Feを挟持し、該フィルムFを図4の包装ステーションSに向って引き出す。
切断装置6は、フィルムFが搬送ベルト3,3により所定量だけ引き出された後に、フィルム渡し手段5と搬送ベルト3,3との間においてフィルムFを切断する。
なお、前記フィルム供給機構は概ね左右対称に構成されており、以下の説明では主に右側の部分について説明する。
【0023】
図5に示すように、前記フィルム渡し手段5は、一対のフィルム差込板51,52と、フィルム差込板51に支持される複数のワンウェイローラ53とを備えている。
図5はフィルム差込板51,52を側面側から描いたものである。図5に示す前記フィルム差込板51,52は、搬送ベルト3,3に渡すフィルムFの先端側を挟み付け、図5の破線で示す進入端位置P2と実線で示す退避端位置P1の間を上下に移動する。フィルム差込板51,52は、前記進入端位置P2において、搬送ベルト3,3にフィルムの先端部F2を差し渡す。
【0024】
なお、ワンウェイローラ53は、フィルム差込板51,52に挟まれたフィルムFが下方に抜け落ちないようにフィルムFの表面に接触していると共に、一方向にのみ回転可能となっていることで、フィルムFの引き出しを許容する。
【0025】
図6および図7は、フィルムFの供給および切断動作を示す概略正面図である。
図6(a)に示すように、切断装置6は、カッタ61とチョッピングベース62とを備えている。カッタ61は、押え板63,63と、カッタ刃64とを備えている。図7(b)に示すように、押え板63,63が、略「コ」字状のチョッピングベース62との間にフィルムFを挟持した後、カッタ刃64によりフィルムFが切断される。
【0026】
図6(a)に示すように、前記搬送ベルト3,3は、それぞれ一組の下駆動ベルト31、上従動ベルト32および導入ベルト33を備えている。前記導入ベルト33は上従動ベルト32の上流端部に設けられており、破線および実線で示すように開閉駆動する。すなわち、導入ベルト33は、フィルム渡し手段5によって下方から送られてくるフィルムFを下駆動ベルト31の上流端部34との間で挟持して、このフィルムFを下駆動ベルト31と上従動ベルト32との間へと導く。
【0027】
巻出装置7:
図4において、前記フィルムロールFrは巻出装置7によって、以下に説明するように引出可能となっている。巻出装置7は、前記フィルムFの引出時において該フィルムロールFrの回転を助長するための装置であり、左右に一対設けられている。以下の説明では右側の巻出装置7について例示して説明する。
【0028】
図8に示すように、前記巻出装置7は、フィルムロールFrが装填される巻出ローラ70を巻出方向(フィルムが巻き出される方向)に回転させるものであり、駆動軸(中心線のみを一点鎖線で図示)74およびモータ78を備えている。前記巻出ローラ70と回転軸74との間や、回転軸74とモータ78の出力軸75との間には、それぞれベルト72,77が架け渡されており、前記モータ78の出力軸75の回転により回転軸74を介して巻出ローラ70が回転される。
【0029】
前記回転軸74にはブレーキ85およびワンウェイクラッチ86が設けられている。
前記ワンウェイクラッチ86は、たとえば、ラチェットを用いたフリーホイールからなり、回転軸74の巻出方向のみの回転を巻出ローラ70に伝える。ワンウェイクラッチ86は、フィルムFがフィルムロールFrから引き出される方向に巻出ローラ70が回転するのを許容すると共に、巻出ローラ70が反対方向に回転するのを防止するように設定されている。
【0030】
回転軸74には該回転軸74の回転を検出する角速度検出器80が設けられている。角速度検出器80は、たとえば、ロータリーエンコーダ等により構成されている。ロータリーエンコーダは、たとえば、スリット付きの円板の回転を光学的に検出することにより、当該スリットを検出したパルス数に基づいた検出信号を送信するものである。
【0031】
なお、ワンウェイクラッチ86により、搬送ベルト3のフィルムFの引出速度と、モータ78によるフィルムFの巻出速度との差が吸収されるため、角速度検出器80は、巻出ローラ70からワンウェイクラッチ86までの間に設けるのが好ましい。
【0032】
前記ブレーキ85は、たとえば電磁ブレーキからなり、前記巻出ローラ70が慣性で回転するのを防止する。
【0033】
図9(a)に示すように、本装置はマイクロコンピュータ(マイコン:制御手段)40を備えている。マイコン40には、角速度検出器80や、種々の駆動回路81,82i 等が図示しないインターフェイスを介して接続されている。駆動回路81には、前記モータ78が接続されている。他の駆動回路82i には、たとえば、搬送ベルト3やリフタ201、各折込板204,205などを駆動する他のモータ83i 等が、それぞれ接続されている。
【0034】
角速度検出器80は、図8の回転軸74の回転を検出した検出信号をマイコン40に送信する。マイコン40は、当該検出信号に基づき、回転軸74の角速度αを算出する。マイコン40は、後述するように、回転軸74の角速度αに基づき、モータ78の角速度βの制御を行う。
【0035】
図9(a)のマイコン40は、CPU40aおよびメモリ40bを備えている。メモリ40bには、閾値記憶部40cおよび角速度記憶部40dが設けられている。
閾値記憶部40cには第1および第2閾値SL1,SL2などの閾値が予め記憶されている。
図9(b)に示すように、角速度記憶部40dには、前記閾値SL1,SL2に対する回転軸74の角速度αの範囲とモータ78の角速度β1〜β3とがそれぞれ関連付けられて予め記憶されている。
【0036】
フィルムの供給方法:
つぎに、フィルムFの供給方法について説明する。
フィルムFがセットされた後、図5のフィルム渡し手段5によってフィルムFの引き出しが行われる。
すなわち、図6(a)のフィルム渡し手段5が退避端位置P1から、図6(b)に示す進入端位置P2まで上昇し、導入ベルト33と上流端部34との間にフィルムFの先端部F2を差し入れる。
【0037】
前記差し入れ後、図7(a)に示すように、導入ベルト33が閉じて、下駆動ベルト31と導入ベルト33との間にフィルムFの先端部F2(図6)が挟み付けられる。これにより、フィルムFが前記各ベルト31,32,33によってフィルムロールFrから所定の長さ(フィルム長に近く、該フィルム長よりも若干短い長さ)だけ引き出される。一方、フィルム渡し手段5は、退避端位置P1まで下降して停止する。
【0038】
その後、図7(b)に示す押え板63,63が、チョッピングベース62の上下の突出部との間にフィルムFを挟持した後、カッタ刃64が前進することにより、フィルムFが切断される。
【0039】
前記切断後、図4の搬送ベルト3,3によって、切断されたフィルムFの搬送が行われ、当該切断されたフィルムFが図3の包装ステーションSの所定の位置まで搬送される。
前記搬送後、フィルムFが包装ステーションSに張設され、トレーTの包装が開始される。
【0040】
ここで、前記フィルムFの引出時において、角速度検出器80から検出信号がマイコン40に送信される。マイコン40は、当該検出信号に基づき、回転軸74の角速度αを算出する。
マイコン40は、閾値記憶部40cから第1および第2閾値SH1,SH2を読み出し、回転軸74の角速度αとの比較を行う。なお、第1および第2閾値SH1,SH2は、第1閾値SH1<第2閾値SH2の関係に設定されている。
【0041】
前記比較の結果、図9(b)に示すように、回転軸74の角速度αが第1閾値SH1よりも小さい場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「大」であると判別して、モータ78の角速度を小さい第1角速度β1に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
回転軸74の角速度αが第1閾値SH1以上、かつ、第2閾値SH2よりも小さい場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「中」であると判別して、モータ78の角速度を前記第1角速度β1よりも大きい中程度の第2角速度β2に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
回転軸74の角速度αが第2閾値SH1以上の場合、マイコン40は、フィルムロールFrの径が「小」であると判別して、モータ78の角速度を前記第2角速度β2よりも大きい第3角速度β3に設定して、次回のフィルムFの搬送を行う。
【0042】
このように、巻出ローラ70の角速度に対応する回転軸74の角速度に応じて、モータ78の角速度βが変更される。そのため、フィルムロールFrの径が小さくなって巻出ローラ70の角速度が増大しても、フィルム引出時の搬送ベルト3の負荷が増大するのを抑制できるから、フィルムの伸びが増大するのを抑制できる。したがって、搬送ベルト3でのフィルムFの滑りや、いわゆるネッキングが生じにくくなるので、美しい仕上り状態が期待できる。
【0043】
ここで、モータ78の回転により与えられる巻出ローラ70の角速度は、角速度検出器80で間接的に検出された巻出ローラ70の角速度よりも常に小さくなるように制御される。その際、巻出ローラ70の角速度がモータ78の角速度を越えているので、その速度差に相当する分だけ、ワンウェイクラッチ86が空回りする。
したがって、フィルム引出時のフィルムの弛みを防止し得ると共に、フィルムFの巻き込み等のトラブルを防止し得る。
【0044】
フィルムロールFrのセット:
ところで、トレーサイズ等に応じて、フィルムロールFrを交換する場合がある。フィルムロールFrの交換を繰り返すと、途中まで使用したフィルムロールFrが再びセットされる場合が生じる。そのため、本装置では、フィルムロールFrのセット時に、フィルムロールFrの径を求めることにより、当該ロール径に応じて、初回のフィルム搬送時におけるモータ78の角速度βの設定を行っている。
【0045】
フィルムロールFrの交換時において、作業者が、図8に示すフィルムロールFrを巻出ローラ70にセットすると、フィルムローディングが行われ、図4に示すフィルム渡し手段5によりフィルムロールFrからフィルムFが引き出されて、巻出ローラ70が回転され、フィルムFが搬送ベルト3にセットされる。
【0046】
前記フィルム引出当初時において、図8の巻出ローラ70の回転に伴い、回転軸74が回転される。前記角速度検出器80が回転軸74の回転を検出した検出信号をマイコン40に送信する。マイコン40は、当該検出信号に基づき、フィルムロールFrの径を判別する。具体的には、角速度検出器(ロータリーエンコーダ)80のカウント数と、当該カウント数を検出した時間(サンプリングタイム)などに基づき、ロール径の判別を行う。
【0047】
マイコン40は、閾値記憶部40cから所定の閾値を読み出し、当該閾値と角速度αとを比較することにより、実質的にロール径の判別を行いモータ78の角速度βを、前記角速度αに対応する第1〜第3角速度β1〜β3の何れかの速度に設定し、初回の包装動作を行う。
【0048】
なお、前述の実施例では、ロール径つまり回転軸74の角速度を大・中・小の3種類に判別することとしたが、2種類であってもよいし、4種類以上から無段階であってもよい。
【0049】
また、モータ78に別のロータリーエンコーダなどからなる検出器を設け、モータ78の角速度βによる巻出量と回転軸74の角速度αによる巻出量とを比較することにより、モータ78の角速度βの制御を行ってもよい。たとえば、モータ78の角速度βによる巻出量が回転軸74の角速度αによる巻出量以下になるように、かつ、当該回転軸74の角速度αに近づけるように制御して、ワンウェイクラッチ86における滑りが小さくなるようにしてもよい。
【0050】
切断装置6:
ところで、フィルムFの切断は、搬送ベルト3がフィルムFを所定距離搬送した後、搬送ベルト3が停止し、切断が開始される。しかし、搬送ベルト3が急停止されると、フィルムFが慣性により若干回転し、図8の二点鎖線に示すように、搬送ベルト3からフィルムロールFrまでの間にフィルムFが弛んだ状態となる。
【0051】
従来の包装装置では、このようなフィルムFが弛んだ状態で切断を行うため、フィルムFのカットラインを直線状に切断できない不具合が生じていた。特に、包装時の皺を無くすためにフィルムFの張りを大きくしたり、特殊なフィルムを用いてフィルムを幅方向に大きく伸ばして用いる場合などには、フィルムFのカットラインからフィルムFが裂けるおそれがある。
【0052】
そこで、本包装装置では、フィルムFのカットラインを直線状にするために、以下の機構を備えている。
図10に示すように、切断装置6は、カッタ61とチョッピングベース62とを備えている。切断装置6は、チョッピングベース62に当接してフィルムFを切断する。
【0053】
カッタ61は、その上下に押え板63,63を備えている。下側の押え板63の先端には、チョッピングベース62との間でフィルムFを押える下押え部63aが形成されている。一方、上側の押え板63の先端には、チョッピングベース62との間でフィルムFを押える上押え部63bが形成されている。該上押え部63bの上部にはフィルムFをチョッピングベース62側に押す突出部63cが突設されている。
【0054】
図11は、フィルムFの切断方法を示している。
図11(a)に示すように、押え板63、63およびカッタ61がチョッピングベース62に向って移動を開始する。
その後、図11(b)に示すように、まず、下側の押え板63の先端の下押え部63aがフィルムFをチョッピングベース62との間に挟み固定する。この際、突出部63cがフィルムFをチョッピングベース62の方向に押しながら、下押え部63aがチョッピングベース62との間にフィルムFを挟み付ける。
【0055】
前記固定後、図11(c)に示すように、上側の押え板63の上押え部63bがチョッピングベース62との間にフィルムFを挟む。
【0056】
ここで、フィルムFの下方はチョッピングベース62と下押え部63aとによって挟持されて固定されているので、突出部63cがフィルムFをチョッピングベース62の方向に向って押すことにより、下押え部63aと上押え部63bとの間でフィルムFが張設される。
前記張設後、図11(d)に示すように、カッタ61が前進してフィルムFを切断する。
【0057】
このように、切断時において、カッタ61の上流および下流を、上押え部63bおよび下押え部63aが挟む。フィルムFを切断する前に、両押え部63a,63bによってフィルムFを厚さ方向に押し付けると共に、突出部63cによってフィルムFをチョッピングベース62側に向って押すことにより、フィルムFに張力を与える。これにより、搬送ベルト3とフィルムロールFrとの間のフィルムFには弛みがなくなり、該フィルムFに張力がかかった状態でフィルムFのカットを行うことができる。そのため、フィルムFのカットラインを直線状にすることができる。
【0058】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施例を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。
たとえば、ワンウェイクラッチおよびブレーキは、巻出ローラの同軸上に設けてもよい。
また、ワンウェイクラッチは、一定の方向のみの回転を許容するものであればよく、ラチェット式の他に、たとえば、ボールを利用したフリーホイールなどであってもよい。
また、本発明は上記特願平11−137025号のように、フィルムに突き上げたトレーの上端部分をヒータローラで加熱溶着しつつ溶断するような、いわゆるトップシール式の包装装置にも適用し得る。
したがって、そのような変更および修正は、請求の範囲から定まる本発明の範囲内のものと解釈される。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、フィルムロールから引き出したフィルムを用いて被包装物を包装する包装装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例にかかる包装装置の概略斜視図である。
【図2】包装機構を示す概略側面図である。
【図3】フィルムの折り込み動作を示す斜視図である。
【図4】フィルムの供給機構を示す概略断面図である。
【図5】フィルムの渡し手段を示す概略側面図である。
【図6】フィルムの渡し動作を示す概略正面図である。
【図7】フィルムの切断動作を示す概略正面図である。
【図8】巻出装置を示す概略斜視図である。
【図9】本装置の概略構成図である。
【図10】フィルムの他の切断装置を示す概略側面図である。
【図11】フィルムの他の切断方法を示す概略側面図である。
【図12】従来のフィルムの巻出方法により生じる問題を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
3:搬送ベルト
40:マイコン(制御手段)
70:巻出ローラ
78:モータ
80:角速度検出器
86:ワンウェイクラッチ
208:昇降手段(エレベータ機構)
Fr:フィルムロール
S:包装ステーション(包装部)
SL1:第1閾値
SL2:第2閾値
T:トレー
X:幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻出ローラに装着したフィルムロールからフィルムの幅方向の両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、
前記巻出ローラの角速度に相当する角速度を検出する検出器と、
前記巻出ローラを回転駆動させるモータと、
前記検出器で検出された巻出ローラの角速度に応じて前記モータの角速度を制御する制御手段とを備えた包装装置。
【請求項2】
請求項1において、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度よりも、前記モータの回転により与えられる巻出ローラの角速度の方が小さくなるように、前記制御手段が前記モータを制御する包装装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、前記モータの出力軸と前記巻出ローラとの間に介挿され、前記フィルムロールからフィルムが巻き出される方向に前記巻出ローラが回転するのを許容すると共に、前記巻出ローラが反対方向に回転するのを防止するワンウェイクラッチを更に備えた包装装置。
【請求項4】
請求項3において、前記巻出ローラから前記ワンウェイクラッチまでの間に設けられた回転軸の角速度を前記検出器が検出する包装装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、前回の包装時における前記検出器による検出値に応じて、前記モータの今回の包装時の角速度を前記制御手段が制御する包装装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項において、前記検出器による検出値と所定の閾値とを比較し、この比較結果に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が複数段階に制御する包装装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項において、前記検出器による検出値に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が無段階に制御する包装装置。
【請求項1】
巻出ローラに装着したフィルムロールからフィルムの幅方向の両側縁部を搬送ベルトで挟んで前記フィルムを引き出し包装部へ搬送し、そのフィルムの下側からエレベータ機構により被包装物を突き上げて該被包装物の上面をフィルムで覆って包装する包装装置であって、
前記巻出ローラの角速度に相当する角速度を検出する検出器と、
前記巻出ローラを回転駆動させるモータと、
前記検出器で検出された巻出ローラの角速度に応じて前記モータの角速度を制御する制御手段とを備えた包装装置。
【請求項2】
請求項1において、前記検出器で検出された巻出ローラの角速度よりも、前記モータの回転により与えられる巻出ローラの角速度の方が小さくなるように、前記制御手段が前記モータを制御する包装装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2において、前記モータの出力軸と前記巻出ローラとの間に介挿され、前記フィルムロールからフィルムが巻き出される方向に前記巻出ローラが回転するのを許容すると共に、前記巻出ローラが反対方向に回転するのを防止するワンウェイクラッチを更に備えた包装装置。
【請求項4】
請求項3において、前記巻出ローラから前記ワンウェイクラッチまでの間に設けられた回転軸の角速度を前記検出器が検出する包装装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、前回の包装時における前記検出器による検出値に応じて、前記モータの今回の包装時の角速度を前記制御手段が制御する包装装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項において、前記検出器による検出値と所定の閾値とを比較し、この比較結果に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が複数段階に制御する包装装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項において、前記検出器による検出値に応じて前記モータの角速度を前記制御手段が無段階に制御する包装装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−8558(P2007−8558A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−193868(P2005−193868)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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