説明

化合物、組成物および方法

特定の置換尿素誘導体は、例えば心臓ミオシンを強化することにより心臓筋節を選択的にモジュレートし、うっ血性心不全をはじめとする収縮期心不全の治療において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換尿素誘導体、詳しくは心臓筋節を選択的にモジュレートする化学物質に関し、具体的には心疾患を治療する化学物質、医薬組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「筋節」は、相互に絡み合った細いフィラメントと太いフィラメントから構成されている心筋および骨格筋中に見られる見事に組織化された細胞構造であり、心臓細胞容積の60%近くを占めている。太いフィラメントは、化学エネルギー(ATP加水分解)を力や有向運動に変換する役割を担っているタンパク質の「ミオシン」から構成されている。ミオシンおよびその機能的に関連のある一群は、モータータンパク質と呼ばれる。細いフィラメントは、タンパク質複合体から構成されている。これらのタンパク質の1つである「アクチン」(フィラメント状ポリマー)は、ミオシンが力発生時に引っ張る基体である。アクチンに結合しているのが1組の調節タンパク質「トロポニン複合体」と「トロポミオシン」である。これらにより、アクチン‐ミオシンの相互作用が細胞内Ca2+濃度の変化に依存するようになっている。心拍毎にCa2+濃度は上昇および下降し、心筋収縮、次いで心筋弛緩が始まる。筋節の各構成成分は、その収縮応答に関与している。
【0003】
ミオシンは、全モータータンパク質の中で最も広く研究されている。ヒト細胞中の異なる13クラスのミオシンのうち、II型ミオシンのクラスは骨格筋、心筋および平滑筋の収縮に関与している。このクラスのミオシンは、他の異なる12のクラスのミオシンとはアミノ酸組成および全体構造の点で大きく異なっている。II型ミオシンは、長いα−ヘリカル・コイルド‐コイルド・尾部(alpha-helical coiled-coiled tail)により一緒に連結されている2つの球状頭部ドメインから構成されており、他のII型ミオシン群と集合して筋節の太いフィラメントのコアを形成している。球状頭部は触媒ドメインを有しており、ここでミオシンのアクチン結合およびATP機能が生じる。アクチンフィラメントに結合すると、リン酸が放出されて(参考:ATPからADPへ)、触媒ドメインの構造コンホメーションが変化し、それにより球状頭部から延びている軽鎖結合レバーアームドメインの方向が変わる。この動きはパワーストロークと呼ばれる。このアクチンに関連したミオシン頭部の方向の変化により、ミオシン頭部が一部となっている太いフィラメントがミオシン頭部が結合している細いアクチンフィラメントに対して動くようになる。触媒ドメインおよび軽鎖がその最初のコンホメーション/方向に戻ると共に、球状頭部がアクチンフィラメントから結合解除(これもCa2+によりモジュレートされている)されると、収縮・弛緩サイクルが完結する。
【0004】
哺乳動物の心筋は、αおよびβという2種類の形態の心臓ミオシンから構成されていて、これらには十分な特徴がある。β型は、成人心筋における主たる形態(>90%)である。いずれもヒトの心不全症状では転写レベルと翻訳レベルの両方でレギュレートされており、心不全ではα型がダウンレギュレートされていることが確認されている。
【0005】
ヒト骨格筋ミオシン、心筋ミオシンおよび平滑筋ミオシンのすべての配列が既に決定されている。心筋のα型ミオシンおよびβ型ミオシンは非常に類似している(93%の相同性)が、いずれもヒト平滑筋とはかなり相違しており(42%の相同性)、骨格筋ミオシンにより近似している(80%の相同性)。都合の良いことに、心筋ミオシンは哺乳動物の種を越えて驚くほどに保存されている。例えば、α型心筋ミオシンとβ型心筋ミオシンは双方ともヒトとラット間で>96%保存されている。また、ブタ心筋β型ミオシンの利用可能な250個の残基配列は、対応するヒト心筋β型ミオシン配列と比較した場合100%保存されている。かかる配列保存は、心不全の動物モデルにおけるミオシンをベースとした治療研究の予見可能性に役立つ。
【0006】
心臓筋節の構成成分は、例えば収縮性を高めるか、または完全弛緩を促進して、それぞれ収縮機能および拡張機能をモジュレートすることにより心不全の治療の標的となる。
【0007】
うっ血性心不全(「CHF」)は特定の疾患ではなく、いずれも心拍出量の増加による激しい動作に対して心臓が適切に応答できなくなったために起こる徴候および症状の総称である。CHFに関する主たる病態生理は、収縮機能障害、すなわち、(各心拍毎に拍出される血液量の減少が結果として伴う)心臓収縮力の障害である。心室腔の代償性拡張を伴う収縮機能障害は、心不全の最も一般的な病態である「拡張型心筋症」を引き起こす。これはCHFとほぼ同様と考えられる場合が多い。収縮機能障害の対照となるのが拡張機能障害、すなわち心室を血液で満たす能力の障害であり、これもまた左心室機能が保たれていたとしても心不全を起こす恐れがある。うっ血性心不全になると、最終的には心筋細胞それ自体が適切に機能しなくなり、その収縮および弛緩能力が低下することとなる。
【0008】
アテローム性動脈硬化症、高血圧症、ウイルス感染症、弁機能障害および遺伝子病などの基礎症状が同様の疾患の多くは、収縮機能障害および/または拡張機能障害を引き起こす可能性がある。これらの症状のある患者は、通常、同じ古典的な症状、すなわち息切れ、浮腫および過度の疲労を呈する。拡張型心筋症の患者の約半分では、その心機能不全の原因は、冠動脈硬化症による虚血性心疾患である。これらの患者は、過去に心筋梗塞を1回またはたびたび起している。この場合、結果として生じた瘢痕形成およびリモデリングによって、拡張型で低収縮性の心臓となる。その原因は同定することができない場合があり、そのため、この疾患は「特発性拡張型心筋症」と呼ばれている。拡張型心筋症患者は、虚血性原因または他の原因にかかわらず、共通して、予後が悪く、罹患率が異常に高く、かつ死亡率が高い。
【0009】
人口の高齢化につれて、また心臓専門医がCHFの最も一般的な前兆である虚血性心疾患の死亡率の軽減で大きな成果を上げてくるにつれて、CHFの有病率は高率発生しつつある。米国ではおよそ460万人がCHFと診断されており、かかる診断件数は年齢65歳以上では1000人あたり10人に近づいてきている。CHFによる入院は、一般に外来患者の治療が不適切であった結果である。CHFの退院人数は377,000人(1979年)から970,000人(2002年)に増えており、年齢65歳以上の人ではCHFが最も一般的な退院時診断となっている。CHFの5年後死亡率は50%に近づいている。したがって、ここ数年の間に心疾患の治療法は大きく改善され、平均寿命も延びたが、特にCHFに対する新規でより良好な治療法が引き続き求められている。
【0010】
「急性」うっ血性心不全(急性「非代償性」心不全としても知られている)は、各種原因で起こる心臓機能の急激な低下を伴う。例えば、過去にうっ血性心不全に罹患していた患者では、新たな心筋梗塞、投薬の中止および暴飲暴食により、安静状態でさえも浮腫液の滞留および代謝不全が生ずる場合がある。かかる急性発作の間に心臓機能を高める治療薬は、代謝不全を軽減し、浮腫液除去の速度を上げるのを助けて、より安定した「代償性」うっ血性心不全状態に戻るのを促進することができる。非常に進行したうっ血性心不全の患者、特にこの疾患の末期段階にある患者においても、例えば心臓移殖の待機中の安定化を図るなど、心臓機能を高める治療薬が有効である。また、バイパスポンプを外した患者に対しても、例えばその停止したまたは緩徐になった心臓が正常機能を取り戻すのを補助する薬剤を投与することによって、別の有効性を供与することができる。拡張機能障害(心筋の不十分な弛緩)の患者は、筋弛緩をモジュレートする治療薬が有効であろう。
【0011】
変力作用薬(inotrope)は、心臓の収縮能力を高める薬剤である。一群として、現在の全ての変力作用薬は、心不全治療に対する基準(gold standard)を満たしておらず、すなわち、患者の生存期間を延長しない。さらに、現在の薬剤は心臓組織に対する選択性に満足のいくものではなく、結果的に、確認されている副作用をもたらすことことがあり、その使用には限界がある。この事実にも拘わらず、静注用変力作用薬は、急性心不全において(例えば、経口投薬を再開させるため、または患者を心臓移植へ橋渡しするために)広く使用され続けているが、慢性心不全の場合には、患者の症状を緩和し、生活の質を向上させ、入院を減らす目的で経口で投与するジゴキシンが変力作用薬として使われている。
【0012】
現在の変力作用薬治療は、アデニリルシクラーゼ経路を介するカルシウムトランジェントを増加させること、またはホスホジエステラーゼ(PDE)を阻害してcAMP分解を遅らすことによって収縮性を改善しているが、これは心不全患者に有害な可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
現在の薬剤に限界があることを考えると、うっ血性心不全における心臓機能を改善する新しい治療法が求められている。ごく最近認可された短期静注用剤のミルリノンは、15年以上経過している。唯一利用可能な経口薬剤ジゴキシンは、200年以上経過している。このため、新しい作用機序を利用し、かつ短期および長期の双方において症状の軽減、安全性および患者死亡率の点でより良好な結果を得ることができる薬剤に対するニーズは依然として大きい。現在の薬剤に比べて治療指数が改善された新規な薬剤は、これらの臨床結果を達成する手段を提供する。心臓筋節に対する(例えば、心臓β−ミオシンを標的とすることによる)薬剤の選択性は、これらの改善された治療指数を達成する重要な手段であることが確認されている。本発明は、かかる薬剤(特に筋節活性化剤)、ならびにその同定方法および使用方法を提供する。
【0014】
別の方法は、カルシウムトランジェントを変化させることなく心臓ミオシンを直接活性化して心臓の収縮力を改善することである。本発明は、かかる薬剤(特にミオシン活性化剤)、ならびにその同定方法および使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
式I:
【化1】

【0016】
[式中、
T1は、-CR15R19-、-NR14-CR15R19-、または-CR15R19-NR14-であり;
R14、R15およびR19の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
R17およびR18の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
nは、1、2、または3であり;
R2は、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、または場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルであり、
R3は、Wが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Wが-N=である場合、R3は存在せず;
R4は、Yが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Yが-N=である場合、R4は存在せず;
R5は、Xが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Xが-N=である場合、R5は存在せず;
R13は、Zが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシル、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Zが-N=である場合、R13は存在せず;
R6およびR7は、独立して水素、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアルキル、または場合により置換されていてもよいアルコキシであるか、あるいはR6およびR7は、これらが結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員環(この環は、環中にN、OおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成するが、
ただし、R17およびR18の少なくとも1つの基は水素ではないか;あるいは
R15およびR19のどちらの基も水素ではない]
で表される化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物から選択される少なくとも1種の化学物質を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
他の態様および実施形態は、以下の詳細説明から当業者には明らかであろう。
【0018】
以下の語句は、本明細書中で使用する場合、通常以下に記載する意味を有するものとする。ただし別段の指示がなされている内容についてはこの限りではない。次の略語および用語は、明細書中指定した意味を有する:
Ac = アセチル、
Boc = t-ブチルオキシカルボニル、
c- = シクロ、
CBZ = カルボベンゾキシ=ベンジルオキシカルボニル、
DCM = ジクロロメタン=塩化メチレン=CH2Cl2
DIBAL-H = 水素化ジイソブチルアルミニウム、
DIEAまたはDIPEA = N,N−ジイソプロピルエチルアミン、
DMF = N,N−ジメチルホルムアミド、
DMSO = ジメチルスルホキシド、
eq = 当量、
Et = エチル、
EtOAc = 酢酸エチル、
EtOH = エタノール、
g = グラム、
GC = ガスクロマトグラフィー、
h、hr、hrs = 時間、
Me = メチル、
min = 分、
ml = ミリリットル、
mmol = ミリモル、
Ph = フェニル、
PyBroP = ブロモ−トリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、
RT = 室温、
s- = 第二級、
t- = 第三級、
TFA = トリフルオロ酢酸、
THF = テトラヒドロフラン、
TLC = 薄層クロマトグラフィー、
Volume(容量)= 別段の特定がない限り、限定試薬に対する物質のmL/g。
【0019】
以下の語句は、本明細書で使用する場合、通常以下に記載する意味を有するが、ただし別段の指示がなされている内容についてはこの限りではない。
【0020】
本明細書では、可変部が化学式中に複数回出現する場合、出現毎のその定義はすべての他の出現のその定義から独立している。
【0021】
2つの文字または記号間以外のダッシユ(「−」)は、置換基の結合点を示すために用いている。例えば、-CONH2は炭素原子を介して結合されている。
【0022】
「任意の」または「場合により」とは、続いて記載されている事象または状況が生じていても生じていなくてもよいことを意味し、その記載がその事象または状況が生じている事例および生じていない事例を含むことを意味する。例えば、「場合により置換されていてもよいアルキル」は、以下に定義する「アルキル」および「置換アルキル」の両方を含む。1個または複数の置換基を含有する任意の基に関して、かかる基は、立体的に実行不可能であって、合成的に不適切で、かつ/または本質的に不安定である、いかなる置換または置換パターンも導入されるものではないことを当業者は理解されよう。
【0023】
「アルキル」は、指定数の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖を含む。アルキル基は、通常C20以下、例えばC13以下(例えばC6以下)のものである。例えばC1-C6アルキルは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキルの両方を含む。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、3-メチルペンチルなどが挙げられる。「アルキレン」は、アルキルの別の亜群であって、アルキルと同じ残基であるが2つの結合点を有するものをいう。例えばC0アルキレンは共有結合を示し、C1アルキレンはメチレン基である。特定数の炭素を有するアルキル残基を命名する場合、その炭素数を有する幾何異性体のすべてを包含するものとする。したがって、例えば「ブチル」はn-ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびt-ブチルを含むことを意味し、「プロピル」はn-プロピルおよびイソプロピルを含む。「低級アルキル」は1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0024】
「シクロアルキル」は、特定数の炭素原子、一般的には3〜12個の環炭素原子、より一般的には3〜10個または3〜7個の環炭素原子を有する飽和炭化水素環または縮合二環式環を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル、ならびに架橋化およびケージ化飽和環基、例えばノルボルナンが挙げられる。縮合二環式環の例としては、オクタヒドロ-1H-インデン、オクタヒドロペンタレン、1,2,3,3a,4,5-ヘキサヒドロペンタレン、1,2,4,5,6,7,7a-ヘプタヒドロ-2H-インデン、4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インデンなどが挙げられる。
【0025】
「アルコキシ」は、酸素橋を介して結合しているアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、2-ペンチルオキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、3-メチルペントキシ等を意味する。アルコキシ基のアルキル基は、通常C20以下、例えばC13以下(例えばC6以下)のものである。「低級アルコキシ」は、1〜4個の炭素を有するアルコキシ基を意味する。
【0026】
「シクロアルコキシ」は、酸素橋を介して結合しているシクロアルキル基、例えばシクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペントキシ、シクロヘキソキシ、シクロヘプトキシ等を意味する。シクロアルコキシ基のシクロアルキル基は、通常C20以下、例えばC13以下(例えばC6以下)のものである。
【0027】
「アシル」は、基(アルキル)-C(O)-;(シクロアルキル)-C(O)-;(アリール)-C(O)-;(ヘテロアリール)-C(O)-;および(ヘテロシクロアルキル)-C(O)-(ここで、前記の基はカルボニル官能基を介して親構造に結合しており、また、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは本明細書に記載した通りである)を意味する。アシル基は、ケト基の炭素を炭素原子の数に含めるとして、指定数の炭素原子を有する。例えばC2アシル基は、式CH3(C=O)-を有するアセチル基である。
【0028】
「アルコキシカルボニル」は、カルボニル炭素を介して結合している式(アルコキシ)(C=O)-(ここで、アルコキシ基は指定数の炭素原子を有する)で表されるエステル基を意味する。したがって、C1-C6アルコキシカルボニル基は、その酸素を介してカルボニルリンカーに結合している1〜6個の炭素原子を有するアルコキシ基である。
【0029】
「アミノ」は、基-NH2を意味する。
【0030】
用語「アミノカルボニル」は、基-CONRbRc
[式中、
Rbは、水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリール、および場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択されるか;あるいは、
RbおよびRcは、これらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜7員の窒素含有ヘテロシクロアルキル(これは、ヘテロシクロアルキル環中にO、NおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成し、
置換されている各基は、C1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH、-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールに対する置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)、および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数の置換基で置換されている]
を意味する。
【0031】
「アリール」は、5および6員の炭素環式芳香族環、例えばベンゼン;少なくとも1つの環が炭素環式および芳香族である二環式環系、例えばナフタレン、インダンおよびテトラリン;ならびに、少なくとも1つの環が炭素環式および芳香族である三環式環系、例えばフルオレンを含む。
【0032】
例えば、アリールとしては、5および6員の炭素環式芳香族環が1個または複数のN、OおよびSから選択されるヘテロ原子を含有する5〜7員のヘテロシクロアルキル環に縮合しているものが挙げられる。これらの環の1つだけが炭素環式芳香族環である縮合二環式環系の場合、結合点は炭素環式芳香族環またはヘテロシクロアルキル環であってもよい。置換ベンゼン誘導体から形成され、かつ環原子に自由原子価を有する二価基は、置換フェニレン基と称する。自由原子価を有する炭素原子から1個の水素原子を除くことにより末尾に「−イル」を付けて呼ばれる一価の多環式炭化水素基から誘導される二価基は、対応の一価基の名前に「−イデン」を付け加えて命名する。例えば、2個の結合点を有するナフチル基はナフチリデンと呼ぶ。しかし、アリールは、以下に別に定義したヘテロアリールを決して含むことはなく、あるいは重複することもない。したがって、1個または複数の炭素環式芳香族環がヘテロシクロアルキル芳香族環に縮合しているならば、生じた環系は、本明細書中で定義した通り、ヘテロアリールであって、アリールではない。
【0033】
用語「アリールオキシ」は、基-O-アリールを意味する。
【0034】
用語「アリールアルキル」または「アラルキル」では、アリールおよびアルキルは本明細書で定義した通りであり、その結合点はアルキル基上にある。この用語にはベンジル、フェネチル、フェニルビニル、フェニルアリル等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
用語「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを含み、用語「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0036】
「ハロアルキル」は、特定数の炭素原子を有する、上記で定義したアルキルが1個または複数のハロゲン原子(通常、最大許容数以下のハロゲン原子)で置換されているものを指す。ハロアルキルの例としては、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、2-フルオロエチルおよびペンタフルオロエチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
「ヘテロアリール」は、N、OおよびSから選択されるヘテロ原子を1個または複数(例えば1〜4個、またはある実施形態では1〜3個)含有し、残りの環原子が炭素である5〜7員の芳香族単環式環;ならびにN、OおよびSから選択されるヘテロ原子を1個または複数(例えば1〜4個、またはある実施形態では1〜3個)含有し、残りの環原子が炭素であり、少なくとも1つのヘテロ原子が芳香族環中に存在する二環式ヘテロシクロアルキル環を含む。
【0038】
例えばヘテロアリールには、5〜7員のヘテロシクロアルキル芳香族環が5〜7員のシクロアルキル環に縮合しているものが含まれる。これらの環の1つだけが1個または複数のヘテロ原子を含有しているかかる縮合二環式ヘテロアリール環の場合、結合点はヘテロ芳香族環またはシクロアルキル環であってもよい。ヘテロアリール基中のSおよびO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は相互に隣接していない。ある実施形態では、ヘテロアリール基中のSおよびO原子の総数は2以下である。ある実施形態では、芳香族ヘテロ環中のSおよびO原子の総数は1以下である。また、ヘテロアリールの定義にはオキシド誘導体、例えば窒素含有アリール基のN-オキシド、例えばピリジン-1-オキシド、または硫黄含有基の>S(O)および>S(O)2誘導体が含まれる。ヘテロアリール基の例としては、例えば2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2,3-ピラジニル、3,4-ピラジニル、2,4-ピリミジニル、3,5-ピリミジニル、2,3-ピラゾリニル、2,4-イミダゾリニル、イソオキサゾリニル、オキサゾリニル、チアゾリニル、チアジアゾリニル、テトラゾリル、チエニル、ベンゾチオフェニル、フラニル、ベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリニル、インドリニル、ピリジジニル、トリアゾリル、キノリニル、ピラゾリルおよび5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリンなどの(優先順位1を割り当てた連結点から番号付けした場合の)系が含まれるが、これらに限定されるものではない。自由原子価を有する原子から1個の水素原子を除くことにより、末尾に「−イル」を付けて呼ばれる一価ヘテロアリール基から誘導される二価基は、対応の一価基の名前に「−イデン」を付け加えて命名する。例えば、2つの結合点を有するピリジル基はピリジリデンである。ヘテロアリールは上で定義したアリールを含むことはなく、あるいは重複することもない。
【0039】
用語「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアラルキル」において、ヘテロアリールおよびアルキルは本明細書で定義した通りであり、結合点はそのアルキル基上にある。この用語にはピリジルメチル、チオフェニルメチルおよび(ピロリル)1-エチルが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
「ヘテロシクロアルキル」は、1〜4個の炭素原子がヘテロ原子(例えば、酸素、窒素または硫黄)で置換されているシクロアルキル残基を意味する。適当なヘテロシクロアルキル基としては、例えば(優先順位1を割り当てた連結点から番号付けした場合の)2-ピロリニル、2,4-イミダゾリジニル、2,3-ピラゾリジニル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、および2,5-ピペラジニルが挙げられる。またモルホリニル基には、(酸素に優先順位1を割り当てて番号付けした)2-モルホリニルおよび3-モルホリニルなども含まれる。
【0041】
本明細書では、「モジュレーション」とは、本明細書中に記載されている少なくとも1種の化学物質の存在に対する直接応答または間接応答としてのミオシンまたは筋節の活性を、前記化学物質の非存在下におけるミオシンまたは筋節の活性と比較した場合の変化を意味する。この変化は、活性の増加であっても低下であってもよく、化合物とミオシンまたは筋節の直接相互作用に起因していても、あるいは化合物とミオシンまたは筋節の活性に順次影響をもたらす1または複数の他の因子との相互作用に起因していてもよい。
【0042】
用語「スルファニル」は、基:-S-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)、および-S-(場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル)を含んでいる。したがって、スルファニルは、基C1-C6アルキルスルファニルを含む。
【0043】
用語「スルフィニル」は、基:-S(O)-H、-S(O)-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル)、および-S(O)-(場合により置換されていてもよいアミノ)を含んでいる。
【0044】
用語「スルホニル」は、基:-S(O2)-H、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアルキル)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアリール)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリール)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアルコキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアリールオキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロアリールオキシ)、-S(O2)-(場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルオキシ)、および-S(O2)-(場合により置換されていてもよいアミノ)を含んでいる。
【0045】
用語「置換(されている)」は、本明細書では、指定原子の通常原子価を超えないならば、指定の原子または基上の1個または複数の水素が指示した基から選択した基で置換されていることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)の場合、原子上の2個の水素が置換される。置換基および/または可変部の組合せは、かかる組合せにより安定な化合物または有用な合成中間体が得られる場合に限って認められる。安定な化合物または安定な構造は、反応混合物からの単離とその後の少なくとも実用性を有する薬剤としての製剤化に耐えるに十分な強さを持つ化合物を含むことを意味する。別段の記載がない限り、置換基の名前はコア構造に入れる。例えば、(シクロアルキル)アルキルが可能な置換基として挙げられている場合、この置換基のコア構造への結合点はアルキル部分にある。
【0046】
用語「置換(されている)」アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールは、他に明白な定義がされていない限り、それぞれ、1個または複数(最高5個、例えば最高3個)の水素原子が、-Ra、-ORb、-O(C1-C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、1個または複数のグアニジン水素が低級アルキル基で置換されているグアニジン、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Ra
[式中、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rbは水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択され;あるいは、
RbおよびRcは、これらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜7員の窒素含有ヘテロシクロアルキル(これは、ヘテロシクロアルキル環中にO、NおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成し;
ここで、場合により置換されていてもよい各々の基は、未置換であるか、あるいはC1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル-、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH、-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールの置換基として)、-CO2H,-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数(例えば、1、2または3個)の置換基で独立して置換されている]
から独立して選択される置換基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールを意味する。
【0047】
用語「置換(されている)」シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールはまた、オキソ(=O)およびオキシド(-O-)置換基、例えば窒素含有アリール基のN-オキシド(例えば、ピリジン-1-オキシド)、または硫黄含有基の>S(O)および>S(O)2誘導体を含む。
【0048】
用語「置換アシル」は、基:(置換アルキル)-C(O)-;(置換シクロアルキル)-C(O)-;(置換アリール)-C(O)-;(置換ヘテロアリール)-C(O);および(置換ヘテロシクロアルキル)-C(O)-であって、前記基がカルボニル官能基を介して親構造に結合しているものを意味し、ここで、前記の置換されているアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルは、それぞれ、1個または複数(最高5個、例えば最高3個)の水素原子が、-Ra、-ORb、-O(C1-C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、1個または複数のグアニジン水素が低級アルキル基で置換されているグアニジン、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-CO2Rb、-CONRbRc、-NRcCORb、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Ra
[式中、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rbは、水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択され;あるいは、
RbおよびRcは、これらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜7員の窒素含有ヘテロシクロアルキル(これは、ヘテロシクロアルキル環中にO、NおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成し;
ここで、場合により置換されていてもよい各々の基は、未置換であるか、あるいはC1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル-、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH,-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールの置換基として)、-CO2H,-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数(例えば、1、2または3個)の置換基で独立して置換されている]
から独立して選択される置換基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクロアルキルを意味する。置換アシル残基中の1個または複数の炭素は、親への結合点がカルボニルにある限り、窒素、酸素または硫黄で置換されていてもよい。
【0049】
用語「置換アルコキシ」は、アルキル部分が置換されているアルコキシ(すなわち、-O-(置換アルキル))を意味し、ここで、前記の置換アルキルは、1個または複数(最高5個、例えば最高3個)の水素原子が、-Ra、-ORb、-O(C1-C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、1個または複数のグアニジン水素が低級アルキル基で置換されているグアニジン、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Ra
[式中、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rbは水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択され;
ここで、場合により置換されていてもよい各々の基は、未置換であるか、あるいはC1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル-、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH,-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールの置換基として)、-CO2H,-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数(例えば、1、2または3個)の置換基で独立して置換されている]
から独立して選択される置換基で置換されているアルキルを意味する。幾つかの実施形態において、置換アルコキシ基は「ポリアルコキシ」、すなわち-O-(場合により置換されていてもよいアルキレン)-(場合により置換されていてもよいアルコキシ)であり、これらとしては、-OCH2CH2OCH3などの基、ポリエチレングリコールなどのグリコールエーテルの残基、および-O(CH2CH2O)xCH3(式中、xは2〜20の整数、例えば2〜10、例えば2〜5の整数である)が挙げられる。別の置換アルコキシ基は、ヒドロキシアルコキシ、すなわち-OCH2(CH2)yOH(ここで、yは1〜10の整数、例えば1〜4の整数である)である。
【0050】
用語「置換アルコキシカルボニル」は、基:(置換アルキル)-O-C(O)-であって、前記基がカルボニル官能基を介して親構造に結合しているものを意味し、ここで置換アルキルは、1個または複数(最高5個、例えば最高3個)の水素原子が、-Ra、-ORb、-O(C1-C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、1個または複数のグアニジン水素が低級アルキル基で置換されているグアニジン、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-CO2Rb、-CONRbRc、-NRcCORb、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Ra
[式中、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rbは、水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択され;あるいは、
RbおよびRcは、これらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜7員の窒素含有ヘテロシクロアルキル(これは、ヘテロシクロアルキル環中にO、NおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成し;
ここで、場合により置換されていてもよい各々の基は、未置換であるか、あるいはC1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル-、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH,-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールの置換基として)、-CO2H,-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数(例えば、1、2または3個)の置換基で独立して置換されている]
から独立して選択される置換基で置換されているアルキルを意味する。
【0051】
用語「置換アミノ」は、基-NHRdまたは-NRdRd(式中、各Rdは、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、アルコキシカルボニル、スルフィニルおよびスルホニルから独立して選択される)を意味し、前記の置換アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールは、それぞれ、1個または複数(最高5個、例えば最高3個)の水素原子が、-Ra、-ORb、-O(C1-C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、1個または複数のグアニジン水素が低級アルキル基で置換されているグアニジン、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-CO2Rb、-CONRbRc、-NRcCORb、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRcおよび-NRcSO2Ra
[式中、
Raは、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rbは、水素、場合により置換されていてもよいC1-C6アルキル、場合により置換されていてもよいアリールおよび場合により置換されていてもよいヘテロアリールから選択され;
Rcは、水素および場合により置換されていてもよいC1-C4アルキルから選択され;あるいは、
RbおよびRcは、これらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されていてもよい5〜7員の窒素含有ヘテロシクロアルキル(これは、ヘテロシクロアルキル環中にO、NおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成し;
ここで、場合により置換されていてもよい各々の基は、未置換であるか、あるいはC1-C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1-C4アルキル-、ヘテロアリール-C1-C4アルキル-、C1-C4ハロアルキル-、-OC1-C4アルキル、-OC1-C4アルキルフェニル、-C1-C4アルキル-OH,-OC1-C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1-C4アルキル-NH2、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-NH(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキルフェニル)、-NH(C1-C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールの置換基として)、-CO2H,-C(O)OC1-C4アルキル、-CON(C1-C4アルキル)(C1-C4アルキル)、-CONH(C1-C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1-C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(C1-C4アルキル)、-N(C1-C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1-C4アルキル、-C(O)C1-C4フェニル、-C(O)C1-C4ハロアルキル、-OC(O)C1-C4アルキル、-SO2(C1-C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1-C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1-C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1-C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)および-NHSO2(C1-C4ハロアルキル)から独立して選択される1個または複数(例えば、1、2または3個)の置換基で独立して置換されている]
から独立して選択される置換基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールを意味し、またここで、場合により置換されていてもよいアシル、アルコキシカルボニル、スルフィニルおよびスルホニルは本明細書で定義した通りである。
【0052】
式Iで表される化合物には、式Iで表される化合物の光学異性体、ラセミ化合物およびそれらの他の混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、式Iで表される化合物には、炭素−炭素二重結合を有する化合物のZ型およびE型(すなわち、シス型およびトランス型)が含まれる。これらの状況で、単一エナンチオマーまたはジアステレオマー、すなわち光学活性形態は、不斉合成またはラセミ化合物の分割により得ることができる。ラセミ化合物の分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを用いるクロマトグラフィーなどの慣用方法により実施することができる。式Iで表される化合物が各種互変異性体形態で存在する場合、本発明の化学物質は本化合物のすべての互変異性体形態を含む。
【0053】
式Iで表される化合物は、例えば化合物の多形、偽多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、配座多形および非晶質形態をはじめとする本化合物の結晶質形態および非晶質形態、ならびにそれらの混合物も含む。「結晶質形態」、「多形」および「新規形態」は本明細書中ではほぼ同じ意味で使用することができ、特定の結晶質形態または非晶質形態が言及されていない限り、例えば多形、偽多形、溶媒和物、水和物、非溶媒和多形(無水物を含む)、配座多形および非晶質形態を含めた本化合物のすべての結晶質形態および非晶質形態、ならびにそれらの混合物を含むものとする。
【0054】
本発明の化学物質には、式Iで表される化合物およびそのすべての製薬上許容可能な形態が含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書に記載の化合物の製薬上許容可能な形態としては、その製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物が挙げられる。ある実施形態では、本明細書に記載の化合物は製薬上許容可能な塩の形態である。したがって、用語「化学物質」および「化学物質群」は、製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物もまた包含する。
【0055】
「製薬上許容可能な塩」としては、無機酸との塩、例えば塩酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、硝酸塩および類似の塩;ならびに有機酸との塩、例えばリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、およびアルカン酸塩、例えば酢酸塩、HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは0〜4である)および類似の塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に、製薬上許容可能なカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
さらに、式Iで表される化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基はその酸塩の溶液を塩基性化することにより得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基の場合、付加塩、特に製薬上許容可能な付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を製造するための慣用の方法に従って、その遊離塩基を適当な有機溶媒中に溶解し、その溶液を酸で処理することにより製造することができる。当業者には、非毒性の製薬上許容可能な付加塩を製造するのに使用可能な各種合成方法がわかるであろう。
【0057】
上述のように、プロドラッグ、例えば式Iで表される化合物のエステルまたはアミド誘導体もまた化学物質群の範囲に入る。用語「プロドラッグ」には、患者に投与した場合(例えばプロドラッグの代謝プロセシング時)に式Iで表される化合物になるすべての化合物が含まれる。プロドラッグの例としては、アセテート、ホルメートおよびベンゾエート、ならびに式Iで表される化合物中の官能基(例えば、アルコール基またはアミン基)の類似誘導体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
用語「溶媒和物」は、溶媒と化合物の相互作用により形成される化学物質を意味する。適当な溶媒和物は、製薬上許容可能な溶媒和物、例えば半水和物、一水和物、二水和物、三水和物等を含めた水和物などである。
【0059】
用語「キレート」は、2個(またはそれ以上)の点で化合物を金属イオンへ配位することにより形成される化学物質を意味する。
【0060】
用語「非共有結合性複合体」は、化合物と別の分子の相互作用により形成されるが、その化合物とその分子の間に共有結合が形成されていない化学物質を意味する。例えば、複合化はファンデルワールス相互作用、水素結合および静電相互作用(イオン結合とも呼ばれる)により生じさせることができる。
【0061】
用語「活性剤」は、生物活性を有する化学物質を示すために用いている。ある実施形態において、「活性剤」は医薬用途を有する化合物である。
【0062】
本発明の化学物質の「治療有効量」は、疾患を治療するためにヒトまたは非ヒト患者に投与した場合の有効量を意味し、例えば、治療有効量はミオシン活性化に対して応答性の疾患または障害を治療するのに十分な量であり得る。治療有効量は、実験的に、例えば化学物質の血中濃度をアッセイすることによって、あるいは理論的に、バイオアベイラビリティーを計算することによって確認することができる。
【0063】
「有意な」とは、ステューデントT検定などの統計的有意性の標準パラメトリック検定において統計上有意(p<0.05)であるすべての検出可能な変化を意味する。
【0064】
「患者」は、治療、観察または実験の対象であったか、または対象となるであろう動物、例えば哺乳動物(例えばヒト)を意味する。本発明の方法は、ヒトの治療および動物への適用の双方において有用であり得る。幾つかの実施形態では、患者は哺乳動物であり、また幾つかの実施形態では患者はヒトである。
【0065】
「治療」または「治療する」は、
a)疾患の予防、すなわち疾患の臨床症状を発生させないこと;
b)疾患を抑制すること;、
c)臨床症状の発生を遅延または停止させること;および/または
d)疾患の緩和、すなわち臨床症状を退行させること
を含めた、患者における疾患のあらゆる治療を意味する。
【0066】
式Iで表される化合物は、以下に記載されているように、(例えば、Cheminnovation製のNamExpert(商標名)またはCambridge Soft CorporationのChemDrawウルトラバージョン9.0の自動命名機能を用いて)命名および番号付けすることができる。例えば、化合物:
【化2】

【0067】
は、N-{3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミドと命名することができる。
【0068】
本明細書に記載の化学物質群は、当技術分野で公知の技術を用いて、例えば反応スキームを参照しながら以下に説明したようにして合成することができる。
【0069】
反する記載がない限り、本明細書に記載の反応は、大気圧下、通常-10〜110℃の温度範囲内で行う。さらに、実施例で使用されている場合または別段の記載がある場合を除き、反応時間および反応条件はおおよそのものであるとする。例えば、ほぼ大気圧下、約-10〜約110℃の温度範囲内で約1時間〜約24時間行い、一晩、平均約16時間反応させておく。
【0070】
用語「溶媒」、「有機溶媒」または「不活性溶媒」は、それぞれ、それらに関連して記載されている反応条件下で不活性である溶媒を意味する(例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム、塩化メチレン(すなわち、ジクロロメタン)、ジエチルエーテル、メタノール、ピリジン等が含まれる)。反する記載がない限り、本発明の反応で使用される溶媒は不活性有機溶媒である。
【0071】
所望により、本明細書に記載の化学物質群および中間体群の単離および精製を適当な分離方法または精製方法、例えば濾過、抽出、結晶化、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーまたは厚層クロマトグラフィー、あるいはこれらの方法の組合せにより行うことができる。適当な分離方法および単離方法の具体的な説明については、下記の実施例を参照されたい。しかし、他の同等な分離方法または単離方法も用いることができる。
【0072】
所望の場合、(R)-および(S)-異性体は当業者に公知の方法により、例えば、ジアステレオマーの塩または複合体を形成し、それを例えば結晶化により分離する方法;ジアステレオマーの誘導体を形成し、それを例えば結晶化、気液クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーにより分離する方法;1つの鏡像異性体を鏡像異性体特異的試薬と選択的に反応させ(例えば、酵素的酸化または還元)、その後、修飾された鏡像異性体と修飾されなかった鏡像異性体とを分離する方法;あるいは、例えばキラルリガンドが結合されているシリカなどのキラル支持体上またはキラル溶媒が存在しているようなキラルな環境中で気液クロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーを行う方法により分割することができる。あるいは、特定の鏡像異性体は、光学的に活性のある試薬、基質、触媒または溶媒を用いて不斉合成することにより、または不斉変換により1つの鏡像異性体を他の鏡像異性体に変換させることにより合成することができる。
【0073】
場合により置換されていてもよい出発化合物101、103、201aまたはb、301および他の反応物質の多くは、例えばAldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から市販されているか、または慣用の合成手法を用いて当業者により容易に合成することができる。
【0074】
反応スキーム1
【化3】

【0075】
式Iで表される化合物の製造
反応スキーム1を参照して、磁気攪拌機、還流冷却器およびサーマルウェル(thermal well)を備えたフラスコに、窒素下でホスゲンまたはホスゲン同等物(通常、トリホスゲン)および非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン)を充填する。非極性非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン)中に溶解した式101の化合物の溶液を約10〜60分間かけて滴下添加し、溶液を1〜15時間撹拌する。式103の化合物を少量ずつ添加し、溶液を約10〜60分間撹拌する。塩基(例えば、DIEA)を約1時間滴下添加し、溶液を約1〜15時間撹拌する。生成物である式105の化合物を単離・精製する。
【0076】
反応スキーム2
【化4】

【0077】
反応スキーム2は、式105の化合物の代替合成を示す。式201aのイソシアネートは、ホスゲンまたはホスゲン同等物を用いて対応アミン(すなわち、Rb-NH2)から、あるいはクルチウス転位またはホフマン転位を用いて対応カルボン酸(すなわち、Rb-COOH)から独立して形成され、単離することができる。あるいは、Xがp-ニトロフェノールなどの脱離基に相当する式210bの化合物をin situで製造することができる(例えば、Izdebski, J.; Pawlak, D. Synthesis (1989), 423)。非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはテトラヒドロフラン)中の式101および201の化合物の混合物を-40〜110℃で1〜15時間撹拌する。生成物である式105の化合物を単離・精製する。
【0078】
反応スキーム3
【化5】

【0079】
反応スキーム3を参照し、慣用の合成手法(例えば、「Comprehensive Organic Transformations」 Larock, Richard C., 1989, VCH publishers, Inc. p.353-365を参照されたい。なお、前記文献は参照により本明細書に組み入れるものとする。)を用いて、式301のベンジルアルコールを離脱基(「Lv」、例えばハロ、メシレートまたはトリフレート)に変換し、302を形成させる。
【0080】
非プロトン性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたはDMF)に溶解した式302の化合物および式HNR8R9のアミンの混合物を-40〜110℃で1〜15時間撹拌する。生成物である式202の化合物を単離・精製する。あるいは、慣用の合成手法(例えば、「Comprehensive Organic Transformations」 Larock, Richard C., 1989, VCH publishers, Inc. p.604-615を参照されたい。なお前記文献は、参照により本明細書に組み入れるものとする。)を用いて、式301のベンジルアルコールを式303のアルデヒドに酸化させる。
【0081】
溶媒(例えばジクロロメタン)に溶解した式303の化合物および式HNR8R9のアミンの混合物を還元剤(例えばトリアセトキシ水素化ホウ素)および場合により酸(例えば酢酸)と共に-40〜110℃で1〜36時間撹拌する。生成物である式202の化合物を単離・精製する。あるいは、慣用の合成手法(例えば、「Comprehensive Organic Transformations」 Larock, Richard C., 1989, VCH publishers, Inc. pp.972-76を参照されたい。なお前記文献は、参照により本明細書に組み入れるものとする。)を用いて、式304のカルボン酸をアミンとカップリングして、アミド305を形成させる。アミド305は、慣用の合成手法を用いて、例えば305をTHF中のボラン-ジメチルスルフィドで-40℃〜還流温度で1〜96時間処理することにより、式202の化合物に還元する。
【0082】
Qがブロモ、クロロ、ニトロ、アミノまたは保護アミノである式202の化合物から、慣用の合成手法を用いて式101の化合物を得ることができる。さらに、Qがシアノ、-CR6R7-ブロモ、-CR6R7-クロロ、-CR6R7-ニトロ、-CR6R7-シアノ、-CR6R7-アミノまたは保護-CR6R7-アミノである場合、慣用の合成手法を用いて式101の化合物を得ることができる。例えば、Qがニトロの場合、Pd/C触媒下で水素を用いることにより対応のアミンに還元することができる。
【0083】
反応スキーム4
【化6】

【0084】
反応スキーム4のステップ1を参照し、NMPに溶解した式400の化合物の溶液に過剰(例えば、およそ少なくとも2当量)のシアン化ナトリウムおよび過剰(例えば、少なくとも1当量、例えば1.35当量)の臭化ニッケル(II)を添加する。追加のNMPを添加し、溶液を約200℃にまでゆるやかに加温し、約4日間撹拌する。生成物である式401の化合物を単離し、場合により精製する。
【0085】
式401の化合物を不活性溶媒(例えばジクロロメタン)に溶解した0℃以下の溶液に、過剰(例えば、2当量以上)のDIBAL-Hなどの還元剤(例えば、DIBAL-Hの1M溶液)を、内部反応温度を0℃以下に維持しながら最高3.5時間かけて滴下添加する。生成物である式402Aおよび402Bの化合物の混合物を単離し、場合により精製する。反応スキーム4のステップ3を参照し、式402Aおよび402Bの化合物の混合物を不活性溶媒(例えば、THF)に溶解した溶液に、過剰(例えば、約1.05当量)の式Rc-H(式中、Rcは場合により置換されていてもよいアミノまたは場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルである)の化合物および過剰(例えば、約1.5当量)の還元剤(例えば、トリアセトキシ水素化ホウ素)を、内部反応温度を約45℃以下に維持しながら最高40分かけて少量ずつ添加する。生成物である式403の化合物を単離し、場合により精製する。反応スキーム4のステップ4を参照し、式403の化合物を溶媒(例えばアセトン)に溶解した溶液に、約1当量の式Rd-NCOの化合物を滴下添加する。この反応物を約1時間撹拌し、場合により加温し還流させる。生成物である式405の化合物を単離し、場合により精製する。
【0086】
場合により、ラセミ混合物をクロマトグラフィーカラムに入れ、(R)-および(S)-鏡像異性体に分離する。
【0087】
場合により、式Iで表される化合物を製薬上許容可能な酸と接触させ、対応する酸付加塩を形成させる。
【0088】
場合により、式Iの製薬上許容可能な酸付加塩を塩基と接触させ、対応する式Iの遊離塩基を形成させる。
【0089】
本発明のある実施形態には、以下の置換基群の組合せおよび交換を有する式Iの化合物が含まれているか、あるいは用いられる。これらは簡潔を期すために本明細書に具体的には記載されていないが本明細書の開示の教示内に包含されるものと見なされるべき他の置換基群の組合せおよび交換をサポートするために示している。
【0090】
ある実施形態において、本発明は、式I:
【化7】

【0091】
[式中、
T1は、-CR15R19-、-NR14-CR15R19-、または-CR15R19-NR14-であり;
R14、R15およびR19の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
R17およびR18の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
nは、1、2、または3であり;
R2は、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、または場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルであり、
R3は、Wが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Wが-N=である場合、R3は存在せず;
R4は、Yが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Yが-N=である場合、R4は存在せず;
R5は、Xが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Xが-N=である場合、R5は存在せず;
R13は、Zが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシル、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Zが-N=である場合、R13は存在せず;
R6およびR7は、独立して水素、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアルキル、または場合により置換されていてもよいアルコキシであるか、あるいはR6およびR7は、これらが結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員環(この環は、環中にN、OおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成するが、
ただし、R17およびR18の少なくとも1つの基は水素ではないか;あるいは
R15およびR19のどちらの基も水素ではない]
で表される化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物から選択される少なくとも1種の化学物質に関する。
【0092】
ある実施形態において、R2は、場合により置換されていてもよいアリールまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールである。ある実施形態において、R2は、場合により置換されていてもよいフェニル、場合により置換されていてもよいナフチル、場合により置換されていてもよいピロリル、場合により置換されていてもよいチアゾリル、場合により置換されていてもよいイソオキサゾリル、場合により置換されていてもよいピラゾリル、場合により置換されていてもよいオキサゾリル、場合により置換されていてもよい1,3,4-オキサジアゾリル、場合により置換されていてもよいピリジニル、場合により置換されていてもよいピラジニル、場合により置換されていてもよいピリミジニル、および場合により置換されていてもよいピリダジニルである。
【0093】
ある実施形態では、R2はピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピリジン-1-オキシド、フェニル、ピリミジン-5-イルおよびイソオキサゾール-3-イルから選択され、ここでピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピリジン-1-オキシド、フェニル、ピリミジン-5-イルおよびイソオキサゾール-3-イルの各々は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ(例:フルオロまたはクロロ)、シアノまたはアセチルで場合により置換されていてもよい。ある実施形態では、R2は場合により低級アルキルで置換されていてもよいピリジン-3-イルであり;R2は場合により低級アルキルで置換されていてもよいピリジン-4-イル、場合によりハロで置換されていてもよいフェニル、場合により置換されていてもよいピリミジン-5-イル、または場合により置換されていてもよいイソオキサゾール-3-イルである。ある実施形態では、R2はピリジン-3-イル;6-メチル-ピリジン-3-イル;6-シアノ-ピリジン-3-イル;6-アセチル-ピリジン-3-イル;6-トリフルオロメチル-ピリジン-3-イル;ピリジン-4-イル;2-メチル-ピリジン-4-イル;フェニル;4-フルオロフェニル;4-クロロフェニルまたは5-メチル-イソオキサゾール-3-イルである。
【0094】
ある実施形態では、nは1である。ある実施形態では、nは2である。ある実施形態では、nは3である。
【0095】
ある実施形態では、R6およびR7は、独立して水素、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアルキル、または場合により置換されていてもよいアルコキシであるか、あるいはR6およびR7はこれらが結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい3〜7員環(これは、場合により環中にN、OおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を含んでいてもよい)を形成する。
【0096】
ある実施形態では、R6およびR7は、独立して水素またはメチルである。ある実施形態では、R6およびR7は水素である。ある実施形態では、R6およびR7は、独立して水素またはメチルである。ある実施形態では、nは1であり、R6およびR7は独立して水素またはメチルである。ある実施形態では、nは1であり、R6はメチルであり、R7は水素である。ある実施形態では、nは2であり、R6およびR7はそれぞれ水素である。ある実施形態では、nは3であり、R6およびR7はそれぞれ水素である。ある実施形態では、R6はメチルであり、R7は水素である。
【0097】
ある実施形態では、R3は水素、シアノ、低級アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)またはハロ(例えば、クロロもしくはフルオロ)である。ある実施形態では、R3は水素、シアノ、フルオロ、クロロまたはメチルである。ある実施形態では、R3は水素またはフルオロである。
【0098】
ある実施形態では、R4およびR5は、独立して水素、ピリジニル、ハロおよび場合により置換されていてもよい低級アルキルから選択される。ある実施形態では、R4は水素、ピリジニル、ハロまたは場合により置換されていてもよい低級アルキルである。ある実施形態では、R4は水素、ピリジニル、トリフルオロメチルまたはフルオロである。
【0099】
ある実施形態では、R5は水素、ピリジニル、ハロ、または場合により置換されていてもよい低級アルキルである。ある実施形態では、R5は水素、クロロ、フルオロ、メチルまたはトリフルオロメチルである。
【0100】
ある実施形態では、R13は水素、低級アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)、ヒドロキシルまたはハロである。ある実施形態では、R13は水素またはフルオロである。
【0101】
ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの1つは水素でない。
【0102】
ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの1つはハロ、場合により置換されていてもよい低級アルキルまたはシアノであり、他は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの1つはハロ、メチルまたはシアノであり、他は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの2つはハロまたはシアノであり、他は水素である。
【0103】
ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの1つはフルオロであり、他は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの1つはシアノであり、他は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの2つは水素でない。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの2つはハロであり、他は水素である。ある実施形態では、R3、R4、R5およびR13のうちの2つはフルオロであり、他は水素である。
【0104】
ある実施形態では、T1は-CR15R19-である。ある実施形態では、T1は-CR15R19-NR14-である。ある実施形態では、T1は-NR14-CR15R19-であり、すなわち、R1は、R14およびR15で置換されているピペラジニル環である。
【0105】
ある実施形態では、R14、R15およびR19の各々の基は、水素、メチル、カルボキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、N,N-ジメチルカルバモイル、アセチル、プロピオニル、イソブチリル、プロポキシ、メトキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、アゼチジン-1-イルスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、メタンスルホンアミド、N-メチル-メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、N-メチル-エタンスルホンアミド、N-メトキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-エトキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-イソプロポキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-tert-ブトキシカルボニル-N-メチルアミノ、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルイソブチルアミド、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、N-メチル-(ジメチルアミノスルホニル)アミノ、およびピペリジン-1-イルから独立して選択される。
【0106】
ある実施形態では、R15およびR19は、水素、メチルおよびメトキシメチルから選択される。
【0107】
ある実施形態では、R14は、場合により置換されていてもよいアシル、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニルおよび場合により置換されていてもよいスルホニルから選択される。ある実施形態では、R14は、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルスルホニルおよび場合により置換されていてもよいアミノスルホニルから選択される。
【0108】
ある実施形態では、R17およびR18は、水素、場合により置換されていてもよい低級アルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよい低級アルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから独立して選択される。
【0109】
ある実施形態では、R17およびR18は、水素、場合により置換されていてもよい低級アルキルおよび場合により置換されていてもよい低級アルコキシから独立して選択される。ある実施形態では、R17およびR18は、水素、低級アルコキシおよび場合により置換されていてもよい低級アルキルから独立して選択される。ある実施形態では、R17およびR18は、水素、メチル、メトキシメチルおよびメトキシから独立して選択される。
【0110】
また、式II:
【化8】

【0111】
[式中、
T1、R17、R18、R6、R7、n、R3、R4、R5およびR13は、式Iで表される化合物について記載した通りであり、
T2は、-C=または-N=であり、
R16は、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアシル、場合により置換されていてもよいアルキルおよび場合により置換されていてもよいアルコキシから選択される]
で表される化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物から選択される少なくとも1種の化学物質も提供する。
【0112】
ある実施形態では、T2は-C=である。
【0113】
ある実施形態では、T2は-N=である。
【0114】
ある実施形態では、R16は水素、メチル、フルオロ、シアノ、メトキシおよびアセチルから選択される。ある実施形態では、R16は水素またはメチルである。
【0115】
ある実施形態では、式Iで表される化合物は以下から選択される:
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
{[3-({(2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
{[3-({(2S)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2S)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
N-{3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-{3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(シクロプロピルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-[3-({(2S)-2-メチル-4-[(メチルエチル)スルホニル]ピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル][(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルカルボニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸エチル;
N-(3-{[3,3-ジメチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[4-(エチルスルホニル)-3,3-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸2-メトキシエチル;
N-{3-[(4-アセチル-3,3-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
{(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド;
N-{5-[((3S,5R)-3,5-ジメチルモルホリン-4-イル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
({3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
{(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド;
[(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;および、
{[3-({(6S,2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2,6-ジメチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド。
【0116】
本明細書に記載の化学物質は、心臓筋節に対して選択的であって心臓筋節をモジュレートし、また、心臓ミオシンに結合し、かつ/または心臓ミオシンの活性を強化して、ミオシンがATPを加水分解する速度を速めるのに有用である。本明細書では、「モジュレートする」とは、ミオシン活性を増加または減少させることを意味するが、「強化する」とは活性を増加させることを意味する。また、本発明の代表的な化合物の試験において、それらの化合物を投与することにより心筋線維の収縮力を増加させることができることも確認された。
【0117】
本発明の化学物質群、医薬組成物および方法は、心疾患、例えば急性(または非代償性)うっ血性心不全および慢性うっ血性心不全、特に収縮心臓機能障害を伴う疾患(ただし、これらに限定されるものではない)の治療に使用される。さらなる治療用途としては、心臓移殖の待機患者の心臓機能を安定化させるための投与;および心拍が停止または遅くなった心臓がバイパスポンプの使用後に正常機能に回復するのを助けるための投与が挙げられる。
【0118】
ATP加水分解は、筋節中のミオシンにより力を生じさせるために用いられる。したがって、ATP加水分解の増加は、筋肉収縮の力または速度の増加に対応する。アクチンの存在下では、ミオシンATPアーゼ活性は100倍を超えて刺激される。よって、ATP加水分解により、ミオシンの酵素的活性が測定されるだけでなく、そのアクチンフィラメントとの相互作用も測定される。心臓筋節をモジュレートする化合物は、ミオシンによるATP加水分解の速度の増加または減少により同定することができ、ある実施形態では10μM未満(例えば、1μM未満)の濃度で1.4倍の増加を示す。かかる活性に関するアッセイでは、ヒト起源のミオシンを用いることができるが、通常他の生物から得たミオシンを使用する。修飾された細いフィラメントに結合しているミオシンにおけるカルシウムの調節的役割をモデル化する系もまた用いられる。
【0119】
あるいは、in vitroのATPアーゼ活性を測定するために、例えば2000年3月29日に出願された米国特許出願第09/539,164号に記載のような、生化学的に機能する筋節プレパレーションを用いることができる。ATPアーゼ加水分解のカルシウム感受性をはじめとする筋節の機能性生化学挙動は、その精製した各成分(特に、その調節成分およびミオシンを含む)を合わせることにより再構成することができる。別の機能性プレパレーションは、in vitroでの運動性アッセイである。これは、ミオシンを結合させたスライドガラスに試験化合物を添加し、ガラス表面で被覆したミオシン上をアクチンフィラメントが滑る速度を観察することにより行うことができる (Kron SJ. (1991) Methods Enzymol. 196:399-416)。
【0120】
In vitroでのATP加水分解速度はミオシンの強化活性と相関しており、これは例えば1999年5月18日に出願された米国特許出願第09/314,464号に記載のように、ADPまたはホスフェートのいずれかの産生をモニターすることにより調べることができる。またADP産生は、(酵素ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼを用いて)ADP産生をNADH酸化に結びつけ、吸光度または蛍光のいずれかによりNADHレベルをモニターすることにより観察することもできる (Greengard, P. , Nature 178 (Part 4534): 632-634 (1956); Mol Pharmacol 1970 Jan;6(1):31-40)。ホスフェート産生は、プリンアナログの開裂にホスフェート産生を結びつけるプリンヌクレオシドホスホリラーゼを用いてモニターすることができる。これにより、吸光度の変化 (Proc Natl Acad Sci U S A 1992 Jun 1; 89(11):4884-7) または蛍光の変化 (Biochem J 1990 Mar 1; 266(2):611-4) が得られる。タンパク質活性の絶対速度を測定するためには、1回の測定でもよいが、通常同一サンプルを異なる時間に複数回測定する。かかる測定を行うと、特に吸光度特性または蛍光特性が酵素の読出しの特性と似ている試験化合物の存在下で特異性がより高くなる。
【0121】
試験化合物は、マルチウェルプレートを用いる並行性が高い方法で、ウェル中に化合物を別個に入れるか、化合物を混合して試験することによりアッセイすることができる。次いで、標的タンパク質複合体、カップリング酵素および基質をはじめとするアッセイ成分とATPをウェルに添加し、プレートの各ウェルの吸光度または蛍光度をプレートリーダーで測定することができる。
【0122】
方法は、384ウェルプレートフォーマットおよび25μL反応容量を用いる。ピルビン酸キナーゼ/乳酸デヒドロゲナーゼ共役酵素系 (Huang TGおよびHackney DD. (1994) J Biol Chem 269(23):16493-16501)を用いて、各ウェル中のATP加水分解速度を測定する。当業者には明らかなように、アッセイ成分はバッファーおよび試薬に添加する。本明細書に概説した方法により反応速度が測定できるので、インキュベーション時間を最適化してバックグラウンドシグナルに対する十分な検出用シグナルが得られる。このアッセイは即時に行うと、アッセイのノイズに対してシグナルの比が高くなるATP加水分解速度が得られる。
【0123】
心筋線維ATPアーゼおよび/または収縮力のモジュレーションは、例えばH.Haikalaら,(1995) J Cardiovasc Pharmacol 25(5):794-801に記載のように、界面活性剤で透過処理した心臓線維(除膜心臓線維とも呼ばれる)または筋原線維(細胞内筋肉フラグメント)を用いて測定することもできる。除膜心臓線維は固有の筋節組織は維持しているが、細胞カルシウムサイクルの全様相は維持していない。このモデルは2つの利点を有する。すなわち、第1に、細胞膜が化合物の浸透に対するバリアーでないことと、第2に、カルシウム濃度がコントロールされることである。したがって、ATPアーゼまたは収縮力のいかなる増加も、筋節タンパク質に対する試験化合物の影響の直接的尺度となる。ATPアーゼは、上述の方法を用いて測定する。張力の測定は、筋肉線維の一端を固定柱に取り付け、他端を力を計測可能なトランスデューサに取り付けることにより行われる。線維を伸ばして緩みを除いた後、線維が収縮し始めると力トランスデューサが増加した張力を記録する。この測定は、線維が短縮しないので等尺性張力と呼ばれる。透過処理した筋肉線維の活性化は、前記線維を緩衝化カルシウム溶液に入れ、その後試験化合物または対照を添加することにより行われる。この方法で試験した場合、本明細書に記載の化学物質は生理的収縮活性に関連するカルシウム濃度では力を増加させたが、低カルシウム濃度またはカルシウム不存在下の弛緩バッファー中では力の増加はほとんどみられなかった(EGTAデータポイント)。
【0124】
心臓筋節および心臓ミオシンに対する選択性は、上述の1つまたは複数のアッセイにおいて非心臓筋節成分およびミオシンに置き換え、得られた結果を心臓均等物を用いて得られた結果と比較することにより調べることができる。
【0125】
In vitroでの再構成筋節アッセイまたは筋原線維で観察されるATPアーゼ速度を増加させる化学物質の能力は、S1-ミオシンの代謝回転速度の増加か、あるいは修飾されたアクチンフィラメントのCa++活性化に対する感受性の増加から生じるものと考えられる。これら2つの可能性のある作用機序を区別するには、まず、修飾されていないアクチンフィラメントを含んでいるS1のATPアーゼ活性に対する化学物質の影響を測定する。活性の増大が観察された場合は、Ca応答性調節機構に対する化学物質の影響はないと考えられる。次に、より感度の高いアッセイを用いて、修飾されたアクチンの存在下において、(純粋なアクチンフィラメントと比較して)S1-ミオシンに対する活性化作用が増強される化学物質を同定することができる。この第2のアッセイでは、心臓-S1および骨格-S1の心臓調節アクチンフィラメントおよび骨格調節アクチンフィラメントに対する活性が(すべて4つの順列で)比較される。
【0126】
In vivo活性の事前評価は、例えば、Popping Sら ((1996) Am. J. Physiol. 271: H357-H364)およびWolska BMら ((1996) Am. J. Physiol. 39: H24-H32)に記載のように、筋細胞収縮性の細胞モデルにおいて調べることができる。この筋細胞モデルの利点の一つは、収縮性を変化させる成分系を単離し、その主な作用部位(群)を決定することができることである。次に、細胞活性を有する化学物質群(例えば、次のプロフィールを有する化合物を選択する:2μMでベース(basal)に対する短縮率が120%を超えて増加、あるいは弛緩期の長さにおける変化(<5%の変化))は、全臓器モデルで、例えば心臓機能の摘出心臓(Langendorff)モデルで心エコー検査または侵襲性血行動態測定によりin vivoで評価することができ、また動物系心不全モデルで、例えばラット左冠動脈閉塞モデルで評価することもできる。最終的には、心疾患を治療するための活性は、ヒトにおけるプラセボ対照の盲検臨床試験で立証する。
【0127】
本明細書に記載の化学物質群は、治療有効量で、例えば上述の病状を治療するのに十分な用量で投与する。本明細書に記載の化学物質群に関してヒトに対する用量レベルは未だ最適化されていないが、通常1日用量は約0.05〜100mg/kg体重であり、ある実施形態では約0.10〜10.0mg/kg体重、ある実施形態では約0.15〜1.0mg/kg体重である。したがって、70kgのヒトに対して投与する場合、用量範囲は、ある実施形態では約3.5〜7000mg/日、ある実施形態では約7.0〜700.0mg/日、ある実施形態では約10.0〜100.0mg/日である。投与する化学物質の量は、言うまでもなく、治療対象の被験者および病状、疾患の重症度、投与の方法およびスケジュール、ならびに担当医の判断によって決まる。例えば、経口投与の好ましい用量範囲は、化合物の薬物動態に応じて約70〜700mg/日であり、静脈投与の場合の好ましい用量範囲は約70〜700mg/日である。
【0128】
本明細書に記載の化学物質群は、同等に有用である製剤で認められている投与方法(例えば、経口、舌下、皮下、静脈内、鼻腔内、局所、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、直腸内または眼内投与が含まれるが、これらに限定されるものではない)を介して投与することができる。本発明の主題である症状の治療においては、経口投与および非経口投与が一般的である。
【0129】
製薬的に許容可能な組成物としては、固体、半固体、液体およびエアロゾールの剤形、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁液剤、坐剤、エアロゾール剤等が挙げられる。また本化学物質群は、持続放出性剤形または制御放出性剤形、例えば、所定速度での長期的および/または持続的パルス型投与用のデポ注射、浸透圧ポンプ、丸剤、経皮用(電気的移送を含む)パッチ等で投与することができる。ある実施形態では、本組成物を、正確な用量を1回で投与するのに適した単位剤形で提供する。
【0130】
本明細書に記載の化学物質群は、単独で、あるいはより一般的には慣用の医薬用担体および賦形剤等(例えば、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム等)と組み合せて投与することができる。所望により、本医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝化剤等(例としては、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレエート等)を含むことができる。通常、意図する投与方法に依存するが、本医薬組成物は、化学物質を約0.005〜95重量%、ある実施形態では約0.5〜50重量%含む。かかる剤形を製造する実際の方法は当業者に公知であるか、または当業者には自明である。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvaniaを参照されたい。
【0131】
さらに、本明細書に記載の化学物質群は、他の薬剤、医薬品、アジュバント等と同時投与することができ、また医薬組成物にはそれらを配合することができる。適当な追加活性剤としては、例えば、心臓の神経ホルモン刺激をダウンレギュレートすることにより心不全の進行を遅らせ、心臓リモデリングを妨げる目的の治療薬(例えば、ACE阻害剤またはβ-遮断薬);心臓の収縮性を刺激することにより心臓機能を改善する治療薬(例えば、β-アドレナリン作動性アゴニストのドブタミンまたはホスホジエステラーゼ阻害薬のミルリノンなどの陽性変力作用薬);および心臓前負荷を低減させる治療薬(例えば、フロセミドなどの利尿薬)が挙げられる。他の適当な追加活性剤としては、血管拡張薬、ジギトキシン、抗凝血剤、ミネラルコルチコイドアンタゴニスト、アンギオテンシン受容体ブロッカー、ニトログリセリン、他の変力作用薬、および心不全の治療に使用されている他の治療薬が挙げられる。
【0132】
ある実施形態では、本組成物は、丸剤または錠剤の形態である。したがって、本組成物は、活性成分の他に、希釈剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム等;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム等;および結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体等を含む。別の固体剤形では、粉末、マルメ(marume)、溶液または懸濁液(例えば、プロピレンカーボネート、植物油またはトリグリセリド中のもの)をゼラチンカプセル中に封入する。
【0133】
製薬上投与可能な液体組成物は、例えば、少なくとも1種の化学物質および任意の製剤用アジュバントを担体(例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノール等)中に溶解、分散等などさせ、溶液または懸濁液を形成させることにより製造することができる。注射剤は、慣用の剤形で(液体の溶液または懸濁液として)、エマルションとして、あるいは注射前に液体中に溶解または懸濁させるのに適した固体剤形で製造することができる。かかる非経口投与用組成物中に配合される化学物質群の割合は、その特異的特性、ならびに化学物質群の活性および被験体のニーズに高度に依存する。しかし、溶液に溶解した活性成分の割合は0.01%〜10%で使用することができ、本組成物が後で上記割合に希釈される固体の場合には、より高い割合であってもよい。ある実施形態では、本組成物は、溶液中に活性剤を0.2〜2%含む。
【0134】
本明細書に記載の化学物質群の医薬組成物は、単独でまたはラクトースなどの不活性担体と組み合せて、ネブライザー用エアロゾールまたは溶液として、あるいは吸入用の微粉末として気道に投与することもできる。かかる場合、医薬組成物の粒子の直径は、50ミクロン未満であり、ある実施形態では10ミクロン未満である。
【0135】
通常、本明細書に記載の化学物質群をミオシン結合に関するスクリーニング法で用いるには、ミオシンを支持体に結合させ、本発明の化合物をアッセイに添加する。あるいは、本明細書に記載の化学物質群を支持体に結合させ、ミオシンを添加することもできる。新規結合剤を探索することができる化合物の分類としては、特異的抗体、ケミカルライブラリーのスクリーニングにおいて同定される非天然の結合剤、ペプチドアナログ等が挙げられる。特に注目されるのは、ヒト細胞に対する毒性が低い候補薬剤に関するスクリーニングアッセイである。各種のアッセイをこの目的に用いることができ、例えば、標識化in vitroタンパク質-タンパク質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合のイムノアッセイ、機能アッセイ(リン酸化アッセイ等)が挙げられる。例えば、米国特許第6,495,337号を参照されたい(前記公報はその全文を参照により本明細書に組み入れるものとする)。
【0136】
以下の実施例は、上述の本発明を利用する方法をより詳細に説明するためのものである。これらの実施例は、決して本発明の本来の範囲を限定しようとするものではなく、むしろ説明目的のために示しているものと理解されたい。本明細書中に引用したすべての参考文献は、その全文を参照により組み入れるものとする。
【実施例】
【0137】
実施例1ステップ1
【化9】

【0138】
1.0当量の1Aを乾燥DMF(0.37M)中に含む溶液に0.92当量のZn(CN)2および0.058当量のPd(PPh3)4を添加した。反応混合物を窒素でパージし、80℃に一晩加熱した。その後、さらに0.023当量のPd(PPh3)4を添加し、次いで反応物を6時間加熱した。次に反応混合物を室温まで冷却し、(1Aに基づいて)15容量のEtOAcで希釈し、有機層を水で3回、ブラインで1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮した。10% Et2O/ヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、1Bを固体(90%)として得た。
【0139】
実施例1ステップ2
【化10】

【0140】
0℃において1.0当量の1Bを乾燥Et2O(0.06M)中に含む溶液に1.1当量の水素化ジイソブチルリチウムアルミニウムの溶液(ヘキサン中に1.0M)を注射器を用いて滴下した。得られた溶液を0℃で一晩保持した。反応混合物を氷と氷酢酸の混合物に添加した。次いで、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水層を酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウムで2回、ブラインで1回洗浄した。次いで、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲルで10% EtOAc/ヘキサンを溶離液として用いて精製して、黄色固体(100%)を1C:1Bの80:20混合物として得た。
【0141】
実施例1ステップ3
【化11】

【0142】
1.0当量の1C:1Bの80:20混合物および約2当量のboc-ピペラジンをHOAcおよびDCMの混合物中に含むスラリー(1:1.4 v/v HOAc/DCM中に4.8Mのboc-ピペラジン)を冷却し(0℃)、ここにトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを固体として約5分間かけて添加した。反応物を室温まで加温し、2時間撹拌した。反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウムでクエンチし、酢酸エチルで希釈した。層を分離し、水層を酢酸エチルで3回洗浄した。有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空中で濃縮した。50% 酢酸エチル/ヘキサンを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、1D(67.7%)を黄色油状物として得た。
【0143】
実施例1ステップ4
【化12】

【0144】
MeOH中の1.0当量の1Dおよび触媒量の10% Pd/C(約10wt/wt%)の混合物(MeOH中に約0.6Mの1D)を50psiのH2雰囲気下で45分間撹拌した。H2雰囲気をN2で置換した後、反応混合物を珪藻土を通して濾過し、珪藻土をMeOHで洗浄した。MeOHを濃縮すると1Eが単離された。
【0145】
実施例1ステップ5
【化13】

【0146】
N2雰囲気下、室温で、1.0当量のアニリン1Eを乾燥DCM中に含む溶液(DCM中に約0.1Mの1E)に、わずかに過剰(約1.2当量)の2-メチル-5-イソシアナトピリジンを注射器を用いて添加した。混合物を1時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および酢酸エチルを順次添加した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。5%メタノール/DCMを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、1Fを得た。
【0147】
実施例1ステップ6およびステップ7
【化14】

【0148】
1.0当量の1FをCH2Cl2中に含む溶液(DCM中に約0.14Mの1F)に、約200当量のトリフルオロ酢酸(TFA)を添加した。反応混合物を30分間撹拌し、濃縮した。生じた残渣をEtOAc(反応混合物の容量の約1.6倍)中に溶解し、3N NaOH(2回)およびブラインで順次洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO4)、濃縮して、所望の遊離塩基を得た。この塩基はさらに精製することなく使用した。
【0149】
1.0当量の上記遊離塩基および1.2当量のDIPEAを乾燥THF中に含む溶液(THF中に約0.2Mの遊離塩基)に、1.1当量のクロロギ酸メチルを注射器を用いて添加し、生じた混合物を1時間撹拌した。混合物に炭酸水素ナトリウム水溶液、続いて酢酸エチルを順次添加した。有機層を分離し、炭酸水素ナトリウム水溶液で2回、ブラインで1回洗浄した。合わせた水層を酢酸エチルで1回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。5% MeOH/DCMを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、4-(3-フルオロ-5-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)-ピペラジン-1-カルボン酸メチルを得た。MS 402 (M+H)。
【0150】
1.0当量の上記遊離塩基および1.2当量のDIPEAを乾燥THF中に含む溶液(THF中に約0.2Mの遊離塩基)に、1.1当量のジメチルスルファモイルクロリドを注射器を用いて添加した。数時間後、反応が完了した。混合物を炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、酢酸エチルで希釈し、重炭酸塩で2回、ブラインで1回洗浄した。合わせた水層を酢酸エチルで1回抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。5% MeOH/DCMを溶離液として用いるシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、4-(3-フルオロ-5-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)-N,N-ジメチルピペラジン-1-スルホンアミドを得た。MS 451 (M+H)。
【0151】
実施例2ステップ1
【化15】

【0152】
THF中1.0当量の(4-フルオロ-3-ニトロ-フェニル)-メタノール(2A)(THF中に約1Mの2A)および約1.1当量のピリジンに、約1.1当量のメタンスルホニルクロリドを添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、次いで濃縮した。残渣を10%〜50% EtOAc/ヘキサンを溶離液として用いるシリカフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、メタンスルホン酸4-フルオロ-3-ニトロ-ベンジルエステル(2B)(57%)を得た。
【0153】
実施例2ステップ2
【化16】

【0154】
DMF中1.0当量のメタンスルホン酸4-フルオロ-3-ニトロ-ベンジルエステル(2B)(DMF中に約0.6Mの2B)に、約1.05当量のTEAおよび約1.0当量のピペラジン-1-カルボン酸t-ブチルを添加した。混合物を室温で30分間撹拌し、EtOAcで希釈し、NH4Cl溶液で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、蒸発させた。50% EtOAc/ヘキサンを溶離液として用いるシリカフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、4-(4-フルオロ-3-ニトロ-ベンジル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(2C)を得た。
【0155】
実施例2ステップ3
【化17】

【0156】
メタノール中1.0当量の4-(4-フルオロ-3-ニトロ-ベンジル)-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(2C)(MeOH中に約0.2Mの2C)を60psiの水素下で触媒量のPd(OH)2/Cを用いて一晩処理した。混合物を珪藻土を介して濾過し、濃縮して油状物とした。この油状物をTHF中に溶解し、約1.05当量の6-メチルピリジン-3-イソシアネートで処理した。50℃で30分間撹拌した後、混合物を濃縮した。残渣を逆相HPLCにより精製し、4-{4-フルオロ-3-[3-(6-メチル-ピリジン-3-イル)-ウレイド]-ベンジル}-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(2D)を得た。
【0157】
実施例2ステップ4およびステップ5
【化18】

【0158】
MeOH中1.0当量の4-{4-フルオロ-3-[3-(6-メチル-ピリジン-3-イル)-ウレイド]-ベンジル}-ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(2D)(MeOH中に約0.1Mの2D)に、2容量のジオキサンに溶解のHCl(4N)を添加し、反応混合物を50℃で15分間撹拌し、蒸発させて固体とした。この固体をDCMと合わせ、約5当量のTEAで処理し、3つの反応混合物Aに均等に分割した。反応混合物Aの第1の部分を1.2当量のメチルカルボニルクロリドで処理し、一晩撹拌した。得られた混合物を濃縮し、逆相HPLCにより精製し、4-{4-フルオロ-3-[3-(6-メチル-ピリジン-3-イル)-ウレイド]-ベンジル}-ピペラジン-1-カルボン酸メチルエステルを得た。MS 402 (M+H)。反応混合物Aの第2の部分を1.2当量のジメチルスルファモイルクロリドで処理し、一晩撹拌した。得られた混合物を濃縮し、逆相HPLCにより精製し、4-{4-フルオロ-3-[3-(6-メチル-ピリジン-3-イル)-ウレイド]-ベンジル}-ピペラジン-1-スルホン酸ジメチルアミドを得た。MS 451 (M+H)。
【0159】
実施例3ステップ1
【化19】

【0160】
N2下、室温で、丸底フラスコに1当量の3-クロロ-2-フルオロアニリン(3A)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP中に約1.5Mの3A)、2.2当量のシアン化ナトリウムおよび1.35当量の臭化ニッケル(II)を充填した。N2下で、追加のNMPを加えることにより濃度を半減させ、溶液を200±5℃に穏やかに加温し、N2下で4日間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物を30容量のtert-ブチルメチルエーテル(MTBE)で希釈し、セライトを通して濾過した。次いで、セライトパッドを10容量のMTBEで濯いだ。有機層を40容量のブライン、40容量の水で2回、40容量のブラインで洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると褐色固体が生じた。この固体を減圧(〜30Hg)下40℃で8時間で乾燥し、式3Bの化合物(収率71%)を得た。
【0161】
実施例3ステップ2
【化20】

【0162】
窒素混合物下、室温で、3Bをジクロロメタン中に含む溶液(DCM中に約1.5Mの3B)を0℃以下に冷却し、内部反応温度を0℃以下に維持しながらDCM中2.0当量の1M水素化ジイソブチルリチウムアルミニウム(DIBAlH)を〜3.5時間かけて滴下添加した。DIBAlHの添加が完了したら、内部反応温度を10℃以下に維持しながら、反応混合物を激しく撹拌しながら40容量のロシェル塩および10容量のDCMの冷却(〜0℃)溶液に滴下添加した。フラスコを10容量のDCMで濯ぎ、混合物を室温まで加温し、4時間撹拌した。層を分離し、水層を20容量のDCMで逆抽出した。合わせた有機層を20容量の水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると褐色泡状物が得られた。この泡状物を減圧下(〜30Hg)、室温で乾燥して、3C(収率92%)を得た。
【0163】
実施例3ステップ3
【化21】

【0164】
ステップ3A/B:
1当量の3C、テトラヒドロフラン(THF中に約1.4Mの3C)および1.05当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルの溶液を周囲温度で3時間撹拌した。内部反応温度を45℃以下に維持しながら、反応混合物に1.5当量のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを〜40分間かけて少量ずつ添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。内部反応温度を30℃以下に維持しながら、反応混合物に5容量の水を1時間かけて滴下添加した。次いで、5容量の酢酸エチル(EtOAc)を添加し、層を分離した。水層を5容量のEtOAcで逆抽出した。合わせた有機層を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、必要に応じてpHを8(pHydrionペーパー)とするために固体炭酸水素ナトリウムを添加した。層を分離し、有機層を5容量のブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾燥ステップにおいて活性炭を添加した。有機層をセライトを通して濾過し、セライトパッドをEtOAcで4回濯いだ。有機層を濃縮し、回転蒸発器を用いて一晩乾燥し(室温にて〜30Hg)、黄褐色油状物を得た。
【0165】
ステップ3C:
計算はすべて3C(R=O)の量に基づいている。N2下、氷/ブライン/アセトン浴において内部反応温度を0℃以下に維持しながら、3容量のメタノール(3C(R=O)に基づく)に3当量のアセチルクロリドを3時間かけて滴下添加した。次いで、溶液を0℃以下でさらに1時間撹拌した。内部反応温度を15℃以下に維持しながら、1.0当量の(上記ステップ3A/3Bから得た)未精製3DをMeOH中に含む溶液(3C(R=O)に基づき約3.6M)を30分間かけて滴下添加した。反応物を室温まで一晩加温した。翌日固体を濾過し、0.5容量のMeOHで2回、5容量の1:1のtert-ブチルメチルエーテル(MTBE):MeOH、および5容量のMTBEで濯いだ。
【0166】
次いで、固体を5容量のEtOAc中に入れ、必要に応じて水層のpHを8(pHydrionペーパー)とするために飽和炭酸水素ナトリウムおよび固体炭酸水素ナトリウムを添加した。層を分離し、水層を5容量のEtOAcで抽出した。合わせた有機層を5容量のブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮すると薄いオレンジ色の固体が得られた。この固体を減圧(〜30Hg)下〜40℃で乾燥して、3D(収率50%)を得た。
【0167】
実施例3ステップ4
【化22】

【0168】
3Dをアセトン中に含む溶液(アセトン中に約2.7Mの3D)に1.0当量の5-イソシアナト-2-メチルピリジンを9分間かけて添加添加した。添加中に大量の沈殿が形成され、反応物を1時間撹拌した。反応混合物を2時間還流加温し、室温まで2.5時間冷却した。次いで、反応物を1時間還流加温し、室温まで一晩冷却した。反応物を濾過し、1容量のアセトンで濯いだ後、2容量の酢酸エチルで3回濯いだ。固体を減圧(〜30Hg)下60℃で一晩乾燥し、4-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルの白色粉末(収率86%)を得た。この生成物を次のように再処理した。
【0169】
N2下で上記で得た4-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルをアセトン(約0.2M)中に溶解した。次いで、反応物を2.5時間還流加温し、室温まで一晩冷却した。反応物を濾過し、1容量のアセトンで濯いだ後、2容量の酢酸エチルで3回濯いだ。固体を減圧(〜30Hg)下60℃で一晩乾燥し、4-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルを白色粉末(収率79%)として得た。この生成物を次のように再処理した。
【0170】
N2下で上記で得た4-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルをアセトン(約0.2M)中に溶解した。次いで、反応物を還流加温し、室温まで一晩冷却した。反応物を濾過し、1容量のアセトンで濯いだ後、2容量の酢酸エチルで3回以上濯いだ。固体を減圧(〜30Hg)下60℃で一晩乾燥し、4-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルを白色粉末(収率73%)として得た。MS 402 (M+H)。
【0171】
実施例4ステップ1
【化23】

【0172】
三口丸底フラスコを窒素で少なくとも10分間パージした。このフラスコに1.0当量の4A、CH2Cl2(DCM中に約1.2Mの4A)および約1.1当量のDIPEAを充填した。次いで、フラスコを10±5℃に冷却した。フラスコを冷却しながら、1.2当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルをCH2Cl2(約5.3M)中に入れた。材料が溶解しなかったので、さらにDCM中0.05当量のDIPEA(約0.3M)を添加した。材料は溶解せず、その後内部反応温度を30℃以下に維持しながら懸濁液を50分間かけて滴下添加した。冷却浴を外し、反応混合物を還流加温した。反応混合物を還流下で19時間維持した。さらに0.05当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルを添加し、反応物をさらに2.5時間還流した。反応物を室温まで冷却し、5容量の水で洗浄した。水層を5容量のCH2Cl2で逆抽出した。合わせた有機層を5容量の10% AcOH/水で洗浄した。次いで、有機層を5容量の飽和炭酸水素ナトリウムおよび5容量のブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発器を用いて30±5℃で濃縮して残渣とした。MTBEを回転蒸発フラスコに20±5℃で充填し、溶液になるまでフラスコを回転させた。ヘキサンをフラスコに充填し、溶液を20±5℃で2.5時間撹拌した。固体を濾過し、ヘキサンで濯いだ。一定の質量となるまで(〜22時間)、固体を最大減圧下40℃以下で乾燥して、4Bを薄黄色固体(収率66%)として得た。
【0173】
実施例4ステップ2
【化24】

【0174】
高圧反応器に、4Bに対して25重量%のPt/Cを(Pt/Cに対して)8容量のTHF中に含むスラリー、続いて1.5当量のK2CO3をTHF中に含むスラリー(約0.67M)、次いで1.0当量の4BをTHF中に含む溶液(約0.47M)を添加した。反応ジャケットを10℃に設定し、内部反応温度を30℃以下に維持しながら、反応器に50psiのH2を充填した。反応物を9時間45分撹拌した後、さらに3.5時間撹拌した。反応物を濾過した。反応フラスコおよびフィルターを(4Bに対して)9容量のMeOHで濯ぎ、回転蒸発器を用いて50℃以下で濃縮した。残渣を4容量のEtOAc中に溶解し、4容量の水で洗浄した。水層を4容量のEtOAcで逆抽出した。合わせた有機層を4容量のブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、回転蒸発器を用いて50℃以下で濃縮すると、残渣が得られた。溶媒が回転蒸発器から放出されなくなったら、残渣に2容量のMTBEを充填し、溶液を回転蒸発器を用いて50℃以下で濃縮すると、残渣が得られた。溶媒が回転蒸発器具から放出されなくなったら、物質を回転蒸発器において最大減圧下で15時間保持した。次いで、物質をトリチュレートするためにMTBE(2容量)を充填し、フラスコを2時間回転させた。固体を濾過し、0.5容量のMTBEで濯いだ。一定の質量となるまで(〜22時間)、固体を最大減圧下、50℃以下で乾燥して、4Cを薄黄色固体(収率87%)として得た。
【0175】
実施例4ステップ3
【化25】

【0176】
三口丸底フラスコを窒素で少なくとも10分間パージした。次いで、このフラスコに1.0当量の4Cを含むアセトン(約0.56M)を充填した。フラスコを27℃に加温して溶液を形成した。内部温度を45℃以下に維持するように添加速度をコントロールしながら、約1当量の5-イソシアナト-2-ピリジンを68分間かけて滴下添加した。添加後、反応混合物を45℃以下で約5時間維持した。次いで、反応物を35分間穏やかに還流加温した後、室温まで一晩(15時間)冷却した。固体を濾過し、0.45容量のアセトンおよび1.7容量のEtOAcで濯いだ。固体を真空オーブンにおいて50℃以下で乾燥し、4-(3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチル(4D)(収率89%)を得た。MS 384 (M+H)。
【0177】
実施例5ステップ1
【化26】

【0178】
N2雰囲気下で1.0当量の2-フルオロ-3-ブロモ-ニトロベンゼン(5A)、1.0当量の塩化テトラブチルアンモニウム、1.5当量のNaHCO3およびDMF中の2.0当量のアリルアルコール(DMF中に約1Mのアリルアルコール)の混合物に0.4当量のPdCl2を添加した。反応混合物を60℃に加温し、N2下で16時間撹拌した。温度を70℃に上げ、反応混合物をさらに4時間撹拌した。さらに1当量のアリルアルコールおよび0.1当量のPdCl2を添加し、反応混合物をN2下で6時間撹拌した。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈した。混合物を水、1N HClおよびブラインで順次洗浄した。有機層を乾燥し、濃縮して残渣とした。シリカゲル上で10%EtOAc/ヘキサン〜60%EtOAc/ヘキサンを勾配溶離液として用いて精製し、5Bを得た。
【0179】
実施例5ステップ2
【化27】

【0180】
N2雰囲気下で1.0当量の5BをCH2Cl2中に含む溶液(約0.04M)に、1.3当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルHCl塩および1.2当量のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを順次添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。さらに反応混合物に0.5当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルHCl塩および2当量のトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを順次添加し、混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、水およびブラインで順次洗浄した。有機層を乾燥し、濃縮して残渣とした。シリカゲル上で2:1のEtOAc/ヘキサンを溶離液として用いて精製し、5Cを得た。
【0181】
実施例5ステップ3
【化28】

【0182】
1当量の5Cおよび50wt当量の10% Pd/CをMeOH中に含む混合物(MeOH中に0.06Mの5C)を30psiのH2雰囲気で2時間撹拌した。H2雰囲気をN2で置換した後、反応混合物を珪藻土を通して濾過し、珪藻土をMeOHで洗浄した。MeOHを濃縮すると、5Dがほぼ定量的収率で単離された。
【0183】
実施例5ステップ4
【化29】

【0184】
N2雰囲気下、室温で、1当量の5DをCH2Cl2中に含む溶液(約0.1M)に1当量の5-イソシアナト-2-ピリジンを添加し、得られた混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2で希釈し、水およびブラインで順次洗浄した。有機層を乾燥し、濃縮して残渣とした。10% CH3CN/水〜100% CH3CNを勾配溶離液として用いる分取逆相HPLC(C-18カラム)により精製し、4-(3-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)フェニル)プロピル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルを得た。MS 430 (M+H)。
【0185】
実施例6ステップ1およびステップ2
【化30】

【0186】
N2下、1.0当量の6A、ジオキサン中の1.0当量のトリブチル(1-エトキシビニル)スズ(約0.4M)の混合物に0.05当量のPdCl2(PPh3)2を添加した。混合物をN2下95℃で4時間加熱した。反応混合物に1:1 v/v EtOAc/(1M KF)溶液の混合物を添加し、混合物を1時間攪拌した。沈殿を濾別した。有機層を乾燥し、濃縮して、6Bを得た。これはさらに精製することなく使用した。
【0187】
6BをTHF中に含む混合物(6Aに対して0.8M)に約2.3容量の2N HClを添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。反応混合物に飽和NaHCO3を添加した。THFを除去するために反応混合物を濃縮し、得られた混合物に反応混合物の容量の約3倍容量のエーテルを添加した。有機層を乾燥し、濃縮して残渣とした。残渣をシリカゲル上で精製し、6C(2ステップで87%)を得た。
【0188】
実施例6ステップ3
【化31】

【0189】
N2下、20℃で、0.1〜0.15当量の(S)-1-メチル-3,3-ジフェニル-ヘキサヒドロピロロ[1,2-c][1,3,2]オキサアザボロールをトルエン中に含む混合物(1〜1.5M)およびトルエン(トルエン中のオキサアザボロールの容量の約10倍容量)に、1.05当量のEt2NPh-BH3を添加した。この反応混合物に、1.0当量の6Cを含むトルエン(約0.4M)を1.5時間かけて滴下添加した。次いで、反応混合物をさらに室温で1時間攪拌した。反応混合物に約1.9容量のMeOHおよび約3.4容量の1N HClを順次添加した。混合物を20分間攪拌した。反応混合物に約7.8容量のエーテルおよび約7.8容量のブラインを添加した。有機層を分離し、乾燥し、濃縮して残渣とした。この残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、6D(79%)を得た。
【0190】
実施例6ステップ4
【化32】

【0191】
0℃において、1.0当量の6Dを含むエーテル(約0.55M)および1.2当量のEt3Nに、約1.1当量のメタンスルホニルクロリドを滴下添加した。混合物を室温で30分間攪拌した。反応混合物を濾過し、濃縮して残渣とした。この残渣を約5.9容量のDMF中に溶解し、1.2当量のピペラジン-1-カルボン酸メチルHCl塩および4当量のK2CO3を添加した。反応混合物を50℃で16時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、約29容量のEtOAcおよび29容量の飽和NH4Clを添加した。有機層を分離し、乾燥し、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、6Eを得た。
【0192】
実施例6ステップ5
【化33】

【0193】
1当量の6Eおよび10wt当量の10% Pd/Cを含むMeOHの混合物を45psiのH2雰囲気下で0.5時間攪拌した。H2雰囲気をN2で置換した後、反応混合物を珪藻土を通して濾過し、珪藻土をMeOHで洗浄した。MeOHを濃縮すると、6Fが単離された。
【0194】
実施例6ステップ6
【化34】

【0195】
N2雰囲気下、室温で、1.0当量の6FをCH2Cl2中に含む溶液(約0.3M)に1.0当量の5-イソシアナト-2-メチルピリジンを添加し、得られた混合物を室温で0.5時間撹拌した。反応混合物を濃縮して残渣とした。逆相HPLC(C-18カラム)により精製し、(S)-4-(1-(2-フルオロ-3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)フェニル)エチル)-ピペラジン1-カルボン酸メチルを白色固体として得た。MS =416 (M+H)。
【0196】
実施例7ステップ1
【化35】

【0197】
オーブン乾燥した丸底フラスコにピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(1.1当量)、3-ニトロフェニル酢酸(7A、1.0当量)、EDC(1.2当量)およびHOBT(1.2当量)を充填した。フラスコに窒素を流し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF中に約0.5Mの7A)およびトリエチルアミン(2.0当量)を注射器を用いて添加した。得られた反応混合物を室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物をEtOAcで希釈し、H2Oで4回、1NのKHSO4水溶液で2回、飽和NaHCO3で1回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。4-(2-(3-ニトロフェニル)アセチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7B)が固体(80%)として単離された。これはさらに精製することなく使用した。
【0198】
実施例7ステップ2
【化36】

【0199】
4-(2-(3-ニトロフェニル)アセチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7B、1.0当量)をTHF中に含む溶液(THF中に約0.5Mの7B)に、ボラン-THF(2.0当量)を注射器を用いて添加した。得られた反応混合物を2時間還流加熱した。反応混合物を氷水浴において冷却し、10% HOAc水溶液をゆっくり添加した。混合物を真空中で濃縮し、残渣をEtOAc中に溶解した。有機層を水と分配し、50% NaOHを添加することにより水層を塩基性(pH〜9)とした。次いで、有機層を飽和NaHCO3水溶液で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。得られた4-(3-ニトロフェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7C、定量)は、さらに精製することなく使用した。
【0200】
実施例7ステップ3
【化37】

【0201】
パールガラスライナーに、4-(3-ニトロフェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7C、1.0当量)およびメタノール(MeOH中に約0.2Mの7C)を充填した。この溶液に12.5wt当量の10% Pd/Cをメタノール中に含むスラリーを添加した。反応混合物をパール水素化容器に密封し、H2を用いる加圧/ガス抜きサイクルに3回かけた。反応混合物を室温にて45psiのH2で2.5時間進行させた。次いで、反応混合物に12.5wt当量のPd(OH)2/Cを充填し、容器を水素を用いて再加圧した(45psi)。1時間後、反応混合物を珪藻土パッドを通して濾過し、珪藻土をMeOHで洗浄し、合わせた有機層を真空中で濃縮し、所望の4-(3-アミノフェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7D、63%)を得た。これは、さらに精製することなく用いた。
【0202】
実施例7ステップ4
【化38】

【0203】
4-(3-アミノフェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7D、1.0当量)をTHF中に含む溶液(THF中に約0.3Mの7D)に、5-イソシアナト-2-メチルピリジン(1.0当量)を滴下添加した。得られた反応混合物を2時間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3水溶液を添加した。混合物をEtOAcで希釈し、層を分離した。有機層を飽和NaHCO3水溶液で2回、ブラインで1回洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で5〜12% MeOH/CH2Cl2を勾配溶離液として用いて精製し、4-(3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)フェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7E、63%)を得た。
【0204】
実施例7ステップ5
【化39】

【0205】
4-(3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)フェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチル(7E、1.0当量)をMeOH中に含む溶液(MeOH中に約0.2Mの7E)に、2M HClのジオキサン溶液(約12当量)を添加した。70分後、反応混合物を真空中で濃縮した。次のアシル化に対しては精製することなくこれを用いた。MS 398 (M+H)。
【0206】
前ステップから得られたHCl塩(1.0当量)をTHF中に懸濁し(THF中に約0.15Mの塩)、トリエチルアミン(4.0当量)を添加した。反応混合物を0℃に冷却し、クロロギ酸メチル(1.05当量)を滴下添加し、得られた混合物を室温で5分間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3水溶液およびEtOAcを順次添加した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3水溶液で1回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で2〜10% MeOH/CH2Cl2を勾配溶離液として用いて精製し、4-(3-(3-(6-メチルピリジン-3-イル)ウレイド)フェネチル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルを得た。
【0207】
実施例8
【化40】

【0208】
1.0当量の8AをMeOH中に含む溶液(約0.07M)に、2M HClのジオキサン溶液(約30当量)を添加した。70分後、反応混合物を真空中で濃縮し、これは以下のアシル化のために精製することなく用いた。
【0209】
前ステップから得られたHCl塩をTHF(約0.05M)中に懸濁し、約18当量のジイソプロピルエチルアミンを添加した。反応混合物を0℃に冷却し、約1当量のエタンスルホニルクロリドを滴下添加した。得られた混合物を室温で5分間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3水溶液およびEtOAcを順次添加した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3水溶液で1回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で1〜10% MeOH/CH2Cl2を勾配溶離液として用いて精製した後、1:1のアセトン/エーテル中でトリチュレートし、1-(3-((4-(エチルスルホニル)ピペラジン-1-イル)メチル)-2-フルオロフェニル)-3-(6-メチルピリジン-3-イル)尿素メチルを得た。MS 436 (M+H)。
【0210】
実施例9
【化41】

【0211】
N2雰囲気下、室温で、約0.4当量のトリホスゲンをTHF中に含む溶液(約0.04M)に、1当量の5-メチルイソオキサゾール-3-アミンおよび2当量のジイソプロピルエチルアミンを含むTHF(THF中に約0.2Mのアミン)を添加した。反応混合物を15分間撹拌した。この混合物に1.0当量の9Aを含むTHF(THF中に約0.2mMの9A)を添加した。得られた混合物を10分間撹拌した。反応混合物に飽和NaHCO3水溶液およびEtOAcを順次添加した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO3水溶液で1回、ブラインで1回洗浄し、Na2SO4で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。シリカゲル上で1〜10% MeOH/CH2Cl2を勾配溶離液として用いて精製し、4-(4-フルオロ-3-(3-(5-メチルイソオキサゾール-3-イル)ウレイド)ベンジル)ピペラジン-1-カルボン酸メチルを得た。MS 392 (M+H)。
【0212】
以下の化合物を上記の代表的化合物と同様な方法で合成した:
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル (458 (M+H));
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル (416 (M+H));
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル (430 (M+H));
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド (450 (M+H));
{[3-({(2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
{[3-({(2S)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2S)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
N-{3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-{3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(シクロプロピルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-[3-({(2S)-2-メチル-4-[(メチルエチル)スルホニル]ピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル][(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルカルボニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸エチル;
N-(3-{[3,3-ジメチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[4-(エチルスルホニル)-3,3-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸2-メトキシエチル;
N-{3-[(4-アセチル-3,3-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
{(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド;
N-{5-[((3S,5R)-3,5-ジメチルモルホリン-4-イル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド (373 (M+H));
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル (472(M+H+));
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル (430(M+H+));
({3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド (414(M+H+));
{(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド (443(M+H+));
[(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド (464(M+H+));および、
{[3-({(6S,2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2,6-ジメチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド (479(M+H+))。
【0213】
実施例10
標的同定アッセイ
特異性アッセイ:心臓ミオシンに対する特異性は、ミオシンアイソフォームのパネル、すなわち心筋、骨格筋および平滑筋のアクチン刺激性ATPアーゼに対する化学物質の影響を単一の50μMの化学物質濃度または化学物質の複数濃度で比較することによって評価する。
【0214】
実施例11
用量依存性心臓ミオシンATPアーゼモジュレーションのin vitroモデル
再構成心臓筋節アッセイ:用量応答は、以下の試薬(ここに記載した濃度は最終アッセイ濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)、ATP(1mM)、DTT(1mM)、BSA(0.1mg/mL)、NADH(0.5mM)、PEP(1.5mM)、ピルビン酸キナーゼ(4U/mL)、乳酸デヒドロゲナーゼ(8U/mL)および消泡剤(90ppm)を含むカルシウム緩衝化ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ共役ATPアーゼアッセイを用いて測定する。pHは水酸化カリウムを添加することにより22℃で6.8に調節する。カルシウムレベルは、0.6mM EGTAおよび異なる濃度のカルシウムを含有する緩衝系によりコントロールして、遊離カルシウム濃度が1×10-4 M〜1×10-8 Mとなるようにする。
【0215】
このアッセイに特異的なタンパク質成分は、ウシ心臓ミオシンサブフラグメント-1(通常、0.5μM)、ウシ心臓アクチン(14μM)、ウシ心臓トロポミオシン(通常、3μM)およびウシ心臓トロポニン(通常、3〜8μM)である。トロポミオシンおよびトロポニンの正確な濃度は、2mM EGTAの存在下で測定したATPアーゼ活性と0.1mM CaCl2の存在下で測定したATPアーゼ活性の差を最大とするために滴定により実験的に決定する。本アッセイにおけるミオシンの正確な濃度もまた、所望のATP加水分解速度が得られるように滴定により実験的に決定する。これは、各タンパク質調製物の活性分子のフラクションに差異があるため、これらの調製物間で異なる。
【0216】
用量応答は、通常、最大ATPアーゼ活性の25%または50%に相当するカルシウム濃度(pCa25またはpCa50)で測定するため、1×10-4〜1×10-8 Mの遊離カルシウム濃度に対するATPアーゼ活性の応答を調べるために予備実験を実施する。その後、アッセイ混合物をpCa50(通常、3×10-7 M)に調節する。アッセイは、まず、試験化合物の一連の希釈物を調製することにより実施し、それぞれでカリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ミオシンサブフラグメント-1、消泡剤、EGTA、CaCl2および水を含有するアッセイ混合物を用いる。本アッセイは、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ATP、NADH、PEP、アクチン、トロポミオシン、トロポニン、消泡剤および水を含有する同量の溶液を添加することにより開始する。ATP加水分解は340nmでの吸光度によりモニターする。得られた用量応答曲線を、4パラメーター方程式:y=ボトム+((トップ−ボトム)/(1+((EC50/X)Hill)))にフィットさせる。AC1.4は、ATPアーゼ活性が用量曲線のボトムよりも1.4倍高い濃度として定義する。
【0217】
心臓筋原線維アッセイ:天然筋節での完全長心臓ミオシンのATPアーゼ活性に対する化学物質群の影響を評価するには、除膜筋原線維アッセイを実施する。非イオン性界面活性剤の存在下で心臓組織をホモジナイズすることにより心臓筋原線維を得る。かかる処理により膜および大部分の可溶性細胞質タンパク質は除去されるが、心臓筋節のアクトミオシン器官は無傷のまま残る。筋原線維調製物は、Ca++制御下でATPを加水分解する能力を保持している。化学物質群の存在下および不存在下でのかかる筋原線維調製物のATPアーゼ活性は、全カルシウム応答範囲のCa++濃度でアッセイするが、最大速度の25%、50%および100%を付与するCa++濃度が好ましい。
【0218】
筋原線維は、新鮮な組織または容易に解凍可能な瞬間凍結組織から調製することができる。組織を細かく刻み、以下の試薬(ここに記載されている濃度は最終溶液濃度である):トリス-HCl(10mM)、MgCl2(2mM)、KCl(75mM)、EGTA(2mM)、NaN3(1mM)、ATP(1mM)、ホスホクレアチン(4mM)、BDM(50mM)、DTT(1mM)、ベンズアミジン(1mM)、PMSF(0.1mM)、ロイペプチン(1ug/ml)、ペプスタチン(1ug/ml)およびトリトンX-100(1%)を含有する緩和バッファー中に再懸濁する。HClを添加してpHを4℃で7.2に調節する。EDTAを10mMまで添加した後、組織を冷却室において4℃で手により細かく刻み、大型ローター・スターターホモジナイザー(Omni Mixer製)を用いてホモジナイズする。10秒間混合した後、材料を遠心(5分間、最大2000×g、4℃)することによりペレット化する。次いで、筋原線維を以下の試薬(ここに記載されている濃度は最終溶液濃度である):トリスHCl(10mM)(4℃でpH7.2)、MgCl2(2mM)、KCl(75mM)、EGTA(2mM)、NaN3(1mM)、トリトンX-100(1%)を含有する標準バッファー中にガラス・ガラス組織グラインダー(Kontes製)を用いて、滑らかになるまで(通常4〜5ストローク)再懸濁させる。筋原線維ペレットを10容量の標準バッファー中でローター・スターターホモジナイザーを用いて短時間ホモジナイズし、その後遠心することにより数回洗浄する。界面活性剤を除去するため、筋原線維をトリトンX-100非含有の標準バッファーで数回洗浄する。次いで、筋原線維を600μm、300μm、最後に100μmのナイロンメッシュ(Spectrum Lab Products製)を用いて、重力濾過に3回かけて均質混合物を生成し、ペレットダウンする。最後に、筋原線維を以下の試薬(ここに記載されている濃度は最終溶液濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)およびDTT(1mM)を含有する保存バッファー中に再度懸濁させる。撹拌しながら10%(w/v)まで固体スクロースを添加した後、液体窒素中で滴下凍結し、-80℃で保存する。
【0219】
用量応答は、以下の試薬(ここに記載されている濃度は最終アッセイ濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)、ATP(0.05mM)、DTT(1mM)、BSA(0.1mg/mL)、NADH(0.5mM)、PEP(1.5mM)、ピルビン酸キナーゼ(4U/mL)、乳酸デヒドロゲナーゼ(8U/mL)および消泡剤(90ppm)を含むカルシウム緩衝化ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ共役ATPアーゼアッセイを用いて調べる。pHは水酸化カリウムを添加することにより22℃で6.80に調節する。カルシウムレベルは0.6mM EGTAおよび異なる濃度のカルシウムを含有する緩衝系によりコントロールして、遊離カルシウム濃度が1×10-4〜1×10-8 Mとなるようにする。最終アッセイにおける筋原線維濃度は、通常0.2〜1mg/mlである。
【0220】
用量応答は、通常、最大ATPアーゼ活性の25%、50%または100%に相当するカルシウム濃度(pCa25、pCa50またはpCa100)で測定するため、1×10-4〜1×10-8 Mの範囲の遊離カルシウム濃度に対するATPアーゼ活性の応答を試験するために予備実験を実施する。その後、アッセイ混合物をpCa50(通常、3×10-7 M)に調節する。アッセイは、まず、試験化合物の一連の希釈物を調製することにより実施し、それぞれでカリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、心臓筋原線維、消泡剤、EGTA、CaCl2および水を含むアッセイ混合物を用いる。本アッセイは、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ATP、NADH、PEP、消泡剤および水を含む同量の溶液を添加することにより開始する。ATP加水分解は340nmでの吸光度によりモニターする。得られた用量応答曲線を、4パラメーター方程式:y=ボトム+((トップ−ボトム)/(1+((EC50/X)Hill)))にフィットさせる。AC1.4は、ATPアーゼ活性が用量曲線のボトムよりも1.4倍高い濃度として定義する。
【0221】
実施例12
筋細胞アッセイ
ラット成体心臓心室筋細胞の調製:成体雄Sprague-Dawleyラットをイソフルランガス及び酸素の混合物で麻酔する。心臓を素早く切除し、濯ぎ、その上行大動脈にカニューレを挿入する。灌流圧60cm H2Oで心臓に対して連続的逆行灌流を開始する。まず心臓を、以下の組成:110mM NaCl、2.6mM KCl、1.2mM KH2PO4・7H2O、1.2mM MgSO4、2.1mM NaHCO3、11mM グルコースおよび4mM Hepes(全てSigma製)の名目上Ca2+非含有の修飾クレブス溶液で灌流させる。この媒体は再循環させず、連続的にO2をガス供給する。約3分後、心臓が十分に白化し、軟らかくなるまで、3.3%コラゲナーゼ(169μ/mg活性,Class II、Worthington Biochemical Corp.製(ニュージャージ州フリーホールド))および25μMの最終カルシウム濃度を補充した修飾クレブスバッファーを心臓に灌流させる。心臓をカニューレから取り外し、心房および血管を捨て、心室を小片にカットする。心室組織をコラゲナーゼ含有新鮮クレブス中で穏やかに撹拌することにより筋細胞を分散させた後、200μm ナイロンメッシュを通して50cc容量のチューブに穏やかに入れる。得られた筋細胞を25μmのカルシウムを含有する修飾クレブス溶液中に再懸濁させる。カルシウムが100μMとなるまでカルシウム溶液(100mMストック液)を10分間隔で添加することにより筋細胞をカルシウム耐性とする。30分後、上清を廃棄し、30〜50mLのタイロードバッファー(137mM NaCl、3.7mM KCl、0.5mM MgCl、11mM グルコース、4mM Hepesおよび1.2mM CaCl2、pH7.4)を細胞に添加する。細胞を37℃に60分間保持してから実験を開始し、単離してから5時間以内に使用する。細胞の調製物は、まず、細胞が標準(基礎の>150%)およびイソプロテレノール(ISO;基礎の>250%)に応答することによりQC判定基準を通過した場合のみ、用いる。さらに、基礎収縮性が3〜8%である細胞のみを以下の実験に用いる。
【0222】
成体心室筋細胞収縮性の実験:筋細胞を含むタイロードバッファーのアリコートを、加熱台を完備する灌流チャンバー(シリーズ20 RC-27NE;Warner Instruments製)中に入れる。筋細胞を接着させ、チャンバーを37℃に加熱し、次いで、細胞を37℃のタイロードバッファーで灌流させる。筋細胞に白金電極間で1Hzの電場刺激(20%閾値超過)を加える。はっきりとした横紋があり、ペーシング前に静止状態である細胞のみを収縮性実験に用いる。基礎収縮性を調べるには、筋細胞を可変フレーム速度(60〜240Hz)電荷結合素子カメラを用いて、40×対物レンズで撮像し、その画像をデジタル化し、240Hzのサンプリングスピードでコンピュータースクリーン上に表示する。(フレームグラッバー(Frame grabber)、ミオペーサー(myopacer)、収集(acquisition)および細胞収縮性に関する分析ソフトウエアはIonOptix(マサチューセッツ州ミルトン)から入手可能である。)最低5分のベース収縮期間後、試験化合物(0.01〜15μM)を筋細胞に5分間灌流させる。その後、新鮮なタイロードバッファーを灌流させて、化合物のウォッシュアウト特性を調べる。エッジ検出法を用いて、筋細胞の収縮性、収縮および弛緩速度を連続的に記録する。
【0223】
収縮性の分析:1種類の化学物質当たり3個以上の各筋細胞を、2つ以上の異なる筋細胞調製物を用いて試験する。各細胞について、ベース(basal)(化学物質注入の1分前と定義する)時および化学物質を添加後の20以上の収縮性トランジェントを平均化し、比較する。これらの平均トランジェントを分析し、拡張期の長さの変化を調べ、Ionwizard分析プログラム(IonOptix製)を用いて、短縮率(拡張期の長さにおける減少%)、ならびに最大収縮速度および弛緩速度(um/秒)を測定する。各細胞の分析を合わせる。ベースに対する短縮率の増加は、筋細胞収縮性の強化を示す。
【0224】
カルシウムトランジェント分析: Furaの導入:細胞透過性Fura-2(Molecular Probes製)を等量のプルロニック(Mol Probes製)およびFBS中にて室温で10分間溶解させる。1μMのFuraストック溶液を500mMのプロベネシド(Sigma製)を含有するタイロードバッファー中で作製する。細胞に導入するため、この溶液を室温で筋細胞に添加する。10分後バッファーを除去し、細胞をプロベネシド含有タイロードで洗浄し、室温で10分間インキュベートする。この洗浄とインキュベートを繰り返す。導入の40分以内に、収縮性とカルシウムを同時に測定する。
【0225】
画像化:試験化合物を細胞に灌流させる。収縮性とカルシウムトランジェントの同時比をベースラインで、また化合物の添加後に測定する。蛍光カルシウム測定との干渉を避けるために光路中に赤色フィルターを使用し、細胞をデジタル画像処理し、収縮性を上述のようにして測定する。カルシウムトランジェント分析のための収集、分析用ソフトウエアおよびハードウエアはIonOptixから入手する。この蛍光測定用機器は、キセノンアークランプおよび100Hzで検流計駆動ミラーにより340〜380の波長間で変化するHyperswitchデュアル励起光源を含んでいる。液体充填光導波路により二重励起光が顕微鏡に送達され、放射蛍光が光電子増倍管(PMT)を用いて測定される。蛍光システムインターフェイスがPMT信号を送り、その比がIonWizard収集プログラムを用いて記録される。
【0226】
分析:各細胞について、ベース時および化合物を添加した後における10以上の収縮性及びカルシウム比トランジェントを平均化し、比較する。収縮性平均トランジェントをIonwizard分析プログラムを用いて分析し、拡張期の長さにおける変化および短縮率(拡張期の長さの低下%)を測定する。平均カルシウム比トランジェントをIonwizard分析プログラムを用いて分析して、弛緩期比および収縮期比の変化、ならびにベースラインまでの75%時間(T75)を決定する。
【0227】
持続性:応答の持続性を調べるには、筋細胞を試験化合物で25分間暴露させ、その後2分間洗浄する。収縮性応答を化合物注入の5分後および25分後に比較する。
【0228】
閾値電圧:筋細胞を閾値より約20%高い電圧で電場刺激する。これらの実験では、閾値電圧(細胞をペーシングするための最低電圧)を実験的に決め、細胞をこの閾値においてペーシングし、次いで試験化合物を注入する。活性が定常状態になったら、電圧を20秒間下げ、その後再スタートさせる。イオンチャネルの変化は、閾値作用電圧の増加または低下に対応する。
【0229】
Hz周波数:筋細胞の収縮性は、3Hzで以下のようにして測定する:1分のベース時点の後、試験化合物を5分間灌流させ、その後2分間洗浄する。細胞の収縮性が完全にベースラインに戻った後、Hz周波数を1まで下げる。最初の順化期間の後、細胞を同一化合物により暴露させる。この種(ラット)は1Hzで負の力頻度を示すので、3Hzで、その細胞のFS(短縮率)は低くなければならないが、細胞は本化合物の存在下ではそのFSが高まることにより応答しなければならない。
【0230】
イソプロテレノールの添加:化合物がアドレナリン作動性刺激薬イソプロテレノールとは異なる機序により作用することを実証するため、細胞にfura-2を導入し、収縮性およびカルシウム比の同時測定を行う。筋細胞を5μm以下の試験化合物、バッファー、2nMのイソプロテレノール、バッファー、および試験化合物とイソプロテレノールの組合せを用いて順次暴露させる。
【0231】
実施例13
用量依存性心臓ミオシンATPアーゼモジュレーションのin vitroモデル
ウシおよびラットの心臓ミオシンをそれぞれの心臓組織から精製する。特異性試験に使用する骨格筋ミオシンおよび平滑筋ミオシンは、それぞれウサギ骨格筋およびニワトリ砂嚢から精製する。アッセイに使用するすべてのミオシンを、キモトリプシンを使用した限定タンパク質分解により単頭可溶形(single-headed soluble form)(S1)に変換する。その他の筋節構成成分、すなわちトロポニン複合体、トロポミオシンおよびアクチンは、ウシ心臓(心臓筋節)またはニワトリ胸筋(骨格筋節)から精製する。
【0232】
ミオシンの活性は、ATPの加水分解速度を測定することによりモニターする。ミオシンATPアーゼは、アクチンフィラメントにより極めて有意に活性化される。ATPターンオーバーは、ピルビン酸キナーゼ(PK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を用いる共役酵素アッセイで検出する。このアッセイでは、ATP加水分解の結果として生成される各ADPは、LDHによるNADH分子の同時酸化と共にPKによりATPに再生する。NADH酸化は、340nmの波長での吸光度の減少により都合よくモニターすることができる。
【0233】
用量応答は、以下の試薬(ここに記載されている濃度は最終アッセイ濃度である):カリウムPIPES(12mM)、MgCl2(2mM)、ATP(1mM)、DTT(1mM)、BSA(0.1mg/mL)、NADH(0.5mM)、PEP(1.5mM)、ピルビン酸キナーゼ(4U/mL)、乳酸デヒドロゲナーゼ(8U/mL)および消泡剤(90ppm)を含有するカルシウム緩衝化ピルビン酸キナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼ共役ATPアーゼアッセイを用いて調べる。水酸化カリウムを添加してpHを22℃で6.80に調節する。カルシウムレベルを0.6mM EGTAおよび各種濃度のカルシウムを含有する緩衝系によりコントロールし、遊離カルシウム濃度が1×10-4〜1×10-8 Mとなるようにする。
【0234】
このアッセイに特異的なタンパク質成分は、ウシ心臓ミオシンサブフラグメント-1(通常、0.5μM)、ウシ心臓アクチン(14μM)、ウシ心臓トロポミオシン(通常、3μM)およびウシ心臓トロポニン(通常、3〜8μM)である。トロポミオシンおよびトロポニンの正確な濃度は、1mM EGTAの存在下で測定したATPアーゼ活性と0.2mM CaCl2の存在下で測定したATPアーゼ活性の差を最大とするために滴定により実験的に決定する。本アッセイにおいて、ミオシンの正確な濃度もまた、所望のATP加水分解速度が得られるように、滴定により実験的に決定する。これは、各タンパク質調製物中の活性分子のフラクションに差異があるため、これらの調製物間で異なる。
【0235】
化合物用量応答は、通常、最大ATPアーゼ活性の50%に相当するカルシウム濃度(pCa50)で調べ、1×10-4〜1×10-8 Mの遊離カルシウム濃度に対するATPアーゼ活性の応答を試験するために予備実験を実施する。その後、アッセイ混合物をpCa50(通常、3×10-7 M)に調節する。アッセイは、まず、試験化合物の一連の希釈物を調製することにより実施し、それぞれでカリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ピルビン酸キナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、ミオシンサブフラグメント-1、消泡剤、EGTA、CaCl2および水を含むアッセイ混合物を用いる。本アッセイは、カリウムPipes、MgCl2、BSA、DTT、ATP、NADH、PEP、アクチン、トロポミオシン、トロポニン、消泡剤および水を含有する溶液を同量添加することにより開始する。ATP加水分解は340nmでの吸光度によりモニターする。得られた用量応答曲線を、4パラメーター方程式:y=ボトム+((トップ−ボトム)/(1+((EC50/X)Hill)))にフィットさせる。AC1.4は、ATPアーゼ活性が用量曲線のボトムよりも1.4倍高い濃度として定義する。
【0236】
心臓ミオシンを活性化する化合物の能力を、S1サブフラグメントのアクチン刺激性ATPアーゼに対する化合物の影響により評価する。アッセイにおけるアクチンフィラメントをトロポニンおよびトロポミオシンで修飾し、Ca++濃度は、最大活性の50%を生じるであろう値に調整する。S1 ATPアーゼを化合物の一連の希釈物の存在下で測定する。対照(等容量のDMSO)の存在下で測定したATPアーゼ速度よりも40%高い活性化に必要な化合物濃度をAC40として報告する。
【0237】
実施例14
In vivo左室内径短縮率アッセイ
動物:Charles River Laboratories社の雄Sprague Dawleyラット(275〜350g)をボーラス効力および注入実験のために使用する。心不全動物については下記する。ラットは1ケージあたり2匹ずつ収容し、餌および水を自由に飲食させる。実験の前に最低3日の順化期間を設ける。
【0238】
心エコー検査:動物をイソフルランで麻酔し、処置の間手術台に保持する。深部体温を加熱パッドを用いて37℃に維持する。麻酔したら、動物の毛を剃り、脱毛器をあてて胸部から残っているすべての柔毛を除去する。さらに、胸部に70% ETOHを用いて準備処置を施し、超音波ジェルをつける。GE System Vingmed超音波システム(General Electric Medical Systems製)を使用して、10MHzプローブを胸壁上に置き、乳頭筋レベルにおいて短軸像で画像を撮る。左心室の2D M-モードの画像を化合物ボーラス注射または注入の前後に撮る。In vivo左室内径短縮率[(拡張末期径−収縮末期径)/拡張末期径×100]は、M-モード画像をGE EchoPakソフトウエアプログラムを用いて分析することにより求める。
【0239】
ボーラスおよび注入の効果:ボーラスおよび注入のプロトコルについて、左心内径短縮率は上記した心エコー検査により求める。ボーラスおよび注入のプロトコルに関して、5枚の投与前M-モード画像を化合物のボーラス注射または注入の前に30秒間隔で撮る。注射後は、M-モード画像を1分間隔で、その後は最長30分まで5分間隔で撮る。ボーラス注射(0.5〜5mg/kg)または注入は尾静脈カテーテルを介して行う。注入パラメーターは化合物の薬物動態プロフィールから決定する。注入の場合には、動物に尾静脈カテーテルから1分の負荷用量、その後直ちに29分の注入用量を投与する。負荷用量は、目標濃度×定常状態分布容量を測定することにより計算する。維持用量濃度は、目標濃度×クリアランスを計算することにより決める。ボーラスおよび注入のプロトコルのために、化合物を25%キャビトロンビヒクル中で製剤化する。化合物の血漿濃度を測定するために血液サンプルを採取する。
【0240】
実施例15
正常動物および心不全動物における血行動態
動物をイソフルランで麻酔し、手術台に維持した後、カテーテル挿入のために毛を剃る。首部を切開し、右頸動脈を除去分離する。この右頸動脈の中に2 French Millar Micro-tip Pressure Catheter(Millar Instruments製(テキサス州ヒューストン))のカテーテルを挿入し、大動脈を抜けて左心室まで通す。化合物またはビヒクルを注入している間、拡張末期圧、最大+/− dp/dt、収縮期圧および心拍数を連続的に測定する。PowerLabおよびChart 4ソフトウエアプログラム(ADInstruments製(カリフォルニア州マウンテンビュー))を用いて測定結果を記録し、分析する。血行動態を選択注入濃度で測定する。化合物の血漿濃度を測定するために血液サンプルを採取する。
【0241】
実施例16
うっ血性心不全の左冠動脈閉塞モデル
動物:この実験では、雄Sprague-Dawley CD(220〜225g;Charles River)ラットを使用する。動物は標準的な実験室条件下で水および市販のげっ歯類用餌を自由に利用できる。部屋の温度を20〜23℃に維持し、部屋の照明は12/12時間の明暗周期とする。動物は実験の前5〜7日間この実験室環境に順応させる。動物は手術前一晩絶食させる。
【0242】
閉塞処置:動物をケタミン/キシラジン(95mg/kgおよび5mg/kg)で麻酔し、14〜16ゲージ改良型静脈内カテーテルを挿管する。麻酔レベルをつま先をつまむことによりチェックする。深部体温を加熱ブランケットを用いて37℃に維持する。手術領域をクリップ留めし、洗浄する。動物を右側臥位に置き、まず10〜15cm H2Oのピーク吸息圧および60〜110呼吸/分の呼吸速度の人工呼吸器をつける。動物には人工呼吸器より100%O2を送る。手術部位を手術用スクラブとアルコールで洗う。胸郭を4本目と5本目の肋骨の肋間腔で切開する。下にある筋肉を外側胸静脈を避けるように注意しながら解離させて、肋間筋を露出させる。第4〜第5肋骨間腔から胸腔に入り、切開部を広げて心臓を目視できるようにする。心膜を開いて心臓を露出させる。テーパー針を用いて6-0絹縫合糸を、左心耳の挿入部から約1mmのところで肺動脈円錐左縁と接触している左冠動脈の起点近傍のその左冠動脈の周りに通す。縫合糸を動脈の周りに縛ることにより左冠動脈を結紮させる(「LCL」)。偽手術動物(sham animal)には、縫合糸を縛らない以外は同様の処置を行う。切開部を3層に閉じた。自力呼吸できるまでラットに人工呼吸させる。ラットから抜管し、加熱パッド上で回復させる。術後の鎮痛には、ブプレノルフィン(0.01〜0.05mg/kg SQ)を動物に投与する。覚醒したら、動物をそのケージに戻す。感染または苦痛の徴候についてラットを毎日モニターする。感染または瀕死状態の動物は安楽死させる。動物の体重を1週間に1回計測する。
【0243】
薬効分析:梗塞形成術から約8週間後に、ラットの心筋梗塞の徴候を心エコー検査を用いて調べる。偽ラットに比べて左室内径短縮率が低い動物だけを次の薬効実験に利用する。すべての実験において、偽+ビヒクル、偽+化合物、LCL+ビヒクルおよびLCL+化合物の4つのグループを存在させる。LCLから10〜12週間後に、ラットに選択注入濃度で注入する。前と同じように、化合物を注入する前に5枚の投与前M-モード画像を30秒間隔で撮り、その後M-モード画像を10分まで30秒間隔で、その後は毎分または5分間隔で撮る。このMモード画像から左室内径短縮率を求める。投与前左室内径短縮率と化合物処理左室内径短縮率間の比較は、ANOVAと事後ステューデント・ニューマン・キュールズにより行う。動物を回復させ、7〜10日以内に動物に化合物を血行動態プロトコルを用いて再び注入し、心不全動物における化合物の血行動態変化を調べる。注入が終了したら、ラットを殺し、心臓の重量を測定する。
【0244】
実施例10〜16に記載されているように試験したところ、本明細書中に記載されている化学物質は所望の活性を有していることが明らかとなった。
【0245】
本発明をその特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、当業者なら、本発明の本来の趣旨および範囲を逸脱することなく様々な変化を加えることができ、同等物で置き換えることができることを理解されたい。さらに、本発明の目的、趣旨および範囲に特定の状況、材料、組成物、製法、製法ステップ(群)を適応させて多くの改変をなすこともできる。かかる改変のすべてが請求の範囲の中に入るものと理解されたい。上記で引用したすべての特許および文献は、参照により本明細書に組み入れるものとする。
【0246】
実施例17
In vitroおよび心不全ラットモデルにおけるin vivoの心臓収縮性
筋原線維アッセイを用いて心臓ミオシンATPアーゼを直接活性化する化合物(ミオシン活性剤)を同定する。その後、活性化合物に対し、作用の細胞メカニズム、Sprague Dawley(SD)ラットにおけるin vivo心臓機能および明確な心不全を有するSDラットにおける効能を調べる。細胞収縮性はエッジ検出法を用いて定量し、カルシウムトランジェントはfura-2を導入した成体ラット心筋細胞を用いて調べた。細胞収縮性は活性化合物(0.2 □M)の暴露から5分以内に、カルシウムトランジェントを変化させることなくベースラインに比して増加した。活性化合物とイソプロテレノール(□-アドレナリン作動性アゴニスト)の組合せは、活性化合物がPDE経路を阻害しなかったことを示すカルシウムトランジェントの更なる変化を呈することなく収縮性を相加程度増加させるだけものでなければならない。麻酔したSDラットにおけるインビボ収縮機能は心エコー検査(M-モード)および同時血圧測定を用いて定量化する。SDラットに0.25〜2.5mg/kg/時でビヒクルまたは活性化合物を注入する。活性化合物は、最高用量を除いて、末梢血圧または心拍数を有意に変化させることなく左室内径短縮率(FS)および駆出率(EF)を用量依存的に上昇させなければならない。左冠動脈結紮により誘発させた明確な心不全を有するラットまたは偽処理ラットは、0.7〜1.2mg/kg/時の活性化合物で治療した場合、FSおよびEFで同様に有意な増加が起こり得る。要するに、本活性化合物は、カルシウムトランジェントを増加させることなく心臓収縮性を増加させ、心不全のラットモデルにおいて有効であった。このことから、本活性化合物がヒトの心不全治療において有用な治療薬となり得ることが分かる。
【0247】
実施例18
薬理効果:本明細書中に記載されている化学物質の少なくとも1つの薬理効果を単離成体ラット心筋細胞、麻酔したラット、および心筋梗塞と急速心室ペーシングにより誘発させた心不全の永久器具を取り付けたイヌモデルにおいて調べる。本活性化合物は、心筋細胞の収縮性を増加させる(EC20=0.2μM)が、Fura-2導入筋細胞において最大10μMの濃度でカルシウムトランジェントの速度の程度を増加させず、また変化もさせない。本活性化合物(30μM)は、ホスホジエステラーゼ3型を阻害しない。
【0248】
麻酔したラットでは、本活性化合物は、1.5mg/kg/時で30分間注入後、エコー検査による左室内径短縮率を45±5.1%から56±4.6%に増加させる(n=6、p<0.01)。
【0249】
心不全のある覚醒イヌでは、本活性化合物(0.5mg/kgボーラス、次いで6〜8時間0.5mg/kg/時 i.v.)は、左室内径短縮率を74±7%、心拍出量を45±9%、1回拍出量を101±19%増加させる。心拍数は27±4%低下し、左心房圧は22±2mmHgから10±2mmHgに低下する(すべてp<0.05)。さらに、平均動脈圧も冠動脈血量にも有意な変化はない。拡張機能もこの用量では障害はない。ビヒクル処理群において有意な変化はない。本活性化合物は、言わば、心臓機能を改善し、このことはこの種の化合物が心不全患者に有効となり得ることを示唆している。
【0250】
実施例19
医薬組成物
静脈投与用医薬組成物を以下のように調製する。
【0251】
ビヒクルとして50mMクエン酸を含む1mg/mL(遊離塩基として)IV溶液。pHをNaOHで5.0に調節。
【表1】

【0252】
適当な調剤容器にバルク溶液容量の約5%までWFIを充填する。クエン酸(10.51g)を秤量し、調剤容器にクエン酸を添加し、撹拌して、1M クエン酸とする。活性剤(1.00g)を秤量し、1M クエン酸溶液中に溶解する。得られた溶液を大型の適当な調剤容器に移し、WFIをバルク溶液容量の約85%まで充填する。バルク溶液のpHを測定し、1N NaOHで5.0に調節する。この溶液は、WFIを用いて最終容量(1L)とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
T1は、-CR15R19-、-NR14-CR15R19-、または-CR15R19-NR14-であり;
R14、R15およびR19の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
R17およびR18の各基は、独立して水素、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよいアルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択され;
nは、1、2、または3であり;
R2は、場合により置換されていてもよいアリール、場合により置換されていてもよいアラルキル;場合により置換されていてもよいシクロアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアリール、場合により置換されていてもよいヘテロアラルキル、または場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルであり、
R3は、Wが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Wが-N=である場合、R3は存在せず;
R4は、Yが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Yが-N=である場合、R4は存在せず;
R5は、Xが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Xが-N=である場合、R5は存在せず;
R13は、Zが-C=である場合、水素、ハロ、シアノ、ヒドロキシル、場合により置換されていてもよいアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルまたは場合により置換されていてもよいヘテロアリールであり、Zが-N=である場合、R13は存在せず;
R6およびR7は、独立して水素、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアルキル、または場合により置換されていてもよいアルコキシであるか、あるいはR6およびR7は、これらが結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい3員〜7員環(この環は、環中にN、OおよびSから選択される1または2個の追加ヘテロ原子を場合により含んでいてもよい)を形成するが、
ただし、R17およびR18の少なくとも1つの基は水素ではないか;あるいは、
R15およびR19のどちらの基も水素ではない]
で表される化合物、ならびにその製薬上許容可能な塩、キレート、非共有結合性複合体、プロドラッグおよび混合物から選択される少なくとも1種の化学物質。
【請求項2】
R14、R15、およびR19の各基が、独立して水素、メチル、カルボキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、N,N-N,N-ジメチルカルバモイル、アセチル、メチルアセチル、ジメチルアセチル、プロポキシ、メトキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n-プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、アゼチジン-1-イルスルホニル、ジメチルアミノスルホニル、メタンスルホンアミド、N-メチル-メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、N-メチル-エタンスルホンアミド、N-メトキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-エトキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-イソプロポキシカルボニル-N-メチルアミノ、N-tert-ブトキシカルボニル-N-メチルアミノ、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルイソブチルアミド、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、N-メチル-(ジメチルアミノスルホニル)アミノ、およびピペリジン-1-イルから選択される、請求項1に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項3】
R2が、場合により置換されていてもよいフェニル、場合により置換されていてもよいナフチル、場合により置換されていてもよいピロリル、場合により置換されていてもよいチアゾリル、場合により置換されていてもよいイソオキサゾリル、場合により置換されていてもよいピラゾリル、場合により置換されていてもよいオキサゾリル、場合により置換されていてもよい1,3,4−オキサジアゾリル、場合により置換されていてもよいピリジニル、場合により置換されていてもよいピラジニル、場合により置換されていてもよいピリミジニル、および場合により置換されていてもよいピリダジニルから選択される、請求項1または2に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項4】
R2が、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピリジン-1-オキシド、フェニル、ピリミジン-5-イルおよびイソオキサゾール-3-イルから選択され、ここで、ピリジン-3-イル、ピリジン-4-イル、ピリジン-1-オキシド、フェニル、ピリミジン-5-イルおよびイソオキサゾール-3-イルが場合により低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ、シアノまたはアセチルで置換されていてもよい、請求項3に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項5】
R2が場合により低級アルキルで置換されていてもよいピリジン-3-イルであり;R2が場合により低級アルキルで置換されていてもよいピリジン-4-イル;場合によりハロで置換されていてもよいフェニル;場合により置換されていてもよいピリミジン-5-イル;または場合により置換されていてもよいイソオキサゾール-3-イルである、請求項4に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項6】
式Iで表される化合物が、式II:
【化2】

[式中、
T2は、-C=または-N=であり;
R16は、水素、ハロ、シアノ、場合により置換されていてもよいアシル、場合により置換されていてもよいアルキルおよび場合により置換されていてもよいアルコキシから選択される]
で表される化合物から選択される、請求項1に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項7】
T2が-C=である、請求項6に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項8】
T2が-N=である、請求項6に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項9】
R16が水素、メチル、フルオロ、シアノ、メトキシおよびアセチルから選択される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項10】
R16が水素またはメチルである、請求項9に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項11】
R3が水素、シアノ、フルオロ、クロロまたはメチルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項12】
R3が水素またはフルオロである、請求項11に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項13】
R4およびR5が独立して水素、ピリジニル、ハロ、および場合により置換されていてもよい低級アルキルから選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項14】
R4が水素、ピリジニル、トリフルオロメチルまたはフルオロである、請求項13に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項15】
R5が水素、クロロ、フルオロ、メチルまたはトリフルオロメチルである、請求項13または14に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項16】
R13が水素、ハロ、ヒドロキシまたは低級アルキルである、請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項17】
R13が水素またはフルオロである、請求項16に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項18】
nが1である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項19】
nが2である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項20】
nが3である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項21】
R6およびR7が独立して水素またはメチルである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項22】
R6およびR7が水素である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項23】
R6がメチルであり、R7が水素である、請求項21に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項24】
R3、R4、R5およびR13が水素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項25】
R3、R4、R5およびR13のうちの1つの基がハロ、メチルまたはシアノであり、他の基が水素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項26】
R3、R4、R5およびR13のうちの2つの基がハロまたはシアノであり、他の基が水素である、請求項1〜23のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項27】
R17およびR18が、独立して水素、場合により置換されていてもよい低級アルキル、場合により置換されていてもよいアシル、カルボキシ、場合により置換されていてもよい低級アルコキシカルボニル、場合により置換されていてもよいアミノカルボニル、場合により置換されていてもよい低級アルコキシ、場合により置換されていてもよいシクロアルコキシ、場合により置換されていてもよいスルホニル、場合により置換されていてもよいアミノ、場合により置換されていてもよいシクロアルキル、および場合により置換されていてもよいヘテロシクロアルキルから選択される、請求項1〜26のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項28】
R17およびR18が、独立して水素、場合により置換されていてもよい低級アルキル、および場合により置換されていてもよい低級アルコキシから選択される、請求項27に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項29】
R17およびR18が、独立して水素、低級アルコキシ、および場合により置換されていてもよい低級アルキルから選択される、請求項27に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項30】
R17およびR18が、独立して水素、メチル、メトキシメチルおよびメトキシから選択される、請求項29に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項31】
式Iで表される化合物が、
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
{[3-({(2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
{[3-({(2S)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2-メチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-メチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
({3-[((2S)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2S)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
N-{3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3-(メトキシメチル)ピペラジンカルボン酸メチル;
[(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-4-(アゼチジニルスルホニル)-2-(メトキシメチル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
[(3-{[(2R)-2-(メトキシメチル)-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸メチル;
N-(3-{[(2R)-4-(エチルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-{3-[((2R)-4-アセチル-2-メチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(シクロプロピルスルホニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-[3-({(2S)-2-メチル-4-[(メチルエチル)スルホニル]ピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル][(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[(2S)-4-(アゼチジニルカルボニル)-2-メチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(3S)-4-[(2-フルオロ-3-{[(2-メチル(4-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジンカルボン酸エチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸エチル;
N-(3-{[3,3-ジメチル-4-(メチルスルホニル)ピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
N-(3-{[4-(エチルスルホニル)-3,3-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-2,2-ジメチルピペラジンカルボン酸2-メトキシエチル;
N-{3-[(4-アセチル-3,3-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
{(3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボニルアミノ}フェニル)メチル]-3-メチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド;
N-{5-[((3S,5R)-3,5-ジメチルモルホリン-4-イル)メチル]-2-フルオロフェニル}[(6-メチル(3-ピリジル))アミノ]カルボキサミド;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸tert-ブチル;
(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジンカルボン酸メチル;
({3-[((6S,2R)-4-アセチル-2,6-ジメチルピペラジニル)メチル]-2-フルオロフェニル}アミノ)-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;
{(5S,3R)-4-[(2-フルオロ-3-{[N-(6-メチル(3-ピリジル))カルバモイル]アミノ}フェニル)メチル]-3,5-ジメチルピペラジニル}-N,N-ジメチルカルボキサミド;
[(3-{[(6S,2R)-4-(エチルスルホニル)-2,6-ジメチルピペラジニル]メチル}-2-フルオロフェニル)アミノ]-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド;および、
{[3-({(6S,2R)-4-[(ジメチルアミノ)スルホニル]-2,6-ジメチルピペラジニル}メチル)-2-フルオロフェニル]アミノ}-N-(6-メチル(3-ピリジル))カルボキサミド
から選択される、請求項1に記載の少なくとも1種の化学物質。
【請求項32】
製薬上許容可能な賦形剤、担体またはアジュバントおよび請求項1〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質を含む医薬組成物。
【請求項33】
注射液剤、エアゾール剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、クリ-ム剤、ゲル剤および経皮パッチ剤から選択される剤形に製剤化されている、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
請求項32または33に記載の医薬組成物および心疾患の罹患患者を治療するための前記組成物の使用説明書を含む、包装された医薬組成物。
【請求項35】
心疾患が心不全である、請求項34に記載の包装された医薬組成物。
【請求項36】
心疾患の治療を必要とする哺乳動物に対して請求項1〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質または医薬組成物を治療有効量で投与することを含む、哺乳動物における心疾患の治療方法。
【請求項37】
心疾患が心不全である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
心不全がうっ血性心不全である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
心不全が収縮期心不全である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
心臓筋節のモジュレ-トを必要とする哺乳動物に対して請求項1〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質または医薬組成物を治療有効量で投与することを含む、哺乳動物における心臓筋節のモジュレート方法。
【請求項41】
心臓ミオシンの強化を必要とする哺乳動物に対して請求項1〜31のいずれか1項に記載の少なくとも1種の化学物質を治療有効量で投与することを含む、哺乳動物における心臓ミオシンの強化方法。

【公表番号】特表2009−519939(P2009−519939A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545811(P2008−545811)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047731
【国際公開番号】WO2007/078839
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(501327514)サイトキネティクス・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】Cytokinetics Incorporated
【Fターム(参考)】