説明

化合物の分離方法

サンプルを、多次元クロマトグラフィーを使用して分析する方法およびシステムを開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2005年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/645,810号;2005年2月23日に出願された米国仮特許出願第60/655,840号;2005年5月31日に出願された米国仮特許出願第60/686,268号の利益を主張するものである。これらの全ての出願は、それらの内容全体を参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
化学的および生物的サンプルは、しばしば化合物の混合物を含有している。混合物を分離するための様々なクロマトグラフ技術が開発され、多くのクロマトグラフ的分離および精製のためのシステムが市販されている。
【0003】
最も知られているクロマトグラフ技術には、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)がある。HPLC法は、極性および無極性化合物を分離するために使用することができ、HPLC法に使用する溶媒(すなわち移動相)および固定相は、分離する検体の種類に基づき選択される。移動相と固定相とを注意深く選択することによって、多くの混合物を、更なる分析または使用のために分離することのできる、十分に分解したピークまたは画分に分離することができる。質量分析(MS)などの方法による特性決定によって、サンプル中に存在する検体についての情報が提供される。
【0004】
様々なHPLC技術が報告されている。最も広く使用されているものには、「順相」HPLC(一般的に比較的極性の検体に有用であり、極性の最も小さい検体が通常最初に溶出される)および「逆相」HPLC(RP−HPLC、一般的に極性のより小さな検体に有用であり、極性の最も小さい検体が通常最後に溶出される)がある。「親水性相互作用クロマトグラフィー」またはHILICと呼ばれる変形態は、逆相カラムには十分保持されない高度に極性の検体に有用である。
【0005】
しかしながら、複合体混合物が含まれている場合、単一のクロマトグラフィー(例えば、HPLC)分離では、全ての化合物を十分に分離したピークまたは画分に分離することができないこともある。ピークが十分に分解されない場合は、分離の後でも不純物または汚染物が存在することもあり、収集した画分の特性決定を妨げる。この問題に取り組むために、多次元クロマトグラフ法が開発された。これらの方法において、サンプルは第1分離にかける。第1分離から得られた溶媒流は、通常は部分的に精製された化合物混合物を表す画分中に収集される。次いで個々の画分は、選択され、第2分離技法にかける。第1および第2分離の条件は、一般的に異なっており、条件を注意深く選択すれば、第2分離は、第1分離の次元では分解しなかった化合物の分離を可能とするはずである。かかる多次元クロマトグラフ法の例には、例えばTranchida,PQら、J.Chromatogr A.1054(1−2):3−16(2004年)が含まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる方法は、2つのクロマトグラフ法のそれぞれにおいて、異なるカラムおよび異なる移動相の使用をしばしば含み、これは複雑さを追加する結果をも伴う。例えば、強陽イオン交換(SCX)分離の後RP−HPLCを行うことがペプチド混合物を分析するのに使用されている。しかしながら、SCX条件によってしばしば必要とされる高塩濃度および/または有機溶媒は、RP−HPLCに必要とされる条件とは相容れないこともあり、追加のサンプル後処理がしばしば必要とされる。
【0007】
更に、2つの分離に使用される移動相または移動相添加物が、質量分析法を含む検出器、または分析システムの他の部分と相容れないこともあり、検出またはサンプル処理に更なる困難をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに、2つの分離に使用される移動相のpHを変えることによって、第1および第2の両方の次元に関し、HPCL分離を使用して多次元HPLCを実施することができることが見出された。
【0009】
一実施形態において、本発明は少なくとも1種の検体を含むサンプルを分析するための方法を提供し、この方法は、a)サンプルを、第1pHにおいて、第1移動相を使用して第1液体クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)第1クロマトグラフ分離から少なくとも1つの画分(または部分)を収集(またはサンプリング)するステップと;c)少なくとも1つの画分を第2pHにおいて、第2移動相を使用して第2液体クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;(場合によっては)d)サンプル中の少なくとも1種の検体の存在または不在を検出するステップとを含み、ここで第1pHと第2pHが異なっている。
【0010】
ある好ましい実施形態において、第1および第2クロマトグラフ分離は、互いが実質的に直交している。ある好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第2クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、少なくとも100ピークのピーク容量を有している。
【0011】
ある好ましい実施形態において、第1pHと第2pHは、少なくとも約3pH単位異なっている。ある好ましい実施形態において、請求項1の方法は、少なくとも1種の検体が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。ある好ましい実施形態において、少なくとも1種の検体は、小さな有機分子である。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも10個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも100個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも1000個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、この方法の全ピーク容量は、少なくとも1,000、5,000または10,000ピークである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、ミクロボアカラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用して実施される。
【0012】
ある好ましい実施形態において、ステップb)で収集またはサンプリングした少なくとも1つの画分または部分は、少なくとも1つの画分が第2クロマトグラフ分離様式にかけられる前に濃縮または希釈され、ある実施形態では、少なくとも1つの画分が蒸発によって濃縮される。他の好ましい実施形態において、ステップb)で収集(または選別)した少なくとも1つの画分(または部分)が、第2クロマトグラフ分離様式を行う前にオンラインで希釈される。ある実施形態において、ステップb)で収集した少なくとも1つの画分が、オンライン希釈を使用して希釈される。
【0013】
ある好ましい実施形態において、検出ステップは、質量分析計を使用して実施される。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ様式は同じである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は、実質的に不揮発性塩を含んでいない。ある好ましい実施形態において、第2移動相は約20mM未満の(より好ましくは、10または5mM未満の)不揮発性塩を含んでいる。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は、約20mM未満の揮発性塩を含んでいる。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、サンプル中の複数の検体を分離するための方法を提供する。この方法は、a)少なくともサンプルの一部を、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)少なくとも1つの画分(または部分)を、第1クロマトグラフ分離から収集(または選択)するステップと;c)サンプル中の少なくとも2個の検体が分離されるような条件下、少なくとも1つの画分を、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップとを含む。
【0015】
ある好ましい実施形態において、第1および第2クロマトグラフ分離は、互いに実質的に直交している。ある好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第2クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、少なくとも100ピークのピーク容量を有している。
【0016】
ある好ましい実施形態において、第1pHと第2pHは、少なくとも約3のpH単位異なっている。ある好ましい実施形態において、請求項1の方法は、少なくとも1種の検体が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。ある好ましい実施形態において、少なくとも1種の検体は、小さな有機分子である。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも10個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも100個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも1000個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、この方法の全ピーク容量は、少なくとも1,000、5,000または10,000ピークである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、ミクロボアカラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用して実施される。
【0017】
ある好ましい実施形態において、ステップb)で収集またはサンプリングした少なくとも1つの画分または部分は、少なくとも1つの画分が第2クロマトグラフ分離様式にかけられる前に濃縮または希釈され、ある実施形態では、少なくとも1つの画分が蒸発によって濃縮される。他の好ましい実施形態において、ステップb)で収集(または選別)した少なくとも1つの画分(または部分)が、第2クロマトグラフ分離様式を行う前にオンラインで希釈される。ある実施形態において、ステップb)で収集した少なくとも1つの画分が、オンライン希釈を使用して希釈される。
【0018】
ある好ましい実施形態において、検出ステップは質量分析計を使用して実施される。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ様式は同じである。ある好ましい実施形態において、第2移動相は、実質的に不揮発性塩は含んでいない。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は約20mM未満の(より好ましくは、10または5mM未満の)不揮発性塩を含んでいる。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は、約20mM未満の揮発性塩を含んでいる。
【0019】
別の実施形態において、本発明は2次元(または多次元)の液体クロマトグラフィーシステム中の複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定するための方法を提供する。この方法は、a)サンプルを、前記2次元(または多次元)の液体クロマトグラフィーシステムの第1次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;b)第1移動相を使用する前記第1次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中の前記サンプルの少なくとも第2ポリペプチドから、前記サンプルの少なくとも第1ポリペプチド成分をクロマトグラフィーで分離するステップと;c)前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液中の前記分離した第1および第2ポリペプチド成分を溶出するステップと;d)前記溶出液の個別の容積の少なくとも1つをサンプリングするステップと;e)前記個別の容積の少なくとも1つを、前記2次元(または多次元)の液体クロマトグラフィーシステムの第2次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;f)注入した個別の容積を、第2移動相を使用する前記第2次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中でクロマトグラフ分離させ、ここで前記第1および第2移動相のpHが約3pH単位異なっているステップと;(場合により)g)前記第2次元クロマトグラフィー装置の前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液を、質量分析法を使用して特性決定し、これによって複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定するステップとを含む。
【0020】
ある好ましい実施形態において、第1および第2クロマトグラフ分離は、互いに実質的に直交している。ある好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第2クロマトグラフ分離様式は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、好ましくはHILICまたはRP−HPLCである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、少なくとも100ピークのピーク容量を有している。
【0021】
ある好ましい実施形態において、第1pHと第2pHは、少なくとも約3のpH単位異なっている。ある好ましい実施形態において、少なくとも1種の検体は、小さな有機分子である。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも10個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも100個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、サンプルは少なくとも1000個の検体を含有している。ある好ましい実施形態において、この方法の全ピーク容量は、少なくとも1,000、5,000または10,000ピークである。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ分離は、ミクロボアカラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用して実施される。
【0022】
ある好ましい実施形態において、ステップb)で収集またはサンプリングした少なくとも1つの画分または部分は、少なくとも1つの画分が第2クロマトグラフ分離様式にかけられる前に濃縮または希釈され、ある実施形態では、少なくとも1つの画分が蒸発によって濃縮される。他の好ましい実施形態において、ステップb)で収集(または選別)した少なくとも1つの画分(または部分)が、第2クロマトグラフ分離様式を行う前にオンラインで希釈される。ある実施形態において、ステップb)で収集した少なくとも1つの画分が、オンライン希釈を使用して希釈される。
【0023】
ある好ましい実施形態において、検出ステップは質量分析計を使用して実施される。ある好ましい実施形態において、第1および第2クロマトグラフ様式は同じである。ある好ましい実施形態において、第2移動相は、実質的に不揮発性塩は含んでいない。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は約20mM未満の(より好ましくは、10または5mM未満の)不揮発性塩を含んでいる。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は、約20mM未満の揮発性塩を含んでいる。
【0024】
別の実施形態において、本発明は化合物および少なくとも2つの不純物を含むサンプル中の化合物を精製する方法を提供する。この方法は、a)サンプルを、化合物が第1不純物から分離されるような条件下で、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)第1クロマトグラフ分離から、少なくとも1つの化合物含有画分を収集するステップと;c)少なくとも1つの化合物含有画分を、化合物が第2不純物から分離されるような条件下で、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;d)精製した化合物を収集するステップとを含む。
【0025】
本明細書で説明するいずれかの方法のある好ましい実施形態において、方法は、サンプル中に存在する化合物および/または不純物の1つ、幾つか、または全部を同定するステップを更に含むことができる。ある好ましい実施形態において、同定は質量分析法によって実施される。
【0026】
別の実施形態において、本発明は、化合物の混合物を分離するための液体クロマトグラフィーシステムを提供する。このシステムは、a)第1クロマトグラフカラムおよび第1クロマトグラフカラムを通して第1移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第1クロマトグラフ分析システムと;b)第2クロマトグラフカラムおよび第2クロマトグラフカラムを通して第2移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第2クロマトグラフ分析システムと;c)第1クロマトグラフカラムの溶出液流からの少なくとも1つの化合物含有画分を選択し、少なくとも1つの化合物含有画分を第2クロマトグラフカラムに導く手段、(ここで、第1移動相のpHと第2移動相のpHが異なる)とを含む。
【0027】
ある好ましい実施形態において、システムは更に検出器、より好ましくは質量分析計を含む。ある好ましい実施形態において、第1および第2クロマトグラフ様式は同じである。ある好ましい実施形態において、第2移動相は、実質的に不揮発性塩を含んでいない。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は約20mM未満の(より好ましくは、10または5mM未満の)不揮発性塩を含んでいる。ある好ましい実施形態において、第1および/または第2移動相は、約20mM未満の揮発性塩を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、化合物または化合物の混合物を分離、精製、および/または分析するための方法およびシステムを提供する。本発明の方法およびシステムは、分離が可能であり、これによって化合物の複合体混合物を分解し、かかる混合物の成分の迅速な同定を可能にする。
【0029】
混合物に存在する化合物は、例えば、(薬剤または薬剤の候補などの)小さな有機分子、(例えば、タンパク質の消化物もしくはタンパク質の混合物を含む、ペプチド合成からのまたは生体サンプルからの)ペプチドもしくはポリペプチド、(例えば、生体サンプルからのまたは合成したポリヌクレオチドからの)核酸もしくはポリヌクレオチド、合成もしくは天然ポリマー、またはこれらの材料の混合物であることができる。化合物の種類は、本明細書で説明する、化合物分離のために選択されたクロマトグラフ法によってのみ制限される。好ましい実施形態において、少なくとも1つの化合物または不純物が、少なくとも部分的に、約2〜約12の範囲のpHで荷電されている。少なくとも1つの化合物または不純物が、約2〜約12の範囲の第1pHにおいて第1荷電状態を有し、約2〜約12の範囲の第2pHにおいて第2荷電状態を有することがより好ましい。例えば、化合物は、より低いpHにおいて+1の荷電を有することができ、より高いpHにおいて0(中性)の電荷を有することができ;またはより低いpHにおいて+2の電荷を、より高いpHにおいて+1の電荷を、および第3の一層高いpHにおいては0の電荷を有することができる。ある好ましい実施形態において、検出され、分析され、または精製される検体が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。
【0030】
従って、一態様において、本発明は少なくとも1種の検体を含むサンプルを分析するための方法を提供する。この方法は、a)サンプルを第1pHにおいて第1移動相を使用して第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)少なくとも1つの画分を、第1クロマトグラフ分離から収集または選択するステップと;c)少なくとも1つの画分を、第2pHにおいて第2移動相を使用して第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;(場合によって)d)サンプル中の少なくとも1種の検体の存在または不在を検出するステップとを一般的に含み、ここで、第1pHと第2pHが異なっている。
【0031】
別の態様において、本発明は、サンプル中の複数の検体を分離するための方法を提供する。この方法は、サンプル中の少なくとも2種の検体が分離される条件下で、a)少なくともサンプルの一部を、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)少なくとも1つの画分を、第1クロマトグラフ分離から収集するステップと、c)少なくとも1つの画分を、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップとを含む。
【0032】
別の実施形態において、2次元液体クロマトグラフィーシステム中の複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定するための方法を提供する。この方法は、a)サンプルを、前記2次元液体クロマトグラフィーシステムの第1次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;b)第1移動相を使用する前記第1次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中の前記サンプルの少なくとも第2ポリペプチドからの前記サンプルの少なくとも第1ポリペプチド成分をクロマトグラフィーで分離するステップと;c)前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液中の前記分離した第1および第2ポリペプチド成分を溶出するステップと;d)前記溶出液の個別の容積の少なくとも1つをサンプリングするステップと;e)前記個別の容積の少なくとも1つを、前記2次元の液体クロマトグラフィーシステムの第2次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;f)注入した個別の容積を、第2移動相を使用する前記第2次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中でクロマトグラフ分離させ、ここで前記第1および第2移動相のpHが約3pH単位異なっているステップと;g)前記第2次元クロマトグラフィー装置の前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液を、質量分析法を使用して特性決定し、これによって複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定するステップとを含む。
【0033】
更に別の態様において、本発明は、化合物と少なくとも2つの不純物を含むサンプル中の化合物を精製するための方法を提供する。この方法は、a)サンプルを、化合物が第1不純物から分離されるような条件下で、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;b)第1クロマトグラフ分離から、少なくとも1つの化合物含有画分を収集するステップと;c)少なくとも1つの化合物含有画分を、化合物が第2不純物から分離されるような条件下で、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;d)精製した化合物を収集するステップとを含む。
【0034】
本発明の方法の好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式の移動相のpHと第2クロマトグラフ分離様式の移動相のpHとは、第1および第2クロマトグラフ分離のそれぞれの間、例えば、分離がpHに関して定組成であるなど、それぞれ実質的に一定に維持される。この結果は、例えば、分離様式に関して単一の移動相を使用する;またはカラムに適用される移動相が分離を通して実質的に同じpHを有するように、ポンプおよび混合弁で混合した2つの移動相成分(それぞれの移動相成分が類似のまたは同一のpHを有する)を使用する(例えば、本明細書の実施例を参照されたい);または類似のpHを有する2つの移動相と第3の移動相成分または改質剤を一定量ポンプによって混合して、実質的に一定の移動相pHをカラムに供給するなど、幾つかの方法において達成することができる。しかしながら、ある実施形態において、第1および/または第2クロマトグラフ様式に供給される移動相のpHは、第1および/または第2クロマトグラフ分離中、あるpH範囲で変えることができる。かかる実施形態において、第1クロマトグラフ様式のpH範囲は、第2クロマトグラフ様式のpH範囲と異なることが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式移動相のpHと第2クロマトグラフ分離様式移動相のpHとの差異は、少なくとも3pH単位である。例えば、第1クロマトグラフ分離様式移動相のpHが2.5の場合、第2クロマトグラフ分離様式移動相のpHは、少なくとも5.5とすることができる。ある実施形態において、pHの差異は、少なくとも約4pH単位、5pH単位または6pH単位である。1つのクロマトグラフ分離様式移動相のpHは、例えば2と5の間とすることができ、一方別のクロマトグラフ分離様式移動相のpHは、例えば少なくとも3pH単位超:例えば5と8の間、または5と10の間、または7と12の間とすることができる。ある好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式のpHは、約2と約6の間、より好ましくは約2と約5の間、または約2.5と約4.5の間である。ある好ましい実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式のpHは、約6と約12の間、より好ましくは約6と約10の間、または約7と約10の間である。
【0036】
本発明の1つのまたは両方の次元において使用するのに適したクロマトグラフ法には、順相HPLC、RP−HPLC、HILIC、およびゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を含むサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)などの液体クロマトグラフ(HPLCを含む)法が含まれる。他の適切な方法には、付加的なHPLC方法および例えば、超性能液体クロマトグラフィー(UPLC)、迅速性能液体クロマトグラフィー(FPLC)などを含む関連する液体クロマトグラフ技法が含まれる。
【0037】
ある実施形態において、好ましい分離様式は、例えば、移動相が質量分析計にサンプルの清浄化または脱塩を、殆どまたは全く行うことなく注入するのに適しているなど、移動相が質量分析法などの分析技術と相容性があるものである。従って、ある好ましい実施形態において、溶出液が質量分析法によって分析される分離様式の移動相、例えば第2クロマトグラフ様式移動相は、実質的に不揮発性塩を含んでいない。例えば、ある実施形態において、第2移動相は、20mM未満(または10mMもしくは5mM未満)の不揮発性塩を含んでいる。本明細書で使用される「不揮発性塩」という用語は、液体クロマトグラフィーシステムを質量分析計と相互作用させる場合に、移動相溶媒を取り除くために使用される条件下で、実質的に不揮発性である移動相中に存在する塩を指す。これは、塩化ナトリウムまたはリン酸カリウムは不揮発性塩であると考えられ、一方、ギ酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、または酢酸アンモニウムなど、大部分が真空下で除去される塩は、揮発性塩である。他の揮発性塩も、当業者には明らかなように、使用することができる。例えば、揮発性酸(例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸)のアンモニウム(NH)塩は、一般的にMS検出に使用するのに適した揮発性塩である。
【0038】
ある実施形態において、第1または第2クロマトグラフ分離は、HPLC分離、より好ましくは逆相HPLC分離である。ある好ましい実施形態において、第1または第2クロマトグラフ分離の1つまたは両方がHILIC分離である。ある好ましい実施形態において、第2クロマトグラフ分離の種類は、例えば第1および第2クロマトグラフ分離の両方がRP−HPLCである、または両方がHILICであるなど、第1クロマトグラフ分離と同じである。
【0039】
混合物中に存在する検体または化合物は、例えば(薬剤または薬剤の候補など、一般的に1000未満の分子量を有する)小さな有機分子、(例えば、タンパク質の消化物もしくはタンパク質の混合物を含む、ペプチド合成からのまたは生体サンプルからの)ペプチドもしくはポリペプチド、(例えば、生体サンプルからのまたは合成したポリヌクレオチドからの)核酸もしくはポリヌクレオチド、合成もしくは天然ポリマー、またはこれらの物質の混合物であることができる。化合物の種類は、本明細書で説明する、化合物分離のために選択されたクロマトグラフ法によってのみ制限される。ある好ましい実施形態において、検出され、分析され、または精製される検体は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。
【0040】
ある実施形態において、分析または精製されるサンプルは、少なくとも20、50、100、500、1000、または5000個の検体および/または化合物および/または成分および/または不純物を含む。
【0041】
サンプル混合物の構成物質を効率的に分離するために、高いピーク容量を有する分離様式が好ましい。例えば、ある実施形態において、第1クロマトグラフ分離様式は、少なくとも10、20、50または100ピークのピーク容量を有し、あるいは第2クロマトグラフ分離様式は、少なくとも10、20、50または100ピークのピーク容量を有する。
【0042】
第1分離における化合物のグループの保持時間が、第2分離における化合物のグループの保持時間と高度に関連づけられない2つの分離は「直交している」と言うことができる。例えば、第1分離における化合物のグループの保持時間を第2分離における化合物のグループの保持時間に対してプロットしたならば、得られたグラフの相関係数(R)は、2つの分離が同一ならば、1.0に、2つの分離が完全に直交するのならば0.01となる。ある実施形態において、相関係数(R)が約0.8未満の場合、本明細書で使用される用語として、2つの分離様式は「実質的に直交」している。他の実施形態において、(参照により本明細書に援用する、Gilar、M.;Olivova、P.;Daly、A.E.;Gebler、J.C.、Anal.Chem.(2005年)77版,p.6426〜6434に記載された方法によって決定した)直交性%(O%)が約30%超の場合、本明細書で使用される用語として、2つの分離様式は「実質的に直交」している。好ましい実施形態において、本発明による第1分離と第2分離の間の相関係数は、0.8未満、より好ましくは0.6未満、より好ましくは0.4未満、更により好ましくは0.2未満、特に好ましくは0.1未満である。
【0043】
2つの好ましい直交分離において、方法の合計ピーク容量は、個々の方法のピーク容量の積である(すなわち、個別の方法のピーク容量を掛け合わせたものである)。例えば、第1分離がピーク容量50を有し、完全に直交している第2分離がピーク容量100を有している場合、化合物が連続的に第1および第2分離を受けるシステムの合計ピーク容量は、50×100=5000ピークである。2つの分離が完全に直交でないシステムにおいて、合計ピーク容量は、個々の方法のピーク容量の積よりも幾分小さくなる。ピーク容量は、画分収集の頻度などの要因によって減少することが可能であり、また理論的ピーク容量よりも小さいこともあることが認識される。好ましい実施形態において、方法は少なくとも1000、2000、5000、または10000ピークの合計ピーク容量を有している。
【0044】
選択したLC様式の直交性を評価するために(例えば、ペプチドの使用に関して)、前に説明したようにペプチド保持マップを構築することができる(参照により本明細書に援用する、Gilar、M.;Olivova、P.;Daly、A.E.;Gebler,J.C.J.Sep.Sci.(2005年)28巻,p.1694−1703;および同じく参照により本明細書に援用する、Gilar、M.;Olivova、P.;Daly、A.E.;Gebler、J.C.、Anal.Chem.(2005年)77巻、p.6426−6434も参照されたい)。簡単に言えば、5つのタンパク質消化物(それぞれ20〜100のペプチドを含む)を逐次LC−UV−MSシステムに注入し、ペプチドをそれぞれ特有の質量によって同定し、これらの保持を記録した。保持データは、単一次元LCセットアップにおいて、各LC様式に関して取得し、式1に従って正規化した。
【0045】
【数1】

【0046】
RTmaxおよびRTminは、それぞれデータセットにおいて保持されたペプチドの最大と最小の保持時間を表す。保持時間RTは、正規化されたRTi(norm)に変換される。RTi(norm)の値は、0から1にわたる。正規化は、2つの目的を果たす。第1は、保持時間の絶対値に関係なく、均一2D保持空間における異なるクロマトグラフデータの比較を可能にすることである。第2は、ピークが溶出されない場合の2D分離プロットにおけるボイドスペースを除去することである。ボイドは、カラムのボイド容積、LCシステムの勾配の遅れ、または有用な範囲の外側にわたる勾配の使用によって生じ得る(例えば、RP−LCにおける0〜100%アセトニトリルの勾配、実際には全てのトリプシンペプチドが0〜50%アセトニトリル内で溶出する)。
【0047】
2D−LC分離における直交性を特性決定するために開発されたツールは、情報的近似性、シネントロピの割合、ピーク広がり角度、および実際的ピーク強度などの幾つかの補助的記述子を使用する。これらの数学的モデルは、一部の状況の説明には適しているが、他の状況(データの集団化を含む)では記述が困難なこともある。従って、直感的な単一記述子を使用することができる。このモデルは、以下のアプローチを使用する。(i)正規化した保持データ(式1)を、図4に示すように2D分離スペースにプロットする。(ii)面積を各データポイントに割り当てて、正規化されたピーク面積を表す(ピーク幅は、4σ、ピーク高さの13.4%においてスナイダー(Snyder)により測定する)。(iii)直交性を2D分離スペース中のピークによってカバーされる正規化された面積として規定する。カバーされる面積が大きくなれば、直交性は大きくなる。
【0048】
問題を単純化するために、更に、以下の仮定をすることができる。(i)2D分離スペースは、以前に発行された報告書と同様に、長方形ビンに区分された。この結果、各ビンはピーク面積に相当する。(ii)データセットは、データポイントの数と等しい数の長方形ビンに区分された分離スペースと重ね合わせる。つまり、正規化された2D分離スペースのピーク容量は、分離された成分の数に等しい。従って、寸法の異なるデータセットを比較することができ、(iii)データポイントを含む全ての正規化されたビンの面積が合計される。被覆面積の程度は、調べた2D分離システムの直交性を表現する。
【0049】
本発明による分離を実施するのに適したカラムは、当技術分野において知られており、必要以上の実験無しで選択することができる。例えば、RP−HPLCカラムは、C、C18、およびフェニル置換固体支持体を含んでいる。順相カラムは、シリカを固定相として使用することができる。HILIC分離は、一般的に、場合によっては例えばアミノプロピルまたはジオール改質剤によって改質されたシリカベースカラム材料を使用して実施される。事前包装されたまたは被覆されたカラムまたはキャピラリーは、市販されており、分離のために使用する特定の固定相および固体支持体は、分離する混合物の量および複雑さ、決定する検体の種類などの要因により選択することができる。
【0050】
同様に、カラムの寸法は、分析または精製するサンプルの量などの要因により選択することができる。より大きなサンプルの量の分析に関しては、約3mm〜約20mmの直径を有するHPLCカラムを使用することもできる。非常に少量のサンプルに関しては、細口径カラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用することもできる。
【0051】
本発明の方法において、サンプルは、第1次元におけるクロマトグラフィー(すなわち、第1クロマトグラフ様式)を受ける。サンプルは、第1クロマトグラフ分離を開始する前に、清浄化、ろ過、濃縮、または他の予備分析調製が求められることもある。次いでサンプルは、第1次元分離システムに、通常注入弁を通して導入される。次いでサンプルの成分は、第1HPLCシステムの移動相によって、多次元液体クロマトグラフィーシステムの第1固定相に運ばれ、この中を通る。サンプルの少なくとも1つのサンプル成分が、第1次元カラムから出る移動相溶出液が、2つ以上の分離されたサンプル成分を含むように、他のサンプル成分からクロマトグラフィーで分離される。好ましい実施形態において、溶出液流のいずれかの部分に単数の成分または複数の成分が存在するかどうかを決定するのに検出器を使用することができる。例えば、UV/VIS(紫外線/可視波長光線検出器)などの非破壊検出器を、溶出液流中に成分または検体が存在するかどうかを決定するのに使用することができる。別な方法として、少量の溶出液流部分を分割し、質量分析計または蒸発光散乱検出器(ELSD)などの壊式検出器で使用することもできる。かかる様々な破壊および非破壊検出器は市販されており、例えば予想されるサンプル中の検体、化合物、成分または不純物の性質および量、使用する移動相の種類などの要因に基づき、特定の用途ための適切な検出器を選択することができる。
【0052】
第1次元溶出液流からの溶出液の画分または部分は、幾つかの方法により、第2次元における処理のために選択することができる。例えば、ある実施形態において、第1次元検出器から得た(例えば上記の様な)情報を、第1カラムからの溶出液流のどの画分または部分を第2クロマトグラフ分離に導くかを決定するために使用することができる。従って、例えば、第1次元検出器は、溶出液の特定の画分を収集するための画分収集器を始動させることができ、または第2次元クロマトグラフィーシステムへの後の注入のための特定の画分を明らかにするために、コンピュータ化したクロマトグラフィー分析システムに信号を送ることができる。別の実施形態において、画分は、第2クロマトグラフィーシステムへの注入のために、所定の間隔または所定の頻度で(例えば、画分を30秒毎、1分毎、2分毎などにおいて収集するなど)、収集またはサンプリングすることができる。市販されている画分収集器を、必要に応じて自動または手動様式においてサンプルを収集するために使用することができる。
【0053】
第1次元移動相溶出液の少なくとも一部をサンプリングし、(例えば、マルチポート注入弁と関連するサンプルループを使用して)多次元クロマトグラフィーシステムの第2HPLC次元に導く。第1クロマトグラフ分離からの溶出液の画分を第2分離様式に導くことを可能にするために、第1分離様式は第2分離様式とインターフェースをとらなければならない。このインターフェーシングは、幾つかの方法において達成することができる。例えば、第1次元溶出液の画分は、画分収集器中に収集することができ、画分の全部または一部を、第2クロマトグラフ分離様式に導くために選択することができる。所望する場合、例えば第2次元HPLCシステムに導入する前に、容積を低減したりまたは非相容性の溶媒を除去したりするために、画分を濃縮または蒸発することができる。脱塩など他のサンプル調製ステップを、収集した画分について同様に行うことができる。別な方法として、第1溶出液流からの画分または部分を、例えばロータリーマルチポート注入弁を通す注入によって、直接第2次元分離システムへ注入することができる(例えば、米国特許第6,730,228号を参照されたい)。ある好ましい実施形態において、第1溶出液の画分は、第2クロマトグラフ分離様式を実施する前に、オンラインで希釈することができる。好ましい実施形態において、第1次元溶出液流のサンプリングした部分(複数可)は、次いで多次元液体クロマトグラフィーシステムの第2HPLC次元に、(例えば第2次元注入器としてマルチポート注入弁を使用して)直接注入される。
【0054】
第1次元溶出液流の選択された部分または画分中の少なくとも1つのサンプル成分または検体は、次いで第2次元分離において、第2次元カラムから出る移動相溶出液が2つ以上の分離したサンプル成分を含むように、他のサンプル成分からクロマトグラフィーで分離される。好ましい実施形態において、第1次元溶出液流に関して上述したように、第2溶出液流のいずれかの部分に成分が存在するか否かを決定するために、検出器を使用することができる。サンプル中に存在する分離された成分または検体を検出しそして同定するためには、質量分析的検出が好ましい。
【0055】
第1および第2クロマトグラフ分離のための移動相は、特定の検体(複数可)の分離を最適化するために、またはサンプルの未知の成分の分離を最適化するために選択することができる。本明細書の別のところで説明しているように、本発明は、移動相のpHの変化が、少なくとも部分的な直交分離を、第1および第2次元が同じ種類の分離(例えば、両方の次元にRP−HPLCを使用する、それぞれに同じ種類のカラムを使用するなど)を使用する場合であっても、提供するのに使用できることを見出した。ある実施形態において、第1および第2次元のために使用するクロマトグラフカラムは同じ種類であることができ(例えば、両方とも逆相)、分離の移動相は、本明細書で説明するように基本的相違がpHの相違である状態において、実質的に類似していることができる。移動相pHは、移動相にpH改質剤を加えることで変えることができる。例えばトリフルオロ酢酸またはギ酸などの酸は、より低い(より酸性の)pHを提供するために加えることができ、一方水酸化アンモニウム(すなわち、アンモニア水)またはトリメチルアミンまたはトリエチルアミンなどの他の塩基は、より高い(より塩基性の)移動相pHを提供するために加えることができる。
【0056】
別の態様において、本発明は化合物の混合物を分離するための液体クロマトグラフィーシステムを提供する。このシステムは、a)第1クロマトグラフカラムおよび第1移動相を、第1クロマトグラフカラムを通してポンプ輸送するためのポンプを備えている第1クロマトグラフ分析システム;b)第2クロマトグラフカラムおよび第2移動相を、第2クロマトグラフカラムを通してポンプ輸送するためのポンプを備えている第2クロマトグラフ分析システム;c)第1クロマトグラフカラムの溶出液流から、少なくとも1つの化合物含有画分を選択し、少なくとも1つの化合物含有画分を第2クロマトグラフカラムに導く手段とを含み、ここで第1移動相のpHと第2移動相のpHが異なっている。
【0057】
第1および第2クロマトグラフ分析システムのそれぞれは、サンプルまたは画分をシステムに導入するための注入器を含んでいることが好ましい。在来型のマルチポートロータリー注入弁を使用することができる。液体クロマトグラフシステムのためのポンプは市販されており、ポンプは、クロマトグラフシステムを通してポンプ輸送しなければならない溶媒の量などの基準、およびシステムに存在する逆圧に従って選択することができる。ある実施形態において、勾配溶出を使用する場合、第1および第2クロマトグラフシステムの1つまたは両方に多重ポンプを使用することが好ましいこともある。
【0058】
本発明のシステムは、第1および第2溶出液流のいずれかからかまたは両方からの溶出液画分を収集するために、画分収集器を含むことができる。従って、第1クロマトグラフカラムの溶出液流から少なくとも1つの化合物含有画分を選択するための手段は、画分収集器などを含み、一方少なくとも1つの化合物含有画分を第2クロマトグラフカラムに導入する手段は、上述のように、手動注入器またはオンライン注入システム(例えば、マルチポート注入弁を第2次元注入器として使用)を含むことができる。代替として、あるいは追加的に、このシステムは、第1溶出液流の部分あるいは画分のオンライン希釈のためのモジュールを含むことができる。
【0059】
本発明の多次元HPLCシステムは、好ましくは、両方のクロマトグラフ次元のハードウェア(サンプリングシステム、注入弁、移動相ポンプ、検出システム)を操作するのに有効な、そしてハードウェアからデータを追跡および取得するソフトウェアで構成された、コンピュータ化された制御およびデータ分析システムを通して操作することが好ましい。適切なソフトウェアは、例えば、Waters(Milford、マサチューセッツ州、米国)などの液体クロマトグラフィーシステムの製造者、および/または、Lab View brand softwareなどのソフトウェア生産者から市販されている。ソフトウェアは、ロボットによる流体取扱器の操作のための制御素子および他のデバイスを付加的に含むことができ、これらは多次元HPLCシステムに統合することもできる。
【0060】
上記の説明は、第1および第2クロマトグラフ分離システムを有するシステムおよび方法について言及しているが、例えば第1および第2分離によっては分解しない検体の分離を更に改善するために、付加的なクロマトグラフ次元、例えば第3クロマトグラフ分離システムを追加することができることは、当業者にとって明らかである。例えば、第3クロマトグラフ次元を追加することができる。好ましい実施形態において、追加の次元は、他の次元の1つまたは複数に対して、相互に直交的である。好ましい実施形態において、追加の次元は、他の使用された次元の1つまたは全部に対して相互に直交的である。かかる多次元アプローチは、例えば、ホスホペプチド、グリコペプチド、高度に酸性なペプチドなどの分離および分析において、特に有効なこともある。
【0061】
(実施例)
材料および試薬
トリフルオロ酢酸(TFA)は、Pierce(Rockford、イリノイ州、米国)から購入した。ギ酸(FA)、濃縮水酸化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸、およびHPLC級アセトニトリルは、J.T.Baker(Phillipsburg、ニュージャージ州、米国)から購入した。Milli−Qシステム(Millipore、Bedford、マサチューセッツ州、米国)を、HPLC移動相のための脱イオン水(18MΩcm)調製に使用した。MassPREPペプチド標準液およびMassPREPタンパク質消化物標準液は、Waters(Milford、マサチューセッツ州、米国)から入手した。
【0062】
2D−HPLC実験のセットアップ
RP、HILIC、およびSECなどのLC−MS相容性HPLC様式のために、MassPREP標準液を直接LC−MSシステムに注入した。ペプチド(これらの相当する分子量によって同定したもの)の保持時間を、異なる分離次元の選択性と直交性を比較するために、グラフ中にプロットした。
【0063】
SCXおよびHIC分離様式は、移動相中に高濃度の塩を使用する。従って、溶出ペプチドに直接保持時間を割り当てるのは(ペプチドが同定されていないため)不可能であった。代わりに、画分を短い間隔(0.5〜2分)で収集し、後にキャピラリーLC−MSまたはMALDI MSを使用して分析した。
【0064】
HPLCの器具類
逆相(RP)クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、および親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)の実験は、2996光ダイオード配列検出器および単一四重極Micromass ZQ 4000MS器具(Waters、Milford、マサチューセッツ州、米国)を備えたModel 2795 Alliance(登録商標)HPLCシステムを使用して実施した。MS条件は、キャピラリー電圧3.2kV、コーン電圧30V、エキストラクタ1V、およびRFレンズ0.3Vであった。ソース温度は100℃に、脱溶媒は350℃に設定した。脱溶媒ガス流は、350l/時間、コーンガスは50l/時間に設定した。MSスキャン間隔は300〜2500m/z、スキャン時間は、0.1秒インタースキャンの状態で2.2秒であった。スペクトルは、正のESI様式で収集した.
強陽イオン交換(SCX)クロマトグラフィーおよび親水性相互作用(HIC)クロマトグラフィーは、2996光ダイオード配列検出器を備えたModel 2796 Alliance(登録商標)MD HPLCシステムを使用して実施した。画分は、手動で収集した。
【0065】
SCXおよびHIC画分の分析:LC−MSおよびMALDI MS器具類
LC−MSまたはMALDI MS分析の前に、収集した画分は、Oasis HLB 96−well microElutionプレートを使用して脱塩した。SCXまたはHIC画分は0.2%水性TFAを使用して1:1で希釈し、(最初に200μlのACNその後200μlの0.1%TFAを使用して調整した)抽出プレート上に装荷した。装荷後、プレートを200μlの0.1%TFAで洗浄し、保持しているペプチドを、60μlの水中60%アセトニトリル(ACN)を使用して溶出した。約1μlの溶出液を、MALDIマトリックスα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)と混合し、分析のために直接ステンレス鋼MALDIターゲットに滴下した。マトリックスは、80%ACN中で濃度10mg/mlにおいて調製し、100〜500fmoleの、内部標準としての目的を果たす選択したペプチド(ACTH)をスパイクした。質量スペクトルは、Nパルスレーザー(337nm)および2.3メートルの飛行経路を備え、MassLynx 4.0(Waters、Milford、マサチューセッツ州、米国)によって制御される、Micromass M@LDI RTOF instrument(Waters、Milford、マサチューセッツ州、米国)により取得した。この機器は、ディレイドエクストラクションを使用して、リフレクトロン様式で操作した。
【0066】
脱塩し、Oasis HLBプレートから回収した画分は、LC−MS分析の前にACN含有量を低下させるため、部分的に蒸発させた。各画分の最終容積は約10μlであった。1μlを、分析のためキャピラリーRP−HPLカラム上に注入した。光ダイオード配列検出器を備えた、キャピラリーHPLCシステム(CapLC(登録商標)、Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)を、MS様式で操作しているESI−Q−Tofマイクロ質量分析計(Micromass Q−Tof(登録商標)micro、Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)に接続した。キャピラリー電圧を3200V、コーン電圧を30V、エクストラクションコーン電圧を0.5V、イオンエネルギーを4V、衝突エネルギーを10Vに設定した。
【0067】
HPLC実験およびカラムの説明
RP−HPLC、pH2.6:2.1×150mm、3μmのAtlantis dC18カラム(Waters Corporation、 Milford、マサチューセッツ州、米国)を、流速200μl/分で使用した。カラム温度は40℃に設定した。移動相Aは、水中の0.2%ギ酸(FA)であり、移動相Bは ACN中の0.13%FAであった。勾配は、70分において、0〜56%B(0.8%ACN/分)であった。
【0068】
RP−HPLC、pH8.5および10:2.1×150mm、3.5μmの×Terra Phenyl(pH8.5に関して)および2.1×150mmのXTerra MS C18カラム(pH10に関して)(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)を、流速200μl/分で使用した。カラム温度は40℃に設定した。移動相AはpH8.5の20mMの水性ギ酸アンモニウムバッファーまたはpH10の同じバッファーであり、移動相BはACNであった。勾配は、70分において、0〜56%B(0.8%ACN/分)であった。
【0069】
RP−HPLC、ペンタフルオロフェニル(PFP)、5μm(Waters、 Milford、マサチューセッツ州、米国):移動相Aは水であり、Bはアセトニトリル、およびCは400mMNHFA水性バッファーであり、pH3.25であった。流速は0.2mL/分であって、分離温度は40℃であった。勾配は、0.8%アセトニトリル/分であり、ポンプCを、20%の溶媒を定組成的に送出し、それによって移動相が80mMのNHFAバッファーの一定濃度を含むように使用した。バッファーは、24.7gの濃縮水酸化アンモニウム(28%水溶液)を、900mLの水および50mLのFA(99%)に加えることによって調製した。pHは、水酸化アンモニウムまたはFAのいずれかでpH3.25に調節し、容積を1Lにした。
【0070】
HILIC:2.1×150mm、3μmのAtlantis HILICカラム(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)を、流速200μl/分において使用した。カラム温度は40℃に設定した。移動相Aは水であり、移動相BはACNであり、移動相Cは200mMのギ酸アンモニウムであり、pHは4.5であった。勾配は、62.5分において、90〜40%B(0.8%ACN/分)であり、バッファーCは5%に一定に維持した(移動相中、10mMのギ酸アンモニウムの一定濃度とする)。
【0071】
SEC:3個の4.6×250mm、5μmのYMCジオール、60Å SECカラム(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)を直列に接続した。移動相は、ポンプを使用して混合した。移動相Aは水であり、Bはアセトニトリル、およびCは200mMのギ酸アンモニウム(NHFA)水性バッファーであり、pHは4.5であった。流速は0.2 mL/分であり、分離温度は40℃であった。定組成移動相は、20%のアセトニトリルおよび40mMのNHFAバッファーを含んでおり、pHは4.5であった。バッファーは、12.6gのギ酸アンモニウムを、900mLの水に溶解し、FA(99%)を使用してpHを4.5に調節することにより調製し、次いで容積を1Lにした。
【0072】
SCX−HPLC:polySULFOETHYL Aspartamide(商標)SCX、5μmカラム(Po1yLC、Columbia、メリーランド州、米国)を、イオン交換HPLC分離に使用した。カラムは、25℃で操作した。ある実験に関して、移動相はAが20mMのNaHPOで、5%のアセトニトリルを使用してpH2.6であり、Bが20mMのNaHPOで、1MのNaClを加えた5%アセトニトリルを使用してpHが3であった。勾配は、100分において、0〜15%Bであった。別の実験において、条件は次の通りであった。SCX実験は、流速0.2mL/分において30℃で実施した。移動相Aは水で、Bはアセトニトリル、およびCは400mMのNHFA水性バッファーであり、pHは3.25であった。勾配は、40分において、10〜750%Cであり、ポンプBは、塩勾配の全持続時間にわたり、定組成的に25%のアセトニトリルを送出するために使用された。NHFAバッファーは、直接MS検出と相容性があった。
【0073】
キャピラリーLC−MS:0.3×150mm、3.5μmの架橋したハイブリッドC18カラム(Waters Corporation、Milford、マサチューセッツ州、米国)を、流速5μl/分で使用した。カラム温度は40℃に設定した。移動相Aは、水中の0.1%FAであり、移動相Bは、80%ACN/20%水における0.1%FAであった。勾配は、64分において0〜80%B(1% ACN/分)であった。
【実施例1】
【0074】
本研究において、本発明者らは様々なLC様式の直交性および代替直交LC分離アプローチの開発を評価するために、5つのタンパク質(250のペプチド)のトリプシン消化物を使用した。試験したクロマトグラフ様式(これは個別に試験した)は、強陽イオン交換(SCX), サイズ排除(SEC),逆相(RP),および親水(HILIC)クロマトグラフィーを含んでいた。各分離に関するペプチドの保持を記録し、2Dグラフにプロットし数学的に相関付け、分離の直交性を、調査した2Dプロット中の溶出ピークによってカバーされる面積の部分として評価した。
【0075】
これら研究の結果を図1〜3に示す。図1において、一次元におけるクロマトグラフの(前述の)SCX分離を、Atlantis(商標)C18カラム上のRP−HPLCと比較した。図1のキーは、ペプチドの充填状態を示す。図2において、一次元のRP−HPLC(前述のAtlantisカラムでpH2.6)を、pH10におけるXterra MS C18カラム上のRP−HPLCと比較した。図3において一次元のHILICを、pH2.6におけるAtlantis(商標)C18カラム上のRP−HPLCと比較した。
【0076】
本発明者らは、これら条件の内で、最も高い直交性がHILICとRP(R=0.0038)の組合せまたはRP−RP(R=0.45)に関して得られることを見出した。後者の場合、差別的選択性(これが直交性をもたらす)は、固定相を変化させるよりはむしろ異なる移動相を使用することによって達成することができる。しかしながら、本発明者らは、pH2.6におけるAtlantis C18カラム上のRP−HPLCが、pH8.5(R=0.78,データは示されていない)におけるXterra Phenylカラム上のRP−HPLCに対して、幾分補うこともまた見出した。この場合、わずかな直交性は、異なる固定相並びにpHの差異が原因であることもある。他の評価したRP固定相も類似の傾向を示す。最も明瞭な選択性は、PFP吸着剤(データは示されていない)において観察された。しかしながら、直交性は未だ制限されており、2D空間の多くは分離には使用されていない。
【0077】
HILICおよびRP様式の両方とも、極めて効率的な分離様式であり、広範囲な疎水性のペプチドの分析に適している。加えて、使用したどんな添加物を含む移動相も、揮発性であるように選択することができ、従って分離次元は互換性があり、質量分析と相容性がある。
【0078】
RPと組み合わせたSECも良好な直交性を備えているが(結果は示されていない)、低いSECピーク容量のため、(少なくともペプチドに関して)この分離次元は魅力のないものとなっている。SECの限られた有効性のため、本発明者らは3つのカラムを直列に接続してピーク容量を高め保持データを記録した。比較的疎水性のペプチドの吸着剤との残留相互作用は、pH4.5において20%のアセトニトリルおよび40mMのNH4FAバッファーを移動相に加えることによって最小化された。しかしながら、一部の2次相互作用が未だ広がっており、より大きなペプチドを回収することを制限しており、分離の総体的選択性に影響を及ぼしている。ペプチドの寸法とペプチドのSEC保持の間に、緩い相関関係だけが観察された。より長いペプチド(より疎水性で、それ故RP様式でより保持される)は、予想通りSEC中で早めに溶出される。しかしながら、RP×SECの組合せに関する直交性の程度は、予想された程度よりも大きかった(データは示されていない)。この挙動は、前述のペプチドの吸着剤との第2の相互作用によって生じたと考えられる。
【0079】
HILIC様式も、ペプチド分離に関して同様に評価した。HILIC様式におけるペプチドの分離に関する報告はわずかしか発行されておらず、主にポリアスパラギン酸塩またはアミド吸着剤を使用している。本発明者らは、裸のシリカ吸着剤を充填したHILICカラムを使用した。ペプチドピーク形状も回収も共に良好であった。注入前にペプチドサンプルを70%アセトニトリルに溶解した際に、沈澱は観察されなかった。ペプチド充填とHILIC保持にいくらかの相関関係があることは、保持メカニズムが区分化およびイオン相互作用(例えば荷電したシラノールによる)の両方を含んでいることを示唆している。従って、分離選択性は部分的にSCX様式におけるペプチド保持に似ている。高い度合いのHILIC−RPシステムの直交性が、2D−LCのためのアプローチを有望なものとしている。
【0080】
SCX−RPの組合せ(図1)は、上記のRP−HPLC−RP−HPLCまたはRP−HPLC−HILIC実施例と比較して、より低い直交性を示す。SCX様式における分離は、一次的にペプチド電荷に基づくので、二重および三重に荷電したペプチドは、クラスターにおいて溶出する傾向があり、ピークの発生が少ない一部の他の分離部分を出る。典型的なサンプル中に存在するトリプシンペプチドは殆ど、2+に荷電しており(60〜80%)、従って、成分の大部分は狭い保持時間の範囲内にあり、それ故十分に分解していない。加えて、ある条件下で、本発明者らは、25%アセトニトリルを移動相に加えたにもかかわらず、SCX次元中の疎水性ペプチドの損失を観察した(類似の損失がSECに関しても同様に見られた)。これらの事例において、約30〜40%のペプチドがSCXから溶出していることが検出されなかった。しかしながら、LC−MS相容性揮発性移動相を使用してSCXを使用した場合、関係する全てのペプチド(疎水性ペプチドを含む)が、検出された(移動相中に25%または5%両方のアセトニトリルを含む状態において、データは示されていない)。いかなる理論にも拘泥することを望むものではないが、ペプチドが移動相中のアセトニトリルの含有にもかかわらず、SCXカラムから不完全に溶出(NaCl溶出剤)されること、または高濃度の不揮発性塩の存在において収集後の沈澱が生じていることのいずれかが考えられる。本発明者らは、LC−MS相容性バッファーは、ペプチドのSCX区分に利益があるものと確信している。
【0081】
これらの結果は、多次元分離に使用することのできる補足的分離を得るために使用することのできるある分離の組合せを示している。2つの分離の間のpHの相違は、たとえ同じ分離様式(例えばRP−HPLC)が、第1および第2分離次元の両方に使用されても、実質的な直交性を提供するために使用することができる。
【実施例2】
【0082】
SCX吸着剤をより詳細に調査した。SCX様式における溶出は、通常NaClの勾配を使用して達成され、これがこの様式をMS検出とは相容れないものとしている。オフラインおよびオンライン両方の2D−LC−MS設定は、しばしばRP捕獲カラムを経由して実現されるサンプルの脱塩に通常依存する。以前に発行された報告書は、利用可能なSCX吸着剤は2次(疎水性)相互作用を示し、これが疎水性ペプチドの回収を低下させることを示している。移動相への有機溶媒の添加がピーク形状とペプチドの回収を改良することが示唆された。しかしながら、移動相中に25%のアセトニトリルを使用しても、予想したよりもペプチドの数が少ないことを本発明者らは観測した。従って、本発明者らは代替移動相と直接MS検出を調査した。
【0083】
移動相は、揮発性バッファー、すなわち400mMの水酸化アンモニウムを、FAを使用してpH3.25に滴定したもの、から調製した。FAの最終濃度は約1.3M(5%FA)であった。FAのpKは3.75であるので、バッファーのpH(0.5pH単位低い)は、FAの25%だけが脱プロトンし、[H]の濃度を325mMにもってくることを保証する。アンモニウム陽イオンと一緒になって、このバッファーの全陽イオン強度は、725mMになる。バッファーの10%〜75%勾配(72.5〜543.75mM)が、5+荷電までの全ての所望のペプチドを成功裏に溶出した。MS信号は、劇的に抑制されず、オンラインLC−MS検出が可能であった。
【0084】
予想されたように、SCX選択性は、ペプチド電荷によって駆動されると考えられる。プロットから現れる傾向は、ペプチドの保持は、それの長さにも依存することを示唆している。大きなペプチド(これはより疎水性でよりよくRP中に保持される)は、同じ電荷の短いペプチドに比較して、SCXクロマトグラフィー中に比較的保持されにくい。この挙動は、電荷密度(これはペプチドが短くなるほど大きくなる)が、保持メカニズムにおいて第2の役割を果たすことを暗示している。特定の理論にも拘泥することを望むものではないが、電荷密度は、ペプチドの吸着剤との残留疎水性相互作用よりもむしろ、同じ電荷を有するペプチドを分解するためのSCX吸着剤の能力に関与していると考えられる。
【0085】
SCX−RP組合せの直交性は、良好であると考えられる。しかしながら、プロットしたデータにおいて、最も多量のペプチドのグループ(66%のペプチドが2+に荷電しており、28%のペプチドが3+に荷電している)が、堅固なクラスターを形成する。2D分離空間は、データポイントによって均一にカバーされていないので、直交性は予想された値より低い。
【実施例3】
【0086】
ペプチドの2D−HPLC分離へのアプローチとして、RP−RP−HPLCを特性決定するために追加の実験を実施した。オフライン2D−HPLC実験を、達成可能な直交性の程度を確認するために設定した。5つの等モル比(それぞれ10pmole)の消化したタンパク質混合物を含むサンプルを、pH10において、最近RP−HPLC用途のために開発された(K.D.Wyndham他、Anal.Chem(2003年),75巻,p.6781〜6788)、新規の3.5μmC18架橋−エチルハイブリッド(BEH)シリカ吸着剤を充填した150×1mmカラムを使用して、第1RP−HLPC次元中に注入した。BEH吸着剤は、広範囲のpHにおいて非常に安定であり、pH2.6および10両方における分離のための理想的な材料を提供する。
【0087】
これら条件下で、平均ピーク幅は、基準線において典型的に0.5分である。2.5分の画分(5ピーク幅)を収集し、アセトニトリルおよび水酸化アンモニウムの含有量を減少させるために、部分的に蒸留した。画分の最終容量は10μlであり、1μlを150×0.3mm、3.5μmBEH C18キャピラリーカラムを使用して第2LC−MS次元に注入した。
【0088】
第1LC次元において早めに溶出するペプチドは、第2次元においても早めに溶出する傾向がある。同様に、遅く溶出した画分おいて収集されたペプチドは、第2分離次元においても遅れて溶出する。分離の直交性は、特に同じ種類のC18吸着剤を第1および第2次元に使用したことを考慮した場合、良好であると考えられ、従って直交性は、pHの効果を経由してのみ作られる。使用したキャピラリーLCシステムの勾配の遅れは約13分であった。この特定の時間は、含まれるピークによるものではない。少しのトリプシンペプチド溶出が43分を超えても、有用な分離ウィンドウは、30分の幅しかない。ペプチドを溶出する収集した画分の殆どは、有用なLC−MS時間の50%〜70%をカバーする。早期、中期、および後期に収集する画分の勾配の開始強度および間隔の調節によって、潜在的にペプチドを分離空間上により均一に広げることができる。
【0089】
RP−RPアプローチの直交性を、SCX−RP−HPLCシステムと比較した。(1mm内径カラムを用いたRP−RP実験に比例した荷重を維持するために)4.4×超ペプチド質量を装荷した150×2.1mmSCXカラムを使用した。収集した画分をSPEによって脱塩し、最終容積を蒸発によって44μlに減少させた。約1μlを、LC−MSによって分析した。装荷質量および分離条件は、以前のPR−PR実験と同一であった。これらの条件下、分離直交性は、両方の2DHPLCシステムと同程度であることが判明した。
【実施例4】
【0090】
分離選択性に対するpHの影響を、最初Enolase消化物(約35ペプチド)を使用して評価した。pH7.9(10mMの重炭酸アンモニウム)の移動相で得られた保持時間を、FAでpH2.6にした移動相の以前に記録したデータに対してプロットした。分離の直交性は、本明細書で説明した他の幾つかの実験における直交性よりも顕著に大きかった。直交性における変化が、本当にpHの差異によるものかを明らかにするために、本発明者らは他の実験を実施した。HPLCカラムに極性埋込みRP−18およびPhenyl吸着剤を充填し、分離を、類似のpH(それぞれ7.9および8.5)を使用して実施した。上述のpH2.6およびpH7.9の間で観察された直交性に対比して、著しい直交性は観察されなかった。
【0091】
pHの影響を、両方の分離次元におけるより広いpHギャップを使用して更に調査した。pH8.5および10において収集した実験データは、pH2.6の保持時間データに対してプロットした場合に著しい直交性の度合いを示した。RP分離次元の間のpH差異が広くなるほど、より大きな直交性が達成された。従って、更なる議論は、pH2.6対pH10の実験に焦点が当てられる。pH10の分離は、高いpHにおいて安定なことが知られているXTerra MS C18固定相について実施した。分離のために使用した20mMのギ酸アンモニウムバッファーがMS信号をある程度抑制した。しかしながら、全てのペプチド質量は、明瞭に検出された。pH10における保持データを、移動相中に0.2%のFAを使用している(pH2.6)BioSuite C18 PA−Aカラムからのデータに対してプロットした。2−D分離空間上にペプチドの比較的に高い広がりが観察された。データは、ペプチドpI値に従って、3つのグループに細分化した。グラフから表れる空間的分離は、主要な分離要因が実際にはペプチドのpI(電荷)であることを示唆している。(少なくとも部分的に放電された場合に)pH10の条件下でより強力に保持される塩基性ペプチド(pI>7.5)に比較して、カルボキシル部分(moieties)がイオン化されない場合の酸性ペプチド(pI<5.5)の種類は、pH2.6においてより強力に保持される。
【0092】
5.5〜7.5pI範囲内のペプチドのグループに関しても、ある程度の直交性が観察された。この観察は、更なる注釈に値する。ペプチドpI値は、分子の正味荷電がゼロに等しい場合のpHを表す。pIは、塩基性アルギニン(pKa12.5)、リシン(pKa10.2)、ヒスチジン(pKa6.45)、端末アミノ基NH(pKa7.6)などの多くのイオン化アミノ酸、アスパラギン酸(pKa3.95)、グルタミン酸(pKa4.45)、チロシン(pKa9.8)、および端末COOH基(pKa3.6)などの酸性アミノ酸の寄与の合計である。pI範囲が5.5〜7.5の「中性」ペプチドでも、少なくとも一部のイオン化基が、分離条件(pH2.6または10)において異なる電荷/放電を行うので、pHによって影響を受けるはずである。
【0093】
本明細書で引用した全ての特許および参考資料の内容は、参照により本明細書に援用する。
【0094】
本開示に照らして、当業者によって認識されるように他の実施形態が、本発明および添付の特許請求範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1次元においてSCXを、第2次元においてRP−HPLCを使用する多次元LC分離システムから得られた分離を示すプロット図である。
【図2】第1次元においてRP−HPLCを、第2次元においてRP−HPLCを使用する多次元LC分離システムから得られた分離を示すプロット図である。
【図3】第1次元においてHILICを、第2次元においてRP−HPLCを使用する多次元LC分離システムから得られた分離を示すプロット図である。
【図4】選択した2D−LCシステムに関する幾つかの正規化された保持時間のプロット図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)サンプルを、第1pHにおいて、第1移動相を使用して第1液体クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;
b)前記第1クロマトグラフ分離から少なくとも1つの画分を収集するステップと;
c)前記少なくとも1つの画分を第2pHにおいて、第2移動相を使用して第2液体クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;
d)前記サンプル中の少なくとも1種の検体の存在または不在を検出するステップとを含み、ここで前記第1pHと前記第2pHが異なる、少なくとも1種の検体を含むサンプルを分析する方法。
【請求項2】
第1および第2クロマトグラフ分離が、互いに対して実質的に直交している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および/または第2クロマトグラフ分離様式が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1および/または第2クロマトグラフ分離様式が、親水性相互作用クロマトグラフィーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
HPLC分離が逆相HPLC分離である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1クロマトグラフ分離様式が、少なくとも100ピークのピーク容量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1pHと第2pHが、少なくとも約3pH単位異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種の検体が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の検体が、小さな有機分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
サンプルが、少なくとも1000種の検体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
方法の全ピーク容量が、少なくとも1,000ピークである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
HPLC分離が、ミクロボアカラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)において収集された少なくとも1つの画分が、前記少なくとも1つの画分を第2クロマトグラフ分離様式にかける前に、濃縮または希釈される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの画分が、蒸発によって濃縮される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップb)において収集された少なくとも1つの画分が、第2クロマトグラフ分離様式を実施する前にオンラインで希釈される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
検出のステップが、質量分析法を使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1および第2クロマトグラフ様式が同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1および/または第2移動相が、実質的に不揮発性塩を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第1および/または第2移動相が、約20mM未満の不揮発性塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
複数の部分が収集され、第2クロマトグラフ分離にかけられる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
a)サンプルの少なくとも一部分を、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;
b)少なくとも1つの画分を、前記第1クロマトグラフ分離から収集するステップと;
c)前記少なくとも1つの画分を、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップとを、前記サンプル中の少なくとも2個の検体が分離される条件下で含む、サンプル中の複数の検体を分離する方法。
【請求項22】
第1および第2クロマトグラフ分離が、互いに対して実質的に直交している、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1および/または第2クロマトグラフ分離様式が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
第1および/または第2クロマトグラフ分離様式が、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
HPLC分離が逆相HPLC分離である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
第1クロマトグラフ分離様式が、少なくとも100ピークのピーク容量を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
第1pHと前記第2pHが、少なくとも約3pH単位異なる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1種の検体が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1種の検体が、小さな有機分子である、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
サンプルが、少なくとも1000種の検体を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
方法の全ピーク容量が、少なくとも10,000ピークである、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
HPLC分離が、ミクロボアカラム、キャピラリーカラム、またはナノカラムを使用して実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
ステップb)において収集された前記少なくとも1つの画分が、前記少なくとも1つの画分を第2クロマトグラフ分離様式にかける前に、濃縮または希釈される、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
検出のステップが、質量分析法を使用して実施される、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
第1および第2クロマトグラフ様式が同じである、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
第1および/または第2移動相が、実質的に不揮発性塩を含まない、請求項21に記載の方法。
【請求項37】
第1および/または第2移動相が、約20mM未満の不揮発性塩を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項38】
複数の部分が収集され、第2クロマトグラフ分離にかけられる、請求項21に記載の方法。
【請求項39】
a)サンプルを、2次元液体クロマトグラフィーシステムの第1次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;
b)前記サンプルの少なくとも第1ポリペプチド成分を、第1移動相を使用する前記第1次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中の前記サンプルの少なくとも第2ポリペプチドから、クロマトグラフィーで分離するステップと;
c)前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液中の前記分離した第1および第2ポリペプチド成分を溶出するステップと;
d)前記溶出液の少なくとも1つの個別の容積(volume)をサンプリングするステップと;
e)前記少なくとも1つの個別の容積を、前記2次元液体クロマトグラフィーシステムの第2次元クロマトグラフィー装置(second dimension chromatography apparatus)に注入するステップと;
f)注入した個別の容積を、第2移動相を使用する前記第2次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中でクロマトグラフ分離にかけ、ここで前記第1および第2移動相の前記pHが約3pH単位異なっているステップと;
g)前記第2次元クロマトグラフィー装置の前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液を、質量分析法を使用して特性決定し、これによって複数のポリペプチドを含む前記サンプルを特性決定するステップと
を含む、2次元液体クロマトグラフィーシステムにおいて複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定する方法。
【請求項40】
a)サンプルを、化合物が第1不純物から分離される条件下で、第1pHにおいて第1クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;
b)少なくとも1つの化合物含有画分を、前記第1クロマトグラフ分離から収集するステップと;
c)前記少なくとも1つの化合物含有画分を、前記化合物が第2不純物から分離される条件下で、第2pHにおいて第2クロマトグラフ分離様式にかけるステップと;
d)精製した化合物を収集するステップと
を含む、化合物および少なくとも2つの不純物を含むサンプル中の前記化合物を精製する方法。
【請求項41】
a)第1クロマトグラフカラムおよび前記第1クロマトグラフカラムを通して第1移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第1クロマトグラフ分析システムと;
b)第2クロマトグラフカラムおよび前記第2クロマトグラフカラムを通して第2移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第2クロマトグラフ分析システムと;
c)少なくとも1つの化合物含有画分を、前記第1クロマトグラフカラムの溶出液流から選択する手段および前記少なくとも1つの化合物含有画分を前記第2クロマトグラフカラムに導く手段と
を含み、ここで、前記第1移動相のpHが、前記第2移動相のpHと異なる、化合物の混合物を分離するための液体クロマトグラフィーシステム。
【請求項42】
a)サンプルを、第1pHにおいて第1移動相を用いて、第1クロマトグラフ分離にかけるステップと;
b)前記第1クロマトグラフ分離から少なくとも1つの画分を収集するステップと;
c)前記少なくとも1つの画分を、第2pHにおいて第2移動相を用いて、第2クロマトグラフ分離にかけるステップと;
d)前記サンプル中の前記少なくとも1種の検体の存在または不在を検出するステップと
を含み、ここで前記第1pHと前記第2pHが異なる、少なくとも1種の検体を含むサンプルの分析方法。
【請求項44】
a)サンプルを、第1pHにおいて第1移動相を用いて、第1クロマトグラフ分離にかけるステップと;
b)前記第1クロマトグラフ分離から少なくとも1つの画分を収集するステップと;
c)前記少なくとも1つの部分を、第2pHにおいて第2移動相を用いて、第2クロマトグラフ分離にかけるステップと;
d)前記サンプル中の少なくとも1種の検体の存在または不在を検出するステップと
を含み、ここで前記第1および第2移動相が、実質的に不揮発性塩を含まない、少なくとも1種の検体を含むサンプルの分析方法。
【請求項45】
a)サンプルの少なくとも一部を、第1pHにおいて第1HPLC分離にかけるステップと;
b)前記第1HPLC分離から、少なくとも1つの画分を収集するステップと;
c)前記サンプル中の少なくとも2種の検体が分離される条件下で、前記少なくとも1つの画分を第2pHにおいて、第2HPLC分離にかけるステップと
を含む、サンプル中の複数の検体を分離する方法。
【請求項46】
a)サンプルを、多次元液体クロマトグラフィーシステムの第1次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;
b)前記サンプルの少なくとも第1ポリペプチド成分を、第1移動相を使用する前記第1次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中の前記サンプルの少なくとも第2ポリペプチドから、クロマトグラフィーで分離するステップと;
c)前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液中の前記分離した第1および第2ポリペプチド成分を溶出するステップと;
d)前記溶出液の少なくとも1つの個別の容積をサンプリングするステップと;
e)前記少なくとも1つの個別の容積を、前記多次元液体クロマトグラフィーシステムの第2次元クロマトグラフィー装置に注入するステップと;
f)注入した個別の容積を、第2移動相を使用する前記第2次元クロマトグラフィー装置のクロマトグラフィーカラム中でクロマトグラフ分離にかけ、ここで前記第1および第2移動相のpHが約3pH単位異なっているステップと;
g)前記第2次元クロマトグラフィー装置の前記クロマトグラフィーカラムからの溶出液を、質量分析法を使用して特性決定し、これによって複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定するステップと
を含む、多次元液体クロマトグラフィーシステムにおいて複数のポリペプチドを含むサンプルを特性決定する方法。
【請求項47】
a)第1クロマトグラフカラムおよび前記第1クロマトグラフカラムを通して第1移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第1クロマトグラフ分析サブシステムと;
b)第2クロマトグラフカラムおよび前記第2クロマトグラフカラムを通して第2移動相をポンプ輸送するためのポンプを含む第2クロマトグラフ分析サブシステムと;
c)少なくとも1つの化合物含有画分を、前記第1クロマトグラフカラムの溶出液流から選択する手段および前記少なくとも1つの化合物含有画分を前記第2クロマトグラフカラムに導く手段と
を含み、ここで、前記第1移動相のpHが、前記第2移動相のpHと異なる、化合物の混合物を分離するための液体クロマトグラフィーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−537994(P2008−537994A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552275(P2007−552275)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/001968
【国際公開番号】WO2006/078859
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】