説明

化合物

【課題】表面状態及び経時安定性に優れたフィルムを製造可能な化合物等を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物。


[式中、Xは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20の環状アルキル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。E及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。A及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。B、B、B及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。F及びFは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該炭素数1〜12のアルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。P及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを製造するために有用な化合物等に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)には、偏光板、位相差板等のフィルムを用いた部材が含まれている。たとえば、特許文献1には、式(III−1−1)で示される重合性化合物を溶剤に溶かして得られる溶液を、支持基材に塗布した後、次いで重合することにより得られた位相差板が開示されている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−287623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の重合性化合物から得られるフィルムの表面状態及び経時安定性は、必ずしも十分に満足できるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、このような状況下、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、以下の発明である。
[1]式(1)で表される化合物。
【0006】

【0007】
[式(1)中、Xは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は置換基を有していてもよい1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。
、B、B及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びFは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該炭素数1〜12のアルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【0008】
[2]P及びPが、それぞれ独立に、式(P−1)で表される基である上記化合物。

[式(P−1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。]
【0009】
[3][1]又は[2]記載の化合物及び光重合開始剤を含有する組成物。
【0010】
[4][1]又は[2]記載の化合物を重合させて得られるフィルム。
【0011】
[5][4]記載のフィルムを含むカラーフィルタ。
【0012】
[6][4]記載のフィルムを含むフラットパネル表示装置。
【0013】
[7][1]又は[2]記載の化合物を、基材上又は基材上に形成された配向膜上に塗布する工程を含むフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の化合物によれば、表面状態及び経時安定性に優れたフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】偏光フィルムを示す概略図である。
【図2】液晶表示装置を示す概略図である。
【図3】有機EL表示装置を示す概略図である。
【図4】カラーフィルタを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、式(1)で表される化合物(以下「化合物(1)」という場合がある)である。

[式(1)中、Xは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は置換基を有していてもよい1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。
、B、B及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びFは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該炭素数1〜12のアルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【0017】
Xで示される炭素数2〜20のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、ノニル基、1−メチルオクチル基、デシル基、ウンデシル基およびドデシル基が挙げられ、炭素数3〜12のアルキル基が好ましい。
【0018】
炭素数3〜20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基およびシクロデシル基が挙げられ、炭素数3〜12の環状アルキル基が好ましい。
【0019】
炭素数6〜20の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−フルオレニル基、2−フルオレニル基および3−フルオレニル基が挙げられ、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましい。かかる芳香族炭化水素基は、置換基を有することができ、置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;および、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;が挙げられる。置換芳香族炭化水素基としては、4−フルオロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基および3,5−ジメチルフェニル基が挙げられる。
Xは、炭素数3〜12のアルキル基または炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0020】
及びEで示される2価の連結基は、2価の有機基を含み、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−O−CH−及び−CH−O−が挙げられる。Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基など)を表す。中でも、*−CO−O−(*は、シクロへキサン−1,4−ジイル基との結合手を表す。)が好ましい。
【0021】
及びAで示される2価の芳香族炭化水素基としては、式(g−1)〜式(g−5)で表される5員環又は6員環の芳香族基からなる基が好ましい。2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基など)、炭素数1〜4のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、トリフルオロメチル基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよい。
【0022】

【0023】
及びAとしては、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、4,4’−ビフェニレン基及びフルオレン−2,7−ジイル基等が挙げられ、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0024】
、B、B及びBで示される2価の連結基は、2価の有機基を含み、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−CO−及び−CS−が挙げられる。Rは、上記と同じ意味を表す。
中でも、B、B、B及びBとしては、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−、−O−CH−、−CH−O−及び単結合が好ましい。
及びBとしては、−O−がより好ましく、B及びBとしては、*−O−CO−(*は、F又はFとの結合手を表す)がより好ましい。
【0025】
、B、B及びBの組み合わせとしては、表1に示す組み合わせが挙げられる。表中B及びB欄における*は、F又はFとの結合手を表す。表中B及びB欄における*は、P又はPとの結合手を表す。
【0026】
【表1】

【0027】
及びFで示される置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタンジイル基、へキサンジイル基、へプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基、デカンジイル基、ウンデカンジイル基及びドデカンジイル基等の直鎖又は分岐が1個の炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4〜8のアルカンジイル基がより好ましく、炭素数4〜6のアルカンジイル基が特に好ましい。
炭素数1〜12のアルカンジイル基に含まれる−CH−は−O−で置き換っていてもよい。−CH−が−O−で置き換ったアルカンジイル基としては、例えば、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−及び−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−が挙げられる。
【0028】
及びPのうち少なくとも1つは、重合性基であることが好ましく、P及びPが両方とも重合性基であることがより好ましい。重合性基とは、化合物(1)の重合反応に関与し得る基を意味する。
【0029】
重合性基として、式(P−1)〜式(P−5)で表される基が挙げられ、式(P−1)及び式(P−2)で表される基が好ましく、式(P−1)で表される基がより好ましい。

[式(P−1)〜(P−5)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。*は、B又はBとの結合位置を表す。]
【0030】
具体的には、1−メチルビニル基、ビニル基、p−スチルベン基、エポキシ基、メチルエポキシ基、式(P−6)で表される基及びマレイミド基等が挙げられる。

【0031】
化合物(1)としては、式(1−a1)〜式(1−a50)で表される化合物が挙げられる。
【0032】

【0033】

【0034】

【0035】

【0036】

【0037】

【0038】
化合物(1)は、Methoden der Organischen Chemie、Organic Reactions、Organic Syntheses、Comprehensive Organic Synthesis、新実験化学講座等に記載されている公知の
有機合成反応(例えば、縮合反応、エステル化反応、ウイリアムソン反応、ウルマン反応、ウイッティヒ反応、シッフ塩基生成反応、ベンジル化反応、薗頭反応、鈴木−宮浦反応、根岸反応、熊田反応、檜山反応、ブッフバルト−ハートウィッグ反応、フリーデルクラフト反応、ヘック反応、アルドール反応等)を、その構造に応じて、適宜組み合わせることにより、製造することができる。
【0039】
例えば、式(1−1)で表される化合物と式(1−2)で表される化合物とを反応させて、式(1−3)で表される化合物を得て、式(1−3)で表される化合物と式(1−4)で表される化合物とを反応させて化合物(1)を得ることができる。

(式中、E、E、A、A、B、B、B、B、F、F、P、P及びXは上記と同一の意味を表す。)
式(1−1)で示される化合物と式(1−2)で示される化合物との反応及び式(1−3)で示される化合物と式(1−4)で示される化合物との反応は、縮合剤の存在下に実施することが好ましい。縮合剤としては、公知のものを使用することができる。
【0040】
本発明の組成物は、化合物(1)を含む。
本発明の組成物は、1種の化合物(1)を含んでいてもよく、異なる2種以上の化合物(1)含んでいてもよい。また、本発明の組成物は、液晶化合物(ただし化合物(1)とは異なる)を含んでいてもよい。
【0041】
液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。液晶化合物として、異なる複数の液晶化合物を併用してもよい。
【0042】
液晶化合物としては、例えば、式(4)で表される基を含む化合物(以下「化合物(4)」という場合がある)等が挙げられる。
【0043】
11−B11−E11−B12−A11−B13− (4)
(式(4)中、P11は、重合性基を表す。
11は、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6アルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1〜6のアルキル基及び該炭素数1〜6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
11は、−O−、−S−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR16−、−NR16−CO−、−CO−、−CS−又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
12及びB13は、それぞれ独立に、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−C(=O)−NR16−、−NR16−C(=O)−、−OCH−、−OCF−、−CHO−、−CFO−、−CH=CH−C(=O)−O−、−O−C(=O)−CH=CH−又は単結合を表す。
11は、炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−又は−CO−で置換されていてもよい。)
【0044】
11で示される重合性基としては、光重合の反応性が高いという点で、ラジカル重合性又はカチオン重合性基が好ましく、特に取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造も容易であることから、重合性基として、下記の式(P−11)〜(P−15)で表される基であることが好ましい。


[式(P−11)〜(P−15)中、R17〜R21はそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。]
【0045】
より具体的には、下記の式(P−16)〜(P−20)で表される基が挙げられる。

【0046】
11は、式(P−14)〜(P−20)で表される基であることが好ましく、ビニル基、p−スチルベン基、エポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。
特に好ましくは、P11−B11−は、アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基である。
【0047】
11の芳香族炭化水素基及び脂環式炭化水素基の炭素数は、例えば3〜18であり、5〜12であることが好ましく、5又は6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン−1,4−ジイル基、1,4−フェニレン基が好ましい。
【0048】
11としては、直鎖状の炭素数1〜12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、へキサン−1,6−ジイル基、へプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、ウンデカン−1,11−ジイル基及びドデカン−1,12−ジイル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルカンジイル基;−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−及び−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−等である。
【0049】
化合物(4)としては、例えば、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)又は式(VI)で表される化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、A12〜A14は、A11と同義であり、B14〜B16は、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
式中F11は、水素原子、炭素数1〜13のアルキル基、炭素数1〜13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基、炭素数1〜10のアルコキシカルボニル基又はハロゲン原子を表し、該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。)
【0050】
液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
化合物(4)の具体例としては、たとえば以下の式(I−1)〜式(I−4)、式(II−1)〜式(II−4)、式(III−1)〜式(III−26)、式(IV−1)〜式(IV−19)、式(V−1)〜式(V−2)、式(VI−1)〜式(VI−6)で表される化合物等が挙げられる。ただし、式中k1及びk2は、2〜12の整数を表す。これらの液晶化合物であれば、合成が容易であり、市販されている等、入手が容易であることから好ましい。

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】

【0056】

【0057】

【0058】
また液晶化合物の使用量は、たとえば液晶化合物と化合物(1)との合計100質量部に対して、90質量部以下である。
【0059】
本発明の組成物は、さらに重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、溶剤、カイラル剤等の添加剤を含んでいてもよい。特に成膜時に成膜が容易となること有機溶剤を含むことが好ましく、得られたフィルムを硬化する働きをもつ重合開始剤を含むことが好ましい。
【0060】
〔重合開始剤〕
重合開始剤は、光重合開始剤を含むことが好ましく、光重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、たとえばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α−ヒドロキシケトン化合物、α−アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369(以上、全てチバ・ジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、全て精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI−6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170(以上、全て株式会社ADEKA製)、TAZ−A、TAZ−PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ−104(三和ケミカル社製)等を挙げることができる。
【0061】
本発明の組成物における重合開始剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物との合計100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは、0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、化合物(1)や液晶化合物の配向を乱すことなく、これらを重合させることができる。
【0062】
〔重合禁止剤〕
重合禁止剤としては、たとえばハイドロキノン又はアルキルエーテル等の置換基を有するハイドロキノン類、ブチルカテコール等のアルキルエーテル等の置換基を有するカテコール類、ピロガロール類、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤、チオフェノール類、β−ナフチルアミン類或いはβ−ナフトール類等を挙げることができる。
【0063】
重合禁止剤を用いることにより、化合物(1)の重合を制御することができ、組成物(1)から得られるフィルムの安定性を向上させることができる。本発明の組成物における重合禁止剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物との合計100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、化合物(1)や液晶化合物の配向を乱すことなく、これらを重合させることができる。
【0064】
〔光増感剤〕
光増感剤としては、たとえばキサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等)、アントラセン又はアルキルエーテル等の置換基を有するアントラセン化合物(例えば、ジブトキシアントラセン等)、フェノチアジン及びルブレン等を挙げることができる。
【0065】
光増感剤を用いることにより、化合物(1)の重合反応を高感度で行うことができ、また、得られるフィルムの経時安定性を向上させることができる。また光増感剤の使用量としては、化合物(1)と液晶化合物との合計100質量部に対して、たとえば0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは0.5質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、化合物(1)や液晶化合物の配向を乱すことなく、これらを重合させることができる。
【0066】
〔レベリング剤〕
レベリング剤としては、たとえば放射線硬化塗料用添加剤(ビックケミージャパン製:BYK−352,BYK−353,BYK−361N)、塗料添加剤(東レ・ダウコーニング株式会社製:SH28PA、DC11PA、ST80PA)、塗料添加剤(信越化学工業株式会社製:KP321、KP323、X22−161A、KF6001)及びフッ素系添加剤(DIC株式会社製:F−445、F−470、F−479)などを挙げることができる。
【0067】
レベリング剤を用いることにより、より平滑なフィルムを得ることができる。さらにフィルムの製造過程で、本発明の組成物の流動性を制御したり、得られるフィルムの架橋密度を調整したりすることができる。またレベリング剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物100質量部に対して、0.01質量部〜30質量部であり、好ましくは0.05質量部〜10質量部である。上記範囲内であれば、化合物(1)や液晶化合物の配向を乱すことなく、これらを重合させることができる。
【0068】
〔溶剤〕
溶剤としては、化合物(1)及び液晶化合物等を溶解し得る有機溶剤であって、重合反応に不活性な溶剤であればよく、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;、アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;あるいはクロロホルム及びクロロベンゼン等の非塩素化炭化水素溶媒;等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本発明の組成物の粘度は、塗布しやすいように、たとえば10mPa・s以下、好ましくは0.1〜7mPa・s程度に調整されることが好ましい。
【0070】
溶剤の量を変えることにより、本発明の組成物の流動性を制御することができるため、本発明の組成物から得られるフィルムの成膜が容易となる。また溶剤の使用量は、たとえば化合物(1)100質量部に対して、10000質量部〜10質量部であり、好ましくは5000質量部〜100質量部である。また、本発明の組成物中の固形分の濃度は、2〜50質量%であり、5〜50質量%が好ましい。ここで、固形分とは、本発明の組成物から溶剤を除いた量の合計をいう。本発明の組成物の固形分の濃度が2質量%以上であると、本発明の組成物から得られるフィルムが薄くなりすぎず、液晶パネルの光学補償に必要な複屈折率が与えられる傾向がある。また50質量%以下であると、溶液の粘度が低くなることから、成膜時にフィルムの膜厚にムラが生じにくくなる傾向がある。
【0071】
[カイラル剤]
カイラル剤としては、公知のカイラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)を用いることができる。
カイラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物又は面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン及びこれらの誘導体が挙げられる。
たとえば特開2007−269640、特開2007−269639、特開2007−176870、特開2003−137887、特表2000−515496、特開2007−169178、特表平9−506088で開示されているような化合物が挙げられ、好ましくはビーエーエスエフ社製のpaliocolor LC756が挙げられる。
カイラル剤の使用量は、たとえば化合物(1)と液晶化合物100質量部に対して、0.1質量部〜30質量部であり、好ましくは1.0質量部〜25質量部である。上記範囲内であれば、化合物(1)や液晶化合物の配向を乱すことなく、これらをを重合させることができる。
【0072】
本発明のフィルムとは、光を透過し得るフィルムであって、光学的な機能を有するフィルムをいう。光学的な機能とは、屈折、複屈折等を意味する。本発明のフィルムの一種である位相差フィルムは、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換したり、逆に円偏光又は楕円偏光を直線偏光に変換したり、直線偏光の偏光方向を変換したりするために用いられる。
【0073】
該フィルムは、化合物(1)を重合することにより得られる。1種類の化合物(1)を重合してもよいし、2種類以上の化合物(1)を重合してもよい。また、本発明の組成物を重合させることによっても、本発明のフィルムを製造することができる。
成膜のしやすさという点で、化合物(1)が有機溶剤に溶解した溶液を用いることが好ましく、該溶液を支持基材上に塗布し、乾燥、重合させることにより、フィルムが得られる。かかる溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%であり、5〜50質量%が好ましい。
【0074】
支持基材に、化合物(1)を含む溶液を塗布し、乾燥、重合させて、支持基材上に本発明のフィルムを得ることができる。
【0075】
支持基材への塗布方法としては、たとえば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法及びダイコーティング法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター及びスピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0076】
上記支持基材は、該支持基材上に配向膜を形成できるものであることが好ましい。たとえばガラス、プラスチックシート、プラスチックフィルム及び透光性フィルムを挙げることができる。なお上記透光性フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
【0077】
本発明のフィルムを用いる貼合工程、フィルムを運搬、保管等を実施する工程等、フィルムの強度が必要な場合、支持基材を用いることにより、破れ等なく容易に取り扱うことができる。
【0078】
本発明のフィルムにおいては、好ましくは支持基材上に配向膜を形成させた後、配向膜の上に化合物(1)を含む溶液を塗布することが好ましい。配向膜は、化合物(1)を含む溶液の塗布等により溶解しない溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向ための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。さらに、ラビングによる摩擦等による剥がれ等が生じない配向膜であることが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーまたは配向性ポリマーを含有する組成物からなることが好ましい。
【0079】
上記配向性ポリマーとしては、たとえば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。これらのポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上混ぜたり、共重合体したりしてもよい。これらのポリマーは、脱水や脱アミン等による重縮合や、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の連鎖重合、配位重合や開環重合等で容易に得ることができる。
【0080】
これらの配向性ポリマーは、溶剤に溶解して、塗布することができる。溶剤は、特に制限はないが、具体的には、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ガンマーブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;トルエン及びキシレン等の芳香族溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;あるいはクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素系溶媒;等が挙げられる。これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
また配向膜を形成するために、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業株式会社製)及びオプトマー(登録商標、JSR株式会社製)等が挙げられる。
【0082】
このような配向膜を用いれば、延伸による屈折率制御を行う必要がないため、複屈折の面内ばらつきが小さくなる。それゆえ、支持基材上にフラットパネル表示装置(FPD)の大型化にも対応可能な大きなフィルムを提供できる。
【0083】
上記支持基材上に配向膜を形成する方法としては、たとえば上記支持基材上に、市販の配向膜材料や配向膜の材料となる化合物を溶液にして塗布し、その後、アニールすることにより、上記支持基材上に配向膜を形成することができる。
【0084】
このようにして得られる配向膜の厚さは、たとえば10nm〜10000nmであり、好ましくは10nm〜1000nmである。上記範囲とすれば、化合物(1)を該配向膜上で所望の角度に配向させることができる。
【0085】
またこれら配向膜は、必要に応じてラビングもしくは偏光UV照射を行うことができる。これらの配向処理により、化合物(1)を所望の角度及び方向に配向させることができ、製造したフィルムの複屈折状態を示す屈折率楕円体の形状や傾きを調整することができる。また、ラビングもしくは偏光UV照射を行う時に、マスキングを行えば、フィルムに配向パターンを作成することができる。
配向膜をラビングする方法としては、例えば、たとえばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている配向膜に接触させる方法を用いることができる。
【0086】
[未重合フィルム調製工程]
支持基材の上もしくは支持基材に配向膜を形成した上に、化合物(1)を含む溶液を配向膜上に塗布し、乾燥すると、未重合フィルムが得られる。この未重合フィルムが、ネマチック相等の液晶相を示した場合、モノドメイン配向による複屈折性を有する。この未重合フィルムは、通常、0〜250℃の乾燥でモノドメイン配向する。化合物(1)は、低温で液晶相を発現することから、比較的低温でモノドメイン配向が得られ、配向後は、100〜0℃程度に冷却してもモノドメイン配向が維持される。
【0087】
[未重合フィルム重合工程]
得られた未重合フィルムを重合し、硬化させることにより、重合フィルムが得られる。重合フィルムは、化合物(1)の配向性が固定化されたフィルムであり、それゆえ熱による複屈折の変化の影響を受けにくい。
未重合フィルムを重合させる方法は、化合物(1)の重合性基の種類に応じて、選択すればよい。化合物(1)の重合性基が光重合性基であれば光重合法が用いられ、該重合性基が熱重合性基であれば熱重合法が用いられる。光重合法によれば、低温で未重合フィルムを重合させることができ、支持基材の耐熱性の選択幅が広がるという点および工業的にも製造が容易であるという点で、光重合性基を有する化合物(1)を用いることが好ましい。光重合反応は、未重合フィルムに、可視光、紫外光またはレーザー光を照射することにより行われる。取り扱いの点で、紫外光が特に好ましい。
【0088】
溶剤の除去は、重合反応と並行して行ってもよいが、重合反応を行う前に、ほとんどの溶剤を除去することが、成膜性の点で好ましい。その除去方法としては、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥等の方法が挙げられる。加熱して溶剤を除去する際の温度は、10〜200℃であることが好ましく、20〜150℃であることがより好ましい。加熱時間は、10秒間〜60分間であることが好ましく、30秒間〜30分間であることがより好ましい。加熱温度および加熱時間が上記範囲内であれば、支持基材として、耐熱性が必ずしも十分ではない支持基材を用いることができる。
【0089】
本発明のフィルムは、コーティング法で製造することができる。よって、たとえばフレキシブル基板に代表される柔軟性のある支持基材や曲率のある支持基材上に薄膜のフィルムを製造することができる。
【0090】
支持基材を剥離することにより、配向膜と本発明のフィルムとが積層されたフィルムが得られ、さらに、配向膜を剥離して、本発明のフィルムを得ることができる。また、別の支持基材を、本発明のフィルムに貼合し、先に積層していた支持基材を剥離する、あるいは、先に積層していた支持基材および配向膜を剥離することにより、転写を行うこともできる。
【0091】
本発明の組成物中の化合物(1)及び液晶化合物の含有量を適宜調整することにより、所望の位相差を与えるように膜厚を調製することができる。得られるフィルムの位相差値(リタデーション値、Re(λ))は、式(7)のように決定されることから、所望のRe(λ)を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを適宜調整すればよい。
【0092】
Re(λ)=d×Δn(λ) (7)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
【0093】
かくして得られたフィルムは、可視光領域における透明性に優れ、様々なディスプレイ用フィルムとして使用される。形成される層の厚みは、上記のとおり、得られるフィルムの位相差値によって異なるが、厚みは、0.1〜10μmであることが好ましく、光弾性を小さくする点で0.2〜5μmであることがさらに好ましい。
【0094】
本発明のフィルムは、化合物(1)の配向状態を変えることにより、光学特性を変化させることができる。その結果、例えば、液晶パネル用の位相差フィルムとして使用される場合、VAモード、IPSモード、OCBモード、TNモード及びSTNモード等に使用できるように、光学特性を変化させることができる。
より具体的には、本発明のフィルムにおける、面内の遅相軸方向の屈折率をn、面内の遅相軸と直交する方向(進相軸方向)の屈折率をn、厚み方向の屈折率をnと定義した場合、n≒n≒nの位相差のないフィルム、n>n≒nのポジティブAプレート、n≒n>nのネガティブCプレート、n≒n<nのポジティブCプレート、n≠n≠nのポジティブOプレート及びネガティブOプレートが製造できる。
【0095】
また、カイラルネマチック相の配向を固定した薄膜は、選択反射することが知られているが、本発明のフィルムにおいても選択反射が確認される。その選択反射波長帯域は、フィルムの使用目的により選択することができる。選択反射波長帯域λ(nm)の中心波長は、λ=n・Pで表すことができる。ここで、nは、組成物の平均屈折率を示し、Pはカイラルネマチック相のらせんピッチ(μm)を示す。一般的に、カイラル剤の添加量が増えれば、Pは小さくなるため、カイラル剤の添加量を制御することで選択反射波長帯域を制御することも可能である。これらの場合、カイラル螺旋軸が、透明支持体の面方向からほぼ直交方向になるように配向していることが好ましい。
このようにカイラル剤の添加により、ねじれ配向フィルム、選択反射フィルム、輝度向上フィルム及びネガティブCプレート等を作る事ができる。また、ネガティブCプレートのフィルムとして用いる場合には、紫外領域に選択反射波長帯域があることが好ましい。
【0096】
本発明のフィルムは1枚でも優れた光学特性を示すが、同様の機能のフィルム複数枚を積層させてもよいし、他のフィルムと組み合わせて使用してもよい。そのため、本発明のフィルムは、位相差フィルム、視野角補償フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム、偏光フィルム、円偏光フィルム、楕円偏光フィルム、輝度向上フィルム等に利用することができる。
また、本発明のフィルムは、塗布及び紫外線照射で重合させることによって形成させることができるため、貼合等の工程を経ずに、液晶セル内やカラーフィルタ上にフィルムを形成させることもできる。また、光学機能のパターニングも可能であり、いわゆるインセル用の位相差板として利用することもできる。
【0097】
以下の図の説明では、フィルムとしては、本発明のフィルムのみであってもよいし、本発明のフィルムに配向膜が積層しているものであってもよいし、本発明のフィルムに配向膜及び支持基材が積層しているものであってもよい。また、以下の図1の説明では、接着剤及び粘着剤を総称して接着剤と呼ぶ場合がある。
【0098】
例えば、図1(a)〜図1(e)に示すように、(1)本発明のフィルム1と、偏光フィルム層2とが、直接貼り合わされた実施形態(図1(a))、(2)本発明のフィルム1と偏光フィルム層2とが、接着剤層3を介して貼り合わされた実施形態(図1(b))、(3)本発明のフィルム1と本発明のフィルム1’とを直接貼り合せ、さらに、本発明のフィルム1’と偏光フィルム層2とを直接貼り合わせた実施形態(図1(c))、(4)本発明のフィルム1と本発明のフィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明のフィルム1’上に偏光フィルム層2を直接貼り合わせた実施形態(図1(d))、及び(5)本発明のフィルム1と本発明のフィルム1’とを接着剤層3を介して貼り合わせ、さらに、本発明のフィルム1’と偏光フィルム層2とを接着剤層3’を介して貼り合せた実施形態(図1(e))等が挙げられる。
【0099】
偏光フィルム層は、偏光機能を有するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素や二色性色素を吸着させて延伸したフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムを延伸して沃素や二色性色素を吸着させたフィルム等が挙げられる。また、偏光フィルム層は、必要に応じて、保護フィルムとなるフィルムを備えていてもよい。
たとえば保護フィルムとしては、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメタクリル酸エステルフィルム、ポリアクリル酸エステルフィルム、セルロースエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム及びポリフェニレンオキシドフィルム等が挙げられる。
接着剤層3及び接着剤層3’に用いられる接着剤は、透明性が高く耐熱性に優れた接着剤であることが好ましい。そのような接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤あるいはウレタン系接着剤等が用いられる。
また、偏光フィルムにおいて、図1(c)〜図1(e)に示すように、2以上の本発明のフィルムを直接または接着剤層を介して貼り合わせてもよい。
【0100】
本発明のフラットパネル表示装置は、本発明のフィルムを備えるものであり、例えば、本発明の偏光フィルムと、液晶パネルとが貼り合わされた液晶パネルを備える液晶表示装置や、本発明の偏光フィルムと、発光層とが貼り合わされた有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう)パネルを備える有機EL表示装置を挙げることができる。
本発明のフラットパネル表示装置の実施形態として、液晶表示装置と、有機EL表示装置とについて、以下詳細に述べる。
【0101】
〔液晶表示装置〕
液晶表示装置としては、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すような液晶パネルを備える液晶表示装置等が挙げられる。上記液晶パネルは、図2(a)のように部材4と液晶パネル6とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものや図2(b)のように部材4と部材4’とを液晶パネル6の両面に接着層5及び接着層5’を介して貼り合わせたものである。部材4及び部材4’は、本発明のフィルムを含む部材であり、図1(a)〜図1(e)に示す偏光フィルム等が挙げられる。上記構成によれば、図示しない電極を用いて、液晶パネルに電圧を印加することにより、液晶分子が駆動し、白黒表示ができる。
【0102】
〔有機EL表示装置〕
有機EL表示装置としては、図3に示す有機ELパネルを備える有機EL表示装置等が挙げられる。上記有機ELパネルは、部材4と、発光層7とを、接着層5を介して貼り合わせてなるものである。上記発光層7は、導電性有機化合物からなる少なくとも1層の層である。
なお、上記有機ELパネルにおいて、部材4が、偏光フィルムである場合、広帯域円偏光板として機能する。そのため、有機ELパネルに反射防止機能を付与する事ができる。
【0103】
〔カラーフィルタ〕
図4は、本発明のカラーフィルタ11を示す概略図である。
カラーフィルタ11は、本発明のフィルム12の上にカラーフィルタ層13が形成されてなるカラーフィルタである。
カラーフィルタ11の製造方法の一例を説明する。まず、支持基材上に、配向膜材料を塗布し、ラビング処理を施して、配向膜を形成する。次に得られた配向膜上に、得られるフィルムが所望の波長分散特性を示すように、化合物(1)の濃度等が調整された化合物(1)を含む混合溶液を、得られるフィルムが所望の位相差値になるよう厚みを調製しながら塗布して、膜を形成する。次に得られた本発明のフィルム12上に、カラーフィルタ層13を形成する。
【実施例】
【0104】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0105】
実施例1
[化合物(1−a14)の合成例]
化合物(1−a14)は下記のスキームに従って合成した。

【0106】
化合物(e)は、下記のように化合物(d)及び化合物(h)を反応させることにより得られる。

【0107】
化合物(d)を以下のスキームで合成した。原料のモノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)は特許文献(特開2004−262884)に記載されている方法により合成した。

(化合物(b)の合成例)
モノテトラヒドロピラニル保護ヒドロキノン(a)100g(515mmol)、炭酸カリウム97g(703mmol)及び6−クロロヘキサノール64g(468mmol)を、ジメチルアセトアミド中で窒素雰囲気下、90℃で反応させ、その後100℃で反応させた。その後反応溶液を室温まで冷却し、純水及びメチルイソブチルケトンを加え、有機層を回収した。回収した有機層を水酸化ナトリウム水溶液及び純水で洗浄後、脱水処理した。脱水剤を濾過により除去し、得られた濾液を、減圧濃縮した。残渣にメタノールを加えて、生成した沈殿をろ過により取り出し、真空乾燥させて、化合物(b)126g(428mmol)得た。収率は6−クロロヘキサノール基準で91%であった。
【0108】
(化合物(c)の合成例)
化合物(b)126g(428mmol)、3、5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン(以下「BHT」という場合がある)1.4g(6.42mmol)、N、N−ジメチルアニリン117g(963mmol)、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン1g及びクロロホルムを混合した。得られた混合液に、窒素雰囲気、氷冷下で、アクイロイルクロリド58g(642mmol)を滴下し、さらに純水を加えて反応させた後、分離した有機層を回収した。有機層を塩酸水、飽和炭酸ナトリウム水溶液及び純水で洗浄した。洗浄後の有機層に脱水剤を加え、乾燥させた。脱水剤を除去した後、ろ過後の有機層にBHT1gを加えてから減圧濃縮して、化合物(c)を得た。
【0109】
(化合物(d)の合成例)
化合物(c)及びテトラヒドロフラン(以下「THF」という場合がある)200mlを混合後、得られた混合液にTHF200mlを加えた。さらに塩酸水及び濃塩酸水を加えて、窒素雰囲気、60℃の条件下で反応させた。反応溶液に飽和食塩水500mlを加え、有機層を分離した。有機層を脱水剤で脱水処理し、脱水剤を濾過した。得られた濾液を減圧濃縮した。得られた濃縮液にヘキサンを加えて氷冷下で攪拌し、析出した粉末を濾過後真空乾燥して、化合物(d)90g(339mmol)を得た。収率は化合物(c)基準で79%であった。
【0110】
化合物(h)(トランス1,4−シクロヘキサンジカルボン酸モノエトキシメチルエステル)の製造を下記のスキームにしたがって行った。

【0111】
トランス−1、4−シクロヘキサンジカルボン酸200g(1.1616mol)及びジメチルアセトアミド1000mLを混合した。窒素雰囲気下、攪拌しながら80℃まで昇温して、得られた溶液に炭酸カリウム96g(0.6969mol)及びヨウ化カリウム10g(0.0602mol)を加えた後、ベンジルクロリド140g(1.1035mol)を加え、溶液を120℃で6時間反応させた。溶液を室温まで放冷後、氷1500gに注ぎ攪拌した。得られた結晶を濾取して、これを水/メタノール3:2(v/v)、次いで水で洗浄した。洗浄後の結晶を真空乾燥させて、化合物(f)を含む粉末251gを得た。
【0112】
化合物(f)を含む粉末251g及びクロロホルム600mLを混合した。得られた溶液を氷冷し、窒素雰囲気下、得られた溶液にエトキシクロロメタン93.53g(0.7600mol)及びトリエチルアミン146.83g(1.4515mol)を滴下した。反応溶液を室温、窒素雰囲気下で3時間反応させた。反応溶液にトルエン600mLを加え、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、濾液を回収し、水で洗浄した。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過後、溶媒を除去した。得られた粗生成物を真空乾燥して、化合物(g)を含む液体242gを得た。
【0113】
化合物(g)を含む液体242g及びTHF250mlを混合した。窒素雰囲気下で、得られた溶液に10%パラジウム−炭素(50%含水)10gを加えた。減圧後、水素置換し、室温、常圧、水素雰囲気下で得られた溶液を6時間反応させた。窒素置換後、得られた溶液を濾過し、触媒を除去した後、溶媒を除去した。残渣をクロロホルムに溶解した。得られた溶液をシリカゲル濾過した。シリカゲル上の不溶物を、シリカゲルからさらにクロロホルムにて抽出した。クロロホルム溶液を回収し、これを減圧濃縮し、これにヘプタンを加えて結晶化させた。得られた結晶を濾別、真空乾燥することにより化合物(h)106gを得た。収率は化合物トランス−1、4−シクロヘキサンジカルボン酸基準で39%であった。
【0114】
化合物(e)の製造は下記のスキームにしたがって行った。

【0115】
化合物(d)56.8g(215mmol)、ジメチルアミノピリジン2.65g(22mmol)、化合物(h)50g(217mmol)及びクロロホルム300mLを混合した。得られた混合液を窒素雰囲気下、氷冷して攪拌し、ジシクロヘキシルカルボジイミド48.79g(237mol)及びクロロホルム50mLからなる溶液を滴下した。
滴下終了後、得られた反応溶液を室温にて攪拌し、クロロホルム200mL及びヘプタン200mLを加えて沈殿を濾過した。濾液を回収して、2N−塩酸水溶液で洗浄した。分離した有機層を回収し、不溶成分を濾過により除去後、無水硫酸ナトリウムを加え、濾過後、溶媒を除去して得られた固体を、真空乾燥して、化合物(e’)100gを得た。
【0116】
化合物(e’)100g、純水3.7g(202mmol)、パラトルエンスルホン酸一水和物3.8g(20.2mmol)及びTHF200mLを混合し、窒素雰囲気下、50℃で反応させた。反応溶液を室温まで放冷後、THFを減圧除去し、残渣にヘプタン200mLを加えた。析出した沈殿を濾取し、純水で洗浄後、真空乾燥した。得られた粉末をクロロホルムに溶解し、シリカゲルを通してから濾過した。濾液を回収しクロロホルム400mLに溶解して、得られた溶液を濃縮し、トルエンを加えた。溶液を減圧濃縮したのち、ヘプタンを加えて結晶化させ、得られた粉末を濾取、真空乾燥して、化合物(e)64gを得た。収率は化合物(d)基準、二工程で76%であった。
【0117】
<化合物(1−a14)の合成例>
フェニルヒドロキノン3.4g(18mmol)、化合物(e)16g(38mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.5g(4mmol)及びクロロホルム237gを混合した。混合液に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)9.4g(45mmol)をクロロホルム9gに溶解させた溶液を室温で滴下し、36時間反応させた。反応溶液に、2N塩酸を140g添加し、ろ過した。得られたろ液に2N塩酸140gを加えて洗浄し、洗浄後のろ液を濃縮し、濃縮液約50gを得た。濃縮後のろ液に活性炭0.4gを添加し、セライト濾過した後、溶媒を除去し、メタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物をメタノールで洗浄し、白色固体である化合物(1−a14)8.4gを得た。収率はフェニルヒドロキノン基準で47%であった。
【0118】
化合物(1−a14)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.35〜1.91(m、24H)、2.35〜2.58(m、12H)、3.93(t、4H)、4.17(t、4H)、5.81(dd、2H)、6.12(m、2H)、6.40(dd、2H)、6.84〜6.99(m、8H)、7.11(m、3H)、7.38(m、5H)
【0119】
得られた化合物(1−a14)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(1−a14)は、昇温時において、84℃から198℃までネマチック相を呈し、198℃で等方相になった。200℃から温度を下げていくと、198℃から36℃までネマチック相を呈し、36℃で結晶化した。このように、化合物(1−a14)には、広い温度範囲でネマチック液晶性を示すだけでなく、40℃前後でもネマチック液晶性を示す。
【0120】
実施例2
[化合物(1−a3)の合成例]
化合物(1−a3)は下記のスキームに従って合成した。

【0121】
<化合物(1−a3)の合成例>
t−ブチルヒドロキノン1.0g(6mmol)、化合物(e)6.0g(14mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.2g(1.4mmol)及びクロロホルム121gを混合した。混合液に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)4.5g(22mmol)及びクロロホルム24gからなる溶液を、室温で滴下し、3時間反応させた。反応溶液に2N塩酸を60g添加した後に、ろ過してろ液を取り出した。ろ液に2N塩酸を60g添加し洗浄した後、約40gになるまで濃縮した。濃縮後のろ液に活性炭0.3gを添加し、セライト濾過した後、溶媒を留去し、メタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物をメタノールで洗浄して、白色固体である化合物(1−a3)4.1gを得た。収率はt−ブチルヒドロキノン基準で71%であった。
【0122】
化合物(1−a3)のH−NMR(CDCl):δ(ppm)1.34(s、9H)1.35〜1.91(m、24H)、2.35〜2.58(m、12H)、3.94(t、4H)、4.17(t、4H)、5.81(dd、2H)、6.12(m、2H)、6.40(dd、2H)、6.84〜7.06(m、11H)
【0123】
得られた化合物(1−a3)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。化合物(1−a3)は、昇温時において、66℃から96℃まではスメクチック相、96℃から180℃以上までネマチック相を呈した。180℃で折り返した降温時において、180℃から29℃以下までネマチック相を呈し結晶化することもなかった。
化合物(1−a3)には、広い温度範囲でネマチック液晶性を示すだけでなく、30℃前後でもネマチック液晶性を示す。
【0124】
比較例1
<化合物(III−1−1)の合成例>
化合物(III−1−1)を、下記スキームに従って合成した。

【0125】
(化合物(i)の合成例)
4−ヒドロキシ安息香酸エチル84.5g(509mmol)、酢酸4−クロロブチル84.2g(559mmol)、炭酸カリウム105g(763mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド254gを加え、100℃に昇温し、攪拌した。冷却後、メチルイソブチルケトンを加え、水洗、溶媒を留去することにより、化合物(i)を主成分とする油状物質126gを得た。収率は4−ヒドロキシ安息香酸エチル基準で88%であった。
【0126】
(化合物(j)の合成例)
化合物(i)を主成分とする油状物質126g、メタノール378g、水252g及び水酸化ナトリウム54g(1348mmol)を混合し、65℃で反応させた。反応溶液を冷却後、氷756g中に注ぎ、塩酸を加えた。析出した固体を取り出して、水及びヘプタンで洗浄し、乾燥させることにより化合物(j)を主成分とする固体91gを得た。収率は化合物(i)基準で97%であった。
【0127】
(化合物(k)の合成例)
窒素雰囲気下で、化合物(j)を主成分とする固体90.0g(428mmol)及びN,N−ジメチルアニリン77.8g(642mmol)を、N,N−ジメチルアセトアミド720gで溶解させた。溶液を0℃に氷冷し、アクリル酸クロリド58.1g(642mmol)を滴下し、室温で反応させた。反応溶液に1N塩酸を加えた。析出した固体を取り出し、酢酸エチルに溶解させ、水洗し、溶媒を除去して、化合物(k)を主成分とする固体102gを得た。収率は化合物(j)基準で90%であった。
【0128】
(化合物(III−1−1)の合成例)
ヒドロキノン3g(30mmol)、化合物(k)を主成分とする固体16g(60mmol)、4−ジメチルアミノピリジン0.7g(6mmol)及びクロロホルム127gを混合した。混合液に、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)12g(60mmol)をクロロホルム32gに溶解させた溶液を室温で滴下し、3時間反応させた。反応溶液に2N塩酸159gを添加した後に、ろ過した。得られたろ液に2N塩酸159gを加えて洗浄し、洗浄後のろ液から溶媒を留去し、メタノールを添加し、固形物を取得した。取得した固形物をメタノールで洗浄し、白色固体である化合物(III−1−1)12.0gを得た。収率はヒドロキノン基準で66%であった。
【0129】
化合物(III−1−1)の相転移温度を偏光顕微鏡によるテクスチャー観察によって行った。温度を上げていくと107℃付近で結晶相からネマティック相に変わり、さらに167℃付近で等方性液体相に変わった。等方性液体相から温度を下げていくと167℃付近でネマティック相に変わり、さらに74℃付近まで温度を下げると結晶相に戻った。
すなわち、化合物(III−1−1)は、昇温時においては107℃から167℃の間で、降温時においては167℃から107℃の間で、ネマティック相を呈することが分かった。
【0130】
<組成物の調整>
(実施例3〜6、比較例2)
表2の組成の組成物を調整した。表2中の%は、組成物の全質量を100質量%としたときの質量%を意味する。
【0131】
【表2】

光重合開始剤:イルガキュア819(チバ・ジャパン社製)(アシルホスフィンオキサイド化合物)
レベリング剤:BYK361N(ビックケミージャパン製)
溶剤:シクロペンタノン
【0132】
<熱挙動観察>
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を塗布し、加熱乾燥して、厚さ89nmの膜を形成した。膜の表面にラビング処理を施し、配向膜を形成した。ラビング処理を施した面に、表3に記載の組成物をスピンコート法により塗布した。塗布した基板を、ホットステージ付き偏光顕微鏡(ホットステージ:LTS350、Linkam社製、偏光顕微鏡:BX−51、オリンパス社製)を用いて、昇温時は昇温速度30℃/minで加熱しながら組成物の挙動を観察した。降温時は自然冷却で挙動を観察した。結果を表3に示す。
【0133】
【表3】

【0134】
(実施例7〜10、比較例3)
<フィルムの製造例>
ガラス基板にポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)の2質量%水溶液を塗布し、加熱乾燥して、厚さ89nmの膜を形成した。膜の表面にラビング処理を施し、配向膜を形成した。ラビング処理を施した面に、表4に記載の組成物をスピンコート法により塗布し、表4に記載の温度(T)で1分間乾燥した。表4に記載の温度(T)で1分間放置後、積算光量2400mJ/cmの紫外線を照射してフィルムを作成した。
【0135】
<表面観察>
フィルムの表面状態を偏光顕微鏡で400倍の倍率で観察した。モノドメインを呈していれば○、欠陥が発生していれば、×とする。結果を表4に示す。
<経時安定性>
フィルムを2週間、室温下で大気中に放置した後、フィルムの表面状態を偏光顕微鏡で観察した。配向欠陥が発見できなければ○、配向欠陥の発生が認められれば×とする。結果を表4に示す。
【0136】
【表4】

<光学特性の測定>
フィルムの位相差値を測定機(KOBRA−WR、王子計測機器社製)により測定した。位相差値(nm)の測定は、ガラス基板、配向膜及びフィルムを含む積層体について行ったが、ガラス基板及び配向膜は複屈折性を有さない(配向膜及びガラス基板については、Re(447)=Re(547)=Re(628)=0)ので、測定された位相差値をフィルムの位相差値とすることができる。位相差値Re(λ)は、波長(λ)447nm、547nm及び628nmにおいて測定した。フィルムの膜厚d(μm)は、レーザー顕微鏡(LEXT3000、オリンパス社製)を用いて測定した。結果を表5に示す。
【0137】
【表5】

【0138】
実施例では、30℃又は50℃という低温でフィルムを作成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の化合物を重合させることにより、表面状態及び経時安定性に優れ、光学特性を有するフィルム、低温で製造することができる。
【符号の説明】
【0140】
1、1’ フィルム
2、2’ 偏光フィルム層
3、3’、3’’ 接着剤層
4、4’ 部材
5、5’ 接着層
6 液晶パネル
7 発光層
11 カラーフィルタ
12 フィルム
13 カラーフィルタ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。

[式(1)中、Xは、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基又は置換基を有していてもよい1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表す。
及びEは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表す。
、B、B及びBは、それぞれ独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
及びFは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルカンジイル基を表し、該炭素数1〜12のアルカンジイル基に含まれる−CH−は、−O−で置き換っていてもよい。
及びPは、それぞれ独立に、水素原子又は重合性基を表す。]
【請求項2】
及びPが、それぞれ独立に、式(P−1)で表される基である請求項1記載の化合物。


[式(P−1)中、R、RおよびRはそれぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキル基又は水素原子を表す。]
【請求項3】
請求項1又は2記載の化合物及び光重合開始剤を含有する組成物。
【請求項4】
請求項1又は2記載の化合物を重合させて得られるフィルム。
【請求項5】
請求項4に記載のフィルムを含むカラーフィルタ。
【請求項6】
請求項4記載のフィルムを含むフラットパネル表示装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の化合物を、基材上又は基材上に形成された配向膜上に塗布する工程を含むフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−270108(P2010−270108A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94858(P2010−94858)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】