化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法
一実施の形態において、本発明は、パルス発生器と、前記パルス発生器と通信する化学センサとを備えた埋込み式医療装置を含み、前記化学センサは、体液中のイオン濃度を検出するように構成されている。一実施の形態において、本発明は、分析物の生理的濃度をセンシングすることと、前記分析物の生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に伝達することと、部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて患者に治療を施すこととを含む、前記患者に対し心不整脈治療を提供する方法を含む。一実施の形態において、本発明は、利尿治療モニタリング方法を含む。一実施の形態において、本発明は、人体へ活性剤を送ることを制御する方法を含む。他の態様及び実施の形態は、本明細書中に記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は、米国を除くすべての指定国における出願人である、米国企業カーディアック ペースメーカーズ、インコーポレイティドの名義において、また、指定国が米国である場合のみ、米国市民ケ―ン、マイケル、ジョン、米国市民フォン アルクス、ジェフリー、アレン、米国市民ベントセン、ジェームス、グレゴリ―、及びカナダ市民クォック、ジョナサン ティー.を出願人として、2007年5月15日付でPCT国際特許出願として出願されており、2006年5月17日付で出願された「化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法」と題する米国特許出願第11/383,933号明細書、及び2006年5月17日付で出願された「化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法」と題する米国特許出願第11/383,926号明細書の優先権を主張するものであって、その双方の内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
本開示は、概して、埋込み式医療装置に関し、さらに詳細には、化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心調律管理装置(management system)などの埋込み式医療装置(IMD)は、一般に、患者に処置又は治療を提供するのに使用される。心調律管理装置は、ペースメーカーを含み得る。ペースメーカーは、ペーシングパルスと呼ばれる適時連続した(timed sequences of)低エネルギー電気刺激を、心臓内又はその周辺に配置された1つ以上の電極を有する血管内リードワイヤー又はカテーテル(「リード」と呼ぶ)を介して心臓に送る。そのようなペーシングパルスに応じて心収縮が起こる。ペースメーカーは、徐脈性不整脈の、すなわち、心臓の鼓動が遅すぎるか不規則である患者の治療によく使用される。そのようなペースメーカーはまた、心房及び心室の収縮を調整してポンプ効率を向上させる。
【0004】
心調律管理装置はまた、ポンプ効率を向上させるための、心臓の脱分極の空間性(spatial nature)を調整する心臓再同期療法(CRT)装置も含み得る。例えば、CRT装置は、同一心腔の異なった位置に適時(appropriately timed)ペーシングパルスを送り、心腔の収縮をより良く調整する場合もあるし、また、CRT装置は、異なる心腔に適時ペーシングパルスを送り、これらの異なる心腔が共に収縮する状態を改善する場合もある。
【0005】
心調律管理装置はまた、より高いエネルギー電気刺激を心臓に送ることが可能な除細動器も含む。そのような除細動器は、そのような刺激の送りを、センシングされた固有の心臓活動信号に同期させる電気除細動器を含む。除細動器は、頻脈性不整脈の、すなわち、心臓の鼓動が速すぎる患者の治療によく使用される。除細動器は、時として除細動カウンターショックと呼ばれ、また単に「ショック」とも呼ばれる高エネルギー電気刺激を送ることができる。カウンターショックが頻脈性不整脈を中断し、心臓に血液の効率的ポンピングのための正常なリズムを回復させる。ペースメーカー、CRT装置及び除細動器の他に、心調律管理装置はまた、これらの機能を組み合わせた装置、並びにモニター、ドラッグデリバリー装置及びその他の埋込み式もしくは外部のシステム、あるいは心臓の診断又は治療用の装置をも含み得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一定の生理学的分析物は、埋込み式医療装置が治療するように設計された、疾患の多くに影響を与える。一例として、カリウムイオン濃度は、患者の心調律に影響し得る。従って、医療専門家は、心調律障害を診断する際に、生理的カリウムイオン濃度を評価することが多い。しかし、カリウムなどの分析物の生理的濃度を測定するには、一般に、患者から採血する必要がある。採血は、通常、クリニック又は病院で行われることから、一般に、患者は物理的に医療施設に出向く必要がある。その結果、重要であるにもかかわらず、生理学的分析物濃度は、散発的にしか測定されない場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において開示されるのは、とりわけ、体液中の化学的濃度をセンシングするための埋込み式医療装置(IMD)である。一実施の形態において、本発明は、パルス発生器及び前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサが体液中のイオン濃度を検出するように構成された埋込み式医療装置を含む。前記化学センサは、センシング素子、光励起(optical excitation)装置、及び光検出装置を含み得る。
【0008】
一実施の形態において、本発明は、パルス発生器及び前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサが体液中のイオン濃度を検出するように構成された埋込み式心調律管理装置を含む。前記化学センサは、センシング素子、光励起装置、及び光検出装置を含み得る。
【0009】
一実施の形態において、本発明は、患者に対して心不整脈治療を提供する方法を含む。この方法は、埋込み式化学センサを用いて、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的に測定することを含み得る。この方法はさらに、前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することを含み得る。また、この方法は、部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて患者に対し前記埋込み式パルス発生器から治療を施すことも含み得る。
【0010】
一実施の形態において、本発明は、利尿治療モニタリング方法を含む。この方法は、患者の体液中のイオンの生理的濃度を、埋込み式化学センサを用いて光学的にセンシングすることを含み得る。また、この方法は、前記イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することも含み得る。この方法はさらに、部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記患者に対し前記利尿治療の実施を変更することを含み得る。
【0011】
一実施の形態において、本発明は、人体へ活性剤を送ることを制御する方法を含む。この方法は、パルス発生器、並びに、センシング素子、励起装置、及び検出装置を含む化学センサを備えた埋込み式システムを用いて、1つ以上の分析物の生理的濃度を測定することを含み得る。この方法はさらに、前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の送りを変更することを含み得る。
【0012】
この「課題を解決するための手段」は、本願教示事項の一部の概要であり、当該主題の唯一かつ完全な対処法(treatment)であることを意図するものではない。さらなる詳細は、「発明を実施するための最良の形態」及び特許請求の範囲に記載されている。他の態様については、以下の「発明を実施するための最良の形態」を読んで理解し、その一部となっている図面を参照することにより(いずれも限定を意味するものではない)、当技術分野における当業者にとっては明白となるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本出願人による2003年9月30日付け出願の米国特許出願第10/677,144号明細書及び2003年1月2日付け出願の米国特許出願第10/334,283号明細書の開示事項は、引用することによって本明細書の一部とされる。
【0014】
生理学的分析物濃度は、多くの医学的疾患の診断及び治療のいずれにとっても重要なデータポイントである。例えば、カリウムイオン濃度についての知見は、心不整脈の正確な診断にとって重要であり得る。心臓細胞の興奮サイクルは、それらの静止電位や、心臓細胞の細胞膜におけるイオンチャネル(カリウム、ナトリウム及びカルシウムなど)の活動によって影響される。一例として、カリウムイオンチャネルは、心臓細胞を、活動電位から静止電位に戻す上で重要な役割を果たす。血漿中のカリウム濃度が正常な生理学的範囲にある場合、カリウムイオンチャネルは効果的に機能することができる。不運なことに、血漿中のカリウム濃度が上昇すると(「 HYPERLINK "http://www.free-definition.com/Hypokalemia.html" \o "Hypokalemia" 高カリウム血症」)、心臓細胞膜を挟んでのカリウムの濃度勾配が減少し、心臓細胞は一般に脱分極し非興奮性となる。対照的に、カリウム濃度が低い場合(「 HYPERLINK "http://www.free-definition.com/Hypokalemia.html" \o "Hypokalemia" 低カリウム血症」)、心臓細胞膜を挟んでのカリウムの濃度勾配が増加し、静止電位から過分極することになる。低カリウム血症は、心房細動などの不整脈を引き起こし得る。よって、カリウムイオン濃度についての知見は、心調律障害の正確な診断をする上で有用であり得る。同様に、ナトリウムやカルシウムなどの、他の生理的イオンの濃度も、心不整脈の診断及び治療において重要であり得る。
【0015】
心調律障害以外でも、イオンセンシングは、薬物治療モニタリング、腎機能モニタリング、薬剤(心不全薬など)滴定、心不全代償不全モニタリング、及び食事摂取又は腎排泄の変動によって生じる主な電解質平衡異常の観察との関連においても有用であり得る。
【0016】
本発明の実施の形態は、体液中の医療上関連のある分析物に関する濃度データの収集に使用することができる。特に、本発明の実施の形態は、電気パルス及び/又はショック治療を送るパルス発生器と、このパルス発生器と通信する化学センサとを備えた埋込み式医療装置を含み得る。前記化学センサは、体液中のイオン濃度を検出するように構成することができ、センシング素子、光励起装置、及び前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置を含み得る。
【0017】
埋込み式心調律管理装置と化学センサの機能を統合することにより、治療上の利点を提供することができる。埋込み式心調律装置によって生成されたデータや、化学センサによって生成されたデータは、患者の生理的状態に関し、互いに異なる(orthogonal)が関連のある観点を提供する。これらの観点を組み合わせることにより、患者の健康への更なる洞察を保健専門家に提供することができる。単なる一例として、非常に高い又は非常に低いカリウム濃度下での不規則な心拍数は、いずれかの状態が単独で示される場合よりも、患者にとって危険度が高いことを示す。本発明の様々な実施の形態は、危険性を迅速に確認することができ、かつ、いくつかの実施の形態においては、適切な場合、保健専門家に伝えられるように、カリウム濃度などの分析物濃度と心不整脈の双方を検出することができる。
【0018】
生理学的分析物の連続的又はほぼ連続的なモニタリングにより、治療上の利点を提供することができる。通常、分析物の生理的濃度の測定方法は、患者からの採血を伴う。通常、採血はクリニック又は病院で行われる。従って、一般的に、患者は医療施設を訪れなければならず、その結果、生理学的分析物濃度は、一般的に、散発的にしか測定されない。よって、通常、臨床医には、特定の日のみに関する患者の状態を示す散発的な断片データのみが提示される。この断片データは有用ではあるが、より長い連続的な期間に渡ってデータを得ることは、食事、活動、薬剤などによって生じ得る周期的変動並びに傾向をより正確に反映することができるため、有用性のより高いものとなり得る。化学センサを備えた埋込み式医療装置を含む、本発明の様々な実施の形態は、分析物濃度に関する連続的な又は半連続的なデータを臨床医に提供するために使用することができる。
【0019】
医療装置が、宿主(host)に埋め込まれる場合、宿主の免疫系が異物の存在を感知し、異物反応と称される反応を始める。数時間以内に、挿入された装置の領域における血小板の活性化及び粘着が起こり、続いて、血小板顆粒から走化性物質及び増殖因子の放出が起こる。そして、顆粒球及び単核食細胞がその領域に移動する。続いて、その部位は、線維芽細胞に浸潤される。最初の数週間以内に、線維芽細胞が増殖し、無血管性結合組織外膜、すなわち「ポケット」を形成し始めるコラーゲンを産生する(lay down)。このプロセスは、数か月間続くこともあり、一般に、厚さ50μm〜200μmの壁を有する無血管性ポケット内に前記医療装置は完全に内包されることになる。
【0020】
残念ながら、化学センサを備えた慢性埋込み式医療装置は、異物反応の結果として障害が生じ得る。ポケット壁自体は、血管新生化しにくく、高度に血管新生化した組織と医療装置とが適合する(interface)ことを妨げる働きをする。高度に血管新生化した組織と適合しなければ、前記医療装置は、ポケット外部の生理的状態を正確に検出することができない場合がある。一例として、グルコースは、ポケット壁を比較的横断しにくいことが知られており、従って、ポケット内のグルコース濃度は、ポケット外部の生理学的グルコース濃度を正確に反映しない。よって、大半の埋込み式グルコースセンサは、無血管性ポケットがその周囲に形成されるにつれ、次第に不正確になる。しかし、下記実施例1に詳述しているように、本発明者らは、ナトリウムやカリウムイオンなどのイオンが、ポケット壁を横断する際、グルコースとは異なる挙動を示すことを発見した。具体的には、実施例1は、ナトリウムやカリウムなどのイオンが、ポケット壁を十分に横断することができ、ポケット壁内から得られるそれらの生理的濃度に関し正確な測定を可能にすることを示している。よって、ナトリウムやカリウムなどの生理的イオンを検出する化学センサは、埋込み式心調律管理装置などの慢性埋込み式医療装置と一体化することができる。
【0021】
異物反応と関連した問題と密接な関係があるのは、埋込み式医療装置の生物付着に関連した問題である。生物付着には、埋込み式装置の表面上へのタンパク質、脂肪、及び/又は炭水化物などの生体分子の蓄積が含まれる。理論に縛られることを意図するわけではないが、生物付着は、慢性的に埋め込まれている電気化学的(例えば、電位差計による)化学センサとの関連で応答の損失及びドリフトにつながると考えられる。イオン選択電極に関して、測定起電力は、主に、サンプルと膜相の界面を挟んでの電位変化に左右される。この界面の測定起電力は、センサ表面上のタンパク質や他の生体分子の堆積によって低下し得る(can become compromised)。さらに、イオン選択電極において、センサ膜の大部分には、一般に、公知の過剰の分析物が含浸する。ネルンスト応答は、有機界面濃度が、サンプル濃度に応じて著しく変化しない場合のみ見られる。緊急の測定に関しては、この状態が維持される。しかし、長期モニタリングに際しては、前もって含ませた分析物が、センサフィルムから浸出し、較正が損なわれる可能性がある。
【0022】
対照的に、搬送波を使用しない(non-carrier)及び搬送波を使用する(carrier based)光センシング素子のいずれも、センシング素子の大部分における濃度変化に依存する。従って、光検出方法は、一般に、界面現象に依存する電気化学的化学センサよりも生物付着問題に左右されないものと考えられる。
【0023】
当然のことながら、分析物濃度のセンシングは、特定の分析物又は複数の異なる分析物に対して行われ得る。一実施の形態においては、センシングされる分析物は、心臓の健康に関連する1つ以上の分析物である。一実施の形態においては、センシングされる分析物は、腎臓の健康を示す1つ以上の分析物である。センシングされる分析物は、イオン又は非イオンであり得る。センシングされる分析物は、カチオン又はアニオンであり得る。センシング可能な分析物の具体例としては、酢酸(酢酸塩)、アコニット酸(アコニット酸塩)、アンモニウム、血中尿素窒素(BUN)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、臭素酸塩、カルシウム、二酸化炭素、心筋特異的なトロポニン、塩化物、コリン、クエン酸(クエン酸塩)、コルチゾール、銅、クレアチニン、クレアチニンキナーゼ、フッ化物、ギ酸(ギ酸塩)、グルコース、ヒドロニウムイオン、イソクエン酸塩、乳酸(乳酸塩)、リチウム、マグネシウム、マレイン酸(マレイン酸塩)、マロン酸(マロン酸塩)、ミオグロビン、硝酸塩、一酸化窒素、シュウ酸(シュウ酸塩)、酸素、リン酸塩、フタル酸塩、カリウム、ピルビン酸(ピルビン酸塩)、亜セレン酸塩、ナトリウム、硫酸塩、尿素、尿酸及び亜鉛が挙げられる。この方法によってセンシングされる無機カチオンとしては、これらに限定されないが、ヒドロニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、水銀イオン、鉛イオン及びアンモニウムイオンが挙げられる。この方法によってセンシングされる無機アニオンとしては、これらに限定されないが、炭酸アニオン、硝酸アニオン、亜硫酸アニオン、塩素アニオン及びヨウ素アニオンが挙げられる。この方法によってセンシングされる有機カチオンとしては、これらに限定されないが、ノルエフェドリン、エフェドリン、アンフェタミン、プロカイン、プリロカイン、リドカイン、ブピバカイン、リグノカイン、クレアチニン及びプロタミンが挙げられる。この方法によってセンシングされる有機アニオンとしては、これらに限定されないが、サリチル酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩及びヘパリンが挙げられる。この方法によってセンシングされる中性分析物としては、これらに限定されないが、アンモニア、エタノール及び有機アミン類が挙げられる。一実施の形態において、センシングすることができるイオンとしては、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム及びヒドロニウム(pH)が挙げられる。特定の実施の形態においては、ナトリウム及びカリウム双方の濃度が測定される。別の実施の形態においては、マグネシウム及びカリウム双方の濃度が測定される。
【0024】
いくつかの実施の形態において、分析物の生理的濃度は直接センシングされる。他の実施の形態においては、分析物の生理的濃度は間接的にセンシングされる。一例として、特定の分析物の代謝体を、その特定の分析物自体の代わりにセンシングすることができる。他の実施の形態においては、検出プロセスを簡易にするため、分析物を別の形態に化学的に変換することができる。一例として、酵素を使用し、分析物を検出し易い別の化合物に変換することができる。例えば、アンモニア及びN−メチルヒダントインへのクレアチニン加水分解は、クレアチニンデイミナーゼによって触媒作用を及ぼされ、その結果得られるアンモニアは、化学センサによって検出することができる。別の実施例として、グルコノラクトン及び過酸化水素へのグルコースの酸化は、グルコースオキシダーゼによって触媒作用を及ぼされ、その結果得られる過酸化水素は、化学センサによって検出することができる。いくつかの実施の形態において、前記酵素は、化学センサからの浸出(leaching)を防ぐために固定化されている。
【0025】
次に、図1を参照すると、化学センサ104を備えた埋込み式医療装置(IMD)102の概略図が示されている。様々な実施の形態において、IMD102は、ペースメーカー、心臓再同期療法(CRT)装置、リモデリング制御治療(RCT)装置、電気除細動器/除細動器、又はペースメーカー‐電気除細動器/除細動器などの心調律管理装置を含み得る。1つの典型的な心調律管理装置が、2005年8月9日に発行された同一出願人による米国特許第6,928,325号明細書に開示されており、その内容は、ここに引用することにより本明細書の一部とされる。図1に示す実施の形態において、化学センサ104はIMD102と一体化されている。化学センサ104は、体液中のイオンなどの分析物の濃度を検出するように構成されている。体液としては、血液、間質液、血清、リンパ液及び漿液が挙げられる。化学センサ104は、センシング素子108を備えている。化学センサ104はまた、励起装置106及び検出装置110も備えている。化学センサ104は、比色分析及び/又は蛍光分析を含む様々な方法で機能するように構成することができる。
【0026】
当然のことながら、化学センサは、様々な他の方法で機能するように構成することができる。例えば、光化学センサは、体組織又は体液を直接照射した後、その結果得られるスペクトル感度を分析して、分析物濃度を求めるように構成することができる(例えば、直接分光法)。しかし、理論に縛られることを意図するわけではないが、そのような直接分光法には、一般に、生物付着に関連する時間的信号ドリフト及び/又はバックグラウンド干渉を含む、精度を低下させ得る問題が生じることが考えられる。
【0027】
励起装置106は、センシング素子108を照射するように構成され得る。一実施の形態において、励起装置106は、発光ダイオード(LED)を備える。いくつかの実施の形態において、励起装置は、帰還信号を放射するのに十分な時間、最大吸収波長で又はその付近の波長でセンシング素子(単数又は複数)を励起するGaAs、GaAlAs、GaAlAsP、GaAlP、GaAsP、GaP、GaN、InGaAlP、InGaN、ZnSeもしくはSiC発光ダイオード又はレーザダイオードなどの固体光源を備える。他の実施の形態において、励起装置は、白熱部品を含む他の発光部品を備え得る。いくつかの実施の形態において、励起装置106は、導波路を備え得る。励起装置106はまた、1つ以上の帯域通過フィルター及び/又は集光光学系も備え得る。
【0028】
いくつかの実施の形態において、励起装置は、帯域通過フィルターを有する複数のLEDを備えており、LED−フィルターの各組み合わせが、異なる中心周波数で放射する。様々な実施の形態によれば、LEDは、異なる中心周波数で作動し、測定の間、連続的にオン/オフを繰り返し、センシング素子を照射する。複数の異なる中心周波数により連続して測定するために、単一の、フィルターの無い検出器を使用することができる。
【0029】
センシング素子108は、1つ以上のイオン選択センサを備え得る。対象となる生理学的分析物は、センシング素子108内に拡散し、イオン選択センサと結合して、蛍光又は比色反応を生じ得る。典型的なイオン選択センサについては、下記でさらに十分に説明する。
【0030】
検出装置110は、センシング素子108から受光するように構成することができる。一実施の形態において、検出装置110は、受光するためのコンポーネントを含む。一例として、いくつかの実施の形態において、検出装置110は、電荷結合素子(CCD)を含む。他の実施の形態において、検出装置は、フォトダイオード、接合型電界効果トランジスタ(JFET)型光センサ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光センサを含み得る。一実施の形態において、検出装置110は、光センシングコンポーネントのアレイを含む。いくつかの実施の形態において、検出装置110は、導波路を含み得る。検出装置110はまた、1つ以上の帯域通過フィルター及び/又は集光光学系も含み得る。一実施の形態において、検出装置110は、1つ以上のフォトダイオード検出器を含み、それぞれ特定の波長域に同調された光学帯域通過フィルターを備えている。
【0031】
励起装置及び検出装置は、光源から、1つ以上のセンシング素子に対し、又は同時にセンシング素子及び参照チャンネル(reference channel)に対し、励起光を導く二分岐光ファイバーを用いて一体化することができる。帰還ファイバー(return fibers)は、プロセッサによる分析のために、センシング素子(単数又は複数)及び参照チャンネルから1つ以上の光学検出器にエミッション信号を導くことができる。別の実施の形態において、励起装置及び検出装置は、プロセッサによる分析のために、励起光を光源からセンシング素子に導き、放射光又は反射光をセンシング素子から光学検出器に導く集束光学レンズ及びビームスプリッター装置を用いて一体化されている。
【0032】
いくつかの実施の形態において、検出装置110は、センシング素子108の励起装置106と同じ側に配置される。別の実施の形態において、検出装置110は、センシング素子108の励起装置106と反対の側に配置される。当然のことながら、コンポーネントの多くの異なる物理的配置が可能である。
【0033】
本発明の実施の形態は、パルス発生器本体と共に配置されるか、ヘッダーを介してパルス発生器本体に接続されたリード上に配置されるか、又はパルス発生器本体と有線もしくは無線で通信するセンサモジュール内に別途配置される、化学センサを有する埋込み式医療装置を含み得る。
【0034】
図2は、様々な実施の形態における、集積化学センサ203と共に配置されるパルス発生器202を有する埋込み式システム200を概略的に示す。本明細書において使用されている用語「パルス発生器」とは、ペーシング及び/又はショック治療を送るための電源及び電気回路を含む、心調律管理装置又は神経学的治療装置などの埋込み式システムの一部又は複数部分のことをいう。パルス発生器202は、化学センサ203と通信するコントローラ回路210(パルス発生器回路などのコンポーネントを含む)と、コントローラ回路210及び外部モジュール220(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路212と、コントローラ回路210と通信するメモリ回路214とを含み得る。化学センサ203は、センシング素子204、光励起装置206及び光検出装置208を備えている。埋込み式システム200は、コントローラ回路210(又はパルス発生器回路)を介してパルス発生器202に連結された少なくとも1つの埋込み式リード222を備え、前記少なくとも1つの埋込み式リード222は、組織を電気的に刺激することのできる少なくとも1つの埋込み式電極224に接続されるように構成し得る。しかし、当然のことながら、本発明の実施の形態は、リードのない埋込み式電気除細動器−除細動器といった、ペーシングリードを含まない、心調律管理装置などの埋込み式システムも含み得る。
【0035】
様々な実施の形態において、コントローラ回路、テレメトリ回路、及びメモリ回路は、装置本体又はハウジング内にある。いくつかの実施の形態において、化学センサ203、又はそのコンポーネントのいくつかは、装置本体又はハウジング内に配置される。いくつかの実施の形態において、化学センサ203、又はそのコンポーネントのいくつかは、装置本体上又は装置本体の開口部に配置される。他の実施の形態において、光励起装置206及び光検出装置208は、装置本体内に配置することができ、センシング素子204は、装置本体の外部に配置される。そのような一実施の形態においては、光励起装置206、センシング素子204、及び光検出装置208の間の光通信は、導波路、光学レンズ、又は光学窓によって維持される。例えば、光学レンズ又は光学窓(透明部材)は、装置本体上の開口部内に配置することができ、センシング素子は、レンズ又は窓の外部に光学的に連結することができ、かつ、光励起装置及び光検出装置は、レンズ又は窓の内部に光学的に連結することができる。
【0036】
図3は、化学センサ303に(例えば、電気的に又は光学的に)連結されているが離れている、パルス発生器302を有する埋込み式システム300の一実施の形態を示す。パルス発生器302は、化学センサ303と通信するコントローラ回路310と、コントローラ回路310及び外部モジュール320(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路312と、コントローラ回路310と通信するメモリ回路314とを備え得る。化学センサ303は、センシング素子304、光励起装置306、及び光検出装置308を備える。埋込み式システム300は、パルス発生器302に接続された、少なくとも1つの埋込み式リード322を含み、少なくとも1つの埋込み式リード322は、組織を電気的に刺激することのできる、少なくとも1つの埋込み式電極324に接続されるように構成されている。埋込み式システム300は、パルス発生器302を化学センサ303と電気的に又は光学的に連結する化学的センシングリードを備え得る。
【0037】
図4は、化学センサ403と無線通信するパルス発生器402を有する埋込み式システム400の一実施の形態を示す。パルス発生器402は、コントローラ回路410と、コントローラ回路410、化学センサ403及び外部モジュール420(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路412と、コントローラ回路410と通信するメモリ回路414とを備え得る。化学センサ403は、センシング素子404、光励起装置406及び光検出装置408を備えている。埋込み式システム400は、パルス発生器402に接続された少なくとも1つの埋込み式リード422を備え、少なくとも1つの埋込み式リード422は、組織を電気的に刺激することのできる少なくとも1つの埋込み式電極424に接続されるように構成され得る。本実施の形態において、パルス発生器402は、化学センサ403と無線通信する。当然のことながら、無線通信は、高周波リンク、超音波リンク、音響リンクなどを含む様々な方法によって実現される。いくつかの実施の形態において、化学センサ403は、独自の内部電源及び無線通信又は音響通信機能(無線通信リンク、超音波通信リンク、及び/又は音響通信リンクを有する)を備えた内臓型装置内にあってもよい。
【0038】
図5は、パルス発生器502及びリード522と一体化された化学センサ503を有するシステム500を含む一実施の形態を示す。リード522は、パルス発生器502に連結されている。化学センサ503は、リード522の近接端部と遠心端との間の任意の点でリード522に連結することができる。一実施の形態において、化学センサ503は、リード522の遠心端に連結される。前記化学センサは、少なくとも1つのセンシング素子504と、少なくとも1つの光励起装置506と、少なくとも1つの光検出装置508とを備えている。
【0039】
図6は、ヘッダー652に集積化学センサ603を備えた埋込み式医療装置(IMD)600の一実施の形態を示す。IMD600は、ハウジング、すなわち本体654を備える。この実施の形態において、化学センサ603は、IMD装置ヘッダー652に位置し、そして、これがハウジング654に連結されている。図7は、装置ハウジング754上に配置された集積化学センサ703を備えた埋込み式医療装置(IMD)700の一実施の形態を示す。この実施の形態において、化学センサ703は、装置ハウジング754に連結されている。様々な実施の形態によれば、心不整脈の矯正用電気回路は、前記励起装置と共通の電池を使用する。様々な実施の形態によれば、心不整脈の矯正用電気回路は、直接又は間接的に前記検出装置と通信するように構成されている。
【0040】
当然のことながら、前記センシング素子は、様々な構造配置を有していてもよい。次に、図8を参照すると、いくつかの実施の形態におけるイオン濃度測定用センシング素子800の断面図が示されている。センシング素子800は、光透過性バッキング層825、バッキング層825の下の接着剤層又は接着層827、膜に付着させた指示素子(indicator element)815、及び被膜層805を含む。
【0041】
指示素子815は、下記にさらに十分に説明するように、ポリマー支持マトリックス及び1つ以上のイオン選択センサを備え得る。生理学的分析物は、被膜層805を介して、前記イオン選択センサに結合し蛍光又は比色反応を生成する指示素子815内に拡散し得る。
【0042】
バッキング層825は、センシング素子800を支持する(例えば、剛性及び取扱い性能)ように構成し得る。バッキング層825は、血液、間質液、又はキャリブレーション溶液などの、標的分析物が存在する溶液に対し、透明及び実質的に不透過性であるか、又は被膜層805よりも透過性がかなり低いものであり得る。バッキング層825は、指示素子815からの光信号などの単一又は複数信号を通過させることがでる。バッキング層825に特に有用な構成材料としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、並びに、これらに限定されないが、ポリエーテルスルホン類及びポリフェニルスルホン類を含むポリスルホン類、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルペンテン類などのような高分子材料が挙げられる。
【0043】
バッキング層825は、指示素子815に接着接合又は熱融着することができる。バッキング層825が指示素子815に接着接合されている実施の形態において、接着剤は、センシング素子800の励起に使用される光及びそこから放射又は反射された光に対して本質的に透過性を有し得る。典型的な接着剤は、フレキソボンド431(FLEXOBOND431(商標))ウレタン接着剤(カリフォルニア州アービンのベーコン社、(Bacon Co.,Irvine,Calif.))である。
【0044】
接着剤層又は接着層827は、センシング素子800を基材に連結する役割を果たし得る。接着剤層又は接着層827は接着剤を含み得る。この接着剤は、センシング素子800の励起に使用される光及びそこから放射又は反射された光に対して本質的に透過性を有し得る。典型的な接着剤は、FLEXOBOND431(商標)ウレタン接着剤(カリフォルニア州アービンのベーコン社)である。
【0045】
被膜層805は、対象となる分析物に対して透過性を有する物質を含み得る。被膜層805は、生体内においてセンシング素子800を包囲する組織から指示素子815を光学的に分離するように、不透明であり得る。また、別個の不透明層を、被膜層805の上又は下に配置することもできる。被膜層805は、不透明化剤と共に高分子材料を含み得る。典型的な不透明化剤としては、カーボンブラック、又は炭素系不透明化剤、酸化鉄、金属フタロシアニン類などが挙げられる。特定の実施の形態において、前記不透明化剤は、カーボンブラックである。不透明化剤は、所望の不透明度を提供し所望の光分離を提供するのに有効な量で、被膜層805又は別個の層に実質的に均一に分散させることができる。センシング素子800はまた、インクジェット技術又はインクスクリーニング技術などの様々な技術を用いて塗布される不透明インクコーティングも含み得る。センシング素子800は、黒膜(black membrane)も備え得る。例えば、ブラックデュラポア(DURAPORER)膜(後に黒インクで処理する白膜(white membrane)としてミリポア(Millipore)から入手可能)を備え得る。
【0046】
図9は、様々な実施の形態における、分析物濃度測定用センシング素子850の断面図を示す。センシング素子850は、第1の指示素子865及び第2の指示素子870を含む。一実施の形態において、第1の指示素子865は、分析物指示素子であり、第2の指示素子870は、光学的参照目的の、又はより一般的には陰性対照(negative control)としての分析物非感受性素子であり得る。別の実施の形態において、第1の指示素子865は、1つの分析物に特異的であり、一方、第2の指示素子870は、対象となる異なる分析物に特異的である。別の実施の形態において、指示素子865及び870は、指示アレイを形成する分析物感受性及び非感受性素子を含む他の指示素子を伴い得る。いくつかの実施の形態においては、複数の分析物の濃度をセンシングすることができる。いくつかの実施の形態においては、例えば、1〜20の分析物の濃度をセンシングすることができる。
【0047】
図9に示す実施の形態において、体液からの分析物は、膜855を通って拡散し、前記指示素子内に配置されたイオン選択センサと可逆的に結合する。多くの異なるイオン選択センサ又はシステムが使用可能である。典型的なイオン選択センサ及びシステムについては、下記に、より詳細に説明する。前記指示素子は、ポリマー支持材を含み得る。このポリマー支持材は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含み得る。特に、前記ポリマー支持材は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含み得る。前記ポリマー支持材は、親水性ポリマーを含み得る。一実施の形態において、前記ポリマー支持材は、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びにそれらの混合物及び共重合体の中の1つ以上を含み得る。
【0048】
膜855は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、膜855は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含み得る。いくつかの実施の形態において、膜855は、親水性ポリマーを含む。各種のポリマーが、膜855の形成に使用することができる。一例として、前記膜は、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びにそれらの混合物及び共重合体の中の1つ以上を含み得る。
【0049】
いくつかの実施の形態において、膜855は不透明である。例えば、いくつかの実施の形態において、光励起装置及び光検出装置はいずれも、センシング素子850の膜855と反対の側に配置される。そのような実施の形態においては、膜855を不透明にすることにより、バックグラウンド干渉を低減させることができる。他の実施の形態においては、不透明なカバー層が膜855上に配置される。当然のことながら、上述した方法を含め、膜又は層において不透明性を付与する多くの方法がある。
【0050】
ハウジング860は、指示素子865及び870を分離するように構成することができる。ハウジング860は、指示素子865及び870がその内部に適合するマイクロウェル又はマイクロキャビティを備え得る。しかし、いくつかの実施の形態においては、前記指示素子が、互いに直接隣接して配置される。ハウジング860は、各種材料から作製することができる。いくつかの実施の形態において、ハウジング860は、ポリマーマトリックスを含む。一実施の形態において、ハウジング860は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含む。基層875は、指示素子865及び870と光検出装置との間に配置されるように構成されている。一実施の形態において、基層875は、問い合せ波長(wavelength of interrogation)及び検出波長に対して光透過性である。基層875は、光透過性ポリマー、ガラス、結晶などを含む様々な異なる材料から作製することができる。いくつかの実施の形態において、基層875は省略され、光励起装置及び/又は光検出器装置などのコンポーネントが指示素子865及び870と直接接するようにされる。
【0051】
一実施の形態によれば、示差測定法を可能にするため、1つ以上のセンシング素子の照射に2つの波長の光が使用される。例えば、1つの中心波長(center wavelength)が、スペクトル応答曲線上の等吸収点でセンシング素子を励起させ、別の中心波長が、最大感受性波長で励起させることが可能である。別の実施の形態は、2つの中心波長が、最大の興奮性を得られるが相補的な(complimentary)振幅応答も得られるように選択される二重照射によってセンシング素子(単数又は複数)を励起させることができる。そして、前記分析物非感受性光学素子は、光学系ドリフト補正信号として使用されることにより、長期的精度を向上させる。他の実施の形態においては、pHの影響を無くせるようにpH感受性コンパートメントが使用される。
【0052】
図10は、様々な実施の形態における、分析物濃度測定用センシング素子の断面図を示す。センシング素子900は、第1の指示素子915及び第2の指示素子920を備えている。センシング素子900は、ハウジング910、イオン透過性膜905、及び基層925を含む。この実施の形態において、センシング素子900の化学成分(chemistries)は、表面積及び光散乱効果を増大させることを目的として、支持ビーズ内に又はその上に組み込まれる。センシング素子900は、パルス発生器のヘッダー、パルス発生器のハウジングの光学窓、リード、又は、パルス発生器と無線通信するセンサ(サテライトセンサ)の光学窓に適合するように構成することができる。
【0053】
図11は、分析物濃度測定用システムの一実施の形態を示す。対象となる分析物、例えば、カリウムは、体液中、例えば、間質液中に、センシング素子578のイオン透過性膜586と接して存在する。前記分析物は、膜586を通って拡散し、指示素子580のイオン選択センサと結合する。前記分析物の結合により、指示素子580の蛍光強度変化及び/又は吸収スペクトルシフトが生じる。
【0054】
指示素子584はまた、膜586を通って拡散する分析物のフラックスにも左右される。しかし、この実施の形態において、指示素子584は、分析物濃度に対して光学的に不変であるように設計されているため、陰性対照としての役割を果たすことができる。この実施の形態において、指示素子584は、光学基準素子(optical reference element)とも呼ばれる。
【0055】
指示素子580及び光学基準素子584の拡散反射スペクトルは、エミッター562及び564(オプションとして、光学フィルターと併用)を用いて第1の照射指示素子580及び光学基準素子584により検出される。光電子ブロック560内に位置するエミッター562及び564は、分析物濃度変化として、指示素子580のスペクトル反射変化を効果的に問い合わせる(interrogate)ように選択された2つの異なる中心波長(例えば、それぞれ波長1及び波長2)で光を発光するように構成することができる。エミッター562及び564は、一度に1つの波長の反射率のみが問い合わせされるように、マイクロプロセッサ制御装置(MCU)548の制御下で、交互にオンオフされ得る。光は、光ルーティングブロック576により、エミッター562及び564のそれぞれから、指示素子580及び光学基準素子584のそれぞれに結合させることできる。そして、蛍光センサの場合、拡散反射光又は放射光は、光ルーティングブロック576により、指示素子580及び光学基準素子584から、光透過膜582を通過してセンサ光学検出器572及び参照光学検出器532にそれぞれ送られる。光のルーティングは、自由空間光通信又は当技術分野の当業者に公知の他の手段により、光ファイバー、導波路、エミッター及び検出器のサブアセンブリの一体化された光学パッキングを用いて行われる。光学検出器572及び532は、それぞれ回路574及び534によって増幅され得る電流を生じさせ、これらの電流は、指示素子580及び光学基準素子584からそれぞれ戻された反射光の強度を示す電圧信号となる。そして、これらのアナログ電圧信号は、A/D変換器544及び542によってそれぞれ処理されて、デジタル信号を生成させ、かつ、マルチプレクサー(MUX)540を経由させることができる。その結果得られたデータは、MCU548によって処理され、メモリ550に記憶されるか、又は遠隔測定装置552に送られる。
【0056】
分析物濃度が変化するにつれ、指示素子580の光学特性が変化する一方で、光学基準素子584の光学特性は変化しない。一実施の形態において、MCU548は、指示素子580の励起に関与する特定の波長でデジタル化された放射又は反射信号を受信することができ、そして、光学基準素子584に関与するデジタル化された信号に基づいて補正信号(corrected signal)を算出する。その後、MCU548は、指示素子580の励起に関与する第2の波長でデジタル化された放射又は反射信号を受信することができ、光学基準素子584に関与するデジタル化された信号に基づいて第2の補正信号を算出する。そして、MCU548は、分析物濃度を概算する上で、2つの波長での補正光信号の比を使用することができる。この比は、プログラム・ルーチン又はルックアップテーブルによりMCU548で処理され、分析物濃度が表示される。その結果得られたデータは、記憶されるか、外部装置に送信されるか、又は付属の治療用装置の機能に組み込まれ得る。
【0057】
本発明の化学センサの実施の形態は、埋め込み後、最初に及び/又は定期的に較正して精度を向上させてもよい。当然のことながら、較正は様々な方法で行うことができる。一例としては、化学センサを埋め込んだ後、採血し、標準的なインビトロ検査技術を用いて、血液中の分析物濃度を算出することができる。その後、インビトロ検査によって示された濃度を、埋込み式装置によって示された濃度と比較し、もし差異が存在する場合には、その差異に基づいて埋込み式装置を補正することができる(オフセット補正)。オフセット補正値は、パルス発生器の電気回路に記憶させることができ、その後の測定に自動的に適用される。いくつかの実施の形態においては、異物反応によって埋込み式装置の周辺に組織ポケットが形成された後、この補正手順が行われる。いくつかの実施の形態においては、この補正手順が定期的に行われる。
【0058】
前記化学センサは、一実施の形態によれば、プログラム可能なレートで(プログラマブル・タイマーを使用して)、ナトリウムイオン及びカリウムイオンなどの1つ以上の分析物の濃度を測定することができる。前記化学センサはまた、プログラム・ルーチンによって命令されるか、外部通信コマンド(externally communicated command)によって起動されると、要求に応じて分析物の濃度を測定するように、構成することもできる。一実施の形態において、分析物濃度は、時間的に等間隔で、又は定期的に測定することができる。例えば、前記光励起装置は、定期的に前記センシング素子に問い合わせするように構成することができる。一実施の形態においては、不定期に又は間欠的に異なった時間に、測定することができる。一実施の形態においては、一時間当たりに約一度測定される。
【0059】
光化学センサシステムの電力消費量は、同様の性能に構成された電気化学センサシステムの電力消費量よりもかなり多い可能性がある。このことは、光励起装置を含む光化学センサとの関連で特に当てはまる。本発明の化学センサは、慢性埋込み式システムの一部として設計することができるため、電力消費量は性能限界特性となり得る。それゆえ、本発明の実施の形態は、電池などのエネルギー源からの平均及びピーク電力消費量を低下させる方法を含み得る。
【0060】
次に、図12を参照すると、システム性能を保持しながら電池負荷を低下させることのできる電源管理システムの概略図が示されている。図12において、区間「A」は、センシングパラメータ(sensed parameter)の観察時間を示す。区間「B」は、センシングパラメータの観察と観察との間の最長時間を示す。区間「B」は、最適な省エネのためにはできるだけ長くあるべきであるが、検出器が、観測するシステムにおける急激な変化を追跡するのに十分な程度短くなくてはならない。当然のことながら、このシステムは、対象となる分析物の時間特性(temporal characteristics)に基づいて最適化することができる。例えば、前記センサが、カリウム濃度測定を意図する場合、標的生理系におけるカリウム濃度に関する最大変化率を考慮することができる。すなわち、測定されている特定の分析物は、センシングパラメータの観察と観察との間の最長時間などの要因に直接影響を及ぼし得る。一実施の形態においては、観察時間の一部の間、LEDをオンにすることができる。観察時間中LEDをオンにする時間の割合は、サンプリングの負荷時間率と呼ばれる。
【0061】
サンプリングの負荷時間率を乗じたA/Bの比率は、連続モード検出スキームと比較した、前記システムによって使用されるエネルギー分率(fraction of energy)を表す。例えば、観察時間を100ミリ秒、観察と観察との間の最長時間を3600秒(1時間)、負荷時間率を50%と仮定すると、最終エネルギー率(final energy fraction)は0.0000138である。すなわち、これらの仮定に基づけば、前記センサが使用するエネルギーは、連続モードの場合と比べて、半連続的負荷時間率モードでは約1/72,000となる。当然のことながら、ここでは、多くの異なる観察時間が考えられる。さらに、1分、10分、30分、60分、120分、180分といった、観察と観察との間の多くの異なる最長時間が考えられる。
【0062】
多くの実施の形態において、連続モードで作動させる場合、センサシステムの主要なエネルギー消費部は、光源であろう。典型的な光源は、2ミリアンペアを消費し得るが、これは殆どの慢性埋込み式装置にとっては容認し難いほど多い量である。しかし、一実施例においては、上記負荷時間率スキーム(duty factoring scheme)を用いて、平均消費電流を28ナノアンペアまで低下させることができる。当然のことながら、負荷時間率スキームの結果は、特定の観察時間、観察と観察との間の最長時間、及び有効負荷時間率を含む様々な要因に左右されるであろう。
【0063】
本発明の実施の形態は、変調/復調及び多数のサンプリング・イベントを含むシステムレスポンスにおけるノイズ及び不確実性を低減させる方法も含み得る。変調により、外部光源及び受信信号における直流オフセットに対するセンサの感受性を低下させる。一例として、刺激光源は、特定の周波数1204「周波数f」でオンにすることができ、また、受信回路は、周波数fを含む狭帯域外の信号を排除するフィルターを有し得る。さらに、前記受信回路は、周波数fの信号に選択的に応答する復調器を含む。これらの特性により、対象となる光源以外の光源からの信号に対するいかなるシステムレスポンスも低減又は除去することができる。
【0064】
サンプリング間隔内の多数のサンプリング・イベント1202により、サンプル・イベントの間、電源からのピーク電流需要は低くなる。これらはまた、ランダム・ノイズ源の影響を低減し、精度を向上させるために、積分及び平均することのできる多数の信号も提供する。サンプル・イベント、サンプル間隔の生成、及びセンサ情報の処理は、マイクロプロセッサ制御装置/タイマーによって行われ得る。そして、マイクロプロセッサ制御装置は、メモリにデータを送るか、又は患者管理システムの他のコンポーネントと通信することができる。
【0065】
本発明の実施の形態は、1つ以上のイオン選択センサを備えたセンシング素子を含み得る。イオン選択センサは、過程の大半において(inside the bulk of a phase)、表面現象又は濃度変化のいずれかに依存し得る。イオン選択センサは、搬送波を使用しない光センサ及び搬送波を使用する光センサの双方を含む光センサと、イオン選択電極(ISE)とを備え得る。
【0066】
一実施の形態において、イオン選択センサは蛍光分析によるものである。蛍光イオン選択センサは、分析物を錯体部分にする錯化に基づく差蛍光強度(differential fluorescent intensity)を示す。一実施の形態において、イオン選択センサは比色分析によるものである。比色イオン選択センサは、分析物を錯体部分にする錯化に基づく差吸光度を示す。
【0067】
いくつかの実施の形態において、前記イオン選択センサは、被分析イオンを可逆的に結合する錯体部分、及び錯化剤がイオンを結合させるか又は放出するにつれてその光学的特性を変化させる蛍光又は比色部分を含む、搬送波を使用しないか又は搬送波を使用する蛍光又は比色イオノフォア組成物を含む。本発明の前記錯化剤には、イオンセンシング組成物を調合する際に有用な所望の特性を付与するように選択された1つ以上の有機置換基をオプションとして付加することができる。一例として、前記置換基は、例えば、疎水性尾部(tail)又はポリマー尾部を組み込むことにより、又は、イオン選択センサ内のポリマー支持材に対する前記錯化剤の共有結合(covalent attachment)用手段を与えることにより、センシングされる溶液内への浸出に対して錯化剤を安定化させるように選択することができる。
搬送波を使用しないイオンセンサ
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を使用しない光学イオンセンサである。搬送波を使用しない光学イオンセンサは、親水性ポリマーマトリックス(基材)に共有結合され、かつ、対象となるイオンを選択的に錯化し、比色又は蛍光応答のいずれかを直接生じさせる親水性指示色素(indicator dye)を含み得る。搬送波を使用しないイオン選択センシング素子の一実施の形態において、蛍光イオノフォアは適した基材に共有結合される。蛍光イオノフォアは、蛍光部分及びイオン錯体部分の両方含む化合物である。一例として、カリウムイオン選択蛍光イオノフォアである(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)チオフェニル]クマリンは、アズラクトン官能性親水性多孔質ポリエチレン膜に共有結合し、搬送波を使用しない蛍光系K+イオンセンサを形成することができる。別の例として、水素イオン選択蛍光イオノフォアである、ヒドロキシピレントリスルホナートは、アミン官能性セルロースに共有結合して、搬送波を使用しない蛍光系pHイオンセンサを形成することができる。前記蛍光イオノフォアは、特定の蛍光イオノフォアの化学的機能性によリ決まる場合もある何らかの有用な反応技術によって基材に共有結合させることができる。その後、基材をバッキング膜又は層に付着させることができる。
【0068】
搬送波を使用しないカリウムイオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(カプロファン(CUPROPHAN(商標))、ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社、(Enka AG,Ohderstrasse,Germany))に共有結合させた6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリン(FCCC)を含むセンシング層があり、前記センシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によりポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。搬送波を使用しないカリウムイオンセンサの別の具体例としては、ジアミンリンカーなどのリンカーを有する架橋アズラクトン官能性ヒドロゲルに共有結合された6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリンを含むセンシング層が挙げられる。そして、このセンシング層は、マイクロウェルなどの基材のキャビティ内又はサテライトセンサのゲルカプセル内で光架橋され得る。「サテライトセンサ」という用語は、パルス発生器から遠隔の埋込み式化学センサを記述するのに使用され得る。
【0069】
搬送波を使用しないナトリウムイオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(CUPROPHAN(商標);ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)に共有結合された6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリンを有するセンシング層が挙げられ、このセンシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によってポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。
【0070】
搬送波を使用しない水素イオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(CUPROPHAN(商標);ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)に共有結合されたヒドロキシピレントリスルホナートを含むセンシング層が挙げられ、このセンシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によってポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。
【0071】
蛍光イオノフォアの典型的な類は、クマロクリプタンド類である。クマロクリプタンド類には、リチウム特異的蛍光イオノフォア類、ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類、及びカリウム特異的蛍光イオノフォア類が含まれ得る。例えば、リチウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.1.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリンが挙げられ得る。ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリンが挙げられ得る。カリウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリン及び(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)チオフェニル]クマリンが挙げられ得る。
【0072】
適した蛍光イオノフォア類としては、米国特許第5,958,782号明細書に教示されているクマロクリプタンド類が挙げられ、その開示事項は、ここに引用することによって本明細書の一部とされる。そのような蛍光イオノフォア化合物類は、400nm又は約400nmで光を放射するGaN青色発光ダイオード(LED)で励起させることができる。これらの蛍光イオノフォア化合物類は、約450nm〜約470nmの波長域で検出され得るイオン濃度依存性放射を有する。
【0073】
前記基材は、水膨潤性及び対象となるイオン種に対して透過性であり、かつ、モニタリングされる媒質に不溶である高分子材料であり得る。典型的な基材材料としては、例えば、イオン透過性のセルロース材料、高分子量又は架橋ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、架橋デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニルピロリドン類、親水性ポリアミド類、ポリエステル類、及びそれらの混合物が挙げられる。一実施の形態において、前記基材は、セルロース系、特にイオン透過性の架橋セルロースである。一実施の形態において、前記基材は、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのエポキシドで架橋され、さらに、ジアミンと反応して、セルロースポリマーに懸垂したアミン官能基を提供する再生セルロース膜(CUPROPHAN(商標)、ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)を含む。他の実施の形態において、前記基材は、アズラクトンに懸垂したジアミン官能基を用いて、アミン官能化されたアズラクトン官能性親水性多孔質ポリプロピレンを含む。
【0074】
搬送波を使用しないイオン選択センサの一作製方法においては、まず、アミノエチル化セルロースを、重炭酸ナトリウム溶液で処理することによって活性化させる。そして、6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシl)フリル]クマリンなどの蛍光イオノフォアは、アミノエチル化セルロースに共有結合される。オプションとして、ひとたび所望量の蛍光イオノフォアが、アミノエチルセルロースに共有結合されると、残りのアミノ基は、アシル化によって遮断させる。次に、前記セルロースを有する蛍光イオノフォアは、溶液内に取り込まれ、そして、光ファイバー上又はハウジングのマイクロキャビティ内にコーティング又は堆積される。
【0075】
前記センシング層のイオン透過性を向上させるために、透過促進剤を、前記センシング層を形成するのに使用される組成物に添加することができる。適切な透過促進剤には、親水性であり、かつ、水溶性である低分子量分子が含まれ得る。そのような促進剤には、糖類、ポリオール類などが含まれ得る。具体例としては、グリセロールを使用することができる。別の具体例としては、低分子量水溶性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0076】
いくつかの実施の形態において、前記センシング層の材料は、化学的に官能化された蛍光イオノフォア類及びクロモイオノフォア類を共有結合するための反応性官能基を有する光架橋性ヒドロゲルを利用して調製することができる。一実施の形態において、前記光架橋性ヒドロゲルは、アズラクトン官能性共重合体を含み得る。前記アズラクトン官能性共重合体は、ビスアジド類、ビスジアゾカルボニル類、及びビスジアジリン類などの光架橋剤を用いて架橋(硬化)することができる。この種の架橋はアズラクトン基に影響を及ぼすことはないが、三次元ヒドロゲルマトリックスを生成する。そして、前記アズラクトン官能性ポリマーは、反応性官能基(第一級アミン類、第ニ級アミン類、ヒドロキシル基、及びチオール基など)を有するクロモイオノフォア類又は蛍光イオノフォア類と反応させられ得る。その後、前記反応性官能基は、適切な触媒の存在又は不在のいずれかの下、求核付加反応によってアズラクトンと反応し共有結合する。この共有結合工程は、コーティング前又は後、硬化前又は後、及びパターニング前又は後に実施することができる。
【0077】
オプションとして、イオンセンシング分子が共有結合した後、キャッピング基を添加して、アズラクトン基などの使用されていない任意の官能基をふさぐ(occupy)ことができ、また、何らかの不要な物質による後のゲル汚染を防止することができる。前記キャッピング基は、前記ゲルの膨潤性を向上させるために親水性(例えば、水)であってもよい。また、前記キャッピング基は、下記にさらに十分に説明するように、搬送波を使用するイオン選択センサに適合する微環境を提供するために疎水性であり得る。
【0078】
前記センシング層の材料は、特定の用途に応じて、様々な方法で構成することができる。いくつかの実施の形態において、前記センシング層の材料は、実質的に平面構造で構成される。他の実施の形態において、前記センシング層の材料は、ビーズ又はマイクロドットとして構成される。
【0079】
センシング層組成物の硬化は、その特定の用途及び前記センシング層の材料の化学構造に応じ、光又は熱を用いて行われ得る。
搬送波を用いるイオンセンサ
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を用いるイオンセンサである。搬送波を用いるイオンセンサは、対象となるイオンと錯化しそのイオンを担持する役割を果たすイオノフォアと呼ばれる化合物を含む。搬送波を用いるイオンセンサは、光学イオンセンサ及びイオン選択電極の双方を含み得る。いくつかの実施の形態において、搬送波を使用する光学イオンセンサは、脂肪親和性イオノフォア、及びクロモイオノフォアと呼ばれる脂肪親和性蛍光又は比色指示色素を含む。前記クロモイオノフォア及びイオノフォアは、疎水性有機ポリマーマトリックス中に分散させることができ、及び/又は疎水性有機ポリマーマトリックスに共有結合させることができる。前記イオノフォアは、対象となるイオンを可逆的に結合させることができる。前記クロモイオノフォアは、プロトン選択性色素であり得る。作動中、対象となるイオンは、有機ポリマーマトリックス内のイオノフォアによって可逆的に隔離される。そして、ポリマーマトリックス内の電荷の中立性を維持するために、プロトンは、クロモイオノフォアから遊離され、色又は蛍光の変化が生じる。
【0080】
搬送波を用いるイオンセンサの具体例としては、比色K+センシング素子を作製するためにポリ塩化ビニル及びセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)界面活性剤からなるポリマーマトリックス中に分散させた、カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸、クロモイオノフォアI、及びカリウムイオノフォアIIIが挙げられる。
【0081】
前記疎水性有機ポリマーマトリックスは、十分な引っ張り強さ、化学的不活性、及び可塑剤相溶性を有する材料を含み得る。典型的な材料としては、ポリ(塩化ビニル)、ポリ塩化ビニルの誘導体、ポリウレタン、シリコーンゴム類、ポリアルキルメタクリレート類、及びポリスチレンが挙げられ得る。
【0082】
一実施の形態において、疎水性有機ポリマーマトリックスは、可塑剤により、対象となる分析物に対して透過性にするようになる。適した可塑剤としては、2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(BEHS)、ジベンジルエーテル(DBE)などが挙げられ得る。しかし、可塑剤は、時間とともに疎水性有機ポリマーマトリックスから浸出し得ることが知られている。これは、センサの機能低下につながる場合もある。従って、いくつかの実施の形態において、前記センシング素子は、自己可塑性のポリマーマトリックスを含む。そのようなポリマーとしては、ポリウレタン類、ポリシロキサン類、シリコーンゴム、ポリチオフェン類、エポキシアクリレート類、並びにメタクリル酸及びメタクリル酸−アクリル共重合体が挙げられ得る。一実施の形態においては、アクリレート骨格及びアクリレートコモノマー由来の複数のペンダント脂肪親和性可塑化基を有するイオン選択ポリマー材料が作製される。前記脂肪親和性可塑化基は、例えば、ポリマーマトリックスを本質的にソフトにし(例えば、ガラス転移温度(Tg)が−10℃未満)、かつ、さらなる可塑剤を必要としない、つまり、前記ポリマーが実質的に自己可塑性であり、そのために前記可塑剤が浸出する問題が生じることのない、炭素数3〜7のペンダントアルキル基であり得る。
【0083】
いくつかの実施の形態においては、イオン−イオノフォア錯体の濃度を安定させることによってイオン選択性を向上させるために脂肪親和性アニオン(イオン交換体)が含まれる。例えば、テトラフェニルホウ酸誘導体は、カチオン選択性ポリマー膜電極及びバルク光センサにおけるイオン交換体として使用することができる。アニオン干渉を減少させることに加え、テトラフェニルホウ酸は、境膜抵抗を低下させることもでき、また、イオン−イオノフォア錯体の濃度を安定させることによってイオノフォア選択性を向上させることもできる。これらの化合物が有する非局在化モノアニオン電荷は、それらの立体的に込み合った分子構造との組み合わせで、それらを非常に弱い配位とする。これは、前記膜の弱く非特異的なイオン対生成及び最大イオノフォア媒介選択性につながる特徴である。具体的な脂肪親和性アニオン類としては、KTpClPBと表わされるテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウム);NaHFPBと表わされるテトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ酸ナトリウム;KTFPBと表わされるテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウム;テトラキス(4−フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ得る。テトラフェニルホウ酸の適切な代替物であり得る化合物としては、3,5[ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(NaTFPB)、カルボラン類(クロソ−ドデカカルボラン類など)、及びハロゲン化カルボラン類(トリメチルアンモニイウムウンデカブロモカルボラン(TMAUBC)、ウンデカ塩素化物(UCC)、六臭素化物(HBC)、及びウンデカヨウ素化物(UIC)カルボランアニオン類など)が挙げられる。
【0084】
上述のように、搬送波を用いるイオンセンサにおける前記クロモイオノフォアは、pH感受性材料であり得る。典型的なpH感受性クロモイオノフォア色素としては、コンゴレッド、ニュートラルレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ラクモイド、テトラブロモフェノールフタレイン、α−ナフトールフェノールなどが挙げられる。前記クロモイオノフォアは、ポリマーマトリックスに共有結合することによって固定化され得る。前記クロモイオノフォアは、上述のように可塑剤を用いてポリマーマトリックスに溶解させることができる。
【0085】
前記イオノフォア及び/又はクロモイオノフォアは、様々な方法で前記ポリマーマトリックスにおいて固定化され得る。例えば、1つの方法においては、前記イオノフォアは、反応部位を有する既存ポリマーに直接グラフトされる。第2の方法においては、2つの異なるポリマーが、それらの一方がグラフトイオノフォアを含んだ状態で、共に混合される。第3の方法は、側鎖としてイオノフォアを含むアクリレート官能性モノマーを、他のモノマーと一段階(one-step)重合法によって重合することを含む。第4の方法において、アズラクトン官能性アクリレートポリマーは、アミン、ヒドロキシル基、又はチオール官能性イオノフォアの求核付加反応を受けて、共有結合されたイオノフォアを提供することができる。
【0086】
典型的なpH応答性クロモイオノフォア類としては、クロモイオノフォアI、(9−(ジエチルアミノ)−5−(オクタデカノイルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン)、「ETH5294」CAS No.125829−24−5;クロモイオノフォアII、(9−ジエチルアミノ−5−[4−(16−ブチル−2,14−ジオキソ−3,15ジオキサエイコシル)フェニルイミノ]ベンゾ[a]フェノキサジン)、「ETH2439」CAS No.136499−31−5;クロモイオノフォアIII、(9−(ジエチルアミノ)−5−[(2−オクチルデシル)イミノ]ベンゾ[a]フェノキサジン、「ETH5350」CAS No.149683−18−1;クロモイオノフォアIV、(5−オクタデカノイルオキシ−2−(4−ニトロフェニルアゾ)フェノール)、「ETH2412」CAS No.124522−01−6;クロモイオノフォアV、(9−(ジエチルアミノ)−5−(2−ナフトイルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン)、CAS No.132097−01−9;クロモイオノフォアVI、(4’,5’−ジブロモフルオレセインオクタデシルエステル)、「ETH7075」CAS No.138833−47−3;クロモイオノフォアXI、(フルオレセインオクタデシルエステル)、「ETH7061」CAS No.138833−46−2が挙げられ得る。
【0087】
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を用いるイオン選択電極(ISE)である。搬送波を用いるイオン選択電極は、搬送波を用いる光学イオンセンサと同様の材料の多くを含み得るが、クロモイオノフォアは含まない。この実施の形態において、イオノフォアを含むイオン選択疎水性ポリマーマトリックスは、介在ヒドロゲル層が一定量の参照電解質を含む状態で(例えば、K+センサ用のKCl)、Ag/AgCl電極などの参照電極上に配置することができる。この実施の形態においては、イオノフォアを含まない参照電極も提供される。ISEは、標的イオンを含む流体サンプルとの接触で測定可能な電位差測定変化を生じさせる。これは、両界面の界面電位、及びイオン選択ポリマーマトリックス内の拡散電位によって駆動される。
錯体部分
搬送波を用いないイオンセンサ及び搬送波を用いるイオンセンサの双方に使用される化合物は、錯体部分を含み得る。適切な錯体部分は、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリックスアレーン類、非環状アミド類、及びヘミスフェランド部分、並びに、モネンシン、バリノマイシン及びナイジェリシン誘導体などのイオン選択抗生物質を含み得る。
【0088】
当該技術分野における当業者は、どのクリプタンド及びクラウンエーテル部分が、特定のカチオンを錯化する上で有用であるかを認識することができるが、このトピックに関するさらなる情報に関しては、例えば、レーン及びソバージュ、「[2]−クリプテート:アルカリ及びアルカリ土類大環状錯体の安定性及び選択性」(Lehn and Sauvage,"[2]-Cryptates:Stability and Selectivity of Alkali and Alkaline-Earth Macrocyclic Complexes,")J.Am.Chem.Soc,97,6700−07(1975)を参照することができる。当該技術分野における当業者は、どのビス−クラウンエーテル、カリックスアレーン、非環状アミド類、ヘミスフェランド、及び抗生物質部分が、特定のカチオンを錯化する上で有用であるかを認識することができるが、このトピックに関するさらなる情報に関しては、例えば、ブールマン等の「搬送波を用いるイオン選択電極及びバルクオプトード.2.電位差測定及び光センサ用イオノフォア,」(Buhlmann et al.,"Carrier-Based Ion-Selective Electrodes and Bulk Optodes.2.Ionophores for Potentiometric and Optical Sensors,")Chem. Rev.98、1593−1687(1998)を参照することができる。
【0089】
一例として、クリプタンド類は、クリプタンドケージと呼ばれる構造体を含む。クリプタンドケージに関して、ケージのサイズは、酸素及び窒素原子によって定義され、このサイズにより、クリプタンドケージは同様の直径を有するカチオンに対してかなり選択性が高くなる。例えば、[2.2.2]クリプタンドケージは、K+、Pb+2、Sr+2、及びBa+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。[2.2.1]クリプタンドケージは、Na+及びCa+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。最後に、[2.1.1]クリプタンドケージは、Li+及びMg+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。クリプタンドケージのサイズ選択性は、化学的センシングの感度を向上させることができる。これらのクリプタンドケージが、生理学的センシングシステムに組み込まれると、Pb+2及びBa+2などのより重い金属が、Na+及びK+などの、より広範に生理学的に関与するイオンの分析に干渉する濃度中に存在する可能性は低い。
【0090】
クラウンエーテル部分に関し、酸素原子によって定義される15−クラウン−5ケージというサイズは、そのユニットをNa+に対して適度な選択性にし;18−クラウン−6ケージというサイズは、K+に対して適度な選択性にし;21−クラウン−7ケージというサイズは、K+に対しては選択性をかなり高くし、Na+に対しては非選択性にする。Li+は、12−クラウン−4〜15−クラウン−4の範囲内のサイズのクラウンエーテル類によって形成されるキャビティによく適合する。クラウンエーテル類としては、リチウム特異的クラウンエーテル類、ナトリウム特異的クラウンエーテル類、カリウム特異的クラウンエーテル類、及びカルシウム特異的クラウンエーテル類が挙げられ得る。例えば、リチウム特異的クラウンエーテル類としては、6,6−ジベンジル−14−クラウン−4、(7−テトラデシル−2,6,9,13−テトラオキサトリシクロ[12.4.4.01,14]ドコサン、及び((2S,3S)−(−)−2,3−ビス(ジイソブチルカルバモイルメチル)−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカンが挙げられ得る。ナトリウム特異的クラウンエーテル類としては、2,3:11,12−ジデカリノ−16−クラウン−5又は「DD16C5」と表わされる(2,6,13,16,19−ペンタオキソペンタシクロ[18.4.4.47,12.0.1,2007,12]ドトリアコンタン;Na+−18と表わされる4’イソプロピル−4’−OCH2CON(C8H17)2−ジベンゾ−16−クラウン−5;Na+43と表わされる4’−デカニル−4’−(4−ヒドロキシ−5−メチル−ニトロフェニル−5−オイル)−ジベンゾ−16−クラウン−5;及び「ODM16C5」と表わされる15−メチル−15−ステアリル−オキシメチル−1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロヘキサデカンが挙げられ得る。カリウム特異的クラウンエーテル類としては、ナフト−(15−クラウン−5);(ヘキサノールイルオキシメチル)ベンゾ−15−クラウン−5;(オクタデカノイルオキシメチル)ベンゾ−15−クラウン−5;及びK+−35、ベンゾ−15−クラウン−5由来のアニオン性クラウンエーテル色素(ブールマン等の用語、上記参照)が挙げられ得る。カルシウム特異的クラウンエーテル類としては、4,13−ジ−N−オクタデシルカルバモイル−3−オキサブチリル−1,7,10,16,テトラ−オキサ−4,13−ジアザシクロオクタデカン、又は「K22E1」と表わされる10,19−ビス[(オクタデシルカルバモイル)メトキシ−アセチル]−1,4,7,13,16−ペンタオキサ−10,19−ジアザシクロヘンエイコサンが挙げられ得る。
【0091】
ビス−(クラウンエーテル)及びアルカリ金属イオンの錯化は、カチオンのサイズが、クラウンエーテル環のうちの1つによって形成された内部キャビティよりもわずかに大きい場合、かなり特異的である。これは、分子内のサンドイッチ錯体の形成によって説明することができる。Na+に対する高い選択性は、例えば、14−クラウン−4及び12−クラウン−4のキャビティはNa+には小さすぎるが、ビス(14−クラウン−4)及びビス(12−クラウン−4)化合物によって得られる。同様に、K+に対する選択性は、ビス(15−クラウン−5)化合物によって得られる。ビス−クラウンエーテル類としては、ナトリウム特異的ビス−クラウンエーテル類及びカリウム特異的ビス−クラウンエーテル類が挙げられ得る。ナトリウム特異的ビス−クラウンエーテル類としては、ビス[(12−クラウン−4)メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロン酸塩;ビス[(12−クラウン−4)メチル]−2,2−ジベンジル−マロン酸塩;1,1−ビス[(12−アザクラウン−4)−N−メチル]ドデカンが挙げられ得る。カリウム特異的ビス−クラウンエーテル類としては、ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−4’−イルメチル]ピメレート;ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−4’イルメチル]−2−ドデシル−2−メチルマロン酸塩;及び「BME−44」と表わされる2,2−ビス[3,4−(15−クラウン−5)−2−ニトロフェニルカルバモキシメチル]テトラデカンが挙げられ得る。
【0092】
ヘミスフェランドは、リガンド事前形成(preorganization)を促進する余分なブリッジを含むクラウンエーテル化合物であると考えられる。ナトリウム特異的ヘミスフェランドの一例としては、HEMISODIUMという商品名で販売されている化合物(Na+−40、ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。カリウム特異的ヘミスフェランドとしては、K+−26(ブールマン等の用語。上記参照)及びK+−27(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。
【0093】
非環状アミド類としては、ナトリウム特異的非環状アミド類及びカルシウム特異的非環状アミドの双方が挙げられ得る。ナトリウム特異的非環状アミド類としては、「ETH227」と表わされるN,N’,N’’−トリヘプチル−N,N’,N’’−トリメチル−4,4’,4’’−プロピリジントリス(3−オキサブチルアミド)、「ETH157」と表わされるN,N’−ジベンジル−N,N’−ジフェニル−1,2−フェニレン−ジオキシジアセトアミド、「ETH2120」と表わされるN,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,2−フェニレンジオキシ−ジアセトアミド、及び「ETH4120」と表わされる4−オクタデカノイルオキシメチル−N,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,2−フェニレンジオキシ−ジアセトアミドが挙げられ得る。カルシウム特異的非環状アミド類としては、「ETH1001」と表わされる(−)−(R,R)−N,N’−ビス−[11−(エトキシカルボニル)ウンデシル]−N,N’−4,5−テトラメチル−3,6,−ジオキサオクタン−ジアミド、「ETH129」と表わされるN,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−3−オキサペンタンジアミド、「ETH5234」と表わされるN,N−ジシクロヘキシル−N’,N’−ジオクタデシル−3−オキサペンタンジアミドが挙げられ得る。
【0094】
カリックスアレーン類としては、ナトリウム特異的カリックスアレーン類及びカリウム特異的カリックスアレーン類が挙げられ得る。ナトリウム特異的カリックス[4]アレーンとしては、25,26,27,28−テトラキス(エトキシカルボニルメトキシ)、3,9,15,21−第三ブチルカリックス[4]アレーン;Na+−20(ブールマン等の用語。上記参照);Na+−42(ブールマン等の用語。上記参照);Na+−33(ブールマン等の用語。上記参照);及びNa+−34(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。カリウム特異的カリックス[6]アレーン及びカリックス[4]アレーンクラウン−5イオノフォアとしては、37,38,39,40,41,42−ヘキサキス(エトキシカルボニルメトキシ)カリックス[6]アレーン;K+−32(ブールマン等の用語。上記参照);K+−33(ブールマン等の用語。上記参照);及びK+−34(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。
センサのコーティング及びパターニング
搬送波を用いる及び搬送波を用いないイオンセンサの双方において、センシング層組成物は、溶媒を添加して又は溶媒を添加することなくコーティングすることができる。いくつかの実施の形態において、前記センシング層成分は、スプレーコーティング又は浸せきコーティングなどのコーティング技術を用いて、センシング層成分の基材上へのコーティングを容易にするように液体組成物として調合される。例えば、特定の実施の形態においては、パルス発生器と無線通信するサテライトセンサに関連するカプセル内又は光ファイバーリードの先端にセンシング層を組み込むことが有益であり得る。これらの場合、光ファイバーリード上又はカプセル内に前記センシング層成分をスプレーコーティング又は浸せきコーティングすることが有益であり得る。適切なコーティング方法としては、スピンコーティング、ナイフコーティング、又はローラーコーティングも挙げられ得る。
【0095】
前記組成物は、パターン化表面を提供するために選択的にコーティングされ得る。例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷などを含む技術が、前記組成物を選択的にコーティングするために使用され得る。前記組成物はまた、微細構造内に存在し、当該組成物のパターン化配列を付与するように微細構造表面(例えば、ミクロンスケールの凹部又は溝部(channels)を有する表面)上にナイフコーティングされてもよい。いくつかの実施の形態において、前記組成物は、ピンベース(pin-based)の精密分配(precision dispensing)などの精密分配技術を用いて、基材のマイクロウェル又はマイクロキャビティ内に堆積され得る。
【0096】
選択的コーティング以外では、パターニングは、前記組成物の選択的硬化又は前記組成物の基材からの選択的除去などの技術によって行うこともできる。選択的硬化技術としては、UV光又は熱への選択的曝露が挙げられ得る。選択的UV曝露法としては、マスク又は写真のネガを介しての曝露又はレーザなどの指向光線による曝露が挙げられる。硬化後、残存未硬化組成物を、例えば、洗浄によって除去することにより、パターン化されたコーティングが得られる。
【0097】
いくつかの実施の形態においては、レーザアドレス可能な熱転写結像法(thermal transfer imaging processes)により、前記組成物を基材上にパターン化することができる。この方法において、熱転写ドナー素子は、支持層、光熱変換層、及びパターン化する前記組成物を含む転写層を備えて構成される。このドナー素子が受容体に接触し画像を形成するように照射される(image wise irradiated)と、メルトスティック転写作用が生じ、前記組成物含有転写層が受容体上に結像される。一例として、先に記述した光架橋性アズラクトン組成物を、そのようなシステムの転写層に使用することができる。この光架橋性アズラクトン組成物は、転写層に取り込む前、転写層に取り込まれた後、又は受容体にレーザアドレス熱転写した後に、クロモイオノフォア又は蛍光イオノフォアと反応させることができる。前記アズラクトン組成物は、前記転写過程の前又は後に、熱的に又は光化学的に架橋され得る。この方法は、受容体基材に対する、個別のアズラクトン−指示薬(indicator)複合体のレーザアドレス熱画像形成に先立ち、異なる指示素子を、前記アズラクトン組成物を含む転写層上に前もってパターン化する機会を提供する。ドナー及び受容体素子のレジストレーションは、転写工程のいずれか1つ又は全ての間、ロボット制御で変更することができ、転写層上の指示薬のパターニングとは異なる受容体上の転写素子に関し所望のアレー間隔及びサイズにすることができる。
作動方法
本発明の一実施の形態は、生理学的分析物の濃度をモニタリングするためにパルス発生器を備えた埋込み式医療装置を使用する方法を含む。この方法は、化学センサによって分析物濃度をセンシングすることを含む。化学センサによる分析物濃度のセンシングは、センシング素子を体液に曝露することを含み得る。化学センサによる分析物濃度のセンシングはまた、光励起装置によってセンシング素子を照射して光帰還信号を生成することも含み得る。化学センサによる分析物濃度のセンシングはさらに、光検出装置を使用し、前記センシング素子から反射又は放射された光を受光することを含み得る。
【0098】
本発明の方法は、定期的にセンシング素子に問い合わせて、分析物濃度を測定することを含み得る。その方法はまた、埋込み式医療装置内のメモリに、デジタル表示された測定分析物濃度を記憶させることも含み得る。いくつかの実施の形態においては、ひとたび情報が記憶されると、情報は時間の関数として評価されて代謝傾向や代謝現象を特定することができる。いくつかの実施の形態は、分析物濃度及び/又は算出リスク指標に関するデータを別の装置に伝達することも含む。例えば、記憶された測定分析物濃度に関する情報も含め、1つ以上のメッセージを遠隔患者モニタリング装置に無線で伝達することができる。いくつかの実施の形態において、この方法は、高度患者管理システム(APM)などの在宅モニタリングシステムを使用して、定期的に分析物濃度を読み取ることを含む。さらなる実施の形態は、経時的な分析物濃度の傾向を示す傾向データを提供することを含む。
【0099】
様々な方法の実施の形態によれば、埋込み式医療装置内のプロセッサを用い、光センシング素子及び対応する分析物非感受性光学基準素子から収集されたデジタル化された光信号に基づいて分析物濃度を計算することができる。この方法は、まず、所定の中心波長でのセンシング素子からの、分析物に依存した強度測定値を、その中心波長での光学基準素子からの強度測定値を用いて測定される光学オフセットに対して補正することを含み得る。この方法はまた、ルックアップテーブルと併せて前記補正光信号を使用し、分析物濃度得ることも含み得る。一実施の形態において、前記方法は、メモリに記憶された較正係数に基づいてデータを調整することを含む。様々な実施の形態においては、埋込み式医療装置に一体化された温度センサによって測定される温度に基づいて調整がなされる。前記方法はまた、各種調整を考慮して補正分析物濃度を算出した後、付随のタイムスタンプと共にメモリ内にそれらを記憶させることを含み得る。
使用方法
現在の心不全モニタリング方法のいくつかにおいては、心不全患者が、体重増加、血圧、及び他の徴候を書き留めた後、その患者の治療をする看護士又は医師に電話でそれらの徴候を自己申告する。それらの報告された徴候が、利尿治療を必要とする有害な状態を示す場合、介護者は、電話で治療を処方するか、又は患者にクリニックに来てもらうか選択しなければならない。利尿治療は、利尿薬の投与、及び、様々な組み合わせでACE阻害薬、β遮断薬、イオンチャネル調整薬などの薬剤の投与を含み得る。
【0100】
生理学的分析物の濃度を測定するために血液検査をすることなくよく行われる、一般的に推奨されるものは、服用量を増加させた利尿薬と一服のカリウムを投与することである。この一服のカリウムを投与する論理は、服用量を増加させた利尿薬によって増加した生理的カリウム喪失量をオフセットするために使用されるというものである。この場合、実際の生理的カリウム濃度は知られていないため、その結果、患者のカリウム濃度が、高すぎるか又は低すぎることになる危険性がある。具体的には、もし、介護者には知られることなく、患者のカリウム濃度が既に高い場合、及びカリウムの摂取と排泄が適切にバランスを取れていない場合には、高カリウム血症(カリウム濃度が高すぎる)を患う可能性がある。先に記述したように、高カリウム血症の影響は、時として死につながる心不整脈を含み得る。
【0101】
一実施の形態において、本発明は、埋込み式医療装置を使用し、利尿治療(患者に対して行われる利尿療法など)をモニタリングする方法を含む。この方法は、埋込み式医療装置を使用して、患者の体液中のカリウムイオン濃度を光学的にモニタリングすることを含み得る。前記方法は、患者が低カリウム血症又は高カリウム血症を患っているかどうか判断することを含み得る。一実施の形態において、患者は、心不全患者である。この方法は、化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることを含む。化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、センシング素子を体液に曝露することを含み得る。また、化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、センシング素子を光励起装置で照射して、光帰還信号を生成することも含み得る。化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、さらに、光検出装置を使用し、センシング素子から反射又は放射された光を受光することを含み得る。前記方法のいくつかの実施の形態は、カリウム濃度及び/又は算出リスク指標に関するデータをテレメトリリンクを介して非埋込み式装置に及び/又は保健専門家に伝達することも含む。例えば、1つ以上のメッセージを遠隔患者モニタリング装置に無線で伝達することができる。
【0102】
本発明に係る埋込み式医療装置を使用して利尿治療をモニタリングする方法は、様々な利点を提供し得る。1つの利点は、介護者が、高カリウム血症及び低カリウム血症の危険性を低下させながら、利尿薬及びカリウムの薬用量をより安全にアドバイスすることができることである。この方法は、患者から採血することなく処方される利尿薬とカリウムのバランスを適正なものにすることができる。埋込み式装置によって収集された情報は、テレメトリ/遠隔患者管理システムを介して結びつけられ、患者が医師のオフィスに入室することなく最善の処方を得られるようにする。
【0103】
さらに、一服のカリウムと共に服用量を増加させた利尿薬を投与することによって患者が曝される危険性は、患者の全般的腎機能によって増す可能性がある。腎機能障害を持つ患者にとっては、一服のカリウムによって高カリウム血症になる危険性は、はるかに高いものとなる。正常な腎臓機能を持つ患者にとっては全く安全であろう、カリウム服用量のわずかなアンバランスでさえ、腎機能障害を持つ患者には、不安定化する破滅的な影響を及ぼしかねない。従って、本発明のいくつかの実施の形態における埋込み式医療装置を使用して利尿治療をモニタリングする方法は、埋込み式医療装置によって腎機能を示す分析物の濃度を光学的にモニタリングすることも含み得る。腎機能を示す特定の分析物としては、クレアチニン、尿素、及び尿酸が挙げられ得る。
【0104】
利尿治療をモニタリングする方法の一例を説明したが、当然のことながら、本発明の実施の形態は、他のタイプの治療のモニタリングも含み得る。一例として、本発明の実施の形態は、滴定薬物治療のための方法を含み得る。特に、一実施の形態は、人体への活性剤の投与(delivery)を制御する方法を含み得る。この方法は、埋込み式システムを用いて1つ以上の分析物の生理的濃度を測定すること、及び前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の投与を変更することを含み得る。前記埋込み式システムは、パルス発生器及び化学センサを備え得る。前記化学センサは、センシング素子、励起装置、及び検出装置を備え得る。前記1つ以上の分析物としては、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム又はヒドロニウムが挙げられ得る。前記1つ以上の分析物としては、腎機能を示す分析物が挙げられ得る。前記1つ以上の分析物としては、心機能を示す分析物が挙げられ得る。一実施の形態において、前記活性剤は、利尿薬を含み得る。前記1つ以上の分析物の生理的濃度は、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される体液中の濃度を測定することによって判断することができる。
【0105】
本発明の方法はまた、患者に心不整脈治療を提供することも含み得る。一例として、本発明の方法は、埋込み式化学センサを使用して、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にセンシングすることを含み得る。この方法は、イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することをさらに含み得る。この方法はまた、イオンの生理的濃度に部分的に基づいて、埋込み式パルス発生器から患者へのパルスの送り(delivery)を変更することも含み得る。そして、前記イオンの生理的濃度に関するデータは、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することができる。このイオンの生理的濃度に関するデータは、患者の心肺系に関するデータと組み合わせて、患者の心臓の状態の複合プロファイルを作ることができる。患者の心肺系に関するデータとしては、心電図信号、呼吸速度、加速度計データ、胸廓内インピーダンス、リードインピーダンス、心臓容積、血圧、体重、及び心臓壊死信号が挙げられ得る。
【0106】
心不整脈治療を提供する方法もまた、埋込み式化学センサを使用して、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にモニタリングすることと、前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式心調律装置に送信することと、前記イオンの生理的濃度の一部に基づいて、埋込み式心調律装置から患者にパルスを送ることとも含み得る。
最適化された診断指示方法
当然のことながら、埋込み式化学センサを埋込み式心調律管理(CRM)装置の機能と統合することにより、診断指標に合成されるデータを、以前には実現されなかった有用性と組み合わせることが可能になる。具体例として、前記埋込み式化学センサは、分析物濃度に関するデータを提供することができる一方で、前記CRM装置の機能は、心電図信号などの心臓データを提供することができる。上述のように、二種類のデータは、患者の生理的状態に関する、互いに異なるが関連のある観点を提供する。これら二種類、又は、いくつかの実施の形態においては三種類以上のデータは、組み合わせて患者の状態の複合プロファイル又は複合リスク指標を作ることができる。
【0107】
化学センサデータをCRM装置データと組み合わせることの意義は、多数の例で示すことができる。一例としては、心電図信号の調整と共に、電解質濃度信号の調整を含む方法がある。多い又は不規則な心拍数は、CRM装置機能によって容易に確認される。このデータは、カリウムイオン濃度などの、化学センサからの情報と組み合わされる。上述のように、非常に高い又は非常に低いカリウム濃度の存在下での不規則な心拍数は、いずれか一方の個別の状態よりも、患者にとってより高い危険性を示す。本発明の方法は、この論理をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0108】
別の例は、呼吸速度信号の調整と共に電解質濃度信号の調整を含む方法である。CRM装置機能は、速い呼吸速度を観測及び特定することを含み得る。臨床的に、呼吸速度は、ナトリウムイオンの生理的濃度と関連している可能性があり、患者に関する液量過剰状態を示している可能性がある。さらに、CRM装置機能には、運動が呼吸の原動力となっていないことを確認することができる加速度計からのデータが含まれ得る。確認された速い安静時呼吸速度と体液量過剰信号の組み合わせは、切迫した心肺系発作を示す。本発明の方法は、この理論をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0109】
さらに別の例は、心臓組織壊死を示す分析物の濃度と共に心電図信号ベクトル値の調整を含む方法である。具体的には、CRM装置機能は、心電図波形のベクトル成分値を特定し、これらを正常又は異常ベクトルパターンの瓶に分類することを含み得る。化学センサは、トロポニン、心筋特異的トロポニン、又は心筋細胞(cardiomyocyte)壊死を示すその他の分析物の濃度を特定するように構成することができる。この方法は、形式化されたアルゴリズムの一部として心臓壊死分析物濃度信号と心電図ベクトル分析の組み合わせを含み得る。この方法は、いずれかの信号を単独で分析することによる方法よりも、心筋梗塞を特定するための高い特異性を提供することができる。本発明の方法は、この理論をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0110】
埋込み式化学センサからのデータをCRM装置機能により提供されるデータと組み合わせる具体的方法の数例が提供されているが、当然のことながら、同様にデータを組み合わせることにより、多くの他の方法が可能である。一例として、他の方法は、1つ以上の化学センサ信号を、心電図、胸廓内インピーダンス、加速度計表示活動(accelerometer indicated activity)、加速度計表示状態(accelerometer indicated posture)、心音、リードインピーダンス、心臓容積、及びCRM装置から得られた他の信号と組み合わせることを含み得る。特定の実施の形態において、カリウムイオン濃度は、血圧データと組み合わされる。
自動フィードバック提供方法
ここで説明する方法は、健康状態の安定化、改善、又は管理に適した行動療法又は薬剤介入治療に関して、患者に自動フィードバック(指示やアドバイスなど)を提供するように適応させることができる。一例として、いくつかの方法は、過剰又は不十分なカリウム濃度を検出し、アルゴリズムに供給することにより、介護者の介入なく、疾患に関して患者にメッセージを送ることを含み得る。前記アルゴリズムは、医学的危険性が、わずか又は無視し得る程度に留まる分析物値の範囲内で、食事の変更及び/又は活動の修正に関するアドバイスを患者に提供するように構築することができる。この方法は、より深刻な状態になるか、又は、医療専門家の介入が必要となる前に、患者が生理的傾向を良い方向に向かわせることを可能にする。
【0111】
いくつかの実施の形態において、この方法は、患者が治療薬の服用量をより適切なレベルに調整できるように、患者にアドバイスを提供することを含み得る。この方法はまた、医療専門家が治療薬の服用量を調整できるように及び/又は治療薬を変更できるように、データを医療専門家に提供することも含み得る。
【0112】
前記方法は、患者の現状を、自己管理の範囲内か又は医療専門家の介入を必要とするかに分類することを含み得る。これらのカテゴリーの境界は、前もって決められるか、患者の標準(norms)をモニタリングすることによって適応的に決定されるか、又は患者に最適な効果をもたらすように要望どおりに医療専門家によって設定される。
【0113】
本開示事項において説明される方法は、当該主題の範囲内の、他の方法を除外することを意図するものではない。当該技術分野における当業者は、本開示事項を読み、理解することにより、当該主題の範囲内の他の方法を理解するであろう。
【0114】
当該技術分野における当業者は、発明の様々な実施の形態に関して本明細書に示され説明されているモジュール、電気回路及び方法が、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアの組み合わせを使用して実施され得ることを理解するであろう。それゆえ、示した及び/又は説明したモジュール及び電気回路は、ソフトウェア実行、ハードウェア実行、及びソフトウェア及びハードウェア実行を包含するものとする。
【0115】
尚、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形("
a""an"及び"the")は、本記載内容が特に明確に指定しない限り、複数の指示対象を含む。また、一般に、用語「又は(もしくは、あるいは)」は、その意味において、本記載内容が特に明確に指定しない限り、「及び/又は(もしくは、あるいは)」を含むものとして使用されている。
【0116】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているように、用語「構成される(configured)」は、特定のタスクを行う又は特定の構造を採用するように構築又は構成されるシステム、装置、又は他の構造物を記述するものである。前記用語「構成される(configured)」は、「配置される(arranged)」、「配置及び構成される(arranged and configured)」、「構築及び配置される(constructed and arranged)」、「作製される(constructed)」、「製造及び配置される(manufactured and arranged)」などの他の同様の語句と同じ意味で使用され得る。
【0117】
本明細書中の全ての公報及び特許出願明細書は、本発明が関連する技術分野における当業者のレベルを示すものである。全ての公報及び特許出願明細書は、それぞれの個々の公報又は特許出願明細書が、具体的かつ個別に引用することによって示される場合と同程度に、ここに引用することにより本明細書の一部とされる。
【0118】
本願は、当該主題の改造物及び変形物をカバーすることを意図するものである。当然のことながら、上記記述は、説明を意図したものであって、限定を意図するものではない。当該主題の範囲は、添付の特許請求の範囲が権利を与えられるものと均等なものの全範囲とともにそれら特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0119】
本発明の態様は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0120】
実施例1:ポケット内のイオン濃度測定
この研究の目的は、埋込み式心臓除細動器(ICD)を包囲する線維カプセルの、前記装置を直接取り囲んでいるナトリウム、カリウム及びグルコース濃度に対する潜在的影響を評価することであった。12匹のイヌに、ICD装置を埋め込み、標準の実験手順にしたがってケアした。ある一定の期間(下記表1に特定)の後、インプラント被包組織(又はポケット)内から体液を採取し、対応する血清と比較した。12匹のイヌのうちの8匹から、検査に十分な量の体液を採取した(残りの4匹から採取した体液の量は不十分であった)。前記8匹のイヌから得たサンプルに関し、ラジオメーターABL825血液分析物モニターを使用して、K+、Na+、グルコース、並びに、pH及び濃度を測定した。血清サンプルも12匹の動物から採取し、同様にして、ラジオメーターABL800血液分析物モニターで分析した。そのデータを、下記表1に示し、下記表2にまとめる。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
データは基準範囲に対して相対的なデータを示し、K+濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては、正常な濃度から、わずかに上昇した濃度までが見られた(平均比率127%±16%)。Na+濃度は、血清中及びポケット体液中(平均比率100%±2%)において正常であった。グルコース濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては大きく抑制された(平均比率6%±10%)。pH濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては、正常範囲未満、範囲内、及び範囲を超えてばらつきがあった。本実施例は、K+及びNa+などの生理的イオンが、被包ポケット内から正確に測定され得ることを示している。
実施例2:平面イオン選択光センシング素子
グリセロールを浸潤させたCUPROPHAN(商標)セルロースシート(イリノイ州、シカゴのアクゾ・ノベル・ケミカルズ(Akzo Nobel Chemicals; Chicago,Ill.))を、脱イオン水で洗浄して(10分)、グリセロールを除去する。各シートを、ガラス板上で伸長させ、室温で乾燥させる。
【0124】
A.保護膜
4gのデキストラン(分子量2,000,000)を200mLの脱イオン水中に50℃で溶解させることにより、保護膜溶液を調整する。そして、2gのマラスパースDBOS−4(MARASPERSE DBOS-4R)分散剤(ワイオミング州ロスチャイルドのディアショワ・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Diashowa Chemicals,Inc.; Rothschild,Wis.))を加え、その混合物を振盪する。その後、4gのモナーク−700(MONARCH-700R)カーボンブラック(マサチューセッツ州ウォルサムのキャボット社(Cabot Corp.;Waltham,Mass.))を添加し、超音波処理によってカーボンブラックの均一な水分散液を作る。この分散液に、4gの50%(水性)NaOH溶液を掻き混ぜながら添加する。続いて、脱イオン水中50%エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)溶液6gを混合する。得られた保護膜溶液を、前記CUPROPHAN(商標)膜に均一に噴霧し、乾燥させる。
【0125】
B.架橋
350mLの脱イオン水中85gのDMSO及び3gの50%NaOH溶液からなる溶液を準備する。450gの50%水性EGDGE溶液を加えて混合する。この架橋溶液をCUPROPHAN(商標)シート上に注ぎ、1時間保持した後、脱イオン水ですすぐ。
【0126】
C.HDA(1,6−ヘキサンデジアミン(Hexandediamine))反応
架橋CUPROPHAN(商標)膜を2.0Lの脱イオン水中120gの70%HDAの溶液に2時間浸漬し、脱イオン水ですすいで、過剰HDAを洗い流す。
【0127】
D.FCCCカップリング反応
30mLのDMFに30mgのFCCCを溶解させることにより、色素溶液を調整する。続いて、0.8mLの1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)と190mgのベンゾトリアゾール水和物(HOBt)を加え、15分間攪拌し、その後、0.4mLのN,N−ジイソプロピルアミン(DIEA)を攪拌しながら加える。HDA−官能化CUPROPHAN(商標)シートを脱イオン水から取り出してタオルドライし、24時間染浴槽に浸漬させた後、それらの試験片を取り出し、DMFで洗浄した後、希HCl水溶液(pH2−3.5)で洗浄する。
【0128】
E.センサ−パルス発生器装置
FLEXOBOND(商標)430(カリフォルニア州アービンのベーコン・インダストリーズ社(Bacon Industries,Inc.;Irvine,Calif.))などの2液型ポリウレタン接着剤を使用し、薄い(0.175mm)ポリカーボネートシート(ドイツ国レーヴァークーゼンのバイエル社(Bayer AG; Leverkusen, Germany))に、色素結合CUPROPHAN(商標)シートを積層する。ポリカーボネート側に、CW14(商標)感圧接着剤シート(ウィスコンシン州ラシーンのRSW社、特殊テープ部(RSW Inc.,Specialty Tape Div.;Racine,Wis.))を付着し、剥離ライナーを除去する。穿穴機を使用して積層体からディスクを打ち抜き、このディスクを、センシング素子からのカリウム依存発光を測定するための後述のオプトエレクトロニクスを用いて構成されたパルス発生器の光学窓上に配置する。
【0129】
F.カリウムセンサの光学応答
日本国徳島県のニチア化学工業製又はトヨダ合成株式会社製(商品名レドトロニクス(LEDTRONICS(商標))で製造)のGaN LEDを、パルス発生器内に配置し、30kHzの搬送周波数、0.2秒間のバースト持続時間、5秒間の繰返し率、及び2.5mWの平均出力で振幅変調するように構成する。光を集束させ、帯域通過励起フィルター(例えば、390nm±0.25nm;%T=52%;帯域外ブロッキング(out-of-band blocking)=0.001%T;マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn)のスペクトロフィルム(SpectroFilm)から入手可能)を通過させ、パルス発生器の光学窓を通してセンシング素子まで透過させる。戻された変調蛍光を、同様に集光させ、帯域通過発光フィルター(例えば、スペクトロフィルムから入手可能であるような、475±0.35nm;%T=64%;帯域外ブロッキング=0.001%T)を通過させる。次に、ろ波した(filtered)光信号をパルス発生器内に収容されたS1337−33−BR(商標)フォトダイオード検出器(ニュージャージー州ブリッジウォーターのハママツ社(Hamamatsu Corp.;Bridgewater,N.J.)から入手可能)の活性領域上に集束させる。励起光のほんの一部を検出器装置に直接送り、ニュートラル密度フィルターによって減衰させて、LEDからの基準光信号を提供する。さらに、電子スイッチを使用して、検出器の光電流と周波数発生器からの30kHzの電気的基準信号とを交互にサンプリングする。検出器の出力は、フォトダイオード検出器からの光電流を電圧に変換するサテライトセンサ又はパルス発生器内の電子回路に送られる。相互インピーダンス前置増幅段階で、演算増幅回路を使用して、光電流又は基準電気信号を電圧に変換する。次の段階は、信号をさらに増幅しながら雑音電力を帯域制限するように設計された2段階デリイアニス−フレンド・スタイル(Delyiannis-Friend style)帯域通過フィルターである。そして、増幅された光信号又は基準電気信号は、100kHzでディジタル方式でサンプリングされて処理され、分析物濃度を示す蛍光強度を得る。オプションとして、pHセンサ信号もサンプリングされ、カリウムセンサ信号における小さなpH依存変動を補正するために使用される。
実施例3:ヒドロゲル中イオン選択センシング素子
A.1:1ジメチルアクリルアミド:ビニルジメチルアズラクトン(DMA:VDM)共重合体の調製
210部のメチルエチルケトン(MEK)中70部の2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(ビニルジメチルアズラクトン、VDM;ニュージャージー州プリンストン(Princeton,N.J.)のSNPEから市場にて入手可能)及び70部のジメチルアクリルアミド(DMA)からなる溶液を、0.7部のN,N'−アゾビス(イソブチロニトリル)開始剤(AIBN、VAZOR64として、バージニア州リッチモンドのワコー・ケミカルズ・ユーエスエー(Wako Chemicals USA)から市場にて入手可能)と混合する。その混合液を、5分間、窒素を使用して拡散させた(sparged)後、ジャーの中に封入し、60℃で24時間、回転式乾燥機で乾燥させる。
【0130】
B.4−(p−アジドサリチアミド(p-Azidosalicyamido))ブチルアミン(ASBA)を使用するDMA:VDMのリソグラフィーパターニング
低照明条件下、25mgの4−(p−アジドサリチアミド)ブチルアミン(ASBA、イリノイ州ロックフォードのピアスケミカル社(Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.)から市場にて入手可能)及び10mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドプロモーター(EDC、塩酸塩、イリノイ州ロックフォードのピアスケミカル社)を、0.5mlの95:5(v/v)イソプロパノール:水に溶解させる。この溶液及び1N HCl水溶液一滴を、MEK中50:50のDMA:VDM共重合体(実施例1)の40%(w/w)溶液1mLに添加する。ASBAのブチルアミン部分のアズラクトン官能基への熱的結合を室温で2時間生じさせる。得られた混合液の前記MEK溶液を、PMMA基材上にスピンコーティングし、減圧デシケーター内で15分間乾燥させる。このサンプルを、3分間、フォトマスクを介して365nmで測定された10−30mW/cm2で、紫外線照射にリソグラフィーで露光し、結合ASBAのアジド部分を介して光架橋する。前記マスクを取り除き、前記サンプルを純イソプロピルアルコールで十分に洗浄すると、フォトマスクのパターンに一致するゲルパターンが残る。この二重硬化手法は、ビスアジド架橋剤に比べ、架橋効率を高める。
【0131】
C:アミン−官能性FCCCの調製
半保護モノーN−第三ブチルオキシカルボニル(t−BCC)−プロピレンジアミン(モレキュラー・プローブ−インビトロジェン(Molecular Probes-Invitrogen))は、有機溶媒可溶性カルボン酸類を脂肪族アミン類に変換するのに有用である。反保護脂肪族ジアミンの、FCCCの活性カルボン酸への標準条件下での結合に引き続き、t−BOC基がトリフルオロ酢酸によって定量的に除去される。そして、FCCCの得られた脂肪族アミン誘導体を、直接、アズラクトン官能性ポリマー又はヒドロゲルと反応させる。
【0132】
D:FCCC官能性ヒドロゲルの調製
光架橋組成物の反応性を実証するために、第2のサンプルのアズラクトンヒドロゲルを調整し、以下のように処理する:50nMのアミン−官能性FCCCを、20uLの炭酸−重炭酸バッファー(0.05M、pH9.2)中で溶解させる。針を使用し、光硬化性DMA:VDMコーティング上にこの指示薬溶液の斑点を付ける。このサンプルを、室温で2時間密封加湿容器に入れた後、脱イオン水で洗浄し、脱イオン水中にて10時間インキュベートする。
実施例4:イオンに対し透過性を有するHEMA:PEGMAヒドロゲルフィルムにおけるイオン選択光センシング素子
A:アクリルアミド官能性FCCCの調製
実施例3において説明したように調製したアミン−官能性FCCCを、6−((アクリロイル)アミノ)ヘキサン酸(モレキュラー・プローブ−インビトロジェン)のスクシンイミジルエステルと標準条件下で反応させ、アクリルアミド官能性FCCCを生成する。
【0133】
B:ポリヒドロキシエチルメタクリレート(Polyhema)層の作製
40重量%のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、8.3重量%のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、Mn:約360)、1.5重量%のアクリルアミド官能性FCCC、50%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア(Irgacure)651からなる溶液を、2枚のスライドガラスからなる型に入れる。一方のガラスは、疎水性オクタデカシランで処理した表面を持ち、他方のガラスは、トリメチオキシシリルプロピルメタクリレート(trimethyoxysilylpropylmethacrylate)で処理した表面を持ち、厚さ16μmのスペーサによって分離されている。10分間の紫外線照射による重合の後、前記の疎水的に処理されたスライドガラスを取り除き、残りのスライドガラスに共有結合しているHEMA:PEGMAヒドロゲル膜が残り、共有結合的に取り込まれたFCCC蛍光イオノフォアを構成する。
【0134】
C:光学的保護膜
光学的に、実施例2に記載した光学的保護膜を、実施例2の手順にしたがってHEMA:PEGMAヒドロゲル膜上に貼り付ける(apply)。
実施例5:可塑化PVCポリマーを用いたセンシング素子の調製
A:センシングビーズの調製
30重量%のポリ(塩化ビニル)、PVC及び70重量%のビス(エチルヘキシル)セバケート(BEHS)をベースとする微小ビーズを、噴霧乾燥法を用いて調製する。1重量%のPVCと1重量%のBEHSを含むTHF溶液を、ヒートガンからの加熱気流(heated air stream)の下、噴霧器によって噴霧し、PVC/BEHS粒子(直径2.5±1μm)をサイクロン室において収集する。
【0135】
0.5mgの水素イオン選択クロモイオノフォアIII、1.6mgのNaHFPB及び22.3mgのナトリウムイオノフォア、ビス(12−クラウン−4)を含む50mgのBEHS溶液を、300mgのPVC/BEHSビーズに添加し、完全に混合することにより、Na+/pHセンシング微小ビーズを形成する。
【0136】
50mgのBEHS、0.5mgの水素イオン感受性クロモイオノフォアIII、1.6mgのNaHFPB及び6.3mgのカリウムイオノフォアIII(BME−44)を、0.5mlの1,1−ジクロロメタン(DCM)に溶解させる。得られた溶液を5時間放置し、DCMを蒸発させる。この混合物に、300mgのPVC/BEHS微小ビーズを加えた後、完全に混合することにより、K+/pHセンシング微小ビーズを形成する。
【0137】
50mgのBEHS溶液を、300mgのPVC/BEHSビーズに添加し、完全に混合することにより、光学白色基準ビーズを形成する。
【0138】
B:ヒドロゲル中ビーズ懸濁液
センシング及び光学基準ビーズのいずれも、センシングビーズの凝集を防ぐために、ビーズをヒドロゲルマトリックス中に懸濁させ固定する。2mgのセンシング又は基準ビーズを、1mgのPEG、並びに、30重量%のアクリルアミド、1重量%のN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド及び0.5重量%の光開始剤(イルガキュア2959)を含む1mgのモノマー水溶液とよく混合する。その懸濁液を2枚のスライドガラスの間に配置した後、紫外線照射によって15分間光重合する。
【0139】
C:ポリHEMAをベースとするセンサ本体の作製
スペーサによって分離された2枚のスライドガラスの間にあるモノマー溶液に適用される光重合法を用いて高分子板を作製することにより、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)をベースとするセンサ本体を準備する。得られたポリマーの、ガラス表面に対する強力な付着を防ぐために、オクタデシルシランを有する表面修飾(surface modified)スライドガラスを使用する。前記スライドガラス(25×75×1mm)は、1N HNO3溶液中、70℃で2時間浄化し、冷却した後、ミリQ水ですすいだ。オーブンで乾燥させた後、洗浄されたスライドガラスを1.5gのオクタデシルトリクロロシランと共に1Lのトルエン中に置き、還流させながら6時間加熱する。このようにして、表面修飾スライドガラスは、エタノール及びミリQ水で洗浄され、光重合用の基材として使用される。
【0140】
80重量%のHEMA、8.0重量%のPEGMA(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)、2.0重量%のDEGDMA(ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート)、9.8重量%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア651からなる溶液を、厚さ400μmのスペーサによって分離された2枚の表面修飾スライドガラスから成る型に移す。前記溶液は、10分間の低強度365nm紫外線照射(約2mW/cm2)により、重合されて架橋ヒドロゲルを形成する。重合後、このようにして準備したポリHEMA膜を、型から取り除く。各センシングカプセル用の前記ポリHEMA膜にウェルを作製するために、直径1mmの4つの孔が1.3mmの間隔で線状に配列された、厚さ200μmの黄銅板から成るマスクと共にエキシマレーザを使用し、単一センサ本体にセンサコンパートメントを作る。良好にレーザで穴を開けた後、ウェルを有するポリHEMA膜を脱イオン水で洗浄する。
【0141】
D:センサ窓膜の作製
センサ窓膜を準備するために、32.9重量%のHEMA、16.9重量%のPEGMA、50重量%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア651からなる溶液を、厚さ16μmのスペーサによって分離された疎水性表面を有する2枚のスライドガラスから成る型に入れる。12分間の紫外線照射による重合の後、型のスライドガラスの一方を注意深く取り除く。この場合、厚さ16μmのポリHEMA窓膜が別のスライドガラスの表面上に残る。
【0142】
E.ウェルを備えたセンサ本体の作製
センサ本体を窓膜と付着させるために、スライドガラス上の、上記のようにして作製された窓膜の表面に、10μLの前記モノマー溶液を塗布し広げる。その後、そのセンサ本体を窓膜上に置き、スライドガラスで覆い、大型クリップでクランプする。15分間の紫外線照射により、底部が密封されたウェルを有する、前記ポリHEMAをベースとするセンサ本体が良好に作製される。
【0143】
F.センサウェルの充填及びセンサの作製完了
こうして準備されたセンサ本体を、密封された底部を下にしてスライドガラス上に置き、センサ本体の端部をスコッチテープで固定する。各センサコンパートメントに、3つのウェルを有するセンサ本体用のNa+/pHセンシングビーズ、K+/pHセンシングビーズ、及び光学白色ビーズを、実体顕微鏡下、微小ガラスロッドを用いて充填する。
【0144】
疎水性表面を有するスライドガラス上の窓膜の別の試験片を、上記と同様の方法を用いて準備する。10μLの上記モノマー溶液を、窓膜の表面に塗布し広げる。前記テープを取り除いた後、スライドガラス上のビーズが充填されたセンサ本体を、前記スライドガラスと共に上記のように準備された窓膜で覆い、大型クリップでクランプする。15分間の紫外線照射により、センサ本体内のビーズを含む全てのウェルを別の窓膜で密封する。この時点で、これらのセンサの実験のための準備が整う。
【0145】
G.K+センサの光学応答
pH7.4のトリス塩酸バッファーにおいて光学K+センサの反射スペクトルを、光ファイバスペクトロメータ(例えば、BIF400UV−VIS、カリフォルニアのオーシャン・オプティクス(Ocean Optics,CA))を用いて測定する。0mM〜10mMK+の範囲に渡ってカリウムイオン濃度が高くなるにつれ、505nmでの反射率(クロモイオノフォアIIIの酸性型に対応)は低下する一方で、580nmでの反射率(クロモイオノフォアIIIの塩基型に対応)は高くなる。前記白色ビーズは、これらの測定に際し、光学基準として使用することができる。オプションとして、505及び580nmでの反射率の比を、カリウムイオン濃度の算出に使用することができる。
【0146】
また、膜の光学的な特徴付け(optical characterization)は、蛍光分光によって行われる。膜がカリウムイオンと接触すると、膜からプロトンが放出され、蛍光特性において測定可能な変化をもたらす。発光ピークは、647nm及び683nmで観察される。前者は、クロモイオノフォアIIIのプロトン化体に対応し、後者は脱プロトン化体に対応する。サンプル中のK+濃度が上昇すると、647nmでのプロトン化ピークは低くなり、683nmでの脱プロトン化ピークは高くなる。レシオメトリック分析(ratiometric analysis)は、フォトブリーチング及びランプ強度のばらつきの影響を最小限にできることが報告されている。従って、2つのピーク(647及び683nm)の強度比は、絶対蛍光の代わりに使用される。
【0147】
H.センサ構造物
上記センサビーズをベースとするコーティング可能な精密センサ構造物が作製される。その方法は、(1)アクリルアミド及びビス−アクリルアミドモノマー及びポリエチレングリコールオリゴマーを、センサビーズ又はセンシング色素、及び熱又は光化学硬化剤と混合すること、(2)前記混合液をセンサバッキング上にコーティングすること、(3)硬化を開始し、ヒドロゲルの形成及びセンサバッキング上のウェルへのヒドロゲルの付着を促進させること、(4)得られたヒドロゲル組成物へのHEMA窓膜の形成及び付着を含む。
【0148】
多層積層センサが作製される。その方法は、(1)オプションとして酢酸セルロース膜に、窓膜としての熱又は光架橋されたHEMAポリマーを含浸させること、(2)分割されたスペーサ層が透析膜に接着され、センサビーズが充填された空間を有すること、(3)光学窓が分割されたスペーサ層に接着されることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態における化学センサを備えた埋込み式医療装置(IMD)の態様を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図5】図5は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図6】図6は、様々な実施の形態における、ヘッダーに化学センサを備えた埋込み式医療装置(IMD)を示す。
【図7】図7は、様々な実施の形態における、埋込み式医療装置(IMD)の本体と一体化された化学センサを備えた前記装置を示す。
【図8】図8は、様々な実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図11】図11は、生理学的分析物濃度を測定する装置の一実施の形態を概略的に示す。
【図12】図12は、本発明の一実施の形態における、光センサを操作するためのデューティサイクルスキームを概略的に示す。
【技術分野】
【0001】
本件出願は、米国を除くすべての指定国における出願人である、米国企業カーディアック ペースメーカーズ、インコーポレイティドの名義において、また、指定国が米国である場合のみ、米国市民ケ―ン、マイケル、ジョン、米国市民フォン アルクス、ジェフリー、アレン、米国市民ベントセン、ジェームス、グレゴリ―、及びカナダ市民クォック、ジョナサン ティー.を出願人として、2007年5月15日付でPCT国際特許出願として出願されており、2006年5月17日付で出願された「化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法」と題する米国特許出願第11/383,933号明細書、及び2006年5月17日付で出願された「化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法」と題する米国特許出願第11/383,926号明細書の優先権を主張するものであって、その双方の内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0002】
本開示は、概して、埋込み式医療装置に関し、さらに詳細には、化学センサを備えた埋込み式医療装置及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心調律管理装置(management system)などの埋込み式医療装置(IMD)は、一般に、患者に処置又は治療を提供するのに使用される。心調律管理装置は、ペースメーカーを含み得る。ペースメーカーは、ペーシングパルスと呼ばれる適時連続した(timed sequences of)低エネルギー電気刺激を、心臓内又はその周辺に配置された1つ以上の電極を有する血管内リードワイヤー又はカテーテル(「リード」と呼ぶ)を介して心臓に送る。そのようなペーシングパルスに応じて心収縮が起こる。ペースメーカーは、徐脈性不整脈の、すなわち、心臓の鼓動が遅すぎるか不規則である患者の治療によく使用される。そのようなペースメーカーはまた、心房及び心室の収縮を調整してポンプ効率を向上させる。
【0004】
心調律管理装置はまた、ポンプ効率を向上させるための、心臓の脱分極の空間性(spatial nature)を調整する心臓再同期療法(CRT)装置も含み得る。例えば、CRT装置は、同一心腔の異なった位置に適時(appropriately timed)ペーシングパルスを送り、心腔の収縮をより良く調整する場合もあるし、また、CRT装置は、異なる心腔に適時ペーシングパルスを送り、これらの異なる心腔が共に収縮する状態を改善する場合もある。
【0005】
心調律管理装置はまた、より高いエネルギー電気刺激を心臓に送ることが可能な除細動器も含む。そのような除細動器は、そのような刺激の送りを、センシングされた固有の心臓活動信号に同期させる電気除細動器を含む。除細動器は、頻脈性不整脈の、すなわち、心臓の鼓動が速すぎる患者の治療によく使用される。除細動器は、時として除細動カウンターショックと呼ばれ、また単に「ショック」とも呼ばれる高エネルギー電気刺激を送ることができる。カウンターショックが頻脈性不整脈を中断し、心臓に血液の効率的ポンピングのための正常なリズムを回復させる。ペースメーカー、CRT装置及び除細動器の他に、心調律管理装置はまた、これらの機能を組み合わせた装置、並びにモニター、ドラッグデリバリー装置及びその他の埋込み式もしくは外部のシステム、あるいは心臓の診断又は治療用の装置をも含み得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一定の生理学的分析物は、埋込み式医療装置が治療するように設計された、疾患の多くに影響を与える。一例として、カリウムイオン濃度は、患者の心調律に影響し得る。従って、医療専門家は、心調律障害を診断する際に、生理的カリウムイオン濃度を評価することが多い。しかし、カリウムなどの分析物の生理的濃度を測定するには、一般に、患者から採血する必要がある。採血は、通常、クリニック又は病院で行われることから、一般に、患者は物理的に医療施設に出向く必要がある。その結果、重要であるにもかかわらず、生理学的分析物濃度は、散発的にしか測定されない場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において開示されるのは、とりわけ、体液中の化学的濃度をセンシングするための埋込み式医療装置(IMD)である。一実施の形態において、本発明は、パルス発生器及び前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサが体液中のイオン濃度を検出するように構成された埋込み式医療装置を含む。前記化学センサは、センシング素子、光励起(optical excitation)装置、及び光検出装置を含み得る。
【0008】
一実施の形態において、本発明は、パルス発生器及び前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサが体液中のイオン濃度を検出するように構成された埋込み式心調律管理装置を含む。前記化学センサは、センシング素子、光励起装置、及び光検出装置を含み得る。
【0009】
一実施の形態において、本発明は、患者に対して心不整脈治療を提供する方法を含む。この方法は、埋込み式化学センサを用いて、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的に測定することを含み得る。この方法はさらに、前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することを含み得る。また、この方法は、部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて患者に対し前記埋込み式パルス発生器から治療を施すことも含み得る。
【0010】
一実施の形態において、本発明は、利尿治療モニタリング方法を含む。この方法は、患者の体液中のイオンの生理的濃度を、埋込み式化学センサを用いて光学的にセンシングすることを含み得る。また、この方法は、前記イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することも含み得る。この方法はさらに、部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記患者に対し前記利尿治療の実施を変更することを含み得る。
【0011】
一実施の形態において、本発明は、人体へ活性剤を送ることを制御する方法を含む。この方法は、パルス発生器、並びに、センシング素子、励起装置、及び検出装置を含む化学センサを備えた埋込み式システムを用いて、1つ以上の分析物の生理的濃度を測定することを含み得る。この方法はさらに、前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の送りを変更することを含み得る。
【0012】
この「課題を解決するための手段」は、本願教示事項の一部の概要であり、当該主題の唯一かつ完全な対処法(treatment)であることを意図するものではない。さらなる詳細は、「発明を実施するための最良の形態」及び特許請求の範囲に記載されている。他の態様については、以下の「発明を実施するための最良の形態」を読んで理解し、その一部となっている図面を参照することにより(いずれも限定を意味するものではない)、当技術分野における当業者にとっては明白となるであろう。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本出願人による2003年9月30日付け出願の米国特許出願第10/677,144号明細書及び2003年1月2日付け出願の米国特許出願第10/334,283号明細書の開示事項は、引用することによって本明細書の一部とされる。
【0014】
生理学的分析物濃度は、多くの医学的疾患の診断及び治療のいずれにとっても重要なデータポイントである。例えば、カリウムイオン濃度についての知見は、心不整脈の正確な診断にとって重要であり得る。心臓細胞の興奮サイクルは、それらの静止電位や、心臓細胞の細胞膜におけるイオンチャネル(カリウム、ナトリウム及びカルシウムなど)の活動によって影響される。一例として、カリウムイオンチャネルは、心臓細胞を、活動電位から静止電位に戻す上で重要な役割を果たす。血漿中のカリウム濃度が正常な生理学的範囲にある場合、カリウムイオンチャネルは効果的に機能することができる。不運なことに、血漿中のカリウム濃度が上昇すると(「 HYPERLINK "http://www.free-definition.com/Hypokalemia.html" \o "Hypokalemia" 高カリウム血症」)、心臓細胞膜を挟んでのカリウムの濃度勾配が減少し、心臓細胞は一般に脱分極し非興奮性となる。対照的に、カリウム濃度が低い場合(「 HYPERLINK "http://www.free-definition.com/Hypokalemia.html" \o "Hypokalemia" 低カリウム血症」)、心臓細胞膜を挟んでのカリウムの濃度勾配が増加し、静止電位から過分極することになる。低カリウム血症は、心房細動などの不整脈を引き起こし得る。よって、カリウムイオン濃度についての知見は、心調律障害の正確な診断をする上で有用であり得る。同様に、ナトリウムやカルシウムなどの、他の生理的イオンの濃度も、心不整脈の診断及び治療において重要であり得る。
【0015】
心調律障害以外でも、イオンセンシングは、薬物治療モニタリング、腎機能モニタリング、薬剤(心不全薬など)滴定、心不全代償不全モニタリング、及び食事摂取又は腎排泄の変動によって生じる主な電解質平衡異常の観察との関連においても有用であり得る。
【0016】
本発明の実施の形態は、体液中の医療上関連のある分析物に関する濃度データの収集に使用することができる。特に、本発明の実施の形態は、電気パルス及び/又はショック治療を送るパルス発生器と、このパルス発生器と通信する化学センサとを備えた埋込み式医療装置を含み得る。前記化学センサは、体液中のイオン濃度を検出するように構成することができ、センシング素子、光励起装置、及び前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置を含み得る。
【0017】
埋込み式心調律管理装置と化学センサの機能を統合することにより、治療上の利点を提供することができる。埋込み式心調律装置によって生成されたデータや、化学センサによって生成されたデータは、患者の生理的状態に関し、互いに異なる(orthogonal)が関連のある観点を提供する。これらの観点を組み合わせることにより、患者の健康への更なる洞察を保健専門家に提供することができる。単なる一例として、非常に高い又は非常に低いカリウム濃度下での不規則な心拍数は、いずれかの状態が単独で示される場合よりも、患者にとって危険度が高いことを示す。本発明の様々な実施の形態は、危険性を迅速に確認することができ、かつ、いくつかの実施の形態においては、適切な場合、保健専門家に伝えられるように、カリウム濃度などの分析物濃度と心不整脈の双方を検出することができる。
【0018】
生理学的分析物の連続的又はほぼ連続的なモニタリングにより、治療上の利点を提供することができる。通常、分析物の生理的濃度の測定方法は、患者からの採血を伴う。通常、採血はクリニック又は病院で行われる。従って、一般的に、患者は医療施設を訪れなければならず、その結果、生理学的分析物濃度は、一般的に、散発的にしか測定されない。よって、通常、臨床医には、特定の日のみに関する患者の状態を示す散発的な断片データのみが提示される。この断片データは有用ではあるが、より長い連続的な期間に渡ってデータを得ることは、食事、活動、薬剤などによって生じ得る周期的変動並びに傾向をより正確に反映することができるため、有用性のより高いものとなり得る。化学センサを備えた埋込み式医療装置を含む、本発明の様々な実施の形態は、分析物濃度に関する連続的な又は半連続的なデータを臨床医に提供するために使用することができる。
【0019】
医療装置が、宿主(host)に埋め込まれる場合、宿主の免疫系が異物の存在を感知し、異物反応と称される反応を始める。数時間以内に、挿入された装置の領域における血小板の活性化及び粘着が起こり、続いて、血小板顆粒から走化性物質及び増殖因子の放出が起こる。そして、顆粒球及び単核食細胞がその領域に移動する。続いて、その部位は、線維芽細胞に浸潤される。最初の数週間以内に、線維芽細胞が増殖し、無血管性結合組織外膜、すなわち「ポケット」を形成し始めるコラーゲンを産生する(lay down)。このプロセスは、数か月間続くこともあり、一般に、厚さ50μm〜200μmの壁を有する無血管性ポケット内に前記医療装置は完全に内包されることになる。
【0020】
残念ながら、化学センサを備えた慢性埋込み式医療装置は、異物反応の結果として障害が生じ得る。ポケット壁自体は、血管新生化しにくく、高度に血管新生化した組織と医療装置とが適合する(interface)ことを妨げる働きをする。高度に血管新生化した組織と適合しなければ、前記医療装置は、ポケット外部の生理的状態を正確に検出することができない場合がある。一例として、グルコースは、ポケット壁を比較的横断しにくいことが知られており、従って、ポケット内のグルコース濃度は、ポケット外部の生理学的グルコース濃度を正確に反映しない。よって、大半の埋込み式グルコースセンサは、無血管性ポケットがその周囲に形成されるにつれ、次第に不正確になる。しかし、下記実施例1に詳述しているように、本発明者らは、ナトリウムやカリウムイオンなどのイオンが、ポケット壁を横断する際、グルコースとは異なる挙動を示すことを発見した。具体的には、実施例1は、ナトリウムやカリウムなどのイオンが、ポケット壁を十分に横断することができ、ポケット壁内から得られるそれらの生理的濃度に関し正確な測定を可能にすることを示している。よって、ナトリウムやカリウムなどの生理的イオンを検出する化学センサは、埋込み式心調律管理装置などの慢性埋込み式医療装置と一体化することができる。
【0021】
異物反応と関連した問題と密接な関係があるのは、埋込み式医療装置の生物付着に関連した問題である。生物付着には、埋込み式装置の表面上へのタンパク質、脂肪、及び/又は炭水化物などの生体分子の蓄積が含まれる。理論に縛られることを意図するわけではないが、生物付着は、慢性的に埋め込まれている電気化学的(例えば、電位差計による)化学センサとの関連で応答の損失及びドリフトにつながると考えられる。イオン選択電極に関して、測定起電力は、主に、サンプルと膜相の界面を挟んでの電位変化に左右される。この界面の測定起電力は、センサ表面上のタンパク質や他の生体分子の堆積によって低下し得る(can become compromised)。さらに、イオン選択電極において、センサ膜の大部分には、一般に、公知の過剰の分析物が含浸する。ネルンスト応答は、有機界面濃度が、サンプル濃度に応じて著しく変化しない場合のみ見られる。緊急の測定に関しては、この状態が維持される。しかし、長期モニタリングに際しては、前もって含ませた分析物が、センサフィルムから浸出し、較正が損なわれる可能性がある。
【0022】
対照的に、搬送波を使用しない(non-carrier)及び搬送波を使用する(carrier based)光センシング素子のいずれも、センシング素子の大部分における濃度変化に依存する。従って、光検出方法は、一般に、界面現象に依存する電気化学的化学センサよりも生物付着問題に左右されないものと考えられる。
【0023】
当然のことながら、分析物濃度のセンシングは、特定の分析物又は複数の異なる分析物に対して行われ得る。一実施の形態においては、センシングされる分析物は、心臓の健康に関連する1つ以上の分析物である。一実施の形態においては、センシングされる分析物は、腎臓の健康を示す1つ以上の分析物である。センシングされる分析物は、イオン又は非イオンであり得る。センシングされる分析物は、カチオン又はアニオンであり得る。センシング可能な分析物の具体例としては、酢酸(酢酸塩)、アコニット酸(アコニット酸塩)、アンモニウム、血中尿素窒素(BUN)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、臭素酸塩、カルシウム、二酸化炭素、心筋特異的なトロポニン、塩化物、コリン、クエン酸(クエン酸塩)、コルチゾール、銅、クレアチニン、クレアチニンキナーゼ、フッ化物、ギ酸(ギ酸塩)、グルコース、ヒドロニウムイオン、イソクエン酸塩、乳酸(乳酸塩)、リチウム、マグネシウム、マレイン酸(マレイン酸塩)、マロン酸(マロン酸塩)、ミオグロビン、硝酸塩、一酸化窒素、シュウ酸(シュウ酸塩)、酸素、リン酸塩、フタル酸塩、カリウム、ピルビン酸(ピルビン酸塩)、亜セレン酸塩、ナトリウム、硫酸塩、尿素、尿酸及び亜鉛が挙げられる。この方法によってセンシングされる無機カチオンとしては、これらに限定されないが、ヒドロニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、銀イオン、亜鉛イオン、水銀イオン、鉛イオン及びアンモニウムイオンが挙げられる。この方法によってセンシングされる無機アニオンとしては、これらに限定されないが、炭酸アニオン、硝酸アニオン、亜硫酸アニオン、塩素アニオン及びヨウ素アニオンが挙げられる。この方法によってセンシングされる有機カチオンとしては、これらに限定されないが、ノルエフェドリン、エフェドリン、アンフェタミン、プロカイン、プリロカイン、リドカイン、ブピバカイン、リグノカイン、クレアチニン及びプロタミンが挙げられる。この方法によってセンシングされる有機アニオンとしては、これらに限定されないが、サリチル酸塩、フタル酸塩、マレイン酸塩及びヘパリンが挙げられる。この方法によってセンシングされる中性分析物としては、これらに限定されないが、アンモニア、エタノール及び有機アミン類が挙げられる。一実施の形態において、センシングすることができるイオンとしては、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム及びヒドロニウム(pH)が挙げられる。特定の実施の形態においては、ナトリウム及びカリウム双方の濃度が測定される。別の実施の形態においては、マグネシウム及びカリウム双方の濃度が測定される。
【0024】
いくつかの実施の形態において、分析物の生理的濃度は直接センシングされる。他の実施の形態においては、分析物の生理的濃度は間接的にセンシングされる。一例として、特定の分析物の代謝体を、その特定の分析物自体の代わりにセンシングすることができる。他の実施の形態においては、検出プロセスを簡易にするため、分析物を別の形態に化学的に変換することができる。一例として、酵素を使用し、分析物を検出し易い別の化合物に変換することができる。例えば、アンモニア及びN−メチルヒダントインへのクレアチニン加水分解は、クレアチニンデイミナーゼによって触媒作用を及ぼされ、その結果得られるアンモニアは、化学センサによって検出することができる。別の実施例として、グルコノラクトン及び過酸化水素へのグルコースの酸化は、グルコースオキシダーゼによって触媒作用を及ぼされ、その結果得られる過酸化水素は、化学センサによって検出することができる。いくつかの実施の形態において、前記酵素は、化学センサからの浸出(leaching)を防ぐために固定化されている。
【0025】
次に、図1を参照すると、化学センサ104を備えた埋込み式医療装置(IMD)102の概略図が示されている。様々な実施の形態において、IMD102は、ペースメーカー、心臓再同期療法(CRT)装置、リモデリング制御治療(RCT)装置、電気除細動器/除細動器、又はペースメーカー‐電気除細動器/除細動器などの心調律管理装置を含み得る。1つの典型的な心調律管理装置が、2005年8月9日に発行された同一出願人による米国特許第6,928,325号明細書に開示されており、その内容は、ここに引用することにより本明細書の一部とされる。図1に示す実施の形態において、化学センサ104はIMD102と一体化されている。化学センサ104は、体液中のイオンなどの分析物の濃度を検出するように構成されている。体液としては、血液、間質液、血清、リンパ液及び漿液が挙げられる。化学センサ104は、センシング素子108を備えている。化学センサ104はまた、励起装置106及び検出装置110も備えている。化学センサ104は、比色分析及び/又は蛍光分析を含む様々な方法で機能するように構成することができる。
【0026】
当然のことながら、化学センサは、様々な他の方法で機能するように構成することができる。例えば、光化学センサは、体組織又は体液を直接照射した後、その結果得られるスペクトル感度を分析して、分析物濃度を求めるように構成することができる(例えば、直接分光法)。しかし、理論に縛られることを意図するわけではないが、そのような直接分光法には、一般に、生物付着に関連する時間的信号ドリフト及び/又はバックグラウンド干渉を含む、精度を低下させ得る問題が生じることが考えられる。
【0027】
励起装置106は、センシング素子108を照射するように構成され得る。一実施の形態において、励起装置106は、発光ダイオード(LED)を備える。いくつかの実施の形態において、励起装置は、帰還信号を放射するのに十分な時間、最大吸収波長で又はその付近の波長でセンシング素子(単数又は複数)を励起するGaAs、GaAlAs、GaAlAsP、GaAlP、GaAsP、GaP、GaN、InGaAlP、InGaN、ZnSeもしくはSiC発光ダイオード又はレーザダイオードなどの固体光源を備える。他の実施の形態において、励起装置は、白熱部品を含む他の発光部品を備え得る。いくつかの実施の形態において、励起装置106は、導波路を備え得る。励起装置106はまた、1つ以上の帯域通過フィルター及び/又は集光光学系も備え得る。
【0028】
いくつかの実施の形態において、励起装置は、帯域通過フィルターを有する複数のLEDを備えており、LED−フィルターの各組み合わせが、異なる中心周波数で放射する。様々な実施の形態によれば、LEDは、異なる中心周波数で作動し、測定の間、連続的にオン/オフを繰り返し、センシング素子を照射する。複数の異なる中心周波数により連続して測定するために、単一の、フィルターの無い検出器を使用することができる。
【0029】
センシング素子108は、1つ以上のイオン選択センサを備え得る。対象となる生理学的分析物は、センシング素子108内に拡散し、イオン選択センサと結合して、蛍光又は比色反応を生じ得る。典型的なイオン選択センサについては、下記でさらに十分に説明する。
【0030】
検出装置110は、センシング素子108から受光するように構成することができる。一実施の形態において、検出装置110は、受光するためのコンポーネントを含む。一例として、いくつかの実施の形態において、検出装置110は、電荷結合素子(CCD)を含む。他の実施の形態において、検出装置は、フォトダイオード、接合型電界効果トランジスタ(JFET)型光センサ又は相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光センサを含み得る。一実施の形態において、検出装置110は、光センシングコンポーネントのアレイを含む。いくつかの実施の形態において、検出装置110は、導波路を含み得る。検出装置110はまた、1つ以上の帯域通過フィルター及び/又は集光光学系も含み得る。一実施の形態において、検出装置110は、1つ以上のフォトダイオード検出器を含み、それぞれ特定の波長域に同調された光学帯域通過フィルターを備えている。
【0031】
励起装置及び検出装置は、光源から、1つ以上のセンシング素子に対し、又は同時にセンシング素子及び参照チャンネル(reference channel)に対し、励起光を導く二分岐光ファイバーを用いて一体化することができる。帰還ファイバー(return fibers)は、プロセッサによる分析のために、センシング素子(単数又は複数)及び参照チャンネルから1つ以上の光学検出器にエミッション信号を導くことができる。別の実施の形態において、励起装置及び検出装置は、プロセッサによる分析のために、励起光を光源からセンシング素子に導き、放射光又は反射光をセンシング素子から光学検出器に導く集束光学レンズ及びビームスプリッター装置を用いて一体化されている。
【0032】
いくつかの実施の形態において、検出装置110は、センシング素子108の励起装置106と同じ側に配置される。別の実施の形態において、検出装置110は、センシング素子108の励起装置106と反対の側に配置される。当然のことながら、コンポーネントの多くの異なる物理的配置が可能である。
【0033】
本発明の実施の形態は、パルス発生器本体と共に配置されるか、ヘッダーを介してパルス発生器本体に接続されたリード上に配置されるか、又はパルス発生器本体と有線もしくは無線で通信するセンサモジュール内に別途配置される、化学センサを有する埋込み式医療装置を含み得る。
【0034】
図2は、様々な実施の形態における、集積化学センサ203と共に配置されるパルス発生器202を有する埋込み式システム200を概略的に示す。本明細書において使用されている用語「パルス発生器」とは、ペーシング及び/又はショック治療を送るための電源及び電気回路を含む、心調律管理装置又は神経学的治療装置などの埋込み式システムの一部又は複数部分のことをいう。パルス発生器202は、化学センサ203と通信するコントローラ回路210(パルス発生器回路などのコンポーネントを含む)と、コントローラ回路210及び外部モジュール220(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路212と、コントローラ回路210と通信するメモリ回路214とを含み得る。化学センサ203は、センシング素子204、光励起装置206及び光検出装置208を備えている。埋込み式システム200は、コントローラ回路210(又はパルス発生器回路)を介してパルス発生器202に連結された少なくとも1つの埋込み式リード222を備え、前記少なくとも1つの埋込み式リード222は、組織を電気的に刺激することのできる少なくとも1つの埋込み式電極224に接続されるように構成し得る。しかし、当然のことながら、本発明の実施の形態は、リードのない埋込み式電気除細動器−除細動器といった、ペーシングリードを含まない、心調律管理装置などの埋込み式システムも含み得る。
【0035】
様々な実施の形態において、コントローラ回路、テレメトリ回路、及びメモリ回路は、装置本体又はハウジング内にある。いくつかの実施の形態において、化学センサ203、又はそのコンポーネントのいくつかは、装置本体又はハウジング内に配置される。いくつかの実施の形態において、化学センサ203、又はそのコンポーネントのいくつかは、装置本体上又は装置本体の開口部に配置される。他の実施の形態において、光励起装置206及び光検出装置208は、装置本体内に配置することができ、センシング素子204は、装置本体の外部に配置される。そのような一実施の形態においては、光励起装置206、センシング素子204、及び光検出装置208の間の光通信は、導波路、光学レンズ、又は光学窓によって維持される。例えば、光学レンズ又は光学窓(透明部材)は、装置本体上の開口部内に配置することができ、センシング素子は、レンズ又は窓の外部に光学的に連結することができ、かつ、光励起装置及び光検出装置は、レンズ又は窓の内部に光学的に連結することができる。
【0036】
図3は、化学センサ303に(例えば、電気的に又は光学的に)連結されているが離れている、パルス発生器302を有する埋込み式システム300の一実施の形態を示す。パルス発生器302は、化学センサ303と通信するコントローラ回路310と、コントローラ回路310及び外部モジュール320(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路312と、コントローラ回路310と通信するメモリ回路314とを備え得る。化学センサ303は、センシング素子304、光励起装置306、及び光検出装置308を備える。埋込み式システム300は、パルス発生器302に接続された、少なくとも1つの埋込み式リード322を含み、少なくとも1つの埋込み式リード322は、組織を電気的に刺激することのできる、少なくとも1つの埋込み式電極324に接続されるように構成されている。埋込み式システム300は、パルス発生器302を化学センサ303と電気的に又は光学的に連結する化学的センシングリードを備え得る。
【0037】
図4は、化学センサ403と無線通信するパルス発生器402を有する埋込み式システム400の一実施の形態を示す。パルス発生器402は、コントローラ回路410と、コントローラ回路410、化学センサ403及び外部モジュール420(プログラマモジュールなど)と通信するテレメトリ回路412と、コントローラ回路410と通信するメモリ回路414とを備え得る。化学センサ403は、センシング素子404、光励起装置406及び光検出装置408を備えている。埋込み式システム400は、パルス発生器402に接続された少なくとも1つの埋込み式リード422を備え、少なくとも1つの埋込み式リード422は、組織を電気的に刺激することのできる少なくとも1つの埋込み式電極424に接続されるように構成され得る。本実施の形態において、パルス発生器402は、化学センサ403と無線通信する。当然のことながら、無線通信は、高周波リンク、超音波リンク、音響リンクなどを含む様々な方法によって実現される。いくつかの実施の形態において、化学センサ403は、独自の内部電源及び無線通信又は音響通信機能(無線通信リンク、超音波通信リンク、及び/又は音響通信リンクを有する)を備えた内臓型装置内にあってもよい。
【0038】
図5は、パルス発生器502及びリード522と一体化された化学センサ503を有するシステム500を含む一実施の形態を示す。リード522は、パルス発生器502に連結されている。化学センサ503は、リード522の近接端部と遠心端との間の任意の点でリード522に連結することができる。一実施の形態において、化学センサ503は、リード522の遠心端に連結される。前記化学センサは、少なくとも1つのセンシング素子504と、少なくとも1つの光励起装置506と、少なくとも1つの光検出装置508とを備えている。
【0039】
図6は、ヘッダー652に集積化学センサ603を備えた埋込み式医療装置(IMD)600の一実施の形態を示す。IMD600は、ハウジング、すなわち本体654を備える。この実施の形態において、化学センサ603は、IMD装置ヘッダー652に位置し、そして、これがハウジング654に連結されている。図7は、装置ハウジング754上に配置された集積化学センサ703を備えた埋込み式医療装置(IMD)700の一実施の形態を示す。この実施の形態において、化学センサ703は、装置ハウジング754に連結されている。様々な実施の形態によれば、心不整脈の矯正用電気回路は、前記励起装置と共通の電池を使用する。様々な実施の形態によれば、心不整脈の矯正用電気回路は、直接又は間接的に前記検出装置と通信するように構成されている。
【0040】
当然のことながら、前記センシング素子は、様々な構造配置を有していてもよい。次に、図8を参照すると、いくつかの実施の形態におけるイオン濃度測定用センシング素子800の断面図が示されている。センシング素子800は、光透過性バッキング層825、バッキング層825の下の接着剤層又は接着層827、膜に付着させた指示素子(indicator element)815、及び被膜層805を含む。
【0041】
指示素子815は、下記にさらに十分に説明するように、ポリマー支持マトリックス及び1つ以上のイオン選択センサを備え得る。生理学的分析物は、被膜層805を介して、前記イオン選択センサに結合し蛍光又は比色反応を生成する指示素子815内に拡散し得る。
【0042】
バッキング層825は、センシング素子800を支持する(例えば、剛性及び取扱い性能)ように構成し得る。バッキング層825は、血液、間質液、又はキャリブレーション溶液などの、標的分析物が存在する溶液に対し、透明及び実質的に不透過性であるか、又は被膜層805よりも透過性がかなり低いものであり得る。バッキング層825は、指示素子815からの光信号などの単一又は複数信号を通過させることがでる。バッキング層825に特に有用な構成材料としては、ポリエステル類、ポリカーボネート類、並びに、これらに限定されないが、ポリエーテルスルホン類及びポリフェニルスルホン類を含むポリスルホン類、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルペンテン類などのような高分子材料が挙げられる。
【0043】
バッキング層825は、指示素子815に接着接合又は熱融着することができる。バッキング層825が指示素子815に接着接合されている実施の形態において、接着剤は、センシング素子800の励起に使用される光及びそこから放射又は反射された光に対して本質的に透過性を有し得る。典型的な接着剤は、フレキソボンド431(FLEXOBOND431(商標))ウレタン接着剤(カリフォルニア州アービンのベーコン社、(Bacon Co.,Irvine,Calif.))である。
【0044】
接着剤層又は接着層827は、センシング素子800を基材に連結する役割を果たし得る。接着剤層又は接着層827は接着剤を含み得る。この接着剤は、センシング素子800の励起に使用される光及びそこから放射又は反射された光に対して本質的に透過性を有し得る。典型的な接着剤は、FLEXOBOND431(商標)ウレタン接着剤(カリフォルニア州アービンのベーコン社)である。
【0045】
被膜層805は、対象となる分析物に対して透過性を有する物質を含み得る。被膜層805は、生体内においてセンシング素子800を包囲する組織から指示素子815を光学的に分離するように、不透明であり得る。また、別個の不透明層を、被膜層805の上又は下に配置することもできる。被膜層805は、不透明化剤と共に高分子材料を含み得る。典型的な不透明化剤としては、カーボンブラック、又は炭素系不透明化剤、酸化鉄、金属フタロシアニン類などが挙げられる。特定の実施の形態において、前記不透明化剤は、カーボンブラックである。不透明化剤は、所望の不透明度を提供し所望の光分離を提供するのに有効な量で、被膜層805又は別個の層に実質的に均一に分散させることができる。センシング素子800はまた、インクジェット技術又はインクスクリーニング技術などの様々な技術を用いて塗布される不透明インクコーティングも含み得る。センシング素子800は、黒膜(black membrane)も備え得る。例えば、ブラックデュラポア(DURAPORER)膜(後に黒インクで処理する白膜(white membrane)としてミリポア(Millipore)から入手可能)を備え得る。
【0046】
図9は、様々な実施の形態における、分析物濃度測定用センシング素子850の断面図を示す。センシング素子850は、第1の指示素子865及び第2の指示素子870を含む。一実施の形態において、第1の指示素子865は、分析物指示素子であり、第2の指示素子870は、光学的参照目的の、又はより一般的には陰性対照(negative control)としての分析物非感受性素子であり得る。別の実施の形態において、第1の指示素子865は、1つの分析物に特異的であり、一方、第2の指示素子870は、対象となる異なる分析物に特異的である。別の実施の形態において、指示素子865及び870は、指示アレイを形成する分析物感受性及び非感受性素子を含む他の指示素子を伴い得る。いくつかの実施の形態においては、複数の分析物の濃度をセンシングすることができる。いくつかの実施の形態においては、例えば、1〜20の分析物の濃度をセンシングすることができる。
【0047】
図9に示す実施の形態において、体液からの分析物は、膜855を通って拡散し、前記指示素子内に配置されたイオン選択センサと可逆的に結合する。多くの異なるイオン選択センサ又はシステムが使用可能である。典型的なイオン選択センサ及びシステムについては、下記に、より詳細に説明する。前記指示素子は、ポリマー支持材を含み得る。このポリマー支持材は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含み得る。特に、前記ポリマー支持材は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含み得る。前記ポリマー支持材は、親水性ポリマーを含み得る。一実施の形態において、前記ポリマー支持材は、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びにそれらの混合物及び共重合体の中の1つ以上を含み得る。
【0048】
膜855は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含み得る。例えば、膜855は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含み得る。いくつかの実施の形態において、膜855は、親水性ポリマーを含む。各種のポリマーが、膜855の形成に使用することができる。一例として、前記膜は、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びにそれらの混合物及び共重合体の中の1つ以上を含み得る。
【0049】
いくつかの実施の形態において、膜855は不透明である。例えば、いくつかの実施の形態において、光励起装置及び光検出装置はいずれも、センシング素子850の膜855と反対の側に配置される。そのような実施の形態においては、膜855を不透明にすることにより、バックグラウンド干渉を低減させることができる。他の実施の形態においては、不透明なカバー層が膜855上に配置される。当然のことながら、上述した方法を含め、膜又は層において不透明性を付与する多くの方法がある。
【0050】
ハウジング860は、指示素子865及び870を分離するように構成することができる。ハウジング860は、指示素子865及び870がその内部に適合するマイクロウェル又はマイクロキャビティを備え得る。しかし、いくつかの実施の形態においては、前記指示素子が、互いに直接隣接して配置される。ハウジング860は、各種材料から作製することができる。いくつかの実施の形態において、ハウジング860は、ポリマーマトリックスを含む。一実施の形態において、ハウジング860は、イオン透過性ポリマーマトリックスを含む。基層875は、指示素子865及び870と光検出装置との間に配置されるように構成されている。一実施の形態において、基層875は、問い合せ波長(wavelength of interrogation)及び検出波長に対して光透過性である。基層875は、光透過性ポリマー、ガラス、結晶などを含む様々な異なる材料から作製することができる。いくつかの実施の形態において、基層875は省略され、光励起装置及び/又は光検出器装置などのコンポーネントが指示素子865及び870と直接接するようにされる。
【0051】
一実施の形態によれば、示差測定法を可能にするため、1つ以上のセンシング素子の照射に2つの波長の光が使用される。例えば、1つの中心波長(center wavelength)が、スペクトル応答曲線上の等吸収点でセンシング素子を励起させ、別の中心波長が、最大感受性波長で励起させることが可能である。別の実施の形態は、2つの中心波長が、最大の興奮性を得られるが相補的な(complimentary)振幅応答も得られるように選択される二重照射によってセンシング素子(単数又は複数)を励起させることができる。そして、前記分析物非感受性光学素子は、光学系ドリフト補正信号として使用されることにより、長期的精度を向上させる。他の実施の形態においては、pHの影響を無くせるようにpH感受性コンパートメントが使用される。
【0052】
図10は、様々な実施の形態における、分析物濃度測定用センシング素子の断面図を示す。センシング素子900は、第1の指示素子915及び第2の指示素子920を備えている。センシング素子900は、ハウジング910、イオン透過性膜905、及び基層925を含む。この実施の形態において、センシング素子900の化学成分(chemistries)は、表面積及び光散乱効果を増大させることを目的として、支持ビーズ内に又はその上に組み込まれる。センシング素子900は、パルス発生器のヘッダー、パルス発生器のハウジングの光学窓、リード、又は、パルス発生器と無線通信するセンサ(サテライトセンサ)の光学窓に適合するように構成することができる。
【0053】
図11は、分析物濃度測定用システムの一実施の形態を示す。対象となる分析物、例えば、カリウムは、体液中、例えば、間質液中に、センシング素子578のイオン透過性膜586と接して存在する。前記分析物は、膜586を通って拡散し、指示素子580のイオン選択センサと結合する。前記分析物の結合により、指示素子580の蛍光強度変化及び/又は吸収スペクトルシフトが生じる。
【0054】
指示素子584はまた、膜586を通って拡散する分析物のフラックスにも左右される。しかし、この実施の形態において、指示素子584は、分析物濃度に対して光学的に不変であるように設計されているため、陰性対照としての役割を果たすことができる。この実施の形態において、指示素子584は、光学基準素子(optical reference element)とも呼ばれる。
【0055】
指示素子580及び光学基準素子584の拡散反射スペクトルは、エミッター562及び564(オプションとして、光学フィルターと併用)を用いて第1の照射指示素子580及び光学基準素子584により検出される。光電子ブロック560内に位置するエミッター562及び564は、分析物濃度変化として、指示素子580のスペクトル反射変化を効果的に問い合わせる(interrogate)ように選択された2つの異なる中心波長(例えば、それぞれ波長1及び波長2)で光を発光するように構成することができる。エミッター562及び564は、一度に1つの波長の反射率のみが問い合わせされるように、マイクロプロセッサ制御装置(MCU)548の制御下で、交互にオンオフされ得る。光は、光ルーティングブロック576により、エミッター562及び564のそれぞれから、指示素子580及び光学基準素子584のそれぞれに結合させることできる。そして、蛍光センサの場合、拡散反射光又は放射光は、光ルーティングブロック576により、指示素子580及び光学基準素子584から、光透過膜582を通過してセンサ光学検出器572及び参照光学検出器532にそれぞれ送られる。光のルーティングは、自由空間光通信又は当技術分野の当業者に公知の他の手段により、光ファイバー、導波路、エミッター及び検出器のサブアセンブリの一体化された光学パッキングを用いて行われる。光学検出器572及び532は、それぞれ回路574及び534によって増幅され得る電流を生じさせ、これらの電流は、指示素子580及び光学基準素子584からそれぞれ戻された反射光の強度を示す電圧信号となる。そして、これらのアナログ電圧信号は、A/D変換器544及び542によってそれぞれ処理されて、デジタル信号を生成させ、かつ、マルチプレクサー(MUX)540を経由させることができる。その結果得られたデータは、MCU548によって処理され、メモリ550に記憶されるか、又は遠隔測定装置552に送られる。
【0056】
分析物濃度が変化するにつれ、指示素子580の光学特性が変化する一方で、光学基準素子584の光学特性は変化しない。一実施の形態において、MCU548は、指示素子580の励起に関与する特定の波長でデジタル化された放射又は反射信号を受信することができ、そして、光学基準素子584に関与するデジタル化された信号に基づいて補正信号(corrected signal)を算出する。その後、MCU548は、指示素子580の励起に関与する第2の波長でデジタル化された放射又は反射信号を受信することができ、光学基準素子584に関与するデジタル化された信号に基づいて第2の補正信号を算出する。そして、MCU548は、分析物濃度を概算する上で、2つの波長での補正光信号の比を使用することができる。この比は、プログラム・ルーチン又はルックアップテーブルによりMCU548で処理され、分析物濃度が表示される。その結果得られたデータは、記憶されるか、外部装置に送信されるか、又は付属の治療用装置の機能に組み込まれ得る。
【0057】
本発明の化学センサの実施の形態は、埋め込み後、最初に及び/又は定期的に較正して精度を向上させてもよい。当然のことながら、較正は様々な方法で行うことができる。一例としては、化学センサを埋め込んだ後、採血し、標準的なインビトロ検査技術を用いて、血液中の分析物濃度を算出することができる。その後、インビトロ検査によって示された濃度を、埋込み式装置によって示された濃度と比較し、もし差異が存在する場合には、その差異に基づいて埋込み式装置を補正することができる(オフセット補正)。オフセット補正値は、パルス発生器の電気回路に記憶させることができ、その後の測定に自動的に適用される。いくつかの実施の形態においては、異物反応によって埋込み式装置の周辺に組織ポケットが形成された後、この補正手順が行われる。いくつかの実施の形態においては、この補正手順が定期的に行われる。
【0058】
前記化学センサは、一実施の形態によれば、プログラム可能なレートで(プログラマブル・タイマーを使用して)、ナトリウムイオン及びカリウムイオンなどの1つ以上の分析物の濃度を測定することができる。前記化学センサはまた、プログラム・ルーチンによって命令されるか、外部通信コマンド(externally communicated command)によって起動されると、要求に応じて分析物の濃度を測定するように、構成することもできる。一実施の形態において、分析物濃度は、時間的に等間隔で、又は定期的に測定することができる。例えば、前記光励起装置は、定期的に前記センシング素子に問い合わせするように構成することができる。一実施の形態においては、不定期に又は間欠的に異なった時間に、測定することができる。一実施の形態においては、一時間当たりに約一度測定される。
【0059】
光化学センサシステムの電力消費量は、同様の性能に構成された電気化学センサシステムの電力消費量よりもかなり多い可能性がある。このことは、光励起装置を含む光化学センサとの関連で特に当てはまる。本発明の化学センサは、慢性埋込み式システムの一部として設計することができるため、電力消費量は性能限界特性となり得る。それゆえ、本発明の実施の形態は、電池などのエネルギー源からの平均及びピーク電力消費量を低下させる方法を含み得る。
【0060】
次に、図12を参照すると、システム性能を保持しながら電池負荷を低下させることのできる電源管理システムの概略図が示されている。図12において、区間「A」は、センシングパラメータ(sensed parameter)の観察時間を示す。区間「B」は、センシングパラメータの観察と観察との間の最長時間を示す。区間「B」は、最適な省エネのためにはできるだけ長くあるべきであるが、検出器が、観測するシステムにおける急激な変化を追跡するのに十分な程度短くなくてはならない。当然のことながら、このシステムは、対象となる分析物の時間特性(temporal characteristics)に基づいて最適化することができる。例えば、前記センサが、カリウム濃度測定を意図する場合、標的生理系におけるカリウム濃度に関する最大変化率を考慮することができる。すなわち、測定されている特定の分析物は、センシングパラメータの観察と観察との間の最長時間などの要因に直接影響を及ぼし得る。一実施の形態においては、観察時間の一部の間、LEDをオンにすることができる。観察時間中LEDをオンにする時間の割合は、サンプリングの負荷時間率と呼ばれる。
【0061】
サンプリングの負荷時間率を乗じたA/Bの比率は、連続モード検出スキームと比較した、前記システムによって使用されるエネルギー分率(fraction of energy)を表す。例えば、観察時間を100ミリ秒、観察と観察との間の最長時間を3600秒(1時間)、負荷時間率を50%と仮定すると、最終エネルギー率(final energy fraction)は0.0000138である。すなわち、これらの仮定に基づけば、前記センサが使用するエネルギーは、連続モードの場合と比べて、半連続的負荷時間率モードでは約1/72,000となる。当然のことながら、ここでは、多くの異なる観察時間が考えられる。さらに、1分、10分、30分、60分、120分、180分といった、観察と観察との間の多くの異なる最長時間が考えられる。
【0062】
多くの実施の形態において、連続モードで作動させる場合、センサシステムの主要なエネルギー消費部は、光源であろう。典型的な光源は、2ミリアンペアを消費し得るが、これは殆どの慢性埋込み式装置にとっては容認し難いほど多い量である。しかし、一実施例においては、上記負荷時間率スキーム(duty factoring scheme)を用いて、平均消費電流を28ナノアンペアまで低下させることができる。当然のことながら、負荷時間率スキームの結果は、特定の観察時間、観察と観察との間の最長時間、及び有効負荷時間率を含む様々な要因に左右されるであろう。
【0063】
本発明の実施の形態は、変調/復調及び多数のサンプリング・イベントを含むシステムレスポンスにおけるノイズ及び不確実性を低減させる方法も含み得る。変調により、外部光源及び受信信号における直流オフセットに対するセンサの感受性を低下させる。一例として、刺激光源は、特定の周波数1204「周波数f」でオンにすることができ、また、受信回路は、周波数fを含む狭帯域外の信号を排除するフィルターを有し得る。さらに、前記受信回路は、周波数fの信号に選択的に応答する復調器を含む。これらの特性により、対象となる光源以外の光源からの信号に対するいかなるシステムレスポンスも低減又は除去することができる。
【0064】
サンプリング間隔内の多数のサンプリング・イベント1202により、サンプル・イベントの間、電源からのピーク電流需要は低くなる。これらはまた、ランダム・ノイズ源の影響を低減し、精度を向上させるために、積分及び平均することのできる多数の信号も提供する。サンプル・イベント、サンプル間隔の生成、及びセンサ情報の処理は、マイクロプロセッサ制御装置/タイマーによって行われ得る。そして、マイクロプロセッサ制御装置は、メモリにデータを送るか、又は患者管理システムの他のコンポーネントと通信することができる。
【0065】
本発明の実施の形態は、1つ以上のイオン選択センサを備えたセンシング素子を含み得る。イオン選択センサは、過程の大半において(inside the bulk of a phase)、表面現象又は濃度変化のいずれかに依存し得る。イオン選択センサは、搬送波を使用しない光センサ及び搬送波を使用する光センサの双方を含む光センサと、イオン選択電極(ISE)とを備え得る。
【0066】
一実施の形態において、イオン選択センサは蛍光分析によるものである。蛍光イオン選択センサは、分析物を錯体部分にする錯化に基づく差蛍光強度(differential fluorescent intensity)を示す。一実施の形態において、イオン選択センサは比色分析によるものである。比色イオン選択センサは、分析物を錯体部分にする錯化に基づく差吸光度を示す。
【0067】
いくつかの実施の形態において、前記イオン選択センサは、被分析イオンを可逆的に結合する錯体部分、及び錯化剤がイオンを結合させるか又は放出するにつれてその光学的特性を変化させる蛍光又は比色部分を含む、搬送波を使用しないか又は搬送波を使用する蛍光又は比色イオノフォア組成物を含む。本発明の前記錯化剤には、イオンセンシング組成物を調合する際に有用な所望の特性を付与するように選択された1つ以上の有機置換基をオプションとして付加することができる。一例として、前記置換基は、例えば、疎水性尾部(tail)又はポリマー尾部を組み込むことにより、又は、イオン選択センサ内のポリマー支持材に対する前記錯化剤の共有結合(covalent attachment)用手段を与えることにより、センシングされる溶液内への浸出に対して錯化剤を安定化させるように選択することができる。
搬送波を使用しないイオンセンサ
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を使用しない光学イオンセンサである。搬送波を使用しない光学イオンセンサは、親水性ポリマーマトリックス(基材)に共有結合され、かつ、対象となるイオンを選択的に錯化し、比色又は蛍光応答のいずれかを直接生じさせる親水性指示色素(indicator dye)を含み得る。搬送波を使用しないイオン選択センシング素子の一実施の形態において、蛍光イオノフォアは適した基材に共有結合される。蛍光イオノフォアは、蛍光部分及びイオン錯体部分の両方含む化合物である。一例として、カリウムイオン選択蛍光イオノフォアである(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)チオフェニル]クマリンは、アズラクトン官能性親水性多孔質ポリエチレン膜に共有結合し、搬送波を使用しない蛍光系K+イオンセンサを形成することができる。別の例として、水素イオン選択蛍光イオノフォアである、ヒドロキシピレントリスルホナートは、アミン官能性セルロースに共有結合して、搬送波を使用しない蛍光系pHイオンセンサを形成することができる。前記蛍光イオノフォアは、特定の蛍光イオノフォアの化学的機能性によリ決まる場合もある何らかの有用な反応技術によって基材に共有結合させることができる。その後、基材をバッキング膜又は層に付着させることができる。
【0068】
搬送波を使用しないカリウムイオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(カプロファン(CUPROPHAN(商標))、ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社、(Enka AG,Ohderstrasse,Germany))に共有結合させた6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリン(FCCC)を含むセンシング層があり、前記センシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によりポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。搬送波を使用しないカリウムイオンセンサの別の具体例としては、ジアミンリンカーなどのリンカーを有する架橋アズラクトン官能性ヒドロゲルに共有結合された6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリンを含むセンシング層が挙げられる。そして、このセンシング層は、マイクロウェルなどの基材のキャビティ内又はサテライトセンサのゲルカプセル内で光架橋され得る。「サテライトセンサ」という用語は、パルス発生器から遠隔の埋込み式化学センサを記述するのに使用され得る。
【0069】
搬送波を使用しないナトリウムイオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(CUPROPHAN(商標);ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)に共有結合された6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシ)フリル]クマリンを有するセンシング層が挙げられ、このセンシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によってポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。
【0070】
搬送波を使用しない水素イオンセンサの具体例としては、架橋アミン官能性セルロース膜(CUPROPHAN(商標);ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)に共有結合されたヒドロキシピレントリスルホナートを含むセンシング層が挙げられ、このセンシング層は、FLEXOBOND430(商標)ウレタン接着剤によってポリカーボネートバッキング膜に付着しており、前記バッキング膜は、剥離ライナー上に、コーティングされたCW14(商標)感圧接着剤を有する。
【0071】
蛍光イオノフォアの典型的な類は、クマロクリプタンド類である。クマロクリプタンド類には、リチウム特異的蛍光イオノフォア類、ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類、及びカリウム特異的蛍光イオノフォア類が含まれ得る。例えば、リチウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.1.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリンが挙げられ得る。ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.2.1]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリンが挙げられ得る。カリウム特異的蛍光イオノフォア類としては、(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)フリル]クマリン及び(6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボエトキシ)チオフェニル]クマリンが挙げられ得る。
【0072】
適した蛍光イオノフォア類としては、米国特許第5,958,782号明細書に教示されているクマロクリプタンド類が挙げられ、その開示事項は、ここに引用することによって本明細書の一部とされる。そのような蛍光イオノフォア化合物類は、400nm又は約400nmで光を放射するGaN青色発光ダイオード(LED)で励起させることができる。これらの蛍光イオノフォア化合物類は、約450nm〜約470nmの波長域で検出され得るイオン濃度依存性放射を有する。
【0073】
前記基材は、水膨潤性及び対象となるイオン種に対して透過性であり、かつ、モニタリングされる媒質に不溶である高分子材料であり得る。典型的な基材材料としては、例えば、イオン透過性のセルロース材料、高分子量又は架橋ポリビニルアルコール(PVA)、デキストラン、架橋デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニルピロリドン類、親水性ポリアミド類、ポリエステル類、及びそれらの混合物が挙げられる。一実施の形態において、前記基材は、セルロース系、特にイオン透過性の架橋セルロースである。一実施の形態において、前記基材は、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのエポキシドで架橋され、さらに、ジアミンと反応して、セルロースポリマーに懸垂したアミン官能基を提供する再生セルロース膜(CUPROPHAN(商標)、ドイツ国オーダーストラーセのエンカ社)を含む。他の実施の形態において、前記基材は、アズラクトンに懸垂したジアミン官能基を用いて、アミン官能化されたアズラクトン官能性親水性多孔質ポリプロピレンを含む。
【0074】
搬送波を使用しないイオン選択センサの一作製方法においては、まず、アミノエチル化セルロースを、重炭酸ナトリウム溶液で処理することによって活性化させる。そして、6,7−[2.2.2]−クリプタンド−3−[2’’−(5’’−カルボキシl)フリル]クマリンなどの蛍光イオノフォアは、アミノエチル化セルロースに共有結合される。オプションとして、ひとたび所望量の蛍光イオノフォアが、アミノエチルセルロースに共有結合されると、残りのアミノ基は、アシル化によって遮断させる。次に、前記セルロースを有する蛍光イオノフォアは、溶液内に取り込まれ、そして、光ファイバー上又はハウジングのマイクロキャビティ内にコーティング又は堆積される。
【0075】
前記センシング層のイオン透過性を向上させるために、透過促進剤を、前記センシング層を形成するのに使用される組成物に添加することができる。適切な透過促進剤には、親水性であり、かつ、水溶性である低分子量分子が含まれ得る。そのような促進剤には、糖類、ポリオール類などが含まれ得る。具体例としては、グリセロールを使用することができる。別の具体例としては、低分子量水溶性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0076】
いくつかの実施の形態において、前記センシング層の材料は、化学的に官能化された蛍光イオノフォア類及びクロモイオノフォア類を共有結合するための反応性官能基を有する光架橋性ヒドロゲルを利用して調製することができる。一実施の形態において、前記光架橋性ヒドロゲルは、アズラクトン官能性共重合体を含み得る。前記アズラクトン官能性共重合体は、ビスアジド類、ビスジアゾカルボニル類、及びビスジアジリン類などの光架橋剤を用いて架橋(硬化)することができる。この種の架橋はアズラクトン基に影響を及ぼすことはないが、三次元ヒドロゲルマトリックスを生成する。そして、前記アズラクトン官能性ポリマーは、反応性官能基(第一級アミン類、第ニ級アミン類、ヒドロキシル基、及びチオール基など)を有するクロモイオノフォア類又は蛍光イオノフォア類と反応させられ得る。その後、前記反応性官能基は、適切な触媒の存在又は不在のいずれかの下、求核付加反応によってアズラクトンと反応し共有結合する。この共有結合工程は、コーティング前又は後、硬化前又は後、及びパターニング前又は後に実施することができる。
【0077】
オプションとして、イオンセンシング分子が共有結合した後、キャッピング基を添加して、アズラクトン基などの使用されていない任意の官能基をふさぐ(occupy)ことができ、また、何らかの不要な物質による後のゲル汚染を防止することができる。前記キャッピング基は、前記ゲルの膨潤性を向上させるために親水性(例えば、水)であってもよい。また、前記キャッピング基は、下記にさらに十分に説明するように、搬送波を使用するイオン選択センサに適合する微環境を提供するために疎水性であり得る。
【0078】
前記センシング層の材料は、特定の用途に応じて、様々な方法で構成することができる。いくつかの実施の形態において、前記センシング層の材料は、実質的に平面構造で構成される。他の実施の形態において、前記センシング層の材料は、ビーズ又はマイクロドットとして構成される。
【0079】
センシング層組成物の硬化は、その特定の用途及び前記センシング層の材料の化学構造に応じ、光又は熱を用いて行われ得る。
搬送波を用いるイオンセンサ
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を用いるイオンセンサである。搬送波を用いるイオンセンサは、対象となるイオンと錯化しそのイオンを担持する役割を果たすイオノフォアと呼ばれる化合物を含む。搬送波を用いるイオンセンサは、光学イオンセンサ及びイオン選択電極の双方を含み得る。いくつかの実施の形態において、搬送波を使用する光学イオンセンサは、脂肪親和性イオノフォア、及びクロモイオノフォアと呼ばれる脂肪親和性蛍光又は比色指示色素を含む。前記クロモイオノフォア及びイオノフォアは、疎水性有機ポリマーマトリックス中に分散させることができ、及び/又は疎水性有機ポリマーマトリックスに共有結合させることができる。前記イオノフォアは、対象となるイオンを可逆的に結合させることができる。前記クロモイオノフォアは、プロトン選択性色素であり得る。作動中、対象となるイオンは、有機ポリマーマトリックス内のイオノフォアによって可逆的に隔離される。そして、ポリマーマトリックス内の電荷の中立性を維持するために、プロトンは、クロモイオノフォアから遊離され、色又は蛍光の変化が生じる。
【0080】
搬送波を用いるイオンセンサの具体例としては、比色K+センシング素子を作製するためにポリ塩化ビニル及びセバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)界面活性剤からなるポリマーマトリックス中に分散させた、カリウムテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸、クロモイオノフォアI、及びカリウムイオノフォアIIIが挙げられる。
【0081】
前記疎水性有機ポリマーマトリックスは、十分な引っ張り強さ、化学的不活性、及び可塑剤相溶性を有する材料を含み得る。典型的な材料としては、ポリ(塩化ビニル)、ポリ塩化ビニルの誘導体、ポリウレタン、シリコーンゴム類、ポリアルキルメタクリレート類、及びポリスチレンが挙げられ得る。
【0082】
一実施の形態において、疎水性有機ポリマーマトリックスは、可塑剤により、対象となる分析物に対して透過性にするようになる。適した可塑剤としては、2−ニトロフェニルオクチルエーテル(NPOE)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)(BEHS)、ジベンジルエーテル(DBE)などが挙げられ得る。しかし、可塑剤は、時間とともに疎水性有機ポリマーマトリックスから浸出し得ることが知られている。これは、センサの機能低下につながる場合もある。従って、いくつかの実施の形態において、前記センシング素子は、自己可塑性のポリマーマトリックスを含む。そのようなポリマーとしては、ポリウレタン類、ポリシロキサン類、シリコーンゴム、ポリチオフェン類、エポキシアクリレート類、並びにメタクリル酸及びメタクリル酸−アクリル共重合体が挙げられ得る。一実施の形態においては、アクリレート骨格及びアクリレートコモノマー由来の複数のペンダント脂肪親和性可塑化基を有するイオン選択ポリマー材料が作製される。前記脂肪親和性可塑化基は、例えば、ポリマーマトリックスを本質的にソフトにし(例えば、ガラス転移温度(Tg)が−10℃未満)、かつ、さらなる可塑剤を必要としない、つまり、前記ポリマーが実質的に自己可塑性であり、そのために前記可塑剤が浸出する問題が生じることのない、炭素数3〜7のペンダントアルキル基であり得る。
【0083】
いくつかの実施の形態においては、イオン−イオノフォア錯体の濃度を安定させることによってイオン選択性を向上させるために脂肪親和性アニオン(イオン交換体)が含まれる。例えば、テトラフェニルホウ酸誘導体は、カチオン選択性ポリマー膜電極及びバルク光センサにおけるイオン交換体として使用することができる。アニオン干渉を減少させることに加え、テトラフェニルホウ酸は、境膜抵抗を低下させることもでき、また、イオン−イオノフォア錯体の濃度を安定させることによってイオノフォア選択性を向上させることもできる。これらの化合物が有する非局在化モノアニオン電荷は、それらの立体的に込み合った分子構造との組み合わせで、それらを非常に弱い配位とする。これは、前記膜の弱く非特異的なイオン対生成及び最大イオノフォア媒介選択性につながる特徴である。具体的な脂肪親和性アニオン類としては、KTpClPBと表わされるテトラキス(4−クロロフェニル)ホウ酸カリウム);NaHFPBと表わされるテトラキス[3,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2メトキシ−2−プロピル)フェニル]ホウ酸ナトリウム;KTFPBと表わされるテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウム;テトラキス(4−フルオロフェニル)ホウ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせなどが挙げられ得る。テトラフェニルホウ酸の適切な代替物であり得る化合物としては、3,5[ビス−(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸塩(NaTFPB)、カルボラン類(クロソ−ドデカカルボラン類など)、及びハロゲン化カルボラン類(トリメチルアンモニイウムウンデカブロモカルボラン(TMAUBC)、ウンデカ塩素化物(UCC)、六臭素化物(HBC)、及びウンデカヨウ素化物(UIC)カルボランアニオン類など)が挙げられる。
【0084】
上述のように、搬送波を用いるイオンセンサにおける前記クロモイオノフォアは、pH感受性材料であり得る。典型的なpH感受性クロモイオノフォア色素としては、コンゴレッド、ニュートラルレッド、フェノールレッド、メチルレッド、ラクモイド、テトラブロモフェノールフタレイン、α−ナフトールフェノールなどが挙げられる。前記クロモイオノフォアは、ポリマーマトリックスに共有結合することによって固定化され得る。前記クロモイオノフォアは、上述のように可塑剤を用いてポリマーマトリックスに溶解させることができる。
【0085】
前記イオノフォア及び/又はクロモイオノフォアは、様々な方法で前記ポリマーマトリックスにおいて固定化され得る。例えば、1つの方法においては、前記イオノフォアは、反応部位を有する既存ポリマーに直接グラフトされる。第2の方法においては、2つの異なるポリマーが、それらの一方がグラフトイオノフォアを含んだ状態で、共に混合される。第3の方法は、側鎖としてイオノフォアを含むアクリレート官能性モノマーを、他のモノマーと一段階(one-step)重合法によって重合することを含む。第4の方法において、アズラクトン官能性アクリレートポリマーは、アミン、ヒドロキシル基、又はチオール官能性イオノフォアの求核付加反応を受けて、共有結合されたイオノフォアを提供することができる。
【0086】
典型的なpH応答性クロモイオノフォア類としては、クロモイオノフォアI、(9−(ジエチルアミノ)−5−(オクタデカノイルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン)、「ETH5294」CAS No.125829−24−5;クロモイオノフォアII、(9−ジエチルアミノ−5−[4−(16−ブチル−2,14−ジオキソ−3,15ジオキサエイコシル)フェニルイミノ]ベンゾ[a]フェノキサジン)、「ETH2439」CAS No.136499−31−5;クロモイオノフォアIII、(9−(ジエチルアミノ)−5−[(2−オクチルデシル)イミノ]ベンゾ[a]フェノキサジン、「ETH5350」CAS No.149683−18−1;クロモイオノフォアIV、(5−オクタデカノイルオキシ−2−(4−ニトロフェニルアゾ)フェノール)、「ETH2412」CAS No.124522−01−6;クロモイオノフォアV、(9−(ジエチルアミノ)−5−(2−ナフトイルイミノ)−5H−ベンゾ[a]フェノキサジン)、CAS No.132097−01−9;クロモイオノフォアVI、(4’,5’−ジブロモフルオレセインオクタデシルエステル)、「ETH7075」CAS No.138833−47−3;クロモイオノフォアXI、(フルオレセインオクタデシルエステル)、「ETH7061」CAS No.138833−46−2が挙げられ得る。
【0087】
一実施の形態において、前記イオン選択センサは、搬送波を用いるイオン選択電極(ISE)である。搬送波を用いるイオン選択電極は、搬送波を用いる光学イオンセンサと同様の材料の多くを含み得るが、クロモイオノフォアは含まない。この実施の形態において、イオノフォアを含むイオン選択疎水性ポリマーマトリックスは、介在ヒドロゲル層が一定量の参照電解質を含む状態で(例えば、K+センサ用のKCl)、Ag/AgCl電極などの参照電極上に配置することができる。この実施の形態においては、イオノフォアを含まない参照電極も提供される。ISEは、標的イオンを含む流体サンプルとの接触で測定可能な電位差測定変化を生じさせる。これは、両界面の界面電位、及びイオン選択ポリマーマトリックス内の拡散電位によって駆動される。
錯体部分
搬送波を用いないイオンセンサ及び搬送波を用いるイオンセンサの双方に使用される化合物は、錯体部分を含み得る。適切な錯体部分は、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリックスアレーン類、非環状アミド類、及びヘミスフェランド部分、並びに、モネンシン、バリノマイシン及びナイジェリシン誘導体などのイオン選択抗生物質を含み得る。
【0088】
当該技術分野における当業者は、どのクリプタンド及びクラウンエーテル部分が、特定のカチオンを錯化する上で有用であるかを認識することができるが、このトピックに関するさらなる情報に関しては、例えば、レーン及びソバージュ、「[2]−クリプテート:アルカリ及びアルカリ土類大環状錯体の安定性及び選択性」(Lehn and Sauvage,"[2]-Cryptates:Stability and Selectivity of Alkali and Alkaline-Earth Macrocyclic Complexes,")J.Am.Chem.Soc,97,6700−07(1975)を参照することができる。当該技術分野における当業者は、どのビス−クラウンエーテル、カリックスアレーン、非環状アミド類、ヘミスフェランド、及び抗生物質部分が、特定のカチオンを錯化する上で有用であるかを認識することができるが、このトピックに関するさらなる情報に関しては、例えば、ブールマン等の「搬送波を用いるイオン選択電極及びバルクオプトード.2.電位差測定及び光センサ用イオノフォア,」(Buhlmann et al.,"Carrier-Based Ion-Selective Electrodes and Bulk Optodes.2.Ionophores for Potentiometric and Optical Sensors,")Chem. Rev.98、1593−1687(1998)を参照することができる。
【0089】
一例として、クリプタンド類は、クリプタンドケージと呼ばれる構造体を含む。クリプタンドケージに関して、ケージのサイズは、酸素及び窒素原子によって定義され、このサイズにより、クリプタンドケージは同様の直径を有するカチオンに対してかなり選択性が高くなる。例えば、[2.2.2]クリプタンドケージは、K+、Pb+2、Sr+2、及びBa+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。[2.2.1]クリプタンドケージは、Na+及びCa+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。最後に、[2.1.1]クリプタンドケージは、Li+及びMg+2などのカチオンに対してかなり選択性が高い。クリプタンドケージのサイズ選択性は、化学的センシングの感度を向上させることができる。これらのクリプタンドケージが、生理学的センシングシステムに組み込まれると、Pb+2及びBa+2などのより重い金属が、Na+及びK+などの、より広範に生理学的に関与するイオンの分析に干渉する濃度中に存在する可能性は低い。
【0090】
クラウンエーテル部分に関し、酸素原子によって定義される15−クラウン−5ケージというサイズは、そのユニットをNa+に対して適度な選択性にし;18−クラウン−6ケージというサイズは、K+に対して適度な選択性にし;21−クラウン−7ケージというサイズは、K+に対しては選択性をかなり高くし、Na+に対しては非選択性にする。Li+は、12−クラウン−4〜15−クラウン−4の範囲内のサイズのクラウンエーテル類によって形成されるキャビティによく適合する。クラウンエーテル類としては、リチウム特異的クラウンエーテル類、ナトリウム特異的クラウンエーテル類、カリウム特異的クラウンエーテル類、及びカルシウム特異的クラウンエーテル類が挙げられ得る。例えば、リチウム特異的クラウンエーテル類としては、6,6−ジベンジル−14−クラウン−4、(7−テトラデシル−2,6,9,13−テトラオキサトリシクロ[12.4.4.01,14]ドコサン、及び((2S,3S)−(−)−2,3−ビス(ジイソブチルカルバモイルメチル)−1,4,8,11−テトラオキサシクロテトラデカンが挙げられ得る。ナトリウム特異的クラウンエーテル類としては、2,3:11,12−ジデカリノ−16−クラウン−5又は「DD16C5」と表わされる(2,6,13,16,19−ペンタオキソペンタシクロ[18.4.4.47,12.0.1,2007,12]ドトリアコンタン;Na+−18と表わされる4’イソプロピル−4’−OCH2CON(C8H17)2−ジベンゾ−16−クラウン−5;Na+43と表わされる4’−デカニル−4’−(4−ヒドロキシ−5−メチル−ニトロフェニル−5−オイル)−ジベンゾ−16−クラウン−5;及び「ODM16C5」と表わされる15−メチル−15−ステアリル−オキシメチル−1,4,7,10,13−ペンタオキサシクロヘキサデカンが挙げられ得る。カリウム特異的クラウンエーテル類としては、ナフト−(15−クラウン−5);(ヘキサノールイルオキシメチル)ベンゾ−15−クラウン−5;(オクタデカノイルオキシメチル)ベンゾ−15−クラウン−5;及びK+−35、ベンゾ−15−クラウン−5由来のアニオン性クラウンエーテル色素(ブールマン等の用語、上記参照)が挙げられ得る。カルシウム特異的クラウンエーテル類としては、4,13−ジ−N−オクタデシルカルバモイル−3−オキサブチリル−1,7,10,16,テトラ−オキサ−4,13−ジアザシクロオクタデカン、又は「K22E1」と表わされる10,19−ビス[(オクタデシルカルバモイル)メトキシ−アセチル]−1,4,7,13,16−ペンタオキサ−10,19−ジアザシクロヘンエイコサンが挙げられ得る。
【0091】
ビス−(クラウンエーテル)及びアルカリ金属イオンの錯化は、カチオンのサイズが、クラウンエーテル環のうちの1つによって形成された内部キャビティよりもわずかに大きい場合、かなり特異的である。これは、分子内のサンドイッチ錯体の形成によって説明することができる。Na+に対する高い選択性は、例えば、14−クラウン−4及び12−クラウン−4のキャビティはNa+には小さすぎるが、ビス(14−クラウン−4)及びビス(12−クラウン−4)化合物によって得られる。同様に、K+に対する選択性は、ビス(15−クラウン−5)化合物によって得られる。ビス−クラウンエーテル類としては、ナトリウム特異的ビス−クラウンエーテル類及びカリウム特異的ビス−クラウンエーテル類が挙げられ得る。ナトリウム特異的ビス−クラウンエーテル類としては、ビス[(12−クラウン−4)メチル]−2−ドデシル−2−メチル−マロン酸塩;ビス[(12−クラウン−4)メチル]−2,2−ジベンジル−マロン酸塩;1,1−ビス[(12−アザクラウン−4)−N−メチル]ドデカンが挙げられ得る。カリウム特異的ビス−クラウンエーテル類としては、ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−4’−イルメチル]ピメレート;ビス[(ベンゾ−15−クラウン−5)−4’イルメチル]−2−ドデシル−2−メチルマロン酸塩;及び「BME−44」と表わされる2,2−ビス[3,4−(15−クラウン−5)−2−ニトロフェニルカルバモキシメチル]テトラデカンが挙げられ得る。
【0092】
ヘミスフェランドは、リガンド事前形成(preorganization)を促進する余分なブリッジを含むクラウンエーテル化合物であると考えられる。ナトリウム特異的ヘミスフェランドの一例としては、HEMISODIUMという商品名で販売されている化合物(Na+−40、ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。カリウム特異的ヘミスフェランドとしては、K+−26(ブールマン等の用語。上記参照)及びK+−27(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。
【0093】
非環状アミド類としては、ナトリウム特異的非環状アミド類及びカルシウム特異的非環状アミドの双方が挙げられ得る。ナトリウム特異的非環状アミド類としては、「ETH227」と表わされるN,N’,N’’−トリヘプチル−N,N’,N’’−トリメチル−4,4’,4’’−プロピリジントリス(3−オキサブチルアミド)、「ETH157」と表わされるN,N’−ジベンジル−N,N’−ジフェニル−1,2−フェニレン−ジオキシジアセトアミド、「ETH2120」と表わされるN,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,2−フェニレンジオキシ−ジアセトアミド、及び「ETH4120」と表わされる4−オクタデカノイルオキシメチル−N,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−1,2−フェニレンジオキシ−ジアセトアミドが挙げられ得る。カルシウム特異的非環状アミド類としては、「ETH1001」と表わされる(−)−(R,R)−N,N’−ビス−[11−(エトキシカルボニル)ウンデシル]−N,N’−4,5−テトラメチル−3,6,−ジオキサオクタン−ジアミド、「ETH129」と表わされるN,N,N’,N’−テトラシクロヘキシル−3−オキサペンタンジアミド、「ETH5234」と表わされるN,N−ジシクロヘキシル−N’,N’−ジオクタデシル−3−オキサペンタンジアミドが挙げられ得る。
【0094】
カリックスアレーン類としては、ナトリウム特異的カリックスアレーン類及びカリウム特異的カリックスアレーン類が挙げられ得る。ナトリウム特異的カリックス[4]アレーンとしては、25,26,27,28−テトラキス(エトキシカルボニルメトキシ)、3,9,15,21−第三ブチルカリックス[4]アレーン;Na+−20(ブールマン等の用語。上記参照);Na+−42(ブールマン等の用語。上記参照);Na+−33(ブールマン等の用語。上記参照);及びNa+−34(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。カリウム特異的カリックス[6]アレーン及びカリックス[4]アレーンクラウン−5イオノフォアとしては、37,38,39,40,41,42−ヘキサキス(エトキシカルボニルメトキシ)カリックス[6]アレーン;K+−32(ブールマン等の用語。上記参照);K+−33(ブールマン等の用語。上記参照);及びK+−34(ブールマン等の用語。上記参照)が挙げられ得る。
センサのコーティング及びパターニング
搬送波を用いる及び搬送波を用いないイオンセンサの双方において、センシング層組成物は、溶媒を添加して又は溶媒を添加することなくコーティングすることができる。いくつかの実施の形態において、前記センシング層成分は、スプレーコーティング又は浸せきコーティングなどのコーティング技術を用いて、センシング層成分の基材上へのコーティングを容易にするように液体組成物として調合される。例えば、特定の実施の形態においては、パルス発生器と無線通信するサテライトセンサに関連するカプセル内又は光ファイバーリードの先端にセンシング層を組み込むことが有益であり得る。これらの場合、光ファイバーリード上又はカプセル内に前記センシング層成分をスプレーコーティング又は浸せきコーティングすることが有益であり得る。適切なコーティング方法としては、スピンコーティング、ナイフコーティング、又はローラーコーティングも挙げられ得る。
【0095】
前記組成物は、パターン化表面を提供するために選択的にコーティングされ得る。例えば、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷などを含む技術が、前記組成物を選択的にコーティングするために使用され得る。前記組成物はまた、微細構造内に存在し、当該組成物のパターン化配列を付与するように微細構造表面(例えば、ミクロンスケールの凹部又は溝部(channels)を有する表面)上にナイフコーティングされてもよい。いくつかの実施の形態において、前記組成物は、ピンベース(pin-based)の精密分配(precision dispensing)などの精密分配技術を用いて、基材のマイクロウェル又はマイクロキャビティ内に堆積され得る。
【0096】
選択的コーティング以外では、パターニングは、前記組成物の選択的硬化又は前記組成物の基材からの選択的除去などの技術によって行うこともできる。選択的硬化技術としては、UV光又は熱への選択的曝露が挙げられ得る。選択的UV曝露法としては、マスク又は写真のネガを介しての曝露又はレーザなどの指向光線による曝露が挙げられる。硬化後、残存未硬化組成物を、例えば、洗浄によって除去することにより、パターン化されたコーティングが得られる。
【0097】
いくつかの実施の形態においては、レーザアドレス可能な熱転写結像法(thermal transfer imaging processes)により、前記組成物を基材上にパターン化することができる。この方法において、熱転写ドナー素子は、支持層、光熱変換層、及びパターン化する前記組成物を含む転写層を備えて構成される。このドナー素子が受容体に接触し画像を形成するように照射される(image wise irradiated)と、メルトスティック転写作用が生じ、前記組成物含有転写層が受容体上に結像される。一例として、先に記述した光架橋性アズラクトン組成物を、そのようなシステムの転写層に使用することができる。この光架橋性アズラクトン組成物は、転写層に取り込む前、転写層に取り込まれた後、又は受容体にレーザアドレス熱転写した後に、クロモイオノフォア又は蛍光イオノフォアと反応させることができる。前記アズラクトン組成物は、前記転写過程の前又は後に、熱的に又は光化学的に架橋され得る。この方法は、受容体基材に対する、個別のアズラクトン−指示薬(indicator)複合体のレーザアドレス熱画像形成に先立ち、異なる指示素子を、前記アズラクトン組成物を含む転写層上に前もってパターン化する機会を提供する。ドナー及び受容体素子のレジストレーションは、転写工程のいずれか1つ又は全ての間、ロボット制御で変更することができ、転写層上の指示薬のパターニングとは異なる受容体上の転写素子に関し所望のアレー間隔及びサイズにすることができる。
作動方法
本発明の一実施の形態は、生理学的分析物の濃度をモニタリングするためにパルス発生器を備えた埋込み式医療装置を使用する方法を含む。この方法は、化学センサによって分析物濃度をセンシングすることを含む。化学センサによる分析物濃度のセンシングは、センシング素子を体液に曝露することを含み得る。化学センサによる分析物濃度のセンシングはまた、光励起装置によってセンシング素子を照射して光帰還信号を生成することも含み得る。化学センサによる分析物濃度のセンシングはさらに、光検出装置を使用し、前記センシング素子から反射又は放射された光を受光することを含み得る。
【0098】
本発明の方法は、定期的にセンシング素子に問い合わせて、分析物濃度を測定することを含み得る。その方法はまた、埋込み式医療装置内のメモリに、デジタル表示された測定分析物濃度を記憶させることも含み得る。いくつかの実施の形態においては、ひとたび情報が記憶されると、情報は時間の関数として評価されて代謝傾向や代謝現象を特定することができる。いくつかの実施の形態は、分析物濃度及び/又は算出リスク指標に関するデータを別の装置に伝達することも含む。例えば、記憶された測定分析物濃度に関する情報も含め、1つ以上のメッセージを遠隔患者モニタリング装置に無線で伝達することができる。いくつかの実施の形態において、この方法は、高度患者管理システム(APM)などの在宅モニタリングシステムを使用して、定期的に分析物濃度を読み取ることを含む。さらなる実施の形態は、経時的な分析物濃度の傾向を示す傾向データを提供することを含む。
【0099】
様々な方法の実施の形態によれば、埋込み式医療装置内のプロセッサを用い、光センシング素子及び対応する分析物非感受性光学基準素子から収集されたデジタル化された光信号に基づいて分析物濃度を計算することができる。この方法は、まず、所定の中心波長でのセンシング素子からの、分析物に依存した強度測定値を、その中心波長での光学基準素子からの強度測定値を用いて測定される光学オフセットに対して補正することを含み得る。この方法はまた、ルックアップテーブルと併せて前記補正光信号を使用し、分析物濃度得ることも含み得る。一実施の形態において、前記方法は、メモリに記憶された較正係数に基づいてデータを調整することを含む。様々な実施の形態においては、埋込み式医療装置に一体化された温度センサによって測定される温度に基づいて調整がなされる。前記方法はまた、各種調整を考慮して補正分析物濃度を算出した後、付随のタイムスタンプと共にメモリ内にそれらを記憶させることを含み得る。
使用方法
現在の心不全モニタリング方法のいくつかにおいては、心不全患者が、体重増加、血圧、及び他の徴候を書き留めた後、その患者の治療をする看護士又は医師に電話でそれらの徴候を自己申告する。それらの報告された徴候が、利尿治療を必要とする有害な状態を示す場合、介護者は、電話で治療を処方するか、又は患者にクリニックに来てもらうか選択しなければならない。利尿治療は、利尿薬の投与、及び、様々な組み合わせでACE阻害薬、β遮断薬、イオンチャネル調整薬などの薬剤の投与を含み得る。
【0100】
生理学的分析物の濃度を測定するために血液検査をすることなくよく行われる、一般的に推奨されるものは、服用量を増加させた利尿薬と一服のカリウムを投与することである。この一服のカリウムを投与する論理は、服用量を増加させた利尿薬によって増加した生理的カリウム喪失量をオフセットするために使用されるというものである。この場合、実際の生理的カリウム濃度は知られていないため、その結果、患者のカリウム濃度が、高すぎるか又は低すぎることになる危険性がある。具体的には、もし、介護者には知られることなく、患者のカリウム濃度が既に高い場合、及びカリウムの摂取と排泄が適切にバランスを取れていない場合には、高カリウム血症(カリウム濃度が高すぎる)を患う可能性がある。先に記述したように、高カリウム血症の影響は、時として死につながる心不整脈を含み得る。
【0101】
一実施の形態において、本発明は、埋込み式医療装置を使用し、利尿治療(患者に対して行われる利尿療法など)をモニタリングする方法を含む。この方法は、埋込み式医療装置を使用して、患者の体液中のカリウムイオン濃度を光学的にモニタリングすることを含み得る。前記方法は、患者が低カリウム血症又は高カリウム血症を患っているかどうか判断することを含み得る。一実施の形態において、患者は、心不全患者である。この方法は、化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることを含む。化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、センシング素子を体液に曝露することを含み得る。また、化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、センシング素子を光励起装置で照射して、光帰還信号を生成することも含み得る。化学センサでカリウム濃度をモニタリングすることは、さらに、光検出装置を使用し、センシング素子から反射又は放射された光を受光することを含み得る。前記方法のいくつかの実施の形態は、カリウム濃度及び/又は算出リスク指標に関するデータをテレメトリリンクを介して非埋込み式装置に及び/又は保健専門家に伝達することも含む。例えば、1つ以上のメッセージを遠隔患者モニタリング装置に無線で伝達することができる。
【0102】
本発明に係る埋込み式医療装置を使用して利尿治療をモニタリングする方法は、様々な利点を提供し得る。1つの利点は、介護者が、高カリウム血症及び低カリウム血症の危険性を低下させながら、利尿薬及びカリウムの薬用量をより安全にアドバイスすることができることである。この方法は、患者から採血することなく処方される利尿薬とカリウムのバランスを適正なものにすることができる。埋込み式装置によって収集された情報は、テレメトリ/遠隔患者管理システムを介して結びつけられ、患者が医師のオフィスに入室することなく最善の処方を得られるようにする。
【0103】
さらに、一服のカリウムと共に服用量を増加させた利尿薬を投与することによって患者が曝される危険性は、患者の全般的腎機能によって増す可能性がある。腎機能障害を持つ患者にとっては、一服のカリウムによって高カリウム血症になる危険性は、はるかに高いものとなる。正常な腎臓機能を持つ患者にとっては全く安全であろう、カリウム服用量のわずかなアンバランスでさえ、腎機能障害を持つ患者には、不安定化する破滅的な影響を及ぼしかねない。従って、本発明のいくつかの実施の形態における埋込み式医療装置を使用して利尿治療をモニタリングする方法は、埋込み式医療装置によって腎機能を示す分析物の濃度を光学的にモニタリングすることも含み得る。腎機能を示す特定の分析物としては、クレアチニン、尿素、及び尿酸が挙げられ得る。
【0104】
利尿治療をモニタリングする方法の一例を説明したが、当然のことながら、本発明の実施の形態は、他のタイプの治療のモニタリングも含み得る。一例として、本発明の実施の形態は、滴定薬物治療のための方法を含み得る。特に、一実施の形態は、人体への活性剤の投与(delivery)を制御する方法を含み得る。この方法は、埋込み式システムを用いて1つ以上の分析物の生理的濃度を測定すること、及び前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の投与を変更することを含み得る。前記埋込み式システムは、パルス発生器及び化学センサを備え得る。前記化学センサは、センシング素子、励起装置、及び検出装置を備え得る。前記1つ以上の分析物としては、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム又はヒドロニウムが挙げられ得る。前記1つ以上の分析物としては、腎機能を示す分析物が挙げられ得る。前記1つ以上の分析物としては、心機能を示す分析物が挙げられ得る。一実施の形態において、前記活性剤は、利尿薬を含み得る。前記1つ以上の分析物の生理的濃度は、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される体液中の濃度を測定することによって判断することができる。
【0105】
本発明の方法はまた、患者に心不整脈治療を提供することも含み得る。一例として、本発明の方法は、埋込み式化学センサを使用して、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にセンシングすることを含み得る。この方法は、イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することをさらに含み得る。この方法はまた、イオンの生理的濃度に部分的に基づいて、埋込み式パルス発生器から患者へのパルスの送り(delivery)を変更することも含み得る。そして、前記イオンの生理的濃度に関するデータは、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することができる。このイオンの生理的濃度に関するデータは、患者の心肺系に関するデータと組み合わせて、患者の心臓の状態の複合プロファイルを作ることができる。患者の心肺系に関するデータとしては、心電図信号、呼吸速度、加速度計データ、胸廓内インピーダンス、リードインピーダンス、心臓容積、血圧、体重、及び心臓壊死信号が挙げられ得る。
【0106】
心不整脈治療を提供する方法もまた、埋込み式化学センサを使用して、患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にモニタリングすることと、前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式心調律装置に送信することと、前記イオンの生理的濃度の一部に基づいて、埋込み式心調律装置から患者にパルスを送ることとも含み得る。
最適化された診断指示方法
当然のことながら、埋込み式化学センサを埋込み式心調律管理(CRM)装置の機能と統合することにより、診断指標に合成されるデータを、以前には実現されなかった有用性と組み合わせることが可能になる。具体例として、前記埋込み式化学センサは、分析物濃度に関するデータを提供することができる一方で、前記CRM装置の機能は、心電図信号などの心臓データを提供することができる。上述のように、二種類のデータは、患者の生理的状態に関する、互いに異なるが関連のある観点を提供する。これら二種類、又は、いくつかの実施の形態においては三種類以上のデータは、組み合わせて患者の状態の複合プロファイル又は複合リスク指標を作ることができる。
【0107】
化学センサデータをCRM装置データと組み合わせることの意義は、多数の例で示すことができる。一例としては、心電図信号の調整と共に、電解質濃度信号の調整を含む方法がある。多い又は不規則な心拍数は、CRM装置機能によって容易に確認される。このデータは、カリウムイオン濃度などの、化学センサからの情報と組み合わされる。上述のように、非常に高い又は非常に低いカリウム濃度の存在下での不規則な心拍数は、いずれか一方の個別の状態よりも、患者にとってより高い危険性を示す。本発明の方法は、この論理をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0108】
別の例は、呼吸速度信号の調整と共に電解質濃度信号の調整を含む方法である。CRM装置機能は、速い呼吸速度を観測及び特定することを含み得る。臨床的に、呼吸速度は、ナトリウムイオンの生理的濃度と関連している可能性があり、患者に関する液量過剰状態を示している可能性がある。さらに、CRM装置機能には、運動が呼吸の原動力となっていないことを確認することができる加速度計からのデータが含まれ得る。確認された速い安静時呼吸速度と体液量過剰信号の組み合わせは、切迫した心肺系発作を示す。本発明の方法は、この理論をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0109】
さらに別の例は、心臓組織壊死を示す分析物の濃度と共に心電図信号ベクトル値の調整を含む方法である。具体的には、CRM装置機能は、心電図波形のベクトル成分値を特定し、これらを正常又は異常ベクトルパターンの瓶に分類することを含み得る。化学センサは、トロポニン、心筋特異的トロポニン、又は心筋細胞(cardiomyocyte)壊死を示すその他の分析物の濃度を特定するように構成することができる。この方法は、形式化されたアルゴリズムの一部として心臓壊死分析物濃度信号と心電図ベクトル分析の組み合わせを含み得る。この方法は、いずれかの信号を単独で分析することによる方法よりも、心筋梗塞を特定するための高い特異性を提供することができる。本発明の方法は、この理論をアルゴリズムとして具体的に示すことと、一体化されたトランスデューサーを介して局所的警告を提供することのできる警告指標、システムと通信するベッドサイド又は外部装置からの近接警告、又はセントラルモニタリングシステムに提供される医療警告を作成することとを含み得る。
【0110】
埋込み式化学センサからのデータをCRM装置機能により提供されるデータと組み合わせる具体的方法の数例が提供されているが、当然のことながら、同様にデータを組み合わせることにより、多くの他の方法が可能である。一例として、他の方法は、1つ以上の化学センサ信号を、心電図、胸廓内インピーダンス、加速度計表示活動(accelerometer indicated activity)、加速度計表示状態(accelerometer indicated posture)、心音、リードインピーダンス、心臓容積、及びCRM装置から得られた他の信号と組み合わせることを含み得る。特定の実施の形態において、カリウムイオン濃度は、血圧データと組み合わされる。
自動フィードバック提供方法
ここで説明する方法は、健康状態の安定化、改善、又は管理に適した行動療法又は薬剤介入治療に関して、患者に自動フィードバック(指示やアドバイスなど)を提供するように適応させることができる。一例として、いくつかの方法は、過剰又は不十分なカリウム濃度を検出し、アルゴリズムに供給することにより、介護者の介入なく、疾患に関して患者にメッセージを送ることを含み得る。前記アルゴリズムは、医学的危険性が、わずか又は無視し得る程度に留まる分析物値の範囲内で、食事の変更及び/又は活動の修正に関するアドバイスを患者に提供するように構築することができる。この方法は、より深刻な状態になるか、又は、医療専門家の介入が必要となる前に、患者が生理的傾向を良い方向に向かわせることを可能にする。
【0111】
いくつかの実施の形態において、この方法は、患者が治療薬の服用量をより適切なレベルに調整できるように、患者にアドバイスを提供することを含み得る。この方法はまた、医療専門家が治療薬の服用量を調整できるように及び/又は治療薬を変更できるように、データを医療専門家に提供することも含み得る。
【0112】
前記方法は、患者の現状を、自己管理の範囲内か又は医療専門家の介入を必要とするかに分類することを含み得る。これらのカテゴリーの境界は、前もって決められるか、患者の標準(norms)をモニタリングすることによって適応的に決定されるか、又は患者に最適な効果をもたらすように要望どおりに医療専門家によって設定される。
【0113】
本開示事項において説明される方法は、当該主題の範囲内の、他の方法を除外することを意図するものではない。当該技術分野における当業者は、本開示事項を読み、理解することにより、当該主題の範囲内の他の方法を理解するであろう。
【0114】
当該技術分野における当業者は、発明の様々な実施の形態に関して本明細書に示され説明されているモジュール、電気回路及び方法が、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアの組み合わせを使用して実施され得ることを理解するであろう。それゆえ、示した及び/又は説明したモジュール及び電気回路は、ソフトウェア実行、ハードウェア実行、及びソフトウェア及びハードウェア実行を包含するものとする。
【0115】
尚、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているように、単数形("
a""an"及び"the")は、本記載内容が特に明確に指定しない限り、複数の指示対象を含む。また、一般に、用語「又は(もしくは、あるいは)」は、その意味において、本記載内容が特に明確に指定しない限り、「及び/又は(もしくは、あるいは)」を含むものとして使用されている。
【0116】
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されているように、用語「構成される(configured)」は、特定のタスクを行う又は特定の構造を採用するように構築又は構成されるシステム、装置、又は他の構造物を記述するものである。前記用語「構成される(configured)」は、「配置される(arranged)」、「配置及び構成される(arranged and configured)」、「構築及び配置される(constructed and arranged)」、「作製される(constructed)」、「製造及び配置される(manufactured and arranged)」などの他の同様の語句と同じ意味で使用され得る。
【0117】
本明細書中の全ての公報及び特許出願明細書は、本発明が関連する技術分野における当業者のレベルを示すものである。全ての公報及び特許出願明細書は、それぞれの個々の公報又は特許出願明細書が、具体的かつ個別に引用することによって示される場合と同程度に、ここに引用することにより本明細書の一部とされる。
【0118】
本願は、当該主題の改造物及び変形物をカバーすることを意図するものである。当然のことながら、上記記述は、説明を意図したものであって、限定を意図するものではない。当該主題の範囲は、添付の特許請求の範囲が権利を与えられるものと均等なものの全範囲とともにそれら特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
【0119】
本発明の態様は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるであろう。これらの実施例は、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0120】
実施例1:ポケット内のイオン濃度測定
この研究の目的は、埋込み式心臓除細動器(ICD)を包囲する線維カプセルの、前記装置を直接取り囲んでいるナトリウム、カリウム及びグルコース濃度に対する潜在的影響を評価することであった。12匹のイヌに、ICD装置を埋め込み、標準の実験手順にしたがってケアした。ある一定の期間(下記表1に特定)の後、インプラント被包組織(又はポケット)内から体液を採取し、対応する血清と比較した。12匹のイヌのうちの8匹から、検査に十分な量の体液を採取した(残りの4匹から採取した体液の量は不十分であった)。前記8匹のイヌから得たサンプルに関し、ラジオメーターABL825血液分析物モニターを使用して、K+、Na+、グルコース、並びに、pH及び濃度を測定した。血清サンプルも12匹の動物から採取し、同様にして、ラジオメーターABL800血液分析物モニターで分析した。そのデータを、下記表1に示し、下記表2にまとめる。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
データは基準範囲に対して相対的なデータを示し、K+濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては、正常な濃度から、わずかに上昇した濃度までが見られた(平均比率127%±16%)。Na+濃度は、血清中及びポケット体液中(平均比率100%±2%)において正常であった。グルコース濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては大きく抑制された(平均比率6%±10%)。pH濃度は、血清中正常であり、ポケット体液中においては、正常範囲未満、範囲内、及び範囲を超えてばらつきがあった。本実施例は、K+及びNa+などの生理的イオンが、被包ポケット内から正確に測定され得ることを示している。
実施例2:平面イオン選択光センシング素子
グリセロールを浸潤させたCUPROPHAN(商標)セルロースシート(イリノイ州、シカゴのアクゾ・ノベル・ケミカルズ(Akzo Nobel Chemicals; Chicago,Ill.))を、脱イオン水で洗浄して(10分)、グリセロールを除去する。各シートを、ガラス板上で伸長させ、室温で乾燥させる。
【0124】
A.保護膜
4gのデキストラン(分子量2,000,000)を200mLの脱イオン水中に50℃で溶解させることにより、保護膜溶液を調整する。そして、2gのマラスパースDBOS−4(MARASPERSE DBOS-4R)分散剤(ワイオミング州ロスチャイルドのディアショワ・ケミカルズ・インコーポレーテッド(Diashowa Chemicals,Inc.; Rothschild,Wis.))を加え、その混合物を振盪する。その後、4gのモナーク−700(MONARCH-700R)カーボンブラック(マサチューセッツ州ウォルサムのキャボット社(Cabot Corp.;Waltham,Mass.))を添加し、超音波処理によってカーボンブラックの均一な水分散液を作る。この分散液に、4gの50%(水性)NaOH溶液を掻き混ぜながら添加する。続いて、脱イオン水中50%エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)溶液6gを混合する。得られた保護膜溶液を、前記CUPROPHAN(商標)膜に均一に噴霧し、乾燥させる。
【0125】
B.架橋
350mLの脱イオン水中85gのDMSO及び3gの50%NaOH溶液からなる溶液を準備する。450gの50%水性EGDGE溶液を加えて混合する。この架橋溶液をCUPROPHAN(商標)シート上に注ぎ、1時間保持した後、脱イオン水ですすぐ。
【0126】
C.HDA(1,6−ヘキサンデジアミン(Hexandediamine))反応
架橋CUPROPHAN(商標)膜を2.0Lの脱イオン水中120gの70%HDAの溶液に2時間浸漬し、脱イオン水ですすいで、過剰HDAを洗い流す。
【0127】
D.FCCCカップリング反応
30mLのDMFに30mgのFCCCを溶解させることにより、色素溶液を調整する。続いて、0.8mLの1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)と190mgのベンゾトリアゾール水和物(HOBt)を加え、15分間攪拌し、その後、0.4mLのN,N−ジイソプロピルアミン(DIEA)を攪拌しながら加える。HDA−官能化CUPROPHAN(商標)シートを脱イオン水から取り出してタオルドライし、24時間染浴槽に浸漬させた後、それらの試験片を取り出し、DMFで洗浄した後、希HCl水溶液(pH2−3.5)で洗浄する。
【0128】
E.センサ−パルス発生器装置
FLEXOBOND(商標)430(カリフォルニア州アービンのベーコン・インダストリーズ社(Bacon Industries,Inc.;Irvine,Calif.))などの2液型ポリウレタン接着剤を使用し、薄い(0.175mm)ポリカーボネートシート(ドイツ国レーヴァークーゼンのバイエル社(Bayer AG; Leverkusen, Germany))に、色素結合CUPROPHAN(商標)シートを積層する。ポリカーボネート側に、CW14(商標)感圧接着剤シート(ウィスコンシン州ラシーンのRSW社、特殊テープ部(RSW Inc.,Specialty Tape Div.;Racine,Wis.))を付着し、剥離ライナーを除去する。穿穴機を使用して積層体からディスクを打ち抜き、このディスクを、センシング素子からのカリウム依存発光を測定するための後述のオプトエレクトロニクスを用いて構成されたパルス発生器の光学窓上に配置する。
【0129】
F.カリウムセンサの光学応答
日本国徳島県のニチア化学工業製又はトヨダ合成株式会社製(商品名レドトロニクス(LEDTRONICS(商標))で製造)のGaN LEDを、パルス発生器内に配置し、30kHzの搬送周波数、0.2秒間のバースト持続時間、5秒間の繰返し率、及び2.5mWの平均出力で振幅変調するように構成する。光を集束させ、帯域通過励起フィルター(例えば、390nm±0.25nm;%T=52%;帯域外ブロッキング(out-of-band blocking)=0.001%T;マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn)のスペクトロフィルム(SpectroFilm)から入手可能)を通過させ、パルス発生器の光学窓を通してセンシング素子まで透過させる。戻された変調蛍光を、同様に集光させ、帯域通過発光フィルター(例えば、スペクトロフィルムから入手可能であるような、475±0.35nm;%T=64%;帯域外ブロッキング=0.001%T)を通過させる。次に、ろ波した(filtered)光信号をパルス発生器内に収容されたS1337−33−BR(商標)フォトダイオード検出器(ニュージャージー州ブリッジウォーターのハママツ社(Hamamatsu Corp.;Bridgewater,N.J.)から入手可能)の活性領域上に集束させる。励起光のほんの一部を検出器装置に直接送り、ニュートラル密度フィルターによって減衰させて、LEDからの基準光信号を提供する。さらに、電子スイッチを使用して、検出器の光電流と周波数発生器からの30kHzの電気的基準信号とを交互にサンプリングする。検出器の出力は、フォトダイオード検出器からの光電流を電圧に変換するサテライトセンサ又はパルス発生器内の電子回路に送られる。相互インピーダンス前置増幅段階で、演算増幅回路を使用して、光電流又は基準電気信号を電圧に変換する。次の段階は、信号をさらに増幅しながら雑音電力を帯域制限するように設計された2段階デリイアニス−フレンド・スタイル(Delyiannis-Friend style)帯域通過フィルターである。そして、増幅された光信号又は基準電気信号は、100kHzでディジタル方式でサンプリングされて処理され、分析物濃度を示す蛍光強度を得る。オプションとして、pHセンサ信号もサンプリングされ、カリウムセンサ信号における小さなpH依存変動を補正するために使用される。
実施例3:ヒドロゲル中イオン選択センシング素子
A.1:1ジメチルアクリルアミド:ビニルジメチルアズラクトン(DMA:VDM)共重合体の調製
210部のメチルエチルケトン(MEK)中70部の2−ビニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリン−5−オン(ビニルジメチルアズラクトン、VDM;ニュージャージー州プリンストン(Princeton,N.J.)のSNPEから市場にて入手可能)及び70部のジメチルアクリルアミド(DMA)からなる溶液を、0.7部のN,N'−アゾビス(イソブチロニトリル)開始剤(AIBN、VAZOR64として、バージニア州リッチモンドのワコー・ケミカルズ・ユーエスエー(Wako Chemicals USA)から市場にて入手可能)と混合する。その混合液を、5分間、窒素を使用して拡散させた(sparged)後、ジャーの中に封入し、60℃で24時間、回転式乾燥機で乾燥させる。
【0130】
B.4−(p−アジドサリチアミド(p-Azidosalicyamido))ブチルアミン(ASBA)を使用するDMA:VDMのリソグラフィーパターニング
低照明条件下、25mgの4−(p−アジドサリチアミド)ブチルアミン(ASBA、イリノイ州ロックフォードのピアスケミカル社(Pierce Chemical Co., Rockford, Ill.)から市場にて入手可能)及び10mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドプロモーター(EDC、塩酸塩、イリノイ州ロックフォードのピアスケミカル社)を、0.5mlの95:5(v/v)イソプロパノール:水に溶解させる。この溶液及び1N HCl水溶液一滴を、MEK中50:50のDMA:VDM共重合体(実施例1)の40%(w/w)溶液1mLに添加する。ASBAのブチルアミン部分のアズラクトン官能基への熱的結合を室温で2時間生じさせる。得られた混合液の前記MEK溶液を、PMMA基材上にスピンコーティングし、減圧デシケーター内で15分間乾燥させる。このサンプルを、3分間、フォトマスクを介して365nmで測定された10−30mW/cm2で、紫外線照射にリソグラフィーで露光し、結合ASBAのアジド部分を介して光架橋する。前記マスクを取り除き、前記サンプルを純イソプロピルアルコールで十分に洗浄すると、フォトマスクのパターンに一致するゲルパターンが残る。この二重硬化手法は、ビスアジド架橋剤に比べ、架橋効率を高める。
【0131】
C:アミン−官能性FCCCの調製
半保護モノーN−第三ブチルオキシカルボニル(t−BCC)−プロピレンジアミン(モレキュラー・プローブ−インビトロジェン(Molecular Probes-Invitrogen))は、有機溶媒可溶性カルボン酸類を脂肪族アミン類に変換するのに有用である。反保護脂肪族ジアミンの、FCCCの活性カルボン酸への標準条件下での結合に引き続き、t−BOC基がトリフルオロ酢酸によって定量的に除去される。そして、FCCCの得られた脂肪族アミン誘導体を、直接、アズラクトン官能性ポリマー又はヒドロゲルと反応させる。
【0132】
D:FCCC官能性ヒドロゲルの調製
光架橋組成物の反応性を実証するために、第2のサンプルのアズラクトンヒドロゲルを調整し、以下のように処理する:50nMのアミン−官能性FCCCを、20uLの炭酸−重炭酸バッファー(0.05M、pH9.2)中で溶解させる。針を使用し、光硬化性DMA:VDMコーティング上にこの指示薬溶液の斑点を付ける。このサンプルを、室温で2時間密封加湿容器に入れた後、脱イオン水で洗浄し、脱イオン水中にて10時間インキュベートする。
実施例4:イオンに対し透過性を有するHEMA:PEGMAヒドロゲルフィルムにおけるイオン選択光センシング素子
A:アクリルアミド官能性FCCCの調製
実施例3において説明したように調製したアミン−官能性FCCCを、6−((アクリロイル)アミノ)ヘキサン酸(モレキュラー・プローブ−インビトロジェン)のスクシンイミジルエステルと標準条件下で反応させ、アクリルアミド官能性FCCCを生成する。
【0133】
B:ポリヒドロキシエチルメタクリレート(Polyhema)層の作製
40重量%のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、8.3重量%のポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA、Mn:約360)、1.5重量%のアクリルアミド官能性FCCC、50%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア(Irgacure)651からなる溶液を、2枚のスライドガラスからなる型に入れる。一方のガラスは、疎水性オクタデカシランで処理した表面を持ち、他方のガラスは、トリメチオキシシリルプロピルメタクリレート(trimethyoxysilylpropylmethacrylate)で処理した表面を持ち、厚さ16μmのスペーサによって分離されている。10分間の紫外線照射による重合の後、前記の疎水的に処理されたスライドガラスを取り除き、残りのスライドガラスに共有結合しているHEMA:PEGMAヒドロゲル膜が残り、共有結合的に取り込まれたFCCC蛍光イオノフォアを構成する。
【0134】
C:光学的保護膜
光学的に、実施例2に記載した光学的保護膜を、実施例2の手順にしたがってHEMA:PEGMAヒドロゲル膜上に貼り付ける(apply)。
実施例5:可塑化PVCポリマーを用いたセンシング素子の調製
A:センシングビーズの調製
30重量%のポリ(塩化ビニル)、PVC及び70重量%のビス(エチルヘキシル)セバケート(BEHS)をベースとする微小ビーズを、噴霧乾燥法を用いて調製する。1重量%のPVCと1重量%のBEHSを含むTHF溶液を、ヒートガンからの加熱気流(heated air stream)の下、噴霧器によって噴霧し、PVC/BEHS粒子(直径2.5±1μm)をサイクロン室において収集する。
【0135】
0.5mgの水素イオン選択クロモイオノフォアIII、1.6mgのNaHFPB及び22.3mgのナトリウムイオノフォア、ビス(12−クラウン−4)を含む50mgのBEHS溶液を、300mgのPVC/BEHSビーズに添加し、完全に混合することにより、Na+/pHセンシング微小ビーズを形成する。
【0136】
50mgのBEHS、0.5mgの水素イオン感受性クロモイオノフォアIII、1.6mgのNaHFPB及び6.3mgのカリウムイオノフォアIII(BME−44)を、0.5mlの1,1−ジクロロメタン(DCM)に溶解させる。得られた溶液を5時間放置し、DCMを蒸発させる。この混合物に、300mgのPVC/BEHS微小ビーズを加えた後、完全に混合することにより、K+/pHセンシング微小ビーズを形成する。
【0137】
50mgのBEHS溶液を、300mgのPVC/BEHSビーズに添加し、完全に混合することにより、光学白色基準ビーズを形成する。
【0138】
B:ヒドロゲル中ビーズ懸濁液
センシング及び光学基準ビーズのいずれも、センシングビーズの凝集を防ぐために、ビーズをヒドロゲルマトリックス中に懸濁させ固定する。2mgのセンシング又は基準ビーズを、1mgのPEG、並びに、30重量%のアクリルアミド、1重量%のN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミド及び0.5重量%の光開始剤(イルガキュア2959)を含む1mgのモノマー水溶液とよく混合する。その懸濁液を2枚のスライドガラスの間に配置した後、紫外線照射によって15分間光重合する。
【0139】
C:ポリHEMAをベースとするセンサ本体の作製
スペーサによって分離された2枚のスライドガラスの間にあるモノマー溶液に適用される光重合法を用いて高分子板を作製することにより、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)をベースとするセンサ本体を準備する。得られたポリマーの、ガラス表面に対する強力な付着を防ぐために、オクタデシルシランを有する表面修飾(surface modified)スライドガラスを使用する。前記スライドガラス(25×75×1mm)は、1N HNO3溶液中、70℃で2時間浄化し、冷却した後、ミリQ水ですすいだ。オーブンで乾燥させた後、洗浄されたスライドガラスを1.5gのオクタデシルトリクロロシランと共に1Lのトルエン中に置き、還流させながら6時間加熱する。このようにして、表面修飾スライドガラスは、エタノール及びミリQ水で洗浄され、光重合用の基材として使用される。
【0140】
80重量%のHEMA、8.0重量%のPEGMA(ポリ(エチレングリコール)メタクリレート)、2.0重量%のDEGDMA(ジ(エチレングリコール)ジメタクリレート)、9.8重量%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア651からなる溶液を、厚さ400μmのスペーサによって分離された2枚の表面修飾スライドガラスから成る型に移す。前記溶液は、10分間の低強度365nm紫外線照射(約2mW/cm2)により、重合されて架橋ヒドロゲルを形成する。重合後、このようにして準備したポリHEMA膜を、型から取り除く。各センシングカプセル用の前記ポリHEMA膜にウェルを作製するために、直径1mmの4つの孔が1.3mmの間隔で線状に配列された、厚さ200μmの黄銅板から成るマスクと共にエキシマレーザを使用し、単一センサ本体にセンサコンパートメントを作る。良好にレーザで穴を開けた後、ウェルを有するポリHEMA膜を脱イオン水で洗浄する。
【0141】
D:センサ窓膜の作製
センサ窓膜を準備するために、32.9重量%のHEMA、16.9重量%のPEGMA、50重量%の脱イオン水及び0.2重量%のイルガキュア651からなる溶液を、厚さ16μmのスペーサによって分離された疎水性表面を有する2枚のスライドガラスから成る型に入れる。12分間の紫外線照射による重合の後、型のスライドガラスの一方を注意深く取り除く。この場合、厚さ16μmのポリHEMA窓膜が別のスライドガラスの表面上に残る。
【0142】
E.ウェルを備えたセンサ本体の作製
センサ本体を窓膜と付着させるために、スライドガラス上の、上記のようにして作製された窓膜の表面に、10μLの前記モノマー溶液を塗布し広げる。その後、そのセンサ本体を窓膜上に置き、スライドガラスで覆い、大型クリップでクランプする。15分間の紫外線照射により、底部が密封されたウェルを有する、前記ポリHEMAをベースとするセンサ本体が良好に作製される。
【0143】
F.センサウェルの充填及びセンサの作製完了
こうして準備されたセンサ本体を、密封された底部を下にしてスライドガラス上に置き、センサ本体の端部をスコッチテープで固定する。各センサコンパートメントに、3つのウェルを有するセンサ本体用のNa+/pHセンシングビーズ、K+/pHセンシングビーズ、及び光学白色ビーズを、実体顕微鏡下、微小ガラスロッドを用いて充填する。
【0144】
疎水性表面を有するスライドガラス上の窓膜の別の試験片を、上記と同様の方法を用いて準備する。10μLの上記モノマー溶液を、窓膜の表面に塗布し広げる。前記テープを取り除いた後、スライドガラス上のビーズが充填されたセンサ本体を、前記スライドガラスと共に上記のように準備された窓膜で覆い、大型クリップでクランプする。15分間の紫外線照射により、センサ本体内のビーズを含む全てのウェルを別の窓膜で密封する。この時点で、これらのセンサの実験のための準備が整う。
【0145】
G.K+センサの光学応答
pH7.4のトリス塩酸バッファーにおいて光学K+センサの反射スペクトルを、光ファイバスペクトロメータ(例えば、BIF400UV−VIS、カリフォルニアのオーシャン・オプティクス(Ocean Optics,CA))を用いて測定する。0mM〜10mMK+の範囲に渡ってカリウムイオン濃度が高くなるにつれ、505nmでの反射率(クロモイオノフォアIIIの酸性型に対応)は低下する一方で、580nmでの反射率(クロモイオノフォアIIIの塩基型に対応)は高くなる。前記白色ビーズは、これらの測定に際し、光学基準として使用することができる。オプションとして、505及び580nmでの反射率の比を、カリウムイオン濃度の算出に使用することができる。
【0146】
また、膜の光学的な特徴付け(optical characterization)は、蛍光分光によって行われる。膜がカリウムイオンと接触すると、膜からプロトンが放出され、蛍光特性において測定可能な変化をもたらす。発光ピークは、647nm及び683nmで観察される。前者は、クロモイオノフォアIIIのプロトン化体に対応し、後者は脱プロトン化体に対応する。サンプル中のK+濃度が上昇すると、647nmでのプロトン化ピークは低くなり、683nmでの脱プロトン化ピークは高くなる。レシオメトリック分析(ratiometric analysis)は、フォトブリーチング及びランプ強度のばらつきの影響を最小限にできることが報告されている。従って、2つのピーク(647及び683nm)の強度比は、絶対蛍光の代わりに使用される。
【0147】
H.センサ構造物
上記センサビーズをベースとするコーティング可能な精密センサ構造物が作製される。その方法は、(1)アクリルアミド及びビス−アクリルアミドモノマー及びポリエチレングリコールオリゴマーを、センサビーズ又はセンシング色素、及び熱又は光化学硬化剤と混合すること、(2)前記混合液をセンサバッキング上にコーティングすること、(3)硬化を開始し、ヒドロゲルの形成及びセンサバッキング上のウェルへのヒドロゲルの付着を促進させること、(4)得られたヒドロゲル組成物へのHEMA窓膜の形成及び付着を含む。
【0148】
多層積層センサが作製される。その方法は、(1)オプションとして酢酸セルロース膜に、窓膜としての熱又は光架橋されたHEMAポリマーを含浸させること、(2)分割されたスペーサ層が透析膜に接着され、センサビーズが充填された空間を有すること、(3)光学窓が分割されたスペーサ層に接着されることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態における化学センサを備えた埋込み式医療装置(IMD)の態様を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図3】図3は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図4】図4は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図5】図5は、本発明の別の実施の形態における化学センサを備えたIMDを概略的に示す。
【図6】図6は、様々な実施の形態における、ヘッダーに化学センサを備えた埋込み式医療装置(IMD)を示す。
【図7】図7は、様々な実施の形態における、埋込み式医療装置(IMD)の本体と一体化された化学センサを備えた前記装置を示す。
【図8】図8は、様々な実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図9】図9は、本発明の別の実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施の形態におけるセンシング素子の断面図である。
【図11】図11は、生理学的分析物濃度を測定する装置の一実施の形態を概略的に示す。
【図12】図12は、本発明の一実施の形態における、光センサを操作するためのデューティサイクルスキームを概略的に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込み式医療装置であって、
パルス発生器、及び
前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサは体液中のイオン濃度を検出するように構成され、前記化学センサが、
センシング素子、
前記センシング素子を照射するように構成された光励起装置、及び
前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置
を含む、埋込み式医療装置。
【請求項2】
前記センシング素子が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びに、それらの混合物及び共重合体からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項2に記載の埋込み式医療装置。
【請求項4】
前記センシング素子が、第一の面及び第二の面を有し、前記第一の面は前記第二の面に対向しており、前記光励起装置及び前記光検出装置がいずれも前記第一の面に配置されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項5】
前記センシング素子の前記第二の面に配置された不透明カバー層をさらに含み、前記不透明カバー層がイオン透過性ポリマーマトリックスを含む、請求項4に記載の埋込み式医療装置。
【請求項6】
前記化学センサが、前記パルス発生器と無線で通信するように構成された通信インターフェイスを備えた、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項7】
前記化学センサが、無線周波数リンク、超音波リンク又は音響リンクを介して前記パルス発生器と通信するように構成された通信インターフェイスを備えた、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項8】
前記化学センサが、電気的又は光学的に前記パルス発生器に連結されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項9】
前記化学センサが、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム及びヒドロニウムからなる群から選択されるイオンを検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項10】
前記センシング素子が、錯体部分(complexing moiety)及び蛍光部分(fluorescing moiety)を含み、前記蛍光部分が、イオンに対する前記錯体部分の結合に基づいて異なった蛍光強度を示す、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項11】
前記錯体部分が、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリクサレン類、非環状アミド類、ヘミスフェランド類、及びイオン選択抗生物質からなる群から選択される、請求項10に記載の埋込み式医療装置。
【請求項12】
前記センシング素子が、リチウム特異的(specific)蛍光イオノフォア類、ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類、及びカリウム特異的蛍光イオノフォア類からなる群から選択される蛍光イオノフォア(fluoroionophore)を含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項13】
前記センシング素子が、2つの異なる波長で光を蛍光放射するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項14】
前記センシング素子が、錯体部分及び比色部分(colorimetric moiety)を含み、イオンが前記錯体部分に結合すると前記比色部分が差吸光度(differential light absorbance)を示す、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項15】
前記錯体部分が、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリクサレン類、非環状アミド類、ヘミスフェランド類、及びイオン選択抗生物質からなる群から選択される、請求項14に記載の埋込み式医療装置。
【請求項16】
前記センシング素子が、ナトリウム特異的イオノフォア類、カリウム特異的イオノフォア類、カルシウム特異的イオノフォア類、マグネシウム特異的イオノフォア類、及びリチウム特異的イオノフォア類からなる群から選択されるイオノフォアを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項17】
前記体液が、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項18】
前記光励起装置が光源を備え、前記光源が発光ダイオードを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項19】
前記光励起装置が、
第1の発光ダイオード、及び
第2の発光ダイオード
を備え、前記第1及び第2の発光ダイオードが、異なる波長で光を放射するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項20】
前記光検出装置が、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、接合型電界効果トランジスタ(JFET)光センサ、及び相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光センサからなる群から選択されるコンポーネントを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項21】
前記パルス発生器が、
パルス発生器回路、及び
前記パルス発生器回路を封入するように構成された埋込み式ハウジング
を含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項22】
前記化学センサが、前記埋込み式ハウジングに連結されている、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項23】
前記埋込み式ハウジングが、透明部材によって閉塞される開口部を区画し、前記センシング素子が、前記透明部材を介して前記光励起装置及び前記光検出装置と光通信する、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項24】
心臓ペーシングリード、及び
前記埋込み式ハウジングに連結され、前記心臓ペーシングリードと前記パルス発生器との間に電気的接続を提供するように構成された装置ヘッダーをさらに含み、
前記化学センサが前記装置ヘッダーに連結されている、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項25】
前記化学センサが連結された心臓ペーシングリードをさらに含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項26】
前記埋込み式医療装置が、ペースメーカー、心臓再同期療法(CRT)装置、リモデリング制御治療(RCT)装置、電気除細動器/除細動器、ペースメーカー‐電気除細動器/除細動器、及び血行動態モニターのうちの1つを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項27】
前記化学センサが、グルコース、クレアチニン、乳酸塩、尿素、脳神経ペプチド(BNP)、一酸化窒素、及びトロポニンからなる群から選択される第2の生理学的分析物を検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項28】
前記化学センサが、カリウムイオンの濃度及び腎機能を示す生理学的分析物の濃度を検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項29】
埋込み式心調律管理装置であって、
パルス発生器、及び
前記パルス発生器と通信する化学センサとを備え、前記化学センサは体液中の分析物濃度を検出するように構成され、前記化学センサが、
センシング素子、
前記センシング素子を照射するように構成された光励起装置、及び
前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置
を含む、埋込み式心調律管理装置。
【請求項30】
患者に対して心不整脈治療を提供する方法であって、
埋込み式化学センサを用いて、前記患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的に測定することと、
前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することと、
部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記埋込み式パルス発生器から前記患者に対して治療を施すことと
を含む方法。
【請求項31】
前記体液の非イオン性成分の生理的濃度を光学的にセンシングすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することが、データを前記埋込み式パルス発生器に無線で送信することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、テレメトリリンクを介して医療専門家に報告することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、前記患者の心肺系に関するデータと組み合わせ、前記患者の心臓の状態に関する複合プロファイルを作成することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記患者の心臓の健康に関する前記複合プロファイルを、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記患者の心肺系に関する前記データが、心電図(EKG)信号、呼吸速度、加速度計データ、胸廓内インピーダンス(trans-thoracic impedance)、リードインピーダンス(lead impedance)、心臓容積、血圧、体重、及び心臓壊死信号からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
利尿治療モニタリング方法であって、
患者の体液中のイオンの生理的濃度を、埋込み式化学センサを用いて光学的にセンシングすることと、
前記イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することと、
部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記患者に対する前記利尿治療の実施を変更することと
を含む方法。
【請求項39】
前記患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にセンシングすることが、カリウムイオン濃度を光学的に測定することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
腎機能を示す化学物質の濃度を、前記埋込み式化学センサを用いて光学的に測定することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記生理的イオン濃度及び前記腎機能を示す化学物質の濃度を、医療専門家に報告することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記生理的イオン濃度及び前記腎機能を示す化学物質の濃度を、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記腎機能を示す化学物質が、クレアチニン又は尿素を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、低カリウム血症又は高カリウム血症を患っているかどうか判断することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記体液が、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
人体へ活性剤を送ることを制御する方法であって、前記方法が、
パルス発生器、並びに、センシング素子、光励起装置、及び光検出装置を含む化学センサを備えた埋込み式システムを用いて、1つ以上の分析物の生理的濃度を測定することと、
前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の送りを変更することとを含む方法。
【請求項47】
前記1つ以上の分析物が、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム及びヒドロニウムからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記1つ以上の分析物が、腎機能を示す分析物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ以上の分析物が、心機能を示す分析物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記活性剤が利尿薬を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
生理的濃度を測定することが、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される体液中の濃度を測定することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項1】
埋込み式医療装置であって、
パルス発生器、及び
前記パルス発生器と通信する化学センサを備え、前記化学センサは体液中のイオン濃度を検出するように構成され、前記化学センサが、
センシング素子、
前記センシング素子を照射するように構成された光励起装置、及び
前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置
を含む、埋込み式医療装置。
【請求項2】
前記センシング素子が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、及びヒドロニウムイオンに対して透過性を有するポリマーマトリックスを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスが、セルロース、ポリビニルアルコール、デキストラン、ポリウレタン類、四級化ポリスチレン類、スルホン化ポリスチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリヒドロキシアルキルアクリレート類、ポリビニル・ピロリドン類、ポリアミド類、ポリエステル類、並びに、それらの混合物及び共重合体からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項2に記載の埋込み式医療装置。
【請求項4】
前記センシング素子が、第一の面及び第二の面を有し、前記第一の面は前記第二の面に対向しており、前記光励起装置及び前記光検出装置がいずれも前記第一の面に配置されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項5】
前記センシング素子の前記第二の面に配置された不透明カバー層をさらに含み、前記不透明カバー層がイオン透過性ポリマーマトリックスを含む、請求項4に記載の埋込み式医療装置。
【請求項6】
前記化学センサが、前記パルス発生器と無線で通信するように構成された通信インターフェイスを備えた、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項7】
前記化学センサが、無線周波数リンク、超音波リンク又は音響リンクを介して前記パルス発生器と通信するように構成された通信インターフェイスを備えた、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項8】
前記化学センサが、電気的又は光学的に前記パルス発生器に連結されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項9】
前記化学センサが、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム及びヒドロニウムからなる群から選択されるイオンを検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項10】
前記センシング素子が、錯体部分(complexing moiety)及び蛍光部分(fluorescing moiety)を含み、前記蛍光部分が、イオンに対する前記錯体部分の結合に基づいて異なった蛍光強度を示す、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項11】
前記錯体部分が、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリクサレン類、非環状アミド類、ヘミスフェランド類、及びイオン選択抗生物質からなる群から選択される、請求項10に記載の埋込み式医療装置。
【請求項12】
前記センシング素子が、リチウム特異的(specific)蛍光イオノフォア類、ナトリウム特異的蛍光イオノフォア類、及びカリウム特異的蛍光イオノフォア類からなる群から選択される蛍光イオノフォア(fluoroionophore)を含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項13】
前記センシング素子が、2つの異なる波長で光を蛍光放射するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項14】
前記センシング素子が、錯体部分及び比色部分(colorimetric moiety)を含み、イオンが前記錯体部分に結合すると前記比色部分が差吸光度(differential light absorbance)を示す、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項15】
前記錯体部分が、クリプタンド類、クラウンエーテル類、ビス−クラウンエーテル類、カリクサレン類、非環状アミド類、ヘミスフェランド類、及びイオン選択抗生物質からなる群から選択される、請求項14に記載の埋込み式医療装置。
【請求項16】
前記センシング素子が、ナトリウム特異的イオノフォア類、カリウム特異的イオノフォア類、カルシウム特異的イオノフォア類、マグネシウム特異的イオノフォア類、及びリチウム特異的イオノフォア類からなる群から選択されるイオノフォアを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項17】
前記体液が、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項18】
前記光励起装置が光源を備え、前記光源が発光ダイオードを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項19】
前記光励起装置が、
第1の発光ダイオード、及び
第2の発光ダイオード
を備え、前記第1及び第2の発光ダイオードが、異なる波長で光を放射するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項20】
前記光検出装置が、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、接合型電界効果トランジスタ(JFET)光センサ、及び相補型金属酸化膜半導体(CMOS)光センサからなる群から選択されるコンポーネントを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項21】
前記パルス発生器が、
パルス発生器回路、及び
前記パルス発生器回路を封入するように構成された埋込み式ハウジング
を含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項22】
前記化学センサが、前記埋込み式ハウジングに連結されている、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項23】
前記埋込み式ハウジングが、透明部材によって閉塞される開口部を区画し、前記センシング素子が、前記透明部材を介して前記光励起装置及び前記光検出装置と光通信する、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項24】
心臓ペーシングリード、及び
前記埋込み式ハウジングに連結され、前記心臓ペーシングリードと前記パルス発生器との間に電気的接続を提供するように構成された装置ヘッダーをさらに含み、
前記化学センサが前記装置ヘッダーに連結されている、請求項21に記載の埋込み式医療装置。
【請求項25】
前記化学センサが連結された心臓ペーシングリードをさらに含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項26】
前記埋込み式医療装置が、ペースメーカー、心臓再同期療法(CRT)装置、リモデリング制御治療(RCT)装置、電気除細動器/除細動器、ペースメーカー‐電気除細動器/除細動器、及び血行動態モニターのうちの1つを含む、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項27】
前記化学センサが、グルコース、クレアチニン、乳酸塩、尿素、脳神経ペプチド(BNP)、一酸化窒素、及びトロポニンからなる群から選択される第2の生理学的分析物を検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項28】
前記化学センサが、カリウムイオンの濃度及び腎機能を示す生理学的分析物の濃度を検出するように構成されている、請求項1に記載の埋込み式医療装置。
【請求項29】
埋込み式心調律管理装置であって、
パルス発生器、及び
前記パルス発生器と通信する化学センサとを備え、前記化学センサは体液中の分析物濃度を検出するように構成され、前記化学センサが、
センシング素子、
前記センシング素子を照射するように構成された光励起装置、及び
前記センシング素子から受光するように構成された光検出装置
を含む、埋込み式心調律管理装置。
【請求項30】
患者に対して心不整脈治療を提供する方法であって、
埋込み式化学センサを用いて、前記患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的に測定することと、
前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することと、
部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記埋込み式パルス発生器から前記患者に対して治療を施すことと
を含む方法。
【請求項31】
前記体液の非イオン性成分の生理的濃度を光学的にセンシングすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記イオンの生理的濃度に関するデータを埋込み式パルス発生器に送信することが、データを前記埋込み式パルス発生器に無線で送信することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、テレメトリリンクを介して医療専門家に報告することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
前記イオンの生理的濃度に関する前記データを、前記患者の心肺系に関するデータと組み合わせ、前記患者の心臓の状態に関する複合プロファイルを作成することをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
前記患者の心臓の健康に関する前記複合プロファイルを、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記患者の心肺系に関する前記データが、心電図(EKG)信号、呼吸速度、加速度計データ、胸廓内インピーダンス(trans-thoracic impedance)、リードインピーダンス(lead impedance)、心臓容積、血圧、体重、及び心臓壊死信号からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
利尿治療モニタリング方法であって、
患者の体液中のイオンの生理的濃度を、埋込み式化学センサを用いて光学的にセンシングすることと、
前記イオンの生理的濃度に関するデータを、埋込み式パルス発生器に伝達することと、
部分的に前記イオンの生理的濃度に基づいて前記患者に対する前記利尿治療の実施を変更することと
を含む方法。
【請求項39】
前記患者の体液中のイオンの生理的濃度を光学的にセンシングすることが、カリウムイオン濃度を光学的に測定することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
腎機能を示す化学物質の濃度を、前記埋込み式化学センサを用いて光学的に測定することをさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記生理的イオン濃度及び前記腎機能を示す化学物質の濃度を、医療専門家に報告することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記生理的イオン濃度及び前記腎機能を示す化学物質の濃度を、テレメトリリンクを介して非埋込み式装置に報告することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記腎機能を示す化学物質が、クレアチニン又は尿素を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記患者が、低カリウム血症又は高カリウム血症を患っているかどうか判断することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記体液が、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
人体へ活性剤を送ることを制御する方法であって、前記方法が、
パルス発生器、並びに、センシング素子、光励起装置、及び光検出装置を含む化学センサを備えた埋込み式システムを用いて、1つ以上の分析物の生理的濃度を測定することと、
前記1つ以上の分析物の測定濃度に応じて、少なくとも部分的に、前記物質の送りを変更することとを含む方法。
【請求項47】
前記1つ以上の分析物が、カリウム、ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、リチウム及びヒドロニウムからなる群から選択される少なくとも1つのイオンを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記1つ以上の分析物が、腎機能を示す分析物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記1つ以上の分析物が、心機能を示す分析物を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記活性剤が利尿薬を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
生理的濃度を測定することが、血液、間質液、血清、リンパ液、及び漿液からなる群から選択される体液中の濃度を測定することを含む、請求項46に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−537247(P2009−537247A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511204(P2009−511204)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/068954
【国際公開番号】WO2007/137037
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2007/068954
【国際公開番号】WO2007/137037
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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