説明

化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法及び袋

【課題】建物の内装用の化粧シートまたは壁紙から切り取られた端切れを袋等に加工して、廃棄物となる端切れを有効利用してリサイクルに貢献する。
【解決手段】
化粧シート2の端切れ3を折って組み立てて、側縁や底縁を接着して袋1を製作する。この接着のための接着剤は、上記水が浸透する親水性の化粧シート2に浸透しない、疎水性、油性または親油性のものが選ばれ、ゴム系接着剤が最適である。薄い金属フィルムを挟んで、袋1を組み立てる前の化粧シート2の表面に対して、凸版の押し版12を加熱して押しつける。この押し版12の加熱温度・転写温度、凸版の深さまたは加圧力は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる「通常」の加熱温度・転写温度、凸版の深さまたは加圧力に比べ、10%乃至60%または20%乃至70%増加される。これにより、化粧シート2の表面に凹凸があっても、転写箔11をきれいに転写付着できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法及び袋等に関し、特に建築物の壁面または天井等に貼られる、内装用の化粧シートまたは壁紙の不要な端切れを有効に利用した袋の生産方法及び袋等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の内壁等に壁面の補強や装飾のために、壁紙や化粧シート等が貼られることが多い。ところが、このような壁紙や化粧シート等を貼ると、余った壁紙や化粧シート等は廃棄物として処理される。しかし、このような余った壁紙や化粧シートを廃棄していたのでは地球資源にとって無駄であり、環境への負荷も大きかった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−355373号公報
【特許文献2】登録実用新案第2527598号公報
【特許文献3】特開2002−347745号公報
【特許文献4】特開平6−210769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件発明の課題は、廃棄される壁紙や化粧シート等をリサイクルし、地球資源を有効利用し、廃棄物を少なくして、環境負荷を少なくする、化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法及び袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法及び袋は、 建物の内装用の化粧シートまたは壁紙から切り取られた端切れにつき、 この切られた端切れを折って、当該化粧シートまたは壁紙の端切れの端部を互いに接着して袋を形成するようにした。
【0006】
また、本発明は、上記袋の表面には転写箔が転写されており、 上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さは十分の数mm乃至数mmであり、 上記転写箔を上記化粧シート表面に押圧転写する押し版は凸版であり、 上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の凸版の高低差または深さに対して、当該凸版の高低差または深さは5%乃至50%大きくまたは深くされ、 この5%乃至50%の増大量は、上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さとほぼ同じまたはより大きいようにした。
【発明の効果】
【0007】
これにより、廃棄される壁紙や化粧シート等の端切れをリサイクルし、地球資源を有効利用し、廃棄物を少なくして、環境負荷を少なくできる。 また、袋等を生産するにあたって新たに石油等の地球資源を全く使用しないので地球資源の節約にもなる。 さらに、このようなリサイクル袋の凹凸のある表面に、浮き、抜け、離脱なく、しっかりときれいに転写箔を転写・付着できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(1)袋1の構造
図1は袋1の最初の組み立て図を示し、図2は袋1の次の組み立て図を示し、図3は組み立てられた袋1を示す。化粧シート2は、建築物の内壁等に壁面の補強や装飾のために貼られる。図1及び図2における化粧シート2(壁紙、化粧紙及び壁シートを含む。以下同じ)は、この建築物の内壁等に壁面の補強や装飾のために貼られた、残りの端切れ3であり、通常は廃棄物として適法に廃棄される。
【0009】
このような端切れ3の化粧シート2を廃棄せずに、袋1にリサイクルすれば、地球資源を有効利用し、廃棄物を少なくして、環境負荷を少なくできる。袋1は、手提げ用又は小脇に抱えるものであり、小物、その他の物を収納・包装して運搬できる。
【0010】
このような化粧シート2の裏面は凹凸の少ない滑らかなコピー用紙、PPC用紙のような表面となっている。この化粧シート2の裏面の凹凸は数ミクロンメートル乃至数十ミクロンメートルであり、手触りまたは肉眼ではほとんど凹凸は分からない。化粧シート2の表面は細かい凹凸が多く、この凹凸による種々の形状をなし、種々の色彩が施され、場合によって模様も施されている。
【0011】
この化粧シート2の表面の凹凸の高低差または深さは、十分の数mm乃至数mm、例えば0.1mm乃至1.0mm、具体的には0.4mm乃至0.7mmである。また、この化粧シート2の凹から凸までの平均周期長は数mm、例えば1mm乃至5mm、具体的には2乃至4mmである。この化粧シート2の表面は凹凸がなく、裏面のように滑らかでもよいし、模様が無くてもよい。
【0012】
このような化粧シート2の表面または裏面の材質は、加圧加工、型抜き加工、エンボス加工、不織布、織成、その他の成型などによって、ポリ塩化ビニル、ポリビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ウレタン、その他の樹脂、繊維、布、紙、木材、竹、カーボン、これらの合成物/混合物/多層積層物からなっており、水が浸透する親水性であり、油が浸透しない非親油性・非疎水性である。
【0013】
親水性とは、水を引きつける性質であり、水に親和性が強いことである。親油性とは、水分をはじき易く、油分をはじきにくい性質である。疎水性とは、水と反発する性質であり、親油性と同じ性質である。化粧シート2が多層の場合には、裏面側が親水性となり、表面側は親水性でも親油性でも疎水性でもよい。
【0014】
このような端切れ3の化粧シート2は、方形状に切断され、この方形の両端縁部は互いに重ねられ、化粧シート2の端縁の表面と同じく端縁の裏面とが接着剤で接着され、筒状に形成される。
【0015】
また、この筒状の底の部分は折り込まれ、化粧シート2の裏面どうしが接着剤で接着されて、ほぼ台形状または三角形状の2つの山型片4が形成され、この2つの山型片4の内側であって、化粧シート2の表面側に接着剤が塗布されて、互いに重ね合わせるように2つの山型片4が接着されて、袋1の長方形状の底が形成される。これにより、袋1は直方体状に成形され、上方は開口される。
【0016】
上記筒状の袋1の長方形状の開口の上縁は数cm内側へ折り返され、この折り返し部5のさらに中には、圧紙が内蔵されて、袋1の型崩れを防止している。この長方形枠状の折り返し部5の2つの長辺の中央には2つの穴が水平方向に並んで開けられ、この2つの穴にわたって手提げ紐6が挿通固定される。
【0017】
(2)接着剤
上記接着剤は化粧シート2に浸透しない、例えばゴム系接着剤などであり、その一例は以下の成分からなり、以下の特性を有する。成分は、シクロヘキサン15乃至60重量%、アセトン5乃至30重量%、酢酸イソプロピル2.5乃至15重量%、ヘキサン重合体(n−ヘキサン)2.5乃至15重量%、メチルペンタン0.5乃至7.5重量%、シリカ0.01乃至1重量%、ロジン0.01乃至1重量%、トール油樹脂(ロジン)0.01乃至1重量%、2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェノール0.01乃至1重量%等からなる。
【0018】
このような成分の一部または全部は、他のものにも置き換えられ得る。例えば、上記アセトンは、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ベンゼン、アルデヒド等に置き換え可能である。また、上記酢酸イソプロピル、n−ヘキサン、メチルペンタン等は、スチレン重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ビニル・イソプレン重合体、クロロプレン重合体、アルキルフェノール重合体、共役ジエン系ゴム、ロジンエステル重合体、テルペンフェノール重合体等に置き換え可能である。
【0019】
接着材は上記のものに限られず、上記水が浸透する親水性の化粧シート2に浸透しない、非水性、疎水性、油性または親油性のものが選ばれ、ゴム系接着剤が最適である。このような接着剤は、化粧シート2に塗布した後、数十秒間乃至数分間、例えば15秒間乃至3分間、乾燥させてから、化粧シート2どうしが接着される。この乾燥によって、揮発性成分が一部または全部蒸発して、接着剤が粘着性を帯びて、化粧シート2どうしを良く接着させるからである。
【0020】
このような接着剤の上記化粧シート2に対する接着力/剥離力は、実験の結果、4KN/m以上であった。また、上記接着剤の不揮発分が20%乃至40%であり、摂氏23度における密度は0.4g/m2乃至1.8g/m2である。このような特性によって、上述のように乾燥によって最適な粘着性及び粘着力となる。
【0021】
上記粘着性は乾燥前にあってもよいが、乾燥前にはあまりないほうがよい。なぜなら、乾燥前に粘着性があると、化粧シート2に接着剤を塗布の時に、広く塗り延ばす塗布に不具合だからである。塗布時に粘着性を弱めるには、粘着性のある不揮発成分に対して、粘着性の無い揮発成分を多くする。
【0022】
このような揮発性成分は、上記アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、ベンゼン、アルデヒド等であるが、これらに限られない。また、上記酢酸イソプロピル、n−ヘキサン、メチルペンタン、スチレン重合体、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、ビニル・イソプレン重合体、クロロプレン重合体、アルキルフェノール重合体、共役ジエン系ゴム、ロジンエステル重合体、テルペンフェノール重合体等は、不揮発成分であり、ゴム系接着成分となる。ゴム系接着成分はこれらに限られない。
【0023】
化粧シート2の滑らかな裏面と凹凸のある表面とを接着させるときには、0.1g乃至5g/cm2塗布され、化粧シート2の凹凸のある表面どうしを接着させるときには、0.2g乃至10g/cm2塗布され、凹凸のある表面どうしを接着させるときの方が塗布量は多くなる。これにより、化粧シート2どうしをしっかりと接着できる。なお、化粧シート2の滑らかな裏面どうしを接着させるときには、0.05g乃至2.5g/cm2塗布される。
【0024】
実験では、上記塗布量未満であると、接着力が不十分で、袋1を使用しているうちに、袋1の接着部分が剥がれてしまった。また同じく実験では、上記塗布量を越えると、逆に十分な粘着力が発生せず、やはり接着力が不十分で、袋1を使用しているうちに、袋1の接着部分が剥がれてしまった。したがって、最適な接着状態を得るには、上記塗布量の範囲内が最適であった。
【0025】
このような化粧シート2(壁紙)の接着剤には、建築物の内壁等に貼られるときには、化粧シート2に浸透する、デンプン糊などの水性または親水性の接着剤が用いられる。これは、化粧シート2が上述のように、水が浸透する親水性であるため、接着剤が浸透しないと、コンクリート、木材、板材等に接着できないからである。
【0026】
上記ゴム系接着剤は、例えば、特開2005−75876号公報、特開2005−8713号公報、特開平11−50031号公報、特開2000−319605号公報等に示されており、これらの公報の記載事項は、本願明細書にも、そのままそっくり記載されているものとする。
【0027】
(3)転写箔11
図4は転写箔11を転写するための押し版12、転写箔11及び化粧シート2を示す。この転写は、薄い金属フィルムを挟んで、袋1を組み立てる前の化粧シート2の表面に対して、凸版の押し版12を加熱して押しつける。なお、上記図1乃至図3において「NAGOYA」と表記されている部分が転写箔11である。
【0028】
上記転写箔11の厚さは、数ミクロンメートル乃至数ミリメートルであり、例えば数十ミクロンメートル乃至数百ミクロンメートルであって、材質は金、銀、白金、銅、真鍮、クロム、アルニウム、ニッケル、チタン、ステンレスまたはこれらの合金、若しくは樹脂、木材、ガラス、竹、カーボン、これらの合成物/混合物/多層積層物などである。
【0029】
上記凸版の押し版12の加熱温度・印刷温度は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる通常の加熱温度・転写温度に対して10%乃至60%、望ましくは20%乃至40%上昇される。例えば、通常の転写の温度が摂氏100度の転写箔11であれば、押し付けの時の押し版12の加熱温度は、摂氏110度乃至160度、望ましくは摂氏120度乃至140度となる。
【0030】
また、通常の転写の温度が摂氏90度の転写箔11であれば、押し付けの時の押し版12の加熱温度は、摂氏99度乃至144度、望ましくは摂氏108度乃至126度となり、同じく80度の転写箔11であれば、押し付けの時の押し版12の加熱温度は、摂氏88度乃至128度、望ましくは摂氏96度乃至112度となり、…、とされる。
【0031】
また、通常の転写の温度が摂氏110度の転写箔11であれば、押し付けの時の押し版12の加熱温度は、摂氏121度乃至176度、望ましくは摂氏132度乃至154度となり、同じく120度の転写箔11であれば、押し付けの時の押し版12の加熱温度は、摂氏132度乃至192度、望ましくは摂氏144度乃至154度となり、…、とされる。
【0032】
これにより、押し付け転写される金属フィルムが化粧シート2の表面の凹凸に沿って変形し易くなるとともに、化粧シート2自体も柔らかくなって凹凸が変形し易くなり、転写箔11の一部抜け、一部浮き、一部離脱がなく、しっかりときれいに転写箔2全体が化粧シート2の表面に剥がれないように転写・付着される。
【0033】
このような加熱温度・転写温・印刷温度は、上記化粧シート2を柔らかくして表面の凹凸を平坦にできる温度、または転写箔11が化粧シート2の表面の凹凸に応じた大きさ分変形できる温度にされ、化粧シート2の材質・強度・厚さや凹凸の大きさ、または転写箔11の材質・強度・厚さによって決まる。
【0034】
上記押し版12は、マグネシウム、銅、真鍮、亜鉛、クロム、すず、アルニウム、ニッケル、鉄、鉛、タングステン、チタン、ステンレス、白金、金、銀、またはこれらの合金、若しくは樹脂、木材、ガラス、竹、カーボン、これらの合成物/混合物/多層積層物などからなる。
【0035】
上記押し版12の凸版の凹凸の高低差つまり深さ(ブランケット面と版面との差を含む。以上及び以下同じ)は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まるものであり、0.5mm乃至10mmほどであるが、望ましくは0.6m乃至8.0mm、より望ましくは0.7mm乃至6.0mm、さらに望ましくは0.8mm乃至4.0mmほどである。
【0036】
しかし、この押し版12の凸版の凹凸の高低差つまり深さは、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる版の深さより、20%乃至70%、望ましくは30%乃至60%深く大きくされる。例えば、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる通常の押し版12の凸版の深さが、0.6mmであれば、0.72mm乃至1.02mm、望ましくは0.78mm乃至0.96mmとされ、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる通常の押し版12の凸版の深さが、0.8mmであれば、0.96mm乃至1.36mm、望ましくは1.04mm乃至1.28mmとされる。
【0037】
同じく1mmであれば、1.2mm乃至1.7mm、望ましくは1.3mm乃至1.6mmとされ、同じく2mmであれば、2.4mm乃至3.4mm、望ましくは2.6mm乃至3.2mmとされ、同じく3mmであれば、3.6mm乃至5.1mm、望ましくは3.9mm乃至4.8mmとされる。
【0038】
さらに、同じく4mmであれば、4.8mm乃至6.8mm、望ましくは5.2mm乃至6.4mmとされ、同じく5mmであれば、6.0mm乃至8.5mm、望ましくは6.5mm乃至8.0mmとされ、…、同じく10mmであれば、12.0mm乃至17.0mm、望ましくは13.0mm乃至16.0mmとされ、…、とされる。
【0039】
また、このような押し版12の凸版の増加される深さ分は、化粧シート2の表面の凹凸の高低差とほぼ同じか、より大きい。このような高低差・深さは、上記化粧シート2の表面の凹凸を平坦にできるだけの大きさにされ、化粧シート2の材質・強度・厚さや凹凸の大きさ、または転写箔11の材質・強度・厚さによって決まる。なお、押し版12は凸版の部分とこの押し版12が接合された基の部分とは材質が異なっていても良く、例えば押し版12が銅、基部分がマグネシウムなどいうように、これらの材質も上述の材質が用いられる。
【0040】
これにより、押し版12が化粧シート2の表面の凹凸を越えて、この凹凸を平たんにできるまで変形できて、化粧シート2の表面の凹凸によって転写箔11の一部抜けがなくなり、全体がしっかりと化粧シート2の表面に剥がれないように転写される。
【0041】
上記凸版の押し版12の加圧力は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる通常の加圧力に対して10%乃至60%、20%乃至40%上昇される。例えば、通常の転写箔11の転写の加圧力が50g/cm2であれば、押し付けの時の押し版12の加圧力は、55g/cm2乃至80g/cm2、望ましくは60g/cm2乃至70g/cm2とされ、100g/cm2であれば、押し付けの時の押し版12の加圧力は、110g/cm2乃至160g/cm2、望ましくは120g/cm2乃至140g/cm2とされる。
【0042】
さらに同じく、200g/cm2であれば、押し付けの時の押し版12の加圧力は、220g/cm2乃至320g/cm2、望ましくは240g/cm2乃至280g/cm2とされ、同じく300g/cm2であれば、押し付けの時の押し版12の加圧力は、330g/cm2乃至480g/cm2、望ましくは360g/cm2乃至420g/cm2とされ、同じく400g/cm2であれば、押し付けの時の押し版12の加圧力は、440g/cm2乃至640g/cm2、望ましくは480g/cm2乃至560g/cm2とされ、…とされる。
【0043】
このような印刷圧は、上記化粧シート2の表面の凹凸を平坦にできる圧力にされ、化粧シート2の材質・強度・厚さや凹凸の大きさ、または転写箔11の材質・強度・厚さによって決まる。このような印刷圧は、版面とブランケットとの間の版圧・圧力と、ブランケットと被印刷物との間の印圧・圧力とのいずれでもよい。
【0044】
上記転写箔11から、押し版12の凸版の凸の部分に応じた形状部分が剥がれて、化粧シート2の表面に接着転写される。この転写箔11の下面には熱溶着性の接着層が積層され、この接着層の熱溶融によって、転写箔11が化粧シート2表面に接着される。また転写箔11の上面には樹脂製等のベースシートが積層され、このベースシートから、転写箔11及び接着層が、凸版の凸の部分に応じた形状部分のみ剥がされて転写・接着される。
【0045】
(4)他の実施の形態
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。例えば、袋1は手下げ用または小脇に抱えるもののほか、箱状、厚みのない袋状、一枚の方形シート状の風呂敷状でもよい。袋1の底部分は、上記の山型片4を形成するものほか、方形片を形成したり、方形状の厚紙板、樹脂板、木板、竹板を嵌め込んで、これらの板の周縁が袋1の下縁の化粧シート2の下縁と接着または縫合などされたりしてもよい。
【0046】
このように、化粧シート2で作られるものは、袋1のほか、ブックカバー、マウスパッドであってもよい。ブックカバーでは、化粧シート2の端縁が折り返されて縫合されたり接着されたりする。マウスパッドでは、床に貼られる化粧シート2が二枚裏面側で重ねられ上記接着剤で接着される。これにより、このマウスパッドは表側のほか裏側でも使用可能となる。
【0047】
化粧シート2は、建築物の内壁のほか、天井、床、柱、鴨居、梁、建築物の外壁などに貼り付けられるものであっても良い。接着剤の代わりに糸による縫合、高周波溶着、接着テープ、面ファスナー、その他の結合手段によるものであってもよい。
【0048】
袋1に加工される化粧シート2は建築物の内装で余った端切れ3ではなく、デッドストック商品の化粧シート2、ロス材の化粧シート2、建造物を解体した時の廃棄物の中の化粧シート2、新品の化粧シート2を多数に裁断したものでもよい。デッドストック商品とは、売れ残り品または不良在庫であり、ロス材とは、化粧シート2を貼る作業で生じるロス分を想定して、施工業者が予め発注しておく余剰分である。
【0049】
上記転写箔11に積層されている、接着層またはベースシートは省略されてもよい。この場合、転写箔11の下面に接着剤が噴霧され、手作業で、転写箔11を間に挟んで、化粧シート2表面に押し版12が押しつけられる。
【0050】
上記袋1に転用される化粧シート2の表面も裏面と同じように凹凸のない滑らかなものでもよい。折り返し部5または手提げ紐6は省略されてもよい。また、折り返し部5の長方形状の2つの長辺の中央に水平方向に延びる長穴が開けられ、ここに手の指が通されてもよい。
【0051】
転写箔11が押圧・転写される個所は、直方体状の袋1の大きい方の側面中央であったが、袋の側面の端、側面全体、小さい方の側面、底面、折り返し部5の内側など、場所、大きさ、範囲、量、面積は任意であり、化粧シート2が接着剤で接着された箇所に押圧・転写されてもよい。
【0052】
上記凸版の押し版12の加熱温度・転写温度、凸版の深さ、加圧力は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる「通常」の加熱温度・転写温度、凸版の深さ、加圧力と同じでもよい。押し版12は凸版のほか、凹版でもよいし、エンボス加工用の凸版と凹版と組み合わせでもよいし、孔版、平版等でもよい。
【0053】
上記接着剤は、油性、親油性、非親水性または疎水性のほか、水性、親水性などでもよい。油性、非親水性または疎水性で、シリコーンゴム系、合成ゴム系でも、天然ゴム系でもよく、乾燥によってまたは乾燥前に粘着性があれば、ゴム系接着剤以外の接着剤でもよい。この接着剤の揮発性成分及び不揮発性のゴム系接着成分は、上述のものに限られず、同等のものに置き換え可能である。
【0054】
上記接着剤は、酢酸ビニル−パーサチック酸ビニル共重合樹脂系、アクリル共重合樹脂系、パーサチック酸ビニル−アクリル共重合樹脂系、アクリル−スチレン共重合樹脂系、ウレタン系接着剤等でもよい。
【0055】
上記袋1、化粧シート(化粧紙、壁紙、壁シート)2、端切れ3、山型片4、折り返し部5、手提げ紐6、転写箔11、押し版12の一部または全体は省略されてもよいし、分割分離されてその数が増えても減ってもよいし、その形状は任意に変更可能であり、均等の他の物に置き換えられてもよいし、これらの2つまたは3つ以上が合体または一体化されて兼用されてもよいし、これらの材質は樹脂製、金属製のほか、木製、竹製、樹脂製、金属製、ガラス製、綿製、布製、糸製、繊維製、ゴム製、紙製、セラミック製、カーボン製、硬質ウレタン製、これらの合成物製/混合物製/多層積層物製でもよい。
【0056】
(5)他の発明の効果
[1]建物の内装用の化粧シートまたは壁紙から切り取られた端切れにつき、 この切られた端切れを折って、当該化粧シートまたは壁紙の端切れの端部を互いに接着して袋を形成することを特徴とする、化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法。
【0057】
[2]上記袋の表面には転写箔が転写されており、 上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さは十分の数mm乃至数mmであり、 上記転写箔を上記化粧シート表面に押圧転写する押し版は凸版であり、 上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の凸版の高低差または深さに対して、当該凸版の高低差または深さは20%乃至70%大きくまたは深くされ、 この20%乃至70%の増大量は、上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さとほぼ同じまたはより大きいことを特徴とする請求項1記載の袋の生産方法。
【0058】
[3]上記押し版の加熱温度は、上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の加熱温度に対して、10%乃至60%上昇されることを特徴とする請求項2記載の袋の生産方法。これにより、転写箔が十分に柔らかくなって、凹凸のある化粧シートの表面に浮きあがることなく付着され、転写箔の一部抜け、一部浮き、一部離脱がなく、しっかりときれいに転写箔全体が化粧シートの表面に剥がれないように転写・付着される。
【0059】
[4]上記押し版の加圧力は、上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の加圧力に対して10%乃至60%上昇されることを特徴とする請求項3記載の袋の生産方法。これにより、凹凸のある化粧シートの表面に、転写箔が十分に隙間なく押しつけられて、転写箔の一部抜け、一部浮き、一部離脱がなく、しっかりときれいに転写箔全体が化粧シートの表面に剥がれないように転写・付着される。
【0060】
[5]上記化粧シートを上記建物に貼り付ける時の接着剤は、当該化粧シートに浸透する水性または親水性であり、 上記袋を形成するときの接着剤は、当該化粧シートに浸透しない油性、親油性または疎水性であることを特徴とする請求項4記載の袋の生産方法。これにより、水性または親水性の接着剤でしか建物に接着できない化粧シートまたは壁紙であっても、化粧シートまたは壁紙どうしを接着して袋を組み立てることができる。
【0061】
[6]上記袋を形成するときの接着剤は、揮発性成分と、不揮発性のゴム系接着成分とを含有する、ゴム系接着剤であり、 この接着剤を上記化粧シートに塗布した後、数十秒間乃至数分間、上記揮発性成分を乾燥させてから、化粧シートどうしが接着されることを特徴とする請求項5記載の袋の生産方法。
【0062】
これにより、水性または親水性の接着剤でしか建物に接着できない化粧シートまたは壁紙であっても、化粧シートまたは壁紙どうしを、それ自身で粘着力のあるゴム系接着剤で接着して袋を組み立てることができる。また、この乾燥によって、接着剤が粘着性を帯びて、化粧シートどうしを良く接着させることができる。
【0063】
[7]上記化粧シートの滑らかな裏面と凹凸のある表面とを接着させるときには、0.1g乃至5g/cm2塗布され、上記化粧シートの凹凸のある表面どうしを接着させるときには、0.2g乃至10g/cm2塗布され、凹凸のある表面どうしを接着させるときの方が塗布量は多くなることを特徴とする請求項6記載の袋の生産方法。これにより、化粧シートの表面または裏面の状態にあった、接着剤が多すぎず少なすぎず最適な接着状態を実現できる。
【0064】
[8]上記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法によって製造されたことを特徴とする袋。
【産業上の利用可能性】
【0065】
建物の内装用の化粧シートまたは壁紙から切り取られた端切れを袋等に加工して、廃棄物となる端切れを有効利用してリサイクルに貢献する。化粧シート2の端切れ3を折って組み立てて、側縁や底縁を接着して袋1を製作する。この接着のための接着剤は、上記水が浸透する親水性の化粧シート2に浸透しない、非水性、疎水性、油性または親油性のものが選ばれ、ゴム系接着剤が最適である。
【0066】
また、薄い金属フィルムを挟んで、袋1を組み立てる前の化粧シート2の表面に対して、凸版の押し版12を加熱して押しつける。この押し版12の加熱温度・転写温度、凸版の深さまたは加圧力は、転写される転写箔11及び押し版12の特性で決まる「通常」の加熱温度・転写温度、凸版の深さまたは加圧力に比べ、10%乃至60%または20%乃至70%増加される。これにより、化粧シート2の表面に凹凸があっても、転写箔11をきれいに転写付着できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】袋1の組み立て図を示す。
【図2】袋1の組み立て図を示す。
【図3】組み立てられた袋1を示す。
【図4】転写箔11を転写するための押し版12、転写箔11及び化粧シート2を示す。
【符号の説明】
【0068】
1…袋、2…化粧シート(化粧紙、壁紙、壁シート)、
3…端切れ、4…山型片、
5…折り返し部、6…手提げ紐、
11…転写箔、12…押し版。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内装用の化粧シートまたは壁紙から切り取られた端切れにつき、
この切られた端切れを折って、当該化粧シートまたは壁紙の端切れの端部を互いに接着して袋を形成することを特徴とする、化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法。
【請求項2】
上記袋の表面には転写箔が転写されており、
上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さは十分の数mm乃至数mmであり、
上記転写箔を上記化粧シート表面に押圧転写する押し版は凸版であり、
上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の凸版の高低差または深さに対して、当該凸版の高低差または深さは20%乃至70%大きくまたは深くされ、
この20%乃至70%の増大量は、上記化粧シートの表面の凹凸の高低差または深さとほぼ同じまたはより大きいことを特徴とする請求項1記載の袋の生産方法。
【請求項3】
上記押し版の加熱温度は、上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の加熱温度に対して、10%乃至60%上昇されることを特徴とする請求項2記載の袋の生産方法。
【請求項4】
上記押し版の加圧力は、上記転写箔及び押し版の特性で決まる通常の加圧力に対して10%乃至60%上昇されることを特徴とする請求項3記載の袋の生産方法。
【請求項5】
上記化粧シートを上記建物に貼り付ける時の接着剤は、当該化粧シートに浸透する水性または親水性であり、 上記袋を形成するときの接着剤は、当該化粧シートに浸透しない油性、親油性または疎水性であることを特徴とする請求項4記載の袋の生産方法。
【請求項6】
上記袋を形成するときの接着剤は、揮発性成分と、不揮発性のゴム系接着成分とを含有する、ゴム系接着剤であり、
この接着剤を上記化粧シートに塗布した後、数十秒間乃至数分間、上記揮発性成分を乾燥させてから、化粧シートどうしが接着されることを特徴とする請求項5記載の袋の生産方法。
【請求項7】
上記化粧シートの滑らかな裏面と凹凸のある表面とを接着させるときには、0.1g乃至5g/cm2塗布され、上記化粧シートの凹凸のある表面どうしを接着させるときには、0.2g乃至10g/cm2塗布され、凹凸のある表面どうしを接着させるときの方が塗布量は多くなることを特徴とする請求項6記載の袋の生産方法。
【請求項8】
上記請求項1、2、3、4、5、6または7記載の化粧シートまたは壁紙を使った袋の生産方法によって製造されたことを特徴とする袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−240236(P2012−240236A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109978(P2011−109978)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(311005437)
【出願人】(511119581)
【Fターム(参考)】