説明

化粧シート用コーティング組成物及び化粧シート

【課題】 塗膜の透明性を維持しつつ、耐擦り傷性及び耐摩耗性に優れる表層を有する化粧シート及び該化粧シートに用いるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】 第一に、熱硬化性樹脂組成物及びガラス系フィラーを含有する化粧シート用コーティング組成物であって、該熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、該ガラス系フィラーを0.1〜20質量部含有することを特徴とする化粧シート用コーティング組成物。第二に、印刷基材上に、前記した化粧シート用コーティング組成物の硬化皮膜を有する化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、プラスチック、金属等の基材の表面を保護するため塗装を施した化粧シート用に用いられる熱硬化性樹脂組成物を有するコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の内外装、家具建具等の表面化粧用に用いられる、紙、プラスチック、金属等の基材の表面には、硬度、耐擦り傷性、耐摩擦性、耐薬品性等の様々な性能を付加し、表面を保護するためにコーティングが行われている。これら化粧シート用コーティング組成物としては、耐擦り傷性、耐摩擦性を向上させる公知の技術としてアルミナ系フィラーを添加する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、アルミナ系フィラーは耐擦り傷性、耐摩擦性は非常に優れているが、過剰にこれらの性能を有するため、接触した物質を必要以上に傷つけてしまうことが問題点としてあげられる。また、アルミナ系フィラーを添加量が多くなるに従って塗膜の透明性が低下し、下地の柄が不鮮明になるなどの問題点があった。
【0003】
【特許文献1】特開平11−115141
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、塗膜の透明性を維持しつつ、耐擦り傷性及び耐摩耗性に優れる表層を有する化粧シート及び該化粧シートに用いるコーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討の結果、熱硬化性樹脂組成物にガラス系フィラーを添加することにより、本発明の目的である塗膜の透明性を維持しつつ、化粧シートの表層の耐擦り傷性及び耐摩耗性を改善することを見出し本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は第一に、熱硬化性樹脂組成物及びガラス系フィラーを含有する化粧シート用コーティング組成物であって、該熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、該ガラス系フィラーを0.1〜20質量部含有することを特徴とする化粧シート用コーティング組成物を提供する。
【0007】
本発明は第二に、印刷基材上に、前記した化粧シート用コーティング組成物の硬化皮膜層を有することを特徴とする化粧シートを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧シート用コーティング組成物は、透明性を維持しつつ適度な耐擦り傷性および耐摩擦性を有する化粧シートを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の化粧シート用コーティング組成物は、熱硬化性樹脂組成物及びガラス系フィラーを含有する化粧シート用コーティング組成物であって、熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、ガラス系フィラー0.1〜20重量部となるように適宜混合することにより調製することができる。
【0010】
ガラス系フィラーが0.1質量部未満であると、耐擦り傷性、耐摩耗性が充分でなく、20質量部を越えると、塗膜の透明性が低下し、下地の柄が不鮮明となる傾向が有り好ましくない。
【0011】
本発明の化粧シート用コーティング組成物に用いる熱硬化性樹脂組成物は、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基から選ばれる1種以上の官能基を一分子内に2個以上有する、アクリル系樹脂、アクリルアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる1種以上と、該官能基と反応し得るイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含有する組成物であることが好ましい。
【0012】
特に好ましくは、水酸基を一分子内に2個以上有するアクリル系樹脂およびアクリルアルキッド系樹脂である。
【0013】
該熱硬化性樹脂組成物の官能基と反応するイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物としては、該ポリイソシアネートはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびこれらの水添化合物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の一分子に2個のイソシアネート基を持つ化合物および、これらから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプ等が挙げられる。また、これらの異なるタイプのポリイソシアネートから選ばれる1種類以上を混合した組成物を使用することができる。
【0014】
好ましくは、TDI、XDI、IPDIおよびHDIから選ばれる1種類以上の化合物を公知の技術により合成した3量体タイプ、TMPアダクトタイプ、ビュレットタイプである。
【0015】
前記した樹脂成分に対するイソシアネート化合物の含有量は、任意に設定できるが、好ましくは、水酸基/イソシアネートの当量比が1/0.5〜1/3である。
【0016】
ガラス系フィラーとしては、透明のガラス系フィラーである低アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス等が用いられ、好ましくは低アルカリガラスである。また、これらを種々のシラン化合物、その他の化合物等で表面処理した物も使用できる。
【0017】
ガラス系フィラーの粒径は、平均粒径が0.1〜30μmの球状ガラス系フィラーであることが好ましい。特に好ましくは1〜20μm程度である。
【0018】
ガラス系フィラーの粒径と硬化塗膜の膜厚の関係は、塗膜厚をt、ガラス系フィラーの粒径をdとした場合、2.5t>d>0.3tが好ましい。
【0019】
このようにして得られる本発明の化粧シート用コーティング組成物に、さらに必要に応じて、本発明の目的を逸脱しない範囲内で、各種の機能を付与するため、着色剤、体質顔料、シリコーン、滑剤、可塑剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、カップリング剤、界面活性剤、有機溶剤及びキレート剤などの添加剤を添加することができる。
【0020】
本発明の化粧シート用コーティング組成物は、紙、プラスチック、布、金属等の各種基材の表面に適用できる。
【0021】
本発明の化粧シート用コーティング組成物の塗布方法としては、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、ロールコート、グラビアコート、バーコーター等の装置を用いることができる。
【0022】
本発明の化粧シートは、耐擦り傷性・耐摩性の特性を活かして、室内外用建材、家具・建具の表面、その他工業材料の表面等に使用することが出来る。
【実施例】
【0023】
次に、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明するが、以下において特に断りのない限り、表中の数字は質量部を表すものとする。
【0024】
(実施例および比較例)
下記の、表1および2に示した組成となるように熱硬化性樹脂組成物を配合し、分散攪拌機にて各々調製した。尚、表中の、アクリディックBU−693は大日本インキ化学工業製のアクリル樹脂、サイリシア446は富士シリシア製のシリカ(マット剤)、ミクロスフィアP2011SL(平均粒径約5μm)およびP2015SL(平均粒径約9μm)はプリズマライト社製のガラスフィラー、WA#3000(平均粒径約7μm)、WA#1500(平均粒径約10μm)は昭和電工製のアルミナ、スミジュールN3200は住友バイエルウレタン製のポリイソシアネートを示す。
【0025】
表1に示す、実施例1及び比較例1,2では予め柄印刷を行った60g/m含浸紙に塗布量が5g/mとなるように塗布し、塗布後、60℃/1日の恒温状態で保存し塗膜を硬化させた。得られた硬化塗膜に対し、下記に記載の方法に従って試験を行い、その結果を表1に示した。
【0026】
表2に示す、実施例2及び比較例3,4では100μmPETフィルム(東洋紡製、E5100)に塗布量が8g/mとなるように塗布し、塗布後、60℃/1日の恒温状態で保存し塗膜を硬化させた。得られた硬化塗膜に対し、下記に記載の方法に従って試験を行い、その結果を表2に示した。
【0027】
(1)透明性
塗工物の透明性あるいは下地柄の鮮明性を目視にて評価した。
○:(透明、鮮明)、 ×:(不透明、不鮮明)
【0028】
(2)耐摩性A
スチールウール#0000を約1cmの大きさに調整し、この上に500gの荷重を乗せて塗膜表面で10往復する。その後の塗膜の傷付きを目視にて評価した。
○:(傷無し)、 ×:(傷多数)
【0029】
(3)耐摩性B
塗工物の面同士を指で強く擦り合わせ、面の傷付きを評価した。
○:(傷無し)、 ×:(傷多数、粉吹き)
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の化粧シート用コーティング組成物を用いた化粧シートは、透明性を維持しつつ適度な耐擦り傷性および耐摩擦性を実現しており、紙、フィルム上のみならず金属等を基材とした各種化粧シート用に展開が出来る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂組成物及びガラス系フィラーを含有する化粧シート用コーティング組成物であって、該熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、該ガラス系フィラーを0.1〜20質量部含有することを特徴とする化粧シート用コーティング組成物。
【請求項2】
前記したガラス系フィラーが、平均粒径が0.1〜30μmの球状ガラス系フィラーである請求項1に記載の化粧シート用コーティング組成物。
【請求項3】
前記した熱硬化性樹脂組成物が、水酸基、アミノ基及びカルボキシル基から選ばれる1種以上の官能基を一分子内に2個以上有する、アクリル系樹脂、アクリルアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂およびウレタン系樹脂から選ばれる1種以上と、該官能基と反応し得るイソシアネート基を一分子内に2個以上有するポリイソシアネート化合物を含有する請求項1又は2に記載の化粧シート用コーティング組成物。
【請求項4】
印刷基材上に、熱硬化性樹脂組成物及びガラス系フィラーを含有する化粧シート用コーティング組成物であって、該熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して、該ガラス系フィラーを0.1〜20質量部含有する化粧シート用コーティング組成物の硬化皮膜層を有することを特徴とする化粧シート。


【公開番号】特開2006−16528(P2006−16528A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−196702(P2004−196702)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】