説明

化粧シート

【課題】長期間にわたる野外の暴露においても耐候性を有することができる化粧シートを提供すること。
【解決手段】少なくとも熱可塑性樹脂基材層、絵柄層、透明熱可塑性樹脂表面層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂表面層が、220〜300nmの紫外光領域の光透過率が4%以下であること、前記透明熱可塑性樹脂表面層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、車両内装、住設機器や家具製品等の表面化粧等に使用するための化粧シートに関するものであり、特に、例えば玄関引戸等の耐候性や耐熱性が必要とされる建築部材の表面化粧用として好適な化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂やポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなる化粧シートは、成形性にすぐれたものではあるが、外装用として用いるには表面の耐候性に問題があるため、透明熱可塑性樹脂表面層に紫外線吸収剤等の耐候安定剤を添加することが好適に行われていた。
【0003】
通常、耐候性として求められるのは300〜380nmの光透過率の低減であったが、300nm以下における太陽光波長領域は僅かに存在し、長期間にわたる屋外での暴露では、300nm以下での強いエネルギー範囲での光透過率が問題となることがあった。
【0004】
従来、各種紫外線吸収剤を添加することで、300〜380nmの光透過率の低減を図ったものが知られている。しかしながら前記の強いエネルギー範囲である300nm以下に関しては、化粧シートの構成で表面や絵柄層上の樹脂層に熱や電離放射線による硬化型樹脂を用いるものでは、強いエネルギー範囲で光透過率が低減されてしまうと硬化が阻害されてしまうという問題があり、低減させることができなかった。
【0005】
一方、透明熱可塑性樹脂表面層に用いる樹脂として、耐候性に優れるアクリル系樹脂を用いることも考えられたが、高価なものであり、単体では220〜300nmといった紫外光領域での光透過率は十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2005−96266
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、長期間にわたる野外の暴露においても耐候性を有することができる化粧シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決するものでありすなわちその請求項1記載の発明は、少なくとも熱可塑性樹脂基材層、絵柄層、透明熱可塑性樹脂表面層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂表面層が、220〜300nmの紫外光領域の光透過率が4%以下であることを特徴とする化粧シートである。
【0008】
またその請求項2記載の発明は、前記透明熱可塑性樹脂表面層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1記載の発明により、表面保護樹脂層の紫外光領域(220〜300nm)における透過率を4%以下にすることにより、従来のものより耐候耐久性の優れた化粧シートを得ることが可能であるという作用効果を奏する。
【0010】
またその請求項2記載の発明により、特に表面保護樹脂層にアクリル系樹脂フィルムを用いることにより、より優れた耐候性能を持つ化粧シートを得ることが可能である。アクリルフィルムは、樹脂構造的に光(紫外線)に対し安定しており、そのフィルム自体も光劣化作用に対し安定している。またアクリルフィルム製膜時に紫外線吸収剤を配合することができるが、その配合したフィルムを透明フィルムとしてオーバーレイフィルム用途に使えば、紫外線を遮断し、被覆体(下台)を紫外線劣化から守る役目もある、という作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す。熱可塑性樹脂基材層1、絵柄層2、透明熱可塑性樹脂表面層3がこの順に積層されてなる。
【0012】
本発明における熱可塑性樹脂基材層1としては、熱可塑性樹脂であれば、特に限定する必要はなく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等適宜用いることができる。
【0013】
本発明における絵柄層2としては、印刷に用いられるインキは基材シートとの密着性を考慮して選択すればよく、樹脂系としては、ウレタン系やポリエステルポリオールにポリイソシアネートを添加してなる2液タイプのウレタン系樹脂、塩酢ビ系樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の混合系などが一般的である。これらの樹脂へ有機、無機顔料、染料を添加することにより種々の色相を持つインキが調整される。
【0014】
また図示しないが、絵柄層2と透明熱可塑性樹脂表面層3の間には、使用される絵柄インキの種類、表面保護樹脂層の種類との密着性を考慮してアンカー剤層、接着剤層を適宜設ける。樹脂系としては、ウレタン系やポリエステルポリオールにポリイソシアネートを添加してなる2液タイプのウレタン系樹脂、塩酢ビ系樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂の混合系などが一般的である。またラミネート方法によっては、ランダムポリプロピレン、ポリエチレン等の接着性樹脂を用いることもある。
【0015】
本発明における透明熱可塑性樹脂表面層3としては、220〜300nmの紫外光領域の光透過率が4%以下の熱可塑性樹脂が用いられ、絵柄インキ層、接着剤層の密着を考慮して選定される。具体的にはポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂に各種紫外線吸収剤を添加して調整されたものが選定される。
【実施例1】
【0016】
熱可塑性樹脂基材層1として厚さ70μmの着色ポリオレフィン系樹脂フィルムを用い、絵柄層2としてウレタン系インキにより印刷を施した。
その上にアンカー剤層として2液硬化型ウレタン樹脂系のアンカー剤を厚さ2μm設け、さらにその上に接着剤層として、不飽和カルボン酸で変性したマレイン酸変性ランダムポリプロピレン樹脂70重量部にエチレン−プロピレン共重合樹脂を30重量部添加した、MFRが8g/10minの接着性樹脂を厚さ10μm設け、その上に、透明熱可塑性樹脂表面層3として、トリアジン系紫外線吸収剤(A:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)2000ppmを添加して、220nmから300nmの紫外光透過率を4%以下となるように調整した厚さ約80μmの透明ポリプロピレン樹脂フィルムをラミネートして、本発明の化粧シートを作製した。
【実施例2】
【0017】
熱可塑性樹脂基材層1として厚さ90μmの着色ポリオレフィン系樹脂フィルムを用い、絵柄層2としてウレタン系インキにより印刷を施した。アンカー層を介し、透明熱可塑性樹脂表面層3として220nmから300nmの紫外光透過率を4%以下に調整した厚さ50μのアクリルフィルム(サンデュレンSD014NRT:(株)カネカ社製)を熱ラミネートし、本発明の化粧シートを作製した。
【0018】
<比較例1>
紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤((株)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製:「チヌビン326」)を2000ppm添加した以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。なお、その際の透明熱可塑性樹脂表面層3の220nmから300nmの紫外光透過率は15〜18%であった。
【0019】
<比較例2>
透明熱可塑性樹脂表面層3として厚さ50μmのアクリルフィルム(アクリプレンHBS001:三菱レイヨン(株)製)を使用した以外は実施例2と同様にして化粧シートを得た。なお、その際の透明熱可塑性樹脂表面層3の220nmから300nmの紫外光透過率は10%程度であった。
【0020】
<評価>
以上の試料について、鋼鈑基材の表面に接着剤を介して貼り合わせて化粧板を作製し、メタルウェザーを用いて耐候性をテストした。結果を表1,表2に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の化粧シートは、玄関引戸等の耐候性や耐熱性が必要とされる建築部材の表面化粧用として好適な化粧シートとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の化粧シートの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1…熱可塑性樹脂基材層
2…絵柄層
3…透明熱可塑性樹脂表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱可塑性樹脂基材層、絵柄層、透明熱可塑性樹脂表面層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂表面層が、220〜300nmの紫外光領域の光透過率が4%以下であることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明熱可塑性樹脂表面層がアクリル系樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。



【図1】
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【公開番号】特開2008−114560(P2008−114560A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302162(P2006−302162)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】