説明

化粧シート

【課題】表面に模様が形成され、模様に応じた艶差を有し、該艶差が視覚的に凹部として認識される、表面に凹凸感を有する化粧シートであって、かつ木肌感を有する化粧シートを提供すること。
【解決手段】基材上に少なくとも、絵柄層と、全面を被覆する一様均一な第1の表面保護層と、第1の表面保護層上に部分的に設けられた第2の表面保護層を有する化粧シートであって、第1の表面保護層及び第2の表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、第1の表面保護層が艶消剤を含み、第2の表面保護層が平均粒子径10〜30μmの合成樹脂ビーズを含み、該合成樹脂ビーズが第2の表面保護層を構成する樹脂層の上部に突出しており、最表面において、第2の表面保護層部分と、第1の表面保護層の露出した部分とが光沢差を有し、かつ、該光沢差と絵柄層の柄とが同調することを特徴とする化粧シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面に模様が形成され、模様に応じた艶差を有することにより視覚的凹凸感を有し、かつ本木の表面の滑らかで暖かい触感(以下「木肌感」という)を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
家具や台所製品のキャビネットなどの表面化粧板としては、一般に木質系材料、無機系材料、合成樹脂系材料、鋼板などの金属系材料などに、例えば木目調柄などを印刷した化粧シートを接着剤で貼り合わせた構造のものが用いられている。
【0003】
ところで、近年の消費者の高級品指向により、床タイルや壁パネル、あるいは家具や台所製品のキャビネットなどに対しても高級感が求められるようになり、これらに用いられる化粧板や化粧シートにおいても、高級感を与える外観を有するものが望まれている。そのため、各基材シートの表面に各種の印刷をしたり、絵柄層を有するフィルムを設けたりすることに加えて、質感や触感の付与も重要となってきており、模様の特定の部分にあわせて艶消しや凹凸を付与する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、基材上に模様状に設けた塗装面によって電子線硬化型塗料又は光硬化型塗料に対する濡れ易さが基材表面と異なった区域を形成させた後に、基材上に電子線硬化型塗料又は光硬化型塗料を塗布して、該塗料に対して濡れ易い区域で塗料表面を陥没させ、濡れ難い区域で塗料表面を隆起させる方法が提案されている(例えば特許文献1、特許請求の範囲参照)。しかしながら、この方法では凹部、すなわち濡れ易い区域が細い場合には、凹凸がきれいにでないという問題がある。また、ある程度の太さの凹部がある場合には、基材表面に凹凸模様は得られるものの、陥没部と隆起部の境界領域において、塗料の表面張力等によって、凸部から凹部に移行する端部が丸味を帯びて凹凸の鮮映性(シャープネス)に欠けるとともに、隆起部の高さ以上の凸部が生じ、例えば木目模様の場合にはリアル感がなく、外観及び手触り感がよくないという問題があった。
【0005】
また、薄紙に艶消剤を含有する紫外線硬化性印刷インキで木下地色をベタ刷りし、これに活性光線を照射した後、この上に光沢の高い紫外線硬化性印刷インキで木目模様を印刷し、これに活性光線を照射した木目模様を有する化粧紙が提案されている(特許文献2、特許請求の範囲参照)。この化粧紙によれば、光沢の高いインキを用いた部分については見かけ上凸部に見え、艶消剤を含有するインキの部分については見かけ上凹部に見え、木質感が得られる。しかしながら、ここで提案される化粧紙は、保護塗膜としての上塗透明塗膜が施されていないため、木目模様を印刷するためのいわゆる導管インキの部分について、耐候性、耐水性、耐摩耗性、耐擦傷性などが低下せざるを得ず、耐久性に劣るものとなる。
【0006】
【特許文献1】特開昭48−17537号公報
【特許文献2】特開昭51−84910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、表面に模様が形成され、模様に応じた艶差を有し、該艶差が視覚的に凹部として認識される、表面に凹凸感を有する化粧シートであって、かつ木肌感を有する化粧シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、化粧シートの最表面に部分的に設けられた特定の粒子径の合成樹脂ビーズを含む表面保護層を設けることで、表面保護層に光沢差を発現させ、該光沢差と絵柄層の柄とを同調させることで、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材上に少なくとも、絵柄層と、全面を被覆する一様均一な第1の表面保護層と、第1の表面保護層上に部分的に設けられた第2の表面保護層を有する化粧シートであって、第1の表面保護層及び第2の表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、第1の表面保護層が艶消剤を含み、第2の表面保護層が平均粒子径10〜30μmの合成樹脂ビーズを含み、該合成樹脂ビーズが第2の表面保護層を構成する樹脂層の上部に突出しており、最表面において、第2の表面保護層部分と、第1の表面保護層の露出した部分とが光沢差を有し、かつ、該光沢差と絵柄層の柄とが同調することを特徴とする化粧シート、
(2)前記第2の表面保護層がさらに艶消剤を含む上記(1)に記載の化粧シート、
(3)前記光沢差がASTM D523に準ずる方法で測定されるものであり、測定の際の光の入射角度によって、第2の表面保護層部分が相対的に高光沢領域又は低光沢領域となり、これに即応して第1の表面保護層の露出した部分が低光沢領域又は高光沢領域となる上記(1)又は(2)に記載の化粧シート、
(4)前記合成樹脂ビーズがアクリル樹脂ビーズである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧シート、
(5)硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート、
(6)硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート、
(7)電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(6)に記載の化粧シート、及び
(8)絵柄層が木目模様を形成するものであり、木目模様の導管部が前記第1の表面保護層の露出した部分と同調する上記(1)〜(7)のいずれかに記載の化粧シート、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面に模様が形成され、模様に応じた艶差を有し、該艶差が視覚的に凹部として認識される、表面に凹凸感を有する化粧シートであって、かつ木肌感を有する、本木に近い外観と触感を有する化粧シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化粧シートは、基材上に少なくとも、絵柄層と、全面を被覆する一様均一な第1の表面保護層と、第1の表面保護層上に部分的に設けられた第2の表面保護層を有する。
本発明の化粧シートの典型的な層構成を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1の断面を示す模式図である。図1に示す例では、基材2上に、所望により設けられる全面を被覆する一様均一な下塗層7、絵柄層3、全面を被覆する一様均一な第1の表面保護層4、及び部分的に設けられた第2の表面保護層5がこの順に形成されている。第2の表面保護層5には合成樹脂ビーズ6が含まれ、第2の表面保護層を構成する樹脂層の上部に突出している。本発明の化粧シートにおける最表面において、第2の表面保護層部分8と、第1の表面保護層の露出した部分9とが適度な光沢差を有し、かつ表面全体として手触り感があり、この光沢差と絵柄層3の柄とが同調することが特徴である。
以下、図1を用いて各層を構成する要素について詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いられる基材2としては、通常化粧シートの基材として用いられるものであれば、特に限定されず、各種の紙類、プラスチックフィルム、プラスチックシート、金属箔、金属シート、金属板、木材などの木質系の板、窯業系素材等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの材料はそれぞれ単独で使用してもよいが、紙同士の複合体や紙とプラスチックフィルムの複合体等、任意の組み合わせによる積層体であってもよい。
これらの基材、特にプラスチックフィルムやプラスチックシートを基材として用いる場合には、その上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面または両面に酸化法や凹凸化法などの物理的または化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また該基材はプライマー層を形成する等の処理を施してもよいし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていてもよい。
【0012】
基材として用いられる各種の紙類としては、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などが使用できる。これらの紙基材は、紙基材の繊維間ないしは他層と紙基材との層間強度を強化したり、ケバ立ち防止のため、これら紙基材に、更に、アクリル樹脂、スチレンブタジエンゴム、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を添加(抄造後樹脂含浸、又は抄造時に内填)させたものでもよい。例えば、紙間強化紙、樹脂含浸紙等である。
これらの他、リンター紙、板紙、石膏ボード用原紙、又は紙の表面に塩化ビニル樹脂層を設けたビニル壁紙原反等、建材分野で使われることの多い各種紙が挙げられる。さらには、事務分野や通常の印刷、包装などに用いられるコート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙、パーチメント紙、パラフィン紙、又は和紙等を用いることもできる。また、これらの紙とは区別されるが、紙に似た外観と性状を持つ各種繊維の織布や不織布も基材として使用することができる。各種繊維としてはガラス繊維、石綿繊維、チタン酸カリウム繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、若しくは炭素繊維等の無機質繊維、又はポリエステル繊維、アクリル繊維、若しくはビニロン繊維などの合成樹脂繊維が挙げられる。
【0013】
プラスチックフィルム又はプラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0014】
金属箔、金属シート、又は金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。各種の木質系の板としては、木材の単板、合板、集成材、パーチクルボード、又はMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板が挙げられる。窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板などの窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル等が例示される。これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0015】
基材2の厚さについては特に制限はないが、プラスチックを素材とするシートを用いる場合には、厚さは、通常20〜150μm程度、好ましくは30〜100μmの範囲であり、紙基材を用いる場合には、坪量は、通常20〜150g/m2程度、好ましくは30〜100g/m2の範囲である。
【0016】
図1に示される全面にわたって被覆される一様均一な下塗層7は、本発明の化粧シートの意匠性を高める目的で所望により設けられる、隠蔽層、あるいは全面ベタ層とも称されるものである。下塗層7は基材2上の表面の色を整えることで、基材2自身が着色していたり、色ムラがあるときに形成して、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2が白色であることを活かす場合や、基材2自身が適切に着色されている場合には下塗層7の形成を行う必要はない。
下塗層の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などの中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
この下塗層7は厚さ1〜20μm程度の、いわゆるベタ印刷層が好適に用いられる。
【0017】
図1に示される絵柄層3は基材2に装飾性を与えるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
絵柄層3に用いる絵柄インキとしては、下塗層7に用いるインキと同様のものを用いることができる。
【0018】
次に、第1の表面保護層4及び第2の表面保護層5は硬化性樹脂組成物の架橋硬化したもので構成される。硬化性樹脂組成物としては、熱硬化性樹脂組成物、電離放射線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物に用いる熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等の熱硬化型樹脂が挙げられる。中でもポリウレタン樹脂が好適に使用できる。ポリウレタン樹脂とは、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする樹脂である。
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アルキッド変性アクリルポリオール等が用いられる。中でもアルキッド変性アクリルポリオールが好ましい。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートなどが用いられる。
【0019】
本発明において、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0022】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0023】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
【0024】
第1の表面保護層4及び第2の表面保護層5の厚さは特に限定されないが、通常、それぞれ3〜10μm程度の間で適宜設計される。また、塗工方法は、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等、各種方法が可能であるが、グラビアコートが最も一般的である。
【0025】
本発明の化粧シートは、第1の表面保護層4の上に第2の表面保護層5が部分的に設けられ、第1の表面保護層4には艶消剤が含まれる。艶消剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機塩類やシリカ、タルク等の無機粉体が用いられ、通常、該艶消剤の平均粒子径は0.1〜5μmの範囲である。艶消剤の添加量は、化粧シートに望まれる艶消し感の程度によって適宜設定すればよく、通例、表面保護層を構成するための樹脂組成物に対して1〜30質量%(固形分換算)の範囲である。
また、第2の表面保護層5には艶消剤が含有されていてもよく、後に詳述するように、艶消剤を配合することで、化粧シートの最表面において、第2の表面保護層部分8と第1の表面保護層の露出した部分9の光沢差を繊細に制御することができる。第2の表面保護層5に用いられる艶消剤としては、第1の表面保護層4で用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0026】
また、本発明の化粧シートは、第2の表面保護層5中に平均粒子径10〜30μmの合成樹脂ビーズ6を含むことを特徴とする。該合成樹脂ビーズ6は第2の表面保護層5を構成する樹脂層の上部に突出しており、これによって木肌感を創出するものである。従って、該合成樹脂ビーズ6の平均粒子径は第2の表面保護層5の厚さとの関係を考慮して決定される必要があるが、少なくとも、合成樹脂ビーズ6の平均粒子径が10μm未満であると、合成樹脂ビーズ6が塗膜中に埋もれる部分が増大し、木肌感の触感が得られにくくなる。一方、合成樹脂ビーズ6の平均粒子径が30μmを超えると、合成樹脂ビーズ6が第2の表面保護層5から抜け落ちやすく、化粧シートの耐傷付き性が悪化する。以上の観点から、合成樹脂ビーズ6の平均粒子径は15〜25μmの範囲が好ましい。
【0027】
合成樹脂ビーズ6の種類としては特に限定されず、例えばアクリル樹脂ビーズ、スチレン樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリエステル樹脂ビーズ等を使用することができるが、第1の表面保護層4と第2の表面保護層5の艶差による意匠的効果を考慮すると、透明度の高いウレタンアクリル樹脂ビーズなどのアクリル樹脂ビーズが好ましい。
合成樹脂ビーズ6の添加量は、最適な木肌感が得られるとの観点から、第2の表面保護層5を構成するための樹脂組成物に対して10〜50質量%(固形分換算)の範囲が好ましい。
【0028】
本発明の化粧シートは、その最表面において、第2の表面保護層部分8と、第1の表面保護層の露出した部分9とが光沢差を有することを特徴とする。この光沢差は第1の表面保護層4が艶消剤を含み、第2の表面保護層5が艶消剤を含まないことにより生ずるが、第2の表面保護層5には上述のように合成樹脂ビーズを含有し、このことによって第2の表面保護層5に対し、若干の艶消効果が与えられ、より本木に近い光沢差が得られる。以下詳細に説明する。
【0029】
前記光沢差は相対的に高い光沢を有する高光沢領域の光沢度から相対的に低い光沢を有する低光沢領域の光沢度を引いたものであり、光沢度はASTM D523に準ずる方法で測定されるものである。本発明の化粧シートは、測定の際の光の入射角度によって、第2の表面保護層部分8が相対的に高光沢領域又は低光沢領域となり、これに即応して第1の表面保護層の露出した部分9が低光沢領域又は高光沢領域となって光沢差が発現する。
この光沢差に関して、本物の木目模様は見る角度によって光沢差が変化する。すなわち、光の入射角度が0〜約80度では導管部が低光沢であり、光の入射角度が約80〜90度では、逆に、高光沢を示す。本木はこのように見る角度によって、光沢差の逆転現象が生じるため、化粧シートにおいても、こうした角度に依存した光沢差の逆転を効果的に奏することができれば、より本木に近い外観が得られる。
【0030】
従来の化粧シートにおいては、第1の表面保護層4に艶消剤が含まれ、第2の表面保護層5には艶消剤が含まれない構成が用いられ、第1の表面保護層4で低艶を第2の表面保護層5で高艶を表現していた。こうした従来の化粧シートにおいては、上述のような見る角度によって生じる光沢差の逆転現象は生じていなかった。また、光沢差を制御するために、第2の表面保護層にも艶消剤を加えた構成をとる場合があり、この場合には、上述のような光沢差についての逆転が生じることがあったが、その程度は小さいものであり、またその光沢差を制御することは困難であった。
これに対し、本発明の化粧シートの好ましい態様では、第1の表面保護層が艶消剤を含み、第2の表面保護層が前記合成樹脂ビーズに加えて、さらに艶消剤を含有する。こうした構成をとることによって、上述の見る角度による光沢差の変化を効果的に創出し、また制御することができる。具体的には、第1及び第2の表面保護層に配合する艶消剤の種類(材質、平均粒子径など)及び含有量、合成樹脂ビーズの種類、粒子径、含有量等を変えることにより、高光沢領域と低光沢領域の光沢差を制御することができ、繊細な意匠表現を実現することができる。
【0031】
さらに、本発明の化粧シートは、光沢差と絵柄層の柄とを同調させ、かつ、前記合成樹脂ビーズを加えることによって、手触り感を与えるものである。従って、本発明の構成を木目模様に適用し、上述した光沢差と木目模様の導管部を同調させた場合には、導管部の光沢が変化し、見る角度によって、導管部が浮き出て見えたり、沈んで見えたりすることと、前述の手触り感とがあいまって、本発明の化粧シートは、本物の木目模様と変わらない質感(木肌感)が得られ、極めて高い意匠性を実現することができる。
【0032】
また本発明における表面保護層4及び5を構成する硬化型樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0033】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0034】
本発明においては、前記の硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、硬化型樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、基材の表面に、硬化後の厚さが3〜10μm程度になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
【0035】
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、熱を加えるか又は電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。
熱硬化の場合の加熱温度は用いる樹脂に応じて適宜決定される。また、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
各実施例で得られた化粧材について、以下の方法で評価した。
(1)光沢度の評価
日本電色工業(株)製「VG−2000型」を用いて、ASTM D523に準じ、入射角度20度、60度及び85度における光沢度をそれぞれ測定した。
(2)手触り感(官能評価)
各実施例及び比較例で得られた化粧シートの表面に触れ、抵抗が強く、木肌感が得られたか、又は抵抗が弱く、木肌感が得られなかったかで判定した。
【0037】
実施例1
基材2として、米秤量30g/m2の建材用紙間強化紙を用い、その片面にアクリル樹脂と硝化綿をバインダーとし、チタン白、弁柄、黄鉛を着色剤とするインキを用いて、塗工量5g/m2の(全面ベタ)層をグラビア印刷にて施して下塗層7とした。その上に硝化綿をバインダーとし、弁柄を主成分とする着色剤を含有するインキを用いて、木目模様の絵柄層3をグラビア印刷にて形成した。
次に、絵柄層3の上に、アクリルポリオールとイソシアネートからなるウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)製「UC」)を55質量%及び平均粒子径約2μmであるシリカ粒子を22.5質量%となるように酢酸エチル(溶剤)に溶解又は分散して得た熱硬化性樹脂組成物を、塗工量5g/m2でグラビアオフセットコータ法により塗工し、第1の表面保護層形成用の樹脂層を得た。
次いで、第1の表面保護層形成用として用いたのと同様の熱硬化性樹脂55質量%及び平均粒子径17μmのウレタンアクリルビーズを26質量%となるように酢酸エチル(溶剤)に溶解又は分散して第2の表面保護層形成用熱硬化性樹脂組成物を調製した。該組成物を、絵柄層3の木目模様の導管部分以外の部分に位置同調するようにグラビア印刷にて塗工し、第2の表面保護層形成用の樹脂層5を得た。すなわち、木目模様の導管部分が抜けるように第2の表面保護層形成用の樹脂を印刷し、第1の表面保護層の露出した部分9と木目模様の導管部分とが位置同調するようにした。
塗工後、120℃で加熱して、熱硬化性樹脂組成物を硬化させ、第1の表面保護層4及び第2の表面保護層5を形成した。次いで、70℃で24時間の養生を行い、化粧シートを得た。第1の表面保護層4の厚さは約3.5μmであり、第2の表面保護層5の厚さは約6μmであった。
この化粧シートについて、艶の評価及び官能評価を実施した。その結果を第1表に示す。
【0038】
実施例2
第2の表面保護層形成用熱硬化性樹脂組成物中に、さらに平均粒子径3.5μmのシリカ粒子を8質量%配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0039】
実施例3
第2の表面保護層形成用熱硬化性樹脂組成物中に、さらに平均粒子径3.5μmのシリカ粒子を16質量%配合したこと以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0040】
比較例1〜3
実施例1〜3において、ウレタンアクリル樹脂ビーズを用いなかったこと以外は実施例1〜3と同様にして化粧シートを得た(比較例1が実施例1に、比較例2が実施例2に、比較例3が実施例3にそれぞれ対応する)。実施例1と同様に評価した結果を第1表に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
本発明の化粧シートは手触り感に優れ、木肌感を有する点で優れるものである。また、実施例1と比較例1においては、すべての角度において、第2の表面保護層の方が、光沢度が高い。これは、第1の表面保護層にのみ艶消剤であるシリカを含有するためと思われる。
一方、実施例2、3、比較例2及び3においては、85度の角度において光沢度の大小関係が逆転する。すなわち、約80度までの角度においては、第2の表面保護層の方が、光沢度が高いか又は同等であるが、それを超えると第2の表面保護層の方が、光沢度が低くなる。これは、第2の表面保護層に艶消剤を含有する効果による。
この光沢度の逆転現象に関して、合成樹脂ビーズを含有する実施例2及び3はその逆転の度合いが大きい。すなわち、85度の角度においては、その光沢度の差が比較例2では2.0であるのに対し、実施例2では7.4と3倍以上の光沢差を生じさせる。また、比較例3では光沢差が4.5であるのに対し、実施例3では7.4と大幅に向上させている。
以上のように、本発明の化粧シートは、見る角度による光沢差の変化を効果的に創出し、また制御することができるため、本木に近い、繊細な意匠表現を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、表面に模様が形成され、模様に応じた艶差を有し、該艶差が視覚的に凹部として認識される、表面に凹凸感を有する化粧シートであって、特に木目模様に用いた場合には、木肌感を有する化粧シートを得ることができる。また、木目模様においては、導管部分の艶差及び凹凸感をリアルに表現でき、実際の木材を用いた材料と同様の質感及び触感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1.化粧シート
2.基材
3.絵柄層
3a.導管部
3b.導管部以外の部分
4.第1の表面保護層
5.第2の表面保護層
6.合成樹脂ビーズ
7.下塗層
8.第2の表面保護層部分
9.第1の表面保護層の露出した部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも、絵柄層と、全面を被覆する一様均一な第1の表面保護層と、第1の表面保護層上に部分的に設けられた第2の表面保護層を有する化粧シートであって、第1の表面保護層及び第2の表面保護層が硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものであり、第1の表面保護層が艶消剤を含み、第2の表面保護層が平均粒子径10〜30μmの合成樹脂ビーズを含み、該合成樹脂ビーズが第2の表面保護層を構成する樹脂層の上部に突出しており、最表面において、第2の表面保護層部分と、第1の表面保護層の露出した部分とが光沢差を有し、かつ、該光沢差と絵柄層の柄とが同調することを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第2の表面保護層がさらに艶消剤を含む請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記光沢差がASTM D523に準ずる方法で測定されるものであり、測定の際の光の入射角度によって、第2の表面保護層部分が相対的に高光沢領域又は低光沢領域となり、これに即応して第1の表面保護層の露出した部分が低光沢領域又は高光沢領域となる請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記合成樹脂ビーズがアクリル樹脂ビーズである請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
硬化性樹脂組成物が電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
絵柄層が木目模様を形成するものであり、木目模様の導管部が前記第1の表面保護層の露出した部分と同調する請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−87269(P2008−87269A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269211(P2006−269211)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】