説明

化粧モルタル止め部材及び建造物の施工方法

【課題】 基礎の外表面に基礎化粧モルタルを形成する際、基礎化粧モルタルの高さを規制する化粧モルタル止めとしての役割を果たす部材を提供すること。
【解決手段】 基礎化粧モルタルの高さを規制する化粧モルタル止めとしての役割を果たす化粧モルタル止め部材であって、土台の外側面に固定するための矩形板状の土台固定部と、上記土台固定部より斜め前方に張り出した板状の張出部と、上記張出部の下端に上記土台固定部とほぼ直角になるように設けられた矩形板状のモルタル止め部とからなり、上記張出部には、開口が形成されるとともに、上記モルタル止め部のほぼ中央部に上記張出部の下端が接合されていることを特徴とする化粧モルタル止め部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基礎の外表面に基礎化粧モルタルを形成する際に、モルタル止めとして役割を果たすモルタル止め部材と、該モルタル止め部材を用いた建造物の施工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
木造住宅等の建造物を建築する手法としては、例えば、建物を建てるべき部位の外殻部や内殻部にコンクリート製の基礎を作った後、この基礎の上面に木材の土台を固定し、土台の上に柱を立て、柱の上に梁を載せるという手法がある。このような手法は、伝統的な日本建築の手法であり、木造住宅の建築において広く採用されている。
【0003】
コンクリート基礎(布基礎)は、セメント、砂、水を混合して流動状にして予め組み立てた金属製又は木製の型枠に流し込み、数日放置して固化させることにより作られるので、水分を大量に含み、且つ、長期的に水分を排出するコンクリート自体の特性によって、コンクリート基礎が直接接触する木製土台との接触部位で、木製土台がコンクリート基礎の水分を吸って湿り乾燥しにくくなり、湿って乾燥を阻害すると経時的に木製土台の腐朽を招来するという問題があった。
【0004】
また、コンクリート基礎と木製土台との間には隙間がないので、両者の間から換気するということができないのであるが、木造住宅においては、床下の換気を行う必要があるため、一般的に、コンクリート基礎の適当な部位に、例えば、縦200mm×横400mm程度の換気穴を形成するということが行われていた。しかし、コンクリート基礎には木造住宅の荷重等に耐え得るだけの充分な強度が必要であるため、このような大きな換気穴を多数形成することは困難であり、形成可能な換気穴の数には制限があった。そのため、床下空間の換気穴から遠い隅部には湿気が滞留し易いという問題があった。
【0005】
このようなことから、長年の間に土台や柱が腐朽してしまったり、シロアリによって土台が喰い荒らされるという問題もあった。また、コンクリート基礎に換気穴を形成すると、木造住宅の荷重等によって、換気穴の隅部からコンクリート基礎に亀裂が入ってしまうという問題もあった。
【0006】
このような問題を解決するために創案されたものが基礎パッキンである。基礎パッキンは、基礎と土台との間に設けられるものであり、長い実績を保ち現在も数多く木造住宅の建設に用いられている。なお、本出願人の先願である特許文献1〜3に、基礎パッキンの形状や材質が詳しく述べられている。
【0007】
基礎パッキンの一例について、図面を用いて説明する。
図6は、基礎パッキンの一例を模式的に示す斜視図である。
基礎パッキン100は、前後辺にそれぞれ3つの窪み101を有し、長手方向端辺には突起102と窪み103とを有する。突起102と窪み103とは、雌雄嵌合可能な形状となっている。基礎パッキン100の土台と接触する面には、通気のために長手方向に伸びた溝104が形成されている。また、基礎パッキン100には、上下方向に貫通した穴105が形成されている。穴105は、コンクリート基礎から上方へ突出したアンカーボルトを挿通するためのものである。また、基礎パッキン100は、長さLが200mm、幅Wが100mm、高さHが20mm程度の大きさを有している。
【0008】
このような基礎パッキンを、アンカーボルトが設けられたコンクリート基礎の上面に載置する。コンクリート基礎の直角の隅部では、2枚の基礎パッキンをT字型又はL字型に組み合わせて載置する。コンクリート基礎の直線部では、基礎パッキンを1枚ずつ載置することもあるが、2枚の基礎パッキンを上述したように長手方向に結合して載置することもある。そして、基礎パッキンの上面に、アンカーボルトの通し穴を穿った土台用木材を載置し、アンカーボルトにナットを螺合させて緊締することにより、コンクリート基礎と基礎パッキンと木製土台とを固定することができる。
【0009】
従来、コンクリート基礎の上面の全周域に基礎パッキンを載置するのではなく、一定の間隔を空けて載置していた。これにより基礎パッキンが載置されていない部分の隙間(高さ20mm程度)を換気穴として利用することができるので、コンクリート基礎に換気穴を形成する必要がなる。また、基礎と木製土台との間に基礎パッキンを介装することにより、木製土台の横滑りを防止して耐震性の高い構造とすることができる。
【0010】
この基礎パッキン工法によれば、建造物の換気性を向上させ、木製土台の腐朽やシロアリの喰害を防止することができ、建造物は堅牢となり耐震性を高めることができる。また、施工が簡便となり省略化を図ることができるという利点もある。
【0011】
図7は、上記基礎パッキン工法を用いて建造した建造物の一例を示す断面図である。
コンクリート基礎200の上面に基礎パッキン100が載置され、さらにその上に木製土台110が載置され、図示しないアンカーボルトにナットを螺合させて緊締されている。
また、基礎パッキン100は、一定の間隔を空けて載置されているため、換気性は向上する。しかしながら、このままでは、この隙間から鼠等の小動物が出入りし、木製土台110等を食い荒らすことがある。
【0012】
そこで、通常、横長の鋼板の中央部分に鼠が通らない程度の小さな矩形の穴を多数、長手方向に整列するように形成し、さらにこの鋼板をその断面がZの形状になるように折り曲げ、穴が斜めの部分に位置するようにした防鼠材240を、基礎パッキン100が複数載置されている部分の外側全面に設け、さらにその外側に水切り230を配置する工法が採用されている。このような工法を採用した場合には、図7に示すように、コンクリート基礎200の外側全体に防鼠材240の下部と同じ厚さ(15〜20mm)でモルタルを塗布して硬化させ、基礎化粧モルタル220を形成していた。
なお、防鼠材240、水切り230は、釘で打ちつけることにより、その上部を木製土台110に固定、その上に外装材210を配置していた。
【0013】
このように、防鼠材240を設けると、モルタルを塗布する際に、防鼠材240の下部の幅がモルタル層の厚さの基準となるとともに、上端が防鼠材240で規制されるため、防鼠材240の下部を上端としてモルタルを形成すればよく、容易に基礎化粧モルタル220を形成することができた。
【0014】
しかし、近年では、図6に示した基礎パッキン100(以下、短尺の基礎パッキンともいう)に比べて、その長さが長く、例えば、長さLが900mm程度ある長尺の基礎パッキンを用いるようになってきた。それは、以下のような理由による。
【0015】
すなわち、このような長尺の基礎パッキンを用いると、コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように載置しても部品点数が増大せず、コンクリート基礎の上面に一定の間隔を空けて短尺の基礎パッキンを載置する場合と比べて、基礎パッキンの位置合わせが不要となり、施工がより簡便となり、さらなる省力化を図ることができる。
また長尺の基礎パッキンを用いると、位置合わせの作業が不要となるため、施工の質を均一化させることができ、木製土台の荷重が長尺の基礎パッキンの全域に均等に掛かることになるため、木製土台に撓み等が生じるおそれもない。
【0016】
図8は、コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように長尺の基礎パッキンを載置した様子を模式的に示す斜視図である。図中、200はコンクリート基礎、201及び202は部屋となる領域、203は玄関となる領域、302はアンカーボルトをそれぞれ示している。
【0017】
図8に示すように、コンクリート基礎200の上面には、その全周域を覆うように長尺の基礎パッキン300、301が載置されている。玄関となる領域203を囲うコンクリート基礎200の上面には、通気用の貫通穴がその側面に形成されていない中実体の基礎パッキン(以下、遮蔽型の基礎パッキンともいう)300が載置されている。
部屋となる領域201、202を囲うコンクリート基礎200の上面には、通気用の貫通孔がその側面に形成されている基礎パッキン(以下、換気型の基礎パッキンともいう)301が載置されている。
【0018】
図8に示したように、コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように長尺の基礎パッキンを載置する施工方法を用いる場合には、通常、遮蔽型の基礎パッキンと換気型の基礎パッキンとの両方を使用する。これは、以下のような理由による。すなわち、床下がなくて室内空間と外部空間とが土台を介して両側で接する箇所(例えば、玄関、勝手口、土間部等)においては、基礎パッキンから通気させる必要はなく、通気させると却って室内空間の気密性が悪化して冷暖房効率が低下してしまうから、遮蔽型の基礎パッキンを使用しているのである。一方、他の箇所においては、換気型の基礎パッキンを使用することにより、基礎パッキン自体に換気穴としての機能を持たせているのである。
【0019】
【特許文献1】実開昭54−181721号公報
【特許文献2】実開昭54−181708号公報
【特許文献3】特公昭55−40734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述したように、コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように長尺の基礎パッキンを略隙間なく載置する施工方法を用いる場合、換気型の基礎パッキンの貫通孔は、鼠等の小動物が通過できない大きさに設定されているため、防鼠材240(図7参照)を設ける必要はない。
しかしながら、上述の施工方法では、防鼠材240を設けないため、図7に示すように、コンクリート基礎200の外表面に基礎化粧モルタル220を形成する際、その上端や厚さを規定するものが存在せず、モルタルを塗布しにくいという問題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の問題を解決するために、基礎の外表面に基礎化粧モルタルを形成する際、その高さや厚さを規定する役割を果たすことが可能な部材を備えた基礎パッキンを新たに開発することを検討したが、既存の基礎パッキンはそのまま利用し、上記基礎化粧モルタルの高さや厚さを規定する別の新たな化粧モルタル止め部材を設けた方が容易にその目的を達成することができる。
【0022】
本発明は、上述した趣旨に基づいてなされたものであり、その目的は、基礎の外表面に基礎化粧モルタルを形成する際、その高さを規制する化粧モルタル止めとして役割を果たす部材を提供することにある。
また、本発明の目的は、上述の化粧モルタル止め部材を用いた建造物の施工方法を提供することにある。
【0023】
上述した目的を達成するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1)基礎化粧モルタルの高さを規制する化粧モルタル止めとしての役割を果たす化粧モルタル止め部材であって、
土台の外側面に固定するための板状の土台固定部と、前記土台固定部より斜め前方に張り出した板状の張出部と、前記張出部の下端に前記土台固定部とほぼ直角になるように設けられた矩形板状の化粧モルタル止め部とからなり、前記張出部には、開口が形成されるとともに、前記化粧モルタル止め部の中央部に前記張出部の下端が接合されていることを特徴とする化粧モルタル止め部材。
【0024】
(1)の発明によれば、当該化粧モルタル止め部材を用いることにより、基礎化粧モルタルの上端を上記化粧モルタル止め部の下面とするとともに、上記化粧モルタル止め部の幅を上記基礎化粧モルタルの幅の基準としてモルタルを塗布すればよく、従来の防鼠材等が設けられている場合等と同様に、容易かつ迅速に基礎化粧モルタルを形成することができる。
また、基礎化粧モルタルを化粧モルタル止め部材より上に形成することはなく、また、上記張出部は、上記土台固定部より斜め前方に張り出しており、かつ、開口が形成されているので、換気型の長尺基礎パッキンを用いた場合、通気孔による通気を確保することができる。
【0025】
さらに、化粧モルタル止め部のほぼ中央部に上記張出部の下端が接合されているので、基礎化粧モルタルを形成する際に、化粧モルタル止め部がモルタル塗り上げのコテの力を吸収しやすく、化粧モルタル止め部材が変形したり、傾斜するのを防止することができ、基礎化粧モルタルを適切に形成することができる。
【0026】
また、本発明は、以下のようなものを提供する。
(2)基礎の上に、順次、基礎パッキン及び土台を設けるとともに、前記土台に化粧モルタル止め部材を設ける建造物の施工方法であって、
前記基礎の上面に、その外側面が前記基礎の外側面より突出しないように基礎パッキンを載置する基礎パッキン載置工程と、前記土台を前記基礎パッキンの上面に載置する土台載置工程と、上記(1)に記載の化粧モルタル止め部材の前記化粧モルタル止め部が前記基礎の上面とほぼ同じレベルになるように、前記土台の外側面に前記土台固定部を固定する化粧モルタル止め部材固定工程とからなることを特徴とする建造物の施工方法。
【0027】
(2)の発明によれば、上記したように、基礎の上に基礎パッキン及び土台を載置した後、当該化粧モルタル止め部材の上記化粧モルタル止め部が上記基礎の上面とほぼ同じレベルになるように、上記土台の外側面に上記土台固定部を固定するので、上記土台固定部と上記張出部との境を、水切りを設ける際の目印とすることができ、水切りを適切な位置に設けることができる。
また、基礎化粧モルタルの上端を上記化粧モルタル止め部の下面とするとともに、上記化粧モルタル止め部の幅を上記基礎化粧モルタルの幅の基準としてモルタルを塗布すればよく、従来の防鼠材等が設けられている場合等と同様に、容易かつ迅速に基礎化粧モルタルを形成することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の化粧モルタル止め部材によれば、当該化粧モルタル止め部材を用いることにより、基礎化粧モルタルの上端を上記化粧モルタル止め部の下面とするとともに、上記化粧モルタル止め部の幅を上記基礎化粧モルタルの幅の基準としてモルタルを塗布すればよく、従来の防鼠材等が設けられている場合等と同様に、容易かつ迅速に基礎化粧モルタルを形成することができる。
また、換気型の長尺基礎パッキンを用いた場合、通気孔による通気を確保することができ、基礎化粧モルタルを形成する際に、化粧モルタル止め部がモルタル塗り上げのコテの力を吸収しやすく、化粧モルタル止め部材が変形したり、傾斜するのを防止することができ、基礎化粧モルタルを適切に形成することができる。
【0029】
また、本発明の建造物の施工方法によれば、化粧モルタル止め部材の上記土台固定部と上記張出部との境を、水切りを設ける際の目印とすることができ、水切りを適切な位置に設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
勿論、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を充足する範囲内で、適宜設計変更を行うことが可能である。
図1は、本発明の化粧モルタル止め部材の全体を示す正面図であり、図2(a)は、上記
化粧モルタル止め部材の一部を示す平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、左側面図であり、(d)は、右側面図であり、(e)は、底面図である。
【0031】
図3は、本発明の化粧モルタル止め部材を用いた本発明の建造物の施工方法を説明するための断面図である。なお、この施工法は、比較的簡単に説明することができるので、一の図面を使用して説明することとする。
【0032】
本発明に係る化粧モルタル止め部材10は、基礎化粧モルタルの高さを規制する化粧モルタル止めとしての役割を果たす化粧モルタル止め部材であって、その長さが長い、いわゆる長尺の化粧モルタル止め部材でと言われるものである。
【0033】
「上記基礎化粧モルタルの高さを規制する」とは、上記基礎化粧モルタルを形成する際に、当該基礎化粧モルタルの高さをそれ以上高くしないように規制するという意である。従って、当該化粧モルタル止め部材を用いることにより、モルタルを塗布する際に、基礎化粧モルタルの上端を上記化粧モルタル止め部の下面とすることでできる。また、上記化粧モルタル止め部の幅を上記基礎化粧モルタルの幅の基準としてモルタルを塗布することができる。すなわち、化粧モルタル止め部の幅を基礎化粧モルタルの幅と同じになるように作製した場合には、その幅(厚さ)が化粧モルタル止め部の幅となるようにモルタルを塗布することができる。
【0034】
本発明に係る化粧モルタル止め部材10は、土台の外側面に固定するための矩形板状の土台固定部11と、土台固定部11より斜め前方に張り出した板状の張出部12と、張出部12の下端に土台固定部11とほぼ直角になるように設けられた矩形板状の化粧モルタル止め部13とからなり、張出部12には、開口12aが形成されるとともに、化粧モルタル止め部13の中央部分に張出部12の下端が接合されている。
【0035】
この化粧モルタル止め部材10は、長尺であるので、図1に示すように、いずれの部材も横に長い形状となっている。
【0036】
図3に示した建造物の施工方法に関しては、後で詳しく説明するが、土台固定部11は、図3に示した基礎30の上に基礎パッキン20を介して設けられた土台40の外側面40aに固定するための部材であり、土台40に釘41を打ち込む際に用いる固定用貫通孔11aが、所定の間隔で設けられている。なお、土台固定部11を土台40に固定する方法は、上記方法に限られず、接着等により固定してもよい。
【0037】
張出部12は、土台固定部11より下方斜め前方に張り出している。
これは、張出部12が、基礎パッキン20の外側面21aと近接しすぎると、基礎パッキン20の通気孔25による空気の流通性を損なう場合があるためである。すなわち、垂直に設けられた土台固定部11より下方斜め前方に張出部12を張り出させることにより、化粧モルタル止め部材10の土台固定部11を取り付けたときに、張出部12と基礎パッキン20の外側面21aとの距離を確保して、基礎パッキン20の通気性の低下を防止しているのである。
また、張出部12の下端は、化粧モルタル止め部13のほぼ中央に接合されており、化粧モルタル止め部13の後端が土台固定部11の垂下に位置するようにしている。
【0038】
張出部12には、開口12aが形成されている。開口の大きさ、開口率は、基礎パッキン20の通気孔25による空気の流通性を損なわない程度とされる。
本実施形態では、張出部12の開口12aは、基礎パッキン20の各通気孔25の開口よりも遥かに大きく設定され、この開口12aを通して外側から基礎パッキン20の配置状態を目視、確認することができるようになっている。
【0039】
図1、2に示す化粧モルタル止め部材10では、土台固定部11と化粧モルタル止め部13とを接続するためのわずかな幅の結合部12bを除いて、張出部12の殆どの部分に開口12aが形成されており、基礎パッキン20の通気孔25による空気の流通が充分に確保されている。
【0040】
土台固定部11を土台40に固定すると、土台40の主面は、鉛直になるが、化粧モルタル止め部13は、土台固定部11に対して垂直に設けられており、土台固定部11が土台40に固定されると、化粧モルタル止め部13の主面は水平状態になる。
【0041】
また、化粧モルタル止め部13は、土台固定部11が土台40に固定されると、ほぼ基礎30の上面30aと同一平面を形成する。このため、基礎化粧モルタル50を形成する際に、化粧モルタル止め部13の下面を基礎化粧モルタル50の上面とすることができ、化粧モルタル止め部13の幅を基礎化粧モルタル50の幅の基準とすることができる。
【0042】
また、化粧モルタル止め部13のほぼ中央部に張出部12の下端が接合されているので、基礎化粧モルタル50を形成する際、化粧モルタル止め部13はモルタル塗り上げのコテの力を吸収しやすく、化粧モルタル止め部13が傾斜しにくく、化粧モルタル止め部材10全体の変形を防止することができ、基礎化粧モルタル50を適切に形成することができる。
【0043】
「化粧モルタル止め部13の中央部」とは、化粧モルタル止め部13の前後端を残して内側であればよく、より中央に近づくことにより、強度を向上させることができ、モルタル塗り上げのコテの力を吸収することができ、化粧モルタル止め部13が傾斜するのを防止することができる。
【0044】
化粧モルタル止め部13の幅は、例えば、15〜20mmとされる。基礎30の外表面に基礎化粧モルタル50を形成する際、その厚さが15〜20mmであり、モルタルをこの厚みとする際に基準となるからである。
【0045】
実施形態に係る化粧モルタル止め部材10は、軽量化、持ち運び容易性のために、板状とされ、施工しやすくされている。また、更なる軽量化のために、張出部12の開口部12aが大きく形成されている。本発明の化粧モルタル止め部材10は、全体の厚さは薄いが、土台固定部11と張出部12とは、所定の角度αで屈曲しており、かつ、化粧モルタル止め部13の中央に張出部12の下端が接合されているため、全体的に変形しにくく、機械的な強度にも優れている。
【0046】
化粧モルタル止め部材10の長さは特に限定されるものではないが、例えば、500〜2000mmが望ましい。化粧モルタル止め部材10の長さを長く作製しておけば、現場で施工する際に、切断することにより、その幅を短くすることができるので、長い方が望ましい。
【0047】
本発明の化粧モルタル止め部材10の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、金属材料、樹脂材料等を挙げることができる。金属材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス、鋳鉄等を挙げることができる。セラミックを用いることとしてもよい。樹脂材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル、ナイロン等を挙げることができる。また、樹脂材料として、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)等のゴム材料を挙げることができる。これらの材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】

化粧モルタル止め部材の材料として、樹脂材料を用いる場合には、無機材料を添加して用いることが望ましい。剛性が高くなり建築材料として好適な硬さとすることができ、光による樹脂材料の脆性化を防止し、さらに、耐水性や耐熱性等を向上させることができるからである。無機材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、石粉、コンクリート粉体、高炉スラグ、フライアッシュ等を挙げることができる。樹脂材料と無機材料との配合重量比は、1:0.1〜1:3であることが好ましい。また、例えば、フタル酸エステル、ジブチルフタレート等の可塑剤を添加してもよい。また、廃材等を利用することにより、より安価な化粧モルタル止め部材を提供することができる。
【0049】
次に、本発明の化粧モルタル止め部材を用いた本発明の建造物の施工方法について説明する。
本発明に係る施工方法は、基礎の上に、順次、基礎パッキン及び土台を設けるとともに、前記土台に化粧モルタル止め部材を設ける建造物の施工方法であって、
前記基礎の上面に、その外側面が前記基礎の外側面より突出しないように基礎パッキンを載置する基礎パッキン載置工程と、
前記土台を前記基礎パッキンの上面に載置する土台載置工程と
請求項1又は2記載の化粧モルタル止め部材の前記化粧モルタル止め部が前記基礎の上面とほぼ同じになるように、前記土台の外側面に前記土台固定部を固定することを特徴とする建造物の施工方法である。
【0050】
まず、上記施工方法において用いる基礎パッキンについて説明する。
上記基礎パッキンは、特に限定されるものではないが、いわゆる長尺の換気型基礎パッキンが望ましい。
長尺の基礎パッキンを用いると、コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように載置しても部品点数が増大せず、コンクリート基礎の上面に一定の間隔を空けて短尺の基礎パッキンを載置する場合と比べて、基礎パッキンの位置合わせが不要となり、施工がより簡便となり、さらなる省力化を図ることができるからである。また、換気型の基礎パッキンを使用することにより、換気を図ることができ、化粧モルタル止め部材10の張出部12に形成した開口12aを有効に利用することができるからである。
【0051】
図4は、長尺の換気型基礎パッキンの一例を模式的に示す斜視図であるが、本発明で用いる基礎パッキンは、図4に示す基礎パッキンの形状に限られない。
この基礎パッキン20は、所定の厚さを有する略矩形板状をなしており、長辺方向に伸びた一対の基体21、22と、一対の基体21、22を短辺方向に接続する4箇所の結合部23とから構成され、これらは一体的に形成されている。なお、結合部23は、4箇所に限られず、3箇所でも、5箇所以上でもよい。
【0052】
基体21、22は四角柱形状を有しているが、一方の先端の接続部27aには、切り欠き(突起)が形成され、他方の先端の接続部27bには、上下に貫通した溝が形成されており、別の基礎パッキンと接続部27a、27b同士を嵌合させることにより、連結することができるようになっている。
基体21、22の寸法は、例えば、長さは500〜2000mm、幅20〜70mm、高さ10〜30mmである。なお、接続部27a、27bに相当する部分は、切り欠きや溝が形成されておらず、平坦であってよい。
【0053】
基礎パッキン20の寸法も特に限定されるものではないが、例えば、長さは500〜2000mm、幅は70〜200mm、高さは10〜30mmである。
基体21、22及び結合部23によって囲まれた空間が、アンカーボルトを挿通するためのボルト挿通孔である。
【0054】
この基礎パッキン20では、床下の換気を行うとともに、軽量化を図るため、短辺方向に貫通する側面視矩形状の多数の通気孔25が設けられている。一方、結合部23の近傍では、通気孔25を形成しにくいので、上下に貫通する縦孔26が設けられている。
本実施形態に係る基礎パッキン20では、充分な軽量化がなされており、取り扱いの利便性に優れる。なお、材料は、上記した化粧モルタル止め部材10と、ほぼ同様の材料からなる。
【0055】
上記した基礎パッキン20を用いた本発明の建造物の施工方法では、図3に示したように、まず、基礎パッキン載置工程を行い、基礎パッキン20を基礎30の上面に載置する。
この際、基礎パッキン20の外側面21aが基礎30の外側面より突出しないように基礎パッキン20を載置する。
【0056】
次に、土台載置工程を行い、この基礎パッキン20の上に木製の土台40を載置し、図示しないアンカーボルトにナットを螺合させて緊締する。
本実施形態に係る基礎パッキン10は、長尺の基礎パッキンであり、外側面に換気孔15が形成されているので、図8に示すように、換気が必要な基礎の上面全体を覆うように基礎パッキン10を載置する。
【0057】
次に、化粧モルタル止め部材固定工程を行い、化粧モルタル止め部材10の化粧モルタル止め部13が基礎30の上面とほぼ同じになるように、土台40の外側面40aに土台固定部11を釘41を用いて固定する。
【0058】
上記工程の後、基礎化粧モルタル50を形成するために、モルタルを塗布する。この際、基礎30の上端から化粧モルタル止め部13が突出し、その幅は、モルタルの厚さと略同じ、例えば、15〜20mmであるため、基礎化粧モルタル50の表面が化粧モルタル止め部13の先端部と略同じとなり、その上端が化粧モルタル止め部13の下面となるようにモルタルを形成すればよい。従って、容易に基礎化粧モルタル50を形成することができる。
【0059】
この後、通常は、雨等により流れ落ちた水が床下に入り込まないように、水切り60を設ける。この際、化粧モルタル止め部材10の土台固定部11と張出部12との境を、水切り60を設ける際の目印とし、水切り60の大きく外側に屈曲した部分を、土台固定部11と張出部12との境と同じか、それよりわずかに上とすることで、水切り60を適切な位置に設けることができる。
【0060】
図5は、本発明の建造物の施工方法における別の実施形態を示す断面図である。
図5に示した施工方法では、基礎70の上に基礎パッキン20を載置する基礎パッキン載置工程で、基礎パッキン20の外側面21aが基礎70の外側面70bよりもかなり内側にくるように、基礎パッキン20を載置し、土台載置工程では、基礎パッキン20の上に基礎パッキン20の外側面21aと土台40の外側面40aとがほぼ同じ面を形成するように土台40を載置する。
【0061】
上記施工方法をとることにより、化粧モルタル止め部材固定工程で、基礎70の上面70aに化粧モルタル止め部材10の化粧モルタル止め部13の一部が載置されるように、化粧モルタル止め部材10を固定することができる。
【0062】
この場合には、基礎70の上に、しっかりと化粧モルタル止め部13が載置、固定されるため、化粧モルタル止め部13がより安定化され、その上端面が化粧モルタル止め部13の下面と同じになり、その幅が基礎70より突出した化粧モルタル止め部13と同じ幅の基礎化粧モルタル80を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の化粧モルタル止め部材の全体を示す正面図である。
【図2】(a)は、化粧モルタル止め部材の一部を示す平面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、左側面図であり、(d)は、右側面図であり、(e)は、底面図である。
【図3】本発明の化粧モルタル止め部材を用いた本発明の建造物の施工方法を説明するための断面図である。
【図4】長尺の換気型基礎パッキンの一例を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の建造物の施工方法における別の実施形態を示す断面図である。
【図6】従来の基礎パッキンの一例を模式的に示す斜視図である。
【図7】基礎パッキン工法を用いて建造した建造物の一例を示す断面図である。
【図8】コンクリート基礎の上面の全周域を覆うように長尺の基礎パッキンを載置した様子を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0064】
10 化粧モルタル止め部材
11 土台固定部
11a 固定用貫通孔
12 張出部
12a 開口部
12b 結合部
13 化粧モルタル止め部
20 基礎パッキン
21、22 基体
21a 外側面
23 結合部
25 通気孔
26 縦孔
27(27a、27b) 結合部
30、70 基礎
40 土台
50、80 基礎化粧モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎化粧モルタルの高さを規制する化粧モルタル止めとしての役割を果たす化粧モルタル止め部材であって、
土台の外側面に固定するための板状の土台固定部と、前記土台固定部より斜め前方に張り出した板状の張出部と、前記張出部の下端に前記土台固定部とほぼ直角になるように設けられた矩形板状の化粧モルタル止め部とからなり、
前記張出部には、開口が形成されるとともに、
前記化粧モルタル止め部の中央部に前記張出部の下端が接合されていることを特徴とする化粧モルタル止め部材。
【請求項2】
基礎の上に、順次、基礎パッキン及び土台を設けるとともに、前記土台に化粧モルタル止め部材を設ける建造物の施工方法であって、
前記基礎の上面に、その外側面が前記基礎の外側面より突出しないように基礎パッキンを載置する基礎パッキン載置工程と、
前記土台を前記基礎パッキンの上面に載置する土台載置工程と、
請求項1記載の化粧モルタル止め部材の前記化粧モルタル止め部が前記基礎の上面とほぼ同じレベルになるように、前記土台の外側面に前記土台固定部を固定する化粧モルタル止め部材固定工程とからなる
ことを特徴とする建造物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−132208(P2006−132208A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−322747(P2004−322747)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(390004145)城東テクノ株式会社 (53)
【Fターム(参考)】