説明

化粧料用基剤およびそれを配合してなる化粧料

【課題】 優れた感触と高い保湿性の双方を有し、洗浄性が良好で洗浄後も保湿性を持続することのできる化粧料用基剤、およびこれを含む化粧料を提供する。
【解決手段】 下記の式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体からなる化粧料用基剤。
O−(AO)−(CHCHCHCHO)−(AO)−R (I)
(式中、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、RとRは、同一または異なってもよい水素原子、炭素数6〜24の脂肪酸残基または炭化水素基で、かつ該水素原子の割合は0.5以下である。lは、オキシテトラメチレン基の平均付加モル数で、2≦l≦50、m+nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m+n≦200を満たし、さらに、0.02≦l/(m+n)≦1を満たす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた感触と高い保湿性の双方を有し、洗浄性が良好で、洗浄後も保湿性を持続することのできる化粧料用基剤およびこれを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用基剤には、皮膚に滑らかさやしっとり感を付与するための油性基剤や、メークや油汚れに対する洗浄効果を向上させるために界面活性剤が汎用されている。
このような油性基剤あるいは界面活性剤としては、特定のエステル油やトリグリセリドといった油脂などのエステル類(例えば特許文献1)、ポリオキシエチレングリコールジオレートあるいはジイソステアレート(例えば特許文献2)、モノ及び又はジエステル型非イオン性活性剤(例えば特許文献3)、特定構造を有するアルコキシレート型非イオン性界面活性剤(例えば特許文献4)、テトラヒドロフラン(THF)とアルキレンオキシドとのコポリマー(例えば特許文献5)などが提案されている。
しかしながら、特許文献1では、軽い感触が得られるものの、保湿効果に劣る。また、ポリオキシエチレングリコールジオレートあるいはジイソステアレートは、主に洗浄化粧料に配合されているが、塗布時ののびといった感触の面で劣ってしまう。特許文献3あるいは4記載の非イオン性界面活性剤では感触の面で劣り、化粧料への配合安定性の面でも不利である。さらに、特許文献5では、油分との相溶性に優れているものの、保湿性の面で劣ってしまう。
したがって、のびといったように皮膚に優れた感触を与え、洗浄性が良好で、洗浄後でもしっとり感を持続するような化粧料用基剤の開発は、これまでになされていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−220326号公報
【特許文献2】特開平8−92032号公報
【特許文献3】特開2002−371297号公報
【特許文献4】特開2003−292997号公報
【特許文献5】特開2005−162782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた感触と高い保湿性の双方を有し、洗浄性が良好で洗浄後も保湿性を持続することのできる化粧料用基剤、およびその基剤を含む化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は以下に示されるものである。
(1)下記の式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体からなる化粧料用基剤。
O−(AO)−(CHCHCHCHO)−(AO)−R (I)
(式中、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、RとRは、同一または異なってもよい水素原子、炭素数6〜24の脂肪酸残基または炭化水素基で、かつ該水素原子の割合は0.5以下である。lは、オキシテトラメチレン基の平均付加モル数で、2≦l≦50、m+nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m+n≦200を満たし、さらに、0.02≦l/(m+n)≦1を満たす。)
(2)前記においてAOがオキシエチレンである化粧料用基剤。
(3)前記の化粧料用基剤を含む化粧料。
【発明の効果】
【0006】
本発明の化粧料用基剤は、優れた感触と高い保湿感の両方を有し、洗浄性が良好で洗浄後も保湿性を持続することができる基剤でありそれを含む化粧料も有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、RとRは、同一または異なってもよい水素原子、炭素数6〜24の脂肪酸残基または炭化水素基であり、かつ該水素原子の割合は0.5以下、好ましくは0.3以下である。0.5を超えると、感触の面および洗浄効果で劣り好ましくない。水素原子の割合は、RとRが水素原子の割合を示すものであり、水酸基価から算出される。
1およびR2で用いる炭素数6〜24の脂肪酸残基または炭化水素基の炭素数は、好ましくは炭素数8〜22であり、さらに好ましくは炭素数12〜18である。炭素数が6より小さいと、保湿性および洗浄性の面で劣り、24より大きいと、感触の面で劣り好ましくない。脂肪酸残基としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸または分岐脂肪酸の残基でもよく、さらには、ヒドロキシル基置換脂肪酸の残基でもよい。例えば、カプロン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、2,2−ジメチルブタン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、テトラデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、アラキジン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、リグノセリン酸、デセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコセン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、テトラコサペンタエン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、べヘン酸、エルカ酸、ヒドロキシステアリン酸などの脂肪酸残基が挙げられ、天然原料由来の混合脂肪酸であるヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、硬化パーム核油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等でもよい。これらの1種または2種以上を用いても良い。好ましくは、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、酸、ドデカン酸、ラウリン酸、テトラデカン酸、ミリスチン酸、ヘキサデカン酸、パルミチン酸、オクタデカン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸である。
炭化水素基としては、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基あるいは分岐炭化水素基でもよく、さらには、ヒドロキシ置換炭化水素基でもよい。例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、イソパルミチル基、イソステアリル基、2−エチルへキシル基、2−デシルテトラデシル基、オレイル基、ヒドロキシステアリル基などの炭化水素基が挙げられ、天然原料由来のヤシ油アルキル基、牛脂アルキル基、硬化牛脂アルキル基でもよい。これらの1種または2種以上を用いても良い。好ましくは、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、ドコシル基、イソパルミチル基、イソステアリル基、2−エチルヘキシル基、2−デシルテトラデシル基、オレイル基、ヒドロキシステアリル基、ヤシ油アルキル基である。
【0008】
オキシテトラメチレン基は、化粧料あるいは油性汚れに対する洗浄性もしくはのびといった優れた感触を付与するための必須成分であり、lはオキシテトラメチレン基の平均付加モル数で2≦l≦50、好ましくは2≦l≦30、より好ましくは3≦l≦20である。lが30より大きいと感触で劣るばかりか求める保湿効果が得られない。
AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられるが、好ましくはオキシエチレン基である。
【0009】
m+nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で1≦m+n≦200、好ましくは1≦m+n≦50である。m+nが1より小さいと、求める保湿効果が得られず、m+nが200より大きいと、感触が劣ってしまい好ましくない。
さらに、オキシアルキレン基の平均付加モル数に対する、オキシテトラメチレン基の平均付加モル数の割合l/(m+n)は、0.02≦l/(m+n)≦1を満たす。0.02を下回ると、感触の面で劣り、1を超えると保湿効果に劣ることがあり好ましくない。
【0010】
本発明の式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体は、公知の方法で製造することができる。RまたはRが、脂肪酸残基の場合、例えば、ポリテトラメチレングリコールに、炭素数2〜3のアルキレンオキシドを付加重合したポリアルキレングリコールと脂肪酸とのエステル化反応や低級アルコールの脂肪酸エステルとのエステル交換反応で得ることができる。炭化水素基の場合、例えば、ポリテトラメチレングリコールに、炭素数2〜3のアルキレンオキシドを付加重合したポリアルキレングリコールとハロゲン化炭化水素とのエーテル化反応で得ることができる。
【0011】
本発明の化粧料中への化粧料用基剤の配合量は特には限定されないが、通常0.01〜80重量%配合される。
本発明の化粧料においてはさらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧料、医薬品などに一般的に用いられている各種成分を配合することが可能である。例えば、保湿剤、炭化水素、高級アルコール、高級脂肪酸およびこれらのトリグリセリド、エステル油、動植物油脂、シリコーン、ビタミン類、紫外線吸収剤、水溶性高分子、酸化防止剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、金属イオン封鎖剤、エタノール、増粘剤、防腐剤、色素、顔料、香料などが挙げられる。
また、本発明の化粧料用基剤を配合してなる化粧料の形態は、特に限定されず、水性化粧料、油中水型または水中油型の乳化化粧料、油性化粧料のいずれでもよく、シャンプー、リンス、ボディソープ、洗顔剤、化粧水、乳液、クリーム、整髪料、口紅、育毛剤などさまざまな形態でも良い。
【実施例】
【0012】
実施例により本発明を具体的に説明する。水酸基価は、JIS K1557 6.4に準じて測定した。
<合成例1> ポリオキシエチレン(m+n=20)トリテトラメチレングリコール(l=3)のイソステアリン酸エステル(水素原子の割合0.05、l/(m+n)=0.15)
トリテトラメチレングリコール(l=3;PTG 250 保土谷化学工業(株)製)250gと触媒として水酸化カリウム2.4gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら150℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置によりエチレンオキシド970gを滴下させ、1時間撹拌した。その後オートクレーブより反応組成物をとりだし、リン酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095MPa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためろ過を行い、ポリオキシエチレン(m+n=20)トリテトラメチレングリコール(l=3)1160gを得た。水酸基価は100.3であった。
得られたポリオキシエチレン(m+n=20)トリテトラメチレングリコール(l=3)500gとイソステアリン酸(EMERSOL874 コグニスジャパン(株)製)250gを200℃にて10時間反応させ、ポリオキシエチレン(m+n=20)トリテトラメチレングリコールのイソステアリン酸エステルを690g得た。水酸基価は5.0であることから、水素原子の割合は0.05であった。
【0013】
<合成例2> ポリオキシエチレン(m+n=30)ポリテトラメチレングリコール(l=12)のオレイン酸エステル(水素原子の割合0.25、l/(m+n)=0.40)
ポリテトラメチレングリコール(l=12;PTG 850 保土谷化学工業(株)製)850gと触媒として水酸化カリウム6.0gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ内の空気を乾燥窒素で置換した後、撹拌しながら150℃にて触媒を完全に溶解させた。次に滴下装置によりエチレンオキシド1500gを滴下させ、1時間撹拌した。その後オートクレーブより反応組成物をとりだし、リン酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するために、減圧−0.095MPa(ゲージ圧、50mmHg)、100℃で1時間処理した。さらに処理後生成した塩を除去するためろ過を行い、ポリオキシエチレン(m+n=30)ポリテトラメチレングリコール(l=12)2250gを得た。水酸基価は50.8であった。
得られたポリオキシエチレン(m+n=30)ポリテトラメチレングリコール(l=12)475gとオレイン酸(エキストラオレイン 日本油脂(株)製)85gを200℃にて10時間反応させ、ポリオキシエチレンポリオキシエチレン(m+n=30)ポリテトラメチレングリコール(l=12)のオレイン酸エステルを550g得た。水酸基価は12.7であることから、水素原子の割合は0.25であった。
【0014】
【表1】

【0015】
合成例に準じて、表1に示す本発明のポリアルキレングリコール誘導体3〜5および比較物質6〜10を合成した。
<実施例1〜5および比較例1〜10>
表2に示すように(a)成分として請求項1記載の化合物1〜5、(a’)成分として比較物質6〜10、共通添加成分に下記成分を選定し、下記の調整方法によりクレンジング化粧料を調整した。
【0016】
【表2】

【0017】
化合物11:POE/1,12−ドデカンジオール/POEブロックポリマー(平均分子量6800、親水性部97重量%)モノ/ジイソステアリルエステルの混合物
化合物12:POE/POP/POEブロックポリマー(平均分子量15500、親水性部80重量%)モノ/ジステアリルエステルの混合物
化合物13:ラウリルアルコールにTHF(6.5モル)とPO(10モル)をランダム付加させた化合物
<共通添加成分>
トリイソステアリン酸POE(20モル)グリセリル 15.0重量%
トリカプリル酸グリセリル 25.0重量%
水添ポリイソブテン 15.0重量%
POE(7モル)モノヤシ油脂肪酸グリセリル 10.0重量%
モノオレイン酸ソルビタン 10.0重量%
ジプロピレングリコール 5.0重量%
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残部(全体が100重量%になるように)
<調製方法>
グリセリン、ジプロピレングリコールおよび精製水以外の成分を80℃に加温し均一に溶解した後、撹拌しながら、ジプロピレングリコールおよび精製水を同温度で徐々に添加し、撹拌後40℃まで冷却してクレンジング化粧料を調製した。
【0018】
<官能評価>
塗布時の感触、洗浄効果、洗浄(すすぎ)後の保湿感について、女性20名の専門パネルによる官能評価を行った。評価方法は、上腕部を石鹸で洗浄した後に、口紅を塗布した。30分後、調製したクレンジング化粧料を口紅に塗布した時の感触、および水で洗い流した際の洗浄効果を下記評価基準にて評価した。さらに、洗浄後の保湿感に関しては、洗い流してから30分後の様子を下記評価点基準に基づいて評価した。結果を表2に併せて示す。
(1)塗布時の感触
5:皮膚と口紅によくなじみ、のびもよい。
4:口紅とのなじみが若干劣るが、皮膚となじみ、のびがよい。
3:皮膚と口紅とのなじみに若干劣るが、のびがよい。
2:皮膚と口紅とのなじみに若干劣り、ひっかかる感じがする。
1:皮膚と口紅になじまず、ひっかかる感じがする。
平均値から3.5以上を感触に優れていると評価した。
(2)洗浄効果
水道水で洗い流した直後の状態を以下の基準で評価した。
5:洗浄性が非常に良い。
4:洗浄性が良い。
3:洗浄性が普通。
2:洗浄性が悪い。
1:洗浄性が非常に悪い。
10名の平均値から3.5以上の場合洗浄効果は十分である評価した。
(3)洗浄後の保湿性
5:肌にかさつきがほとんどなく、うるおいがある感じ
4:肌にかさつきがなく、若干うるおいがある感じ
3:肌に若干かさつきがあるが、肌荒れまで至らない感じ
2:肌に少しかさつきがあり、肌荒れしそうな感じ
1:肌に非常にかさつきがあり、肌荒れしている感じ
平均値が3.5以上を洗浄後のうるおいがあると評価した。
実施例1〜5より、本発明の化粧料は、塗布時の感触、洗浄効果、保湿性のすべてを満たすものである。しかし比較例1〜10においては、3つの性質を同時に満たすものはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体からなる化粧料用基剤。
O−(AO)−(CHCHCHCHO)−(AO)−R (I)
(式中、AOは炭素数2〜3のオキシアルキレン基、RとRは、同一または異なってもよい水素原子、炭素数6〜24の脂肪酸残基または炭化水素基で、かつ該水素原子の割合は0.5以下である。lは、オキシテトラメチレン基の平均付加モル数で、2≦l≦5
0、m+nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m+n≦200を満たし、さらに、0.02≦l/(m+n)≦1を満たす。)
【請求項2】
式(I)で示されるポリアルキレングリコール誘導体において、AOがオキシエチレン基である請求項1記載の化粧料用基剤。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の化粧料用基剤含む化粧料。

【公開番号】特開2007−91698(P2007−91698A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287001(P2005−287001)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】