説明

化粧材用合成樹脂製押出成形体およびその取付構造

【課題】突条部の高さ方向における収縮が抑制された化粧材用合成樹脂製押出成形体およびその取付構造を提供すること。
【解決手段】押出方向で連続的に形成された突条部2を有し、該突条部が成形体本体1側の端部に切欠き状部4を有し、成形体押出方向に対する垂直断面において該突条部の巾が本体1側から先端側に向けて連続的に広くなる化粧材用合成樹脂製押出成形体。上記成形体10、該成形体が取り付けられる下地構造物11、および該下地構造物に成形体を取り付けるための結合部材13を有し、結合部材を下地構造物に挿通し、成形体に嵌入された結合受け部材3と結合させた取付構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の化粧材用合成樹脂製押出成形体およびその取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の化粧材あるいは装飾用材料の用途として、浴室、キッチンおよびトイレのカウンター部材、ドアや窓の枠材、ならびに室内の巾木等の内装用材料、破風、胴差し、見切り材等の外装用材料が挙げられる。そのような材料として、合成樹脂製押出成形体が知られており、特に模様や光沢などの加飾性を備えたものが多種使用されている。成形体を取り付けるに際しては、例えば図4に示すように、成形体100にそのままナット等の結合受け部材103を嵌入させておき、ボルト等の結合部材113を下地構造物111に挿通して結合受け部材103と結合させる(特許文献1)。
【特許文献1】実開平2−30511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の化粧材用合成樹脂製押出成形体には、上記したように、そのままナット等の結合受け部材が嵌入されるので、成形体強度の観点から、成形体厚みを十分に厚く設定する必要があり、樹脂の使用量の観点から、成形体の製造コストに問題があった。
【0004】
そこで、本発明の発明者等は、図5に示すように、成形体本体201から単に隆起させた突条部202を形成し、該突条部202に結合受け部材203を嵌入することを試みた。これによって、成形体200の結合部材213による取り付け時において、下地構造物211と成形体200との間にスペースを確保できるので、樹脂使用量の低減を図ることができる。しかしながら、図5に示すような成形体本体201および突条部202を一体押出成形によって製造すると、冷却時に突条部202の高さ方向Hにおいて収縮が起こり、しかも収縮にムラが生じるので、成形体の取り付け時に突条部の高さ調整が煩雑であった。また成形体の突条部形成面とは反対の面における突条部形成領域220に凹部が生じる、いわゆるヒケ(窪み)現象が起こった。化粧材用成形体は、突条部形成面と反対の面が一般に表に出るので、ヒケ現象が生じると、模様や光沢にムラが生じ、外観上に問題があった。
【0005】
本発明は、突条部の高さ方向における収縮が抑制された化粧材用合成樹脂製押出成形体およびその取付構造を提供することを目的とする。
【0006】
本発明はまた、突条部の高さ方向における収縮およびヒケ現象の発生が抑制された化粧材用合成樹脂製押出成形体およびその取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、押出方向で連続的に形成された突条部を有する化粧材用合成樹脂製押出成形体であって、該突条部が成形体本体側の端部に切欠き状部を有し、成形体押出方向に対する垂直断面において該突条部の巾が本体側から先端側に向けて連続的に広くなることを特徴とする化粧材用合成樹脂製押出成形体に関する。
【0008】
本発明はまた、化粧材用合成樹脂製押出成形体、該成形体が取り付けられる下地構造物、および該下地構造物に成形体を取り付けるための結合部材を有し、結合部材を下地構造物に挿通し、成形体に嵌入された結合受け部材と結合させたことを特徴とする取付構造に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧材用合成樹脂製押出成形体は、突条部の高さ方向における収縮を有効に抑制できる。しかも、ヒケ現象の発生も有効に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化粧材用合成樹脂製押出成形体(以下、押出成形体という)はナット等の結合受け部材を嵌入されて、ボルト等の結合部材によって、下地構造物に取り付け・固定されるものである。例えば図1で示されるように本発明の押出成形体10は、押出成形体本体1と一体的に形成された特定形状の突条部2に、結合受け部材3が嵌入されて使用される。本発明の押出成形体10を下地構造物11に取り付けるに際しては、図1に示すように、ボルト等の結合部材13を下地構造物11の挿通孔12に挿通し、押出成形体10の結合受け部材3と、螺合等によって結合させて、取付構造(物)を形成する。
【0011】
以下、図面を用いて本発明を詳しく説明する。図1は、本発明の押出成形体10の押出方向から見たときの、押出成形体10、下地構造物11および結合部材13の概略断面図を示す。
【0012】
本発明の押出成形体10において、突条部2は、当該成形体10の押出方向(図1の紙上、表裏方向)と平行な方向において連続的に形成されており、成形体本体1側の端部に切欠き状部4を有している。
【0013】
突条部2が成形体本体1側の端部に切欠き状部4を有するとは、図1に示すように、本体1から隆起する突起部2の基部(付け根部分)の端面が切欠き状部4を形成し、これによって、切欠き状部4の上部がフランジ状に突出し、フランジ部5が形成される、という意味である。その結果、突条部2の本体側の巾が突条部全体の最大巾よりも小さくなり、押出成形時において型内の突条部形成領域への樹脂の急激な流入を緩和・抑制できるので、突条部が結合受け部材を嵌入・保持できる程度に十分な巾を有していても、ヒケ現象を抑制できる。突条部が切欠き状部を有さないと、押出成形時において型内の突条部形成領域への樹脂の急激な流入が起こり、ヒケ現象が起こる。なお切欠き状部4およびフランジ部5もまた押出方向において連続的に形成されている。
【0014】
本明細書中、突条部に関して巾とは、押出成形体の押出方向に対して垂直な断面(以下、単に「垂直断面」という)における突条部の巾を指すものとする。
特に、突条部の本体側の巾とは、突条部が切欠き状部を有することによって巾が小さくなった部分における突条部の巾の最小値を指すものとする。
【0015】
突条部2の形状は、成形体押出方向に対する垂直断面において該突条部の巾が本体側から先端側に向けて連続的に広くなるような形状である。また突条部は、押出成形体の寸法精度安定性の観点から、通常は、図1に示すように、本体側とは反対の先端側において下地構造物11を受けるための平坦状端面7を有する。従って、本発明における突条部において突条部全体の最大巾は先端側において達成される。これによって、突条部の高さ方向の収縮を抑制でき、その結果として収縮ムラの発生を防止できるので、突条部の高さ調整を要することなく、成形体を簡便に取り付け可能になる。突条部の巾が本体側から先端側に向けて連続的に広くならない場合、例えば、突条部の高さ方向において巾の変わらない部分が連続して存在すると、突条部の高さ方向の収縮は十分に抑制できない。
【0016】
突条部2の垂直断面形状は、具体的には、例えば、図2(A)に示すように側面が直線的に形成された略台形形状、図2(B)に示すように側面が円弧状に膨らんで形成された略椀形形状、および図2(C)に示すように側面が円弧状に窪んで形成された略ラッパ形形状、ならびにそれらの複合形状等が挙げられる。
【0017】
図2(A)〜(C)それぞれにおいて、突条部(2a、2b、2c)は本体1側端部で切欠き状部(4a、4b、4c)を有し、これによってその上部にフランジ部(5a、5b、5c)が形成され、かつ突条部の巾が本体側から先端側に向けて連続的に広くなっている。それぞれの形状において突条部の本体側の巾を「x」、突条部全体の最大巾を「y」、突条部の高さを「h」として表す。特に、図2(A)は図1における突条部と同様の形状を有する突条部を示すものである。
【0018】
図2(A)〜(C)において突条部はコーナー部が丸みを帯びていても良い。
また突条部には、図2(A)〜(C)に示すように、ビスライン8が形成されることが好ましい。ビスライン8によって、結合受け部材の嵌入のための位置決め孔を容易に設けることができる。
【0019】
押出成形体の寸法精度安定性および製造容易性の観点から、突条部は図2(A)に示す形状が最も好ましい。
【0020】
突条部の高さ方向の収縮およびヒケ現象をより有効に防止する観点から好ましい態様において、突条部の本体側の巾(x)は突条部全体の最大巾(y)よりも0.5〜5.0mm、特に1.0〜3.5mmだけ小さい。このときより好ましくは突条部の本体側の巾(x)は6〜14mm、特に7〜11mmの範囲内である。突条部の本体側の巾(x)は結合受け部材の外径より必ずしも大きく設定する必要はない。図2に示す垂直断面において切欠き状部のところに、結合受け部材が現れても、突条部は押出方向において連続的に形成されているので、突条部が本体から分離されることはないためである。
突条部全体の最大巾(y)は特に制限されるものではなく、通常は7〜16mm、特に9〜13mmである。
【0021】
突条部の高さ(h)は所望の規格に応じて適宜設定されればよく、好ましくは2〜15mm、3〜12mmである。
【0022】
本体1の厚み(突条部がないところの成形体厚み)は通常、5〜25mm、好ましくは7〜15mmである。
【0023】
本発明の押出成形体は、本体1および突条部2を一体的に押出成形法によって成形することができ、その後、結合受け部材3を突条部2における所定の位置に嵌入される。
【0024】
本体1および突条部2は公知のいかなる熱可塑性樹脂からなっていてよく、非発泡体であっても、発泡体であってもよい。押出成形体の軽量化および加工性と強度とのバランスの観点から、低発泡体であることが好ましい。低発泡である場合、それらの発泡倍率は1.1〜5.0倍、好ましくは1.5〜3.0倍である。熱可塑性樹脂としては、後述の基材層を形成するものと同様の樹脂が例示できる。
【0025】
発泡倍率は、樹脂の真比重と成形品の比重から算出する。すなわち、真比重/成形品比重の値を発泡倍率とする。例えばABS樹脂の真比重が1.1とし、成形品の比重が0.55であるとすると、発泡倍率は2.0倍となる。
発泡剤は公知のものが使用可能であり、好ましくは後述の発泡剤が使用される。
【0026】
押出成形法においては、所定寸法の本体1および突条部2が一体成形されるような開口部を有する型を用いればよい。
結合受け部材の嵌入は、加熱した当該部材を突条部に押し込むことにより、容易に達成できる。このとき、突条部には、位置決めのための孔を設けておくことが好ましい。
【0027】
結合受け部材3は、本発明の押出成形体を取り付けるために上記突条部2に嵌入されるものであり、通常は、例えば、いわゆる鬼目ナット、インサートナット又はカレイナット等のナットが使用される。
結合受け部材の外径は特に制限されないが、通常、5〜12mm、特に6〜10mmのものを使用する。なお、突状部の本体側の巾(x)より小さいことが好ましいが、結合受け部材の保持に問題が生じない程度であれば、本体側の巾(x)より大きくても差し支えない。
【0028】
本発明において1つの突条部に対して嵌入される結合受け部材の個数は、押出成形体の押出方向長さに依存して決定されるため特に制限されるものではなく、通常は2個以上であり、例えば押出方向長さ1.5mの成形体の場合は2〜4個が好ましい。
【0029】
本発明においては、押出成形体が有する全ての突条部に結合受け部材が嵌入されなければならないというわけではなく、結合受け部材が嵌入されていない突条部を有してもよい。本発明の押出成形体は使用時において、通常は、1または2個以上の結合受け部材が嵌入された突条部を1以上有している。
【0030】
本発明の押出形成体は、上記したように、特定形状の突条部を有する限り、全体としていかなる形状を有していてよく、例えば、後処理としてさらに曲げ加工処理を行って、所定の全体形状を付与されていてもよい。
【0031】
本発明の押出成形体の具体例を図3に示す。図3は、本発明の押出成形体10を、結合部材13によって下地構造物11に取り付けたときの取付構造(物)の垂直断面図を示す。図3において、下地構造物11はいわゆるブラケットであり、壁パネルに対してビス101によって予め固定されているので、押出成形体10もまた結果として固定される。
【0032】
本発明の押出成形体は多層構成を有する多層共押出成形体であってもよい。本発明の押出成形体が多層構成を有するときの好ましい実施形態について以下、説明する。本実施形態の押出成形体は、多層構成を有する場合であっても、前記した特定形状の突条部を有するものであり、共押出成形法における型を、上記した押出成形法における型と同様の形状として成形を行えばよい。共押出成形体が得られた後は、上記と同様にして、結合受け部材の嵌入を行えばよい。
【0033】
多層共押出成形体(以下、単に「多層成形体」ということがある)は、低発泡熱可塑性合成樹脂からなる基材層(a)および非発泡熱可塑性合成樹脂からなる加飾層(b)の少なくとも2層からなる。多層共押出成形体において前記突条部が形成されるのは基材層(a)における加飾層(b)形成面と反対の面であり、突条部自体は基材層と同様の樹脂から形成される。
【0034】
基材層(a)は多層成形体に厚みを持たせて、内外装材として使用した場合に高級感と重厚感を付与すると共に、多層成形体に強度を持たせ、且つ下地構造体への取り付けを容易にするという役割を有する。相当の厚さを持たせた場合でも加工性と軽量性を保持することができるように、また多層成形時や曲げ加工処理時の冷却工程での反りや変形を防止するためにも、基材層には低発泡の熱可塑性合成樹脂を用いるのが好ましい。多層共押出成形体の厚みは基材層の厚さによって大略決定されるが、基材層の厚さは用途によって広い範囲で変えることができ、本実施形態においては5〜12mmの範囲が好ましい。
【0035】
基材層は単色均一なものでもよいが、加飾層を透明または半透明にした場合には、基材層に模様を付けることにより、加飾層の模様と重なり合って従来にない立体感と深みのある、しかも複雑な色配合をもった模様を現出することができる。基材層の模様は、粉体や着色剤を混合することによる分散模様であってもよいし、発泡状態の粗密によるものであってもよいし、または表面凹凸によるものでもよいし、更に他の方法による模様であってもよい。
【0036】
基材層を形成する熱可塑性合成樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂(以後、PVC樹脂という)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(以後、ABS樹脂という)、ポリスチレン樹脂(以後、PS樹脂という)、ハイインパクトポリスチレン樹脂(以後、HIPS樹脂という)、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(以後、AS樹脂という)、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂またはこれらの混合樹脂等を用いることができる。成形性、強靭性、経済性の面から特に好ましいのはPVC樹脂、ABS樹脂である。これらの熱可塑性合成樹脂には、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シラスバルーン等の充填材や軽量化材、ガラス繊維やセルロース繊維等の補強材、難燃剤、その他の、合成樹脂成形体に添加される各種添加材を含むことができる。特にPVCのような熱安定性にかける樹脂を用いる場合には、熱安定剤、滑剤を配合することが一般には不可欠である。
【0037】
押出成形体が多層構成を有する場合、基材層の発泡倍率が前記範囲内であればよい。
【0038】
加飾層(b)は模様や光沢を有する非発泡熱可塑性合成樹脂層であって、視覚的に美観を喚起させ得る層である。
加飾層を形成する熱可塑性合成樹脂は、押出成形性を有するものであれば特に制限されるものではなく、PVC樹脂;ABS樹脂;PS樹脂;HIPS樹脂;AS樹脂;アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合樹脂(以下、「AAS樹脂」という);アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合樹脂(以下、「AES樹脂」という);ポリエチレン樹脂;ポリプロピレン樹脂;PET樹脂;ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと記す)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体などのアクリル系樹脂;ニトリル樹脂またはこれらの混合樹脂等を使用することができる。
【0039】
加飾層を通して、加飾層の模様と基材層の模様を重ね合わせて深みのある模様を発現するという効果を達成するため、加飾層のベース樹脂として透明な合成樹脂を用いて加飾層を透明または半透明としてもよい。そのような合成樹脂としてはPVC樹脂、アクリル系樹脂、透明ABS樹脂、AS樹脂、PET樹脂、ニトリル樹脂またはこれらの混合樹脂等を使用することができる。特に好ましい樹脂はアクリル系樹脂、中でもPMMA樹脂である。
【0040】
加飾層に模様を形成するには下記の種々の方法が可能である:
(A)合成樹脂中にマイカ粉末;バーミキュライト粉末;金属粉末;金属箔粉末;セルロース等の有機繊維;木粉;熱硬化性樹脂等の粉粒体類;から選択される1種または2種以上の加飾性粉粒体を分散させる方法、
(B)合成樹脂中に1種または2種以上の着色剤を不均一に分散させる方法、
(C)金型により加飾層に凹凸を付与し、樹脂密度の差で濃淡を引き出す方法、等。
本実施形態では加飾層の模様形成方法として特に限定するものではないが、好ましいのは(A)の加飾性粉粒体を分散させる方法によるものである。上記方法は組み合わせて採用してもよい。特に(A)の方法を採用すると石目模様や斑点模様が良好に形成される。
【0041】
加飾層は模様を有することなく、光沢を有してもよい。
例えば、合成樹脂中に1種または2種以上の着色剤を均一に分散させることによって、光沢を有する着色加飾層を形成できる。
また例えば、合成樹脂中にいかなる添加剤も分散させないことによって、光沢を有する無着色加飾層を形成できる。
【0042】
加飾層の厚さは0.1〜2.5mm、好ましくは0.3〜1.5mmである。厚みが薄すぎると曲げ加工後の模様が得難く、一方、厚すぎると効果が変わらない割りには経済的に不利となり、また曲げ加工処理時の加工性も低下する。
【0043】
耐候性、成形性及び表面加飾性の観点から、加飾層の樹脂と基材層の樹脂とは以下の組み合わせで使用されることが好ましい。
(1)加飾層の樹脂;PMMA樹脂−基材層の樹脂;ABS樹脂;
(2)加飾層の樹脂;ABS樹脂−基材層の樹脂;ABS樹脂;
(3)加飾層の樹脂;AES樹脂−基材層の樹脂;ABS樹脂;
(4)加飾層の樹脂;PMMA樹脂−基材層の樹脂;PVC樹脂;
【0044】
多層成形体は加飾層の上にさらに、透明または半透明合成樹脂からなる表面層(c)を有することが好ましい。例えば、図6に示すように、基材層(a)の上に加飾層(b)および表面層(c)が順次積層されてなっている。これによって、深みのある良好な外観を醸し出すことが可能となる。さらに、耐候性を向上できる。この場合においても、前記突条部が形成されるのは基材層(a)における加飾層(b)形成面と反対の面であり、突条部自体は基材層と同様の樹脂から形成される。
【0045】
表面層(c)には透明合成樹脂が用いられる。透明合成樹脂としては、加飾層のところで記載したものと同じものが使用可能であるが、好ましくはアクリル系樹脂、ABS、AS、AAS、AES、PVCである。より好ましい表面層(c)の合成樹脂はアクリル系樹脂、特にPMMAである。
表面層樹脂には種々の物性を高めるために、通常合成樹脂に用いられる種々の添加剤を添加してもよい。
また透明性を損なわない範囲で着色剤を配合することもできる。
【0046】
表面層の厚さは通常は0.1〜1.5mmである。厚みが薄すぎると、曲げ加工後の厚みが薄くなりすぎるため、模様ムラが生じるおそれがある。特に、加飾層に前記(A)の方法により模様を形成した場合、曲げ加工処理後、曲げ部において加飾性粉粒体が表面に現出し、当該粒子に基づく凹凸により模様ムラが生じる。厚すぎると効果が変わらない割りには経済的に不利となり、また曲げ加工処理時の加工性も低下する。表面層の好ましい厚さは0.3〜0.8mm、特に0.4〜0.8mmである。加飾性粉粒体の凹凸による模様ムラをより有効に防止できるためである。
【0047】
耐候性、成形性及び表面加飾性の観点から、表面層の樹脂と加飾層の樹脂とは以下の組み合わせで使用されることが好ましい。
(1)表面層の樹脂;PMMA樹脂−加飾層の樹脂;PMMA樹脂;
(2)表面層の樹脂;PMMA樹脂−加飾層の樹脂;ABS樹脂;
【0048】
本実施形態のように押出成形体が多層成形体である場合であっても、突条部がないところの成形体厚みは前記した本体1の厚みと同様である。
【0049】
多層成形体は共押出成形法によって成形される。すなわち、共押出成形法によって全ての層が一括して成形される。生産性、長尺物成形、製品特性の一定性という面から、図7に示すような共押出成形機により、1個のダイス内で各樹脂を積層して共押出成形するのが最も適切である。なお、加飾層または表面層を塗布法等によって形成すると、基材層と加飾層との間または加飾層と表面層との間で、曲げ加工処理時において剥離が起こり、成形不良となる。
【0050】
共押出成形を行うには、従来から合成樹脂の共押出成形体の製造に使用されている共押出成形機を適宜利用して、通常の共押出成形方法により行うことができる。
【0051】
基材層を低発泡押出するために、上記の基材層の熱可塑性合成樹脂には発泡剤を配合する必要がある。発泡剤は押出温度で分解して気体を発生する固体状の発泡剤が好ましく、このような発泡剤として重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、アゾジカルボン酸アミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド等を用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。「部」は「重量部」を意味するものとする。
【0053】
(実施例1〜4および比較例1)
基材層、加飾層および表面層の配合物をそれぞれ、図7に示すような共押出成形機により、基材層用押出機A、加飾層用押出機B、表面層用押出機Cから同時に押出し、ダイス内で積層し、冷却後に所定長さに切断し、図3で示すような断面形状を有し、表1に示す層構成を有し、かつ表1に示す突条部を有する、図6で示すような3層または2層の多層成形体を成形した。長さ1200mm×幅400mm×所定厚みの寸法を有していた。押出条件は次の通りである:
基材用押出機:45φ、二軸押出機(押出温度 180℃)
加飾層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
表面層用押出機:40φ、一軸押出機(押出温度 200℃)
基材層、加飾層および表面層にはそれぞれ表に示す配合物を用いた。
【0054】
多層成形体の突条部に対して、加熱した表1に記載のナットを押し込み、図1に示すようにナットの上端が突条部の上面に位置するように嵌入させた。
【0055】
(評価)
・収縮
多層成形体における突条部の高さ方向の収縮率を算出し、評価した。収縮率は、実測高さ/設計高さ(成形時に使用した型)で示す。収縮率は、垂直断面における突条部の両端部および中央部において測定した。
○;突条部の両端部および中央部における収縮率はいずれも0.99以上であった;
△;突条部の両端部および中央部における収縮率のうち、少なくとも1つの値が0.95以上0.99未満であり、実用上問題があった;
×;突条部の両端部および中央部における収縮率のうち、少なくとも1つの値が0.95未満であった;
【0056】
・表面外観
多層成形体における突条部形成面とは反対の面を目視により観察した。
○;ヒケは全く発生していなかった;
×;観察面における反対面に形成された突条部領域に対応する領域にヒケが発生し、模様や光沢にムラが生じていた。
【0057】
・厚さ
厚さは、成形体断面を拡大鏡で見ることにより実測した。
【0058】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の押出成形体は住宅等の化粧材用材料として有用である。詳しくは浴室、キッチンおよびトイレのカウンター部材、ドアや窓の枠材、ならびに室内の巾木等の内装用材料、破風、胴差し、見切り材等の外装用材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】押出方向から見たときの、本発明の押出成形体、下地構造および結合部材の概略断面図を示す。
【図2】(A)〜(C)は、押出方向から見たときの、押出成形体の概略断面図を示す。
【図3】曲げ加工処理を行った本発明の押出成形体を、結合部材によって下地構造物に取り付けたときの取付構造の概略断面図を示す。
【図4】押出方向から見たときの、従来の押出成形体、下地構造および結合部材の概略断面図を示す。
【図5】押出方向から見たときの、従来の押出成形体、下地構造および結合部材の概略断面図を示す。
【図6】本発明の押出成形体の断面構造の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の押出成形体の製造のための共押出成形機の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0061】
1:押出成形体本体、2:2a:2b:2c:突条部、3:結合受け部材、4:4a:4b:4c:切欠き状部、5:5a:5b:5c:フランジ部、10:押出成形体、11:下地構造物、12:挿通孔、13:結合部材、a:基材層、b:加飾層、c:表面層、A:基材層用メイン押出機、B:加飾層用押出機、C:表面層用押出機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出方向で連続的に形成された突条部を有する化粧材用合成樹脂製押出成形体であって、該突条部が成形体本体側の端部に切欠き状部を有し、成形体押出方向に対する垂直断面において該突条部の巾が本体側から先端側に向けて連続的に広くなることを特徴とする化粧材用合成樹脂製押出成形体。
【請求項2】
押出成形体の発泡倍率が1.1〜5.0倍である請求項1に記載の化粧材用合成樹脂製押出成形体。
【請求項3】
突条部の本体側の巾が突条部全体の最大巾よりも0.5〜5.0mmだけ小さく、かつ6〜14mmの範囲内であり、突条部の高さが2〜15mmである請求項1または2に記載の化粧材用合成樹脂製押出成形体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化粧材用合成樹脂製押出成形体、該成形体が取り付けられる下地構造物、および該下地構造物に成形体を取り付けるための結合部材を有し、結合部材を下地構造物に挿通し、成形体に嵌入された結合受け部材と結合させたことを特徴とする取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−254381(P2008−254381A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−100770(P2007−100770)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】