説明

化粧板およびその製造方法

【課題】 建物の内装材として使用に適した化粧板であって、一枚の板材によって立体的な凹凸部を有する化粧板を簡単且つ精度よく製造することができ、優れた外観と音響効果を発揮することができると共に施工も簡単且つ確実に行える化粧板を提供する。
【解決手段】 表裏面に可撓性シート材2、3を貼着している化粧板主体1に、一定の間隔を存して互いに平行な一対の谷折り溝10、10と、少なくとも一条の山折り溝11とを交互に刻設し、一対の谷折り溝10、10を折り曲げることによって形成された凹条折曲部8a、8a間で凹部4を形成すると共に隣接する凹部4、4間に山折り溝11を折り曲げることによって形成された凸条折曲部9aからなる凸部5を形成し、凹部4の平坦な裏面を壁面等の施工面に対する取付面6に形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物の内壁面や天井面等の内装材としての使用に適した化粧板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、壁材として使用する内装材においては、その平坦な表面にデザイン的な特長をもたせたり良好な音響効果を発揮させる目的で、肉厚の板材に複数の凹溝等を刻設したり表面を削ることによって凹凸面を設けたのち、真空成形などによってその表面に化粧シートを貼着してなるものや、特許文献1に記載されているように、表面が平坦な板材に、断面形状が凸円弧状や山形状の一定長さと幅を有する多数の細長形状の化粧部材を縦横に並列させて接着、一体化させることにより、これらの化粧部材で表面が立体な凹凸面を形成すると共に、音を拡散させてフラッターエコーなどの音響障害を防止するようにした内装材が知られている。
【特許文献1】特開平8−177142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、肉厚の板材に多数の凹溝を刻設したりその表面を削って凹凸部を形成したのち、その表面に真空成形によって化粧シートを貼着することにより得られた内装材においては、凹凸部の深さや高さが板材の厚み以下となって立体感に劣ると共に、化粧シートの貼着時に、板材の表面に形成された凹部の内底面隅角部に該化粧シートを密接させた状態で貼着することが困難となり、化粧シートが凹部内で浮き上がった状態となる場合が発生して外観を損するといった問題点がる。
【0004】
一方、特許文献1に記載されているように、板材表面に断面形状が凸円弧状や山形状の化粧部材を縦横に並列させた状態で接着してなる内装材によれば、これらの化粧部材によって立体感を発揮させることができるが、多数本の化粧部材を板材表面に縦横に敷き並べて取付けなければならないために、その作業に非常な手間を要する上に、凹凸部の形状を変化させるには断面形状や大きさの異なる数種の化粧部材を必要とし、また、全ての内装材の品質を均一化させるように製造することが困難であって多量生産に適さないといった問題点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、一枚の板材に該板材の厚みよりも大きな凹凸部を簡単且つ精度よく形成することができ、その凹凸部によって優れた立体感と音響効果を発揮すると共に均一な品質を有して多量生産に適した化粧板とその製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の化粧板は、請求項1に記載したように、一定厚みを有する基板の表裏面に可撓性シート材を貼着してなる化粧板主体に、その裏面シート材から表面シート材に向かって刻設された山折り溝から折り曲げられて該溝の対向面を接着することにより形成された凸条折曲部と、上記山折り溝と平行に表面シート材から裏面シート材に向かって刻設された谷折り溝から折り曲げられて該溝の対向面を接着することにより形成された凹条折曲部とを間隔を存して多数条、設けられてあり、これらの凸条折曲部と凹条折曲部とによって凹凸部を形成してなる構造を有している。
【0007】
このように構成した化粧板において、請求項2に係る発明は、上記化粧板主体に互いに平行な2本の凹条折曲部を一対としてこの対の凹条折曲部が多数対、所定間隔毎に設けられていて、これらの各対の凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面に形成した凹部に形成していると共に、隣接する対の凹条折曲部間の化粧板主体部分を少なくともに一条の凸条折曲部からなる凸部に形成していることを特徴とする。
【0008】
さらに、請求項3に係る発明は、上記凸部の一部に凹条折曲部とこの凹条折曲部を挟んで互いに平行な凸条折曲部とを設けてこれらの凹条折曲部と凸条折曲部とにより浅底の凹部を形成していることを特徴とする。なお、基板の表面に貼着した可撓性シート材としては、請求項4に記載したように、化粧シートであることを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る発明は、上記化粧板の製造方法であって、表裏面に可撓性シート材を貼着している化粧板主体に、その裏面シート材から表面シート材に向かって山折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設すると共に表面シート材から裏面シート材に向かって谷折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設したのち、化粧板主体をこれらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げて各溝の対向面を一体に接合接着することにより、山折り溝による凸条折曲部と谷折り溝による凹条折曲部とを形成することを特徴とする。
【0010】
このように構成した化粧板の製造方法において、請求項6に係る発明は、上記化粧板主体に互いに平行な2条の谷折り溝を一対として、この対の谷折り溝を多数対、所定間隔毎に刻設すると共に隣接する対の谷折り溝間に少なくとも1条の山折り溝を刻設したのち、これらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げることにより、各対の谷折り溝によって形成された凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面とした凹部に形成し、山折り溝からなる凸条折曲部によって凸部を形成することを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項7に係る発明は、隣接する対の谷折り溝間に上記凸部を形成する際に、この凸部を形成するための化粧板主体部分に谷折り溝とこの谷折り溝を挟んだ山折り溝とを刻設しておき、これらの谷折り溝と山折り溝とを折り曲げることによって凸部に浅底の凹部を形成することを特徴とする。なお、上記山折り溝と谷折り溝とは請求項8に記載したようにV字状溝であることが最も好ましいが、凸部を形成する山折り溝として、請求項9に記載したように小間隔毎に平行に刻設された複数状のスリット溝によって形成しておいてもよい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明よれば、化粧板は、一定厚みを有する基板の表裏面に可撓性シート材を貼着してなる化粧板主体に、裏面から表面に向かって刻設された多数条の山折り溝と、表面から裏面に向かって刻設された多数条の谷折り溝とを形成してこれらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げることにより、多数条の凸条折曲部と凹条折曲部とを間隔を存してジグザグ状に形成してなるものであるから、化粧板に形成されているこれらの凸条折曲部の高さを化粧板主体の厚みよりも大なる高さに形成することができて、一定厚みを有する基板からなるにもかかわらず、優れた立体感と音響効果を発揮することができると共に、基板の表面に貼着しているシート材が山折り溝や谷折り溝の折り曲げにより形成された凹凸表面に皺などが生じることなく綺麗に貼着された構造となって、多量生産に適し、且つ、外観的にも優れた商品価値の高い化粧板を提供することができる。
【0013】
さらに、請求項2に係る発明によれば、上記化粧板主体に互いに平行な2本の凹条折曲部を一対としてこの対の凹条折曲部が多数対、所定間隔毎に設けられていて、これらの各対の凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面に形成した凹部に形成していると共に、隣接する対の凹条折曲部間の化粧板主体部分を少なくともに一条の凸条折曲部からなる凸部に形成しているので、壁面等に施工する内装材として使用した場合、各対の凹条折曲部間の化粧板主体部分の裏面によって形成している取付面を下地面等に容易に且つ強固に接着施工することができて施工性に優れていると共に、各対の凹条折曲部間の凹部と、少なくとも一条の凸条折曲部からなる凸部とが交互に明確に顕現して調和の取れた外観を呈することができる。
【0014】
上記請求項1又は請求項2に記載の化粧板において、請求項3に係る発明によれば、上記凸部の一部に凹条折曲部とこの凹条折曲部を挟んで互いに平行な凸条折曲部とを設けてこれらの凹条折曲部と凸条折曲部とにより浅底の凹部を形成しているので、この凸部の一部分に形成された浅底の凹部によって一層優れた立体感を有する外観を呈し、且つ、良好な音の拡散機能を発揮してフラッターエコーなどの音響障害を防止することができる。なお、上記基板の表面に貼着した可撓性シート材として化粧シートを採用しておくことが望ましい。
【0015】
上記化粧板の製造方法としては、請求項5に記載したように、表裏面に可撓性シート材を貼着している化粧板主体に、その裏面シート材から表面シート材に向かって山折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設すると共に表面シート材から裏面シート材に向かって谷折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設したのち、化粧板主体をこれらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げて各溝の対向面を一体に接合接着することにより、山折り溝による凸条折曲部と谷折り溝による凹条折曲部とを形成することを特徴とするものであるから、凸条折曲部の高さを化粧板主体の厚みよりも大なる高さに形成することができて、優れた立体感と音響効果を発揮する化粧板を得ることができると共に、山折り溝と谷折り溝とから化粧板主体を折り曲げる際に、予め、基板の表裏面に貼着している可撓性シート材が、その折り曲げに応じて屈曲して皺などが生じない美麗な外観を呈する化粧板を製造することができる。
【0016】
さらに、予め、基板の表裏面に可撓性シート材を貼着してなる化粧板主体の表面側と裏面側とに、それぞれ所定間隔を存して互いに平行な谷折り溝と山折り溝とを刻設しておき、これらの谷折り溝と山折り溝とから折り曲げることによって化粧板を形成するものであるから、均質な化粧板を簡単且つ精度よく多量生産をすることができ、優れた立体感及び外観を呈し、且つ、良好な音響効果を奏することができる内装材として最適な化粧板を安価に提供することができる。
【0017】
さらに、請求項6に係る発明によれば、上記化粧板主体に互いに平行な2条の谷折り溝を一対として、この対の谷折り溝を多数対、所定間隔毎に刻設すると共に隣接する対の谷折り溝間に少なくとも1条の山折り溝を刻設したのち、これらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げることにより、各対の谷折り溝によって形成された凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面とした凹部に形成し、山折り溝からなる凸条折曲部によって凸部を形成することを特徴とするものであるから、各対の谷折り溝の折り曲げによって化粧板の裏面に所定間隔毎にこれらの谷折り溝間の幅寸法に相当する平坦な取付面を簡単且つ正確に形成することができ、内装材として該壁面に施工する際に、その全ての取付面を施工面に密着させて強固な内壁を容易に且つ正確に形成することができると共に、隣接する凹部間にはこの凹部から室内側に向かって化粧板の厚み以上に突出する少なくとも一条の凸条折曲部からなる凸部を形成することができ、立体感と音響効果に優れた化粧板を得ることができる。
【0018】
また、請求項7に係る発明によれば、隣接する対の谷折り溝間に上記凸部を形成する際に、この凸部を形成するための化粧板主体部分に谷折り溝とこの谷折り溝を挟んだ山折り溝とを刻設しておき、これらの谷折り溝と山折り溝とを折り曲げることによって凸部に浅底の凹部を形成することを特徴とするものであるから、凹部が段状に形成された一層優れた立体感を有する外観を呈し、且つ、良好な音の拡散機能を発揮することができる化粧板を簡単に製造することができる。
【0019】
上記化粧板の製造方法において、請求項8に係る発明によれば、全ての山折り溝と谷折り溝とをV字状の溝に形成しているので、山折り溝を化粧板主体の裏面から表面側の可撓性シート材に達する深さまで刻設しておくと共に、谷折り溝を化粧板主体の表面から裏面側の可撓性シート材に達する深さまで刻設しておくことによって、これらの山折り溝と谷折り溝とから化粧板主体を折り曲げる際に、これらの溝底に対応した表裏シート材部分を屈折させながら円滑且つ確実に折り曲げることができ、凹凸形状を有する化粧板の多量生産に適すると共に、V字状溝の対向面のなす角度と溝間の間隔等を変更することによって凹部の深さや凸部の高さ、さらには凸部から凹部に到る表面の傾斜角度、凹凸部の形状等を種々に変化させた所望形状の化粧板を能率よく製造することができる。
【0020】
また、上記V字状溝からなる山折り溝や谷折り溝から化粧板主体を折り曲げることによって得られる凹条折曲部や凸条折曲部が角張った形状に形成されるが、請求項9に記載したように凸部を形成する山折り溝を、小間隔毎に平行に刻設された複数状のスリット溝から形成しておけば、これらのスリット溝を介してこのスリット溝を設けている化粧板主体の幅部分を凸円弧状に湾曲した凸部に形成することができ、変化に富んだ化粧板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を図面について説明すると、図1は本発明の基本的な外観を有する化粧板A1の一部の側面図、図2はこの化粧板A1を建物の内壁面の内装材として施工した状態の簡略斜視図、図3はその一部の拡大斜視図であって、この化粧板A1は、一定厚みを有する矩形状ないしは長方形状の基板1'の表裏面全面に可撓性を有する可撓性シート材2、3を貼着してなる化粧板主体1を長さ方向に所定の幅間隔毎に折り曲げて化粧板主体1の幅方向に長い凹部4と凸部5とを長さ方向にジグザグ状に連続形成していると共に、全ての凹部4、4・・・4の外底面、即ち、裏面を同一平面上に設けた構造としてその裏面を建物の壁面下地材等の施工面に取付面6に形成している。
【0022】
上記凹部4とこの凹部4に隣接する凸部5とは、凹部4の両端を凸部側に向かって折り曲げた折曲部8、8(以下、凹条折曲部とする)を介して連なってあり、この実施の形態においては、凸部5の両端も該凸部5に隣接する凹部4側に向かって折り曲げられていてこの折曲部9、9(以下、凸条折曲部とする)を介して凹部4に連なっている。さらに、凹条折曲部8と凸条折曲部9とは、凹部4の端部から凸部5に向かって突出する接続板片部7によって連なっている。図においては、凹部4と凸部5とは長さ方向に一定幅を有する幅方向に細長い正面横長長方形状の板部に形成され、この凹部4と凸部5とを直角に屈折した上記折曲部8、9とこれらの折曲部8、9間の上記一定幅を有する横長長方形状の接続板片部7とを介して連続させてあり、凹部4と凸部5とが接続板片部7を介して互いに反対方向に開口した断面コ字状の谷部と山部とに形成されている。
【0023】
このように構成した化粧板A1を製造するには、まず、上述したように、長方形状の基板1'の表裏面全面に可撓性を有する可撓性シート材2、3を貼着してなる化粧板主体1を作製する。なお、基板1'としては、火山性ガラス質複層板(大建工業株式会社製、商品名:ダイライト)や石膏ボード、合板、LVL、木質繊維板等を用いることができ、可撓性シート材2、3としては、オレフィイシートなどの合成樹脂シートや突板単板、強化紙、不織布などを用いることができる。また、上記表面側の可撓性シート材2は、施工した際に室内側に露出するので、この可撓性シート材2の表面に上塗り塗装や透明合成樹脂フィルム貼り等により表面保護層を形成して表面強度及び耐磨耗性等を向上させる処理や印刷等による化粧を施してなる可撓性化粧シートを用いることが望ましい。
【0024】
次いで、この化粧板主体1に、図4に示すように、その表面側の可撓性シート材2から裏面側の可撓性シート材3に向かって先端が裏面側の可撓性シート材3に達するV字状の溝(以下、谷折り溝10とする)と、裏面側の可撓性シート材3から表面側の可撓性シート材2に向かって先端が表面側の可撓性シート材2に達するV字状の溝(以下、山折り溝11とする)とを設ける。
【0025】
具体的には、化粧板主体1の長さ方向に上記凹部4の幅間隔(以下、化粧板主体1の長さ方向を縦幅とし、幅方向を横幅とする)を存して該凹部4を形成するための互いに平行な一対の谷折り溝10、10を化粧板主体1の全幅に貫通するように刻設し、この谷折り溝10から上記接続板片部7の縦幅間隔を存して該谷折り溝10に平行して山折り溝11を化粧板主体1の全幅に貫通するように刻設すると共にこの山折り溝11から上記凹部4の縦幅間隔を存して該山折り溝11に平行な山折り溝11を刻設し、さらに、この山折り溝11から上記接続板片部7の縦幅間隔を存して次の凹部4を形成するための谷折り溝10を刻設する。以下、上記一対の谷折り溝10、10と山折り溝11、11とを化粧板主体1の長さ方向に順次、刻設する。なお、これらの谷折り溝10と山折り溝11との溝を形成している対向面のなす角度は90度に形成されている。
【0026】
こうして、凹部4を形成するための一対の谷折り溝10、10を化粧板主体1の長さ方向に所定間隔毎に設けると共に、隣接する一方の対の谷折り溝10、10と他方の対の谷折り溝10、10における対向する谷折り溝10、10間の化粧板主体部分、即ち、形成すべき互いに隣接する凹部4、4間における化粧板主体部分に上記山折り溝11、11を形成したのち、これらの谷折り溝10と山折り溝11との対向面に接着剤を塗布し、しかるのち、各溝をその対向面が密着するように溝の先端を被覆している表裏の可撓性シート材2、3から折り曲げると、谷折り溝10、10の折り曲げによって凹条折曲部8、8とこの凹条折曲部8、8間の化粧板主体1部分によって凹部4が形成され、山折り溝11、11の折り曲げによって凸条折曲部9、9とこの凸条折曲部9、9間の化粧板主体1部分によって凸部5が形成されると共に凹条折曲部8と凸条折曲部9間の化粧板主体1部分によって上記接続板片部7が形成される。
【0027】
このように、化粧板主体1を谷折り溝10と山折り溝11とから屈折させることによって凹凸部4、5が長さ方向に順次ジグザグ状に連続形成している化粧板A1を作製する。この化粧板A1を壁面等の内装材として施工するには、全ての凹部4の平坦な裏面によって形成している取付面6に接着剤を塗布したのち、壁面の下地材Bに全ての凹部4の取付面6を当てがって、接着剤又は両面粘着テープを介して一体に固着し、図2に示すように、これらの各凹部4から接続板片部7、7を介して上下方向に一定間隔毎に多数条の凸部5が室内側に向かって突設してなる外観を呈した内装材を施工することができる。
【0028】
なお、この化粧板A1においては、凹条折曲部8と凸条折曲部9とを直角に屈折しているが、例えば、凸部5が断面台形状となる凹部4と接続板片部7とのなす角度と、凸部5と接続板片部7とのなす角度とを鈍角、即ち、谷折り溝10の対向面のなす角度と山折り溝11の対向面のなす角度を鋭角に形成しておいてもよく、或いは、鈍角と鋭角の組み合わせによって断面逆台形状等に形成しておいてもよい、さらには、山部4の両端に連なる両側の接続板片部7、7の裏面から表面側に向かう突出幅が異なる化粧板の構造に形成しておいてもよい。また、凹部4と凸部5の長さ方向(横幅方向)を化粧板A1の幅方向(水平方向)に向けているが、図2の右部分に示したように、化粧板A1の長さ方向(垂直方向)に向けるように形成しておいてもよい。
【0029】
図5は本発明化粧板の別な実施の形態を示す化粧板A2の一部の側面図、図6はこの化粧板A2を建物の内壁面の内装材として施工した状態の簡略斜視図、図7はその一部の拡大斜視図であって、この化粧板A2は、上記化粧板A1と同じ材料からなる一定厚みを有する矩形状ないしは長方形状の基板1'の表裏面全面に上記可撓性シート材と同一材料よりなる可撓性シート材2、3を貼着してなる化粧板主体1を長さ方向に所定の幅間隔毎に折り曲げて化粧板主体1の幅方向に長い細幅長方形状の凹部4aと山形状の凸部5aとを長さ方向にジグザグ状に連続形成していると共に、全ての凹部4a、4a・・・4aの外底面、即ち、裏面を同一平面上に設けた構造としてその裏面を建物の壁面下地材等の施工面に取付面6aに形成しているものである。
【0030】
具体的には、一定の縦幅を有する横幅方向に長い凹部4aとこの凹部4aに隣接する山形状の凸部5aとは、凹部4aの両端を該凸部5a側に向かって折り曲げた凹条折曲部8aを介して連なってあり、山形状の凸部5aは一条の凸条折曲部9aによって形成されていると共にこの凸部5aから凹条折曲部8aに至る両傾斜面は、化粧板主体1の一部からなる一定の縦幅を有する横幅方向に長い接続板片部7a、7aによって形成されている。即ち、この化粧板A2は、一定の縦幅を有する正面横長長方形状の凸部5a、5a・・・を該化粧板A2の長さ方向に一定間隔を存して順次、設けられていると共に、各隣接する凸部5a、5a間に、一条の凸条折曲部9aからなる凸部5aが傾斜した接続板片部7a、7aを介して形成された構造となっている。
【0031】
このように構成した化粧板A2を製造するには、まず、基板1'の表裏全面に可撓性シート材2、3を貼着してなる一定厚みを有する矩形状ないしは長方形状の化粧板主体1に、図8に示すように、その表面側の可撓性シート材3から裏面側の可撓性シート材3に向かって先端が裏面側の可撓性シート材3に達する対向面のなす角度が鋭角なV字状の谷折り溝10、10を凹部4aの縦幅間隔を存して互いに平行に化粧板主体1の全幅に亘って貫通するように刻設し、これらの一対の谷折り溝10、10を多数対、化粧板主体1の長さ方向に一定の縦幅間隔を存して順次設けると共に、この一定の縦幅間隔部分の縦幅方向の中間部、即ち、隣接する一方の対の谷折り溝10、10と他方の対の谷折り溝10、10における対向する谷折り溝10、10間の化粧板主体部分の中間部に、裏面側の可撓性シート材3から表面側の可撓性シート材2に向かって先端が表面側の可撓性シート材2に達するV字状の山折り溝11を上記谷折り溝10と平行して化粧板主体1の全幅に亘って刻設する。
【0032】
こうして、凹部4aを形成するための一対のV字状谷折り溝10、10を化粧板主体1の長さ方向に所定間隔毎に設けると共に、形成すべき互いに隣接する凹部4a、4a間における化粧板主体部分の中間部に上記一条のV字状山折り溝11、11を形成したのち、これらの谷折り溝10と山折り溝11との対向面に接着剤を塗布し、しかるのち、各溝をその対向面が密着するように溝の先端を被覆している表裏の可撓性シート材2、3から折り曲げると、谷折り溝10、10の折り曲げによって凹条折曲部8a、8aとこの凹条折曲部8a、8a間の化粧板主体1部分によって凹部4が形成され、一条の山折り溝11の折り曲げによって山形状の凸部5aが形成されると共に、V字状谷折り溝10、10の対向面のなす角度が鋭角に形成されているので、この谷折り溝10の折り曲げによって形成された凹条折曲部8aから凸部5aに至る部分が凸部5aの頂部から両側の凹条折曲部8aに向かって傾斜した傾斜接続板片部7a、7aに形成されてなる化粧板A2を作製することができる。
【0033】
このように、一定の縦幅を有する横長長方形状の凹部4aと山形状の凸部5aとを傾斜接続板片部7a、7aを介して順次、連続形成してなる化粧板A2を壁面等の内装材として施工するには、上記同様に全ての凹部4aの裏面に接着剤を塗布したのち、壁面の下地材Bに同一平面上に設けられている全ての凹部4aの裏面(取付面6)を当てがって、接着剤を介して一体に固着し、図6に示すように、これらの各凹部4aから接続板片部7a、7aを介して上下方向に一定間隔毎に多数条の凸部5aが室内側に向かって突設してなる外観を呈した内装材を施工することができる。
【0034】
なお、この化粧板A2においては、凸部5aを形成するV字状谷折り溝10の対向面間のなす角度を大きくすれば凹部4aから室内側に突出する該凸部5aの突出高さが高くなると共に、この凸部5aに隣接する凹部4a、4a間の間隔が狭まり、V字状谷折り溝10の対向面間のなす角度を小さくすれば凹部4aから室内側に突出する該凸部5aの突出高さが低くなると共に、この凸部5aに隣接する凹部4a、4a間の間隔が広くなる。なお、この化粧板A2においても、凹部4aと凸部5aの長さ方向(横幅方向)を化粧板A2の幅方向(水平方向)に向けているが、化粧板A2の長さ方向(垂直方向)に向けるように形成しておいてもよい。
【0035】
図9は上記化粧板A2の変形例を示すもので、この化粧板A3は、上記化粧板A2において、凸部5aの頂面から凹部4aに向かって傾斜している接続板片部7a、7aにおける一方の傾斜接続板片部7aの一部に、縦幅方向に小間隔を存して互いに平行な二条の凸条折曲部9a' 、9a' とこれらの凸条折曲部9a' 、9a' の中間部に設けている凹条折曲部8a’とによって浅底の凹部4bを形成してなるものである。その他の構成については上記化粧板A2と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0036】
この化粧板A3を製造するには、上記化粧板A2を形成する化粧板主体1に設けている上記多数条の谷折り溝10や山折り溝11以外に、形成すべき上記凹部4aの一方の凹条折曲部8aと凸部5a間との傾斜接続板片部7aの一部に、該傾斜接続板片部7aの縦幅方向に小間隔を存して互いに平行な山折り溝11a 、11a を化粧板主体1の全幅に貫通するように刻設すると共に、これらの山折り溝11a 、11a 間の中央部に一条の谷折り溝10a'を該山折り溝11a に平行に化粧板主体1の全幅に貫通するように刻設しておく。
【0037】
次いで、このように形成した化粧板主体1における全ての谷折り溝10、10a と山折り溝11、11a との対向面に接着剤を塗布したのち、各溝をその対向面が密着するように溝の先端を被覆している表裏の可撓性シート材2、3から折り曲げると、上記同様に谷折り溝10、10の折り曲げによって凹条折曲部8a、8aとこの凹条折曲部8a、8a間の化粧板主体1部分によって凹部4が形成され、一条の山折り溝11の折り曲げによって山形状の凸部5aが形成されると共に、V字状谷折り溝10、10の対向面のなす角度が鋭角に形成されているので、この谷折り溝10の折り曲げによって形成された凹条折曲部8aから凸部5aに至る部分が凸部5aの頂部から両側の凹条折曲部8aに向かって傾斜した傾斜接続板片部7a、7aに形成され、さらに、この一方の傾斜接続板片部7aに山折り溝11a 、11a と谷折り溝10a の折り曲げによって形成された凸条折曲部9a' 、9a' と凹条折曲部8a' とによって、浅底の凹部4bを形成してなる化粧板A2を作製することができる。
【0038】
なお、以上のいずれの化粧板A1、A2、A3においては、凸部5、5aをV字状の山折り溝11によって形成しているが、図10に示す化粧板主体1のように、凸部を形成する山折り溝として、形成すべき凸部5bの縦幅方向に小間隔毎に互いに平行に、裏面側の可撓性シート材から表面側の可撓性シート材の近傍部に達する深さまで刻設された複数条のスリット溝11b を採用し、これらのスリット溝11b を介して該スリット溝11b を設けている化粧板主体部分を裏面側から表面側に向かって屈曲させて図11に示す化粧板A4のように凸円弧状に湾曲した凸部5bを形成してもよい。なお、この凸部5bの両端には谷折り溝10、10が設けられていてスリット溝11b が設けられていない谷折り溝10、10間の化粧板主体部分で上記実施例と同様に凹部4bを形成している。化粧板主体1の構成等については上記実施の形態と同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】化粧板の一部の側面図。
【図2】施工状態を示す簡略斜視図。
【図3】その一部の拡大斜視図。
【図4】折り曲げ前の化粧板主体の一部斜視図。
【図5】別な形状を有する化粧板の一部の側面図。
【図6】施工状態を示す簡略斜視図。
【図7】その一部の拡大斜視図。
【図8】折り曲げ前の化粧板主体の一部斜視図。
【図9】さらに別な形状を有する化粧板の施工状態の一部斜視図。
【図10】湾曲した凸部を有する化粧板を形成するための化粧板主体の一部斜視図。
【図11】その化粧板の状態を示す一部斜視図。
【符号の説明】
【0040】
1 化粧板主体
1' 基板
2、3 表裏可撓性シート材
4 凹部
5 凸部
6 取付面
8 凹条折曲部
9 凸条折曲部
10 谷折り溝
11 山折り溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定厚みを有する基板の表裏面に可撓性シート材を貼着してなる化粧板主体に、その裏面シート材から表面シート材に向かって刻設された山折り溝から折り曲げられて該溝の対向面を接着することにより形成された凸条折曲部と、上記山折り溝と平行に表面シート材から裏面シート材に向かって刻設された谷折り溝から折り曲げられて該溝の対向面を接着することにより形成された凹条折曲部とを間隔を存して多数条、設けられてあり、これらの凸条折曲部と凹条折曲部とによって凹凸部を形成していることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
化粧板主体に互いに平行な2つの凹条折曲部を一対としてこの対の凹条折曲部が多数対、所定間隔毎に設けられていて、これらの各対の凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面に形成した凹部に形成していると共に、隣接する対の凹条折曲部間の化粧板主体部分を少なくとも一条の凸条折曲部からなる凸部に形成していることを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項3】
凸部の一部に凹条折曲部とこの凹条折曲部を挟んで互いに平行な凸条折曲部とを設けてこれらの凹条折曲部と凸条折曲部とにより浅底の凹部を形成していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧板。
【請求項4】
基板の表面に貼着した可撓性シート材は化粧シートであることを特徴とする請求項1に記載の化粧板。
【請求項5】
表裏面に可撓性シート材を貼着している化粧板主体に、その裏面シート材から表面シート材に向かって山折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設すると共に表面シート材から裏面シート材に向かって谷折り溝を複数条、互いに間隔を存して平行に刻設したのち、化粧板主体をこれらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げて各溝の対向面を一体に接合接着することにより、山折り溝による凸条折曲部と谷折り溝による凹条折曲部とを形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項6】
化粧板主体に互いに平行な2条の谷折り溝を一対として、この対の谷折り溝を多数対、所定間隔毎に刻設すると共に隣接する対の谷折り溝間に少なくとも1条の山折り溝を刻設したのち、これらの山折り溝と谷折り溝とから折り曲げることにより、各対の谷折り溝によって形成された凹条折曲部間の化粧板主体部分をその裏面が施工面に対する取付面とした凹部に形成し、山折り溝からなる凸条折曲部によって凸部を形成することを特徴とする請求項5に記載の化粧板の製造方法。
【請求項7】
隣接する対の谷折り溝間の化粧板主体部分に谷折り溝とこの谷折り溝を挟んだ山折り溝とを刻設し、これらの谷折り溝と山折り溝とを折り曲げることによって凸部に浅底の凹部を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧板の製造方法。
【請求項8】
山折り溝と谷折り溝とはV字状溝であることを特徴とする請求項5、請求項6又は請求項7に記載の化粧板の製造方法。
【請求項9】
凸部を形成する山折り溝は、形成すべき凸部の幅方向に小間隔毎に互いに平行に裏面側の可撓性シート材から表面側の可撓性シート材の近傍部に達する深さまで刻設された複数条のスリット溝であることを特徴とする請求項5、請求項6又は請求項7に記載の化粧板の製造方法。
【請求項10】
基板の表面に貼着した可撓性シート材は化粧シートであることを特徴とする請求項5に記載の化粧板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−321472(P2007−321472A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153953(P2006−153953)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】