説明

化粧目地一体型乾式目地構造

【課題】 目地幅の誤差に左右されることなく目地の止水処理を行うことができ、コストの削減や工期の短縮も可能な化粧目地一体型乾式目地構造を提供する。
【解決手段】 隣合う外壁面材1の裏面の目地2に沿う面材裏面側縁部1aと、これに対向する躯体目地奥表面部3aとの間に、弾性体のガスケット4を介在させる。ガスケット4は、チューブ状のガスケット本体5と、これと一体に長手方向に沿って突出した化粧目地片6とでなる。ガスケット本体5は、平板状の底壁部5aと、これに対向し幅方向中央から化粧目地片6が突出する平板状の前壁部5bと、底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる側壁部5cとを有する。ガスケット4は、底壁部5aが躯体目地奥表面部3aに接して設置されて、前壁部5bが両外壁面材1の面材裏面側縁部1aで押し付けられ、化粧目地片6が目地2内で両外壁面材1の目地内面で挟まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、戸建住宅や集合住宅、その他の各種の建物における外壁に適用され、隣合う外壁面材間の目地を止水する化粧目地一体型乾式目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、隣合う外壁面材間の目地を止水する乾式目地構造として、例えば図4に示すように、施工後の隣合う外壁面材51,51間の目地52内に弾性体からなるガスケット53を押し込み、止水する構造のものがある。ガスケット53は、芯部53aの両側に、複数枚のシールリップ53bを設けたものである。ガスケット53の固定にはクリップ(図示せず)を用い、外壁面材51の裏面側に位置する躯体に設けられた受け金具(図示せず)に固定する。ガスケット53の施工の際には、足場や高所作業車を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−108610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の乾式目地構造は、目地52にガスケット53を押し込む形状であるため、ガスケット53の寸法から、対応できる目地幅が限られる。例えば、図4の例では、ガスケット53の幅寸法に対して標準で±2mmの範囲が管理値とされる。
しかし、外壁がパネル工法の場合は、パネルフレームと面材が一体化された外壁パネルを建て込む工法であるため、隣合う外壁パネル間に生じる外壁面材の目地幅を精度良く納めることが難しく、上記±2mmの管理値を大きく超えることがある。
【0005】
管理値を超えた目地にガスケットを押し込もうとすると、ガスケットが無理な形に変形して見栄えが悪く、止水効果も低下する。管理値を大きく超える目地では、その目地幅に適した別のガスケットを用意するか、湿式シーリングで対応せざるを得ない。
また、外壁面材施工後にガスケットを施工する場合、足場や高所作業車を用いるため、これらの施工補助資材の準備にコストがかかり、外構工事などの後工程にも影響を及ぼすという問題がある。
さらに、上記ガスケット53は、目地に押し込むように施工するため、押し込み過ぎると目地に凹凸ができて見栄えが悪くなる。この凹凸の発生防止のために、ガスケット53を受ける受け金具やクリップなどの副資材が必要になり、部品点数が増大する。
【0006】
ガスケット53が図4のようにシールリップ53bを有する形状では、施工状況によってはシールリップ53bの反転が懸念される。施工誤差により、外壁面材留付け金具等の周辺部材(図示せず)に干渉し、止水ラインが確保できない。
【0007】
本発明者等は、図4のシールリップ53bを有するガスケット53の課題を解決するものとして、図5に示すようにガスケット53Aの断面形状をチューブ状としたものを考えた。これにより、シールリップ53bの反転については解消される。しかし、上述した他の各課題は、単にガスケットの形状の工夫だけでは解消できない。
【0008】
そこで、本発明者等は、さらにガスケットの配置を工夫し、図6のように目地52の奥で、外壁面材51の裏面と躯体54との間にガスケット53Bを挟み込むものを考えた。ガスケット53Bの形状は、中空とするが、挟み込みに適した形状、つまり前後面を平面状とし、かつ両側面を蛇腹状とする。
このようにガスケット53Bを外壁面材51の裏側で圧縮する形状,配置とすると、目地奥で圧縮される限りは止水性が期待できるため、目地幅の許容範囲が広がる。また、目地幅の大小で見栄えが異ならない。さらに、施工に際して、ガスケット53Bを躯体54に貼り付けておき、その後に外壁面材51を建込むことができ、現場でガスケット53Bを目地52内に押し込む作業が不要となる。
【0009】
しかし、目地52が隠蔽されずに露出するため、見栄えの観点から別途に目地52の隠蔽処理が必要になり、コストの削減や工期の短縮は期待できない。
【0010】
この発明の目的は、目地幅の誤差に左右されることなく目地の優れた止水機能を得ることができ、かつ施工性に優れ、また目地の隠蔽処理を別途に行うことが不要で、工期の短縮やコストの削減も可能な化粧目地一体型乾式目地構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の化粧目地一体型乾式目地構造は、隣合う外壁面材間の目地を止水する目地構造であって、両側の外壁面材の裏面における前記目地に沿う部分である面材裏面側縁部と、この面材裏面側縁部に対向する躯体の表面部である躯体目地奥表面部との間に、弾性体からなるガスケットを介在させる。このガスケットは、チューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなる。前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有する。前記ガスケットは、前記底壁部が前記躯体の躯体目地奥表面部に接して設置されて、前記前壁部が前記両外壁面材の面材裏面側縁部で押し付けられ、前記化粧目地片が前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれる。なお、ガスケット本体は、内部空間が両端等で外部に開放された非密閉型のものであっても、また内部に空気が封入された密閉型のものであっても良い。また、ガスケットは、前記底壁部が前記躯体の躯体目地奥表面部に接して設置されるが、躯体目地奥表面部に直接に接する場合に限らず、躯体目地奥表面部に断熱材や2次止水材等の表層を覆う部材がある場合は、その表層を覆う部材の表面に接して設置されても良い。
【0012】
この構成によると、ガスケット本体をチューブ状とし、外壁面材の裏面と躯体との間で圧縮して止水する構成としたため、ガスケット本体が目地奥で圧縮されている限り止水性が確保される。このため、外壁面材間の目地幅の大小が止水性に大きく影響せず、対応できる目地幅が大幅に広がる。ガスケット本体がチューブ状であるため、変形能力が高く、ガスケット本体を挟み込む外壁面材と躯体との間の間隔に多少の誤差があっても、ガスケット本体の変形により寸法差を柔軟に吸収してガスケット本体と外壁面材との密接性が保持でき、優れた止水性が得られる。また、ガスケット本体と一体に化粧目地片を設けたため、別体の化粧目地材を施工することなく、外壁面材の小口を隠蔽する化粧が行え、施工工数が削減される。化粧目地片は外壁面材の目地内に設けるが、止水性はガスケット本体で確保されるため、目地幅に誤差があっても止水性の不足の問題が生じない。目地幅によっては、化粧目地片の出入りに多少の誤差が出ることがあるが、従来の目地内に押し込むものと異なり、変形して凹凸ができることはなく、一様な仕上がりとなり、優れた見栄えが得られる。
また、ガスケット本体を外壁面材と躯体の間で圧縮して止水性を得る構成であるため、目地にガスケットを押し込むものと異なり、ガスケットを躯体に設置しておいて、外壁面材を施工することで、ガスケットの外壁面材に対する施工が行える。そのため、外壁面材の施工と同時に目地の止水、および目地の化粧が完了し、工期の短縮が可能になる。また、目地を高所で作業する作業がなくなるため、安全性が向上し、目地を施工するための足場や高所作業車なども不要となって、施工コストが削減される。対応可能な目地幅の範囲が広いため、パネル工法を採用する場合であっても、外壁パネルの施工誤差による目地幅の変化に対応でき、外壁パネルの建込みと同時に目地の止水、および目地の化粧が完了する。このように現場での目地の施工を要しないので、前後作業が発生せず、施工手順間違いを防止できる。
【0013】
上記化粧目地片は、必ずしもチューブ状としなくても良いが、チューブ状とした場合は変形能力に優れ、目地幅に多少の誤差があっても化粧目地片が外壁面材の目地内面に対する押し付け状態が得られる。そのため、化粧目地片による止水効果が得られる目地幅の範囲も広がる。止水効果は、ガスケット本体だけで得られるが、化粧目地片で止水作用を奏することで、止水効果がより一層優れた目地構造となる。
【0014】
ガスケット本体の一対の側壁部は、蛇腹状であることが好ましい。蛇腹状であると、肉厚をある程度厚くして中空断面形状を小さくしても、容易に成形することができ、かつ大きな変形が可能となる。そのため外壁面材の施工誤差に対し、より一層柔軟に対応でき、外壁面材の施工性が向上する。また、両側の側壁部が蛇腹状であって変形性に優れるため、目地の両側における外壁面材と躯体との間の間隔が、施工誤差等により互いに異なっていても、ガスケットの捩じれが生じ難い。
【0015】
なお、前記ガスケットの前記底壁部の幅方向中央に中空部側へ突出する突条を設け、この突条内に芯線を埋め込んでも良い。このように芯線を埋め込むことで、ガスケット本体の剛性が増し、ガスケット本体を外壁面材の面材裏面側縁部に対向する躯体の躯体目地奥表面部に接して設置する場合の作業性向上が期待できる。また、突条に芯線を埋め込むことで、ガスケットを長時間梱包した後での残留変形を軽減することもできる。
【0016】
この発明の化粧目地一体型ガスケットは、隣合う外壁面材間の目地を止水する弾性体からなるガスケットであって、チューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなり、前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有する。前記ガスケット本体は、前記外壁面材と前記目地の奥側に位置する躯体との間に挟まれ、前記化粧目地片は、前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれる。ガスケット本体は、内部空間が両端等で外部に開放された非密閉型のものであっても、また内部に空気が封入された密閉型のものであっても良い。
この構成の化粧目地一体型ガスケットを用いると、目地幅の誤差に左右されることなく目地の止水処理を行うことができ、かつ目地の化粧も行えて、施工性の向上、工期の短縮、コストの削減が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の化粧目地一体型乾式目地構造は、隣合う外壁面材間の目地を止水する目地構造であって、両側の外壁面材の裏面における前記目地に沿う部分である面材裏面側縁部と、この面材裏面側縁部に対向する躯体の表面部である躯体目地奥表面部との間に、弾性体からなるガスケットを介在させ、このガスケットは、内部に空気が封入されたチューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなり、前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有し、前記ガスケットは、前記底壁部が前記躯体の躯体目地奥表面部に接して設置されて、前記前壁部が前記両外壁面材の面材裏面側縁部で押し付けられ、前記化粧目地片が前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれたものとしたため、目地幅の誤差に左右されることなく目地の優れた止水機能を得ることができ、かつ施工性に優れ、また目地の隠蔽処理を別途に行うことが不要で、工期の短縮やコストの削減も可能となる。
【0018】
この発明の化粧目地一体型ガスケットは、隣合う外壁面材間の目地を止水する弾性体からなるガスケットであって、内部に空気が封入されたチューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなり、前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有し、前記ガスケット本体が、前記外壁面材と前記目地の奥側に位置する躯体との間に挟まれ、前記化粧目地片が前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれたものとしたため、目地幅の誤差に左右されることなく目地の優れた止水機能を得ることができ、かつ施工性に優れ、また目地の隠蔽処理を別途に行うことが不要で、工期の短縮やコストの削減も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態にかかる化粧目地一体型乾式目地構造の水平断面図である。
【図2】同乾式目地構造に用いられるガスケットの水平断面図である。
【図3】同乾式目地構造における一次止水ラインおよび二次止水ラインの説明図である。
【図4】従来例の説明図である。
【図5】提案例の説明図である。
【図6】他の提案例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。この化粧目地一体型乾式目地構造は、隣合う外壁面材1,1間の目地2を止水する目地構造であって、両側の外壁面材1の裏面における面材裏面側縁部1aと、この面材裏面側縁部1aに対向する躯体である柱3の躯体目地奥表面部3aとの間に、弾性体のガスケット4を介在させたものである。柱3は例えば角形鋼管柱からなる。外壁面材1の面材裏面側縁部1aとは、外壁面材1の裏面における目地2に沿う部分である。躯体である柱3の躯体目地奥表面部3aとは、外壁面材1の裏面における前記面材裏面側縁部1aに対向する柱3の表面部である。外壁面材1は、窯業系の材質の面材である。ガスケット4は、ゴムまたは軟質樹脂等の弾性体からなる。
【0021】
ガスケット4は、図2に水平断面図で示すように、チューブ状のガスケット本体5と、このガスケット本体5から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片6からなる。ガスケット本体5は、チューブ状であって中空の断面形状となっているが、内部空間が両端等で開放された非密閉型のものであっても、また空気が封入された密閉型のものであっても良い。ガスケット本体5は、平板状の底壁部5aと、この底壁部5aに対向し幅方向中央から前記化粧目地片6が突出する平板状の前壁部5bと、これら底壁部5aと前壁部5bの両側縁間に繋がる一対の側壁部5c,5cとを有し、左右対称形状とされている。一対の側壁部5cは、中央部分が内側へ湾曲して凹む蛇腹状とされている。底壁部5aの幅方向中央には中空部側へ突出する突条5dが設けられ、この突条5d内に芯線7が埋め込まれている。芯線7は、ピアノ線等の弾性を有する鋼線やその他の金属線である。前壁部5bは、その両側縁から前記化粧目地片6と同じ前方に突出する肩部5baを有し、この肩部5baが両外壁面材1,1の裏面における面材裏面側縁部1aに押し当てられる。肩部5baは、厚肉部分または突条からなる。化粧目地片6はチューブ状とされ、両側部が平坦部分で前端および基端が円弧状の楕円状断面形状とされている。化粧目地片6の基端は中実であり、この基端には両側面が凹む括れ部6aが設けられている。
【0022】
このガスケット4は、図1のように、ガスケット本体5の底壁部5aが躯体である前記柱3の躯体目地奥表面部3aに接して設置されて、ガスケット本体5の前壁部5bが前記両外壁面材1,1の面材裏面側縁部1a,1aで押し付けられる。ガスケット本体5の躯体目地奥表面部3aへの設置は、例えば、接着剤や両面粘着テープ等で貼り付けることで行われる。化粧目地片6は、前記両外壁面材1,1間の目地2内で両側の外壁面材1の小口となる目地内面1bで挟み込まれる。これにより、ガスケット本体4は外壁面材1と目地2の奥側に位置する前記柱3との間に挟まれ、化粧目地片6は目地2内で両側の外壁面材1の目地内面1bで挟み込まれる。
なお、ガスケット4は、ガスケット本体5の底壁部5aが躯体である柱3の躯体目地奥表面部3aに接して設置されるが、必ずしも躯体目地奥表面部3aに直接に接して設置しなくても良く、躯体目地奥表面部3aに断熱材や2次止水材(いずれも図示せず)等の表層を覆う部材がある場合は、その表層を覆う部材の表面に接して設置しても良い。
【0023】
外壁面材1は、枠組みされたパネルフレーム9に面材取付下地(図示せず)を介して張られ、外壁パネル10を構成する。パネルフレーム9の外周部における一方の縦フレーム材が上記柱3で構成され、他方の縦フレーム9aはリップ溝形鋼等の軽量形鋼とされる。柱3は、角パイプ等の軽量形鋼からなる。パネルフレーム9と外壁面材1との間には、上記面材取付下地の厚み分の空間となる、通気用の空間が設けられている。上記目地2は、隣合う外壁パネル10,10の外壁面材1,1の間に生じた目地である。両外壁パネル10,10のパネルフレーム9は、土台や梁(図示せず)に上下端が結合される。
【0024】
外壁面材1と、目地2の奥側に位置する躯体である柱3との間の空間には、前記ガスケット本体5とは別に止水材8が挟み込まれる。止水材8は、ゴムまたは樹脂性の発泡体等からなる。また、上記パネルフレーム9の外壁面材1と対向する表面は、外周のフレーム材で囲まれる範囲の全体に渡って、二次止水材となる防水シート(図示せず)で被覆される。この防水シートは、柱3の躯体目地奥表面部3aおよび止水材8の表面を覆って設けられる。
【0025】
この化粧目地一体型乾式目地構造では、図3に示すように、両側の外壁面材1,1の目地内面1bで挟み込まれたガスケット4の化粧目地片6から外壁面材1の表面部にわたる部分が一次止水ラインL1となる。また、柱3の外壁面材1に対向する表面部、パネルフレーム9の表面部、止水材8の側面部、および外壁面材1の面材裏面における止水材8が押し付けられる部分が二次止水ラインL2となる。
【0026】
施工については、外壁面材1の施工に先立ち、目地部となる位置の躯体である柱3の躯体目地奥表面部3aに接して、ガスケット4を貼り付けなどにより設置する。このガスケット4の柱3への設置は、柱3の建込み前に行っても、建込み後に行っても良い。この状態で、外壁パネル10の建込み等により外壁面材1を躯体3に対して設置する。これにより、隣合う外壁面材1の裏面における目地2に沿う面材裏面側縁部1aと柱3の躯体目地奥表面部3aとでガスケット4のガスケット本体5が圧縮状態に挟まれる。これと同時に、ガスケット4の化粧目地片6が両側の外壁面材1の目地内面1bで圧縮状態に挟み込まれる。
【0027】
この構成の化粧目地一体型乾式目地構造によると、上記のようにガスケット本体5が、目地2の奥側で外壁面材1の裏面と柱3との間で圧縮状態に挟み込まれ、ガスケット本体5の肩部5baが外壁面材1の裏面に押し付け状態に密接することにより、目地2に対する止水効果が得られる。ガスケット本体5が圧縮されている限り止水性が確保されるため、外壁面材1,1間の目地幅の大小が止水性に大きく影響せず、対応できる目地幅が大幅に広がる。パネル工法では、目地幅の精度を出すことが困難であるが、この構成であるとパネル工法の外壁パネル10を採用する場合も、支障なく対応できる。ガスケット本体5はチューブ状であるため、柔軟な変形が行え、外壁面材1と躯体目地奥表面部3aとの間の寸法違いに対する対応性に優れる。
外壁面材1の裏側でガスケット本体5を圧縮する構造であるため、目地内に圧入するものと異なり、従来の図4の例のようなリップの反転の問題もなく、施工誤差により周辺部材に干渉して二次止水ラインの確保が困難になるという問題もない。
【0028】
また、ガスケット4の化粧目地片6が両側の外壁面材1の目地内面1bに介在して目地2を埋めるため、外壁面材1の小口を隠蔽する目地2の化粧が行えると共に、目地2の止水性をより高めることができる。外壁面材1の小口は、変形やクラック、吸水等の影響を受け易いため、隠蔽のための化粧を行うことが必要であるが、上記のようにガスケット本体5と一体の化粧目地片6により、外壁面材1の目地2の小口隠蔽と止水とが、作業工程の増加なく、同時に行える。目地幅によっては、化粧目地片6の出入りに多少の誤差ができることも考えられるが、化粧目地片6は従来のような押し込み型ではないので、変形して凹凸を生じることがなく、一様の仕上がりとなり、見栄えが綺麗になる。
【0029】
施工に際しては、上記のように、ガスケット4を躯体となる柱3に設置しておいて、外壁パネル10の建込み等により外壁面材1を施工することで、ガスケット4の外壁面材1に対する施工が行える。そのため、外壁パネル10の施工と同時に目地2の止水が完了し、工期の短縮が可能になる。また、柱3などの躯体目地奥表面部3aにガスケット4を貼り付けなどにより設置するので、ガスケット4の脱落を防止する金物などの補助部材が不要であり、コストの削減も可能となる。目地2を現場施工する作業がなくなるため、目地2を施工するための足場や高所作業車などが不要となり、この点でもコストの削減が可能である。目地2を施工するための高所作業もなくなるので、安全性も向上する。現場で目地2を施工しないので、前後作業が発生せず、施工手順間違いを防止できる。
【0030】
ガスケット本体5は、上記のように中空状であれば変形性能が良いものとなるが、側壁部5cを蛇腹状とした場合は、変形性能がより優れたものとなる。すなわち、ガスケット4の加硫成形時に中空形状を保持するために、ある程度の肉厚が必要になる。肉厚を厚くすると反力が高くなるため、外壁パネル10の施工性が悪くなる。例えば、ガスケット4を、目地幅(設計寸法±4mm)、外壁面材1の面と垂直方向へのずれ(設計寸法±2mm)に対応できる形状とするためには、大きな中空断面形状および大きな変形対応が要求される。つまり、外壁面材1の+側最大施工誤差時に対応するためには、ガスケット4の中空断面形状としてかなり大きな寸法が要求される。また、外壁面材1の−側最大施工誤差時に対応するためには、ガスケット4に大きな変形が要求される。ガスケットが単なるチューブ状、例えば図5の提案例のような形状であれば、反力が大きくなり、外壁パネル10の施工性が悪くなる。
このような課題に対して、この実施形態では、ガスケット本体5の一対の側壁部5cを蛇腹状としているので、肉厚をある程度厚くし中空断面形状を小さくしても、外壁面材1の施工誤差に十分に対応でき、ガスケット本体5の反力も大きくなり過ぎず、外壁面材1の施工性が向上する。
また、ガスケット本体5の両側の側壁部5cが蛇腹状であって変形性に優れるため、目地2の両側おける外壁面材1と躯体目地奥表面部3aとの間の間隔が、施工誤差等により互いに異なっていても、ガスケット4の捩じれが生じ難い。
【0031】
ガスケット4は左右対称形状としているので、ガスケット4の取付施工時に取付間違いを起こすことを防止できる。
また、この実施形態では、ガスケット本体5の底壁部5aの幅方向中央に中空部側へ突出する突条5dを設け、この突条5d内に芯線7を埋め込んでいるため、ガスケット本体5での剛性が増す。そのため、ガスケット本体5を柱3等の躯体に設置するときの作業性向上が期待できる。また、前記突条5dに芯線7を埋め込むことで、ガスケット4を長時間梱包した後での残留変形を軽減することもできる。
【0032】
上記実施形態の効果を纏め直して列挙する。
・建方完了と同時に目地2の止水が完了するため、工期の短縮が可能である。
・目地2を施工するための足場、高所作業車などが不要となり、コストの削減が可能である。
・目地2を施工するための高所作業がなくなるため、安全性が向上する。
・現場で目地2を施工することがないため、前後作業が発生せず、施工手順間違いを防ぐことができる。
・柱3にガスケット4を直接に貼り付ける形状であるため、脱落防止用の副資材が不要となり、コストを削減できる。
・化粧目地片6を一体に有するため、外壁面材1の小口の止水と隠蔽についても現場施工を行う必要がない。
・目地奥でガスケット4が圧縮されている限り、止水性が確保される。
・ガスケット本体5の側壁部5cを蛇腹状としたため、圧縮変形させた場合の反力を小さくでき、施工性が向上する。
・ガスケット本体5の両側の側壁部5cが蛇腹状であって変形性に優れるため、目地2の両側における外壁面材1と躯体目地奥表面部3aとの間の間隔が、施工誤差等により互いに異なっていても、ガスケット4の捩じれが生じ難い。
・ガスケット本体5の外壁面材1との接触部となる突出した肩部5baを設けたため、止水ラインが確保できる。
・ガスケット4を左右対称形状としているため、外壁パネル10の製作時に取付方向を間違えることがない。
・ガスケット本体5の底壁部5aの剛性を、突条5dを設けて高めているため、施工性が向上する。
・芯線7を入れているため、さらに施工性が向上する。
・芯線7を入れているため、長期梱包後の残留変形を軽減できる。
・目地幅によっては、化粧目地片6の出入りに多少の誤差が出ることが考えられるが、従来のような凹凸ができることはなくなり、一様な仕上がりとなるので、見栄えの問題も解消できる。
【0033】
なお、上記実施形態では、縦方向の目地2に適用する場合つき説明したが、この発明は外壁面材間に横方向に沿って生じる横目地に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1…外壁面材
1a…面材裏面側縁部
1b…目地内面
2…目地
3…柱(躯体)
3a…躯体目地奥表面部
4…ガスケット
5…ガスケット本体
5a…底壁部
5b…前壁部
5c…側壁部
5d…突条
6…化粧目地片
7…芯線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣合う外壁面材間の目地を止水する目地構造であって、両側の外壁面材の裏面における前記目地に沿う部分である面材裏面側縁部と、この面材裏面側縁部に対向する躯体の表面部である躯体目地奥表面部との間に、弾性体からなるガスケットを介在させ、このガスケットは、チューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなり、前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有し、前記ガスケットは、前記底壁部が前記躯体の躯体目地奥表面部に接して設置されて、前記前壁部が前記両外壁面材の面材裏面側縁部で押し付けられ、前記化粧目地片が前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれた化粧目地一体型乾式目地構造。
【請求項2】
請求項1において、前記化粧目地片をチューブ状とした化粧目地一体型乾式目地構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記一対の側壁部が蛇腹状である化粧目地一体型乾式目地構造。
【請求項4】
隣合う外壁面材間の目地を止水する弾性体からなるガスケットであって、チューブ状のガスケット本体と、このガスケット本体から長手方向に沿って一体に突出した化粧目地片とからなり、前記ガスケット本体は、平板状の底壁部と、この底壁部に対向し幅方向中央から前記化粧目地片が突出する平板状の前壁部と、これら底壁部と前壁部の両側縁間に繋がる一対の側壁部とを有し、前記ガスケット本体が、前記外壁面材と前記目地の奥側に位置する躯体との間に挟まれ、前記化粧目地片が前記目地内で両側の外壁面材の目地内面で挟み込まれる化粧目地一体型ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−261153(P2010−261153A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110497(P2009−110497)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】