説明

化膿連鎖球菌のための免疫原性組成物および治療組成物

1つまたは複数の活性剤を含む、化膿連鎖球菌感染を防止および/または治療するための組成物。活性剤は、SLO抗原、SLO抗原をコードする核酸分子、および/またはSLO抗原に選択的に結合する抗体である。本発明の有用なSLO抗原には、本質的に以下からなるアミノ酸配列も含まれる:(1)配列番号1、(2)配列番号1のアミノ酸配列に共有結合したグリシン残基、(3)グリシンに共有結合した配列番号2のアミノ酸配列、および(4)配列番号2のアミノ酸配列に共有結合した配列番号3のアミノ酸配列。さらに他の有用なSLO抗原には、本質的に、配列番号8、配列番号10、配列番号10のアミノ酸2〜82、配列番号12、配列番号12のアミノ酸4〜156、配列番号14、配列番号16、および配列番号18からなるSLO抗原が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2006年10月30日に出願された、仮出願第60/855,114号への優先権を主張し、それを参考として援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫学およびワクチン学分野にある。特に、本発明は、化膿連鎖球菌由来の抗原およびその免疫化での使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ストレプトリシンO(SLO)は、化膿連鎖球菌によって産生される外毒素であり、酸素によって不活化される(それ故に、その名称中に「O」が付いている)。SLOは、酸素不安定性を示し、チオール活性化細胞溶解素(TACYs)として公知の主要な細菌毒素ファミリーのプロトタイプである。非特許文献1。
【0004】
チオール活性化細胞溶解素は、種々のグラム陽性細菌によって産生される毒素である。これらの毒素は、酸化によって可逆的に不活化される。これらの毒素は、コレステロール含有膜への結合によってコレステロールに結合し、コレステロール含有膜の溶解を促進し、それによって重合して孔を形成する能力によって特徴づけられる。チオール活性化細胞溶解素は、20種を超えるグラム陽性細菌で見出されており、アルカノバクテリウム・ピオゲネス(Arcanobacterium pyogenes)(PLO、すなわち、溶血毒素(pyolysin)をコードする)、ウエルシュ菌(PFO、すなわち、パーフリンゴリシンをコードする)、リステリア菌(LLO、すなわち、リステリオリシンをコードする)、および肺炎連鎖球菌(PLYまたはPLN、すなわち、ニューモリシンをコードする)などの種による感染の病理発生と密接に関連する。
【0005】
異なる微生物におけるこれらの毒素の配列は、公知である(例えば、バチルス・アルベイ(Bacillus alvei)由来のアルベオリシン(Alveolysin)(遺伝子alv);リステリア・イバノビイ由来のイバノリシン(Ivanolysin)(遺伝子ilo);リステリア菌由来のリステリオリシンO(遺伝子hlyA);ウエルシュ菌由来のパーフリンゴリシンO(θ−毒素)(遺伝子pfo);肺炎連鎖球菌由来のニューモリシン(遺伝子ply);リステリア・シリゲリ(Listeria seeligeri)由来のシリゲリオリシン(Seeligeriolysin)(遺伝子lso);および化膿連鎖球菌由来のストレプトリシンO(遺伝子slo)。全てのこれらのタンパク質は、1つのシステイン残基を含み、この残基はそのC末端区分に存在し、コレステロールへの結合に不可欠である。このシステインは、高度に保存された領域に存在し、シグネチャパターンとして使用することができる。
【0006】
化膿連鎖球菌がSLOを使用して宿主細胞中でエフェクタタンパク質(例えば、NAD−グリコヒドロラーゼ)を転位置し、それにより、細胞傷害性を誘発すると考えられる。この細胞溶解素媒介性転位置(CMT)は、グラム陰性病原体で認められるIII型分泌のグラム陽性等価物であり得る(Cell 2001 104:143−52)。
【0007】
多数のGAS病原性因子と異なり、SLOは、ほとんどのGAS単離物によって発現され、GASの異なるM血清型の間で高度に保存されるようである配列によってコードされる。ストレプトリシンOは、免疫原性が高く、このタンパク質に対して生じる抗体応答(ASO力価)の決定は、しばしば、最近の感染の血清診断で有用である。SLOに対する強い抗体応答は、急性リウマチ熱および急性連鎖球菌感染後糸球体腎炎の発症と相関することが示されている。SLOは、防御的先天性免疫応答を誘発し、TNFαおよびIL−1βの強力な誘導因子である(Brickerら、2005を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Billingtonら、FEMS Microbiology Letters(2000)18:197−205
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
免疫特性のために、SLOは、診断用および治療用の化膿連鎖球菌組成物で有用であり得る。不運なことに、SLOは広範な種々の細胞型(心筋層が含まれる)に有毒である。したがって、有毒でないSLO抗原が当該分野で必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、化膿連鎖球菌感染を防止および/または治療するための組成物を提供する。これらの組成物は、1つまたは複数の活性剤を含み、該活性剤は、SLO抗原、SLO抗原をコードする核酸分子、および/またはSLO抗原に特異的に結合する抗体である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ウエルシュ菌由来のパーフリンゴリシンO単量体の三次元結晶構造。
【図2】ウエルシュ菌由来のパーフリンゴリシンO(配列番号6)とのGAS25相同性を示すBLASTアラインメント。GAS25(配列番号5)はクエリー配列である。
【図3】ウエルシュ菌パーフリンゴリシンOとのタンパク質配列相同性に基づいたSLO(配列番号5)中のドメインの予想。「pep1」は配列番号1であり、「pep2」は配列番号2であり、「pep3」は配列番号3である。
【図4】ペプチド2および3を含む融合ポリペプチドの構造。
【図5−1】−HIS融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現。
【図5−2】−HIS融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現。
【図6−1】−GST融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現。
【図6−2】−GST融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現。
【図6−3】−GST融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現。
【図7】抗GAS25マウス免疫血清を使用した全細菌抽出物および精製GST融合タンパク質のウェスタンブロット。
【図8】抗GAS25マウス免疫血清を使用した全細菌抽出物および精製His融合タンパク質のウェスタンブロット。
【図9】抗GSTマウス免疫血清を使用した精製GST融合タンパク質のウェスタンブロット。
【図10】市販の抗6Xhisモノクローナル抗体(Amersham)を使用した精製His融合タンパク質のウェスタンブロット。
【図11】異なるヒト血清を使用した精製GST融合タンパク質によるウェスタンブロット。
【図12】GASの健康な成人由来の異なる血清を使用した精製GST融合タンパク質によるドットブロット(A:ボイル済、B:ボイルなし)。
【図13】GAS感染児童由来の異なる血清を使用した精製GST融合タンパク質によるウェスタンブロット。
【図14】GAS感染児童由来の異なる血清を使用したボイル済(+)およびボイルなし(−)の精製GST融合タンパク質によるドットブロット。
【図15】3つのGAS SLOフラグメントの6xHIS融合物のPAGE分析。
【図16】溶液中のペプチド1のMALDI−TOF分析。
【図17】溶液中のペプチド2+3のMALDI−TOF分析。
【図18】トリプシンで消化したペプチド2+3のMALDI−TOF分析。
【図19】溶液中のペプチド1+2+3のMALDI−TOF分析。
【図20】トリプシンで消化したペプチド1+2+3のMALDI−TOF分析。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
SLO抗原
本発明の「ストレプトリシンO(SLO)抗原」は、免疫原性を示すが、非毒性である。本明細書中で使用される場合、「非毒性」は、SLO抗原がコレステロールに結合することができず、それにより、コレステロール含有膜の溶解を促進しないことを意味する。SLOタンパク質を、例えば、SLOのC末端部にある高度に保存された領域中に存在する少なくとも1つのシステイン残基の欠失によって非毒性にすることができ、該システインは、チオール活性化細胞溶解素のシグネチャパターンとして使用することができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、化膿連鎖球菌のストレプトリシンO(SLO)抗原は、本質的に、配列番号1のアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、SLO抗原は、本質的に、N末端からC末端方向に、配列番号2のアミノ酸配列および配列番号2のアミノ酸配列に共有結合した配列番号3のアミノ酸配列からなる。本明細書中で使用される場合、「共有結合した」には、直接共有結合および1つまたは複数のさらなるアミノ酸を介した結合が含まれる。他の実施形態では、SLO抗原は、本質的に、N末端からC末端方向に、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸配列に共有結合したグリシン残基、グリシンに共有結合した配列番号2のアミノ酸配列、および配列番号2のアミノ酸配列に共有結合した配列番号3のアミノ酸配列からなる。
【0014】
本発明の有用なSLO抗原には、本質的に以下からなるアミノ酸配列も含まれる:(1)配列番号1、(2)配列番号1のアミノ酸配列に共有結合したグリシン残基、(3)グリシンに共有結合した配列番号2のアミノ酸配列、および(4)配列番号2のアミノ酸配列に共有結合した配列番号3のアミノ酸配列。さらに他の有用なSLO抗原には、本質的に、配列番号8、配列番号10、配列番号10のアミノ酸2〜82、配列番号12、配列番号12のアミノ酸4〜156、配列番号14、配列番号16、および配列番号18からなるSLO抗原が含まれる。いくつかの実施形態では、SLO抗原は、単量体である。
【0015】
GAS M型とGAS分離株との間のSLO抗原が一致しない場合、本発明のGASアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、好ましくは、これらと配列が同一なアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列をいう。好ましいアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、50%以上の配列が同一である(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超える)。同様に、本発明のSLOアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、好ましくは、SLO抗原の免疫学的性質を保持またはコードする配列のフラグメントをいう。好ましいアミノ酸フラグメントには、少なくともn個の連続アミノ酸が含まれ、nは7以上である(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、またはそれを超える)。
【0016】
融合タンパク質
本発明で使用されるSLO抗原は、個別のポリペプチド(「ペプチド1」、「ペプチド2」、「ペプチド3」、「ペプチド1+2+3」、「ペプチド2+3」)として組成物中に存在することができるが、少なくとも2個(すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20)の抗原が1つのポリペプチド鎖(「融合タンパク質」または「ハイブリッドポリペプチド」)として発現する実施形態も存在する。ハイブリッドポリペプチドは、2つの主な利点を付与する。第1に、単独で不安定であり得るか十分に発現し得ないポリペプチドを、適切なハイブリッドパートナーの付加によって補助して問題を克服することができる。第2に、共に抗原的に有用な2つのポリペプチドを産生するために1つだけ発現および精製を使用する必要があるように商業的製造を簡略化する。
【0017】
ハイブリッドポリペプチドは、2つまたはそれを超えるポリペプチド配列を含むことができる。したがって、本発明は、第1および第2のアミノ酸配列がSLO抗原またはそのフラグメントから選択される、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含む組成物が含まれる。好ましくは、ハイブリッドポリペプチド中の第1および第2のアミノ酸配列は、異なるエピトープを含む。他の実施形態では、ハイブリッドポリペプチドは、第1のアミノ酸配列がSLO抗原またはそのフラグメントから選択され、第2のアミノ酸配列がSLO抗原もしくはそのフラグメントまたは別のGAS抗原から選択される、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列を含む。好ましくは、ハイブリッドポリペプチド中の第1および第2のアミノ酸配列は、異なるエピトープを含む。
【0018】
2、3、4、5、6、7、8、9、または10個のGAS抗原由来のアミノ酸配列からなるハイブリッドを構築することができる。異なるハイブリッドポリペプチドを、共に1つの処方物に混合することができる。かかる組み合わせのうち、SLO抗原は、1つを超えるハイブリッドポリペプチド中に存在することができ、そして/または非ハイブリッドポリペプチドとして存在することができる。いくつかの実施形態では、抗原は、ハイブリッドまたは非ハイブリッドとして存在するが、両方は存在しない。
【0019】
ハイブリッドポリペプチドを、式NHA−{−X−L}B−COOH(式中、Xは、第1の抗原群または第2の抗原群由来のGAS抗原のアミノ酸配列またはそのフラグメントであり、Lは任意選択的なリンカーアミノ酸配列であり、Aは任意選択的なN末端アミノ酸配列であり、Bは任意選択的なC末端アミノ酸配列であり、nは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15である)で示すことができる。
【0020】
−X−部分は、その野生型のリーダーペプチド配列を有する場合、ハイブリッドタンパク質中に含まれてよく、または省略されてよい。いくつかの実施形態では、ハイブリッドタンパク質のN末端に存在する−X−部分のリーダーペプチド以外のリーダーペプチドを欠失するであろう(すなわち、Xのリーダーペプチドは保持されるが、X...Xのリーダーペプチドは省略されるであろう)。これは、全てのリーダーペプチドの欠失および−A−部分としてのXのリーダーペプチドの使用と等価である。
【0021】
{−X−L−}の各nについて、リンカーアミノ酸配列−L−は存在しても存在しなくてもよい。例えば、n=2の場合、ハイブリッドはNH−X−L−X−L−COOH、NH−X−X−COOH、NH−X−L−X−COOH、NH−X−X−L−COOHなどであり得る。リンカーアミノ酸配列−L−は、典型的には、短い(例えば、20個以下のアミノ酸(すなわち、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1))。例は、クローニングを容易にする短いペプチド配列であるポリグリシンリンカー(すなわち、Gly(式中、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える)を含む)およびヒスチジンタグ(すなわち、His(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれを超える))を含む。他の適切なリンカーアミノ酸配列は、当業者に明らかである。有用なリンカーはGSGGGGであり、Gly−SerジペプチドはBamHI制限部位から形成されているので、クローニングおよび操作を補助し、(Gly)テトラペプチドは典型的なポリグリシンリンカーである。
【0022】
−A−は任意選択的なN末端アミノ酸配列である。これは、典型的には、短いであろう(例えば、40個以下のアミノ酸(すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1))。例には、タンパク質輸送を指示するためのリーダー配列またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ(すなわち、His(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える)))が含まれる。他の適切なN末端アミノ酸配列は、当業者に明らかである。Xがそれ自体のN末端メチオニンを各場合、−A−は、好ましくは、N末端メチオニンを提供するオリゴペプチド(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸)である。
【0023】
−B−は任意選択的なC末端アミノ酸配列である。これは、典型的には、短いであろう(例えば、40個以下のアミノ酸(すなわち、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1))。例には、タンパク質輸送を指示するための配列またはクローニングもしくは精製を容易にする短いペプチド配列(例えば、ヒスチジンタグ(すなわち、His(式中、n=3、4、5、6、7、8、9、10またはそれを超える))を含む)、またはタンパク質安定性を向上する配列が含まれる。他の適切なC末端アミノ酸配列は、当業者に明らかであろう。
【0024】
最も好ましくは、nは2または3である。
【0025】
本発明の融合構築物には、2つ以上のSLO抗原の組み合わせが含まれ得る。好ましい組み合わせには、GAS40抗原またはGAS57抗原との融合物が含まれる。
【0026】
GAS40
GAS40タンパク質が多数のM型およびこれらのM型の複数の株の両方で高度に保存されているので、GAS40抗原は本発明の組成物で特に有用である(WO2006/042027号を参照のこと)。GAS40タンパク質は、WO2005/032582号に詳述されている。GAS40は、全身免疫および攻撃誘発ならびに細菌抗体誘導の動物モデルを一貫して防御する。GAS40は、非常に高度に保存されたタンパク質であり、ほとんどのM血清型の表面に露呈しているようである(これまで認められている唯一の例外はM3血清型である)。
【0027】
種々のM株由来の多数のGAS40タンパク質のアミノ酸配列はGenBankに含まれ、受託番号GI:13621545およびGI:15674449(M1);受託番号GI:21909733(M3)、および受託番号GI:19745402(M18)である。GAS40タンパク質は、「Spy0269」(M1)、「SpyM3_0197」(M3)、「SpyM18_0256」(M18)、および「prgA」としても公知である。
【0028】
GAS40タンパク質は、典型的には、リーダーペプチド配列(例えば、配列番号19のアミノ酸1〜26)、第1のコイルドコイル領域(例えば、配列番号19のアミノ酸58〜261)、第2のコイルドコイル領域(例えば、配列番号19のアミノ酸556〜733)、ロイシンジッパー領域(例えば、配列番号19のアミノ酸673〜701)、および膜貫通領域(例えば、配列番号19のアミノ酸855〜866)を含む。
【0029】
本発明と共に使用するのに好ましいGAS40タンパク質は、(a)配列番号19と50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超える)の同一性を有し;および/または(b)配列番号19の少なくともn個の連続アミノ酸のフラグメントであるアミノ酸配列(nは7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、またはそれを超える)である)を含む。これらのGAS40タンパク質には、配列番号19の変形体(例えば、対立遺伝子多型、ホモログ、オルソログ、パラログ、変異体など)が含まれる。GAS40タンパク質の好ましいフラグメントは、GAS40タンパク質のC末端由来の1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれを超える)および/またはN末端由来の1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれを超える)を欠く。1つの実施形態では、リーダー配列を除去する。別の実施形態では、膜貫通領域を除去する。他のフラグメントは、GAS40タンパク質の1つまたは複数のドメインを省略することができる。
【0030】
GAS40のコイルドコイル領域は、二量体または三量体などのオリゴマーの形成に関与する可能性が高い。かかるオリゴマーは、ホモマー(互いにオリゴマー化した2個以上のGAS40タンパク質を含む)またはヘテロマー(GAS40とオリゴマー化した1つまたは複数のさらなるGASタンパク質を含む)であり得る。あるいは、2つのコイルドコイル領域は、GAS40タンパク質内で相互作用して、第1のコイルドコイル領域と第2のコイルドコイル領域との間にオリゴマー反応物を形成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、GAS40抗原はオリゴマーの形態である。いくつかのオリゴマーは、2個以上のGAS40抗原を含む。他のオリゴマーは、第2のGAS抗原とオリゴマー化したGAS40抗原を含む。
【0031】
GAS57
GAS57は、M1 GenBank受託番号GI:13621655およびGI:15674549、M3 GenBank受託番号GI:21909834、M18 GenBank受託番号GI:19745560に対応し、「Spy0416」(M1)、「SpyM3_0298」(M3)、「SpyM18_0464」(M18)、および「prtS」ともいう。GAS57はまた、推定細胞エンベローププロテイナーゼとしても同定されている。M1株のGAS57のアミノ酸配列は、配列表中に配列番号20として記載されている。
【0032】
本発明と共に使用するのに好ましいGAS57タンパク質は、(a)配列番号20と50%以上(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれを超える)の同一性を有し;および/または(b)配列番号20の少なくともn個の連続アミノ酸のフラグメントであるアミノ酸配列(nは7以上(例えば、8、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、またはそれを超える)である)を含む。これらのGAS57タンパク質には、配列番号20の変形体(例えば、対立遺伝子多型、ホモログ、オルソログ、パラログ、変異体など)が含まれる。(b)の好ましいフラグメントは、配列番号20のエピトープを含む。他の好ましいフラグメントは、配列番号20のC末端由来の1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれを超える)および/またはN末端由来の1つまたは複数のアミノ酸(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、またはそれを超える)を欠く。例えば、1つの実施形態では、アミノ酸1〜33を除去する。別の例では、アミノ酸1614〜1647または配列番号20を除去する。他のフラグメントは、タンパク質の1つまたは複数のドメインを省略する(例えば、シグナルペプチド、細胞質ドメイン、膜貫通ドメイン、または細胞外ドメインの省略)。
【0033】
核酸分子
本発明は、SLO抗原をコードする核酸分子を含む。本発明はまた、かかる分子と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。特定の配列に依存して、配列同一性の程度は、好ましくは、50%を超える(例えば、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超える)。ヌクレオチド配列間の同一性は、好ましくは、以下のパラメータ:ギャップオープンペナルティ=12およびギャップ伸長ペナルティ=1を使用したアフィンギャップ検索を使用したMPSRCHプログラム(Oxford Molecular)で実行されるSmith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。
【0034】
本発明はまた、これらの分子とハイブリッド形成することができる核酸分子を提供する。ハイブリッド形成反応を、異なる「ストリンジェンシー」条件下で行うことができる。ハイブリッド形成反応のストリンジェンシーを増加させる条件は、広く知られており、当該分野で公開されている。例えば、Sambrookらの7.52ページ、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,1989を参照のこと。関連条件の例には、以下が含まれる(ストリンジェンシーが増加する順):25℃、37℃、50℃、55℃、および68℃でのインキュベーション;10×SSC、6×SSC、1×SSC、および0.1×SSCの緩衝剤濃度(SSCは0.15M NaClおよび15mMクエン酸緩衝剤である)ならびに他の緩衝系を使用したその等価物;0%、25%、50%、および75%のホルムアルデヒド濃度;5分間〜24時間のインキュベーション時間;1回、2回、またはそれを超える洗浄工程;1、2、または15分間の洗浄インキュベーション時間;ならびに6×SSC、1×SSC、0.1×SSC、または脱イオン水の洗浄液。ハイブリッド形成技術およびその至適化は、当該分野で周知である。例えば、Sambrook,1989;Ausubelら、eds.,Short Protocols in Molecular Biology,4th ed.,1999;米国特許第5,707,829号;Ausubelら、eds.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 30,1987を参照のこと。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸分子は、低ストリンジェンシー条件下で標的とハイブリッド形成し、他の実施形態では、本発明の核酸分子は中ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成し、好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は高ストリンジェンシー条件下でハイブリッド形成する。低ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、50℃および10×SSCである。中ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、55℃および1×SSCである。高ストリンジェンシーハイブリッド形成条件の例は、68℃および0.1×SSCである。
【0036】
これらの配列のフラグメントを含む核酸分子も本発明に含まれる。これらは、これらの配列の少なくともn個の連続するヌクレオチドを含み、特定の配列に依存して、nは10個以上(例えば、12、14、15、18、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、150、200、またはそれを超える)である。
【0037】
本発明の核酸(およびポリペプチド)は:
(a)配列表に開示の配列と同一(すなわち、100%同一)であり;
(b)配列表に開示の配列と配列同一性を共有し;
(c)(a)または(b)の配列と比較した場合に個別の位置に存在することができるか、連続し得る、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の単一のヌクレオチドまたはアミノ酸の変更(欠失、挿入、置換)を有し;
d)p単量体(p>xの場合)に伸長するアラインメントについてp−x+1が存在するようにペアワイズアラインメントアルゴリズム(開始(N末端または5’)から終了(C末端または3’)に移動するx単量体(アミノ酸またはヌクレオチド)の移動ウィンドウ(moving window))を使用して配列表由来の特定の配列とアラインメントした場合、かかるウィンドウは、少なくともx・y個の同一のアラインメントした単量体を有し、ここで、xは20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200から選択され、yは、0.50、0.60、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99から選択され、x・yが整数でない場合、近似する整数に切り上げる;
配列を含む。好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォルトパラメータ(例えば、Gapオープニングペナルティ=10.0およびGap伸長ペナルティ=0.5、EBLOSUM62スコアリング行列を使用)を使用したNeedleman−Wunsch大域的アラインメントアルゴリズム(Needleman & Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48,443−453)である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージ中のニードルツールで都合良く実行される(Riceら(2000)Trends Genet.16:276−277)。
【0038】
本発明の核酸およびポリペプチドは、さらに、これらの配列(a)〜(d)のN末端/5’および/またはC末端/3’に対するさらなる配列を有することができる。
【0039】
抗体
本発明のSLO抗原に特異的に結合するための抗体を生成することができる。用語「抗体」には、インタクトな免疫グロブリン分子、および抗原に結合することができるそのフラグメントが含まれる。これらには、ハイブリッド(キメラ)抗体分子(例えば、Winterら、Nature 349,293−99,1991;米国特許第4,816,567号);F(ab’)2フラグメントおよびF(ab)フラグメントならびにFv分子;非共有結合性ヘテロ二量体(例えば、Inbarら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.69,2659−62,1972;Ehrlichら、Biochem 19,4091−96,1980);単鎖Fv分子(sFv)(例えば、Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85,5897−83,1988);二量体および三量体抗体フラグメント構築物;ミニボディ(minibody)(例えば、Packら、Biochem 31,1579−84,1992;Cumberら、J.Immunology 149B,120−26,1992);ヒト化抗体分子(例えば、Riechmannら、Nature 332,323−27,1988;Verhoeyanら、Science 239,1534−36,1988;および1994年9月21日公開の英国特許出願番号GB2,276,169号);およびかかる分子から得た任意の機能的フラグメントならびにファージディスプレイなどの従来にない過程によって得た抗体が含まれる。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体を得る方法は、当該分野で周知である。
【0040】
典型的には、エピトープを形成するのに少なくとも6、7、8、10、または12個の連続するアミノ酸が必要である。しかし、不連続アミノ酸を含むエピトープは、より多数(例えば、少なくとも15、25、または50個のアミノ酸)を必要とし得る。種々の免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、ELISA、放射免疫アッセイ、免疫組織化学アッセイ、免疫沈降、または当該分野で公知の他の免疫化学アッセイ)を使用して、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。競合結合または免疫放射線測定法についての多数のプロトコールが当該分野で周知である。かかる免疫アッセイは、典型的には、免疫原と免疫原に特異的に結合する抗体との間の複合体形成の測定を含む。特定の抗原に特異的に結合する抗体の調製から、典型的には、免疫化学アッセイで使用した場合に他のタンパク質を使用して得られる検出シグナルの少なくとも5倍、10倍、または20倍の検出シグナルが得られる。好ましくは、抗体は、免疫化学アッセイにおいて他のタンパク質を検出せず、溶液由来の特定の抗原を免疫沈降することができる。
【0041】
抗体の生成
SLO抗原または非SLOポリペプチド抗原(下記)を使用して哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトなど)を免疫化して、ポリクローナル抗体を産生することができる。必要に応じて、抗原を、担体タンパク質(ウシ血清アルブミン、サイログロブリン、およびキーホールリンペットヘモシアニンなど)に接合することができる。宿主の種に応じて、種々のアジュバントを使用して、免疫学的応答を増大させることができる。かかるアジュバントには、フロイントアジュバント、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、および界面活性剤(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノール)が含まれるが、これらに限定されない。ヒトで使用されるアジュバントのうち、BCG(カルメット・ゲラン桿菌)およびコリネバクテリウム・パルバムが特に有用である。
【0042】
抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を、連続継代細胞株の培養によって抗体分子を産生する任意の技術を使用して調製することができる。これらの技術には、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術が含まれるが、これらに限定されない(Kohlerら、Nature 256,495 497,1985;Kozborら、J.Immunol.Methods 81,31 42,1985;Coteら、Proc.Natl.Acad.Sci.80,2026 2030,1983;Coleら、Mol.Cell Biol.62,109 120,1984)。
【0043】
さらに、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術(マウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子にスプライシングして適切な抗原特異性および生物活性を有する分子を得る技術)を使用することができる(Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.81,6851 6855,1984;Neubergerら、Nature 312,604 608,1984;Takedaら、Nature 314,452 454,1985)。モノクローナル抗体および他の抗体を「ヒト化」して、治療で使用する場合に抗体に対する患者の免疫応答の開始を防止することもできる。かかる抗体は、療法で直接使用するのに配列が十分にヒト抗体と類似し得るか、少数の重要な残基を変化させる必要があり得る。げっ歯類抗体配列とヒト抗体配列との間の相違を、各残基の部位特異的変異誘発または相補性決定領域全体のグラフティング(grating)によるヒト配列中の残基と異なる残基の置換によって最小にすることができる。
【0044】
あるいは、下記の組換え方法を使用してヒト化抗体を産生することができる。米国特許第5,565,332号に開示のように、特定の抗原に特異的に結合する抗体は、部分的または完全にヒト化された抗原結合部位を含むことができる。
【0045】
あるいは、単鎖抗体の産生について記載した技術を、当該分野公知の方法を使用して適合させて、特定の抗原に特異的に結合する単鎖抗体を産生することができる。関連する特異性を有するが、異なるイディオタイプ組成の抗体を、ランダム組み合わせ免疫グロブリンライブラリー由来のチェーンシャフリング(chain shuffling)によって生成することができる(Burton,Proc.Natl.Acad.Sci.88,11120 23,1991)。
【0046】
単鎖抗体を、テンプレートとしてハイブリドーマcDNAを使用したDNA増幅方法(PCRなど)を使用して構築することができる(Thirionら、1996,Eur.J.Cancer Prev.5,507−11)。単鎖抗体は、単一特異性または二重特異性であり得、2価または4価であり得る。4価の二重特異性単鎖抗体の構築は、例えば、Coloma & Morrison,1997,Nat.Biotechnol.15,159−63に教示されている。2価の二重特異性単鎖抗体は、Mallender & Voss,1994,J.Biol.Chem.269,199−206に教示されている。
【0047】
下記のように、単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列を、手作業または自動化されたヌクレオチド合成によって構築し、標準的な組換えDNA法を使用して発現構築物にクローン化し、細胞に導入してコード配列を発現させることができる。あるいは、単鎖抗体を、例えば、繊維状ファージテクノロジーを使用して直接産生することができる(Verhaarら、1995,Int.J.Cancer 61,497−501;Nichollsら、1993,J.Immunol.Meth.165,81−91)。
【0048】
特定の抗原に特異的に結合する抗体を、文献に開示のリンパ球集団におけるインビボ産生の誘導または免疫グロブリンライブラリーもしくは高度に特異的な結合試薬のパネルのスクリーニングによって産生することもできる(Orlandiら、Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833 3837,1989;Winterら、Nature 349,293 299,1991)。
【0049】
キメラ抗体を、WO93/03151号に開示のように構築することができる。免疫グロブリンに由来し、多価または多重特異性の結合タンパク質(WO94/13804号に記載の「二特異性抗体」など)を調製することもできる。
【0050】
抗体を、当該分野で周知の方法によって精製することができる。例えば、抗体を、関連抗原が結合するカラムの通過によってアフィニティ精製することができる。次いで、結合した抗体を、高塩濃度の緩衝剤を使用して、カラムから溶離することができる。
【0051】
ポリペプチド抗原の産生
ポリペプチドの組換え産生
特定の抗原をコードする任意のヌクレオチド配列を使用して、抗原を組換え的に産生することができる。所望により、一旦そのアミノ酸配列が分かると、抗体を組換え的に産生することができる。
【0052】
本発明のSLO抗原を産生するために使用することができる配列の例を、図5および6に示す。SLOをコードする核酸分子を、標準的な核酸精製技術を使用して適切な化膿連鎖球菌から単離することができ、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの増幅技術の使用、もしくは自動合成機の使用によって合成することができる。核酸の単離方法は日常的方法であり、当該分野で公知である。任意のかかる核酸分子取得技術を使用して、特定の抗原をコードする核酸分子を得ることができる。特定の抗原または抗体をコードする配列を、当該分野で周知の化学的方法を使用して完全または部分的に合成することができる(Caruthersら、Nucl.Acids Res.Symp.Ser.215 223,1980;Hornら、Nucl.Acids Res.Symp.Ser.225 232,1980を参照のこと)。
【0053】
cDNA分子を、テンプレートとしてmRNAを使用した標準的な分子生物学技術を使用して作製することができる。その後、cDNA分子を、当該分野で周知の分子生物学技術を使用して複製することができる。テンプレートとしてゲノムDNAまたはcDNAのいずれかを使用したPCRなどの増幅技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドの更なる複製を得ることができる。
【0054】
所望により、当該分野で一般的に知られている方法を使用してヌクレオチド配列を操作して、種々の理由で抗原コード配列を変化させることができる(ポリペプチドまたはmRNA産物のクローニング、プロセシング、および/または発現を修飾する変更が含まれるが、これらに限定されない)。遺伝子フラグメントおよび合成オリゴヌクレオチドのランダム断片化およびPCRアセンブリによるDNAシャフリングを使用して、ヌクレオチド配列を操作することができる。例えば、部位特異的変異誘発を使用して、新規の制限部位の挿入、グリコシル化パターンの変更、コドン選択の変化、スプライスバリアントの産生、および変異の導入などを行うことができる。
【0055】
配列修飾(精製タグ配列の付加またはコドン至適化など)を使用して、発現を容易にすることができる。例えば、N末端リーダー配列を、タグタンパク質(ポリヒスチジン(「HIS」)またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(「GST」)など)をコードする配列と置換することができる。かかるタグタンパク質を使用して、発現タンパク質の精製、検出、および安定性を促進することができる。特定の原核生物宿主または真核生物宿主に好まれるコドンを選択して、タンパク質発現率を増大させ、または所望の性質(天然に存在する配列から生成した転写物よりも長い半減期など)を有するRNA転写物を産生することができる。これらの方法は当該分野で周知であり、WO05/032582号にさらに記載されている。
【0056】
発現ベクター
抗原または抗体をコードする核酸分子を、挿入するコード配列の転写および翻訳に必要なエレメントを含む発現ベクターに挿入することができる。当業者に周知の方法を使用して、コード配列ならびに適切な転写調節エレメントおよび翻訳調節エレメントを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。
【0057】
宿主細胞
異種宿主は、原核生物または真核生物であり得る。大腸菌は好ましい宿主細胞であるが、他の適切な宿主には、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・クレモリス、枯草菌、コレラ菌、チフス菌、ネズミチフス菌、ナイセリア・ラクタミカ、ナイセリア・シネレア、マイコバクテリア属(例えば、結核菌)、酵母などが含まれる。
【0058】
宿主細胞株を、所望の様式で挿入配列の発現を調整する、または発現ポリペプチドをプロセシングする能力について選択することができる。かかるポリペプチド修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、およびアセチル化が含まれるが、これらに限定されない。ポリペプチドの「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングを使用して、正確な挿入、折り畳み、および/または機能を促進することもできる。翻訳後活性のための特定の細胞機能および特徴的な機能を有する異なる宿主細胞は、American Type Culture Collection(ATCC;10801 University Boulevard,Manassas,VA 20110−2209)から利用可能であり、外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングが確実になるように選択することができる。WO01/98340号を参照のこと。
【0059】
十分に確立された技術(トランスフェリン−ポリカチオン媒介DNA移入、裸またはカプセル化した核酸でのトランスフェクション、リポソーム媒介細胞融合、DNAコーティングラテックスビーズの細胞内輸送、プロトプラスト融合、ウイルス感染、エレクトロポレーション、「遺伝子銃」法、およびDEAEまたはリン酸カルシウム媒介トランスフェクションが含まれるが、これらに限定されない)を使用して、発現構築物を宿主細胞に導入することができる。
【0060】
発現ベクターを使用して形質転換された宿主細胞を、細胞培養物からのタンパク質の発現および回収に適切な条件下で培養することができる。形質転換された細胞によって産生されたタンパク質を、使用したヌクレオチド配列および/または発現ベクターに応じて分泌し、または細胞内に含めることができる。当業者は、原核細胞膜または真核細胞膜を介した可溶性抗原の分泌を指示するシグナル配列を含むように発現ベクターをデザインすることができることを理解している。
【0061】
精製
本発明で使用される抗原を、適切な化膿連鎖球菌または操作した宿主細胞から単離することができる。精製ポリペプチド抗原を、当該分野で周知の方法を使用して、細胞中の他の成分(タンパク質、炭水化物、または脂質など)から分離する。かかる方法には、サイズ排除クロマトグラフィ、硫酸アンモニウム分画、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、および分取ゲル電気泳動が含まれるが、これらに限定されない。精製ポリペプチド抗原の調製物の純度は少なくとも80%であり、好ましくは、調製物の純度は、90%、95%、または99%である。調製物の純度を、当該分野で公知の任意の手段(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など)によって評価することができる。適切な場合には、ポリペプチド抗原を、例えば、尿素を使用して可溶化することができる。
【0062】
化学合成
本発明の組成物中で使用されるSLO抗原および他の抗原を、例えば、固相技術を使用して合成することができる。例えば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85,2149 54,1963;Robergeら、Science 269,202 04,1995を参照のこと。手動技術の使用または自動化によりタンパク質合成を行うことができる。例えば、Applied Biosystems 431A Peptide Synthesizer(Perkin Elmer)を使用して、自動化された合成を行うことができる。任意選択的に、SLO抗原のフラグメントを個別に合成し、化学的方法を使用して合わせて全長分子を産生することができる。
【0063】
抗体またはポリペプチド抗原をコードする核酸分子を、従来の方法(リン酸トリエステル法(Hunkapiller,M.ら(1984),Nature 310:105−111)または核酸の化学合成(Grantham,R.ら(1981),Nucleic Acids Res.9:r43−r74)など)によって合成することができる。
【0064】
免疫学的組成物、診断組成物、および治療組成物
本発明はまた、宿主被験体におけるGAS感染の検出のための薬物(例えば、免疫学的組成物またはワクチン)または診断試薬として使用するための組成物を提供する。本発明はまた、(i)GAS細菌の感染の治療または防止のための薬物、(ii)GAS細菌またはGAS細菌に対して惹起された抗体の存在の検出のための診断試薬、および/または(iii)GAS細菌に対する抗体を惹起することができる試薬の製造における組成物の使用を提供する。
【0065】
例えば、SLO抗原またはこの抗原をコードする核酸を、GAS感染の存在の検出もしくはGAS細菌に対して惹起される抗体の検出のための診断試薬の製造またはGAS細菌に対する抗体を惹起することができる試薬の製造で使用することができる。SLO抗原をコードする核酸を、当該分野で公知のようにハイブリッド形成条件下で生体サンプルと核酸プローブを接触させることによって二重鎖を形成し、二重鎖を検出することによって検出することができる。SLO抗原を、SLO抗原に特異的に結合する抗体を使用して検出することができる。同様に、SLO抗原に対する抗体を使用して、抗体−抗原複合体の形成に適切な条件下で生体サンプルを接触させ、形成された任意の複合体を検出することによってSLO抗原を検出することができる。本発明はまた、これらの方法の使用に適切な試薬を含むキットを提供する。
【0066】
治療組成物
本発明の組成物は、化膿連鎖球菌感染の防止および/または治療に有用である。SLO抗原を含む組成物は、好ましくは、免疫原性組成物であり、より好ましくは、ワクチン組成物である。かかる組成物のpHは、好ましくは、pH6とpH8との間、好ましくは、約pH7である。pHを緩衝剤の使用によって維持することができる。組成物は、無菌および/または無発熱物質であり得る。組成物は、ヒトに関して等張であり得る。
【0067】
本発明のワクチンを、予防的または治療的に使用することができるが、典型的には、予防的であろう。したがって、本発明は、化膿連鎖球菌感染の治療的または予防的処置のための方法を含む。動物は、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。方法は、治療量または予防量の本発明の免疫原性組成物を動物に投与する工程を含む。
【0068】
いくつかの本発明の組成物は、本明細書に記載のポリペプチドSLO抗原を含む。他の本発明の組成物は、SLO抗原、任意選択的に、組成物中に含めることができる他の抗原をコードする核酸分子を含む(以下を参照のこと)。例えば、Robinson & Torres(1997)Seminars in Immunology 9:271−283;Donnellyら(1997)Ann.Rev Immunol 15:617−648;Scott−Taylor & Dalgleish(2000)Expert Opin Investig Drugs 9:471−480;Apostolopoulos & Plebanski(2000)Curr Opin Mol Ther 2:441−447;Ilan(1999)Curr Opin Mol Ther 1:116−120;Dubenskyら(2000)Mol Med 6:723−732;Robinson & Pertmer(2000)Adv Virus Res 55:1−74;Donnellyら(2000)Am J Respir Crit Care Med 162(4 Pt 2):S190−193;Davis(1999)Mt.Sinai J.Med.66:84−90を参照のこと。典型的には、核酸分子は、例えば、プラスミド形態のDNA分子である。
【0069】
化膿連鎖球菌感染の治療用組成物は、SLO抗原に特異的に結合する少なくとも1つの抗体および、任意選択的に、非SLO抗原に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの本発明の組成物は、免疫原性であり、1つまたは複数のポリペプチド抗原を含む一方で、他の免疫原性組成物は、1つまたは複数の抗原をコードする核酸分子を含む。例えば、Robinson & Torres(1997)Seminars in Immunology 9:271−283;Donnellyら(1997)Ann.Rev Immunol 15:617−648;Scott−Taylor & Dalgleish(2000)Expert Opin Investig Drugs 9:471−480;Apostolopoulos & Plebanski(2000)Curr Opin Mol Ther 2:441−447;Ilan(1999)Curr Opin Mol Ther 1:116−120;Dubenskyら(2000)Mol Med 6:723−732;Robinson & Pertmer(2000)Adv Virus Res 55:1−74;Donnellyら(2000)Am J Respir Crit Care Med 162(4 Pt 2):S190−193Davis(1999)Mt.Sinai J.Med.66:84−90を参照のこと。典型的には、核酸分子は、例えば、プラスミド形態のDNA分子である。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、1つまたは複数のさらなる活性剤を含むことができる。かかる活性剤には、(a)本発明の別のSLO抗原、(b)小児ワクチンで有用なポリペプチド抗原、(c)高齢者または免疫無防備状態の個体のためのワクチンで有用なポリペプチド抗原、(d)(a)〜(c)および(a)〜(c)に特異的に結合する抗体をコードする核酸分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
さらなる抗原
本発明の組成物を、本発明の治療方法、予防方法、または診断方法で使用するための1つまたは複数の抗原と組み合わせて投与することができる。好ましい抗原には、以下に列挙した抗原が含まれる。さらに、本発明の組成物を使用して、任意の以下に列挙の病原体に起因する感染を治療または防止することができる。下記の抗原との組み合わせに加えて、本発明の組成物を、本明細書中に記載のアジュバントと組み合わせることもできる。
【0072】
本発明と共に使用するための抗原には、下記の1つまたは複数の抗原または下記の1つまたは複数の病原体由来の抗原が含まれるが、これらに限定されない。
【0073】
A.細菌抗原
本発明での使用に適切な細菌抗原には、細菌から単離、精製、または由来することができるタンパク質、多糖類、リポ多糖類、外膜小胞が含まれる。さらに、細菌抗原には、細菌溶解物および不活化細菌処方物が含まれ得る。細菌抗原を、組換え発現によって産生することができる。細菌抗原には、好ましくは、その生活環の少なくとも1段階に細菌表面に曝露されるエピトープが含まれる。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型で保存される。細菌抗原には、下記の1つまたは複数の細菌由来の抗原および以下で同定した特定の抗原例が含まれる。
【0074】
ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides):メニンギティディス抗原には、N.メニンギティディス血清群(A、C、W135、Y、および/またはBなど)から精製または由来したタンパク質(引例1〜7で同定されたタンパク質など)、糖類(多糖類、オリゴ糖、またはリポ多糖類が含まれる)、または外膜小胞(引例8、9、10、11)が含まれ得る。メニンギティディスタンパク質抗原を、接着剤、オートトランスポータ、毒素、Fe獲得タンパク質、および膜結合タンパク質(好ましくは、外膜内在性タンパク質(integral outer membrane protein))から選択することができる。
【0075】
肺炎連鎖球菌:肺炎連鎖球菌抗原には、肺炎連鎖球菌由来の糖類(多糖類またはオリゴ糖が含まれる)および/またはタンパク質が含まれ得る。糖類抗原を、血清型1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、および33Fから選択することができる。タンパク質抗原を、WO98/18931号、WO98/18930号、米国特許第6,699,703号、米国特許第6,800,744号、WO97/43303号、およびWO97/37026号で同定されたタンパク質から選択することができる。肺炎連鎖球菌タンパク質を、ポリヒスチジントリアドファミリー(PhtX)、コリン結合タンパク質ファミリー(CbpX)、CbpX短縮物、LytXファミリー、LytX短縮物、CbpX短縮物−LytX短縮物キメラタンパク質、ニューモリシン(Ply)、PspA、PsaA、Sp128、Sp101、Sp130、Sp125、またはSp133から選択することができる。
【0076】
化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原には、WO02/34771号またはWO2005/032582号で同定されたタンパク質(GAS40が含まれる)、GAS Mタンパク質のフラグメントの融合物(WO02/094851号およびDale,Vaccine(1999)17:193−200およびDale,Vaccine 14(10):944−948に記載のものが含まれる)、フィブロネクチン結合タンパク質(Sfb1)、連鎖球菌ヘム結合タンパク質(Shp)、およびストレプトリシンS(SagA)が含まれ得る。
【0077】
カタル球菌:モラクセラ抗原には、WO02/18595号およびWO99/58562号で同定された抗原、外膜タンパク質抗原(HMW−OMP)、C抗原、および/またはLPSが含まれる。
【0078】
百日咳菌:百日咳抗原には、百日咳ホロトキシン(petussis holotoxin)(PT)および百日咳菌由来の繊維状赤血球凝集素(FHA)が含まれ、任意選択的に、パータクチンおよび/または凝集原2および3抗原との組み合わせも含まれる。
【0079】
黄色ブドウ球菌:黄色ブドウ球菌抗原には、非毒性組換え緑膿菌外毒素Aと任意選択的に接合した黄色ブドウ球菌5型および8型莢膜多糖類(StaphVAX(商標)など)または表面タンパク質由来の抗原、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞の貪食を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロテノイド、カタラーゼ産物、プロテインA、凝固酵素、凝固因子、および/または真核生物細胞膜を溶解する膜損傷毒素(任意選択的に解毒した)(ヘモリシン、ロイコトキシン、ロイコシジン)が含まれる。
【0080】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原には、粘液結合抗原(SAA)が含まれる。
【0081】
破傷風菌(破傷風):破傷風抗原には、本発明の組成物と接合した担体タンパク質として使用されることが好ましい破傷風トキソイド(TT)が含まれる。
【0082】
ジフテリア菌(Cornynebacterium diphtheriae)(ジフテリア):ジフテリア抗原には、好ましくは解毒されたジフテリア毒素(CRM197など)が含まれる。さらに、ADPリボシル化を調整するか、阻害するか、これに関連することができる抗原は、本発明の組成物との組み合わせ/同時投与/接合が意図される。担体タンパク質としてジフテリアトキソイドを使用することができる。
【0083】
インフルエンザ菌B(Hib):Hib抗原には、Hib糖類抗原が含まれる。
【0084】
緑膿菌:シュードモナス抗原には、内毒素A、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、より詳細にはPAO1から単離したLPS(O5血清型)、および/または外膜タンパク質(外膜タンパク質F(OprF)が含まれる)(Infect Immun.2001 May;69(5):3510−3515)が含まれる。
【0085】
レジオネラ・ニューモフィラ。細菌毒素は、レジオネラ・ニューモフィラに由来し得る。
【0086】
ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原には、WO02/34771号、WO03/093306号、WO04/041157号、またはWO2005/002619号で同定されたタンパク質抗原または糖類抗原(タンパク質GBS80、GBS104、GBS276、およびGBS322、ならびに血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VII、およびVIII由来の糖類抗原が含まれる)が含まれる。
【0087】
淋菌(Neiserria gonorrhoeae):ゴノレー抗原には、Por(すなわち、ポリン)タンパク質(PorB(Zhuら、Vaccine(2004)22:660-669を参照のこと)など)、トランスフェリン結合タンパク質(TbpAおよびTbpB(Priceら、Infection and Immunity(2004)71(1):277-283を参照のこと)など)、混濁タンパク質(opacity protein)(Opaなど)、還元修飾性タンパク質(reduction−modifiable protein)(Rmp)、および外膜小胞(OMV)調製物(Planteら、J Infectious Disease(2000)182:848-855を参照のこと、例えば、WO99/24578、WO99/36544、WO99/57280、WO02/079243も参照のこと)が含まれる。
【0088】
トラコーマクラミジア:トラコーマクラミジア抗原には、血清型A、B、Ba、およびC由来の抗原(トラコーマの作用因子、盲目の原因)、血清型L1、L2、およびL3由来の抗原(性病性リンパ肉芽腫症に関連)、および血清型DからK由来の抗原が含まれる。トラコーマクラミジア抗原には、WO00/37494号、WO03/049762号、WO03/068811号、またはWO05/002619号で同定された抗原(PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH−like(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、およびMurG(CT761)が含まれる)も含まれ得る。
【0089】
梅毒トレポネーマ(梅毒):梅毒抗原には、TmpA抗原が含まれる。
【0090】
軟性下疳菌(軟性下疳の原因菌):デュクレイ抗原には、外膜タンパク質(DsrA)が含まれる。
【0091】
フェカリス菌またはフェシウム菌:抗原には、米国特許第6,756,361号に記載の三糖類反復または他の腸球菌由来の抗原が含まれる。
【0092】
ピロリ菌:ピロリ菌抗原には、Cag、Vac、Nap、HopX、HopY、および/またはウレアーゼ抗原が含まれる。
【0093】
腐性ブドウ球菌:抗原には、腐性ブドウ球菌抗原の160kDa血球凝集素が含まれる。
【0094】
エンテロコリチカ菌抗原には、LPS(Infect Immun.2002 August;70(8):4414)が含まれる。
【0095】
大腸菌:大腸菌抗原は、毒素原性大腸菌(ETEC)、凝集付着性大腸菌(EAggEC)、びまん付着性大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、および/または腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。
【0096】
炭疽菌(炭疽病):炭疽菌抗原は任意選択的に解毒されており、A成分(致死因子(LF)および浮腫因子(EF))から選択することができ、その両方が、防御抗原(PA)として公知のB成分を共有することができる。
【0097】
ペスト菌(ペスト):ペスト抗原には、F1莢膜抗原(Infect Immun.2003 Jan;71(1)):374−383,LPS(Infect Immun.1999 Oct;67(10):5395)、ペスト菌V抗原(Infect Immun.1997 Nov;65(11):4476−4482)が含まれる。
【0098】
結核菌:結核抗原には、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、抗原85Bの融合タンパク質(Ag85B)および/または任意選択的にカチオン性脂質小胞中に配合されたESAT−6(Infect Immun.2004 October;72(10):6148)、結核菌(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原(Proc Natl Acad Sci USA.2004 Aug 24;101(34):12652)、および/またはMPT51抗原(Infect Immun.2004 July;72(7):3829)が含まれる。
【0099】
リケッチア属:抗原には、外膜タンパク質(外膜プロテインAおよび/またはB(OmpB)が含まれる)(Biochim Biophys Acta.2004 Nov 1;1702(2):145)、LPS、および表面タンパク質抗原(SPA)(J Autoimmun.1989 Jun;2 Suppl:81)が含まれる。
【0100】
リステリア菌。細菌抗原は、リステリア菌に由来し得る。
【0101】
クラミジア・ニューモニエ:抗原には、WO02/02606号で同定された抗原が含まれる。
【0102】
コレラ菌:抗原には、プロテイナーゼ抗原、LPS(特に、コレラ菌IIのリポ多糖類)、O1 Inaba O−特異的多糖類、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原(Infect Immun.2003 Oct;71(10):5498−504)、および/または閉鎖帯毒素(Zot)が含まれる。
【0103】
チフス菌(チフス熱):抗原には、莢膜多糖類、好ましくは抱合体(Vi、すなわち、vax−TyVi)が含まれる。
【0104】
ライム病ボレリア(ライム病):抗原には、リポタンパク質(OspA、OspB、OspC、およびOspDなど)、他の表面タンパク質(OspE関連タンパク質(Erps)など)、デコリン結合タンパク質(DbpAなど)、および抗原多様性VIタンパク質(P39およびP13に結合するタンパク質)(膜内在性タンパク質、Infect Immun.2001 May;69(5):3323−3334)、VlsE抗原変異タンパク質(J Clin Microbiol.1999 Dec;37(12):3997)など)が含まれる。
【0105】
ジンジバリス菌:抗原には、ジンジバリス菌外膜タンパク質(OMP)が含まれる。
【0106】
クレブシエラ属:抗原には、OMP(OMP Aが含まれる)または破傷風トキソイド任意選択的に接合した多糖類が含まれる。
【0107】
さらなる本発明の細菌抗原は、上記のいずれかの莢膜抗原、多糖類抗原、またはタンパク質抗原であり得る。さらなる細菌抗原には、外膜小胞(OMV)調製物も含まれ得る。さらに、抗原には、上記細菌のいずれかの生きたバージョン、弱毒化バージョン、および/または精製バージョンが含まれる。本発明の抗原は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌に由来し得る。本発明の抗原は、好気性菌または嫌気性菌に由来し得る。
【0108】
さらに、上記細菌由来糖類のいずれか(多糖類、LPS、LOS、またはオリゴ糖)を、別の作用因子または抗原(担体タンパク質(例えば、CRM197など))と接合することができる。かかる接合は、米国特許第5,360,897号およびCan J Biochem Cell Biol.1984 May;62(5):270−5に記載のタンパク質上のアミノ基への糖類上のカルボニル部分の還元的アミド化によって生じる直接的接合であり得る。あるいは、糖類を、リンカーを介して、Bioconjugate Techniques,1996およびCRC,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,1993に記載のスクシンアミドまたは他の結合などを介して接合することができる。
【0109】
B.ウイルス抗原
本発明での使用に適切なウイルス抗原には、不活化(または死滅)ウイルス、弱毒化ウイルス、スプリットウイルス処方物、精製サブユニット処方物、ウイルスから単離、精製、または由来することができるウイルスタンパク質、ウイルス様粒子(VLP)が含まれる。ウイルス抗原は、細胞培養物または他の基質上に増殖したウイルスに由来し得る。あるいは、ウイルス抗原を、組換え的に発現することができる。ウイルス抗原には、好ましくは、その生活環の少なくとも1段階に細菌表面に曝露されるエピトープが含まれる。細菌抗原は、好ましくは、複数の血清型または分離株で保存される。細菌抗原には、下記の1つまたは複数の細菌由来の抗原および以下で同定した特定の抗原例が含まれる。
【0110】
オルソミクソウイルス:ウイルス抗原は、オルソミクソウイルス(インフルエンザA型、B型、およびC型など)に由来し得る。オルソミクソウイルス抗原を、1つまたは複数のウイルスタンパク質(血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、核タンパク質(NP)、基質タンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)、1つまたは複数の転写酵素成分(PB1、PB2、およびPA)が含まれる)から選択することができる。好ましい抗原には、HAおよびNAが含まれる。
【0111】
インフルエンザ抗原は、世界的流行間期の(年間流行性)インフルエンザ株に由来し得る。あるいは、インフルエンザ抗原は、世界的流行およびその発生を引き起こす可能性のある株(すなわち、現在広まっている株における赤血球凝集素と比較して新規の赤血球凝集素を有するインフルエンザ株、トリ被験体中で病原性を示し、且つヒト集団において水平伝播する可能性があるインフルエンザ株、またはヒトに病原性を示すインフルエンザ株)に由来し得る。
【0112】
パラミクソウイルス科のウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス科のウイルス(ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、およびモルビリウイルス(麻疹)など)に由来し得る。
【0113】
ニューモウイルス:ウイルス抗原は、ニューモウイルス(呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスなど)に由来し得る。好ましくは、ニューモウイルスはRSVである。ニューモウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質(表面タンパク質(融合物(F)、糖タンパク質(G)、および小疎水性タンパク質(SH))、基質タンパク質MおよびM2、ヌクレオカプシドタンパク質N、P、およびLならびに非構造タンパク質NS1およびNS2が含まれる)から選択することができる。好ましいニューモウイルス抗原には、F、G、およびMが含まれる。例えば、J Gen Virol.2004 Nov;85(Pt11):3229)を参照のこと。ニューモウイルス抗原を、キメラウイルス中に配合するか、これに由来することができる。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含むことができる。
【0114】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラミクソウイルス(パラインフルエンザウイルス1型〜4型(PIV)、ムンプス、センダイウイルス、サルウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルス、およびニューカッスル病ウイルスなど)に由来し得る。好ましくは、パラミクソウイルスはPIVまたはムンプスである。パラミクソウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質から選択することができる:血球凝集素−ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、核タンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、巨大タンパク質(L)、および基質タンパク質(M)。好ましいパラミクソウイルスタンパク質には、HN、F1、およびF2が含まれる。パラミクソウイルス抗原を、キメラウイルス中に配合するか、これに由来することができる。例えば、キメラRSV/PIVウイルスは、RSVおよびPIVの両方の成分を含むことができる。市販のムンプスワクチンには、1価の形態または麻疹ワクチンおよび風疹ワクチン(MMR)と組み合わせた弱毒化生ムンプスウイルスが含まれる。
【0115】
モルビリウイルス:ウイルス抗原は、モルビリウイルス(麻疹ウイルスなど)に由来し得る。モルビリウイルス抗原を、1つまたは複数の以下のタンパク質から選択することができる:血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、巨大タンパク質(L)、核タンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)、および基質(M)。市販の麻疹ワクチンには、典型的にはムンプスおよび風疹(MMR)と組み合わせた弱毒化生麻疹ウイルスが含まれる。
【0116】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、ピコルナウイルス(エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、カルジオウイルス、およびアフトウイルスなど)に由来し得る。エンテロウイルス(ポリオウイルスなど)由来の抗原が好ましい。
【0117】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス(ポリオウイルス1型1、2型、または3型)、コクサッキーAウイルス1〜22型および24型、コクサッキーBウイルス1〜6型、エコーウイルス(ECHO)1〜9型、11〜27型、および29〜34型、ならびにエンテロウイルス68〜71など)に由来し得る。好ましくは、エンテロウイルスはポリオウイルスである。エンテロウイルス抗原は、好ましくは、1つまたは複数の以下のキャプシドタンパク質から選択される:VP1、VP2、VP3、およびVP4。市販のポリオワクチンには、不活化ポリオワクチン(IPV)および経口ポリオウイルスワクチン(OPV)が含まれる。
【0118】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパルナウイルス(A型肝炎ウイルス(HAV)など)に由来し得る。市販のHAVワクチンには、不活化HAVワクチンが含まれる。
【0119】
トガウイルス:ウイルス抗原は、トガウイルス(ルビウイルス、アルファウイルス、またはアルテリウイルスなど)に由来し得る。ルビウイルス(風疹ウイルスなど)由来の抗原が好ましい。トガウイルス抗原を、E1、E2、E3、C、NSP−1、NSPO−2、NSP−3、またはNSP−4から選択することができる。トガウイルス抗原を、好ましくは、E1、E2、またはE3から選択する。市販の風疹ワクチンには、典型的にはムンプスワクチンおよび麻疹ワクチン(MMR)と組み合わせた低温適応の生きたウイルスが含まれる。
【0120】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、フラビウイルス(ダニ媒介性脳炎(TBE)、デング熱(1、2、3、または4型)、黄熱病、日本脳炎、ウエストナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポワッサン脳炎など)に由来し得る。フラビウイルス抗原を、PrM、M、C、E、NS−1、NS−2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4b、およびNS5から選択することができる。フラビウイルス抗原を、好ましくは、PrM、M、およびEから選択する。市販のTBEワクチンには、不活化ウイルスワクチンが含まれる。
【0121】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ペスチウイルス(ウシウイルス性下痢(BVDV)、ブタコレラ(CSFV)、またはボーダー病(BDV)など)に由来し得る。
【0122】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、ヘパドナウイルス(B型肝炎ウイルスなど)に由来し得る。ヘパドナウイルス抗原を、表面抗原(L、M、およびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択することができる。市販のHBVワクチンには、表面抗原Sタンパク質を含むサブユニットワクチンが含まれる。
【0123】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原を、1つまたは複数のE1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345−コアポリタンパク質、コア、および/または非構造領域由来のペプチド(Houghtonら、Hepatology(1991)14:381)から選択することができる。
【0124】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、ラブドウイルス(リッサウイルス(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス(VSV)など)に由来し得る。ラブドウイルス抗原を、糖タンパク質(G)、核タンパク質(N)、巨大タンパク質(L)、非構造タンパク質(NS)から選択することができる。市販の狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞またはアカゲザル胎児肺細胞で成長した死滅ウイルスを含む。
【0125】
カリシウイルス科;ウイルス抗原は、カルシウイルス科(ノーウォークウイルスおよびノーウォーク様ウイルス(ハワイウイルスおよびスノーマウンテンウイルスなど)など)に由来し得る。
【0126】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、トリ伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)、およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原を、スパイク(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオカプシド(N)、および血球凝集素−エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択することができる。好ましくは、コロナウイルス抗原は、SARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は、WO04/92360号に記載されている。
【0127】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、レトロウイルス(オンコウイルス、レンチウイルス、またはスプーマウイルスなど)に由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV−1、HTLV−2、またはHTLV−5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV−1またはHIV−2に由来し得る。レトロウイルス抗原を、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpu、およびvprから選択することができる。HIV抗原を、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev vpu、ミニタンパク質(好ましくは、p55 gagおよびgp140v欠失)から選択することができる。HIV抗原は、1つまたは複数の以下の株に由来し得る:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4。
【0128】
レオウイルス:ウイルス抗原は、レオウイルス(オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルス、またはコルティウイルスなど)に由来し得る。レオウイルス抗原を、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2、もしくはσ3、または非構造タンパク質σNS、μNS、もしくはσ1sから選択することができる。好ましいレオウイルス抗原は、ロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原を、VP1、VP2、VP3、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4、またはNSP5から選択することができる。好ましいロタウイルス抗原には、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、およびVP7が含まれる。
【0129】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルス(パルボウイルスB19など)に由来し得る。パルボウイルス抗原を、VP−1、VP−2、VP−3、NS−1、およびNS−2から選択することができる。好ましくは、パルボウイルス抗原は、キャプシドタンパク質VP−2である。
【0130】
デルタ肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特に、HDV由来のδ−抗原(例えば、米国特許第5,378,814号を参照のこと)に由来し得る。
【0131】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原は、HEVに由来し得る。
【0132】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原は、HGVに由来し得る。
【0133】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、ヒトヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)、およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)など)に由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原を、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)、および後期タンパク質(γ)から選択することができる。HSV抗原は、HSV−1株またはHSV−2株に由来し得る。HSV抗原を、糖タンパク質gB、gC、gD、およびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(gC、gE、またはgI)から選択することができる。VZV抗原を、コアタンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、テグメントタンパク質、またはエンベロープタンパク質から選択することができる。弱毒化生VZVワクチンは市販されている。EBV抗原を、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスキャプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択することができる。CMV抗原を、キャプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(gBおよびgHなど)、およびテグメントタンパク質から選択することができる。
【0134】
パポーバウイルス:抗原は、パポーバウイルス(パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスなど)に由来し得る。パピローマウイルスには、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63、および65が含まれる。好ましくは、HPV抗原は、血清型6、11、16、または18に由来する。HPV抗原を、キャプシドタンパク質(L1)および(L2)またはE1〜E7、またはその融合物から選択することができる。HPV抗原を、好ましくは、ウイルス様粒子(VLP)に配合する。ポリオーマウイルス(Polyomyavirus)には、BKウイルスおよびJKウイルスが含まれる。ポリオーマウイルス抗原を、VP1、VP2、またはVP3から選択することができる。
【0135】
Vaccines,4th Edition(Plotkin and Orenstein ed.2004);Medical Microbiology 4th Edition(Murrayら、ed.2002);Virology,3rd Edition(W.K.Joklik ed.1988);Fundamental Virology,2nd Edition(B.N.Fields and D.M.Knipe,eds.1991)(本発明の組成物と併せて意図される)に含まれる抗原、組成物、方法、および微生物がさらに提供される。
【0136】
C.真菌抗原
本発明で用いる真菌抗原は、1つまたは複数の下記の真菌に由来し得る。
【0137】
真菌抗原は、皮膚糸状菌(Dermatophytres)(エピデルモフィトン・フロッコーサム(Epidermophyton floccusum)、ミクロスポルム・オドウィニ(Microsporum audouini)、ミクロスポルム・カニス(Microsporum canis)、ミクロスポルム・ディストルツム(Microsporum distortum)、ミクロスポルム・エクイヌム(Microsporum equinum)、ミクロスポルム・ジプスム(Microsporum gypsum)、ミクロスポルム・ナヌム(Microsporum nanum)、トリコフィトン・コンセントリクム(Trichophyton concentricum)、トリコフィトン・エクイヌム(Trichophyton equinum)、トリコフィトン・ガリネ(Trichophyton gallinae)、トリコフィトン・ジプセウム(Trichophyton gypseum)、トリコフィトン・メグニニ(Trichophyton megnini)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・キンケアヌム(Trichophyton quinckeanum)、トリコフィトン・ルブルム(Trichophyton rubrum)、トリコフィトン・シェーンレイニ(Trichophyton schoenleini)、トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)、トリコフィトン・ベルコスム(Trichophyton verrucosum)、T.ベルコスム・アルブム変種(T.verrucosum var.album)、ジスコイデス変種(var.discoides)、オクラセイム変種(var.ochraceum)、トリコフィトン・ビオラセウム(Trichophyton violaceum)、および/またはトリコフィトン・ファビホルメ(Trichophyton faviforme)が含まれる)に由来し得る。
【0138】
真菌病原体は、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、クロコウジカビ、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・シドウィ(Aspergillus sydowi)、アスペルギルス・フラバタス(Aspergillus flavatus)、アスペルギルス・グラウクス(Aspergillus glaucus)、ブラストシゾマイセス・カピタタス(Blastoschizomyces capitatus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・エノラーゼ(Candida enolase)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)、カンジダ・パラプシローシス(Candida parapsilosis)、カンジダ・ステラトイデア(Candida stellatoidea)、カンジダ・クセイ(Candida kusei)、カンジダ・パラクエセイ(Candida parakwsei)、カンジダ・ルシタニエ(Candida lusitaniae)、カンジダ・シュードトロピカリス(Candida pseudotropicalis)、カンジダ・グイリエルモンジ(Candida guilliermondi)、クラドスポリム・カリオニイ(Cladosporium carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマチディス(Blastomyces dermatidis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ゲオトリクム・クラバタム(Geotrichum clavatum)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、肺炎桿菌、南アメリカ分芽菌、ニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ピシウムン・インシジオスム(Pythiumn insidiosum)、ピチロスポルム・オバール(Pityrosporum ovale)、酵母(Sacharomyces cerevisae)、サッカロマイセス・ブラウディ、サッカロミセス・ポンベ(Saccharomyces pombe)、スケドスポリウム・アピオスペルム(Scedosporium apiosperum)、スポロトリクス・シェンキ(Sporothrix schenckii)、トリコスポロン・ベイゲリ(Trichosporon beigelii)、トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)、ペニシリウム・マルネフェイ(Penicillium marneffei)、マラセジア(Malassezia)属菌種、フォンセケア(Fonsecaea)属菌種、ワンギエラ(Wangiella)属菌種、スポロトリクス(Sporothrix)属菌種、バシジオボラス(Basidiobolus)属菌種、コニディオボラス(Conidiobolus)属菌種、リゾプス(Rhizopus)属菌種、ムコール(Mucor)属菌種、アブシディア(Absidia)属菌種、モルチエレラ(Mortierella)属菌種、クニンガメラ(Cunninghamella)属菌種、サクセネア(Saksenaea)属菌種、アルテルナリア(Alternaria)属菌種、カーブラリア(Curvularia)属菌種、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)属菌種、フザリウム(Fusarium)属菌種、アスペルギルス(Aspergillus)属菌種、ペニシリウム(Penicillium)属菌種、アモノリニア(Monolinia)属菌種、リゾクトニア(Rhizoctonia)属菌種、ペシロマイセス(Paecilomyces)属菌種、ピトマイセス(Pithomyces)属菌種、およびクラドスポリウム(Cladosporium)属菌種に由来し得る。
【0139】
真菌抗原の産生プロセスは、当該分野で周知である(米国特許第6,333,164号を参照のこと)。好ましい方法では、その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞から得ることができる不溶性画分から抽出および分離した可溶化画分を、プロセスが、生きた真菌細胞を得る工程;その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得る工程;その細胞壁が実質的に除去されているか少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させる工程;不溶性画分を得る工程;ならびに不溶性画分から可溶化画分を抽出および分離する工程を含むという点で特徴づけた。
【0140】
D.STD抗原
本発明の組成物は、1つまたは複数の性感染症(STD)由来の抗原を含むことができる。かかる抗原は、STD(クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(HCVなど)、陰部疣贅、淋病、梅毒、および/または軟性下疳など)を予防または治療することができる(WO00/15255号を参照のこと)。抗原は、1つまたは複数のウイルスまたは細菌のSTDに由来し得る。本発明で用いるウイルスSTD抗原は、例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および肝炎(HCV)に由来し得る。本発明で用いる細菌STD抗原は、例えば、淋菌、トラコーマクラミジア、梅毒トレポネーマ、軟性下疳菌、大腸菌、およびストレプトコッカス・アガラクチアに由来し得る。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0141】
E.呼吸器抗原
本発明の組成物は、呼吸器疾患を引き起こす病原体由来の1つまたは複数の抗原を含むことができる。例えば、呼吸器抗原は、呼吸器ウイルス(オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZV、およびコロナウイルス(SARS)など)に由来し得る。呼吸器抗原は、呼吸器疾患を引き起こす細菌(肺炎連鎖球菌、緑膿菌、百日咳菌、結核菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア・ニューモニエ、炭疽菌、およびカタル球菌など)に由来し得る。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0142】
F.小児ワクチン抗原
本発明の組成物は、小児被験体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。小児被験体は、典型的には、約3歳未満、約2歳未満、または約1歳未満である。小児抗原を、6ヶ月、1年、2年、または3年にわたって複数回投与することができる。小児抗原は、小児集団を標的することができるウイルスおよび/または小児集団が感染に感受性を示すウイルスに由来し得る。小児ウイルス抗原には、1つまたは複数のオルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、および水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来の抗原が含まれる。小児細菌抗原には、1つまたは複数の肺炎連鎖球菌、ナイセリア・メニンギティディス、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタル球菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B(Hib)、緑膿菌、ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)、および大腸菌由来の抗原が含まれる。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0143】
G.高齢者または免疫無防備状態の個体での使用に適切な抗原
本発明の組成物は、高齢者または免疫無防備状態の個体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。かかる個体に、より頻繁に、標的化抗原に対するその免疫応答を改良するためにより高い用量またはアジュバント化(adjuvanted)処方物でワクチン接種することが必要であり得る。高齢者または免疫無防備状態の個体での使用のために標的化することができる抗原には、1つまたは複数の以下の病原体由来の抗原が含まれる:ナイセリア・メニンギティディス、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、カタル球菌、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B(Hib)、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ、ストレプトコッカス・アガラクチア(B群連鎖球菌)、フェカリス菌、ピロリ菌、肺炎クラミジア(Clamydia pneumoniae)、オルソミクソウイルス(インフルエンザ)、ニューモウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよびムンプス)、モルビリウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)。これらの病原体由来の特異的抗原の例は、上に記載している。
【0144】
H.青年期ワクチンでの使用に適切な抗原
本発明の組成物は、青年期被験体での使用に適切な1つまたは複数の抗原を含むことができる。青年期は、以前に投与した小児ワクチンの追加免疫が必要であり得る。青年期での使用に適切であり得る小児抗原は、上に記載されている。さらに、性行為の開始前に防御免疫または治療的免疫を確実にするために、STD病原体由来の抗原を投与するために青年期を標的化することができる。青年期での使用に適切であり得るSTD抗原は、上に記載されている。
【0145】
I.抗原処方物
本発明の他の態様では、吸着抗原を有する微粒子の生成方法を提供する。本方法は、(a)(i)水、(ii)界面活性剤、(iii)有機溶媒、および(iv)ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、およびポリシアノアクリラートからなる群から選択される生分解性ポリマーを含む混合物の分散によって乳濁液を準備する工程を含む。ポリマーは、典型的には、有機溶媒と比較して約1%〜約3%の濃度の混合物で存在する一方で、界面活性剤は、典型的には、約0.00001:1〜約0.1:1(より典型的には、約0.0001:1〜約0.1:1、約0.001:1〜約0.1:1、または約0.005:1〜約0.1:1)の水:水、界面活性剤:ポリマー比で混合物中に存在する、準備する工程、(b)乳濁液から有機溶媒を除去する工程、および(c)微粒子表面上に抗原を吸着させる工程を含む。一定の実施形態では、生分解性ポリマーは、有機溶媒と比較して約3%〜約10%の濃度で存在する。
【0146】
本明細書中で使用するための微粒子を、滅菌可能で、非毒性を示し、生分解性を示す材料から形成するであろう。かかる材料には、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、PACA、およびポリシアノアクリラートが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明と共に使用するための微粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、特に、ポリ(ラクチド)(「PLA」)またはD,L−ラクチドとグリコリドまたはグリコール酸とのコポリマー(ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリドなど)(「PLG」または「PLGA」)、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンとのコポリマーに由来する。微粒子は、種々の分子量、PLGなどのコポリマーの場合、種々のラクチド:グリコリド比を有する任意の種々の重合開始材料に由来し得、その選択は、同時投与される高分子に一部依存して、多くの選択肢があるであろう。これらのパラメータは、以下により完全に考察されている。
【0147】
さらなる抗原には、外膜小胞(OMV)調製物も含まれ得る。
【0148】
さらなる処方方法および抗原(特に、腫瘍抗原)は、米国特許出願番号09/581,772号に記載されている。
【0149】
J.抗原についての引例
以下の引例は、本発明の組成物と併せて有用な抗原を含む。
【0150】
【化1】

【0151】
【化2】

上記で引用した全ての特許、特許出願、および学術論文の内容は、本明細書中で完全に記載されているかのように参考として援用される。
【0152】
糖類抗原または炭水化物抗原を使用する場合、好ましくは、この抗原を担体タンパク質と接合して免疫原性を増強する。Ramsayら(2001)Lancet357(9251):195−196;Lindberg(1999)Vaccine 17 Suppl 2:S28−36;Buttery & Moxon(2000)J R Coll Physicians Lond 34:163−168;Ahmad & Chapnick(1999)Infect Dis Clin North Am 13:113−133,vii;Goldblatt(1998)J.Med.Microbiol.47:563−567;欧州特許第0477508号;米国特許第5,306,492号;WO98/42721号;Conjugate Vaccines(eds.Cruseら)ISBN 3805549326、特に、vol.10:48−114;Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques ISBN:0123423368 or 012342335Xを参照のこと。好ましい担体タンパク質は、細菌毒素またはトキソイド(ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドなど)である。CRM197ジフテリアトキソイドが特に好ましい。
【0153】
他の担体ポリペプチドには、髄膜炎菌外膜タンパク質(EP−A−0372501号)、合成ペプチド(EP−A−0378881号およびEP−A0427347号)、熱ショックタンパク質(WO93/17712号およびWO94/03208号)、百日咳タンパク質(WO98/58668号およびEP A 0471177号)、インフルエンザ菌由来のタンパク質D(WO00/56360号)、サイトカイン(WO91/01146号)、リンホカイン、ホルモン、成長因子、C.difficile由来の毒素AまたはB(WO00/61761号)、鉄取り込みタンパク質(WO01/72337号)などが含まれる。混合物がセリグラフ(serigraph)AおよびCの両方由来の莢膜糖類を含む場合、MenA糖類:MenC糖類の比(w/w)は1を超える(例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、またはそれを超える)ことが好ましい場合がある。異なる糖類を、同型または異なる型の担体タンパク質に接合することができる。必要に応じて任意の適切なリンカーを使用した任意の適切な接合反応を使用することができる。
【0154】
必要に応じて、有毒タンパク質抗原を解毒することができる(例えば、化学的手段および/または遺伝子手段による百日咳毒素の解毒)。
【0155】
薬学的に許容可能な担体
本発明の組成物は、典型的には、上記成分に加えて、1つまたは複数の「薬学的に許容可能な担体」を含むであろう。これらには、担体自体が組成物を投与される個体に有害な抗体の産生を誘導しない任意の担体が含まれる。適切な担体は、典型的には、巨大でゆっくり代謝される高分子(タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(油滴またはリポソームなど)など)である。かかる担体は、当業者に周知である。組成物はまた、希釈剤(水、生理食塩水、グリセロールなど)を含むことができる。さらに、補助剤(湿潤剤または乳化剤およびpH緩衝物質など)が存在し得る。薬学的に許容可能な成分の徹底的な考察は、Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.20th ed.,ISBN:0683306472で得られる。
【0156】
免疫調節薬
アジュバント
本発明のワクチンを、他の免疫調節薬と併せて投与することができる。特に、組成物は、通常、アジュバントを含むであろう。本発明と共に使用するためのアジュバントには、1つまたは複数の下記のアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
A.ミネラル含有組成物
本発明でのアジュバンとしての使用に適切なミネラル含有組成物は、ミネラル塩(アルミニウム塩およびカルシウム塩など)を含む。本発明は、水酸化物(例えば、オキシヒドロキシド)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシホスフェート、オルトホスフェート)、硫酸塩などのミネラル塩(例えば、chapters8 & 9 of Vaccine Design…(1995)eds.Powell & Newman.ISBN:030644867X.Plenum.)または異なるミネラル化合物の混合物(例えば、リン酸塩アジュバントと水酸化物アジュバントとの混合物(任意選択的にリン酸塩が過剰))を含み、この化合物は任意の適切な形態(例えば、ゲル、血漿、無定形など)をとり、塩に吸着していることが好ましい。ミネラル含有組成物を、金属塩の粒子として処方することもできる(WO00/23105号)。
【0158】
アルミニウム塩を、Al3+の用量が0.2mg/用量と1.0mg/用量との間であるように本発明のワクチン中に含めることができる。
【0159】
1つの実施形態では、本発明で用いるアルミニウムベースのアジュバントは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO))またはミョウバン誘導体(リン酸緩衝剤中で抗原とミョウバンとを混合し、その後に滴定し、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基で沈殿させることによってインサイチュで形成したミョウバン誘導体など)である。
【0160】
本発明のワクチン処方で用いる別のアルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(Al(OH))または結晶オキシ水素化アルミニウム(AlOOH)(優れた吸着剤であり、表面積が約500m/gである)である。あるいは、リン酸アルミニウムアジュバント(AlPO)またはヒドロキシリン酸アルミニウム(水酸化アルミニウムアジュバントのいくつかまたは全てのヒドロキシル基の代わりにリン酸基を含む)を提供する。本明細書中で提供する好ましいリン酸アルミニウムアジュバントは無定形であり、酸性、塩基性、および中性の媒質中に可溶である。
【0161】
別の実施形態では、本発明のアジュバントは、リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムの両方を含む。そのより特定の実施形態では、アジュバントは、水酸化アルミニウムよりも大量のリン酸アルミニウムを有する(2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または9:1超などのリン酸アルミニウム:水酸化アルミニウムの重量比)。さらにより詳細には、ワクチン中のアルミニウム塩は、0.4〜1.0mg/ワクチン用量、0.4〜0.8mg/ワクチン用量、0.5〜0.7mg/ワクチン用量、または約0.6mg/ワクチン用量で存在する。
【0162】
一般に、好ましいアルミニウムベースのアジュバントまたは複数のアルミニウムベースのアジュバントの比率(リン酸アルミニウム:水酸化アルミニウムなど)を、抗原が所望のpHでアジュバントとして逆の電荷を有するように分子間の静電気引力を至適化することによって選択する。例えば、リン酸アルミニウムアジュバント(等電点=4)はリゾチームを吸着するが、pH7.4でアルブミンを吸着しない。アルブミンが標的である場合、水酸化アルミニウムアジュバントを選択するであろう(iep 11.4)。あるいは、リン酸塩での水酸化アルミニウムの前処理によってその等電点が低下し、より塩基性の高い抗原に好ましいアジュバントとなる。
【0163】
B.油性乳濁液
本発明でのアジュバントとしての使用に適切な油性乳濁液組成物には、スクアレン−水乳濁液(MF59(ミクロフルイダイザー(microfluidizer)を使用して、5%スクアレン、0.5%TWEEN(商標)80、および0.5%Span85をサブミクロン粒子に処方したもの)など)が含まれる。WO90/14837号を参照のこと。Podda,Vaccine(2001)19:2673−2680;Freyら、Vaccine(2003)21:4234−4237も参照のこと。MF59を、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス3価サブユニットワクチンにおけるアジュバントとして使用する。
【0164】
組成物中での使用に特に好ましいアジュバントは、サブミクロン水中油型乳濁液である。本明細書中での使用に好ましいサブミクロン水中油型乳濁液は、種々の量のMTP−PEを任意選択的に含むスクアレン/水乳濁液(4〜5% w/v スクアレン、0.25〜1.0% w/v TWEEN(商標)80□(ポリオキシエチレンソルビタン(polyoxyelthylenesorbitan)モノオレアート、および/または0.25〜1.0% SPAN 85(商標)(ソルビタントリオレアート)、および任意選択的にN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−ヒドロキシホスホホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含むサブミクロン水中油型乳濁液(例えば、「MF59」として公知のサブミクロン水中油型乳濁液(国際公開番号WO90/14837号;米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号、およびOttら、in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.and Newman,M.J.eds.)Plenum Press,New York,1995,pp.277−296))など)である。MF59は、4〜5% w/v スクアレン(例えば、4.3%)、0.25〜0.5% w/v TWEEN(商標)80、および0.5% w/v SPAN 85(商標)を含み、任意選択的に種々の量のMTP−PEを含み、これがModel 110Yミクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)などのミクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に処方されている。例えば、MTP−PEは、約0〜500μg/用量、より好ましくは0〜250μg/用量、最も好ましくは0〜100μg/用量で存在し得る。本明細書中で使用される場合、用語「MF59−0」は、MTP−PEを欠く上記サブミクロン水中油型乳濁液いう一方で、用語「MF59−MTP」は、MTP−PEを含む処方物を示す。例えば、「MF59−100」は、100μg MTP−PE/用量などを含む。MF69(本明細書中で用いる別のサブミクロン水中油型乳濁液)は、4.3% w/v スクアレン、0.25% w/v TWEEN(商標)80、および0.75% w/v SPAN 85(商標)、および任意選択的にMTP−PEを含む。さらに別のサブミクロン水中油型乳濁液は、SAFとしても公知のMF75であり、これは10%スクアレン、0.4% TWEEN(商標)80、5%プルロニックブロック重合体L121、およびthr−MDPを含み、サブミクロン乳濁液にミクロ流体化もされている。MF75−MTPは、MTP(100〜400μg MTP−PE/用量など)を含むMF75処方物を示す。
【0165】
組成物で用いるサブミクロン水中油型乳濁液、その作製方法、および免疫賦活剤(ムラミルペプチドなど)は、WO90/14837号および米国特許第6,299,884号および同第6,451,325号に詳述されている。
【0166】
フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。
【0167】
C.サポニン処方物
サポニン処方物を、本発明でアジュバンとして使用することもできる。サポニンは、ステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群であり、広範な植物種の樹皮、葉、幹、根、さらに花弁中で見出される。バラ科キラヤの幹から単離したサポニンは、アジュバンとして広く研究されている。スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ(sarsaprilla))、シュッコンカスミソウ(Gypsophilla paniculata)(ブライドベール(brides veil))、およびサボンソウ(ソープルート(soap root))由来のサポニンを購入することもできる。サポニンアジュバント処方物には、精製処方物(QS21など)および脂質処方物(ISCOMなど)が含まれる。
【0168】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィ(HP−TLC)および逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)を使用して精製されている。これらの技術を使用した特定の精製画分(QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−B、およびQH−Cが含まれる)が同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生成方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン処方物はまた、コレステロールなどのステロールを含むこともできる(WO96/33739号を参照のこと)。
【0169】
サポニンとコレステロールとの組み合わせを使用して、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる固有の粒子を形成することができる。ISCOMは、典型的には、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質も含む。任意の公知のサポニンを、ISCOMで使用することができる。好ましくは、ISCOMは、1つまたは複数のQuil A、QHA、およびQHCを含む。ISCOMは、EP0109942号、WO96/11711号、およびWO96/33739号にさらに記載されている。任意選択的に、ISCOMSは、さらなる界面活性剤を欠いていてもよい。WO00/07621号を参照のこと。
【0170】
サポニンベースのアジュバント開発の概説を、Barr,ら、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:247−271に見出すことができる。Sjolander,ら、Advanced Drug Delivery Reviews(1998)32:321−338も参照のこと。
【0171】
D.ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)を、本発明でアジュバントとして使用することもできる。これらの構造物は、一般に、任意選択的にリン脂質と組み合わせた、またはこれを用いて処方したウイルス由来の1つまたは複数のタンパク質を含む。これらは、一般に、非病原性で複製せず、一般に、任意の未変性のウイルスゲノムを含まない。ウイルスタンパク質を、組換え的に産生し、または全ウイルスから単離することができる。ビロソームまたはVLPでの使用に適切なこれらのウイルスタンパク質には、インフルエンザウイルス(HAまたはNA)、B型肝炎ウイルス(コアタンパク質またはキャプシドタンパク質)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビス・ウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(コートタンパク質など)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)由来のタンパク質が含まれる。VLPは、WO03/024480号、WO03/024481号、Niikuraら、Virology(2002)293:273−280;Lenzら、Journal of Immunology(2001)5246−5355;Pinto,ら、Journal of Infectious Diseases(2003)188:327−338;およびGerberら、Journal of Virology(2001)75(10):4752−4760でさらに考察されている。ビロソームは、例えば、Gluckら、Vaccine(2002)20:B10−B16でさらに考察されている。免疫増強する再構築されたインフルエンザビロソーム(IRIV)を、鼻腔内3価INFLEXAL(商標)製品(Mischler & Metcalfe(2002)Vaccine 20 Suppl 5:B17−23)およびINFLUVAC PLUS(商標)製品におけるサブユニット抗原送達系として使用する。
【0172】
E.細菌または微生物誘導体
本発明での使用に適切なアジュバントには、以下などの細菌または微生物誘導体が含まれる。
【0173】
(1)腸内細菌リポ多糖類(LPS)の非毒性誘導体
かかる誘導体には、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が含まれる。3dMPLは、3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aと4、5、または6アシル化鎖との混合物である。3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「小粒子」形態は、EP0689454号に開示されている。かかる3dMPLの「小粒子」は、0.22ミクロン膜で濾過滅菌するのに十分に小さい(EP0689454号)。他の非毒性LPS誘導体には、モノホスホリル脂質A模倣物(アミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体(例えば、RC529)など)が含まれる。Johnsonら(1999)Bioorg Med Chem Lett 9:2273−2278を参照のこと。
【0174】
(2)脂質A誘導体
脂質A誘導体には、大腸菌(OM−174)由来の脂質A誘導体が含まれる。OM−174は、例えば、Meraldiら、Vaccine(2003)21:2485−2491およびPajak,ら、Vaccine(2003)21:836−842に記載されている。
【0175】
(3)免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明でのアジュバントとしての使用に適切な免疫刺激性オリゴヌクレオチドには、CpGモチーフ(非メチル化シトシンの後にグアノシンを含み、リン酸結合によって結合した配列)を含むヌクレオチド配列が含まれる。回分配列またはポリ(dG)配列を含む細菌二本鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドも免疫刺激性を示すことが示されている。
【0176】
CpGは、ホスホロチオアート修飾物などのヌクレオチド修飾物/アナログが含まれ得、二本鎖または一本鎖であり得る。任意選択的に、グアノシンを、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンなどのアナログと置換することができる。可能なアナログ置換の例については、Kandimalla,ら、Nucleic Acids Research(2003)31(9):2393−2400;WO02/26757号およびWO99/62923号を参照のこと。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg,Nature Medicine(2003)9(7):831−835;McCluskie,ら、FEMS Immunology and Medical Microbiology(2002)32:179−185;WO98/40100号;米国特許第6,207,646号;米国特許第6,239,116号および米国特許第6,429,199号でさらに考察されている。
【0177】
CpG配列を、TLR9(モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなど)に指向することができる。Kandimalla,ら、Biochemical Society Transactions(2003)31(part 3):654−658を参照のこと。CpG配列は、Th1免疫応答の誘導に特異的であり得るか(CpG−A ODNなど)、B細胞応答の誘導により特異的であり得る(CpG−B ODNなど)。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、Blackwell,ら、J.Immunol.(2003)170(8):4061−4068;Krieg,TRENDS in Immunology(2002)23(2):64−65およびWO01/95935号で考察されている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0178】
好ましくは、5’末端が受容体認識のために接近することができるようにCpGオリゴヌクレオチドを構築する。任意選択的に、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列をその3’末端で結合して、「イムノマー」を形成することができる。例えば、Kandimalla,ら、BBRC(2003)306:948−953;Kandimalla,ら、Biochemical Society Transactions(2003)31(part 3):664−658;Bhagatら、BBRC(2003)300:853−861、およびWO03/035836号を参照のこと。
【0179】
(4)ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体
細菌ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体を、本発明でアジュバントとして使用することができる。好ましくは、タンパク質は、大腸菌(すなわち、大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(「LT」)、コレラ菌(「CT」)、または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての解毒ADP−リボシル化毒素の使用は、WO95/17211号に記載されており、非経口アジュバントとしてはWO98/42375号に記載されている。好ましくは、アジュバントは、解毒LT変異体(LT−K63、LT−R72、およびLTR192Gなど)である。ADP−リボシル化毒素およびその解毒誘導体(特に、LT−K63およびLT−R72)のアジュバントとしての使用を、以下の参考文献で見出すことができる:Beignon,ら、Infection and Immunity(2002)70(6):3012−3019;Pizza,ら、Vaccine(2001)19:2534−2541;Pizza,ら、Int.J.Med.Microbiol(2000)290(4−5):455−461;Scharton−Kerstenら、Infection and Immunity(2000)68(9):5306−5313;Ryanら、Infection and Immunity(1999)67(12):6270−6280;Partidosら、Immunol.Lett.(1999)67(3):209−216;Peppoloniら、Vaccines(2003)2(2):285−293;およびPineら、(2002)J.Control Release(2002)85(1−3):263−270。アミノ酸置換についての数値の基準は、好ましくは、Domenighiniら、Mol.Microbiol(1995)15(6):1165−1167に記載のADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0180】
F.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤を、本発明でアジュバンとして使用することもできる。適切な生体接着剤には、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフィア(Singhら(2001)J.Cont.Rele.70:267−276)または粘膜接着剤(ポリアクリル酸の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖類、およびカルボキシメチルセルロースなど)が含まれる。キトサンおよびその誘導体を、本発明でアジュバンとして使用することもできる。WO99/27960を参照のこと。
【0181】
G.微粒子
微粒子を、本発明でアジュバンとして使用することもできる。微粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)を、生分解性且つ非毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトンなど)(ポリ(ラクチドコグリコリド)が好ましい)から形成し、任意選択的に、負電荷の表面(例えば、SDS)または正電荷の表面(例えば、CTABなどの陽イオン性界面活性剤)を有するように処理する。
【0182】
H.リポソーム
アジュバンとしての使用に適切なリポソーム処方物の例は、米国特許第6,090,406号、米国特許第5,916,588号、および欧州特許第0626169号に記載されている。
【0183】
I.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明での使用に適切なアジュバントには、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルが含まれる。WO99/52549号。かかる処方物には、さらに、オクトキシノール(WO01/21207)と組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤および少なくとも1つのさらなる非イオン性界面活性剤(オクトキシノールなど)と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(WO01/21152号)が含まれる。
【0184】
好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(laureth 9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0185】
J.ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば、Andrianovら、“Preparation of hydrogel microspheres by coacervation of aqueous polyphophazene solutions”,Biomaterials(1998)19(1−3):109−115 and Payneら、“Protein Release from Polyphosphazene Matrices”,Adv.Drug.Delivery Review(1998)31(3):185−196に記載されている。
【0186】
K.ムラミルペプチド
本発明でのアジュバンとしての使用に適切なムラミルペプチドの例には、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびNアセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が含まれる。
【0187】
L.イミダゾキノリン化合物
本発明でのアジュバンとしての使用に適切なイミダゾキノリン化合物の例には、イミキモドおよびそのアナログが含まれ、Stanley,Clin Exp Dermatol(2002)27(7):571−577;Jones,Curr Opin Investig Drugs(2003)4(2):214−218;米国特許第4,689,338号、同第5,389,640号、同第5,268,376号、同第4,929,624号、同第5,266,575号、同第5,352,784号、同第5,494,916号、同第5,482,936号、同第5,346,905号、同第5,395,937号、同第5,238,944号、および同第5,525,612号にさらに記載されている。
【0188】
M.チオセミカルバゾン化合物
チオセミカルバゾン化合物、ならびに本発明でのアジュバンとしての使用に適切な全ての化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法の例には、WO04/60308号に記載のものが含まれる。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激で特に有効である。
【0189】
N.トリプタントリン化合物
トリプタントリン化合物、ならびに本発明でのアジュバンとしての使用に適切な全ての化合物の処方、製造、およびスクリーニング方法の例には、WO04/64759号に記載のものが含まれる。トリプタントリン化合物は、TNF−αなどのサイトカインの産生のためのヒト末梢血単核球の刺激で特に有効である。
【0190】
本発明はまた、上記で同定した1つまたは複数のアジュバントの態様の組み合わせを含むこともできる。例えば、以下のアジュバント組成物を、本発明で使用することができる。
【0191】
(1)サポニンおよび水中油型乳濁液(WO99/11241号);
(2)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)(WO94/00153号を参照のこと);
(3)サポニン(例えば、QS21)+非毒性LPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;
(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL12(任意選択的に、+ステロール)(WO98/57659号);
(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油型乳濁液との組み合わせ(欧州特許出願第0835318号、0735898号、および0761231号を参照のこと);
(6)10%スクアラン、0.4%Tween80、5%プロニック−ブロック重合体L121、およびthr−MDPを含み、サブミクロン乳濁液にミクロ流体化されているか、ボルテックスしてより大きな粒子サイズの乳濁液を生成したSAF。
【0192】
(7)2%スクアレン、0.2%Tween80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコラート(TDM)、および細胞壁骨格(CWS)(好ましくは、MPL+CWS(DETOX(商標))からなる群から選択される1つまたは複数の細菌細胞壁成分を含むRIBI(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem);および
(8)1つまたは複数のミネラル塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(3dPMLなど)。
【0193】
(9)1つまたは複数のミネラル塩(アルミニウム塩など)+免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)。
【0194】
O.ヒト免疫調節薬
本発明でアジュバントとしての使用に適切なヒト免疫調節薬には、サイトカイン(インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子など)が含まれる。
【0195】
アルミニウム塩およびMF59は、注射用インフルエンザワクチンとの使用に好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着剤は、粘膜由来ワクチン(経鼻用ワクチンなど)との使用に好ましいアジュバントである。
【0196】
上記で引用した全ての特許、特許出願、および学術論文の内容は、本明細書中で完全に記載されているかのように参考により組み込まれる。
【0197】
治療方法
本発明は、上記組成物を使用してSLO抗原に対する免疫応答を誘導または増大させる方法を提供する。免疫応答は、好ましくは防御的であり、抗体および/または細胞−媒介性免疫(全身免疫および粘膜免疫が含まれる)が含まれ得る。免疫応答には、ブースター免疫が含まれる。抗体を含む組成物を使用して、化膿連鎖球菌感染を治療することができる。
【0198】
十代および小児(よちよち歩きの子どもおよび乳児が含まれる)に、予防的用途でワクチンを投与することができ、治療用ワクチンを、典型的には、十代または成人に投与する。小児使用を意図するワクチンを、例えば、安全性、投薬量、免疫原性などを評価する目的で成人に投与することもできる。
【0199】
本発明によって防止または治療することができる化膿連鎖球菌に起因する疾患には、咽頭炎(連鎖球菌性咽喉痛など)、猩紅熱、膿痂疹、丹毒、蜂巣炎、敗血、中毒性ショック症候群、壊死性筋膜炎、および後遺症(リウマチ熱および急性糸球体腎炎など)が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、他の連鎖球菌(例えば、GBS)に対しても有効であり得る。
【0200】
免疫応答の有効性を決定する試験
治療上の処置の有効性を評価する1つの方法は、本発明の組成物の投与後にGAS感染をモニタリングすることを含む。予防的治療の有効性を評価する1つの方法は、組成物の投与後に本発明の組成物におけるSLO抗原に対する免疫応答をモニタリングすることを含む。
【0201】
本発明の免疫原性組成物の成分タンパク質の免疫原性を評価する別の方法は、組換え的にタンパク質を発現し、免疫ブロットによって患者の血清または粘膜分泌物をスクリーニングすることである。タンパク質と患者の血清との間の陽性反応は、患者が問題のタンパク質に対する免疫応答を事前に開始していることを示す(すなわち、タンパク質が免疫原である)。この方法を使用して、免疫優性タンパク質および/またはエピトープを同定することもできる。
【0202】
治療上の処置の有効性の別のチェック方法は、本発明の組成物の投与後のGAS感染のモニタリングを含む。予防的治療の有効性の1つのチェック方法は、組成物の投与後に本発明の組成物におけるSLO抗原に対する全身(IgG1およびIgG2a産生レベルのモニタリングなど)および粘膜(IgA産生レベルのモニタリングなど)の両方の免疫応答をモニタリングすることを含む。典型的には、血清特異的抗体応答を免疫化後であるが攻撃誘発前に決定するのに対して、粘膜特異的抗体応答を免疫後且つ攻撃誘発後に決定する。
【0203】
本発明のワクチン組成物を、宿主(例えば、ヒト)投与前にインビトロおよびインビボ動物モデルで評価することができる。特に有用なマウスモデルには、腹腔内免疫化後に腹腔内攻撃誘発または鼻腔内攻撃誘発を行うマウスモデルが含まれる。
【0204】
本発明の免疫原性組成物の有効性を、GAS感染の動物モデル(例えば、モルモットまたはマウス)を免疫原性組成物で攻撃誘発することによってインビボで決定することもできる。免疫原性組成物は、攻撃誘発血清型と同一の血清型に由来しても由来しなくても良い。好ましくは、免疫原性組成物は、攻撃誘発血清型と同一の血清型に由来する。より好ましくは、免疫原性組成物および/または攻撃誘発血清型は、M1、M3、M23、および/またはその組み合わせからなるGAS血清型群に由来する。
【0205】
インビボ有効性モデルには、以下が含まれるが、これらに限定されない:(i)ヒトGAS血清型を使用したマウス感染モデル、(ii)マウス適合GAS株(特にマウスに病原性を示すM23株など)を使用したマウスモデルであるマウス疾患モデル、および(iii)ヒトGAS分離株を使用した霊長類モデル。
【0206】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答の一方または両方であり得る。免疫応答は、免疫応答の改良、増強、または変化であり得る。免疫応答は、全身免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であり得る。好ましくは、免疫応答は、全身および/または粘膜の応答の増強である。
【0207】
全身免疫および/または粘膜免疫の増強は、TH1免疫応答および/またはTH2免疫応答の増強を反映している。好ましくは、免疫応答の増強には、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgA産生の増加が含まれる。
【0208】
好ましくは、粘膜免疫応答はTH2免疫応答である。好ましくは、粘膜免疫応答には、IgA産生の増加が含まれる。
【0209】
活性化TH2細胞は抗体産生を増強し、それにより、細胞外感染に対する応答で有益である。活性化TH2細胞は、1つまたは複数のIL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10を分泌することができる。TH2免疫応答により、さらなる防御のためにIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞を産生することができる。
【0210】
TH2免疫応答には、TH2免疫応答に関連する1つまたは複数のサイトカイン(IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10など)の増加またはIgG1、IgE、IgA、および記憶B細胞産生の増加の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、TH2免疫応答の増強には、IgG1産生の増加が含まれるであろう。
【0211】
TH1免疫応答には、CTLlの増加、TH1免疫応答に関連する1つまたは複数のサイトカイン(IL−2、IFNγ、およびTNFβなど)の増加、活性化マクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2a産生の増加の1つまたは複数が含まれ得る。好ましくは、TH1免疫応答の増強には、IgG2a産生の増加が含まれるであろう。
【0212】
本発明の免疫原性組成物、特に、1つまたは複数の本発明のSLO抗原を含む免疫原性組成物を、任意選択的にTh1および/またはTh2応答を誘発することができる免疫調節薬と共に、単独または他のGAS抗原と組み合わせて使用することができる。
【0213】
本発明はまた、1つまたは複数の免疫調節薬(ミネラル塩(アルミニウム塩など)など)およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む免疫原性組成物を含む。最も好ましくは、免疫原性組成物には、アルミニウム塩およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドの両方を含む。あるいは、免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素(解毒ADPリボシル化毒素など)およびCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドを含む。好ましくは、1つまたは複数の免疫調節薬は、アジュバントを含む。アジュバントを、以下にさらに考察されたTH1アジュバントおよびTH2アジュバントからなる群の1つまたは複数から選択することができる。
【0214】
本発明の組成物は、好ましくは、GAS感染に有効に対処するために、細胞媒介性免疫および体液性免疫応答の両方を誘発するであろう。この免疫応答は、好ましくは、長期継続(例えば、中和)抗体および1つまたは複数のGAS抗原に曝露した場合に迅速に応答することができる細胞媒介性免疫を惹起するであろう。
【0215】
1つの特に好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、中和抗体応答を誘発する1つまたは複数のSLO抗原および細胞媒介性免疫応答を誘発する1つまたは複数のSLO抗原を含む。このようにして、中和抗体応答は、最初のGAS感染を防止または阻害する一方で、増強されたTh1細胞応答を誘発することができる細胞媒介性免疫応答はGAS感染のさらなる拡大を防止する。
【0216】
本発明の組成物を、一般に、患者に直接投与するであろう。本発明の組成物を、種々の異なる経路を介して単独または組成物の一部として投与することができる。一定の組成物は、より有効な免疫応答、好ましくはCMI応答が得られるか、副作用を誘導する可能性が低いか、投与がより容易になるように一定の経路を好み得る。
【0217】
送達方法には、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、または間質注射)、直腸、経口(例えば、錠剤、スプレー)、膣、局所、経皮(例えば、WO99/27961号を参照のこと)、経皮(例えば、WO02/074244号およびWO02/064162号を参照のこと)、鼻腔内(例えば、WO03/028760号を参照のこと)、眼球、耳、および肺、または他の粘膜投与が含まれる。
【0218】
一例として、本発明の組成物を、全身経路、粘膜経路、または経皮経路を開始して投与することができるか、特定の組織に直接投与することができる。本明細書中で使用される場合、用語「全身投与」には、任意の非経口投与経路が含まれるが、これらに限定されない。特に、非経口投与には、皮下、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、または胸骨内注射、静脈内、動脈内、または腎臓透析注入技術が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、全身非経口投与は筋肉内注射である。本明細書中で使用される場合、用語「粘膜投与」には、経口、鼻腔内、膣内、直腸内、気管内、腸、および眼投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0219】
投薬治療は、単回投与計画または複数回投与計画であり得る。複数回投与を、初回免疫計画および/または追加免疫計画で使用することができる。複数回投与計画では、同一または異なる経路(例えば、非経口初回刺激および粘膜追加免疫、粘膜初回刺激および非経口追加免疫など)によって種々の回収で投与することができる。
【0220】
本発明の組成物を、種々の形態で調製することができる。例えば、組成物を、溶液または懸濁液のいずれかとして注射可能な組成物として調製することができる。注射前に溶液、懸濁液、または液体ビヒクルにするのに適切な固体形態(例えば、凍結乾燥組成物)を調製することもできる。経口投与のための組成物(錠剤もしくはカプセル、スプレーとして、またはシロップ(任意選択的に、風味づけする)としてなど)を調製することができる。肺投与のための組成物を、例えば、微粉またはスプレーを使用した吸入器として調製することができる。組成物を、座剤またはペッサリーとして調製することができる。鼻、耳、または眼への投与のための組成物を、例えば、点滴薬として調製することができる。組成物は、患者への投与直前に組み合わせた組成物を再構成するようにデザインされたキット形態であり得る。かかるキットは、液体形態の1つまたは複数のSLOまたは他の抗原および1つまたは複数の凍結乾燥抗原を含むことができる。
【0221】
ワクチンとして使用した免疫原性組成物は、免疫学的有効量のSLOまたは他の抗原(または抗原をコードする核酸分子)または抗体、ならびに、必要に応じて、抗生物質などの任意の他の成分を含む。「免疫学的有効量」は、単回用量または一連の投与の一部として個体に投与した場合に測定可能な免疫応答を増加させるか臨床症状を防止または減少させる量である。
【0222】
本発明の免疫原性組成物を、抗生物質治療計画と組み合わせて投与することができる。1つの実施形態では、抗生物質を、本発明の抗原または1つまたは複数の本発明のSLO抗原を含む組成物の投与前に投与する。
【0223】
別の実施形態では、抗生物質を、1つまたは複数の本発明の表面曝露および/または表面結合SLO抗原または1つまたは複数の本発明の表面曝露および/または表面結合SLO抗原を含む組成物の投与後に投与する。GAS感染治療での使用に適切な抗生物質の例には、ペニシリンもしくはその誘導体またはクリンダマイシン、セファロスポリン、糖ペプチド(例えば、バンコマイシン)、およびシクロセリンが含まれるが、これらに限定されない。
【0224】
しかし、組成物中の活性剤の量は、治療を受ける個体の健康状態および生理的状態、年齢、治療を受ける個体の分類群(例えば、非ヒト霊長類、霊長類など)、個体の免疫系が抗体を合成する能力、所望の防御の程度、ワクチンの処方、治療を行う医師の医学的状況の評価、および他の関連要因に応じて変化する。この量は比較的広範であり、日常的試験によって決定することができる。
キット
本発明はまた、本発明の1つまたは複数の容器を含むキットを提供する。組成物は、個別の抗原と同様に、液体形態であり得るか凍結乾燥させることができる。組成物に適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器を、種々の材料(ガラスまたはプラスチックが含まれる)から形成することができる。容器は、滅菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内注射用溶液のバッグまたは皮下注射針によって突き刺すことができるストッパを有するバイアルであり得る)。
【0225】
キットは、さらに、薬学的に許容可能な緩衝剤(リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液、またはデキストロース溶液など)を含む第2の容器を含む。キットはまた、末端利用者に有用な他の材料(他の緩衝剤、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジが含まれる)を含むことができる。キットはまた、別の活性剤(例えば、抗生物質)を含む第2または第3の容器を含むことができる。
【0226】
キットはまた、化膿連鎖球菌に対する免疫の誘導方法または化膿連鎖球菌感染の治療方法についての書面での指示を含む添付文書を含むことができる。添付文書は、未承認の添付文書であり得るか、食品医薬品局(FDA)または他の規制機関によって承認された添付文書であり得る。
【0227】
本開示で引用した全ての特許、特許出願、および引例は、特に、本明細書中で参考として援用される。上記開示は、一般に、本発明を説明する。以下の特定の実施例を参照して、本発明をより完全に理解することができる。これらの実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【実施例】
【0228】
(実施例1)
ウエルシュ菌由来のパーフリンゴリシンO単量体の三次元結晶構造は、X線結晶学を使用して、4つのLシートリッチドメインから構成される細長い分子として最近記載されている。そのうちのたった1つ(C末端ドメイン4)は、アミノ酸一次配列内で近接している(図1を参照のこと)。図2に示すように、GAS25は、このタンパク質と相同である。
【0229】
ウエルシュ菌パーフリンゴリシンOとのタンパク質配列相同性に基づいて、SLO中の4つのドメインを予想することができ、これらのドメインは、図3に示すスキームに示す一次配列にそって分布している。
【0230】
「ペプチド1」(36−QNTASTETTTTNEQPKPESSELTTEK−61;配列番号1)、「ペプチド2」(155−NINTTPVDISIIDSVTDR−172;配列番号4)、および「ペプチド3」(450−TEYVETTSTEY−460;配列番号3)を、SF370−M1(pep1およびpep2)株および3650−M6(pep3)株におけるsurfome分析によって同定した。図3でペプチドに黒色の下線を引いている。
【0231】
(実施例2)
異なるタンパク質領域のクローニングおよび発現
ペプチド1は、100個のアミノ酸−非構造化アミノ末端タンパク質領域中に存在するようである一方で、ペプチド2およびペプチド3はほとんど完全に不連続ドメイン2中に含まれる。この構造予測に基づいて、異なるタンパク質のクローニングおよび発現を計画した。1つのタンパク質領域にペプチド1のみを含めた。別のタンパク質領域に、ペプチド2およびペプチド3の両方(「ペプチド2+3」)を含めた。これらは一次構造中で連続しないタンパク質ストレッチの連結が必要である。後者の融合を、2つのペプチドを含めるドメインの構造をできるだけ保存することができる方法で計画した(図4を参照のこと)。この結果を得る可能性を高めるために、イソロイシン165をプロリン残基と置換し、これにより、構造の曲がりを好むことが予想される一方で、天然に存在するグリシン445残基は、2つの融合領域の間のリンカーとして機能すると予想された。第3のタンパク質領域に、ペプチド1、ペプチド2、およびペプチド3を含めた(「ペプチド1+2+3」)。この場合、グリシン残基をペプチド1とペプチド2および3との間に「ex novoで」挿入した。ペプチド2中のI165P置換を維持した。
【0232】
(実施例3)
HisまたはGST融合物としてのSLOタンパク質フラグメントのクローニングおよび発現
図5に示すように、SLOタンパク質フラグメントを、His融合物として発現した。図6に示すように、SLOタンパク質フラグメントをGST融合物として発現した。
【0233】
(実施例4)
GAS25 6XhisフラグメントのMALDI−TOF分析
3つのGAS SLOフラグメントの6xhis融合物のPAGE分析により、推定分子量の組換えポリペプチドと実際の分子量の組換えポリペプチドとの間の矛盾が証明された(図15)。推定分子量(MW)が9,300.1ダルトンであるペプチド1の実際のMWは約25,000ダルトンである。ペプチド2+3の推定MWは10,277ダルトンであるが、実際のMWは15,000〜16,000ダルトンである。ペプチド1+2+3の推定MWは18,370ダルトンであり、実際のMWは約30,000ダルトンである。したがって、3つのポリペプチドを、MALDI−TOF分析に供し、推定分子量を確認した。結果を図16〜20に示す。
【0234】
図16は、溶液中のペプチド1のMALDI−TOF分析を示す。9170,226のピークは、Met残基を含まないペプチドに相当する(9300ダルトン-131ダルトンのMet=9170ダルトン)。他のピークは、装置の較正のために使用したマーカーに相当する。第2のアミノ酸が小さく且つ疎水性を示す場合、大腸菌中に発現したタンパク質のN末端のMet残基の除去は非常に一般的である。
【0235】
図17は、溶液中のペプチド2+3のMALDI−TOF分析を示す。10097,523のピークは、Met残基を含まないペプチド2+3に相当する(10,227ダルトン−131ダルトンのMet=10,096ダルトン)。他のピークは、装置の較正のために使用したマーカーに相当する。
【0236】
図18は、トリプシンで消化したペプチド2+3のMALDI−TOF分析を示す。トリプシンで消化したタンパク質は、各ペプチドに特徴的なピークプロフィールを示す(フィンガープリンティング)。各ピークは、消化タンパク質のフラグメントに相当する。トリプシンで消化したペプチド2+3は、以下の特徴的なピークを示す。
【0237】
・1,090.549 aa 22〜30
・1,218.637 aa 22〜31およびaa 21〜30
・1,659.847 aa 6〜20
・2,025.968 aa 34〜52
・2,154.129 aa 33〜52
・2,282.229 aa 35〜52
・2,770.448 aa 68〜90
図19は、溶液中のペプチド1+2+3のMALDI−TOF分析を示す。18,236.998のピークは、Met残基を含まないペプチド1+2+3ペプチドに相当する。(18,370ダルトン−131ダルトンのMet=18,239ダルトン)。他のピークは、分解産物または大腸菌夾雑物のいずれかである。
【0238】
図20は、トリプシンで消化したペプチド1+2+3のMALDI−TOF分析を示す。フィンガープリンティング技術により、以下のペプチド1+2+3に属する多数のピークが明らかとなった。
【0239】
・1090.542 aa 96〜104
・1247.550 aa 80〜90
・1695.641 aa 127〜141
・1932,830 aa 73〜90
・2025.859 aa 108〜126
・2153.924 aa 107〜126
・2852.121 aa 8〜33 。
【0240】
(実施例5)
インビボ防御実験
マウスを、異なるSLOフラグメントで免疫化し、GASのM1株で攻撃誘発した。0、21、および35日目に、10〜20匹のマウス群を20mgの組換えタンパク質で免疫化した。ネガティブコントロール群のマウスを、使用したGAS組換えタンパク質のバージョンに応じて、GSTのみまたは大腸菌夾雑物のいずれかで免疫化した。第3の免疫化から2週間後に血液サンプルを採取した。その数日後、免疫化したマウスを、108cfu(50ml)のM1 GAS株(3348株)で鼻腔内に攻撃誘発した。マウスの生存を、10〜14日間モニタリングし、ネガティブコントロール群の生存と比較した。異なる群から得た免疫血清を、全SLO組換えタンパク質を使用して免疫原性について試験した(ウェスタンブロット分析)。
【0241】
結果を、表1に示す。これらの結果は、SLOフラグメントを免疫原として使用した場合、GAS感染から防御することを示す。
【0242】
表1
【0243】
【表1】

25_1 his(配列番号8);25_2 his(配列番号10);25_tot his(配列番号12);25_1 GST(配列番号14);25_2 GST(配列番号16);および25_tot(配列番号18)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)以下:
(i)配列番号1;
(ii)配列番号2;
(iii)配列番号3;
(iv)配列番号3に共有結合した配列番号2;
(v)(1)配列番号1;(2)配列番号1のアミノ酸配列に共有結合したグリシン残基;(3)該グリシンに共有結合した配列番号2のアミノ酸配列;および(4)配列番号2のアミノ酸配列に共有結合した配列番号3のアミノ酸配列から本質的になるアミノ酸配列;
(vi)配列番号8;
(vii)配列番号10;
(vii)配列番号10のアミノ酸2〜82;
(viii)配列番号12;
(ix)配列番号12のアミノ酸4〜156;
(x)配列番号14;
(xi)配列番号16;および
(xii)配列番号18;
からなる群から選択されるアミノ酸配列から本質的になる、非毒性である化膿連鎖球菌ストレプトリシンO(SLO)抗原;
(b)該SLO抗原をコードする核酸分子;ならびに
(c)該SLO抗原に特異的に結合する抗体
からなる群から選択される活性剤を含む組成物。
【請求項2】
前記活性剤が前記SLO抗原であり、該SLO抗原が単量体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
GAS40抗原をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
GAS57抗原をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
小児ワクチンで有用な抗原をさらに含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
高齢者または免疫無防備状態の個体のためのワクチンで有用な抗原をさらに含む、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
アジュバントをさらに含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性剤が前記SLO抗原であり、該SLO抗原が担体タンパク質にカップリングされている、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記担体タンパク質が、細菌毒素、細菌トキソイド、髄膜炎菌外膜タンパク質、熱ショックタンパク質、百日咳タンパク質、インフルエンザ菌タンパク質D、サイトカイン、リンホカイン、ホルモン、成長因子、C.difficile毒素A、C.difficile毒素B、および鉄取り込みタンパク質からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の活性剤を薬学的に許容可能な担体と組み合わせる工程を含む、化膿連鎖球菌に対する免疫を惹起するためのワクチンの作製方法であって、活性剤がSLO抗原または核酸分子である、方法。
【請求項11】
前記活性剤が前記SLO抗原であり、該SLO抗原を:
(a)該SLO抗原をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を培養する工程;および
(b)該SLO抗原を回収する工程
を含む方法によって作製する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
活性剤がSLO抗原または核酸分子である、有効量の請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の組成物を個体に投与する工程を含む、化膿連鎖球菌に対する免疫を惹起する方法。
【請求項13】
活性剤が抗体である、有効量の請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の組成物を個体に投与する工程を含む、化膿連鎖球菌感染の治療方法。
【請求項14】
活性剤がSLO抗原または核酸分子である、化膿連鎖球菌感染に対する免疫を惹起するための薬物の製造における請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の活性剤の使用。
【請求項15】
活性剤が抗体である、化膿連鎖球菌感染を治療する薬物の製造における請求項1、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、または請求項7のいずれか1項に記載の活性剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−508276(P2010−508276A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534694(P2009−534694)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/022838
【国際公開番号】WO2008/108830
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509122418)ノバルティス アーゲー (1)
【Fターム(参考)】