区分ステッチング適合アルゴリズムによる心肺蘇生中の正確なECG測定装置および方法
【課題】心肺蘇生(CPR)誘発の信号アーチファクトを、検知信号からリアルタイムフィルタリングすべくPSAA(区分ステッチング適合アルゴリズム)を利用する。
【解決手段】PSAAは、第2信号に高度に相関する第1信号に存在するアーチファクト成分を推定する。PSAAは、第1信号と第2信号にて信号試料窓を測定すべく、自己相関と相互相関を利用し得る。PSAAは、1次信号とアーチファクト信号の間で測定した相関関係に基づき、1次信号セグメントの信号アーチファクトを推定し得る。PSAAは、1次信号から推定信号アーチファクトを除去し得る。アーチファクト信号が不存在の場合、PSAAは、フィルタを利用して第1信号のアーチファクトを推定できる。PSAAは、自動体外式除細動器、モニタ除細動器またはECG信号とCPR信号など、高度に相関性がある信号の検知装置に実装され得る。
【解決手段】PSAAは、第2信号に高度に相関する第1信号に存在するアーチファクト成分を推定する。PSAAは、第1信号と第2信号にて信号試料窓を測定すべく、自己相関と相互相関を利用し得る。PSAAは、1次信号とアーチファクト信号の間で測定した相関関係に基づき、1次信号セグメントの信号アーチファクトを推定し得る。PSAAは、1次信号から推定信号アーチファクトを除去し得る。アーチファクト信号が不存在の場合、PSAAは、フィルタを利用して第1信号のアーチファクトを推定できる。PSAAは、自動体外式除細動器、モニタ除細動器またはECG信号とCPR信号など、高度に相関性がある信号の検知装置に実装され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して心電図(ECG)信号を処理するシステム、方法、および装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、心肺蘇生(CPR)に起因するECG信号におけるアーチファクトを適応的除去するシステム、方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心停止事故の減少に役立つように自動体外式除細動器(AED)が開発されてから、ほぼ20年が過ぎた。その期間にAEDは、たとえば事務所、ショッピングセンタ、スタジアム、および通行人の往来が激しい他の場所など公共の地域に広く普及するようになってきた。AEDは、心臓事象の極めて重要な初期段階において以前は救助が受けられなかった公共の場での心臓緊急状態中に医療救助を提供する権限を市民に与えている。特に近年は、心室性不整脈と非ショック性上室性不整脈を正確に検出することができる完全自動体外式除細動器が、付添者のいない患者を治療すべく開発された(たとえば特許文献1参照)。これらの装置は、心室性不整脈を患う患者を治療し、リアルタイムでのショック性不整脈の検出において高い感受性と特異性を有する。更にAEDは、病院において治療を自動的に提供できる診断監視装置として働くように開発されている(たとえば特許文献2参照)。
【0003】
AED分野における発達に加えて、人間生理学と医療との関連性を理解する上で幾つかの進歩があった。医学研究におけるこれらの進歩は、身体外傷事故の対処における新しいプロトコルと標準操作手順の開発をもたらした。たとえば除細動のパブリックアクセスプロトコルにおいて、最近のガイドラインは、AEDの使用と共に心肺蘇生(CPR)の必要性を強調してきた。実際に、最近の米国心臓協会(AHA)の心肺蘇生と緊急心血管医療のガイドラインは、AEDがショック性調律を検出し、その後、救助者に直ちに圧迫を回復させるように促すことによって、緊急事態対応プロトコルに組込まれ得ると示唆している(たとえば非特許文献1参照)。更にガイドラインは、具体的には患者の再評価によって保留圧迫数を減らすと共に、経験のある医療専門家への効率的な転送を確保する方向に救助者を更に再教育するか支援するAEDが開発され得ると解説している。独自の研究と共にガイドラインは、AED装置の提案使用法として、CPRと共に、除細動を伴う包括的な方法をもたらした。
【0004】
現行のAEDは、除細動を提供する間、ガイドラインによって推奨されるようなAEDの現行提案使用方法の実行において機能しない。今日利用可能な大部分のAEDは、心室調律の分類を試みる。具体的には、現行のAEDは、ショック性心室調律と、非ショック性の他の全ての調律との間を識別しようとする。心室調律のこの検出と分析は、ECG波形のリアルタイム分析を必要とする。従って、AEDの機能性、精度、および速度は、ECG波形のリアルタイム分析に利用されるアルゴリズムとハードウエアに大きく依存する。
【0005】
多くの実装において、アルゴリズムは、心拍数計算と、特許文献1と特許文献3において開示されるように、ECG波形因子と不規則性のようなECG波形から得られた様々な形態的特徴とに依存する。更に十分な処理能力を提供するために、現行のAEDは通常、マイクロコントローラ内にアルゴリズムと制御論理を組込む。
【0006】
現行のアルゴリズムと特殊なハードウエアの実装は、AEDの有効性に及ぼす深刻な影響を有し得ることが知られている。具体的には、ECG信号の信号対ノイズ比は、AED
性能に大きく作用する。たとえば救助活動中、多くの現行AEDに実装されたアルゴリズムは、検知心室調律を分類すべく、数秒間のクリーンなECG信号データを必要とする。救助者が、1分当たり100サイクルに近い規定の速度で胸部圧迫と弛緩を適用し得る心肺蘇生中に、そのようなクリーン信号データを得る機会は、有意に減る。実際には、胸部圧迫と弛緩は、ECG記録において有意な動きアーチファクトを発生させる。更にECG信号は、心室性不整脈事象中、貧弱な振幅を示し、更に信号対ノイズ比を下げるので、低品質または使用に適さない信号が生じることが多い。これらの状態において、既存の不整脈認識アルゴリズムは、適切に機能しないかもしれず、被災者を危険に晒す。
【0007】
ECG電極とアナログフロントエンド回路の設計を変えることによって、感覚性アーチファクトの作用を減らす試みがなされてきた。1つの設計は、ECG増幅器において高域カットオフすべく低域カットオフ周波数を実行する。他の設計は、アーチファクトをある程度回避しようと試みるべく、同相除去比(CMRR)が非常に高い差動増幅器を利用する。しかし、これらの設計において、デジタル論理とアルゴリズムを用いて任意のアーチファクトを除去するために、デジタル領域において良質の信号を取込むことが必須である。これは、主としてアナログからデジタルへの変換中の飽和効果を受けて低下した信号品質を現在周知の技術を用いて回復できないという事実による。
【0008】
電極の設計に加えて、現行アルゴリズムは、CPRの現行の基準と実践下でのアーチファクトのフィルタリングに効果が無い。本課題のうちの1つは、CPR圧迫サイクル中にもかかわらずショック性心臓調律を同定することと、非ショック性/回復調律をリアルタイムで同定することである。心停止状態は、重要な測定基準なので、別の課題は、心停止を正確に検出することである。ECG信号を乱れさせ得るCPRアーチファクトの同定と除去を行う種々の方法が、提案されてきた。たとえば特許文献4は、アーチファクトを除去しようとして基準信号を利用する。特許文献5は、基準信号と共に、心臓系の動作に関する前提に依存するアルゴリズムを提供する。特許文献6は、CPR活動の指標としてと、基準信号を提供するためとに多数のセンサを用いる。特許文献4は、ECGセグメントにおけるCPRアーチファクトの存在を同定すべく、CPR活動を示す基準信号を利用する。特許文献7は、有意な患者の動きを同定するため経胸腔インピーダンス測定を利用することを開示している。特許文献8は、ECG信号上のノイズ効果を推定すべく複数のECGリードを利用することを記載している。特許文献9は、線形予測フィルタリングと再帰的最小二乗法を用いてシステムを同定する周波数領域法を開示している。幾つかの最近の研究において、遅延基準信号に関する適応回帰に基づくECGフィルタリングの別法が紹介された(たとえば非特許文献2参照)。CRPアーチファクト検出とフィルタリングの更に別の方法は、異常を除去すべく、基準信号の代わりに周波数変調を利用することに重点を置いている(たとえば非特許文献3参照)参照)。対応状況において治療を実施する他の開示方法は、CPR活動の検出と測定に重点を置き、CPR圧迫の深度と存在を推定すべく胸部圧迫検出器(たとえば特許文献10参照)または加速度計(たとえば特許文献11参照)を利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,474,574号明細書
【特許文献2】米国特許第6,658,290号明細書
【特許文献3】米国特許第6,480,734号明細書
【特許文献4】米国特許第6,961,612号明細書
【特許文献5】米国特許第7,039,457号明細書
【特許文献6】米国特許第6,807,442号明細書
【特許文献7】国際公開第2006/015348号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,704,365号明細書
【特許文献9】米国特許第7,295,871号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1859770号明細書
【特許文献11】米国特許第7,122,014号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】心肺蘇生と緊急心血管治療の米国心臓協会ガイドライン(American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care)、(米国)、IV−36、米国心臓協会(American Heart Association,Inc.)、2005年。
【非特許文献2】ラインベルガー(Rheinberger)ら、「カルマン法を用いる心室細動ECG信号由来の蘇生アーチファクトの除去(Removal of resuscitation artifacts from ventricular fibrillation ECG signals using kalman methods)」、(米国)、Computers in Cardiology,2005年。
【非特許文献3】アラメンジ(Aramendi)ら、「心肺蘇生アーチファクト存在下での心室細動の検出(Detection of ventricular fibrillation in the presence of cardiopulmonary resuscitation artifacts)」、(米国)、Resuscitation、2007年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらのプラットフォームまたは方法は全て、最近の米国心臓協会CPRガイドラインに従って、リアルタイム治療を提供するとき、制限や問題がある。従って、様々なECGセグメントにわたって効果的であり、計算コストが低く、更にリアルタイムに近い分析とフィルタリングを示す、ECG信号からCPRアーチファクトをフィルタリングする方法と装置、従ってショック性状態と非ショック性状態を判定すべくクリーンな信号を可能にする方法と装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の種々の実施形態は、検知ECG信号から信号アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングする方法と装置を開示する。種々の実施形態は、ECG信号から信号アーチファクトをフィルタリングすべく、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する装置または自動化方法を有する。種々の実施形態は、たとえば特別に設計されたコンピュータプロセッサまたはマイクロプロセッサなどのコンピュータハードウエアにおいて区分ステッチング適合アルゴリズムを実装する。他の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムを非揮発性コンピュータアクセス可能なメモリに記憶する。種々の実施形態において、ハードウエアは、生理的信号を検知するセンサに接続される。特定の実施形態において、センサのうちの1つは、ECG信号を検知する。他の実施形態において他のセンサは、アーチファクト信号を検知する。アーチファクト信号は、CPR圧迫信号、血液動態信号、またはECG信号においてアーチファクトを生じさせ得る更に別の生理的機能を反映する他の信号であり得る。更にCPRアーチファクトの代表的信号は、超音波、光検出、およびアーチファクトの物理的原因を示し得る心弾動図のような検知技術を用いることによって獲得されることが可能である。
【0013】
次に前記方法と装置は、ECG信号とアーチファクト信号から信号試料窓を選択することによって、ECG信号からアーチファクト信号によって生じるアーチファクトを除去すべく、区分ステッチング適合アルゴリズムを実行し得る。次に1次信号セグメントと2次信号セグメントは、ECG信号とアーチファクト信号から生じ得る。次に1次信号セグメントと2次信号セグメントの間の関係が測定され得る。これは、測定された関係に基づき1次信号における信号アーチファクトの推定を可能にし得る。最終的に、種々の実施形態は、1次信号セグメントから推定信号アーチファクトを除去し得る。
【0014】
種々の実施形態において、調律分析アルゴリズムを利用することによって、ショック性ECG調律を同定し得る。これは、本方法とシステムが、たとえば自動体外式除細動器(AED)などの医療装置において利用できるようにし得る。調律分析アルゴリズムは、最近の操作、診療、およびCPRのガイドラインに適合する生命維持治療の実施を可能にし得る。
【0015】
種々の実施形態において、本方法と装置は、アーチファクト信号が検知されると、アーチファクトフィルタリングプロセスを実行するだけでフィルタリングと検知を最適化することになる。このようにして、治療の適用に必要な電力と待ち時間が減少する。他の実施形態において、信号試料窓は、ECG信号とアーチファクト信号の間の時間遅延に依存して均一な大きさと不均一な大きさの信号試料窓におけるECG信号とアーチファクト信号から選択される。従って、本方法と装置は、知覚欠損による検知の遅延と、生理機能の差から生じる遅延とを処理し得る。特定の実施形態において、ECGとアーチファクト信号における信号セグメントの開始時間と終了時間は、匹敵することになる。他の実施形態において、ECG信号とアーチファクト信号の試料窓の開始時間と終了時間は、適合インデキシングまたはセグメント別回帰法を利用することによって、決定されることになる。
【0016】
種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、シフト自己相関計算を用いることによってECG信号とアーチファクト信号の間の位相リードまたは位相ラグを推定することになる。次にこれらの推定は、更なる信号試料窓の選択において将来使用すべくメモリに記憶され得る。種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、1次信号セグメントと2次信号セグメントに重みを適用する重付法を利用した。特定の実施形態において、全セグメントは、均等に重付けられる。他の実施形態において、中央セグメント重付けは、より大きな重みを中央信号セグメントに提供すべく、利用される。
【0017】
種々の実施形態において、本方法と装置は、他の生理的過程を示す他の信号において生じたアーチファクトを検知し得る。従って、特定の実施形態においてアーチファクト信号は、血液動態活動の尺度である。更に本方法と装置は、アーチファクト信号の提供において1次信号に関して受動フィルタリングか能動フィルタリングを利用し得る。従って、特定の実施形態においてECG信号は、アーチファクト信号を提供すべく、帯域フィルタを用いることによってフィルタリングされる。これらの実施形態において、本方法と装置は、信号アーチファクトをフィルタリングするために、1つの検知信号だけを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動体外式除細動器の略図。
【図2】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する自動体外式除細動器の略図。
【図3】本発明の一実施形態に従って、コンボリューションを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムのグラフ。
【図4】本発明の一実施形態に従って、コンボリューションを利用する区分ステッチングアルゴリズムの演算を示すフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態に従って、回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムのグラフ。
【図6】本発明の一実施形態に従って、回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムの演算を示すフローチャート。
【図7】本発明の一実施形態に従って、可変窓回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムのグラフ。
【図8A】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8B】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8C】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8D】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図9】本発明の一実施形態に従って、除細動器に組込まれた区分ステッチングアルゴリズムの略図。
【図10A】CPRアーチファクトで損傷した心室頻拍波形のグラフ。
【図10B】破損とノイズ波形のグラフ。
【図10C】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチングアルゴリズムを利用して回復された心室頻拍波形のグラフ。
【図11】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する自動体外式除細動器の略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
背景において述べたように、幾つかのアルゴリズムは、心肺蘇生と緊急心臓血管治療の改訂AHAガイドラインに合わそうとして現行のAEDにおいて実装されてきた。1実装は、適応フィルタ技術であり、この技術は、図1において提供されるようなアルゴリズムを組込むAEDの全般的結線図に関連付けて本明細書において簡単に概説される。
【0020】
適応フィルタは、幾つかのアルゴリズムを利用して実装され得るが、最小二乗法(LMS)アルゴリズム、およびその導関数がほとんどの場合に利用される。LMS適応フィルタにおいて、平均二乗費用関数(つまり)ζ=E[e2(n)]が仮定される。次に適応フィルタは、最急勾配アルゴリズムを用いることによって、瞬時二乗誤差、ζ(n)を最小化する。このアルゴリズムは、刻み幅μで負の勾配方向に係数ベクトルを更新する。たとえばFIR適応フィルタの場合、以下のようになる。
【0021】
w(n+I)=w(n)−μ2.N’ζ(n) (A)
式中、重みw(n)は、試料ごとに調整されることが可能である。多くの適合アルゴリズムにおいて利用される別のアルゴリズムは、再帰的最小二乗法(RLS)アルゴリズムである。RLSアルゴリズムにおいて、費用関数は、次式で与えられる。
【0022】
【数1】
計算的に重み{w(n)}の値の更新は、LMSとRLSに基づく両適応フィルタに対して試料ごとに行われなければならない。これらの計算は、非常にコストがかかり、多重計算が更新ごとに必要とされる。更に窓ごとに全ての試料に行われている計算を調整する方法は無い。加えて、適合アルゴリズムは、整定時間を有し、最小誤差出力または有用信号(ノイズが除去された)の整定時間は、数秒かかる。整定時間はまた、重みの初期値と、RLSアルゴリズムのパラメータλとLMSアルゴリズムの刻み幅μとに依存する。
【0023】
CPRアーチファクト除去問題において、ECG信号とCPR信号の時変性は、適応過程に複雑性をもたらす。ECG信号は、心室頻拍(VT)から心室細動(VF)、振幅の小さい心室細動、および心停止まで様々である。更に回復信号はまた、心停止から振幅の小さな心室細動、心室頻拍、上室性頻拍(SVT)など様々である。これらの波形全ての
周波数と振幅は、それら自体内の波形内で巨大な変動を示す。これらの変動に加えて、たとえば圧迫と膨張などのCPRアーチファクトは、救助者間、同様にCPRの特定サイクル中に広範囲に変動する。更に圧迫と膨張の実際の振幅は、大きく変動する。本質的に、CPRアーチファクトに一致する心室信号の変動性は、適応フィルタの整定を妨害するので、この方法を実装する装置の演算能力を低下させる。
【0024】
今日あるこの適応フィルタ技術の能力と不足を考慮して、次に本発明の実施形態を記載する。
他の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズム(PSAA)を用いるECG信号のノイズを除去する解決策を提供する。種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、検知心室信号を効率的に分析とクリーンにするために、区分回帰法と区分デコンボリューション法の少なくとも一方を利用し得る。
【0025】
種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、CPR活動を測定する装置から受信された基準信号を利用する。これらの実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムが全てのCPR活動の基線か基準を有するようにする。前記CPRの基線か基準を用いることによって、次にCPR活動を検知ECGに相関させることが可能である。CPR信号を得るのに利用される獲得手法、つまり供給源、試料採取技術、フィルタリング方法とセンサは、何がECG信号を得るのに利用されるかを反映する。たとえば共通モードECGは、CPR活動の固有表現を保証するために、CPR基準信号の測定に利用され得る。同じ技法を利用することによって、CPR基準信号は、ECG信号基準と1対1でマッピングされ得る。それによって、ECGデータとCPRデータの瞬時相関が生じる。他の実施形態は、機械的加速、速度、または距離測定の検知から生成される基準信号を利用し得る。しかし、これらの別の基準信号の利用において、精度は、ECGの基準信号とアーチファクト成分の間の可能な因果関係のため下降し得る。従って、実施形態は、精度を押し上げるべく、時系列ECGと共に時系列CPR基準信号を利用し得る。
【0026】
CPR基準信号とECG信号の測定において同じ手法を利用することによって、精度が押し上げられるが、それでも検知信号は、試料フレーム内に1対1で整列しないかもしれない。これは、部分的に、種々の身体組織を通る機械的信号または電気的信号の伝播のためであり得る。たとえば筋肉細胞を通って伝導することによって、信号に変形が生じ得る。他の状況において、ECG信号とCPR信号の検知に利用される方法は、知覚装置または他のシステム要件に差があるため僅かに異なり得る。しかし僅かであるが、これらの差はまた、遅延を導入し得るので、1対1の相関関係が欠如する。種々の実施形態は、CPR信号とECG信号の間の関係の測定を支援すべく、コンボリューション関数か伝達関数を利用し得る。これは、1つの時系列の多数試料を他の時系列の多数試料と相互に関連付けられるようにする。たとえばECG信号のアーチファクト成分における1つより多くの試料のセグメントは、CPR基準信号における類似大のセグメントに関連付けられることが可能である。確立されると、CPR基準信号とECG信号の間の関係を利用することによって、ECG信号からアーチファクトを除去し得る。種々の実施形態において、瞬時偏析アルゴリズムとデコンボリューションアルゴリズムは共に、ECG信号からCPRアーチファクトを除去するのに利用される。
【0027】
本発明を理解するため、ECGとCPRのシグナリングにおける種々の信号と全てにかかわる原理の幾つかの考察を討議しなければならない。これらの原理とこれらの原理がどのように関連するかを理解すると、本発明の種々の実施形態が更に明確に理解され得る。
【0028】
たとえばECG信号、ECG信号に作用を及ぼすアーチファクト成分信号、および基準信号などの信号は、確率論的またはランダム信号であると考えられる。そのような信号は、任意に再生されることができない。確率論的信号を表わす主要な統計学的パラメータは
、その平均値、分散、および自己共分散である。
【0029】
実際の信号処理または時系列の推定は、信号がエルゴード性を示す場合にのみ可能である。確率論的信号は、その統計学的特性全てが、それぞれ実現された十分に大きな有限長から推定され得る場合、エルゴード信号であると定義される。エルゴード信号に関して、実現の長さが無限まで進むと、時間平均は、極限において期待値演算子によって得られたアンサンブル平均に等しい。
【0030】
実エルゴード信号に対して推定公式を以下に示す。
【0031】
【数2】
上記の限界演算の代わりに有限和が、以下に示されるように用いられることが可能である。
【0032】
【数3】
ランダム信号に対しては、自己相関、または自己共分散関数は、極めて重要な役割を果たす。仮に、ecg信号{ecg(n)}が、{s(n)}と{r(n)}の重ね合わせからできている場合({s(n)}は、クリーン信号成分を表わす。{r(n)}は、ランダムノイズ成分である)、その自己相関は、以下のように表わされることが可能である。
【0033】
E{ecg[n]ecg[n+l]}=E{(s[n]+r[n])(s[n+l]+r[n+l])}
=E{s[n]s[n+l]}+E{s[n]r[n+l]}+E{r[n]s[n+l]}+E{r[n]r[n+l]} (7) 。
{ecg[n]}と{r[n]}は、相関しないので、式(7)は、以下のように縮小する。
【0034】
E{ecg[n]ecg[n+l]}=E{s[n]s[n+l]}+σ2r
(8) 。
従って、自己相関は、信号内容を保存するが、多くの実践場面においてランダム非相関ノイズをdc成分に限定する。従って、自己相関と相互相関は、ランダム信号特性と、別の信号とのその相互作用を分析すべく、ランダム信号推定課題において用いられる。これは、ランダム信号特性を分析と推定すべく生信号を用いるよりも優れている。
【0035】
これを承知すれば、本明細書において記載される本発明を明確に理解することが可能である。心肺蘇生(CPR)中の観測ECG信号を{y(n)}と仮定しよう。前記{y(n)}は、前述のECG信号成分{ecg(n)}と、非相関広域帯ノイズ{N1(n)}とに加えてアーチファクト成分{a1(n)}の組合せから構成される。CPR活動を示すCPR基準信号を{x(n)}とする。数学的に、この関係は、以下のように表わされることが可能である。
【0036】
{y(n)}={ecg(n)}+{a1(n)}+{N1(n)} 。
{x(n)}={b(n)}+{a2(n)}+{N2(n)} (9) 。
上記のように、種々の実施形態において、{y(n)}は、自動体外式除細動器電極から記録される場合に観測されたECG信号を指し、{ecg(n)}は、真のECG成分を示し、{a1(n)}は、CPRが実行される場合に観測されるECGに認められるアーチファクト成分を示す。{N1(n)}と{N2(n)}は、任意の電子センサシステムにおいて常に存在する非相関広域帯ノイズを示す。CPRが実行されない場合、アーチファクト成分{a1(n)}は、ゼロのはずである。他の実施形態において、{x(n)}は、CPR活動を示すCPR基準信号を示す。前記{x(n)}は、全状況においてゼロに非常に近接すべき基線活動成分{b(n)}、CPRセンサによって記録された実アーチファクト信号{a2(n)}、および非相関広域帯ノイズ{N2(n)}から構成される。種々の実施形態において{x(n)}は、CPR活動が生じない場合、ゼロである。従って、種々の実施形態において、アーチファクト{a1(n)}は、{x(n)}を用いることによって{y(n)}において推定され、除去されるので、クリーンなECG信号{ecg(n)}が生じる。
【0037】
種々の実施形態における更なる制約は、時間領域における演算全体の実装を制限することである。データを多数の小さな窓にウインドウイングすることによって、リアルタイムアルゴリズムを実装する機会が提供されるので、AEDがライブ救助作業においてこの分析を実行できるようにする。
【0038】
E|x(n)xT(n)|=Rxx(0)=xの自己相関と
E|x(n)yT(n)|=Rxy(0)=yとx間の相互相関 (10) 。
更に上記の2つの関係を展開すると、以下の関係になる。
【0039】
【数4】
つまり、上記の計算は、自己相関(ACS)と相互相関(CCS)数列に導く計算の部分集合である。
【0040】
【数5】
種々の実施形態は、CPR基準信号{x(n)}を観測ECG信号{y(n)}に関連付ける、インパルス応答{h[n]}の安定な線形時不変系(LTI)離散時間系を利用する。これらの実施形態は、以下の式によって入力−出力関係を定義する。
【0041】
【数6】
更に、方程式(12)において定義されるようなACSが即時計算の範囲内で公知であるという仮説が、これらの実施形態において立てられる。仮説の結果は、方程式(12)において示されるようなCCSであり、以下のように計算される。
【0042】
【数7】
(14)に(13)を代入すると、以下の方程式が得られる。
【0043】
【数8】
種々の実施形態において長さNの因果的有限長インパルス応答と方程式(15)が、以下のように縮小すると考えるのが現実的である。
【0044】
【数9】
このようにして、ACSとCCS、rxx[l]とryx[l]の両方が計算される。次に、ACSとCCSが与えられると、システム同定またはインパルス応答推定が実行される。
【0045】
種々の実施形態において、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}のインパルス応答試料{h[n]}を計算する再帰的関係は、ACS{rxx[l]}とCCS{ryx[l]}の間のインパルス応答試料{h[n]}の結果と同じものとして与えられる。ACSとCCSを利用することによって、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}の利用時と同じ情報が提供されるが、観測ECG信号{y[n]}に及ぼす非相関ノイズの影響を減らす追加利点も有する。
【0046】
以下の再帰的計算は、ACS{rxx[l]}とCCS{ryx[l]}の値からインパルス応答試料{h[n]}を計算するのに役立つ。
【0047】
【数10】
従って、アーチファクト{a1[n]}は、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}の間の関係から推定または再構築される。次に、アーチファクトは、方程式(9)で示されるモデルにおいて示されるように、クリーンECG信号{ecg[n]}を得るべく、観測ECG信号{y[n]}から差引かれる。
【0048】
種々の実施形態において、CPRによる推定アーチファクトの除去後、重複ウインドウイングを用いることによって、連続出力信号{ecg[n]}をもたらす。正確な重複セグメントが、同定され得ると共に、インパルス応答{hi[n]},{hi+1[n]}などのための寄与が、評価される。適切な重付けは、中間出力、つまり再構成アーチファクト成分{a1[n]}における急上昇が存在しないことを保証する。
【0049】
図2を参照すると、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用するシステム200の実施形態が示される。種々の実施形態において、システムは、ECG信号204を受信するECGモニタ202を利用し得る。ECGモニタ202は、身体上に設置されたセンサ由来のECG信号204を監視または記録し得る。ECGモニタ202は、更に処理すべく、ECG信号204を分析し得ると共に調整し得る。更にECGモニタ202は、たとえばCPR圧迫など、行われている付加的処置のために存在する異常またはアーチファクトを同定し得る。種々の実施形態は、CPR信号208を分析するCPRモニタ206を有することになる。CPR信号208は、実行されているCPR活動の独立した指標を提供し得る。更にCPRモニタ206は、更に処理すべくCPR信号204を調整し得る。次にシステム200は、区分ステッチング適合アルゴリズムが必要とされるかどうかを判定すべく決定論理210を利用し得る。CPR信号208が存在すると論理210が判定すると、区分ステッチング適合アルゴリズム212を初期化し、呼び出すことになる。次に区分ステッチング適合アルゴリズム212は、ECG信号204とCPR信号208を取
得し、ECG信号204からCPR信号208を除去することによって、CPRアーチファクトのないECG信号214を提供することになる。次にECG信号214は、たとえば不整脈検出アルゴリズム216など、システム200の他のアルゴリズムに転送され得る。特定の実施形態において、CPR信号208が存在しない場合、論理210は、区分ステッチング適合アルゴリズム212を初期化することはなく、システム200は、たとえば不整脈検出アルゴリズム216などの他のアルゴリズムにECG信号204を直接転送することになる。
【0050】
他の実施形態は、様々な1次信号と2次信号を検知し得る。前記2次信号は、1次信号に付加的データまたは信号入力を提供すると共に、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用することによって、選択的に除去またはフィルタリングされる。たとえば負荷ECG検査機における動きアーチファクト、ECGと負荷ECG検査機における呼吸アーチファクト、負荷ECG検査機における検査機アーチファクト、EEGにおける心電図信号、EEG信号由来のECG信号/パルス、および他の血液動態信号由来のCPRアーチファクト。このように、種々の実施形態は、たとえばCPR圧迫などの種々の物理的インパルスを表わす第2信号を利用することによって、たとえばECG,EEGなどの物理的インパルスを表わす種々の信号におけるアーチファクトを除去し得る。
【0051】
図3を参照すると、コンボリューションアルゴリズムを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。種々の実施形態において、重複コンボリューション出力セグメントは、まず観測ECG信号{y[n]}とCPR基準信号{x[n]}の第1WL試料をウインドウイングすることによって実装される。WLは、窓長を示す。次に方形窓は、CPR基準信号セグメント{x1(n)}と測定ECG信号セグメント{y1(n)}を生成すべく両入力信号に適用される。この段階は、以下の方程式で視覚化される。
【0052】
y1(n)=y(n)w(n) (0<n<WL) or 0 (その他) 。
x1(n)= x(n)w(n) (0<n<WL) or 0 (その他) 。
(18)
【0053】
次にRxy(k)とRxx(k)値が、Nlag点までのラグに対して計算される。Nlagは、観測ECG信号セグメント{y1(n)}とCPR基準信号セグメント{x1(n)}の間の時間差の測定指標である。リード/ラグと窓推定が、たとえば図3において示される。
【0054】
次に、CCS関数とACS関数は、{y1(n)}と{x1(n)}の平均値を差引いた後、方程式(12)で上述したように決定される。CCS関数とACS関数の決定後、{h(n)}は、方程式(17)を用いることによって2つの関数の間の関係から決定され、{h(n)}の大きさは、Nlagに等しく設定される。次に、平均値は、以下の方程式を用いることによって、CPR信号から除去される。
【0055】
m0=平均{x1[n]} 。
{x1[n]}={x1[n]}−平均{x1[n]}={x1[n]}−mo(19) 。
次に、下記のコンボリューション式を用いて{x1’(n)}を構築すべく、{h(n)}が用いられる。{x1’(n)}は、推定アーチファクトである。
【0056】
【数11】
信号{x1’(n)}の長さは、WL+Nlag−1である。
【0057】
次に、コンボリューション{x1’(n)}の出力は、第1WLポイントに短縮される。理想的には、短縮は、開始と末端のNlagポイントを避けるべきである。しかし、種々の実施形態は、Nlag−1ポイントを避けるだけである。更に他の実施形態は、アーチファクトを推定する次の計算でより低い重みを与えることによって、初期Nlagポイントの影響を減らす。次に、コンボリューション演算のdc応答は、方程式(21)で示されるように積分される。
【0058】
【数12】
式中、m0は、変調比M(Mはm/m0に等しい)における励起の変調幅である。
【0059】
次に、(22)で提供された方程式を利用することによって、データに関するアーチファクトセグメント{a1(n)}を推定する。
【0060】
【数13】
種々の実施形態において、第1窓と第2窓の間の第1非重複セグメントの出力は、同じである。更に種々の実施形態は、窓がNlagポイント急上昇すると仮定する。しかし、この急上昇は、入力パラメータによって測定され得るか、でなければN急上昇(=Njump)で計算および示され得る。アーチファクトセグメント{a1(n)}の測定後、クリーンなECG信号y推定(=yest)が、第1Nlagポイントに対して推定され得る。
【0061】
【数14】
CPR基準信号{x(n)}と{y(n)}の間で数ポイントだけ一定のリードまたはラグがある場合、両セグメントにおけるNlag/2またはNlagポイントとのシフト相互相関は、特定のリードかラグで最大値を生じさせることになる。上記の減算は、推定アーチファクト信号{a1(n)}または{xout(n)}を相応にシフトさせた後に実行される。
【0062】
次に、N急上昇と(N急上昇+WL)の試料の間でN急上昇ポイントを急上昇させることによって新しい窓表示セグメント{y2(n)}と{x2(n)}に移動する。次に新しい窓パラメータを利用して先立つ段階を繰返す。
【0063】
種々の実施形態において、異なる重付法は、データの第2、第3、およびその後に続く非重複セグメントの推定において利用され得る。これらの重付法には、均等重付けと中央セグメント重付けが含まれる。
【0064】
均等重付法において、2つの隣接する窓の間の重複セグメントは、2度計算されることになるので、均等重付けは、2つの窓が重なり合うだけなら、2つの隣接する窓の計算に与えられることになる。同様なのは、3つが隣接する計算の場合であり、特定の小セグメントは、それらに共通している。たとえば16ポイントのNlag/N急上昇を設定し、(すなわち)128ポイントのWLを有する場合、特定のセグメントは、8つの隣接する窓に存在することが可能である。
【0065】
N急上昇またはNlagポイントの第1セグメント:
【0066】
【数15】
N急上昇またはNlagポイントの第2セグメント:
【0067】
【数16】
N急上昇またはNlagポイントの第3セグメント:
【0068】
【数17】
第8セグメントからは、8つの重複窓全てが計算に利用できる。従って、比WL:Nlag=8:1なら、Nlagポイントの各々の重複セグメントは、8回計算される。特定の実施形態において、これらの計算に影響を及ぼすコンボリューションのために、精度に負の影響を及ぼす終端効果の可能性が存在する。従って、実施形態は、窓、WLでの結果から終端セグメントを除去する。その場合、重複セグメントは、終端に位置する。
【0069】
隣接する窓に共通なセグメントの計算における中央の重い重付けは、区分ステッチング適合アルゴリズムの種々の実施形態において重付法として利用される。中央の重い重付法は、一連の窓、WLのコンボリューションにおいて末端によって提供される不確かさを中央セグメントの重付けによって除去する。たとえば6つの窓だけが利用され、特定のセグメントが中央に存在する場合、2つの末端上の窓を避けて、中央の4つの窓に重みを適用することが、中央重付けである。中央重付けアルゴリズムは、以下のように表わされる:
【0070】
【数18】
中央重付けの結果として、種々の実施形態は、コンボリューションにおいてより安定性を示す。
【0071】
図4を参照すると、一実施形態に従ってコンボリューションアルゴリズムを用いる区分ステッチング適合アルゴリズムを実装するシステムが提示される。最初のセレクト試料窓は、1次と2次の観測信号400から選択される。次に、1次信号セグメントと2次信号セグメントが、生成される(ステップS402)。次に自己相関と相互相関は、1次信号セグメントと2次信号セグメントから計算される(ステップS404)。次に、インパルス応答が、自己相関と相互相関から測定される(ステップS406)。次に、1次信号に存在する推定アーチファクトは、インパルス応答から推定される(ステップS408)。次に推定アーチファクトは、選択された1次信号数列と2次信号数列の長さに一致するように短縮される(ステップS410)。次に、推定アーチファクトのDC応答は、コンボリューションを利用して積分される(ステップS412)。推定されたクリーン1次信号は、選択された1次信号414から推定アーチファクトを除去することによって生成される。この時点でサイクルは、次に選択される1次信号と2次信号の試料窓のために繰返し得る。このようにして、実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムとコンボリューションアルゴリズムを利用することによって、高精度で1次信号全体をフィルタリングし得る。
【0072】
図5を次に参照すると、重複回帰セグメントを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。この実施形態は、出力セグメントが、{x(n)}と{y(n)}の間の単回帰関係から計算されることを除いて、窓に基づく重複コンボリューション出力セグメントに類似している。この場合、関係が他の成分によって曖昧にされるとしても、アーチファクトと基準信号が、逐一相関を有することが前提である。つまり、関係は、区分的線形であると仮定される。
【0073】
この実施形態において、αとβの推定は、WL試料の窓(〜2秒)ごとに行われ、窓は、所定のWL/2試料の重複である。非定常性は、この重複によってある程度まで説明される。各々の窓において、α^とβ^は、方程式(30)によって計算される。以後、「α^」は、αの上に記号「^」が乗っているものを示す。
【0074】
【数19】
【0075】
a1’(n)=α^x(n)+β^ (31)
。
【0076】
クリーン信号推定=y(n)−a1’(n) (32) 。
この場合、線形回帰式は、{y(n)}と{x(n)}の間で適合したので、アーチファクト成分の推定が行われ、推定アーチファクト成分が観測ECG信号{y(n)}から除去される。
【0077】
方程式(30)におけるα^とβ^の推定は、観測された破損ECG信号{y(n)}におけるアーチファクト成分の再構築に役立ち得る。更に付加的ウインドウイングと重複方法は、重複コンボリューション法のシミュレーションに利用され得ると共に、非定常性問題を除去することが可能である。更により小さなセグメントを用いることによって、非定常性の関係が取込めるようになる。
【0078】
図6を参照すると、線形回帰セグメントを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。まず、選択試料窓が、1次と2次の観測信号から選択される(ステップS600)。次に、1次信号数列と2次信号数列が生成される(ステップS602)。次に線形回帰が、1次信号と2次信号の間で測定される(ステップS604)。次に、推定アーチファクトは、線形回帰に基づき生成される(ステップS606)。次に推定アーチファクトは、選択された1次信号数列と2次信号数列の長さに一致するように短縮される(ステップS608)。推定クリーン1次信号は、選択1次信号から推定アーチファクトを除去することによって生成される(ステップS610)。この時点でサイクルは、次に選択される1次信号と2次信号の試料窓に対して繰返し得る。このようにして、種々の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムと線形回帰アルゴリズムを利用することによって、高精度で1次信号全体をフィルタリングし得る。
【0079】
図7において示されるように、時変適応性ウインドウイング法はまた、区分ステッチング適合アルゴリズム法の区分的回帰を実装することで可能になる。この設定において、重複セグメントの大きさ、{x(n)}と{y(n)}における窓開始ポイントは全て、窓の大きさと共に変化することが可能である。この方法によって、セグメント別の相関がもたらされ、セグメントは、同じではなく、ポイント当たりの計算数が異なるため、バイアスを有する。しかし、許容アーチファクト波形は、構築されることができないので、アーチファクト除去ECG信号を導き出すべく、{y(n)}から差引かれることが可能である。
【0080】
種々の実施形態において、検知ECG信号とCPR基準信号の両信号における全ての信号試料は、計算とパラメータ記憶動作を開始する。たとえば平均値の計算、自己相関数列の計算、相互相関数列の計算、およびデコンボリューションとコンボリューションの演算が、連続して起こる。しかし、特定の実施形態、たとえば推定などの追加計算において、アーチファクトセグメントは、特定の指数で実行されるだけである。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズムは、信号フィルタリングと分析において必要とされる計算量を減らすことができる。
【0081】
図8A〜図8Dを参照すると、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用するシステムの種々の実施形態が示される。図8Aにおいて示される実施形態は、ECG信号800とCPR基準信号802を区分ステッチング適合アルゴリズム804に入力する。次に区分ステッチング適合アルゴリズム804は、ECG信号800からCPRアーチファクトを除去すると共に、推定された実ECG信号806を更なる使用に提供することになる。
【0082】
図8Bを参照すると、基準信号が存在しない区分ステッチング適合アルゴリズムを利用
するシステムの実施形態が示される。多くの場合、CPR中に記録された低周波数領域のECG信号800は、CPRアーチファクトによって支配されている。従って、基準信号が存在しない場合、低域通過フィルタ808を利用するECG信号800のフィルタリングは、基準信号の特徴を有効にする。正確なCPR関連信号ほど正確ではないが、この低域通過フィルタ808で処理された出力信号810は、区分ステッチング適合アルゴリズム804において{x(n)}として用いられることが可能である。種々の実施形態において、処理の遅延は、有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いることによって、最小化されるか、線形にされる。リードまたはラグ計算は、相関分析を利用し、引き続き適用され得る。種々の実施形態において、低域通過フィルタ808は、たとえば(0〜6)Hzのセレクト信号範囲をフィルタリングする。
【0083】
図8Cを参照すると、種々の実施形態は、CPR基準信号802を用いることによって、幾つかの入力信号から幾つかの入力信号アーチファクト由来のCPRアーチファクトをクリーンにすべく、区分ステッチング適合アルゴリズム804を利用し得る。入力信号には、ECG信号800、pO2信号812、心房血圧(ABP)信号814、中心静脈圧(CVP)信号816、および心音信号818が含まれ得る。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズム804は、多数の信号からCPRアーチファクトを同時にフィルタリングし得ると共に、非破損信号を更なる分析に提供し得る。
【0084】
図8Dを参照すると、CPR基準信号802の不在下で関連成分を有する多数の信号について区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する実施形態が示される。CPR基準信号802が利用できない場合、CPRの結果として動きアーチファクトで破損された2つ以上の信号は、区分ステッチング適合アルゴリズム804に送り込まれる。たとえばECG信号800と血液動態信号820は、区分ステッチング適合アルゴリズム804に入力され得る。これらの実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズム804は、それらの信号を相関させると共にCPRアーチファクト成分を推定することが可能である。次に区分ステッチング適合アルゴリズム804は、元のソース信号からCPRアーチファクト成分を除去し、更にCPRアーチファクト824の推定値を示す信号と共にクリーン型の入力信号822を出力することになる。
【0085】
図9に示されるように、種々の実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは、検知信号の状態に基づき第1応答者命令を有効にすべくAEDシステムにおいても利用され得る。たとえば区分ステッチング適合アルゴリズム900は、無脈性調律904、ショック性調律906、および非ショック性調律908の間を判定すべく、調律分析アルゴリズム902と併せて利用され得る。
【0086】
種々の実施形態において、連続CPRを要求する無脈性調律904は、区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用するAEDにおいて判定されることが可能である。これらの状況において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、ECG信号910とCPR基準信号912を連続的に監視し、AEDに同様に実装される調律分析アルゴリズム902にクリーンなECG出力信号914を送る。次に調律分析アルゴリズム902は、無脈性電気的活動または心停止のために連続CPRが必須であると判定し得ると共に、AEDに連続CPR命令916を第1応答者に送達させ得る。
【0087】
存在するCPRを必要とするショック性調律906が存在する場合のCPRの停止とショックの適用は、区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用するAEDにおいてほぼリアルタイムで行われる。これらの状況において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、ECG信号910とCPR基準信号912を連続的に監視し、クリーンなECG出力信号914を調律分析アルゴリズム902に送る。次に調律分析アルゴリズム902は、電気ショックが必要とされることを判定し得ると共に、プロトコルによってCPR
の停止と患者へのショック命令918を送達するようにAEDに命令し得る。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、プロトコルに従って治療を提供するために、CPRを中断させ得る。種々の実施形態は、電気ショックと圧迫のサイクルを自動的に同期化するために、自動CPR圧迫を送達する機械的圧迫装置に制御信号が向けられるようにする。非ショック性調律が存在する場合、AEDは、CPR継続命令と他の命令920を送達し得る。
【0088】
特定の実施形態において、AEDは、どの信号処理が、区分ステッチング適合アルゴリズム900によって要求されるかを判定すべく区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用する。これらの実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、推定アーチファクト信号916が低信号振幅を示す状況またはアーチファクトがECG信号910に対して微々たる影響しか有さない状況において、検知ECG信号を出力する。従って、これらの状況において、検知ECG信号910は、区分ステッチング適合アルゴリズム900信号処理を無視することによって、利用され得ると共に調律分析アルゴリズム902に直接送られ得るので待ち時間と所要処理電力を更に減らす。
【0089】
区分ステッチング適合アルゴリズムの実装とCPR基準記号の利用によって、種々の実施形態は、信号対ノイズ比が非常に大きな変動を示す場合、検知信号からノイズを除去することが可能である。たとえば区分ステッチング適合アルゴリズムは、信号対ノイズ比が1〜20の重度アーチファクト状態に対してでさえ、アーチファクトを効率的に描出することが可能であり、心停止の場合ではこの比は、およそ1:1000よりもずっと大きくなり得るので、主としてECGチャネルの固有ノイズ特性によって制限される。
【0090】
図10Aにおいて示されるような検知信号と図10Bにおいて示されるようなCPR基準信号を、種々の実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは分析することができ、CPRアーチファクトを分離できるので、それによって図10Cにおいて示されるような回復ECG信号が生じる。上記のように、他の様々な実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは、同じ効果に対して別の様々な1次信号と2次信号について同じ分析を実行し得る。従って、たとえば負荷ECG検査機とEEG検査機を妨害する種々の信号は、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用することによって除去され得る。
【0091】
図11を参照すると、本発明の一実施形態に従う区分ステッチング適合アルゴリズムを実装するAED1000のブロック図が示される。デジタル式マイクロプロセッサ支援制御システム1002は、AED1000の動作全体を制御すべく用いられる。電気制御システム1000は、更に第1電極1004と第2電極1006の相互接続と操作性を検査するインピーダンス測定回路を有する。制御システム1002は、プログラムメモリ1010、データメモリ1012、事象メモリ1014、およびリアルタイムクロック1016にインターフェースで連結されたプロセッサ1008を有する。プロセッサ1008によって実行される運転プログラムは、プログラムメモリ1010に記憶される。電気出力は、バッテリ1018によって提供され、発電回路1020に接続される。
【0092】
発電回路1020はまた、出力調整装置1022、リッドスイッチ1024、監視役タイマ1026、リアルタイムクロック1016、およびプロセッサ1008にも接続される。データ通信ポート1028は、データ転送すべくプロセッサ1008に連結される。特定の実施形態において、データ転送は、シリアルポート、USBポート、ファイヤワイヤ、たとえば802.11xか3G、ラジオなどの無線を利用することによって実行され得る。救助スイッチ1030、保全指標1032、診断表示パネル1034、音声回路1036、および警報器1038は、同様にプロセッサ1008に接続される。音声回路1036は、スピーカ1040に接続される。種々の実施形態において、救助光源スイッチ1042と視覚ディスプレイ1044は、付加的運転情報を提供すべくプロセッサ100
8に接続される。
【0093】
特定の実施形態において、AEDは、プロセッサ1008と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ(co−processor)1046を有し得る。区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ1046は、ハードウエアにおいて実装される区分ステッチング適合アルゴリズムであり得ると共に、高速データバスを介してプロセッサに動作可能に接続され得る。種々の実施形態において、プロセッサ1018と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ1046は、同じシリコン上にあり、マルチコアプロセッサにおいて実装され得る。またプロセッサ1008と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサは、マルチプロセッサの一部として、それともネットワークプロセッサ配置として実装され得る。これらの実施形態において、プロセッサ1018は、区分ステッチング適合アルゴリズム計算の一部を区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサにオフロードするので、第1電極1004と第2電極1006由来の検知信号の処理を最適化する。他の実施形態において、プロセッサ1008は、区分ステッチング適合アルゴリズム計算を実行するため、特殊な命令または最適化で最適化される。従って、プロセッサ1010は、より少数のハードウエアリソースを駆使しながら、より少数のクロックサイクルで区分ステッチング適合アルゴリズム計算を実行し得る。他の実施形態において、制御システム1002の論理とアルゴリズムは、ASIC型のハードウエアかFPGA型の組合せ、その他の何れかの論理で実装され得る。
【0094】
高電圧発生回路1048はまた、プロセッサ1008に接続され、前記プロセッサによって制御される。高電圧発生回路1048は、半導体スイッチ(表示なし)と複数のコンデンサ(表示なし)を有し得る。種々の実施形態において、コネクタ1050,1052は、高電圧発生回路1048を第1電極1004と第2電極1006に接続する。
【0095】
インピーダンス測定回路1054は、コネクタ1050とリアルタイムクロック1016の両方に接続される。インピーダンス測定回路1054は、A/D(アナログデジタル)変換器1056を通じてリアルタイムクロックにインターフェースで連結される。別のインピーダンス測定回路1058は、コネクタ1050とリアルタイムクロック1016に接続され得ると共に、A/D変換器1056を通じてプロセッサ1008にインターフェースで連結され得る。CPR装置1060は、コネクタ1052とA/D変換器1056を通じてプロセッサ1008とリアルタイムクロック1016に接続され得る。CPR装置1060は、胸部圧迫検出装置または手動、自動か半自動式の機械的胸部圧迫装置であり得る。
【0096】
同様に当然のことながら模範的実施形態または複数の模範的実施形態は、単なる実施例であり、本発明の範囲、適用性、または構成を何らかの方法で制限しようとするものではない。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者に模範的実施形態または複数の模範的実施形態を実行するのに役立つ開示を提供することになる。当然のことながら、種々の変更は、添付の特許請求の範囲とその法的等価物に示されるような本発明の範囲から逸脱しなければ、要素の機能と配置において行われることが可能である。
【0097】
上記の実施形態は、制限ではなく、例示しようとするものである。付加的実施形態は、特許請求の範囲内である。更に本発明の特徴は、特定の実施形態を参照して記載されてきたが、当業者は、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨と範囲から逸脱しなければ、形態と詳細において変更し得ることを認めるだろう。
【0098】
当業者は、本発明が上記の何れかの個々の実施形態において例示されるよりも少ない特徴を有し得ることを認めるだろう。本明細書において記載された実施形態は、本発明の種々の特徴を組合せ得る方法を包括的に示すものではない。従って、実施形態は、相互に排
他的な特徴の組合せではなく、むしろ本発明は、当業者によって理解されるような、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組合せを有し得る。
【0099】
上記の文書の参照文献による何れかの取込みは、本明細書における明白な開示に反した主題が包含されないように、制限される。上記の文書の参照文献による任意の取込みは、文書に含まれる請求項が、本明細書における参照文献によって取込まれないように、更に制限される。上記の文書の参照文献による任意の取込みは、本明細書において明確に包含されない限り、文書において提供される任意の定義は、本明細書における参照文献によって組込まれないように更に制限される。
【0100】
本発明の請求項を解釈できるように、特殊用語「のための手段」または「のための段階」は、請求項において列挙されない限り、合衆国第35法典第212条第6パラグラフの規定が行使されるべきではないことを明確にしようとするものである。
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して心電図(ECG)信号を処理するシステム、方法、および装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、心肺蘇生(CPR)に起因するECG信号におけるアーチファクトを適応的除去するシステム、方法、および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心停止事故の減少に役立つように自動体外式除細動器(AED)が開発されてから、ほぼ20年が過ぎた。その期間にAEDは、たとえば事務所、ショッピングセンタ、スタジアム、および通行人の往来が激しい他の場所など公共の地域に広く普及するようになってきた。AEDは、心臓事象の極めて重要な初期段階において以前は救助が受けられなかった公共の場での心臓緊急状態中に医療救助を提供する権限を市民に与えている。特に近年は、心室性不整脈と非ショック性上室性不整脈を正確に検出することができる完全自動体外式除細動器が、付添者のいない患者を治療すべく開発された(たとえば特許文献1参照)。これらの装置は、心室性不整脈を患う患者を治療し、リアルタイムでのショック性不整脈の検出において高い感受性と特異性を有する。更にAEDは、病院において治療を自動的に提供できる診断監視装置として働くように開発されている(たとえば特許文献2参照)。
【0003】
AED分野における発達に加えて、人間生理学と医療との関連性を理解する上で幾つかの進歩があった。医学研究におけるこれらの進歩は、身体外傷事故の対処における新しいプロトコルと標準操作手順の開発をもたらした。たとえば除細動のパブリックアクセスプロトコルにおいて、最近のガイドラインは、AEDの使用と共に心肺蘇生(CPR)の必要性を強調してきた。実際に、最近の米国心臓協会(AHA)の心肺蘇生と緊急心血管医療のガイドラインは、AEDがショック性調律を検出し、その後、救助者に直ちに圧迫を回復させるように促すことによって、緊急事態対応プロトコルに組込まれ得ると示唆している(たとえば非特許文献1参照)。更にガイドラインは、具体的には患者の再評価によって保留圧迫数を減らすと共に、経験のある医療専門家への効率的な転送を確保する方向に救助者を更に再教育するか支援するAEDが開発され得ると解説している。独自の研究と共にガイドラインは、AED装置の提案使用法として、CPRと共に、除細動を伴う包括的な方法をもたらした。
【0004】
現行のAEDは、除細動を提供する間、ガイドラインによって推奨されるようなAEDの現行提案使用方法の実行において機能しない。今日利用可能な大部分のAEDは、心室調律の分類を試みる。具体的には、現行のAEDは、ショック性心室調律と、非ショック性の他の全ての調律との間を識別しようとする。心室調律のこの検出と分析は、ECG波形のリアルタイム分析を必要とする。従って、AEDの機能性、精度、および速度は、ECG波形のリアルタイム分析に利用されるアルゴリズムとハードウエアに大きく依存する。
【0005】
多くの実装において、アルゴリズムは、心拍数計算と、特許文献1と特許文献3において開示されるように、ECG波形因子と不規則性のようなECG波形から得られた様々な形態的特徴とに依存する。更に十分な処理能力を提供するために、現行のAEDは通常、マイクロコントローラ内にアルゴリズムと制御論理を組込む。
【0006】
現行のアルゴリズムと特殊なハードウエアの実装は、AEDの有効性に及ぼす深刻な影響を有し得ることが知られている。具体的には、ECG信号の信号対ノイズ比は、AED
性能に大きく作用する。たとえば救助活動中、多くの現行AEDに実装されたアルゴリズムは、検知心室調律を分類すべく、数秒間のクリーンなECG信号データを必要とする。救助者が、1分当たり100サイクルに近い規定の速度で胸部圧迫と弛緩を適用し得る心肺蘇生中に、そのようなクリーン信号データを得る機会は、有意に減る。実際には、胸部圧迫と弛緩は、ECG記録において有意な動きアーチファクトを発生させる。更にECG信号は、心室性不整脈事象中、貧弱な振幅を示し、更に信号対ノイズ比を下げるので、低品質または使用に適さない信号が生じることが多い。これらの状態において、既存の不整脈認識アルゴリズムは、適切に機能しないかもしれず、被災者を危険に晒す。
【0007】
ECG電極とアナログフロントエンド回路の設計を変えることによって、感覚性アーチファクトの作用を減らす試みがなされてきた。1つの設計は、ECG増幅器において高域カットオフすべく低域カットオフ周波数を実行する。他の設計は、アーチファクトをある程度回避しようと試みるべく、同相除去比(CMRR)が非常に高い差動増幅器を利用する。しかし、これらの設計において、デジタル論理とアルゴリズムを用いて任意のアーチファクトを除去するために、デジタル領域において良質の信号を取込むことが必須である。これは、主としてアナログからデジタルへの変換中の飽和効果を受けて低下した信号品質を現在周知の技術を用いて回復できないという事実による。
【0008】
電極の設計に加えて、現行アルゴリズムは、CPRの現行の基準と実践下でのアーチファクトのフィルタリングに効果が無い。本課題のうちの1つは、CPR圧迫サイクル中にもかかわらずショック性心臓調律を同定することと、非ショック性/回復調律をリアルタイムで同定することである。心停止状態は、重要な測定基準なので、別の課題は、心停止を正確に検出することである。ECG信号を乱れさせ得るCPRアーチファクトの同定と除去を行う種々の方法が、提案されてきた。たとえば特許文献4は、アーチファクトを除去しようとして基準信号を利用する。特許文献5は、基準信号と共に、心臓系の動作に関する前提に依存するアルゴリズムを提供する。特許文献6は、CPR活動の指標としてと、基準信号を提供するためとに多数のセンサを用いる。特許文献4は、ECGセグメントにおけるCPRアーチファクトの存在を同定すべく、CPR活動を示す基準信号を利用する。特許文献7は、有意な患者の動きを同定するため経胸腔インピーダンス測定を利用することを開示している。特許文献8は、ECG信号上のノイズ効果を推定すべく複数のECGリードを利用することを記載している。特許文献9は、線形予測フィルタリングと再帰的最小二乗法を用いてシステムを同定する周波数領域法を開示している。幾つかの最近の研究において、遅延基準信号に関する適応回帰に基づくECGフィルタリングの別法が紹介された(たとえば非特許文献2参照)。CRPアーチファクト検出とフィルタリングの更に別の方法は、異常を除去すべく、基準信号の代わりに周波数変調を利用することに重点を置いている(たとえば非特許文献3参照)参照)。対応状況において治療を実施する他の開示方法は、CPR活動の検出と測定に重点を置き、CPR圧迫の深度と存在を推定すべく胸部圧迫検出器(たとえば特許文献10参照)または加速度計(たとえば特許文献11参照)を利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,474,574号明細書
【特許文献2】米国特許第6,658,290号明細書
【特許文献3】米国特許第6,480,734号明細書
【特許文献4】米国特許第6,961,612号明細書
【特許文献5】米国特許第7,039,457号明細書
【特許文献6】米国特許第6,807,442号明細書
【特許文献7】国際公開第2006/015348号パンフレット
【特許文献8】米国特許第5,704,365号明細書
【特許文献9】米国特許第7,295,871号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第1859770号明細書
【特許文献11】米国特許第7,122,014号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】心肺蘇生と緊急心血管治療の米国心臓協会ガイドライン(American Heart Association Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care)、(米国)、IV−36、米国心臓協会(American Heart Association,Inc.)、2005年。
【非特許文献2】ラインベルガー(Rheinberger)ら、「カルマン法を用いる心室細動ECG信号由来の蘇生アーチファクトの除去(Removal of resuscitation artifacts from ventricular fibrillation ECG signals using kalman methods)」、(米国)、Computers in Cardiology,2005年。
【非特許文献3】アラメンジ(Aramendi)ら、「心肺蘇生アーチファクト存在下での心室細動の検出(Detection of ventricular fibrillation in the presence of cardiopulmonary resuscitation artifacts)」、(米国)、Resuscitation、2007年。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これらのプラットフォームまたは方法は全て、最近の米国心臓協会CPRガイドラインに従って、リアルタイム治療を提供するとき、制限や問題がある。従って、様々なECGセグメントにわたって効果的であり、計算コストが低く、更にリアルタイムに近い分析とフィルタリングを示す、ECG信号からCPRアーチファクトをフィルタリングする方法と装置、従ってショック性状態と非ショック性状態を判定すべくクリーンな信号を可能にする方法と装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の種々の実施形態は、検知ECG信号から信号アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングする方法と装置を開示する。種々の実施形態は、ECG信号から信号アーチファクトをフィルタリングすべく、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する装置または自動化方法を有する。種々の実施形態は、たとえば特別に設計されたコンピュータプロセッサまたはマイクロプロセッサなどのコンピュータハードウエアにおいて区分ステッチング適合アルゴリズムを実装する。他の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムを非揮発性コンピュータアクセス可能なメモリに記憶する。種々の実施形態において、ハードウエアは、生理的信号を検知するセンサに接続される。特定の実施形態において、センサのうちの1つは、ECG信号を検知する。他の実施形態において他のセンサは、アーチファクト信号を検知する。アーチファクト信号は、CPR圧迫信号、血液動態信号、またはECG信号においてアーチファクトを生じさせ得る更に別の生理的機能を反映する他の信号であり得る。更にCPRアーチファクトの代表的信号は、超音波、光検出、およびアーチファクトの物理的原因を示し得る心弾動図のような検知技術を用いることによって獲得されることが可能である。
【0013】
次に前記方法と装置は、ECG信号とアーチファクト信号から信号試料窓を選択することによって、ECG信号からアーチファクト信号によって生じるアーチファクトを除去すべく、区分ステッチング適合アルゴリズムを実行し得る。次に1次信号セグメントと2次信号セグメントは、ECG信号とアーチファクト信号から生じ得る。次に1次信号セグメントと2次信号セグメントの間の関係が測定され得る。これは、測定された関係に基づき1次信号における信号アーチファクトの推定を可能にし得る。最終的に、種々の実施形態は、1次信号セグメントから推定信号アーチファクトを除去し得る。
【0014】
種々の実施形態において、調律分析アルゴリズムを利用することによって、ショック性ECG調律を同定し得る。これは、本方法とシステムが、たとえば自動体外式除細動器(AED)などの医療装置において利用できるようにし得る。調律分析アルゴリズムは、最近の操作、診療、およびCPRのガイドラインに適合する生命維持治療の実施を可能にし得る。
【0015】
種々の実施形態において、本方法と装置は、アーチファクト信号が検知されると、アーチファクトフィルタリングプロセスを実行するだけでフィルタリングと検知を最適化することになる。このようにして、治療の適用に必要な電力と待ち時間が減少する。他の実施形態において、信号試料窓は、ECG信号とアーチファクト信号の間の時間遅延に依存して均一な大きさと不均一な大きさの信号試料窓におけるECG信号とアーチファクト信号から選択される。従って、本方法と装置は、知覚欠損による検知の遅延と、生理機能の差から生じる遅延とを処理し得る。特定の実施形態において、ECGとアーチファクト信号における信号セグメントの開始時間と終了時間は、匹敵することになる。他の実施形態において、ECG信号とアーチファクト信号の試料窓の開始時間と終了時間は、適合インデキシングまたはセグメント別回帰法を利用することによって、決定されることになる。
【0016】
種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、シフト自己相関計算を用いることによってECG信号とアーチファクト信号の間の位相リードまたは位相ラグを推定することになる。次にこれらの推定は、更なる信号試料窓の選択において将来使用すべくメモリに記憶され得る。種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、1次信号セグメントと2次信号セグメントに重みを適用する重付法を利用した。特定の実施形態において、全セグメントは、均等に重付けられる。他の実施形態において、中央セグメント重付けは、より大きな重みを中央信号セグメントに提供すべく、利用される。
【0017】
種々の実施形態において、本方法と装置は、他の生理的過程を示す他の信号において生じたアーチファクトを検知し得る。従って、特定の実施形態においてアーチファクト信号は、血液動態活動の尺度である。更に本方法と装置は、アーチファクト信号の提供において1次信号に関して受動フィルタリングか能動フィルタリングを利用し得る。従って、特定の実施形態においてECG信号は、アーチファクト信号を提供すべく、帯域フィルタを用いることによってフィルタリングされる。これらの実施形態において、本方法と装置は、信号アーチファクトをフィルタリングするために、1つの検知信号だけを必要とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】自動体外式除細動器の略図。
【図2】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する自動体外式除細動器の略図。
【図3】本発明の一実施形態に従って、コンボリューションを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムのグラフ。
【図4】本発明の一実施形態に従って、コンボリューションを利用する区分ステッチングアルゴリズムの演算を示すフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態に従って、回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムのグラフ。
【図6】本発明の一実施形態に従って、回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムの演算を示すフローチャート。
【図7】本発明の一実施形態に従って、可変窓回帰を利用する区分ステッチングアルゴリズムのグラフ。
【図8A】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8B】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8C】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図8D】本発明の一実施形態に従う、区分ステッチングアルゴリズムの実装の略図。
【図9】本発明の一実施形態に従って、除細動器に組込まれた区分ステッチングアルゴリズムの略図。
【図10A】CPRアーチファクトで損傷した心室頻拍波形のグラフ。
【図10B】破損とノイズ波形のグラフ。
【図10C】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチングアルゴリズムを利用して回復された心室頻拍波形のグラフ。
【図11】本発明の一実施形態に従って、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する自動体外式除細動器の略図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
背景において述べたように、幾つかのアルゴリズムは、心肺蘇生と緊急心臓血管治療の改訂AHAガイドラインに合わそうとして現行のAEDにおいて実装されてきた。1実装は、適応フィルタ技術であり、この技術は、図1において提供されるようなアルゴリズムを組込むAEDの全般的結線図に関連付けて本明細書において簡単に概説される。
【0020】
適応フィルタは、幾つかのアルゴリズムを利用して実装され得るが、最小二乗法(LMS)アルゴリズム、およびその導関数がほとんどの場合に利用される。LMS適応フィルタにおいて、平均二乗費用関数(つまり)ζ=E[e2(n)]が仮定される。次に適応フィルタは、最急勾配アルゴリズムを用いることによって、瞬時二乗誤差、ζ(n)を最小化する。このアルゴリズムは、刻み幅μで負の勾配方向に係数ベクトルを更新する。たとえばFIR適応フィルタの場合、以下のようになる。
【0021】
w(n+I)=w(n)−μ2.N’ζ(n) (A)
式中、重みw(n)は、試料ごとに調整されることが可能である。多くの適合アルゴリズムにおいて利用される別のアルゴリズムは、再帰的最小二乗法(RLS)アルゴリズムである。RLSアルゴリズムにおいて、費用関数は、次式で与えられる。
【0022】
【数1】
計算的に重み{w(n)}の値の更新は、LMSとRLSに基づく両適応フィルタに対して試料ごとに行われなければならない。これらの計算は、非常にコストがかかり、多重計算が更新ごとに必要とされる。更に窓ごとに全ての試料に行われている計算を調整する方法は無い。加えて、適合アルゴリズムは、整定時間を有し、最小誤差出力または有用信号(ノイズが除去された)の整定時間は、数秒かかる。整定時間はまた、重みの初期値と、RLSアルゴリズムのパラメータλとLMSアルゴリズムの刻み幅μとに依存する。
【0023】
CPRアーチファクト除去問題において、ECG信号とCPR信号の時変性は、適応過程に複雑性をもたらす。ECG信号は、心室頻拍(VT)から心室細動(VF)、振幅の小さい心室細動、および心停止まで様々である。更に回復信号はまた、心停止から振幅の小さな心室細動、心室頻拍、上室性頻拍(SVT)など様々である。これらの波形全ての
周波数と振幅は、それら自体内の波形内で巨大な変動を示す。これらの変動に加えて、たとえば圧迫と膨張などのCPRアーチファクトは、救助者間、同様にCPRの特定サイクル中に広範囲に変動する。更に圧迫と膨張の実際の振幅は、大きく変動する。本質的に、CPRアーチファクトに一致する心室信号の変動性は、適応フィルタの整定を妨害するので、この方法を実装する装置の演算能力を低下させる。
【0024】
今日あるこの適応フィルタ技術の能力と不足を考慮して、次に本発明の実施形態を記載する。
他の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズム(PSAA)を用いるECG信号のノイズを除去する解決策を提供する。種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、検知心室信号を効率的に分析とクリーンにするために、区分回帰法と区分デコンボリューション法の少なくとも一方を利用し得る。
【0025】
種々の実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズムは、CPR活動を測定する装置から受信された基準信号を利用する。これらの実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムが全てのCPR活動の基線か基準を有するようにする。前記CPRの基線か基準を用いることによって、次にCPR活動を検知ECGに相関させることが可能である。CPR信号を得るのに利用される獲得手法、つまり供給源、試料採取技術、フィルタリング方法とセンサは、何がECG信号を得るのに利用されるかを反映する。たとえば共通モードECGは、CPR活動の固有表現を保証するために、CPR基準信号の測定に利用され得る。同じ技法を利用することによって、CPR基準信号は、ECG信号基準と1対1でマッピングされ得る。それによって、ECGデータとCPRデータの瞬時相関が生じる。他の実施形態は、機械的加速、速度、または距離測定の検知から生成される基準信号を利用し得る。しかし、これらの別の基準信号の利用において、精度は、ECGの基準信号とアーチファクト成分の間の可能な因果関係のため下降し得る。従って、実施形態は、精度を押し上げるべく、時系列ECGと共に時系列CPR基準信号を利用し得る。
【0026】
CPR基準信号とECG信号の測定において同じ手法を利用することによって、精度が押し上げられるが、それでも検知信号は、試料フレーム内に1対1で整列しないかもしれない。これは、部分的に、種々の身体組織を通る機械的信号または電気的信号の伝播のためであり得る。たとえば筋肉細胞を通って伝導することによって、信号に変形が生じ得る。他の状況において、ECG信号とCPR信号の検知に利用される方法は、知覚装置または他のシステム要件に差があるため僅かに異なり得る。しかし僅かであるが、これらの差はまた、遅延を導入し得るので、1対1の相関関係が欠如する。種々の実施形態は、CPR信号とECG信号の間の関係の測定を支援すべく、コンボリューション関数か伝達関数を利用し得る。これは、1つの時系列の多数試料を他の時系列の多数試料と相互に関連付けられるようにする。たとえばECG信号のアーチファクト成分における1つより多くの試料のセグメントは、CPR基準信号における類似大のセグメントに関連付けられることが可能である。確立されると、CPR基準信号とECG信号の間の関係を利用することによって、ECG信号からアーチファクトを除去し得る。種々の実施形態において、瞬時偏析アルゴリズムとデコンボリューションアルゴリズムは共に、ECG信号からCPRアーチファクトを除去するのに利用される。
【0027】
本発明を理解するため、ECGとCPRのシグナリングにおける種々の信号と全てにかかわる原理の幾つかの考察を討議しなければならない。これらの原理とこれらの原理がどのように関連するかを理解すると、本発明の種々の実施形態が更に明確に理解され得る。
【0028】
たとえばECG信号、ECG信号に作用を及ぼすアーチファクト成分信号、および基準信号などの信号は、確率論的またはランダム信号であると考えられる。そのような信号は、任意に再生されることができない。確率論的信号を表わす主要な統計学的パラメータは
、その平均値、分散、および自己共分散である。
【0029】
実際の信号処理または時系列の推定は、信号がエルゴード性を示す場合にのみ可能である。確率論的信号は、その統計学的特性全てが、それぞれ実現された十分に大きな有限長から推定され得る場合、エルゴード信号であると定義される。エルゴード信号に関して、実現の長さが無限まで進むと、時間平均は、極限において期待値演算子によって得られたアンサンブル平均に等しい。
【0030】
実エルゴード信号に対して推定公式を以下に示す。
【0031】
【数2】
上記の限界演算の代わりに有限和が、以下に示されるように用いられることが可能である。
【0032】
【数3】
ランダム信号に対しては、自己相関、または自己共分散関数は、極めて重要な役割を果たす。仮に、ecg信号{ecg(n)}が、{s(n)}と{r(n)}の重ね合わせからできている場合({s(n)}は、クリーン信号成分を表わす。{r(n)}は、ランダムノイズ成分である)、その自己相関は、以下のように表わされることが可能である。
【0033】
E{ecg[n]ecg[n+l]}=E{(s[n]+r[n])(s[n+l]+r[n+l])}
=E{s[n]s[n+l]}+E{s[n]r[n+l]}+E{r[n]s[n+l]}+E{r[n]r[n+l]} (7) 。
{ecg[n]}と{r[n]}は、相関しないので、式(7)は、以下のように縮小する。
【0034】
E{ecg[n]ecg[n+l]}=E{s[n]s[n+l]}+σ2r
(8) 。
従って、自己相関は、信号内容を保存するが、多くの実践場面においてランダム非相関ノイズをdc成分に限定する。従って、自己相関と相互相関は、ランダム信号特性と、別の信号とのその相互作用を分析すべく、ランダム信号推定課題において用いられる。これは、ランダム信号特性を分析と推定すべく生信号を用いるよりも優れている。
【0035】
これを承知すれば、本明細書において記載される本発明を明確に理解することが可能である。心肺蘇生(CPR)中の観測ECG信号を{y(n)}と仮定しよう。前記{y(n)}は、前述のECG信号成分{ecg(n)}と、非相関広域帯ノイズ{N1(n)}とに加えてアーチファクト成分{a1(n)}の組合せから構成される。CPR活動を示すCPR基準信号を{x(n)}とする。数学的に、この関係は、以下のように表わされることが可能である。
【0036】
{y(n)}={ecg(n)}+{a1(n)}+{N1(n)} 。
{x(n)}={b(n)}+{a2(n)}+{N2(n)} (9) 。
上記のように、種々の実施形態において、{y(n)}は、自動体外式除細動器電極から記録される場合に観測されたECG信号を指し、{ecg(n)}は、真のECG成分を示し、{a1(n)}は、CPRが実行される場合に観測されるECGに認められるアーチファクト成分を示す。{N1(n)}と{N2(n)}は、任意の電子センサシステムにおいて常に存在する非相関広域帯ノイズを示す。CPRが実行されない場合、アーチファクト成分{a1(n)}は、ゼロのはずである。他の実施形態において、{x(n)}は、CPR活動を示すCPR基準信号を示す。前記{x(n)}は、全状況においてゼロに非常に近接すべき基線活動成分{b(n)}、CPRセンサによって記録された実アーチファクト信号{a2(n)}、および非相関広域帯ノイズ{N2(n)}から構成される。種々の実施形態において{x(n)}は、CPR活動が生じない場合、ゼロである。従って、種々の実施形態において、アーチファクト{a1(n)}は、{x(n)}を用いることによって{y(n)}において推定され、除去されるので、クリーンなECG信号{ecg(n)}が生じる。
【0037】
種々の実施形態における更なる制約は、時間領域における演算全体の実装を制限することである。データを多数の小さな窓にウインドウイングすることによって、リアルタイムアルゴリズムを実装する機会が提供されるので、AEDがライブ救助作業においてこの分析を実行できるようにする。
【0038】
E|x(n)xT(n)|=Rxx(0)=xの自己相関と
E|x(n)yT(n)|=Rxy(0)=yとx間の相互相関 (10) 。
更に上記の2つの関係を展開すると、以下の関係になる。
【0039】
【数4】
つまり、上記の計算は、自己相関(ACS)と相互相関(CCS)数列に導く計算の部分集合である。
【0040】
【数5】
種々の実施形態は、CPR基準信号{x(n)}を観測ECG信号{y(n)}に関連付ける、インパルス応答{h[n]}の安定な線形時不変系(LTI)離散時間系を利用する。これらの実施形態は、以下の式によって入力−出力関係を定義する。
【0041】
【数6】
更に、方程式(12)において定義されるようなACSが即時計算の範囲内で公知であるという仮説が、これらの実施形態において立てられる。仮説の結果は、方程式(12)において示されるようなCCSであり、以下のように計算される。
【0042】
【数7】
(14)に(13)を代入すると、以下の方程式が得られる。
【0043】
【数8】
種々の実施形態において長さNの因果的有限長インパルス応答と方程式(15)が、以下のように縮小すると考えるのが現実的である。
【0044】
【数9】
このようにして、ACSとCCS、rxx[l]とryx[l]の両方が計算される。次に、ACSとCCSが与えられると、システム同定またはインパルス応答推定が実行される。
【0045】
種々の実施形態において、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}のインパルス応答試料{h[n]}を計算する再帰的関係は、ACS{rxx[l]}とCCS{ryx[l]}の間のインパルス応答試料{h[n]}の結果と同じものとして与えられる。ACSとCCSを利用することによって、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}の利用時と同じ情報が提供されるが、観測ECG信号{y[n]}に及ぼす非相関ノイズの影響を減らす追加利点も有する。
【0046】
以下の再帰的計算は、ACS{rxx[l]}とCCS{ryx[l]}の値からインパルス応答試料{h[n]}を計算するのに役立つ。
【0047】
【数10】
従って、アーチファクト{a1[n]}は、CPR基準信号{x[n]}と観測ECG信号{y[n]}の間の関係から推定または再構築される。次に、アーチファクトは、方程式(9)で示されるモデルにおいて示されるように、クリーンECG信号{ecg[n]}を得るべく、観測ECG信号{y[n]}から差引かれる。
【0048】
種々の実施形態において、CPRによる推定アーチファクトの除去後、重複ウインドウイングを用いることによって、連続出力信号{ecg[n]}をもたらす。正確な重複セグメントが、同定され得ると共に、インパルス応答{hi[n]},{hi+1[n]}などのための寄与が、評価される。適切な重付けは、中間出力、つまり再構成アーチファクト成分{a1[n]}における急上昇が存在しないことを保証する。
【0049】
図2を参照すると、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用するシステム200の実施形態が示される。種々の実施形態において、システムは、ECG信号204を受信するECGモニタ202を利用し得る。ECGモニタ202は、身体上に設置されたセンサ由来のECG信号204を監視または記録し得る。ECGモニタ202は、更に処理すべく、ECG信号204を分析し得ると共に調整し得る。更にECGモニタ202は、たとえばCPR圧迫など、行われている付加的処置のために存在する異常またはアーチファクトを同定し得る。種々の実施形態は、CPR信号208を分析するCPRモニタ206を有することになる。CPR信号208は、実行されているCPR活動の独立した指標を提供し得る。更にCPRモニタ206は、更に処理すべくCPR信号204を調整し得る。次にシステム200は、区分ステッチング適合アルゴリズムが必要とされるかどうかを判定すべく決定論理210を利用し得る。CPR信号208が存在すると論理210が判定すると、区分ステッチング適合アルゴリズム212を初期化し、呼び出すことになる。次に区分ステッチング適合アルゴリズム212は、ECG信号204とCPR信号208を取
得し、ECG信号204からCPR信号208を除去することによって、CPRアーチファクトのないECG信号214を提供することになる。次にECG信号214は、たとえば不整脈検出アルゴリズム216など、システム200の他のアルゴリズムに転送され得る。特定の実施形態において、CPR信号208が存在しない場合、論理210は、区分ステッチング適合アルゴリズム212を初期化することはなく、システム200は、たとえば不整脈検出アルゴリズム216などの他のアルゴリズムにECG信号204を直接転送することになる。
【0050】
他の実施形態は、様々な1次信号と2次信号を検知し得る。前記2次信号は、1次信号に付加的データまたは信号入力を提供すると共に、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用することによって、選択的に除去またはフィルタリングされる。たとえば負荷ECG検査機における動きアーチファクト、ECGと負荷ECG検査機における呼吸アーチファクト、負荷ECG検査機における検査機アーチファクト、EEGにおける心電図信号、EEG信号由来のECG信号/パルス、および他の血液動態信号由来のCPRアーチファクト。このように、種々の実施形態は、たとえばCPR圧迫などの種々の物理的インパルスを表わす第2信号を利用することによって、たとえばECG,EEGなどの物理的インパルスを表わす種々の信号におけるアーチファクトを除去し得る。
【0051】
図3を参照すると、コンボリューションアルゴリズムを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。種々の実施形態において、重複コンボリューション出力セグメントは、まず観測ECG信号{y[n]}とCPR基準信号{x[n]}の第1WL試料をウインドウイングすることによって実装される。WLは、窓長を示す。次に方形窓は、CPR基準信号セグメント{x1(n)}と測定ECG信号セグメント{y1(n)}を生成すべく両入力信号に適用される。この段階は、以下の方程式で視覚化される。
【0052】
y1(n)=y(n)w(n) (0<n<WL) or 0 (その他) 。
x1(n)= x(n)w(n) (0<n<WL) or 0 (その他) 。
(18)
【0053】
次にRxy(k)とRxx(k)値が、Nlag点までのラグに対して計算される。Nlagは、観測ECG信号セグメント{y1(n)}とCPR基準信号セグメント{x1(n)}の間の時間差の測定指標である。リード/ラグと窓推定が、たとえば図3において示される。
【0054】
次に、CCS関数とACS関数は、{y1(n)}と{x1(n)}の平均値を差引いた後、方程式(12)で上述したように決定される。CCS関数とACS関数の決定後、{h(n)}は、方程式(17)を用いることによって2つの関数の間の関係から決定され、{h(n)}の大きさは、Nlagに等しく設定される。次に、平均値は、以下の方程式を用いることによって、CPR信号から除去される。
【0055】
m0=平均{x1[n]} 。
{x1[n]}={x1[n]}−平均{x1[n]}={x1[n]}−mo(19) 。
次に、下記のコンボリューション式を用いて{x1’(n)}を構築すべく、{h(n)}が用いられる。{x1’(n)}は、推定アーチファクトである。
【0056】
【数11】
信号{x1’(n)}の長さは、WL+Nlag−1である。
【0057】
次に、コンボリューション{x1’(n)}の出力は、第1WLポイントに短縮される。理想的には、短縮は、開始と末端のNlagポイントを避けるべきである。しかし、種々の実施形態は、Nlag−1ポイントを避けるだけである。更に他の実施形態は、アーチファクトを推定する次の計算でより低い重みを与えることによって、初期Nlagポイントの影響を減らす。次に、コンボリューション演算のdc応答は、方程式(21)で示されるように積分される。
【0058】
【数12】
式中、m0は、変調比M(Mはm/m0に等しい)における励起の変調幅である。
【0059】
次に、(22)で提供された方程式を利用することによって、データに関するアーチファクトセグメント{a1(n)}を推定する。
【0060】
【数13】
種々の実施形態において、第1窓と第2窓の間の第1非重複セグメントの出力は、同じである。更に種々の実施形態は、窓がNlagポイント急上昇すると仮定する。しかし、この急上昇は、入力パラメータによって測定され得るか、でなければN急上昇(=Njump)で計算および示され得る。アーチファクトセグメント{a1(n)}の測定後、クリーンなECG信号y推定(=yest)が、第1Nlagポイントに対して推定され得る。
【0061】
【数14】
CPR基準信号{x(n)}と{y(n)}の間で数ポイントだけ一定のリードまたはラグがある場合、両セグメントにおけるNlag/2またはNlagポイントとのシフト相互相関は、特定のリードかラグで最大値を生じさせることになる。上記の減算は、推定アーチファクト信号{a1(n)}または{xout(n)}を相応にシフトさせた後に実行される。
【0062】
次に、N急上昇と(N急上昇+WL)の試料の間でN急上昇ポイントを急上昇させることによって新しい窓表示セグメント{y2(n)}と{x2(n)}に移動する。次に新しい窓パラメータを利用して先立つ段階を繰返す。
【0063】
種々の実施形態において、異なる重付法は、データの第2、第3、およびその後に続く非重複セグメントの推定において利用され得る。これらの重付法には、均等重付けと中央セグメント重付けが含まれる。
【0064】
均等重付法において、2つの隣接する窓の間の重複セグメントは、2度計算されることになるので、均等重付けは、2つの窓が重なり合うだけなら、2つの隣接する窓の計算に与えられることになる。同様なのは、3つが隣接する計算の場合であり、特定の小セグメントは、それらに共通している。たとえば16ポイントのNlag/N急上昇を設定し、(すなわち)128ポイントのWLを有する場合、特定のセグメントは、8つの隣接する窓に存在することが可能である。
【0065】
N急上昇またはNlagポイントの第1セグメント:
【0066】
【数15】
N急上昇またはNlagポイントの第2セグメント:
【0067】
【数16】
N急上昇またはNlagポイントの第3セグメント:
【0068】
【数17】
第8セグメントからは、8つの重複窓全てが計算に利用できる。従って、比WL:Nlag=8:1なら、Nlagポイントの各々の重複セグメントは、8回計算される。特定の実施形態において、これらの計算に影響を及ぼすコンボリューションのために、精度に負の影響を及ぼす終端効果の可能性が存在する。従って、実施形態は、窓、WLでの結果から終端セグメントを除去する。その場合、重複セグメントは、終端に位置する。
【0069】
隣接する窓に共通なセグメントの計算における中央の重い重付けは、区分ステッチング適合アルゴリズムの種々の実施形態において重付法として利用される。中央の重い重付法は、一連の窓、WLのコンボリューションにおいて末端によって提供される不確かさを中央セグメントの重付けによって除去する。たとえば6つの窓だけが利用され、特定のセグメントが中央に存在する場合、2つの末端上の窓を避けて、中央の4つの窓に重みを適用することが、中央重付けである。中央重付けアルゴリズムは、以下のように表わされる:
【0070】
【数18】
中央重付けの結果として、種々の実施形態は、コンボリューションにおいてより安定性を示す。
【0071】
図4を参照すると、一実施形態に従ってコンボリューションアルゴリズムを用いる区分ステッチング適合アルゴリズムを実装するシステムが提示される。最初のセレクト試料窓は、1次と2次の観測信号400から選択される。次に、1次信号セグメントと2次信号セグメントが、生成される(ステップS402)。次に自己相関と相互相関は、1次信号セグメントと2次信号セグメントから計算される(ステップS404)。次に、インパルス応答が、自己相関と相互相関から測定される(ステップS406)。次に、1次信号に存在する推定アーチファクトは、インパルス応答から推定される(ステップS408)。次に推定アーチファクトは、選択された1次信号数列と2次信号数列の長さに一致するように短縮される(ステップS410)。次に、推定アーチファクトのDC応答は、コンボリューションを利用して積分される(ステップS412)。推定されたクリーン1次信号は、選択された1次信号414から推定アーチファクトを除去することによって生成される。この時点でサイクルは、次に選択される1次信号と2次信号の試料窓のために繰返し得る。このようにして、実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムとコンボリューションアルゴリズムを利用することによって、高精度で1次信号全体をフィルタリングし得る。
【0072】
図5を次に参照すると、重複回帰セグメントを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。この実施形態は、出力セグメントが、{x(n)}と{y(n)}の間の単回帰関係から計算されることを除いて、窓に基づく重複コンボリューション出力セグメントに類似している。この場合、関係が他の成分によって曖昧にされるとしても、アーチファクトと基準信号が、逐一相関を有することが前提である。つまり、関係は、区分的線形であると仮定される。
【0073】
この実施形態において、αとβの推定は、WL試料の窓(〜2秒)ごとに行われ、窓は、所定のWL/2試料の重複である。非定常性は、この重複によってある程度まで説明される。各々の窓において、α^とβ^は、方程式(30)によって計算される。以後、「α^」は、αの上に記号「^」が乗っているものを示す。
【0074】
【数19】
【0075】
a1’(n)=α^x(n)+β^ (31)
。
【0076】
クリーン信号推定=y(n)−a1’(n) (32) 。
この場合、線形回帰式は、{y(n)}と{x(n)}の間で適合したので、アーチファクト成分の推定が行われ、推定アーチファクト成分が観測ECG信号{y(n)}から除去される。
【0077】
方程式(30)におけるα^とβ^の推定は、観測された破損ECG信号{y(n)}におけるアーチファクト成分の再構築に役立ち得る。更に付加的ウインドウイングと重複方法は、重複コンボリューション法のシミュレーションに利用され得ると共に、非定常性問題を除去することが可能である。更により小さなセグメントを用いることによって、非定常性の関係が取込めるようになる。
【0078】
図6を参照すると、線形回帰セグメントを利用する区分ステッチング適合アルゴリズムの実施形態が示される。まず、選択試料窓が、1次と2次の観測信号から選択される(ステップS600)。次に、1次信号数列と2次信号数列が生成される(ステップS602)。次に線形回帰が、1次信号と2次信号の間で測定される(ステップS604)。次に、推定アーチファクトは、線形回帰に基づき生成される(ステップS606)。次に推定アーチファクトは、選択された1次信号数列と2次信号数列の長さに一致するように短縮される(ステップS608)。推定クリーン1次信号は、選択1次信号から推定アーチファクトを除去することによって生成される(ステップS610)。この時点でサイクルは、次に選択される1次信号と2次信号の試料窓に対して繰返し得る。このようにして、種々の実施形態は、区分ステッチング適合アルゴリズムと線形回帰アルゴリズムを利用することによって、高精度で1次信号全体をフィルタリングし得る。
【0079】
図7において示されるように、時変適応性ウインドウイング法はまた、区分ステッチング適合アルゴリズム法の区分的回帰を実装することで可能になる。この設定において、重複セグメントの大きさ、{x(n)}と{y(n)}における窓開始ポイントは全て、窓の大きさと共に変化することが可能である。この方法によって、セグメント別の相関がもたらされ、セグメントは、同じではなく、ポイント当たりの計算数が異なるため、バイアスを有する。しかし、許容アーチファクト波形は、構築されることができないので、アーチファクト除去ECG信号を導き出すべく、{y(n)}から差引かれることが可能である。
【0080】
種々の実施形態において、検知ECG信号とCPR基準信号の両信号における全ての信号試料は、計算とパラメータ記憶動作を開始する。たとえば平均値の計算、自己相関数列の計算、相互相関数列の計算、およびデコンボリューションとコンボリューションの演算が、連続して起こる。しかし、特定の実施形態、たとえば推定などの追加計算において、アーチファクトセグメントは、特定の指数で実行されるだけである。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズムは、信号フィルタリングと分析において必要とされる計算量を減らすことができる。
【0081】
図8A〜図8Dを参照すると、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用するシステムの種々の実施形態が示される。図8Aにおいて示される実施形態は、ECG信号800とCPR基準信号802を区分ステッチング適合アルゴリズム804に入力する。次に区分ステッチング適合アルゴリズム804は、ECG信号800からCPRアーチファクトを除去すると共に、推定された実ECG信号806を更なる使用に提供することになる。
【0082】
図8Bを参照すると、基準信号が存在しない区分ステッチング適合アルゴリズムを利用
するシステムの実施形態が示される。多くの場合、CPR中に記録された低周波数領域のECG信号800は、CPRアーチファクトによって支配されている。従って、基準信号が存在しない場合、低域通過フィルタ808を利用するECG信号800のフィルタリングは、基準信号の特徴を有効にする。正確なCPR関連信号ほど正確ではないが、この低域通過フィルタ808で処理された出力信号810は、区分ステッチング適合アルゴリズム804において{x(n)}として用いられることが可能である。種々の実施形態において、処理の遅延は、有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いることによって、最小化されるか、線形にされる。リードまたはラグ計算は、相関分析を利用し、引き続き適用され得る。種々の実施形態において、低域通過フィルタ808は、たとえば(0〜6)Hzのセレクト信号範囲をフィルタリングする。
【0083】
図8Cを参照すると、種々の実施形態は、CPR基準信号802を用いることによって、幾つかの入力信号から幾つかの入力信号アーチファクト由来のCPRアーチファクトをクリーンにすべく、区分ステッチング適合アルゴリズム804を利用し得る。入力信号には、ECG信号800、pO2信号812、心房血圧(ABP)信号814、中心静脈圧(CVP)信号816、および心音信号818が含まれ得る。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズム804は、多数の信号からCPRアーチファクトを同時にフィルタリングし得ると共に、非破損信号を更なる分析に提供し得る。
【0084】
図8Dを参照すると、CPR基準信号802の不在下で関連成分を有する多数の信号について区分ステッチング適合アルゴリズムを利用する実施形態が示される。CPR基準信号802が利用できない場合、CPRの結果として動きアーチファクトで破損された2つ以上の信号は、区分ステッチング適合アルゴリズム804に送り込まれる。たとえばECG信号800と血液動態信号820は、区分ステッチング適合アルゴリズム804に入力され得る。これらの実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズム804は、それらの信号を相関させると共にCPRアーチファクト成分を推定することが可能である。次に区分ステッチング適合アルゴリズム804は、元のソース信号からCPRアーチファクト成分を除去し、更にCPRアーチファクト824の推定値を示す信号と共にクリーン型の入力信号822を出力することになる。
【0085】
図9に示されるように、種々の実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは、検知信号の状態に基づき第1応答者命令を有効にすべくAEDシステムにおいても利用され得る。たとえば区分ステッチング適合アルゴリズム900は、無脈性調律904、ショック性調律906、および非ショック性調律908の間を判定すべく、調律分析アルゴリズム902と併せて利用され得る。
【0086】
種々の実施形態において、連続CPRを要求する無脈性調律904は、区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用するAEDにおいて判定されることが可能である。これらの状況において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、ECG信号910とCPR基準信号912を連続的に監視し、AEDに同様に実装される調律分析アルゴリズム902にクリーンなECG出力信号914を送る。次に調律分析アルゴリズム902は、無脈性電気的活動または心停止のために連続CPRが必須であると判定し得ると共に、AEDに連続CPR命令916を第1応答者に送達させ得る。
【0087】
存在するCPRを必要とするショック性調律906が存在する場合のCPRの停止とショックの適用は、区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用するAEDにおいてほぼリアルタイムで行われる。これらの状況において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、ECG信号910とCPR基準信号912を連続的に監視し、クリーンなECG出力信号914を調律分析アルゴリズム902に送る。次に調律分析アルゴリズム902は、電気ショックが必要とされることを判定し得ると共に、プロトコルによってCPR
の停止と患者へのショック命令918を送達するようにAEDに命令し得る。このようにして、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、プロトコルに従って治療を提供するために、CPRを中断させ得る。種々の実施形態は、電気ショックと圧迫のサイクルを自動的に同期化するために、自動CPR圧迫を送達する機械的圧迫装置に制御信号が向けられるようにする。非ショック性調律が存在する場合、AEDは、CPR継続命令と他の命令920を送達し得る。
【0088】
特定の実施形態において、AEDは、どの信号処理が、区分ステッチング適合アルゴリズム900によって要求されるかを判定すべく区分ステッチング適合アルゴリズム900を利用する。これらの実施形態において、区分ステッチング適合アルゴリズム900は、推定アーチファクト信号916が低信号振幅を示す状況またはアーチファクトがECG信号910に対して微々たる影響しか有さない状況において、検知ECG信号を出力する。従って、これらの状況において、検知ECG信号910は、区分ステッチング適合アルゴリズム900信号処理を無視することによって、利用され得ると共に調律分析アルゴリズム902に直接送られ得るので待ち時間と所要処理電力を更に減らす。
【0089】
区分ステッチング適合アルゴリズムの実装とCPR基準記号の利用によって、種々の実施形態は、信号対ノイズ比が非常に大きな変動を示す場合、検知信号からノイズを除去することが可能である。たとえば区分ステッチング適合アルゴリズムは、信号対ノイズ比が1〜20の重度アーチファクト状態に対してでさえ、アーチファクトを効率的に描出することが可能であり、心停止の場合ではこの比は、およそ1:1000よりもずっと大きくなり得るので、主としてECGチャネルの固有ノイズ特性によって制限される。
【0090】
図10Aにおいて示されるような検知信号と図10Bにおいて示されるようなCPR基準信号を、種々の実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは分析することができ、CPRアーチファクトを分離できるので、それによって図10Cにおいて示されるような回復ECG信号が生じる。上記のように、他の様々な実施形態において区分ステッチング適合アルゴリズムは、同じ効果に対して別の様々な1次信号と2次信号について同じ分析を実行し得る。従って、たとえば負荷ECG検査機とEEG検査機を妨害する種々の信号は、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用することによって除去され得る。
【0091】
図11を参照すると、本発明の一実施形態に従う区分ステッチング適合アルゴリズムを実装するAED1000のブロック図が示される。デジタル式マイクロプロセッサ支援制御システム1002は、AED1000の動作全体を制御すべく用いられる。電気制御システム1000は、更に第1電極1004と第2電極1006の相互接続と操作性を検査するインピーダンス測定回路を有する。制御システム1002は、プログラムメモリ1010、データメモリ1012、事象メモリ1014、およびリアルタイムクロック1016にインターフェースで連結されたプロセッサ1008を有する。プロセッサ1008によって実行される運転プログラムは、プログラムメモリ1010に記憶される。電気出力は、バッテリ1018によって提供され、発電回路1020に接続される。
【0092】
発電回路1020はまた、出力調整装置1022、リッドスイッチ1024、監視役タイマ1026、リアルタイムクロック1016、およびプロセッサ1008にも接続される。データ通信ポート1028は、データ転送すべくプロセッサ1008に連結される。特定の実施形態において、データ転送は、シリアルポート、USBポート、ファイヤワイヤ、たとえば802.11xか3G、ラジオなどの無線を利用することによって実行され得る。救助スイッチ1030、保全指標1032、診断表示パネル1034、音声回路1036、および警報器1038は、同様にプロセッサ1008に接続される。音声回路1036は、スピーカ1040に接続される。種々の実施形態において、救助光源スイッチ1042と視覚ディスプレイ1044は、付加的運転情報を提供すべくプロセッサ100
8に接続される。
【0093】
特定の実施形態において、AEDは、プロセッサ1008と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ(co−processor)1046を有し得る。区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ1046は、ハードウエアにおいて実装される区分ステッチング適合アルゴリズムであり得ると共に、高速データバスを介してプロセッサに動作可能に接続され得る。種々の実施形態において、プロセッサ1018と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサ1046は、同じシリコン上にあり、マルチコアプロセッサにおいて実装され得る。またプロセッサ1008と区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサは、マルチプロセッサの一部として、それともネットワークプロセッサ配置として実装され得る。これらの実施形態において、プロセッサ1018は、区分ステッチング適合アルゴリズム計算の一部を区分ステッチング適合アルゴリズムコプロセッサにオフロードするので、第1電極1004と第2電極1006由来の検知信号の処理を最適化する。他の実施形態において、プロセッサ1008は、区分ステッチング適合アルゴリズム計算を実行するため、特殊な命令または最適化で最適化される。従って、プロセッサ1010は、より少数のハードウエアリソースを駆使しながら、より少数のクロックサイクルで区分ステッチング適合アルゴリズム計算を実行し得る。他の実施形態において、制御システム1002の論理とアルゴリズムは、ASIC型のハードウエアかFPGA型の組合せ、その他の何れかの論理で実装され得る。
【0094】
高電圧発生回路1048はまた、プロセッサ1008に接続され、前記プロセッサによって制御される。高電圧発生回路1048は、半導体スイッチ(表示なし)と複数のコンデンサ(表示なし)を有し得る。種々の実施形態において、コネクタ1050,1052は、高電圧発生回路1048を第1電極1004と第2電極1006に接続する。
【0095】
インピーダンス測定回路1054は、コネクタ1050とリアルタイムクロック1016の両方に接続される。インピーダンス測定回路1054は、A/D(アナログデジタル)変換器1056を通じてリアルタイムクロックにインターフェースで連結される。別のインピーダンス測定回路1058は、コネクタ1050とリアルタイムクロック1016に接続され得ると共に、A/D変換器1056を通じてプロセッサ1008にインターフェースで連結され得る。CPR装置1060は、コネクタ1052とA/D変換器1056を通じてプロセッサ1008とリアルタイムクロック1016に接続され得る。CPR装置1060は、胸部圧迫検出装置または手動、自動か半自動式の機械的胸部圧迫装置であり得る。
【0096】
同様に当然のことながら模範的実施形態または複数の模範的実施形態は、単なる実施例であり、本発明の範囲、適用性、または構成を何らかの方法で制限しようとするものではない。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者に模範的実施形態または複数の模範的実施形態を実行するのに役立つ開示を提供することになる。当然のことながら、種々の変更は、添付の特許請求の範囲とその法的等価物に示されるような本発明の範囲から逸脱しなければ、要素の機能と配置において行われることが可能である。
【0097】
上記の実施形態は、制限ではなく、例示しようとするものである。付加的実施形態は、特許請求の範囲内である。更に本発明の特徴は、特定の実施形態を参照して記載されてきたが、当業者は、特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨と範囲から逸脱しなければ、形態と詳細において変更し得ることを認めるだろう。
【0098】
当業者は、本発明が上記の何れかの個々の実施形態において例示されるよりも少ない特徴を有し得ることを認めるだろう。本明細書において記載された実施形態は、本発明の種々の特徴を組合せ得る方法を包括的に示すものではない。従って、実施形態は、相互に排
他的な特徴の組合せではなく、むしろ本発明は、当業者によって理解されるような、異なる個々の実施形態から選択された異なる個々の特徴の組合せを有し得る。
【0099】
上記の文書の参照文献による何れかの取込みは、本明細書における明白な開示に反した主題が包含されないように、制限される。上記の文書の参照文献による任意の取込みは、文書に含まれる請求項が、本明細書における参照文献によって取込まれないように、更に制限される。上記の文書の参照文献による任意の取込みは、本明細書において明確に包含されない限り、文書において提供される任意の定義は、本明細書における参照文献によって組込まれないように更に制限される。
【0100】
本発明の請求項を解釈できるように、特殊用語「のための手段」または「のための段階」は、請求項において列挙されない限り、合衆国第35法典第212条第6パラグラフの規定が行使されるべきではないことを明確にしようとするものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECG信号からアーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするフィルタ装置であって、前記フィルタ装置は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号を検知する手段と;
生理的機能を表わすアーチファクト信号を検知する手段と;
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いることによって、前記ECG信号から前記信号アーチファクトを除去する手段と
を備えることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項2】
前記区分ステッチング適合アルゴリズムは、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号から信号試料窓を選択する手段と;
前記選択試料窓に基づき前記ECG信号から1次ECG信号セグメントと、前記アーチファクト信号から1次アーチファクト信号セグメントとを生成する手段と;
前記1次ECG信号セグメントと1次アーチファクトセグメントの間の関係を測定する手段と;
前記測定関係に基づき前記1次ECG信号セグメントにおけるECG信号アーチファクトを推定する手段と;
前記ECG信号の前記1次信号セグメントから前記推定ECG信号アーチファクトを除去する手段と
を備える、
請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
ECG信号からCPR圧迫アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするように構成されたプロセッサを有するフィルタ装置であって、前記フィルタ装置は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号を検知するECGセンサと;
生理的機能を表わすアーチファクト信号を検知するアーチファクトセンサと;
前記アーチファクト信号によってもたらされたECG信号アーチファクトを計算するためと、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用して前記ECG信号から前記ECG信号アーチファクトを除去するためとにプログラムされた、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサと
を備える、フィルタ装置。
【請求項4】
前記区分ステッチングプロセッサは、前記区分ステッチングプロセッサに動作可能に連結されたメモリに記憶された命令を実行するように構成され、前記命令は、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号から信号試料窓を選択することと;
前記ECG信号から1次ECG信号セグメントと、前記アーチファクト信号から1次アーチファクト信号セグメントとを生成することと;
前記1次ECG信号セグメントと1次アーチファクト信号セグメントの間の関係を測定することと;
前記測定関係に基づき前記1次信号における信号アーチファクトを推定することと;
前記1次信号セグメントから推定信号アーチファクトを除去することと
を有する、
請求項3記載のフィルタ装置。
【請求項5】
ECG信号から信号アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするマシン実行プロセスとしてのフィルタ方法であって、前記フィルタ方法は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号をECGセンサで検知することと;
生理的機能を表わすアーチファクト信号をアーチファクトセンサで検知することと;
クリーンなECG信号を生成するため、区分ステッチング適合アルゴリズムを用いるこ
とによって前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることと
を有する、フィルタ方法。
【請求項6】
区分ステッチングアルゴリズムを用いることによって、前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは、
前記ECG信号から第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から第2信号試料窓とを選択することと;
前記第1信号試料窓から1次ECG信号セグメントと、前記第2信号試料窓から1次アーチファクト信号セグメントとを生成することと;
前記1次ECG信号セグメントと前記1次アーチファクト信号セグメントの間の関係を測定することと;
前記関係に基づき前記1次ECG信号セグメントにおける信号アーチファクトを推定することと;
前記1次ECG信号セグメントから信号アーチファクトを除去することと
を有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項7】
前記フィルタ方法は、更にショック性ECG調律を同定すべく調律分析アルゴリズムプロセッサを用いることを有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項8】
アーチファクトセンサで物理的インパルスを表わすアーチファクトを検知すると、
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いることによって前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを起動する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項9】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは、
更に前記ECG信号と前記アーチファクト信号の間の時間遅延に依存して均一な大きさと不均一な大きさの信号試料窓からなる群から選択された信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項10】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは、
更に整合性の開始時間と終了時間を用いて、前記第1と第2の信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項11】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは更に、
非整合性の信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を用いて、前記第1と第2の信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項12】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号
試料窓とを選択することは、
更に適合インデキシングとセグメント別回帰からなる群から選択された信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を示す方法を利用することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項13】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは更に、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号を自己相関させることと;
前記ECG信号と前記アーチファクト信号を相互相関させることと;
信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を測定すべく適合インデキシング法を利用することと
を有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項14】
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いて前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは更に、
シフト自己相関計算を用いて前記ECG信号と前記アーチファクト信号の間の位相リードまたは位相ラグを推定することを有し、
前記位相リードまたは前記位相ラグの計算は、更なる信号試料窓を選択すべくメモリに記憶されることを有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項15】
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いて前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは更に、
均等重付けと中央セグメント重付けからなる群から選択された重付法で1次と2次の信号セグメントを重付けすること
を有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項16】
前記アーチファクト信号は、CPR圧迫信号と血液動態信号からなる群から選択される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項17】
前記アーチファクト信号は、前記ECG信号に帯域フィルタを適用することによって生成される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項18】
前記アーチファクト信号は、等級を生成すべく、時間領域推定を用いることによって等級付けられ、
前記時間領域推定は、ゼロ交差とピークピーク振動からなる群から選択される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項19】
前記等級は、信号対ノイズ比の品質を示すと共に更なる調律同定の信頼基準を提供する、
請求項18記載のフィルタ方法。
【請求項20】
前記フィルタ方法は更に、前記ECG信号と前記アーチファクト信号のノイズ除去を有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項21】
前記フィルタ方法は、更に前記ECG信号とアーチファクト信号の平均値を生成することを有し、
前記平均値は、信号試料窓ごとに更新される、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項22】
前記アーチファクト信号の前記自己相関と、前記アーチファクト信号と前記ECG信号の前記相互相関は、信号試料窓ごとに更新される、
請求項13記載のフィルタ方法。
【請求項23】
前記アーチファクト信号の前記自己相関と、前記アーチファクト信号と前記ECG信号の前記相互相関は、特定信号試料窓長と信号試料窓重複に基づき選択信号試料窓で計算される、
請求項13記載のフィルタ方法。
【請求項1】
ECG信号からアーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするフィルタ装置であって、前記フィルタ装置は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号を検知する手段と;
生理的機能を表わすアーチファクト信号を検知する手段と;
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いることによって、前記ECG信号から前記信号アーチファクトを除去する手段と
を備えることを特徴とする、フィルタ装置。
【請求項2】
前記区分ステッチング適合アルゴリズムは、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号から信号試料窓を選択する手段と;
前記選択試料窓に基づき前記ECG信号から1次ECG信号セグメントと、前記アーチファクト信号から1次アーチファクト信号セグメントとを生成する手段と;
前記1次ECG信号セグメントと1次アーチファクトセグメントの間の関係を測定する手段と;
前記測定関係に基づき前記1次ECG信号セグメントにおけるECG信号アーチファクトを推定する手段と;
前記ECG信号の前記1次信号セグメントから前記推定ECG信号アーチファクトを除去する手段と
を備える、
請求項1記載のフィルタ装置。
【請求項3】
ECG信号からCPR圧迫アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするように構成されたプロセッサを有するフィルタ装置であって、前記フィルタ装置は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号を検知するECGセンサと;
生理的機能を表わすアーチファクト信号を検知するアーチファクトセンサと;
前記アーチファクト信号によってもたらされたECG信号アーチファクトを計算するためと、区分ステッチング適合アルゴリズムを利用して前記ECG信号から前記ECG信号アーチファクトを除去するためとにプログラムされた、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサと
を備える、フィルタ装置。
【請求項4】
前記区分ステッチングプロセッサは、前記区分ステッチングプロセッサに動作可能に連結されたメモリに記憶された命令を実行するように構成され、前記命令は、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号から信号試料窓を選択することと;
前記ECG信号から1次ECG信号セグメントと、前記アーチファクト信号から1次アーチファクト信号セグメントとを生成することと;
前記1次ECG信号セグメントと1次アーチファクト信号セグメントの間の関係を測定することと;
前記測定関係に基づき前記1次信号における信号アーチファクトを推定することと;
前記1次信号セグメントから推定信号アーチファクトを除去することと
を有する、
請求項3記載のフィルタ装置。
【請求項5】
ECG信号から信号アーチファクトをリアルタイムでフィルタリングするマシン実行プロセスとしてのフィルタ方法であって、前記フィルタ方法は、
心臓組織の物理的インパルスを表わすECG信号をECGセンサで検知することと;
生理的機能を表わすアーチファクト信号をアーチファクトセンサで検知することと;
クリーンなECG信号を生成するため、区分ステッチング適合アルゴリズムを用いるこ
とによって前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることと
を有する、フィルタ方法。
【請求項6】
区分ステッチングアルゴリズムを用いることによって、前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは、
前記ECG信号から第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から第2信号試料窓とを選択することと;
前記第1信号試料窓から1次ECG信号セグメントと、前記第2信号試料窓から1次アーチファクト信号セグメントとを生成することと;
前記1次ECG信号セグメントと前記1次アーチファクト信号セグメントの間の関係を測定することと;
前記関係に基づき前記1次ECG信号セグメントにおける信号アーチファクトを推定することと;
前記1次ECG信号セグメントから信号アーチファクトを除去することと
を有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項7】
前記フィルタ方法は、更にショック性ECG調律を同定すべく調律分析アルゴリズムプロセッサを用いることを有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項8】
アーチファクトセンサで物理的インパルスを表わすアーチファクトを検知すると、
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いることによって前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを起動する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項9】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは、
更に前記ECG信号と前記アーチファクト信号の間の時間遅延に依存して均一な大きさと不均一な大きさの信号試料窓からなる群から選択された信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項10】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは、
更に整合性の開始時間と終了時間を用いて、前記第1と第2の信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項11】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは更に、
非整合性の信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を用いて、前記第1と第2の信号試料窓を選択することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項12】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号
試料窓とを選択することは、
更に適合インデキシングとセグメント別回帰からなる群から選択された信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を示す方法を利用することを有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項13】
前記ECG信号から前記第1信号試料窓と、前記アーチファクト信号から前記第2信号試料窓とを選択することは更に、
前記ECG信号と前記アーチファクト信号を自己相関させることと;
前記ECG信号と前記アーチファクト信号を相互相関させることと;
信号試料窓開始時間と信号試料窓終了時間を測定すべく適合インデキシング法を利用することと
を有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項14】
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いて前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは更に、
シフト自己相関計算を用いて前記ECG信号と前記アーチファクト信号の間の位相リードまたは位相ラグを推定することを有し、
前記位相リードまたは前記位相ラグの計算は、更なる信号試料窓を選択すべくメモリに記憶されることを有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項15】
区分ステッチング適合アルゴリズムを用いて前記ECG信号から前記信号アーチファクトを自動的に除去すべく、前記ECGセンサと前記アーチファクトセンサに連結された区分ステッチング適合アルゴリズムプロセッサを用いることは更に、
均等重付けと中央セグメント重付けからなる群から選択された重付法で1次と2次の信号セグメントを重付けすること
を有する、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項16】
前記アーチファクト信号は、CPR圧迫信号と血液動態信号からなる群から選択される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項17】
前記アーチファクト信号は、前記ECG信号に帯域フィルタを適用することによって生成される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項18】
前記アーチファクト信号は、等級を生成すべく、時間領域推定を用いることによって等級付けられ、
前記時間領域推定は、ゼロ交差とピークピーク振動からなる群から選択される、
請求項5記載のフィルタ方法。
【請求項19】
前記等級は、信号対ノイズ比の品質を示すと共に更なる調律同定の信頼基準を提供する、
請求項18記載のフィルタ方法。
【請求項20】
前記フィルタ方法は更に、前記ECG信号と前記アーチファクト信号のノイズ除去を有する、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項21】
前記フィルタ方法は、更に前記ECG信号とアーチファクト信号の平均値を生成することを有し、
前記平均値は、信号試料窓ごとに更新される、
請求項6記載のフィルタ方法。
【請求項22】
前記アーチファクト信号の前記自己相関と、前記アーチファクト信号と前記ECG信号の前記相互相関は、信号試料窓ごとに更新される、
請求項13記載のフィルタ方法。
【請求項23】
前記アーチファクト信号の前記自己相関と、前記アーチファクト信号と前記ECG信号の前記相互相関は、特定信号試料窓長と信号試料窓重複に基づき選択信号試料窓で計算される、
請求項13記載のフィルタ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【公開番号】特開2011−98198(P2011−98198A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−246339(P2010−246339)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(507055084)カーディアック・サイエンス・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】Cardiac Science Corporation
【住所又は居所原語表記】3303 Monte Villa Parkway, Bothell, Washington 98021, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246339(P2010−246339)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(507055084)カーディアック・サイエンス・コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】Cardiac Science Corporation
【住所又は居所原語表記】3303 Monte Villa Parkway, Bothell, Washington 98021, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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