説明

医学的美容脂肪萎縮方法

コルチコステロイドの局所注射、より具体的には、コルチコステロイドの病巣内注射及び好ましくはトリアムシノロン及びその誘導体の注射が、深いレベルで皮下脂肪内に注射して顔及び身体の小型脂肪蓄積の美容的脂肪萎縮を引き起こすための医薬を製造するために適する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともひとつの注射可能なコルチコステロイド及び希釈剤、好ましくは麻酔薬溶液を含み、顔及び身体の小型脂肪蓄積物を前記脂肪細胞を萎縮させることにより減少させるための医薬を製造するために適する組成物に関する。
【0002】
現在、脂肪の皮下蓄積は、脂肪吸引を用いる外科手段又は直接の外科的手段により処置されている。顔の特定の領域での加齢により生じるなどの小型脂肪蓄積については、脂肪吸引はあまりに過激であり、合併症又はリスクを伴うことが知られている。
【0003】
ホスファチジルコリン(PPC)及びデオキシコール酸ナトリウムなどの注射可能な医薬物は、脂肪溶解試薬として知られており、また過去数年の間いくつかの国で使用された(特にブラジルで2002年まで)。しかしそれらの安全性も効果も研究されたことはない。さらに、これらの医薬物はまた、動物実験では死亡するなどの強い副作用を伴っていた。


【0004】
US2005/0143347には、脂肪の皮下蓄積を取り除く方法が、少なくともひとつのリン脂質及び/又は少なくともひとつの胆汁酸及びリボフラビンなどの脂肪分解を補助する成分を含む水溶性調製物とともに記載されている。抗炎症成分が該調製物に添加されてよい。
【0005】
用語「コルチコステロイド」は、副腎皮質由来の成分を意味する。技術用語として、コルチコステロイドは、グルココルチコイド及びミネラルコルチコイド(これらは、前記副腎皮質により生成されるホルモン類似体である)の両方を意味するが、しばしば、グルココルチコイドと類義語として使用される。グルココルチコイドはステロイドホルモンのクラスであり、グルココルチコイドレセプタ(GR)と結合し類似の効果を生じさせることができることが特徴である。グルココルチコイドは、ミネラルコルチコイド及び性ステロイドとはそれらの特定のレセプタ、ターゲット細胞及び効果の点で区別される。
【0006】
グルココルチコイドは、強い抗炎症性及び免疫抑制性を持つ。これは特に、それらが薬理学的投与量で投与された場合にそうであるが、しかしまた、通常の免疫応答においても重要である。その結果、グルココルチコイドは、多くの悪条件、アレルギ、自己免疫疾患及びぜんそくなどの炎症性疾患を含む多様な症状の処置に必要とされる(New England J Med2005;353:1711−23)。
【0007】
コルチコステロイドは局所的、経口及び注射で投与され得る。注射可能なコルチコステロイドは現在薬剤に使用されている。これには、コルチゾン及びハイドロコルチゾンなどの短時間作用型の注射可能コルチコステロイドを含む。短時間作用型の注射可能コルチコステロイドには、例えばプレドニゾン、プレドニゾロンテブテート、トリアムシノロン及びメチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンアセテートなどの誘導体が挙げられる。長時間作用型のコルチコステロイドには、例えば、デキサメタゾン及びその誘導体例えばベータメタゾンジプロピオネート、ベータメタゾン二ナトリウムリン酸及びベータメタゾンアセテートなどが挙げられる。
【0008】
トリアムシノロン及び他の全身性コルチコステロイドは強い抗炎症性効果を持ち、このことが、これらの化合物を薬剤中で広く使用される理由である。Medlineでは25000を超える論文が注射可能なコルチコステロイドについて刊行され、5000を超える論文がトリアムシノロンについて刊行されている。注射可能なコルチコステロイドは通常安定な水溶性分散物の形で販売され、また特許出願又は特許にも記載されている。例えば、トリアムシノロンアセトニド硝子体内注射形について、TriesenceのUS6、395、294(Alcon社開発、2020年1月13日まで有効)が挙げられる。
【0009】
トリアムシノロンアセトニド注射可能な分散物(Kenalog(R)−40注射液、Bristol−Myers Squibb Company、イタリア)は、合成コルチコステロイドであり、全身性免疫抑制及び抗炎症性効果を、種々の皮膚疾患の症状のための他の病巣内又は近病巣内局所効果同様に、提供するために設計されたものである。
【0010】
トリアムシノロン及び/又は他の注射可能なコルチコステロイドは通常皮膚病疾患の病巣内注射のために用いられる。また同様に関節炎及び関節痛などの他の特定の疾患にも用いられる。病巣内コルチコステロイド注射は、全身性吸収を最小として、作用位置に直接前記医薬を高濃度で放出する。これらの医薬は、非常に多くの疾患及び症状について、異なる年齢の患者について、非常に安全、低コスト及び有効であると考えられている。少ない回数の適用で少量投与は、非常に安全と考えられており、また重篤な疾患の患者にとってもそうであると考えられている。
【0011】
加齢(老化)は、内的及び外的老化により生じるものであり、硬質組織及び軟質組織内に変化が生じるものである。筋肉の過剰活動は運動性しわを生成し、最近ボツリヌス毒素で治療されている。硬質及び軟質組織の減損は、最近は充填物を用いて治療されている。表面の変化は切除又は非切除技術により処置され、同様に局所的レチノイド及び他の活性成分により処置されている。現在まで、老化に関連して脂肪蓄積のための医学的に許可された薬物はない。過剰体重の人々の目の下、腹部又は尻に生じる脂肪体は萎縮することが報告されている。また、これらの人々がLipostabil(R)NI.V.の皮下注射を受けた場合に、これらの人々の外見にエステティック改善があったと言われている(Patricia Guedes Rittes、「The Use of Phosphatidylcholine for Correction of Lower Lid Bulging Due to Prominent Fat Pads」、DenvatoL Surg. 2001;27:391− 392)。残留する小型脂肪堆積はまた、脂肪吸引後の共通の不満でもある。
【0012】
脂肪の皮下蓄積を非外科的に除去するための効果的化合物を見出す試みにおいて、驚くべきことに次のことが見出された。即ち、トリアムシノロン及び/又は他のコルチコステロイドを、低容量で数回皮下投与することで(これまで多くの疾患及び症状のために用いられてきた)、顔及び身体での小型脂肪蓄積を安全かつ効果的に退縮させる、ということである。
【0013】
本発明は従って、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)場合により、血管収縮剤を含む又は含まない少なくともひとつの麻酔溶液、
d)場合により、皮膚萎縮を防止するひとつの成分、
e)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0014】
他の好ましい実施態様において、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により、血管収縮剤を含む又は含まない少なくともひとつの麻酔溶液、
c)場合により、皮膚萎縮を防止するひとつの成分、
d)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0015】
本発明はさらに、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)場合により、皮膚萎縮を防止するひとつの成分、
d)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0016】
本発明の内容において、前記組成物はひとつ又はそれ以上のコルチコステロイドを含むことができ、また例えば同じ生理的媒体中で2つ以上を組み合わせてもよい。
【0017】
本発明はさらに、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくとも2つ以上のコルチコステロイド、
b)場合により少なくともひとつの麻酔溶液、
c)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0018】
本発明はさらに、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくともひとつ又はそれ以上のコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)少なくともひとつの、血管収縮剤を含む又は含まない少なくともひとつの麻酔溶液、
d)リン脂質又はデオキシコール酸などの少なくともひとつの脂肪分解活性成分、
e)少なくともひとつの皮膚萎縮を防止又は皮膚萎縮の拡がりを防止するする成分、
f)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0019】
本発明はさらに、脂肪の皮下蓄積の小領域を減少させるための医薬の製造のための組成物の使用に関するものであり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
b)少なくともひとつの、血管収縮剤を含む又は含まない少なくともひとつの麻酔溶液、
c)前記脂肪分解を補助する成分、
d)少なくともひとつの皮膚萎縮を防止する成分、
e)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む。
【0020】
本発明はさらに、前記組成物を、脂肪吸引及び他の局所脂肪蓄積の残留領域を含む、顔及び身体における小型脂肪蓄積の処置のための医薬を製造するための使用に関する。
【0021】
本発明はさらに、前記組成物を、セルライト及び脂肪関連腫瘍の隆起領域などの本来望ましくない脂肪分配異常を処置するための医薬を製造するための使用に関する。
【0022】
本発明のひとつの実施態様は、小型脂肪蓄積を減少させるか低減させる方法であり、前記方法は、必要な個人に十分な量の組成物を投与することにより、前記組成物は、少なくともひとつの注射可能なコルチコステロイドを生理学的に許容される媒体と共に含む。前記組成物はさらに、少なくともひとつの麻酔薬及び/又は少なくともひとつの皮膚萎縮を防止する成分を含む。好ましい実施態様では、前記組成物は必要とする個人に、皮下脂肪領域へ局所注射により投与される。
【0023】
希釈剤とは、注射可能なコルチコステロイドの許容される全ての希釈剤を意味し、好ましくは0.9%生理的食塩水又は生理的食塩水プラス麻酔薬溶液又は麻酔薬溶液のみである。希釈剤としての注射可能な麻酔薬溶液は好ましくは、処置をより痛みの少ないものにする。最もしばしば用いられる麻酔薬溶液は、活性成分としてリドカインを含むが、ブピバカイン及び他の成分も使用され得る。
【0024】
本発明の他の実施態様において、血管収縮剤が注射可能な麻酔薬溶液に導入され、従って前記活性成分が注射位置に維持され、麻酔薬の安全投与を増加する。最もしばしば使用される血管収縮剤はエピネフィリン及びフェニレフリンが挙げられる。
【0025】
生理学的許容される媒体とは、病巣内又は皮下注射と整合性のある媒体を意味する。この媒体は予め調製されるか、又は使用直前に調製され得る。
【0026】
前記組成物の本発明による使用を通じて、上記説明された外科的処置のリスク及び副作用、及び現在使用される投与量での注射可能な脂肪溶解剤から起こるリスク及び副作用を防止することが可能となる。
【0027】
全身性コルチコステロイソの使用のための禁忌には、糖尿病、感染性疾患、HIV、精神疾患、SAH及び他の具体的な症状が含まれる。
【0028】
短期間に全身性コルチコステロイドの少量投与は、上で説明した症状を持たない患者には安全であることが、研究で示されている。局所投与(例えば、関節内、滑液嚢内、皮内、病巣内など)の投与量は所与量のみである。トリアムシノロンは0.15mg/kg未満である。実際の投与量は病変部のサイズ及び処置される症状の重症度に依存する。
【0029】
コルチコステロイドのより安全な使用は、推奨投与量で1週間未満を意味する。これらの化合物の頻繁な適用及び高投与量は全身性副作用を生じる恐れがある。少量でも長期間にわたって使用を続けると、全身性副作用を生じる恐れがある。
【0030】
グルココルチコイド治療の利益は短期間の血管の変化及び制限的な免疫抑制からもたらされるものであるが、長時間又は高投与量治療は多重の副作用を生じる(Pharmacol Ther 2002; 96: 23−46)。グルココルチコイド治療は2つの区別されるメカニズムにより高血圧を生じる恐れがある。ひとつは、腎臓でのナトリウム保持及び続く血液容量の増加に伴うメカニズムである。他のひとつは、アンジオテンシンII及びカテコールアミンへの昇圧応答の可能性による結果である(Cardiovas Res 1999、41:55−64)。吸入されるグルココルチコイドでさえも循環系に吸収され、子供の成長速度を減少させるなどの副作用を生じる恐れがある(J Allergy Clin Immunol 2003;112:Suppl 3:s1−s40;Arch Inter Med 1999;159:941−55)。
【0031】
経口及び非経口でのコルチコステロイドの最も知られた副作用は、腺副腎萎縮、クッシング症候群、脂質異常症、高血圧、血栓症、血管炎、行動、認知、記憶、気分の変化(即ち、グルココルチコイド惹起精神病)、脳萎縮、消化管出血、膵炎、消化性潰瘍、潜伏ウイルスの活性化、日和見感染症、創傷治癒の遅延、紅班、多毛症、口囲皮膚炎、点状出血、グルココルチコイド誘発性座創、皮膚摩擦線状、毛細血管拡張症、皮膚萎縮(10mg又は25mgのハイドロコルチゾンの投与量でのトランスシノロンの一回注射を含む)、骨壊死、筋萎縮、骨粗しょう症、縦骨成長遅延、白内障、緑内障、思春期遅発症、胎児成長遅発症、性腺機能低下が挙げられる(New England J Med 2005;353:1711−23;British Journal of Rheumatology 1991;30:39−44)。
【0032】
最近のある総説によると、短期間経口コルチコステロイド投与の副作用、例えば無血管壊死及び免疫能患者で致命的水痘帯状疱疹のいくつかのケースが起こり得ることを報告している。重篤な気分変化及び精神的反応は、短期間コルチコステロイドではほとんど予期せずには起こらない。これらの事象はまれであり、短期間のコルチコステロイドでのほとんどの処置は問題は起こらない。調査された文献は明確に、特別の禁止指示がない場合、1週間のコルチコステロイドの短期間投与はほとんど有害ではない(精神的又は前精神的事例は除外され得る)(J Cutan Med Surg.2008;12(2):77−81)。
【0033】
トリアムシノロンアセトニドは、硝子体内注射として、感染性眼内炎、一時的網膜中心動脈閉塞、結膜潰瘍、網膜剥離、サイトメガロウイルス網膜炎及び後嚢下白内障の潜在的再活性化などのいくつかの合併症に対して使用されてきた(Ophthalmologe.2004 Feb;101(2):121−8.、Ophtalmol.2008 Sep;31(7):693−8;J Drugs Dermatol.2008;7(8):757−61)。病巣内トリアムシノロンアセトニドは、肥厚性及びケロイド瘢痕の治療に広く使用されてきた。合併症はまれであり、通常は局所的皮膚の色変化、目立つ血管マーク、又は皮下萎縮などである。病巣内トリアムシノロンアセテートの投与後のクッシング症候群についてはすでに記載された(Ann Plast Surg 1996 May;36(5):508−11)。
【0034】
「病巣内注射」なる用語は、特定の領域、症状又は病巣へ注射することを意味する。しかし、本発明の内容においてコルチコステロイドの投与は、好ましくは、皮下注射で実施される。ここでは脂肪蓄積が人の顔及び身体に局在している。
【0035】
トリアムシロンは、アセトニドだけでなく他の形例えばヘキサアセトニドもまた、非経口及び/又は病巣内及び/又は皮下注射のために使用され得る。短時間作用注射可能なコルチコステロイドはこの医学的指示において使用されることが好ましい。
【0036】
皮膚科における、トリアムシノロンの病巣内注射及び他の注射可能なコルチコステロイドの副作用には、高投与量及び頻繁な使用の場合に、皮膚脱色、皮膚萎縮及び全身性福作用のリスクが挙げられる。
【0037】
Pariser及びMurrayは、トリアムシノロンアセトニドの5mg/cmを超える濃度ではより高い皮膚萎縮のリスクがあると記載している(Pariser H、Murray PF.Intralesional Injections of Triamcinolone.Effects of different concentrations on psoriatic lesions.Arch Dermatol.1963 Feb;87:183−7)。
【0038】
表皮への注射は初期に皮膚脱離及び永続的な皮膚萎縮を生じ、深い真皮と皮下組織に最小限の表皮変化及び脂肪の種々の減損を生じる(Donofrio LM.Panfacil volume restoration with fat.Dermatol Surg 2005;31:1496−1505)。
【0039】
皮膚萎縮の他、病巣内注射による皮膚及び真皮への副作用には、脱色、上方皮膚の張りを伴う非対称な容量減少などである。皮下脂肪への適用がなされた場合、これらの局所的効果は主に表面注射に関係する。局所的副作用の皮膚壊死又は萎縮などのリスクはまれであり、望まれるのは局所的萎縮が脂肪組織についてのみであり、皮膚(表皮及び真皮)についてではない。
【0040】
用語「局所麻酔薬」は、注射可能な及び/又は局所的化合物を意味する。注射可能な麻酔薬は、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン;クロロプロカイン、プロカイン、アルチカイン/エピネフリン及びリドカインから選択され、さらに希釈剤としても使用され得る。局所麻酔薬クリーム又は冷却剤も注射の痛みを減少するために使用され得る。
【0041】
局所麻酔溶液は、アドレナリンなどの血管収縮を引き起こす物質を含むことも、含ませないこともできる。麻酔薬に添加される血管収縮剤は局所効果を限定し増加することが可能であり、又は局所麻酔薬の安全投与量を、リドカイン4mg/kgから7mg/kgへ増加することができる。Jeffrey Kleinによる研究により、局所麻酔薬の安全投与量は膨張性(tumescent)麻酔として使用される場合には35mg/kgに達することができることが知られている。
【0042】
局所麻酔薬溶液で希釈された1月当たり4mgの平均トリアムシノロンを3又は4ヶ月の投与が局所脂肪の処置に推奨される。
【0043】
本発明の組成物は、例えば0.1mgのトリアムシノンアセトニド(40mg/mL)と0.2mlのリドカインをフェニレフィリンで溶解することで生成される。ここに、抗萎縮剤又は脂肪溶解剤を添加してもよい。
【0044】
活性医薬(コルチコステロイド)を含む溶液又は分散物は通常濃縮されている。その後希釈剤を添加して溶液量を増加させる。又は、麻酔薬溶液を希釈剤として又は希釈剤の代わりに添加して溶液量を増加させて患者の処置をより心地よいものとする。本発明の組成物の生成は通常適用の際に行われる。
【0045】
または、活性医薬(コルチコステロイド)を含む溶液又は分散物は、適切な安全投与量に適切に希釈され、麻酔薬を添加するかは医者の裁量である。
【0046】
本発明により適用される組成物及び医薬剤形を同時に導入することはまた膨張方法(tumescence method)を介して特定に応用において行われることができる。この方法は、均一な分布を保証し、手順の安全性と効率を増加させるための静水圧を用いるものである。これらは、本発明の調製物をより大きな容量の生理的食塩水及び/又は他の必要な医薬剤に溶解することで達成され得る。該技術の変法はまた、局所膨張(tumescence)麻酔により活性薬剤(トリアムシノン又は類自物)の注射手順によりなされ得る。
【0047】
本発明の内容において、追加の成分を前記組成物に加えることができる。
【0048】
本発明で適用される前記組成物及び同等の医薬剤形は、脂肪の上に皮下注射することで投与される。これは「局所」又は「病巣内」注射と呼ばれる。深いレベルでの皮下注射が美容脂肪萎縮のために好ましい。
【0049】
適切な調製物及びや医薬剤形は分散物、乳化物又は中可能な溶液である。また、活性成分の長期放出性製品であって、該製品中に通常の補助物が使用されるものも含まれる。調製はまた、例えば安定性を増加させるため、濃縮物、乾燥物又は凍結乾燥物の形であってもよい。
【0050】
これらの医薬製品は好ましくは投与量単位で製造され投与されるものである。それぞれの単位が前記組成物の特定量を活性成分として含む。アンプルでの注射用溶液の場合、この投与量は調節され得る。好ましくは約3mgから10mgのトリアムシノロンアセトニド又は他の注射可能なコルチコステロイドの等価な投与量である。
【0051】
大人患者の処置のために必要な月ごとの投与量は、処置される脂肪組織のサイズに依存し、3mgから10mg、好ましくは3mgから5mgの、トリアムシノロンアセトニド、又は他の注射可能なコルチコステロイドの同等物を投与するための溶液を投与する。
【0052】
注射される適切な調製物語及び医薬剤系はまた、投与前に、好ましくは生理的食塩水で希釈され得る。しかしある場合には、月ごとのより高い又はより低い濃度が適切となる。投与量はまた処置される面積、疾患、症状に依存し又は処置される脂肪の厚さに依存する。
【0053】
月ごとの投与量は、単一の投与量ユニットの剤形の一回投与又は少量投与量ユニットの複数の投与、及び既定期間での分割投与量の多数回投与であり得る。
【0054】
用語「脂肪分布の皮下障害」とは、人及び動物の身体の脂肪組織を意味し、遺伝的に関連して又は食事に関連して局在化されたパッド状脂肪の形で蓄積された脂肪として生じ、美容上問題となる重要な領域、例えば腹部、臀部、腰、膝、ふくらはぎ、太もも、上腕、あご、頬などの領域に蓄積する。
【0055】
「脂肪蓄積の小さな局在領域」とは、顔又は身体に局在する脂肪の10cmから30cmの全ての領域を意味し、脂肪細胞の数又はサイズにつき増加することにより生じる。これらには、ペリブカル、眼球の飛び出し、顎下腺脂肪、腹部及び/又は背の小さな隆起領域、ラブハンドル、尻の突き出た領域など含み、また脂肪吸引やサブシションなどの外科手順による過剰な応答が含まれる。これらは通常美容上の欠陥と考えられている。
【0056】
「脂肪細胞萎縮」とは、皮膚剖検により示されるように脂肪差相棒のサイズ及び/又は数の減少を意味する。この脂肪細胞萎縮は治療されている小型局在脂肪蓄積を減少に導く。
【0057】
多くの知識及び刊行されたデータにより、トリアムシノロン及びその誘導体は、他の経口コルチコステロイド同様に非常に安全と考えられている。本特許は、トリアムシノロンの局所注射の新たな使用の可能性を報告するものである。この局所注射はまた「局所」又は「病巣内注射」と呼ばれ、小型の局在化した脂肪蓄積を前記脂肪細胞のサイズ及び脂肪厚さを減少させることで、美容上の脂肪萎縮を導くものである。これは、迅速、効果的、コスト的効果的及び低リスクの手順であり、美容目的にとって有用である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、処置前のヘマトキリシン−エオシンで染色された脂肪組織及びいくつかの脂肪細胞の同じ拡大率を用いた画素での測定を示す組織学的画像である。
【図2】図2は、図1と同じ領域の脂肪組織のサンプルを示す組織学的画像である。トリアムシノロンの局所注射により一回の処置を受けた後1月の皮膚剖検からの結果である。処置された領域では脂肪細胞の直径平均が減少している。 図1及び図2は、トリアムシノロンの一回の注射による処置を受けた恥骨領域の剖検での地形計測を示す。図1は処置前、図2は、処置後1月である。同じ拡大率での光学野で観測された脂肪細胞数平均は光学やにつき4から7へ増加した。脂肪細胞の平均領域は31661から21705画素へ減少した。また平均直径は190から153画素に減少した。
【0059】
図3及び4は、MRI検査結果を示す。図3は処置前、図4はトリアムシノロン注射による処置を一回行った後を示す。顔脂肪の研究領域の厚さは、処理前(1.1cm)から処置後(0.8cm)へ27.3%の減少であった。
【0060】
図5及び図6は、同じ患者のTA注射のためにマークされた領域を示す。図5は処置前、図6はTA注射一回の処置の後を示す。
【0061】
いくつかの実施態様のひとつである次の実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0062】
処置された患者の遡及的サンプルが、顔の小型局在脂肪領域を処置する新たな治療方法を記載する目的で提示される。前記、顔の小型局在脂肪領域は顔の若さ及び美しさに干渉する。さらに、顔の小型局在脂肪領域を安全に処置するための最小の侵襲性処置の要求が存在する。
【0063】
研究設計及び方法
顔の小型局在脂肪蓄積の一連のケースが、ブラジル南部、Porto Alegreの個人病院で、2005年3月から2008年10月まで、局所トリアムシノロンによる処置が実施された。顔の局所脂肪領域を持つ56人の女性患者がこのサンプルに含まれた。彼等は、麻酔薬溶液(0.02g/mlリドカインプラス0.0004g/mlフェニレフリンNovocol(R))に、患者の必要に応じて異なる濃度及び適用回数で溶解したトリアムシノロン(Kenalog(R)−40Injection)の注射を受けた。
【0064】
処置された領域は下顎及び顎下領域、及び、下瞼であった。患者は、顔のこれらの領域に、0.33cc BD Ultra FineIIシリンジで短い注射針を用いて注射を受けた。全ての注射は、皮膚表面下4から7mmの皮下で実施された。希釈されたトリアムシノロンを処置領域の1cm離して注射された。
【0065】
ひとりの患者を、トリアムシノロン注射前及び後で、皮下組織の厚さの変化で結果を示すために、顔磁気共鳴イメージング(MRI)に供した。磁気共鳴イメージング検査は、専用柔軟コイルを持つ1.5テスラ閉ボアスキャナ(Magnetom Symphony Maestro Class、Siemens、Eriangen、Germany)を用いて実施された。重み付きT1(600ms/14ms、Time Repetition/Time Echo)及び重み付T2(2500ms/45ms、TR/TE)ターボスピンエコーシーケンスを用いて、環状、軸、及び矢印面で、特に矢印面を強調して実施された。経験豊富な放射線専門家がMRIイメージングを解析した。SQ脂肪組織の厚さはSyngoソフトウェア(Siemens、Eriangen、Germany)を用いてミリメートル(mm)の単位で測定された。
【0066】
他の患者は、処置前及び後に、3mmのパンチ剖検に供した(ひとつはおとがい領域でひとつは恥骨上)。SQ組織の組織学的試料をヘマトキシリン及びエオシンで染色し(HE染色)、またフローサイトメトリを組織学的イメージングにおいて処置の前及び後で、実施された。
【0067】
医学的記録には、該研究が行われた個人皮膚科病院で、トリアムシノロン注射と共に実施された主な外科美容手順を含まれていた。
【0068】
市販の麻酔薬成分で希釈されたトリアムシノロンで処置された顔の局在脂肪領域を持つ56人の記録が遡及的に検討された。全ての患者は白人女性であり平均年齢は57.2±12.2歳であった。トリアムシノロン適用の統計データ及び特徴は病院ファイルから得られた。ここで主な適用領域、前記医薬の希釈及び適用回数に焦点を当てた。これらのデータは表1に提示されている。
【0069】
【表1】

年齢は平均±標準偏差で表した。

注射の回数に関しては、次のように実施された。顎下領域には一回、眼窩下には1又は2回(この群の患者の62.5%が一回、36.5%が2回)、下顎領域には1から3回(この群の患者の70.3%が1回、27%が2回、2.7%のみが3回)であった。
【0070】
患者の57%が、外科処置と同じ日に実施された他の美容手順を実施した。これらの患者はトリアムシノロン注射を受け、トリアムシノロン注射と共に、30.3%がまた充填を受け、16%がまたボツリヌス毒(TX)を受け、及び10.7%が両方受けた(充填及びBT)。
【0071】
29人の対象者(51.78%)が評価のために病院を再度訪れた。彼等の全てが、手順の結果に非常に満足しており、重篤な悪化は見られなかった。これらの対象者を評価した医者は、前記脂肪領域の減少により顔の輪郭が医学的にも美容的にも改善されたと考えた。図4及び図5にその前後につき示されている。27人の患者は評価のために再度病院を訪れていない。従って対象者の満足度及び医学的改善については欠けている。
【0072】
軸平面で行われた高分解MRIイメージングは、処置領域(下顎領域)でSQ脂肪組織の相当の減少があることを示した。MRIで示された脂肪厚さの減少は下顎領域で37.5%(0.8から0.5cm)及び顎下領域で33.3%(0.6から0.4cm)であった(図3及び図4)。
【0073】
組織学的分析は、一回の処置の前後で示されるように、注射された場所の脂肪組織の容積における減少は約30%であることを示した。フロ−サイトメトリ結果は、脂肪組織の平均直径の減少を示し、同じ拡大率の視野での視野あたりに見える脂肪細胞の数が増加したことを示した(4から7)(図1及び図2)。
【0074】
患者のこの群では、いくつかの局所副作用も見られた。患者の大部分は、注射の間、又は直後に痛み及び少しの紅班が生じた。多くの患者が種々の数及びサイズの血腫を表し、数日後には消失した。この新たな技術を行った患者には、重篤な局所的又は全身的副作用は全く見られなかった。前記医薬の潜在的な全身性吸収の評価については実験室的検査はなされていない。
【0075】
美容上の局所副作用は3人の患者で見られ、以下記載する。
(1)注射後2ヶ月で現れた、下瞼での皮膚起伏の下がりの一例。処置はせず、1月後に消失。
(2)皮膚及び皮下萎縮の一例。偶然表面注射により生じた。これは、下顎領域の注射を行う間に患者の絶え間ない会話により起こり得る。これは、少量のヒアルロン酸(Restylane−Q−Med)の充填注射により処置された。
(3)下顎皮膚のたるみが増加が見られた一例。この患者はしかし不平を述べていなかった。これは赤外線の照射により治癒され得る。
(4)首の前腹部が非対称的となった一例。これは、2回目のトリアムシノロン処置で改善された。準最適応答がまた起こり得る。
【0076】
コルチコステロイドの全身性服作用のリスクによる前記組成物の数ヶ月間の注射についての指示がある。
【0077】
結論
顔の皮下脂肪は、次の別々の解剖学的部分の分割される:鼻唇脂肪、頬脂肪、額及び一時的脂肪、眼窩脂肪及び顎脂肪である。
【0078】
若い顔は、皮下部分間の充填性及び滑らかな推移により特徴付けられる。顔の老化は、部分的に、これらの部分が年齢と共にいかに変化するかである。加齢は、これらの領域の間の突然の輪郭変化を生じさせる。これは、多くの場合これらの部分の容量の減少や位置の異常により生じる。若い顔は底部を上にした三角形に見える。加齢顔では、下顎骨回りの脂肪蓄積が底部を下にした三角形のように見える。
【0079】
しばしば不満とされ、皮膚のたるみを増加させる顔の脂肪蓄積に関する加齢についての研究はまれである。これらは通常この問題を外科的手順で対応しようとしている(Hexsel D、Serra M、Mazzuco R、 Dal’Forno T、Zechmeister D.J Drugs Dermatol.2003 Oct;2(5):511−8;Rotunda AM、 Kolodney MS. Dermatol Surg.2006;32(4):465−80)。
【0080】
病巣内及び局所的に、少量のトリアムシノロンを注射することは、ケロイドなどの多くの皮膚症状の治療のために皮膚科学的に非常に使われている。多くの知識及び刊行物により、トリアムシノロンの病巣内注射は安全と考えられる。
【0081】
病巣内コルチコステロイド注射は、作用地点に直接高濃度の医薬を放出し、従って全身性吸収を最小とする(Firozz、1995)。注射のために使用される多くのコルチコステロイドのうち、とりわけトリアムシノロン及びその誘導体はより普通に皮膚科で使用されており(Firozz、1995)、トリアムシノロンはその生理学的特徴により、より許容性がある(Callen、1981)。
【0082】
この特許出願は、この医薬を、病巣内及び局所的に注射して、顔の脂肪細胞のサイズを前記脂肪の厚さと同様に減少させることで顔の美容上の脂肪萎縮を引き起こすという、新たな潜在的使用を報告するものである。
【0083】
これは、迅速な、効果的な、低費用の、かつ低リスクの最小侵襲性手順である、美容目的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともひとつの注射可能なコルチコステロイドを生理学的に許容される媒体と共に含む組成物の十分な量を、個々に投与することにより、小型脂肪蓄積を減少させる又は縮小させる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であり、前記組成物がさらに注射可能なコルチコステロイドの希釈剤を含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の方法であり、前記組成物が少なくともひとつの麻酔薬を希釈剤として含む、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であり、前記組成物がさらに少なくともひとつの皮膚萎縮防止剤を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であり、前記組成物を、病巣内又は皮下注射により個々に投与される、方法。
【請求項6】
皮下蓄積脂肪の小領域を減少させるための医薬を製造するための組成物の使用であり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)場合により少なくともひとつの血管収縮剤を含む又は含まない麻酔薬及び/又は
d)場合によりひとつの皮膚萎縮防止成分、
e)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む、使用。
【請求項7】
請求項6に記載の使用であり、前記組成物が:
a)少なくともひとつ又はそれ以上のコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)場合により少なくともひとつの血管収縮剤を含む又は含まない麻酔薬、
d)少なくともひとつの、リン脂質又はデオキシコール酸塩などの脂肪分解成分
e)少なくともひとつの皮膚萎縮又はその萎縮物の拡大を防止する成分、
f)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む、使用。
【請求項8】
請求項6に記載の使用であり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)少なくともひとつの血管収縮剤を含む又は含まない麻酔薬、
d)前記脂肪分解を補助する成分
e)少なくともひとつの皮膚萎縮防止する成分、
f)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む、使用。
【請求項9】
組成物であり、前記組成物が:
a)少なくともひとつのコルチコステロイド、
b)場合により希釈剤、
c)場合により、少なくともひとつの血管収縮剤を含む又は含まない麻酔薬、
d)場合により皮膚萎縮防止するひとつの成分、
f)生理的食塩水又は生理的pH溶液、を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3−4】
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【図5−6】
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【公表番号】特表2012−519189(P2012−519189A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552282(P2011−552282)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【国際出願番号】PCT/BR2010/000059
【国際公開番号】WO2010/099587
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511213421)
【Fターム(参考)】