説明

医用画像における傷病部位の検知

被験体の医用画像から傷病部位を検知するシステムとして、試料束提供手段、学習エンジン及び検知エンジンを備えるシステムを提案する。試料束には、同じ被験体を第1方式で撮影した第1方式医用画像と第2方式で撮影した第2方式医用画像を各1枚以上含める。学習エンジンは、それら第1及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定する手段を提供する。検知エンジンは、その試料束を構成する医用画像1枚以上からその特徴を備えた部位を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディジタル画像処理技術、特に医用画像(メディカルイメージ)から傷病部位(アブノーマリティ)を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医用画像撮影(メディカルイメージング)は様々な疾病の検診、診断、処置等で重要な役割を担っている。これは、撮影で得られる医用画像から医師が患者の体内組織を看取することができ、また生理や代謝に関する状態を画像化できるためである。医用画像撮影には様々な方式(モダリティ)があるが、そのなかでも臨床医療の現場で広く用いられているのはX線CT(コンピュータ断層撮影)、超音波診断、核医学検査、超音波撮影、MRI(磁気共鳴イメージング)等である。X線CT、超音波診断及びMRIでは体内組織の構造を表す画像を、また核医学検査では各種体内組織(器官や腫瘍)における放射性物質の代謝吸収即ち体内動態を表す画像を、それぞれ得ることができる。この他、生理系の機能特性を画像化できる方式としてはfMRI(機能的MRI)、SPECT(単光子放射コンピュータ断層撮影)及びPET(陽電子放射断層撮影)がある。そして、更に他の体内組織静止画/動画撮影方式として、カメラ内蔵内視鏡を用いる種々の方式、例えば大腸/結腸内視鏡検査、気管支鏡検査、胃/腸カメラ検査及びカプセル内視鏡検査がある。
【0003】
但し、これらの方式にはそれぞれ長所と短所がある。例えばX線撮影には、空間解像度及び強度分解能が高く、骨組織の精緻な画像を得ることができ、そして比較的利用コストが低いという長所があるが、反面、得られる2D画像(二次元画像)上に様々な組織の像が重畳現出しているため判読が難しく、更には軟組織形状の解像も難しい、という短所がある。
【0004】
MRIには、高コントラスト比及び高空間解像度の軟組織3D画像(三次元的画像)を得ることができ、またX線CTと違いイオン化輻射が不要であるという長所があるが、反面、MRIでは骨をうまく撮影することができない。他方のCTでは、X線吸収を利用するので骨組織を3D撮影することができる。しかし、昨今軟組織撮影時鮮明度が増してきたとはいえ、軟組織撮影方式としてはMRIに引けをとっている。
【0005】
超音波撮影の長所は、装置移動が容易で、比較的低コストで、そしてイオン化輻射が不要であることである。その空間解像度は高く、リアルタイムフレーム撮影が可能な程に高速でもある。また、最近では、超音波撮影を使用して組織弾性計測を行い、胸部等に生じた腫瘍組織を健康な組織に対して精度良く弁別する、というユニークな用途が注目されている。しかしながら、超音波が気体や骨を通り抜けにくいため、超音波撮影には、ある種の器官を撮影困難であるという短所がある。
【0006】
核医学検査では、代謝情報を画像化できるためある種の病理学的状態を早期検知することができるが、得られる画像に構造的情報が含まれないため体内における傷病部位の位置を正確に特定するのが難しい。
【0007】
SPECTは断層撮影原理を利用し一群の近隣スライス位置で2D核医学検査画像を撮影し、それによって実質的に3Dの核医学検査画像を得る方式であるが、しかしながらその空間解像度がやや劣っている。PETもまた断層撮像原理を利用して生理学的及び機能的計測を行う方式であり、SPECTにより得られる画像に比べると空間解像度が高く且つSN比(信号対雑音比)が高い画像が得られるが、陽電子放出核種を生成するのにサイクロトロンが必要であるためシステムコストが非常に高くなる。fMRIは臨床医療ではあまり用いられない技術である。例外的に用いられるのは手術計画策定(サージカルプラニング)の際である。例えば脳外科手術に当たり、特定の個別認識タスクに関連しているためふれないでおく必要がある脳内部位を識別、特定する手段として使用される。
【0008】
内視鏡検査は体内腔の内側、例えば気管支(気管支鏡検査)、大腸/結腸(大腸/結腸内視鏡検査)、上部胃腸管(胃腸カメラ検査)の内側を視覚精査可能な方式であり、カプセル内視鏡検査は内視鏡を通すのではなくカメラ入りカプセルを嚥下させることにより胃腸管内をそのカメラで通し撮影する方式である。これらの方式のうち内視鏡検査ではカメラの位置を操ることやカメラを所望の位置に暫時停留させることができるが、カプセル内視鏡検査ではそれができない。反面、カプセル内視鏡検査ならば、腸の奥深くまで視覚的に捕らえることができ、且つ内視鏡検査に比べ患者の負担が軽くなる。
【0009】
臨床医療の現場では、これらの医用画像撮影方式を複数種類併用する場合がある。例えば、ある方式で撮影した画像を見て疾病の有無を検査し、次いで別の方式(通常は先の方式に比べ高解像度又は高機能な方式)で撮影した別の画像を見て診断確認乃至疾病進行度計測を行うことがある。これは、肺結節、肺癌その他の呼吸器疾患について検査する際等に実施される。その場合、まずは胸部(X線)撮影を行ってその種の疾病の有無を調べる。放射線科の医師は、疑わしい部位を見つけた場合CT撮影をオーダし、患部の高解像度3D画像を撮影させる。また、乳癌検査の際には、まず(X線)マンモグラフィを実施して乳癌の可能性がある部位の有無を調べ、疑い部位が見つかったら胸部3DMRIを実施してその部位を再精査する。そして、最近では、CT利用バーチャル大腸/結腸内視鏡検査手順も実施され始めている。この手順では、疾病疑い部位や悪性疑いポリープがCTにより見つかったらその結果を確認する大腸/結腸内視鏡検査を行う。
【0010】
多方式併用による医用画像撮影は、これらの検査確認手順以外に、解剖学的情報及び機能的情報の同時取得を目的としても実施されている。例えば脳腫瘍又はその疑い部位がある場合、CTやMRIによる脳内撮影で脳内構造及びあらゆる傷病(疑い)部位を調べる一方、PETやSPECTによる脳内撮影で腫瘍(疑い)部位の代謝活動をくまなく調べることができる。CT/PET併用撮影は胸部等にも同じく適用でき、それによって肺、肝臓、腎臓等の画像も調べることができる。そして、CTとPETの組合せは比較的容易に単一装置に組み込むことができるため、撮影を両方式同時に行える装置も既に市販されている。例えばGeneral Electric社のDiscovery LS PET/CTシステム(商品名)やSiemens社のbiograph(商標)である。
【0011】
多方式撮影は、更に、何らかの構造的な情報を得るため行われる場合もある。例えば脳、腹部或いは外科整形個所をCT及びMRIにより別々の時点で撮影することがある。最近開発された超音波弾性計測は超音波撮影で組織弾性を計測する方式であり、これを用い胸部の弾性を調べて得られた構造的情報を併用することで、マンモグラムやMRIによる胸部画像を補完することができる。
【0012】
このように医用画像撮影方式は多岐に亘っており、得られる視覚的情報の種類も豊富になっているが、それでもなお、検知や診断が難しい疾病が数多くある。例えばある情報筋によれば、乳癌のうち約20%は、マンモグラフィでは検知することができない。
【0013】
そこで、様々な疾病例えば癌を検知できるよう、多数の研究者による努力でCAD(コンピュータ支援検出/診断)技術が開発されている。この技術は放射線科の医師/技師が傷病部位を検知する手助けになる。
【0014】
マンモグラフィ用CADの公知技術については、例えば特許文献1、3、16、18、23、26、29、31、32及び34を参照されたい。
【0015】
肺結節検知用CADの公知技術については、例えば特許文献6〜9、14、20、21、25、27、35及び43〜45を参照されたい。
【0016】
大腸癌検知用CADについては特許文献2、4、5、12、15及び24に記述がある。
【0017】
骨粗鬆症等の骨疾病は特許文献11、13、17、19、22及び28に記載のCAD技術の対象である。
【0018】
但し、これらの手法が医師による疾病の発見や診断に際し手助けになるといっても、その適用対象は今のところ狭く、医用画像を1枚ずつ処理することや、或いは同一方式で取得した複数枚の医用画像を処理することができるにとどまっている。
【0019】
他方、別々の方式で撮影された複数枚の画像の位置を揃えて融合させる技術にも進展が見られる。例えば特許文献30(発明者:Hibbard)に記載の多方式画像データ表示システムは、そのGUI(グラフィカルユーザインタフェース)上にCTによる脳画像とMRI又はPETによる脳画像とを表示させるシステムであり、それらの画像の位置をマニュアル操作又は自動処理で揃えて融合させることができる。特許文献33(発明者:Roche)に係る手法は画像データ一般に適用可能な手法であり、この手法では画像データセット間の相関度を利用してそれらの画像間で位置を揃える。特許文献36(発明者:Freeman)は組織又は器官の分光画像を解剖学的画像に融合させるシステムに関する。特許文献10(発明者:Bloch)ではPETによる胸部又は腹部画像の位置とCTによる胸部又は腹部画像の位置とをそれらの自在変形によって揃える。従って、これらの手法乃至システムによれば、別々の方式で撮影された画像の位置を互いに揃えそれらの画像を融合させることができるが、こうした手法乃至システムだけでは疾病をより好適に検知乃至診断することができない。
【0020】
即ち、既存のCAD手法乃至システムでは1枚の医用画像又は同一方式で得られた複数枚の医用画像を処理できるだけで、その撮影方式が違う複数枚の画像をうまく処理することができない。他方の位置揃え/融合技術は、医師にとり有用な視覚的情報が得られるものの、CADシステム程には役立っていない。
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2001/0031076号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0022240号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0057826号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0187502号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0032860号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0076992号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2003/0095696号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0099388号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0105395号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2003/0216631号明細書
【特許文献11】米国特許第4913157号明細書
【特許文献12】米国特許第4981783号明細書
【特許文献13】米国特許第5247934号明細書
【特許文献14】米国特許第5539838号明細書
【特許文献15】米国特許第5628314号明細書
【特許文献16】米国特許第5633948号明細書
【特許文献17】米国特許第5673298号明細書
【特許文献18】米国特許第5732697号明細書
【特許文献19】米国特許第5817020号明細書
【特許文献20】米国特許第5825936号明細書
【特許文献21】米国特許第5881124号明細書
【特許文献22】米国特許第5902240号明細書
【特許文献23】米国特許第5941832号明細書
【特許文献24】米国特許第5983211号明細書
【特許文献25】米国特許第5987094号明細書
【特許文献26】米国特許第6075878号明細書
【特許文献27】米国特許第6125194号明細書
【特許文献28】米国特許第6143506号明細書
【特許文献29】米国特許第6266435号明細書
【特許文献30】米国特許第6266453号明細書
【特許文献31】米国特許第6272233号明細書
【特許文献32】米国特許第6418237号明細書
【特許文献33】米国特許第6539127号明細書
【特許文献34】米国特許第6553356号明細書
【特許文献35】米国特許第6609021号明細書
【特許文献36】米国特許第6640130号明細書
【特許文献37】国際公開第WO00/30021号パンフレット
【特許文献38】国際公開第WO01/54065号パンフレット
【特許文献39】国際公開第WO02/43562号パンフレット
【特許文献40】米国特許第6317617号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2003/0194121号明細書
【特許文献42】国際公開第WO2005/001769号パンフレット
【特許文献43】欧州特許第1129426号明細書
【特許文献44】欧州特許第1249006号明細書
【特許文献45】欧州特許第1395165号明細書
【非特許文献1】"Contour Detection for the Breast Tumor in Ultrasonic Images Using Watershed Segemntation", Yu-Len Huang et al., Proceedings of the 2002 ICS: Workshop on Artificial Intelligence
【非特許文献2】"Maximum Likelihood Texture Analysis and Classification Using Wavelet-Domain Hidden Markov Models", Guoliang Fan et al., Proceedings of the 34th Asilomar Conference on Signals, Systems and Computers, Pacific Grove, CA, Oct.29-Nov.1, 2000
【非特許文献3】"Robust Real-Time Object Detection", Paul Viola et al., Second International Workshop on Statistical and Computational Theories of Vision - Modeling, Learning, Computing and Sampling, Vancouver, Canada, July 13, 2001, pp.1-25
【非特許文献4】"Contrast-Enhanced Breast MRI: Factors Affecting Sensitivity and Specificity", C. W. Piccoli, Eur. Radiol. 7, (Suppl. 5), S281-S288, 1997
【非特許文献5】"A Tutorial on Support Vector Machines for Pattern Recognition", Christopher J. C. Burges, Data Mining and Knowledge Discovery, 2(2), 1-47, 1998, Kluwer Academic Publisher, Boston, MA
【非特許文献6】"A Review of Medical Image Registration", Calvin R. Maurer, Jr., MS et al., Interactive Image-Guided Neurosurgery, pp.17-44, Vanderbilt University, Nashville, Tennessee, January 28, 1993
【非特許文献7】"Alignment by Maximization of Mutual Information", Paul A. Violz, Ph.D.Thesis, Massachusetts Institute of Technology Artificial Intelligence Laboratory, A.I. Technical Report No.1548, 1995
【非特許文献8】"Pattern Classification", Richard O. Duda et al., John Wiley & Sons Inc., 2001
【非特許文献9】"Mathematical Techniques in Data Fusion", David L. Hall, Artech House, Inc., Norwood, MA, 1992
【非特許文献10】"Numerical Methods for Image Registration", J. Modersitzki, Oxford University Press, 2004
【非特許文献11】"Practical Methods of Optimization", 2nd edition, R. Fletcher, 1987
【非特許文献12】"Calculus of Variations", S. Fomin et al., Dover Publishing, 2000
【非特許文献13】"Mammographic Image Analysis", R. Highnam et al., 1999, Klumer Academic Publishers
【非特許文献14】"A Real-Time Curve Evolution-Based Image Fusion Algorithm for Multisensory Image Segmentation", Yubua Ding et al., ICASSP 2003, pp.v13-v16
【非特許文献15】"Fusing of Immunoscintigraphy Spect with CT or MRI for Improved Multimodality Image Interpretation", E. Kramer et al., IEEE, pp.1805-1806, 10/1992
【非特許文献16】"Data Fusion in 2D and 3D Image Processing: An Overview", Isabelle Bloch et al., IEEE, 1997, pp.127-134
【非特許文献17】"Medical Imaging Fusion Applications: An Overview", Constantinos S. Pattichis et al., IEEE, 2001, pp.1263-1267
【非特許文献18】"Support Vector Machine Based Detection of Tumours in Dynamic MRI Mammographs", Christian Muller, Master Thesis, University of Bielefeld, Bielefeld University, Feb.17, 2004, pp.1-84
【非特許文献19】"Optimizing Feature Selection across a Multimodality Database in Computerized Classification of Breast Lesions", Karla Horsch et al., Medical Imaging 2002: Image Processing, Proceedings of SPIE, vol.2684, pp.986-992
【非特許文献20】"Multi-Modality CAD: Combination of Computerized Classification Technoques Based on Mammograms and 3D Ultrasound Volumes for Improved Accuracy in Breast Mass Characterization", Berkman Sahiner et al., Medical Imaging 2004: Image Processing, Proceedings of SPIE, vol.5370, pp.67-74
【非特許文献21】"An Automatic Lesion Segmentation Method for Fast Spin Echo Magnetic Resonance Images Using an Ensemble of Neural Networks", Andreas Hadjiprocopis et al, 2003 IEEE XIII Workshop n Neural Networks for Signal Processing, pp.709-718
【非特許文献22】"System Identification Toolbox", L. Ljung
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、従来技術に見られるこうした問題点及び限界への対策として、複数の方式を利用し疾病乃至傷病部位を検知及び診断することが可能なCADシステム及び手法を提供するものである。
【0023】
即ち、本発明の目的は、多方式を併用し画像から疾病乃至傷病部位を検知乃至診断可能なCADシステム及び方法を提供することにある。
【0024】
なお、この目的は本発明を具体的に説明するための例であって、本発明はまた別の目的に沿って実施することもできる。本発明により達成できる目的及び享受できる効果については、本件技術分野にて習熟を積まれた方々(いわゆる当業者)なら本願中の記載から容易に読み取れよう。なお、本発明の定義については別紙特許請求の範囲を参照されたい。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一実施形態は、被験体の医用画像から傷病部位を検知するシステムである。本システムは試料束提供手段、学習エンジン及び検知エンジンを備える。試料束には、同じ被験体を第1方式で撮影した第1方式医用画像及び第2方式で撮影した第2方式医用画像が各1枚以上含まれる。学習エンジンは、それら第1及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる。検知エンジンは、その試料束を構成する医用画像1枚以上からその特徴を備えた部位を検知する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について別紙図面を参照しつつより詳細に説明する。この説明を参照することによって、上述のものもそれ以外のものも含め、本発明の目的、構成及び効果をより明瞭に理解することができよう。なお、図面上における部材同士の寸法比は現実の寸法比と同じとは限らない。
【0027】
また、本発明の好適な実施形態に関する以下の詳細な説明では、符号を使用して別紙図面を参照する。同一の構造要素には同一の参照符号を付すので、別々の図面に同一の参照符号が現れることもある。
【0028】
更に、本発明の種々の実施形態に関する以下の記述では、本発明を十分に理解して頂くため、ある特定の装置/手順構成、ある具体的な構成を例示して説明を行っているが、いわゆる当業者であれば、本願記載の事項のうちどれが本発明の実施に必須でどれが必須でないかを容易に理解できよう。更に、一部の周知事項について説明を省略乃至簡略化することで、本発明を理解する上で妨げにならないようにしてある。
【0029】
まず、本願では、複数の方式を用いて患者を撮影及び検査することを多方式検査と呼んでいる。この検査においては、各方式によって何枚かの画像を撮影(再構成でもよい;本願にて同様)する。
【0030】
撮影で得られる画像は使用する方式により2D、3D、4D等々の画像になる。2D画像とはある二次元座標系に従ってアドレッシングされる複数個の画素(この場合ピクセル)からなる平面的な画像のことであり、3D画像とはある三次元座標系に従ってアドレッシングされる複数個の画素(同じくボクセル)からなる立体的な画像のことであり、4D画像とはある四次元座標系に従ってアドレッシングされる複数個の画素(同じくボクセル)からなる四次元的な画像のことである。また、3D画像とは複数枚の2D画像即ちスライスの集合のことである。3D画像の第3次元は空間軸の場合もあるし時間軸の場合もある。後者の場合、その3D画像は2D画像の時系列を表す画像になる。
【0031】
方式次第であるが、各画像を個別に解析することもできるし、また各画像を動画シーケンス中の個々のフレームの如く扱いシーケンシャルに解析することもできる。コンテキスト情報を伴っていない孤立画像乃至フレームにはあまり価値がないので、画像収集過程の実行中又は実行前にコンテキスト情報を収集又は作成するとよい。また、収集した画像データを処理する段階でコンテキスト情報を収集又は作成することもできる。本願ではこうしたコンテキスト情報のことを一括してメタデータと呼ぶ。即ち、画素を表すデータでないあらゆるデータをメタデータとして扱う。その例としては、多くのディジタル画像ファイルに付随する画像ヘッダデータがある。
【0032】
図1に、本発明に係る多方式検査の際に撮影された画像群の一例構成をブロック図により示す。図示の例では、多方式検査に当たり撮影した全ての画像と、それらの画像に対応するあらゆるメタデータとをまとめることで、試料束100を形成している。試料束100は一群の方式インスタンス102に総合メタデータ104のセクションを添付したものであり、各方式インスタンス102は1個又は複数個の画像パケット108に方式インスタンス別メタデータ106を添付したものである。各方式インスタンス別メタデータ106は、そのインスタンスを構成する撮影済画像に固有の情報やそのインスタンスの撮影に使用した撮影方式についての情報、例えば撮影方式名称やその方式によりそのインスタンスの画像を撮影した医師による様々な設定事項についての情報から、構成されている。
【0033】
画像パケット108は2個のセクションに分かれている。そのうち1個は撮影済画像の画素データ110、もう1個は画像別メタデータ112である。
【0034】
画像別メタデータ112は更に画像別収集データ114、画像別物理データ116及び画像別推定データ118に細分することができる。
【0035】
そのうち画像別収集データ114は、その画像パケット108を構成する一群の画素データ110に特有の情報から構成されている。例えば2Dビュー(例えばアキシャルビューかコロナルビューかそれともサジタルビューかの別)、画像プロトコル、スライス厚、撮影システム基準の患者姿勢(胸部X線撮影ならポステリア・アンテリアかアンテリア・ポステリアかラテラルかの別)、画像シーケンス構成(索引番号、撮影速度、撮影時間等)、露出レベル(内視鏡撮影時)等の情報である。
【0036】
画像別物理データ116は、画像撮影時における患者の相対位置等の情報や、画像からは読み取れない特性例えば血圧、体温、体重等についての情報から構成されている。
【0037】
画像別推定データ118は、その画像内で検知した傷病部位の位置、その傷病部位についての説明等、識別した種々の病理についての情報から構成されている。このデータは医師が作成する場合もあるし自動手順で作成される場合もある。
【0038】
総合メタデータ104は、検査日、患者名/識別符号、参照医師名/識別符号、検査目的、懸念傷病乃至診断結果、或いはそれらの任意の組合せ等、その試料束100に関連する様々な情報から構成されている。また、一般的な画像情報、例えば画像格納フォーマット(RAW、DICOM、TIFF(登録商標)、JPEG等々)、ライン本数、1ライン当たり画素数等の情報も含めることができる。ご理解ご推察頂ける通り、総合メタデータや画像別メタデータに含める情報の種類や順序は、試料束としての機能性を維持しつつ変えることができる。
【0039】
医用画像に含まれる傷病部位はその特徴に従い様々な手法で検知することができる。広く用いられている特徴チェック手法の一つは形状モデルによる手法である。傷病部位のなかにはその幾何学的形状やサイズがユニークなものがあるので、形状モデルによる特徴チェックの結果は、傷病部位の有無や疾病の進行段階を調べ、今後の変化を予測等するのに役立つ。例えば腫瘍のなかには、丸みを帯びた形状とくっきりした輪郭を備え、形状を変えずに肥大していくものがある。こうした性質の傷病部位を検知するには、その傷病に特有の形状パターンを医用画像から見つけ出す処理を実行すればよい。形状パターンの記述乃至定義には、コーナ、エッジ、交差点、分岐点、ライン、円、輪郭等の図形構成要素を使用する。個々の図形構成要素はその種類に応じた手段で検知することができる。例えばコーナを検知するには、強度勾配平面上で最大値を探索し、隣接点との強度差が大きな点を識別すればよい。また、ラインを検知するには、種々のエッジ検出手法を使用するか、或いは画像におけるラインの位置及び向きをパラメタとしてHough変換を実行し、変換後空間にて最大値を探索すればよい。同様に、円もその中心及び半径をパラメタとして記述可能であるからHough変換により検知でき、従って丸みを帯びた腫瘍を効率的に検知することができる。より一般化したHough変換を使用することで、画像から楕円を検知することもできる。更に、検知したい傷病に関する予備知識、例えば位置、サイズ、向き等の情報を与えることで、検知能力を高めることができる。
【0040】
傷病部位を示す特徴をチェックする手法としては、この他に、弾性モデル等に従い作成したテンプレートを用いる手法がある。傷病部位検知はそのテンプレートと画像のマッチングによって実行することができる。弾性モデルによるテンプレートは一組の制御ポイント及び弾性エッジからなるモデルであり、これを使用することで、図形構成要素による記述よりも強力に、形状を記述することができる。特に、身体パーツや傷病部位のなかにはその形状がとみにユニークで直線や円では表せないものがあるが、そうしたものでも、この種のテンプレートによるモデルでなら好適に記述することができる。そのためには、傷病部位の一般的構造、そのなめらかさ、制御ノードの個数、弾性力等についての予備知識に基づき、テンプレートを作成するとよい。また、テンプレートマッチングとはエネルギ項が最小になるようテンプレートパラメタ即ちテンプレートを規定する一組のパラメタを決める最適化処理である。エネルギ項は、そのテンプレートが画像パーツ、内力及び外力に対してどの程度好適に適合しているかを表すものになるよう、予め定めておく。この最適化処理は、通例に従い、処理の繰り返しによる最善マッチ解の探索として実行する。エネルギ項の大きさが所定のしきい値を上回るに至ったら、即ちテンプレートパラメタが最善マッチに達したら、そのとき対象となっていた部位が傷病部位である。
【0041】
図形構成要素やテンプレートでは傷病部位の特徴をチェックするのが難しい複雑なケースでも、より一般的なパターン分類法(別称:パターン認識法)によって対処することができる。パターン分類法は信号に含まれるオブジェクトを検知、分類等する技術であり、その手法としては非常に多くの手法が知られている。パターン分類法によれば、2D画像データ、3D画像データ等、様々な表現形式の信号を処理することができ、また様々な画像撮影手法に対応することができる。医用画像撮影の場合に処理される信号は一般に(人間の)身体を捉えた信号であり、また検知や分類の対象となるオブジェクトは傷病部位、例えば罹患組織や腫瘍といった種々の解剖学的構造乃至部位等であるので、パターン分類法の役目は、特徴(形状)ベクトル等の抽象特徴データを撮影済画像から抽出し、抽出した特徴ベクトルを用いてそのオブジェクトを相応するカテゴリ乃至クラスに分類することである。このタスクを担うのはパターン分類エンジン、言い換えればクラシファイアであり、使用する際には前もってトレーニングしておく必要がある。
【0042】
クラシファイアをトレーニングするには、トレーニングセットと呼ばれる一組の例示パターンに基づき各クラスの特徴を学習させる必要がある。その学習形態には教師付き学習と教師なし学習の二種類がある。教師付き学習とは、トレーニングセットを構成する各例示パターンの所望出力(クラスラベル)に係るコスト関数値が小さくなる方向に導く学習プロセスのことであり、教師なし学習とは、所望出力についての外部情報なしで(即ちトレーニングセットを構成する各例示パターンにクラスラベルを割り当てないで)類似度や相違度に基づき諸パターンをクラスタ分類する自己組織化的な学習プロセスのことである(非特許文献8を参照)。これら二種類の学習形態には様々な変種がある。例えば強化学習と呼ばれる変種では、トレーニングセットを構成する各例示パターンについて仮のクラスラベルを計算してクラシファイアにクラス特徴を学習させ、更にその学習した特徴を既知のクラスラベルを用いて改質する。
【0043】
例示パターンから抽出可能なクラス特徴には、例えばそれらの例示パターンを構成するコード値に係る特徴、当該例示パターンの空間的特徴、例示パターンシーケンスの時間的特徴、当該例示パターンを記述するドメインの変換に係る特徴等がある。
【0044】
また、トレーニング及び分類のアルゴリズムとしては、画素データをそのまま使用するアルゴリズムよりも、画像を他のドメインに変換した上で代表的属性を抽出するアルゴリズムを使用した方がよい。変換先のドメインとしては、例えば非特許文献2に記載のウェーブレットドメインを使用できる。ウェーブレット変換を使用すると、例えば、それぞれ同一のウェーブレット帯域から採取した8個のHaarウェーブレット係数からなる帯域内属性を、2×2HL、2×2LH、4×4HL、4×4LH、8×8HL及び8×8LHの6通り抽出することができる。或いは、それぞれ8個の係数からなる帯域間属性を、16×16HLと8×8HLの組合せに対応するもの、8×8HLと4×4HLの組合せに対応するもの、4×4HLと2×2HLの組合せに対応するもの、16×16LHと8×8LHの組合せに対応するもの、8×8LHと4×4LHの組合せに対応するもの、並びに4×4LHと2×2LHの組合せに対応するものの6通り抽出することができる。或いは、HLから4個、LHから4個採取した合計8個のHaarウェーブレット係数からなる方向間属性を、2×2、4×4、8×8及び16×16にて合計4通り抽出することができる。更には、16×16、8×8、4×4及び2×2それぞれにおけるHL及びLHから互いに対応する空間位置にある1個の係数を採取し、採取した合計8個の係数を以て属性として抽出することができる。いわゆる当業者であれば、これに外のものも含め、その用途に応じ様々な属性を抽出することができる。
【0045】
トレーニング及び分類のアルゴリズムとしては、更に、画像を空間ドメイン内で変換し、変換後の画像から代表的属性を抽出するアルゴリズムも使用できる。例えば、その空間ドメイン内画像変換をグリッドパターン(GP)変換により行うアルゴリズムである。GP変換については、例えばこの参照を以てその内容が本願に繰り入れられるところの米国特許出願第10/211011号(原題:Method for Locating Faces in Color Images、発明者:S. Chen)を参照されたい。GP変換では、まず原画像を非特許文献3に記載の積算画像に変換し、次いでその積算画像内の対応するセル(サイズ:m×n画素)の四隅の点を利用して、GP画像を構成する各画素の値を算出する。
【0046】
例えば、原画像A内のある部位を
【数1】

と表すこととする。この部位を積算画像Bに変換する際には、次の式
【数2】

を用い、画像B内の画素p’を算出する。この式中、画素値pは2D画像平面の左上隅を原点にとって表したベクトルである。画像A内の画素pは画像B内の画素p’に対応している。
【0047】
こうして得られた積算画像BからGP画像を算出する際には、まずその四隅の点p’,p’,p’及びp’により画像B内でセルを定義し、次いでGP画像内の対応するセルにおける画素強度値を次の式
【数3】

に従い算出する。この式中、Φ[p,p,p,p]は点p,p,p及びpによりGP画像内で定義されるセル、φはセルΦ[p,p,p,p]内の任意の画素、B(p’)は画像B内でp’に位置する画素の値(ここではp=p’,p=p’,p=p’及びp=p’とする)、mはセルの縦寸、nはセルの横寸である。
【0048】
そして、本発明を実施する際には、トレーニングセットとして、試料束のセット、方式インスタンスのセット、画像パケットのセット、画像セット、それらの任意の組合せ等といった様々なオブジェクトを使用することができる。また、パターンの特徴は例示パターンそれ自体に限らず総合メタデータ、方式インスタンス別メタデータ、画像別メタデータ等からも抽出できる。例えば個々の方式インスタンスに添付されている患者分類データにはその患者の年齢、性別、体重、人種等に関するデータが含まれている。このデータは、ある種の症状乃至疾病の起こりやすさを示す指標にすることができる。また、同様の患者分類データは総合メタデータからも抽出できる。抽出したらそれをまた別のトレーニング用属性として使用することができる。
【0049】
図2Aに、本発明の一実施形態に係る患者医用画像内傷病部位検知システムのブロック構成を示す。本システムは、大まかには試料束200を提供する手段、学習エンジン202及び検知エンジン204から構成されている。試料束200は、ある患者を第1方式で撮影した少なくとも1枚の第1方式医用画像及び同じ患者を第2方式で撮影した少なくとも1枚の第2方式医用画像を含んでいる。学習エンジン202は、第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定する。検知エンジン204は、試料束200を構成する医用画像のうち少なくとも1枚から、指定された特徴を有する部位を傷病部位として検知する。
【0050】
図2Bに示すように、本実施形態における学習エンジン202は例えば学習モジュール206及び208を備える構成に、また検知エンジン204は検知モジュール210及び212を備える構成にすることができる。第1学習モジュール206は第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定する手段を提供し、第2学習モジュール208は第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定する手段を提供する。第1検知モジュール210は少なくとも1枚の第1方式医用画像から、また第2検知モジュール212は少なくとも1枚の第2方式医用画像から、指定された特徴を有する部位を検知する。
【0051】
学習モジュール206及び208には種々の情報が蓄えられている。そのうち一つは傷病部位の特徴に関する情報である。この種の情報は、例えばマニュアル操作によって、或いは総合メタデータ104、方式インスタンス別メタデータ106、画像別メタデータ112、1枚若しくは複数枚の画像に係る画素データ110、又はその任意の組合せからの自動抽出によって得ることができる。また、傷病部位の形状を表現する図形構成要素群乃至形状モデル、傷病部位の形状に適合するテンプレート又はそのパラメタ、傷病部位を含む画像若しくは含まない画像から抽出した形状的特徴、例示傷病パターンからなるトレーニングセット等といった情報も、モジュール206及び208に蓄えておくとよい。更に、傷病を記述する各種の情報の相対的重要度を表す荷重も蓄えておくことができる。パターン分類技術を用いてこの構成を実施する場合、モジュール206及び208は、これら蓄えてある情報を利用して、後段の検知エンジン204に学習させる(検知エンジン204で使用するクラシファイア(群)をトレーニングする)。
【0052】
図2A及び図2B中に矢印付きの線で示した通り、検知エンジン204への入力は試料束200及び学習エンジン202の出力である。例えば図2Bに示した構成では、傷病部位の有無を検知するため、検知モジュール210及び212が、試料束200中に存する情報と学習モジュール206及び208から供給される情報とを比較している。
【0053】
この比較は様々な形態で実行できる。例えば、試料束200を構成する何枚かの画像の画素データ110のなかから、学習モジュール206及び208に情報として蓄えられている図形構成要素乃至形状モデルのインスタンスを探索してもよい。或いは、学習モジュール206及び208に情報として蓄えられているテンプレートを用い、試料束200に含まれる何枚かの画像の画素データ110に対してテンプレートマッチングを実施することにより、そのテンプレートに適合するインスタンスを探して傷病部位を含む画像を見つけ出すようにしてもよい。更に或いは、試料束200に含まれる何枚かの画像の画素データ110から幾つかの部位の特徴を何個か抽出し、学習モジュール206及び208によるトレーニングが施されたクラシファイアを用いそれらを分類するようにしてもよい。検知エンジン204はこうして各種の傷病部位を絶対検知又は確率検知する。絶対検知とは例えば「傷病部位あり」「傷病部位なし」の別を明らかにする検知であり、確率検知とは例えば「傷病存在確率がpである」ことを明らかにする検知である。
【0054】
また、複数の方式で収集した医用画像から複数個の検知モジュールが傷病部位を検知するのであるから、各検知モジュールで同一個数の傷病部位が同一の位置から検知されるとは限らない。そこで、検知エンジン204では、2個の検知モジュール210及び212間で検知結果が食い違うことを見込んだ処理を実行する。
【0055】
例えば図3Aに例示する検知エンジン204では、試料束200を構成する画像のうち第1方式インスタンスに含まれる1枚又は複数枚の画像から第1検知モジュール210が傷病部位300を検知する。第2検知モジュール212は、試料束200を構成する画像のうち第2方式インスタンスに含まれる1枚又は複数枚の画像のうち、第1検知モジュール210によって検知された1個又は複数個の傷病部位300に対応する1個又は複数個の傷病部位302を検知する。こうした構成は、その種の傷病部位の検知及び分類に関し一方の方式が他方の方式に比べ概ね正確である場合に適している。
【0056】
また、図3Bに例示する検知エンジン204には更に合成モジュール304が組み込まれている。このモジュール304は、第1検知モジュール210による傷病部位検知結果306と第2検知モジュール212による傷病部位検知結果308とを結合、合成する。
【0057】
図3Bに示した構成では、図3Aに示した構成と違い各検知モジュール210及び212が互いに独立に機能する。即ち、一方の検知モジュールから他方の検知モジュールへの入力がない。また、合成モジュール304は次の三形態のうち何れかに従い機能させることができる。第1の形態は、検知モジュール210及び212のうち一方でしか傷病部位として検知されなかった部位は、合成モジュール304では傷病部位と認めない、というものである。この形態を採ると、両方式画像から検知された部位だけが傷病部位として認識されることになる。第2の形態は、検知モジュール210及び212のうち一方だけで傷病部位として検知された部位も、合成モジュール304にて傷病部位と認める、というものである。この形態を採ると、一方式の画像だけで傷病部位として検知された部位も皆、傷病部位として認識されることになる。第3の形態は、例えば第1検知モジュール210では傷病部位として検知されなかったのに第2検知モジュール212では検知された部位を、合成モジュール304では傷病部位と認めない、というものである。この形態を採ると、第2方式に対し第1方式を優先使用して傷病部位を認識することになり、第2方式で検知した傷病部位は傷病部位として認識されないことがある。
【0058】
図4に図2Bに示したシステムの変形例を示す。この図の例では学習エンジン202が統合学習モジュール400によって、また検知エンジン204が統合検知モジュール402によって、それぞれ実現されている。統合学習モジュール400は、第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を統合的に指定し、統合検知モジュール402は、第1方式医用画像における傷病部位検知及び第2方式医用画像における傷病部位検知を統合的に実行する。
【0059】
統合学習モジュール400には種々の情報が蓄えられている。そのうち一つは、その試料束200に含まれる各イメージング方式の画像に現れうる傷病部位の特徴に係る情報である。この情報は例えばマニュアル操作によって、或いは総合メタデータ104、方式インスタンス別メタデータ106、画像別メタデータ112、1枚若しくは複数枚の画像に係る画素データ110、又はその任意の組合せからの自動抽出によって得ることができる。また、傷病部位の形状を表現する図形構成要素群乃至形状モデル、傷病部位の形状に適合するテンプレート又はそのパラメタ、傷病部位を含む画像若しくは含まない画像から抽出した形状的特徴、例示傷病パターンからなるトレーニングセット等といった情報も、このモジュール400に蓄えておくとよい。更に、傷病記述に使用する各種の情報間の相対的重要度を表す荷重/確率も、情報として蓄えておくとよい。パターン分類技術を用いてこの構成を実施する場合、統合学習モジュール400は、これら蓄えてある情報を利用して、後段の検知エンジン204に学習させる(検知エンジン204で使用するクラシファイアをトレーニングする)。
【0060】
図4中に矢印付きの線で示した通り、検知エンジン204には試料束200と学習エンジン202の出力とが入力されている。即ち、傷病部位の有無を検知するため、図示の統合検知モジュール402によって、試料束200に含まれる情報と統合学習モジュール400から供給される情報とが比較されている。この比較は様々な形態で行うことができる。例えば試料束200を構成する何枚かの画像の画素データ110のなかから、統合学習モジュール400に情報として蓄えられている図形構成要素乃至形状モデルのインスタンスを探索してもよい。或いは、統合学習モジュール400に情報として蓄えられているテンプレートを用い、試料束200に含まれる何枚かの画像の画素データ110に対してテンプレートマッチングを実施することにより、そのテンプレートに適合するインスタンスを探して傷病部位を含む画像を見つけ出すようにしてもよい。更に或いは、試料束200に含まれる何枚かの画像の画素データ110うち幾つかの部位から何個かの特徴を抽出し、統合学習モジュール400によってトレーニングされたクラシファイアを用いそれらを分類するようにしてもよい。検知エンジン204はこうして各種の傷病部位を絶対検知又は確率検知する。絶対検知とは例えば「傷病部位あり」「傷病部位なし」の別を明らかにする検知であり、確率検知とは例えば「傷病存在確率がpである」ことを明らかにする検知である。
【0061】
検知エンジン204にて軟検知即ち確率検知を実現するには、例えば本件技術分野で周知のデータ融合法を使用すればよい。使用できるデータ融合法の一例としては、複数の画像から検知した傷病疑い部位同士をBayesian解析を利用して融合させる手法、例えばDempster−Shafer法や一般証拠処理(GEP)法がある。これら二種類のデータ融合法の何れでも、与えられた複数の傷病疑い部位が互いに別々のものであるのか、それともそれらを融合させることで傷病部位全体を完全にカバーできるのかを、判別することができる。なお、非特許文献9にはこれらのデータ融合法を含め種々のデータ融合法が記載されている。そうしたデータ融合法を検知エンジン204にて実行する形態も本発明の技術的範囲及び思想に含まれるものとする。
【0062】
図5に、図4に示したシステムにおける傷病部位検知手順の一例を示す。この図に示した手順は、患者が脳腫瘍を患っているか否かの判断を支援すべく、PET/CT装置により画像を収集して処理する手順である。まず、PETでは、放射性薬剤であるFDG(2−[18F]−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース)をトレーサとして用いることが多い。これは、FDGを投与すると悪性腫瘍におけるグルコース代謝が亢進するためである。しかし、その投与によって生じる代謝亢進は、脳の灰白質構造におけるグルコース代謝と紛らわしい。そのため、FDG−PETによる撮影だけでは悪性腫瘍をうまく検知できないことがある。本手順でPET/CT装置を使用するのは、脳内組織の構造的情報をもたらすCT/MRI画像をFDG−PET画像と併用することで、その脳内組織を正常組織と悪性腫瘍とに弁別できるようにするためである。PET/CT装置では、撮影したPET画像とCT画像の位置をハードウェア的に揃え、それらの画像を互いに結合させることで、各画素がベクトル化ボクセルで表されるPET/CT合成画像を生成することができる。生成されるPET/CT合成画像には、PET単独画像やCT単独画像に比べはっきりと、正常組織と悪性腫瘍の相違や特徴が現れる。
【0063】
図示されている手順では、まずステップ500にてPET/CT装置により患者のPET画像及びCT画像を撮影する。この装置は撮影した画像の位置をハードウェア的に揃える。ステップ502では、そのPET画像とCT画像の結合により、ベクトル化ボクセルからなるPET/CT合成画像を生成する。各ベクトル化ボクセルは、対応するPET画像を構成する画素の強度値、並びに対応するCT画像を構成する画素の強度値を成分とするベクトルである。ステップ504では、更にそのPET/CT合成画像内の悪性腫瘍疑い部位を識別する。例えば、グリッド状に整列しているボクセル群の上で窓をスライドさせ又は設定し、その窓によって悪性腫瘍疑い部位を選定する。より高度なやり方としては、PET画像からグルコース摂取量上昇部位を選り出すことにより悪性腫瘍疑い部位を識別するやり方も採れる。何れにせよ悪性腫瘍疑い部位を発見したら、ステップ506にてそのPET/CT合成画像から特徴を抽出し、抽出した特徴に基づきステップ508にてその悪性腫瘍疑い部位を分類する。即ち悪性腫瘍該当か非該当かを判別する。なお、特徴としては、それらを構成するベクトル化ボクセルの値、形状的/形態的情報、それらの値の変換生成物等を抽出すればよい。また、分類ステップ508で使用する学習エンジンは、前述の通り、どの部位が悪性腫瘍でありどの部位がそうでないかがわかっている脳PET/CT合成画像を用いて、トレーニング済のものである。
【0064】
図6に本発明の他の実施形態を示す。図2Aに示した実施形態に対する本実施形態の相違点は、検知したあらゆる傷病部位を読み取れるように、更新エンジン600を使用して試料束200を更新している点にある。この更新は試料束200の構成要素に情報変形を施すことにより実行することができる。変形対象となりうるのは、例えば総合メタデータ104、方式インスタンス別メタデータ106、画像別メタデータ112、1枚又は複数枚の画像に係る画素データ110、それらの任意の組合せ等である。
【0065】
更新エンジン600によるこの情報変形は、例えば傷病部位が検知されたことを示す指示子、検知した傷病部位の個数を示す指示子、検知した傷病部位の位置を示す指示子(群)、検知した傷病部位の種々の特徴を記述する指示子(群)、その任意の組合せ等の追加により実行することができる。いわゆる当業者であればこれ以外の変形手法も想到できよう。また、追加する指示子は、例えば追加メタデータ、検知済傷病部位を示すマスク画像、検知した傷病部位がわかるよう元々の画像データを修正したもの、それらの任意の組合せ等といった形態を採りうる。
【0066】
また、先に図5を参照して説明した通り、PET/CT装置を用いた脳画像多方式撮影では撮影時にPET画像とCT画像の位置が揃う仕組みになっているが、このように最初から画像の位置が揃う多方式撮影ばかりではない。異方式画像間で初期位置が揃っていない場合、複数方式検知個所を以て傷病部位とする手法は採用が難しい。この問題を克服するには、異方式画像間の対応関係について予備知識を得ることが肝要になる。そうした対応関係がわかれば、ある画像で傷病部位として検知された部位が他の画像でも傷病部位として検知されているか否かを、検知エンジンにより判別することが可能になる。
【0067】
異方式画像間の対応関係を調べる際には既知の様々な手法を使用することができる。使用できる手法の多くは、画像同士で位置を揃える処理即ち画像間レジストレーション法の類である。そのなかには、共通画像即ちアトラス画像を基準に画像間で位置を揃えて間接的に対応関係を画定するものもある。こうした画像間レジストレーション法、とりわけ異方式画像間で位置を揃える異方式画像間レジストレーション法には長大な歴史があり、非特許文献10で要約されているように、大まかにはパラメトリックレジストレーション法と非パラメトリックレジストレーション法とに分けられる。パラメトリックレジストレーション法には更に目印利用型レジストレーション法、主軸利用型レジストレーション法及び最適線形レジストレーション法があり、非パラメトリックレジストレーション法には弾性レジストレーション法、流体レジストレーション法、拡散レジストレーション法及び湾曲レジストレーション法がある。
【0068】
パラメトリックレジストレーション法ではパラメタ的な画像間対応関係を求める。一般的なパラメタ導出法としては、画像座標値を一致させるのに必要な座標回転量及び平行移動量を求める剛体変換、画像座標値を一致させるのに必要な座標回転量、平行移動量、水平/垂直方向スケーリング率及び水平/垂直方向分割比を求めるアフィン変換等といった手法を好適に使用できる他、多項変換やスプライン変換も使用できる。例えば目印利用型レジストレーション法の場合、各画像に現れている特徴が他の画像に現れているどの特徴に対応するのかを、自動的に或いはGUI上でのマニュアル操作に応じて識別する。その際着目するのは、校正基準マーカ等の明示目印や、画像から演繹・導出した点、コーナ、辺、領域等の潜在目印である。特徴同士の画像間対応関係は、対応する特徴間の位置ずれを表す誤差関数の値が最小になるよう一組のパラメタを定めることにより、パラメタ的に画定する。
【0069】
主軸利用型レジストレーション法は、画像に含まれる目印の位置及び対応関係を識別する上での問題点を克服した手法である。例えば非特許文献6に記載の主軸変換(PAT)レジストレーション法では、各画像を確率密度関数乃至質量関数として扱う。各画像の期待値及び共分散行列はその画像の中心及び主軸についての情報を含んでおり、それらはその画像の特徴と見なすことができる。また、期待値及び共分散行列は、対数尤度が最大になるよう画像をGauss分布関数に最適当てはめすることによって、算出することができる。また、画像をCauchy分布乃至t分布に当てはめるようにすれば外乱に対しよりロバストになる。算出したら、各画像の中心及び主軸を用いそれら二枚の画像をアフィン変換する。
【0070】
最適線形レジストレーション法(より一般には最適パラメトリックレジストレーション法)では、画素データ間距離指標値が小さくなる一組のレジストレーションパラメタ値を探索する。その距離指標としては、距離ベース指標である距離自乗和乃至絶対距離和、相関ベース指標である(正規化)相関係数、エントロピーベース指標である相互情報等を好適に使用できる。相互情報は異方式画像間の位置揃えに広汎に使用されており、例えば非特許文献7には相互情報を距離指標として用いた画像間レジストレーション法が仔細に記述されている。なお、距離指標値が最小になる一組のレジストレーションパラメタを導出するという問題は一般に非線形問題になるので、それを解くにはGauss−Newton法、Levenberg−Marquardt法、Lagrange−Newton法等による繰り返し演算を実行する必要がある(非特許文献11参照)。
【0071】
非パラメトリックレジストレーション法では画像間の位置揃えを変分問題として扱う。変分問題における最小値を求めるには対応するEuler−Lagrange等式(詳細には非特許文献12を参照)を解けばよい。この等式を解く際には、通常、得られる対応関係が微分同相になるよう正則化条件を設定する。例えば弾性レジストレーション法は、画像を弾性体と見なしその線形弾性モデルを求めることにより画像間の対応関係を求める手法であり、この手法ではEuler−Lagrange等式をNavier−Lame´等式に変形してFFT(高速Fourier変換)法で解く。また、流体レジストレーション法は流体モデル乃至粘弾性モデルを用いて画像間の対応関係を記述する手法であり、より適合的に解を導出できる反面その計算がやっかいである。拡散レジストレーション法は拡散モデルによって対応関係を記述する手法であり、その拡散モデルの適合性は流体モデルに見劣りするけれども、加法演算子分離(AOS)方式を用いて実現すれば弾性レジストレーション法よりも効率的に解を求めることができる。そして、湾曲レジストレーション法は、解を導出するための正則化条件として二次導関数に基づく条件を使用することで、弾性、流体及び拡散レジストレーション法に比べ大規模な初期位置ずれに対しロバストにした手法である。
【0072】
また、これら周知の画像間レジストレーション法は、文献では2D画像同士の位置揃え手法として説明されていることが多い。3D画像即ち立体同士を位置揃えする際には、例えば、それらの3D画像を複数の2D画像にスライスし、スライス同士の対それぞれに上掲のレジストレーション法を適用すればよい。但し、これをうまく実行するには、適切な状況下で実行することと、どのスライスとどのスライスとを対にすればよいかについての予備知識とが必要である。また、上掲のレジストレーション法を実際に三次元に拡張してしまうやり方もある。ただ、何れの手法も多次元に拡張できるとはいえ、それを行うと普通は計算の面倒さが指数的に増大する。
【0073】
図7に本発明の更なる実施形態を示す。本実施形態は試料束700を提供する手段、マッピングエンジン702、学習エンジン704及び検知エンジン708から構成されている。試料束700は、ある患者を第1方式で撮影して得た少なくとも1枚の第1方式医用画像、並びに同じ患者を第2方式で撮影して得た少なくとも1枚の第2方式医用画像を含んでいる。マッピングエンジン702はそれら各1枚以上の第1方式医用画像第2方式医用画像間の対応関係を求め、学習エンジン704は各方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定し、検知エンジン706は試料束700を構成する医用画像のうち少なくとも1枚からその特徴を有する部位を検知する。
【0074】
マッピングエンジン702による画像間対応関係導出に際しては、画像間位置揃えを実行する。例えば各1枚以上の第1方式医用画像第2方式医用画像間でその位置を互いに揃え、或いは各1枚以上の各方式医用画像の位置をアトラス画像乃至モデルを基準に揃える。位置揃えに使用するレジストレーション法はパラメトリックレジストレーション法でも非パラメトリックレジストレーション法でもかまわない。例えば強度利用型、相関利用型、及び相互情報利用型の何れも使用できる。
【0075】
図7に示した実施形態は例えば胸部画像解析による微細石灰化個所乃至腫瘤の検知に使用するとよい。胸部X線マンモグラフィは乳癌検査に最も広く用いられている手法であり、X線マンモグラフィ画像の解析や微細石灰化個所乃至腫瘤の自動検知及び検知支援に向け、例えば非特許文献13に記載の通り多大な努力がなされている。多くの腫瘤検知アルゴリズムでは、右胸画像の位置を左胸画像の位置と揃え、或いはその胸部画像の位置を以前に撮影した同じ人の胸部画像の位置と揃えた上で、それらの画像同士を比較して差異を探し出す。非特許文献13に記載の通り、この比較によってそのX線写真から特徴を抽出することができ、ひいてはその画像に映っているのが“正常範囲”の胸部か否かを判別することができる。
【0076】
他方、昨今の医用超音波機器は、高解像度リアルタイム撮影が可能で、イオン化輻射が不要で、割合に安価で、しかもその移動が容易である。このように低コストで使用でき可搬性の高い方式は、高度な医用画像撮影設備を使用できない病院にとって非常に現実的且つ魅力的である。しかも、医療診断におけるその用途範囲は広い。例えば乳癌検診の際には、まず超音波で胸部を撮影して予備検査し、悪性腫瘍とおぼしき個所が見つかったらより高度なMRI撮影で再検査・診断する、という手順を採ることができる。
【0077】
既に判明しているように、超音波画像における内部エコーの均一性即ちテキスチャ形状の現れ具合は組織の性状によって違う。従って、超音波画像内のテキスチャを解析することで、その組織が良性腫瘍かそれとも悪性腫瘍かの判別を支援することができる。この点については非特許文献1を参照されたい。組織分類のためのテキスチャ形状解析には、例えば、入力層と出力層の間に隠れ層が1個あり教師なし学習によってトレーニングされている自己組織化マップを、クラシファイアとして用いるとよい。こうした自己組織化マップなら、入力される特徴ベクトルが高次元空間で記述されていても、それを二次元のマッピングアレイへとマッピングし、その出力層から出力することができる。出力層を構成する各ニューロンには荷重パラメタベクトルが割り当てられており、入力された特徴ベクトルと各荷重パラメタベクトルとの比較によって導出された最良適合解が、その特徴ベクトルに対するその自己組織化マップの応答即ち出力となる。
【0078】
クラシファイアに入力される特徴ベクトル即ち超音波画像のテキスチャを表すベクトルは、平均除去正規化自己相関法によって生成する。いま、胸部超音波画像の離散化横軸座標値をx∈[1,…,X]、離散化縦軸座標値をy∈[1,…,Y]とし、その画像の画素強度をU(x,y)で表すこととすると、位置(x,y)にある画素と位置(x+δx,y+δy)にある画素との間の二次元平均除去正規化自己相関係数は、次の式
【数4】

により計算することができる。この式中、
【数5】

はx∈[1,…,X]及びy∈[1,…,Y]の範囲における画素強度U(x,y)の平均値、δx及びδyはそれぞれx方向及びy方向における画素位置差である。自己組織化マップに特徴ベクトルとして入力されるのは、こうして得られた平均除去正規化自己相関係数
【数6】

と画像の分散値である。
【0079】
X線マンモグラフィ画像及び胸部超音波画像は、腫瘤があるか否か、またその腫瘤が悪性腫瘍か良性腫瘍かについて、ユニーク且つ相補的な情報をもたらしてくれる。従って、それらX線画像超音波画像間の対応関係がわかれば、その相補性を利用して統合的且つ情報豊かに、“コンピュータ診察”を実施することができる。
【0080】
図8に、図7に示した実施形態にて実施できる傷病部位検知手順の一例を示す。図中、ステップ800では胸部X線マンモグラフィ画像が、ステップ802では同じ人の胸部超音波画像が、それぞれ撮影されている。ステップ804では、いわゆる当業者にとり周知の手法、例えば前掲の非特許文献13に記載の手法を用いて、X線マンモグラフィ画像内の腫瘤疑い部位を識別する。ステップ806では、X線マンモグラフィ画像内の各腫瘤疑い部位が超音波画像内のどの個所に対応するかを識別することにより、X線マンモグラフィ画像と超音波画像との間の対応関係を求める。ステップ808では、超音波画像内の腫瘤疑い部位対応部位からその特徴、例えば前述の平均除去正規化自己相関係数及び分散値を抽出する。そして、ステップ810では、抽出した特徴に従いまた例えば自己組織化マップを用いて、各腫瘤疑い部位を悪性腫瘍該当と非該当とに分類する。
【0081】
図9A〜図9Eに、本発明に係るシステムにて実施できる傷病部位検知手順の別例を示す。この手順は、造影剤注入の前後に何枚かずつ撮影した胸部MRI画像から傷病組織を自動検知する手順である。なお、造影剤注入前の胸部画像撮影も造影剤注入後の胸部画像撮影も同じくMRI方式で行われているが、この手順では、造影剤の注入前に撮影した画像群と注入後に撮影した画像群とを互いに別々の方式による画像と見なして処理している。また、この手順は、それぞれ例えば位置揃え、差分導出、セグメント化、力学系識別、分類等といった特定の機能を担う複数個の処理ステップから構成されている。本手順における傷病組織検知は、教師付き学習による分類の一類型である力学系パラメタ分類によって実行される。
【0082】
図9Aに示したフローチャートでは、まず最初のステップ902にて、造影剤注入前後に亘り複数組の胸部MRI画像を撮影する。各組の胸部MRI画像は一群の2D画像即ちスライスをS枚、奥行き方向乃至高さ方向に沿って並べたものであり、造影剤注入前にはS枚のスライスからなる胸部MRI画像を一組撮影し、造影剤注入後には同じくS枚のスライスからなる胸部MRI画像をK組(一般に複数組)撮影する。造影剤注入後の撮影に際しては組と組の間に分単位の時間を空ける。造影剤注入前後に亘り、奥行き方向即ちz方向に沿ったスライスの順序は変えない。従って、離散化横軸座標値をx∈[1,…,X]、離散化縦軸座標値をy∈[1,…,Y]、離散化奥行き軸座標値をz∈[1,…,S]、離散化時間軸座標値をk∈[1,…,K]とすると、空間位置(x,y,z)における画素値即ち胸部MRI画像の強度は、造影剤注入前に撮影した胸部MRI画像についてはI(x,y,z)と表すことができ、造影剤注入後に撮影したk組目の胸部MRI画像についてはI(x,y,z)と表すことができる。
【0083】
画像撮影プロセス実施時に観察できる通り、造影剤が存在していると信号が強まり、記録される画素値が大きくなる。画素値上昇に伴うコントラスト上昇の速度は組織の種類によって異なるので、画素値の時間変化曲線を調べることによってその組織の種類を識別することができる。こうした傷病組織検知を自動的に実行するには、造影剤注入後に撮影したK組のMRI画像I(x,y,z)が、基準となる一組のMRI画像に対して空間的に揃っていなければならない。ステップ904ではこの位置揃えを実行する。位置揃えの基準としては、造影剤注入前に撮影した一組のMRI画像I(x,y,z)を用いることができる。こうした位置揃えを実行することによって、互いに同一の胸部組織に属する画素の(x,y)座標値を、K組ある画像全ての間で一致させることができる。また、この位置揃えには対応関係を非リジッドに(非剛体変換的に)画定するレジストレーション法を用いるのが望ましいが、上掲のレジストレーション法であればどの手法でも使用できる。
【0084】
図9Bに示す通り、造影剤注入後に撮影した画像における画素強度の時間的増加傾向は、胸部組織の種類によって異なっている。このことからわかるように、造影剤注入の前に撮影した画像を後に撮影した画像から差し引くことにより、傷病組織の所在についての情報を医療従事者がよりはっきりと読み取れる画像を、生成することができる。また、その情報を利用し原胸部MRI画像からの部位抽出を実行することにより、傷病組織を自動検知及び識別することができる。
【0085】
図9A中のステップ906ではこの減算を実行する。即ち、複数組ある胸部MRI画像I(x,y,z)から基準となる一組のMRI画像I(x,y,z)を減算し、複数組の差分画像δI(x,y,z)を導出する(但しk∈[1,…,K])。
【0086】
図9A中のステップ908では、これらの差分画像δI(x,y,z)を対象にセグメント化手順を実行する。この手順では、まず、差分画像δI(x,y,z)をしきい値判別することによって複数組のマスク画像M(x,y,z)を生成する(但しk∈[1,…,K])。即ち、差分画像δI(x,y,z)を構成する各画素の強度が所定のしきい値T以下かそれともしきい値T超かを調べ、しきい値T以下の画素に対応する位置では画素値が0値を採り且つしきい値T超の位置では1値を採るよう、マスク画像M(x,y,z)を生成する。マスク画像M(x,y,z)を生成したら、そのうちの非0値画素に従い各組の胸部MRI画像I(x,y,z)をセグメント化することにより、k組のセグメント化画像S(x,y,z)を取得する(但しk∈[1,…,K])。マスク画像M(x,y,z)が0値を採る位置ではセグメント化画像S(x,y,z)も0値を採り、1値を採る位置ではセグメント化画像S(x,y,z)はMRI画像I(x,y,z)と同じ値を採る。なお、いわゆる当業者ならば理解できる通り、実際には、マスク画像M(x,y,z)を生成する処理を省略することができる。即ち、胸部MRI画像I(x,y,z)に対して直にセグメント化処理を施すことでも、セグメント化画像S(x,y,z)を取得することができる。
【0087】
ステップ908におけるセグメント化は、セグメント化画像S(x,y,z)を構成する画素のうち正常組織や肥満組織に属する画素の値が0になり、悪性腫瘍組織又は良性腫瘍組織に属する画素だけが非0で存置されるよう実行する。これは、本実施形態の狙いが傷病組織の検知にあるためである。しかしながら、より重要なのは、良性腫瘍組織から悪性腫瘍を見分けることである。良性腫瘍組織に対する悪性腫瘍の弁別は、個別画像内画素の強度を静的な形態で調べるだけでは、到底不可能乃至困難である。しかしながら、図9B中の正常組織曲線及び肥満組織曲線を省略してステップ関数f(t)の曲線922を追記した図9Cから読み取れるように、組織の種類による強度変化傾向の違いを利用し、それらを動的に弁別することが可能である。なお、ステップ関数とは、その値がt<0の領域では0、t≧0の領域では|λ|になる関数f(t)のことである(λ≠0)。
【0088】
図9Cに示すように、悪性腫瘍組織の輝度(コントラスト比)変化曲線924は、原点からスタートしてステップ関数曲線922より高いレベルまで急上昇し、その後ステップ関数曲線922に漸近していく。これに対して、良性腫瘍組織の輝度(コントラスト比)変化曲線926は、ステップ関数曲線922より低レベルの領域で緩上昇し、その後ステップ関数曲線922に漸近していく。いわゆる当業者であれば理解できるように、悪性腫瘍組織の輝度(コントラスト比)変化曲線924は、減衰率が低い力学系がステップ関数f(t)に対して呈するステップ応答m(t)に似ており、良性腫瘍組織の輝度(コントラスト比)変化曲線926は、減衰率が高い(又は臨界的な)力学系がステップ関数f(t)に対して呈するステップ応答b(t)と似ている。
【0089】
図9Dに、力学系の挙動を調べる手法のあらましを示す。この図に示すように、その挙動が判明していない力学系930を調べる際には、まずステップ関数928を用いてその力学系930を励起する。それに対する力学系930からの応答932を力学系識別ステップ934にて処理することで、その力学系930の動的パラメタを推定することができる。
【0090】
図9Eに、ステップ912にて設定する力学系モデルの一例表現として自己回帰(ARX)モデル936を示す。ARXモデルを用いた系識別については非特許文献22に詳細な数学的記述があるのでそちらを参照されたい。一般的なARXモデル936は次に示す式
【数7】

で表すことができる。この式中、G(q)及びH(q)はシステム伝達関数942及び940を、u(t)は励起入力938を、ε(t)は外乱944を、そしてy(t)はシステム出力946を、それぞれ表している(同順)。既知の通り、これらの伝達関数G(q)及びH(q)は遅延演算子q−1の有理関数に分子係数及び分母係数を付した次の形式
【数8】

【数9】

によって表すことができる。この式中、A(q)及びB(q)は遅延演算子q−1の多項式
【数10】

である。
【0091】
明らかな通り、本システムのARXモデルは
【数11】

と表記することができ、更に線形形式を用い
【数12】

但し
【数13】

【数14】

なる形式で表記することができる。従って、この式を係数ベクトルθについて解いて得られる系識別解は
【数15】

但し
【数16】

となる。これらの式(9)及び(10)中、tはデータサンプリング開始時刻、Nはサンプル個数である。
【0092】
本実施形態の場合、モデルへの入力u(t)はステップ関数であり、モデルからの出力はステップ応答m(t)又はb(t)、即ち輝度(コントラスト比)変化曲線924又は926である。モデルの出力がステップ応答m(t)の場合は
【数17】

、ステップ応答b(t)の場合は
【数18】

から、対応する解
【数19】

及び
【数20】

が得られる(同順)。ステップ910(即ち934)においては、こうした解
【数21】

を算出することによって力学系を識別乃至特定する。
【0093】
ステップ914では、教師付き学習ステップ918にてトレーニングされたクラシファイアを用い、MRI画像内の高輝度コントラスト比部位を良性腫瘍と悪性腫瘍とに分類する。そのため、ステップ918では、例えば悪性腫瘍におけるコントラスト比変化を示す曲線
【数22】

を入力したら好ましくは悪性腫瘍指示子Oを出力し、良性腫瘍におけるコントラスト比変化を示す曲線
【数23】

を入力したら好ましくは良性腫瘍指示子Oを出力するよう、クラシファイアをトレーニングする。図示例では、ステップ918にてトレーニングに使用する曲線サンプル、即ち良性腫瘍又は悪性腫瘍におけるコントラスト比変化を表す既知の曲線を、ステップ916にてM通り取得している。M本の曲線サンプルのうちM本は悪性腫瘍の曲線、M本は良性腫瘍の曲線にする。例えば、合計本数Mが100ならM及びMは各50にするとよい。ステップ918では、それら既知の曲線サンプル全てに式(8)を適用することによって、係数ベクトル
【数24】

をM通り生成する。そのうち
【数25】

で表されるM個は悪性腫瘍を表す指示子O付きのものであり、
【数26】

で表されるM個は良性腫瘍を表す指示子O付きのものである。ステップ918では、こうして学んだ係数ベクトル
【数27】

及び
【数28】

を用いてクラシファイアをトレーニングする。トレーニングされたクラシファイアはコントラスト比変化曲線の分類による検知乃至診断に使用される。
【0094】
良性腫瘍と悪性腫瘍とを見分ける精度即ち弁別能を高めるには、トレーニング(学習)や分類の手順で他の要因を利用するようにするとよい(ステップ920)。非特許文献4に示されているように、弁別能に影響する要因としては、造影剤投与速度、造影剤投与から撮影までの経過時間、撮影時露出時間、スライス厚等があることが判明している。
【0095】
ここで例示した諸要因、即ち造影剤投与速度α、造影剤投与から撮影までの経過時間β、撮影時露出時間γ、並びにスライス厚δは、何れも、係数ベクトル
【数29】

及び
【数30】

と共にクラシファイアのトレーニングに使用することができる。また、それらを用いてトレーニングしたクラシファイアは、胸部MRI画像内の各部位を悪性腫瘍クラスと良性腫瘍クラスに分類するのに役立つ。但し、その使用に際しては、その値を係数ベクトル
【数31】

及び
【数32】

の値と対比することができるよう、各要因を数値化する必要がある。また、学習によるトレーニングに際しては、次のデータセット
【数33】

を構築する。この式中、τはその腫瘍が悪性のときに値がになり他の場合は−1になるクラスラベル、ベクトル
【数34】

は特徴抽出結果をその要素とする特徴ベクトル、
【数35】

はd次元ドメインである。本実施形態では係数ベクトルθに含まれる要素が5種類であるのでドメイン次元数dは5である。そして、この式(11)に示したデータフォーマットは、学習ステップ918だけでなく分類ステップ914でも使用する。更に、いわゆる当業者ならば理解できるように、データベクトルpについては、ここで例示した構成以外の構成にすることや、例示した要因以外の物理的又は非物理的な数値要素によって補強することが可能である。
【0096】
コントラスト比変化曲線と共に物理的又は非物理的要因を使用して悪性腫瘍良性腫瘍弁別タスクを実行することが可能なクラシファイアには、様々な種類がある。その一例は非特許文献5に記載のサポートベクタマシン(SVM)型クラシファイアである。このタイプに属するクラシファイアのうち単純な構成のものでは、超平面で分離された2個のクラスからなるデータを用いてトレーニングを行い、またそれを対象にデータ分類を実行する。SVMに対するトレーニングのゴールは、データ分離用の超平面が満たすべき条件を定める次の式
【数36】

中のフリーパラメタw及びσの値を、決定することである。なお、この式中の「・」は、通例通り、内積(大きさ)を求める演算子である。パラメタw及びσには
【数37】

なる一群の不等式を満たすようにスケーリング係数を適用することができる。この式(13)を解くにはLagrangian関数
【数38】

が最小になるパラメタwを見つけ出し、次に同関数が最大になるよう係数ξ≧0を定めればよい。
【0097】
この最適化問題が解けたら、式(13)におけるパラメタwの表記を非0係数によるサポートベクタ表記に書き換え、その式を超平面分類式に代入してSVM決定関数
【数39】

を生成する。この式中のlはサポートベクタの個数である。与えられるベクトルpnewが2個のクラス即ち悪性腫瘍クラスと良性腫瘍クラスのうち何れに属するかは、この決定関数の符号により示される。いわゆる当業者であれば理解できるように、変数分離が不可能なケースでは非線形SVMを用いればよい。
【0098】
以上、本願では種々の特許文献及び非特許文献を参照したが、それらの内容は全て本願に繰り入れられるものとする。
【0099】
また、本願でいうコンピュータプログラム製品とは1個又は複数個の記録乃至記憶媒体に格納されたもののことをいう。媒体としては例えば磁気ディスク(フロッピーディスク等)、磁気テープ等の磁気記録媒体、光ディスク、光テープ、機械可読バーコード等の光学記録媒体、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(リードオンリーメモリ)等の固体電子記憶デバイスといったものを、使用することができる。要は、本発明に係る方法を1台又は複数台のコンピュータに実行させるための命令群からなるコンピュータプログラムを格納可能であれば、どのような形態の装置乃至媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】多方式検査時に撮影した画像群を模式的に示すブロック図である。
【図2A】本発明の一実施形態に係る患者医用画像内傷病部位検知システムを示すブロック図である。
【図2B】図2Aに示したシステムの詳細構成を示すブロック図である。
【図3A】本実施形態における検知エンジンの一例構成を示すブロック図である。
【図3B】本実施形態における検知エンジンの別例構成を示すブロック図である。
【図4】図2Bに示したシステムの変形例を示すブロック図である。
【図5】本実施形態における傷病部位検知手順の一例を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る患者医用画像内傷病部位検知システムを示すブロック図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態に係る患者医用画像内傷病部位検知システムを示すブロック図である。
【図8】本実施形態における傷病部位検知手順の一例を示す図である。
【図9A】本実施形態における傷病部位検知手順の別例を示す図である。
【図9B】胸部組織の種類による画素強度増加傾向の違いを示す図である。
【図9C】図9Bの一部を詳細に説明する図である。
【図9D】力学系の挙動を調べる手順の一般例を模式的に示す図である。
【図9E】力学系モデルの一例表現を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の医用画像から傷病部位を検知するシステムであって、
同じ被験体を第1方式で撮影した第1方式医用画像及び第2方式で撮影した第2方式医用画像を各1枚以上含む試料束を提供する手段と、
それら第1及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を指定する第1自動手段と、
その試料束を構成する医用画像1枚以上からその特徴を備えた部位を検知する第2自動手段と、
を備えるシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、第1自動手段が学習エンジンを含み、第2自動手段が検知エンジンを含むシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムであって、学習エンジンが、
(a)第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる第1学習モジュールと、
(b)第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる第2学習モジュールと、
を有するシステム。
【請求項4】
請求項2記載のシステムであって、検知エンジンが、
(a)第1方式医用画像から傷病部位を検知する第1検知モジュールと、
(b)第2方式医用画像から傷病部位を検知する第2検知モジュールと、
を有するシステム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムであって、第2検知モジュールが、第1検知モジュールが検知した傷病部位に対応する部位内で傷病部位を検知するシステム。
【請求項6】
請求項4記載のシステムであって、検知エンジンが、第1検知モジュールによる検知結果と第2検知モジュールによる検知結果とを合成する合成モジュールを有するシステム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムであって、合成モジュールが、第1及び第2検知モジュールのうち一方でしか傷病部位として検知されなかった部位を傷病部位と認めないシステム。
【請求項8】
請求項6記載のシステムであって、合成モジュールが、第1検知モジュールでは傷病部位として検知されていないのに第2検知モジュールでは傷病部位として検知された部位を傷病部位と認めないシステム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムであって、第1自動手段が、第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を統合的に指定する手段を提供する統合学習モジュールを有するシステム。
【請求項10】
請求項9記載のシステムであって、第2自動手段が、第1方式医用画像からの傷病部位検知及び第2方式医用画像からの傷病部位検知を統合的に実行する統合検知モジュールを有するシステム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムであって、傷病部位検知結果が反映されるよう試料束を更新する第3自動手段を備えるシステム。
【請求項12】
被験体の医用画像から傷病部位を検知するシステムであって、
同じ被験体を第1方式で撮影した第1方式医用画像及び第2方式で撮影した第2方式医用画像を各1枚以上含む試料束を提供する手段と、
それら第1方式医用画像と第2方式医用画像の間の対応関係を求めるマッピングエンジンと、
それら第1及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる学習エンジンと、
その試料束を構成する医用画像1枚以上からその特徴を備えた部位を検知する検知エンジンと、
を備えるシステム。
【請求項13】
請求項12記載のシステムであって、マッピングエンジンが、第1方式医用画像の位置と第2方式医用画像の位置を揃えるシステム。
【請求項14】
請求項13記載のシステムであって、マッピングエンジンが、パラメトリックレジストレーション法、非パラメトリックレジストレーション法、強度利用型レジストレーション法、相関利用型レジストレーション法又は相互情報利用型レジストレーション法を用いて、画像の位置を揃えるシステム。
【請求項15】
請求項12記載のシステムであって、マッピングエンジンが、少なくとも何れかの方式による医用画像1枚以上の位置をアトラス画像を基準に揃えるシステム。
【請求項16】
請求項12記載のシステムであって、
学習エンジンが、(a)第1方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる第1学習モジュール及び(b)第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学習させる第2学習モジュールを有し、
検知エンジンが、(a)第1方式医用画像から傷病部位を検知する第1検知モジュール及び(b)第2方式医用画像から傷病部位を検知する第2検知モジュールを有するシステム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムであって、第1及び第2学習モジュールのうち少なくとも一方が、傷病部位の特徴に関する所与の予備知識を利用して作動するシステム。
【請求項18】
請求項16記載のシステムであって、検知エンジンが、第1検知モジュールによる傷病部位検知結果と第2検知モジュールによる傷病部位検知結果とを合成する合成モジュールを有するシステム。
【請求項19】
被験体の医用画像から傷病部位を検知するシステムであって、
同じ被験体を第1方式で撮影した第1方式医用画像及び第2方式で撮影した第2方式医用画像を各1枚以上含む試料束を提供する手段と、
それら第1及び第2方式医用画像に現れうる傷病部位の特徴を学ぶのに使用する複数枚のトレーニング画像を提供する手段と、
その試料束を構成する医用画像1枚以上からその特徴を備えた部位を検知する検知エンジンと、
を備えるシステム。
【請求項20】
請求項19記載のシステムであって、第1方式医用画像と第2方式医用画像の間の対応関係を求めるマッピングエンジンを備えるシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【公表番号】特表2009−502230(P2009−502230A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522788(P2008−522788)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/024013
【国際公開番号】WO2007/018755
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(507224587)ケアストリーム ヘルス インク (76)
【Fターム(参考)】