説明

医用画像処理装置、医用画像処理方法

【課題】他の画像を参照することなしに、仮想内視鏡画像が管腔臓器のどの部位に対応するか、或いは展開画像における各位置が管腔臓器のどの部位に対応するかが容易に判別可能な医用画像処理装置等を提供する。
【解決手段】医用画像処理装置1は、医用画像情報から展開画像を作成し(S11)、展開画像から凸部領域を抽出する(S12)。次に、医用画像処理装置1は、例えば、展開画像の各部分領域における凸部領域の密度を計算し(S15)、凸部領域の密度に基づいて、各部分領域に対応する大腸の部位を決定する(S17)。そして、医用画像処理装置1は、例えば、各部分領域の色付けを行い、展開画像を表示する(S18)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う医用画像処理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CT装置やMRI装置によって撮影された画像データに基づいて、コンピュータを用いて3次元的な画像を作成することが行われている。3次元的な画像は、Axial画像を1枚1枚読む手間を省き、読影効率向上の一助となっている。
【0003】
例えば、大腸等の管腔臓器内部を能率的に診断するための画像表示方法として、仮想内視鏡画像を生成する手法が開発されている(特許文献1参照)。仮想内視鏡画像は、内視鏡で得られる画像のように臓器内部を観察することができる。
【0004】
また、管腔臓器の芯線を中心に臓器内部を展開した展開画像を生成する手法も開発されている(特許文献2参照)。展開画像では、管腔臓器内部の表面全体を一望できるため、医師等が病変候補を見つけやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3411665号公報
【特許文献2】特許第3627066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば大腸において異常構造物を発見した場合には、異常構造物が存在する結腸または直腸の名前と異常構造物の分類を報告する必要がある。しかしながら、仮想内視鏡画像や展開画像において異常構造物を発見した場合、従来の仮想内視鏡画像や展開画像単体では異常構造物が存在する部位を特定することができず、Axial画像や大腸全体の画像などを参照する必要がある点が、不便であった。そこで、仮想内視鏡画像が管腔臓器のどの部位に対応するか、或いは展開画像における各位置が管腔臓器のどの部位に対応するかが、読影中の仮想内視鏡画像や展開画像のみによって一目で分かる画像表示法が望まれている。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、他の画像を参照することなしに、仮想内視鏡画像が管腔臓器のどの部位に対応するか、或いは展開画像における各位置が管腔臓器のどの部位に対応するかが容易に判別可能な医用画像処理装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために第1の発明は、被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う医用画像処理装置であって、前記医用画像において、前記管腔臓器の走行方向に区分される各部分領域が、前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する特定手段と、前記医用画像に重畳して、前記特定手段によって特定された前記管腔臓器の各部位を識別可能に表示する表示手段と、を具備することを特徴とする医用画像処理装置である。
【0009】
第2の発明は、被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う医用画像処理方法であって、前記医用画像において、前記管腔臓器の走行方向に区分される各部分領域が、前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する特定ステップと、前記医用画像に重畳して、前記特定ステップによって特定された前記管腔臓器の各部位を識別可能に表示する表示ステップと、を含むことを特徴とする医用画像処理方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、他の画像を参照することなしに、仮想内視鏡画像が管腔臓器のどの部位に対応するか、或いは展開画像における各位置が管腔臓器のどの部位に対応するかが容易に判別可能な医用画像処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】医用画像処理装置のハードウエア構成を示す図
【図2】大腸の各部位の名称を示す模式図
【図3】仮想内視鏡画像を示す模式図
【図4】展開画像を示す模式図
【図5】第1実施形態の医用画像処理装置の動作を示すフローチャート
【図6】凸部領域の抽出結果を示す模式図
【図7】凸部領域からひだ以外の除外結果を示す模式図
【図8】各部分領域に区切られた展開画像を示す模式図
【図9】第1実施形態の第1表示例を示す模式図
【図10】第1実施形態の第2表示例を示す模式図
【図11】第2実施形態の医用画像処理装置の動作を示すフローチャート
【図12】第2実施形態の表示例を示す模式図
【図13】第3実施形態の医用画像処理装置の動作を示すフローチャート
【図14】芯線上の各点における管腔の直交断面を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。最初に、図1〜図4を参照しながら、全ての実施形態に共通する事項について説明する。
【0013】
図1に示すように、医用画像処理装置1は、CPU(Central
Processing Unit)11、主メモリ12、記憶装置13、ネットワークアダプタ14、表示メモリ15、コントローラ16、表示装置17、マウス18、キーボード19等を備える。また、医用画像処理装置1は、ネットワーク2を介して、画像データベース3と接続される。
【0014】
医用画像処理装置1は、病院等に設置される画像診断用のコンピュータであり、医用画像を解析し、病変候補などを検出して医師に提示する診断支援装置として機能するものである。
【0015】
CPU11は、記憶装置13等に格納されるプログラムを主メモリ12のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、各部を駆動制御し、医用画像処理装置1が行う各種処理を実現する。
主メモリ12は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置13等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU11が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0016】
記憶装置13は、磁気ディスクや取り外し可能な記録媒体へのデータの読み書きを行う装置であり、CPU11が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU11により必要に応じて読み出されて主メモリ12のRAMに移され、各種の手段として実行される。
ネットワークアダプタ14は、ネットワーク2との接続インターフェースである。
【0017】
表示メモリ15は、CPU11から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置17に出力される。
コントローラ16は、マウス18等を制御し、データの入力を行う。
表示装置17は、液晶パネル等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路によって構成される。表示装置17は表示メモリ15に蓄積された表示データを表示する。
医師等は、マウス18やキーボード19を介して、対話的に医用画像処理装置1を操作する。
尚、図1では、表示装置17と、入力装置としてのマウス18やキーボード19を別体としたが、タッチパネル式ディスプレイ等のように、表示装置と入力装置が一体であっても良い。
【0018】
ネットワーク2は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等であり、画像データベース3等と医用画像処理装置1との通信接続を媒介する。
画像データベース3は、X線CT装置やMRI装置等、医用診断に利用される画像を撮影する機器によって撮影された医用画像を蓄積して記憶するものであり、例えば病院や医療センター等のサーバに構築される。
尚、図1では、画像データベース3がネットワーク2を介したサーバに構築されているが、画像データベース3は医用画像処理装置1の記憶装置13に構築しても良い。
【0019】
医用画像処理装置1は、被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う。管腔臓器とは、血管や消化管などの管の形状をした臓器である。
本発明の実施形態では、管腔臓器として、大腸を例に説明する。図2に示すように、大腸の各部位には名称が付けられている。大腸に属するのは、結腸(上行結腸21、横行結腸22、下行結腸23、S状結腸24)、直腸25、盲腸26、虫垂27である。上行結腸21と横行結腸22との間の湾曲部は、肝湾曲部28と呼ばれる。また、横行結腸22と下行結腸23との間の湾曲部は、脾湾曲部29と呼ばれる。
尚、全ての被検者の大腸が、図2と同様の形状をなしているわけではない。例えば、胃下垂の被検者の場合、横行結腸22は、図2に示す場所よりも下方に位置している。
【0020】
また、本発明の実施形態では、表示装置17に表示される医用画像として、大腸の仮想内視鏡画像、展開画像を例に説明する。
仮想内視鏡画像は、3次元のデータに対して、大腸の内部に設けた仮想的な視点から、投影対象物に対して仮想的な光線(レイ)を照射し、視線上の画素値を投影面に投影させる画像である。本発明の実施形態では、医用画像処理装置1は、例えば、特許文献1に記載の技術を用いて、仮想内視鏡画像を生成する。図3に示すように、仮想内視鏡画像は、内視鏡によって得られる画像のように、大腸の内部を観察することができる。尚、図3では、黒色が背景領域、白色が大腸領域を示している。大腸領域内の灰色部分は、大腸の表面の凹凸を陰影によって示したものである。
【0021】
また、展開画像は、3次元のデータに対して、大腸の芯線を中心に大腸内部が展開された画像である。本発明の実施形態では、医用画像処理装置1は、例えば、特許文献2に記載の技術を用いて、展開画像を生成する。展開画像では、図4に示すように、大腸の内部の表面を一望できるため、医師等が病変候補を見つけやすい。尚、図4では黒色が背景領域、白色が大腸領域を示している。大腸領域内のほぼ平行な2本の曲線群は、大腸の表面のひだを示したものである。
【0022】
<第1実施形態>
図5〜図10を参照しながら、第1実施形態について説明する。以下では、図5に示すフローチャートに基づいて医用画像処理装置1の動作を説明し、必要に応じて図6〜図10を参照する。
第1実施形態では、大腸を撮影した医用画像情報から大腸領域を描出し、大腸の各部位を表示する。この一連の処理の内容を、展開画像に適用した例について説明する。
【0023】
医用画像処理装置1のCPU11は、観察対象あるいは診断対象とする大腸を含む医用画像情報を読み込み、展開画像を作成する(ステップS11)。
医用画像情報は、例えば、X線CT装置によって撮影された断層画像が積み上げられたボリューム画像データである。
CPU11は、医師等によって選択された医用画像情報を記憶装置13から読み出して主メモリ12に保持する。次に、CPU11は、主メモリ12に保持されているデータから、例えば、特許文献2に記載の手法によって、展開画像を作成する。
【0024】
次に、CPU11は、ステップS11にて作成された展開画像から、突起物(凸部領域)を抽出する(ステップS12)。
展開画像の各画素値は、各画素の高さ情報に基づく値である。そこで、CPU11は、例えば、ステップS11にて作成された展開画像に対するしきい値処理によって、凸部領域を抽出しても良い。また、CPU11は、展開画像の表面形状を数値化した指標を算出し、この指標に基づいて凸部領域を抽出しても良い。また、CPU11は、展開画像の作成時に中間的に生成されるデータに基づいて凸部領域を抽出しても良い。
図6では、凸部領域として抽出された領域に灰色を付している。凸部領域としては、ひだの他に、糞便、病変候補などが考えられる。図6では、糞便、病変候補などの1例として、灰色が付された円形の領域を示している。
【0025】
次に、CPU11は、ステップS12において抽出された突起物(凸部領域)から、ひだ以外の突起物(凸部領域)を削除(除外)する(ステップS13)。
この処理の基準となる指標は、例えば、凸部領域の高さ、幅、長さ、円形度、表面形状を数値化した指標等である。
表面形状を数値化した指標の1例としては、Shape Indexがある。Shape Indexは、0から1まで連続的に変化する値をとり、各値にはそれぞれ異なる曲面形状が対応する。具体的には、「0」が凹型の半球に対応し、値が大きくなるにつれて、凹型の半円柱、鞍型の面・平面、凸型の半円柱に対応し、「1」が凸型の半球に対応する。
図7では、ステップS13の処理結果を示している。図6と図7を比較すると、円形の領域が灰色から白色になっており、ひだ以外の凸部領域として除外されたことを示している。そして、図7において灰色が付されたままの凸部領域が、ひだに相当する。
【0026】
次に、CPU11は、各突起物(凸部領域)の形状、すなわち、各ひだの形状を計測し、評価する(ステップS14)。
ひだの形状を評価する為の指標(以下、「ひだ形状指標」という。)は、ステップS13の指標と同様、例えば、凸部領域の高さ、幅、長さ、円形度、表面形状を数値化した指標等である。
【0027】
次に、CPU11は、展開画像の各部分領域における突起物(凸部領域)の密度、すなわち、ひだの密度を計算する(ステップS15)。
展開画像の各部分領域とは、図8に示すように、大腸(管腔臓器)の走行方向に区分される領域である。図8では、部分領域同士の境界を点線によって示しており、9個の部分領域に区分されている。図8では、各部分領域は等間隔に区分されているが、この例に限定されるわけではない。例えば、大腸の径の長さや曲率が変化するごとに、部分領域同士の境界を設けても良い。
ひだの密度は、例えば、各部分領域に含まれるひだの数(=凸部領域の数)である。また、ひだの密度は、各部分領域の面積に対する凸部領域の面積としても良い。
【0028】
次に、CPU11は、展開画の各部分領域についてスコアを計算する(ステップS16)。
大腸は、部位ごとにひだの形状や密度が異なるという特徴がある。そこで、各部分領域に含まれるひだの形状や密度に基づいて、部位を特定する為の単一のスコアを算出する。例えば、ひだ形状指標や密度を変数とする任意の関数(以下、「スコア関数」という。)を予め定義しておく。そして、CPU11は、ステップS14やS15の計算結果をスコア関数に代入することによって、部位を特定する為のスコアを算出する。
【0029】
スコア関数は、ひだ形状指標と密度の両方を変数として含んでも良いし、いずれか一方のみを変数として含んでも良い。ひだ形状指標については、凸部領域ごとに計算されるので、スコア関数がひだ形状指標を変数として含む場合には、部位を高精度に特定することができる。一方、ひだの密度については、部分領域ごとに計算されるので、スコア関数がひだの密度のみを変数として含む場合には、計算速度を上げることができる。
スコア関数がひだ形状指標のみを変数として含む場合には、CPU11は、ステップS15の処理を行う必要はない。同様に、スコア関数がひだの密度のみを変数として含む場合には、CPU11は、ステップS14の処理を行う必要はない。
【0030】
次に、CPU11は、スコアの値から各部分領域に対応する大腸の部位を決定する(ステップS17)。
例えば、統計データから、スコアと大腸の部位とを対応付けるテーブル(以下、「第1部位特定テーブル」という。)を予め定義しておく。そして、CPU11は、ステップS16の計算結果から第1部位特定テーブルを検索することによって、各部分領域に対応する大腸の部位を決定する。
【0031】
例えば、ひだの密度のみを変数として含むスコア関数を用いる場合、CPU11は、医用画像の画像データから、大腸(管腔臓器)の内面の突起物(凸部領域)を抽出し、凸部領域の密度に基づいて、部分領域ごとに、部分領域が大腸のどの部位に対応するかを特定する。
また、例えば、ひだ形状指標と密度の両方を変数として含むスコア関数を用いる場合、CPU11は、医用画像の画像データから、大腸(管腔臓器)の内面の突起物(凸部領域)を抽出し、凸部領域の形状及び密度に基づいて、部分領域ごとに、部分領域が大腸のどの部位に対応するかを特定する。
【0032】
次に、CPU11は、各部分領域の色付けを行い、展開画像を表示装置17に表示する(ステップS18)。
例えば、第1部位特定テーブルにおいて、部位ごとに色を定義しておく。そして、CPU11は、第1部位特定テーブルを参照し、各部分領域に色を対応付けて、展開画像に重畳して表示装置17に表示する。
尚、CPU11は、各部位を識別可能に表示すれば良く、色に代えて、テクスチャや文字列を展開画像に重畳して表示装置17に表示しても良い。
【0033】
図9では、第1実施形態における第1表示例を示している。図9に示す例では、各部位を識別可能に表示する為に、部分領域ごとに、展開画像に色を重畳している。例えば、濃い灰色が付された領域が直腸25、淡い灰色が付された領域がS状結腸24、白色が付された領域が下行結腸23である。例えば、医師等がマウス18を操作し、各部分領域にマウスオーバー(=マウスポインタを各部分領域の上に移動させること)を行うと、CPU11は、表示装置17に対応する部位の名称(「直腸」、「S状結腸」、「下行結腸」などの文字列)を表示するようにしても良い。
例えば、医師等が、円形の領域を病変(隆起性病変、大腸腫瘍など)であると診断した場合、医師等は、図9の展開画像を表示させた状態で、円形の領域の周辺にマウスオーバーを行い、円形の領域が、直腸25とS状結腸24に跨っていることを確認する。そして、医師等は、直腸25とS状結腸24の間に病変が存在することを電子カルテ等に入力する。また、医師等は、図9の展開画像を確認して、病変の肉眼的形態を電子カルテ等に入力する。
このように、医師等は、第1表示例の展開画像を確認することによって、他の画像を参照することなしに各部分領域がどの部位に対応するかが容易に判別することができるので、効率的な診断を行うことができる。
【0034】
図10では、第1実施形態における第2表示例を示している。図10では、CPU11は、特定された大腸(管腔臓器)の各部位に関連する関連情報を表している。関連情報は、例えば、統計的に大腸(管腔臓器)の各部位の病変が転移し易い臓器を示す情報である。
図10に示す例では、医師等がマウス18等を介して、下行結腸23の部分領域にマウスオーバーを行い、統計的に下行結腸23の病変が転移し易い臓器である「肝臓」の文字列が表示されている。
更に、医師等がマウス18等によって「肝臓」の文字列を選択すると、CPU11は、被検体の肝臓を含む画像を表示するようにしても良い。
このように、医師等は、大腸の展開画像から、ワンクリックによって、統計的に大腸の各部位の病変が転移し易い臓器を含む画像を表示させることができるので、効率的な診断を行うことができる。
【0035】
<第2実施形態>
図11、図12を参照しながら、第2実施形態について説明する。以下では、図11に示すフローチャートに基づいて医用画像処理装置1の動作を説明し、必要に応じて図12を参照する。
第2実施形態では、大腸を撮影した医用画像情報から大腸領域を描出し、大腸の各部位を特定し、表示する順番を入れ替える。この一連の処理の内容を、展開画像に適用した例について説明する。
【0036】
医用画像処理装置1のCPU11は、観察対象あるいは診断対象とする大腸を含む医用画像情報を読み込み、大腸領域を抽出する(ステップS21)。
医用画像情報は、例えば、X線CT装置によって撮影された断層画像が積み上げられたボリューム画像データである。
CPU11は、医師等によって選択された医用画像情報を記憶装置13から読み出して主メモリ12に保持する。次に、CPU11は、主メモリ12に保持されているデータから、しきい値処理などによって、大腸領域を抽出する。
【0037】
次に、CPU11は、ステップS21において抽出された大腸領域から、芯線を算出する(ステップS22)。
CPU11は、例えば、特許第4503389号公報に開示されるように、表示されているボリューム画像データの大腸領域内に指定された始点、終点、及び通過点間をトラッキングすることにより、芯線を算出する。
また、CPU11は、例えば、特許第4416736号公報(特に、段落[0109]、図41参照)に開示されるように、大腸の走行方向に直交する断面を抽出していき、各断面の重心座標を結んでいくことにより、芯線を算出しても良い。ここで、CPU11は、隣り合う重心間を直線にて結んでも良いし、スプライン補間などの補間により結んでも良い。
【0038】
次に、CPU11は、芯線の曲率に基づき、芯線における急カーブ部分(=曲率が大きい部分)を検出する(ステップS23)。
例えば、CPU11は、芯線上にある任意の点における接線ベクトルをrベクトル、隣り合う点における接線ベクトルをri+1ベクトルとすると、次式のように、2つのベクトルの内積がしきい値(Thres.)以下であるとき、急カーブ部分として検出する。ここで、隣り合う点は、ステップS22における芯線の算出処理に関わらず、芯線上にある等間隔の点とする。
【0039】
【数1】

【0040】
次に、CPU11は、急カーブ部分に基づいて部分領域に区分し、部分領域ごとに、大腸のどの部位に対応するかを特定する(ステップS24)。
図2を参照すると分かるように、上行結腸21と横行結腸22の間には、肝湾曲部28が存在する。つまり、上行結腸21から急カーブ部分の検出を開始したとすると、1番目に急カーブ部分として検出される部位は、肝湾曲部28に対応する。また、2番目に急カーブ部分として検出される部位は、脾湾曲部29に対応する。更に、3番目に急カーブ部分として検出される部位は、下行結腸23とS状結腸24との間の湾曲部に対応する。そこで、CPU11は、急カーブ部分を基準として、展開画像として表示される大腸領域を部分領域に区分し、各部位と対応付ける。
より具体的には、CPU11は、1番目の急カーブ部分を中心として、走行方向に所定の幅を有する領域を、肝湾曲部28と対応付ける。また、2番目の急カーブ部分を中心として、走行方向に所定の幅を有する領域を、脾湾曲部29と対応付ける。また、3番目の急カーブ部分を中心として、走行方向に所定の幅を有する領域を、下行結腸23とS状結腸24との間の湾曲部と対応付ける。そして、部位が対応付けられていない残りの領域を、順番に、上行結腸21、横行結腸22、下行結腸23、S状結腸24と対応付ける。尚、直腸25、盲腸26、虫垂27などについては、CPU11は、大腸の各端部から走行方向に沿った距離に基づいて部分領域に区分し、各部位と対応付ければ良い。
【0041】
次に、CPU11は、診断の優先度に基づいて、展開画像として表示する部分領域の順番を入れ替える(ステップS25)。
部分領域の順番を入れ替える為の優先度は、病変を見落としやすい部位、病変が出来やすい部位など、予め知られている知見に基づいて、予め定義しておく。そして、CPU11は、優先度が高い部位から順番に表示されるように、部分領域の順番を入れ替えて展開画像を作成する。
【0042】
次に、CPU11は、ステップS25において各部分領域の表示位置が変更された展開画像を表示装置17に表示する(ステップS26)。
図12(a)に示す展開画像31は、表示位置の変更前を示している。一方、図12(b)に示す展開画像32は、表示位置の変更後を示している。例えば、画面の左側から右側の方向にスクロールして画像の一部を順番に表示していく場合、図12(b)に示す展開画像32の右側が最初に表示されることから、展開画像32の右側には、優先順位が高い部分領域が配置される。
【0043】
図12(b)に示す展開画像32においても、第1実施形態における第1表示例などと同様に、医師等がマウス18を操作し、各部分領域にマウスオーバーを行うと、CPU11は、表示装置17に対応する部位の名称(「直腸」、「S状結腸」、「下行結腸」などの文字列)を表示する。従って、部分領域の表示位置が変更されても、医師等は、各部分領域がどの部位に対応するかを容易に判別することができ、混乱することはない。のみならず、医師等は、優先順位が高い部分領域から診断を行うことができるので、病変の見落としがない正確な診断を行うことができる。
【0044】
尚、第2実施形態は、仮想内視鏡画像にも同様に適用することができる。仮想内視鏡画像の場合、ステップS22における芯線の算出処理については、他の手法を用いても良い。例えば、CPU11は、特開平11−283055号公報に開示されるように、視点からボリューム画像データ内の最も遠い最深部を探索し、最深部の方向にトラッキングすることにより、芯線を算出しても良い。
【0045】
<第3実施形態>
図13、図14を参照しながら、第3実施形態について説明する。以下では、図13に示すフローチャートに基づいて医用画像処理装置1の動作を説明し、必要に応じて図14を参照する。
第3実施形態では、大腸を撮影した医用画像情報から大腸領域を描出し、大腸の各部位を特定し、画像処理において部位毎にパラメータを変更する。この一連の処理の内容を、仮想内視鏡画像に適用した例について説明する。
【0046】
医用画像処理装置1のCPU11は、観察対象あるいは診断対象とする大腸を含む医用画像情報を読み込み、大腸領域を抽出する(ステップS31)。
医用画像情報は、例えば、X線CT装置によって撮影された断層画像が積み上げられたボリューム画像データである。
CPU11は、医師等によって選択された医用画像情報を記憶装置13から読み出して主メモリ12に保持する。次に、CPU11は、主メモリ12に保持されているデータから、しきい値処理などによって、大腸領域を抽出する。
【0047】
次に、CPU11は、ステップS21において抽出された大腸領域から、芯線を算出する(ステップS32)。
例えば、CPU11は、特開平11−283055号公報に開示されるように、視点からボリューム画像データ内の最も遠い最深部を探索し、最深部の方向にトラッキングすることにより、芯線を算出する。
【0048】
次に、CPU11は、芯線上の各点に直交する大腸領域の断面の形状を求める(ステップS33)。これは、結腸または直腸により大腸の断面の形状が異なるため、断面の形状によって部位を特定することができるからである。
CPU11は、求めた断面の形状を、円形度などの指標(以下、「断面形状指標」という。)によって数値化し、主メモリ12などに記憶しておく。
【0049】
図14には、点線にて図示された芯線33と、正方形にて図示された芯線に直交する断面34、35が模式的に示されている。断面34は直腸25に対応し、断面35はS状結腸24に対応する。断面35のように、直腸25では、断面の形状がほぼ円形であるが、S状結腸24に進んでいくにつれて、断面の形状が三角形に近づいていき、付け根が窪んでいく。
【0050】
次に、CPU11は、断面形状指標の値から、各仮想内視鏡画像(=各部分領域)に対応する大腸の部位を特定する(ステップS34)。
例えば、統計データから、断面形状指標と大腸の部位とを対応付けるテーブル(以下、「第2部位特定テーブル」という。)を予め定義しておく。そして、CPU11は、ステップS33の計算結果から第2部位特定テーブルを検索することによって、各仮想内視鏡画像(=各部分領域)に対応する大腸の部位を決定する。
【0051】
次に、CPU11は、ステップS34において特定された部位ごとにパラメータを変更し、画像処理を行う(ステップS35)。例えば、CPU11は、部位毎に設定されたフィルタ処理を画像に加えてもよい。
或いは、CPU11は、ステップ234において特定された部位ごとに、診断結果を画像データベース3に登録する際の識別情報を変更するようにしても良い。例えば、CPU11は、部位ごとに病変として診断された画像を検索できるように、データベース化しても良い。
【0052】
次に、CPU11は、ステップS35における画像処理の結果を、表示装置17に表示する(ステップS36)。
ステップS36において表示される仮想内視鏡画像については、対応する部位の名称(「直腸」、「S状結腸」、「下行結腸」などの文字列)も表示される。そして、大腸の走行方向に沿って画面がスクロールされ、異なる仮想内視鏡画像が表示されるごとに、対応する部位の名称が更新される。例えば、医師等がマウス18等を操作し、直腸25からS状結腸24に進んでいくように画面スクロールを指示すると、CPU11は、画面の隅に、最初は「直腸」の文字列を表示し、S状結腸24に切り替わったところで「S状結腸」の文字列を表示する。
このように、医師等は、仮想内視鏡画像を確認することによって、他の画像を参照することなしに各仮想内視鏡画像(=各部分領域)がどの部位に対応するかが容易に判別することができるので、効率的な診断を行うことができる。
【0053】
以上、第1実施形態から第3施形態について説明したが、これらを適宜組み合わせて医用画像処理装置1を構成してもよい。
本発明の医用画像処理装置1によれば、大腸に代表される管腔臓器を表示する展開画像や仮想内視鏡画像において他の画像を参照することなしに各部位の位置を特定することができる。また、位置を特定した部位について、病変が見つかったときに転移が疑われる臓器名などの関連情報を表示、または参照することもできる。また、展開画像や管腔臓器において、特定した位置情報を基に病変が発見されやすい部位や、見落としが多い部位など注意が必要な部位を優先的に表示することができる。更に、特定した位置情報を基に画像処理におけるパラメータを設定することができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る医用画像処理装置等の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0055】
1………医用画像処理装置
31、32………展開画像
33………芯線
34、35………断面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う医用画像処理装置であって、
前記医用画像において、前記管腔臓器の走行方向に区分される各部分領域が、前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する特定手段と、
前記医用画像に重畳して、前記特定手段によって特定された前記管腔臓器の各部位を識別可能に表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、前記医用画像の画像データから、前記管腔臓器の内面の凸部領域を抽出し、前記凸部領域の密度に基づいて、前記部分領域ごとに、前記部分領域が前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、更に、前記凸部領域の形状に基づいて、前記部分領域ごとに、前記部分領域が前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する
ことを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、前記医用画像の画像データから、前記管腔臓器の芯線を算出し、前記芯線の曲率又は前記芯線と直交する断面の形状に基づいて、前記部分領域ごとに、前記部分領域が前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示手段は、更に、前記特定手段によって特定された前記管腔臓器の各部位に関連する関連情報を表示する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記関連情報は、統計的に前記管腔臓器の各部位の病変が転移し易い臓器を示す情報であり、
前記表示手段は、前記関連情報が選択されると、前記関連情報に対応する前記被検体の臓器を含む画像を表示する
ことを特徴とする請求項5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記表示手段は、前記管腔臓器の各部位を識別可能に表示する為に、前記各部分領域に色情報或いは文字情報を付与する、及び/又は、前記各部分領域の表示位置を変更する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記特定手段によって特定された前記管腔臓器の各部位に応じて、画像処理に用いられるパラメータを変更する、或いは、診断結果をデータベースに登録する際の識別情報を変更する変更手段、
を更に具備することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
被検体の管腔臓器を含む医用画像の画像処理を行う医用画像処理方法であって、
前記医用画像において、前記管腔臓器の走行方向に区分される各部分領域が、前記管腔臓器のどの部位に対応するかを特定する特定ステップと、
前記医用画像に重畳して、前記特定ステップによって特定された前記管腔臓器の各部位を識別可能に表示する表示ステップと、
を含むことを特徴とする医用画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−431(P2013−431A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135924(P2011−135924)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】