説明

医用画像表示装置

【課題】医用画像の読影時間の短縮と異常画像の見落としの危険性の低減とを実現する。
【解決手段】記憶部2は、同一位置の複数の時刻又は複数の位置にそれぞれ対応する複数の医用画像のデータを記憶する。表示部5は、複数の医用画像を動画表示する。画像選択部3は、複数の医用画像の中から臨床的に関心のある複数の注目画像を選択する。表示制御部4は、複数の医用画像の動画表示中において、複数の注目画像の再生速度を複数の医用画像のうちの他の医用画像の再生速度よりも遅らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線科医等は、医用画像表示装置により医用画像の読影を行っている。医用画像表示装置は、読影のため、複数の医用画像を一覧表示したり、一定の再生速度で動画表示したりしている。放射線科医等は、一覧表示や動画表示された複数の医用画像を読影し、臨床的な異常画像を見つけ出している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年の医用画像診断装置等の発達により、読影対象の医用画像のフレーム枚数は膨大なものとなっている。従って一覧表示の場合、表示された多数の医用画像の中から臨床的な異常画像を見つけ出すのは大変困難である。また、遅い再生速度による動画表示の場合、読影時間が長時間となってしまい、早い再生速度による動画表示の場合、異常画像の見落としの危険性が高まってしまう。
【0004】
目的は、医用画像の読影時間の短縮と異常画像の見落としの危険性の低減とを実現する医用画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、同一位置の複数の時刻又は複数の位置にそれぞれ対応する複数の医用画像のデータを記憶する記憶部と、前記複数の医用画像を動画表示する表示部と、前記複数の医用画像の中から臨床的に関心のある複数の注目画像を選択する選択部と、前記複数の医用画像の動画表示中において、前記複数の注目画像の再生速度を前記複数の医用画像のうちの他の医用画像の再生速度よりも遅らせる制御部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本実施形態に係る医用画像表示装置の構成を示す図。
【図2】本実施形態の実施例1に係るシステム制御部の制御のもとに行われる可変式CINE表示の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップS2において画像選択部により行われるROIの設定処理を説明するための図。
【図4】図2のステップS4において画像選択部により行われる注目画像の選択処理を説明するための図。
【図5】図2のステップS5において画像選択部により行われる注目画像の修正や追加の処理を説明するための図。
【図6】図2のステップS7において画像選択部により行われる注目画像の選択処理を説明するための図。
【図7】図2のステップS9において表示制御部により表示される可変式CINE表示の表示画面を示す図。
【図8】本実施形態の実施例2に係る画像選択部により行われるROI設定処理を説明するための図。
【図9】実施例2に係る画像選択部により行われる、ユーザ指定による注目画像の選択処理を説明するための図。
【図10】変形例1に係る画像選択部により行われる注目画像の選択処理を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用画像表示装置を説明する。
【0008】
本実施形態に係る医用画像表示装置は、放射線科医等のユーザによる医用画像の読影を支援するためのコンピュータ装置である。医用画像表示装置は、ワークステーションや医用画像診断装置等の形態で提供される。また、医用画像表示装置の機能が医用画像診断装置に組み込まれてもよい。医用画像診断装置としては、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、SPECT装置、及びPET装置等の既存のあらゆるモダリティが該当する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る医用画像表示装置1の構成を示す図である。図1に示すように、医用画像表示装置1は、記憶部2、画像選択部3、表示制御部4、表示部5、操作部6、及びシステム制御部7を有する。
【0010】
記憶部2は、医用画像診断装置により発生された、同一スキャン位置の複数の時刻又は複数のスキャン位置にそれぞれ対応する複数の医用画像のデータを記憶する。より詳細には、複数の医用画像は、例えば、同一のスキャン位置を複数の時刻に亘って繰り返し撮像することにより発生されたものである。あるいは、複数の医用画像は、例えば、広範囲に亘る複数のスキャン位置を撮像することにより発生されたものである。複数の医用画像の各々は、医用画像の識別番号であるフレーム番号に対応付けて記憶される。複数の医用画像は、例えば、一つのスタディや一つのシリーズに属する一連の医用画像である。ここで、スタディ単位やシリーズ単位でまとめられた複数の医用画像のデータをまとめてデータセットを呼ぶことにする。記憶部2は、複数のスタディや複数のシリーズに関する複数のデータセットを記憶することもできる。また、記憶部2は、画像表示プログラムを記憶している。この画像表示プログラムは、本実施形態に係る可変式CINE表示を行うための制御をシステム制御部7に実行させるためのものである。
【0011】
画像選択部3は、複数の医用画像の中から、臨床的に関心のある複数の医用画像を選択する。ここで臨床的に関心のある医用画像を注目画像と呼ぶことにする。また、複数の医用画像の中の注目画像ではない医用画像を非注目画像と呼ぶことにする。画像選択部3は、複数の注目画像を、医用画像間の画素値変化に基づいて自動的に、または操作部6を介したユーザからの指示に従って選択する。
【0012】
表示制御部4は、複数の医用画像を表示部5に動画形式で表示させる。この際、表示制御部4は、複数の注目画像の再生速度を複数の非注目画像の再生速度よりも遅らせる。動画表示の場合、医用画像は一枚一枚順番に表示部5に表示される。再生速度は、医用画像一枚一枚の表示時間に対応する。換言すれば、単位時間あたりの医用画像の表示枚数に対応する。具体的には、医用画像一枚一枚の表示時間が短ければ短いほど、すなわち、単位時間あたりの医用画像の表示枚数が多ければ多いほど、再生速度は速い。逆に医用画像一枚一枚の表示時間が長ければ長いほど、すなわち、単位時間あたりの医用画像の表示枚数が少なければ少ないほど、再生速度は遅い。このように、再生速度を切り替えながら複数の医用画像を動画表示することを可変式CINE表示と呼ぶことにする。
【0013】
表示部5は、表示制御部4による制御に従って複数の医用画像を動画形式で表示する。表示部5としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等が適宜利用可能である。
【0014】
操作部6は、ユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部6としては、キーボードやマウス、スイッチ等が適宜利用可能である。
【0015】
システム制御部7は、医用画像表示装置1の中枢として機能する。具体的には、システム制御部7は、記憶部2に記憶されている画像表示プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開された画像表示プログラムに従って医用画像診断装置1内の各部を制御する。これにより本実施形態に係る可変式CINE表示が実行される。
【0016】
次に医用画像表示装置1の動作例を実施例1と実施例2とに分けて説明する。実施例1は、1種類のデータセットを読影に利用する場合の動作例である。実施例2は、2種類のデータセットを読影に利用する場合の動作例である。なお本実施形態は、3種類以上のデータセットの読影にも適用可能である。
【0017】
〔実施例1〕
以下に本実施形態の実施例1に係る医用画像表示装置1の動作例について具体的に説明する。なお以下の説明を具体的に行うため、実施例1に係る医用画像のデータは、SPECT装置により収集されたものであるとする。よく知られているように、SPECT画像の画素の画素値は、カウント値に対応する。
【0018】
図2は、実施例1に係るシステム制御部7の制御のもとに行われる可変式CINE表示の典型的な流れを示す図である。システム制御部7は、ユーザにより可変式CINE表示の開始指示がなされたことを契機として可変式CINE表示処理を開始する。図2に示すように、まずシステム制御部7は、注目画像の選択方法が自動選択であるのか、ユーザ選択であるのかを判断する(ステップS1)。注目画像の選択方法は、予めいずれかの方法に設定されていてもよいし、ユーザにより操作部6を介して選択されてもよい。まずは、自動選択に関するフローについて説明する。
【0019】
ステップS1において自動選択であると判断された場合(ステップS1:自動選択)、システム制御部7は、画像選択部3にROI(関心領域)の設定処理を行わせる(ステップS2)。ステップS2において画像選択部3は、ユーザにより操作部6を介して指定された画素領域をROIに設定する。ROIの設定は、例えば、以下のような流れで行われる。まず、表示制御部4は、記憶部2から読影対象の医用画像データセットを読み出し、読み出されたデータセットに含まれる複数の医用画像を1倍速よりも速い再生速度で表示部5に動画表示する。そしてユーザは、操作部6を介して、気になった画素領域を指定する。例えば、注目したい臓器がある場合、その臓器を含む画素領域が指定される。画素領域が指定されると画像選択部3は、図3に示すように、指定された画素領域をROIに設定する。例えば、ユーザは、読影対象の複数の医用画像のうちの一つの医用画像上に画素領域を指定する。一つの医用画像上に画素領域が指定されると画像選択部3は、読影対象の複数の医用画像の各々に、指定された画素領域に応じたROIを設定する。より詳細には、ROIは、ユーザにより指定された画素領域と同一の座標を有する。すなわち、複数の医用画像上の解剖学的同一部分にROIが設定される。
【0020】
なお、ROIの設定方法は上述の方法のみに限定されない。例えば、予め着目したい臓器がある場合、その臓器に関する画素領域に自動的にROIが設定されてもよい。
【0021】
ステップS2が行われるとシステム制御部7は、画像選択部3に画素値変化曲線(カウントカーブ)の生成処理を行わせる(ステップS3)。ステップS3において画像選択部3は、複数の医用画像の各々に設定されたROIのカウント値に基づいてカウントカーブを生成する。画像選択部3は、具体的には、ROI内の全画素のカウント値を合計し、合計カウント値をグラフにプロットすることによりカウントカーブを生成する。
【0022】
ステップS3が行われるとシステム制御部7は、画像選択部3に注目画像の選択処理を行わせる(ステップS4)。ステップS4において画像選択部3は、カウントカーブ上のカウント値変化に基づいて複数の医用画像の中から複数の注目画像を選択する。
【0023】
図4は、画像選択部3により行われる注目画像の選択処理を説明するための図である。図4に示すように、カウントカーブの縦軸はカウント値に規定され、横軸はフレーム番号に規定されている。
【0024】
カウントカーブが生成されると画像選択部3は、カウントカーブ上においてカウント値が急激に変化しているフレーム範囲を特定する。なおフレーム範囲とは、あるフレーム番号から他のフレーム番号までの範囲である。特定されたフレーム範囲は、注目画像のフレーム範囲に相当する。以下、注目画像のフレーム範囲を注目画像範囲と呼ぶことにする。注目画像範囲に含まれる複数の医用画像は、低速の再生速度で動画表示される。注目画像範囲は、例えば、以下の流れで特定される。まず画像選択部3は、カウント値の変化量を算出するために、フレーム番号等でカウント値を微分する。そして画像選択部3は、算出された変化量を既定の閾値と比較する。例えば、変化量が比較的大きいフレーム範囲に属する医用画像に臨床的関心がある場合、変化量が閾値よりも大きいフレーム範囲が注目画像範囲に設定される。逆に、変化量が比較的小さいフレーム範囲に属する医用画像に臨床的関心がある場合、変化量が閾値よりも小さいフレーム範囲が注目画像範囲に設定される。注目画像範囲の始端はカーソルCR1で、終端はカーソルCR2で示される。なお閾値は、ユーザにより操作部6を介して任意に設定可能である。注目画像範囲が設定されると画像選択部3は、複数の医用画像の中から、注目画像範囲に属する複数の医用画像を注目画像として選択する。
【0025】
ステップS4が行われるとシステム制御部7は、表示制御部4にカウントカーブの表示処理を行わせる(ステップS5)。ステップS5において表示制御部4は、表示部5にカウントカーブを表示させる。カウントカーブには、図4に示すように、注目画像範囲IRの始端を示すカーソルCR1と終端を示すCR2とが重ねられる。このように注目画像範囲IRがカウントカーブ上で示されることで、ユーザは、注目画像範囲IRが正しく設定されているか否かを確認することができる。この際、カーソルCR1とCR2とは、操作部6により操作可能に表示される。従って、注目画像範囲IRが正しく設定されていないとユーザが判断した場合、操作部6を介してカーソルCR1やCR2を左右にスライドさせることで注目画像範囲IRを調整することができる。注目画像範囲IRが調整された場合、画像選択部3は、調整後の注目画像範囲IRに含まれる医用画像を注目画像として選択する。
【0026】
なお注目画像範囲IRは一つのみに限定されず、図5に示すように、複数であってもよい。例えば、画像選択部3は、ステップS4において、画素値変化(カウント値変化)と閾値との大小関係に応じて、自動的に複数の注目画像範囲IRを設定してもよい。また、ステップS5においてユーザにより操作部6を介して任意のフレーム範囲に注目画像範囲IRを追加してもよい。
【0027】
次にユーザ選択のフローについて説明する。ユーザ選択により医用画像を選択すると判断された場合(ステップS1:ユーザ選択)、システム制御部7は、表示制御部4に一覧表示処理を行わせる(ステップS6)。ステップS6において表示制御部4は、記憶部2から読影対象の医用画像のデータセットを記憶部2から読み出し、読み出されたデータセットに含まれる複数の医用画像表示部5に一覧表示させる。
【0028】
ステップS6が行われるとシステム制御部7は、画像選択部3に画像選択処理を行わせる(ステップS7)。ステップS7において画像選択部3は、ユーザからの指示に従って、複数の医用画像の中から複数の注目画像を選択する。以下に図6を参照しながらユーザ指定による画像選択処理について説明する。
【0029】
図6は、ステップS7において画像選択部3により行われる注目画像の選択処理を説明するための図である。図6に示すように、複数の医用画像は一覧表示されている。複数の医用画像は、フレーム番号(Fr.)に従って並べられている。ユーザは、一覧表示された複数の医用画像を観察し、複数の医用画像の中から複数の注目画像、すなわち、注目画像範囲を特定する。例えば、ユーザは、腎臓や肝臓等の着目したい部位に関する注目画像範囲を特定する。そしてユーザは、注目画像範囲の始端の医用画像F1と終端の医用画像F2とを操作部6を介して指定する。画像選択部3は、指定された始端の医用画像F1から終端の医用画像F2までの複数の医用画像を注目画像として選択する。
【0030】
ステップS5又はS7が行われるとシステム制御部7は、表示制御部4に再生速度の設定処理を行わせる(ステップS8)。ステップS8において表示制御部4は、注目画像の再生速度を、非注目画像の再生速度よりも低速に設定する。例えば、非注目画像の再生速度は、通常の再生速度、すなわち、1倍速に設定される。注目画像の再生速度は、非注目画像の再生速度よりも低い再生速度、例えば、0.5倍速に設定される。なお非注目画像の再生速度は、1倍速に限定されず、2倍速等の1倍速よりも高速の再生速度に設定されてもよい。また、注目画像の再生速度は、非注目画像の再生速度より遅ければ、1倍速よりも速い再生速度であってもよい。
【0031】
典型的には、再生速度は、注目画像範囲や非注目画像範囲について設定される。注目画像範囲が複数存在する場合、注目画像範囲毎に異なる再生速度が設定されてもよい。また、1つの注目画像範囲をさらに小区域に分割し、小区域毎に異なる再生速度が設定されてもよい。
【0032】
ステップS8が行われるとシステム制御部7は、表示制御部4に動画表示処理を行わせる(ステップS9)。ステップS9において表示制御部4は、設定された再生速度で複数の医用画像を表示部5に表示させる。すなわち、可変式CINE表示が行われる。
【0033】
図7は、ステップS9において表示制御部により表示される可変式CINE表示の表示画面を示す図である。図7に示すように、表示画面の大部分には医用画像の表示領域R1が配置されている。表示領域R1の下方には、CINEバーBRが表示される。CINEバーBRは、表示対象の全医用画像における表示中の医用画像の位置を示すスライドバーである。
【0034】
可変式CINE表示において非注目画像は、通常又は高速の再生速度で表示され、注目画像は、低速の再生速度で表示される。例えば、フレーム番号0〜450の医用画像があり、フレーム番号100〜150が注目画像であるとする。また、非注目画像の再生速度は1倍速に設定され、注目画像の再生速度は0.5倍速に設定されているものとする。まず表示制御部4は、フレーム番号0〜99の医用画像を1倍速で動画表示する。フレーム番号99の医用画像を表示すると表示制御部4は、再生速度を1倍速から0.5倍速に切り替える。そして表示制御部4は、切り替え後の再生速度である0.5倍速でフレーム番号100〜150の医用画像を動画表示する。フレーム番号150の医用画像を表示すると表示制御部4は、再生速度を0.5倍速から1倍速に切り替える。そして表示制御部4は、切り替え後の再生速度である1倍速でフレーム番号151〜450の医用画像を動画表示する。
【0035】
ステップS9が行われるとシステム制御部7は、可変式CINE表示を終了させる。
【0036】
上記のように、実施例1において医用画像表示装置1は、複数の医用画像を動画像表示する際、複数の注目画像の再生速度と複数の非注目画像の再生速度とを異ならせることができる。具体的には、注目画像は、非注目画像に比して低速で動画表示される。注目画像の低速動画表示により、ユーザは、高集積又は欠損により着目しなければならない注目画像をゆっくり慎重に観察することができ、異常画像の見落としの危険性を低減することができる。このように医用画像表示装置1は、注目画像の低速動画表示により、ユーザによる異常画像の発見をサポートすることができる。また、非注目画像は、注目画像に比して高速度で動画表示される。従って、ユーザは、非注目画像を大雑把に観察することができる。このように医用画像表示装置1は、注目したい医用画像を低速で動画表示し、注目していない医用画像を高速で動画表示することができるので、読影時間の効率化を図ることができる。近年のモダリティの進歩により全身をスキャンすることができるようになったが、全身スキャンにより発生される医用画像の数は膨大である。本実施形態によれば、このような膨大な数の医用画像の読影であっても、異常画像の見落としの危険性を減少させたうえで、読影時間を削減することができる。
【0037】
〔実施例2〕
次に本実施形態の実施例2に係る医用画像表示装置の動作例について具体的に説明する。なお実施例1と実施例2とは、画像選択部3による処理のみが異なるので、この処理のみについて説明する。以下の説明において、実施例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0038】
実施例2は、2種類のデータセットに関する2種類の医用画像を比較読影する場合に適用される。2種類のデータセットは、例えば、形態画像に関するデータセットと機能画像に関するデータセットとである。形態画像は、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置により発生された医用画像が好適である。機能画像は、例えば、PETやSPECTにより発生された医用画像が好適である。
【0039】
なお、一方のデータセットに含まれる医用画像の枚数は、他方のデータセットに含まれる医用画像の枚数に略一致しているものとする。枚数の一致は、スキャン時点においてなされても、補間処理等の画像処理により枚数を一致させてもよい。同一のフレーム番号を有する2つの医用画像は、関連付けて記憶部2に記憶されている。
【0040】
実施例2に係る画像選択部3は、注目画像の選択を2種類のデータセットを利用して行うことにより、注目画像の選択に関する操作性の向上を実現している。
【0041】
例えば、PET画像やSPECT画像等の機能画像上においては体内組織の形態は不明瞭なことが多い。従って機能画像データセットが読影対象の場合、読影対象画像上においてROIを設定することが困難なことがある。
【0042】
この困難を解消するための実施例2における図2のステップS2について説明する。なお、機能画像データセットが読影対象であるとする。図2のステップS2において表示制御部4は、形態画像データセットと機能画像データセットとを記憶部2から読み出す。そして表示制御部4は、図8に示すように、複数の形態画像と複数の機能画像とを並べて動画表示する。ユーザは、形態画像を観察してROIの範囲を確認し、操作部6を介して形態画像上にROIを指定する。ROIが指定されると画像選択部3は、実施例1と同様に、形態画像データセットに含まれる全ての形態画像にROIを設定する。また、画像選択部3は、機能画像上の画素領域であって、形態画像上のROIと同一の座標位置にROIを自動的に設定する。換言すれば、画像選択部3は、形態画像と機能画像とを同期させてROI設定をすることができる。なお、読影対象の医用画像(この場合、機能画像)上へのROIは自動的に選択されるので、ステップS6において読影対象の医用画像は、表示されなくてもよい。
【0043】
このように実施例2においては、ROI設定場面において、読影対象の医用画像の他に、ROIを指定しやすい医用画像を表示する。従ってユーザは、読影対象の医用画像ではなく、ROIを指定しやすい医用画像上においてROIを指定することができる。これら2種類の医用画像は、互いに関連付けられているので画像選択部3は、一方の医用画像に指定されたROIを他方の医用画像に反映することができる。従ってROI設定に関する操作性の向上が実現する。
【0044】
なお、2種類の医用画像データセットの表示は、ユーザ指定により注目画像範囲を選択する場合においても適用可能である。以下、実施例2における図2のステップS6とS7とについて説明する。なお上述の例に倣って、機能画像が読影対象であるとする。図2のステップS6において表示制御部4は、形態画像データセットと機能画像データセットとを記憶部2から読み出す。そして表示制御部4は、図9に示すように、複数の形態画像と複数の機能画像とを並べて一覧表示する。ユーザは、形態画像の一覧を観察して注目画像範囲を特定する。そしてユーザは、形態画像の一覧において、注目画像範囲の始端の医用画像F1と終端の医用画像F2とを操作部6を介して指定する。画像選択部3は、指定された始端の医用画像F1と同一のフレーム番号を有する機能画像F1´から、指定された終端の医用画像F2と同一のフレーム番号を有する機能画像F2´までの複数の機能画像を注目画像として選択する。換言すれば、画像選択部3は、形態画像と機能画像とを同期させて注目画像を設定することができる。なお、注目画像は自動的に選択されるので、ステップS6において読影対象の医用画像(この場合、機能画像)の一覧は、表示されなくてもよい。
【0045】
このように実施例2においては、一覧表示における注目画像の選択場面において、読影対象の医用画像の他に、組織形態を観察しやすい種類の医用画像を表示する。従ってユーザは、読影対象の医用画像ではなく、組織形態を観察しやすい医用画像上において注目画像範囲を指定することができる。これら2種類の医用画像データセットは、互いに関連付けられているので画像選択部3は、一方の医用画像データセットにおいて指定された注目画像範囲を他方の医用画像データセットに反映することができる。従って注目画像範囲のユーザ指定に関する操作性が向上する。
【0046】
かくして本実施形態に係る医用画像表示装置は、医用画像の読影時間の短縮と異常画像の見落としの危険性の低減とを実現する。
【0047】
なお、注目画像の選択方法は、上記方法のみに限定されない。以下、他の選択方法について説明する。
【0048】
(変形例1)
変形例1において読影対象の複数の医用画像は、複数のスキャン位置に関する。変形例1において画像選択部3は、ユーザにより操作部6を介してコロナル断面画像上に指定された注目画像範囲に含まれる複数のアキシャル断面画像を注目画像として選択する。以下、変形例1の具体例を説明する。なお、読影対象の医用画像データセットの種類は限定されないが、以下の説明を具体的に行うため、機能画像データセットであるものとする。
【0049】
図10に示すように、表示制御部4は、ユーザによる注目画像範囲の指定のために、フュージョン画像(複合画像)を表示する。フュージョン画像は、コロナル断面に関する形態画像とコロナル断面に関する機能画像とが重ね合わされた画像である。典型的には、コロナル断面に関する形態画像の表示範囲は、コロナル断面に関する機能画像の表示範囲よりも広い。すなわち、機能画像は、コロナル断面に関する形態画像の表示範囲全体ではなく、一部分(読影対象範囲)のみに重ねられている。この形態画像と機能画像とが重ねあわされた表示範囲をフュージョン表示範囲と呼ぶことにする。
【0050】
ユーザは、操作部6を介して、フュージョン表示範囲上に注目画像範囲を指定する。具体的には、注目画像範囲は、その始端を示すカーソルCR3と終端を示すカーソルCR4との間の範囲である。ユーザは、カーソルCR3やCR4を操作部6を介して上下にスライドすることにより、注目画像範囲を指定する。画像選択部3は、カーソルCR3からCR4までの表示範囲を注目画像範囲に設定する。注目画像範囲が設定されると画像選択部3は、注目画像範囲に含まれるアキシャル断面の機能画像を注目画像として選択する。
【0051】
変形例1によれば、医用画像上で注目画像範囲を指定できるので、ユーザは、より直感的に注目画像範囲を指定できる。従って注目画像範囲のユーザ指定の操作性が向上する。
【0052】
(変形例2)
変形例2において読影対象の複数の医用画像は、被検体の複数の心電図位相に関連付けられて記憶部2に記憶されている。換言すれば、複数の医用画像に心電図波形が関連付けられている。変形例2に係る医用画像データセットは、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、SPECT装置、PET装置等により心電図同期スキャンにより収集されたものが該当する。
【0053】
変形例2において表示制御部4は、ユーザによる注目画像範囲の指定のために、医用画像データセットに関連付けられた心電図波形のデータを記憶部2から読み出して、表示部5に表示する。ユーザは、操作部6を介して、臨床的に関心のある心電図位相の範囲を心電図波形上に指定する。指定された範囲は注目画像範囲として機能する。すなわち、画像選択部3は、指定された範囲に含まれる複数の心電図位相にそれぞれ関連付けられた複数の医用画像を注目医用画像として選択する。
【0054】
変形例2によれば、心電図波形上で注目画像範囲を指定できるので、ユーザは、より直感的に注目画像範囲を指定できる。従って注目画像範囲のユーザ指定の操作性が向上する。
【0055】
(変形例3)
変形例3において読影対象の複数の医用画像は、被検体の複数の呼吸位相に関連付けられて記憶部2に記憶されている。換言すれば、複数の医用画像に呼吸波形が関連付けられている。変形例3に係る医用画像データセットは、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、SPECT装置、PET装置等により心電図同期スキャンにより収集されたものが該当する。
【0056】
変形例3において表示制御部4は、ユーザによる注目画像範囲の指定のために、医用画像データセットに関連付けられた呼吸波形のデータを記憶部2から読み出して、表示部5に表示する。ユーザは、操作部6を介して、臨床的に関心のある呼吸位相の範囲を呼吸波形上に指定する。指定された範囲は注目画像範囲として機能する。すなわち、画像選択部3は、指定された範囲に含まれる複数の呼吸位相にそれぞれ関連付けられた複数の医用画像を注目医用画像として選択する。
【0057】
変形例3によれば、呼吸波形上で注目画像範囲を指定できるので、ユーザは、より直感的に注目画像範囲を指定できる。従って注目画像範囲のユーザ指定の操作性が向上する。
【0058】
(変形例4)
変形例4において読影対象の複数の医用画像は、架台の複数の回転角度に関連付けられて記憶部2に記憶されている。変形例4に係る医用画像データセットは、X線コンピュータ断層撮影装置や、SPECT装置、PET装置等によりダイナミックスキャンにより収集されたものが該当する。なおダイナミックスキャンとは、同一のスキャン位置を繰り返しスキャンすることである。すなわち、変形例4に係る読影対象の複数の医用画像は、同一のスキャン位置の複数の時刻に関する画像である。
【0059】
変形例4において表示制御部4は、ユーザによる注目画像範囲の指定のために、架台の回転角度のデータを記憶部2から読み出して、回転角度を示すグラフ等を表示部5に表示する。ユーザは、操作部6を介して、臨床的に関心のある回転角度の範囲をグラフ上に指定する。指定された範囲は注目画像範囲として機能する。回転角度範囲の具体例を読影対象部位が心臓の場合を例に挙げて説明する。心臓は、人体の左側に位置する。従って比較的心臓に近い回転角度範囲が注目画像範囲として指定されるとよい。画像選択部3は、指定された範囲に含まれる複数の呼吸位相にそれぞれ関連付けられた複数の医用画像を注目医用画像として選択する。
【0060】
変形例4によれば、架台の回転角度を示すグラフで注目画像範囲を指定できるので、ユーザは、より直感的に注目画像範囲を指定できる。従って注目画像範囲のユーザ指定の操作性が向上する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
1…医用画像表示装置、2…記憶部、3…画像選択部、4…表示制御部、5…表示部、6…操作部、7…システム制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一位置の複数の時刻又は複数の位置にそれぞれ対応する複数の医用画像のデータを記憶する記憶部と、
前記複数の医用画像を動画表示する表示部と、
前記複数の医用画像の中から臨床的に関心のある複数の注目画像を選択する選択部と、
前記複数の医用画像の動画表示中において、前記複数の注目画像の再生速度を前記複数の医用画像のうちの他の医用画像の再生速度よりも遅らせる制御部と、
を具備する医用画像表示装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記複数の医用画像内の解剖学的同一部分に設定された関心領域に関する画素値変化に基づいて、前記複数の医用画像の中から前記複数の注目画像を選択する、請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項3】
前記表示部は、前記複数の医用画像に関する画素値変化を示す曲線を表示し、
前記選択部は、ユーザからの指示に従って前記曲線上に設定された指定範囲内の複数の医用画像を前記複数の注目画像として選択する、
請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記複数の医用画像と被検体に関する複数の心電図位相、被検体に関する複数の呼吸位相、又は架台の複数の回転角度とを関連付けて記憶し、
前記選択部は、ユーザからの指示に従って前記複数の心電図位相、前記複数の呼吸位相、又は前記複数の回転角度に対して指定された範囲内の複数の医用画像を前記複数の注目画像として選択する、
請求項1記載の医用画像表示装置。
【請求項5】
前記選択部は、ユーザからの指示に従って、前記複数の医用画像の中から前記複数の注目画像を選択する、請求項1記載の医用画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−16488(P2012−16488A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156087(P2010−156087)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】