説明

医用画像診断装置、医用画像処理装置、及び医用画像処理プログラム

【課題】簡易な操作で、血管の画像データを削除することなく、骨の画像データを十分削除することができる医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムを提供すること。
【解決手段】3次元画像データ作成部252において3次元画像データから3次元表示画像データを作成され、画像表示部に画像表示がなされる。画像表示部に表示された3次元表示画像において連結領域の開始点とROIとが指定されると共に、ROIの内部領域でセグメント処理を行うかROIの内部領域でセグメント処理を行うかが指定されると、これらの情報に基づいてセグメント用データ管理部255においてセグメント用データが作成され、ROIの内部領域あるいはROIの外部領域の何れかに対してセグメント処理部259においてセグメント処理が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像診断装置、医用画像処理装置、医用画像処理プログラムに関し、特に3次元画像データから領域を抽出し、該抽出した領域内外の3次元画像データを削除する機能を備えた医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体にX線を照射し、透過したX線を検出して3次元画像データを再構成する医用画像診断装置としてX線CT装置がある。X線CT装置においては、造影剤を被検体に投与して撮像を行い、血管等の器官の観察を目的とするための画像を収集することがしばしば行われる。このような血管の観察を目的とする撮像では、造影剤の投与により造影血管の3次元画像データが再構成され、さらに3次元画像データから3次元投影画像データが作成される。ここで、3次元投影画像データの作成方法としては、例えば最大値投影(MIP:Maximum Intensity Projection)法がある。また、このようなMIP法により作成された3次元投影画像データ(MIP画像データ)は、狭窄や乖離などの血管の内部の形状や大きさ、位置などを観察するために用いられている。
【0003】
ところで、造影血管と骨とはCT値のレンジに重なり部分があるため、例えば骨と血管とが隣接するような場合や表示角度によって骨と血管とが重なってしまうような場合には、MIP画像を表示する際に骨が造影血管と共に画像化されて表示されてしまい、血管の観察が困難になることがある。
【0004】
そこで、MIP画像を作成する過程でSVR(Shaded Volume Rendering)画像等を作成し、このSVR画像上で骨に対応する3次元画像データを選択的に削除する、所謂骨抜き処理が行われている。この骨抜き処理は次のように行われている。まず、3次元画像データに対して、骨と造影血管との間のCT値のレンジの違いを考慮し、CT値による閾値やCT値に対する不透明度(opacity)を高めに設定することで骨と造影血管とを分離した後(血管と骨とを細らせた後)、このような閾値処理を施した3次元画像データに基づいてSVR画像データ等の3次元表示画像データを作成して画像表示部に表示させる。医師等の操作者は画像表示部に表示された3次元表示画像から削除したい骨の部分を指定する。これを受けて、指定された骨に連結する領域(連結領域)を一般的に用いられる連結領域抽出法によって抽出する。次に、細らせた骨の領域分を元に戻すために抽出領域を膨張(dilate)させる。この際、医師等の操作者はSVR画像等の3次元表示画像や3次元画像データを元に作成される断面画像(MPR画像)により膨張された抽出領域が血管を含有していないかを確認し、血管を含有している場合には膨張させた抽出領域を収縮(erode)させるか膨張前の状態に戻す。このような処理を繰り返し、抽出領域が血管を含有しない状態となってから抽出領域を削除する。このような膨張処理、収縮処理、削除処理といったセグメント処理を行うことにより、骨の領域の画像データを選択的に削除することが可能である。
【0005】
ここで、連結領域の抽出から膨張処理の過程で削除対象としない部分(即ち血管部分)の除去が失敗する場合には、部分的に3次元画像データの複製を生成してから再びセグメント処理を行って削除対象となる領域を抽出することも行われている。
【特許文献1】特開平9−73557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、抽出領域を膨張させる際に骨の領域を十分に含めることができるように膨張量を多くした場合には膨張後の抽出領域に削除されるべきでない血管が含まれやすい。逆に、血管が含まれないように膨張量を少なくした場合には細らせた分の骨の領域を十分に抽出できない可能性がある。この場合にはその部分の骨の領域の画像データを削除できずに、表示時に骨の表面部分の画像が残ってしまうことになる。さらに、部分的に複製した3次元表示画像データに対するセグメント処理では骨の領域のみを抽出することが容易になるが、対象とする部位が多くなると処理データ量及び操作数が増加してしまう。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、簡易な操作で、血管の画像データを削除することなく、骨の画像データを十分削除することができる医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1による医用画像診断装置は、被検体の透過データを収集する透過データ収集手段と、前記収集された透過データから3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、前記再構成された3次元画像データから3次元表示画像データを作成する3次元表示画像データ作成手段と、前記作成された3次元表示画像データに基づいて3次元表示画像を表示する画像表示手段と、前記表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明の請求項5による医用画像処理装置は、画像表示部に表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、上記の目的を達成するために、本発明の請求項6による医用画像処理プログラムは、コンピュータを、透過データから3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、前記再構成された3次元画像データから3次元表示画像データを作成する3次元表示画像データ作成手段と、前記作成された3次元表示画像データに基づいて3次元表示画像を表示する画像表示手段と、前記表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段として機能させることを特徴とする。
【0011】
これら請求項1の医用画像診断装置、請求項5の医用画像処理装置、及び請求項6の医用画像処理プログラムによれば、更新領域抽出手段で抽出された関心領域の外部又は内部の連結領域のみに対して連結領域の更新を行うことができる。これによって血管の画像データを削除することなく、骨の画像データを十分削除することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、血管の画像データを削除することなく、簡易な操作で骨の画像データを十分削除することができる医用画像診断装置、医用画像処理装置及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置の一例としてのX線CT装置の構成を示すブロック図である。図1に示すX線CT装置1は、ガントリ部10と、コンピュータ装置20とから主に構成されている。
【0014】
ガントリ部10は、X線管11と、高電圧発生装置12と、X線検出器13と、データ収集部(DAS; Digital Acquisition System)14とから構成されている。
【0015】
X線管11は、高電圧発生装置12に接続されると共に、高速でかつ連続的に図示A方向に回転する図示しない回転リングに取り付けられている。高電圧発生装置12は、コンピュータ装置20からの制御信号を受けてX線管11に管電流又は管電圧を供給する。X線管11はこの管電流又は管電圧を受けて造影剤を投与された被検体Pの周りを回転しながら被検体PにX線を照射する。
【0016】
X線検出器13は、X線管11と共に被検体Pを挟んで互いに対向するように図示しない回転リングに配置される。そして、X線検出器13はX線管11から照射され、被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線量に応じたX線検出信号を出力する。データ収集部14は、X線検出器13で検出されたX線検出信号をデジタル化し、透過データとしてコンピュータ装置20に出力する。
【0017】
コンピュータ装置20は、前処理部21と、メモリ部22と、再構成部23と、記憶装置24と、医用画像処理装置25と、画像表示部26と、制御部27とがそれぞれバス28に接続されて構成されている。また、制御部27には入力部29が接続されている。
【0018】
前処理部21は、データ収集部14で得られた透過データに対して補正処理等の前処理を施して投影データを生成する。メモリ部22は、前処理部21で得られた投影データを一時的に記憶する。再構成部23は、メモリ部22に記憶された投影データを読み出して3次元画像データを再構成する。記憶装置24は、再構成部23で得られた3次元画像データやデータ収集部14で得られた透過データを記憶する。
【0019】
医用画像処理装置25は、記憶装置24に記憶されている3次元画像データを読み出して表示のための画像処理を施す。ここで、詳細は後述するが、本実施形態において、医用画像処理装置25は、表示のためにMIP画像データ等を作成する際には、記憶装置24に記憶されている3次元画像データに含まれている骨の領域の画像データを選択的に抽出して削除する骨抜き処理を行ってから作成する機能を有する。
【0020】
医用画像処理装置25と共に画像表示手段を構成する画像表示部26は、医用画像処理装置25で作成された各種の画像や情報を表示する。制御部27は、コンピュータ装置20の全体的な処理を統括的に制御する。医用画像処理装置25と共に連結領域指定手段、関心領域設定手段、及び更新領域選択手段を構成する入力部29は、医師等の操作者が画像表示部26に表示された表示画面上等で当該コンピュータ装置20を操作するための、例えばマウスやキーボード等の操作部材である。
【0021】
図2は、医用画像処理装置25の内部の詳細な構成を示す図である。医用画像処理装置25は、3次元画像データ管理部251と、3次元画像データ作成部252と、連結領域指定部253と、ROI設定部254と、セグメント用データ管理部255と、セグメント領域指定部256と、連結領域抽出部257と、セグメント領域抽出部258と、セグメント処理部259とから構成されている。ここで、図2に示す構成は、ハードウェアとして構成するようにしても良いし、図2に示す構成と同様の機能を実現する、コンピュータ装置20の制御部27によって実行される医療画像処理プログラムとして構成するようにしても良い。
【0022】
3次元画像データ管理部251は画像表示部26に表示させる各種データを管理する。まず、3次元画像データ管理部251は、セグメント用データ管理部255から受けた3次元表示画像データ(例えばSVR画像データ等)の作成に用いるべき最新の領域データ(後述するセグメント用データに含まれる)に対応する範囲の3次元画像データを記憶装置24から読み出し、該読み出した3次元画像データを3次元画像データ作成部252に出力する機能を有する。また、詳細は後述するセグメント用データの更新がなされた場合には、それに応じて記憶装置24から読み出す3次元画像データの範囲を更新する。
【0023】
3次元画像データ作成部252は、3次元画像データ管理部251から入力された3次元画像データからSVR画像データ等の3次元表示画像データを作成して画像表示部26に出力する機能と、3次元画像データ管理部251から入力された3次元画像データからMIP画像等の3次元投影画像データを作成して画像表示部26に出力する機能とを有する。
【0024】
連結領域指定部253は、3次元表示画像上で削除すべき領域(連結領域)の開始点(Seed点と呼ばれる)の位置情報を3次元画像データ管理部251に通知する。なお、連結領域の開始点は、画像表示部26に表示された3次元表示画像を確認した操作者が入力部29を介して指定できるものである。入力部29の操作がなされた場合、その操作入力に応じた信号が制御部27から連結領域指定部253に入力される。また、操作者によって連結領域の開始点が指定された場合、3次元画像データ管理部251はその連結領域の開始点の位置情報をセグメント用データ管理部255に通知する。また、後述する連結領域抽出部257によって連結領域が抽出された後は、その連結領域の領域情報(連結領域の位置及び範囲)を3次元画像データ作成部252に出力する。3次元画像データ作成部252は、3次元表示画像データに連結領域の画像データを重畳して画像表示部26に出力する。これによって画像表示部26に連結領域を表示させることが可能となっている。
【0025】
ROI設定部254は、詳細は後述する部分的なセグメント処理を行うための関心領域(ROI)の領域情報を3次元画像データ管理部251に通知する。なお、ROIは画像表示部26に表示された3次元表示画像を確認した操作者が入力部29を介して設定できるものである。入力部29の操作がなされた場合、その操作入力に応じた信号が制御部27からROI設定部254に入力される。ここで、ROIの形状やサイズ等は特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定すれば良い。また、ROIを複数設定できるようにしても良い。操作者によってROIが設定された場合、3次元画像データ管理部251はROIの領域情報(ROIの位置及び範囲)をセグメント用データ管理部255に通知する。また、3次元画像データ管理部251はROIの領域情報を3次元画像データ作成部252に出力する。3次元画像データ作成部252は、3次元表示画像データにROIの画像データを重畳して画像表示部26に出力する。これによって画像表示部26にROIを表示させることが可能となっている。
【0026】
セグメント用データ管理部255はセグメント処理に係る各種データを統括的に管理する。このセグメント用データ管理部255は、連結領域指定部253から通知された連結領域の開始点の位置情報を連結領域抽出部257に出力する機能と、ROI設定部254から通知されたROIの領域情報をセグメント領域抽出部258に出力する機能とを有する。
【0027】
更新領域指定部としてのセグメント領域指定部256は、ROIの内部領域と外部領域の何れでセグメント処理を行うかを示す情報(セグメント領域指定フラグ)をセグメント用データ管理部255に通知する。ここで、セグメント領域指定フラグは、例えばROIの内部領域でセグメント処理を行う場合には0、ROIの外部領域でセグメント処理を行う場合には1とする。また、セグメント領域指定フラグは操作者が入力部29を介して指定できるものである。入力部29の操作がなされた場合、その操作入力に応じた信号が制御部27からセグメント領域指定部256に入力される。セグメント領域指定フラグを受けた場合、セグメント用データ管理部255はこのセグメント領域指定フラグをセグメント領域抽出部258に出力する。
【0028】
連結領域抽出部257は、セグメント用データ管理部255から通知される連結領域の開始点の位置情報から、該開始点に連結する連結領域を求め、該求めた連結領域の領域情報(連結領域の位置及び範囲)を、セグメント用データ管理部255に出力する。
【0029】
更新領域抽出部としてのセグメント領域抽出部258は、セグメント用データ管理部255から入力されるセグメント領域指定フラグとROIの領域情報とから、セグメント処理の対象とする領域(以下、セグメント領域と称する。このセグメント領域はROIの内部領域若しくはROIの外部領域となる)を求め、該求めたセグメント領域の領域情報(セグメント領域の位置及び範囲)を、セグメント用データ管理部255に出力する。セグメント用データ管理部255は、連結領域抽出部257からの連結領域の領域情報とセグメント領域抽出部258からのセグメント領域の領域情報とからセグメント用データを生成する。
【0030】
セグメント処理部259は、セグメント用データ管理部255から入力されるセグメント用データに対し、連結領域の膨張処理、連結領域の収縮処理、連結領域の削除処理といったセグメント処理を行い、セグメント処理結果をセグメント用データ管理部255に出力する。セグメント用データ管理部255はセグメント処理結果をもとのセグメント用データに反映させ、反映させたセグメント用データを3次元画像データ管理部251に出力する。
【0031】
以下、本実施形態の作用を図3のフローチャートに従って説明する。図3は、図1に示すX線CT装置における骨抜き処理の流れについて示すフローチャートである。
【0032】
まず、X線CT装置1のガントリ部10により被検体Pのスキャンが行われ、データ収集部14において透過データが収集される。この透過データは記憶装置24に一時記憶された後、前処理部21に送られる。前処理部21においては透過データから2次元の投影データが生成される。前処理部21において生成された投影データはメモリ部22に一時記憶された後、再構成部23に送られる。再構成部23においては投影データから3次元画像データが再構成される(ステップS1)。この3次元画像データは記憶装置24に記憶される。
【0033】
次に、骨抜き処理のための3次元表示画像データが作成され、該作成された3次元表示画像データに基づいて3次元表示画像が画像表示部26に表示される(ステップS2)。例えば、3次元表示画像を表示させる場合には、まず3次元画像データ管理部251において、骨部分と血管部分とを視別可能なように分離するためのCT値による閾値が設定され、この閾値以上の3次元画像データが記憶装置24から読み出される。この読み出された3次元画像データは3次元画像データ作成部252に入力される。そして、3次元画像データ作成部252においてSVR画像データ等の3次元表示画像データが作成された後、この3次元表示画像データに基づいて画像表示部26に骨抜き処理のための3次元表示画像が表示される。ここで、図4(a)の参照符号301は骨抜き処理のための3次元表示画像としてSVR画像を表示させた例である。なお、画像表示部26にはSVR画像301と共にポインタ302も表示される。
【0034】
ここで、画像表示部26に表示させる3次元表示画像は、SVR画像に限るものではなく表面表示(SR:Surface Rendering)画像等の他の画像であっても良い。
【0035】
次に、操作者は入力部29を介してポインタ302を3次元表示画像301の所望の位置に移動させて削除したい骨の領域の開始点とする点を指定する。この点の位置情報が連結領域の開始点の位置情報として連結領域抽出部257に与えられる(ステップS3)。これにより、連結領域抽出部257において連結領域の開始点の位置情報と3次元画像データ管理部251によって読み出された3次元画像データの領域情報とに基づいて、操作者によって指定された点に連結する連結領域が抽出される(ステップS4)。連結領域抽出部257によって抽出された連結領域(抽出領域)の領域情報は3次元画像データ作成部252に送られる。3次元画像データ作成部252においては、抽出領域を視覚的に表示するための重畳処理が行われた後、画像表示部26に連結領域が表示される(ステップS5)。ここで、図4(b)は抽出領域の表示例として、図4(a)に示す3次元表示画像301の体軸と直交する方向の断面に対応する画像(MPR画像)501を作成し、このMPR画像501に抽出領域502を重畳表示させた例である。勿論、図4(a)に示す3次元表示画像301に抽出領域を重畳表示させるようにしても良い。
【0036】
次に、操作者は入力部29を介して3次元表示画像301の所望の位置に所望の形状及びサイズのROIを設定する。この際、複数のROIを設定しても良い。これによりROIの領域情報がセグメント領域抽出部258に与えられる。また、3次元画像データ作成部252においてROIを視覚的に表示するための重畳処理が行われた後、画像表示部26に、図4(a)の参照符号303及び図4(b)の参照符号504のようにしてROIが表示される(ステップS6)。
【0037】
次に、操作者は入力部29を介してROIの内部領域でセグメント処理を行うかROIの外部領域でセグメント処理を行うかを指定する。例えば、セグメント処理を行う領域が広い場合には、ROIの外部領域でセグメント処理を行うようにする。逆に、セグメント処理を行う領域が一部のみである場合には、ROIの内部領域でセグメント処理を行うようにする。
【0038】
セグメント領域指定部256においてはセグメント指定フラグの値を判定することにより、ROIの外部領域でセグメント処理を行うか否かが判定される(ステップS7)。ここで、ROIが複数設定されている場合には、それぞれのROIに対してステップS7の判定が行われる。
【0039】
ステップS7の判定において、セグメント領域指定フラグが1、即ちROIの外部領域でセグメント処理を行う場合には、セグメント領域抽出部258によって、操作者によって設定された全てのROIの外部領域がセグメント領域として抽出される(ステップS8)。選択されたセグメント領域の領域情報はセグメント用データ管理部255に送られる。セグメント用データ管理部255においては、セグメント領域の領域情報と抽出領域の領域情報とからセグメント用データが生成される(ステップS9)。このセグメント用データはセグメント処理部259に送られる。
【0040】
その後、セグメント処理部259において、セグメント用データに対して膨張処理あるいは収縮処理が行われて抽出領域が調整される(ステップS10)。その後、セグメント処理部259におけるセグメント処理(膨張処理あるいは収縮処理)の結果がセグメント用データ管理部255に送られる。これによってセグメント用データが更新される(ステップS11)。この更新されたセグメント用データは、3次元画像データ作成部252に送られる。3次元画像データ作成部252においては、更新された抽出領域を視覚的に表示するための重畳処理が行われた後、画像表示部26に更新後の抽出領域が表示される(ステップS12)。続いて、セグメント処理部259においては再度の膨張処理あるいは収縮処理が必要であるか否かが判定される(ステップS13)。ステップS13の判定において、再度のセグメント処理が必要である場合には、ステップS10の処理が再び行われる。一方、ステップS13の判定において、再度のセグメント処理が必要でない場合には、処理がステップS20に移行する。即ち、操作者は、例えば図4(b)のようにして画像表示部26に表示された抽出領域を確認する。この確認の結果、更新後の抽出領域502が血管の領域503を含有しておらず、かつ骨の領域を十分含有している場合には、骨の連結領域の抽出が適正に行われたとして、入力部29を介してセグメント処理部259に対して抽出領域の削除指示を行う。一方、骨の連結領域の抽出が適正に行われてない場合には、入力部29を介して連結領域の開始点を再び指定する。
【0041】
また、ステップS7の判定において、セグメント領域指定フラグが0、即ちROIの内部領域でセグメント処理を行う場合には、セグメント領域抽出部258によって、操作者によって設定された全てのROIの内部領域がセグメント領域として抽出される(ステップS14)。抽出されたセグメント領域の領域情報はセグメント用データ管理部255に送られる。セグメント用データ管理部255においては、セグメント領域の領域情報と抽出領域の領域情報とからセグメント用データが生成される(ステップS15)。このセグメント用データはセグメント処理部259に送られる。
【0042】
その後、セグメント処理部259において、セグメント用データに対して膨張処理あるいは収縮処理が行われて抽出領域が調整される(ステップS16)。その後、セグメント処理部259におけるセグメント処理(膨張処理あるいは収縮処理)の結果がセグメント用データ管理部255に送られる。これによってセグメント用データが更新される(ステップS17)。この更新されたセグメント用データは、3次元画像データ作成部252に送られる。3次元画像データ作成部252においては、更新された抽出領域を視覚的に表示するための重畳処理が行われた後、画像表示部26に更新後の抽出領域が表示される(ステップS18)。続いて、セグメント処理部259においては再度の膨張処理あるいは収縮処理が必要であるか否かが判定される(ステップS19)。ステップS19の判定において、再度のセグメント処理が必要である場合には、ステップS16の処理が再び行われる。一方、ステップS19の判定において、再度のセグメント処理が必要でない場合には、処理がステップS20に移行する。
【0043】
ステップS13又はステップS19の後、セグメント処理部259において操作者によって抽出領域の削除指示がなされたか否かが判定される(ステップS20)。削除指示がなされていない場合には、ステップS7に戻る。なお、抽出領域をクリアしステップS3に戻ることもできる。
【0044】
一方、ステップS20の判定において、削除指示がなされた場合には抽出領域の削除処理が行われる(ステップS21)。その後、セグメント処理部259におけるセグメント処理(削除処理)の結果がセグメント用データ管理部255に送られる。これによってセグメント用データが更新される(ステップS22)。
【0045】
以後は、ステップS2に戻り、更新されたセグメント用データ(連結領域削除後の領域データ)に対応する範囲の3次元画像データが新たに読み出され、この読み出された3次元画像データに基づいて3次元画像データ作成部252において新たな3次元表示画像データが作成されて、この3次元表示画像データに基づいて画像表示部26に更新後の3次元表示画像が表示される。操作者は、この3次元表示画像を確認し、骨の画像が正しく削除されていれば、入力部29を介して3次元投影画像の表示指示を行う。これを受けて3次元画像データ作成部252において、例えばMIP法によって3次元投影画像データが作成され、この3次元投影画像に基づいて画像表示部26に例えば図4(a)の参照符号401に示すようにして骨部分が削除された3次元投影画像が表示される。一方、骨の画像が正しく削除されていなければ、ステップS3以後の処理が行われる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、操作者によって設定されたROIの内部領域あるいは外部領域のみでセグメント処理を行うことで、部分的に3次元画像データを複製しなくとも部分的なセグメント処理を行ったり、逆に一部を除いた全体的なセグメント処理を行ったりすることが可能である。
【0047】
これにより、例えば血管と骨とが隣接する領域においては血管の領域にROIを設定してそのROIの内部領域でのセグメント処理を行わないように指定し、かつ骨の抽出領域を十分に膨張処理することで、血管の領域を削除することなく、骨の領域を十分に削除することが可能である。
【0048】
また、複数のROIを設定可能とすることにより、骨抜き処理の際の操作回数を低減することも可能である。
【0049】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。例えば、上述した実施形態においてはROIをセグメント処理の対象あるいは非対象を指定するために用いているが、これに加えて例えばROIの中心部からの距離に応じて抽出領域の膨張量を変化させる等、ある一部分のみ他の領域と異なるセグメント処理を行う場合の処理の対象を指定するために用いるようにしても良い。
【0050】
また、上述した実施形態においては、セグメント処理を、抽出した領域の膨張処理(dilate)、収縮処理(erode)、及び削除処理(delete)としているが、これに限らず一般の各種セグメント処理に適用できる。
【0051】
さらに、上述した実施形態では画像表示部26に表示されたSVR画像等で骨抜き処理を行う例について説明しているが、骨抜き処理としては画像表示部26にMIP画像等の3次元投影画像を表示させて行うものも例えば特開2006−68467号公報において提案されており、本実施形態の手法はこのような3次元投影画像上での骨抜き処理にも適用可能である。即ち、この場合は、図3のステップS2において作成される3次元表示画像がMIP画像等の3次元投影画像となる。
【0052】
また、上述した例では、骨抜き処理におけるセグメント処理について説明しているが、上述した実施形態の手法は、骨抜き処理以外に行われる各種のセグメント処理に適用可能である。
【0053】
また、上述した実施形態では、医用画像診断装置の例として、X線CT装置を挙げているが、これに限るものではなく、例えばMRI装置であっても良い。
【0054】
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像診断装置の一例としてのX線CT装置の構成を示すブロック図である。
【図2】医用画像処理装置の内部の詳細な構成を示す図である。
【図3】図1に示すX線CT装置における骨抜き処理の流れについて示すフローチャートである。
【図4】骨抜き処理の際に画像表示部に表示される画像について示す図である。
【符号の説明】
【0056】
1…X線CT装置、10…ガントリ部、20…コンピュータ装置、21…前処理部、22…メモリ部、23…再構成部、24…記憶装置、25…医用画像処理装置、26…画像表示部、27…制御部、28…バス、29…入力部、251…3次元画像データ管理部、252…3次元画像データ作成部、253…連結領域指定部、254…ROI設定部、255…セグメント用データ管理部、256…セグメント領域指定部、257…連結領域抽出部、258…セグメント領域抽出部、259…セグメント処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の透過データを収集する透過データ収集手段と、
前記収集された透過データから3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、
前記再構成された3次元画像データから3次元表示画像データを作成する3次元表示画像データ作成手段と、
前記作成された3次元表示画像データに基づいて3次元表示画像を表示する画像表示手段と、
前記表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、
前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、
前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、
前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、
前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段と、
を具備することを特徴とする医用画像診断装置。
【請求項2】
前記連結領域の更新は、前記抽出された連結領域を膨張あるいは収縮させる処理を含むことを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記処理手段は、前記抽出された連結領域に対して膨張処理を行う際の膨張量あるいは収縮処理を行う際の収縮量を前記関心領域指定手段で指定された関心領域の中心部からの距離に応じて設定することを特徴とする請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記関心領域設定手段は、前記表示された3次元表示画像における任意の複数の領域を前記関心領域として設定し、
前記更新領域抽出手段は、前記設定された複数の関心領域の外部又は内部の領域をそれぞれ抽出することを特徴とする請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
画像表示部に表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、
前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、
前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、
前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、
前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段と、
を具備することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
透過データから3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、
前記再構成された3次元画像データから3次元表示画像データを作成する3次元表示画像データ作成手段と、
前記作成された3次元表示画像データに基づいて3次元表示画像を表示する画像表示手段と、
前記表示された3次元表示画像において削除すべき連結領域の開始点を指定する連結領域指定手段と、
前記指定された開始点に連結する領域を前記連結領域として抽出する連結領域抽出手段と、
前記表示された3次元表示画像において関心領域を設定する関心領域設定手段と、
前記設定された関心領域の外部と内部の連結領域の何れを更新するかを選択する更新領域選択手段と、
前記更新領域選択手段の選択結果に従って前記設定された関心領域の外部又は内部の領域を抽出する更新領域抽出手段と、
前記更新領域抽出手段によって抽出された前記関心領域の外部又は内部の領域において前記連結領域抽出手段によって抽出される連結領域を更新する処理手段と、
して機能させることを特徴とする医用画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−125881(P2008−125881A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315581(P2006−315581)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】