説明

医療情報管理装置および医療情報管理システム

【課題】医療器材の交換後の実施情報を交換前の実施情報と統合して記録するか、別々に記録するかを簡単かつ的確に判定できない場合がある。
【解決手段】取得部34は、医療行為で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する。制御部38は、記録部40に記録されている医療器材情報と、その医療器材情報で特定される医療器材を使用した医療行為の次に医療行為において使用される医療器材を特定する医療器材情報とを比較して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対する後の医療行為を先の医療行為から継続する同種の医療行為であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療情報管理技術に関し、特に医療行為の実施情報を管理する医療情報管理装置および医療情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡検査中に、検査方針の変更や、検査部位の変更といった様々な理由によって、それに適したスコープを交換することがある。その場合、患者の体内からスコープを抜去した後、電子内視鏡システムの電源をオフしてからスコープを交換する。電子内視鏡システムの電源オフまたは検査終了キーのオンによって、検査が終了したと判断するよう設計されているシステムでは、同一患者に対する同一検査であるにも係わらず、スコープを交換すると別の検査として記録されてしまう。
【0003】
これに対し、特許文献1は、同一患者が連続して検査を行うとき、検査終了キー押下の有無に応じて、一連の検査を同一の検査として統合するか別々の検査として分割するかを判断して記録する技術を開示する。
【特許文献1】特開2001−245239号公報
【特許文献2】特開2003−141502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スコープを交換するときヒューマンエラーにより検査終了キーを押下し忘れた場合などには、別の患者に対する検査が一つの検査データとして記録されてしまう可能性がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療器材の交換後の実施情報を交換前の実施情報と統合して記録するか、別々に記録するかを簡単で的確に判定することが可能な医療情報管理装置および医療情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の医療情報管理装置は、医療行為で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、実施情報を記録する記録部と、記録部に記録されている医療器材情報と、その医療器材情報で特定される医療器材を使用した医療行為の次の医療行為において使用される医療器材を特定する医療器材情報とを比較して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対して継続する同種の医療行為であるか否かを判定する制御部と、を備える。制御部は、それぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて記録部に記録してもよい。記録部は、医療行為の種別ごとに使用可能な医療器材を、同一種別の医療器材として管理するテーブルを含んでもよい。「医療行為」とは、特定の医療器材を使用して実行される処置や検査において実行される行為であり、電子内視鏡装置などの観測装置の電源オンから電源オフまでになされる医療行為者による挙動の集合と定義されてもよく、観測装置と医療情報管理装置との通信が開始してから終了するまでになされる医療行為者による挙動の集合として定義されてもよい。
【0007】
この態様によると、医療器材情報を比較することにより、医療器材の交換後の実施情報を、交換前の実施情報と統合するか否かの判定を的確に行うことができる。
【0008】
制御部は、先の医療行為が終了した時刻と後の医療行為が開始した時刻との間隔が所定の設定時間内であり、かつそれぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて記録部に記録してもよい。これによれば、時間的な条件を加味することにより、上述した判定をさらに精度よく行うことができる。
【0009】
本発明の別の態様もまた、医療情報管理装置である。この装置は、医療行為で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、実施情報を記録する記録部と、それぞれの医療器材による医療行為において、先の医療行為が終了した時刻と後の医療行為が開始した時刻との間隔が所定の設定時間内であるか否かを判定して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対して継続する同種の医療行為であるか否かを判定する制御部と、を備える。
【0010】
この態様によると、先の医療行為が終了した時刻と後の医療行為が開始した時刻を比較することにより、医療器材の交換後の実施情報を、交換前の実施情報と統合するか否かの判定を簡単に行うことができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、医療情報管理システムである。この医療情報管理システムは、医療器材を備えた観測装置と、当該観測装置を用いた医療行為の実施情報を管理する医療情報管理装置を備える医療情報管理システムであって、医療情報管理装置は、観測装置で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、実施情報を記録する記録部と、記録部に記録されている医療器材情報と、その医療器材情報で特定される医療器材を使用した医療行為の次の医療行為において使用される医療器材を特定する医療器材情報とを比較して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対する同一の医療行為に該当するか否かを判定する制御部と、を備える。制御部は、それぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて記録部に記録してもよい。
【0012】
この態様によると、医療器材情報を比較することにより、医療器材の交換後の実施情報を、交換前の実施情報と統合するか否かの判定を的確に行うことができる。
【0013】
制御部は、観測装置との間で前回の通信を終了した時刻と通信を再開した時刻との間隔が所定の設定時間内であり、かつそれぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて記録部に記録してもよい。これによれば、時間的な条件を加味することにより、上述した判定をさらに精度よく行うことができる。
【0014】
観測装置は、所定のメッセージを表示する表示部と、患者特定情報をユーザが入力するための入力部と、をさらに備えてもよい。取得部は、患者に対する医療行為のオーダ情報および入力部から入力された患者特定情報を取得し、制御部は、患者特定情報に対応するオーダ情報が存在しないとき、その旨を表示部に表示させてもよい。これによれば、ユーザが患者特定情報を誤入力した場合、患者特定情報に対応するオーダ情報が存在しない旨の表示を見て、訂正することができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様もまた、医療情報管理システムである。この医療情報管理システムは、体腔内の観察像を撮像する撮像素子を有する内視鏡スコープを有し、撮像素子からの撮像信号から映像信号を出力する観測装置と、映像信号を圧縮した画像ファイルへ変換する圧縮装置と、患者に対する医療行為の実施情報を管理する医療情報管理装置と、を備える。医療情報管理装置は、画像ファイルを検査ごとに記録する記録部と、観測装置の利用状況および圧縮装置の利用状況が所定の条件を満たす場合、記録部に記録されている最新の検査に関連付けて、画像ファイルを記録部に記録するよう制御する制御部と、を備える。制御部は、圧縮装置の電源がオンの間に、観測装置の電源がオフされて再度オンされた後に撮像された画像ファイルを、記録部に記録されている最新の検査に関連付けてもよい。
【0016】
この態様によると、観測装置の利用状況および圧縮装置の利用状況を監視することにより、医療器材の交換後の実施情報を、交換前の実施情報と統合するか否かの判定を的確に行うことができる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、医療器材の交換後の実施情報を交換前の実施情報と統合して記録するか、別々に記録するかを簡単で的確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施形態を詳細に説明する前に、まず概要を説明する。本発明の実施形態における医療情報管理システム100は、観測装置および医療情報管理装置30を少なくとも含んで構成される。以下の例では、観測装置として電子内視鏡装置10を取り上げるが、それに限らず、超音波内視鏡観測装置、体外エコー装置、外付けカメラ装置などでもよい。
【0020】
医療情報管理装置30は、観測装置から検査データなど実施情報を観測装置の電源オフによる通信断を挟んで取得した場合、統合して記録するか、別々に記録するかを判断する。例えば、この判断は、通信断前後の患者特定情報および/または医療器材の型番などの医療器材情報などを比較することにより実行されてもよい。医療情報管理装置30は、検査種別ごとに使用され得る医療器材情報をあらかじめ管理している。一つの検査または処置とは、単一の医療行為または複数の医療行為で構成される。ここでの医療行為とは、特定の医療器材を使用中になされる医療行為者による挙動の集合を表す概念である。
【0021】
以下、実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る医療情報管理システム100の構成を示す。医療情報管理システム100は、電子内視鏡装置10、医療情報管理装置30およびクライアント装置50を備える。電子内視鏡装置10、医療情報管理装置30およびクライアント装置50は、ハブにより分配されたネットワークにより接続されている。医療情報管理装置30およびクライアント装置50は、サーバクライアントシステムを構成する。
【0022】
電子内視鏡装置10は、表示部12、操作部14、記録部15、制御部16、内視鏡スコープ(以下単にスコープと表記する。)18、圧縮部22および通信部24を含む。医療情報管理装置30は、通信部32、取得部34、制御部38、記録部40および時計42を含む。クライアント装置50は、表示部52、操作部54、通信部56、制御部58および記録部60を含む。
【0023】
これらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0024】
電子内視鏡装置10は、患者の内臓や体腔の内部を検査したり処置したりするための装置である。スコープ18は、図示しないが、体腔内に挿入する細長の挿入部とその後端に設けられた操作部とを有する。当該操作部にはレリーズ指示を行うレリーズスイッチが設けられており、レリーズスイッチを押下することにより画像の記録が可能となっている。スコープ18には型番などの識別情報が付与されている。スコープ18には図示しない光源から体腔内を明るく照明するための照明光が供給される。
【0025】
制御部16は、電子内視鏡装置10全体を統括的に制御する。特に、スコープ18に内蔵または接続された固体撮像素子からの信号を映像信号に変換する。また、挿入されているスコープ18の識別情報を読み取り、スコープ18の種別を特定するためのスコープ情報を取得できる。スコープ情報は医療器材を特定するための医療器材情報として利用される。なお、スコープ18から制御部16に識別情報を直接送信できない構成では、図示しない無線通信機能を有するハンディスキャナなどで構成される読取手段を利用し、医療行為者がスコープ18の識別情報に読取手段をかざして識別情報を読み取らせ、識別情報を制御部16に送信させてもよい。また、後述する操作部14から医療行為者がスコープ18の識別情報を手入力してもよい。表示部12は、患者情報などの文字情報やスコープ18で撮影した画像などを表示する。操作部14は、キーボードなどを備え、ユーザから入力を受け付ける。
【0026】
記録部15は、レリーズされた映像信号や、医療情報管理装置30から受信した患者情報を一時記録する。圧縮部22は、レリーズされた映像信号をデジタル信号に変換し、所定の圧縮処理を施し、例えば、JPEG(Joint Photographic Coding Experts Group)形式の画像ファイルを生成する。通信部24は、医療情報管理装置30との通信を実行する。
【0027】
医療情報管理装置30は、サーバなどで構成され、患者情報、オーダ情報、医療行為の実施情報および医療器材に関するテーブルなどをデータベースとして管理する。患者情報とは、1人の患者を特定するための情報であり、「患者ID」、「氏名」、「生年月日」および「性別」などの項目を含む。「患者ID」は、各患者を識別できるように患者に一意に対応した番号である。さらに、患者情報は、患者の特性や状態を表すプロフィール情報として、「血液型」、「身長/体重」、「アレルギー」、「障害」、「感染症」、「疾患、注意事項」、「検体検査結果」、「前投薬情報」などの項目を含んでもよい。
【0028】
オーダ情報とは、内視鏡部門に対して検査依頼が行われる場合の検査の依頼に関する情報である。「患者ID」、「氏名」、「オーダ番号」および「発生日時」などのオーダキー情報、「依頼科名」、「依頼医師名」および「依頼日」などの依頼元情報、「依頼病名」、「検査目的」、「検査種別」、「検査項目」および「検査部位」などを適宜含むオーダ内容、ならびに「検査日」および「実施時刻」などの検査予約情報などを含む。オーダキー情報は、1つの検査オーダを一意に特定するための情報である。
【0029】
実施情報とは、検査の実施内容に関する情報であり、「実施日時」、「実施者」、「実施場所」、「手技」、「薬品」、「器材」、「撮影画像」および「シェーマ画像」などを適宜含む。また、検査依頼に対するレポート情報として、「報告日」、「報告者」、「診断」、「所見」、「処置」、「コメント」および「検査後注意・指示」などを含んでもよい。これらのレポート情報は、後述するクライアント装置50の記録部60で管理してもよい。
【0030】
通信部32は、電子内視鏡装置10およびクライアント装置50との通信を実行する。取得部34は、クライアント装置50から送信される「患者ID」などの患者特定情報や、電子内視鏡装置10から送信される患者特定情報、実施情報およびスコープ情報などを取得する。制御部38は、医療情報管理装置30全体を統括的に制御する。特に、取得部34が電子内視鏡装置10との通信断前後に取得したスコープ情報を比較して、通信断前後の2つの医療行為が継続する同種の医療行為であるか否かを判定する。制御部38の詳細な動作は後述する。
【0031】
記録部40は、ハードディスクなどの記憶媒体によって構成されており、患者情報、オーダ情報、実施情報および電子内視鏡装置10で使用される全種類のスコープ18の識別情報を記録する。また、電子内視鏡装置10から実施情報として受信した撮影画像ファイル、取得したスコープ情報および電子内視鏡装置10との通信が切断された時刻などを一時記録する。時計42は、時刻を制御部38に供給する。
【0032】
クライアント装置50は、PC(パーソナルコンピュータ)などで構成され、医療情報管理装置30にアクセスして、患者情報、オーダ情報および実施情報などを参照したり、加工したりすることができる。クライアント装置50は、内視鏡検査室または隣接する部屋に設置することができる。制御部58は、クライアント装置50全体を統括的に制御する。表示部52は、患者情報や実施情報などを表示する。操作部54は、キーボードなどを備え、ユーザからの入力を受け付ける。通信部56は、医療情報管理装置30との通信を実行する。記録部60は、ハードディスクなどの記憶媒体によって構成されており、レポート情報などを記録する。
【0033】
図2は、本発明の実施形態に係る医療情報管理システム100の変形した構成を示す。図1では、電子内視鏡装置10内に、圧縮部22および通信部24が含まれる構成を説明した。図2では、圧縮部22および通信部24が電子内視鏡装置10から独立した例である。電子内視鏡装置10と医療情報管理装置30との間に圧縮伝送装置20が設けられる。圧縮伝送装置20は、図1の圧縮部22および通信部24に対応する構成要素を備える。図2におけるそれぞれの構成要素の機能は、上述した図1の説明と同様である。
【0034】
次に、本実施形態における医療情報管理システムの動作について説明する。図3は、本発明の実施形態における第1動作例を説明するためのフローチャートを示す。まず、医療行為者は、クライアント装置50の操作部54から「患者ID」などの患者特定情報を入力し、クライアント装置50は、患者特定情報を医療情報管理装置30に送信する(S10)。なお、クライアント装置50が内視鏡検査室に設置されておらず、急患を検査する状況などでは、電子内視鏡装置10の操作部14から患者特定情報を入力してもよい。
【0035】
医療情報管理装置30は、クライアント装置50または電子内視鏡装置10から患者特定情報を受信すると、送信されてきた患者特定情報に対応する患者情報を検索し、その一部または全ての項目を電子内視鏡装置10に送信する。この際、患者特定情報に一致するオーダ情報を特定し、そのオーダ情報も合わせて電子内視鏡装置10に送信してもよい。電子内視鏡装置10は、送信されてきた患者情報を表示部12に表示する(S12)。また、電子内視鏡装置10は、現在使用されているスコープ18のスコープ情報を取得し、医療情報管理装置30に送信する(S14)。医療情報管理装置30はスコープ情報を受信する。
【0036】
次に、医療行為者は、スコープ18を用いて患者の体内を撮影する。電子内視鏡装置10は、医療情報管理装置30に撮影画像を送信する(S16)。医療情報管理装置30は、受信した撮影画像と患者情報とを関連付ける(S18)。また、受信した撮影画像を対応するオーダ情報にも関連付ける。
【0037】
医療行為者はスコープ18を交換する必要が生じた場合、例えば、細いスコープ18に変更する必要が生じた場合、電子内視鏡装置10の主電源をオフし、電子内視鏡装置10は機能を停止する(S20)。その後、医療行為者はスコープ18を交換し、主電源をオンすると、電子内視鏡装置10は機能を回復する(S22)。
【0038】
医療行為者は、電子内視鏡装置10の操作部14から患者特定情報を入力し、電子内視鏡装置10は、患者特定情報を医療情報管理装置30に送信する(S24)。この際、患者特定情報に一致するオーダ情報を特定する。また、電子内視鏡装置10は、交換後のスコープ18のスコープ情報を取得し、医療情報管理装置30に送信する(S26)。医療情報管理装置30はスコープ情報を受信する。医療行為者は、交換後のスコープ18を用いて患者の体内を再び撮影する。電子内視鏡装置10は、医療情報管理装置30に撮影画像を送信する(S28)。医療情報管理装置30は、受信した撮影画像と患者情報とを関連付ける(S30)。また、受信した撮影画像を対応するオーダ情報にも関連付ける。
【0039】
医療情報管理装置30の制御部38は、送信されてきた患者特定情報およびそれに対応して受信したスコープ情報と、前回送信されてきた患者特定情報およびそれに対応して受信したスコープ情報と、を照合する(S32)。患者特定情報の照合は「患者ID」または「氏名」の照合を少なくとも含む。この照合は、すべての医療行為を終了し、医療行為者がクライアント装置50を利用してレポート情報を作成するときでもよいし、スコープ交換直後でもよく、スコープ交換後の任意のタイミングで行われる。患者特定情報およびスコープ情報の両方が一致した場合(S32のY)、クライアント装置50の表示部52または電子内視鏡装置10の表示部12に実施情報を統合する旨のメッセージを表示させる(S34)。
【0040】
医療行為者が統合を希望し、その意思表示がクライアント装置50の操作部54または電子内視鏡装置10の操作部14に入力された場合(S36のY)、医療情報管理装置30の制御部38は、それぞれのスコープ情報に対応する実施情報を統合し、同一患者に対する継続する同種の医療行為に係る実施情報として記録部40に記録する(S38)。実施情報を統合するとは、例えば、交換前のスコープで撮影した画像ファイルと交換後のスコープで撮影した画像ファイルとを同一のフォルダで管理したり、画像ファイル間にリンクをはって管理することである。
【0041】
ステップS32にて、少なくとも患者特定情報およびスコープ情報のいずれか一方が不一致の場合(S32のN)、前回受信したスコープ情報に対応する実施情報と受信したスコープ情報に対応する実施情報とを、別検査のデータとして記録部40に記録する(S40)。ステップS36にて、医療行為者が統合を希望せず、その意思表示がクライアント装置50の表示部52または電子内視鏡装置10の操作部14に入力された場合も(S36のN)、別検査のデータとして記録部40に記録する(S40)。なお、制御部38は、ステップS34およびS36に係る処理を省略して、患者特定情報およびスコープ情報の両方が一致した場合(S32のY)、自動的に統合してもよい。
【0042】
図4は、スコープ情報を管理するテーブルの一例を示す。医療情報管理装置30は、電子内視鏡装置10で使用される可能性のある全種類のスコープ18をテーブルとして記録部40で管理する。図4では、それぞれのスコープは四つの項目で規定される。「スコープID」、「スコープ種別」、「型番」および「同一検査と判定するスコープID」である。上部消化管用スコープ、下部消化管用スコープ、気管支用スコープおよび超音波スコープと用途の異なるスコープが複数登録されている。
【0043】
また、用途ごとにも複数登録されている。同じ用途でも、管の太さ、形状、処置機能の有無など種々のタイプが存在する。医療行為者は、同じ検査または処置中でも、患者の体内の形状や症状に合ったスコープに交換していく。例えば、下部消化管検査にて、患者のS状結腸の形状が分かるにしたがい、それに合ったスコープに交換していく。
【0044】
また、検査種別ごとに使用可能なスコープが複数ある場合、あらかじめ分類して、「スコープID」を使用して相互に関連付けておく。上部消化管検査のうちのある検査では、上部消化管用スコープ(以下、上部用スコープと表記する。)1、上部用スコープ2および上部用スコープ3が使用可能である。この場合、医療情報管理装置30は、前回の患者特定情報の受信とともに上部用スコープ1の型番”AAA−1”をスコープ情報として受信し、その次の患者特定情報の受信とともに上部用スコープ2の型番”AAA−2”をスコープ情報として受信した場合、同一検査に使用されるスコープと判定する。
【0045】
例えば、電子内視鏡装置10から同一患者に使用されたスコープ情報として、型番”AAA−1”、型番”AAA−3”、型番”BBB−1”、型番”BBB−2”が順番に送信されてきた場合、医療情報管理装置30は、型番”AAA−1”に対応する実施情報と型番”AAA−3”に対応する実施情報とを統合し、次の型番”BBB−1”に対応する実施情報とは統合しない。上記テーブルより、型番”AAA−1”および型番”AAA−3”に係るスコープが上部消化管に使用され、型番”BBB−1”に係るスコープが下部消化管に使用されると、判定されるためである。また、医療情報管理装置30は、型番”BBB−1”に対応する実施情報と型番”BBB−2”に対応する実施情報とを統合する。これは、上部消化管検査と下部消化管検査が続けて行われたことを示す。
【0046】
以上の説明から明らかなように第1動作例によれば、スコープ情報などの医療器材情報を受信した場合、医療器材交換前に使用されていた医療器材を特定する医療器材情報と比較することにより、交換前後の実施情報を同一検査に関するデータとして統合して記録するか、別検査に関するデータとして別々に記録するかを的確に判定することができる。よって、同一検査中に医療器材が交換されても、それらの検査データが分離されて記録されることを防止することができる。また、医療器材の交換によって分断された検査データを統合するか否かを選択させるメッセージを表示して医療行為者に確認させることにより、統合すべきでない検査データが誤って統合されてしまう事態を防止することができる。また、その操作も分離されて記録された検査データを後に統合する操作より容易である。
【0047】
図5は、本発明の実施形態における第2動作例を説明するためのフローチャートを示す。第2動作例は、第1動作例を基本動作とし、時刻情報を活用することによりさらに精度を高める例である。ステップS10からステップS20までは第1動作例と同様である。スコープ交換のために電子内視鏡装置10の主電源がオフされると、電子内視鏡装置10と医療情報管理装置30との通信が切断される。よって、医療情報管理装置30は、通信が切断されると、電子内視鏡装置10側でスコープ交換がなされ、交換前のスコープによる医療行為が終了したと推測することができる。医療情報管理装置30の制御部38は、通信が切断された時刻を時計42から取得し、記録部40に一時記録する(S21)。第1動作例と同様に、医療行為者はスコープ18を交換し、主電源をオンすると、電子内視鏡装置10は機能を回復する(S22)。
【0048】
電子内視鏡装置10の主電源がオンされると、電子内視鏡装置10と医療情報管理装置30との通信が再び確立される。よって、医療情報管理装置30は、通信が再び確立すると、交換後のスコープによる医療行為が開始したと推測することができる。医療情報管理装置30の制御部38は、通信が再び確立された時刻を時計42から取得し、記録部40に一時記録する(S23)。ステップS24からステップS30までは第1動作例と同様である。
【0049】
医療情報管理装置30の制御部38は、記録部40に記録された前回の通信切断の時刻と、通信の再確立の時刻とを比較する(S31)。両時刻の差が設定時間内であれば(S31のY)、ステップS32に遷移する。両時刻の差が設定時間を超える場合(S31のN)、前回の通信で受信した実施情報との通信で受信した実施情報とを、別検査の実施情報として記録部40に記録する(S40)。設定時間は、2分、5分、15分、30分など設計者が任意に設定することができる。スコープ交換に通常必要な時間や、患者交換に必要な時間よりも短い時間や、患者の症状が変化しない程度の時間に設定することができる。ステップS32以降の処理は、第1動作例と同様である。時刻を利用することで、患者が同一であるか否かの確認精度を高めることができる。例えば、図5のステップS32における患者特定情報の比較を行わなくてもよい。
【0050】
以上の説明から明らかなように第2動作例によれば、第1動作例の作用効果に加えて、時間制限を設けることにより判定の精度を高めることができる。例えば、前回の医療器材情報と比較して、同一検査と判定すべき医療器材情報を受信しても、その受信間隔が数時間離れているような場合、医療器材情報を比較するまでもなく別検査と判定すべきである。
【0051】
次に、第2動作例の変形例を説明する。第2動作例の変形例は、図5に示した第2動作例の基本動作を簡素化したものである。すなわち、スコープ情報の比較を省略した例である。したがって、スコープ情報の受信、比較に関する図5のステップS14、ステップS26、ステップS32の処理が省略される。この変形例では、上記設定時間を2分にするなど、スコープ交換に通常必要な時間に設定することが望ましい。第2動作例の変形例によれば、スコープ情報を取得し、比較する必要がないためシステムを簡素化することができる。
【0052】
図6は、本発明の実施形態における第3動作例を説明するためのフローチャートを示す。第3動作例は、「患者ID」などの患者特定情報をキーにオーダ情報との照合を行う際、医療情報管理装置30にオーダ情報として存在している情報のみを受け付け、登録されていない場合には警告やエラーを通知するものである。
【0053】
医療行為者は、電子内視鏡装置10の操作部14またはクライアント装置50の操作部54から「患者ID」などの患者特定情報を入力する。入力された患者特定情報は医療情報管理装置30に送信され、医療情報管理装置30は、当該患者特定情報を受信する(S50)。医療情報管理装置30の制御部38は、受信した患者特定情報をキーに記録部40に構築されたオーダ情報のデータベースを検索し、一致するオーダ情報が存在するか否かを判定する(S52)。
【0054】
一致するオーダ情報が存在した場合(S52のY)、その後に開始される検査による撮影画像は、自動的にそのオーダ情報に関連付けられる(S54)。一致するオーダ情報が存在しない場合(S52のN)、医療情報管理装置30の制御部38は、照合結果と所定のメッセージを電子内視鏡装置10の表示部12に表示させる(S56)。所定のメッセージは、患者特定情報の入力ミスの訂正を促すものであり、例えば、「入力された患者は当日の検査に予約されていません。撮影を開始する前に患者情報に誤りがないか確認してください。」といったものである。
【0055】
医療行為者が入力ミスを認識し、その意思表示が電子内視鏡装置10の操作部14に入力された場合(S58のY)、その後、操作部14から患者特定情報の訂正が可能になる。医療行為者が患者特定情報を訂正すると、訂正された患者特定情報が医療情報管理装置30に送信され、医療情報管理装置30は、当該患者特定情報を受信する(S60)。医療情報管理装置30の制御部38は、受信した患者特定情報をキーに記録部40に構築されたオーダ情報のデータベースを検索し、一致するオーダ情報が存在するか否かを再度判定する(S52)。
【0056】
ステップS58にて、医療行為者が入力内容を再認識し、訂正なしの意思表示が電子内視鏡装置10の操作部14に入力された場合(S58のN)、医療情報管理装置30の制御部38は、オーダ情報が存在しない検査であると判断する。その後に開始される検査による撮影画像をオーダ情報と関連付けず、独立して記録部40に記録する(S62)。オーダ情報が存在しない場合とは、緊急検査が行われる場合などである。
【0057】
以上の説明から明らかなように第3動作例によれば、「患者ID」などの患者特定情報とオーダ情報との照合結果を撮影前に医療行為者に通知できることにより、医療行為者にとって予期しない、オーダ情報に関連付けられない撮影画像の登録を防止することができる。また、患者情報の入力ミスの訂正を促すことにより、ヒューマンエラーを最小限にすることができる。さらにヒューマンエラーの発生を減少させることにより、マニュアル操作でオーダ情報と撮影画像を関連付けるという医療行為者の作業負担を軽減することができ、メンテナンス効率を向上させることができる。
【0058】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
例えば、上記実施形態で説明した電子内視鏡装置10は、操作部14に検査継続ボタンなどを設け、スコープ交換のために主電源をオフする前に、医療情報管理装置30から受信した患者情報やオーダ情報を保存しておく機能を設けてもよい。例えば、記録部15に不揮発な領域を設け、上記検査継続ボタンが押下された場合、受信した患者情報などをその領域に記録する。医療行為者は、同一検査中にスコープを交換するために電子内視鏡装置10の電源をオフし、再びオンした場合、「患者ID」などの患者特定情報を入力して医療情報管理装置30から患者情報を再度取得しなくても、自己の記録部15から患者情報を読み出して、表示部12に表示することができる。これによれば、医療行為者が患者特定情報を再度キーボード入力する必要がなく、操作負担を軽減することができる。
【0060】
図2に示した変形例の構成では、医療機器端末は、電子内視鏡装置10と圧縮伝送装置20とを含む。医療情報管理装置30の制御部38は、電子内視鏡装置10および圧縮伝送装置20の主電源のオン/オフ状態に応じて、同一検査にするか別検査にするかの判定をさらにきめ細かく行う。
【0061】
まず、電子内視鏡装置10および圧縮伝送装置20の主電源が両方ともオンの場合、検査中であると判定する。電子内視鏡装置10の主電源がオンで圧縮伝送装置20の主電源がオフの場合、検査終了と判定する。電子内視鏡装置10および圧縮伝送装置20の主電源が両方ともオフの場合も、検査終了と判定する。よって、その次の機会に受信する撮影画像ファイルなどの実施情報は、前の機会に受信した実施情報と統合せず、独立に記録する。同一検査中の医療器材交換では圧縮伝送装置20の電源までオフすることは通常行われないからである。電子内視鏡装置10の主電源がオフで圧縮伝送装置20の主電源がオンの場合、図1の構成に基づく動作例と同様に処理する。圧縮伝送装置20の主電源がオンのままの場合、同一検査中の医療器材交換の可能性がある。これによれば、同一検査にするか別検査にするかの判定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態に係る医療情報管理システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る医療情報管理システムの変形した構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における第1動作例を説明するためのフローチャートである。
【図4】スコープ情報を管理するテーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態における第2動作例を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態における第3動作例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
10 電子内視鏡装置、 12 表示部、 14 操作部、 15 記録部、 16 制御部、 18 スコープ、 20 圧縮伝送装置、 22 圧縮部、 24 通信部、 30 医療情報管理装置、 32 通信部、 34 取得部、 38 制御部、 40 記録部、 42 時計、 50 クライアント装置、 52 表示部、 54 操作部、 56 通信部、 58 制御部、 60 記録部、 100 医療情報管理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療行為で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、
前記実施情報を記録する記録部と、
前記記録部に記録されている医療器材情報と、その医療器材情報で特定される医療器材を使用した医療行為の次の医療行為において使用される医療器材を特定する医療器材情報とを比較して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対して継続する同種の医療行為であるか否かを判定する制御部と、
を備えることを特徴とする医療情報管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、それぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて前記記録部に記録することを特徴とする請求項1に記載の医療情報管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、先の医療行為が終了した時刻と後の医療行為が開始した時刻との間隔が所定の設定時間内であり、かつそれぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて前記記録部に記録することを特徴とする請求項1に記載の医療情報管理装置。
【請求項4】
前記記録部は、医療行為の種別ごとに使用可能な医療器材を、同一種別の医療器材として管理するテーブルを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の医療情報管理装置。
【請求項5】
医療行為で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、
前記実施情報を記録する記録部と、
それぞれの医療器材による医療行為において、先の医療行為が終了した時刻と後の医療行為が開始した時刻との間隔が所定の設定時間内であるか否かを判定して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対して継続する同種の医療行為であるか否かを判定する制御部と、
を備えることを特徴とする医療情報管理装置。
【請求項6】
医療器材を備えた観測装置と、当該観測装置を用いた医療行為の実施情報を管理する医療情報管理装置を備える医療情報管理システムであって、
前記医療情報管理装置は、
前記観測装置で使用される医療器材を特定するための医療器材情報を含む医療行為の実施情報を取得する取得部と、
前記実施情報を記録する記録部と、
前記記録部に記録されている医療器材情報と、その医療器材情報で特定される医療器材を使用した医療行為の次の医療行為において使用される医療器材を特定する医療器材情報とを比較して、それぞれの医療器材を使用した医療行為が同一患者に対する同一の医療行為に該当するか否かを判定する制御部と、
を備えることを特徴とする医療情報管理システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記観測装置との間で前回の通信を終了した時刻と通信を再開した時刻との間隔が所定の設定時間内であり、かつそれぞれの医療器材が同一種別の医療器材である場合、それぞれの医療器材による医療行為の実施情報を合わせて前記記録部に記録することを特徴とする請求項6に記載の医療情報管理システム。
【請求項8】
前記観測装置は、
所定のメッセージを表示する表示部と、
患者特定情報をユーザが入力するための入力部と、をさらに備え、
前記取得部は、患者に対する医療行為のオーダ情報および前記入力部から入力された患者特定情報を取得し、
前記制御部は、前記患者特定情報に対応する前記オーダ情報が存在しないとき、その旨を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項6または7に記載の医療情報管理システム。
【請求項9】
体腔内の観察像を撮像する撮像素子を有する内視鏡スコープを有し、前記撮像素子からの撮像信号から映像信号を出力する観測装置と、
前記映像信号を圧縮した画像ファイルへ変換する圧縮装置と、
患者に対する医療行為の実施情報を管理する医療情報管理装置と、を備え、
前記医療情報管理装置は、
前記画像ファイルを検査ごとに記録する記録部と、
前記観測装置の利用状況および前記圧縮装置の利用状況が所定の条件を満たす場合、前記記録部に記録されている最新の検査に関連付けて、前記画像ファイルを前記記録部に記録するよう制御する制御部と、
を備えることを特徴とする医療情報管理システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記圧縮装置の電源がオンの間に、前記観測装置の電源がオフされて再度オンされた後に撮像された画像ファイルを、前記記録部に記録されている最新の検査に関連付けることを特徴とする請求項9に記載の医療情報管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−325741(P2007−325741A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159119(P2006−159119)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】