医療用インプラント
少なくとも部分的にポリマーから形成された医療用インプラントであり、(A)一部のみが1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが少なくとも部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;(B)全体的に1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが極部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;(C)少なくとも部分的に着色層あるいは反射層によって被覆された1つあるいは複数の生体適合性ポリマーを含んでなるか;または(D)少なくともポリマーの一部が色物質を含んだ体液との接触に際して前記色物質を吸収することができる被覆層を有してなり;従って(E)有色のあるいは着色物質を含んだポリマー(A)、または反射性であるか(A)、色物質吸収性であるか(D)、あるいは着色層から形成された被覆層に接合しているポリマー層が電磁放射線を使用して加熱および軟化可能であり、その際にインプラントのそれ以外の部位がその硬度を維持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の医療用インプラント、請求項41前段に記載の骨あるいは骨片の固定装置、請求項42および/または46前段に記載の本発明に係る医療用インプラントの製造方法、請求項43ないし45のいずれかに記載の本発明に係る医療用インプラントの被覆方法、請求項47記載の骨接合方法、ならびに請求項52または53記載の本発明に係る医療用インプラントの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
人骨あるいは動物の骨への固定の目的のための骨接合方法および類似の方法のために生体適合性かつ熱可塑性の材料を使用することは既知の技術であり、例えば熱接着ピストル(例えば米国特許第5290281号明細書)と同様な外部熱付加あるいはウッドウェルディング社の国際公開第2006/002569号パンフレットに従った超音波エネルギーを使用するポリマーの液化等の多様な方式が実施されている。勿論これらの技術は問題点も伴っている:外部の熱源(熱接着ピストル)による加熱によって、骨との結合が進行する間にインプラントを再度冷却しないようにするためにインプラントを極めて迅速に挿入する必要があり、その理由はインプラントが極低い熱容量を有していてまたその熱可塑性材料が軟化した状態のみにおいて例えば骨の間隙に進入し得るためである。材料が冷却されると同時に骨との結合はそれ以上進行しなくなる。また早急な硬化を防止するために必要な熱可塑性材料の過大な加熱も材料ならびに(骨)組織の両方を損傷し得るため問題である。
【0003】
欧州特許第0696185号B明細書(Pathak)により、レーザ光線を照射し吸収された電磁放射線によって表面を含めたインプラント全体を軟化させることができる、発色団を含んだ医療用インプラントが知られている。上記の(血管ステントとしての)医療用インプラントはカテーテルを使用して人体内に挿入される。その際の問題点は、インプラント全体が軟化しそれによる構造脆弱化によって例えば圧力を付加してのインプラントの挿入が不可能になることである。また、このインプラントは前述の形態ならびに全体が軟化する特性のため本発明のような骨接合方法を達成するためには適していない。特に、前記Pathak特許はインプラント(血管ステント)を変形させるために外部からの圧力付加(バルーンカテーテルによる)を必要とする。
【0004】
米国特許第5163960号明細書(Bonutti等)により、金属製インプラントに対して所要の接着あるいは結合を達成するために1つあるいは複数の樹脂成分をレーザ(あるいはその他の熱源)で加熱する、インプラントの製造方法が知られている。この既知の方法は、部分的に軟化した樹脂製インプラントを骨穿孔部内に圧入しそれによって軟化した樹脂が不規則に骨壁部内に浸入して噛合い固定の作用を成すようにする目的を有する外科手術には適用不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5290281号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/002569号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第0696185号B明細書
【特許文献4】米国特許第5163960号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点について改善を図るものである。従って本発明の目的は、電磁放射線エネルギーの照射に際して定義された個所のみを部分的に加熱および軟化させることができ、それによってインプラントを窩洞内、例えば骨窩洞内に圧入して窩洞の幾何形状に適合させるとともにインプラントの周囲の骨中の間隙内に圧入し、その結果ポリマーの冷却および硬化後にインプラントを形状噛合い式に固定することが可能な、医療用インプラントを提供することである。
【0007】
本発明に係る医療用インプラントは多様なインプラント形式で実施することができ、特にネジ、ピン、クリップ、プロング、プレート、釘、スパイクワイヤ、ケージ、茎スクリュー(釘)、穿孔具、皮膚接合材、薬剤キャリア、遺伝子剤キャリア、生物活性因子(例えば成長因子、骨成長促進物質、鎮痛剤等)のキャリア、別のインプラントの支持体、ダボ、クランプ、パール、歯科インプラント、歯根インプラント、チューブ、管、糸、チューブあるいは管内の糸、組織、ウェブ、メリヤス、ストッキング、バンド、粗織物、結糸繊維、繊維フロック、顆粒、チェーン、スレッディングアイレットを備えたあるいは備えないアンカとして実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って前記の課題は、請求項1前段に記載の特徴を有する医療用インプラント、請求項41前段に記載の特徴を有する骨あるいは骨片の固定装置、請求項42および/または46前段に記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの製造方法、請求項43ないし45のいずれかに記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの被覆方法、請求項47記載の特徴を有する骨接合方法、ならびに請求項52または53記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの適用によって解決される。
【0009】
本発明の重要な利点は、骨内への挿入中にインプラントをさらに加熱することができ、それにもかかわらずその内部の機械的安定性が維持されることである。
【0010】
本発明に係る医療用インプラントにおいては、電磁放射線によって発色団中、ポリマー自体の中、あるいは着色層中の励起可能な電子にエネルギーが伝達され、その結果その領域内でポリマーの加熱とそれによる軟化が生じ、一方インプラント中の励起不可能な領域には加熱も軟化も生じない。
【0011】
本明細書中でしばしば使用される概念は以下の定義に該当する:
【0012】
溶融/軟化/可塑化: 本発明においてインプラントの溶融、軟化あるいは可塑化としては、元々は(通常手によって)使用可能に可塑性に変形可能ではなかったインプラントが身体内で中程度(通常手による)圧力付加によって変形可能になり本発明の方式で使用可能になるまで放射線吸収によって発生する熱によってインプラントを軟化させることが理解される。
【0013】
光導体: 光導体としては第一に、光を誘導するとともに電磁放射線を放射源からインプラントまで伝導するために使用されるガラスファイバ、鏡面化された中空管(例えばナノチューブ)等の軟質あるいは硬質の光誘導構造体が理解される。他方、インプラント自体が光導体および光拡散体として機能することもできる。インプラント内に進入した後光は、ポリマーを軟化させるべき個所、大抵は表面部分に到達するまで誘導される。光導体を介して光をインプラント内の所要の個所に誘導するために、光導体がインプラント内で光を一方向に、例えばピンの先端に向かって誘導してそこで分散させ、それによって例えば拡散作用によってピンの表面に到達させることができる。
【0014】
光誘導/光透過性: 一般的にここではガラスと同様に電磁放射線を通過させる光透過性のインプラントを前提にしている。この光透過性は誘導される光に対して固有のものとし、その他の波長のものは反射あるいは吸収させることもできる。しかしながら本発明のいくつかの実施形態においては、均一な光分散を達成するためにインプラント内あるいはインプラント上のいくつかの帯域が光を拡散させることも好適である。この拡散作用はクリスタル、気泡、破断、各種の相境界、各種の異物あるいは色素、または各種のポリマーの混合によって達成することができる。特に燐酸カルシウム粒子等のセラミック材料が考えられる。
【0015】
光源: 光源としては、電球、ガス放電灯、ダイオード、半導体、スパーク、炎、太陽光等のあらゆる電磁放射線源が考えられる。特に、下記のタイプのレーザに該当するダイオードおよびレーザ光源が好適である。
【0016】
レーザタイプ:
レーザは通常狭く限定された周波数の電磁放射線のみを放射するためエネルギー源として好適である。従って(1つあるいは最大4つまでの)発色団とインプラントの非吸収成分と周囲身体の吸収スペクトルをそれぞれ判定することができる。好適な適用形態においては、インプラントと周囲身体によっては殆ど吸収されず発色団によって強く吸収される単色の周波数をレーザが発生させる。従って、インプラント内の異なった各帯域がそれぞれ異なった発色団を含み、それによってそれぞれ特定の周波数の電磁放射線によって個別に加熱されるようにすることもできる。
【0017】
ポリマー中の発色団/色素または光吸収性ポリマーによって極めて効果的に吸収される1つあるいは複数の周波数の放射線が極めて好適である。
【0018】
全ての一般的なレーザタイプ、発振モード、パルスあるいは連続波動作が含まれ、適用可能である。赤外線領域あるいは可視光線領域のダイオードレーザが好適である。場合によっては、例えばインプラント内あるいは放射源上における偏光フィルタの使用または最初から偏光して生成された電磁放射線の使用によって偏光された放射線を適用することも好適である。偏光は、特に偏光された光によって効果的に励起可能な発色団を適用することによって的を絞ってインプラントを加熱するために使用することができる。
【0019】
好適な電磁放射線の波長は好適には260ないし3000nmの範囲内の可視光線領域および1200nmまでの近赤外線領域に含まれる。しかしながらその他の波長も可能である。光線の形態は任意であり、断面が円形、楕円形、矩形、星形、三角形、および放射線束とすることができる。
【0020】
以下は使用可能なレーザの非限定的なリストである:
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
電磁放射線の吸収: 電磁放射線の吸収としては、吸収が行われる個所において吸収が行われない帯域と比べて一般的に(必須ではない)少なくとも2倍の入射したエネルギーをインプラントが吸収することが理解される。しかしながら通常は、インプラントが吸収を行わない場所と比べてエネルギー吸収領域において5ないし1000倍でエネルギーを吸収する。
【0028】
絶対値としてインプラントは非吸収帯域内において入射したエネルギーの0ないし10%を吸収し、発色団を有する帯域においては50ないし100%のエネルギーを吸収し、残りのエネルギーはインプラントから周囲に離散する。
【0029】
発色団: 発色団としては、ポリマー中で電磁放射線を吸収して熱に変換するためにポリマーに添加された着色物質あるいは色素が理解される。
【0030】
特定の適用形態においては、インプラントに添加するかあるいはそれを被覆するものであってかつ発色特性を有していない物質を使用することもできる。しかしながら体内への挿入に際して身体との接触により、特に細胞pHに対する反応、体内塩分、体湿度あるいは体温との反応として前記の物質が変化し、この反応のためその物質が発色して電磁放射線に対して吸収性となる。すなわち、身体と接触する帯域のみにおいてインプラントが着色されるためインプラント上のその帯域のみが加熱される。
【0031】
一般的に以下の発色団および色素は確実に含まれる:
クロロフィル、カーボンブラック、黒鉛、フルオレセイン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、エオシン、エオシンY(514nm)、エチルエオシン(532nm)、アクリジン、アクリジンオレンジ、銅フタロシアニン、クロム・コバルト・アルミニウム酸化物、鉄・アンモニウムクエン酸塩、ピロガロール、ロッグウッド抽出物、クロルフィリン−銅複合体、D&Cブルー9番、D&Cグリーン5番、[フタロシアニネート(2−)]銅、D&Cブルー2番、D&Cブルー6番、D&Cグリーン6番、D&Cバイオレット2番、D&Cイエロー10番。特殊なケースは蛍光発色団であり、これは場合によって光を吸収しないが光を放射し、その光が周囲のポリマーあるいは追加的に混合された発色団によって吸収される。
【0032】
光吸収性の非着色ポリマー: 光吸収性ポリマーとしては、発色団を添加しなくてもそれ自体特定の波長の光を吸収する特性を有するポリマーが理解される。特殊な適用形態においては、ポリマーがそれ自体発色してそれによってより多くの光を吸収し得るようになるまで予め加熱され、極端な場合ポリマーが部分的に炭化あるいはカラメル化しそれによって光吸収性となる。
【0033】
ポリマーの吸収係数: ポリマーの吸収係数は発色団のものと同様に可変であり指数に従って調節することができる。例えばインドシアニンは20000mg−1cm−1の吸収係数を有する。その結果生じる発色団の吸収係数は勿論インプラントの濃度に相関し、典型的な範囲は1000ないし1000000mol−1cm−1である。
【0034】
多孔性表面: 多孔性表面としては、身体表面あるいは血液等の体液との接触後に電磁放射線の照射によって加熱するために適した表面が理解される。このことは、身体との接触によってインプラントに不純物が付加され、その不純物付加の個所で光吸収性となることによって生じる。この特殊なインプラントの実施形態は、身体との接触の前には電磁放射線によって加熱される性質が全くあるいは極僅かしか示されない。前記の表面に極めて適しているものは、例えば燐酸カルシウム、その他のセラミック、石膏等の親水性かつ吸水性の高い材料によって最終的に被覆された、粗目、多孔質、凹凸性、スポンジ状の表面である。他方、体液をインプラントの内部に吸引あるいは流入(例えば毛細管圧による血液)させそこで光を吸収するようにする構造要素を付加することもできる。身体内への圧入あるいは所要の結合の形成に際してのインプラントの変形によって身体からの発色性構造体がインプラント表面と混合され、それによって局部的な加熱作用がさらに強化される。さらにここで特別なこととして、インプラントと接触してインプラントの多孔質の表面と相互作用する体液あるいは身体表面が電磁放射線を吸収するように適宜な波長を選択したことにより、その波長においてインプラントの直近の周囲の身体が同時に加熱されるという効果が達成された。しかしながら、適宜なパルス幅および波長(あるいは波長の組合せ)によって極直近(1mm未満)の周囲のみが加熱され従って特に顕著な細胞破壊を生じさせないことが可能になる。加熱は100℃を超過しない、より好適には56℃を超過しないようにされ、この加熱により軟化した熱可塑性樹脂が良好に身体表面の間隙内に流入することが可能になる。この作用は、使用される電磁放射線の周波数、パルス形式、パルス周波数、パルス幅、ならびにエネルギー量を適宜に選択すれば前述したおよび後述する他の実施形態においても達成可能である。多孔性表面、例えば燐酸カルシウム被覆は、本発明に従って追加的な層あるいは混合体として発色団と組み合わされる。
【0035】
反射性に被覆されたポリマー: 反射性の被覆としては、電磁放射線の放出が阻止され従ってポリマー中に光が滞留して極僅かの吸収(場合によって発色団無しでも)でもポリマーを加熱し得るようなポリマーの被覆が理解される。反射性の被覆は例えば発色団の効果を強化するためそれとの組合せにおいて使用することも可能である。別の実施形態においては、インプラントからの早期の光の放出を阻止して光を例えばインプラントの先端に誘導するためにインプラントを鏡面加工することができる。すなわち鏡面加工はインプラント内部の光誘導を補助するように作用する。
【0036】
反射性の(ポリマー内部に埋め込むことも可能である)被覆としては全ての光反射性の物質が考えられ、特に金属、ここでもとりわけ金、チタン、プラチナ、銀、鋼鉄、およびそれらの合金等の生体適合性の金属が挙げられる。
【0037】
周波数変調: 局部的なインプラントの加熱を達成するために、特に周波数倍増クリスタルあるいは周波数複数倍増クリスタル等のそれ自体は顕著に電磁放射線を吸収しないが光の周波数をシフトさせる性質を有する物質あるいは光学要素をインプラント中に設けることも可能である。その際長波の光がインプラントを加熱することなく前記周波数を変調(通常は倍増)する性質を有する帯域まで到達してそこを加熱するとともに、より短い波長のものが一定割合でそこから退出してインプラントの残りの部位によって著しく大きく吸収される。この作用は複数回繰り返すこともできる。そのための典型的な材料は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)、二水素燐酸カリウムKDP、ベータ硼酸バリウム(β−BaB2O4あるいはBBO)、リチウムトリボレートあるいはDAST(ジメチルアミノ硫黄トリフルオリド)である。また、同様な効果を有する相境界あるいは境界層をインプラント中あるいはインプラント上に統合することもできる。
【0038】
エネルギー: インプラントを充分に加熱するために使用するエネルギーは、インプラントの大きさ、適用形態、ならびに局部的な解剖学的要件に依存する。典型的な光源の平均出力は:小型のピンあるいは固定要素(直径0.1ないし5mm)に対して約0.1ないし50W、特に0.5ないし10Wとなる。大型の補綴材の固定あるいは大型の骨損傷の充填に対しては1ないし2000Wとなる。付加される個々のパルスのピーク出力は5kWあるいはそれ以上になり得る。達成すべき目標は、軟化すべき体積Vを有するポリマーをP=0.005ないし5W/mm3の交流電流で約0.1ないし10秒の間に軟化させることである。
【0039】
そのようにして付加されるエネルギーEは:
E=約0.0005ないし50W・秒/mm3に相当する。
【0040】
光導体は、反対側の着色された層までインプラントを貫通するインプラント内の穿孔部に挿入することもできる。例えば着色された層のみを溶融させる必要がある場合、インプラント内の穿孔部を介して挿入された光導体の先端が前記着色された層に接合するようにされ、その着色された層が0.1ないし0.5mmの層厚を有することができる。
【0041】
本発明に係る医療用インプラントは多様な課題の解決を可能にするものであり、そのいくつかを以下に詳細に記述する。
【0042】
課題A:移植の最中の電磁放射線による医療用インプラントの選択的あるいは全体的な加熱および軟化あるいは液化
ピンのコアはそれが加熱されないかあるいは極部分的にしか加熱されず硬質に維持されるように設計される。同時にこのコアが光学要素として機能し、光をインプラント内でさらに誘導する。ここでピンが予め穿設された穴内に押し込まれ、その穴は例えば過小寸法を有することができ加熱され軟化したポリマーが骨の間隙内に圧入される。光源の遮断後ポリマー(熱可塑性樹脂)が冷却されて急速(1〜2分以内)に硬化し機械的結合が形成される。
【0043】
課題B:インプラントを移植中に変形するための熱可塑性樹脂を含んだインプラントの選択的あるいは全体的な加熱
ここで例えばピンにその輪郭に沿って着色物質、固有色、あるいは着色層を含んだ帯域を設け、ここでも電磁放射線を照射する。前記の着色物質、固有色、あるいは着色層を含んだ帯域上でピンが加熱される。その部分でピンが所要の形態に変形可能となる。
【0044】
課題C:ポリマー製インプラントの身体内への局部的な固定の形成
例えば射出成形等の適宜な製法によって内部応力を備えるようにピンを形成する。ピン全体を加熱することによって熱可塑性樹脂が柔軟化してピンが短くなるとともに直径が増大し、それによって周囲の組織内あるいは組織上での固定が達成される。
【0045】
課題D:複数のインプラントを相互に溶着させることによるそれらのインプラント間の局部的な結合の形成
これは別々に身体内に挿入することができる2つの熱可塑性インプラント部材の結合に際して実施される。その際に結合される両方(あるいは複数)のインプラント部材(典型的なものは顆粒である)に所要の電磁放射線が進入し得ることが保証されなければならない。両方(あるいは複数)のインプラント部材を挿入した後インプラント部材を接触個所で軟化させるための光線を照射し、圧力の付加によって結合することができる。そのようにして例えば結び目を形成しないようして糸を接着することができる。
【0046】
課題E:軟質組織あるいは骨の締め付けあるいは被覆
例えばインプラント材料から胃壁を(開口リングとして)形成し、光照射によって変形可能にして閉鎖式のリングに結合することができる。同様にポリマーバンドをセルクラージュ材料として使用することもできる。
【0047】
課題F:身体内への挿入後にインプラント材料の切開によって変形可能なインプラントの製造
ここで使用される上述のインプラント材料は光線によって選択的に切断あるいは切開することができるインプラントを製造するために使用することもでき、従って特に強力な電磁放射線あるいは比較的小さく“鋭い”光源からの光を使用して例えば糸を切断することもできる。変形したあるいは溶融したピンは例えば骨表面上で切断するかあるいは骨の表面に対して平坦になるまで変形させることができる。そのようにして薬剤キャリアを開放して作用成分を放出させることができる。
【0048】
課題G:インプラント内の光の誘導
インプラント内で所要の軟化が実施されるべき帯域、すなわち光反応性の帯域が存在する個所まで光を誘導する必要がある。従って全体的には比較的均一に着色されたインプラント内において最も濃度が高い場所で最初にインプラントが加熱されるためそこでの選択的な軟化を実施することができる。
【0049】
課題H:温度調節
電磁放射線はインプラントを過剰に加熱すべきではなく、また所要の帯域内において均一に熱変換を実施する必要がある。温度は500℃、好適には250℃を超えるべきでなく、理想的には100℃未満とすべきである。温度の調節は、臨界温度を超えると変色あるいは脱色してその後は入射したエネルギーを殆どあるいは全く吸収しない発色団(いわゆる“熱色性発色団”)によって実施することができる。他方、パルス方式のエネルギー付加によって均一な温度分配を達成することができ、パルスの休止相の間に熱伝導によってエネルギーがインプラント中で分配される時間が得られる。別の可能性は、局部的な温度を測定し出力をそれに適応させることである。その測定は温度センサ、カメラあるいは光導体を使用した赤外線測定、ラザーフォード後方分散によって実施することができる。特殊なケースにおいては光導体とインプラント自体を熱線の測定のために使用することができ、すなわち電磁放射線の供給の逆であり、そのためには鋼鉄製の半透過式の鏡等の適宜な光学要素を使用するかあるいはその他の既知の方式が考えられる。局部的な超加熱は空気、液体、あるいは断熱帯(例えば空気を充填した気泡またはセラミック粒子を断熱体として有する帯域等)による局部的あるいは全体的な冷却によって達成することもできる。そのためには必要に応じて適宜な冷却路がインプラント内に存在する必要がある。
【0050】
好適な一実施形態において、着色層あるいは反射層が少なくとも0.01μm、特に少なくとも2.5μmの層厚を有する。
【0051】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層が最大で2.0mm、特に最大で0.6mmの層厚を有する。
【0052】
インプラント上に均一な層を形成するために塗付しなければならない典型的な層厚は3ないし10μmの範囲となる。着色された層のみを溶融させる必要がある場合、骨内に挿入するためには0.1ないし0.5mmの層厚が好適である。
【0053】
さらに別の実施形態においては、インプラントが少なくとも部分的に1.6kJ/kmol・K、特に2.2kJ/kmol・Kの最小モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成される。
【0054】
別の実施形態においては、インプラントが少なくとも部分的に2.9kJ/kmol・K、特に2.5kJ/kmol・Kの最大モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成される。典型的なcpの範囲は1.9ないし2.7kJ/kmol・Kである。
【0055】
別の実施形態においては、250℃未満の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択される。
【0056】
さらに別の実施形態においては、150℃未満、特に100℃未満の加熱温度で軟化が生じる。
【0057】
別の実施形態においては、インプラントを加熱するためのものとしてポリマー自体以外のインプラント構成成分が含まれない。
【0058】
別の実施形態においては、少なくとも1本の透光性の糸を使用して光導体を固定するための手段を医療用インプラントが含む。
【0059】
別の実施形態においては、前記手段がポリマーの表面上の窪みあるいは隆起から形成される。
【0060】
別の実施形態においては、色物質を含んだ体液との接触に際して色物質を吸収することができる被覆が石膏あるいは燐酸カルシウムを含む。
【0061】
さらに別の実施形態においては、着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1超となる。
【0062】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000000mol−1cm−1超となる。
【0063】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層の吸収係数aがポリマーの加熱によって低下する。
【0064】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が少なくとも2のファクター、特に10のファクターで低下する。
【0065】
さらに別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において低下する。
【0066】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において少なくとも半分に低下する。
【0067】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数aが加熱されたポリマーの状態において少なくとも1.5のファクター、特に5.0のファクターで上昇する。
【0068】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に等方性とされる。
【0069】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に異方性とされる。
【0070】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが熱可塑性材料とされる。
【0071】
さらに別の実施形態においては、熱可塑性材料が:ポリαヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリフォスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、炭酸トリメチレン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシブチレート、ならびにそれらの共重合体および混合物の一群から選択される。
【0072】
医療用インプラントは着色物質を含んだあるいはそれ自体有色のポリマーの他に特に以下の一群の中から選択される別の材料からなるインプラント部材をさらに含むことができる:金属、炭素、セラミック、PEEK、好適にはポリメチルメタクリレートの基から選択される非熱可塑性のポリマー、および/または燐酸カルシウム、硫酸カルシウムあるいは骨セメント等の無機材料。
【0073】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが艶消しあるいは光散乱性の開孔質構造を有する。
【0074】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが毛細路を有する。
【0075】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが親水性の特性を有する。
【0076】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーがインプラント被覆の形態で存在する。
【0077】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーによってインプラントの表面の一部のみが被覆される。
【0078】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーがそれぞれ異なった吸収係数aを有する複数帯域を特に表面被覆の形態で含む。
【0079】
別の実施形態においては、被覆層が変動的な層厚を有する。
【0080】
別の実施形態においては、材料のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1未満、特に100mol−1cm−1未満の低い吸収係数“a”となる。
【0081】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが少なくとも2種類の異なった生体適合性かつ熱可塑性の材料からなる混合物を含む。
【0082】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが固形の形態を有する。
【0083】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが顆粒形態で存在する。
【0084】
別の実施形態においては、医療用インプラントが繊維から形成され、その際加熱および軟化させるポリマーが好適には繊維の被覆として機能する。
【0085】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが開孔質の発泡体あるいは海綿体の形態で存在する。
【0086】
別の実施形態においては、医療用インプラントが特に骨ネジ、骨杆体、骨ダボ、ピン、プレート、ダボ、ホース(管)、糸、ホース/管状の糸、あるいは(スレッディングアイレットを備えた)アンカの形態の骨固定要素として形成される。
【0087】
別の実施形態においては、医療用インプラントが歯科インプラントあるいは歯根インプラントとして形成される。
【0088】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが少なくとも部分的に軟化した状態で存在する。
【0089】
別の実施形態においては、軟化した状態がポリマーを透過する電磁放射線、特に400ないし1300nmの波長の光あるいはレーザ光線によって生成される。
【0090】
別の実施形態においては、ポリマーが均一な透光性を備えておらず、その透光性が好適にはインプラントの表面上においてインプラントの内部よりも低くなる。その結果、インプラントの内部への優先的な光照射によってインプラント自体が機械的な支持体およびスタビライザであると同時に他方で光導体として使用され得るという利点が達成される。
【0091】
本発明に係る医療用インプラントを製造および/または被覆するための方法の異なったいくつかの実施形態において、下記の異なった方式のうちのいずれかを使用してポリマー内に着色物質あるいは粒子を埋入させる:
【0092】
(1) 着色物質あるいは粒子を溶融物内に混入し混錬および剪断処理によってポリマー内に均等に分散させる配合(コンパウンディング)が効果的であると知られている。その種の配合物を使用して本発明に係る医療用インプラントあるいはインプラント部材を射出成形によって直接製造することができる。
【0093】
適用形態によって着色物質を含んだポリマー層あるいはインプラント部材の存在が必要とされる場合、それをいわゆる2成分射出成形プロセスによって製造することができる。その際最初の工程においてインプラントの非着色部位を射出し、成形(金)型内のキャビティの変更後第2の工程において着色物質を含んだ部位を射出する。
【0094】
(2) 着色物質を含んだポリマーの層が着色物質およびポリマーを含んだ溶液の塗布および乾燥によって形成される。その際着色物質を含んだポリマーの層は、キャンドルドローイング処理(浸漬塗付処理)の原理あるいは噴霧によって着色物質およびポリマーを含んだ溶液を沈着および乾燥させて形成することができる。前記の沈着処理によって極めて薄い層(μm領域)から厚い(サブメートルおよびミリメートル領域)層までが形成可能である。
【0095】
(3) 少なくとも1つの着色層が着色物質粒子を含んだ懸濁液あるいは溶液の塗布および乾燥によって形成される。
【0096】
(4) 被覆が以下の工程によって実施される:
(a) 着色物質を含んだ粒子を加熱する;
(b) 加熱された粒子を医療用インプラントの着色されていない部位の表面上に噴射し、それによって前記粒子が医療用インプラントの着色されていない部位のポリマーを溶融してその結果表面上に固定される。
【0097】
粒子を加熱した状態でポリマー表面上に噴射しそこで局部的にポリマーを溶融させてその表面上に固定することによりセラミックあるいはその他の非熱可塑性粒子を表面に塗付することができる。その一例がプラズマ噴射プロセスであり、それによって例えば股関節補綴物を燐酸カルシウム粒子で被覆することができる。化学蒸着法(CVD)あるいは物理蒸着法(PVD)等のプロセスも適宜な基材に対して使用可能である。
【0098】
上述した方法は反射層を塗付するためにも使用可能である。その場合反射性の材料をポリマー内に付加し、溶液あるいは懸濁液の沈着、直接的な塗布、または溶着によって表面上に付着させる。
【0099】
本発明に係る医療用インプラントの製造方法の別の実施形態においては、40℃超の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択される。
【0100】
骨接合方法の好適な実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法となる。
【0101】
骨接合方法の別の実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法を有していないが内部予圧を有する。
【0102】
骨接合方法の別の実施形態においては、加熱されるポリマーが棒体の形状でインプラントの中空部内あるいは中空器具内に挿入される。
【0103】
骨接合方法のさらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが放射方向の流出穴を有する中空部を備えたインプラント内に挿入される。
【0104】
以下に本発明に係る医療用インプラントの適用に際しての処理ステップについて詳細に記述する:
a) 骨の準備、例えばボアホールの形成;
b) 前記ボアホールに対して超過寸法を有する固定要素の前記ボアホール内への挿入;
c) 光の照射によるインプラントの(熱可塑性の)ポリマーの加熱;
d) 複雑な内部空間さらにその分枝を充満させながらの部分的に液化したインプラント/ピンの空洞内への挿入/圧入;
e) 例えば能動的冷却による支援が可能なインプラントの冷却。
【0105】
例1(プレート骨接合)
1mmの厚みを有するポリ−D,L−ラクチドから形成された吸収性の骨接合プレートを固定すべき骨片上に取り付け必要な穴を骨内に穿設した。この例は2.0mmのネジに対応する穴を有するプレートに関するものである。1.7mmの穴を骨内に穿設した。その後2.0nmの直径を有する部分的に光誘導性のピンをプレートのネジ穴を介して予め穿設された穴内に取り付け光を照射した(出力3ワット,波長808nm)。光のエネルギーが光誘導性のピンを介して流れ、カーボンブラックによって着色された帯域においてピンを加熱した。そこでピンへの緩やかな圧力によって骨中に予め穿設された穴内にピンを圧入することができ、熱可塑性材料が近傍の海綿状の骨の骨梁間隙内に流入した。光源の遮断後ポリマーが再び冷却され1分未満の間に硬化した。それによっていくらかオーバーサイズの(すなわちプレート穴より幅が大きい)ヘッドを有するピンがプレートを所要の場所に固定した。
【0106】
例2(プレート骨接合)
例1に対する変更例において上記のピンと同等なポリマーから製造された骨プレートを使用した。ピンは上記の例と同様に装着した。プレートも穴の領域において光誘導性でありその部分においてプレートとヘッドの溶融が可能になるため、ピンのヘッドがプレートと接触すると同時にプレートとピンの間の溶着が発生した。冷却後ピンとプレートが互いに固定的に結合し、その結合が角度固定式になった。
【0107】
例3(骨アンカ)
ここで解決すべき課題は、糸によって例えば腱またはその他の骨断片を保持するための骨内の糸の固定であった。そのため3mmないし15mmの直径を有する穴を骨内に深く穿設した。骨の穴内に高い融点を有する糸を挿入した。その後その穴の上にその穴よりもいくらか太いアンカを装着した。
【0108】
例1と同様にダイオード光源によってアンカにエネルギーを照射し、放射線エネルギーによって軟化した後骨内に圧入した。光源の遮断後ポリマーが硬化し、アンカが骨内で糸と共に保持された。
【0109】
例4(骨アンカ)
例3の変更例において横断孔を介して糸をアンカ内に挿入し、その後アンカを骨内に挿入してそこでグラスファイバ光源(ランプあるいはレーザ光源から光を供給)を使用して固定した。その後破断した腱を糸によって固定した。ここで糸は牽引力によって保持した。同時に実施した光源の点入によってアンカが部分的に溶融し、小さな圧力で糸と接着されそれによって骨内での固定力が得られた。約30秒以内の冷却後糸の牽引力を解除することができた。通常は必要である結び目を省略できた。
【0110】
例5(補綴物の移植)
チタン製の歯科インプラントにおいて遠心側の1/3を半光誘導性のポリマーによって被覆した。インプラント自体は光誘導性となるように製造した(管を備えていて、それの歯根の先端と逆方の側部がポリマーに向いている)。そこに光源を接続した。インプラントをアンダーサイズに予穿設された穴内に設置して光源を点入した。ポリマーが光によって加熱され、インプラントを圧力によって歯根管内に挿入することができた。光の遮断後の骨内におけるポリマーの硬化によって負荷耐久性を有する骨とインプラントの間の一次結合が達成された。ポリラクチド−コグリコリドからなる被覆は数日内に分解されその後チタンインプラント上の骨の成長が可能になる。
【0111】
例6(血管クリップ)
クリップは止血のために血管を締めつけるよう機能した。これは主に2本のアームと1個のヒンジとから形成した。アームは1個のクランプによって把持され血管がその間に保持された。アームに光を照射しながら圧接した。アームとヒンジの接触個所においてインプラントを光吸収性にし、その他の領域は光誘導性にした。クランプを介して光が接触個所ならびにヒンジに誘導された。その結果光によってヒンジが軟化しクリップの湾曲が可能になった。ヒンジと逆側の各アームの末端が互いに当接した際に両方のアームの接着が達成された。
【0112】
例7(鏡面化)
平滑な表面を有する長さ7mmおよび直径2.5mmのポリ−D,L−ラクチド製のピンの頭部を光源に接続し、予め穿設された穴内に挿入した。光をピンの頭部に誘導しピン先端部に指向させた。ピン先端部(ピンの頭部と逆側)の領域内においてインプラントに金を蒸着および被覆した(この実施形態において層厚は0.1mm未満)。電磁放射線が鏡面化されたピンの表面で内側に向かって反射された。このピン材料は放射線を殆ど吸収しないものの、僅かの吸収(30%未満)が繰り返す反射される放射線を吸収してピンを局部的に加熱するために充分であった。それによってピンが溶融し骨(すなわち穿孔部)内に圧入することができた。溶融したポリマーが骨梁間隙内に浸入しそこで光の遮断および冷却後に強固な固定力を生成した。
【0113】
外からのインプラントへの光照射によってポリマーの軟化を達成することはできず、鏡面化されていない帯域を介してのポリマー内部への照射によってのみ前記の軟化効果が達成可能であるため、鏡面化によって強化されたポリマー内における吸収によって光エネルギーが生成され、鏡面層自体によっては生成されないことを実験室において証明することができた。しかしながら、部分鏡面化および部分放射線吸収を適用する実施形態も可能である。
【0114】
鏡面化の重要な利点はさらに、ポリマーの表面が溶融して変形すると同時に反射が終息しその結果それ以上の加熱が抑制されることである。従って局部的な過熱を防止することができる。
【0115】
例8(椎骨形成術)
腰椎の骨粗鬆症性圧迫骨折において、茎(局部麻酔された)を介して背側から4mmの直径を有する穴を椎体内に穿設した(長さ約4cm)。その穴を介して背側から未だ光照射せずに、カーボンブラックを添加しそれによって85%の光吸収率を表面上に有している、部分着色されたポリ−D−L−ラクチドのピン(直径3.9mm)を挿入した。ここで光源を点入してピンを椎体内に挿入した。ピンをさらに押し込むことによって、椎体へのポリ−D−L−ラクチドの充填を達成することができた。2分間の冷却後椎体が負荷耐久性を有した。
【0116】
例9(損傷充填)
例8で記述したものと同様なピンを骨の損傷の充填、ここでは脛骨頭損傷の充填のために使用した。そのため脛骨頭骨折を被った患者において直径4mmの穴を腹側から皮膚を介して患部に向かって穿設した(長さ2cm)。光照射しながらこの穴を介して骨の髄腔および海綿空間内にピンを挿入し、それによって複合骨接合術と同様な安定的な骨が形成された。その後その場所に挿入されたネジが溶融されたポリマー内で効果的に固定された。骨接合材料あるいは補綴物の存在下においてポリマーを追加的に溶融して流入させることによって同様な安定性が達成されることが判明した。
【0117】
例10(複合骨接合)
骨粗鬆症による大腿骨頸骨折の状況において、下記のように改良されたダイナミックヒップスクリューを大腿骨頸に移植した:内部に3mmの直径を有する追加的な縦孔を備えネジ山が存在している先端部上に1mmの直径を有する10個の放射穴が設けられ、それによって中央孔と骨との間の交流が可能にされた。この中央孔内に例9と同様に加工された2.9mmの直径を有するピンを挿入し、後方から光を照射した。光の作用によってピンがネジの内部で溶融して液化したポリマーが穴に沿って外の骨内に浸透し、それによってインプラントを保持している骨の補強が達成された。ポリマーの硬化後(2分)ネジは負荷耐久性となった。
【0118】
例11(メモリ効果)
射出成形によって半光吸収性の骨アンカに内部予圧をもたせて製造する(非晶質PLA)。この冷却された状態においてアンカは直線状である(長さ10mm、直径3mm)。アイレットによってアンカの上部1/3に通された糸により、予め穿設された外踝の穴内に緩やかな圧力でアンカが押し込まれる。照射された光による熱作用のためアンカの柔軟化がもたらされ湾曲する。それによってアンカが骨穴内に嵌合し機械的支持力が発生する。アンカ上の糸は30秒後に負荷をかけられるようになり、靭帯再形成のために使用することができる。
【0119】
例12(釘鎖錠)
骨接合のために大腿髄内釘を大腿骨内に挿入する。しかしながら患者は86歳で鎖錠を行うには遠心側において骨が脆弱過ぎるため、外科医は4mmの穴を側方から皮膚を介して釘に向かって穿設した。3.5mmのピンが穴を介して釘まで押し込まれた。ここでピンに光を照射して髄管内に押し込み、その結果釘上でピンが継続的に溶融して流れ出して中空の髄管内に充満し、それによって釘が埋め込まれた。インプラント材料が良好に髄腔内に分配されるように比較的高い出力(70ワット)を選択し、また過度に急速に冷却して硬化しないように高い熱容量を有するポリマーを選択した。光の遮断後釘が確実に大腿骨の中心に固定された。
【0120】
次に、本発明ならびにその追加構成について添付の一部概略化した図面ならびに複数の実施例を参照しながら以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る医療用インプラントの一実施形態を示した縦断面図である。
【図2a】歯科インプラントとして形成された本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態の溶融工程前の状態を示した横断面図である。
【図2b】図2aの実施形態の移植実施後の状態を示した横断面図である。
【図3a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図3b】図3aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図4a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図4b】図4aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図5a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図5b】図5aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図6a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図6b】図6aの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図7a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図7b】図7aの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図9a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図9b】図9aの実施形態の移植実施中の状態を示した断面図である。
【図9c】図9aおよび図9bの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図10】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した断面図である。
【図11】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図12】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した断面図である。
【図13a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図13b】図13aの実施形態の移植実施中の状態を示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0122】
図1に示された実施形態において、医療用インプラントがピン2を含み椎骨形成の適用形態で使用される(例8)。予め穿設された穴10を介して治療される椎体12の茎内にポリ−L−co−D,L−ラクチドからなるピン2が未だ光を照射せずに背側から挿入される。
【0123】
ピン2を挿入した後光源が点入され、ピン2は接続された光導体15と共に椎体12内に押し込まれる。ピン2をさらに押し込むことによって椎体12内のポリ−L−co−D,L−ラクチドからなる充填物3を形成することができる。2分間の冷却後椎体が負荷耐久性を有するとともに痛みが消える。
【0124】
図2aおよび図2bに示された実施形態はチタン製の歯科インプラント30を含んでおり、それが非晶質のポリ−D,L−ラクチドからなる層34によって被包されている。遠心側の末端32と反対側の被覆された末端33に光線25が照射される。歯科インプラント30をアンダーサイズに予穿設された穴10内に設置して光源を点入した(図2a)。層34内内の光吸収が生じると同時にこの層34が軟化し、歯科インプラント30を圧力によって穴10に深く押し込むことができる。歯科インプラント30を穴10内に押し込む際に層34を形成する熱可塑性樹脂が骨31の間隙内に圧入され、それによって歯科インプラント30と骨31の間の機械的結合が達成される。ポリマー、すなわち骨31中の層34の硬化によって骨31と歯科インプラント30の間の負荷耐久性の一次結合が達成される(図2b)。
【0125】
図3aおよび図3bには別の実施形態が示されており、それにおいてはピン2が例えば射出成形等の適宜な製造方法によって内部応力を備え、冷却された状態において長さLと直径Dを有するものとなる(図3a)。端部AまたはBのいずれかに放射線を照射してピン2全体を加熱することによって熱可塑性樹脂が柔軟化してピン2が短くなるとともに直径が増大し(図3b)、それによって周囲の組織内あるいは組織上における固定が達成される。
【0126】
図4aおよび図4bに示されている実施形態においては医療用インプラントがクリップ60として形成されている。クリップ60はU字型に形成されて2本のアーム61,62を含み、それらの自由端63がいずれもポリ−L−co−D,L−ラクチドから形成された要素64を有する。このアーム61,62に比べて太く形成されたエレメント64に光導体15′,15″を使用して放射線エネルギーが付加される(図4a)。光源の点入後にクリップ60を押し合わせ、すなわち両方の要素64を互いに圧接させる。光吸収によって両方の要素64が加熱されてそれらが互いに当接している接触個所上で軟化し、従って圧力の負荷によって接合させて溶着によって互いに結合させることができる(図4b)。
【0127】
図5aおよび図5bに示されているクリップ70は、クリップ70がポリ−L−co−D,L−ラクチドから一部材として製造される点のみにおいて図4aおよび図4bに示された実施例と異なっている。アーム70,71をクランプ74によって把持して、それぞれ光導体15′,15″を介して光を照射して圧接する。放射線エネルギーによってアーム71,72を結合しているヒンジ73が軟化し、クリップ70の曲折が可能になる。ヒンジ73と逆側のアーム71,72の末端が互いに当接すると、アーム71,72自体に比べて太くなっている末端部上において両方のアーム71,72の所要の結合が溶融によって達成される。
【0128】
図6aおよび図6bに示されている実施形態において、医療用インプラントが高い融点を有する材料からなる糸80とポリマーからなるアンカ83を含む。糸80は例えば腱またはその他の骨断片を保持するために骨81上に固定される。そのため直径3mmの穴82を15mmの深さで骨81内に穿設する。この骨81の穴82内に糸80を挿入する。その後前記穴82上にこの穴82よりもいくらか大きな直径を有するアンカ83を取り付ける。例1と同様に光によってこのアンカ83に放射線エネルギーを付加し、光によって軟化させた後骨81内に押し込む。光源の遮断後ポリマーが硬化しアンカ83は糸80と共に骨81内に固定される。
【0129】
図7aおよび図7bには骨94の損傷の充填に適した医療用インプラントの実施形態が示されている。図1の実施形態と同様にピン2を使用し、そのピン2が光導体15を収容するためのものであって前記ピン2の先端上で閉鎖されている中央空洞91を備えている。光導体15はピン2の溶融後に再び除去されるようにするかあるいは吸収性の材料から形成することができる。例えば脛骨損傷を充填するため、脛骨頭骨折を被った患者において直径4mmの穴95を腹側から皮膚を介して患部に向かって穿設する(長さ2cm)。この穴95を介してピン2を光導体15と共に光を照射しながら骨の髄腔および海綿空間内に挿入し、それによって複合骨接合術と同様にピン2を溶融して充填物93を形成することによって安定的な骨が形成される。その後充填物93内に収容されたネジ(図示されていない)が一旦溶融されその後硬化したポリマー内で効果的に固定される。
【0130】
図8には医療用インプラントのポリマーがパール102として形成される実施形態が示されている。このパール102は、骨103から骨片101が割れ落ちることによって生じる空洞内に挿入することができる。空洞内への骨片101の嵌合とパール102の溶融による骨片101と骨103の結合ならびに骨片101と骨103中の間隙内へのポリマーの圧入はパール102への放射線照射によって実施され、その結果パール102を加熱および軟化させることができる。
【0131】
図9aないし図9cに示された実施形態は、骨プレート110を骨111上に固定するために適しているポリ−D,L−ラクチドから形成されたピン2を含んでいる。骨プレート110は、同じ材料から形成され1mmの厚みを有する吸収性の骨接合プレートである。骨片を固定するために骨プレート110を固定すべき骨片上に取り付け、それを骨111上に固定するために必要な穴112を骨111内に穿設する。この実施例は2.0mmのネジ用のネジ穴113を備えた骨プレート110に係る。骨111内に穿設された穴112は1.5mmの直径を有する。ピン2は2.0mmの直径を有していてその後部の直径が拡大されたヘッド115上で器具116上に取り付けられる(図9a)。
【0132】
光導体は器具116内の空洞(図示されていない)内に同軸に挿入することができる。
【0133】
ピン2は骨111内に挿入すべき先端部114が骨プレート110のネジ穴113に挿通され、骨111内に予め穿設された穴112上に設置されて光照射される。ピン2を介した光エネルギーの付加によってそのピンが加熱される。器具116に圧力をかけることによってピン2が骨111内に予め穿設された穴112内に押し込まれ、熱可塑性材料が近接する海綿状の骨の骨梁間隙内に流入する(図9b)。光源の遮断後ポリマーが再び冷却され硬化する。骨プレート110のネジ穴113に比べて大きな直径を有するピン2のヘッド115が骨プレート110内に保持される(図9c)。
【0134】
図10および図11には、例えば金属材料からなるコア121,131とポリ−D,L−ラクチドからなる被覆層122,132を有するピン2がそれぞれ示されている。図10の被覆層122はブシュ形状に形成されるとともにピン2のシリンダ状部分123と後端部125にわたって延在している。ピン2の先端部124は被覆層を備えずに形成されている。図11の被覆層132はピン2の前方部分133上に部分的に設けられ、先細となっているピン2の前方部分133をその先端部134および後端部を含めて被包している。図10および図11に従って形成されたピン2によれば、変形を達成するために熱可塑性樹脂を選択的に加熱することが可能になる。
【0135】
図12には、図7aおよび図7bに関して記述した骨94の損傷の充填における図10のピン2の適用形態が示されている。
【0136】
図13aおよび図13bには、医療用インプラントがダイナミックヒップスクリュー150とポリマー製のピン2を備えてなる実施形態が示されている。ダイナミックヒップスクリュー150は、股関節頭まで到達する先端上に(ネジ切りされた)骨ネジ穴152を有する中空のシャフト151を備える。骨ネジ穴152の領域内に放射状の穿孔部153が設けられ、それによってシャフト151の中央空洞部154と周囲部が放射方向に連通している。空洞部154は穿孔部153の領域を除いて絶縁層155を有している。このダイナミックヒップスクリュー150は骨粗鬆症による大腿骨頸骨折の状況において大腿骨頸を貫通させて移植する。中央空洞部154内に例9と同様に絶縁化された2.9mmの直径を有するピン2が挿入され、そのダイナミックヒップスクリュー150の骨ネジ穴152と逆側の後端に光導体15を使用して光が照射される。光吸収によってピン2がヒップスクリュー150の内部で溶融して液化したポリマーが穿孔部153を介して外の骨156内に浸透し、それによってインプラントを保持した骨156の補強が達成される。ポリマーの硬化後ヒップスクリュー150が負荷耐久性となる(図13b)。
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の医療用インプラント、請求項41前段に記載の骨あるいは骨片の固定装置、請求項42および/または46前段に記載の本発明に係る医療用インプラントの製造方法、請求項43ないし45のいずれかに記載の本発明に係る医療用インプラントの被覆方法、請求項47記載の骨接合方法、ならびに請求項52または53記載の本発明に係る医療用インプラントの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
人骨あるいは動物の骨への固定の目的のための骨接合方法および類似の方法のために生体適合性かつ熱可塑性の材料を使用することは既知の技術であり、例えば熱接着ピストル(例えば米国特許第5290281号明細書)と同様な外部熱付加あるいはウッドウェルディング社の国際公開第2006/002569号パンフレットに従った超音波エネルギーを使用するポリマーの液化等の多様な方式が実施されている。勿論これらの技術は問題点も伴っている:外部の熱源(熱接着ピストル)による加熱によって、骨との結合が進行する間にインプラントを再度冷却しないようにするためにインプラントを極めて迅速に挿入する必要があり、その理由はインプラントが極低い熱容量を有していてまたその熱可塑性材料が軟化した状態のみにおいて例えば骨の間隙に進入し得るためである。材料が冷却されると同時に骨との結合はそれ以上進行しなくなる。また早急な硬化を防止するために必要な熱可塑性材料の過大な加熱も材料ならびに(骨)組織の両方を損傷し得るため問題である。
【0003】
欧州特許第0696185号B明細書(Pathak)により、レーザ光線を照射し吸収された電磁放射線によって表面を含めたインプラント全体を軟化させることができる、発色団を含んだ医療用インプラントが知られている。上記の(血管ステントとしての)医療用インプラントはカテーテルを使用して人体内に挿入される。その際の問題点は、インプラント全体が軟化しそれによる構造脆弱化によって例えば圧力を付加してのインプラントの挿入が不可能になることである。また、このインプラントは前述の形態ならびに全体が軟化する特性のため本発明のような骨接合方法を達成するためには適していない。特に、前記Pathak特許はインプラント(血管ステント)を変形させるために外部からの圧力付加(バルーンカテーテルによる)を必要とする。
【0004】
米国特許第5163960号明細書(Bonutti等)により、金属製インプラントに対して所要の接着あるいは結合を達成するために1つあるいは複数の樹脂成分をレーザ(あるいはその他の熱源)で加熱する、インプラントの製造方法が知られている。この既知の方法は、部分的に軟化した樹脂製インプラントを骨穿孔部内に圧入しそれによって軟化した樹脂が不規則に骨壁部内に浸入して噛合い固定の作用を成すようにする目的を有する外科手術には適用不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5290281号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/002569号パンフレット
【特許文献3】欧州特許第0696185号B明細書
【特許文献4】米国特許第5163960号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の点について改善を図るものである。従って本発明の目的は、電磁放射線エネルギーの照射に際して定義された個所のみを部分的に加熱および軟化させることができ、それによってインプラントを窩洞内、例えば骨窩洞内に圧入して窩洞の幾何形状に適合させるとともにインプラントの周囲の骨中の間隙内に圧入し、その結果ポリマーの冷却および硬化後にインプラントを形状噛合い式に固定することが可能な、医療用インプラントを提供することである。
【0007】
本発明に係る医療用インプラントは多様なインプラント形式で実施することができ、特にネジ、ピン、クリップ、プロング、プレート、釘、スパイクワイヤ、ケージ、茎スクリュー(釘)、穿孔具、皮膚接合材、薬剤キャリア、遺伝子剤キャリア、生物活性因子(例えば成長因子、骨成長促進物質、鎮痛剤等)のキャリア、別のインプラントの支持体、ダボ、クランプ、パール、歯科インプラント、歯根インプラント、チューブ、管、糸、チューブあるいは管内の糸、組織、ウェブ、メリヤス、ストッキング、バンド、粗織物、結糸繊維、繊維フロック、顆粒、チェーン、スレッディングアイレットを備えたあるいは備えないアンカとして実施することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って前記の課題は、請求項1前段に記載の特徴を有する医療用インプラント、請求項41前段に記載の特徴を有する骨あるいは骨片の固定装置、請求項42および/または46前段に記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの製造方法、請求項43ないし45のいずれかに記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの被覆方法、請求項47記載の特徴を有する骨接合方法、ならびに請求項52または53記載の特徴を有する本発明に係る医療用インプラントの適用によって解決される。
【0009】
本発明の重要な利点は、骨内への挿入中にインプラントをさらに加熱することができ、それにもかかわらずその内部の機械的安定性が維持されることである。
【0010】
本発明に係る医療用インプラントにおいては、電磁放射線によって発色団中、ポリマー自体の中、あるいは着色層中の励起可能な電子にエネルギーが伝達され、その結果その領域内でポリマーの加熱とそれによる軟化が生じ、一方インプラント中の励起不可能な領域には加熱も軟化も生じない。
【0011】
本明細書中でしばしば使用される概念は以下の定義に該当する:
【0012】
溶融/軟化/可塑化: 本発明においてインプラントの溶融、軟化あるいは可塑化としては、元々は(通常手によって)使用可能に可塑性に変形可能ではなかったインプラントが身体内で中程度(通常手による)圧力付加によって変形可能になり本発明の方式で使用可能になるまで放射線吸収によって発生する熱によってインプラントを軟化させることが理解される。
【0013】
光導体: 光導体としては第一に、光を誘導するとともに電磁放射線を放射源からインプラントまで伝導するために使用されるガラスファイバ、鏡面化された中空管(例えばナノチューブ)等の軟質あるいは硬質の光誘導構造体が理解される。他方、インプラント自体が光導体および光拡散体として機能することもできる。インプラント内に進入した後光は、ポリマーを軟化させるべき個所、大抵は表面部分に到達するまで誘導される。光導体を介して光をインプラント内の所要の個所に誘導するために、光導体がインプラント内で光を一方向に、例えばピンの先端に向かって誘導してそこで分散させ、それによって例えば拡散作用によってピンの表面に到達させることができる。
【0014】
光誘導/光透過性: 一般的にここではガラスと同様に電磁放射線を通過させる光透過性のインプラントを前提にしている。この光透過性は誘導される光に対して固有のものとし、その他の波長のものは反射あるいは吸収させることもできる。しかしながら本発明のいくつかの実施形態においては、均一な光分散を達成するためにインプラント内あるいはインプラント上のいくつかの帯域が光を拡散させることも好適である。この拡散作用はクリスタル、気泡、破断、各種の相境界、各種の異物あるいは色素、または各種のポリマーの混合によって達成することができる。特に燐酸カルシウム粒子等のセラミック材料が考えられる。
【0015】
光源: 光源としては、電球、ガス放電灯、ダイオード、半導体、スパーク、炎、太陽光等のあらゆる電磁放射線源が考えられる。特に、下記のタイプのレーザに該当するダイオードおよびレーザ光源が好適である。
【0016】
レーザタイプ:
レーザは通常狭く限定された周波数の電磁放射線のみを放射するためエネルギー源として好適である。従って(1つあるいは最大4つまでの)発色団とインプラントの非吸収成分と周囲身体の吸収スペクトルをそれぞれ判定することができる。好適な適用形態においては、インプラントと周囲身体によっては殆ど吸収されず発色団によって強く吸収される単色の周波数をレーザが発生させる。従って、インプラント内の異なった各帯域がそれぞれ異なった発色団を含み、それによってそれぞれ特定の周波数の電磁放射線によって個別に加熱されるようにすることもできる。
【0017】
ポリマー中の発色団/色素または光吸収性ポリマーによって極めて効果的に吸収される1つあるいは複数の周波数の放射線が極めて好適である。
【0018】
全ての一般的なレーザタイプ、発振モード、パルスあるいは連続波動作が含まれ、適用可能である。赤外線領域あるいは可視光線領域のダイオードレーザが好適である。場合によっては、例えばインプラント内あるいは放射源上における偏光フィルタの使用または最初から偏光して生成された電磁放射線の使用によって偏光された放射線を適用することも好適である。偏光は、特に偏光された光によって効果的に励起可能な発色団を適用することによって的を絞ってインプラントを加熱するために使用することができる。
【0019】
好適な電磁放射線の波長は好適には260ないし3000nmの範囲内の可視光線領域および1200nmまでの近赤外線領域に含まれる。しかしながらその他の波長も可能である。光線の形態は任意であり、断面が円形、楕円形、矩形、星形、三角形、および放射線束とすることができる。
【0020】
以下は使用可能なレーザの非限定的なリストである:
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
【表5】
【0026】
【表6】
【0027】
電磁放射線の吸収: 電磁放射線の吸収としては、吸収が行われる個所において吸収が行われない帯域と比べて一般的に(必須ではない)少なくとも2倍の入射したエネルギーをインプラントが吸収することが理解される。しかしながら通常は、インプラントが吸収を行わない場所と比べてエネルギー吸収領域において5ないし1000倍でエネルギーを吸収する。
【0028】
絶対値としてインプラントは非吸収帯域内において入射したエネルギーの0ないし10%を吸収し、発色団を有する帯域においては50ないし100%のエネルギーを吸収し、残りのエネルギーはインプラントから周囲に離散する。
【0029】
発色団: 発色団としては、ポリマー中で電磁放射線を吸収して熱に変換するためにポリマーに添加された着色物質あるいは色素が理解される。
【0030】
特定の適用形態においては、インプラントに添加するかあるいはそれを被覆するものであってかつ発色特性を有していない物質を使用することもできる。しかしながら体内への挿入に際して身体との接触により、特に細胞pHに対する反応、体内塩分、体湿度あるいは体温との反応として前記の物質が変化し、この反応のためその物質が発色して電磁放射線に対して吸収性となる。すなわち、身体と接触する帯域のみにおいてインプラントが着色されるためインプラント上のその帯域のみが加熱される。
【0031】
一般的に以下の発色団および色素は確実に含まれる:
クロロフィル、カーボンブラック、黒鉛、フルオレセイン、メチレンブルー、インドシアニングリーン、エオシン、エオシンY(514nm)、エチルエオシン(532nm)、アクリジン、アクリジンオレンジ、銅フタロシアニン、クロム・コバルト・アルミニウム酸化物、鉄・アンモニウムクエン酸塩、ピロガロール、ロッグウッド抽出物、クロルフィリン−銅複合体、D&Cブルー9番、D&Cグリーン5番、[フタロシアニネート(2−)]銅、D&Cブルー2番、D&Cブルー6番、D&Cグリーン6番、D&Cバイオレット2番、D&Cイエロー10番。特殊なケースは蛍光発色団であり、これは場合によって光を吸収しないが光を放射し、その光が周囲のポリマーあるいは追加的に混合された発色団によって吸収される。
【0032】
光吸収性の非着色ポリマー: 光吸収性ポリマーとしては、発色団を添加しなくてもそれ自体特定の波長の光を吸収する特性を有するポリマーが理解される。特殊な適用形態においては、ポリマーがそれ自体発色してそれによってより多くの光を吸収し得るようになるまで予め加熱され、極端な場合ポリマーが部分的に炭化あるいはカラメル化しそれによって光吸収性となる。
【0033】
ポリマーの吸収係数: ポリマーの吸収係数は発色団のものと同様に可変であり指数に従って調節することができる。例えばインドシアニンは20000mg−1cm−1の吸収係数を有する。その結果生じる発色団の吸収係数は勿論インプラントの濃度に相関し、典型的な範囲は1000ないし1000000mol−1cm−1である。
【0034】
多孔性表面: 多孔性表面としては、身体表面あるいは血液等の体液との接触後に電磁放射線の照射によって加熱するために適した表面が理解される。このことは、身体との接触によってインプラントに不純物が付加され、その不純物付加の個所で光吸収性となることによって生じる。この特殊なインプラントの実施形態は、身体との接触の前には電磁放射線によって加熱される性質が全くあるいは極僅かしか示されない。前記の表面に極めて適しているものは、例えば燐酸カルシウム、その他のセラミック、石膏等の親水性かつ吸水性の高い材料によって最終的に被覆された、粗目、多孔質、凹凸性、スポンジ状の表面である。他方、体液をインプラントの内部に吸引あるいは流入(例えば毛細管圧による血液)させそこで光を吸収するようにする構造要素を付加することもできる。身体内への圧入あるいは所要の結合の形成に際してのインプラントの変形によって身体からの発色性構造体がインプラント表面と混合され、それによって局部的な加熱作用がさらに強化される。さらにここで特別なこととして、インプラントと接触してインプラントの多孔質の表面と相互作用する体液あるいは身体表面が電磁放射線を吸収するように適宜な波長を選択したことにより、その波長においてインプラントの直近の周囲の身体が同時に加熱されるという効果が達成された。しかしながら、適宜なパルス幅および波長(あるいは波長の組合せ)によって極直近(1mm未満)の周囲のみが加熱され従って特に顕著な細胞破壊を生じさせないことが可能になる。加熱は100℃を超過しない、より好適には56℃を超過しないようにされ、この加熱により軟化した熱可塑性樹脂が良好に身体表面の間隙内に流入することが可能になる。この作用は、使用される電磁放射線の周波数、パルス形式、パルス周波数、パルス幅、ならびにエネルギー量を適宜に選択すれば前述したおよび後述する他の実施形態においても達成可能である。多孔性表面、例えば燐酸カルシウム被覆は、本発明に従って追加的な層あるいは混合体として発色団と組み合わされる。
【0035】
反射性に被覆されたポリマー: 反射性の被覆としては、電磁放射線の放出が阻止され従ってポリマー中に光が滞留して極僅かの吸収(場合によって発色団無しでも)でもポリマーを加熱し得るようなポリマーの被覆が理解される。反射性の被覆は例えば発色団の効果を強化するためそれとの組合せにおいて使用することも可能である。別の実施形態においては、インプラントからの早期の光の放出を阻止して光を例えばインプラントの先端に誘導するためにインプラントを鏡面加工することができる。すなわち鏡面加工はインプラント内部の光誘導を補助するように作用する。
【0036】
反射性の(ポリマー内部に埋め込むことも可能である)被覆としては全ての光反射性の物質が考えられ、特に金属、ここでもとりわけ金、チタン、プラチナ、銀、鋼鉄、およびそれらの合金等の生体適合性の金属が挙げられる。
【0037】
周波数変調: 局部的なインプラントの加熱を達成するために、特に周波数倍増クリスタルあるいは周波数複数倍増クリスタル等のそれ自体は顕著に電磁放射線を吸収しないが光の周波数をシフトさせる性質を有する物質あるいは光学要素をインプラント中に設けることも可能である。その際長波の光がインプラントを加熱することなく前記周波数を変調(通常は倍増)する性質を有する帯域まで到達してそこを加熱するとともに、より短い波長のものが一定割合でそこから退出してインプラントの残りの部位によって著しく大きく吸収される。この作用は複数回繰り返すこともできる。そのための典型的な材料は、例えばニオブ酸リチウム(LiNbO3)、二水素燐酸カリウムKDP、ベータ硼酸バリウム(β−BaB2O4あるいはBBO)、リチウムトリボレートあるいはDAST(ジメチルアミノ硫黄トリフルオリド)である。また、同様な効果を有する相境界あるいは境界層をインプラント中あるいはインプラント上に統合することもできる。
【0038】
エネルギー: インプラントを充分に加熱するために使用するエネルギーは、インプラントの大きさ、適用形態、ならびに局部的な解剖学的要件に依存する。典型的な光源の平均出力は:小型のピンあるいは固定要素(直径0.1ないし5mm)に対して約0.1ないし50W、特に0.5ないし10Wとなる。大型の補綴材の固定あるいは大型の骨損傷の充填に対しては1ないし2000Wとなる。付加される個々のパルスのピーク出力は5kWあるいはそれ以上になり得る。達成すべき目標は、軟化すべき体積Vを有するポリマーをP=0.005ないし5W/mm3の交流電流で約0.1ないし10秒の間に軟化させることである。
【0039】
そのようにして付加されるエネルギーEは:
E=約0.0005ないし50W・秒/mm3に相当する。
【0040】
光導体は、反対側の着色された層までインプラントを貫通するインプラント内の穿孔部に挿入することもできる。例えば着色された層のみを溶融させる必要がある場合、インプラント内の穿孔部を介して挿入された光導体の先端が前記着色された層に接合するようにされ、その着色された層が0.1ないし0.5mmの層厚を有することができる。
【0041】
本発明に係る医療用インプラントは多様な課題の解決を可能にするものであり、そのいくつかを以下に詳細に記述する。
【0042】
課題A:移植の最中の電磁放射線による医療用インプラントの選択的あるいは全体的な加熱および軟化あるいは液化
ピンのコアはそれが加熱されないかあるいは極部分的にしか加熱されず硬質に維持されるように設計される。同時にこのコアが光学要素として機能し、光をインプラント内でさらに誘導する。ここでピンが予め穿設された穴内に押し込まれ、その穴は例えば過小寸法を有することができ加熱され軟化したポリマーが骨の間隙内に圧入される。光源の遮断後ポリマー(熱可塑性樹脂)が冷却されて急速(1〜2分以内)に硬化し機械的結合が形成される。
【0043】
課題B:インプラントを移植中に変形するための熱可塑性樹脂を含んだインプラントの選択的あるいは全体的な加熱
ここで例えばピンにその輪郭に沿って着色物質、固有色、あるいは着色層を含んだ帯域を設け、ここでも電磁放射線を照射する。前記の着色物質、固有色、あるいは着色層を含んだ帯域上でピンが加熱される。その部分でピンが所要の形態に変形可能となる。
【0044】
課題C:ポリマー製インプラントの身体内への局部的な固定の形成
例えば射出成形等の適宜な製法によって内部応力を備えるようにピンを形成する。ピン全体を加熱することによって熱可塑性樹脂が柔軟化してピンが短くなるとともに直径が増大し、それによって周囲の組織内あるいは組織上での固定が達成される。
【0045】
課題D:複数のインプラントを相互に溶着させることによるそれらのインプラント間の局部的な結合の形成
これは別々に身体内に挿入することができる2つの熱可塑性インプラント部材の結合に際して実施される。その際に結合される両方(あるいは複数)のインプラント部材(典型的なものは顆粒である)に所要の電磁放射線が進入し得ることが保証されなければならない。両方(あるいは複数)のインプラント部材を挿入した後インプラント部材を接触個所で軟化させるための光線を照射し、圧力の付加によって結合することができる。そのようにして例えば結び目を形成しないようして糸を接着することができる。
【0046】
課題E:軟質組織あるいは骨の締め付けあるいは被覆
例えばインプラント材料から胃壁を(開口リングとして)形成し、光照射によって変形可能にして閉鎖式のリングに結合することができる。同様にポリマーバンドをセルクラージュ材料として使用することもできる。
【0047】
課題F:身体内への挿入後にインプラント材料の切開によって変形可能なインプラントの製造
ここで使用される上述のインプラント材料は光線によって選択的に切断あるいは切開することができるインプラントを製造するために使用することもでき、従って特に強力な電磁放射線あるいは比較的小さく“鋭い”光源からの光を使用して例えば糸を切断することもできる。変形したあるいは溶融したピンは例えば骨表面上で切断するかあるいは骨の表面に対して平坦になるまで変形させることができる。そのようにして薬剤キャリアを開放して作用成分を放出させることができる。
【0048】
課題G:インプラント内の光の誘導
インプラント内で所要の軟化が実施されるべき帯域、すなわち光反応性の帯域が存在する個所まで光を誘導する必要がある。従って全体的には比較的均一に着色されたインプラント内において最も濃度が高い場所で最初にインプラントが加熱されるためそこでの選択的な軟化を実施することができる。
【0049】
課題H:温度調節
電磁放射線はインプラントを過剰に加熱すべきではなく、また所要の帯域内において均一に熱変換を実施する必要がある。温度は500℃、好適には250℃を超えるべきでなく、理想的には100℃未満とすべきである。温度の調節は、臨界温度を超えると変色あるいは脱色してその後は入射したエネルギーを殆どあるいは全く吸収しない発色団(いわゆる“熱色性発色団”)によって実施することができる。他方、パルス方式のエネルギー付加によって均一な温度分配を達成することができ、パルスの休止相の間に熱伝導によってエネルギーがインプラント中で分配される時間が得られる。別の可能性は、局部的な温度を測定し出力をそれに適応させることである。その測定は温度センサ、カメラあるいは光導体を使用した赤外線測定、ラザーフォード後方分散によって実施することができる。特殊なケースにおいては光導体とインプラント自体を熱線の測定のために使用することができ、すなわち電磁放射線の供給の逆であり、そのためには鋼鉄製の半透過式の鏡等の適宜な光学要素を使用するかあるいはその他の既知の方式が考えられる。局部的な超加熱は空気、液体、あるいは断熱帯(例えば空気を充填した気泡またはセラミック粒子を断熱体として有する帯域等)による局部的あるいは全体的な冷却によって達成することもできる。そのためには必要に応じて適宜な冷却路がインプラント内に存在する必要がある。
【0050】
好適な一実施形態において、着色層あるいは反射層が少なくとも0.01μm、特に少なくとも2.5μmの層厚を有する。
【0051】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層が最大で2.0mm、特に最大で0.6mmの層厚を有する。
【0052】
インプラント上に均一な層を形成するために塗付しなければならない典型的な層厚は3ないし10μmの範囲となる。着色された層のみを溶融させる必要がある場合、骨内に挿入するためには0.1ないし0.5mmの層厚が好適である。
【0053】
さらに別の実施形態においては、インプラントが少なくとも部分的に1.6kJ/kmol・K、特に2.2kJ/kmol・Kの最小モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成される。
【0054】
別の実施形態においては、インプラントが少なくとも部分的に2.9kJ/kmol・K、特に2.5kJ/kmol・Kの最大モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成される。典型的なcpの範囲は1.9ないし2.7kJ/kmol・Kである。
【0055】
別の実施形態においては、250℃未満の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択される。
【0056】
さらに別の実施形態においては、150℃未満、特に100℃未満の加熱温度で軟化が生じる。
【0057】
別の実施形態においては、インプラントを加熱するためのものとしてポリマー自体以外のインプラント構成成分が含まれない。
【0058】
別の実施形態においては、少なくとも1本の透光性の糸を使用して光導体を固定するための手段を医療用インプラントが含む。
【0059】
別の実施形態においては、前記手段がポリマーの表面上の窪みあるいは隆起から形成される。
【0060】
別の実施形態においては、色物質を含んだ体液との接触に際して色物質を吸収することができる被覆が石膏あるいは燐酸カルシウムを含む。
【0061】
さらに別の実施形態においては、着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1超となる。
【0062】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000000mol−1cm−1超となる。
【0063】
別の実施形態においては、着色層あるいは反射層の吸収係数aがポリマーの加熱によって低下する。
【0064】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が少なくとも2のファクター、特に10のファクターで低下する。
【0065】
さらに別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において低下する。
【0066】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において少なくとも半分に低下する。
【0067】
別の実施形態においては、着色層の吸収係数aが加熱されたポリマーの状態において少なくとも1.5のファクター、特に5.0のファクターで上昇する。
【0068】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に等方性とされる。
【0069】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に異方性とされる。
【0070】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが熱可塑性材料とされる。
【0071】
さらに別の実施形態においては、熱可塑性材料が:ポリαヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリフォスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、炭酸トリメチレン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシブチレート、ならびにそれらの共重合体および混合物の一群から選択される。
【0072】
医療用インプラントは着色物質を含んだあるいはそれ自体有色のポリマーの他に特に以下の一群の中から選択される別の材料からなるインプラント部材をさらに含むことができる:金属、炭素、セラミック、PEEK、好適にはポリメチルメタクリレートの基から選択される非熱可塑性のポリマー、および/または燐酸カルシウム、硫酸カルシウムあるいは骨セメント等の無機材料。
【0073】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが艶消しあるいは光散乱性の開孔質構造を有する。
【0074】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが毛細路を有する。
【0075】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが親水性の特性を有する。
【0076】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーがインプラント被覆の形態で存在する。
【0077】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーによってインプラントの表面の一部のみが被覆される。
【0078】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーがそれぞれ異なった吸収係数aを有する複数帯域を特に表面被覆の形態で含む。
【0079】
別の実施形態においては、被覆層が変動的な層厚を有する。
【0080】
別の実施形態においては、材料のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1未満、特に100mol−1cm−1未満の低い吸収係数“a”となる。
【0081】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが少なくとも2種類の異なった生体適合性かつ熱可塑性の材料からなる混合物を含む。
【0082】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが固形の形態を有する。
【0083】
別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが顆粒形態で存在する。
【0084】
別の実施形態においては、医療用インプラントが繊維から形成され、その際加熱および軟化させるポリマーが好適には繊維の被覆として機能する。
【0085】
さらに別の実施形態においては、医療用インプラントが開孔質の発泡体あるいは海綿体の形態で存在する。
【0086】
別の実施形態においては、医療用インプラントが特に骨ネジ、骨杆体、骨ダボ、ピン、プレート、ダボ、ホース(管)、糸、ホース/管状の糸、あるいは(スレッディングアイレットを備えた)アンカの形態の骨固定要素として形成される。
【0087】
別の実施形態においては、医療用インプラントが歯科インプラントあるいは歯根インプラントとして形成される。
【0088】
さらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが少なくとも部分的に軟化した状態で存在する。
【0089】
別の実施形態においては、軟化した状態がポリマーを透過する電磁放射線、特に400ないし1300nmの波長の光あるいはレーザ光線によって生成される。
【0090】
別の実施形態においては、ポリマーが均一な透光性を備えておらず、その透光性が好適にはインプラントの表面上においてインプラントの内部よりも低くなる。その結果、インプラントの内部への優先的な光照射によってインプラント自体が機械的な支持体およびスタビライザであると同時に他方で光導体として使用され得るという利点が達成される。
【0091】
本発明に係る医療用インプラントを製造および/または被覆するための方法の異なったいくつかの実施形態において、下記の異なった方式のうちのいずれかを使用してポリマー内に着色物質あるいは粒子を埋入させる:
【0092】
(1) 着色物質あるいは粒子を溶融物内に混入し混錬および剪断処理によってポリマー内に均等に分散させる配合(コンパウンディング)が効果的であると知られている。その種の配合物を使用して本発明に係る医療用インプラントあるいはインプラント部材を射出成形によって直接製造することができる。
【0093】
適用形態によって着色物質を含んだポリマー層あるいはインプラント部材の存在が必要とされる場合、それをいわゆる2成分射出成形プロセスによって製造することができる。その際最初の工程においてインプラントの非着色部位を射出し、成形(金)型内のキャビティの変更後第2の工程において着色物質を含んだ部位を射出する。
【0094】
(2) 着色物質を含んだポリマーの層が着色物質およびポリマーを含んだ溶液の塗布および乾燥によって形成される。その際着色物質を含んだポリマーの層は、キャンドルドローイング処理(浸漬塗付処理)の原理あるいは噴霧によって着色物質およびポリマーを含んだ溶液を沈着および乾燥させて形成することができる。前記の沈着処理によって極めて薄い層(μm領域)から厚い(サブメートルおよびミリメートル領域)層までが形成可能である。
【0095】
(3) 少なくとも1つの着色層が着色物質粒子を含んだ懸濁液あるいは溶液の塗布および乾燥によって形成される。
【0096】
(4) 被覆が以下の工程によって実施される:
(a) 着色物質を含んだ粒子を加熱する;
(b) 加熱された粒子を医療用インプラントの着色されていない部位の表面上に噴射し、それによって前記粒子が医療用インプラントの着色されていない部位のポリマーを溶融してその結果表面上に固定される。
【0097】
粒子を加熱した状態でポリマー表面上に噴射しそこで局部的にポリマーを溶融させてその表面上に固定することによりセラミックあるいはその他の非熱可塑性粒子を表面に塗付することができる。その一例がプラズマ噴射プロセスであり、それによって例えば股関節補綴物を燐酸カルシウム粒子で被覆することができる。化学蒸着法(CVD)あるいは物理蒸着法(PVD)等のプロセスも適宜な基材に対して使用可能である。
【0098】
上述した方法は反射層を塗付するためにも使用可能である。その場合反射性の材料をポリマー内に付加し、溶液あるいは懸濁液の沈着、直接的な塗布、または溶着によって表面上に付着させる。
【0099】
本発明に係る医療用インプラントの製造方法の別の実施形態においては、40℃超の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択される。
【0100】
骨接合方法の好適な実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法となる。
【0101】
骨接合方法の別の実施形態においては、医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法を有していないが内部予圧を有する。
【0102】
骨接合方法の別の実施形態においては、加熱されるポリマーが棒体の形状でインプラントの中空部内あるいは中空器具内に挿入される。
【0103】
骨接合方法のさらに別の実施形態においては、加熱および軟化させるポリマーが放射方向の流出穴を有する中空部を備えたインプラント内に挿入される。
【0104】
以下に本発明に係る医療用インプラントの適用に際しての処理ステップについて詳細に記述する:
a) 骨の準備、例えばボアホールの形成;
b) 前記ボアホールに対して超過寸法を有する固定要素の前記ボアホール内への挿入;
c) 光の照射によるインプラントの(熱可塑性の)ポリマーの加熱;
d) 複雑な内部空間さらにその分枝を充満させながらの部分的に液化したインプラント/ピンの空洞内への挿入/圧入;
e) 例えば能動的冷却による支援が可能なインプラントの冷却。
【0105】
例1(プレート骨接合)
1mmの厚みを有するポリ−D,L−ラクチドから形成された吸収性の骨接合プレートを固定すべき骨片上に取り付け必要な穴を骨内に穿設した。この例は2.0mmのネジに対応する穴を有するプレートに関するものである。1.7mmの穴を骨内に穿設した。その後2.0nmの直径を有する部分的に光誘導性のピンをプレートのネジ穴を介して予め穿設された穴内に取り付け光を照射した(出力3ワット,波長808nm)。光のエネルギーが光誘導性のピンを介して流れ、カーボンブラックによって着色された帯域においてピンを加熱した。そこでピンへの緩やかな圧力によって骨中に予め穿設された穴内にピンを圧入することができ、熱可塑性材料が近傍の海綿状の骨の骨梁間隙内に流入した。光源の遮断後ポリマーが再び冷却され1分未満の間に硬化した。それによっていくらかオーバーサイズの(すなわちプレート穴より幅が大きい)ヘッドを有するピンがプレートを所要の場所に固定した。
【0106】
例2(プレート骨接合)
例1に対する変更例において上記のピンと同等なポリマーから製造された骨プレートを使用した。ピンは上記の例と同様に装着した。プレートも穴の領域において光誘導性でありその部分においてプレートとヘッドの溶融が可能になるため、ピンのヘッドがプレートと接触すると同時にプレートとピンの間の溶着が発生した。冷却後ピンとプレートが互いに固定的に結合し、その結合が角度固定式になった。
【0107】
例3(骨アンカ)
ここで解決すべき課題は、糸によって例えば腱またはその他の骨断片を保持するための骨内の糸の固定であった。そのため3mmないし15mmの直径を有する穴を骨内に深く穿設した。骨の穴内に高い融点を有する糸を挿入した。その後その穴の上にその穴よりもいくらか太いアンカを装着した。
【0108】
例1と同様にダイオード光源によってアンカにエネルギーを照射し、放射線エネルギーによって軟化した後骨内に圧入した。光源の遮断後ポリマーが硬化し、アンカが骨内で糸と共に保持された。
【0109】
例4(骨アンカ)
例3の変更例において横断孔を介して糸をアンカ内に挿入し、その後アンカを骨内に挿入してそこでグラスファイバ光源(ランプあるいはレーザ光源から光を供給)を使用して固定した。その後破断した腱を糸によって固定した。ここで糸は牽引力によって保持した。同時に実施した光源の点入によってアンカが部分的に溶融し、小さな圧力で糸と接着されそれによって骨内での固定力が得られた。約30秒以内の冷却後糸の牽引力を解除することができた。通常は必要である結び目を省略できた。
【0110】
例5(補綴物の移植)
チタン製の歯科インプラントにおいて遠心側の1/3を半光誘導性のポリマーによって被覆した。インプラント自体は光誘導性となるように製造した(管を備えていて、それの歯根の先端と逆方の側部がポリマーに向いている)。そこに光源を接続した。インプラントをアンダーサイズに予穿設された穴内に設置して光源を点入した。ポリマーが光によって加熱され、インプラントを圧力によって歯根管内に挿入することができた。光の遮断後の骨内におけるポリマーの硬化によって負荷耐久性を有する骨とインプラントの間の一次結合が達成された。ポリラクチド−コグリコリドからなる被覆は数日内に分解されその後チタンインプラント上の骨の成長が可能になる。
【0111】
例6(血管クリップ)
クリップは止血のために血管を締めつけるよう機能した。これは主に2本のアームと1個のヒンジとから形成した。アームは1個のクランプによって把持され血管がその間に保持された。アームに光を照射しながら圧接した。アームとヒンジの接触個所においてインプラントを光吸収性にし、その他の領域は光誘導性にした。クランプを介して光が接触個所ならびにヒンジに誘導された。その結果光によってヒンジが軟化しクリップの湾曲が可能になった。ヒンジと逆側の各アームの末端が互いに当接した際に両方のアームの接着が達成された。
【0112】
例7(鏡面化)
平滑な表面を有する長さ7mmおよび直径2.5mmのポリ−D,L−ラクチド製のピンの頭部を光源に接続し、予め穿設された穴内に挿入した。光をピンの頭部に誘導しピン先端部に指向させた。ピン先端部(ピンの頭部と逆側)の領域内においてインプラントに金を蒸着および被覆した(この実施形態において層厚は0.1mm未満)。電磁放射線が鏡面化されたピンの表面で内側に向かって反射された。このピン材料は放射線を殆ど吸収しないものの、僅かの吸収(30%未満)が繰り返す反射される放射線を吸収してピンを局部的に加熱するために充分であった。それによってピンが溶融し骨(すなわち穿孔部)内に圧入することができた。溶融したポリマーが骨梁間隙内に浸入しそこで光の遮断および冷却後に強固な固定力を生成した。
【0113】
外からのインプラントへの光照射によってポリマーの軟化を達成することはできず、鏡面化されていない帯域を介してのポリマー内部への照射によってのみ前記の軟化効果が達成可能であるため、鏡面化によって強化されたポリマー内における吸収によって光エネルギーが生成され、鏡面層自体によっては生成されないことを実験室において証明することができた。しかしながら、部分鏡面化および部分放射線吸収を適用する実施形態も可能である。
【0114】
鏡面化の重要な利点はさらに、ポリマーの表面が溶融して変形すると同時に反射が終息しその結果それ以上の加熱が抑制されることである。従って局部的な過熱を防止することができる。
【0115】
例8(椎骨形成術)
腰椎の骨粗鬆症性圧迫骨折において、茎(局部麻酔された)を介して背側から4mmの直径を有する穴を椎体内に穿設した(長さ約4cm)。その穴を介して背側から未だ光照射せずに、カーボンブラックを添加しそれによって85%の光吸収率を表面上に有している、部分着色されたポリ−D−L−ラクチドのピン(直径3.9mm)を挿入した。ここで光源を点入してピンを椎体内に挿入した。ピンをさらに押し込むことによって、椎体へのポリ−D−L−ラクチドの充填を達成することができた。2分間の冷却後椎体が負荷耐久性を有した。
【0116】
例9(損傷充填)
例8で記述したものと同様なピンを骨の損傷の充填、ここでは脛骨頭損傷の充填のために使用した。そのため脛骨頭骨折を被った患者において直径4mmの穴を腹側から皮膚を介して患部に向かって穿設した(長さ2cm)。光照射しながらこの穴を介して骨の髄腔および海綿空間内にピンを挿入し、それによって複合骨接合術と同様な安定的な骨が形成された。その後その場所に挿入されたネジが溶融されたポリマー内で効果的に固定された。骨接合材料あるいは補綴物の存在下においてポリマーを追加的に溶融して流入させることによって同様な安定性が達成されることが判明した。
【0117】
例10(複合骨接合)
骨粗鬆症による大腿骨頸骨折の状況において、下記のように改良されたダイナミックヒップスクリューを大腿骨頸に移植した:内部に3mmの直径を有する追加的な縦孔を備えネジ山が存在している先端部上に1mmの直径を有する10個の放射穴が設けられ、それによって中央孔と骨との間の交流が可能にされた。この中央孔内に例9と同様に加工された2.9mmの直径を有するピンを挿入し、後方から光を照射した。光の作用によってピンがネジの内部で溶融して液化したポリマーが穴に沿って外の骨内に浸透し、それによってインプラントを保持している骨の補強が達成された。ポリマーの硬化後(2分)ネジは負荷耐久性となった。
【0118】
例11(メモリ効果)
射出成形によって半光吸収性の骨アンカに内部予圧をもたせて製造する(非晶質PLA)。この冷却された状態においてアンカは直線状である(長さ10mm、直径3mm)。アイレットによってアンカの上部1/3に通された糸により、予め穿設された外踝の穴内に緩やかな圧力でアンカが押し込まれる。照射された光による熱作用のためアンカの柔軟化がもたらされ湾曲する。それによってアンカが骨穴内に嵌合し機械的支持力が発生する。アンカ上の糸は30秒後に負荷をかけられるようになり、靭帯再形成のために使用することができる。
【0119】
例12(釘鎖錠)
骨接合のために大腿髄内釘を大腿骨内に挿入する。しかしながら患者は86歳で鎖錠を行うには遠心側において骨が脆弱過ぎるため、外科医は4mmの穴を側方から皮膚を介して釘に向かって穿設した。3.5mmのピンが穴を介して釘まで押し込まれた。ここでピンに光を照射して髄管内に押し込み、その結果釘上でピンが継続的に溶融して流れ出して中空の髄管内に充満し、それによって釘が埋め込まれた。インプラント材料が良好に髄腔内に分配されるように比較的高い出力(70ワット)を選択し、また過度に急速に冷却して硬化しないように高い熱容量を有するポリマーを選択した。光の遮断後釘が確実に大腿骨の中心に固定された。
【0120】
次に、本発明ならびにその追加構成について添付の一部概略化した図面ならびに複数の実施例を参照しながら以下詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る医療用インプラントの一実施形態を示した縦断面図である。
【図2a】歯科インプラントとして形成された本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態の溶融工程前の状態を示した横断面図である。
【図2b】図2aの実施形態の移植実施後の状態を示した横断面図である。
【図3a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図3b】図3aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図4a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図4b】図4aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図5a】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した構成図である。
【図5b】図5aの実施形態の移植実施後の状態を示した構成図である。
【図6a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図6b】図6aの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図7a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図7b】図7aの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図8】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図9a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図9b】図9aの実施形態の移植実施中の状態を示した断面図である。
【図9c】図9aおよび図9bの実施形態の移植実施後の状態を示した断面図である。
【図10】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した断面図である。
【図11】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図12】本発明に係る医療用インプラントの別の実施形態を示した断面図である。
【図13a】本発明に係る医療用インプラントのさらに別の実施形態を示した断面図である。
【図13b】図13aの実施形態の移植実施中の状態を示した断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0122】
図1に示された実施形態において、医療用インプラントがピン2を含み椎骨形成の適用形態で使用される(例8)。予め穿設された穴10を介して治療される椎体12の茎内にポリ−L−co−D,L−ラクチドからなるピン2が未だ光を照射せずに背側から挿入される。
【0123】
ピン2を挿入した後光源が点入され、ピン2は接続された光導体15と共に椎体12内に押し込まれる。ピン2をさらに押し込むことによって椎体12内のポリ−L−co−D,L−ラクチドからなる充填物3を形成することができる。2分間の冷却後椎体が負荷耐久性を有するとともに痛みが消える。
【0124】
図2aおよび図2bに示された実施形態はチタン製の歯科インプラント30を含んでおり、それが非晶質のポリ−D,L−ラクチドからなる層34によって被包されている。遠心側の末端32と反対側の被覆された末端33に光線25が照射される。歯科インプラント30をアンダーサイズに予穿設された穴10内に設置して光源を点入した(図2a)。層34内内の光吸収が生じると同時にこの層34が軟化し、歯科インプラント30を圧力によって穴10に深く押し込むことができる。歯科インプラント30を穴10内に押し込む際に層34を形成する熱可塑性樹脂が骨31の間隙内に圧入され、それによって歯科インプラント30と骨31の間の機械的結合が達成される。ポリマー、すなわち骨31中の層34の硬化によって骨31と歯科インプラント30の間の負荷耐久性の一次結合が達成される(図2b)。
【0125】
図3aおよび図3bには別の実施形態が示されており、それにおいてはピン2が例えば射出成形等の適宜な製造方法によって内部応力を備え、冷却された状態において長さLと直径Dを有するものとなる(図3a)。端部AまたはBのいずれかに放射線を照射してピン2全体を加熱することによって熱可塑性樹脂が柔軟化してピン2が短くなるとともに直径が増大し(図3b)、それによって周囲の組織内あるいは組織上における固定が達成される。
【0126】
図4aおよび図4bに示されている実施形態においては医療用インプラントがクリップ60として形成されている。クリップ60はU字型に形成されて2本のアーム61,62を含み、それらの自由端63がいずれもポリ−L−co−D,L−ラクチドから形成された要素64を有する。このアーム61,62に比べて太く形成されたエレメント64に光導体15′,15″を使用して放射線エネルギーが付加される(図4a)。光源の点入後にクリップ60を押し合わせ、すなわち両方の要素64を互いに圧接させる。光吸収によって両方の要素64が加熱されてそれらが互いに当接している接触個所上で軟化し、従って圧力の負荷によって接合させて溶着によって互いに結合させることができる(図4b)。
【0127】
図5aおよび図5bに示されているクリップ70は、クリップ70がポリ−L−co−D,L−ラクチドから一部材として製造される点のみにおいて図4aおよび図4bに示された実施例と異なっている。アーム70,71をクランプ74によって把持して、それぞれ光導体15′,15″を介して光を照射して圧接する。放射線エネルギーによってアーム71,72を結合しているヒンジ73が軟化し、クリップ70の曲折が可能になる。ヒンジ73と逆側のアーム71,72の末端が互いに当接すると、アーム71,72自体に比べて太くなっている末端部上において両方のアーム71,72の所要の結合が溶融によって達成される。
【0128】
図6aおよび図6bに示されている実施形態において、医療用インプラントが高い融点を有する材料からなる糸80とポリマーからなるアンカ83を含む。糸80は例えば腱またはその他の骨断片を保持するために骨81上に固定される。そのため直径3mmの穴82を15mmの深さで骨81内に穿設する。この骨81の穴82内に糸80を挿入する。その後前記穴82上にこの穴82よりもいくらか大きな直径を有するアンカ83を取り付ける。例1と同様に光によってこのアンカ83に放射線エネルギーを付加し、光によって軟化させた後骨81内に押し込む。光源の遮断後ポリマーが硬化しアンカ83は糸80と共に骨81内に固定される。
【0129】
図7aおよび図7bには骨94の損傷の充填に適した医療用インプラントの実施形態が示されている。図1の実施形態と同様にピン2を使用し、そのピン2が光導体15を収容するためのものであって前記ピン2の先端上で閉鎖されている中央空洞91を備えている。光導体15はピン2の溶融後に再び除去されるようにするかあるいは吸収性の材料から形成することができる。例えば脛骨損傷を充填するため、脛骨頭骨折を被った患者において直径4mmの穴95を腹側から皮膚を介して患部に向かって穿設する(長さ2cm)。この穴95を介してピン2を光導体15と共に光を照射しながら骨の髄腔および海綿空間内に挿入し、それによって複合骨接合術と同様にピン2を溶融して充填物93を形成することによって安定的な骨が形成される。その後充填物93内に収容されたネジ(図示されていない)が一旦溶融されその後硬化したポリマー内で効果的に固定される。
【0130】
図8には医療用インプラントのポリマーがパール102として形成される実施形態が示されている。このパール102は、骨103から骨片101が割れ落ちることによって生じる空洞内に挿入することができる。空洞内への骨片101の嵌合とパール102の溶融による骨片101と骨103の結合ならびに骨片101と骨103中の間隙内へのポリマーの圧入はパール102への放射線照射によって実施され、その結果パール102を加熱および軟化させることができる。
【0131】
図9aないし図9cに示された実施形態は、骨プレート110を骨111上に固定するために適しているポリ−D,L−ラクチドから形成されたピン2を含んでいる。骨プレート110は、同じ材料から形成され1mmの厚みを有する吸収性の骨接合プレートである。骨片を固定するために骨プレート110を固定すべき骨片上に取り付け、それを骨111上に固定するために必要な穴112を骨111内に穿設する。この実施例は2.0mmのネジ用のネジ穴113を備えた骨プレート110に係る。骨111内に穿設された穴112は1.5mmの直径を有する。ピン2は2.0mmの直径を有していてその後部の直径が拡大されたヘッド115上で器具116上に取り付けられる(図9a)。
【0132】
光導体は器具116内の空洞(図示されていない)内に同軸に挿入することができる。
【0133】
ピン2は骨111内に挿入すべき先端部114が骨プレート110のネジ穴113に挿通され、骨111内に予め穿設された穴112上に設置されて光照射される。ピン2を介した光エネルギーの付加によってそのピンが加熱される。器具116に圧力をかけることによってピン2が骨111内に予め穿設された穴112内に押し込まれ、熱可塑性材料が近接する海綿状の骨の骨梁間隙内に流入する(図9b)。光源の遮断後ポリマーが再び冷却され硬化する。骨プレート110のネジ穴113に比べて大きな直径を有するピン2のヘッド115が骨プレート110内に保持される(図9c)。
【0134】
図10および図11には、例えば金属材料からなるコア121,131とポリ−D,L−ラクチドからなる被覆層122,132を有するピン2がそれぞれ示されている。図10の被覆層122はブシュ形状に形成されるとともにピン2のシリンダ状部分123と後端部125にわたって延在している。ピン2の先端部124は被覆層を備えずに形成されている。図11の被覆層132はピン2の前方部分133上に部分的に設けられ、先細となっているピン2の前方部分133をその先端部134および後端部を含めて被包している。図10および図11に従って形成されたピン2によれば、変形を達成するために熱可塑性樹脂を選択的に加熱することが可能になる。
【0135】
図12には、図7aおよび図7bに関して記述した骨94の損傷の充填における図10のピン2の適用形態が示されている。
【0136】
図13aおよび図13bには、医療用インプラントがダイナミックヒップスクリュー150とポリマー製のピン2を備えてなる実施形態が示されている。ダイナミックヒップスクリュー150は、股関節頭まで到達する先端上に(ネジ切りされた)骨ネジ穴152を有する中空のシャフト151を備える。骨ネジ穴152の領域内に放射状の穿孔部153が設けられ、それによってシャフト151の中央空洞部154と周囲部が放射方向に連通している。空洞部154は穿孔部153の領域を除いて絶縁層155を有している。このダイナミックヒップスクリュー150は骨粗鬆症による大腿骨頸骨折の状況において大腿骨頸を貫通させて移植する。中央空洞部154内に例9と同様に絶縁化された2.9mmの直径を有するピン2が挿入され、そのダイナミックヒップスクリュー150の骨ネジ穴152と逆側の後端に光導体15を使用して光が照射される。光吸収によってピン2がヒップスクリュー150の内部で溶融して液化したポリマーが穿孔部153を介して外の骨156内に浸透し、それによってインプラントを保持した骨156の補強が達成される。ポリマーの硬化後ヒップスクリュー150が負荷耐久性となる(図13b)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にポリマーから形成された医療用インプラントであり、
(A)一部のみが1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが少なくとも部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;
または、
(B)全体的に1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが極部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;
または、
(C)少なくとも部分的に着色層あるいは反射層によって被覆された1つあるいは複数の生体適合性ポリマーを含んでなるか;
または、
(D)少なくともポリマーの一部が色物質を含んだ体液との接触に際して前記色物質を吸収することができる被覆層を有してなり;
従って、
(E)有色のあるいは着色物質を含んだポリマー(A)、または反射性であるか(A)、色物質吸収性であるか(D)、あるいは着色層から形成された被覆層に接合しているポリマー層が電磁放射線を使用して加熱および軟化可能であり、その際にインプラントのそれ以外の部位がその硬度を維持する、
ことを特徴とする医療用インプラント。
【請求項2】
着色層あるいは反射層が少なくとも0.01μm、特に少なくとも2.5μmの層厚を有することを特徴とする請求項1記載の医療用インプラント。
【請求項3】
着色層あるいは反射層が最大で2.0mm、特に最大で0.6mmの層厚を有することを特徴とする請求項1または2記載の医療用インプラント。
【請求項4】
インプラントが少なくとも部分的に1.6kJ/kmol・K、特に2.2kJ/kmol・Kの最小モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項5】
インプラントが少なくとも部分的に2.9kJ/kmol・K、特に2.5kJ/kmol・Kの最大モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項6】
250℃未満の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項7】
150℃未満、特に100℃未満の加熱温度で軟化が生じることを特徴とする請求項6記載の医療用インプラント。
【請求項8】
インプラントを加熱するためのものとしてポリマー自体以外のインプラント構成成分が含まれないことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項9】
少なくとも1本の透光性の糸を使用して光導体を固定するための手段を含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項10】
前記手段がポリマーの表面上の窪みあるいは隆起から形成されることを特徴とする請求項9記載の医療用インプラント。
【請求項11】
色物質を含んだ体液との接触に際して前記色物質を吸収することができる被覆が石膏あるいは燐酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項12】
着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1超であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項13】
着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000000mol−1cm−1超であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項14】
着色層あるいは反射層の吸収係数aがポリマーの加熱によって低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項15】
着色層の吸収係数“a”が少なくとも2のファクター、特に10のファクターで低下することを特徴とする請求項14記載の医療用インプラント。
【請求項16】
着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項17】
着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において半分以下になるように低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項18】
着色層の吸収係数aが加熱されたポリマーの状態において少なくとも1.5のファクター、特に5.0のファクターで上昇することを特徴とする請求項17記載の医療用インプラント。
【請求項19】
加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に等方性であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項20】
加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に異方性であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項21】
加熱および軟化させるポリマーが熱可塑性材料とされることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項22】
熱可塑性材料が:ポリαヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリフォスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、炭酸トリメチレン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシブチレート、ならびにそれらの共重合体および混合物の一群から選択されることを特徴とする請求項21記載の医療用インプラント。
【請求項23】
加熱および軟化させるポリマーが艶消しあるいは光散乱性の開孔質構造を有することを特徴とする請求項1ないし22のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項24】
加熱および軟化させるポリマーが毛細路を有することを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項25】
加熱および軟化させるポリマーが親水性の特性を有することを特徴とする請求項1ないし24のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項26】
加熱および軟化させるポリマーがインプラント被覆の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし25のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項27】
加熱および軟化させるポリマーによってインプラントの表面の一部のみが被覆されることを特徴とする請求項26記載の医療用インプラント。
【請求項28】
加熱および軟化させるポリマーがそれぞれ異なった吸収係数aを有する複数帯域を特に表面被覆の形態で含むことを特徴とする請求項1ないし27のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項29】
被覆層が変動的な層厚を有することを特徴とする請求項26ないし28のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項30】
材料のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1未満、特に100mol−1cm−1未満の低い吸収係数“a”であることを特徴とする請求項28記載の医療用インプラント。
【請求項31】
加熱および軟化させるポリマーが少なくとも2種類の異なった生体適合性かつ熱可塑性の材料からなる混合物を含むことを特徴とする請求項1ないし30のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項32】
固形の形態を有することを特徴とする請求項1ないし31のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項33】
加熱および軟化させるポリマーが顆粒形態で存在することを特徴とする請求項1ないし31のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項34】
医療用インプラントが繊維から形成され、その際加熱および軟化させるポリマーが好適には繊維の被覆として機能することを特徴とする請求項1ないし33のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項35】
医療用インプラントが開孔質の発泡体あるいは海綿体の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし34のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項36】
特に骨ネジ、骨杆体、骨ダボ、ピン(2)、プレート、ダボ、ホース(管)、糸(80)、ホース/管状の糸、あるいは(スレッディングアイレットを備えた)アンカの形態の骨固定要素として形成されることを特徴とする請求項1ないし35のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項37】
歯科インプラント(30)あるいは歯根インプラントとして形成されることを特徴とする請求項1ないし36のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項38】
加熱および軟化させるポリマーが少なくとも部分的に軟化した状態で存在することを特徴とする請求項1ないし37のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項39】
軟化した状態がポリマーを透過する電磁放射線、特に400ないし1300nmの波長の光あるいはレーザ光線によって生成されることを特徴とする請求項38記載の医療用インプラント。
【請求項40】
ポリマーが均一な透光性を備えておらず、その透光性が好適にはインプラントの表面上においてインプラントの内部よりも低くなることを特徴とする請求項1ないし39のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項41】
骨プレート(110)を含んでいてインプラントを貫通する1つあるいは複数の穴(113)と、その穴(113)内への挿入に適した少なくとも1つの請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントを備えてなる骨あるいは骨片の固定装置であり、前記医療用インプラントが溶融されていない状態において前記穴(113)に対して超過寸法を有することを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの製造方法であり:
(i) 医療用インプラントの非着色部位の形状を決めるキャビティを備えた射出成形用金型内で前記医療用インプラントの非着色部位を射出成形し;
(ii) 被覆層を含めた前記医療用インプラントの形状をキャビティが有するように射出成形用金型を変更し;
(iii) ステップ(ii)によって変更された射出成形用金型内においてステップ(i)によって射出成形された医療用インプラントの非着色部位の上に医療用インプラントの着色物質を含んだ部位を射出成形する、
各ステップからなることを特徴とする方法。
【請求項43】
着色物質およびポリマーを含んだ溶液を塗布および乾燥させることによって着色物質を含んだポリマー層を形成することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項44】
着色物質粒子を含んだ懸濁液あるいは溶液の塗布および乾燥によって少なくとも1つの着色層が形成されることを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項45】
(a) 着色物質を含んだ粒子を加熱し;
(b) 加熱された粒子を医療用インプラントの着色されていない部位の表面上に噴射し、それによって前記粒子が医療用インプラントの着色されていない部位のポリマーを溶融してその表面上に固定される、
各ステップを有することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項46】
40℃超の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーを選択することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの製造方法。
【請求項47】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントを移植個所の外側に配置し;
前記医療用インプラントのポリマーを電磁放射線によってそのポリマーが軟化するまで加熱し;
少なくとも部分的に軟化した前記医療用インプラントを移植個所内に挿入する、
各ステップを有することを特徴とする骨接合方法。
【請求項48】
医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法となることを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項49】
医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法を有していないが内部予圧を有することを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項50】
加熱されるポリマーが棒体の形状でインプラントの中空部内あるいは中空器具内に挿入されることを特徴とする請求項47ないし49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
加熱および軟化させるポリマーが放射方向の流出穴を有する中空部を備えたインプラント内に挿入されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの椎骨形成術への適用。
【請求項53】
特に骨内に挿入した後の脊髄釘等のインプラントの鎖錠および/または心合せのための請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの適用。
【請求項1】
少なくとも部分的にポリマーから形成された医療用インプラントであり、
(A)一部のみが1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが少なくとも部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;
または、
(B)全体的に1つあるいは複数の生体適合性ポリマーから形成され、前記ポリマーが極部分的に着色物質を含むか、反射性被覆を有するか、あるいは固有色を有してなるものであるか;
または、
(C)少なくとも部分的に着色層あるいは反射層によって被覆された1つあるいは複数の生体適合性ポリマーを含んでなるか;
または、
(D)少なくともポリマーの一部が色物質を含んだ体液との接触に際して前記色物質を吸収することができる被覆層を有してなり;
従って、
(E)有色のあるいは着色物質を含んだポリマー(A)、または反射性であるか(A)、色物質吸収性であるか(D)、あるいは着色層から形成された被覆層に接合しているポリマー層が電磁放射線を使用して加熱および軟化可能であり、その際にインプラントのそれ以外の部位がその硬度を維持する、
ことを特徴とする医療用インプラント。
【請求項2】
着色層あるいは反射層が少なくとも0.01μm、特に少なくとも2.5μmの層厚を有することを特徴とする請求項1記載の医療用インプラント。
【請求項3】
着色層あるいは反射層が最大で2.0mm、特に最大で0.6mmの層厚を有することを特徴とする請求項1または2記載の医療用インプラント。
【請求項4】
インプラントが少なくとも部分的に1.6kJ/kmol・K、特に2.2kJ/kmol・Kの最小モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項5】
インプラントが少なくとも部分的に2.9kJ/kmol・K、特に2.5kJ/kmol・Kの最大モル熱容量cpを有する被加熱ポリマーから形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項6】
250℃未満の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーが選択されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項7】
150℃未満、特に100℃未満の加熱温度で軟化が生じることを特徴とする請求項6記載の医療用インプラント。
【請求項8】
インプラントを加熱するためのものとしてポリマー自体以外のインプラント構成成分が含まれないことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項9】
少なくとも1本の透光性の糸を使用して光導体を固定するための手段を含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項10】
前記手段がポリマーの表面上の窪みあるいは隆起から形成されることを特徴とする請求項9記載の医療用インプラント。
【請求項11】
色物質を含んだ体液との接触に際して前記色物質を吸収することができる被覆が石膏あるいは燐酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項12】
着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1超であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項13】
着色層あるいは反射層のスペクトル吸収係数aが1000000mol−1cm−1超であることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項14】
着色層あるいは反射層の吸収係数aがポリマーの加熱によって低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項15】
着色層の吸収係数“a”が少なくとも2のファクター、特に10のファクターで低下することを特徴とする請求項14記載の医療用インプラント。
【請求項16】
着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項17】
着色層の吸収係数“a”が加熱されたポリマーの状態において半分以下になるように低下することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項18】
着色層の吸収係数aが加熱されたポリマーの状態において少なくとも1.5のファクター、特に5.0のファクターで上昇することを特徴とする請求項17記載の医療用インプラント。
【請求項19】
加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に等方性であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項20】
加熱および軟化させるポリマーが光学的および/または機械的に異方性であることを特徴とする請求項1ないし18のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項21】
加熱および軟化させるポリマーが熱可塑性材料とされることを特徴とする請求項1ないし20のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項22】
熱可塑性材料が:ポリαヒドロキシエステル、ポリオルトエステル、ポリアンヒドライド、ポリフォスファゼン、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリエステルアミド、ポリエチレンフマレート、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、炭酸トリメチレン、ポリジオキサン、ポリヒドロキシブチレート、ならびにそれらの共重合体および混合物の一群から選択されることを特徴とする請求項21記載の医療用インプラント。
【請求項23】
加熱および軟化させるポリマーが艶消しあるいは光散乱性の開孔質構造を有することを特徴とする請求項1ないし22のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項24】
加熱および軟化させるポリマーが毛細路を有することを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項25】
加熱および軟化させるポリマーが親水性の特性を有することを特徴とする請求項1ないし24のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項26】
加熱および軟化させるポリマーがインプラント被覆の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし25のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項27】
加熱および軟化させるポリマーによってインプラントの表面の一部のみが被覆されることを特徴とする請求項26記載の医療用インプラント。
【請求項28】
加熱および軟化させるポリマーがそれぞれ異なった吸収係数aを有する複数帯域を特に表面被覆の形態で含むことを特徴とする請求項1ないし27のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項29】
被覆層が変動的な層厚を有することを特徴とする請求項26ないし28のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項30】
材料のスペクトル吸収係数aが1000mol−1cm−1未満、特に100mol−1cm−1未満の低い吸収係数“a”であることを特徴とする請求項28記載の医療用インプラント。
【請求項31】
加熱および軟化させるポリマーが少なくとも2種類の異なった生体適合性かつ熱可塑性の材料からなる混合物を含むことを特徴とする請求項1ないし30のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項32】
固形の形態を有することを特徴とする請求項1ないし31のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項33】
加熱および軟化させるポリマーが顆粒形態で存在することを特徴とする請求項1ないし31のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項34】
医療用インプラントが繊維から形成され、その際加熱および軟化させるポリマーが好適には繊維の被覆として機能することを特徴とする請求項1ないし33のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項35】
医療用インプラントが開孔質の発泡体あるいは海綿体の形態で存在することを特徴とする請求項1ないし34のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項36】
特に骨ネジ、骨杆体、骨ダボ、ピン(2)、プレート、ダボ、ホース(管)、糸(80)、ホース/管状の糸、あるいは(スレッディングアイレットを備えた)アンカの形態の骨固定要素として形成されることを特徴とする請求項1ないし35のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項37】
歯科インプラント(30)あるいは歯根インプラントとして形成されることを特徴とする請求項1ないし36のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項38】
加熱および軟化させるポリマーが少なくとも部分的に軟化した状態で存在することを特徴とする請求項1ないし37のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項39】
軟化した状態がポリマーを透過する電磁放射線、特に400ないし1300nmの波長の光あるいはレーザ光線によって生成されることを特徴とする請求項38記載の医療用インプラント。
【請求項40】
ポリマーが均一な透光性を備えておらず、その透光性が好適にはインプラントの表面上においてインプラントの内部よりも低くなることを特徴とする請求項1ないし39のいずれかに記載の医療用インプラント。
【請求項41】
骨プレート(110)を含んでいてインプラントを貫通する1つあるいは複数の穴(113)と、その穴(113)内への挿入に適した少なくとも1つの請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントを備えてなる骨あるいは骨片の固定装置であり、前記医療用インプラントが溶融されていない状態において前記穴(113)に対して超過寸法を有することを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの製造方法であり:
(i) 医療用インプラントの非着色部位の形状を決めるキャビティを備えた射出成形用金型内で前記医療用インプラントの非着色部位を射出成形し;
(ii) 被覆層を含めた前記医療用インプラントの形状をキャビティが有するように射出成形用金型を変更し;
(iii) ステップ(ii)によって変更された射出成形用金型内においてステップ(i)によって射出成形された医療用インプラントの非着色部位の上に医療用インプラントの着色物質を含んだ部位を射出成形する、
各ステップからなることを特徴とする方法。
【請求項43】
着色物質およびポリマーを含んだ溶液を塗布および乾燥させることによって着色物質を含んだポリマー層を形成することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項44】
着色物質粒子を含んだ懸濁液あるいは溶液の塗布および乾燥によって少なくとも1つの着色層が形成されることを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項45】
(a) 着色物質を含んだ粒子を加熱し;
(b) 加熱された粒子を医療用インプラントの着色されていない部位の表面上に噴射し、それによって前記粒子が医療用インプラントの着色されていない部位のポリマーを溶融してその表面上に固定される、
各ステップを有することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの被覆方法。
【請求項46】
40℃超の加熱温度で軟化が生じるようにポリマーを選択することを特徴とする請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの製造方法。
【請求項47】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントを移植個所の外側に配置し;
前記医療用インプラントのポリマーを電磁放射線によってそのポリマーが軟化するまで加熱し;
少なくとも部分的に軟化した前記医療用インプラントを移植個所内に挿入する、
各ステップを有することを特徴とする骨接合方法。
【請求項48】
医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法となることを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項49】
医療用インプラントが軟化していない状態において骨穿孔部より大きな寸法を有していないが内部予圧を有することを特徴とする請求項47記載の方法。
【請求項50】
加熱されるポリマーが棒体の形状でインプラントの中空部内あるいは中空器具内に挿入されることを特徴とする請求項47ないし49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
加熱および軟化させるポリマーが放射方向の流出穴を有する中空部を備えたインプラント内に挿入されることを特徴とする請求項50記載の方法。
【請求項52】
請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの椎骨形成術への適用。
【請求項53】
特に骨内に挿入した後の脊髄釘等のインプラントの鎖錠および/または心合せのための請求項1ないし40のいずれかに記載の医療用インプラントの適用。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図2a】
【図2b】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【公表番号】特表2010−538707(P2010−538707A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524324(P2010−524324)
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000454
【国際公開番号】WO2009/036576
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510004435)シナジー バイオサージカル アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/CH2007/000454
【国際公開番号】WO2009/036576
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(510004435)シナジー バイオサージカル アクチエンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】
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