説明

医療用チューブシール装置

【課題】複数種類のチューブやチューブ径の大きなチューブに対して比較的容易に対応することができる医療用チューブシール装置を提供する。
【解決手段】電極21,22を有するチューブ溶着部20と、電動シリンダ30と、電極21,22によって医療用チューブを挟んだときの、電動シリンダ30に加わる負荷を検出することにより、チューブの属性を識別するチューブ属性識別部50と、制御部90とを備える医療用チューブシール装置1。制御部90は、チューブ溶着動作制御機能と、電動シリンダ駆動制御機能と、最接近距離調整機能と、溶着時間調整機能とを少なくとも有する。制御部90は、チューブ溶着動作制御機能及び電動シリンダ駆動制御機能の発揮により、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、チューブを溶着しているときの電極の移動速度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間に配置された医療用チューブ(以下、単に「チューブ」と略すこともある。)をシール溶着する医療用チューブシール装置として、従来、ソレノイドとバネ部材を用いて電極を移動させる医療用チューブシール装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照。)。ソレノイドは、コイルと、コイル内に固定配置された固定鉄心と、コイル内に配置されコイル軸に沿って可動である可動鉄心とを有する。可動鉄心は、連結部材を介して一方の電極と接続されている。コイルに電流を流すことによって磁力が発生し、この磁力によって可動鉄心が固定鉄心側に吸引される結果、一対の電極が例えば閉じる(一対の電極間の距離が狭まる)こととなる。コイルに流れる電流を切ると、可動鉄心を吸引する力が無くなり、バネ部材の付勢力(復元力)によって可動鉄心が元の位置に戻る結果、一対の電極が例えば開く(一対の電極間の距離が広がる)こととなる。
【0003】
従来の医療用チューブシール装置によれば、ソレノイドの駆動とバネ部材の付勢力(復元力)によって、一対の電極を閉じたり開いたり(一対の電極間の距離を狭めたり広げたり)することができるため、チューブを比較的簡単にシールすることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6784407号明細書
【特許文献2】実開平3−38708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ソレノイドには、ソレノイドに加える電流が一定の場合に、固定鉄心と可動鉄心との距離によって、可動鉄心を固定鉄心側に向けて引く力(以下、吸引力)が変化するという特性がある。
このため、従来の医療用チューブシール装置のように電極を移動させる機構としてソレノイドを採用した場合、一対の電極間の距離が狭くなればなるほど、吸引力が強くなってしまい、結果としてチューブを挟む力が強くなってしまうという不具合がある。チューブを挟む力が強すぎると、チューブを破断させてしまいかねない。
【0006】
このような問題を解決するための1つの手段として、一対の電極間の距離がある程度狭まったところでコイルに流す電流を小さくすることが考えられる。このようにすると、固定鉄心と可動鉄心との距離が狭まったとしても吸引力についてはなるべく一定に保つことが可能となるため、チューブを挟む力が強くなりすぎてしまうのを抑制することができる。
【0007】
しかしながら、このように電極間の距離に応じてコイルに流す電流を小さくする場合、複数種類のチューブに対応するのが容易でないという問題(第1の問題)がある。すなわち、コイルに流す電流を小さくするときの電極間の距離は、シールするチューブの属性(例えば、チューブの外径(以下、チューブ径)、チューブの肉厚、チューブの材質など)によって異なる設定が必要である。このため、種類の異なるチューブをシールする際は、コイルに流す電流を小さくするときの電極間の距離を、そのチューブに応じたものに設定変更し直さなければならないため、設定変更作業が煩わしい。また、このような設定変更作業を行う作業者には、高い熟練度が求められる。
【0008】
なお、上記した第1の問題は、電極間の距離に応じてコイルに流す電流を小さくする場合に限ったものではない。例えば、電極が完全に閉じるまで(電極間の距離がゼロになるまで)チューブを挟み続けるとチューブを切断してしまうことから、電極間の距離がゼロになる手前の位置でコイルに流す電流を切る必要があるが、このコイルに流す電流を切るときの電極間の距離も、チューブの種類によってそれぞれ異なる。つまり、電極間の距離に応じてコイルに流す電流を切る場合も、上記した第1の問題が生じる。
【0009】
また、従来の医療用チューブシール装置のように電極を移動させる機構としてソレノイドを採用した場合には、チューブ径の大きなチューブに対応するのが容易でないという問題(第2の問題)がある。なぜなら、チューブ径の大きなチューブをシールするには可動鉄心を比較的長い距離動かさなければならないが、ソレノイドの特性より、固定鉄心と可動鉄心との距離が離れるほど吸引力が弱まるからである。つまり、可動鉄心を動かす距離が長すぎると可動鉄心を吸引できない可能性があり、結果として電極を移動させることができずチューブをシールできない可能性がある。
【0010】
そこで、本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、複数種類のチューブやチューブ径の大きなチューブに対して比較的容易に対応することができる医療用チューブシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者らは、上記した第1及び第2の問題がともにソレノイドの特性に由来する問題であることに着目し、電極を移動させる機構として、ソレノイドに代えて電動シリンダを用いることを考え付いた。さらには、一対の電極間に配置されたチューブの属性を装置独自で識別できるように構成するとともに、その識別結果に応じて、チューブ溶着動作を行う際に一対の電極を最も接近させるときの当該一対の電極間の「最接近距離」と、医療用チューブを溶着し始めてから溶着し終えるまでに要する「溶着時間」と、チューブを溶着しているときの一対の電極の「移動速度」との少なくとも3点を調整すれば、上記した第1及び第2の問題を同時に解決することができることに想到し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
[1]すなわち、本発明の医療用チューブシール装置(1)は、一対の電極(21,22)を有するチューブ溶着部(20)と、前記一対の電極(21,22)を接近又は離隔させる方向に沿って、前記一対の電極(21,22)のうち少なくとも一方の電極を移動させる電動シリンダ(30)と、前記一対の電極(21,22)によって医療用チューブを挟んだときの、前記電動シリンダ(30)に加わる負荷を検出することにより、前記医療用チューブの属性を識別するチューブ属性識別部(50)と、制御部(90)とを備え、前記制御部(90)は、前記チューブ溶着部(20)のチューブ溶着動作を制御するチューブ溶着動作制御機能(F1)と、前記電動シリンダ(30)の駆動を制御する電動シリンダ駆動制御機能(F2)と、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際に前記一対の電極(21,22)を最も接近させるときの、当該一対の電極間の最接近距離を調整する最接近距離調整機能(F4)と、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着し始めてから溶着し終えるまでに要する溶着時間を調整する溶着時間調整機能(F5)とを少なくとも有し、前記制御部(90)は、前記チューブ溶着動作制御機能(F1)及び前記電動シリンダ駆動制御機能(F2)の発揮により、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着しているときの前記一対の電極(21,22)の移動速度を調整することを特徴とする。
【0013】
このため、本発明の医療用チューブシール装置によれば、ソレノイドに代えて電動シリンダを備えているため、ソレノイドに由来する上記した第1の問題を回避することができる。また、本発明の医療用チューブシール装置によれば、チューブ属性識別部による識別結果に基づいて、上記した最接近距離と溶着時間と移動速度とを調整するように構成されているため、チューブの属性を装置独自で識別することができる上に、識別されたチューブの種類(属性)に適した条件で、チューブを切断することなくシールすることができる。つまり、本発明の医療用チューブシール装置によれば、上記の構成を備えているため、上述のソレノイドの場合に要した設定変更作業や高い熟練度を必要とせずに、複数種類のチューブに比較的容易に対応することができる。
【0014】
また、本発明の医療用チューブシール装置によれば、ソレノイドに代えて電動シリンダを備えていることから、チューブ径の大きなチューブをシールする場合であっても、ソレノイドの場合のような不具合を生じることなく、確実にシールすることができる。つまり、本発明の医療用チューブシール装置によれば、上記の構成を備えているため、チューブ径の大きなチューブに比較的容易に対応することができる。
【0015】
したがって、本発明の医療用チューブシール装置は、複数種類のチューブやチューブ径の大きなチューブに対して比較的容易に対応することができる医療用チューブシール装置となる。
【0016】
[2]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記制御部(90)は、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際に前記電動シリンダ(30)から医療用チューブへと加える力を調整する加圧力調整機能(F3)をさらに有することが好ましい。
【0017】
このように構成することにより、識別されたチューブの種類(属性)に適した加圧力で、チューブを破断することなくシールすることができる。
【0018】
[3]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記電動シリンダ(30)は、モータ(32)と、前記モータ(32)による回転運動を前記電極の移動する方向に沿った直線運動に変換する運動変換部(34)と、前記運動変換部(34)によって変換された前記直線運動に基づいて、前記電極の移動する方向に沿って進退自在に構成された進退部材(36)とを有し、前記チューブ属性識別部(50)は、前記電動シリンダ(30)に加わる負荷を検出する負荷検出部(52)と、前記進退部材(36)の移動量を検出する移動量検出部(54)とを有することが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、負荷検出部によって負荷が検出されたときの進退部材の移動量に基づいて、医療用チューブの属性のうち少なくともチューブ径を識別することができる。
本発明の医療用チューブシール装置においては、電動シリンダに加わる負荷量(負荷の大小)を検出可能に構成されていてもよい。この場合は、当該負荷量に基づいて、医療用チューブの属性のうちチューブの肉厚や材質を識別することができる。
【0020】
[4]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記制御部(90)は、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着し終えてから前記一対の電極(21,22)を離隔させる方向に沿って移動させるまでの時間を調整する待機時間調整機能(F6)をさらに有することが好ましい。
【0021】
ところで、チューブを溶着した直後におけるチューブの溶着箇所は比較的高温状態にあることから、溶着してからすぐに一対の電極を移動させる(離す)と、チューブの種類(属性)によっては溶着箇所が望ましい形にならない場合(例えばチューブがちぎれてしまう等)がある。
これに対し、本発明の医療用チューブシール装置によれば、制御部が上記した待機時間調整機能を有するため、チューブの種類(属性)に応じた所定時間において、一対の電極によって溶着箇所を押さえた状態とすることが可能となる。その結果、チューブの種類(属性)に関わらず、溶着箇所を望ましい形にすることが可能となる。
【0022】
[5]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記医療用チューブシール装置(1)の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ(70)をさらに備え、前記制御部(90)は、前記電源スイッチ(70)をOFFからONに切り替えたときには、前記一対の電極(21,22)間の距離がゼロとなるように前記一対の電極(21,22)同士を一旦接近させた後、前記一対の電極(21,22)間に医療用チューブを配置することができるように前記一対の電極(21,22)を再び離隔させるゼロ点調整機能(F7)をさらに有することが好ましい。
【0023】
仮に電源スイッチをOFFにしているときに電極間の距離が元の設定状態からずれることがあったとしても、上記のように構成することにより、電源スイッチをOFFからONに切り替えれば、電極間の距離を自動で調整し直すことができる。その結果、チューブ径を正確に計測することができ、チューブの属性を正確に識別することが可能となる。
【0024】
[6]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、医療用チューブの属性と、当該属性に応じた前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶部(80)をさらに備え、前記制御部(90)は、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記テーブル記憶部(80)に記憶された前記テーブルを参照し、前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度を調整することが好ましい。
【0025】
このように構成することにより、テーブル記憶部に記憶されたテーブルの情報をもとにして、最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0026】
[7]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記テーブルに関するデータを装置外部から受け付け、当該データに基づいて、前記テーブル記憶部(80)に記憶された前記テーブルを書き換えるテーブル書換部(82)をさらに備えることが好ましい。
【0027】
このように構成することにより、テーブル記憶部に記憶されたテーブルを、チューブの属性等に関する情報が新しく追加されたテーブルや、チューブの属性等に関する情報が従来のものから一部又は全部変更されたテーブルに書き換えることができる。その結果、幅広い種類のチューブに対して最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0028】
[8]本発明の医療用チューブシール装置(2)においては、前記チューブ属性識別部(150)による識別結果を装置外部に出力する出力部(180)と、前記チューブ溶着動作を行う際の前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度に関して、装置外部からの入力を受け付ける入力受付部(182)とをさらに備え、前記制御部(190)は、前記入力受付部(182)に入力された入力情報に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際の前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度を調整することが好ましい。
【0029】
このように構成することにより、装置外部から入力された情報をもとにして、最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0030】
[9]本発明の医療用チューブシール装置(1)においては、前記制御部(90)は、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記移動速度を段階的に低下させることが好ましい。
【0031】
本発明者らは、チューブを溶着しているときの一対の電極の移動速度を一定にしたときと、移動速度を段階的に低下させたときとで、シールされたチューブの仕上がり(シール性や、チューブ切り離し時に要する力の大小など)に違いが見られるか実験を行ったところ、移動速度を一定にしたときに比べて移動速度を段階的に低下させた方が、より優れた仕上がりとなる傾向にあるという知見を得た。
本発明の医療用チューブシール装置によれば、制御部の機能により、チューブを溶着しているときの一対の電極の移動速度を段階的に低下させるように構成されているため、チューブの仕上がりをより優れたものとすることが可能となる。
【0032】
なお、特許請求の範囲及び本欄(課題を解決するための手段の欄)に記載した各部材等の文言下に括弧をもって付加された符号は、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容の理解を容易にするために用いられたものであって、特許請求の範囲及び本欄に記載された内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態1に係る医療用チューブシール装置1の電気的構成を示すブロック図。
【図2】実施形態1に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図。
【図3】チューブ溶着部20及び電動シリンダ30の構成を模式的に示す図。
【図4】制御部90の機能を説明するために示す図。
【図5】実施形態1に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図。
【図6】実施形態1に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図。
【図7】一対の電極21,22間の距離と移動速度との関係を示すグラフ。
【図8】実施形態2に係る医療用チューブシール装置2の電気的構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の医療用チューブシール装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。
【0035】
[実施形態1]
まず、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1の構成について、図1〜図4を用いて説明する。
図1は、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1の電気的構成を示すブロック図である。
図2は、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図である。図2(a)は医療用チューブシール装置1の全体斜視図であり、図2(b)はチューブ溶着部20及び電動シリンダ30の構成を説明するために示す斜視図である。
図3は、チューブ溶着部20及び電動シリンダ30の構成を模式的に示す図である。
図4は、制御部90の機能を説明するために示す図である。
【0036】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1は、図1及び図2に示すように、装置本体10と、装置本体10の正面側に設けられたチューブ溶着部20と、装置本体10内に設けられた電動シリンダ30と、チューブ溶着部20の電極21,22間にチューブが配置されたことを検知する機能(チューブ検知機能)を有する検知部40と、チューブ属性識別部50と、医療用チューブシール装置1内の各部に電力を供給するための電源部60と、装置本体10の上面に設けられた電源スイッチ70と、テーブル記憶部80と、テーブル書換部82と、医療用チューブシール装置1内の各部を統括制御する制御部90とを備える。
【0037】
装置本体10には、図1に示すように、例えば外部記録媒体としての外部メモリ(例えはSDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)など)を挿入可能なスロット部12が設けられている。
【0038】
チューブ溶着部20は、例えば高周波でチューブを閉塞(シール)する機能を有する高周波チューブシーラーであって、図2及び図3に示すように、一対の電極21,22と、一対の電極21,22を支持する電極支持部23,24と、一対の電極21,22をカバーするカバー部材25とを有する。
【0039】
一対の電極21,22のうち電極21は可動電極であり、電極22は固定電極である。一対の電極21,22は、装置本体10の前面から張り出すように設けられており、カバー部材25によってカバーされている。カバー部材25は、図2から分かるように、一対の電極21,22間に対して上方よりチューブを挿入可能に設けられている。
【0040】
電動シリンダ30は、一対の電極21,22を接近又は離隔させる方向(図3に示す矢印A1,A2方向)に沿って、電極21を移動させるための部材である。電動シリンダ30は、モータ32と、モータ32による回転運動を電極21の移動する方向に沿った直線運動に変換する運動変換部34と、運動変換部34によって変換された当該直線運動に基づいて、電極21の移動する方向に沿って進退自在に構成された進退部材36と、モータ32を内部に格納するモータ格納部38とを有する。進退部材36の一方端部は、電極支持部23に接続されている。
モータ32は、例えばサーボモータである。運動変換部34と進退部材36は、例えばナット部材とボールネジであり、モータ32によってナット部材を回転させ、ボールネジが進退するように構成されている。なお、運動変換部34と進退部材36については、これに限定されるものではなく、モータの回転運動によって電極21を移動させることが可能であれば、他の公知の手段を用いても構わない。また、モータ32についても、上記の例に限定されるものではなく、運動変換部34と進退部材36の構成に応じて他の種類のモータを用いても構わない。
【0041】
検知部40は、略板状のトリガー部材42と、トリガー部材42の端部に配設され、トリガー部材42の動作を検知する赤外線センサ44とを有する。トリガー部材42は、カバー部材25におけるチューブを挿入するための溝に対して、交差するように設けられており、上方からチューブを押し当てたときに下降可能に構成されている。
チューブをシールするために電極21,22間にチューブを配置すると、トリガー部材42が下降する。赤外線センサ44は、トリガー部材42の下降を検知して、当該検知情報を制御部90に送る。制御部90は、当該検知情報に基づいて、チューブ溶着部20のチューブ溶着動作を制御する。
【0042】
チューブ属性識別部50は、一対の電極21,22によってチューブを挟んだときの、電動シリンダ30に加わる負荷を検出することにより、チューブの属性(例えばチューブ径)を識別する機能を有する。また、チューブ属性識別部50は、チューブの属性について識別した結果に関する情報を、制御部90に向けて送るように構成されている。チューブ属性識別部50は、電動シリンダ30に加わる負荷を検出する負荷検出部52と、進退部材36の移動量を検出する移動量検出部54とを有する。負荷検出部52は、例えばモータ32に流れる電流値が変位したタイミングを検出可能に構成されている。
【0043】
電源部60は、外部の商用電源などから電源ケーブル(図示せず。)を介して交流電力を導き、内蔵するAC/DC変換部(図示せず。)で変圧・整流・平滑などの処理を行って、医療用チューブシール装置1の各部に電力を供給する機能を有する。
【0044】
電源スイッチ70は、医療用チューブシール装置1の電源のON/OFFを切り替えるための部材であって、電源スイッチ70を押下することにより、電源のON/OFFを切り替え可能に構成されている。
【0045】
テーブル記憶部80は、チューブの属性と、当該属性に応じた加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び後述する待機時間とを対応付けたテーブルを記憶する機能を有する。
【0046】
テーブル書換部82は、テーブルに関するデータを装置外部から受け付け、当該データに基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを書き換える機能を有する。具体的には、装置本体10のスロット部12に外部メモリを挿入すると、テーブル書換部82は、外部メモリに記憶されたテーブルに関するデータを読み出し、読み出した当該データに基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブル(旧テーブル)を新たなテーブルに書き換える。なお、テーブル書換部82が外部メモリからデータを読み出す手段については、電気的であってもよいし、磁気的あるいは光学的であってもよい。
【0047】
制御部90は、例えばマイクロコンピュータ等から構成され、図4に示すように、チューブ溶着動作制御機能F1と、電動シリンダ駆動制御機能F2と、加圧力調整機能F3と、最接近距離調整機能F4と、溶着時間調整機能F5と、待機時間調整機能F6と、ゼロ点調整機能F7とを少なくとも有する。
【0048】
チューブ溶着動作制御機能F1は、チューブ溶着部20のチューブ溶着動作を制御する機能である。
【0049】
電動シリンダ駆動制御機能F2は、電動シリンダ30(モータ32)の駆動を制御する機能である。
【0050】
加圧力調整機能F3は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、チューブ溶着動作を行う際に電動シリンダ30からチューブへと加える力(電動シリンダ30の推力)を調整する機能である。
【0051】
最接近距離調整機能F4は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、チューブ溶着動作を行う際に一対の電極21,22を最も接近させるときの、その一対の電極21,22間の最接近距離を調整する機能である。
【0052】
溶着時間調整機能F5は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、チューブを溶着し始めてから溶着し終えるまでに要する溶着時間を調整する機能である。
【0053】
待機時間調整機能F6は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、チューブを溶着し終えてから一対の電極21,22を離隔させる方向に沿って移動させるまでの時間を調整する機能である。
【0054】
ゼロ点調整機能F7は、電源スイッチ70をOFFからONに切り替えたときに、一対の電極21,22間の距離がゼロとなるように一対の電極21,22同士を一旦接近させた後、一対の電極21,22間にチューブを配置することができるように一対の電極21,22を再び離隔させる機能である。
【0055】
次に、医療用チューブシール装置1の電源を入れてからチューブのシールが完了するまでの流れについて、図5及び図6を用いて説明する。
図5及び図6は、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1を説明するために示す図である。図5(a)〜図5(d)及び図6(a)〜図6(d)は電源を入れてからチューブTのシールが完了するまでの流れを模式的に示す図であって、図5(a)は電源スイッチ70をOFFにしているときの様子を示す図であり、図5(b)及び図5(c)は電源スイッチ70をOFFからONに切り替えたときの様子を示す図であり、図5(d)は電極21,22間にチューブTを配置したときの様子を示す図であり、図6(a)は電極21,22とチューブTとが接触したときの様子を示す図であり、図6(b)は電極21,22に高周波電流を印加した状態で電極21,22を接近させたときの様子を示す図であり、図6(c)は電極21,22への高周波電流の印加を停止した状態で電極21,22間の距離を変えずに待機している様子を示す図であり、図6(d)は電極21が移動してチューブTのシールが完了したときの様子を示す図である。
【0056】
まず、電源スイッチ70をOFFにしているときは、図5(a)に示すように、電極21,22は離隔している。このときの電極間距離d1は、例えば、電源スイッチ70をOFFにしているときに電極21,22に対して外力が加わった結果、電極21,22の位置が所定量ずれたときの距離である。
【0057】
電源スイッチ70をOFFからONに切り替えると、制御部90のゼロ点調整機能F7によって、図5(b)に示すように、一対の電極21,22間の距離がゼロとなるように電極21が移動した後、図5(c)に示すように、一対の電極21,22間にチューブTを配置することができるように電極21が移動する。このときの電極間距離d2は、一対の電極21,22間にチューブTを配置するのに十分可能な距離である。
【0058】
次に、図5(d)に示すように、電極21,22間にチューブTを配置すると、図示による説明は省略するが、トリガー部材42が下降し、赤外線センサ44がトリガー部材42の下降を検知して、検知情報が制御部90に送られる。検知情報を受けた制御部90は、電極21を電極22方向に向けて移動させる。
【0059】
図6(a)に示すように電極21,22とチューブTとが接触すると、モータ32に負荷がかかってモータ32に流れる電流値が変位する。負荷検出部52は、その電流値の変位を検出する。チューブ属性識別部50は、負荷検出部52によって負荷が検出されたときの進退部材36の移動量に基づいて、電極21,22間に配置されたチューブTのチューブ径を識別する。
なお、チューブTのチューブ径は、電極21,22間にチューブTを配置したときの電極間距離d2から、負荷検出部52によって負荷(電流値の変位)が検出されたときの進退部材36の移動量Xを引いた値(すなわち、「d2−X」)となる。
【0060】
制御部90は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを参照し、加圧力、最接近距離(図6(c)に示す電極間距離d5)、溶着時間及び待機時間を調整する。
【0061】
なお、「加圧力」とは、チューブ溶着動作を行う際に電動シリンダ30からチューブへと加える力のことであり、電動シリンダ30の推力のことである。また、「溶着時間」とは、電極21,22に高周波電流を印加した状態でチューブを溶着し始めてから、電極21,22への高周波電流の印加を停止するまでの時間のことを意味する。また、「待機時間」とは、上記の溶着時間の終了時点から、電極21を移動させ始めるまでの時間のことを意味する。
【0062】
制御部90はまた、チューブ溶着動作制御機能F1及び電動シリンダ駆動制御機能F2の発揮により、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを参照し、チューブを溶着しているときの一対の電極21,22の移動速度も調整する。
【0063】
図7は、一対の電極21,22間の距離と移動速度との関係を示すグラフである。横軸は、チューブを溶着し始めてから溶着し終えるまで(電極21,22への高周波電流の印加開始時から印加停止時まで)の電極21,22間の距離を示し、縦軸は、電極の移動速度を示している。
【0064】
チューブを溶着しているときの移動速度は、図7に示すように、段階的に低下している。図7を用いて具体的に説明すると、チューブを溶着し始めたとき(電極21,22への高周波電流の印加開始時)の電極間距離d3から、所定距離進んだある電極間距離d4までの間は、電極21を第1速度V1で移動させているが、電極間距離d4からさらに進んだ電極間距離d5までの間は、第1速度よりも低速な第2速度V2まで速度を落とした状態で電極21を移動させている。つまり、電極間距離d4が、電極21の移動速度を第1速度V1から第2速度V2に切り替える切替えポイントとなる。このときの第1及び第2速度V1,V2は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて調整されている。なお、電極間距離d3は、電極21,22への高周波電流の印加開始時の距離のことである。一方、電極間距離d5は、電極21,22への高周波電流の印加停止時の距離のことであり、この電極間距離d5が最接近距離となる。
【0065】
チューブTの種類(属性)に適した加圧力、溶着時間及び移動速度でチューブ溶着動作が行われた後、電極21,22の位置が最接近距離(電極間距離d5)で保持された状態で、高周波電流の印加が停止される(図6(c)参照。)。この状態で所定の待機時間が経過した後、電極22とは反対方向に向けて電極21が移動して、チューブTのシールが完了する(図6(d)参照。)。
【0066】
以上のように構成された実施形態1に係る医療用チューブシール装置1によれば、ソレノイドに代えて電動シリンダ30を備えているため、ソレノイドに由来する上記した第1の問題を回避することができる。また、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1によれば、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、上記した最接近距離と溶着時間と移動速度とを調整するように構成されているため、チューブの属性を装置独自で識別する識別することができる上に、識別されたチューブの種類(属性)に適した条件で、チューブを切断することなくシールすることができる。つまり、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1によれば、上記の構成を備えているため、上述のソレノイドの場合に要した設定変更作業や高い熟練度を必要とせずに、複数種類のチューブに比較的容易に対応することができる。
【0067】
また、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1によれば、ソレノイドに代えて電動シリンダ30を備えていることから、チューブ径の大きなチューブをシールする場合であっても、ソレノイドの場合のような不具合を生じることなく、確実にシールすることができる。つまり、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1によれば、上記の構成を備えているため、チューブ径の大きなチューブに比較的容易に対応することができる。
【0068】
したがって、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1は、複数種類のチューブやチューブ径の大きなチューブに対して比較的容易に対応することができる医療用チューブシール装置となる。
【0069】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、制御部90は、上記した加圧力調整機能F3をさらに有するため、識別されたチューブの種類(属性)に適した加圧力で、チューブを破断することなくシールすることができる。
【0070】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、チューブ属性識別部50は、電動シリンダ30に加わる負荷を検出する負荷検出部52と、進退部材36の移動量を検出する移動量検出部54とを有する。これにより、負荷検出部52によって負荷が検出されたときの進退部材36の移動量に基づいて、チューブ径を識別することができる。
【0071】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、制御部90は、上記した待機時間調整機能F6をさらに有する。これにより、チューブの種類(属性)に応じた所定時間において、一対の電極21,22によって溶着箇所を押さえた状態とすることが可能となる。その結果、チューブの種類(属性)に関わらず、溶着箇所を望ましい形にすることが可能となる。
【0072】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、制御部90は、上記したゼロ点調整機能F7をさらに有するため、電源スイッチ70をOFFからONに切り替えれば、電極21,22間の距離を自動で調整し直すことができる。その結果、チューブ径を正確に計測することができ、チューブの属性を正確に識別することが可能となる。
【0073】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、制御部90は、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを参照し、加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間を調整するように構成されている。これにより、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルの情報をもとにして、最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0074】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、上記したテーブル書換部82をさらに備えるため、テーブル記憶部80に記憶されたテーブル(旧テーブル)を、チューブの属性等に関する情報が新しく追加されたテーブル(新規情報追加テーブル)や、チューブの属性等に関する情報が従来のものから一部又は全部変更されたテーブル(情報変更済テーブル)に書き換えることができる。その結果、幅広い種類のチューブに対して最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0075】
実施形態1に係る医療用チューブシール装置1においては、制御部90の機能により、チューブを溶着しているときの電極21の移動速度を段階的に低下させるように構成されているため、チューブの仕上がりをより優れたものとすることが可能となる。
【0076】
[実施形態2]
図8は、実施形態2に係る医療用チューブシール装置2の電気的構成を示すブロック図である。なお、図8において、図1と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0077】
実施形態2に係る医療用チューブシール装置2は、基本的には実施形態1に係る医療用チューブシール装置1と良く似た構成を有するが、テーブル記憶部等に代えて出力部及び入力受付部を備えている点で、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1とは異なる。
【0078】
すなわち、実施形態2に係る医療用チューブシール装置2においては、図8に示すように、実施形態1で説明したテーブル記憶部80、テーブル書換部82及びスロット部12に代えて、チューブ属性識別部150による識別結果を外部に出力する出力部180と、チューブ溶着動作を行う際の加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間に関して、外部からの入力を受け付ける入力受付部182とを備える。
【0079】
出力部180は、例えば、チューブ属性識別部150による識別結果を外部情報端末に送信する機能を有する。
入力受付部182は、外部情報端末から送信された情報を受けて制御部190に送る機能を有する。
チューブ属性識別部150による識別結果が出力部180から外部情報端末に送られると、医療用チューブシール装置2を用いてシール作業を行う作業者は、例えば当該外部情報端末を用いて、チューブ溶着動作を行う際の加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間を算出する。算出された加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間に関する情報は、外部情報端末から入力受付部182に送られ、さらに制御部190に送られる。
【0080】
制御部190は、基本的には実施形態1で説明した制御部90と同様の機能を有するが、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを参照するのではなく、入力受付部182に入力された入力情報に基づいて、チューブ溶着動作を行う際の加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間を調整するように構成されている。
【0081】
また、チューブ属性識別部150は、基本的には実施形態1で説明したチューブ属性識別部50と同様の機能を有するが、チューブの属性について識別した結果に関する情報を、制御部190ではなく出力部180に向けて送るように構成されている。
【0082】
このように、実施形態2に係る医療用チューブシール装置2は、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1とはテーブル記憶部等に代えて出力部及び入力受付部を備えている点で異なるが、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1の場合と同様に、ソレノイドに代えて電動シリンダ30を備えており、チューブ属性識別部150による識別結果に基づいて、最接近距離、溶着時間及び移動速度を調整するように構成されているため、複数種類のチューブやチューブ径の大きなチューブに対して比較的容易に対応することができる。
【0083】
実施形態2に係る医療用チューブシール装置2においては、上記した出力部180及び入力受付部182を備え、制御部190は、入力受付部182に入力された入力情報に基づいて、チューブ溶着動作を行う際の加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間を調整する。これにより、装置外部から入力された情報をもとにして、最適な条件でシールをすることが可能となる。
【0084】
実施形態2に係る医療用チューブシール装置2は、テーブル記憶部等に代えて出力部及び入力受付部を備えている点以外では、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1と同様の構成を有するため、実施形態1に係る医療用チューブシール装置1が有する効果のうち該当する効果をそのまま有する。
【0085】
以上、本発明の医療用チューブシール装置を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
(1)上記各実施形態においては、負荷検出部が、モータに流れる電流値が変位したタイミングを検出可能に構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。負荷検出部が、モータに流れる電流値が変位したときの電流変位量を検出可能に構成されていてもよい。この場合、当該電流変位量に基づいて、チューブの肉厚や材質を識別することができる。または、負荷検出部が、モータ回転量の設定値と実際のモータ回転量との差から、モータの回転変位量を検出可能に構成されていてもよい。この場合、当該回転変位量に基づいて、チューブの肉厚や材質を識別することができる。
【0087】
(2)上記各実施形態においては、チューブ属性識別部が、負荷検出部によって負荷(電流値の変位)が検出されたときの進退部材の移動量に基づいて、電極間に配置されたチューブの属性(チューブ径)を識別する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。一対の電極によってチューブを挟んだときの、電動シリンダに加わる負荷を検出することにより、チューブの属性を識別することが可能であれば、他の公知の手段(例えば、モータに流れる電流値の変位とモータの回転変位量とを検出してチューブの属性を識別する手段など)を用いてもよい。
【0088】
(3)上記各実施形態においては、一対の電極21,22のうち電動シリンダ30側に位置する電極21が動くように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電動シリンダ30とは反対側に位置する電極22が動くように構成されていてもよいし、両方の電極21,22が動くように構成されていてもよい。
【0089】
(4)上記各実施形態においては、チューブ溶着部20が、高周波でチューブを閉塞する機能を有する高周波チューブシーラーである場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、超音波チューブシーラーや、インパルス加熱式チューブシーラーなどであってもよい。
【0090】
(5)上記各実施形態においては、トリガー部材42の動作を検知する赤外線センサ44を有する検知部40を備える場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の公知の検知手段(例えば重量センサなど)を有する検知部であってもよい。
【0091】
(6)上記各実施形態においては、チューブ属性識別部による識別結果に基づいて、加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間の5つを調整可能に構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。これらに加えて、チューブ属性識別部による識別結果に基づいて、チューブ溶着部の溶着能力が調整可能に構成されていてもよい。なお、溶着能力とは、例えば高周波チューブシーラーであれば高周波出力のことを意味し、超音波チューブシーラーであれば超音波出力のことを意味する。チューブ属性識別部による識別結果に基づいて、チューブ溶着部の溶着能力(出力)を調整することにより、チューブの溶着形状をより望ましい形にすることが可能となる。
【0092】
(7)上記実施形態1においては、テーブル記憶部80の記憶するテーブルが、チューブの属性と、当該属性に応じた加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間の5つとを対応付けたものであり、制御部90が、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、テーブル記憶部80に記憶されたテーブルを参照し、加圧力、最接近距離、溶着時間、移動速度及び待機時間の5つを調整する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、テーブル記憶部の記憶するテーブルが、チューブの属性と、当該属性に応じた加圧力、最接近距離、溶着時間及び移動速度の4つとを対応付けたものであり、制御部が、チューブ属性識別部50による識別結果に基づいて、テーブル記憶部に記憶されたテーブルを参照し、加圧力、最接近距離、溶着時間及び移動速度の4つを調整するものであってもよい。この場合は、チューブの属性に応じた待機時間の調整が行われないことから、待機時間の設定を比較的長めに設定しておくことが好ましい。
【0093】
(8)上記実施形態1においては、テーブル書換部が、スロット部12に挿入された外部メモリからテーブルに関するデータを読み出すように構成されている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、パソコンなどの外部情報端末から送信されたデータ情報を受け付けて、当該データ情報に基づいて、テーブル記憶部に記憶されたテーブルを書き換えるように構成されていてもよい。
【0094】
(9)上記実施形態2においては、出力部が、チューブ属性識別部による識別結果を外部情報端末に送信する機能を有する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、画像情報等を表示する表示手段(ディスプレイ)が医療用チューブシール装置に設けられており、チューブ属性識別部による識別結果が当該表示手段に表示されるように構成されていてもよい。
【0095】
(10)上記各実施形態においては、チューブ溶着部の数が1個である場合(いわゆる1点シーラー)を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。チューブ溶着部の数が2個以上である医療用チューブシール装置であっても、本発明を適用可能である。
【0096】
(11)上記実施形態1においては、図7を用いて説明したように、電極21,22への高周波電流の印加開始時から印加停止時までにおいて、電極21の移動速度の切替えポイントが1箇所である場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電極の移動速度の切替えポイントは2箇所以上であってもよく、さらに多い段階で移動速度を低下させてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1,2 医療用チューブシール装置
10 装置本体
12 スロット部
20 チューブ溶着部
21,22 電極
23,24 電極支持部
30 電動シリンダ
32 モータ
34 運動変換部
36 進退部材
38 モータ格納部
40 検知部
42 トリガー部材
44 赤外線センサ
50,150 チューブ属性識別部
52 負荷検出部
54 移動量検出部
60 電源部
70 電源スイッチ
80 テーブル記憶部
82 テーブル書換部
90,190 制御部
180 出力部
182 入力受付部
d1,d2,d3,d4,d5 電極間距離
T チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極(21,22)を有するチューブ溶着部(20)と、
前記一対の電極(21,22)を接近又は離隔させる方向に沿って、前記一対の電極(21,22)のうち少なくとも一方の電極を移動させる電動シリンダ(30)と、
前記一対の電極(21,22)によって医療用チューブを挟んだときの、前記電動シリンダ(30)に加わる負荷を検出することにより、前記医療用チューブの属性を識別するチューブ属性識別部(50)と、
制御部(90)とを備え、
前記制御部(90)は、
前記チューブ溶着部(20)のチューブ溶着動作を制御するチューブ溶着動作制御機能(F1)と、
前記電動シリンダ(30)の駆動を制御する電動シリンダ駆動制御機能(F2)と、
前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際に前記一対の電極(21,22)を最も接近させるときの、当該一対の電極間の最接近距離を調整する最接近距離調整機能(F4)と、
前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着し始めてから溶着し終えるまでに要する溶着時間を調整する溶着時間調整機能(F5)とを少なくとも有し、
前記制御部(90)は、前記チューブ溶着動作制御機能(F1)及び前記電動シリンダ駆動制御機能(F2)の発揮により、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着しているときの前記一対の電極(21,22)の移動速度を調整することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用チューブシール装置において、
前記制御部(90)は、
前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際に前記電動シリンダ(30)から医療用チューブへと加える力を調整する加圧力調整機能(F3)をさらに有することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の医療用チューブシール装置において、
前記電動シリンダ(30)は、
モータ(32)と、
前記モータ(32)による回転運動を前記電極の移動する方向に沿った直線運動に変換する運動変換部(34)と、
前記運動変換部(34)によって変換された前記直線運動に基づいて、前記電極の移動する方向に沿って進退自在に構成された進退部材(36)とを有し、
前記チューブ属性識別部(50)は、
前記電動シリンダ(30)に加わる負荷を検出する負荷検出部(52)と、
前記進退部材(36)の移動量を検出する移動量検出部(54)とを有することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用チューブシール装置において、
前記制御部(90)は、
前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記医療用チューブを溶着し終えてから前記一対の電極(21,22)を離隔させる方向に沿って移動させるまでの時間を調整する待機時間調整機能(F6)をさらに有することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用チューブシール装置において、
前記医療用チューブシール装置(1)の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ(70)をさらに備え、
前記制御部(90)は、
前記電源スイッチ(70)をOFFからONに切り替えたときには、前記一対の電極(21,22)間の距離がゼロとなるように前記一対の電極(21,22)同士を一旦接近させた後、前記一対の電極(21,22)間に医療用チューブを配置することができるように前記一対の電極(21,22)を再び離隔させるゼロ点調整機能(F7)をさらに有することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用チューブシール装置において、
医療用チューブの属性と、当該属性に応じた前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度とを対応付けたテーブルを記憶するテーブル記憶部(80)をさらに備え、
前記制御部(90)は、
前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記テーブル記憶部(80)に記憶された前記テーブルを参照し、前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度を調整することを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項7】
請求項6に記載の医療用チューブシール装置において、
前記テーブルに関するデータを装置外部から受け付け、当該データに基づいて、前記テーブル記憶部(80)に記憶された前記テーブルを書き換えるテーブル書換部(82)をさらに備えることを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用チューブシール装置において、
前記チューブ属性識別部(150)による識別結果を装置外部に出力する出力部(180)と、
前記チューブ溶着動作を行う際の前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度に関して、装置外部からの入力を受け付ける入力受付部(182)とをさらに備え、
前記制御部(190)は、
前記入力受付部(182)に入力された入力情報に基づいて、前記チューブ溶着動作を行う際の前記最接近距離、前記溶着時間及び前記移動速度を調整することを特徴とする医療用チューブシール装置(2)。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用チューブシール装置において、
前記制御部(90)は、前記チューブ属性識別部(50)による識別結果に基づいて、前記移動速度を段階的に低下させることを特徴とする医療用チューブシール装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−121360(P2011−121360A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232098(P2010−232098)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【出願人】(391015926)千代田電機工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】