説明

医療用チューブ

本発明は、内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜90重量%およびポリプロピレン10〜50重量%を含む内層と;中間層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ45〜55重量%およびポリプロピレン45〜58重量%を含む中間層;および外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜55重量%およびポリプロピレン45〜80重量%を含む外層を含むことを特徴とする医療用チューブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNON−PVC系医療用チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用チューブには、医療用、診断用、および治療用をはじめとしてどのような目的であれ、医療用液体容器(Bag)に結合される形態と患者の体の中に挿入される形態などがある。また、チューブを医療用液体容器(Bag)に結合したり医療用液体容器から分離したりする時に使うポートも医療用チューブの範疇に含まれる。
【0003】
一般的に医療用液体容器は輸液、血液などの医療用として用いられる液体を入れる容器を総称するものである。前記医療用液体容器には、通常、液体流入のために一端部が液体容器に結合されたチューブが備えられており、前記チューブの下端部には密封材料が結合される。前記密封材料としては主にプラスチックを使うが、医療用チップ(tip)を結合したりもする。前記医療用チップにはゴム栓を含む形態と含まない形態がある。
【0004】
チューブが医療用として使われるためには色々な特性が求められるが、その中でも医療用液体容器材料に対する結合特性は必須である。特に、医療用液体容器の材料としてNON−PVC材料の使用が求められる現状では、PVCチューブ程度の透明性、耐熱性、柔軟性などの物理的性能を有しつつ、NON−PVC材料と容易に結合できる医療用チューブの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、PVCチューブ以上の透明性、柔軟性、耐熱性、および薬液安定性を示し、NON−PVC系医療用液体容器に対する優れた熱接着性とガス遮断性を有する医療用チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜90重量%およびポリプロピレン10〜50重量%を含む内層;
中間層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ45〜55重量%およびポリプロピレン45〜58重量%を含む中間層;および
外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜55重量%およびポリプロピレン45〜80重量%を含む外層を含むことを特徴とする医療用チューブを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用チューブは、透明性、柔軟性、耐熱性、および薬液安定性に優れるだけでなく、NON−PVC系医療用液体容器に対する優れた熱接着性とガス遮断性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による医療用チューブの概略的な断面図である。
【図2】一般的に用いられる医療用液体容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、
内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜90重量%およびポリプロピレン10〜50重量%を含む内層;
中間層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ45〜55重量%およびポリプロピレン45〜58重量%を含む中間層;および
外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜55重量%およびポリプロピレン45〜80重量%を含む外層を含むことを特徴とする医療用チューブに関する。
【0010】
本発明の医療用チューブにおいて、前記内層はポリエチレン1〜40重量%をさらに含むことができる。また、外層はポリエチレン1〜20重量%をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の医療用チューブにおいて、前記内層、中間層、および外層は、前記各層に求められる物性を充足させるために互いに異なる組成比を有することが好ましい。
【0012】
本発明の医療用チューブは、透明性、柔軟性、耐熱性、および薬液安定性に優れるだけでなく、NON−PVC系医療用液体容器に対する優れた熱接着性とガス遮断性を有するために医療分野で非常に有用に使われ得る。
【0013】
本発明において、ポリプロピレンベースのエラストマはポリプロピレンと熱可塑性エラストマが主成分である樹脂を意味する。前記熱可塑性エラストマとしては、例えば、スチレンブロックコポリマー(SBS、SIS、水素添加SBC)、オレフィン系エラストマ(非架橋型/架橋型)、SBCコンパウンド(SBS、水素添加SBC、非架橋型/架橋型)、塩化ビニル系エラストマ(TPVC)、塩素化ポリエチレン系エラストマ(CPE)、ウレタン系エラストマ(TPU)、ポリエステル系エラストマ(TPEE)、ポリアミド系エラストマ(TPAE)、フッ素系エラストマ、塩素化エチレンコポリマー架橋体アロイ、シリコン系エラストマ、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エステルハロゲン系ポリマーアロイなどが挙げられる。
【0014】
本発明の医療用チューブにおいて、前記内層を構成する成分の含量は、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜90重量%およびポリプロピレン10〜50重量%であることが好ましい。前記内層は医療用チップ(tip)を挿入する部分であるため、前記含量比はチップの連結および製品使用時におけるチップの離脱を防止するために好ましい組成比率を実現したのである。すなわち、前記ポリプロピレンベースのエラストマ含量が50重量%未満であると、柔軟性が低いためにチューブ製造設備とのトラブルの発生可能性は低いが、医療用チップの挿入性およびチップの離脱防止性が低下する問題が発生し、90重量%超過であると、柔軟性が増加しすぎてチューブ製造設備とのトラブルが発生する。
【0015】
前記ポリプロピレンの含量が10重量%未満であると、相対的にポリプロピレンベースのエラストマの含量が増加し、柔軟性が増加しすぎてチューブ製造設備とのトラブルおよび医療用液体容器(Bag)から容易に分離してしまう問題が発生し、50重量%超過であると、相対的にポリプロピレンベースのエラストマの含量が減少し、チップの挿入性およびチップの離脱防止性などの機能的な問題が発生する。
【0016】
本発明の医療用チューブにおいて、前記内層は、内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜80重量%およびポリプロピレン20〜50重量%からなるか;ポリプロピレンベースのエラストマ50〜70重量%およびポリプロピレン10〜30重量%と共にポリエチレン1〜40重量%をさらに含むことがより好ましい。前記組成比の意味は前記で説明した通りである。但し、前記組成比は、上記のように特定された組成を有する場合により好ましい組成比の範囲を限定しているのである。
【0017】
特に医療用チップを使う場合、ポリエチレンが前記のような範囲で含まれる場合には、医療用チップの挿入性およびチップの離脱防止性の面でポリプロピレンだけが含まれた場合よりさらに優れた物性を示す。したがって、前記ポリエチレンが1重量%未満であると、添加による効果発現が微弱であり、40重量%超過であると、添加による効果がこれ以上増加せず、滅菌時に求められる耐熱性が弱まり、相対的にポリプロピレンの添加量が減少してそれと関連した問題が発生する。
【0018】
本発明の医療用チューブにおいて、前記中間層はチューブの柔軟性を向上させる役割と内層と外層を接着して連結する役割を果たす。前記中間層を構成する成分の含量は、ポリプロピレンベースのエラストマ45〜55重量%およびポリプロピレン45〜58重量%を含むことが好ましい。前記ポリプロピレンベースのエラストマの含量が45重量%未満であると、相対的にポリプロピレンの含量が多すぎてチューブの柔軟性が落ち、55重量%超過であると、中間層の柔軟性が大きすぎてチューブの硬度に否定的な影響を及ぼす。また、前記ポリプロピレンが45重量%未満であると、中間層の硬度が弱すぎてチューブの硬度に問題が発生し、58重量%超過であると、相対的にポリプロピレンベースのエラストマの含量が減少するためにチューブの柔軟性が低下する。
【0019】
本発明の医療用チューブにおいて、前記外層はチューブの加工性を調節する役割を果たし、これは、チューブ製造設備における作業性に直接的な関連がある。例えば、外層のポリプロピレン(PP)含量が低い場合には、柔軟しすぎて設備のチューブ供給装置における連続作業ができない場合が発生する。また、本発明のチューブは医療用液体容器に使われ、前記医療用液体容器は主にポリオレフィン系樹脂プラスチックフィルムから製造される。したがって、本発明の医療用チューブの外層は、前記医療用液体容器のプラスチックフィルム内層との熱接着が容易になるように、ポリプロピレンの含量を上げて製造する。
【0020】
前記外層を構成する成分の含量は、外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜55重量%およびポリプロピレン45〜80重量%を含むことが好ましい。前記ポリプロピレンベースのエラストマが20重量%未満であると外層の柔軟性が不足し、55重量%超過であると柔軟しすぎて設備のチューブ供給装置における連続作業ができない場合が発生する。また、前記ポリプロピレンが45重量%未満で含まれる場合には、医療用液体容器との熱接着が悪くなり、相対的にポリプロピレンベースのエラストマ含量が多くなって、前記で言及したように作業性が悪くなる。また、80重量%を超過する場合には外層の柔軟性が不足する。
【0021】
本発明の医療用チューブにおいて、前記外層は、外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ30〜55重量%およびポリプロピレン45〜70重量%からなるか;ポリプロピレンベースのエラストマ20〜54重量%およびポリプロピレン45〜70重量%と共にポリエチレン1〜20重量%をさらに含むことがより好ましい。前記組成比の意味は上記で説明し通りである。但し、前記組成比は上記のように特定された組成を有する場合により好ましい組成比の範囲を限定しているのである。
【0022】
特に、上記のようにポリエチレンを一定量添加すると、ポリオレフィン材質の医療用液体容器と接着する時にポリプロピレンだけを含む場合より、さらに様々な材質の容器に選択的に使われ得る。
【0023】
前記ポリエチレンが1重量%未満であると、添加による効果発現が微弱であり、20重量%超過であると、添加による効果がこれ以上増加せず、滅菌時に求められる耐熱性が弱くなり、相対的にポリプロピレンの添加量が減少してそれと関連した問題が発生する。
【0024】
本発明の医療用チューブは、チューブ総重量に対し、内層5〜10重量%、中間層75〜80重量%、および外層15〜20重量%を含んでなることが好ましい。
【0025】
本発明の医療用チューブを構成する内層、中間層、および外層は、各層に対応するポリマーのブレンド(blend)によって形成され得る。
【0026】
一般的に、医療用チップは医療用チューブに挿入して、別途の接着剤を使うことなく熱接着によって結合する。本発明の医療用チューブの内層は医療用チップの挿入が容易である反面、離脱は容易ではない優れた特性を有する。また、薬品が直接接する部分として、薬液安定性にも優れている。
【0027】
また、一般的に、医療用チューブは、医療用液体容器に挿入された状態で熱接着によって固定されるが、本発明の医療用チューブの外層はプラスチックフィルムから製造される医療用液体容器との熱接着が容易である特性を有する。
【0028】
本発明の医療用チューブのようなポリオレフィン系医療用チューブは、低い降伏強度を有するため、ネッキングと呼ばれる現象が発生しやすい。ネッキングは、チューブの縦軸に沿った適当な変形力下でチューブを伸張させる時、チューブ直径が局地的に減少する現象である。降伏強度とモジュラスとの間には線形比例関係があるため、本発明では、材料のモジュラスを増加させて降伏強度を増加させることによってこの問題を解決する。
【0029】
本発明の医療用チューブは医療用液体容器のポートおよび輸液セットの連結ラインなどとして使われる。前記輸液セットは病院で輸液(点滴)を受ける時、輸液から患者の体までに移送が容易になるようにする注射針、チューブ、点滴調節チャンバー、輸液容器に刺すスパイクプラスチック針などの全ての部品またはシステムを意味する。本発明の医療用チューブは医療用として用いられる各種溶液の移送に使われ、特に、血液移送に有用に使われ得る。
【0030】
本発明の医療用チューブは、成形後、冷却ステップにおいて乾式配向処理または湿式配向処理することができる。また、搬送、貯蔵、および使用中のメモリ効果による収縮問題は、成形およびエイジング後にチューブ内に窒素を充填する方法により解決する。
【0031】
本発明の医療用チューブにおいて、チューブの成形に用いられる2つ以上の材料(樹脂)は溶融混合またはタンブル混合方式によって混合することができる。また、チューブの成形時に用いられる押出機において、ダイピンの外径、ダイブッシング(bushing)の内径などはチューブの収縮性を考慮して条件を設定する。本発明の医療用チューブは3層の構造を同時に押出して製造する。
【0032】
また、本発明は、前記医療用チューブを含む医療用液体容器セットを提供する。
【実施例】
【0033】
実施例1、2および比較例1〜4
(1)医療用チューブの製造
下記表1に記載された組成および組成比により、溶融混合またはタンブル混合方式によって材料を混合した。チューブの成形時に用いられる押出機において、ダイピンの外径、ダイブッシング(bushing)の内径などはチューブの収縮性を考慮して条件を設定し、内層、中間層、および外層の3層の構造を同時に押出して実施例1の医療用チューブを製造した。
【0034】
実施例2および比較例1〜3の医療用チューブは、下記表1に記載された組成および組成比に従って前記実施例1と同じ方法によって製造した。
【0035】
比較例4のチューブとしては市販のEVAの電子線架橋によるNON−PVCチューブを使った。
【0036】
(2)医療用チューブの性能評価
前記で製造された実施例1、2および比較例1〜4の医療用チューブに対する性能を次の方法により評価して表1および表2に示す。
【0037】
A.フィルム適合性の評価
1)評価条件
前記で製造されたチューブを医療用液体容器のポート部分に結合した後に評価を行った。
【0038】
前記医療用チューブを滅菌した後に5日以上保管し、評価を行った。
【0039】
2)評価項目および方法
−LEAK:チューブおよびポート部分のLEAK(液漏れ)を確認する。
−BENDING:チューブの外観上の曲げを確認する。
−DROP分離:1.5mの高さからポート方向に落としてチップ(tip)の分離有無を確認する。
−強制分離:前項でチップ(tip)が分離しなかったのを手で一定の力を加えて分離有無を確認する。
−耐熱性:医療用チューブを121℃で滅菌し、屈伸(bending)の発生有無によってその結果を評価する。
−透明性:前記滅菌実施後、肉眼で透明性を評価する。
−柔軟性:MODULUS測定(フィルム形態)
−ガス遮断性:OTR測定(フィルム形態)
【0040】
【表1】

【0041】
前記表1において、前記PPは DAE HAN OIL CHEMICAL社のPP Terpolymerであり、前記PEはDOW CHEMICAL社のENGAGEであり、前記ポリプロピレンベースのエラストマ1、2、および3は日本JSR社のDYNARON、日本KURARAY社のHYBRAR、およびKRATON社のKRATONの中から選択して用いた。
【0042】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の医療用チューブは、透明性、柔軟性、耐熱性、および薬液安定性に優れるだけでなく、NON−PVC系医療用液体容器に対する優れた熱接着性とガス遮断性を有するために医療分野で非常に有用に使われ得る。
【符号の説明】
【0044】
10:内層
20:中間層
30:外層
40:医療用チューブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜90重量%およびポリプロピレン10〜50重量%を含む内層;
中間層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ45〜55重量%およびポリプロピレン45〜58重量%を含む中間層;および
外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜55重量%およびポリプロピレン45〜80重量%を含む外層を含むことを特徴とする医療用チューブ。
【請求項2】
前記内層は、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜70重量%およびポリプロピレン10〜30重量%と共にポリエチレン1〜40重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項3】
前記外層は、ポリプロピレンベースのエラストマ20〜54重量%およびポリプロピレン45〜70重量%と共にポリエチレン1〜20重量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の医療用チューブ。
【請求項4】
前記内層は、内層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ50〜80重量%およびポリプロピレン20〜50重量%からなることを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項5】
前記外層は、外層の総重量に対し、ポリプロピレンベースのエラストマ30〜50重量%およびポリプロピレン50〜70重量%からなることを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項6】
前記医療用チューブは、チューブ総重量に対し、内層5〜10重量%、中間層75〜80重量%、および外層15〜20重量%を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項7】
前記内層、中間層、および外層は、各層を構成するポリマーのブレンド(blend)によって形成されることを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項8】
医療用液体容器のポート、輸液セットを構成する連結ライン、または血液移送用として使われることを特徴とする、請求項1に記載の医療用チューブ。
【請求項9】
請求項1の医療用チューブを含む医療用液体容器セット。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523258(P2010−523258A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502947(P2010−502947)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002072
【国際公開番号】WO2008/127046
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(509281151)チョンウェ コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】