説明

医療用レーザ装置

【課題】術者がより使いやすく安全に利用できる医療用レーザ装置を提供する。
【解決手段】医療用レーザ装置10はレーザ発振器13とガイド光源16を備える。レーザ発振器13とガイド光源16から出力される治療用レーザ光14とガイド光16は導光路18により被照射体22へ導かれる。入力部11で治療用レーザ光14の出力条件(出力パワーや照射パターンなど)を規定する設定モードが設定される。出力制御部12は設定された設定モードに応じてレーザ発振器13から出力させる治療用レーザ光14を制御する。ガイド光制御部20は設定された設定モードに応じてガイド光源16から出力されるガイド光16の出力条件(発光色、光量、照射スポット径、照射パターンなど)を制御する。手術中の術者はガイド光16の発光色などから治療用レーザ光14の設定モードを視覚的に容易に確認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ発振器とガイド光源を備える医療用レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザの研究は古くから行われ、様々な媒体によるレーザ発振が可能となり、今日においてはごく一般的な技術として、通信、加工、医療などの技術に応用されている。
【0003】
近年、医科や歯科分野、獣医分野において、生体組織(例えば、歯肉や皮膚などの軟組織)の切開、止血、凝固および蒸散などの手術・治療を目的とした医療用レーザ装置が広く用いられている。医療用レーザ装置は、レーザ光の波長、出力パワーおよび照射パターンでその有効性が決まる。また、この種の医療用レーザ装置としてNd-YAGレーザ、炭酸ガスレーザなどを用いたものがよく知られているが、いずれも非可視光レーザであるため、照射位置を指示するガイド光を治療用レーザ光と併用する構成が広く普及している。さらに、これらの医療用レーザ装置には治療用レーザ光の出力パワーや照射パターンなどの設定モードを、治療の用途によって変えることができるものも多い(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2750146号明細書
【特許文献2】特開平7−178112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のこの種の医療用レーザ装置では、治療用レーザ光の設定モード(出力パワーや照射パターン)に応じたガイド光の違いはなく、治療中の術者が視覚的にレーザ出力パワーや照射パターンを確認する手段がなかった。出力パワーや照射パターンは術者が設定モードを入力する操作パネルに表示されているが、治療中の術者には操作パネルを見る余裕はないのが一般的である。また、ブザー音の連続音か断続音などといった音色、音の大きさにより設定モードを術者に知らせる方法があるが、院内の騒がしさや他の機器の音による聞き間違いの可能性があり、最適な方法とは言えない。このように従来のこの種の医療用レーザ装置では、手術中に出力パワーや照射パターンを確認しづらく、万一の設定ミスの際に誤照射する可能性があった。
【0006】
また照射位置を指示するためのガイド光は非常に有用であるが、治療中はまぶしく感じられることや、赤色のガイド光は血の色と判別しづらく治療の様子が分かり難いこともあり、ガイド光がその機能を十分に発揮しているとは言い難い。
【0007】
本発明は、術者がより使いやすく安全に利用できる医療用レーザ装置を提供することを目的とする。具体的には、本発明は、手術中の術者が治療用レーザ光の出力パワーや照射パターンを容易に確認できるようにすること、並びにガイド光の機能をより十分に発揮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用レーザ装置は、レーザ発振器とガイド光源とを備える医療用レーザ装置であって、前記レーザ発振器から出力される治療用レーザ光の出力条件を規定する設定モードを設定するための入力部と、前記設定された設定モードに従って前記レーザ発振器から出力される前記治療用レーザ光を制御する出力制御部と、前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御するガイド光制御部と、前記ガイド光と前記治療用レーザ光を目的部位に導く導光路とを備えた構成を有する。
【0009】
この構成により、設定モードで規定された治療用レーザ光の出力条件(治療用レーザ光の出力パワーや照射パターン)をガイド光の出力条件(例えば光量、発光色、照射スポット径、照射パターン)によって治療用レーザ光の照射中に視覚的に識別することが可能となる。つまり、手術中の術者はガイド光の光量、発光色、照射パターンなどで治療用レーザ光の出力パワーや照射パターンを容易に確認できる。その結果、誤った設定の出力パワーや照射パターンでの治療用レーザ光の照射を防止でき、安全性と使いやすさを向上させることができる。
【0010】
好ましくは、本発明の医療用レーザ装置は、第1のON状態と第2のON状態に設定可能な操作部をさらに備え、前記操作部が前記第1のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させる一方、前記出力制御部は前記レーザ発振器を非出力状態とし、前記操作部が前記第2のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させると共に、前記出力制御部は前記レーザ発振器から前記治療用レーザ光を出力させ、前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御する。
【0011】
この構成により、治療用レーザ光を照射中(操作部は第2のON状態に設定されている)のガイド光の出力条件(光量、照射パターン、発色光など)を治療用レーザ光が照射されている目的部位を見やすいように選定することで、術者が治療をし易くなる。例えば、治療用レーザ光を照射中はガイド光の光量を低減してもよく、ガイド光の照射パターンや発光色を目的部位を見やすいように選定してもよい。
【0012】
また、本発明の医療用レーザ装置は、レーザ発振器とガイド光源とを備える医療用レーザ装置であって、前記レーザ発振器から出力される治療用レーザ光を制御する出力制御部と、前記ガイド光源から出力されるガイド光を制御するガイド光制御部と、前記ガイド光と前記治療用レーザ光を目的部位に導く導光路と、第1のON状態と第2のON状態に設定可能な操作部とを備え、前記操作部が前記第1のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させる一方、前記出力制御部は前記レーザ発振器を非出力状態とし、前記操作部が前記第2のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させる共に、前記出力制御部は前記レーザ発振器から前記治療用レーザ光を出力させ、前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、治療用レーザ光の照射中、ガイド光の出力条件(光量、発光色、照射パターンなど)によって、治療中の術者が視覚的に治療用レーザの設定モード(出力パワーと照射モード)を容易に識別することが可能となり、誤った設定の出力パワーや照射パターンでの治療用レーザ光の照射を防止でき、安全性と使いやすさを向上させることができる。さらに、治療光照射中は見やすいガイド光の発光色、照射パターンを選定することやガイド光の明るさを抑えることで、術者が治療をし易くなる。このように本発明により術者がより使いやすく安全に利用できる医療用レーザ装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における医療用レーザ装置の構成の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態1における医療用レーザ装置のレーザ照射パターンを示す図。
【図3】本発明の実施の形態1における医療用レーザ装置の設定モードとガイド光の条件を示す図。
【図4】本発明の実施の形態2における医療用レーザ装置のフットスイッチとガイド光および治療用レーザ光の動作の一例を示す図。
【図5】本発明の実施の形態2における医療用レーザ装置の動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る医療用レーザ装置は、レーザ発振器とガイド光源を備え、治療用レーザ光の設定モード(出力パワーや照射パターンなど)に応じてガイド光源から出力されるガイド光の出力条件(発光色、光量、照射パターンなど)を制御するガイド光制御部を備えることにより、治療用レーザの照射中であっても術者が治療レーザの出力設定モードを容易に確認できるようにし、安全性と使いやすさを向上させている。
【0017】
図1に本発明の実施の形態1に係る医療用レーザ装置10の概略構成を表すブロック図を示す。
【0018】
図1に示すように、医療用レーザ装置10はレーザ発振器13とガイド光源15を備える。また、医療用レーザ装置10は、レーザ発振器13から出力される治療用レーザ光14の出力条件を規定する設定モード(出力パワーや照射パターンなど)を入力する入力部11、レーザ発振器13から出力される治療用レーザ光14を設定モードに従って制御する出力制御部12、ガイド光源15から出力されるガイド光16を制御するガイド光制御部20、出力された治療用レーザ光14とガイド光16を被照射体22まで導く導光路18とハンドピース・チップ19、レーザ発振器13から出力された治療用レーザ光14とガイド光源15から出力されたガイド光16を導光路18に集光して入射させる集光レンズ17、治療用レーザ光14およびガイド光16の照射のONとOFFを切り換える操作部21を備える。本実施の形態1では、操作部21はONとOFFの2つの状態に切換可能である。
【0019】
出力制御部12は、操作部21がONとOFFのいずれであるかに応じて、治療用レーザ光14の照射と停止を指示する信号をレーザ発振器13に送る。また、出力制御部12は、操作部21がONのときには、使用者が入力部11で設定した設定モードの出力パワー、照射パターンで治療用レーザ光14を出力するようにレーザ発振器13を動作させる。つまり出力制御部12は入力部11で設定された設定モードに従って、レーザ発振器13から出力される治療用レーザ14を制御する。さらに、出力制御部12は、操作部21がONとOFFのいずれであるかに応じて、ガイド光16の照射と停止を指示する信号をガイド光制御部20に送る。また、出力制御部12は使用者が入力部11で設定した設定モード(出力パワー、照射パターン)に関する情報をガイド光制御部20に送る。
【0020】
本実施の形態1では、操作部21がONのときは、出力制御部12がレーザ発振器12に治療用レーザ光14を出力させると共に、ガイド光制御部20がガイド光源15からガイド光16を出力させる。一方、操作部21がOFFのときは、出力制御部12はレーザ発振器12からの治療用レーザ光14の出力を停止させ、ガイド光制御部20はガイド光源15からのガイド光16の出力を停止させる。つまり、本実施の形態1では、操作部21がONとOFFのいずれであるかに応じて、治療用レーザ光14とガイド光16が共に照射又は停止される。
【0021】
レーザ発振器13としては例えば、10.6μmの波長の炭酸ガスレーザを用い、用途に応じて出力パワーの高低や照射のON/OFF時間を変えて適切な設定モードを選定し、生体組織の切開、止血、凝固および蒸散を行う。炭酸ガスレーザ以外に、ルビーレーザ、半導体レーザ、Nd:YAGレーザ、Er:YAGレーザなどをレーザ発振器13として用いてもよい。レーザ発振器13から出力された治療用レーザ光14を患者患部の被照射体22まで導く導光路18の形状は光ファイバーまたは中空ファイバーによるファイバー式でもミラー反射による多関節式のものでもよい。
【0022】
図2は治療用レーザ光14の照射パターンの例を示した図である。図2(a)は一定のレーザパワーを連続照射(CW)する設定モードである。出力パワーは1W〜15W程度が想定される。この連続照射は高出力を必要とする切開や止血、パルス照射は熱影響を抑えた蒸散や凝固などといった治療に用いられる。図2(b)はレーザ照射のON/OFFの時間を設けたパルス照射である。このパルス照射ではレーザ照射の休止時間があることで、被照射体の痛みや熱影響を抑えることができる設定モードとなる。使用者は用途に応じて出力パワーの高低や照射のON/OFF時間を変えて適切な設定モードの条件を設定する。
【0023】
ガイド光源15は、可視光線を出力可能であれば、固体レーザ、液体レーザ、半導体レーザであってもよく、LEDであってもよい。
【0024】
ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14の出力パワーの高低や照射のON/OFF時間を選定した設定モードの条件に応じて、ガイド光源15から出力されるガイド光16を適切な状態に制御する。言い換えれば、ガイド光制御部20は、入力部11で設定された治療用レーザ光14の設定モード(出力パワーと照射パターン)に応じて、ガイド光源15から出力されるガイド光16の出力条件を切り換える。
【0025】
例えば、ガイド光制御部20は、図3に示すように、設定モードが連続照射であるかパルス照射であるかに応じてガイド光源15から出力するガイド光16の発光色を変更する。連続照射は主に切開や止血の際に利用する設定モードであり、出血を伴うことが多いため、ガイド光16は赤色以外が望ましく、図3の例では緑色のガイド光16を用いる。なお、緑色以外でも赤色を除く色を連続照射の際のガイド光16の発光色として選んでもよい。一方、パルス照射は蒸散や凝固などといった出血をあまり伴わない治療に用いられるため、図3の例ではガイド光16として安価な構成で得られる赤色とする。手術中の術者は、ガイド光16が赤色と緑色のずれであるのかによって、治療用レーザ光14の設定モードが連続照射とパルス照射のいずれであるのかを視覚的に容易に確認できる。ガイド光16の発光色を切り換えるためには、ガイド光源15がそれぞれ異なる波長の複数の発光素子を備え、発光される発光素子を切り換える構成が考えられる。また、ガイド光源15が単一の発光素子とそれぞれ透過波長の異なる複数のフィルタを備え、発光素子から出力された光を透過させるフィルタを切り換える構成でもよい。
【0026】
治療の目的、症例や患部の状態に応じて治療用レーザ光14の出力パワーの高低を設定モードで選定される。ガイド光制御部20は、この治療用レーザ光14の出力パワーの高低に応じてガイド光源15から出力するガイド光16の光量を制御してもよい。例えば、治療用レーザ光14の出力パワーが1W〜15Wである場合、ガイド光制御部20は、出力パワーが15Wのときに最も明るく、出力パワーが1Wのときに最も明るさが低くなるように、ガイド光16の光量を連続的又は段階的な変化させる構成が考えられる。治療中の術者は、ガイド光16が明るいか暗いかによって、治療用レーザ光14の出力パワーの高低を視覚的に容易に確認できる。
【0027】
また、ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14の出力パワーの高低の設定に応じて、ガイド光16の照射スポット径を制御してもよい。例えば、治療用レーザ光14の出力パワーが1W〜15Wである場合、ガイド光制御部20は、出力パワーが15Wのときの照射スポット径が最も大きく、出力パワーが1Wのときに照射スポット系が最も小さくなるように、ガイド光16の照射スポット径を連続的又は段階的に変化させる構成が考えられる。手術中の術者は、ガイド光16の照射スポット径の大小によって、治療用レーザ光14の出力パワーの高低を視覚的に容易に確認できる。また、被照射体の影響が大きい高出力のときにガイド光16の照射スポット径を大きくすることで、治療の範囲に近い大きさをガイド光16で見ることができることになる。
【0028】
さらに、ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14の出力パワーの高低の設定に応じて、ガイド光16の照射パターンを制御してもよい。例えば、連続照射の際の治療用レーザ光14の出力パワーが1W〜15Wである場合、出力パワーが15Wのときに点滅周期(ON/OFF周期)が最も短くなり、出力パワーが1Wのときに点滅周期が無限大(連続照射)となるように、ガイド光16の点滅パターンを連続的又は段階的に変化させる構成が考えられる。治療用レーザ光14の連続照射を行っている術者は、ガイド光16の点滅パターンによって、治療用レーザ光14の出力パワーの高低を視覚的に容易に確認できる。治療用レーザ光14の照射時間が一定時間を経過したところでガイド光16の照射ON時間を短く点滅させることにより、術者へ照射時間を知らせることも可能である。
【0029】
ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14の設定モードに応じたガイド光16の発色光、光量、照射スポット径、および照射パターンの制御のうち、いずれか1つのみを採用してもよいし、これらのうち2つ以上を採用してもよい。
【0030】
本実施の形態1の医療用レーザ装置10では、設定モードで規定された治療用レーザ光14の出力条件(出力パワーや照射パターン)をガイド光16の出力条件(例えば光量、発光色、照射スポット径、照射パターン)によって治療用レーザ光14の照射中に視覚的に識別することが可能となる。つまり、手術中の術者はガイド光16の光量、発光色、照射スポット径、照射パターンで治療用レーザ光の出力パワーや照射パターンを容易に確認できる。その結果、誤った設定の出力パワーや照射パターンでの治療用レーザ光14の照射を防止でき、安全性と使いやすさを向上させることができる。
【0031】
なお、治療用レーザ光の設定のモードによりガイド光の発光色を変えることは前述したが、さらに患者の皮膚状態(皮膚色など)によりガイド光の発光色を変えても良い。また、ガイド光源が出力するガイド光ではなく、照明用の光源の出力条件を治療用レーザ光の設定モードに応じて制御してもよい。
【0032】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る医療用レーザ装置の全体的な構成は後述する操作部21を除いて第1の実施の形態と同様である。従って、以下の本実施の形態の説明において、医療用レーザ装置10の構成については図1を参照する。
【0033】
本発明の実施の形態2に係る医療用レーザ装置10は、ガイド光16のみの照射とガイド光16および治療用レーザ光14の両方を照射する機能を備える。具体的には、本実施の形態における操作部21はいわゆる2段式であり、OFF、第1のON状態、および第2のON状態という3つの状態を有する。図4を参照すると、操作部21がOFFであれば、ガイド光制御部20はガイド光源15からのガイド光16の出力を停止させ、主力制御部12もレーザ発振器13からの治療用レーザ光14の出力を停止させる。また、操作部21が第1のON状態であれば、ガイド光制御部20はガイド光源15からガイド光16を出力させるが、出力制御部12はレーザ発振器13からの治療用レーザ光14の出力を停止させる。さらに、操作部21が第1のON状態であれば、ガイド光制御部20がガイド光源15からガイド光16を出力させると共に、出力制御部12がレーザ発振器13から治療用レーザ光14を出力させる。
【0034】
また、本実施の形態に係る医療用レーザ装置10におけるガイド光制御装置20は、実施の形態1と同様に治療用レーザ14の設定モードに応じてガイド光16の出力条件を制御するだけでなく、ガイド光16のみを照射するときと治療用レーザ光14とガイド光16の両方を照射するときでガイド光16の光量を変更する。図4の例では、治療用レーザ光14を照射中のとき(操作部21が第2のON状態のとき)、ガイド光16のみを照射中のとき(操作部21が第1のON状態のとき)と比較してガイド光16の出力を低減させることで、まぶしさを低減して治療患部が見やすくできる。
【0035】
また、ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14を照射中のとき(操作部21が第2のON状態のとき)とガイド光16のみを照射中のとき(操作部21が第1のON状態のとき)でガイド光16の照射パターンを異ならせてもよい。例えば、ガイド光制御部20は、ガイド光16のみを照射中のとき(操作部21が第1のON状態のとき)はガイド光源15からガイド光16を連続照射させる一方、治療用レーザ光14とガイド光16の両方を照射中は治療用レーザ光14の照射時間に休止時間を設けるのと同じようにガイド光源15からガイド光16をパルス照射させてもよい。この場合、手術中の術者はガイド光16が連続照射であるかパルス照射であるかによって治療用レーザ光14を照射中であるかガイド光16のみを照射中であるかを視覚的に容易に確認できる。
【0036】
さらに、ガイド光制御部20は、治療用レーザ光14を照射中のとき(操作部21が第2のON状態のとき)とガイド光16のみを照射中のとき(操作部21が第1のON状態のとき)でガイド光16を異ならせてもよい。ガイド光16の発光色を切り換えるためには、ガイド光源15がそれぞれ異なる波長の複数の発光素子を備え、発光される発光素子を切り換える構成が考えられる。また、ガイド光源15が単一の発光素子とそれぞれ透過波長の異なる複数のフィルタを備え、発光素子から出力された光を透過させるフィルタを切り換える構成でもよい。治療用レーザ光14とガイド光16の両方を照射中はガイド光16を患部が見やすい発光色を選択することで、治療の様子が術者に分かりやくなる。
【0037】
次に本発明の実施の形態2にかかる医療用レーザ手術装置の動作について説明する。図5は医療用レーザ装置10の使用を開始してからレーザの照射を終了するまでの一例を示すフォローチャートである。
【0038】
初めに装置の電源を投入してから設定モードを使用者が設定入力する(S100、S101)。
【0039】
ここで設定入力された設定モードに応じたガイド光16の出力条件が前記の通り設定される(S102)。
【0040】
次に、治療用レーザ光14およびガイド光16の照射ON/OFF操作する操作部21を第1のON状態にするとガイド光16のみが出力される(S103、S104)。
【0041】
次に、操作部21を第2のON状態とするとガイド光16と治療用レーザ光14の両方が照射される(S105、S106)。
【0042】
ガイド光16と治療用レーザ光14はフットスイッチ21をOFFにすることで照射を停止させる(S108)。
【0043】
本実施の形態2によれば、出力制御部12とガイド光制御部20を備えることにより、ガイド光16のみを照射するときと治療用レーザ光14とガイド光16の両方を照射するときでガイド光の状態を制御することが可能となり、治療中にガイド光が明るすぎない光量、見やすい発光色、照射パターンを選定することができ、治療しやすい手術視野の確保、ガイド光出力を選定することができる。これにより、ガイド光の有している作用の効果を十分に発揮した使いやすい医用レーザ装置に特に有用である。
【0044】
実施の形態2のその他の構成及び作用は、実施の形態1と同様である。なお、ガイド光制御部20は、治療用レーザ14の設定モードに応じたガイド光16の出力条件の制御(実施の形態1における制御)は行わず、ガイド光16のみを照射するときと治療用レーザ光14とガイド光16の両方を照射するときでガイド光16の出力条件を変更する制御のみを実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の医療用レーザ装置によれば、レーザ照射中、視覚的に治療用レーザ光の出力パワーと照射モードを識別することが可能となり、誤った設定の出力パワーや照射モードでの治療用レーザ光の照射を防ぎ、安全性を向上させることができ、さらに、治療光照射中は見やすいガイド光の発光色を選定することやガイド光の明るさを抑えることで、術者が治療をし易くすることができるという効果を有し、より安全で使いやすさが求められる医療用レーザ手術装置に特に有用である。
【符号の説明】
【0046】
10 医療用レーザ装置
11 入力部
12 出力制御部
13 レーザ発振器
14 治療用レーザ光
15 ガイド光源
16 ガイド光
17 集光レンズ
18 導光路
19 ハンドピース・チップ
20 ガイド光制御部
21 操作部
22 被照射体
23 冷却ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発振器とガイド光源とを備える医療用レーザ装置であって、
前記レーザ発振器から出力される治療用レーザ光の出力条件を規定する設定モードを設定するための入力部と、
前記設定された設定モードに従って前記レーザ発振器から出力される前記治療用レーザ光を制御する出力制御部と、
前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御するガイド光制御部と、
前記ガイド光と前記治療用レーザ光を目的部位に導く導光路と
を備えた医療用レーザ装置。
【請求項2】
前記ガイド光制御部は前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光の発光色を制御することを特徴とする請求項1記載の医療用レーザ装置。
【請求項3】
前記ガイド光制御部は前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光の光量を制御することを特徴とする請求項1記載の医療用レーザ装置。
【請求項4】
前記ガイド光制御部は前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光の照射スポット径を制御することを特徴とする請求項1記載の医療用レーザ装置。
【請求項5】
前記ガイド光制御部は前記設定された設定モードに応じて前記ガイド光の照射パターンを制御することを特徴とする請求項1記載の医療用レーザ装置。
【請求項6】
第1のON状態と第2のON状態に設定可能な操作部をさらに備え、
前記操作部が前記第1のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させる一方、前記出力制御部は前記レーザ発振器を非出力状態とし、
前記操作部が前記第2のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させると共に、前記出力制御部は前記レーザ発振器から前記治療用レーザ光を出力させ、
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御することを特徴とする請求項1記載の医療用レーザ装置。
【請求項7】
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光の光量を制御する請求項6の記載の医療用レーザ装置。
【請求項8】
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第2のON状態であるときの前記ガイド光の光量を、前記操作部が前記第1のON状態であるときの前記ガイド光の光量よりも少なくすることを特徴とする請求項7記載の医療用レーザ装置。
【請求項9】
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光の照射パターンを制御することを特徴とする請求項6記載の医療用レーザ装置。
【請求項10】
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光の発光色を制御することを特徴とする請求項6記載の医療用レーザ装置。
【請求項11】
レーザ発生器とガイド光源とを備える医療用レーザ装置であって、
前記レーザ発振器から出力される治療用レーザ光を制御する出力制御部と、
前記ガイド光源から出力されるガイド光を制御するガイド光制御部と、
前記ガイド光と前記治療用レーザ光を目的部位に導く導光路と、
第1のON状態と第2のON状態に設定可能な操作部と
を備え、
前記操作部が前記第1のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源から前記ガイド光を出力させる一方、前記出力制御部は前記レーザ発振器を非出力状態とし、
前記操作部が前記第2のON状態に設定されると、前記ガイド光制御部は前記ガイド光源に前記ガイド光を出力させる共に、前記出力制御部は前記レーザ発振器から前記治療用レーザ光を出力させ、
前記ガイド光制御部は、前記操作部が前記第1及び第2のON状態のいずれであるかに応じて、前記ガイド光源から出力されるガイド光の出力条件を制御することを特徴とする医療用レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−19871(P2011−19871A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169959(P2009−169959)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】