説明

医療用具

【課題】 構造がシンプルであり、操作が簡単で短時間に行なうことができ、誤操作が起きにくく、医療事故が生じにくい医療用具、特に分岐管付き留置針を提供する。
【解決手段】
逆止弁を内部に取り付け、押圧ボタンを有する柔軟部を備えた第1ケース部と、逆止弁の流入側で当該第1ケース部と接続する第2ケース部とが、別部品である医療器具であって、当該第2ケース部の側方へ伸び、内部で当該第2ケース部の中空部と連通する分岐管を有することを特徴とする医療用具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または動物用の治療に用いる医療用具に関する。医療用具には、カテーテルの留置針(外針)、カテーテルの内針、翼状針、カテーテル用プラグ、翼状針用プラグ、点滴チューブ、点滴チューブ用プラグが含まれる。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003−260132号公報
【特許文献2】特開2004−000374号公報
【特許文献3】特開2004−041334号公報
【特許文献4】特開2004−097524号公報 本出願人は、特許文献1において、逆止弁を内蔵するカテーテルの留置針(外針)を提案し、特許文献2において、逆止弁を備えたカテーテル用外針や翼状針を提案し、特許文献3において逆止弁を内蔵するカテーテル用プラグを提案し、さらに、特許文献4において柔軟部を備えたフレームの内部に逆止弁を配置し、柔軟部を指で押すと、逆止弁を一時的に開放状態とすることができる医療用具及び動物治療用具を提案している。
【0003】
図5は従来の分岐管付きカテーテルの概略図である。
【0004】
中空円筒状のケース部35´の側面に斜め後方へ向かって中空円筒状の分岐管37が突出している。ケース部35´の後端35´a近くの内部にはゴム板15が取り付けてあり、ケース部35´の前方から後方へ向かう液流を止めるとともに、後方からカテーテル用内針1の金属製注射針を差し込み、貫通し、また、引き出し、密閉することができる。ケース部35´の前部31との間には円錐状のテーパー部38がある。ケース部35´の前部31には軟質樹脂製中空円筒状のカテーテル用外針2の後端が接続され固定されている。また分岐管37には軟質樹脂製あるいはゴム製のチューブ16の一端16aが接続されている。カテーテル用外針は留置針とも呼ばれている。
【0005】
カテーテル用内針1の先端1aは斜めに切断され鋭利となっており、皮膚に刺す際に痛みが生じにくいように、金属加工の際に生ずるバリ等を取り除いている。カテーテル用内針1の後部は挿込嵌合部19a、中央部19b、後端部19cが順に連続した部品に中心軸を共通にして接合されている。そして、カテーテル用内針1の後端1bは後端部19cの端面に一致して配置されており、カテーテル用内針1の後端1bにおいて、カテーテル用内針1の中空内部は開放されており、大気と連通している。中央部19bの側面には一方に伸びる板状の連続部19dと、指でつまみ、カテーテル用内針1を移動させるための、把持部19eが順に連続して取り付けてある。これらの部品は硬質樹脂製である。
【0006】
側岐管付きプラグ18は、中空直円筒部18aの側面に斜め後方へ向かって中空円筒状の側岐管18cが突出している。側岐管18cの自由端にはネジ付きキャップ18dが取り外し・密閉可能に取り付けてある。また、中空直円筒部18aの一端にはチューブ16の他端16bが接続されている。中空直円筒部18aの他端には不図示のネジ付きキャップと螺合するための接続用フランジ18bが形成されている。
【0007】
チューブ16の中央には、チューブの開放、遮断用の、開閉プレート17が取り付けてある。開閉プレート17は長方形板状であり、遮断用細幅部17gと開放用広幅部17fが連続して切り抜かれており、さらに、チューブ16への着脱のための着脱部17eも連続して切り抜かれている。チューブ16を開放用広幅部17fに通すと、チューブ16は圧迫されることなく、開放状態となり、薬液・血液が流動できる。一方、チューブ16を遮断用細幅部17gへ差し込むと、チューブ16は圧迫されて、遮断状態となり、薬液・血液は流動できなくなる。
【0008】
図5に示した従来の分岐管付きカテーテルの構造は上記のとおりであるが、その機能や使い方について、次に説明する。
【0009】
カテーテル用内針1の先端1aがケース部35´のゴム板15の中心を通り、カテーテル用外針2の内部を通過し、カテーテル用外針2の先端からわずかに突出するように、把持部19eを指でつまみ、カテーテル用外針2を精密に押し込む。
【0010】
このようにカテーテル用内針1と外針2とを組み合せた状態で人間や動物の皮膚に刺し込み、静脈の中へ内針1の先端1aを到達させる。すると、静脈から血液が内針1の先端1aから内針1の内部を通って逆流する。しかし内針1はステンレス鋼製であり、不透明であるから、内針1の内部の血液については外部から目視確認することはできない。このとき、チューブ16は開閉プレート17の遮断用細幅部17gによって圧迫されて遮断状態となっている。
【0011】
そして、逆流した血液が内針1の後端1bから血液が流出したのを確認した後に、内針1を引き抜き、内針1の先端1aをゴム板15から引き抜くことによって、ゴム板15は孔がなくなり、密閉状態となる。なお、外針2の先端は静脈の中に位置している。
【0012】
次に、開閉プレート17の開放用広幅部17fにチューブ16を移動させて、開放状態とする。すると、静脈の血圧によって血液がチューブ16を通り、側岐管付きプラグ18へ流れ込むが、側岐管18cはネジ付きキャップ18dによって密閉されているので、中空直円筒部18aへと血液が流れ込む。そして、分岐管付き留置針の中に混入している空気を接続用フランジ18bから血液とともに排出する。その直後に開閉プレート17の遮断用細幅部17gにチューブ16を移動させて、遮断状態とする。
【0013】
続いて、点滴チューブの一端に接続されたネジ付きキャップを接続用フランジ18bに螺合して接続する。点滴チューブの他端には点滴用薬液バッグが取り付けられている。
【0014】
その後に、側岐管18cのネジ付きキャップ18dを緩めて、点滴チューブを接続する際に混入した気泡を排出する。気泡排出が終了すると、ネジ付きキャップ18dを締めて、密封する。
【0015】
最後に、開閉プレート17の開放用広幅部17fにチューブ16を移動させて、開放状態とする。そして、点滴を開始する。
【0016】
そして、点滴を終了する時には、開閉プレート17の遮断用細幅部17gにチューブ16を移動させて、遮断状態とした後に、カテーテル用外針2を引き抜く。開閉プレート17を用いなくとも、点滴用薬液バッグの活栓を閉めて、薬液の供給を遮断した後に、外針2を引き抜いてもよい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図5に示した従来の分岐管付きカテーテルは、部品点数が多く、製品コスト・価格が高く;多くのステップがあるため操作が煩雑で、誤操作が生じやすく;操作に時間がかかりすぎ、患者や医療従事者への負担が大きいという問題がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、構造がシンプルであり、操作が簡単で短時間に行なうことができ、誤操作が起きにくく、医療事故が生じにくい医療用具、特に分岐管付き留置針を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的は、請求項1に記載の医療用具、すなわち、逆止弁を内部に取り付け、押圧ボタンを有する柔軟部を備えた第1ケース部と、逆止弁の流入側で当該第1ケース部と接続する第2ケース部とが、別部品である医療器具であって、当該第2ケース部の側方へ伸び、内部で当該第2ケース部の中空部と連通する分岐管を有することを特徴とする医療用具によって、達成される。
【0020】
本発明の好ましい実施態様では、請求項2に記載されているように、一端にネジ式ハブ及びネジ式キャップを取り付け、他端を分岐管に接続しているチューブを備えている。
【0021】
また、本発明の他の好ましい実施態様においては、請求項3に記載されているように、分岐管の自由端にネジ山が設けてあり、これと螺合するネジ式キャップを取り付けられている。
【0022】
さらに、本発明の他の好ましい実施態様においては、請求項4に記載されているように、中心軸上に内針を通して、逆止弁の先端中央を通過させて用いる。
【0023】
さらにまた、本発明の他の好ましい実施態様においては、第1ケース部及び第2ケース部が透明あるいは半透明である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の複数の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0025】
第1実施形態
図1は第1実施形態のカテーテルの四分の一断面図であり、図2は第1実施形態のカテーテルの組立て図である。
【0026】
第1実施形態のカテーテル用外針は、第1ケース部と第2ケース部35と、外針2と、からなり、内部に逆止弁4と、逆止弁ホルダー5と、内針ガイド6と、密閉栓7a、7bと、を取り付けてあり、後部にキャップ8が取り付けてある。第1ケース部は、前部31と、柔軟部32と、柔軟部を押圧する押圧ボタン33と、接合部34と、からなる。前部31の内部に樹脂製あるいはゴム製の外針2の一部が挿入されている。第2ケース部35は中空直管状である。分岐管36は第2ケース部35に対して斜め側方に伸びている。柔軟部32は薄肉となっており、軟質樹脂でできている。第1ケース部の他の部分も軟質樹脂でできているが厚肉である。第1ケース部及び第2ケース部とは透明または半透明となっている。柔軟部32の直下の中部には、逆止弁4の「カラス口」部が位置している。「カラス口」部の先端は2つの平板部が、通常状態では互いに長辺が直線状に接している。第1ケース部の接合部34の中央の内面には、逆止弁4の円周方向の位置合せを行うために、切欠き部34aが形成されている。
【0027】
分岐管36にはチューブ11の一端11aが接続されている。チューブ11の他端11bはネジ式ハブ12に接続されている。ネジ式ハブ12の自由端近くには、螺合用突起が形成されており、ネジ13の外面内側に形成されたネジ溝13cと螺合している。ネジ13の外面外側13bには滑り止めの溝が形成されている。ネジ13には内面13aも形成されている。
【0028】
第1実施形態のカテーテル用内針は、中空状の内針ハブ9に中心軸を一致させてステンレス鋼製の内針1の後部が固着されている。内針1の先端1aは鋭く加工されている。内針ハブ9の後端にはプラグ10が挿入され取り付けられている。プラグ10の内面10bと外気とはシールド膜10aによって遮断されている。(内針ハブ9やプラグ10は透明樹脂製であるのが好ましい。)
【0029】
カテーテル用外針の後端からカテーテル用内針の先端を差し込むと、内針1が密閉栓7b、内針ガイド6、密閉栓7aの順に案内されつつ通過し、逆止弁4の中心軸に沿って進み、「カラス口」部の中央を通過し、さらに、外針部2の内部を通って、外針部2の先端よりもわずかに先に内針1の先端1aに突出して位置する。
【0030】
第2実施形態
図3及び図4は第2実施形態のカテーテルの組立て図である。
【0031】
カテーテル用内針は第1実施形態のカテーテル用内針とほぼ同じである。内針ハブ9の先端にはフランジ9aが設けてあり、片手の指で押し引きしてカテーテル用内針を微妙に差し抜きするように図ってある。また、内針ハブ9の後部には中空部が形成されており、内側面9c及び内底面9dがある。また、外側面9bは円柱の側面状である。
【0032】
カテーテル用外針も第1実施形態のカテーテル用外針とほぼ同じである。
【0033】
しかしながら分岐管39にはチューブが接続されないで、ネジ式ハブとなっている点で、第1実施形態の分岐管36とは異なる。分岐管39は第2ケース部35に対して斜め側方に伸びている。分岐管の先端には、不図示のネジと螺合するための螺合用突起39aが形成されている。
【0034】
第1ケース部には、第1実施形態の第1ケース部と同様に、柔軟部32が形成されており、柔軟部32には押圧ボタン33が取り付けられている。そして、柔軟部32の直下の第1ケース部の内部には逆止弁4が配置されている。そして、逆止弁4が通常の閉止状態であっても、押圧ボタン33を押すことによって、逆止弁4が一時的に開放状態となり、押圧をやめると、直ちに閉止状態に戻る。
【0035】
以上のように2つの実施形態のカテーテルについて説明したが、いずれの実施形態であっても、静脈に内針、外針を差し込み、内針に血液が逆流したことを透明の内針ハブ9を目視観察したら、直ちに内針を抜き去るだけで、逆止弁4によって、血液の逆流を停めることができる。しかも、内針ハブ9のフランジ9aを指やつめで押し引きする操作であり、簡単で確実に行うことができる。
【0036】
さらに、内針を抜き去った後は、密閉栓7a、7bが閉止状態となり、第2ケース部35の後方へは血液や薬液は自動的に流出しない。そして、内部に混入している空気を排除するためには、押圧ボタンを押し、一時的に逆止弁4を開放状態として、分岐管から放出する。放出完了を目視確認したら、押圧ボタンを放して逆止弁を閉止状態とする。
【0037】
その後に、分岐管に、直接あるいは間接に点滴チューブ、薬液バッグを接続する。薬液バッグと患者との高低差により生ずる圧力によって、逆止弁4は開き、順方向に薬液等が静脈内へ注入される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態のカテーテルの四分の一断面図である。
【図2】第1実施形態のカテーテルの組立て図である。
【図3】第2実施形態のカテーテルの組立て図である。
【図4】第2実施形態のカテーテルの組立て図である。
【図5】従来の分岐管付きカテーテルの概略図である。
【符号の説明】
【0039】
1 内針
1a 先端
1b 後端
2 外針
4 逆止弁
5 逆止弁ホルダー
6 内針ガイド
7a 密閉栓
7b 密閉栓
8 キャップ
9 内針ハブ
9a フランジ
9b 外側面
9c 内側面
9d 内底面
10 プラグ
10a シールド膜
10b 内面
11 チューブ
11a 一端
11b 他端
12 ネジ式ハブ
13 ネジ
13a 内面
13b 外面外側
13c ネジ溝
15 ゴム板
16 チューブ
16a 一端
16b 他端
17 開閉プレート
17e 着脱部
17f 開放用広幅部
17g 遮断用細幅部
18 側岐管付きプラグ
18a 中空直円筒部
18b 接続用フランジ
18c 側岐管
18d ネジ付きキャップ
19a 挿入嵌合部
19b 中央部
19c 後端部
19d 連続部
19e 把持部
31 前部
32 柔軟部
33 押圧ボタン
34 接合部
34a 切欠き部
35 第2ケース部
35´ ケース部
35´a 後端
36 分岐管
37 分岐管
38 テーパー部
39 分岐管
39a 螺合用突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆止弁を内部に取り付け、押圧ボタンを有する柔軟部を備えた第1ケース部と、
逆止弁の流入側で当該第1ケース部と接続する第2ケース部とが、別部品である医療器具であって、
当該第2ケース部の側方へ伸び、内部で当該第2ケース部の中空部と連通する分岐管を有することを特徴とする医療用具。
【請求項2】
一端にネジ式ハブ及びネジ式キャップを取り付け、他端を分岐管に接続しているチューブを備えている請求項1に記載の医療用具。
【請求項3】
分岐管の自由端にネジ山が設けてあり、これと螺合するネジ式キャップを取り付けられている請求項1に記載の医療用具。
【請求項4】
中心軸上に内針を通して、逆止弁の先端中央を通過させて用いる請求項1から3までのいずれか1つに記載の医療用具。
【請求項5】
第1ケース部及び第2ケース部が透明あるいは半透明である請求項1から4までのいずれか1つに記載の医療用具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−75406(P2007−75406A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268142(P2005−268142)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(390032528)株式会社エノモト (16)
【Fターム(参考)】