説明

医療用容器包装袋、およびこれを用いた医療用容器の収容方法、薬剤混注済み医療用容器包装体、薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法、ならびに薬剤未混注の医療用容器包装体

【課題】真空機などの専用の装置や器具を用いなくとも、内部の空気を容易に排出し、かつ空気の流入を防止し、医療用容器に混注された溶剤の変質を抑制できる医療用容器包装袋、およびこれを用いた医療用容器の収容方法、薬剤混注済み医療用容器包装体、薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法、ならびに薬剤未混注の医療用容器包装体を実現する。
【解決手段】医療用容器を包装し、かつガスバリア性フィルムを用いて形成された医療用容器包装袋10において、再開封可能な封止手段12と、当該医療用容器包装袋10の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止する逆止弁機構13とを有することを特徴とする医療用容器包装袋10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器包装袋、およびこれを用いた医療用容器の収容方法、薬剤混注済み医療用容器包装体、薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法、ならびに薬剤未混注の医療用容器包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野で使用される医療用容器としては、例えば図11に示すようなフィルムを製袋してなる袋状のいわゆる輸液バッグ70、ブロー成形で製造された医療用容器、アンプル、薬剤入りシリンジ、ボトルなどがある。
例えば薬剤入りの輸液バッグは、病院等に納入される迄の流通段階において、酸素や紫外線の透過を防止して内容物(薬剤)の変質を抑制し品質を保持したり、衛生性を確保したり、容器の傷などの機械的損傷を防止したりする目的で、通常、専用の包装袋に包装され搬送される。
【0003】
病院等に搬送された輸液バッグは、包装袋から取り出された後、患者へ投与する前に、患者の病態に応じて他の薬剤を輸液バッグ内に投入したり、または複室輸液バッグの複室の薬剤を混合したりするなど、いわゆる混注操作が行われる場合が多い。混注操作を効率良く、かつ迅速に行ったり、在宅医療用に予め病院で混注された輸液バッグを準備したりするため、病院では輸液バッグを使用する直前よりも前の段階で薬剤を混注し、薬剤が混注された状態で輸液バッグを冷蔵庫等で保管することもある。
【0004】
通常、輸液バッグはガスバリア性に乏しいポリオレフィン樹脂からなるので、酸素などが輸液バッグを通過しやすい。酸素などが容器内に侵入すると、混注後の薬剤が劣化することがあった。
一般に、病院等に納入される迄の流通段階で用いられる上述の包装袋(薬剤未混注の輸液バッグの包装袋)は、バリア性を有さないものも多い。
従って、薬剤混注済み輸液バッグの保管方法としては、ガスバリア性を有する新たな包装袋を用意し、この包装袋に薬剤混注済み輸液バッグを投入し包装袋の中の空気を抜いてヒートシールして密封する方法が一般的である。さらに、より安定した保管状態を維持するため、真空包装シール機を用いて包装袋内を脱気後、ヒートシールにより密封して保管されることもある。
【0005】
このように、薬剤入りの輸液バッグを搬送し、他の薬剤を混注した輸液バッグを保管するためには、各用途に応じた包装袋をその都度用意する必要があった。
近年では、輸液バッグの搬送と保管の用途に対応した包装袋が提案されている。例えば特許文献1には、開封される側の端部面域が開封方向に平行な向きの直線引裂き性を有し、直線状の切り口を有する開封口の端縁部を封止代として再封止できる包装体が開示されている。該包装体は、再封止性が改善されているため、薬剤入りの輸液バッグの搬送時に用いた後、一旦開封して他の薬剤を輸液バッグに混注し、再度薬剤混注済み輸液バッグを収容して保管することができる。
【特許文献1】特開2004−121649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療用容器に混注される薬剤は、空気中の酸素などの影響を受けやすく、変質しやすい。そのため、薬剤混注済み医療用容器の保管には、該医療用容器を包装する包装袋内の空気が残存しないように、かつ包装袋内に空気が流入しないように細心の注意を払う必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の包装袋では、該包装袋内に空気が残存しやすく、特に混注された薬剤の変質を抑制することは必ずしも十分ではなかった。包装袋内に残存する空気量を低減し薬剤の変質を抑制するためには、真空機などを用いて包装袋内を脱気し、真空包装した後にヒートシール等により再封止する必要があり、作業性が低下しやすかった。
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑みてなされたものであり、真空機などの専用の装置や器具を用いなくとも、内部の空気を容易に排出し、かつ空気の流入を防止し、医療用容器に混注された溶剤の変質を抑制できる医療用容器包装袋、およびこれを用いた医療用容器の収容方法、薬剤混注済み医療用容器包装体、薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法、ならびに薬剤未混注の医療用容器包装体を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成からなる包装袋を用いることにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の医療用容器包装袋は、ガスバリア性フィルムを用いて形成された医療用容器包装袋において、再開封可能な封止手段と、当該医療用容器包装袋の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止する逆止弁機構とを有することを特徴とする。
また、前記逆止弁機構の外気と接触する側の周縁部aを密封する密封代Aが設けられていることが好ましい。
さらに、前記封止手段の外気と接触する側の周縁部bを密封する密封代Bが設けられていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の医療用容器の収容方法は、前記医療用容器包装袋を用い、封止手段を開封して薬剤が混注された医療用容器を収容した後、前記封止手段を封止し、当該医療用容器包装袋の内部の空気を逆止弁機構から外部へ排出することを特徴とする。
さらに、本発明の薬剤混注済み医療用容器包装体は、前記医療用容器の収容方法により薬剤が混注された医療用容器が包装されたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法は、前記医療用容器包装袋を用い、前記封止手段および逆止弁機構を有さない一辺を切断して開封部を設け、該開封部から薬剤未混注の医療用容器を収容した後、開封部を密封することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の薬剤未混注の医療用容器包装体は、ガスバリア性フィルムを用いて形成された医療用容器包装袋に、薬剤未混注の医療用容器が包装された薬剤未混注の医療用容器包装体であって、前記医療用容器包装袋は、再開封可能な封止手段と、医療用容器包装袋の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止する逆止弁機構とを有し、かつ、前記封止手段および逆止弁機構の外気と接触する側の周縁部が密封されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空機などの専用の装置や器具を用いなくとも、内部の空気を容易に排出し、かつ空気の流入を防止し、医療用容器に混注された溶剤の変質を抑制できる医療用容器包装袋、およびこれを用いた医療用容器の収容方法、薬剤混注済み医療用容器包装体、薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法、ならびに薬剤未混注の医療用容器包装体を実現できる。
また、本発明によれば、薬剤未混注の医療用容器の搬送に用いた後、一旦開封して他の薬剤を医療用容器に混注し、薬剤混注済み医療用容器の保管に再使用できるので、医療用容器の搬送用と保管用に2種類の包装袋を使用する必要がなく、コストを低下でき、かつ、包装袋の廃棄量を半分に低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の医療用容器包装袋(以下、「包装袋」という。)10の一例を示す平面図であり、図2は包装袋10の分解斜視図である。なお、この例の包装袋10は長方形の形状を示しているが、本発明においてはこれに限らず、他の形状の包装袋も実施可能である。
本発明の包装袋10は、図2に示すように、2枚のフィルム11が両側融着部11a、第1の底融着部11bおよび第2の底融着部11cでヒートシールされて袋状に形成される。各フィルム11はガスバリア性フィルムを備えており、該ガスバリア性フィルムと他のフィルムを積層した構造になっている。
【0014】
本発明に用いられるガスバリア性フィルムとしては、酸素バリア性を有するフィルムであればよく、例えば、ポリエステル、またはポリアミドからなるフィルムに、シリカ、アルミニウム、アルミナ等を蒸着させたフィルム、アルミニウム箔ラミネートフィルム、ポリビニルアルコールからなるフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるフィルム、ポリビニリデンクロライドからなるフィルム等が挙げられる。
ガスバリア性フィルムとしては、市販品を用いることもでき、例えば、凸版印刷株式会社製の「GLフィルム」、大日本印刷株式会社社製の「IBフィルム」、三菱樹脂株式会社製の「テックバリア」、株式会社クラレ製の「エバールフィルム」、旭化成株式会社製の「サランUB」、タマポリ株式会社製の「ハイトロンBX」などが挙げられる。
ガスバリア性フィルムの厚さは、7〜30μmが好ましい。
【0015】
他のフィルムとしては、シーラントフィルムが挙げられる。シーラントフィルムを構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好適である。特にポリエチレンが好ましく、中でも、低密度ポリエチレンおよび高強度な直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。これらシーラントフィルムの厚さは、収容する医療用容器の質量にもよるが、例えば30〜200μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。
【0016】
また、他のフィルムとしては、上述したシーラントフィルム以外にも、酸素バリア性に加えて、水蒸気バリア性や遮光性を有するフィルムを併用してもよい。なお、遮光性を有するフィルム(遮光性フィルム)を併用する場合は、紫外線の透過を遮断または抑制する遮光性フィルムが好ましく、特にビタミンB1などを混注した輸液バッグなどの医療用容器を保管する際に好適である。このような遮光性フィルムとしては、例えば、一般的なアルミニウム箔、アルミニウム箔ラミネートフィルムの他に、市販品として、クリロン化成株式会社製の「イーグルカットUV」、住友大阪セメント株式会社製の「レイパリア」および「ZMF−110」などが挙げられる。遮光性フィルムの厚さは、7〜30μmが好ましい。
【0017】
本発明の包装袋10は、図1に示すように、再開封可能な封止手段12と、逆止弁機構13とを有する。
封止手段12は、前記2枚のフィルム11の間の開口部14側に配置されており、封止手段12を開封して1つ以上の医療用容器を開口部14から包装袋10に収容し、封止手段12を封止して包装袋10を密封する。
このような封止手段12としては、何度も開封および封止が可能であり、包装袋10内への医療用容器の出し入れができるものであれば特に限定されないが、例えば、チャック構造を有するもの、包装袋10の内面へ粘着剤を塗布したもの、粘着テープを貼付したもの、クランプで狭持したものなどが挙げられる。これらの中でも、操作性が良好で、かつ封止後の密封性に優れる点で、チャック構造を有するものが好ましい。
【0018】
逆止弁機構13は、包装袋10の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止するものである。この例の逆止弁機構13は、前記封止手段12に対向して設けられているが、これに限定されず、他の位置に設けてもよい。
逆止弁機構13としては、上述した機能を有するものであれば特に限定されない。
【0019】
ここで、図2を用いて、逆止弁機構13の一例について説明する。
この例の逆止弁機構13は、2枚のフィルム11の間に弁条片15を配置し、該弁条片15の上側融着部15aおよび下側融着部15bを各フィルム11にヒートシールすることで構成されている。なお、弁条片15の上側融着部15a、および下側融着部15bは、図1に示す2枚のフィルム11が接着した第1の底融着部11b、および第2の底融着部11cと各々重なる。
弁条片15の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0020】
弁条片15は、上側融着部15aおよび下側融着部15bの接着により2つの連通路が形成され、上側連通路は一方のフィルム11と弁条片15の間に形成され、下側連通路は他方のフィルム11と弁条片15の間に形成される。
各連通路の幅W1は、包装袋10の大きさにもよるが、1〜8cmが好ましい。また、連通路の第1の通路口15cの口径Wc2、および第2の通路口15dの口径Wd2は、包装袋10の幅Wの1/30〜1/10倍が好ましい。なお、通路口15cの口径Wc2と通路口15dの口径Wd2は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、包装袋10の幅Wは、収容する医療用容器の大きさや収容数によって適宜変化するので制限されないが、例えば10〜50cmが好ましい。
【0021】
包装袋10に医療用容器が収容されていない場合、弁条片15の両面は、各フィルム11と接触している。そして、医療用容器が収容され、前記封止手段12が封止されて包装袋10内部の圧力が袋外部の押圧等により周囲の気圧よりも高くなると、包装袋10内部の空気が連通路の第1の通路口15cを通過し、上側連通路および下側連通路を経て第2の通路口15dから排出される。次いで、包装袋10の周囲の空気の圧力が、各シート11を弁条片15に押し付けることで、上側連通路および下側連通路が閉じられ、外部からの空気の流入を防ぐ。
【0022】
包装袋10内の空気の排出方法としては、例えば、図10(a)、(b)に示すように手などを使って包装袋10の片方の面を押しつけて圧縮する方法、封止手段12から逆止弁機構13に向けて折り曲げたり、しごき操作を行ったりして圧縮する方法などが挙げられる。本発明によれば、このような簡便な方法によって包装袋10内部の空気を排出させることによって、容器と包装袋との空間の空気を包装袋10内から容易に排出することができる。また、外部からの空気などの流入を防止するので、特に医療用容器に混注された薬剤の変質を抑制できる。
なお、本発明においては、薬剤を混注していない医療用容器を「薬剤未混注の医療用容器」、該薬剤未混注の医療用容器に他の薬剤を混注したものを「薬剤混注済み医療用容器」という。
【0023】
本発明においては、逆止弁機構13としては上述したものに制限されず、例えば図3〜5に示すようなものも用いることができる。
ここで、図3〜5に示す逆止弁機構13について説明する。
【0024】
図3(a)に示す包装袋100は、2枚のフィルム111が両側融着部111a、および底融着部111bでヒートシールされて袋状に形成され、開口部114には封止手段112が設けられ、底部には逆止弁機構113が設けられている。なお、逆止弁機構113は、底融着部111bの一部を貫通するように取り付けられており、逆止弁機構113が取り付けられた部分の底融着部111bは、ヒートシールされていないものとする。
逆止弁機構113は、図3(b)に示すように、包装袋100の内部と外部とが連続するようにシートを扁平な筒状とした外筒部113aと、この外筒部113aの内部に設けられた弁条シート113bとを備えている。弁条シート113bを設けることで、包装袋100の内部から外部への空気の流れ(気流)を促し、逆方向の気流を遮断できる。
【0025】
逆止弁機構113を包装袋100の底部に設ける際には、融着部113cにてヒートシールし、各フィルム111と外筒部113aとを接着させればよい。なお、接着の際に、弁条シート113bもヒートシールされるのを防止する目的で、外筒部113aの内面と対向する側の弁条シート113bの表面に、溶融防止塗料を塗布しておいてもよい。
外筒部113aおよび弁条シート113bの材質としては、先に例示した弁条片15の材質の中から1種以上を選択して用いることができる。
【0026】
図4(a)に示す包装袋200は、2枚のフィルム211が両側融着部211a、および底融着部211bでヒートシールされて袋状に形成され、開口部214には封止手段212が設けられ、底部には逆止弁機構213が設けられている。
なお、底融着部211bをヒートシールする際には、図4(a)、(f)に示す斜線部のような形状の金型を用いてヒートシールすればよい。
【0027】
この例の逆止弁機構213は、図4(f)に示すように、2枚の弁条シート213aおよび2枚の台座シート213bが、2枚のフィルム211の間に配置されることで構成されている。そして、包装袋200の内部の空気を排出する際には、図4(b)、(d)に示すように空気通路部Pが形成され、包装袋200の内部から外部へ空気を排出することが可能となる。なお、弁条シート213aはその一部が、空気通路部Pが閉鎖されるまで可動可能となっており、弁条シート213aに接着された各フィルム211に対して一方の弁条シート213aの一部が浮き上がって他方の弁条シート213a密着することで、空気通路部Pを封鎖できる(図4(c)、(e))。これにより、包装袋200の外部から内部への空気の流入を抑制できる。
弁条シート213aの材質としては、先に例示した弁条片15の材質の中から1種以上を選択して用いることができる。
【0028】
図5(a)に示す包装袋300は、2枚のフィルム311が両側融着部311a、および底融着部311bでヒートシールされて袋状に形成され、開口部314には封止手段312が設けられ、底部には逆止弁機構313が設けられている。
この例の包装袋300は、図5(a)に示すように、底融着部311bから所定距離おいた位置において、底融着部311bに対して平行になるようにヒートシールされた区画シール311cが形成されている。
【0029】
逆止弁機構313は、図5(b)に示すように、1枚の弁条シート313aが、2枚のフィルム311の間に配置されることで構成されている。弁条シート313aの一方の面は、その周囲辺のうちの3辺が一方のフィルム311’と密着し、弁条シート313aの他方の面は、全ての周囲辺が他方のフィルム311’’と密着しており、このような構造とすることにより連通路313bが形成されている。また、区画シール311cは一部が途中で途切れたものとされていて、途切れた部分が連通部311dとなり、包装袋300内部と連通路313bを連通させている。さらに、一方のフィルム311の連通路313bには、脱気孔313cが設けられており、包装袋300内部の空気は、連通部311dおよび連通路313bを通過して脱気孔313cから排出される。
なお、弁条シート313aの他方の面は、他方のフィルム311’’と密着している以外の部分が、他方のフィルム311’’に対して離反可能となっている。従って、弁条シート313aが他方のフィルム311’’に対して浮き上がり、一方のシート311’に対して密着することで脱気孔313cを塞ぐことができる。これにより、包装袋300の外部から内部への空気の流入を抑制できる。また、脱気孔313cを覆うように、一方のフィルム311’に対して脱着可能なシール部材313dを、一方のフィルム311’に設けておき、包装袋300内の空気を排出後、シール部材313dにて脱気孔313cを塞げば、より効果的に空気の流入を抑制できる。
弁条シート313aの材質としては、先に例示した弁条片15の材質の中から1種以上を選択して用いることができる。
【0030】
本発明においては、逆止弁機構として上述した以外の構成のものを用いることも可能であるが、成形が容易な点から図1、2に示すような逆止弁機構13が好ましい。
【0031】
本発明の包装袋は、上述したような封止手段および逆止弁機構を有することにより、医療用容器の出し入れと、包装袋内の空気の排出が可能となり、かつ、外部からの空気の流入を抑制できるので、特に薬剤混注済み医療用容器の保管に適している。
本発明の包装袋を用いて薬剤を混注した薬剤混注済み医療用容器を収容して保管する場合、まず、図6(a)に示すように、封止手段12を開封して薬剤混注済み医療用容器71を収容して、封止手段12を封止する。次いで、図6(b)に示すように、包装袋10内部の空気を逆止弁機構13から外部へ排出する収容方法を用いることで、薬剤混注済み医療用容器包装体50が得られ、薬剤混注済み医療用容器71を密封した状態で保管できる。保管の際には、医療用容器に混注した薬剤の安定性を考慮して、冷蔵庫などの冷暗所にて保管するのが好ましい。
【0032】
また、本発明の包装袋は、薬剤未混注の医療用容器を病院などに搬送する際に用いることもできる。このような場合、他の薬剤を混注するタイミングにおいて封止手段を開封して薬剤未混注の医療用容器を取り出し、他の薬剤を混注した後、同じ包装袋に再度収容して封止手段を封止し、包装袋内部の空気を逆止弁機構から外部へ排出することで、薬剤混注済み医療用容器を密封した状態で保管できる。
このように、本発明によれば、医療用容器の搬送に用いた包装袋を保管用に再使用できる。
【0033】
なお、包装袋内の空気の排出の際には、図1に示す第2の通路口15dに真空機などを設置し、該真空機により包装袋内を脱気してもよい。
ただし、本発明においては、包装袋を圧縮するなどの簡便な方法によって包装袋内の空気を外部へ排出できるので、真空機などの専用の装置や器具を用いなくても、包装袋内部の空気を容易に脱気し、かつ外部からの空気の流入を防止するので、特に医療用容器に混注された薬剤の変質を抑制できる。
【0034】
また、微量の酸素にも影響を受けやすい薬剤を混注した医療用容器内を包装袋に収容する場合は、該医療用容器と共に、脱酸素剤を包装袋に収容して保管するのが好ましい。脱酸素剤としては、酸素を除去できるものであればよく、例えばアモルファス銅を用いた脱酸素剤が挙げられる。市販品としては、三菱瓦斯化学株式会社製の「エージレス」などが使用できる。
【0035】
本発明の包装袋においては、図7に示すように、逆止弁機構13の外気と接触する側の周縁部aに、密封代Aが設けられた構造とするのが好ましい。このような構造とすることで、逆止弁機構13の周縁部aが密封されるので、包装袋10の外部から内部へ外気が流入するのをより抑制することができ、薬剤混注済み医療用容器の保管に用いられる直前まで包装袋内をより衛生的に保持できる。
このような包装袋を薬剤混注済み医療用容器の保管に用いる際には、周縁部aの任意の箇所、例えば図7に示す切断線16に沿って切断することで、逆止弁機構13の周縁部aが露出し、包装袋内部の空気を外部へ放出可能となる。
【0036】
さらに、封止手段12の外気と接触する側の周縁部b(すなわち開口部)に、密封代Bが設けられた構造とするのが好ましい。このような構造とすることで、封止手段12の周縁部bが密封されるので、薬剤混注済み医療用容器の保管に用いられる直前まで包装袋内をより衛生的に保持できる。
このような包装袋を薬剤混注済み医療用容器の保管に用いる際には、周縁部bの任意の箇所、例えば図7に示す切断線17に沿って切断することで、封止手段12の周縁部bが露出するので、封止手段12を開封して薬剤混注済み医療用容器を包装袋内に収容できる。
【0037】
なお、切断線16、17に沿って密封代A、Bを切断する際には、ハサミなどの刃物を使用して切断しても構わないが、直線カット性を有するフィルムを使用したり、切断開始部にノッチを設けたり粗面加工を施したりすることで、刃物などの器具を用いて切断しやすくなることはもちろんのこと、器具を用いることなく手で開封するように切断することも可能になる。
【0038】
図7に示すように、包装袋を、逆止弁機構13の周縁部aに密封代Aを、封止手段12の周縁部bに密封代Bを各々設けた構造の包装袋20とすることで、周縁部aおよび周縁部bは密封されるので、逆止弁機構13および封止手段12は保護されることとなる。
従って、包装袋を薬剤未混注の医療用容器の搬送に用いる際に、搬送の衝撃などから封止手段12や逆止弁機構13を保護し、これらの損傷を効果的に抑制できる。
包装袋20は、密封代Aと密封代Bの両方が設けられた構造でもよく、いずれか一方の密封代が設けられた構造でもよいが、両方の密封代が設けられた構造がより好ましい。
【0039】
このような構造の包装袋20を医療用容器の搬送に用いる際には、例えば図8(a)に示す包装袋30内に薬剤未混注の医療用容器72を収容した後、封止手段12の周縁部bを密封することで、図8(b)に示すような薬剤未混注の医療用容器包装体60を作製してもよいが、次のような方法を用いてもよい。
【0040】
封止手段12の周縁部b、および逆止弁機構13の周縁部aが密封された状態で、かつ包装袋同士が両側融着部11aで連結した状態で製造された連結包装袋40(図9(a))を、両側融着部11aに対して平行な切断線18にて切断して開封部19を設け、薬剤未混注の医療用容器72を開封部19から収容し(図9(b))、さらに開封部19をヒートシールなどにより接合することで、図8(b)に示すような薬剤未混注の医療用容器包装体60を作製する。連結包装袋40を切断する際は、切断後に個別となった包装袋が1つの両側融着部11aを有するように(すなわち、片側が融着部、もう一方の片側が開封部となるように)切断線18を設定すればよく、具体的には、両側融着部11aの端部からの距離dが0〜10mmとなるような位置に切断線18を設定するのが好ましい。なお、距離dが0mmとなるように切断線18を設定した場合、切断後に個別となった包装袋は、図9(b)に示すような構造になる。
このような方法によれば、封止手段12の開封、封止操作を行わなくても、切断、ヒートシールなどの簡便な操作で、かつ量産的に薬剤未混注の医療用容器72を包装袋に収容でき、さらには、封止手段12や逆止弁機構13の損傷を効果的に抑制しながら病院などまで搬送できる。
【0041】
なお、本発明の包装袋の製造方法については、特に制限されないが、例えば、次のようにして製造できる。
まず、ガスバリア性フィルムとシーラントフィルムとを、接着剤を介してドライラミネート法により積層し、ガスバリア性積層フィルムを2枚作製する。
次いで、封止手段および逆止弁機構を、図1に示すような配置構成になるように、2枚のガスバリア性積層フィルムで挟持し、図1や図7に示すような構造になるように両側融着部や底融着部など、必要な箇所をヒートシールして溶着させることで製造できる。
【0042】
以上のように、本発明によれば、再開封可能な封止手段と、逆止弁機構を備えることにより、医療用容器の出し入れと、包装袋内の空気の排出が可能となる。
従って、本発明の包装袋を用いて薬剤を混注した薬剤混注済み医療用容器を保管する場合、封止手段を開封して薬剤混注済み医療用容器を収容し、封止手段を封止し、包装袋内部の空気を逆止弁機構から外部へ排出することで、薬剤混注済み医療用容器を密封した状態で保管できる。逆止弁機構は、包装袋外部から内部への空気の流入を防止できるので、空気などに対して不安定な溶剤を医療用容器に混注した場合であっても、溶剤の変質を抑制できる。
【0043】
さらに、本発明の包装袋であれば、溶剤未混注の医療用容器の搬送に用いた後に、溶剤混注済み医療用容器の保管にも再使用可能であるので、包装袋の廃棄量を低減できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
<包装袋の製造>
ガスバリア性フィルム(凸版印刷株式会社製、「GLフィルム GL−AU」、厚さ:15μm)と、直鎖状低密度ポリエチレン性シーラントフィルム(厚さ:60μm)とを、ウレタン系接着剤を使用してドライラミネートにより積層し、さらに封止手段としてチャック(出光ユニテック株式会社製)をヒートシールにより取り付けたガスバリア性積層フィルムを作成した。このフィルムを50cm×40cmに切断した。
切断したフィルム2枚を使用し、シーラントフィルム面同士が接するように重ね合わせ、図2に示すような逆止弁機構13を制作し、開口部14(封止手段の周縁部b)を除く3方をヒートシールし、図8(a)に示すような、逆止弁機構13の周縁部aも密封代Aにて密封された包装袋30を製造した。
次に、薬剤未混注の医療用容器72として、500mlアミノ酸含有製剤輸液バッグと、脱酸素剤(三菱瓦斯化学株式会社製、「エージレス」)を、封止手段12を開封して包装袋30内に収容し、封止手段を封止して、開口部(封止手段の周縁部)に設けた密封代Bを密封し、図8(b)に示すような薬剤未混注の医療用容器包装体60を製造した。
【0045】
この医療用容器包装体60の密封代A、Bを、切断線16、17に沿って切断し、封止手段12を開封して薬剤未混注の医療用容器72を取り出し、他の薬剤としてビタミンB1製剤を混注した。薬剤混注済み医療用容器71を、密封代A、Bを切断した先の包装袋に戻し、封止手段12を封止した後、図10(a)に示すように包装袋の片方の面を手で押して圧縮し、包装袋内の空気を逆止弁機構13から排出した後(図10(b))、4℃の冷蔵庫で一週間保管した。
一週間保管後の薬剤混注済み医療用容器を目視にて観察した結果、外観上の変化は見られなかった。
【0046】
[実施例2]
実施例1と同様のガスバリア性積層フィルムを使用し、4方をヒートシールし、図7に示すような、逆止弁機構13の周縁部a、および封止手段12の周縁部bが密封代Aおよび密封代Bにて密封された包装袋20を製造した。
【0047】
従来の包装袋に保管された薬剤未混注の医療用容器(500mlアミノ酸含有製剤輸液バッグ)を、包装袋から取り出し、他の薬剤としてビタミンB1製剤を混注した。
先に製造した包装袋20の密封代A、Bを、切断線16、17に沿って切断し、封止手段12を開封して、薬剤混注済み医療用容器を収容し、封止手段12を封止した。これ以降の操作を実施例1と同様に行った。
一週間保管後の薬剤混注済み医療用容器を目視にて観察した結果、外観上の変化は見られなかった。
【0048】
[実施例3]
薬剤未混注の医療用容器72として、剥離可能な隔壁で仕切られた2室に糖および電解質液と、アミノ酸液とが各々収容された輸液バッグ(内容量:1200mL)を用い、混注操作として、2室を仕切る隔壁を開通させて混合させる操作を行った以外は、実施例1と同様の操作を実施した。
4℃の冷蔵庫で3日間保管後の薬剤混注済み医療用容器を目視にて観察した結果、外観上の変化は見られなかった。
【0049】
[比較例1]
薬剤混注済み医療用容器を包装袋に収容しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
一週間保管後の薬剤混注済み医療用容器を目視にて観察した結果、医療用容器の内溶液には変色が認められ、沈殿物が確認できた。
【0050】
以上の結果より、本発明の包装袋であれば、真空機などの専用の装置や器具を用いることなく、内部の空気を容易に脱気し、医療用容器に混注された溶剤の変質を抑制できる。
また、溶剤未混注の医療用容器の搬送に用いた後に、溶剤混注済み医療用容器の保管にも再使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の包装袋の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示す包装袋の分解斜視図である。
【図3】本発明の包装袋の他の例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)のA−A線で切断した断面図である。
【図4】本発明の包装袋の他の例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)および(c)は(a)のB−B線で切断した断面図であり、(d)は(b)に示す状態に対応し、かつ(a)のC−C線で切断した断面図であり、(e)は(c)に示す状態に対応し、かつ(a)のC−C線で切断した断面図である。
【図5】本発明の包装袋の他の例を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は分解斜視図である。
【図6】医療用容器の収容方法、及び薬剤混注済み医療用容器包装体の製造工程の一例を説明する図である。
【図7】密封代が設けられた包装袋の一例を示す平面図である。
【図8】薬剤未混注の医療用容器の製造工程の一例を説明する工程図である。
【図9】薬剤未混注の医療用容器の製造工程の他の例を説明する工程図である。
【図10】包装袋内の空気の排出方法の一例を示す説明図であり、(a)は圧縮前、(b)は圧縮後を示す図である。
【図11】医療用容器の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0052】
10:医療用容器包装袋、12:封止手段、13:逆止弁機構、20:医療用容器包装袋、30:医療用容器包装袋、50:薬剤混注済み医療用容器包装体、60:薬剤未混注の医療用容器包装体、100:医療用容器包装袋、200:医療用容器包装袋、300:医療用容器包装袋。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性フィルムを用いて形成された医療用容器包装袋において、
再開封可能な封止手段と、当該医療用容器包装袋の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止する逆止弁機構とを有することを特徴とする医療用容器包装袋。
【請求項2】
前記逆止弁機構の外気と接触する側の周縁部aを密封する密封代Aが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の医療用容器包装袋。
【請求項3】
前記封止手段の外気と接触する側の周縁部bを密封する密封代Bが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用容器包装袋。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の医療用容器包装袋を用い、封止手段を開封して薬剤が混注された医療用容器を収容した後、前記封止手段を封止し、当該医療用容器包装袋の内部の空気を逆止弁機構から外部へ排出することを特徴とする医療用容器の収容方法。
【請求項5】
請求項4に記載の医療用容器の収容方法により、薬剤が混注された医療用容器が包装されたことを特徴とする薬剤混注済み医療用容器包装体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の医療用容器包装袋を用い、前記封止手段および逆止弁機構を有さない一辺を切断して開封部を設け、該開封部から薬剤未混注の医療用容器を収容した後、開封部を密封することを特徴とする薬剤未混注の医療用容器包装体の製造方法。
【請求項7】
ガスバリア性フィルムを用いて形成された医療用容器包装袋に、薬剤未混注の医療用容器が包装された薬剤未混注の医療用容器包装体であって、
前記医療用容器包装袋は、再開封可能な封止手段と、医療用容器包装袋の内部から外部へ空気を排出し、かつ外部から内部への空気流入を防止する逆止弁機構とを有し、かつ、前記封止手段および逆止弁機構の外気と接触する側の周縁部が密封されたことを特徴とする薬剤未混注の医療用容器包装体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−39210(P2009−39210A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205572(P2007−205572)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】