医療用容器用中空体、医療用容器用排出ポート、医療用容器用薬剤容器および医療用容器
【課題】筒状部に設けられた破断可能部と、破断可能部を挟むように設けられた第1および第2の応力付与部を備える医療用容器用中空体であって、破断可能部の破断により形成された開口が、再び閉塞される可能性が極めて少ないものを提供する。
【解決手段】医療用容器用中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、破断可能部36を挟むように設けられるとともに軟質バッグに固着可能な第1の応力付与部34、第2の応力付与部35とを備える。破断可能部は、第1の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、この始端および終端間に形成され、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部37を有する。
【解決手段】医療用容器用中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、破断可能部36を挟むように設けられるとともに軟質バッグに固着可能な第1の応力付与部34、第2の応力付与部35とを備える。破断可能部は、第1の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、この始端および終端間に形成され、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部37を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において、輸液などの薬液に薬剤の調整や配合を行うことができる医療用容器および医療用容器用中空体、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器用薬剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用容器には、閉塞した先端部を有し、開封可能な筒状体が取り付けられている。この筒状体としては、例えば、薬液の投与時に使用される排出ポート、医療用容器内の薬液に添加される薬剤を収納した薬剤容器がある。
そして、患者に輸液を行うに先だって、輸液剤の入ったバイアル瓶や軟質バッグ等に、予め輸液剤に配合することが困難な薬剤、例えば、ビタミン剤、抗生物質等の薬剤を混合、溶解させ、薬液を調製することが行われている。そして、このような薬液の調製を無菌的に、また、簡単な操作で行うため、薬液が収納された軟質バッグに薬液と混合する薬剤を収納した薬剤容器を取り付け、輸液の際、薬剤容器に設けられた脆弱部を軟質バッグ越しに折り曲げ破断することにより薬剤容器と軟質バッグを連通させ薬剤と薬液とを混合するようにした医療用容器が提案されている。
【0003】
本件出願人は、特開2006−87904(特許文献1)を提案している。
特許文献1の薬剤容器もしくは排出ポートは、閉塞した先端部を有し、開封可能な薬剤容器もしくは排出ポートであって、確実に薬剤容器もしくは排出ポート内と医療用容器内とを区分することができ、かつ、必要時には容易かつ確実に薬剤容器もしくは排出ポート内を医療用容器内とを連通できるものである。特許文献1の薬剤容器100は、図32から図37に示すように、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、先端部が閉塞した筒状部7と、筒状部7の少なくとも先端部に設けられた破断可能部58と、筒状部7の破断可能部58を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方の内面に固着している第1の応力付与部59および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部60とを備え、破断可能部58は、第1の応力付与部59および第2の応力付与部60間の拡がりにより破断し破断可能部58より先端側部分が分離して筒状部7を開口するものである。
【0004】
また、特許文献1の排出ポート86は、図38から図42に示すように、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、先端部が閉塞した筒状部88と、筒状部88の少なくとも先端部に設けられた破断可能部91と、筒状部88の破断可能部91を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方の内面に固着している第1の応力付与部89および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部90とを備え、破断可能部91は、第1の応力付与部89および第2の応力付与部90間の拡がりにより破断し破断可能部91より先端側部分が分離して筒状部88を開口するものである。
しかしながら、特許文献1の図29に示すように、薬剤容器100、排出ポート86を備える医療用容器1,85の軟質バッグ2を押圧することにより、薬剤容器100の破断可能部58もしくは排出ポート86の破断可能部91を破断して破断可能部58,91より第1の応力付与部側部分及び第2の応力付与部側部分を分離させたとき、破断により形成された筒状部の開口が、希ではあるが、分離された部材により再び閉塞されることが危惧される。
そこで、本件出願人は、特開2006−280390(特許文献2)を提案している。
特許文献2の医療用容器は、薬剤室を有する軟質バッグ2と、薬液と、筒状体とを備える医療用容器1であって、筒状体は、筒状部と、破断可能部と、破断可能部を挟むように設けられ軟質バッグの内面に固着した第1の応力付与部34及び第2応力付与部36とを備え、破断可能部は、第1、第2の応力付与部34,36の拡がりにより破断し開口する。また、容器1は破断可能部の基端部外面を乗り越えるように先端側に延び、かつ破断後の第1の応力付与部側分離部33の基端部33a、第2の応力付与部側分離部35の基端部35aを軟質バッグ内面との間にて保持する破断後応力付与部保持用延出部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87904
【特許文献2】特開2006−280390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2のものでも十分な効果を有するが、破断後の第1の応力付与部側分離部33の基端部33a、第2の応力付与部側分離部35の基端部35aが、破断後応力付与部保持用延出部により保持された後、スタンドに吊下するなどの作業時に、希に、保持状態が解除される場合があった。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するものであり、先端部が閉塞した筒状部と、筒状部の少なくとも先端部に設けられた破断可能部と、筒状部の破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグの一方の内面に固着している第1の応力付与部および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部とを備え、第1の応力付与部および第2の応力付与部間の拡がりにより破断する破断可能部を備える医療用容器用中空体であって、破断可能部の破断により形成された開口が、筒状部より分離した第1の応力付与部または第2の応力付与部により再び閉塞される可能性が極めて少ない医療用容器用中空体およびそれを用いた医療用容器用薬剤容器、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体であって、該中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、該中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、該筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、前記筒状部の該破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに前記軟質バッグの一方のシートの内面に固着可能な第1の応力付与部および前記軟質バッグの他方のシートの内面に固着可能な第2の応力付与部とを備え、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、前記筒状部を開口するものであり、かつ、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記破断可能部の破断後、前記中空体より分離しないものであり、さらに、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、前記破断可能部の始端および終端間に形成され、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がり、前記破断可能部の破断後に塑性変形し、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有する医療用容器用中空体。
【0008】
(2) 前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部において部分的破断可能部欠損部を備え、該欠損部により、前記塑性変形可能部が形成されているとともに、該組成変形可能部は、該組成変形可能部が設けられた前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の前記中空体からの分離を許容しないものとなっている上記(1)に記載の医療用容器用中空体。
(3) 前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部のいずれか一方にのみ設けられている上記(1)または(2)に記載の医療用容器用中空体。
(4) 前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記軟質バッグの内面に固着するための平坦部を備え、前記塑性変形可能部は、前記平坦部の前記医療用容器用中空体の軸方向の延長線上に位置するように形成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
(5) 前記破断可能部は、前記筒状部の先端部付近であって前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間に位置しかつ前記筒状部の基端側に延びる先端側部分と、該先端側部分の基端部より、前記筒状部の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分または前記第2の応力付与部側部分を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ後端部が開口した中空体と、該中空体の前記後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部を有する医療用容器用排出ポート。
(7) 前記医療用容器用排出ポートの前記筒状部内には、薬剤が収納されている上記(6)に記載の医療用容器用排出ポート。
(8) 前記医療用容器用排出ポートの前記中空体内には、薬剤と、前記破断可能部の未破断時における前記中空体内への前記医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材とが収納されている上記(7)に記載の医療用容器用排出ポート。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ一端部が開口した中空体と、該中空体の前記一端部を封鎖する封止部材と、前記中空体内に収納された薬剤とを有する医療用容器用薬剤容器。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(10) 軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記排出ポートは、上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の排出ポートであり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記排出ポート内を前記薬液室と連通させるものである医療用容器。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(11) 軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられ前記薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器と、該軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記薬剤容器は、上記(9)に記載の薬剤容器であり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記薬剤容器内を前記薬液室と連通させるものである医療用容器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療用容器用中空体は、軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体である。中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、筒状部の破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグの一方の内面に固着可能な第1の応力付与部および軟質バッグの他方の内面に固着可能な第2の応力付与部とを備える。破断可能部は、第1の応力付与部および第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、筒状部を開口するものであり、さらに、第1の応力付与部および第2の応力付与部は、破断可能部の破断後、中空体より分離しないものである。さらに、破断可能部は、第1の応力付与部または第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有している。このため、この医療用容器用中空体によれば、第1の応力付与部および第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後では、塑性変形可能部により、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が広がった状態が維持されるので、破断可能部の破断により形成された開口が、第1の応力付与部および第2の応力付与部により再び閉塞されることを確実に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、本発明の医療用容器用排出ポートの一実施例の正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B線拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の医療用容器用中空体の一実施例の正面図である。
【図6】図6は、図5に示した医療用容器用中空体の右側面図である。
【図7】図7は、図6に示した医療用容器用中空体の斜視図である。
【図8】図8は、図6に示した医療用容器用中空体の拡大平面図である。
【図9】図9は、本発明の医療用容器用排出ポート内に収納された針管侵入阻害部材の一例の正面図である。
【図10】図10は、図9に示した針管侵入阻害部材の右側面図である。
【図11】図11は、図9に示した針管侵入阻害部材の拡大平面図である。
【図12】図12は、図9に示した針管侵入阻害部材の拡大底面図である。
【図13】図13は、図9に示した針管侵入阻害部材の斜視図である。
【図14】図14は、本発明の医療用容器に用いられる中空体取付用部材の斜視図である。
【図15】図15は、本発明の医療用容器用排出ポートおよび医療用容器用中空体の作用を説明するための説明図である。
【図16】図16は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図17】図17は、本発明の医療用容器用排出ポートの他の実施例の側面図である。
【図18】図18は、図17に示した医療用容器用排出ポートの作用を説明するための説明図である。
【図19】図19は、図17に示した医療用容器用排出ポートを用いた医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図20】図20は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図21】図21は、本発明の医療用容器用薬剤容器の一実施例の正面図である。
【図22】図22は、図21のC−C線断面図である。
【図23】図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図24】図24は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図25】図25は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の医療用容器用中空体、医療用容器用薬剤容器、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器について、図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器用中空体30は、軟質バッグ2を備える医療用容器1に用いられる医療用容器用中空体である。中空体30は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、筒状部32の破断可能部36を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部34および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部35とを備える。破断可能部36は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間の拡がりにより破断し、筒状部32を開口するものであり、さらに、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、破断可能部36の破断後、中空体30より分離しないものである。さらに、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がり、破断可能部36の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部37を有している。
なお、ここで言う「第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する」とは、塑性変形した状態、言い換えれば、破断可能部が破断し、中空体30の筒状部32が開口した状態を維持するものを示すものであり、塑性変形時の初期形状(初期状態)を完全に維持するものに限定されるものではない。塑性変形可能部37は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間が広がることにより塑性変形し、塑性変形した状態を維持可能な部位であり、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部と言い換えることもできる。
【0016】
また、本発明の医療用容器用排出ポート3は、本発明の医療用容器用中空体でありかつ後端部が開口した中空体30と、中空体30の後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部とを有するものである。
また、本発明の医療用容器用薬剤容器7は、本発明の医療用容器用中空体70と、中空体70の開口部を封鎖する封止部材72と、筒状部内に収納された薬剤73とを有するものである。
また、本発明の医療用容器1は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、排出ポート3として、本発明の医療用容器用中空体を用いた排出ポートを用いるものである。
また、本発明の医療用容器60は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室(薬液室)11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられ薬剤室11内の薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器7と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、薬剤容器7として、本発明の医療用容器用中空体を用いた薬剤容器7を用いるものである。
【0017】
最初に、本発明の医療用容器用中空体を薬剤容器兼排出ポートに応用したものおよびそれを用いた医療用容器の実施例を用いて説明する。
この実施例の医療用容器1は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、排出ポート3は、本発明の医療用容器用中空体を用いた排出ポートであり、かつ、第1の応力付与部34の外面の一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシート2aの内面に固定されており、第2の応力付与部35の外面の一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する他方のシート2bの内面に固定されており、破断可能部36は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2と固定された第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の拡がりにより破断し、排出ポート3内を薬剤室11と連通させるものである。
この実施例の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、内部に薬剤収納部である薬剤室11を有する軟質バッグ2と、軟質バッグ2の薬剤室11に取り付けられた医療用容器用排出ポート3と、薬剤室11に充填された薬液とを備える薬剤入り医療用容器である。
また、図1に示すように、軟質バッグ2の一端側及び他端側には、シール部5,6が設けられている。
【0018】
医療用容器1の軟質バッグ2は、軟質合成樹脂により形成されている。軟質バッグ2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、軟質バッグ2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
軟質バッグ2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。このように軟質バッグ2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0019】
このような軟質バッグ2の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
本発明においては、軟質バッグ2の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。軟質バッグ2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0020】
また、軟質バッグは、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、軟質バッグ2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、軟質バッグ2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、軟質バッグ2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、軟質バッグ2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
軟質バッグ2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜500μm程度であるのが好ましく、200〜360μm程度であるのがより好ましい。
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、薬剤室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
医療用容器用排出ポート3は、軟質バッグ2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。
【0021】
排出ポート3は、軟質バッグ2の薬剤室に固定されている。排出ポート3は、医療用容器用中空体30を備え、医療用容器用中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、筒状部32の破断可能部36を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部34および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部35とを備える。破断可能部36は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間の拡がりにより破断し、筒状部32を開口するものである。さらに、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間が広がることにより塑性変形し、塑性変形した状態を維持可能な塑性変形可能部(言い換えれば、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)37を有している。
また、排出ポート3は、筒状部32の他端側を閉塞し、かつ、医療用針管の接続が可能なシール部材52を有する排出口を備えている。さらに、この実施例の医療用容器1では、排出ポート3内には、医療用容器用中空体30に設けられ破断可能部36の未破断時における医療用容器用中空体30の筒状部32内への医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材4が収納されている。
【0022】
この実施例の排出ポート3は、医療用容器用中空体30と、医療用容器用中空体30の開口部を封止するとともに医療用針の接続(穿刺)が可能な排出口50と、排出ポート3(医療用容器用中空体30)を軟質バッグ2に取り付けるための筒状取付部材55と、医療用容器用中空体30内に収納された針管侵入阻害部材4と、医療用容器用中空体30内に充填された薬液39とを備えている。
そして、排出口50は、医療用針管の接続(穿刺)が可能なシール部材52と、このシール部材52を医療用容器用中空体30の開口部に固定するためのキャップ部材51とを備えている。そして、キャップ部材51は、医療用容器用中空体30の基端部に設けられた固定部(フランジ部33)に、超音波融着、高周波融着、熱融着等により固定される。医療用容器用中空体30の筒状部32は、内部の薬剤が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。また、医療用容器用中空体30の筒状部32は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬剤収納部が減圧または真空状態であると、薬剤の変質分解・劣化等の防止効果が向上する。
収納される薬剤39としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。
【0023】
排出ポート3は、通常状態では非連通のポートである。
医療用容器用中空体30は、図3,図5ないし図8に示すように、中空部を有する筒状部32と、筒状部32に設けられた破断可能部36と、第1の応力付与部34と、第2の応力付与部35とを備えている。破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がり、破断可能部36の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部(変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)37を有している。さらに、医療用容器用中空体30は、第1の応力付与部34を軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシートの内面に固定された第1の固定部21(図16参照)と、第2の応力付与部35を薬剤室11を形成する他方のシートの内面に固定された第2の固定部22(図16参照)を有している。そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、筒状部32の基端部に、医療用針管の接続(穿刺)が可能な排出口50を取り付けるための取付部が形成されている。また、筒状部32の基端部は、破断可能部36より基端側に所定長延びるものとなっている。
医療用容器用中空体30の破断可能部36は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2との第1の固定部21と第2の固定部22間の拡がりにより破断するものとなっている。
【0024】
筒状部32は、図5ないし図7に示すように、先端部が閉塞し、基端部が開口した筒状部分であり、基端部に設けられたフランジ部33と、第1の円筒部と、第1の円筒部と連続し先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部と、テーパー部と連続する第2の円筒部と、第2の円筒部と連続する閉塞部(先端部)とからなる。先端部の形状は、ドーム形状、円錐形状、円錐台形状であることが好ましく、特に、ドーム形状、円錐台形状であることが好ましい。この実施例では、閉塞部は、ドーム形状となっている。
筒状部32の容積は、1〜30mlであることが好ましい。筒状部の長さは、20〜100mmであることが好ましい。また、フランジ部の基端側は、排出口50を形成するキャップ部材51を固定するためのものである。
中空体本体31の形成材料としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、環状ポリオレフィン[具体的にはZEONEX(登録商標、日本ゼオン株式会社製)のようなCOP(環状オレフィンポリマー)、APEL(登録商標、三井化学株式会社製)のようなCOC(環状オレフィンコポリマー)]、ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド等の各種樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。また、中空体本体の形成材料、特に、塑性変形可能部の形成材料としては、引張り伸び(破断伸び)が、20%以上であることが好ましい。また、塑性変形可能部の肉厚は、1.0〜1.5mmであることが好ましい。
【0025】
そして、この実施例では、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、図2ないし図8に示すように、筒状部32の破断可能部付近を基端として前方に延出している。第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。このような構成により、軟質バッグ2を押圧して膨らませた際に、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とにより、破断可能部36に確実に破断応力が付与される。
具体的には、この実施例の医療用容器1における医療用容器用中空体30では、第1の応力付与部34、第2の応力付与部35は、図3ないし図7に示すように、縦長の平板部34a,35aと、平板部の両側に形成された側壁部とを備えている。第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、筒状部32の軸方向に延びるように設けられている。第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、平板部34a,35bの中央付近に位置し、中空体の軸方向に延びるリブ34b,35bを備えている。このリブ34b,35bは、当接しないものとなっている。
【0026】
破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35により応力が付与されたとき、筒状部32の先端部分を縦にさくことができるような構成であることが好ましい。破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37が形成されている。そして、組成変形可能部37は、欠損部により構成されるとともに、欠損部が設けられた第1の応力付与部または第2の応力付与部の中空体からの分離を許容しないものとなっている。具体的には、この実施例のものでは、破断可能部36は、図5および図7に示すように、筒状部32の先端部であり、第1の応力付与部34の基端部と筒状部とを区分するよう、かつ始端および終端を有するもののほぼ環状に形成されている。そして、破断可能部36の始端および終端間により塑性変形可能部(破断可能部欠損部)37が形成されている。そして、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35のいずれか一方にのみ(この実施例では、第1の応力付与部34側のみ)に設けられている。塑性変形可能部37は、塑性変形するものの第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、破断しない。よって、破断可能部36を有する第1の応力付与部34は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)では、中空体30より分離しないものとなっている。塑性変形可能部37の幅、言い換えれば、破断可能部36の始端と終端間の距離は、4〜9mm程度であることが好ましく、特に、6〜8mmであることが好ましい。
そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、軟質バッグ2の内面に固着するための平坦部を備え、塑性変形可能部37は、平坦部の医療用容器用中空体30の軸方向の延長線上に位置するように形成されている。このため、医療用容器用中空体30を第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の平坦部を軟質バッグ2の内面に固着することにより、塑性変形可能部37も軟質バッグ2の固着部付近の内面を向くものとなり、医療用容器1の薬剤室11を押圧したときの破断可能部36の破断ならびに塑性変形部37の塑性変形が確実なものとなる。
【0027】
そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、図6に示すように、破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より筒状部32の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分を有している。図15および図16に示すように、薬剤室11を押圧したとき、第1の応力付与部34の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部34が、引っ張られることにより、第1の応力付与部34に第2の応力付与部35より離間する方向に開く力が付与されることにより、破断可能部36は、破断し、それに続いて、塑性変形可能部37が塑性変形する。
破断可能部36は、破断可能な脆弱部である。具体的には、破断可能部は、薄肉部であることが好ましい。また、破断可能部36は、筒状部32の外面に溝部を形成することにより作製されていることが好ましい。この実施例では、破断可能部36は、溝部の断面がV字状の溝部を形成することにより作製されている。溝部の角度は、30〜120°、特に、40〜60°、最小肉厚は、0.05〜0.3mm、特に、0.08〜0.2mmであることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、軟質バッグ2を膨らませた場合、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。また、溝部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、本発明の破断可能部は、溝部が形成されることにより薄肉部が形成され破断可能となるものであるが、これに限定されるものではない。破断可能部は、例えば、薬剤収納部の破断可能部を形成する部分をその他の部分より脆弱な材質で形成することにより作製してもよい。具体的に、多色成形によって、破断可能部を形成する部分を破断容易な材料で作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。
また、破断可能部36は、第1の応力付与部34及び第2の応力付与部35により付与される応力により筒状部32(薬剤収納部)を破断可能なものであればいかなるものであってもよい。
【0028】
さらに、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、図7および図8に示すように、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない平板部34a,35aを備えていることが好ましい。また、平板部34a,35aの外面には、軟質バッグ2の内面に接合される平面部が形成されていることが好ましい。平面部は、軟質バッグの内面との接合面を形成する。この実施例のものでは、平面部は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の基端部付近から先端まで形成されている。そして、軟質バッグ2の内面と接合される平面部は、その少なくとも一部が、軟質バッグ2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、軟質バッグ2の内面に接合される平面部は、その一部若しくは全体が、軟質バッグ2の形成材料(特に、軟質バッグ2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。このような構成により、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35を軟質バッグ2の内面に確実に接合することができる。軟質バッグ2と相溶性のある樹脂としては、上述したものであることが好ましい。相溶性のある樹脂は、軟質バッグの構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。本発明の実施例では、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてが医療用容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製されていることが好ましく、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部ならびに筒状部32のすべてが医療用容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製されていることがさらに好ましい。また、相溶性のある樹脂層は、2色成形により作製されていてもよい。相溶性のある樹脂層は軟質バッグの内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。
【0029】
また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の間において若干離間して形成されている。このように、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間はあまり大きく離間していない。このため、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が、軟質バッグ2への固定時に押圧されても、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35に許容される変形量は少なく、破断可能部36が破断するおそれがない。本発明の実施例においては、図6および図7に示すように、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の平板部34a,35aの後端部付近を除いた側壁を高くして、側壁の内面のそれぞれに対応する位置に突起を形成することにより、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間が若干離間したものとなっている。
【0030】
そして、医療用容器1には、第1の応力付与部34の平板部34aの平面部の全体もしくは一部が、軟質バッグ2のシートの内面と接合されることにより第1の固定部21(図16参照)が形成され、同様に、第2の応力付与部35の平板部35aの平面部の全体もしくは一部が、軟質バッグ2のシートの内面と接合されることにより第2の固定部22(図16参照)が形成される。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬剤室の押圧時の軟質バッグの第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の拡がりに追従して拡がり、破断可能部を一方のシート側に開き破断する。
第1の応力付与部34の平面部および第2の応力付与部35の平面部と軟質バッグ2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。具体的には、排出ポート3を図1に示すような位置に配置した後、軟質バッグ2の一方のシート及び他方のシート面の両面側からシール金型により挟持しヒートシールすることにより行われることが好ましい。
【0031】
なお、排出ポート3における第1の応力付与部及び第2の応力付与部は、上述した構成のものに限定されず、軟質バッグを構成する一方のシート内面と他方のシート内面と接合可能であり、かつ軟質バッグの膨らみに連動して破断可能部に応力を付与できる構成を有しているものであればいかなる構成であってもよい。例えば、薬剤収納部の軸方向に延びるように形成されず、薬剤収納部に対して斜めに形成されるものであってもよい。
さらに、この実施例の排出ポート3では、医療用容器用中空体30の排出ポート3内に、針管侵入阻害部材4が収納されている。この実施例における針管侵入阻害部材4は、図3に示すように、医療用容器用中空体30の筒状部32の先端部内と当接可能な先端部を有する本体部41と、医療用針管の先端が当接可能な基端部43と、先端部41と基端部43を連結する接続部42を有するものである。
そして、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断の状態(図3の状態)において、シール部材52に医療用針管を穿刺した場合、この針の先端は針管侵入阻害部材4の基端部43に当接し、進入を阻止する。作業者は、医療用針管が穿刺不能状態であることより、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断であることを認識する。
そして、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断の状態(図3の状態)における医療用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、医療用針管の開口が排出ポート内部と連通しない長さであることが好ましい。
【0032】
この例の針管侵入阻害部材4では、本体部41は、図9ないし図13に示すように、4つの軸方向に延びる板状部41a,41b,41c、41dを有する断面十字状のものとなっている。また、基端部43は、図9ないし図13に示すように、円盤状に形成されている。また、本体部41と基端部43を接続する接続部42は、円盤状の基端部の上面中心より外縁方向に延びかつ外縁より突出する4つの平板部42a,42b,42c、42dにより形成されており、それぞれの平板部42a,42b,42c、42dの上部が対応する板状部41a,41b,41c,41dの下部と連結したものとなっている。
そして、この針管侵入阻害部材4は、医療用容器用中空体30の破断可能部36の破断後、排出ポートより流出可能なものとなっている。しかし、このようなものに限定されるものではなく、針管侵入阻害部材は破断可能部の破断後、排出ポートに留まるものであってもよい。また、針管侵入阻害部材4としては、医療用容器用中空体30の破断可能部36の未破断の状態における医療用針管の排出ポートへの穿刺を規制するものであれば、上記の針管侵入阻害部材に限定されるものではない。
【0033】
この実施例の医療用容器1では、医療用容器1の薬剤室11を押圧することにより薬剤室11を膨らませると、この膨らみ(第1の固定部21と第2の固定部22の開き)に連動して、図16に示すように、医療用容器用中空体30の第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とが一方のシート2a及び他方のシート2b方向に開き、まず、破断可能部36の先端側部分が破断され、次いで、第1の応力付与部側部分が破断される。これにより、中空体本体31は開封され、そして、塑性変形可能部37が変形(湾曲)し、筒状部32は薬剤室11と連通し、図16に示すように、針管侵入阻害部材4はポート本体より流出し、針管の接続が可能となるとともに、排出ポート内の薬剤は、軟質バッグ2の薬剤室11の薬剤と混合される。また、塑性変形可能部37は、変形状態を維持するため、医療用容器用中空体30の筒状部が第1の応力付与部により閉塞されることがない。
また、この実施例の排出ポート3では、図2および図3に示すように、排出ポート3(医療用容器用中空体30)を軟質バッグ2に取り付けるための筒状取付部材55を備えている。筒状取付部材55は、医療用容器用中空体30の筒状部32の中間部分を被包する筒状体であり、図14に示すように、医療用容器用中空体30の筒状部32に被嵌される本体部56と、筒状部32のフランジ部33を収納する拡径部57を有する筒状体である。なお、排出ポートとしては、筒状取付部材55を備えないものであってもよい。
また、排出ポートおよび医療用容器用中空体としては、図17に示すようなものであってもよい。この実施例の排出ポート3aおよび医療用容器用中空体30aの基本構成は、上述した排出ポート3および医療用容器用中空体30と同じである。
【0034】
この実施例に用いる医療用容器用中空体30aは、図17に示すように、破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より分岐し、筒状部32の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分36aと第2の応力付与側部分36bを有している。 破断可能部は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の基端部を取り囲むように形成されている。破断可能部の第1の応力付与部側部分36aは、基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37aが形成されている。 同様に、破断可能部の第2の応力付与部側部分36bは、基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37bが形成されている。具体的には、この実施例のものでは、破断可能部は、筒状部32の先端部であり、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の基端部と筒状部とを区分するよう、かつ始端および終端を有するもののほぼ環状に形成されている。そして、破断可能部の始端および終端間により塑性変形可能部37a、37bが形成されている。塑性変形可能部37a,37bは、塑性変形するものの第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、破断しないものとなっている。よって、第1の応力付与部34及び第2の応力付与部35は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、中空体30aより分離しないものとなっている。塑性変形可能部37a,37bの幅、言い換えれば、破断可能部の始端と終端間の距離は、4〜9mm程度であることが好ましく、特に、6〜8mmであることが好ましい。
図18および図19に示すように、薬剤室11を押圧したとき、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35に開く方向に力が付与されることにより、破断可能部は破断し、それに続いて、塑性変形可能部が塑性変形する。特に、この実施例の排出ポート(医療用容器用中空体)を用いた医療用容器では、どちらの面を操作台上に載置した状態において薬剤室を上から押圧しても、載置状態の表面側となった破断可能部が破断し、塑性変形部が変形するものであり、作業性が良好となる。
【0035】
また、本発明の医療用容器としては、図20に示すようなものであってもよい。
この実施例の医療用容器20と上述した医療用容器1との相違は、軟質バッグ2の形態の相違および混注ポートを有する点である。
この医療用容器20は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3および混注ポート8を備えている。排出ポート3としては、上述したものが好適に使用される。
医療用容器20は、図20に示すように、軟質バッグ2と、薬液と、排出ポート3と、混注ポート8とを備えている。
軟質バッグ2は、図20に示すように、剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室(薬液室)11と第2の薬剤室(薬液室)12とに区分されている。
また、軟質バッグ2には、図20に示すように、排出ポート3の薬剤室側先端部の近傍に設けられ、第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部25を備えている。なお、上述した実施例の医療用容器1にもこの第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部を設けてもよい。
拡がり抑制用シート間固定部25は、図20に示す実施例では、排出ポート3の第1の応力付与部および第2の応力付与部の先端部付近を取り囲むように形成されている。拡がり抑制用シート間固定部は、輸送中等の使用前に軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、軟質バッグ2を手指で強く押したときに剥離可能なものであることが好ましい。シート間固定部25としては、図示する実施例のように、応力付与部の先端部付近かつ薬剤室の内側となる位置に連続する円弧状のものであることが好ましい。なお、シート間固定部25は、連続ではなく、複数の点状のものであってもよい。さらに、シート間固定部25は、応力付与部の先端部付近かつその側面側に1つもしくは応力付与部21,22を挟むように2つ設けたものであってもよい。そして、拡がり抑制用シート間固定部25としては、図20に示すように、両端部がシール部6に到達せず、薬剤室11と区画された室を形成しないものである。
【0036】
シート間固定部25は、軟質バッグ2を剥離可能に融着することにより形成することが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着等であることが好ましい。シート間固定部25は、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、軟質バッグ2の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。拡がり抑制用シート間固定部を有していることにより、輸送中などに軟質バッグ2が膨らみ第1の応力付与部と第2の応力付与部とが裂開されるおそれがない。なお、拡がり抑制用シート間固定部の形状としては、輸送中などの使用前に筒状部が破断されることを防止できる形状であればいかなるものであってもよい。
図20に示すように、軟質バッグ2は、剥離可能な仕切用弱シール部9より第1の薬剤室11と第2の薬剤室12に仕切られている。仕切用弱シール部9は、図20に示すように、軟質バッグ2の薬剤室の横方向全体を横切るように設けられている。仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2のシート材を帯状に融着することにより形成されている。本発明の実施例において、仕切用弱シール部9の両端部には、実質的に剥離しない強シール部9aが形成されている。実施例の仕切用弱シール部9は、第2の薬剤室12を手指等で強く押圧したとき(絞った時、握った時)に剥離して第1の薬剤室11と第2の薬剤室12とを連通可能なものである。
仕切用弱シール部9の剥離強度としては、輸送中に軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、軟質バッグ2を手指等で強く押したときに剥離する程度であることが好ましい。仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2を融着することにより形成されることが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着等であることが好ましい。軟質バッグ2は、このように仕切用弱シール部9により仕切られた2つの薬剤室11,12を有しているため、異なる成分の薬剤を無菌的に軟質バッグ2内にて混合することができる。また、図20に示す実施例において仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2に対して水平に帯状に形成されているがこれに限定されるものではない。
【0037】
軟質バッグ2の薬剤室11,12には、それぞれ輸液剤(薬液)が収納されている。このような輸液剤としては、例えば、腹膜透析液、経中心静脈輸液剤、経末梢静脈輸液剤、経末梢静脈用注射剤、液状栄養剤などのように2つ以上の液剤を輸液の際に混合する必要のあるものが好ましい。また、輸液剤としては、例えば生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、アミノ酸電解質溶液等が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、薬剤室の一方にブドウ糖電解質液、他方にアミノ酸液を収納し、更に両室にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、パンテノール、ニコチン酸アミドなどの水溶性ビタミンを安定性などを考慮して適宜振り分け収納することができる。この場合、後述する薬剤室に取り付ける薬剤容器にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど脂溶性ビタミンを主とした液剤を収納することにより、ビタミン配合高カロリー総合輸液剤とすることができる。
また、上端側シール部5には、混注ポート8が取り付けられている。混注ポートとしては、公知のものが使用できる。
【0038】
上述した実施例の医療用容器20は、上述したように拡がり抑制用シート間固定部25を備えているが、これに限定されるものではなく、図24に示す実施例の医療用容器20aのように、拡がり抑制用シート間固定部25を持たないものであってもよい。
また、図25に示す医療用容器20bのように、軟質バッグ2は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成された連通阻害用弱シール部26を備えるものであってもよい。連通阻害用弱シール部26により、第1の薬剤室11から隔離された小室27が形成されている。この小室27は、本発明の実施例では空き室となっている。しかし、この小室27には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、小室27は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、連通阻害用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、小室27と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。連通阻害用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。連通阻害用弱シール部26は、図25に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、連通阻害用弱シール部26は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
【0039】
次に、医療用容器用中空体を薬剤容器に応用した実施例について説明する。
この実施例の薬剤容器7は、図21および図22に示すように、医療用容器用中空体70と、中空体70の開口部を封止する封止部材72と、中空体70内に充填された薬剤73とからなる。
医療用容器用中空体70は、先端部が閉塞した筒状部71と、筒状部71の先端部に設けられた破断可能部76と、筒状部71の破断可能部76を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部74および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部75とを備える。破断可能部76は、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75間の拡がりにより破断し、筒状部71を開口するものである。さらに、破断可能部76は、第1の応力付与部74または第2の応力付与部75の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部76の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75間が拡がり、破断可能部76の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部(言い換えれば、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)77を有している。
そして、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75は、上述した医療用容器用中空体30にて説明した第1の応力付与部34および第2の応力付与部35と同じ構成であることが好ましい。また、破断可能部76および塑性変形可能部77についても、上述した医療用容器用中空体30にて説明した破断可能部36および塑性変形可能部37と同じ構成であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の医療用容器としては、図23に示すようなものであってもよい。
この実施例の医療用容器60は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられ薬剤室11内の薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器7と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。薬剤容器7として、本発明の医療用容器用中空体70を用いた上記の薬剤容器7を用いるものである。
そして、医療用容器用中空体70の第1の応力付与部74の平板部74aの一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシート2aの内面に固定されており、第2の応力付与部75の平板部75aの一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する他方のシート2bの内面に固定されており、破断可能部76は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2と固定された第1の応力付与部74および第2の応力付与部75の拡がりにより破断し、薬剤容器7内を薬剤室11と連通させるものである。
そして、この実施例の薬剤容器7においても、医療用容器用中空体70は、図6に示したものと同様に、破断可能部76は、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より筒状部71の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分を有している。薬剤室12を押圧したとき、第1の応力付与部74の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部74が、引っ張られることにより、第1の応力付与部74に第2の応力付与部75より離間する方向に開く力が付与されることにより、破断可能部76は破断し、それに続いて、塑性変形可能部77が塑性変形する。塑性変形可能部77は、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75間が拡がった状態(塑性変形状態)を維持するため、医療用容器用中空体70の筒状部71が第1の応力付与部により閉塞されることがない。
【0041】
また、この実施例の医療用容器60も上述した医療用容器20と同様に、軟質バッグ2には、図23に示すように、薬剤容器7の薬剤室側先端部の近傍に設けられ、第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部78を備えている。拡がり抑制用シート間固定部78としては、上述した拡がり抑制用シート間固定部25と同様のものが好適である。また、この実施例の医療用容器60も上述した医療用容器20と同様に、軟質バッグ2に、剥離可能な仕切用弱シール部9より第1の薬剤室11と第2の薬剤室12に仕切られている。仕切用弱シール部9としても上述したものと同様であることが好ましい。
また、この実施例の医療用容器60では、図23に示すように、軟質バッグ2の下端側シール部6に排出ポート10を有する。排出ポート10は、図23に示すような公知のものを使用することが好ましく、例えば、筒状ポート部材とその開口を封止するとともに針管を挿通可能なシール部材を備えるものが好ましい。
さらに、この実施例の医療用容器60では、図23に示すように、軟質バッグ2は、排出ポート10と第1の薬剤室11との連通を阻害する連通阻害用弱シール部26を備えている。
連通阻害用弱シール部26は、排出ポート10の上方を取り囲むように形成されている。この連通阻害用弱シール部26により、第1の薬剤室11から隔離された小室27が形成されている。この小室27は、本発明の実施例では空き室となっている。しかし、この小室27には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、小室27は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、連通阻害用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、小室27と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。連通阻害用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
連通阻害用弱シール部26は、図23に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、連通阻害用弱シール部26は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,20,60 医療用容器
2 軟質バッグ
3 排出ポート
7 薬剤容器
30 医療用容器用中空体
34 第1の応力付与部
35 第2の応力付与部
36 破断可能部
37 塑性変形可能部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部において、輸液などの薬液に薬剤の調整や配合を行うことができる医療用容器および医療用容器用中空体、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器用薬剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用容器には、閉塞した先端部を有し、開封可能な筒状体が取り付けられている。この筒状体としては、例えば、薬液の投与時に使用される排出ポート、医療用容器内の薬液に添加される薬剤を収納した薬剤容器がある。
そして、患者に輸液を行うに先だって、輸液剤の入ったバイアル瓶や軟質バッグ等に、予め輸液剤に配合することが困難な薬剤、例えば、ビタミン剤、抗生物質等の薬剤を混合、溶解させ、薬液を調製することが行われている。そして、このような薬液の調製を無菌的に、また、簡単な操作で行うため、薬液が収納された軟質バッグに薬液と混合する薬剤を収納した薬剤容器を取り付け、輸液の際、薬剤容器に設けられた脆弱部を軟質バッグ越しに折り曲げ破断することにより薬剤容器と軟質バッグを連通させ薬剤と薬液とを混合するようにした医療用容器が提案されている。
【0003】
本件出願人は、特開2006−87904(特許文献1)を提案している。
特許文献1の薬剤容器もしくは排出ポートは、閉塞した先端部を有し、開封可能な薬剤容器もしくは排出ポートであって、確実に薬剤容器もしくは排出ポート内と医療用容器内とを区分することができ、かつ、必要時には容易かつ確実に薬剤容器もしくは排出ポート内を医療用容器内とを連通できるものである。特許文献1の薬剤容器100は、図32から図37に示すように、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、先端部が閉塞した筒状部7と、筒状部7の少なくとも先端部に設けられた破断可能部58と、筒状部7の破断可能部58を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方の内面に固着している第1の応力付与部59および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部60とを備え、破断可能部58は、第1の応力付与部59および第2の応力付与部60間の拡がりにより破断し破断可能部58より先端側部分が分離して筒状部7を開口するものである。
【0004】
また、特許文献1の排出ポート86は、図38から図42に示すように、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、先端部が閉塞した筒状部88と、筒状部88の少なくとも先端部に設けられた破断可能部91と、筒状部88の破断可能部91を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方の内面に固着している第1の応力付与部89および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部90とを備え、破断可能部91は、第1の応力付与部89および第2の応力付与部90間の拡がりにより破断し破断可能部91より先端側部分が分離して筒状部88を開口するものである。
しかしながら、特許文献1の図29に示すように、薬剤容器100、排出ポート86を備える医療用容器1,85の軟質バッグ2を押圧することにより、薬剤容器100の破断可能部58もしくは排出ポート86の破断可能部91を破断して破断可能部58,91より第1の応力付与部側部分及び第2の応力付与部側部分を分離させたとき、破断により形成された筒状部の開口が、希ではあるが、分離された部材により再び閉塞されることが危惧される。
そこで、本件出願人は、特開2006−280390(特許文献2)を提案している。
特許文献2の医療用容器は、薬剤室を有する軟質バッグ2と、薬液と、筒状体とを備える医療用容器1であって、筒状体は、筒状部と、破断可能部と、破断可能部を挟むように設けられ軟質バッグの内面に固着した第1の応力付与部34及び第2応力付与部36とを備え、破断可能部は、第1、第2の応力付与部34,36の拡がりにより破断し開口する。また、容器1は破断可能部の基端部外面を乗り越えるように先端側に延び、かつ破断後の第1の応力付与部側分離部33の基端部33a、第2の応力付与部側分離部35の基端部35aを軟質バッグ内面との間にて保持する破断後応力付与部保持用延出部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−87904
【特許文献2】特開2006−280390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献2のものでも十分な効果を有するが、破断後の第1の応力付与部側分離部33の基端部33a、第2の応力付与部側分離部35の基端部35aが、破断後応力付与部保持用延出部により保持された後、スタンドに吊下するなどの作業時に、希に、保持状態が解除される場合があった。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するものであり、先端部が閉塞した筒状部と、筒状部の少なくとも先端部に設けられた破断可能部と、筒状部の破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグの一方の内面に固着している第1の応力付与部および軟質バッグ2の他方の内面に固着している第2の応力付与部とを備え、第1の応力付与部および第2の応力付与部間の拡がりにより破断する破断可能部を備える医療用容器用中空体であって、破断可能部の破断により形成された開口が、筒状部より分離した第1の応力付与部または第2の応力付与部により再び閉塞される可能性が極めて少ない医療用容器用中空体およびそれを用いた医療用容器用薬剤容器、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体であって、該中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、該中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、該筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、前記筒状部の該破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに前記軟質バッグの一方のシートの内面に固着可能な第1の応力付与部および前記軟質バッグの他方のシートの内面に固着可能な第2の応力付与部とを備え、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、前記筒状部を開口するものであり、かつ、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記破断可能部の破断後、前記中空体より分離しないものであり、さらに、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、前記破断可能部の始端および終端間に形成され、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がり、前記破断可能部の破断後に塑性変形し、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有する医療用容器用中空体。
【0008】
(2) 前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部において部分的破断可能部欠損部を備え、該欠損部により、前記塑性変形可能部が形成されているとともに、該組成変形可能部は、該組成変形可能部が設けられた前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の前記中空体からの分離を許容しないものとなっている上記(1)に記載の医療用容器用中空体。
(3) 前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部のいずれか一方にのみ設けられている上記(1)または(2)に記載の医療用容器用中空体。
(4) 前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記軟質バッグの内面に固着するための平坦部を備え、前記塑性変形可能部は、前記平坦部の前記医療用容器用中空体の軸方向の延長線上に位置するように形成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
(5) 前記破断可能部は、前記筒状部の先端部付近であって前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間に位置しかつ前記筒状部の基端側に延びる先端側部分と、該先端側部分の基端部より、前記筒状部の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分または前記第2の応力付与部側部分を有している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(6) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ後端部が開口した中空体と、該中空体の前記後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部を有する医療用容器用排出ポート。
(7) 前記医療用容器用排出ポートの前記筒状部内には、薬剤が収納されている上記(6)に記載の医療用容器用排出ポート。
(8) 前記医療用容器用排出ポートの前記中空体内には、薬剤と、前記破断可能部の未破断時における前記中空体内への前記医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材とが収納されている上記(7)に記載の医療用容器用排出ポート。
【0010】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(9) 上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ一端部が開口した中空体と、該中空体の前記一端部を封鎖する封止部材と、前記中空体内に収納された薬剤とを有する医療用容器用薬剤容器。
【0011】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(10) 軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記排出ポートは、上記(6)ないし(8)のいずれかに記載の排出ポートであり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記排出ポート内を前記薬液室と連通させるものである医療用容器。
【0012】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(11) 軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられ前記薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器と、該軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記薬剤容器は、上記(9)に記載の薬剤容器であり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記薬剤容器内を前記薬液室と連通させるものである医療用容器。
【発明の効果】
【0013】
本発明の医療用容器用中空体は、軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体である。中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、筒状部の破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグの一方の内面に固着可能な第1の応力付与部および軟質バッグの他方の内面に固着可能な第2の応力付与部とを備える。破断可能部は、第1の応力付与部および第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、筒状部を開口するものであり、さらに、第1の応力付与部および第2の応力付与部は、破断可能部の破断後、中空体より分離しないものである。さらに、破断可能部は、第1の応力付与部または第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有している。このため、この医療用容器用中空体によれば、第1の応力付与部および第2の応力付与部間が拡がり、破断可能部の破断後では、塑性変形可能部により、第1の応力付与部と第2の応力付与部間が広がった状態が維持されるので、破断可能部の破断により形成された開口が、第1の応力付与部および第2の応力付与部により再び閉塞されることを確実に防止する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の医療用容器の一実施例の正面図である。
【図2】図2は、本発明の医療用容器用排出ポートの一実施例の正面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線断面図である。
【図4】図4は、図2のB−B線拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の医療用容器用中空体の一実施例の正面図である。
【図6】図6は、図5に示した医療用容器用中空体の右側面図である。
【図7】図7は、図6に示した医療用容器用中空体の斜視図である。
【図8】図8は、図6に示した医療用容器用中空体の拡大平面図である。
【図9】図9は、本発明の医療用容器用排出ポート内に収納された針管侵入阻害部材の一例の正面図である。
【図10】図10は、図9に示した針管侵入阻害部材の右側面図である。
【図11】図11は、図9に示した針管侵入阻害部材の拡大平面図である。
【図12】図12は、図9に示した針管侵入阻害部材の拡大底面図である。
【図13】図13は、図9に示した針管侵入阻害部材の斜視図である。
【図14】図14は、本発明の医療用容器に用いられる中空体取付用部材の斜視図である。
【図15】図15は、本発明の医療用容器用排出ポートおよび医療用容器用中空体の作用を説明するための説明図である。
【図16】図16は、本発明の医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図17】図17は、本発明の医療用容器用排出ポートの他の実施例の側面図である。
【図18】図18は、図17に示した医療用容器用排出ポートの作用を説明するための説明図である。
【図19】図19は、図17に示した医療用容器用排出ポートを用いた医療用容器の作用を説明するための説明図である。
【図20】図20は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図21】図21は、本発明の医療用容器用薬剤容器の一実施例の正面図である。
【図22】図22は、図21のC−C線断面図である。
【図23】図23は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図24】図24は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【図25】図25は、本発明の医療用容器の他の実施例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の医療用容器用中空体、医療用容器用薬剤容器、医療用容器用排出ポートおよび医療用容器について、図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の医療用容器用中空体30は、軟質バッグ2を備える医療用容器1に用いられる医療用容器用中空体である。中空体30は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、筒状部32の破断可能部36を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部34および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部35とを備える。破断可能部36は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間の拡がりにより破断し、筒状部32を開口するものであり、さらに、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、破断可能部36の破断後、中空体30より分離しないものである。さらに、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がり、破断可能部36の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部37を有している。
なお、ここで言う「第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する」とは、塑性変形した状態、言い換えれば、破断可能部が破断し、中空体30の筒状部32が開口した状態を維持するものを示すものであり、塑性変形時の初期形状(初期状態)を完全に維持するものに限定されるものではない。塑性変形可能部37は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間が広がることにより塑性変形し、塑性変形した状態を維持可能な部位であり、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部と言い換えることもできる。
【0016】
また、本発明の医療用容器用排出ポート3は、本発明の医療用容器用中空体でありかつ後端部が開口した中空体30と、中空体30の後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部とを有するものである。
また、本発明の医療用容器用薬剤容器7は、本発明の医療用容器用中空体70と、中空体70の開口部を封鎖する封止部材72と、筒状部内に収納された薬剤73とを有するものである。
また、本発明の医療用容器1は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、排出ポート3として、本発明の医療用容器用中空体を用いた排出ポートを用いるものである。
また、本発明の医療用容器60は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室(薬液室)11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられ薬剤室11内の薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器7と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、薬剤容器7として、本発明の医療用容器用中空体を用いた薬剤容器7を用いるものである。
【0017】
最初に、本発明の医療用容器用中空体を薬剤容器兼排出ポートに応用したものおよびそれを用いた医療用容器の実施例を用いて説明する。
この実施例の医療用容器1は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。そして、排出ポート3は、本発明の医療用容器用中空体を用いた排出ポートであり、かつ、第1の応力付与部34の外面の一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシート2aの内面に固定されており、第2の応力付与部35の外面の一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する他方のシート2bの内面に固定されており、破断可能部36は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2と固定された第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の拡がりにより破断し、排出ポート3内を薬剤室11と連通させるものである。
この実施例の医療用容器1は、可撓性材料により形成され、内部に薬剤収納部である薬剤室11を有する軟質バッグ2と、軟質バッグ2の薬剤室11に取り付けられた医療用容器用排出ポート3と、薬剤室11に充填された薬液とを備える薬剤入り医療用容器である。
また、図1に示すように、軟質バッグ2の一端側及び他端側には、シール部5,6が設けられている。
【0018】
医療用容器1の軟質バッグ2は、軟質合成樹脂により形成されている。軟質バッグ2は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、軟質バッグ2は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
軟質バッグ2は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m2・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。このように軟質バッグ2が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬剤(具体的には、薬液)の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0019】
このような軟質バッグ2の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
本発明においては、軟質バッグ2の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。軟質バッグ2の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン−ブタジエン共重合体やスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン共重合体,プロピレン−αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0020】
また、軟質バッグは、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、軟質バッグ2の耐衝撃性を向上させたり、対ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、軟質バッグ2のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、軟質バッグ2の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、軟質バッグ2が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
軟質バッグ2を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100〜500μm程度であるのが好ましく、200〜360μm程度であるのがより好ましい。
また、医療用容器1の容積は、内部に収納する薬剤の種類等によって異なるが、通常は、薬剤室の容積が、50〜5000ml程度であることが好ましい。
医療用容器用排出ポート3は、軟質バッグ2内に充填された薬剤(薬液)を排出するためのものである。
【0021】
排出ポート3は、軟質バッグ2の薬剤室に固定されている。排出ポート3は、医療用容器用中空体30を備え、医療用容器用中空体30は、先端部が閉塞した筒状部32と、筒状部32の先端部に設けられた破断可能部36と、筒状部32の破断可能部36を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部34および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部35とを備える。破断可能部36は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間の拡がりにより破断し、筒状部32を開口するものである。さらに、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35間が広がることにより塑性変形し、塑性変形した状態を維持可能な塑性変形可能部(言い換えれば、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)37を有している。
また、排出ポート3は、筒状部32の他端側を閉塞し、かつ、医療用針管の接続が可能なシール部材52を有する排出口を備えている。さらに、この実施例の医療用容器1では、排出ポート3内には、医療用容器用中空体30に設けられ破断可能部36の未破断時における医療用容器用中空体30の筒状部32内への医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材4が収納されている。
【0022】
この実施例の排出ポート3は、医療用容器用中空体30と、医療用容器用中空体30の開口部を封止するとともに医療用針の接続(穿刺)が可能な排出口50と、排出ポート3(医療用容器用中空体30)を軟質バッグ2に取り付けるための筒状取付部材55と、医療用容器用中空体30内に収納された針管侵入阻害部材4と、医療用容器用中空体30内に充填された薬液39とを備えている。
そして、排出口50は、医療用針管の接続(穿刺)が可能なシール部材52と、このシール部材52を医療用容器用中空体30の開口部に固定するためのキャップ部材51とを備えている。そして、キャップ部材51は、医療用容器用中空体30の基端部に設けられた固定部(フランジ部33)に、超音波融着、高周波融着、熱融着等により固定される。医療用容器用中空体30の筒状部32は、内部の薬剤が目視可能に透明に形成されていることが好ましい。また、医療用容器用中空体30の筒状部32は、常圧でもよいが、減圧または真空状態としてもよい。このように、薬剤収納部が減圧または真空状態であると、薬剤の変質分解・劣化等の防止効果が向上する。
収納される薬剤39としては、粉末、顆粒状などの固体状、液体状等いかなるものでもよい。薬剤としては、輸液剤に配合・溶解させるものであって、例えば抗生物質、ビタミン剤(総合ビタミン剤)、各種アミノ酸、ヘパリン等の抗血栓剤、インシュリン、抗腫瘍剤、鎮痛剤、強心剤、静注麻酔剤、抗パーキンソン剤、潰瘍治療剤、副腎皮質ホルモン剤、不整脈用剤、補正電解質、抗ウィルス薬、免疫賦活剤等が挙げられる。
【0023】
排出ポート3は、通常状態では非連通のポートである。
医療用容器用中空体30は、図3,図5ないし図8に示すように、中空部を有する筒状部32と、筒状部32に設けられた破断可能部36と、第1の応力付与部34と、第2の応力付与部35とを備えている。破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部36の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がり、破断可能部36の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部(変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)37を有している。さらに、医療用容器用中空体30は、第1の応力付与部34を軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシートの内面に固定された第1の固定部21(図16参照)と、第2の応力付与部35を薬剤室11を形成する他方のシートの内面に固定された第2の固定部22(図16参照)を有している。そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、筒状部32の基端部に、医療用針管の接続(穿刺)が可能な排出口50を取り付けるための取付部が形成されている。また、筒状部32の基端部は、破断可能部36より基端側に所定長延びるものとなっている。
医療用容器用中空体30の破断可能部36は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2との第1の固定部21と第2の固定部22間の拡がりにより破断するものとなっている。
【0024】
筒状部32は、図5ないし図7に示すように、先端部が閉塞し、基端部が開口した筒状部分であり、基端部に設けられたフランジ部33と、第1の円筒部と、第1の円筒部と連続し先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部と、テーパー部と連続する第2の円筒部と、第2の円筒部と連続する閉塞部(先端部)とからなる。先端部の形状は、ドーム形状、円錐形状、円錐台形状であることが好ましく、特に、ドーム形状、円錐台形状であることが好ましい。この実施例では、閉塞部は、ドーム形状となっている。
筒状部32の容積は、1〜30mlであることが好ましい。筒状部の長さは、20〜100mmであることが好ましい。また、フランジ部の基端側は、排出口50を形成するキャップ部材51を固定するためのものである。
中空体本体31の形成材料としては、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、環状ポリオレフィン[具体的にはZEONEX(登録商標、日本ゼオン株式会社製)のようなCOP(環状オレフィンポリマー)、APEL(登録商標、三井化学株式会社製)のようなCOC(環状オレフィンコポリマー)]、ポリプロピレンホモポリマー、高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、芳香族または脂肪族ポリアミド等の各種樹脂、あるいはこれらを任意に組み合わせたものが挙げられる。また、中空体本体の形成材料、特に、塑性変形可能部の形成材料としては、引張り伸び(破断伸び)が、20%以上であることが好ましい。また、塑性変形可能部の肉厚は、1.0〜1.5mmであることが好ましい。
【0025】
そして、この実施例では、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、図2ないし図8に示すように、筒状部32の破断可能部付近を基端として前方に延出している。第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、両者間を開く力が付与されたときに、その力を破断可能部を破断するための応力に変換する機能を備えている。また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とは向かい合うように形成されていることが好ましい。また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の本体部は縦長の矩形状に形成されていることが好ましい。このような構成により、軟質バッグ2を押圧して膨らませた際に、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とにより、破断可能部36に確実に破断応力が付与される。
具体的には、この実施例の医療用容器1における医療用容器用中空体30では、第1の応力付与部34、第2の応力付与部35は、図3ないし図7に示すように、縦長の平板部34a,35aと、平板部の両側に形成された側壁部とを備えている。第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、筒状部32の軸方向に延びるように設けられている。第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とは、側壁部分が対向するものとなっている。そして、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、向かい合いかつ若干離間するように設けられている。また、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、平板部34a,35bの中央付近に位置し、中空体の軸方向に延びるリブ34b,35bを備えている。このリブ34b,35bは、当接しないものとなっている。
【0026】
破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35により応力が付与されたとき、筒状部32の先端部分を縦にさくことができるような構成であることが好ましい。破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35の基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37が形成されている。そして、組成変形可能部37は、欠損部により構成されるとともに、欠損部が設けられた第1の応力付与部または第2の応力付与部の中空体からの分離を許容しないものとなっている。具体的には、この実施例のものでは、破断可能部36は、図5および図7に示すように、筒状部32の先端部であり、第1の応力付与部34の基端部と筒状部とを区分するよう、かつ始端および終端を有するもののほぼ環状に形成されている。そして、破断可能部36の始端および終端間により塑性変形可能部(破断可能部欠損部)37が形成されている。そして、破断可能部36は、第1の応力付与部34または第2の応力付与部35のいずれか一方にのみ(この実施例では、第1の応力付与部34側のみ)に設けられている。塑性変形可能部37は、塑性変形するものの第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、破断しない。よって、破断可能部36を有する第1の応力付与部34は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)では、中空体30より分離しないものとなっている。塑性変形可能部37の幅、言い換えれば、破断可能部36の始端と終端間の距離は、4〜9mm程度であることが好ましく、特に、6〜8mmであることが好ましい。
そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、軟質バッグ2の内面に固着するための平坦部を備え、塑性変形可能部37は、平坦部の医療用容器用中空体30の軸方向の延長線上に位置するように形成されている。このため、医療用容器用中空体30を第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の平坦部を軟質バッグ2の内面に固着することにより、塑性変形可能部37も軟質バッグ2の固着部付近の内面を向くものとなり、医療用容器1の薬剤室11を押圧したときの破断可能部36の破断ならびに塑性変形部37の塑性変形が確実なものとなる。
【0027】
そして、この実施例の医療用容器用中空体30では、図6に示すように、破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より筒状部32の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分を有している。図15および図16に示すように、薬剤室11を押圧したとき、第1の応力付与部34の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部34が、引っ張られることにより、第1の応力付与部34に第2の応力付与部35より離間する方向に開く力が付与されることにより、破断可能部36は、破断し、それに続いて、塑性変形可能部37が塑性変形する。
破断可能部36は、破断可能な脆弱部である。具体的には、破断可能部は、薄肉部であることが好ましい。また、破断可能部36は、筒状部32の外面に溝部を形成することにより作製されていることが好ましい。この実施例では、破断可能部36は、溝部の断面がV字状の溝部を形成することにより作製されている。溝部の角度は、30〜120°、特に、40〜60°、最小肉厚は、0.05〜0.3mm、特に、0.08〜0.2mmであることが好ましい。このような角度に溝形成部を作製することにより、軟質バッグ2を膨らませた場合、破断可能部の中心に応力が集中して確実に破断するものとなる。また、溝部は、破断容易な形状であればいかなる形状のものであってもよく、実施例のようなV字形状に限られず半円形状、半楕円形状等であってもよい。また、本発明の破断可能部は、溝部が形成されることにより薄肉部が形成され破断可能となるものであるが、これに限定されるものではない。破断可能部は、例えば、薬剤収納部の破断可能部を形成する部分をその他の部分より脆弱な材質で形成することにより作製してもよい。具体的に、多色成形によって、破断可能部を形成する部分を破断容易な材料で作製して、その他の部分を破断容易でない材料にて作製することが好ましい。
また、破断可能部36は、第1の応力付与部34及び第2の応力付与部35により付与される応力により筒状部32(薬剤収納部)を破断可能なものであればいかなるものであってもよい。
【0028】
さらに、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35は、図7および図8に示すように、向かい合うそれぞれの面に設けられ、相互に当接しない平板部34a,35aを備えていることが好ましい。また、平板部34a,35aの外面には、軟質バッグ2の内面に接合される平面部が形成されていることが好ましい。平面部は、軟質バッグの内面との接合面を形成する。この実施例のものでは、平面部は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の基端部付近から先端まで形成されている。そして、軟質バッグ2の内面と接合される平面部は、その少なくとも一部が、軟質バッグ2の内面に固着可能な材料により形成されている。具体的には、軟質バッグ2の内面に接合される平面部は、その一部若しくは全体が、軟質バッグ2の形成材料(特に、軟質バッグ2の内面側を形成する形成材料)と相溶性のある樹脂により形成されていることが好ましい。このような構成により、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35を軟質バッグ2の内面に確実に接合することができる。軟質バッグ2と相溶性のある樹脂としては、上述したものであることが好ましい。相溶性のある樹脂は、軟質バッグの構成材料と同一もしくは近似した材料であることが好ましい。本発明の実施例では、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部のすべてが医療用容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製されていることが好ましく、第1の応力付与部もしくは第2の応力付与部ならびに筒状部32のすべてが医療用容器の軟質バッグと相溶性のある樹脂により作製されていることがさらに好ましい。また、相溶性のある樹脂層は、2色成形により作製されていてもよい。相溶性のある樹脂層は軟質バッグの内面と接合し易いように平坦に作製されていることが好ましい。
【0029】
また、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の間において若干離間して形成されている。このように、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間はあまり大きく離間していない。このため、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間が、軟質バッグ2への固定時に押圧されても、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35に許容される変形量は少なく、破断可能部36が破断するおそれがない。本発明の実施例においては、図6および図7に示すように、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35の平板部34a,35aの後端部付近を除いた側壁を高くして、側壁の内面のそれぞれに対応する位置に突起を形成することにより、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間が若干離間したものとなっている。
【0030】
そして、医療用容器1には、第1の応力付与部34の平板部34aの平面部の全体もしくは一部が、軟質バッグ2のシートの内面と接合されることにより第1の固定部21(図16参照)が形成され、同様に、第2の応力付与部35の平板部35aの平面部の全体もしくは一部が、軟質バッグ2のシートの内面と接合されることにより第2の固定部22(図16参照)が形成される。このため、第1の応力付与部及び第2の応力付与部が、薬剤室の押圧時の軟質バッグの第1の応力付与部および第2の応力付与部の固定部間の拡がりに追従して拡がり、破断可能部を一方のシート側に開き破断する。
第1の応力付与部34の平面部および第2の応力付与部35の平面部と軟質バッグ2の各シートの内面との接合は、超音波融着、高周波融着、熱融着等により行われることが好ましい。具体的には、排出ポート3を図1に示すような位置に配置した後、軟質バッグ2の一方のシート及び他方のシート面の両面側からシール金型により挟持しヒートシールすることにより行われることが好ましい。
【0031】
なお、排出ポート3における第1の応力付与部及び第2の応力付与部は、上述した構成のものに限定されず、軟質バッグを構成する一方のシート内面と他方のシート内面と接合可能であり、かつ軟質バッグの膨らみに連動して破断可能部に応力を付与できる構成を有しているものであればいかなる構成であってもよい。例えば、薬剤収納部の軸方向に延びるように形成されず、薬剤収納部に対して斜めに形成されるものであってもよい。
さらに、この実施例の排出ポート3では、医療用容器用中空体30の排出ポート3内に、針管侵入阻害部材4が収納されている。この実施例における針管侵入阻害部材4は、図3に示すように、医療用容器用中空体30の筒状部32の先端部内と当接可能な先端部を有する本体部41と、医療用針管の先端が当接可能な基端部43と、先端部41と基端部43を連結する接続部42を有するものである。
そして、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断の状態(図3の状態)において、シール部材52に医療用針管を穿刺した場合、この針の先端は針管侵入阻害部材4の基端部43に当接し、進入を阻止する。作業者は、医療用針管が穿刺不能状態であることより、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断であることを認識する。
そして、医療用容器用中空体30の破断可能部36が未破断の状態(図3の状態)における医療用針管の排出ポートへの穿刺可能長さは、医療用針管の開口が排出ポート内部と連通しない長さであることが好ましい。
【0032】
この例の針管侵入阻害部材4では、本体部41は、図9ないし図13に示すように、4つの軸方向に延びる板状部41a,41b,41c、41dを有する断面十字状のものとなっている。また、基端部43は、図9ないし図13に示すように、円盤状に形成されている。また、本体部41と基端部43を接続する接続部42は、円盤状の基端部の上面中心より外縁方向に延びかつ外縁より突出する4つの平板部42a,42b,42c、42dにより形成されており、それぞれの平板部42a,42b,42c、42dの上部が対応する板状部41a,41b,41c,41dの下部と連結したものとなっている。
そして、この針管侵入阻害部材4は、医療用容器用中空体30の破断可能部36の破断後、排出ポートより流出可能なものとなっている。しかし、このようなものに限定されるものではなく、針管侵入阻害部材は破断可能部の破断後、排出ポートに留まるものであってもよい。また、針管侵入阻害部材4としては、医療用容器用中空体30の破断可能部36の未破断の状態における医療用針管の排出ポートへの穿刺を規制するものであれば、上記の針管侵入阻害部材に限定されるものではない。
【0033】
この実施例の医療用容器1では、医療用容器1の薬剤室11を押圧することにより薬剤室11を膨らませると、この膨らみ(第1の固定部21と第2の固定部22の開き)に連動して、図16に示すように、医療用容器用中空体30の第1の応力付与部34と第2の応力付与部35とが一方のシート2a及び他方のシート2b方向に開き、まず、破断可能部36の先端側部分が破断され、次いで、第1の応力付与部側部分が破断される。これにより、中空体本体31は開封され、そして、塑性変形可能部37が変形(湾曲)し、筒状部32は薬剤室11と連通し、図16に示すように、針管侵入阻害部材4はポート本体より流出し、針管の接続が可能となるとともに、排出ポート内の薬剤は、軟質バッグ2の薬剤室11の薬剤と混合される。また、塑性変形可能部37は、変形状態を維持するため、医療用容器用中空体30の筒状部が第1の応力付与部により閉塞されることがない。
また、この実施例の排出ポート3では、図2および図3に示すように、排出ポート3(医療用容器用中空体30)を軟質バッグ2に取り付けるための筒状取付部材55を備えている。筒状取付部材55は、医療用容器用中空体30の筒状部32の中間部分を被包する筒状体であり、図14に示すように、医療用容器用中空体30の筒状部32に被嵌される本体部56と、筒状部32のフランジ部33を収納する拡径部57を有する筒状体である。なお、排出ポートとしては、筒状取付部材55を備えないものであってもよい。
また、排出ポートおよび医療用容器用中空体としては、図17に示すようなものであってもよい。この実施例の排出ポート3aおよび医療用容器用中空体30aの基本構成は、上述した排出ポート3および医療用容器用中空体30と同じである。
【0034】
この実施例に用いる医療用容器用中空体30aは、図17に示すように、破断可能部36は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より分岐し、筒状部32の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分36aと第2の応力付与側部分36bを有している。 破断可能部は、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の基端部を取り囲むように形成されている。破断可能部の第1の応力付与部側部分36aは、基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37aが形成されている。 同様に、破断可能部の第2の応力付与部側部分36bは、基端部において部分的破断可能部欠損部を備えている。そして、欠損部により、塑性変形可能部37bが形成されている。具体的には、この実施例のものでは、破断可能部は、筒状部32の先端部であり、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の基端部と筒状部とを区分するよう、かつ始端および終端を有するもののほぼ環状に形成されている。そして、破断可能部の始端および終端間により塑性変形可能部37a、37bが形成されている。塑性変形可能部37a,37bは、塑性変形するものの第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、破断しないものとなっている。よって、第1の応力付与部34及び第2の応力付与部35は、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35間の拡幅操作(破断可能部36の破断操作)において、中空体30aより分離しないものとなっている。塑性変形可能部37a,37bの幅、言い換えれば、破断可能部の始端と終端間の距離は、4〜9mm程度であることが好ましく、特に、6〜8mmであることが好ましい。
図18および図19に示すように、薬剤室11を押圧したとき、第1の応力付与部34および第2の応力付与部35の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部34と第2の応力付与部35に開く方向に力が付与されることにより、破断可能部は破断し、それに続いて、塑性変形可能部が塑性変形する。特に、この実施例の排出ポート(医療用容器用中空体)を用いた医療用容器では、どちらの面を操作台上に載置した状態において薬剤室を上から押圧しても、載置状態の表面側となった破断可能部が破断し、塑性変形部が変形するものであり、作業性が良好となる。
【0035】
また、本発明の医療用容器としては、図20に示すようなものであってもよい。
この実施例の医療用容器20と上述した医療用容器1との相違は、軟質バッグ2の形態の相違および混注ポートを有する点である。
この医療用容器20は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3および混注ポート8を備えている。排出ポート3としては、上述したものが好適に使用される。
医療用容器20は、図20に示すように、軟質バッグ2と、薬液と、排出ポート3と、混注ポート8とを備えている。
軟質バッグ2は、図20に示すように、剥離可能な仕切用弱シール部9により第1の薬剤室(薬液室)11と第2の薬剤室(薬液室)12とに区分されている。
また、軟質バッグ2には、図20に示すように、排出ポート3の薬剤室側先端部の近傍に設けられ、第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部25を備えている。なお、上述した実施例の医療用容器1にもこの第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部を設けてもよい。
拡がり抑制用シート間固定部25は、図20に示す実施例では、排出ポート3の第1の応力付与部および第2の応力付与部の先端部付近を取り囲むように形成されている。拡がり抑制用シート間固定部は、輸送中等の使用前に軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、軟質バッグ2を手指で強く押したときに剥離可能なものであることが好ましい。シート間固定部25としては、図示する実施例のように、応力付与部の先端部付近かつ薬剤室の内側となる位置に連続する円弧状のものであることが好ましい。なお、シート間固定部25は、連続ではなく、複数の点状のものであってもよい。さらに、シート間固定部25は、応力付与部の先端部付近かつその側面側に1つもしくは応力付与部21,22を挟むように2つ設けたものであってもよい。そして、拡がり抑制用シート間固定部25としては、図20に示すように、両端部がシール部6に到達せず、薬剤室11と区画された室を形成しないものである。
【0036】
シート間固定部25は、軟質バッグ2を剥離可能に融着することにより形成することが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着等であることが好ましい。シート間固定部25は、加熱プレスにより行うことが好ましく、金型の温度は、軟質バッグ2の形成材料の溶融温度より10℃以上低い温度で行うことにより形成することができる。拡がり抑制用シート間固定部を有していることにより、輸送中などに軟質バッグ2が膨らみ第1の応力付与部と第2の応力付与部とが裂開されるおそれがない。なお、拡がり抑制用シート間固定部の形状としては、輸送中などの使用前に筒状部が破断されることを防止できる形状であればいかなるものであってもよい。
図20に示すように、軟質バッグ2は、剥離可能な仕切用弱シール部9より第1の薬剤室11と第2の薬剤室12に仕切られている。仕切用弱シール部9は、図20に示すように、軟質バッグ2の薬剤室の横方向全体を横切るように設けられている。仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2のシート材を帯状に融着することにより形成されている。本発明の実施例において、仕切用弱シール部9の両端部には、実質的に剥離しない強シール部9aが形成されている。実施例の仕切用弱シール部9は、第2の薬剤室12を手指等で強く押圧したとき(絞った時、握った時)に剥離して第1の薬剤室11と第2の薬剤室12とを連通可能なものである。
仕切用弱シール部9の剥離強度としては、輸送中に軟質バッグ2に対して加えられる圧力では剥離せず、軟質バッグ2を手指等で強く押したときに剥離する程度であることが好ましい。仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2を融着することにより形成されることが好ましい。融着としては、熱融着、高周波融着等であることが好ましい。軟質バッグ2は、このように仕切用弱シール部9により仕切られた2つの薬剤室11,12を有しているため、異なる成分の薬剤を無菌的に軟質バッグ2内にて混合することができる。また、図20に示す実施例において仕切用弱シール部9は、軟質バッグ2に対して水平に帯状に形成されているがこれに限定されるものではない。
【0037】
軟質バッグ2の薬剤室11,12には、それぞれ輸液剤(薬液)が収納されている。このような輸液剤としては、例えば、腹膜透析液、経中心静脈輸液剤、経末梢静脈輸液剤、経末梢静脈用注射剤、液状栄養剤などのように2つ以上の液剤を輸液の際に混合する必要のあるものが好ましい。また、輸液剤としては、例えば生理食塩水、電解質溶液、リンゲル液、高カロリー輸液、ブドウ糖液、注射用水、アミノ酸電解質溶液等が挙げられるが、これに限定されるものではない。例えば、薬剤室の一方にブドウ糖電解質液、他方にアミノ酸液を収納し、更に両室にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、パンテノール、ニコチン酸アミドなどの水溶性ビタミンを安定性などを考慮して適宜振り分け収納することができる。この場合、後述する薬剤室に取り付ける薬剤容器にビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど脂溶性ビタミンを主とした液剤を収納することにより、ビタミン配合高カロリー総合輸液剤とすることができる。
また、上端側シール部5には、混注ポート8が取り付けられている。混注ポートとしては、公知のものが使用できる。
【0038】
上述した実施例の医療用容器20は、上述したように拡がり抑制用シート間固定部25を備えているが、これに限定されるものではなく、図24に示す実施例の医療用容器20aのように、拡がり抑制用シート間固定部25を持たないものであってもよい。
また、図25に示す医療用容器20bのように、軟質バッグ2は、排出ポート3の上方を取り囲むように形成された連通阻害用弱シール部26を備えるものであってもよい。連通阻害用弱シール部26により、第1の薬剤室11から隔離された小室27が形成されている。この小室27は、本発明の実施例では空き室となっている。しかし、この小室27には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、小室27は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、連通阻害用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、小室27と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。連通阻害用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。連通阻害用弱シール部26は、図25に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、連通阻害用弱シール部26は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
【0039】
次に、医療用容器用中空体を薬剤容器に応用した実施例について説明する。
この実施例の薬剤容器7は、図21および図22に示すように、医療用容器用中空体70と、中空体70の開口部を封止する封止部材72と、中空体70内に充填された薬剤73とからなる。
医療用容器用中空体70は、先端部が閉塞した筒状部71と、筒状部71の先端部に設けられた破断可能部76と、筒状部71の破断可能部76を挟むようにそれぞれ設けられるとともに軟質バッグ2の一方のシート2aの内面に固着可能な第1の応力付与部74および軟質バッグ2の他方のシート2bの内面に固着可能な第2の応力付与部75とを備える。破断可能部76は、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75間の拡がりにより破断し、筒状部71を開口するものである。さらに、破断可能部76は、第1の応力付与部74または第2の応力付与部75の基端部に始端および終端を有し、かつ、破断可能部76の始端および終端間に形成され、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75間が拡がり、破断可能部76の破断後に塑性変形し、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部(言い換えれば、変形状態維持可能部、塑性変形状態維持可能部)77を有している。
そして、第1の応力付与部74および第2の応力付与部75は、上述した医療用容器用中空体30にて説明した第1の応力付与部34および第2の応力付与部35と同じ構成であることが好ましい。また、破断可能部76および塑性変形可能部77についても、上述した医療用容器用中空体30にて説明した破断可能部36および塑性変形可能部37と同じ構成であることが好ましい。
【0040】
また、本発明の医療用容器としては、図23に示すようなものであってもよい。
この実施例の医療用容器60は、軟質バッグ2と、軟質バッグ2内に形成された薬剤室11と、薬剤室11に充填された薬液と、軟質バッグ2に取り付けられ薬剤室11内の薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器7と、軟質バッグ2に取り付けられた排出ポート3とを備える。薬剤容器7として、本発明の医療用容器用中空体70を用いた上記の薬剤容器7を用いるものである。
そして、医療用容器用中空体70の第1の応力付与部74の平板部74aの一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する一方のシート2aの内面に固定されており、第2の応力付与部75の平板部75aの一部は軟質バッグ2の薬剤室11を形成する他方のシート2bの内面に固定されており、破断可能部76は、薬剤室11の押圧時の軟質バッグ2と固定された第1の応力付与部74および第2の応力付与部75の拡がりにより破断し、薬剤容器7内を薬剤室11と連通させるものである。
そして、この実施例の薬剤容器7においても、医療用容器用中空体70は、図6に示したものと同様に、破断可能部76は、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75との間を通るように設けられた先端側部分と、先端側部分より筒状部71の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分を有している。薬剤室12を押圧したとき、第1の応力付与部74の軟質バッグ2への固定部付近が膨らみ、第1の応力付与部74が、引っ張られることにより、第1の応力付与部74に第2の応力付与部75より離間する方向に開く力が付与されることにより、破断可能部76は破断し、それに続いて、塑性変形可能部77が塑性変形する。塑性変形可能部77は、第1の応力付与部74と第2の応力付与部75間が拡がった状態(塑性変形状態)を維持するため、医療用容器用中空体70の筒状部71が第1の応力付与部により閉塞されることがない。
【0041】
また、この実施例の医療用容器60も上述した医療用容器20と同様に、軟質バッグ2には、図23に示すように、薬剤容器7の薬剤室側先端部の近傍に設けられ、第1の応力付与部および第2の応力付与部により固定されたシート間の拡がりを抑制するための剥離可能な拡がり抑制用シート間固定部78を備えている。拡がり抑制用シート間固定部78としては、上述した拡がり抑制用シート間固定部25と同様のものが好適である。また、この実施例の医療用容器60も上述した医療用容器20と同様に、軟質バッグ2に、剥離可能な仕切用弱シール部9より第1の薬剤室11と第2の薬剤室12に仕切られている。仕切用弱シール部9としても上述したものと同様であることが好ましい。
また、この実施例の医療用容器60では、図23に示すように、軟質バッグ2の下端側シール部6に排出ポート10を有する。排出ポート10は、図23に示すような公知のものを使用することが好ましく、例えば、筒状ポート部材とその開口を封止するとともに針管を挿通可能なシール部材を備えるものが好ましい。
さらに、この実施例の医療用容器60では、図23に示すように、軟質バッグ2は、排出ポート10と第1の薬剤室11との連通を阻害する連通阻害用弱シール部26を備えている。
連通阻害用弱シール部26は、排出ポート10の上方を取り囲むように形成されている。この連通阻害用弱シール部26により、第1の薬剤室11から隔離された小室27が形成されている。この小室27は、本発明の実施例では空き室となっている。しかし、この小室27には、所定の液体(例えば、生理食塩水)が入れられていてもよい。また、小室27は、乾燥状態でもよいが、滅菌のための微量の液体が充填されていてもよい。さらに、連通阻害用弱シール部26に若干の水蒸気や薬剤が通る通路を形成し、小室27と上記のようなレベルで連通するものであってもよい。連通阻害用弱シール部26は、シート材を帯状に熱シール融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)することにより形成することができる。
連通阻害用弱シール部26は、図23に示す実施例では、反転したU字形状に形成されている。また、連通阻害用弱シール部26は、短辺が上側となる台形状、排出ポートが頂点となる三角形状、排出ポートが底辺となる三角形状、四角形状等の多角形状、略半円形状、略半楕円形状であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1,20,60 医療用容器
2 軟質バッグ
3 排出ポート
7 薬剤容器
30 医療用容器用中空体
34 第1の応力付与部
35 第2の応力付与部
36 破断可能部
37 塑性変形可能部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体であって、該中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、該中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、該筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、前記筒状部の該破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに前記軟質バッグの一方のシートの内面に固着可能な第1の応力付与部および前記軟質バッグの他方のシートの内面に固着可能な第2の応力付与部とを備え、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、前記筒状部を開口するものであり、かつ、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記破断可能部の破断後、前記中空体より分離しないものであり、さらに、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、前記破断可能部の始端および終端間に形成され、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がり、前記破断可能部の破断後に塑性変形し、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有することを特徴とする医療用容器用中空体。
【請求項2】
前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部において部分的破断可能部欠損部を備え、該欠損部により、前記塑性変形可能部が形成されているとともに、該組成変形可能部は、該組成変形可能部が設けられた前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の前記中空体からの分離を許容しないものとなっている請求項1に記載の医療用容器用中空体。
【請求項3】
前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部のいずれか一方にのみ設けられている請求項1または2に記載の医療用容器用中空体。
【請求項4】
前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記軟質バッグの内面に固着するための平坦部を備え、前記塑性変形可能部は、前記平坦部の前記医療用容器用中空体の軸方向の延長線上に位置するように形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【請求項5】
前記破断可能部は、前記筒状部の先端部付近であって前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間に位置しかつ前記筒状部の基端側に延びる先端側部分と、該先端側部分の基端部より、前記筒状部の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分または前記第2の応力付与部側部分を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ後端部が開口した中空体と、該中空体の前記後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部を有することを特徴とする医療用容器用排出ポート。
【請求項7】
前記医療用容器用排出ポートの前記筒状部内には、薬剤が収納されている請求項6に記載の医療用容器用排出ポート。
【請求項8】
前記医療用容器用排出ポートの前記中空体内には、薬剤と、前記破断可能部の未破断時における前記中空体内への前記医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材とが収納されている請求項7に記載の医療用容器用排出ポート。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ一端部が開口した中空体と、該中空体の前記一端部を封鎖する封止部材と、前記中空体内に収納された薬剤とを有することを特徴とする医療用容器用薬剤容器。
【請求項10】
軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記排出ポートは、請求項6ないし8のいずれかに記載の排出ポートであり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記排出ポート内を前記薬液室と連通させるものであることを特徴とする医療用容器。
【請求項11】
軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられ前記薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器と、該軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記薬剤容器は、請求項9に記載の薬剤容器であり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記薬剤容器内を前記薬液室と連通させるものであることを特徴とする医療用容器。
【請求項1】
軟質バッグを備える医療用容器に用いられる医療用容器用中空体であって、該中空体は、硬質もしくは半硬質材料により形成されており、さらに、該中空体は、先端部が閉塞した筒状部と、該筒状部の先端部に設けられた破断可能部と、前記筒状部の該破断可能部を挟むようにそれぞれ設けられるとともに前記軟質バッグの一方のシートの内面に固着可能な第1の応力付与部および前記軟質バッグの他方のシートの内面に固着可能な第2の応力付与部とを備え、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部間の拡がりにより破断し、前記筒状部を開口するものであり、かつ、前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記破断可能部の破断後、前記中空体より分離しないものであり、さらに、前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部に始端および終端を有し、かつ、前記破断可能部の始端および終端間に形成され、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がり、前記破断可能部の破断後に塑性変形し、前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間が拡がった状態を維持する塑性変形可能部を有することを特徴とする医療用容器用中空体。
【請求項2】
前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部を取り囲むように形成されており、かつ、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の基端部において部分的破断可能部欠損部を備え、該欠損部により、前記塑性変形可能部が形成されているとともに、該組成変形可能部は、該組成変形可能部が設けられた前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部の前記中空体からの分離を許容しないものとなっている請求項1に記載の医療用容器用中空体。
【請求項3】
前記破断可能部は、前記第1の応力付与部または前記第2の応力付与部のいずれか一方にのみ設けられている請求項1または2に記載の医療用容器用中空体。
【請求項4】
前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部は、前記軟質バッグの内面に固着するための平坦部を備え、前記塑性変形可能部は、前記平坦部の前記医療用容器用中空体の軸方向の延長線上に位置するように形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【請求項5】
前記破断可能部は、前記筒状部の先端部付近であって前記第1の応力付与部と前記第2の応力付与部間に位置しかつ前記筒状部の基端側に延びる先端側部分と、該先端側部分の基端部より、前記筒状部の側面方向に延びる第1の応力付与部側部分または前記第2の応力付与部側部分を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用容器用中空体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ後端部が開口した中空体と、該中空体の前記後端部を封鎖し、かつ医療用針管の接続が可能な封止部を有することを特徴とする医療用容器用排出ポート。
【請求項7】
前記医療用容器用排出ポートの前記筒状部内には、薬剤が収納されている請求項6に記載の医療用容器用排出ポート。
【請求項8】
前記医療用容器用排出ポートの前記中空体内には、薬剤と、前記破断可能部の未破断時における前記中空体内への前記医療用針管の侵入を阻害する針管侵入阻害部材とが収納されている請求項7に記載の医療用容器用排出ポート。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれかに記載の医療用容器用中空体であり、かつ一端部が開口した中空体と、該中空体の前記一端部を封鎖する封止部材と、前記中空体内に収納された薬剤とを有することを特徴とする医療用容器用薬剤容器。
【請求項10】
軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記排出ポートは、請求項6ないし8のいずれかに記載の排出ポートであり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記排出ポート内を前記薬液室と連通させるものであることを特徴とする医療用容器。
【請求項11】
軟質バッグと、該軟質バッグ内に形成された薬液室と、該薬液室に充填された薬液と、前記軟質バッグに取り付けられ前記薬液と混合するための薬剤が収納された薬剤容器と、該軟質バッグに取り付けられた排出ポートとを備える医療用容器であって、前記薬剤容器は、請求項9に記載の薬剤容器であり、かつ、前記第1の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する一方のシートの内面に固定されており、また前記第2の応力付与部の外面の一部は前記軟質バッグの前記薬液室を形成する他方のシートの内面に固定されており、前記破断可能部は、前記薬液室の押圧時の前記軟質バッグと固定された前記第1の応力付与部および前記第2の応力付与部の拡がりにより破断し、前記薬剤容器内を前記薬液室と連通させるものであることを特徴とする医療用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
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【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−206301(P2011−206301A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77678(P2010−77678)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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