医療用挿入物に模倣成長剤を添着するための方法およびシステム
医療用移植片をより迅速に水和または再構成し、該医療用移植片に生体成分および細胞を効率的かつ均一に播種すべく改良された装置およびパッケージ・システムを提供するための方法およびシステム。本システムは、一般に入力ポート(120)、少なくとも1つの基材キャビティ(140)、および内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備える容器(110)を備える。入力ポートは、生体液を受け入れるように構成される。キャビティは、入力ポートと通じており、陰圧下に維持された多孔質基材を含む。容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである。側面および底面の壁は、入力ポートを通じて受け入れた生体液の層流を促進するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用挿入物(medical implant)に関し、より詳しくは医療用挿入物を水和して生体成分を播種するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨移植術は、患者における新しい骨の形成がそれによって増強または促進される、多種多様な医学的および歯学的外科手技を指す。骨移植術は、多くの種類の整形外科手技において骨折もしくは骨喪失の処置、治癒しなかった骨損傷の修復、および関節の移動を防ぐための癒合に用いられる。特に脊椎に関しては、脊椎を安定化し、ある患者では痛みの著しい原因でありうる特定の脊椎分節による動きを妨げるために移植片が用いられてきた。移植片は、脊椎側弯症のような、脊椎変形の進行を矯正または停止するため、および脊椎骨折に対する構造的な支持を提供するためにも用いられてきた。
【0003】
適切な移植片は、患者自身の体の骨から(自家移植片)、同じ種のメンバーの骨から(同種移植片)、および他の動物種のメンバーの骨から(異種移植片)採取することができる。代わりに、骨移植片は、多くの他の物質の中でもコラーゲン、ポリマー、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、セラミックスおよび生体吸収性ポリマーのような、多種多様な天然物質および/または合成物質から作り出すことができる。当然のことながら、骨移植片は、所定の形状をしたもの、あるいは植え込むときに所望の形状にできる小さい粒子から成るものを含むことができる。
【0004】
供給源に関わらず、骨移植片は、以降の外科的環境における植え込みのために、適切に貯蔵されなくてはならない。一般的なやり方の1つは、フリーズドライ法を用いて移植片を脱水することである。これは、骨移植片のシェルフライフを延ばすだけでなく、移植片内のバクテリアの増殖も抑制する。しかし、この移植片は、レシピエントに植え込まれる前に適切な液体で再構成もしくは再水和されなくてはならない。これは、骨移植片を液体に浸漬することによって行うことができる。しかしながら、移植片の細孔を通じた液体の注入は、一般に外科的環境にとって容認しがたいほど遅く、このアプローチの問題点は、液体が確実に移植片全体にわたって十分かつ完全に注入されないことである。そのうえ、このアプローチでは移植片が周囲の病原体に曝露される可能性が増加する。
【0005】
植え込み用移植片の調製における別の重要な課題は、所望の生体成分および細胞を移植片に均一に添着(loading)または播種することである。機能性組織相当物を発達させるためには、生体成分および細胞を天然または合成マトリックス中に効果的かつ均一に播種し、播種された細胞からそれらを組織様構造へ拡大かつ発達させることが必要である。それ故に、生体成分および細胞を三次元スキャフォールド中に効率的かつ均一に播種する能力は、依然として生体組織工学における重要な一面である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、医療用移植片をより迅速に再構成および水和し、生体成分および細胞を効率的かつ均一に医療用移植片に播種すべく改良された装置およびパッケージ・システムを提供するための方法およびシステムが開示される。
【0007】
好ましい一実施形態において、生体液を多孔質基材中に添着するためのシステムが提供される。本システムは、一般に入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を有する容器を含む。入力ポートは、骨形成物質を受け入れるように構成される。キャビティは、入口ポートと通じており、陰圧下に維持された多孔質基材を含む。容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである。
【0008】
好ましい実施形態の一様態に従って、骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP:bone morphogenetic protein)、形質転換増殖因子β(TGF−β:transforming growth factor−β)、増殖分化因子(GDF:growth differentiation factor)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP:cartilage derived morphogenetic protein)からなる群から選択される。
【0009】
好ましい実施形態の別の様態に従って、骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される。
【0010】
好ましい実施形態のまた別の様態に従って、骨形成物質は、組換え型ヒト骨形成タンパク質である。
【0011】
好ましい実施形態のさらなる様態に従って、組換え型ヒト骨形成タンパク質は、rhBMP−2である。
【0012】
好ましい実施形態のなおさらなる様態に従って、多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである。
【0013】
別の好ましい実施形態において、吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスを備える。
【0014】
好ましい実施形態の一様態において、コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン(cell−contracted collagen)、またはそれらの組み合わせとすることもできる。
【0015】
好ましい実施形態の別の様態に従って、コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える。
【0016】
好ましい一実施形態において、生体吸収性吸収剤マトリックスを持つ、再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するための容器が提供される。該容器は、一般に陰圧下に維持された内部キャビティ、生体液を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを含む。該容器は、受け入れチャンバが生体液を受け入れるのと実質的に同じ時間に、生体液の分布を再吸収性骨伝導性マトリックスの縦方向の長さに沿って分散させるために、受け入れチャンバと貯蔵チャンバとを連結し合う複数のチャンネルも有する。
【0017】
好ましい実施形態の一様態に従って、コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を有する。
【0018】
好ましい実施形態の別の様態に従って、生体成分を個体中に導入する前に、迅速に医療用挿入物に結合させる方法が提供される。本方法は、陰圧下に維持され、生体成分を受け入れるように構成された内部キャビティ、および医療用挿入物を貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを容器に提供することを含みうる。医療用挿入物は、生体吸収性吸収剤マトリックスを一般に備え、複数のチャンネルが、受け入れチャンバを貯蔵チャンバに連結し、該複数のチャンネルは、受け入れチャンバが生体液を受け入れるとの実質的に同じ時間に、生体成分の分布を医療用挿入物の縦方向の長さに沿って分散させるように構成される。生体成分が容器の受け入れチャンバ中に導入されて、5分未満で実質的な結合が達成される。
【0019】
なお他の実施形態において、結合は、2分未満、好ましくは1分未満で達成される。
【0020】
いくつかの実施形態において、実質的な結合は、生体成分の吸収剤マトリックスへの50%超の結合であり、好ましくは、生体成分の吸収剤マトリックスへの75%超の結合である。
【0021】
なお他の実施形態において、陰圧下の容器中の多孔質基材を用いて、多孔質基材上に骨形成物質を播種する方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである。本方法は、骨形成物質を、多孔質基材体積を超えない体積で、該多孔質基材に導入することを含む。有利なことに、骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、または軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)である。随意的に、骨成長剤(bone growth agent)は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10および/またはBMP−11、および/または、以下により詳細に記載されるように、他の適切な生体成分および細胞とすることができる。
【0022】
別の好ましい実施形態において、陰圧下の容器中の脱水された医療用骨移植片挿入物を用いて、生物剤(biological agent)の医療用挿入物への結合を増大させる方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、多孔質基材は、生体吸収性吸着剤マトリックスである。吸収剤マトリックスは、複数の細孔と吸収剤マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバー(rigid nanofiber)とも含む。生体液が、実質的に多孔質基材体積を超えない体積で、脱水された医療用挿入物に導入され、容器中の陰圧は、細孔中に生体液を押し込む圧力差を生み出し、それによって生物剤の挿入物への結合を増大させる。
【0023】
なおさらなる実施形態において、陰圧下の容器中の骨移植片を用いて、骨誘導性薬剤の骨移植片からの移動を軽減する方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、多孔質基材は、複数の細孔とマトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを有する生体吸収性吸収剤マトリックスを含む。少なくとも1つの骨誘導性薬剤が、実質的に多孔質基材体積を超えない体積で、骨移植片に導入され、容器中の陰圧は、骨誘導性薬剤を強く移植片に結合させる圧力差を生み出す。移植片がそれを必要とする個体に挿入され、骨誘導性薬剤は実質的に多孔質基材内に留まる。
【0024】
他の実施形態では、入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備え、入力ポートが生体物質を受け入れるように構成された容器を用いて、生体吸収性吸収剤マトリックス上における生体液の均一分布を向上させる方法が提供される。基材キャビティは、入口ポートに通じており、陰圧下に維持された生体吸収性吸収剤マトリックスを有する。容器容積は、吸収剤マトリックスの体積と実質的に同じである。生体液が入力ポート中に導入され、陰圧から圧力差が作り出されて、結果として溶液が生体吸収性マトリックスの複数の細孔中に押し込まれる。
【0025】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aは、医療用挿入物容器の実施形態の上面斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1の医療用挿入物容器の蓋のない上面斜視図である。
【図1C】図1Cは、図1Aの医療用挿入物容器の1’−1’軸に沿って得られる断面図である。
【図2A】図2Aは、医療用挿入物容器の別の実施形態の前面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの医療用挿入物容器の背面斜視図である。
【図3】図3は、ニードル・シリンジを添えた医療用挿入物容器のさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図4A】図4Aは、医療用挿入物容器のなおさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図4B】図4Bは、図6Aの医療用挿入物容器の蓋のない上面斜視図である。
【図5A】図5Aは、医療用挿入物容器のなおさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図5B】図5Bは、シリンジを用いた基材の再構成を示す図5Aの医療用挿入物容器の上面斜視図である。
【図6】図6は、真空シール・パッケージ(VIP)に入った吸収性コラーゲン・スポンジ(ACS:Absorbable Collagen Sponge)に塗られたrhBMP−2の相対的な結合強度を示すデータ・グラフである。
【図7】図7は、真空シール・パッケージ(VIP)に入った同種移植骨組織に塗られたrhBMP−2の相対的な結合強度を示すデータ・グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
いくつかの図面全体にわたって、同様の数字は同様の部分を参照する。
【0028】
本開示は、医療用移植片を迅速に再構成および水和し、生体成分および細胞を医療用移植片に均一に播種するための方法およびシステムに関する。本明細書に開示される方法およびシステムは、患者に植え込むための移植片を迅速に調製する能力が所望される外科的環境に特に適する。本開示は、医療用移植片、特に骨移植片を水和するための方法およびシステムを記載するが、当然のことながら、本方法およびシステムは、様々な医学的および歯学的用途、ならびに再生医療および生体組織工学のような軟組織の用途に適用することができる。従って、本明細書において用語「移植片」は、骨組織および軟組織の両方を含めて任意の自然発生組織、ならびに移植片として使用される任意の非自然発生物質またはそれらの任意の組み合わせから成ることができる。
【0029】
図1A〜Cは、本明細書に開示されるシステムおよび方法に関連して用いうる医療用挿入物・システム100の実施形態に関する様々な図を示す。図1A〜Cに示されるように、医療用挿入物・システム100は、入力ポート120、ニードル・キャビティ130、および脱水された骨移植片(示されていない)のような医療用挿入物を入れた移植片キャビティ140を含む容器110を備える。図1Aに示されるように、入力ポート120を通じてニードル・シリンジを挿入し、液体、生体成分、および/または細胞をニードル・キャビティ130中に、さらに容器110の移植片キャビティ140に貯蔵された移植片に送達することができる。ニードル・キャビティ130は、ニードル・シリンジと液体、生体成分および/または細胞とを受け入れるために、移植片キャビティ140に近接して配置される。
【0030】
容器110全体は、陰圧下に、より好ましくは実質的な真空下に、維持することが望ましい。これは、骨移植片のような医療用挿入物を、使用もしくは植え込み前の貯蔵のために、通常は脱水およびフリーズドライするためである。容器内の陰圧または真空が高いほど移植片内の細孔がよく排気されて、結果としてより多くの水和溶液が移植片内に注入される。従って、容器内の絶対圧力は、できるだけ0mbarに近いことが望ましい。好ましい実施形態において、容器内の絶対圧力は100mbar、より好ましくは10mbar、最も好ましくは1〜5mbar未満である。
【0031】
フリーズドライ法は、低残留水分の移植片を生じる陰圧下の凍結プロセスを含む。このプロセスの1つの利点は、骨移植片および他の生体物質を室温で貯蔵できることである。このプロセスは、骨移植片の生化学的変化の低減とともにシェルライフの増加ももたらす。かくして、フリーズドライされた移植片は、使用前の簡単かつ経済的な貯蔵を提供するという利点を有する。
【0032】
加えて、移植片内に残留する任意の水分は、容器へのパッケージ前に完全に除去しないまでも低減することが好ましい。これは、容器中の陰圧または真空が残留水分を蒸発させる可能性があり、延いては陰圧または真空が容器内で低下しかねないためである。好ましくは、移植片内の残留水分は6%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは0%である。容器中に乾燥剤を含むことができる。乾燥剤は、移植片または移植片を水和するために使用される溶液と反応しないことが好ましい。
【0033】
骨移植片は、患者もしくはレシピエントに植え込まれる前に、通常は食塩水で再水和または再構成される。一般に、フリーズドライされた骨移植片の再水和は、移植片を所望の水和レベルに達するまで食塩水に浸漬することを含む。骨移植片の再水和および再構成は、他の要因のうちでも移植片のサイズに依存し、1時間から数日程度かかる可能性がある。溶液の均一な浸透および骨移植片の均一な再水和を達成することが望ましいが、外科的環境において典型的に要求される短期間のうちにこれらの目標を達成することは一般に難しい。
【0034】
本明細書に開示かつ記載される医療用挿入物容器は、フリーズドライされるか、さもなければ脱水された骨移植片を、植え込む前に迅速かつ均一に水和および再構成することができる手段を提供する。本医療用挿入物容器は、移植片の水和/再構成の間に実質的に陰圧を持続するので、水和または再構成のための時間が実質的に短縮される。真空が誘発する吸込み効果によって、溶液の移植片中への浸透が強化される。陰圧は、挿入物の間隙もしくは細孔中に溶液を押し込む圧力差を作り出す。溶液は、一旦細孔中に分布すると、毛管作用を通じてさらに挿入物全体に分布することができる。
【0035】
一実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から1時間以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から30分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。なお他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から20分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。さらに他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15、14、13、12、11、10、9、8、7、6分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。さらなる実施形態において医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、4、3または2分を含んで、注入から5分以内またはそれ未満、好ましくは1分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。
【0036】
移植片の均一な添着もしくは播種が可能な場合であっても、生体成分および細胞が患者の体内に入ったときに、移植片からそれらが不適切に沈殿しないように確実に移植片に結合しうることが次の課題である。例えば、移植片挿入物から周辺組織中への骨形成タンパク質(BMP)の時期尚早もしくは過剰な沈殿は、望ましくない位置に骨形成を促進することが知られている。これらの状態では、挿入物を取り囲む筋組織中に異所性骨成長が観察されており、頸椎領域のプラントが関与するより重篤な症例では、異所性骨成長が対象の気管を完全に包囲して気道を遮断し、窒息を引き起こすことが知られている。従って、生体成分および細胞の周辺組織中への過剰もしくは時期尚早な沈殿を回避するために、移植片挿入物にそれらが結合する能力を最大限にすることが望ましい。
【0037】
一実施形態において、生体成分を挿入物に迅速かつ実質的に結合させる方法が提供される。本明細書では、用語「迅速に」は、本開示の真空注入パッケージ容器を用いて短縮された生体成分の挿入物への結合時間を先行技術による注入システムの結合時間と比較することを指す。先行技術による注入システムは、例えば、W.Friess et al.”Characterization of absorbable collagen sponges as rhMBP−2 carrier” International Journal of Pharmaceutics 187(1999)p.91−99に開示されており、その内容は参照によりその全体が、特に吸収性コラーゲン・スポンジへのrhMBP−2の結合特性に関して本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態において、生体成分は、多孔質基材が中に配置された真空注入パッケージ容器に導入されたときから15分未満で挿入物に結合される。より好ましくは、迅速な結合は、生体成分が本開示のシステムに導入されたときから10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、または2分未満で達成される。特に好ましい実施形態において、生体成分は、1分未満で多孔質基材に結合される。本明細書では、用語「実質的に」は、生体成分の少なくとも50パーセントが挿入物に結合されることを指す。好ましい実施形態において、「実質的に結合される」または「実質的に結合している」は、挿入物への生体成分の少なくとも60%、65%、70%、75%、または80%の結合を指す。特に好ましい実施形態では、生体成分の85%が挿入物に結合される。
【0038】
図1A〜Cにおいて、容器110全体が陰圧または真空下に維持されるので、容器110の内容積は、骨移植片を収納するのに必要な大きさまで縮小することが望ましい。これは、空間の容積が大きいほど、陰圧または真空を維持することが一般により難しいためである。好ましい実施形態において、容器容積は、移植片の体積と実質的に同じである。この好ましい実施形態の一様態に従って、容器容積は、移植片の体積およそ125%以下、好ましくはおよそ110%以下、より好ましくは105%以下である。この好ましい実施形態の別の様態に従って、容器容積は、移植片の体積に等しい。図1A〜Cに示されるように、容器110の内容積は、上壁150、側壁160および底壁170で閉ざされる。隔膜190は、入力ポート120に連結され、隔膜を収容するのに必要な容器110の内容積を減少させるために、容器110の外部に配置される。容器のために選択される材料は、陰圧または真空が経時的に有効かつ確実に維持されるように、好ましくは高い気体バリア特性を持つことを特徴とする。
【0039】
陰圧下に維持される内容積を減少させるために、医療用挿入物容器の他の実施形態を同様にデザインすることができる。例えば、図4A〜Bは、移植片キャビティ410内に入った骨移植チップ402を備える医療用挿入物容器400を示す。蓋450は、熱溶接425によって移植片キャビティ410の周辺縁412に密閉される。図4A〜Bからわかるように、骨移植チップ402は、移植片キャビティ410の容積が骨移植チップ402の体積と実質的に同じになる収容能力近くまで、移植片キャビティ410を満たす。隔膜490は、移植片キャビティ410の外部に配置される。好ましくは、隔膜は、穿刺後にセルフシールし、移植片キャビティ410内の陰圧/真空を維持するためにニードル・シリンジが水和溶液を移植チップ402に送達する。
【0040】
図1A〜Cを再び参照して、医療用挿入物・システム100は、容器110を実質的に安定な直立位置に支持するための支持部材180をさらに備える。これは、外科医がシステム100を平面上に置いて、他方の手でシステム100を所望の直立位置に支持する必要なしに、容易に片手でニードル・シリンジを入力ポート120に挿入することを可能にするであろう。図1A〜Cは、容器110を取り囲む単一の外周壁として支持部材180を示すが、当然のことながら、支持部材180の構造はあまり限定されず、入力ポート120への注入ステップを外科医が行えるように十分安定な位置に容器110を安定化しうる他の構造を含むこともできる。
【0041】
システム100は、一般に底部分105および蓋部分135を備えることが示されている。底部分105および蓋部分135は、容器110内で陰圧が維持されうるように、2つの部分を溶接することによって密閉することができる。溶接部は、底部分105と蓋部分135の間に残るかもしれないデッドエアスペース量をさらに低減するために、できるだけ容器110の周辺近くに置くことは望ましい。結果として得られる溶接部125は、容器110の周辺全体を取り囲むことができる。図1A〜Cに図示されるシステム100は、底部分105と蓋135とを備える2つの部分の構造として示されるが、当然のことながら、弾性真空パッケージのような一体構造として容器を構築することもできる。
【0042】
システム100は、骨移植片の迅速かつ均一な水和または再構成に加えて、該移植片の細孔中への生体成分および細胞の効率的かつ均一な分布および播種を促進する。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジを通過するときの構造的損傷もしくは細胞損傷から守るために、溶液中で適切な口径のニードル・シリンジを経由して移植片に送達することができる。
【0043】
一般に、移植片が骨損傷を修復するために役立つ3つの方法がある。第1は、骨形成と呼ばれる、移植片内に含まれる細胞による新しい骨の形成。第2は、骨誘導、移植片内に含まれる骨形成タンパク質のような分子が患者の細胞を骨形成可能な細胞に変化させる化学的プロセス。第3は、骨伝導、移植片がスキャフォールドを成し、その上にレシピエント中の細胞がコロニーを作って新しい骨を形成しうる物理的効果。かくして、本明細書に開示される方法およびシステムは、レシピエントにおける骨損傷の修復を助けるべく、生体成分および細胞を含むように骨移植片を調製することを提供する。
【0044】
好ましくは、容器110の内表面は、骨移植片への送達の間に生体成分および細胞の完全性を維持するのに役立つように構成される。特に、ニードル・キャビティ130ならびに側面160および底面170の壁は、入力ポートを通じて受け入れた生体液の層流を促進するように構成される。層流は、滑らかかまたは非乱流かいずれかの液体流として特徴付けられる。溶液に含まれる生体成分および細胞の構造および細胞の完全性を維持するためには、容器110中で生体液の層流を促進し、従って乱流を弱めることが好ましい。乱流は、例えば、細胞を溶解して凝集させる可能性がある。生体液が容器110内で接触しうる急峻な端、隅もしくは角を無くすか、あるいは少なくとも減らすことによって、溶液の層流が促進される。液体は、ニードル・キャビティ中に排出されて容器110の底表面170に向かうことから、容器110の上壁もしくは蓋部分105あるいは側面の壁160が容器110の蓋部分105と交わる所の形状は、それほど重要ではなく、それ故に必ずしも曲がっている必要はないことが注目される。
【0045】
図1B〜Cからわかるように、容器110の側面160および底面170の壁は、ゼロより大きい曲率半径を持つ曲面で合わさる。そのうえ、ニードル・キャビティ130の内表面も、ゼロより大きい曲率半径を持つ曲面として提供される。加えて、図1Cに描かれた一実施形態に示されるように、底面の壁170は、生体液が確実に移植片の底面を流れ、その長さに沿って分布するように、入力ポート120およびニードル・キャビティ130から下方へ傾斜している。これは溶液が移植片全体にわたって均一に分布することを確実にするのみならず、溶液がニードル・キャビティ130に溜まって無駄になることを防ぐ。かくして、医療用挿入物容器の実施形態は、導入すべき生体成分または細胞量を実質的に正確に注入することをさらに提供する。しかし、当然のことながら、他の実施形態において、底面の壁170は、入力ポート120およびニードル・キャビティ130から下方へ傾斜している必要はない。
【0046】
代わりの実施形態は、1つより多い骨移植片を同時に水和または再構成するための効率的な方法を提供する。図2A〜Bは、1つの入力ポート220および対応するニードル・キャビティ230、ならびにチャンネル235を経由してニードル・キャビティ230に結合かつ流体連結された複数の移植片キャビティ240A、240B、240Cおよび240Dを備える、医療用移植片容器200のある実施形態を示す。移植片が移植片キャビティ240A、240B、240Cおよび240D中に装着されると、移植片キャビティに残存する空気を排気するための気体連結が容器に適用される。容器200は、底部分と溶接部225によって随意的に密閉された蓋とを備えることができる。蓋部分を底部分から引き離し、容器200を開いて骨移植片を取り出すことができる周辺縁領域275を提供することができる。
【0047】
機能性組織相当物を発達させるためには、生体成分および細胞を天然または合成マトリックス中に効果的かつ均一に播種し、播種された細胞からそれらを組織様構造へ拡大および発達させることが必要である。それ故に、生体成分および細胞を三次元スキャフォールド中に効果的かつ均一に播種する能力が依然として極めて望ましい。
【0048】
図3は、ニードル・シリンジを添えた医療用移植片容器300のさらに別の実施形態を示す。容器300は、移植片キャビティ340の長さに沿って複数の送達チャンネル335を提供することによって、所望の生体成分および細胞の分布を分散させるようにデザインされる。移植片キャビティ340は、好ましくは脱水された骨移植片の正確な寸法および形状に合わせて成形される。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジにより入力ポート320を通じてニードル・キャビティ330中に送達することができる。ニードル・キャビティ330、送達チャンネル335、および移植片キャビティ340では、陰圧または真空が維持される。隔膜390は、ニードル・シリンジによる穿刺後に陰圧または真空を維持するために、随意的に入力ポート320に連結することができる。容器300は、ニードル・キャビティ330、送達チャンネル335および移植片キャビティ340の周辺で溶接部325によって密閉することができる。
【0049】
図5Aは、医療用移植片容器500のさらに別の実施形態を示す。図5Bは、ニードル・シリンジ510を利用して、図5Aの医療用移植片容器500内に配置された医療用移植片に適切な水性組成物を如何に注入しうるかを説明する。容器500は、移植片キャビティ550内に配置された医療用移植片の上方に隔膜590を提供することによって、所望の生体成分および細胞の分布を医療用移植片の中央に近い距離から分散させるようにデザインされる。これは、小細孔サイズまたは水性組成物の粘性のような、医療用移植片の拡散特性に影響を与える他の要因故に水性組成物の拡散に抗する医療用移植片にとって、特に望ましい可能性がある。医療用移植片容器500は、生体成分および細胞の濃度勾配、すなわち医療用移植片の中央に近い方では生体成分および細胞の濃度が高く、医療用移植片の中央からさらに離れると生体成分および細胞の濃度が低くなる濃度勾配、を医療用移植片内に設けることが望ましい場合にも用いることができる。ニードル・シリンジ510は、水性組成物の注入中に医療用移植片に挿入される。あるいはニードル・シリンジは、注入中に単に医療用移植片の上方または近くに置かれるに過ぎない。移植片キャビティ550は、好ましくは医療用移植片の正確な寸法および形状に合わせて成形される。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジを経て隔膜590の入力ポート595を通過し、移植片キャビティ550内に配置された医療用移植片に送達することができる。容器500は、溶接部525によって移植片キャビティ550の周辺で密閉することができ、容器500を実質的に安定な直立位置に支持するための支持部材580を提供することができる。
【0050】
本明細書において、骨移植片を植え込む前に水和または再構成するために用いられる水性組成物は、溶液、乳濁液、ミクロ乳濁液、懸濁液またはその組み合わせとすることができる。乳化剤または懸濁助剤として機能する物質が、かかる水性組成物中に存在してもよい。かかる乳化剤または懸濁助剤の非限定の例は、細胞増殖培地、血清、分化培地、栄養培地、モノグリセリド類、モノグリセリドのエステル類、ジグリセリド類、ジグリセリドのエステル類、脂肪酸のポリグリセリンエステル類、脂肪酸のプロピレングリコールエステル類、ソルビタンステアラート類、ステアロイル乳酸塩、レシチン類、リン脂質、糖脂質、セルロースエステル類、ジェラン、ペクチン、キサンタン、ラムサムおよびアラビアゴムを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、水性組成物は、水混和性の生体適合性溶媒または溶媒混合液をさらに含む。生体適合性溶媒は、好ましくは移植片が哺乳動物の体温で少なくとも部分的に可溶であり、使用量において実質的に無毒性の有機液体である。例として、限定されずに、適切な水混和性の生体適合性溶媒は、エタノール、アセトンおよびジメチルスルホキシド、ならびに他の適切な水混和性の生体適合性溶媒を含む。
【0052】
本明細書に開示される医療用挿入物と関連して用いられる生体成分は、ヒトに生物学的、治療または薬理学的結果を生み出す任意の薬剤を含む。例となる生体成分は、例えば、任意の形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP);BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10およびBMP−11を含むが、これらに限定されない任意の骨形成タンパク質(BMP);血管新生因子;増殖因子;ホルモン;ヘパリンおよびコンドロイチン硫酸塩のような抗凝固薬;tPAのような線維素溶解薬;アミノ酸;合成ペプチドおよびタンパク質を含み、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼおよびエラスターゼのような酵素を含むペプチドおよびタンパク質;ヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プロメタジン、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトララク、メクロフェナム酸、トルメチンのようなステロイド性および非ステロイド系抗炎症薬;ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミルのようなカルシウムチャンネル遮断薬;アスコルビン酸、カロチン類およびα−トコフェロール、アロプリノール、トリメタジジンのような抗酸化薬;ゲンタマイシン、ノキシチオリンのような抗生物質、および感染を防ぐための他の抗生物質;腸管運動性を促進するための消化管運動改善薬、cis−ヒドロキシプロリンおよびD−ペニシラミンのようなコラーゲンの架橋を防ぐ薬剤;抗がん剤;神経伝達物質;ホルモン;エレメタルおよび抗体を含む免疫薬剤;アンチセンス剤を含む核酸;排卵誘発剤、向精神薬;ならびに多くのさらなる薬剤のうちで局部麻酔薬を含む。
【0053】
骨移植片と併せて特に有用な生体成分の一群は、骨形成タンパク質(BMP)である。BMPは、骨および軟骨の形成を誘発する能力で知られる一群の増殖因子かつサイトカインである。現在、例えばBMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11を含む約20のBMPが知られている。BMP−2およびBMP−7は、構造上関連した細胞調節タンパク質の大きいファミリーである形質転換増殖因子β(TGF−β)スーパーファミリーのタンパク質に属する、よく知られ、かつよく用いられるBMPである。BMP−2およびBMP−7は、様々な細胞タイプで骨芽細胞の分化を強く誘発させる骨形成BMPである。本明細書に記載される医療用移植片と併せて用いられるBMPは、動物、ヒト(hBMP)から、あるいは組換え型DNA技術(rhBMP)によって抽出することができる。骨移植片に現在利用される、特によく知られるBMPの1つは、Dibotermin Alfaとしても知られるrhBMP−2である。当分野でよく理解されるように、rhBMP−2は、細胞、バクテリアまたは酵母を遺伝子的に組換えるかまたは操作して大量にrhBMP−2を製造する組換え型DNA技術を用いて、効率的に製造することができる。骨移植片にBMPを用いる例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「USE OF MORPHOGENETIC PROTEINS TO TREAT HUMAN DISC DISEASE」と題する米国特許出願公開第2004/0230310 A1号に記載される。
【0054】
本明細書に開示される方法およびシステムは、生細胞をレシピエント中の所望の部位に送達するために利用することもできる。かかる細胞の例は、以下には限定されないが、幹細胞、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄間質細胞、骨細胞、肝細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、間葉幹細胞、線維芽細胞、筋細胞、実質細胞、腸由来の細胞、神経細胞、皮膚細胞、内皮細胞、上皮細胞、および平滑筋細胞を含む。これらの細胞は、播種前に培養、分化、または増殖することができる。これらの細胞は、遠心分離もしくは濾過のような方法によって、埋め込む前に濃縮することができる。かくして、播種された医療用挿入物は、移植細胞の生存、増殖、および究極的に正常細胞組織への移植もしくは固定を達成するために、移植すべき細胞を固定する付着基材として機能することができる。
【0055】
他の有用な細胞タイプは、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄間質細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、間葉幹細胞、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、実質細胞、腸由来の細胞、神経細胞、および皮膚細胞を含み、一次組織外植片、一次組織外植片の調製品、単離細胞、細胞株、形質転換細胞株および宿主細胞として提供される。挿入物は、生物学的に活性な薬剤、あるいは骨誘導性、代謝用薬剤、吸収性、強度、付着性、注入性および摩擦特性などの特性を変化させる因子のような付加的な成分も含む。
【0056】
皮質骨移植片および他の基材(例えば、セメント、IPNなど)への免疫反応は、最小限に抑えられ、その一方で骨誘導の可能性は、レシピエントの体が自己の組織型として受け入れ、従って、それを拒絶することもさもなければ損傷することもないであろう骨誘導性表面を持つように、移植片を修飾することによって改善される。かかるプロセスは、移植片のレシピエントか、あるいは同種間もしくは異種間のドナー源か、いずれかから予め採取された骨膜細胞を多孔質移植基材の表面に播種することによって達成される、骨誘導性の表面修飾を提供する。
【0057】
本開示の方法およびシステムと関連して用いることができる多孔質基材は、自家移植片、同種移植片、異種移植片、またはコラーゲンおよび他のペプチドを備える挿入物のようなヒト以外の他の動物ベースの物質を含む。セラミックス、ヒドロキシアパタイト、生体吸収性ポリマーなどを含む合成材料も、移植材料として用いることができる。いくつかの実施形態において、多孔質基材は、生物学的に許容できるマトリックス・スポンジを備える骨伝導性マトリックスである。以下により詳細に記載されるように、スポンジは、好ましくはコラーゲン・スポンジである。
【0058】
ある実施形態において、移植片の細孔サイズは、移植片中に分布または播種されることになる生体成分および細胞の寸法に適合するように構成することができる。細孔サイズは、移植片を水和および/または再構成するために用いる水性組成物の粘性に適合するように、最適に構成される。ある水性組成物では、高粘性がタンパク質および他の高分子量バイオモレキューの含有に起因することもある。かくして、再生される組織の挙動および品質に影響を与えるように、スキャフォールドの細孔サイズ、密度、および多孔率に関する考察を行うことができる。骨再生のための細孔サイズは、好ましくは約100から約600マイクロメートルである。
【0059】
合成移植片に用いるのに適した合成ポリマーをいくつか挙げると、以下には限定されないが、ポリヒドロキシブチラート(PHB);ポリ−n−ビニルピロリドン;ポリオルトエステル類;ポリ無水物;ポリシアノアクリレート類;ポリデプシペプチド類;ポリヒドロピラン類;ポリ−DL−ラクチド(PDLLA);ポリエステルアミド類;しゅう酸のポリエステル類;ポリグリコリド(PGA);ポリラクチド・グリコリド共重合体(DLPLG);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEKK);ポリイミノカーボネート類;ポリ乳酸類(PLA);ポリオルトエステル類;ポリ−p−ジオキサノン(PDO);ポリペプチド類;ポリホスファゼン類;ポリサッカリド類;ポリウレタン類(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリ−β−ヒドロキシプロピオナート(PHPA);ポリ−β−ヒドロキシブチレート(PBA);ポリ−γ−バレロラクトン;ポリ−β−アルカン酸;ポリ−β−りんご酸(PMLA);ポリ−ε−カプロラクトン(PCL);および炭酸トリメチレン(TMC)が含まれる。
【0060】
いくつかの実施形態において、合成基材は、生体内で安定なポリマーを含み、一方で他の実施形態において、合成基材は、生体吸収性ポリマーを含む。適切な無機基材は、りん酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、低結晶性アパタイト・りん酸カルシウム(PCA:poorly crystalline apatite calcium phosphate)、非晶質りん酸カルシウム(ACP:amorphous calcium phosphate)のような、天然ならびに非天然のりん酸カルシウムの様々なタイプを含む。骨の主な無機成分は、高度に置換されたりん酸カルシウム(CaP:calcium phosphate)アパタイトからなるので、CaPの様々な形態を備える合成代用骨は特に有用である。かかるCaPベースの材料は、ヒドロキシアパタイト、炭酸含有アパタイト、フルオロアパタイト、α−およびβ−りん酸三カルシウム、りん酸四カルシウム、りん酸八カルシウム、およびそれらの組み合わせを含む。本材料は、好ましくは、適切なレベルの多孔率、細孔サイズ、および細孔間の相互連結サイズを持つように構成される。
【0061】
一実施形態において、多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである。好ましくは、生体吸収性吸収剤マトリックスは、吸収性、可撓性、展性、圧縮性、多孔質、生体吸収性および生体適合性である。適切な吸収性マトリックスの一例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「BONE GRAFT COMPOSITION,METHOD AND IMPLANT」と題する米国特許出願公開第2007/0142916 A1号に教示されるように、吸収性コラーゲン・スポンジ(ACS)である。
【0062】
好ましい実施形態において、動物のタイプIコラーゲンがヒトのタイプIコラーゲンに相同性であれば、吸収剤マトリックスは、タイプIの牛腱コラーゲンから得られる。しかしながら、吸収剤マトリックスを形成するために、タイプII、III、VおよびXIのような他の原線維形成コラーゲン、ならびに遺伝子導入動物から得られる生理的に適合するコラーゲン、またはそれらの任意の組み合わせも、単独かあるいはタイプIコラーゲンと組み合わせるかいずれかで用いることができる。採取後に、腱は、アルカリ溶液で処理され、抽出されたコラーゲンは、吸収性コラーゲン・スポンジに特に適したスポンジ状材料になるように、熱または適切な架橋用化学剤(アルデヒド、DHT、UVなど)を用いて架橋することができる。コラーゲンがスポンジになった後に、エチレンオキシド、エタノールなどのような適切な化学薬品もしくは方法を用いてこの材料が滅菌される。コラーゲン・マトリックスは、好ましくは、増殖組織の浸潤を可能にするのに十分なサイズおよび量の細孔を持つ。細孔サイズは、好ましくは約10μmから約500μm、より好ましくは約50μmから約150μmに及び、表面細孔は、断面(内部)細孔より小さい。特に好ましい実施形態において、表面細孔は、直径が約30μmから約150μmに及び、約70μmが最も好ましい。断面細孔は、直径が約50μmから約300μmに及ぶことができ、約150μmが最も好ましい。再吸収性骨伝導性マトリックスの好ましい形態は、液体増殖培地と等密度、スポンジ様の特徴、および約2ミリメートル未満の直径を持つ生物学的に適合した均質な多孔質マトリックスとして記述することができる。各粒子は、複数の空隙を有し、該空隙は、マトリックスの全体積の少なくとも10パーセントに相当し、マトリックスの外部と該空隙とを接続する直径が100マイクロメートル未満の細孔に連結される。コラーゲン・マトリックスは、耐差動荷重性表面の剛毛を提供すべくコラーゲン・マトリックスの表面から突き出たナノファイバー端部によってコラーゲン・マトリックスに構造的完全性を付与するために、コラーゲン・マトリックス内に分散された実質的に硬い複数のナノファイバーを備えることもできる。
【0063】
この出願において、用語「実質的に硬い」は、使用される環境において実質的に可撓性のないことを意味する。硬さは、ずれ弾性率によって測定することができる。この様態において、「実質的に硬い」は、4.2MPaと15.0MPaとの間、望ましく6.0MPaと14.0MPaとの間、好ましくは9.0MPaと12.0MPaとの間の弾性率を持つナノファイバーを意味することができ、架橋によってより高いMPa値が得られる。
【0064】
用語「ナノファイバー」は、他の2つの主軸より長い1つの主軸、および1超もしくは10超または500超のアスペクト比を持つ細長いナノ構造を意味する。短い方の軸は、100nm未満、もしくは10nm未満または5nm未満とすることができる。ナノファイバーは、実質的に均一な直径を持つことができる。直径は、最大ばらつきの領域にわたって20%未満、5%未満、または1%未満の分散を示すことができる。典型的に、直径は、ナノファイバーの端部から離れてナノファイバーの中心の20%、50%または80%にわたって評価される。他の実施形態において、ナノファイバーの直径は、不均一であり長さ方向に直径が変化する。同様に、ある実施形態において、ナノファイバーは、実質的に結晶性および/または実質的に単結晶性とすることができる。
【0065】
「ナノファイバー」は、本発明による再吸収性骨伝導性マトリックスに剛毛状の表面を付与しさえすれば、ナノワイヤ、ナノウィスカ、半導体ナノファイバー、カーボンナノチューブおよび複合ナノチューブのような構造を含む。ナノファイバーは、剛毛状の表面を使用する意図、使用条件、例えば温度、pH、紫外線感受性のような光、配置環境、再吸収性骨伝導性マトリックスによって支持される反応、要求される表面耐久性、および費用さえも含むいくつかの要因に基づいて、いくつもの材料を備えることができる。ナノファイバーの延性および破壊強度は、組成に依存して異なりうる。例えば、セラミックZnOナノファイバーは、シリコンもしくはガラスナノワイヤより脆いことがあるが、一方でカーボンナノナノファイバーチューブは、より高い引張強度を持つことができる。
【0066】
コラーゲンは、硬いナノファイバーの良い例であるが、他のポリマーも同様に適する。硬いナノファイバー形態に製造されうるチューブリンおよびケラチンのような他のロッド状バイオポリマーの誘導体は、マトリックスを形成する条件下でファイバー構造の完全性を維持しさえすれば、適切でありうる。好ましいナノファイバーは、アミノ基のように水と相溶性があって極性表面基を持つ、ナノメートル・スケールのロッド状ポリマーである。
【0067】
再吸収性骨伝導性マトリックスに応用するための他のナノファイバーは、シリコン、ZnO、TiO、カーボン、カーボンナノチューブ、ガラスおよび石英を含む。本明細書に開示させるナノファイバーは、特性を付加あるいは強化するためにコーティングもしくは官能化することができる。コーティング材料としては、ポリマー、セラミックスまたは小分子を用いることができる。コーティングによって、耐水性、改善された機械的または電気的特性、あるいは特定の分析のための特異性のような特性を付与することができる。加えて、特異的な部分もしくは官能基をナノファイバーに付着させるか、または結合させることができる。
【0068】
一実施形態において、ナノファイバーは、メチル化されたコラーゲンによって形成される。この材料は、比較的高い(25℃超)ガラス転移温度を持ち、再吸収性骨伝導性マトリックスに改善された構造的完全性を付与し、表面における剛毛の形成を可能にする。
【0069】
本発明の異なった用途は、骨伝導性マトリックスの単位体積当たり異なったナノファイバー密度を必要とするであろう。いくつかの例となる用途において、単位体積当たりのナノファイバー数は、マトリックス体積10マイクロメートル3当たり1ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり200ナノファイバー、または1マイクロメートル3当たり10ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり100ナノファイバー;あるいはマトリックス体積1マイクロメートル3当たり25ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり75ナノファイバーである。他のナノワイヤの実施形態において、密度は、マトリックスの1立方マイクロメートル当たりに約1から3ナノワイヤから1立方マイクロメートル当たり2,500ナノワイヤに及ぶことができる。
【0070】
ナノファイバーの総面積は、太さもしくは直径を増やすことによって増加させることができる。直径は、組成、成長条件、成分またはコーティングの選択を通じて制御することができる。好ましいナノファイバーの太さは、5nmと1マイクロメートルとの間;10nmから750ナノメートル、または75nmから100ナノメートルである。
【0071】
ナノファイバーの表面積、およびそれに対応する再吸収性骨伝導性マトリックスの剛毛状の表面積は、ナノファイバーの直径に加えて長さによって影響される。いくつかのファイバー材料では、長さの増加が脆弱性の増加をもたらす。従って、好ましいファイバー長は、2マイクロメートルと1mmとの間;10マイクロメートルと500マイクロメートルとの間;あるいは50マイクロメートルと100マイクロメートルとの間であろう。本発明のいくつかの実施形態は、直径がおよそ40nmで長さがおよそ50マイクロメートルのナノファイバーを有する。
【0072】
ナノファイバーは、材料特性が実質的に均質でも不均質でもよく、任意の使いやすい単数または複数の材料から製造することができる。それらは、「純粋な」材料、実質的に純粋な材料、およびドープされた材料を備えることができ、絶縁体、導体または半導体を含むことができる。耐久性、コストまたは使用条件などは、特定の官能化に依存して変化しうる。ナノファイバー材料は、再吸収性骨伝導性マトリックス材料と同じであってもよく、あるいはナノファイバー材料は、マトリックスと異なってもよい。
【0073】
分散されたナノファイバーを持つマトリックスの製造
再吸収性骨伝導性マトリックスは、分散されたファイバーを備え、そのいくらかは、マトリックス表面の上方に剛毛状に立ち上がった端部を有する。一実施形態において、マトリックスは、マトリックス表面の上方に少なくとも10nm、および他の実施形態において、少なくとも100nm立ち上がった端部を有する分散されたナノファイバーの少なくとも一部を持つ。好ましい骨再生組成物は、コラーゲン・マトリックス表面の上方に40nmと100nmとの間で伸びる剛毛状のナノファイバー端部を備える。剛毛は、圧縮による骨誘導性材料の損失から再吸収性骨伝導性マトリックスの細胞構造を保護するために、近接した構造を差動的に支持する複雑なブラシ状テクスチャを形成する。加えて、ブラシ状テクスチャは、近接表面に対する滑りを抑えて近接表面にしっかりと適合する摩擦表面を提供することができる。
【0074】
ナノファイバーを含むマトリックスを作製する好ましい方法において、ナノファイバーがコラーゲン分散系に分散され、その後撹拌される間に乾燥して薄いマトリックスもしくはシートになる。コラーゲン分散系は、任意の知られたプロセスによって得ることができる。例えば、米国特許第3,157,524号、および米国特許第3,520,402号は、コラーゲン分散系の調製物を開示する。これらの参考文献は、腱コラーゲン・スライスを酸溶液中に形成して分散系を形成し、次にそれを凝固浴中に押し出し成形することを開示する。特に、コラーゲン分散系は、Integra Lifesciences Corporationに譲渡されたNarotamの米国特許第5,997,895号の開示に従って調製することができる。米国特許第5,997,895号の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
米国特許第5,997,895号に記述される手順において、皮膚、腱、靱帯または骨のようなタイプIコラーゲンの天然供給源は、初めに脂肪、筋膜および他の異物が機械または手で除去されて洗浄される。次に、除去および洗浄されたコラーゲンを含む材料が通常は薄片化もしくは粉砕によって粉末状にされる。次に、この材料が、抗原活性を生じうる非コラーゲン不純物を除去するためにフィシンまたはペプシンのようなタンパク質分解酵素とともに断続的に撹拌される間に、酵素処理を受ける。酵素処理は、同じくエラスチンを除去することによってコラーゲンを膨潤させる。コラーゲン材料に加えられる酵素の量、および酵素消化が生じる条件は、使用される特定の酵素に依存する。通常よく使用されるフィシンを用いるときにはpHが約6.0から6.3に調整され、コラーゲン材料150部に対してフィシン1部を用いて、コラーゲン材料が約36.5℃から37.5℃の温度で約1から2時間にわたって消化される。必要な時間後に、酵素は、例えば(酵素がフィシンのときには)亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤の溶液を加えることによって不活化される。
【0076】
酵素で処理されたコラーゲンを含む材料は、過剰な酵素および非コラーゲン・タンパク質不純物を除去するために洗浄される。好ましくは、洗浄は、限外濾過水もしくは脱イオン水を用いて行われる。コラーゲンは、希釈した過酸化水素水溶液を用いてさらに洗浄することができる。
【0077】
酵素で消化されたコラーゲンを含む材料が、次に、約13から14のpH、約25℃から30℃の温度で約35から48時間、好ましくは約40時間にわたってアルカリ処理を受けることができる。アルカリ処理は、5%水酸化ナトリウムおよび20%硫酸ナトリウムの水溶液中で実施することができる。アルカリ処理は、夾雑する糖タンパク質および脂質を除去する。溶液は、次に硫酸水溶液のような適切な酸で中和されて、十分に洗浄される。
【0078】
コラーゲン材料が、次にコラーゲンの架橋を引き起こさない適切な酸溶液を用いて、さらに膨潤される。適切な酸は、酢酸、塩酸および乳酸を含む。酸を用いて、酸コラーゲン分散系のpHが約2から3に調整される。
【0079】
分散されたコラーゲン混合物が、次にファイバーをさらに分離させるために、例えばブレンダーまたはホモジナイザー中で均質化される。混合物が、次に、膨潤していない非コラーゲン材料を除去するために、100メッシュのステンレス鋼製スクリーンを通して濾過される。
【0080】
本発明のナノファイバーが、マトリックスの単位体積当たり、好ましくはコラーゲン・マトリックスの単位体積当たりのナノファイバー数で計算した重量パーセントで、濾された分散系に加えられる。例えば、添加ナノファイバーの重量パーセントを計算し、コラーゲン・マトリックス体積10マイクロメートル3当たり1ナノファイバーから1ミクロ3当たり200ナノファイバーまでを提供することができる。次に、ナノファイバーが分散したコラーゲン・マトリックスが、適切なトレーに注がれる。該分散系が約1から約48時間撹拌される間に凍結されて、凍結乾燥される。
【0081】
固化していく分散系を機械的に撹拌すると、ナノファイバーは、確実にランダムに配向し、ナノファイバーの端部の少なくとも一部が固化したコラーゲン・マトリックス表面から突出するようになる。撹拌を均一に加えて、均一に剛毛状の表面を提供することができる。または、撹拌を選択的に加えて、選択的に剛毛状の表面を提供することもできる。撹拌は、例えば、低周波音波処理またはトレーのロッキングによるか、あるいは固化していく分散系をかき混ぜて行うことができる。一例において、撹拌は、2kHzから20kHz未満の間の周波数、または3kHzから10kHzの間の周波数、好ましくは4kHzから8kHzの間の周波数における超音波振動によって行われる。撹拌は、分散系が十分に固化し終えて、ナノファイバーの少なくともいくらかがマトリックス表面から端部を突き出す方向にそれらを支持し、本発明による剛毛状の表面が形成されるまで行われる。コラーゲン・マトリックス表面上における剛毛状端部の突出は、1nmと1000nmとの間、または10nmと500nmもしくは100nmと300nmとの間で不均一であってもよい。剛毛の突出長さがどの程度であっても、表面に付着したナノファイバーに比べて改善された耐荷重引張強度が提供される。突出は、マトリックス表面の上方に少なくとも平均長の0.1%から平均長の99%、マトリックス表面の上方に平均長の望ましく1%から90%、好ましくは10%から50%未満のナノファイバーの突出として定義することができる。
【0082】
結果として生じる剛毛状のスポンジは、2.0mmから6mm、好ましくは約3mmの厚さを持つことができる。ナノファイバーを含んだ分散系の密度およびリポフィリゼーション・サイクルが、スポンジの密度および細孔径を決定づける。剛毛状のコラーゲン・マトリックスは、増殖組織の浸潤を可能にする十分なサイズおよび量の細孔を有する。細孔サイズは、10μmから500μm、好ましくは50μmから150μmに及ぶことができ、表面細孔は、断面(内部)細孔より小さい。
【0083】
本発明による膜は、0.1から10%固体(w:v)コラーゲン濃度、および0.005から0.5%(コラーゲン固体に対するw:w)の、グリセリンのような、適切な生体適合性の可塑剤を持つ、コラーゲンを含んだナノファイバーの分散系をキャストすることによって提供することができる。可塑剤の濃度は、約0.1%、コラーゲンの濃度は、約1%、好ましくは0.75%とすることができ、ナノファイバーの濃度は、0.01%から50%、望ましくは0.1%から10%、好ましくは1%から5%とすることができる。0.05から2.0mm、好ましくは約0.5mmの厚さを持つ膜を提供するために、ある体積の分散系が適切なノンスティック容器に注がれて蒸発される。熱または適切な架橋用化学剤を用いて、フィルムを架橋することができる。
【0084】
別の方法において、コラーゲン・スポンジもしくは膜は、ナノファイバーを含む乳酸から得られたコラーゲン・ファイバーからキャストされる。コラーゲン・ファイバーは、ウイルス、およびアルカリ処理された牛腱スライスのようなプリオンのないコラーゲン供給源を乳酸水溶液中に分散させること、該分散系を均質化すること、均質化された乳酸分散系を濾過すること、およびpHを約4.6〜4.9に調整するのに十分な水酸化アンモニウム水溶液の添加によって均質化された乳酸分散系からコラーゲン・ファイバーを沈殿させることを備えるプロセスによって製造される。
【0085】
コラーゲン・スポンジおよび積層フィルムは、コラーゲン・フィルムをキャストすること;該フィルムを乾燥させること;乾燥したフィルム上に、ナノファイバーを含んだコラーゲン・スラリーをキャストすること;スラリー/フィルムの組み合わせを凍結乾燥すること;および凍結乾燥された積層生成物を約25℃で約90分間(好ましくは9.6%のホルムアルデヒド濃度を有する)ホルムアルデヒド水溶液からの蒸気に曝露することによって架橋すること;それに続く約1時間の強制換気、によって調製することができる。
【0086】
一旦植え込まれると、コラーゲン・スポンジは、マクロファージによる細胞介在性の分解を通じて、4から12週間にわたってリソーブションを受ける。コラーゲンは、初期の類骨形成の間に細胞付着に有利な表面を提供することができる。それが、次にリソーブションを受ける。吸収性のコラーゲン・スポンジのようなコラーゲン・マトリックスは、多くの生物剤にとって理想的なキャリアのすべての特性を有し、rhBMP−2を含めて骨形成物質のすべてのタイプを担うのに特に適する。一実施形態において、骨形成物質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11とすることができる。
【0087】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される真空パッケージ容器をINFUSE(登録商標)Bone Graftデバイス(Medtronic Sofamor Danek,Memphis,Tenn)と併せて使用することを含み、真空注入型Packake(VIP)医療用容器内に配置されたBone Graft/LT−CAGE(登録商標)Lumbar Tapered Fusion Device(Medtronic Sofamor Danek,Memphis,Tenn)を含むことができる。INFUSE(登録商標)デバイスは、2つの部分を備える:(1)骨の治癒を促進する遺伝子操作されたヒトタンパク質(rhBMP−2);および
(2)上述のように、BMPを担う乳牛(ウシ)のコラーゲンでできた吸収性コラーゲン・スポンジ・スキャフォールド。
【0088】
なおさらなる実施形態において、真空パッケージは、単独かまたは多孔質基材と組み合わせて中に配置された金属プレート、ピン、ロッド、ワイヤ、ねじ、およびGraft/LT−CAGE(登録商標)または任意の他の適切な構造要素を含む機械デバイスのような、他の品目を含むこともできる。
【0089】
フリーズドライ(凍結乾燥)された吸収剤マトリックスのような多孔質基材は、水和することが難しい可能性があり、従来の「浸漬」法を用いて多孔質基材を水和するのに時間を要するために、手術室(OR:operating room)では、往々にして効果のない水和が行われる。本明細書に開示される医療用容器は、多孔質基材を迅速に再水和して基材の脆性を低減し、生体成分および細胞を効果的かつ効率的な仕方で多孔質基材に送達するための新規な方法を実現する。本容器は、基材の細孔から空気を排気することによって、脱水された多孔質基材を極めて強い真空下でシールする。流体が注入される間に、真空が流体を多孔質基材中に引き込み、迅速に細孔を満たして挿入物を再水和する。
【実施例】
【0090】
実験
次の例は、医療用挿入物、ならびに医療用挿入物を水和して生体成分を播種するための方法およびシステムを教示する。これらの例は、例示的であるに過ぎず、本明細書に開示される本発明の範囲を限定することは意図されない。以下に記載される処理方法は、当業者によく知られた経験的技術を用いて最適化することができる。そのうえ、本明細書に開示される本発明のすべての範囲を実行するために、当業者は次の例に記載される教示を利用することができるであろう。
【0091】
実験1
既知の濃度のrhBMP−2と複数のACSスポンジを含んだ水溶液とを用いて実験が行われた。滴下(浸漬)法か、または真空注入型パッケージ(VIP:Vacuum Infused Packaging)によるかいずれかを用いて、キャリア1cc当たり150μgのrhBMP−2(Infuse(登録商標)、Medtronic,Inc.,Memphis,TN)が吸収性のコラーゲン・スポンジ(ACS,Medtronic、Inc)中に送達された。滴下法で付けたrhBMP−2が15分間浸漬されたのに対して、VIPサンプルは、結合のために1分が与えられたに過ぎなかった。未結合のrhBMP−2は、37℃で1時間、オービタルシェーカー上の過剰な生理食塩水中に置くことによってACSスポンジから洗い落とされた。1時間のリンス後に、ACSサンプルに結合したrhBMP−2量を測定するために、rhBMP−2 ELISAキット(Leinco Technologies,Inc.,St.Louis,MO)が用いられた。次に、一元配置分散分析(p<0.05)、および多重比較のためのTukey’s post−hoc honest significant difference testを用いてデータが分析された。
【0092】
滴下による15分の結合時間後のACSへのrhBMP−2結合量が、1分のVIP注入時間後のACSと対比して図6に示される。いくつかのACSスポンジは、rhBMP−2溶液に浸漬(DRIP)され、他のACSスポンジは、真空シール・パッケージ内で(同じrhBMP−2溶液を用いて)注入された。図6からわかるように、VIP注入されたACSは、浸漬されたACSに割り当てた15分に比べて実質的に短縮された1分に過ぎない結合時間であっても、15分浸漬された(DRIP)ACSと比較して、統計的により多いrhBMP−2の結合を示した(p<0.0035)。これらの驚くべき意外な結果は、VIPがACS材料へのrhBMP−2の結合能力を高めることを示唆する。特定の理論に束縛されることなく、VIPは、ACS内のより多数のコラーゲン結合部位にrhBMP−2を晒すことによってより多くの結合を促進することから、VIPを用いるとrhBMP−2が従来の浸漬法より良好にACSに結合するものと考えられる。
【0093】
実験2
前述の「驚くべき意外な」結果がACSスポンジに固有ではないことをさらに検証するために、ACSスポンジの代わりに同種移植骨組織を用いて、同様の実験が行われた。滴下法か、または真空注入型パッケージ(VIP)によるかいずれかを用いて、キャリア1cc当たり150μgのrhBMP−2(Infuse(登録商標)、Medtronic,Inc.,Memphis,TN)が、複数の同種移植骨組織サンプルに送達された。滴下法で付けたrhBMP−2が15分間浸漬されたのに対して、VIPサンプルは、結合のために1分が与えられた過ぎなかった。未結合のrhBMP−2は、37℃で1時間、オービタルシェーカー上の過剰な生理食塩水中に置くことによって同種移植骨組織サンプルから洗い落とされた。1時間のリンス後に、同種移植骨組織サンプルに結合されたrhBMP−2量を測定するために、rhBMP−2 ELISAキット(Leinco Technologies,Inc.,St.Louis,MO)が用いられた。次に、一元配置分散分析(p<0.05)、および多重比較のためのTukey’s post−hoc honest significant difference testを用いてデータが分析された。
【0094】
図7は、滴下による15分の結合時間後の同種移植骨組織サンプルへの相対的なrhBMP−2結合量を、1分のVIP注入時間を有する骨サンプルと対比して示す。図7からわかるように、VIP注入された同種移植骨サンプルは、浸漬された骨サンプルに割り当てた15分に比べて実質的に短縮された1分に過ぎない結合時間であっても、15分浸漬された(DRIP)同種移植骨サンプルと比較して、統計的により多いrhBMP−2の結合を示した。これらの驚くべき意外な結果は、ACSスポンジだけでなく複数の吸収剤マトリックス材料においても、VIPがrhBMP−2の結合能力も高めることをさらに示唆する。
【0095】
一実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15分未満で、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの50%超の結合を提供する。他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2分未満で、好ましくは注入から1分以内に、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの50%超の結合を提供する。
【0096】
他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15分未満で、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの75%超の結合を提供する。他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2分未満で、好ましくは注入から1分以内に、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの75%超の結合を提供する。
【0097】
VIP環境においてrhBMP−2とACSとの結合が増加する利点は、即効性があって確認が可能なことである。rhBMP−2のACSへの強い結合は、rhBMP−2が、吸収剤マトリックス移植片から患者体内の周辺組織中に時期尚早に沈殿することを軽減するので極めて望ましい。先に議論されたように、BMPの時期尚早もしくは過剰な沈殿は、筋組織における異所性骨成長を促進することが知られており、頸椎領域の挿入物が関与するより重篤な事例では、異所性骨成長が対象の気管を完全に包囲して気道を遮断し、窒息を引き起こすことが知られている。
【0098】
詳細な記載および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示し、例示的であって制限を加えるものではないことが理解されるべきである。本発明の精神から逸脱することなく、その範囲内で多くの変更および修正を加えることができ、本発明は、すべてのかかる変更を含む。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用挿入物(medical implant)に関し、より詳しくは医療用挿入物を水和して生体成分を播種するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
骨移植術は、患者における新しい骨の形成がそれによって増強または促進される、多種多様な医学的および歯学的外科手技を指す。骨移植術は、多くの種類の整形外科手技において骨折もしくは骨喪失の処置、治癒しなかった骨損傷の修復、および関節の移動を防ぐための癒合に用いられる。特に脊椎に関しては、脊椎を安定化し、ある患者では痛みの著しい原因でありうる特定の脊椎分節による動きを妨げるために移植片が用いられてきた。移植片は、脊椎側弯症のような、脊椎変形の進行を矯正または停止するため、および脊椎骨折に対する構造的な支持を提供するためにも用いられてきた。
【0003】
適切な移植片は、患者自身の体の骨から(自家移植片)、同じ種のメンバーの骨から(同種移植片)、および他の動物種のメンバーの骨から(異種移植片)採取することができる。代わりに、骨移植片は、多くの他の物質の中でもコラーゲン、ポリマー、ヒドロキシアパタイト、硫酸カルシウム、セラミックスおよび生体吸収性ポリマーのような、多種多様な天然物質および/または合成物質から作り出すことができる。当然のことながら、骨移植片は、所定の形状をしたもの、あるいは植え込むときに所望の形状にできる小さい粒子から成るものを含むことができる。
【0004】
供給源に関わらず、骨移植片は、以降の外科的環境における植え込みのために、適切に貯蔵されなくてはならない。一般的なやり方の1つは、フリーズドライ法を用いて移植片を脱水することである。これは、骨移植片のシェルフライフを延ばすだけでなく、移植片内のバクテリアの増殖も抑制する。しかし、この移植片は、レシピエントに植え込まれる前に適切な液体で再構成もしくは再水和されなくてはならない。これは、骨移植片を液体に浸漬することによって行うことができる。しかしながら、移植片の細孔を通じた液体の注入は、一般に外科的環境にとって容認しがたいほど遅く、このアプローチの問題点は、液体が確実に移植片全体にわたって十分かつ完全に注入されないことである。そのうえ、このアプローチでは移植片が周囲の病原体に曝露される可能性が増加する。
【0005】
植え込み用移植片の調製における別の重要な課題は、所望の生体成分および細胞を移植片に均一に添着(loading)または播種することである。機能性組織相当物を発達させるためには、生体成分および細胞を天然または合成マトリックス中に効果的かつ均一に播種し、播種された細胞からそれらを組織様構造へ拡大かつ発達させることが必要である。それ故に、生体成分および細胞を三次元スキャフォールド中に効率的かつ均一に播種する能力は、依然として生体組織工学における重要な一面である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書では、医療用移植片をより迅速に再構成および水和し、生体成分および細胞を効率的かつ均一に医療用移植片に播種すべく改良された装置およびパッケージ・システムを提供するための方法およびシステムが開示される。
【0007】
好ましい一実施形態において、生体液を多孔質基材中に添着するためのシステムが提供される。本システムは、一般に入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を有する容器を含む。入力ポートは、骨形成物質を受け入れるように構成される。キャビティは、入口ポートと通じており、陰圧下に維持された多孔質基材を含む。容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである。
【0008】
好ましい実施形態の一様態に従って、骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP:bone morphogenetic protein)、形質転換増殖因子β(TGF−β:transforming growth factor−β)、増殖分化因子(GDF:growth differentiation factor)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP:cartilage derived morphogenetic protein)からなる群から選択される。
【0009】
好ましい実施形態の別の様態に従って、骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される。
【0010】
好ましい実施形態のまた別の様態に従って、骨形成物質は、組換え型ヒト骨形成タンパク質である。
【0011】
好ましい実施形態のさらなる様態に従って、組換え型ヒト骨形成タンパク質は、rhBMP−2である。
【0012】
好ましい実施形態のなおさらなる様態に従って、多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである。
【0013】
別の好ましい実施形態において、吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスを備える。
【0014】
好ましい実施形態の一様態において、コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン(cell−contracted collagen)、またはそれらの組み合わせとすることもできる。
【0015】
好ましい実施形態の別の様態に従って、コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える。
【0016】
好ましい一実施形態において、生体吸収性吸収剤マトリックスを持つ、再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するための容器が提供される。該容器は、一般に陰圧下に維持された内部キャビティ、生体液を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを含む。該容器は、受け入れチャンバが生体液を受け入れるのと実質的に同じ時間に、生体液の分布を再吸収性骨伝導性マトリックスの縦方向の長さに沿って分散させるために、受け入れチャンバと貯蔵チャンバとを連結し合う複数のチャンネルも有する。
【0017】
好ましい実施形態の一様態に従って、コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を有する。
【0018】
好ましい実施形態の別の様態に従って、生体成分を個体中に導入する前に、迅速に医療用挿入物に結合させる方法が提供される。本方法は、陰圧下に維持され、生体成分を受け入れるように構成された内部キャビティ、および医療用挿入物を貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを容器に提供することを含みうる。医療用挿入物は、生体吸収性吸収剤マトリックスを一般に備え、複数のチャンネルが、受け入れチャンバを貯蔵チャンバに連結し、該複数のチャンネルは、受け入れチャンバが生体液を受け入れるとの実質的に同じ時間に、生体成分の分布を医療用挿入物の縦方向の長さに沿って分散させるように構成される。生体成分が容器の受け入れチャンバ中に導入されて、5分未満で実質的な結合が達成される。
【0019】
なお他の実施形態において、結合は、2分未満、好ましくは1分未満で達成される。
【0020】
いくつかの実施形態において、実質的な結合は、生体成分の吸収剤マトリックスへの50%超の結合であり、好ましくは、生体成分の吸収剤マトリックスへの75%超の結合である。
【0021】
なお他の実施形態において、陰圧下の容器中の多孔質基材を用いて、多孔質基材上に骨形成物質を播種する方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである。本方法は、骨形成物質を、多孔質基材体積を超えない体積で、該多孔質基材に導入することを含む。有利なことに、骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、または軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)である。随意的に、骨成長剤(bone growth agent)は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10および/またはBMP−11、および/または、以下により詳細に記載されるように、他の適切な生体成分および細胞とすることができる。
【0022】
別の好ましい実施形態において、陰圧下の容器中の脱水された医療用骨移植片挿入物を用いて、生物剤(biological agent)の医療用挿入物への結合を増大させる方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、多孔質基材は、生体吸収性吸着剤マトリックスである。吸収剤マトリックスは、複数の細孔と吸収剤マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバー(rigid nanofiber)とも含む。生体液が、実質的に多孔質基材体積を超えない体積で、脱水された医療用挿入物に導入され、容器中の陰圧は、細孔中に生体液を押し込む圧力差を生み出し、それによって生物剤の挿入物への結合を増大させる。
【0023】
なおさらなる実施形態において、陰圧下の容器中の骨移植片を用いて、骨誘導性薬剤の骨移植片からの移動を軽減する方法が提供され、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、多孔質基材は、複数の細孔とマトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを有する生体吸収性吸収剤マトリックスを含む。少なくとも1つの骨誘導性薬剤が、実質的に多孔質基材体積を超えない体積で、骨移植片に導入され、容器中の陰圧は、骨誘導性薬剤を強く移植片に結合させる圧力差を生み出す。移植片がそれを必要とする個体に挿入され、骨誘導性薬剤は実質的に多孔質基材内に留まる。
【0024】
他の実施形態では、入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備え、入力ポートが生体物質を受け入れるように構成された容器を用いて、生体吸収性吸収剤マトリックス上における生体液の均一分布を向上させる方法が提供される。基材キャビティは、入口ポートに通じており、陰圧下に維持された生体吸収性吸収剤マトリックスを有する。容器容積は、吸収剤マトリックスの体積と実質的に同じである。生体液が入力ポート中に導入され、陰圧から圧力差が作り出されて、結果として溶液が生体吸収性マトリックスの複数の細孔中に押し込まれる。
【0025】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な記載から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】図1Aは、医療用挿入物容器の実施形態の上面斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1の医療用挿入物容器の蓋のない上面斜視図である。
【図1C】図1Cは、図1Aの医療用挿入物容器の1’−1’軸に沿って得られる断面図である。
【図2A】図2Aは、医療用挿入物容器の別の実施形態の前面図である。
【図2B】図2Bは、図2Aの医療用挿入物容器の背面斜視図である。
【図3】図3は、ニードル・シリンジを添えた医療用挿入物容器のさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図4A】図4Aは、医療用挿入物容器のなおさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図4B】図4Bは、図6Aの医療用挿入物容器の蓋のない上面斜視図である。
【図5A】図5Aは、医療用挿入物容器のなおさらなる実施形態の上面斜視図である。
【図5B】図5Bは、シリンジを用いた基材の再構成を示す図5Aの医療用挿入物容器の上面斜視図である。
【図6】図6は、真空シール・パッケージ(VIP)に入った吸収性コラーゲン・スポンジ(ACS:Absorbable Collagen Sponge)に塗られたrhBMP−2の相対的な結合強度を示すデータ・グラフである。
【図7】図7は、真空シール・パッケージ(VIP)に入った同種移植骨組織に塗られたrhBMP−2の相対的な結合強度を示すデータ・グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
いくつかの図面全体にわたって、同様の数字は同様の部分を参照する。
【0028】
本開示は、医療用移植片を迅速に再構成および水和し、生体成分および細胞を医療用移植片に均一に播種するための方法およびシステムに関する。本明細書に開示される方法およびシステムは、患者に植え込むための移植片を迅速に調製する能力が所望される外科的環境に特に適する。本開示は、医療用移植片、特に骨移植片を水和するための方法およびシステムを記載するが、当然のことながら、本方法およびシステムは、様々な医学的および歯学的用途、ならびに再生医療および生体組織工学のような軟組織の用途に適用することができる。従って、本明細書において用語「移植片」は、骨組織および軟組織の両方を含めて任意の自然発生組織、ならびに移植片として使用される任意の非自然発生物質またはそれらの任意の組み合わせから成ることができる。
【0029】
図1A〜Cは、本明細書に開示されるシステムおよび方法に関連して用いうる医療用挿入物・システム100の実施形態に関する様々な図を示す。図1A〜Cに示されるように、医療用挿入物・システム100は、入力ポート120、ニードル・キャビティ130、および脱水された骨移植片(示されていない)のような医療用挿入物を入れた移植片キャビティ140を含む容器110を備える。図1Aに示されるように、入力ポート120を通じてニードル・シリンジを挿入し、液体、生体成分、および/または細胞をニードル・キャビティ130中に、さらに容器110の移植片キャビティ140に貯蔵された移植片に送達することができる。ニードル・キャビティ130は、ニードル・シリンジと液体、生体成分および/または細胞とを受け入れるために、移植片キャビティ140に近接して配置される。
【0030】
容器110全体は、陰圧下に、より好ましくは実質的な真空下に、維持することが望ましい。これは、骨移植片のような医療用挿入物を、使用もしくは植え込み前の貯蔵のために、通常は脱水およびフリーズドライするためである。容器内の陰圧または真空が高いほど移植片内の細孔がよく排気されて、結果としてより多くの水和溶液が移植片内に注入される。従って、容器内の絶対圧力は、できるだけ0mbarに近いことが望ましい。好ましい実施形態において、容器内の絶対圧力は100mbar、より好ましくは10mbar、最も好ましくは1〜5mbar未満である。
【0031】
フリーズドライ法は、低残留水分の移植片を生じる陰圧下の凍結プロセスを含む。このプロセスの1つの利点は、骨移植片および他の生体物質を室温で貯蔵できることである。このプロセスは、骨移植片の生化学的変化の低減とともにシェルライフの増加ももたらす。かくして、フリーズドライされた移植片は、使用前の簡単かつ経済的な貯蔵を提供するという利点を有する。
【0032】
加えて、移植片内に残留する任意の水分は、容器へのパッケージ前に完全に除去しないまでも低減することが好ましい。これは、容器中の陰圧または真空が残留水分を蒸発させる可能性があり、延いては陰圧または真空が容器内で低下しかねないためである。好ましくは、移植片内の残留水分は6%未満、より好ましくは3%未満、最も好ましくは0%である。容器中に乾燥剤を含むことができる。乾燥剤は、移植片または移植片を水和するために使用される溶液と反応しないことが好ましい。
【0033】
骨移植片は、患者もしくはレシピエントに植え込まれる前に、通常は食塩水で再水和または再構成される。一般に、フリーズドライされた骨移植片の再水和は、移植片を所望の水和レベルに達するまで食塩水に浸漬することを含む。骨移植片の再水和および再構成は、他の要因のうちでも移植片のサイズに依存し、1時間から数日程度かかる可能性がある。溶液の均一な浸透および骨移植片の均一な再水和を達成することが望ましいが、外科的環境において典型的に要求される短期間のうちにこれらの目標を達成することは一般に難しい。
【0034】
本明細書に開示かつ記載される医療用挿入物容器は、フリーズドライされるか、さもなければ脱水された骨移植片を、植え込む前に迅速かつ均一に水和および再構成することができる手段を提供する。本医療用挿入物容器は、移植片の水和/再構成の間に実質的に陰圧を持続するので、水和または再構成のための時間が実質的に短縮される。真空が誘発する吸込み効果によって、溶液の移植片中への浸透が強化される。陰圧は、挿入物の間隙もしくは細孔中に溶液を押し込む圧力差を作り出す。溶液は、一旦細孔中に分布すると、毛管作用を通じてさらに挿入物全体に分布することができる。
【0035】
一実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から1時間以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から30分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。なお他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から20分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。さらに他の実施形態において、医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15、14、13、12、11、10、9、8、7、6分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。さらなる実施形態において医療用挿入物および真空注入型パッケージ容器システムは、4、3または2分を含んで、注入から5分以内またはそれ未満、好ましくは1分以内に、生体成分および細胞の実質的に均一な播種および添着に加えて、実質的な水和および再構成を提供する。
【0036】
移植片の均一な添着もしくは播種が可能な場合であっても、生体成分および細胞が患者の体内に入ったときに、移植片からそれらが不適切に沈殿しないように確実に移植片に結合しうることが次の課題である。例えば、移植片挿入物から周辺組織中への骨形成タンパク質(BMP)の時期尚早もしくは過剰な沈殿は、望ましくない位置に骨形成を促進することが知られている。これらの状態では、挿入物を取り囲む筋組織中に異所性骨成長が観察されており、頸椎領域のプラントが関与するより重篤な症例では、異所性骨成長が対象の気管を完全に包囲して気道を遮断し、窒息を引き起こすことが知られている。従って、生体成分および細胞の周辺組織中への過剰もしくは時期尚早な沈殿を回避するために、移植片挿入物にそれらが結合する能力を最大限にすることが望ましい。
【0037】
一実施形態において、生体成分を挿入物に迅速かつ実質的に結合させる方法が提供される。本明細書では、用語「迅速に」は、本開示の真空注入パッケージ容器を用いて短縮された生体成分の挿入物への結合時間を先行技術による注入システムの結合時間と比較することを指す。先行技術による注入システムは、例えば、W.Friess et al.”Characterization of absorbable collagen sponges as rhMBP−2 carrier” International Journal of Pharmaceutics 187(1999)p.91−99に開示されており、その内容は参照によりその全体が、特に吸収性コラーゲン・スポンジへのrhMBP−2の結合特性に関して本明細書に組み込まれる。好ましい実施形態において、生体成分は、多孔質基材が中に配置された真空注入パッケージ容器に導入されたときから15分未満で挿入物に結合される。より好ましくは、迅速な結合は、生体成分が本開示のシステムに導入されたときから10分未満、9分未満、8分未満、7分未満、6分未満、5分未満、4分未満、3分未満、または2分未満で達成される。特に好ましい実施形態において、生体成分は、1分未満で多孔質基材に結合される。本明細書では、用語「実質的に」は、生体成分の少なくとも50パーセントが挿入物に結合されることを指す。好ましい実施形態において、「実質的に結合される」または「実質的に結合している」は、挿入物への生体成分の少なくとも60%、65%、70%、75%、または80%の結合を指す。特に好ましい実施形態では、生体成分の85%が挿入物に結合される。
【0038】
図1A〜Cにおいて、容器110全体が陰圧または真空下に維持されるので、容器110の内容積は、骨移植片を収納するのに必要な大きさまで縮小することが望ましい。これは、空間の容積が大きいほど、陰圧または真空を維持することが一般により難しいためである。好ましい実施形態において、容器容積は、移植片の体積と実質的に同じである。この好ましい実施形態の一様態に従って、容器容積は、移植片の体積およそ125%以下、好ましくはおよそ110%以下、より好ましくは105%以下である。この好ましい実施形態の別の様態に従って、容器容積は、移植片の体積に等しい。図1A〜Cに示されるように、容器110の内容積は、上壁150、側壁160および底壁170で閉ざされる。隔膜190は、入力ポート120に連結され、隔膜を収容するのに必要な容器110の内容積を減少させるために、容器110の外部に配置される。容器のために選択される材料は、陰圧または真空が経時的に有効かつ確実に維持されるように、好ましくは高い気体バリア特性を持つことを特徴とする。
【0039】
陰圧下に維持される内容積を減少させるために、医療用挿入物容器の他の実施形態を同様にデザインすることができる。例えば、図4A〜Bは、移植片キャビティ410内に入った骨移植チップ402を備える医療用挿入物容器400を示す。蓋450は、熱溶接425によって移植片キャビティ410の周辺縁412に密閉される。図4A〜Bからわかるように、骨移植チップ402は、移植片キャビティ410の容積が骨移植チップ402の体積と実質的に同じになる収容能力近くまで、移植片キャビティ410を満たす。隔膜490は、移植片キャビティ410の外部に配置される。好ましくは、隔膜は、穿刺後にセルフシールし、移植片キャビティ410内の陰圧/真空を維持するためにニードル・シリンジが水和溶液を移植チップ402に送達する。
【0040】
図1A〜Cを再び参照して、医療用挿入物・システム100は、容器110を実質的に安定な直立位置に支持するための支持部材180をさらに備える。これは、外科医がシステム100を平面上に置いて、他方の手でシステム100を所望の直立位置に支持する必要なしに、容易に片手でニードル・シリンジを入力ポート120に挿入することを可能にするであろう。図1A〜Cは、容器110を取り囲む単一の外周壁として支持部材180を示すが、当然のことながら、支持部材180の構造はあまり限定されず、入力ポート120への注入ステップを外科医が行えるように十分安定な位置に容器110を安定化しうる他の構造を含むこともできる。
【0041】
システム100は、一般に底部分105および蓋部分135を備えることが示されている。底部分105および蓋部分135は、容器110内で陰圧が維持されうるように、2つの部分を溶接することによって密閉することができる。溶接部は、底部分105と蓋部分135の間に残るかもしれないデッドエアスペース量をさらに低減するために、できるだけ容器110の周辺近くに置くことは望ましい。結果として得られる溶接部125は、容器110の周辺全体を取り囲むことができる。図1A〜Cに図示されるシステム100は、底部分105と蓋135とを備える2つの部分の構造として示されるが、当然のことながら、弾性真空パッケージのような一体構造として容器を構築することもできる。
【0042】
システム100は、骨移植片の迅速かつ均一な水和または再構成に加えて、該移植片の細孔中への生体成分および細胞の効率的かつ均一な分布および播種を促進する。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジを通過するときの構造的損傷もしくは細胞損傷から守るために、溶液中で適切な口径のニードル・シリンジを経由して移植片に送達することができる。
【0043】
一般に、移植片が骨損傷を修復するために役立つ3つの方法がある。第1は、骨形成と呼ばれる、移植片内に含まれる細胞による新しい骨の形成。第2は、骨誘導、移植片内に含まれる骨形成タンパク質のような分子が患者の細胞を骨形成可能な細胞に変化させる化学的プロセス。第3は、骨伝導、移植片がスキャフォールドを成し、その上にレシピエント中の細胞がコロニーを作って新しい骨を形成しうる物理的効果。かくして、本明細書に開示される方法およびシステムは、レシピエントにおける骨損傷の修復を助けるべく、生体成分および細胞を含むように骨移植片を調製することを提供する。
【0044】
好ましくは、容器110の内表面は、骨移植片への送達の間に生体成分および細胞の完全性を維持するのに役立つように構成される。特に、ニードル・キャビティ130ならびに側面160および底面170の壁は、入力ポートを通じて受け入れた生体液の層流を促進するように構成される。層流は、滑らかかまたは非乱流かいずれかの液体流として特徴付けられる。溶液に含まれる生体成分および細胞の構造および細胞の完全性を維持するためには、容器110中で生体液の層流を促進し、従って乱流を弱めることが好ましい。乱流は、例えば、細胞を溶解して凝集させる可能性がある。生体液が容器110内で接触しうる急峻な端、隅もしくは角を無くすか、あるいは少なくとも減らすことによって、溶液の層流が促進される。液体は、ニードル・キャビティ中に排出されて容器110の底表面170に向かうことから、容器110の上壁もしくは蓋部分105あるいは側面の壁160が容器110の蓋部分105と交わる所の形状は、それほど重要ではなく、それ故に必ずしも曲がっている必要はないことが注目される。
【0045】
図1B〜Cからわかるように、容器110の側面160および底面170の壁は、ゼロより大きい曲率半径を持つ曲面で合わさる。そのうえ、ニードル・キャビティ130の内表面も、ゼロより大きい曲率半径を持つ曲面として提供される。加えて、図1Cに描かれた一実施形態に示されるように、底面の壁170は、生体液が確実に移植片の底面を流れ、その長さに沿って分布するように、入力ポート120およびニードル・キャビティ130から下方へ傾斜している。これは溶液が移植片全体にわたって均一に分布することを確実にするのみならず、溶液がニードル・キャビティ130に溜まって無駄になることを防ぐ。かくして、医療用挿入物容器の実施形態は、導入すべき生体成分または細胞量を実質的に正確に注入することをさらに提供する。しかし、当然のことながら、他の実施形態において、底面の壁170は、入力ポート120およびニードル・キャビティ130から下方へ傾斜している必要はない。
【0046】
代わりの実施形態は、1つより多い骨移植片を同時に水和または再構成するための効率的な方法を提供する。図2A〜Bは、1つの入力ポート220および対応するニードル・キャビティ230、ならびにチャンネル235を経由してニードル・キャビティ230に結合かつ流体連結された複数の移植片キャビティ240A、240B、240Cおよび240Dを備える、医療用移植片容器200のある実施形態を示す。移植片が移植片キャビティ240A、240B、240Cおよび240D中に装着されると、移植片キャビティに残存する空気を排気するための気体連結が容器に適用される。容器200は、底部分と溶接部225によって随意的に密閉された蓋とを備えることができる。蓋部分を底部分から引き離し、容器200を開いて骨移植片を取り出すことができる周辺縁領域275を提供することができる。
【0047】
機能性組織相当物を発達させるためには、生体成分および細胞を天然または合成マトリックス中に効果的かつ均一に播種し、播種された細胞からそれらを組織様構造へ拡大および発達させることが必要である。それ故に、生体成分および細胞を三次元スキャフォールド中に効果的かつ均一に播種する能力が依然として極めて望ましい。
【0048】
図3は、ニードル・シリンジを添えた医療用移植片容器300のさらに別の実施形態を示す。容器300は、移植片キャビティ340の長さに沿って複数の送達チャンネル335を提供することによって、所望の生体成分および細胞の分布を分散させるようにデザインされる。移植片キャビティ340は、好ましくは脱水された骨移植片の正確な寸法および形状に合わせて成形される。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジにより入力ポート320を通じてニードル・キャビティ330中に送達することができる。ニードル・キャビティ330、送達チャンネル335、および移植片キャビティ340では、陰圧または真空が維持される。隔膜390は、ニードル・シリンジによる穿刺後に陰圧または真空を維持するために、随意的に入力ポート320に連結することができる。容器300は、ニードル・キャビティ330、送達チャンネル335および移植片キャビティ340の周辺で溶接部325によって密閉することができる。
【0049】
図5Aは、医療用移植片容器500のさらに別の実施形態を示す。図5Bは、ニードル・シリンジ510を利用して、図5Aの医療用移植片容器500内に配置された医療用移植片に適切な水性組成物を如何に注入しうるかを説明する。容器500は、移植片キャビティ550内に配置された医療用移植片の上方に隔膜590を提供することによって、所望の生体成分および細胞の分布を医療用移植片の中央に近い距離から分散させるようにデザインされる。これは、小細孔サイズまたは水性組成物の粘性のような、医療用移植片の拡散特性に影響を与える他の要因故に水性組成物の拡散に抗する医療用移植片にとって、特に望ましい可能性がある。医療用移植片容器500は、生体成分および細胞の濃度勾配、すなわち医療用移植片の中央に近い方では生体成分および細胞の濃度が高く、医療用移植片の中央からさらに離れると生体成分および細胞の濃度が低くなる濃度勾配、を医療用移植片内に設けることが望ましい場合にも用いることができる。ニードル・シリンジ510は、水性組成物の注入中に医療用移植片に挿入される。あるいはニードル・シリンジは、注入中に単に医療用移植片の上方または近くに置かれるに過ぎない。移植片キャビティ550は、好ましくは医療用移植片の正確な寸法および形状に合わせて成形される。生体成分および細胞は、ニードル・シリンジを経て隔膜590の入力ポート595を通過し、移植片キャビティ550内に配置された医療用移植片に送達することができる。容器500は、溶接部525によって移植片キャビティ550の周辺で密閉することができ、容器500を実質的に安定な直立位置に支持するための支持部材580を提供することができる。
【0050】
本明細書において、骨移植片を植え込む前に水和または再構成するために用いられる水性組成物は、溶液、乳濁液、ミクロ乳濁液、懸濁液またはその組み合わせとすることができる。乳化剤または懸濁助剤として機能する物質が、かかる水性組成物中に存在してもよい。かかる乳化剤または懸濁助剤の非限定の例は、細胞増殖培地、血清、分化培地、栄養培地、モノグリセリド類、モノグリセリドのエステル類、ジグリセリド類、ジグリセリドのエステル類、脂肪酸のポリグリセリンエステル類、脂肪酸のプロピレングリコールエステル類、ソルビタンステアラート類、ステアロイル乳酸塩、レシチン類、リン脂質、糖脂質、セルロースエステル類、ジェラン、ペクチン、キサンタン、ラムサムおよびアラビアゴムを含む。
【0051】
いくつかの実施形態において、水性組成物は、水混和性の生体適合性溶媒または溶媒混合液をさらに含む。生体適合性溶媒は、好ましくは移植片が哺乳動物の体温で少なくとも部分的に可溶であり、使用量において実質的に無毒性の有機液体である。例として、限定されずに、適切な水混和性の生体適合性溶媒は、エタノール、アセトンおよびジメチルスルホキシド、ならびに他の適切な水混和性の生体適合性溶媒を含む。
【0052】
本明細書に開示される医療用挿入物と関連して用いられる生体成分は、ヒトに生物学的、治療または薬理学的結果を生み出す任意の薬剤を含む。例となる生体成分は、例えば、任意の形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP);BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10およびBMP−11を含むが、これらに限定されない任意の骨形成タンパク質(BMP);血管新生因子;増殖因子;ホルモン;ヘパリンおよびコンドロイチン硫酸塩のような抗凝固薬;tPAのような線維素溶解薬;アミノ酸;合成ペプチドおよびタンパク質を含み、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼおよびエラスターゼのような酵素を含むペプチドおよびタンパク質;ヒドロコルチゾン、デキサメサゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プロメタジン、アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトララク、メクロフェナム酸、トルメチンのようなステロイド性および非ステロイド系抗炎症薬;ジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミルのようなカルシウムチャンネル遮断薬;アスコルビン酸、カロチン類およびα−トコフェロール、アロプリノール、トリメタジジンのような抗酸化薬;ゲンタマイシン、ノキシチオリンのような抗生物質、および感染を防ぐための他の抗生物質;腸管運動性を促進するための消化管運動改善薬、cis−ヒドロキシプロリンおよびD−ペニシラミンのようなコラーゲンの架橋を防ぐ薬剤;抗がん剤;神経伝達物質;ホルモン;エレメタルおよび抗体を含む免疫薬剤;アンチセンス剤を含む核酸;排卵誘発剤、向精神薬;ならびに多くのさらなる薬剤のうちで局部麻酔薬を含む。
【0053】
骨移植片と併せて特に有用な生体成分の一群は、骨形成タンパク質(BMP)である。BMPは、骨および軟骨の形成を誘発する能力で知られる一群の増殖因子かつサイトカインである。現在、例えばBMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11を含む約20のBMPが知られている。BMP−2およびBMP−7は、構造上関連した細胞調節タンパク質の大きいファミリーである形質転換増殖因子β(TGF−β)スーパーファミリーのタンパク質に属する、よく知られ、かつよく用いられるBMPである。BMP−2およびBMP−7は、様々な細胞タイプで骨芽細胞の分化を強く誘発させる骨形成BMPである。本明細書に記載される医療用移植片と併せて用いられるBMPは、動物、ヒト(hBMP)から、あるいは組換え型DNA技術(rhBMP)によって抽出することができる。骨移植片に現在利用される、特によく知られるBMPの1つは、Dibotermin Alfaとしても知られるrhBMP−2である。当分野でよく理解されるように、rhBMP−2は、細胞、バクテリアまたは酵母を遺伝子的に組換えるかまたは操作して大量にrhBMP−2を製造する組換え型DNA技術を用いて、効率的に製造することができる。骨移植片にBMPを用いる例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「USE OF MORPHOGENETIC PROTEINS TO TREAT HUMAN DISC DISEASE」と題する米国特許出願公開第2004/0230310 A1号に記載される。
【0054】
本明細書に開示される方法およびシステムは、生細胞をレシピエント中の所望の部位に送達するために利用することもできる。かかる細胞の例は、以下には限定されないが、幹細胞、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄間質細胞、骨細胞、肝細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、間葉幹細胞、線維芽細胞、筋細胞、実質細胞、腸由来の細胞、神経細胞、皮膚細胞、内皮細胞、上皮細胞、および平滑筋細胞を含む。これらの細胞は、播種前に培養、分化、または増殖することができる。これらの細胞は、遠心分離もしくは濾過のような方法によって、埋め込む前に濃縮することができる。かくして、播種された医療用挿入物は、移植細胞の生存、増殖、および究極的に正常細胞組織への移植もしくは固定を達成するために、移植すべき細胞を固定する付着基材として機能することができる。
【0055】
他の有用な細胞タイプは、骨髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞、骨髄間質細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、間葉幹細胞、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、実質細胞、腸由来の細胞、神経細胞、および皮膚細胞を含み、一次組織外植片、一次組織外植片の調製品、単離細胞、細胞株、形質転換細胞株および宿主細胞として提供される。挿入物は、生物学的に活性な薬剤、あるいは骨誘導性、代謝用薬剤、吸収性、強度、付着性、注入性および摩擦特性などの特性を変化させる因子のような付加的な成分も含む。
【0056】
皮質骨移植片および他の基材(例えば、セメント、IPNなど)への免疫反応は、最小限に抑えられ、その一方で骨誘導の可能性は、レシピエントの体が自己の組織型として受け入れ、従って、それを拒絶することもさもなければ損傷することもないであろう骨誘導性表面を持つように、移植片を修飾することによって改善される。かかるプロセスは、移植片のレシピエントか、あるいは同種間もしくは異種間のドナー源か、いずれかから予め採取された骨膜細胞を多孔質移植基材の表面に播種することによって達成される、骨誘導性の表面修飾を提供する。
【0057】
本開示の方法およびシステムと関連して用いることができる多孔質基材は、自家移植片、同種移植片、異種移植片、またはコラーゲンおよび他のペプチドを備える挿入物のようなヒト以外の他の動物ベースの物質を含む。セラミックス、ヒドロキシアパタイト、生体吸収性ポリマーなどを含む合成材料も、移植材料として用いることができる。いくつかの実施形態において、多孔質基材は、生物学的に許容できるマトリックス・スポンジを備える骨伝導性マトリックスである。以下により詳細に記載されるように、スポンジは、好ましくはコラーゲン・スポンジである。
【0058】
ある実施形態において、移植片の細孔サイズは、移植片中に分布または播種されることになる生体成分および細胞の寸法に適合するように構成することができる。細孔サイズは、移植片を水和および/または再構成するために用いる水性組成物の粘性に適合するように、最適に構成される。ある水性組成物では、高粘性がタンパク質および他の高分子量バイオモレキューの含有に起因することもある。かくして、再生される組織の挙動および品質に影響を与えるように、スキャフォールドの細孔サイズ、密度、および多孔率に関する考察を行うことができる。骨再生のための細孔サイズは、好ましくは約100から約600マイクロメートルである。
【0059】
合成移植片に用いるのに適した合成ポリマーをいくつか挙げると、以下には限定されないが、ポリヒドロキシブチラート(PHB);ポリ−n−ビニルピロリドン;ポリオルトエステル類;ポリ無水物;ポリシアノアクリレート類;ポリデプシペプチド類;ポリヒドロピラン類;ポリ−DL−ラクチド(PDLLA);ポリエステルアミド類;しゅう酸のポリエステル類;ポリグリコリド(PGA);ポリラクチド・グリコリド共重合体(DLPLG);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEKK);ポリイミノカーボネート類;ポリ乳酸類(PLA);ポリオルトエステル類;ポリ−p−ジオキサノン(PDO);ポリペプチド類;ポリホスファゼン類;ポリサッカリド類;ポリウレタン類(PU);ポリビニルアルコール(PVA);ポリ−β−ヒドロキシプロピオナート(PHPA);ポリ−β−ヒドロキシブチレート(PBA);ポリ−γ−バレロラクトン;ポリ−β−アルカン酸;ポリ−β−りんご酸(PMLA);ポリ−ε−カプロラクトン(PCL);および炭酸トリメチレン(TMC)が含まれる。
【0060】
いくつかの実施形態において、合成基材は、生体内で安定なポリマーを含み、一方で他の実施形態において、合成基材は、生体吸収性ポリマーを含む。適切な無機基材は、りん酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、低結晶性アパタイト・りん酸カルシウム(PCA:poorly crystalline apatite calcium phosphate)、非晶質りん酸カルシウム(ACP:amorphous calcium phosphate)のような、天然ならびに非天然のりん酸カルシウムの様々なタイプを含む。骨の主な無機成分は、高度に置換されたりん酸カルシウム(CaP:calcium phosphate)アパタイトからなるので、CaPの様々な形態を備える合成代用骨は特に有用である。かかるCaPベースの材料は、ヒドロキシアパタイト、炭酸含有アパタイト、フルオロアパタイト、α−およびβ−りん酸三カルシウム、りん酸四カルシウム、りん酸八カルシウム、およびそれらの組み合わせを含む。本材料は、好ましくは、適切なレベルの多孔率、細孔サイズ、および細孔間の相互連結サイズを持つように構成される。
【0061】
一実施形態において、多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである。好ましくは、生体吸収性吸収剤マトリックスは、吸収性、可撓性、展性、圧縮性、多孔質、生体吸収性および生体適合性である。適切な吸収性マトリックスの一例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「BONE GRAFT COMPOSITION,METHOD AND IMPLANT」と題する米国特許出願公開第2007/0142916 A1号に教示されるように、吸収性コラーゲン・スポンジ(ACS)である。
【0062】
好ましい実施形態において、動物のタイプIコラーゲンがヒトのタイプIコラーゲンに相同性であれば、吸収剤マトリックスは、タイプIの牛腱コラーゲンから得られる。しかしながら、吸収剤マトリックスを形成するために、タイプII、III、VおよびXIのような他の原線維形成コラーゲン、ならびに遺伝子導入動物から得られる生理的に適合するコラーゲン、またはそれらの任意の組み合わせも、単独かあるいはタイプIコラーゲンと組み合わせるかいずれかで用いることができる。採取後に、腱は、アルカリ溶液で処理され、抽出されたコラーゲンは、吸収性コラーゲン・スポンジに特に適したスポンジ状材料になるように、熱または適切な架橋用化学剤(アルデヒド、DHT、UVなど)を用いて架橋することができる。コラーゲンがスポンジになった後に、エチレンオキシド、エタノールなどのような適切な化学薬品もしくは方法を用いてこの材料が滅菌される。コラーゲン・マトリックスは、好ましくは、増殖組織の浸潤を可能にするのに十分なサイズおよび量の細孔を持つ。細孔サイズは、好ましくは約10μmから約500μm、より好ましくは約50μmから約150μmに及び、表面細孔は、断面(内部)細孔より小さい。特に好ましい実施形態において、表面細孔は、直径が約30μmから約150μmに及び、約70μmが最も好ましい。断面細孔は、直径が約50μmから約300μmに及ぶことができ、約150μmが最も好ましい。再吸収性骨伝導性マトリックスの好ましい形態は、液体増殖培地と等密度、スポンジ様の特徴、および約2ミリメートル未満の直径を持つ生物学的に適合した均質な多孔質マトリックスとして記述することができる。各粒子は、複数の空隙を有し、該空隙は、マトリックスの全体積の少なくとも10パーセントに相当し、マトリックスの外部と該空隙とを接続する直径が100マイクロメートル未満の細孔に連結される。コラーゲン・マトリックスは、耐差動荷重性表面の剛毛を提供すべくコラーゲン・マトリックスの表面から突き出たナノファイバー端部によってコラーゲン・マトリックスに構造的完全性を付与するために、コラーゲン・マトリックス内に分散された実質的に硬い複数のナノファイバーを備えることもできる。
【0063】
この出願において、用語「実質的に硬い」は、使用される環境において実質的に可撓性のないことを意味する。硬さは、ずれ弾性率によって測定することができる。この様態において、「実質的に硬い」は、4.2MPaと15.0MPaとの間、望ましく6.0MPaと14.0MPaとの間、好ましくは9.0MPaと12.0MPaとの間の弾性率を持つナノファイバーを意味することができ、架橋によってより高いMPa値が得られる。
【0064】
用語「ナノファイバー」は、他の2つの主軸より長い1つの主軸、および1超もしくは10超または500超のアスペクト比を持つ細長いナノ構造を意味する。短い方の軸は、100nm未満、もしくは10nm未満または5nm未満とすることができる。ナノファイバーは、実質的に均一な直径を持つことができる。直径は、最大ばらつきの領域にわたって20%未満、5%未満、または1%未満の分散を示すことができる。典型的に、直径は、ナノファイバーの端部から離れてナノファイバーの中心の20%、50%または80%にわたって評価される。他の実施形態において、ナノファイバーの直径は、不均一であり長さ方向に直径が変化する。同様に、ある実施形態において、ナノファイバーは、実質的に結晶性および/または実質的に単結晶性とすることができる。
【0065】
「ナノファイバー」は、本発明による再吸収性骨伝導性マトリックスに剛毛状の表面を付与しさえすれば、ナノワイヤ、ナノウィスカ、半導体ナノファイバー、カーボンナノチューブおよび複合ナノチューブのような構造を含む。ナノファイバーは、剛毛状の表面を使用する意図、使用条件、例えば温度、pH、紫外線感受性のような光、配置環境、再吸収性骨伝導性マトリックスによって支持される反応、要求される表面耐久性、および費用さえも含むいくつかの要因に基づいて、いくつもの材料を備えることができる。ナノファイバーの延性および破壊強度は、組成に依存して異なりうる。例えば、セラミックZnOナノファイバーは、シリコンもしくはガラスナノワイヤより脆いことがあるが、一方でカーボンナノナノファイバーチューブは、より高い引張強度を持つことができる。
【0066】
コラーゲンは、硬いナノファイバーの良い例であるが、他のポリマーも同様に適する。硬いナノファイバー形態に製造されうるチューブリンおよびケラチンのような他のロッド状バイオポリマーの誘導体は、マトリックスを形成する条件下でファイバー構造の完全性を維持しさえすれば、適切でありうる。好ましいナノファイバーは、アミノ基のように水と相溶性があって極性表面基を持つ、ナノメートル・スケールのロッド状ポリマーである。
【0067】
再吸収性骨伝導性マトリックスに応用するための他のナノファイバーは、シリコン、ZnO、TiO、カーボン、カーボンナノチューブ、ガラスおよび石英を含む。本明細書に開示させるナノファイバーは、特性を付加あるいは強化するためにコーティングもしくは官能化することができる。コーティング材料としては、ポリマー、セラミックスまたは小分子を用いることができる。コーティングによって、耐水性、改善された機械的または電気的特性、あるいは特定の分析のための特異性のような特性を付与することができる。加えて、特異的な部分もしくは官能基をナノファイバーに付着させるか、または結合させることができる。
【0068】
一実施形態において、ナノファイバーは、メチル化されたコラーゲンによって形成される。この材料は、比較的高い(25℃超)ガラス転移温度を持ち、再吸収性骨伝導性マトリックスに改善された構造的完全性を付与し、表面における剛毛の形成を可能にする。
【0069】
本発明の異なった用途は、骨伝導性マトリックスの単位体積当たり異なったナノファイバー密度を必要とするであろう。いくつかの例となる用途において、単位体積当たりのナノファイバー数は、マトリックス体積10マイクロメートル3当たり1ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり200ナノファイバー、または1マイクロメートル3当たり10ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり100ナノファイバー;あるいはマトリックス体積1マイクロメートル3当たり25ナノファイバーから1マイクロメートル3当たり75ナノファイバーである。他のナノワイヤの実施形態において、密度は、マトリックスの1立方マイクロメートル当たりに約1から3ナノワイヤから1立方マイクロメートル当たり2,500ナノワイヤに及ぶことができる。
【0070】
ナノファイバーの総面積は、太さもしくは直径を増やすことによって増加させることができる。直径は、組成、成長条件、成分またはコーティングの選択を通じて制御することができる。好ましいナノファイバーの太さは、5nmと1マイクロメートルとの間;10nmから750ナノメートル、または75nmから100ナノメートルである。
【0071】
ナノファイバーの表面積、およびそれに対応する再吸収性骨伝導性マトリックスの剛毛状の表面積は、ナノファイバーの直径に加えて長さによって影響される。いくつかのファイバー材料では、長さの増加が脆弱性の増加をもたらす。従って、好ましいファイバー長は、2マイクロメートルと1mmとの間;10マイクロメートルと500マイクロメートルとの間;あるいは50マイクロメートルと100マイクロメートルとの間であろう。本発明のいくつかの実施形態は、直径がおよそ40nmで長さがおよそ50マイクロメートルのナノファイバーを有する。
【0072】
ナノファイバーは、材料特性が実質的に均質でも不均質でもよく、任意の使いやすい単数または複数の材料から製造することができる。それらは、「純粋な」材料、実質的に純粋な材料、およびドープされた材料を備えることができ、絶縁体、導体または半導体を含むことができる。耐久性、コストまたは使用条件などは、特定の官能化に依存して変化しうる。ナノファイバー材料は、再吸収性骨伝導性マトリックス材料と同じであってもよく、あるいはナノファイバー材料は、マトリックスと異なってもよい。
【0073】
分散されたナノファイバーを持つマトリックスの製造
再吸収性骨伝導性マトリックスは、分散されたファイバーを備え、そのいくらかは、マトリックス表面の上方に剛毛状に立ち上がった端部を有する。一実施形態において、マトリックスは、マトリックス表面の上方に少なくとも10nm、および他の実施形態において、少なくとも100nm立ち上がった端部を有する分散されたナノファイバーの少なくとも一部を持つ。好ましい骨再生組成物は、コラーゲン・マトリックス表面の上方に40nmと100nmとの間で伸びる剛毛状のナノファイバー端部を備える。剛毛は、圧縮による骨誘導性材料の損失から再吸収性骨伝導性マトリックスの細胞構造を保護するために、近接した構造を差動的に支持する複雑なブラシ状テクスチャを形成する。加えて、ブラシ状テクスチャは、近接表面に対する滑りを抑えて近接表面にしっかりと適合する摩擦表面を提供することができる。
【0074】
ナノファイバーを含むマトリックスを作製する好ましい方法において、ナノファイバーがコラーゲン分散系に分散され、その後撹拌される間に乾燥して薄いマトリックスもしくはシートになる。コラーゲン分散系は、任意の知られたプロセスによって得ることができる。例えば、米国特許第3,157,524号、および米国特許第3,520,402号は、コラーゲン分散系の調製物を開示する。これらの参考文献は、腱コラーゲン・スライスを酸溶液中に形成して分散系を形成し、次にそれを凝固浴中に押し出し成形することを開示する。特に、コラーゲン分散系は、Integra Lifesciences Corporationに譲渡されたNarotamの米国特許第5,997,895号の開示に従って調製することができる。米国特許第5,997,895号の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
米国特許第5,997,895号に記述される手順において、皮膚、腱、靱帯または骨のようなタイプIコラーゲンの天然供給源は、初めに脂肪、筋膜および他の異物が機械または手で除去されて洗浄される。次に、除去および洗浄されたコラーゲンを含む材料が通常は薄片化もしくは粉砕によって粉末状にされる。次に、この材料が、抗原活性を生じうる非コラーゲン不純物を除去するためにフィシンまたはペプシンのようなタンパク質分解酵素とともに断続的に撹拌される間に、酵素処理を受ける。酵素処理は、同じくエラスチンを除去することによってコラーゲンを膨潤させる。コラーゲン材料に加えられる酵素の量、および酵素消化が生じる条件は、使用される特定の酵素に依存する。通常よく使用されるフィシンを用いるときにはpHが約6.0から6.3に調整され、コラーゲン材料150部に対してフィシン1部を用いて、コラーゲン材料が約36.5℃から37.5℃の温度で約1から2時間にわたって消化される。必要な時間後に、酵素は、例えば(酵素がフィシンのときには)亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤の溶液を加えることによって不活化される。
【0076】
酵素で処理されたコラーゲンを含む材料は、過剰な酵素および非コラーゲン・タンパク質不純物を除去するために洗浄される。好ましくは、洗浄は、限外濾過水もしくは脱イオン水を用いて行われる。コラーゲンは、希釈した過酸化水素水溶液を用いてさらに洗浄することができる。
【0077】
酵素で消化されたコラーゲンを含む材料が、次に、約13から14のpH、約25℃から30℃の温度で約35から48時間、好ましくは約40時間にわたってアルカリ処理を受けることができる。アルカリ処理は、5%水酸化ナトリウムおよび20%硫酸ナトリウムの水溶液中で実施することができる。アルカリ処理は、夾雑する糖タンパク質および脂質を除去する。溶液は、次に硫酸水溶液のような適切な酸で中和されて、十分に洗浄される。
【0078】
コラーゲン材料が、次にコラーゲンの架橋を引き起こさない適切な酸溶液を用いて、さらに膨潤される。適切な酸は、酢酸、塩酸および乳酸を含む。酸を用いて、酸コラーゲン分散系のpHが約2から3に調整される。
【0079】
分散されたコラーゲン混合物が、次にファイバーをさらに分離させるために、例えばブレンダーまたはホモジナイザー中で均質化される。混合物が、次に、膨潤していない非コラーゲン材料を除去するために、100メッシュのステンレス鋼製スクリーンを通して濾過される。
【0080】
本発明のナノファイバーが、マトリックスの単位体積当たり、好ましくはコラーゲン・マトリックスの単位体積当たりのナノファイバー数で計算した重量パーセントで、濾された分散系に加えられる。例えば、添加ナノファイバーの重量パーセントを計算し、コラーゲン・マトリックス体積10マイクロメートル3当たり1ナノファイバーから1ミクロ3当たり200ナノファイバーまでを提供することができる。次に、ナノファイバーが分散したコラーゲン・マトリックスが、適切なトレーに注がれる。該分散系が約1から約48時間撹拌される間に凍結されて、凍結乾燥される。
【0081】
固化していく分散系を機械的に撹拌すると、ナノファイバーは、確実にランダムに配向し、ナノファイバーの端部の少なくとも一部が固化したコラーゲン・マトリックス表面から突出するようになる。撹拌を均一に加えて、均一に剛毛状の表面を提供することができる。または、撹拌を選択的に加えて、選択的に剛毛状の表面を提供することもできる。撹拌は、例えば、低周波音波処理またはトレーのロッキングによるか、あるいは固化していく分散系をかき混ぜて行うことができる。一例において、撹拌は、2kHzから20kHz未満の間の周波数、または3kHzから10kHzの間の周波数、好ましくは4kHzから8kHzの間の周波数における超音波振動によって行われる。撹拌は、分散系が十分に固化し終えて、ナノファイバーの少なくともいくらかがマトリックス表面から端部を突き出す方向にそれらを支持し、本発明による剛毛状の表面が形成されるまで行われる。コラーゲン・マトリックス表面上における剛毛状端部の突出は、1nmと1000nmとの間、または10nmと500nmもしくは100nmと300nmとの間で不均一であってもよい。剛毛の突出長さがどの程度であっても、表面に付着したナノファイバーに比べて改善された耐荷重引張強度が提供される。突出は、マトリックス表面の上方に少なくとも平均長の0.1%から平均長の99%、マトリックス表面の上方に平均長の望ましく1%から90%、好ましくは10%から50%未満のナノファイバーの突出として定義することができる。
【0082】
結果として生じる剛毛状のスポンジは、2.0mmから6mm、好ましくは約3mmの厚さを持つことができる。ナノファイバーを含んだ分散系の密度およびリポフィリゼーション・サイクルが、スポンジの密度および細孔径を決定づける。剛毛状のコラーゲン・マトリックスは、増殖組織の浸潤を可能にする十分なサイズおよび量の細孔を有する。細孔サイズは、10μmから500μm、好ましくは50μmから150μmに及ぶことができ、表面細孔は、断面(内部)細孔より小さい。
【0083】
本発明による膜は、0.1から10%固体(w:v)コラーゲン濃度、および0.005から0.5%(コラーゲン固体に対するw:w)の、グリセリンのような、適切な生体適合性の可塑剤を持つ、コラーゲンを含んだナノファイバーの分散系をキャストすることによって提供することができる。可塑剤の濃度は、約0.1%、コラーゲンの濃度は、約1%、好ましくは0.75%とすることができ、ナノファイバーの濃度は、0.01%から50%、望ましくは0.1%から10%、好ましくは1%から5%とすることができる。0.05から2.0mm、好ましくは約0.5mmの厚さを持つ膜を提供するために、ある体積の分散系が適切なノンスティック容器に注がれて蒸発される。熱または適切な架橋用化学剤を用いて、フィルムを架橋することができる。
【0084】
別の方法において、コラーゲン・スポンジもしくは膜は、ナノファイバーを含む乳酸から得られたコラーゲン・ファイバーからキャストされる。コラーゲン・ファイバーは、ウイルス、およびアルカリ処理された牛腱スライスのようなプリオンのないコラーゲン供給源を乳酸水溶液中に分散させること、該分散系を均質化すること、均質化された乳酸分散系を濾過すること、およびpHを約4.6〜4.9に調整するのに十分な水酸化アンモニウム水溶液の添加によって均質化された乳酸分散系からコラーゲン・ファイバーを沈殿させることを備えるプロセスによって製造される。
【0085】
コラーゲン・スポンジおよび積層フィルムは、コラーゲン・フィルムをキャストすること;該フィルムを乾燥させること;乾燥したフィルム上に、ナノファイバーを含んだコラーゲン・スラリーをキャストすること;スラリー/フィルムの組み合わせを凍結乾燥すること;および凍結乾燥された積層生成物を約25℃で約90分間(好ましくは9.6%のホルムアルデヒド濃度を有する)ホルムアルデヒド水溶液からの蒸気に曝露することによって架橋すること;それに続く約1時間の強制換気、によって調製することができる。
【0086】
一旦植え込まれると、コラーゲン・スポンジは、マクロファージによる細胞介在性の分解を通じて、4から12週間にわたってリソーブションを受ける。コラーゲンは、初期の類骨形成の間に細胞付着に有利な表面を提供することができる。それが、次にリソーブションを受ける。吸収性のコラーゲン・スポンジのようなコラーゲン・マトリックスは、多くの生物剤にとって理想的なキャリアのすべての特性を有し、rhBMP−2を含めて骨形成物質のすべてのタイプを担うのに特に適する。一実施形態において、骨形成物質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11とすることができる。
【0087】
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される真空パッケージ容器をINFUSE(登録商標)Bone Graftデバイス(Medtronic Sofamor Danek,Memphis,Tenn)と併せて使用することを含み、真空注入型Packake(VIP)医療用容器内に配置されたBone Graft/LT−CAGE(登録商標)Lumbar Tapered Fusion Device(Medtronic Sofamor Danek,Memphis,Tenn)を含むことができる。INFUSE(登録商標)デバイスは、2つの部分を備える:(1)骨の治癒を促進する遺伝子操作されたヒトタンパク質(rhBMP−2);および
(2)上述のように、BMPを担う乳牛(ウシ)のコラーゲンでできた吸収性コラーゲン・スポンジ・スキャフォールド。
【0088】
なおさらなる実施形態において、真空パッケージは、単独かまたは多孔質基材と組み合わせて中に配置された金属プレート、ピン、ロッド、ワイヤ、ねじ、およびGraft/LT−CAGE(登録商標)または任意の他の適切な構造要素を含む機械デバイスのような、他の品目を含むこともできる。
【0089】
フリーズドライ(凍結乾燥)された吸収剤マトリックスのような多孔質基材は、水和することが難しい可能性があり、従来の「浸漬」法を用いて多孔質基材を水和するのに時間を要するために、手術室(OR:operating room)では、往々にして効果のない水和が行われる。本明細書に開示される医療用容器は、多孔質基材を迅速に再水和して基材の脆性を低減し、生体成分および細胞を効果的かつ効率的な仕方で多孔質基材に送達するための新規な方法を実現する。本容器は、基材の細孔から空気を排気することによって、脱水された多孔質基材を極めて強い真空下でシールする。流体が注入される間に、真空が流体を多孔質基材中に引き込み、迅速に細孔を満たして挿入物を再水和する。
【実施例】
【0090】
実験
次の例は、医療用挿入物、ならびに医療用挿入物を水和して生体成分を播種するための方法およびシステムを教示する。これらの例は、例示的であるに過ぎず、本明細書に開示される本発明の範囲を限定することは意図されない。以下に記載される処理方法は、当業者によく知られた経験的技術を用いて最適化することができる。そのうえ、本明細書に開示される本発明のすべての範囲を実行するために、当業者は次の例に記載される教示を利用することができるであろう。
【0091】
実験1
既知の濃度のrhBMP−2と複数のACSスポンジを含んだ水溶液とを用いて実験が行われた。滴下(浸漬)法か、または真空注入型パッケージ(VIP:Vacuum Infused Packaging)によるかいずれかを用いて、キャリア1cc当たり150μgのrhBMP−2(Infuse(登録商標)、Medtronic,Inc.,Memphis,TN)が吸収性のコラーゲン・スポンジ(ACS,Medtronic、Inc)中に送達された。滴下法で付けたrhBMP−2が15分間浸漬されたのに対して、VIPサンプルは、結合のために1分が与えられたに過ぎなかった。未結合のrhBMP−2は、37℃で1時間、オービタルシェーカー上の過剰な生理食塩水中に置くことによってACSスポンジから洗い落とされた。1時間のリンス後に、ACSサンプルに結合したrhBMP−2量を測定するために、rhBMP−2 ELISAキット(Leinco Technologies,Inc.,St.Louis,MO)が用いられた。次に、一元配置分散分析(p<0.05)、および多重比較のためのTukey’s post−hoc honest significant difference testを用いてデータが分析された。
【0092】
滴下による15分の結合時間後のACSへのrhBMP−2結合量が、1分のVIP注入時間後のACSと対比して図6に示される。いくつかのACSスポンジは、rhBMP−2溶液に浸漬(DRIP)され、他のACSスポンジは、真空シール・パッケージ内で(同じrhBMP−2溶液を用いて)注入された。図6からわかるように、VIP注入されたACSは、浸漬されたACSに割り当てた15分に比べて実質的に短縮された1分に過ぎない結合時間であっても、15分浸漬された(DRIP)ACSと比較して、統計的により多いrhBMP−2の結合を示した(p<0.0035)。これらの驚くべき意外な結果は、VIPがACS材料へのrhBMP−2の結合能力を高めることを示唆する。特定の理論に束縛されることなく、VIPは、ACS内のより多数のコラーゲン結合部位にrhBMP−2を晒すことによってより多くの結合を促進することから、VIPを用いるとrhBMP−2が従来の浸漬法より良好にACSに結合するものと考えられる。
【0093】
実験2
前述の「驚くべき意外な」結果がACSスポンジに固有ではないことをさらに検証するために、ACSスポンジの代わりに同種移植骨組織を用いて、同様の実験が行われた。滴下法か、または真空注入型パッケージ(VIP)によるかいずれかを用いて、キャリア1cc当たり150μgのrhBMP−2(Infuse(登録商標)、Medtronic,Inc.,Memphis,TN)が、複数の同種移植骨組織サンプルに送達された。滴下法で付けたrhBMP−2が15分間浸漬されたのに対して、VIPサンプルは、結合のために1分が与えられた過ぎなかった。未結合のrhBMP−2は、37℃で1時間、オービタルシェーカー上の過剰な生理食塩水中に置くことによって同種移植骨組織サンプルから洗い落とされた。1時間のリンス後に、同種移植骨組織サンプルに結合されたrhBMP−2量を測定するために、rhBMP−2 ELISAキット(Leinco Technologies,Inc.,St.Louis,MO)が用いられた。次に、一元配置分散分析(p<0.05)、および多重比較のためのTukey’s post−hoc honest significant difference testを用いてデータが分析された。
【0094】
図7は、滴下による15分の結合時間後の同種移植骨組織サンプルへの相対的なrhBMP−2結合量を、1分のVIP注入時間を有する骨サンプルと対比して示す。図7からわかるように、VIP注入された同種移植骨サンプルは、浸漬された骨サンプルに割り当てた15分に比べて実質的に短縮された1分に過ぎない結合時間であっても、15分浸漬された(DRIP)同種移植骨サンプルと比較して、統計的により多いrhBMP−2の結合を示した。これらの驚くべき意外な結果は、ACSスポンジだけでなく複数の吸収剤マトリックス材料においても、VIPがrhBMP−2の結合能力も高めることをさらに示唆する。
【0095】
一実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15分未満で、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの50%超の結合を提供する。他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2分未満で、好ましくは注入から1分以内に、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの50%超の結合を提供する。
【0096】
他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から15分未満で、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの75%超の結合を提供する。他の実施形態において、本医療用挿入物真空注入型パッケージ容器システムは、注入から14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3または2分未満で、好ましくは注入から1分以内に、生体成分の生体吸収性吸収剤マトリックスへの75%超の結合を提供する。
【0097】
VIP環境においてrhBMP−2とACSとの結合が増加する利点は、即効性があって確認が可能なことである。rhBMP−2のACSへの強い結合は、rhBMP−2が、吸収剤マトリックス移植片から患者体内の周辺組織中に時期尚早に沈殿することを軽減するので極めて望ましい。先に議論されたように、BMPの時期尚早もしくは過剰な沈殿は、筋組織における異所性骨成長を促進することが知られており、頸椎領域の挿入物が関与するより重篤な事例では、異所性骨成長が対象の気管を完全に包囲して気道を遮断し、窒息を引き起こすことが知られている。
【0098】
詳細な記載および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示し、例示的であって制限を加えるものではないことが理解されるべきである。本発明の精神から逸脱することなく、その範囲内で多くの変更および修正を加えることができ、本発明は、すべてのかかる変更を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨形成物質を多孔質基材中に添着するためのシステムであって、前記システムは、
入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備える前記容器を備え、
前記入力ポートは、前記骨形成物質を受け入れるように構成され;
前記基材キャビティは、前記入力ポートと通じており、陰圧下に維持された前記多孔質基材を持ち;そして
容器容積は、前記多孔質基材体積と実質的に同じである、
システム。
【請求項2】
前記骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記骨形成物質は、組換え型ヒト骨形成タンパク質である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記組換え型ヒト骨形成タンパク質は、rhBMP−2である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するための容器であって、前記容器は、
陰圧下に維持された内部キャビティであって、生体液を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および前記再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを備える、前記内部キャビティ;ならびに
前記受け入れチャンバと前記貯蔵チャンバとを連結する複数のチャンネルを備え、
前記複数のチャンネルは、前記受け入れチャンバが前記生体液を受け入れるとの実質的に同じ時間に、前記生体液の分布を前記再吸収性骨伝導性マトリックスの縦方向の長さに沿って分散させるように構成され;前記骨伝導性マトリックスは、生体吸収性吸収剤マトリックスを備える、
容器。
【請求項11】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、コラーゲン・マトリックスを備える、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項11に記載の容器。
【請求項14】
前記生体液は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質を備える、請求項10に記載の容器。
【請求項15】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記生体液は、rh−BMP2を備える、請求項14に記載の容器。
【請求項17】
医療用挿入物を必要とする個体中に導入する前に、生体成分を迅速に医療用挿入物に結合させる方法であって、前記方法は、
容器を提供する工程であって;前記容器は、陰圧下に維持された内部キャビティを備え、前記内部キャビティは、生体成分を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および医療用挿入物を貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを備え;前記医療用挿入物は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;複数のチャンネルが前記受け入れチャンバと前記貯蔵チャンバとを連結し、前記複数のチャンネルは、前記受け入れチャンバが前記生体液を受け入れるのと実質的に同じ時間に、前記生体成分の分布を前記医療用挿入物の縦方向の長さに沿って分散させるように構成される、工程;および
生体成分を前記容器の前記受け入れチャンバ中に導入する工程であって;前記生体成分は、前記挿入物に実質的に結合され;前記実質的な結合は、前記生体成分が導入された後5分間より短い時間で達成される、工程
を備える、方法。
【請求項18】
前記生体成分の前記挿入物への実質的な結合は、2分間より短い時間で達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
実質的な結合は、1分間より短い時間で達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生体成分は、50%超が前記挿入物に結合される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記生体成分は、75%超が前記挿入物に結合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記結合は、およそ1分間で達成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備えるタイプIコラーゲンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記生体成分は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記挿入物は、骨移植片である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
骨形成物質を多孔質基材上に播種する方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の多孔質基材を提供する工程であって、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである、工程;および
骨形成物質を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記多孔質基材中に導入する工程
を備え、
前記骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)骨成長剤からなる群から選択される
方法。
【請求項29】
前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスであり、前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記精製されたコラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
生物剤の医療用挿入物への結合を増大させる方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の脱水された医療用挿入物を提供する工程であって;
前記容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;前記吸収剤マトリックスは、複数の細孔と前記吸収剤マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを備える、工程;および
生体液を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記脱水された医療用挿入物に導入する工程であって;前記容器中の前記陰圧は、前記細孔中に前記生体液を押し込む圧力差を生み出し、それによって前記生物剤の前記挿入物への前記結合を増大させる、工程
を備える、方法。
【請求項34】
前記医療用挿入物は、移植片である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記移植片は、同種移植片または異種移植片である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記移植片は、骨移植片である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記移植片は、タンパク質、カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記生物剤は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
骨誘導性薬剤の骨移植片からの移動を軽減する方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の骨移植片を提供する工程であって、前記容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;前記吸収剤マトリックスは、複数の細孔と前記マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを備える、工程;および
少なくとも1つの骨誘導性薬剤を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記骨移植片に導入する工程であって、前記容器中の前記陰圧は、前記骨誘導性薬剤を強く前記移植片に結合させる圧力差を生み出す、工程;および
前記移植片を必要とする個体中に前記移植片を挿入する工程であって、前記骨誘導性薬剤は、実質的に前記多孔質基材内に留まる、工程
を備える、方法。
【請求項41】
生体吸収性吸収剤マトリックス上における生体液の均一分布を向上させる方法であって、前記方法は、
入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備える前記容器を提供する工程であって、
前記入力ポートは、前記生体物質を受け入れるように構成され;
前記基材キャビティは、前記入力ポートと通じており、陰圧下に維持された前記生体吸収性吸収剤マトリックスを持ち;
容器容積は、前記吸収剤マトリックスの体積と実質的に同じである、工程、および
生体液を前記入力ポート中に導入する工程、および
前記陰圧から圧力差を作り出す工程;それによって前記生体吸収性マトリックスの複数の細孔中に前記溶液を押し込む工程
を備える、方法。
【請求項1】
骨形成物質を多孔質基材中に添着するためのシステムであって、前記システムは、
入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備える前記容器を備え、
前記入力ポートは、前記骨形成物質を受け入れるように構成され;
前記基材キャビティは、前記入力ポートと通じており、陰圧下に維持された前記多孔質基材を持ち;そして
容器容積は、前記多孔質基材体積と実質的に同じである、
システム。
【請求項2】
前記骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記骨形成物質は、組換え型ヒト骨形成タンパク質である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記組換え型ヒト骨形成タンパク質は、rhBMP−2である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスである、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスを備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するための容器であって、前記容器は、
陰圧下に維持された内部キャビティであって、生体液を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および前記再吸収性骨伝導性マトリックスを貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを備える、前記内部キャビティ;ならびに
前記受け入れチャンバと前記貯蔵チャンバとを連結する複数のチャンネルを備え、
前記複数のチャンネルは、前記受け入れチャンバが前記生体液を受け入れるとの実質的に同じ時間に、前記生体液の分布を前記再吸収性骨伝導性マトリックスの縦方向の長さに沿って分散させるように構成され;前記骨伝導性マトリックスは、生体吸収性吸収剤マトリックスを備える、
容器。
【請求項11】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、コラーゲン・マトリックスを備える、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の容器。
【請求項13】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項11に記載の容器。
【請求項14】
前記生体液は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質を備える、請求項10に記載の容器。
【請求項15】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項14に記載の容器。
【請求項16】
前記生体液は、rh−BMP2を備える、請求項14に記載の容器。
【請求項17】
医療用挿入物を必要とする個体中に導入する前に、生体成分を迅速に医療用挿入物に結合させる方法であって、前記方法は、
容器を提供する工程であって;前記容器は、陰圧下に維持された内部キャビティを備え、前記内部キャビティは、生体成分を受け入れるように構成された受け入れチャンバ、および医療用挿入物を貯蔵するように構成された貯蔵チャンバを備え;前記医療用挿入物は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;複数のチャンネルが前記受け入れチャンバと前記貯蔵チャンバとを連結し、前記複数のチャンネルは、前記受け入れチャンバが前記生体液を受け入れるのと実質的に同じ時間に、前記生体成分の分布を前記医療用挿入物の縦方向の長さに沿って分散させるように構成される、工程;および
生体成分を前記容器の前記受け入れチャンバ中に導入する工程であって;前記生体成分は、前記挿入物に実質的に結合され;前記実質的な結合は、前記生体成分が導入された後5分間より短い時間で達成される、工程
を備える、方法。
【請求項18】
前記生体成分の前記挿入物への実質的な結合は、2分間より短い時間で達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
実質的な結合は、1分間より短い時間で達成される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記生体成分は、50%超が前記挿入物に結合される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記生体成分は、75%超が前記挿入物に結合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記結合は、およそ1分間で達成される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスである、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記コラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備えるタイプIコラーゲンを備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記生体成分は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質を備える、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記挿入物は、骨移植片である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
骨形成物質を多孔質基材上に播種する方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の多孔質基材を提供する工程であって、容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じである、工程;および
骨形成物質を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記多孔質基材中に導入する工程
を備え、
前記骨形成物質は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)骨成長剤からなる群から選択される
方法。
【請求項29】
前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記生体吸収性吸収剤マトリックスは、精製されたコラーゲン・マトリックスであり、前記コラーゲンは、タイプIコラーゲン、タイプIIコラーゲン、タイプIVコラーゲン、細胞収縮型コラーゲン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記精製されたコラーゲン・マトリックスは、100マイクロメートル3のコラーゲン・マトリックス体積当たり10ナノファイバーのナノファイバー密度を備える、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
生物剤の医療用挿入物への結合を増大させる方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の脱水された医療用挿入物を提供する工程であって;
前記容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;前記吸収剤マトリックスは、複数の細孔と前記吸収剤マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを備える、工程;および
生体液を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記脱水された医療用挿入物に導入する工程であって;前記容器中の前記陰圧は、前記細孔中に前記生体液を押し込む圧力差を生み出し、それによって前記生物剤の前記挿入物への前記結合を増大させる、工程
を備える、方法。
【請求項34】
前記医療用挿入物は、移植片である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記移植片は、同種移植片または異種移植片である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記移植片は、骨移植片である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記移植片は、タンパク質、カルシウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される化合物をさらに備える、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記生物剤は、骨形成タンパク質(BMP)、形質転換増殖因子β(TGF−β)、増殖分化因子(GDF)、および軟骨由来の形態形成タンパク質(CDMP)からなる群から選択される骨形成物質である、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記骨形成タンパク質は、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9、BMP−10、およびBMP−11からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
骨誘導性薬剤の骨移植片からの移動を軽減する方法であって、前記方法は、
陰圧下の容器中の骨移植片を提供する工程であって、前記容器容積は、多孔質基材体積と実質的に同じであり、前記多孔質基材は、生体吸収性吸収剤マトリックスを備え;前記吸収剤マトリックスは、複数の細孔と前記マトリックスの構造内に分散された実質的に硬いナノファイバーとを備える、工程;および
少なくとも1つの骨誘導性薬剤を、前記多孔質基材体積を超えない体積で、前記骨移植片に導入する工程であって、前記容器中の前記陰圧は、前記骨誘導性薬剤を強く前記移植片に結合させる圧力差を生み出す、工程;および
前記移植片を必要とする個体中に前記移植片を挿入する工程であって、前記骨誘導性薬剤は、実質的に前記多孔質基材内に留まる、工程
を備える、方法。
【請求項41】
生体吸収性吸収剤マトリックス上における生体液の均一分布を向上させる方法であって、前記方法は、
入力ポート、少なくとも1つの基材キャビティ、ならびに容器の内表面を規定する上壁、側壁および底壁を備える前記容器を提供する工程であって、
前記入力ポートは、前記生体物質を受け入れるように構成され;
前記基材キャビティは、前記入力ポートと通じており、陰圧下に維持された前記生体吸収性吸収剤マトリックスを持ち;
容器容積は、前記吸収剤マトリックスの体積と実質的に同じである、工程、および
生体液を前記入力ポート中に導入する工程、および
前記陰圧から圧力差を作り出す工程;それによって前記生体吸収性マトリックスの複数の細孔中に前記溶液を押し込む工程
を備える、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2012−505704(P2012−505704A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532051(P2011−532051)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079875
【国際公開番号】WO2010/044777
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507280675)アルファテック スパイン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079875
【国際公開番号】WO2010/044777
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507280675)アルファテック スパイン, インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】
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