医療用活栓
【課題】 分岐流路内空間のデッドスペースを減少させて液体や気泡の滞留を防止して、作業性を十分に良好にすることのできる医療用活栓を提供すること。
【解決手段】 弁体20に、第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されるとともに、隔壁20aによって第一溝部21と第二溝部22とが弁体20内で連通することを遮断した。このため、主流路の流れを混注路である第三分岐流路13aにまで及ぼすことができ、第三分岐流路13a内のデッドスペースを減少することができる。
【解決手段】 弁体20に、第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されるとともに、隔壁20aによって第一溝部21と第二溝部22とが弁体20内で連通することを遮断した。このため、主流路の流れを混注路である第三分岐流路13aにまで及ぼすことができ、第三分岐流路13a内のデッドスペースを減少することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用、特に輸液、輸血、人口透析などのために用いられる複数の医療用チューブに取り付けられて、医療用チューブの連通および遮断を切換える医療用活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用活栓は、医療用、特に輸液、輸血、人口透析などに用いられる複数の医療用チューブに取り付けられて、それぞれの医療用チューブの連通や遮断を切換えるものである。このような医療用活栓として代表的な三方活栓は、三本の医療用チューブが取り付けられ、各医療用チューブの連通・遮断を切換えるものである。一般的に、三方活栓は、二つの流入口と一つの流出口とを持ち、流入口と流出口との連通・遮断を切換えるために利用される。
【0003】
三方活栓は、主流路に混注路を合流させて、主流路中を流れる薬液などの液体に他の薬液などの液体を一時的または常時に混注路から混入させたりする場合などに用いられる。この場合、三方活栓に形成される一方の流入口と流出口とを直線的に形成して主流路を形成し、他方の流入口を主流路に対して直角にまたは斜めから交わるように設け、この他方の流入口を混注路として利用するものもある。
【0004】
三方活栓は、一般的に、本体と栓体とを備えて構成される。本体は、中央に外形が円筒状の空間を持った筒状部と、この筒状部の外周面に90度の角度間隔で離間して取り付けられた3本の分岐管部とを備えて構成される。栓体は、本体の筒状部の中央に形成された円筒状空間内に回動可能に装着された円柱状の弁体と、この弁体の端部に連結して弁体を円筒状空間内で回動させるための把持部とを備えて構成される。また、弁体には、本体の各分岐管内に形成される分岐流路を他の分岐流路と連通可能にするための連通流路が形成されている。そして、弁体が円筒状空間内で回動することによって、弁体に形成された連通流路を介して各分岐流路の連通や遮断が行われる。各分岐管には、それぞれ医療用チューブが取り付けられているので、この弁体の回動により、医療用チューブの連通・遮断の切換えが行われる。
【0005】
このような三方活栓において、近年、作業性などを考慮した様々な工夫が提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術は、三方活栓の弁体に形成された連通流路を円弧状の溝とするとともに、この円弧状の溝に90度間隔で三つの縦溝を設け、その三つの縦溝と本体の分岐流路とを連通可能としたものが提案されている。特許文献1によれば、連通流路を円弧状溝とすることによって、弁体内で液体や気体の滞留が発生する内部空間であるデッドスペースを減らし、内部を流れる液体の流通を円滑にすることができると記載されている。また、分岐流路が直接円弧状の溝に連通せずに、円弧状の溝につながる縦溝に連結する構成を採っているため、弁体の僅かな回動動作で流路を遮断状態とすることができて、作業性が向上すると記載されている。
【特許文献1】特開2003―159336号公報
【発明の開示】
【0006】
ところで、三方活栓を用いて主流路の途中に混注路を接続し、混注路から薬液等を主流路に混入させるような場合、この混注路を形成する流路内空間は、主流路の流れに関与しない空間となり、デッドスペースとなる。したがって、この部分に混注路からの液が滞留してしまうという問題がある。また、混注路を形成する流路内空間に気泡が滞留するという問題もある。このような液体や気泡の滞留は、作業性の観点などから、極力少なくすることが望ましい。
【0007】
上記特許文献1に記載の三方活栓は、弁体に形成される連通流路を円弧状の溝とすることで、弁体中でのデッドスペースは減少させることができるものの、混注路を形成する分岐流路内空間のデッドスペースまで減少することができるとは限らない。したがって、この部分に薬液や気泡などが滞留するおそれがある。本発明はこのような事情に鑑みなされたのもので、その目的は、本体側の分岐流路内空間のデッドスペースを減少させて液体や気泡の滞留を十分に防止し得る医療用活栓を提供することにある。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用活栓の特徴は、内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、前記弁体には、前記第一分岐流路および前記第三分岐流路に連通可能な第一連通流路と、前記第一連通流路が前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通しているとともに前記第二分岐流路との連通が遮断されているときに、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通可能であるとともに前記第一分岐流路との連通が遮断される状態を採り得る第二連通流路とが形成され、且つ、前記第一連通流路と前記第二連通流路とは、前記弁体内での連通が遮断されているものとすることである。
【0009】
前述したように構成した本発明の医療用活栓によれば、弁体に形成される第一連通流路が本体に形成される第一分岐流路と第三分岐流路との双方に連通し、なおかつ第二分岐流路とは連通していない場合に、第一分岐流路から薬液などの液体を送り込むと、液体は、第一分岐流路から第一連通流路に流れる。このとき、第一連通流路は第三分岐流路に連通し、第二分岐流路には連通していないため、第一連通流路内の液体は、一旦、第三分岐流路に送り込まれる。
【0010】
一方、第一連通流路が第一分岐流路と第三分岐流路との双方に連通し、且つ、第二分岐流路に連通していないときには、第二連通流路は第二分岐流路と第三分岐流路との双方に連通され、且つ、第一分岐流路との連通が遮断されている。このため、第一連通流路から第三分岐流路に流れた液体は、第三分岐流路から第二連通流路に流れることができる。このようにして第二連通流路に流れた液体は、さらに第二分岐流路に流れる。このとき、第二連通流路は第一分岐流路との連通が遮断されているので、第一分岐流路内の液体が直接第二連通流路に流れたり、逆に第二連通流路の液体が第一分岐流路に逆流したりすることはない。
【0011】
したがって、第一分岐流路からの液体は、第一分岐流路−第一連通流路−第三分岐流路―第二連通流路−第二分岐流路、といったルートを辿り、最終的に第二分岐流路に流れる。この一連の流路を主流路とした場合、第三分岐流路は主流路に途中から合流する混注路となるとともに、主流路の流れのルートの一部を構成する。このように、主流路の流れのルートを混注路となる第三分岐流路にまで及ぼすことによって、混注路である第三分岐流路内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路から送られる液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路内での液体の残留や滞留が減少する。
【0012】
さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、プライミングなどで気泡が薬液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。なお、「プライミング」とは、事前処理のことであり、本発明に関していえば、医療用チューブを使用して実際に人体などに液体を送る前に、この医療用チューブ内の流路空間を、送るべき液体で充填しておく処理のことである。
【0013】
上記発明において、「弁体内での連通が遮断されている」とは、弁体内に形成された第一連通流路と第二連通流路とが、第一分岐流路、第二分岐流路、第三分岐流路を介さずに連通されていないということである。例えば、第一連通流路と第二連通流路とが、弁体内に形成されたバイパス流路などで、各分岐流路を経由せずに連通できる場合は、弁体内での連通が遮断されているとはいわない。一方、後述する実施形態で詳細に説明するように、第一連通流路がいずれかの分岐流路を一旦経由してから第二連通流路に流れるような場合には、弁体内での連通が遮断されているといえる。
【0014】
また、前記第三分岐流路の前記第三開口部とは反対側の端部には、常閉型の弁部材などが取り付けられて、通常時はこの弁部材などで第三分岐流路が閉塞されているものであるのがよい。三方活栓には、混注を行わない場合には混注路となる流路が外部に連通している開放型の三方活栓と、混注を行わない場合には混注路となる流路が閉塞されて外部と遮断されている閉鎖型の三方活栓がある。本発明においては、主流路のみの流れにおいても混注路となる第三分岐流路を経由するため、開放型の三方活栓においては、第三分岐流路(混注路)から外部に液体が漏れ出して、液体の輸送がうまくできなくなるおそれがある。よって、閉鎖系の三方活栓、すなわち、第三分岐流路が常閉型の弁部材で通常時は閉塞されている三方活栓を本発明に適用すれば、上記したおそれがなく、確実に液体の輸送を行うことができる。
【0015】
また、前記第一分岐管と、前記第二分岐管と、前記第三分岐管は、前記筒状部の周方向にそれぞれ90度間隔で取り付けられているものであるとよい。このように取り付けられていれば、第一分岐管と第二分岐管とを水平状態に配置したときに、第三分岐管を上方向に向かせることができ、第三分岐管にシリンジなどを差し込みやすくすることができる。
【0016】
また、前記弁体には、前記第一連通流路と前記第二連通流路とが弁体内で連通するのを妨げる隔壁部が形成されているものであるとよい。このような隔壁部によって、第一連通流路と第二連通流路との弁体内での連通が遮断されるため、第一連通流路からの液体は、第三分岐流路に流れ込まざるを得ない。よって、簡便な構成によって、第一連通流路―第三分岐流路―第二連通流路、といったルートを形成することができる。
【0017】
また、前記第一連通流路は、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部であり、前記第二連通流路は、前記第一溝部に並行になるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部であるとよい。第一連通流路および第二連通流路を、弁体の外周に溝部として形成することにより、例えば弁体を貫通するような流路を設けるなどの複雑な加工をすることなく、簡単な加工によって、第一連通流路および第二連通流路を形成することができる。
【0018】
また、本発明に係る医療用活栓の他の特徴は、内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、前記弁体には、前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部と、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記第一溝部と並行に、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部と、前記第一溝部と前記第二溝部との間に形成され、前記第一溝部と前記第二溝部とが前記弁体内で連通するのを遮断する隔壁部とが形成されているものとすることである。
【0019】
このように構成した本発明の医療用活栓によれば、弁体に形成される第一溝部によって、第一分岐流路と第三分岐流路とが連通される。また、弁体に形成される第二溝部によって、第二分岐流路と第三分岐流路とが連通される。ここで、第一溝部と第二溝部とは、弁体内での連通が、隔壁部によって遮断されている。したがって、第一溝部が第一分岐流路と第三分岐流路とに連通し、なおかつ第二分岐流路と連通していない状態のときに、第二溝部が第二分岐流路と第三分岐流路とに連通し、なおかつ第一分岐流路と連通していない状態とした場合には、第一分岐流路から送り込まれた薬液などの液体は、第一分岐流路から第一溝部に流れ、第一溝部から第三分岐流路に流れ、さらに第三分岐流路から第二溝部に流れ、最終的に第二分岐流路に流れる。
【0020】
したがって、第一分岐流路からの液体は、第一分岐流路−第一溝部−第三分岐流路―第二溝部−第二分岐流路、といったルートを辿り、最終的に第二分岐流路に流れる。この一連の流路を主流路とした場合、第三分岐流路は主流路に途中から合流する混注路となるとともに、主流路の流れのルートの一部を構成する。このように、主流路の流れのルートを混注路となる第三分岐流路にまで及ぼすことによって、第三分岐流路内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路から送られる液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路内での液体の残留や滞留が減少する。さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、プライミングなどで気泡が輸液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。
【0021】
また、第一溝部および第二溝部の少なくともいずれか一方には、弁体の軸方向に延びて形成される軸方向溝部が連結されているとよい。軸方向溝部を形成することによって、各分岐流路から流入される液体を確実に第一溝部および/または第二溝部に流し込むことができる。特に、第三分岐流路を混注路として、この第三分岐流路から液体を滴下または流下するような場合に、第三分岐流路から滴下または流下される液体の流路と弁体に形成された溝部の軸方向位置がずれていると、十分に液体が溝部に流れ込まない場合が考えられる。この点、本発明によれば、軸方向溝部によって軸方向の広い位置で溝を形成することにより、より確実に液体を溝部に流し込むことができる。
【0022】
さらにこのような構成によれば、軸方向溝の形成により、第一溝部と第二溝部とを、弁体の軸方向位置を一致させるように設けることも可能となる。このように両溝部が形成されれば、第一溝部に連通する第一分岐流路と、第二溝部に連通する第二分岐流路のそれぞれの流路軸を一致させることができ、第一分岐流路と第二分岐流路とを直線上に形成することができる。
【0023】
また、本体の筒状空間に装着される弁体の回動中心は、前記第一開口部の中心と前記第二開口部の中心を結ぶ直線からオフセットされているのがよい。この場合、第一開口部および第二開口部と弁体に形成される第一連通流路(第一溝部)および第二連通流路(第二溝部)との配置状態は、180度回転する前と後では異なった配置状態とすることができる。これを利用して、弁体を回動させることによって、様々な流路の連通状態を実現することができる。例えば、弁体がある回動位置では第一および第二連通流路を介して第一分岐流路と第二分岐流路を連通している(例えば、後述の実施形態で説明する図12(a)の状態)のに対し、弁体をその位置から180度回動させると、一方の連通路のみで第一分岐流路と第二分岐流路とを連通させる(例えば、後述の実施形態で説明する図14(a)の状態)ことができる。
【0024】
また、前記第三分岐流路内には、前記隔壁部に液密的に当接可能に配置されるとともに、前記隔壁部から前記第三分岐流路の流路軸方向に延設された第二隔壁部が設けられているとよい。上記第二隔壁部を設けることによって、第一溝部と第二溝部とが、隔壁部と第二隔壁部で仕切られることになる。つまり、第二隔壁部によって、隔壁部を高さ方向に嵩上げしている。このため、第一溝部内の液体が第二溝部内に流れ込むためには、隔壁部に加えて第二隔壁部をも乗り越えなければならない。ここで、第二隔壁部は、第三分岐流路の流路軸方向に延びて形成されているため、この第二隔壁部によって、第一溝部から第二溝部に流れ込むべき液体が第三分岐流路を通過する際の流路断面積が減少する。この流路断面積の減少により、第一溝部内から溢れ出る液体は、第三分岐流路のほぼ全ての流路断面を余すことなく通過して、第二溝部内に流れ込む。よって、確実に第三分岐流路での液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【0025】
なお、この場合には、第二隔壁部の延設方向の端面は、第三分岐流路の流路軸に対して垂直になるような平面として形成されていると、よりよい。このような場合には、第一溝部から溢れ出て第三分岐流路に流れる液体が、第二隔壁部の端面方向に均一に溢れ出るので、第三分岐流路内にも均一に流れる。このため、より確実に第三分岐流路での液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る医療用活栓の実施形態を図面を用いて詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る医療用活栓である三方活栓の平面図、図2は正面図、図3は図2におけるA方向矢視図である。図に示すように、三方活栓100は、本体10と、弁体20と、把持部30とを備えて構成される。弁体20と把持部30とは一体的に形成されており、弁体20は本体10内に装着される。
【0027】
図2に特によく示されるように、本体10は、筒状部15と、この筒状部15に取り付けられた3本の分岐管である第一分岐管11、第二分岐管12および第三分岐管13を備えている。なお、本体10の材質として、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)などが選択可能であるが、この限りでない。
【0028】
図4は、図2におけるB−B断面のうち、本体10のみの断面を示す図である。図4からわかるように、筒状部15は、その内周側に断面円形で外形が円筒状の円筒状空間15aが形成されており、概ね円筒形状を呈している。そして、筒状部15の図示右側には、第一分岐管11が連結されている。第一分岐管11は、内部に第一分岐流路11aが形成された管状の部分である。第一分岐流路11aの一端(図示右端)には第一外方開口部11bが外方に向けて形成され、他端(図示左端)側には第一内方開口部11cが形成されている。この第一内方開口部11cは、円筒状空間15aを形成する筒状部15の内壁15bに開口している。したがって、第一分岐流路11aは、第一内方開口部11cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0029】
また、筒状部15の図示上側からは、第三分岐管13が連結されている。第三分岐管13は、内部に第三分岐流路13aが形成された管状の部分である。第三分岐流路13aの一端(図示上端)には、第三外方開口部13bが外方に向けて形成され、他端(図示下端)には、第三内方開口部13cが筒状部15の内壁15bに開口して形成されている。したがって、第三分岐流路13aは、第三内方開口部13cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0030】
さらに、筒状部15の図示左側には、第二分岐管12が連結されている。第二分岐管12は、内部に第二分岐流路12aが形成された管状の部分であり、その一端(図示左端)には第二外方開口部12bが外方に向けて形成され、他端(図示右端)には、第二内方開口部12cが、筒状部15の内壁15bに開口している。したがって、第二分岐流路12aは、第二内方開口部12cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0031】
図4からわかるように、第一分岐管11、第二分岐管12および第三分岐管13は、それぞれ略90度の間隔で筒状部15に連結されている。第一分岐管11と第二分岐管12とは、筒状部15を挟んで対向して配置され、第一内方開口部11cと第二内方開口部12cとがほぼ対面する状態とされている。そして、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとは、共通となる流路軸L1―2を持つように形成されている。この流路軸L1−2は、第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線と同軸である。
【0032】
また、第三分岐管13は、筒状部15の周方向において第一、第二分岐流路11a,12aからそれぞれ90度の間隔を隔てた位置に配置されている。そして、第三分岐流路13aは、軸L1―2に対して直交するように形成されている。なお、筒状部15の内壁15bに開口する第一内方開口部11c、第二内方開口部12c、第三内方開口部13cは、それぞれ内壁15bの軸方向高さ位置を同じとし、かつ周方向に異なった位置に形成されている。
【0033】
第三分岐管13は、第一分岐管11および第二分岐管12よりも軸方向に短く形成されている。これは、第三分岐管13内の第三分岐流路13aの流路体積を小さくして、この部分におけるデッドスペースを小さくするために、このように短く形成される。また、第三分岐管13の内径は、第一分岐管11および第二分岐管12の内径よりも大きく形成されている。
【0034】
第三分岐管13内には、シール部材14が装着されている。このシール部材14は、合成ゴム材料などの弾性体が用いられ、第三分岐流路13aと外部との連通を遮断するためのものである。また、シール部材14には、スリット14aが形成されている。このスリット14aは、第三分岐管13にシリンジのルアー部などが差し込まれてルアー部から液体を送り込む際に、その差込口とされる。
【0035】
図5は、弁体20および把持部30の正面図、図6は図5を右方向から見た右側面図、図7は図5を左方向から見た左側面図、図8は斜視図である。これらの図に示すように、把持部30は、弁体20の端部に取り付けられている。弁体20は、略円柱状に形成されており、その外周に第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されている。把持部30は、弁体20の基端から径方向外方に伸びた三つの腕部(第一腕部31、第二腕部32、第三腕部33)を備える。各腕部は、弁体20の径方向に90度間隔で形成されており、3つの腕部で断面が略T字状となるようにされている。
【0036】
図9は、図5におけるC−C断面図に、同方向から見た把持部30を点線で加えたものであり、弁体20に形成された第一溝部21の断面形状を示す図である。図9からわかるように、第一溝部21は、弁体20の外周を周方向に略180度程度の範囲で鍵型状に切り欠いて形成されており、図において弁体20の外周の左上側から右下側の領域に開口している。また、図10は、図5におけるD−D断面図に、同方向から見た把持部30を点線で加えたものであり、弁体20に形成された第二溝部22の断面形状を示す図である。図10からわかるように、第二溝部22は、弁体20の外周を周方向に略120度程度の範囲で切り欠いて形成されており、図において弁体20の外周の左側から右上側の領域で、弁体20の外周に開口している。
【0037】
また、図8からわかるように、第二溝部22は、弁体20の周方向に切り欠かれている周方向溝部22aと、この周方向溝部22aの端部から軸方向に切り欠かれている軸方向溝部22bとを有している。第一溝部21と第二溝部22の周方向溝部22aとは、弁体20の周方向に並行に並んで形成されている。第二溝部22の軸方向溝部22bは、周方向溝部22aの端部から、第一溝部21側に回りこむように弁体20の軸方向に形成されている。そして、両溝部21,22の間に形成されている隔壁部20aによって、両溝部21,22は弁体20内では互いに連通することが妨げられている。
【0038】
また、図9からわかるように、把持部30の第一腕部31は、図において右側の方向、時計の針の方向で表せば、3時の方向に延びて形成されている。この3時の方向は、第一溝部21の図示右端側が開口している方向である。一方、図10からわかるように、把持部30の第二腕部32は、図において左側の方向、時計の針の方向で表せば、9時の方向に延びて形成されている。この9時の方向は、第二溝部22の図示左端側が開口している方向である。また、把持部30の第三腕部33は、図9、10において図示上方向、時計の針の方向で表せば、12時の方向に延びて形成されている。なお、弁体20および把持部30の材質として、ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)などが選択可能であるが、この限りでない。
【0039】
本実施形態における三方活栓100は、上記のように説明した弁体20が、本体10の筒状部15内に形成された円筒状空間15a内に液密的に嵌め込まれて使用される。このとき、弁体20は、本体10に形成される第一内方開口部11c、第二内方開口部12cおよび第三内方開口部13cが弁体20の第一溝部21および第二溝部22が形成されている部分の軸方向位置に対面するように、円筒状空間15a内に嵌めこまれる。
【0040】
また、図4に示すように、本体10の円筒状空間15aの中心Oは、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとの共通の流路軸L1―2よりも図において上側に位置している。円筒状空間15aに嵌め込まれる弁体20の回動中心は、円筒状空間15aの中心Oと一致するから、弁体20の回動中心は流路軸L1−2、つまり第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線に対して図示上方にオフセットして配設されていることになる。
【0041】
上記のように構成された本実施形態の三方活栓100は、実際の使用に際しては、図11に示すように、各分岐管に医療用チューブやシリンジが取り付けられて使用される。本実施形態においては、第一分岐管11および第二分岐管12には医療用チューブが取り付けられる。また、第三分岐管13には、シリンジが、そのルアー部をシール部材14のスリット14aに差し込んだ状態で取り付けられる。この場合において、第一分岐管11内の第一分岐流路11aから第二分岐管12内の第二分岐流路12aに流れる流路を主流路とする。また、第三分岐管13の第三分岐流路13aから流れる流路は、主流路の途中に合流され、主流路中に薬液を混注する混注路とする。よって、第一分岐流路11aが主流路の流入側、第二分岐流路12aが主流路の流出側、第三分岐流路13aが混注路の流入側のポートとなる。
【0042】
なお、第三分岐管13に取り付けられるシリンジのルアー部は、弁体20の第一溝部21が形成されている部分の軸方向位置に対面するように取り付けられる。したがって、ルアー部の直下に第一溝部21が開口していれば、ルアー部からの液体は第一溝部21に流れ込む。また、ルアー部の直下に第二溝部22の軸方向溝22bが開口していれば、この軸方向溝22bに流れ込む。
【0043】
次に、本実施形態に係る三方活栓100を使用した薬液の流れについて説明する。まず、第一分岐流路11a、第二分岐流路12aおよび第三分岐流路13aのいずれもが連通して、主流路の流れに混注路の流れが合流する状態について説明する。図12(a)および図12(b)は、このような状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第一分岐管11に沿って位置され、第二腕部32は第二分岐管12に沿って位置され、さらに第三腕部33が第三分岐管13に沿って位置されている。
【0044】
このような配置状態では、図12(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において左上側から右下側までの領域、時計の針の方向で表せば、おおよそ10時の方向から4時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。また、第一分岐流路11aは、図に示す状態では弁体20が配置される円筒状空間15aに図示右側から連通している。ここで、上述したように、弁体20の回動中心(図示点O)が流路軸L1−2に対して図において上方向にオフセットされているため、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時の方向から4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、弁体20に形成された第一溝部21が開口しているので、第一分岐流路11aは3時〜4時の方向から第一溝部21に連通することになる。
【0045】
また、第三分岐流路13aは、図に示す状態では円筒状空間15aに図示上側から連通し、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第一溝部21が開口しているので、第三分岐流路13aは、10時〜2時の方向から第一溝部21に連通することになる。したがって、この状態では、第一分岐流路11aは、第一溝部21を介して第三分岐流路13aに連通されていることになる。
【0046】
第二分岐流路12aは、図に示す状態では円筒状空間15aに図示左側から連通しているが、上述したように弁体20の回動中心Oは流路軸L1−2に対して図において上側にオフセットされているので、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。しかし、第一溝部21は、弁体20の図示左上側から右下側の領域、時計の針の方向で表せば、10時の方向から4時の方向までの領域でしか外方向に開口しておらず、8時〜9時の方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0047】
また、図12(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において左側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、9時の方向から1時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第二分岐流路12aは9時の方向から第二溝部22に連通することになる。
【0048】
また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第二溝部22が開口する部分がある。したがって、第三分岐流路13aは、10時〜1時の方向から第二溝部22に連通することになる。したがって、この状態では、第三分岐流路13aは、第二溝部22を介して第二分岐流路12aに連通されていることになる。
【0049】
一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。しかし、第二溝部22は、図において弁体20の左側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、9時の方向から1時の方向までの領域でしか開口しておらず、3時〜4時の方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0050】
上記の状態で、薬液を、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流す。すると、薬液は、医療用チューブから第一分岐管11内の第一分岐流路11aに流れる。そして、第一分岐流路11aから、弁体20に形成された第一溝部21に流れる。また、この状態では、第一溝部21は第三分岐流路13aにも連通しているので、薬液は第一溝部21から第三分岐流路13aに入る。
【0051】
第三分岐流路13aは、第二溝部22にも連通している。従って、第三分岐流路13aに入った薬液は、さらに第二溝部22に流れ込む。第二溝部22は、第二分岐流路12aにも連通しているため、第三分岐流路13aから第二溝部22に流れ込んだ薬液は、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐管12に接続された医療用チューブに送られる。このように、第一分岐流路11a−第一溝部21−第三分岐流路13a−第二溝部22−第二分岐流路12aのルートで流れる流れが主流路のルートとなる。
【0052】
上記説明したように、弁体20に形成された第一溝部21は、隔壁20aによって、弁体20内での第二溝部22との連通が妨げられている。したがって、第一分岐流路11aから第一溝部21に流れ込んだ薬液は、直接第二溝部22に流れ込むことができない。そのため、薬液は、第一溝部21から、一旦、第三分岐流路13aに流れ込み、この第三分岐流路13aを経由して第二溝部22に流れ込む。つまり、第三分岐流路13aも主流路の一部として利用される。
【0053】
従来は、主流路の流れに対し、混注路である第三分岐流路13a内の空間は、主流路の流れに関与しないデッドスペースとなって、薬液の滞留や気泡の滞留の原因となっていた。これに対し、本実施形態では、第三分岐流路13aの空間も主流路として利用されている。したがって、従来と比較して、デッドスペースを減少させることができ、気泡や薬液の滞留を減少させることができる。また、第三分岐流路13a内に気泡が滞留している場合には、主流路の流れによって気泡を押し流すこともできる。したがって、初期のプライミング操作時に、第三分岐流路13a中の気泡を押し流すことができ、別途気泡抜きの作業を行わなくてもよい。よって、作業性が良好となる。
【0054】
主流路に薬液が流れている状態で、第三分岐管から他の薬液を混注する場合には、シール部材14のスリット14aに差し込まれているシリンジのルアー部より液体を第三分岐流路13a内に送り込む。第三分岐流路13a内に送り込まれた薬液は、主流路の流れに合流し、主流路に乗って、第二溝部22、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに接続された医療用チューブに送られる。ここで、第三分岐流路13aは主流路のルートの一部とされているので、第三分岐流路13a内の薬液は主流路によって流され、そこで滞留することが防止される。
【0055】
次に、第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとを連通し、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとの連通を遮断して、第二分岐流路12aに混注路のみからの流れを供給する場合について説明する。図13(a)および図13(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第三分岐管13に沿って位置され、第三腕部33は第二分岐管12に沿って位置されている。この配置状態は、図12(a),(b)における把持部30の配置状態を、左方向(半時計回転方向)に90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22も、図12に示す状態から左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置となる。
【0056】
図13(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において左下側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、7時の方向から1時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第二内方開口部12c、13cの対面には、第一溝部21が開口している。したがって、第三分岐流路13aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通されていることとなっている。
【0057】
一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0058】
また、図13(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において下側から左上側までの領域、時計の針の方向で表せば、6時の方向から10時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。しかし、第二溝部22は、第一内方開口部11cおよび第三内方開口部13cが対面する方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0059】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。この第二内方開口部12cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第二分岐流路12aは、8時〜9時の方向から第二溝部22に連通することになる。しかし、第二溝部22は、上述したように第一分岐流路11aにも第三分岐流路13aにも連通していないので、この第二溝部22を介して第二分岐流路12aが他の分岐流路に連通することはない。
【0060】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流れる薬液は、第一分岐流路11aに流れるが、第一分岐流路11aは第一溝部21にも第二溝部22にも連通しておらず、弁体20の外周壁で閉塞されているので、その部分でせき止められる。一方、第三分岐流路13aに接続されたシリンジからの薬液は、まず第三分岐流路13aに入る。第三分岐流路13aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通しているので、薬液は、第三分岐流路13aから第一溝部21を経由して第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに接続された医療用チューブに送られる。
【0061】
このように、図13(a),(b)に示す状態においては、第一分岐流路11aからの主流路の流れを遮断し、混注路である第三分岐流路13aからの流れを第二分岐流路12aに流したいときに、このような状態とされる。
【0062】
次に、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとを連通するとともに第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとの連通を遮断し、第二分岐流路12aに主流路の流れのみを供給する場合について説明する。図14(a)および図14(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第二分岐管12に沿って位置され、第二腕部32は第一分岐管11に沿って位置されている。この配置状態は、図13(a),(b)における把持部30の配置状態を、左方向(半時計回転方向)にさらに90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22も、図13に示す状態からさらに左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置となる。
【0063】
図14(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において右下側から左上側までの領域、時計の針の方向で表せば、4時の方向から10時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、第一溝部21の端部(図示右下側の端部)が僅かに開口しているので、第一分岐流路11aは、4時の方向から第一溝部21に連通することになる。
【0064】
また、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。この第二内方開口部12cの対面には、第一溝部21が開口しているので、第二分岐流路12aは、8時〜9時の方向から第一溝部21に連通することになる。したがって、この状態では、第一分岐流路11aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通されていることになる。
【0065】
一方、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第三分岐流路13aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0066】
また、図14(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において右側から左下側までの領域、時計の針の方向で表せば、3時の方向から7時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第一分岐流路11aは、3時〜4時の方向から第二溝部22に連通することになる。
【0067】
これに対し、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。また、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。しかし、第二溝部22は、これらの開口部13c,12cが対面する方向には開口していない。したがって、第三分岐流路13aおよび第二分岐流路12aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0068】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブからの薬液は、まず、第一分岐流路11aに流れる。第一分岐流路11aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通している。しかし、第二溝部22は、第二分岐流路12aにも、第三分岐流路13aにも連通しておらず、袋小路の状態となっている。したがって、第一分岐流路11a内の薬液は、第一溝部21に流れる。第一溝部21は、さらに第二分岐流路12aにも連通しているので、第一溝部21に流れ込んだ薬液は、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに連通した医療用チューブに送られる。
【0069】
一方、第三分岐流路13aは、第一溝部21にも、第二溝部22にも連通していない。したがって、混注路である第三分岐流路13aからの流れは遮断される。このように、第一分岐流路11aからの主流路の流れのみを第二分岐流路12aに流し、混注路である第三分岐流路13aからの流れを遮断したいときに、図14(a),(b)に示すような状態とされる。
【0070】
ところで、図14(a)に示す第一溝部21の状態は、図12(a)に示す第一溝部21の状態から、弁体20を180度回転させた状態である。これらの図において、第一溝部21の一方端部21aは、図12(a)に示す状態では、第二分岐流路12a側に位置し、図14(a)に示す状態では、第一分岐流路11a側に位置している。しかし、図12(a)に示す状態では、第一溝部21の一方端部21aは第二分岐流路12aの第二内方開口部12cに対面しておらず、一方、図14(a)に示す状態では、第一溝部21の一方端部21aは第一分岐流路11aの第一内方開口部11cに対面している。
【0071】
これは、第一分岐流路11aおよび第二分岐流路12aの流路軸L1−2に対して、弁体20の回動中心Oが、図12(a)および図14(a)において上側にオフセットしていることにより生じる。弁体20が上述のようにオフセットしていることで、第一分岐流路11aの第一内方開口部11c、および、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cが図において弁体20の回動中心Oの高さ位置よりも若干下側の位置に対面する。すなわち、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは弁体20の左下側(時計の針の方向で表すと、8時〜9時の方向)に対面し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは弁体20の右下側(時計の針の方向で表すと、3時〜4時の方向)に対面する。
【0072】
この場合、図12(a)に示す状態では、第一溝部21は、弁体20の外周の左上側から右下側(時計の針の方向で表すと、10時〜4時の方向)に形成されている。そして、図に示されるように、第一溝部12の一方端部21aは、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cとは対面していない状態とされる。しかし、弁体20を180度回転させて図14(a)の状態にした場合には、第一溝部21は、弁体20の外周の右上側から左下側(時計の針の方向で表すと、4時〜10時の方向)に形成されることとなり、その一方端部21aは、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cと僅かに対面する状態となる。このため、第一分岐流路11aが第一溝部21と連通する。
【0073】
これに対し、例えば弁体20の回動中心がオフセットしておらず、流路軸L1−2の軸線上に弁体20の回転中心が位置する場合には、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、図14(a)において右側、時計の針の方向で表せば、3時の方向から弁体20に対面することになる。しかし、第一溝部21は4時〜10時の方向にしか開口していないので、第一分岐流路11aが第一溝部21に連通しないこととなる。
【0074】
このように、本実施形態の三方活栓100は、第一分岐流路11aおよび第二分岐流路12aの流路軸(すなわち第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線)L1−2に対して、弁体20の回動中心をオフセットさせている。このため、弁体20が180度回転する前と後とで、各内方開口部11c,12c,13cと各溝部(第一溝部21,第二溝部22)との配置状態を異ならせることができる。これを利用して、様々な分岐流路の連通状態を実現することができる。
【0075】
次に、第二分岐流路12aと第一分岐流路11aとの連通、および第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとの連通を遮断し、主流路および混注路の流れを第二分岐流路12aに供給するのを停止する場合について説明する。図15(a)および図15(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第二腕部32は第三分岐管13に沿って位置され、第三腕部33は第一分岐管11に沿って位置されている。この配置状態は、図14(a),(b)における把持部30の配置状態から、左方向(半時計回転方向)に90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22の配置状態も、図14に示す状態から左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置状態となる。
【0076】
図15(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において右上側から左下側までの領域、時計の針の方向で表せば、1時の方向から7時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して図示右側から右下側までの間、時計の針の方向で表せば3時〜4時の方向で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第一,第三内方開口部11c,13cの対面には、第一溝部21が開口している。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは、第一溝部21に連通することになる。
【0077】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば8時〜9時の方向で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第一溝部21に連通していない。
【0078】
また、図15(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において上側から右下側までの領域、時計の針の方向で表せば12時の方向から4時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば3時〜4時の方向の間で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第一,第三内方開口部11c,13cの対面には第二溝部22が開口している。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは第二溝部22に連通することになる。
【0079】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば8時〜9時の方向で対面している。しかし、第二溝部22は、この方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第二溝部22に連通していない。
【0080】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流れる薬液は、第一分岐流路11aに流れる。第一分岐流路11aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通しているが、流出先である第二分岐流路12aは第一溝部21にも第二溝部22にも連通していないので、第一分岐流路11aが第二分岐流路12aに連通することはない。同様に、第三分岐流路13aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通しているが、流出先である第二分岐流路12aが第一溝部21にも第二溝部22にも連通していないので、第三分岐流路13aが第二分岐流路12aに連通することはない。したがって、第二分岐流路12a側へは、主流路である第一分岐流路11a側からの薬液の流通も、混注路である第三分岐流路13a側からの薬液の流通も遮断される。
【0081】
ここで、上述したように、第三分岐流路13aに差し込まれるシリンジのルアー部は、弁体20の第一溝部21が形成されている部分の軸方向位置に対面する状態とされるが、第一溝部21は、ルアー部の対面位置には形成されていない。しかし、図15(a)に示すように、ルアー部の直下には、第二溝部22の軸方向溝部22bが対面している。このため、ルアー部から滴下または流下される薬液は、第二溝部22に確実に受け取られることになる。こうして第二溝部22に受け取られた薬液は、第二溝部22から第一分岐流路11a側に流れ、第一分岐流路11aから流れる薬液と混合される。混合された薬液は、把持部30の回動によって流路が連通されると、混合液の状態で分岐流路を流れる。
【0082】
このように、本実施形態の三方活栓100は、弁体20の回動操作によって、主流路と混注路とを合流させて流す場合、または主流路のみを流す場合(図12(a),(b)の場合)、混注路のみを流す場合(図13(a),(b)の場合)、主流路も混注路も流れを遮断する場合(図15(a),(b)の場合)、さらには、混注路に他のチューブやシリンジを接続している状態で、混注路の流れを遮断して、主流路のみを流す場合(図14(a),(b)の場合)のいずれもが実現できるものである。
【0083】
以上の説明のように、本実施形態の三方活栓100は、弁体20に、第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されるとともに、隔壁部20aによって第一溝部21と第二溝部22とが弁体20内で連通することが遮断されている。このため、図12(a)に示す場合、すなわち、第一溝部21が第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aの双方に連通しているとともに第二分岐流路12aとの連通が遮断され、第二溝部22が第二分岐流路12aと第三分岐流路13aの双方に連通しているとともに第一分岐流路11aとの連通が遮断されている場合、には、主流路を構成する流れは、第一分岐流路11aから第一溝部21に流れ、第一溝部21から、一旦、第三分岐流路13aに送り込まれ、ついで、第三分岐流路13aから第二溝部22に流れ、最終的に第二分岐流路12aに至る。
【0084】
このように、主流路の流れを混注路である第三分岐流路13aにまで及ぼすことによって、第三分岐流路13a内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路13aから送られて主流路に混入する液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路13a内での液体の残留や滞留が減少する。さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、初期のプライミング操作などで気泡が薬液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。
【0085】
また、第一溝部21と第二溝部22とが、弁体20の外周において並行に形成されているので、両溝部21,22を近づけて形成することができる。このため、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cを第一溝部21と第二溝部22のそれぞれに連通させるときに、開口が不要に大きくなるのを防止することができる。
【0086】
また、本実施形態では、第二溝部22を、弁体20の周方向に形成された周方向溝部22aと、この周方向溝部22aの端部から弁体の軸方向に延びて形成された軸方向溝部22bとで構成している。この軸方向溝部22bが形成されていることにより、軸方向に広く第二溝部22を形成することができ、図15(a)に示すように第三分岐流路13aに差し込まれたシリンジのルアー部からの液体を、第二溝部22に確実に流し込むことができる。
【0087】
また、弁体20の回動中心軸(円筒状空間15aの中心O)は、流路軸L1−2(第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線)からオフセットされているため、弁体20が180度回転する前と後とで、各分岐流路の内方開口部11c,12c,13cと弁体20の第一溝部21,第二溝部22との配置状態を異ならせることができる。これを利用して弁体20を回転させることで、様々な流路の連通を実現することができる。
【0088】
図16は、本発明の他の実施形態である三方活栓の断面図であり、上記実施形態における図12に対応する図である。この実施形態における三方活栓は、上記実施形態における三方活栓の構成に加え、第三分岐流路13a内に第二隔壁部41を設けている点に特徴を有する。この第二隔壁部41は、図16(a)および(b)に示すように、第三分岐流路13aにて、本体10の内壁に形成されている。また、第二隔壁部41は、弁体20の第一溝部21と第二溝部22との間に形成されている隔壁部20aに液密的に当接可能な位置に形成されており、図に示す状態となるように弁体20を回転させた場合には、丁度隔壁部20aの図示上部に配置する。そして、隔壁部20aから第三分岐流路13aの流路軸方向に延設して形成され、あたかも隔壁部20aを嵩上げしたような状態とされる。
【0089】
このため、第一分岐流路11aから第一溝部21内に流れた液体が第三分岐流路13aを経由して第二溝部22内に流れ込むためには、隔壁部20aに加えて第二隔壁部41をも乗り越えなければならない。ここで、第二隔壁部41は、第三分岐流路13aの流路軸方向に延びて形成されているため、この第二隔壁部41によって、図に示すように、第一溝部21から第二溝部22に流れ込むべき液体が第三分岐流路13aを通過する際の流路断面積が減少する。この流路断面積の減少により、第一溝部21内から溢れ出る液体が、第三分岐流路13aのほぼ全ての流路断面を余すことなく通過して、第二溝部22内に流れ込む。よって、確実に第三分岐流路13aでの液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【0090】
また、図からわかるように、第二隔壁部41の延設方向の先端面41aはフラットに形成されており、第三分岐流路13aの流路軸に対して垂直になるような平面として形成されている。このため、第一溝部21から溢れ出て第三分岐流路13aに流れる液体が、第二隔壁部41の先端面41aから均一に溢れ出るので、第三分岐流路13a内を均一に流れる。このため、より確実に第三分岐流路13aでの液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態に係る医療用活栓の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る医療用活栓の正面図である。
【図3】図2におけるA方向矢視図である。
【図4】図2におけるB−B断面において、本体のみの断面を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の右側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の左側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の斜視図である。
【図9】図5におけるC−C断面図に、同方向から見た把持部を加えた図であり、第一溝部の断面形状を示す図である。
【図10】図5におけるD−D断面図に、同方向から見た把持部を加えた図であり、第二溝部の断面形状を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる医療用活栓を医療用チューブに接続し、シリンジを差し込んだ状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路および混注路が全て連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図13】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路の流れが遮断されて、混注路のみが連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図14】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、混注路の流れが遮断されて、主流路のみが連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図15】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路および混注路の流れが遮断される場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る医療用活栓の断面図であり、(a)が弁体中の第一溝部の配置状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の配置状態を示した図である。
【符号の説明】
【0092】
10…本体、11…第一分岐管、11a…第一分岐流路、11b…第一外方開口部、11c…第一内方開口部(第一開口部)、12…第二分岐管、12a…第二分岐流路、12b…第二外方開口部、12c…第二内方開口部(第二開口部)、13…第三分岐管、13a…第三分岐流路、13b…第三外方開口部、13c…第三内方開口部(第三開口部)、14…シール部材、14a…スリット、15…筒状部、15a…円筒状空間、15b…内壁、20…弁体、20a…隔壁部、21…第一溝部(第一連通流路)、21a…一方端部、22…第二溝部(第二連通流路)、22a…周方向溝部、22b…軸方向溝部、30…把持部、31…第一腕部、32…第二腕部、33…第三腕部、41…第二隔壁部、41a…先端面、100…三方活栓
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用、特に輸液、輸血、人口透析などのために用いられる複数の医療用チューブに取り付けられて、医療用チューブの連通および遮断を切換える医療用活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用活栓は、医療用、特に輸液、輸血、人口透析などに用いられる複数の医療用チューブに取り付けられて、それぞれの医療用チューブの連通や遮断を切換えるものである。このような医療用活栓として代表的な三方活栓は、三本の医療用チューブが取り付けられ、各医療用チューブの連通・遮断を切換えるものである。一般的に、三方活栓は、二つの流入口と一つの流出口とを持ち、流入口と流出口との連通・遮断を切換えるために利用される。
【0003】
三方活栓は、主流路に混注路を合流させて、主流路中を流れる薬液などの液体に他の薬液などの液体を一時的または常時に混注路から混入させたりする場合などに用いられる。この場合、三方活栓に形成される一方の流入口と流出口とを直線的に形成して主流路を形成し、他方の流入口を主流路に対して直角にまたは斜めから交わるように設け、この他方の流入口を混注路として利用するものもある。
【0004】
三方活栓は、一般的に、本体と栓体とを備えて構成される。本体は、中央に外形が円筒状の空間を持った筒状部と、この筒状部の外周面に90度の角度間隔で離間して取り付けられた3本の分岐管部とを備えて構成される。栓体は、本体の筒状部の中央に形成された円筒状空間内に回動可能に装着された円柱状の弁体と、この弁体の端部に連結して弁体を円筒状空間内で回動させるための把持部とを備えて構成される。また、弁体には、本体の各分岐管内に形成される分岐流路を他の分岐流路と連通可能にするための連通流路が形成されている。そして、弁体が円筒状空間内で回動することによって、弁体に形成された連通流路を介して各分岐流路の連通や遮断が行われる。各分岐管には、それぞれ医療用チューブが取り付けられているので、この弁体の回動により、医療用チューブの連通・遮断の切換えが行われる。
【0005】
このような三方活栓において、近年、作業性などを考慮した様々な工夫が提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術は、三方活栓の弁体に形成された連通流路を円弧状の溝とするとともに、この円弧状の溝に90度間隔で三つの縦溝を設け、その三つの縦溝と本体の分岐流路とを連通可能としたものが提案されている。特許文献1によれば、連通流路を円弧状溝とすることによって、弁体内で液体や気体の滞留が発生する内部空間であるデッドスペースを減らし、内部を流れる液体の流通を円滑にすることができると記載されている。また、分岐流路が直接円弧状の溝に連通せずに、円弧状の溝につながる縦溝に連結する構成を採っているため、弁体の僅かな回動動作で流路を遮断状態とすることができて、作業性が向上すると記載されている。
【特許文献1】特開2003―159336号公報
【発明の開示】
【0006】
ところで、三方活栓を用いて主流路の途中に混注路を接続し、混注路から薬液等を主流路に混入させるような場合、この混注路を形成する流路内空間は、主流路の流れに関与しない空間となり、デッドスペースとなる。したがって、この部分に混注路からの液が滞留してしまうという問題がある。また、混注路を形成する流路内空間に気泡が滞留するという問題もある。このような液体や気泡の滞留は、作業性の観点などから、極力少なくすることが望ましい。
【0007】
上記特許文献1に記載の三方活栓は、弁体に形成される連通流路を円弧状の溝とすることで、弁体中でのデッドスペースは減少させることができるものの、混注路を形成する分岐流路内空間のデッドスペースまで減少することができるとは限らない。したがって、この部分に薬液や気泡などが滞留するおそれがある。本発明はこのような事情に鑑みなされたのもので、その目的は、本体側の分岐流路内空間のデッドスペースを減少させて液体や気泡の滞留を十分に防止し得る医療用活栓を提供することにある。
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る医療用活栓の特徴は、内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、前記弁体には、前記第一分岐流路および前記第三分岐流路に連通可能な第一連通流路と、前記第一連通流路が前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通しているとともに前記第二分岐流路との連通が遮断されているときに、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通可能であるとともに前記第一分岐流路との連通が遮断される状態を採り得る第二連通流路とが形成され、且つ、前記第一連通流路と前記第二連通流路とは、前記弁体内での連通が遮断されているものとすることである。
【0009】
前述したように構成した本発明の医療用活栓によれば、弁体に形成される第一連通流路が本体に形成される第一分岐流路と第三分岐流路との双方に連通し、なおかつ第二分岐流路とは連通していない場合に、第一分岐流路から薬液などの液体を送り込むと、液体は、第一分岐流路から第一連通流路に流れる。このとき、第一連通流路は第三分岐流路に連通し、第二分岐流路には連通していないため、第一連通流路内の液体は、一旦、第三分岐流路に送り込まれる。
【0010】
一方、第一連通流路が第一分岐流路と第三分岐流路との双方に連通し、且つ、第二分岐流路に連通していないときには、第二連通流路は第二分岐流路と第三分岐流路との双方に連通され、且つ、第一分岐流路との連通が遮断されている。このため、第一連通流路から第三分岐流路に流れた液体は、第三分岐流路から第二連通流路に流れることができる。このようにして第二連通流路に流れた液体は、さらに第二分岐流路に流れる。このとき、第二連通流路は第一分岐流路との連通が遮断されているので、第一分岐流路内の液体が直接第二連通流路に流れたり、逆に第二連通流路の液体が第一分岐流路に逆流したりすることはない。
【0011】
したがって、第一分岐流路からの液体は、第一分岐流路−第一連通流路−第三分岐流路―第二連通流路−第二分岐流路、といったルートを辿り、最終的に第二分岐流路に流れる。この一連の流路を主流路とした場合、第三分岐流路は主流路に途中から合流する混注路となるとともに、主流路の流れのルートの一部を構成する。このように、主流路の流れのルートを混注路となる第三分岐流路にまで及ぼすことによって、混注路である第三分岐流路内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路から送られる液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路内での液体の残留や滞留が減少する。
【0012】
さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、プライミングなどで気泡が薬液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。なお、「プライミング」とは、事前処理のことであり、本発明に関していえば、医療用チューブを使用して実際に人体などに液体を送る前に、この医療用チューブ内の流路空間を、送るべき液体で充填しておく処理のことである。
【0013】
上記発明において、「弁体内での連通が遮断されている」とは、弁体内に形成された第一連通流路と第二連通流路とが、第一分岐流路、第二分岐流路、第三分岐流路を介さずに連通されていないということである。例えば、第一連通流路と第二連通流路とが、弁体内に形成されたバイパス流路などで、各分岐流路を経由せずに連通できる場合は、弁体内での連通が遮断されているとはいわない。一方、後述する実施形態で詳細に説明するように、第一連通流路がいずれかの分岐流路を一旦経由してから第二連通流路に流れるような場合には、弁体内での連通が遮断されているといえる。
【0014】
また、前記第三分岐流路の前記第三開口部とは反対側の端部には、常閉型の弁部材などが取り付けられて、通常時はこの弁部材などで第三分岐流路が閉塞されているものであるのがよい。三方活栓には、混注を行わない場合には混注路となる流路が外部に連通している開放型の三方活栓と、混注を行わない場合には混注路となる流路が閉塞されて外部と遮断されている閉鎖型の三方活栓がある。本発明においては、主流路のみの流れにおいても混注路となる第三分岐流路を経由するため、開放型の三方活栓においては、第三分岐流路(混注路)から外部に液体が漏れ出して、液体の輸送がうまくできなくなるおそれがある。よって、閉鎖系の三方活栓、すなわち、第三分岐流路が常閉型の弁部材で通常時は閉塞されている三方活栓を本発明に適用すれば、上記したおそれがなく、確実に液体の輸送を行うことができる。
【0015】
また、前記第一分岐管と、前記第二分岐管と、前記第三分岐管は、前記筒状部の周方向にそれぞれ90度間隔で取り付けられているものであるとよい。このように取り付けられていれば、第一分岐管と第二分岐管とを水平状態に配置したときに、第三分岐管を上方向に向かせることができ、第三分岐管にシリンジなどを差し込みやすくすることができる。
【0016】
また、前記弁体には、前記第一連通流路と前記第二連通流路とが弁体内で連通するのを妨げる隔壁部が形成されているものであるとよい。このような隔壁部によって、第一連通流路と第二連通流路との弁体内での連通が遮断されるため、第一連通流路からの液体は、第三分岐流路に流れ込まざるを得ない。よって、簡便な構成によって、第一連通流路―第三分岐流路―第二連通流路、といったルートを形成することができる。
【0017】
また、前記第一連通流路は、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部であり、前記第二連通流路は、前記第一溝部に並行になるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部であるとよい。第一連通流路および第二連通流路を、弁体の外周に溝部として形成することにより、例えば弁体を貫通するような流路を設けるなどの複雑な加工をすることなく、簡単な加工によって、第一連通流路および第二連通流路を形成することができる。
【0018】
また、本発明に係る医療用活栓の他の特徴は、内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、前記弁体には、前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部と、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記第一溝部と並行に、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部と、前記第一溝部と前記第二溝部との間に形成され、前記第一溝部と前記第二溝部とが前記弁体内で連通するのを遮断する隔壁部とが形成されているものとすることである。
【0019】
このように構成した本発明の医療用活栓によれば、弁体に形成される第一溝部によって、第一分岐流路と第三分岐流路とが連通される。また、弁体に形成される第二溝部によって、第二分岐流路と第三分岐流路とが連通される。ここで、第一溝部と第二溝部とは、弁体内での連通が、隔壁部によって遮断されている。したがって、第一溝部が第一分岐流路と第三分岐流路とに連通し、なおかつ第二分岐流路と連通していない状態のときに、第二溝部が第二分岐流路と第三分岐流路とに連通し、なおかつ第一分岐流路と連通していない状態とした場合には、第一分岐流路から送り込まれた薬液などの液体は、第一分岐流路から第一溝部に流れ、第一溝部から第三分岐流路に流れ、さらに第三分岐流路から第二溝部に流れ、最終的に第二分岐流路に流れる。
【0020】
したがって、第一分岐流路からの液体は、第一分岐流路−第一溝部−第三分岐流路―第二溝部−第二分岐流路、といったルートを辿り、最終的に第二分岐流路に流れる。この一連の流路を主流路とした場合、第三分岐流路は主流路に途中から合流する混注路となるとともに、主流路の流れのルートの一部を構成する。このように、主流路の流れのルートを混注路となる第三分岐流路にまで及ぼすことによって、第三分岐流路内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路から送られる液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路内での液体の残留や滞留が減少する。さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、プライミングなどで気泡が輸液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。
【0021】
また、第一溝部および第二溝部の少なくともいずれか一方には、弁体の軸方向に延びて形成される軸方向溝部が連結されているとよい。軸方向溝部を形成することによって、各分岐流路から流入される液体を確実に第一溝部および/または第二溝部に流し込むことができる。特に、第三分岐流路を混注路として、この第三分岐流路から液体を滴下または流下するような場合に、第三分岐流路から滴下または流下される液体の流路と弁体に形成された溝部の軸方向位置がずれていると、十分に液体が溝部に流れ込まない場合が考えられる。この点、本発明によれば、軸方向溝部によって軸方向の広い位置で溝を形成することにより、より確実に液体を溝部に流し込むことができる。
【0022】
さらにこのような構成によれば、軸方向溝の形成により、第一溝部と第二溝部とを、弁体の軸方向位置を一致させるように設けることも可能となる。このように両溝部が形成されれば、第一溝部に連通する第一分岐流路と、第二溝部に連通する第二分岐流路のそれぞれの流路軸を一致させることができ、第一分岐流路と第二分岐流路とを直線上に形成することができる。
【0023】
また、本体の筒状空間に装着される弁体の回動中心は、前記第一開口部の中心と前記第二開口部の中心を結ぶ直線からオフセットされているのがよい。この場合、第一開口部および第二開口部と弁体に形成される第一連通流路(第一溝部)および第二連通流路(第二溝部)との配置状態は、180度回転する前と後では異なった配置状態とすることができる。これを利用して、弁体を回動させることによって、様々な流路の連通状態を実現することができる。例えば、弁体がある回動位置では第一および第二連通流路を介して第一分岐流路と第二分岐流路を連通している(例えば、後述の実施形態で説明する図12(a)の状態)のに対し、弁体をその位置から180度回動させると、一方の連通路のみで第一分岐流路と第二分岐流路とを連通させる(例えば、後述の実施形態で説明する図14(a)の状態)ことができる。
【0024】
また、前記第三分岐流路内には、前記隔壁部に液密的に当接可能に配置されるとともに、前記隔壁部から前記第三分岐流路の流路軸方向に延設された第二隔壁部が設けられているとよい。上記第二隔壁部を設けることによって、第一溝部と第二溝部とが、隔壁部と第二隔壁部で仕切られることになる。つまり、第二隔壁部によって、隔壁部を高さ方向に嵩上げしている。このため、第一溝部内の液体が第二溝部内に流れ込むためには、隔壁部に加えて第二隔壁部をも乗り越えなければならない。ここで、第二隔壁部は、第三分岐流路の流路軸方向に延びて形成されているため、この第二隔壁部によって、第一溝部から第二溝部に流れ込むべき液体が第三分岐流路を通過する際の流路断面積が減少する。この流路断面積の減少により、第一溝部内から溢れ出る液体は、第三分岐流路のほぼ全ての流路断面を余すことなく通過して、第二溝部内に流れ込む。よって、確実に第三分岐流路での液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【0025】
なお、この場合には、第二隔壁部の延設方向の端面は、第三分岐流路の流路軸に対して垂直になるような平面として形成されていると、よりよい。このような場合には、第一溝部から溢れ出て第三分岐流路に流れる液体が、第二隔壁部の端面方向に均一に溢れ出るので、第三分岐流路内にも均一に流れる。このため、より確実に第三分岐流路での液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る医療用活栓の実施形態を図面を用いて詳しく説明する。図1は、本実施形態に係る医療用活栓である三方活栓の平面図、図2は正面図、図3は図2におけるA方向矢視図である。図に示すように、三方活栓100は、本体10と、弁体20と、把持部30とを備えて構成される。弁体20と把持部30とは一体的に形成されており、弁体20は本体10内に装着される。
【0027】
図2に特によく示されるように、本体10は、筒状部15と、この筒状部15に取り付けられた3本の分岐管である第一分岐管11、第二分岐管12および第三分岐管13を備えている。なお、本体10の材質として、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)あるいはポリエチレンテレフタレート(PET)などが選択可能であるが、この限りでない。
【0028】
図4は、図2におけるB−B断面のうち、本体10のみの断面を示す図である。図4からわかるように、筒状部15は、その内周側に断面円形で外形が円筒状の円筒状空間15aが形成されており、概ね円筒形状を呈している。そして、筒状部15の図示右側には、第一分岐管11が連結されている。第一分岐管11は、内部に第一分岐流路11aが形成された管状の部分である。第一分岐流路11aの一端(図示右端)には第一外方開口部11bが外方に向けて形成され、他端(図示左端)側には第一内方開口部11cが形成されている。この第一内方開口部11cは、円筒状空間15aを形成する筒状部15の内壁15bに開口している。したがって、第一分岐流路11aは、第一内方開口部11cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0029】
また、筒状部15の図示上側からは、第三分岐管13が連結されている。第三分岐管13は、内部に第三分岐流路13aが形成された管状の部分である。第三分岐流路13aの一端(図示上端)には、第三外方開口部13bが外方に向けて形成され、他端(図示下端)には、第三内方開口部13cが筒状部15の内壁15bに開口して形成されている。したがって、第三分岐流路13aは、第三内方開口部13cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0030】
さらに、筒状部15の図示左側には、第二分岐管12が連結されている。第二分岐管12は、内部に第二分岐流路12aが形成された管状の部分であり、その一端(図示左端)には第二外方開口部12bが外方に向けて形成され、他端(図示右端)には、第二内方開口部12cが、筒状部15の内壁15bに開口している。したがって、第二分岐流路12aは、第二内方開口部12cから筒状部15の外方に向かって貫通して形成されていることになる。
【0031】
図4からわかるように、第一分岐管11、第二分岐管12および第三分岐管13は、それぞれ略90度の間隔で筒状部15に連結されている。第一分岐管11と第二分岐管12とは、筒状部15を挟んで対向して配置され、第一内方開口部11cと第二内方開口部12cとがほぼ対面する状態とされている。そして、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとは、共通となる流路軸L1―2を持つように形成されている。この流路軸L1−2は、第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線と同軸である。
【0032】
また、第三分岐管13は、筒状部15の周方向において第一、第二分岐流路11a,12aからそれぞれ90度の間隔を隔てた位置に配置されている。そして、第三分岐流路13aは、軸L1―2に対して直交するように形成されている。なお、筒状部15の内壁15bに開口する第一内方開口部11c、第二内方開口部12c、第三内方開口部13cは、それぞれ内壁15bの軸方向高さ位置を同じとし、かつ周方向に異なった位置に形成されている。
【0033】
第三分岐管13は、第一分岐管11および第二分岐管12よりも軸方向に短く形成されている。これは、第三分岐管13内の第三分岐流路13aの流路体積を小さくして、この部分におけるデッドスペースを小さくするために、このように短く形成される。また、第三分岐管13の内径は、第一分岐管11および第二分岐管12の内径よりも大きく形成されている。
【0034】
第三分岐管13内には、シール部材14が装着されている。このシール部材14は、合成ゴム材料などの弾性体が用いられ、第三分岐流路13aと外部との連通を遮断するためのものである。また、シール部材14には、スリット14aが形成されている。このスリット14aは、第三分岐管13にシリンジのルアー部などが差し込まれてルアー部から液体を送り込む際に、その差込口とされる。
【0035】
図5は、弁体20および把持部30の正面図、図6は図5を右方向から見た右側面図、図7は図5を左方向から見た左側面図、図8は斜視図である。これらの図に示すように、把持部30は、弁体20の端部に取り付けられている。弁体20は、略円柱状に形成されており、その外周に第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されている。把持部30は、弁体20の基端から径方向外方に伸びた三つの腕部(第一腕部31、第二腕部32、第三腕部33)を備える。各腕部は、弁体20の径方向に90度間隔で形成されており、3つの腕部で断面が略T字状となるようにされている。
【0036】
図9は、図5におけるC−C断面図に、同方向から見た把持部30を点線で加えたものであり、弁体20に形成された第一溝部21の断面形状を示す図である。図9からわかるように、第一溝部21は、弁体20の外周を周方向に略180度程度の範囲で鍵型状に切り欠いて形成されており、図において弁体20の外周の左上側から右下側の領域に開口している。また、図10は、図5におけるD−D断面図に、同方向から見た把持部30を点線で加えたものであり、弁体20に形成された第二溝部22の断面形状を示す図である。図10からわかるように、第二溝部22は、弁体20の外周を周方向に略120度程度の範囲で切り欠いて形成されており、図において弁体20の外周の左側から右上側の領域で、弁体20の外周に開口している。
【0037】
また、図8からわかるように、第二溝部22は、弁体20の周方向に切り欠かれている周方向溝部22aと、この周方向溝部22aの端部から軸方向に切り欠かれている軸方向溝部22bとを有している。第一溝部21と第二溝部22の周方向溝部22aとは、弁体20の周方向に並行に並んで形成されている。第二溝部22の軸方向溝部22bは、周方向溝部22aの端部から、第一溝部21側に回りこむように弁体20の軸方向に形成されている。そして、両溝部21,22の間に形成されている隔壁部20aによって、両溝部21,22は弁体20内では互いに連通することが妨げられている。
【0038】
また、図9からわかるように、把持部30の第一腕部31は、図において右側の方向、時計の針の方向で表せば、3時の方向に延びて形成されている。この3時の方向は、第一溝部21の図示右端側が開口している方向である。一方、図10からわかるように、把持部30の第二腕部32は、図において左側の方向、時計の針の方向で表せば、9時の方向に延びて形成されている。この9時の方向は、第二溝部22の図示左端側が開口している方向である。また、把持部30の第三腕部33は、図9、10において図示上方向、時計の針の方向で表せば、12時の方向に延びて形成されている。なお、弁体20および把持部30の材質として、ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)などが選択可能であるが、この限りでない。
【0039】
本実施形態における三方活栓100は、上記のように説明した弁体20が、本体10の筒状部15内に形成された円筒状空間15a内に液密的に嵌め込まれて使用される。このとき、弁体20は、本体10に形成される第一内方開口部11c、第二内方開口部12cおよび第三内方開口部13cが弁体20の第一溝部21および第二溝部22が形成されている部分の軸方向位置に対面するように、円筒状空間15a内に嵌めこまれる。
【0040】
また、図4に示すように、本体10の円筒状空間15aの中心Oは、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとの共通の流路軸L1―2よりも図において上側に位置している。円筒状空間15aに嵌め込まれる弁体20の回動中心は、円筒状空間15aの中心Oと一致するから、弁体20の回動中心は流路軸L1−2、つまり第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線に対して図示上方にオフセットして配設されていることになる。
【0041】
上記のように構成された本実施形態の三方活栓100は、実際の使用に際しては、図11に示すように、各分岐管に医療用チューブやシリンジが取り付けられて使用される。本実施形態においては、第一分岐管11および第二分岐管12には医療用チューブが取り付けられる。また、第三分岐管13には、シリンジが、そのルアー部をシール部材14のスリット14aに差し込んだ状態で取り付けられる。この場合において、第一分岐管11内の第一分岐流路11aから第二分岐管12内の第二分岐流路12aに流れる流路を主流路とする。また、第三分岐管13の第三分岐流路13aから流れる流路は、主流路の途中に合流され、主流路中に薬液を混注する混注路とする。よって、第一分岐流路11aが主流路の流入側、第二分岐流路12aが主流路の流出側、第三分岐流路13aが混注路の流入側のポートとなる。
【0042】
なお、第三分岐管13に取り付けられるシリンジのルアー部は、弁体20の第一溝部21が形成されている部分の軸方向位置に対面するように取り付けられる。したがって、ルアー部の直下に第一溝部21が開口していれば、ルアー部からの液体は第一溝部21に流れ込む。また、ルアー部の直下に第二溝部22の軸方向溝22bが開口していれば、この軸方向溝22bに流れ込む。
【0043】
次に、本実施形態に係る三方活栓100を使用した薬液の流れについて説明する。まず、第一分岐流路11a、第二分岐流路12aおよび第三分岐流路13aのいずれもが連通して、主流路の流れに混注路の流れが合流する状態について説明する。図12(a)および図12(b)は、このような状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第一分岐管11に沿って位置され、第二腕部32は第二分岐管12に沿って位置され、さらに第三腕部33が第三分岐管13に沿って位置されている。
【0044】
このような配置状態では、図12(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において左上側から右下側までの領域、時計の針の方向で表せば、おおよそ10時の方向から4時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。また、第一分岐流路11aは、図に示す状態では弁体20が配置される円筒状空間15aに図示右側から連通している。ここで、上述したように、弁体20の回動中心(図示点O)が流路軸L1−2に対して図において上方向にオフセットされているため、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時の方向から4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、弁体20に形成された第一溝部21が開口しているので、第一分岐流路11aは3時〜4時の方向から第一溝部21に連通することになる。
【0045】
また、第三分岐流路13aは、図に示す状態では円筒状空間15aに図示上側から連通し、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第一溝部21が開口しているので、第三分岐流路13aは、10時〜2時の方向から第一溝部21に連通することになる。したがって、この状態では、第一分岐流路11aは、第一溝部21を介して第三分岐流路13aに連通されていることになる。
【0046】
第二分岐流路12aは、図に示す状態では円筒状空間15aに図示左側から連通しているが、上述したように弁体20の回動中心Oは流路軸L1−2に対して図において上側にオフセットされているので、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。しかし、第一溝部21は、弁体20の図示左上側から右下側の領域、時計の針の方向で表せば、10時の方向から4時の方向までの領域でしか外方向に開口しておらず、8時〜9時の方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0047】
また、図12(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において左側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、9時の方向から1時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第二分岐流路12aは9時の方向から第二溝部22に連通することになる。
【0048】
また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。この第三内方開口部13cの対面には、第二溝部22が開口する部分がある。したがって、第三分岐流路13aは、10時〜1時の方向から第二溝部22に連通することになる。したがって、この状態では、第三分岐流路13aは、第二溝部22を介して第二分岐流路12aに連通されていることになる。
【0049】
一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。しかし、第二溝部22は、図において弁体20の左側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、9時の方向から1時の方向までの領域でしか開口しておらず、3時〜4時の方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0050】
上記の状態で、薬液を、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流す。すると、薬液は、医療用チューブから第一分岐管11内の第一分岐流路11aに流れる。そして、第一分岐流路11aから、弁体20に形成された第一溝部21に流れる。また、この状態では、第一溝部21は第三分岐流路13aにも連通しているので、薬液は第一溝部21から第三分岐流路13aに入る。
【0051】
第三分岐流路13aは、第二溝部22にも連通している。従って、第三分岐流路13aに入った薬液は、さらに第二溝部22に流れ込む。第二溝部22は、第二分岐流路12aにも連通しているため、第三分岐流路13aから第二溝部22に流れ込んだ薬液は、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐管12に接続された医療用チューブに送られる。このように、第一分岐流路11a−第一溝部21−第三分岐流路13a−第二溝部22−第二分岐流路12aのルートで流れる流れが主流路のルートとなる。
【0052】
上記説明したように、弁体20に形成された第一溝部21は、隔壁20aによって、弁体20内での第二溝部22との連通が妨げられている。したがって、第一分岐流路11aから第一溝部21に流れ込んだ薬液は、直接第二溝部22に流れ込むことができない。そのため、薬液は、第一溝部21から、一旦、第三分岐流路13aに流れ込み、この第三分岐流路13aを経由して第二溝部22に流れ込む。つまり、第三分岐流路13aも主流路の一部として利用される。
【0053】
従来は、主流路の流れに対し、混注路である第三分岐流路13a内の空間は、主流路の流れに関与しないデッドスペースとなって、薬液の滞留や気泡の滞留の原因となっていた。これに対し、本実施形態では、第三分岐流路13aの空間も主流路として利用されている。したがって、従来と比較して、デッドスペースを減少させることができ、気泡や薬液の滞留を減少させることができる。また、第三分岐流路13a内に気泡が滞留している場合には、主流路の流れによって気泡を押し流すこともできる。したがって、初期のプライミング操作時に、第三分岐流路13a中の気泡を押し流すことができ、別途気泡抜きの作業を行わなくてもよい。よって、作業性が良好となる。
【0054】
主流路に薬液が流れている状態で、第三分岐管から他の薬液を混注する場合には、シール部材14のスリット14aに差し込まれているシリンジのルアー部より液体を第三分岐流路13a内に送り込む。第三分岐流路13a内に送り込まれた薬液は、主流路の流れに合流し、主流路に乗って、第二溝部22、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに接続された医療用チューブに送られる。ここで、第三分岐流路13aは主流路のルートの一部とされているので、第三分岐流路13a内の薬液は主流路によって流され、そこで滞留することが防止される。
【0055】
次に、第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとを連通し、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとの連通を遮断して、第二分岐流路12aに混注路のみからの流れを供給する場合について説明する。図13(a)および図13(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第三分岐管13に沿って位置され、第三腕部33は第二分岐管12に沿って位置されている。この配置状態は、図12(a),(b)における把持部30の配置状態を、左方向(半時計回転方向)に90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22も、図12に示す状態から左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置となる。
【0056】
図13(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において左下側から右上側までの領域、時計の針の方向で表せば、7時の方向から1時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第二内方開口部12c、13cの対面には、第一溝部21が開口している。したがって、第三分岐流路13aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通されていることとなっている。
【0057】
一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0058】
また、図13(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において下側から左上側までの領域、時計の針の方向で表せば、6時の方向から10時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。しかし、第二溝部22は、第一内方開口部11cおよび第三内方開口部13cが対面する方向には開口していない。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0059】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。この第二内方開口部12cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第二分岐流路12aは、8時〜9時の方向から第二溝部22に連通することになる。しかし、第二溝部22は、上述したように第一分岐流路11aにも第三分岐流路13aにも連通していないので、この第二溝部22を介して第二分岐流路12aが他の分岐流路に連通することはない。
【0060】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流れる薬液は、第一分岐流路11aに流れるが、第一分岐流路11aは第一溝部21にも第二溝部22にも連通しておらず、弁体20の外周壁で閉塞されているので、その部分でせき止められる。一方、第三分岐流路13aに接続されたシリンジからの薬液は、まず第三分岐流路13aに入る。第三分岐流路13aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通しているので、薬液は、第三分岐流路13aから第一溝部21を経由して第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに接続された医療用チューブに送られる。
【0061】
このように、図13(a),(b)に示す状態においては、第一分岐流路11aからの主流路の流れを遮断し、混注路である第三分岐流路13aからの流れを第二分岐流路12aに流したいときに、このような状態とされる。
【0062】
次に、第一分岐流路11aと第二分岐流路12aとを連通するとともに第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとの連通を遮断し、第二分岐流路12aに主流路の流れのみを供給する場合について説明する。図14(a)および図14(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第一腕部31は第二分岐管12に沿って位置され、第二腕部32は第一分岐管11に沿って位置されている。この配置状態は、図13(a),(b)における把持部30の配置状態を、左方向(半時計回転方向)にさらに90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22も、図13に示す状態からさらに左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置となる。
【0063】
図14(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において右下側から左上側までの領域、時計の針の方向で表せば、4時の方向から10時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、第一溝部21の端部(図示右下側の端部)が僅かに開口しているので、第一分岐流路11aは、4時の方向から第一溝部21に連通することになる。
【0064】
また、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。この第二内方開口部12cの対面には、第一溝部21が開口しているので、第二分岐流路12aは、8時〜9時の方向から第一溝部21に連通することになる。したがって、この状態では、第一分岐流路11aは、第一溝部21を介して第二分岐流路12aに連通されていることになる。
【0065】
一方、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第三分岐流路13aは、第一溝部21に直接連通していない。
【0066】
また、図14(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において右側から左下側までの領域、時計の針の方向で表せば、3時の方向から7時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。一方、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して、図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば、3時〜4時の方向の間で対面している。この第一内方開口部11cの対面には、第二溝部22が開口しているので、第一分岐流路11aは、3時〜4時の方向から第二溝部22に連通することになる。
【0067】
これに対し、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して、図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。また、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して、図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば、8時〜9時の方向で対面している。しかし、第二溝部22は、これらの開口部13c,12cが対面する方向には開口していない。したがって、第三分岐流路13aおよび第二分岐流路12aは、第二溝部22に直接連通していない。
【0068】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブからの薬液は、まず、第一分岐流路11aに流れる。第一分岐流路11aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通している。しかし、第二溝部22は、第二分岐流路12aにも、第三分岐流路13aにも連通しておらず、袋小路の状態となっている。したがって、第一分岐流路11a内の薬液は、第一溝部21に流れる。第一溝部21は、さらに第二分岐流路12aにも連通しているので、第一溝部21に流れ込んだ薬液は、第二分岐流路12aに流れる。そして、第二分岐流路12aに連通した医療用チューブに送られる。
【0069】
一方、第三分岐流路13aは、第一溝部21にも、第二溝部22にも連通していない。したがって、混注路である第三分岐流路13aからの流れは遮断される。このように、第一分岐流路11aからの主流路の流れのみを第二分岐流路12aに流し、混注路である第三分岐流路13aからの流れを遮断したいときに、図14(a),(b)に示すような状態とされる。
【0070】
ところで、図14(a)に示す第一溝部21の状態は、図12(a)に示す第一溝部21の状態から、弁体20を180度回転させた状態である。これらの図において、第一溝部21の一方端部21aは、図12(a)に示す状態では、第二分岐流路12a側に位置し、図14(a)に示す状態では、第一分岐流路11a側に位置している。しかし、図12(a)に示す状態では、第一溝部21の一方端部21aは第二分岐流路12aの第二内方開口部12cに対面しておらず、一方、図14(a)に示す状態では、第一溝部21の一方端部21aは第一分岐流路11aの第一内方開口部11cに対面している。
【0071】
これは、第一分岐流路11aおよび第二分岐流路12aの流路軸L1−2に対して、弁体20の回動中心Oが、図12(a)および図14(a)において上側にオフセットしていることにより生じる。弁体20が上述のようにオフセットしていることで、第一分岐流路11aの第一内方開口部11c、および、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cが図において弁体20の回動中心Oの高さ位置よりも若干下側の位置に対面する。すなわち、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは弁体20の左下側(時計の針の方向で表すと、8時〜9時の方向)に対面し、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは弁体20の右下側(時計の針の方向で表すと、3時〜4時の方向)に対面する。
【0072】
この場合、図12(a)に示す状態では、第一溝部21は、弁体20の外周の左上側から右下側(時計の針の方向で表すと、10時〜4時の方向)に形成されている。そして、図に示されるように、第一溝部12の一方端部21aは、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cとは対面していない状態とされる。しかし、弁体20を180度回転させて図14(a)の状態にした場合には、第一溝部21は、弁体20の外周の右上側から左下側(時計の針の方向で表すと、4時〜10時の方向)に形成されることとなり、その一方端部21aは、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cと僅かに対面する状態となる。このため、第一分岐流路11aが第一溝部21と連通する。
【0073】
これに対し、例えば弁体20の回動中心がオフセットしておらず、流路軸L1−2の軸線上に弁体20の回転中心が位置する場合には、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、図14(a)において右側、時計の針の方向で表せば、3時の方向から弁体20に対面することになる。しかし、第一溝部21は4時〜10時の方向にしか開口していないので、第一分岐流路11aが第一溝部21に連通しないこととなる。
【0074】
このように、本実施形態の三方活栓100は、第一分岐流路11aおよび第二分岐流路12aの流路軸(すなわち第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線)L1−2に対して、弁体20の回動中心をオフセットさせている。このため、弁体20が180度回転する前と後とで、各内方開口部11c,12c,13cと各溝部(第一溝部21,第二溝部22)との配置状態を異ならせることができる。これを利用して、様々な分岐流路の連通状態を実現することができる。
【0075】
次に、第二分岐流路12aと第一分岐流路11aとの連通、および第二分岐流路12aと第三分岐流路13aとの連通を遮断し、主流路および混注路の流れを第二分岐流路12aに供給するのを停止する場合について説明する。図15(a)および図15(b)は、斯かる状態における本体10、弁体20および把持部30の配置関係を示す図である。図に示すように、把持部30の第二腕部32は第三分岐管13に沿って位置され、第三腕部33は第一分岐管11に沿って位置されている。この配置状態は、図14(a),(b)における把持部30の配置状態から、左方向(半時計回転方向)に90度回転させた場合の配置状態である。従って、弁体20に形成された第一溝部21および第二溝部22の配置状態も、図14に示す状態から左方向(半時計回転方向)に90度回転させた配置状態となる。
【0076】
図15(a)に示すように、弁体20に形成された第一溝部21は、図において右上側から左下側までの領域、時計の針の方向で表せば、1時の方向から7時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して図示右側から右下側までの間、時計の針の方向で表せば3時〜4時の方向で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第一,第三内方開口部11c,13cの対面には、第一溝部21が開口している。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは、第一溝部21に連通することになる。
【0077】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば8時〜9時の方向で対面している。しかし、第一溝部21は、この方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第一溝部21に連通していない。
【0078】
また、図15(b)に示すように、弁体20に形成された第二溝部22は、図において上側から右下側までの領域、時計の針の方向で表せば12時の方向から4時の方向までの領域で、外方向に開口した状態とされる。これに対し、第一分岐流路11aの第一内方開口部11cは、弁体20に対して図示右側から若干下側までの間、時計の針の方向で表せば3時〜4時の方向の間で対面している。また、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cは、弁体20に対して図示左上側から右上側までの間、時計の針の方向で表せばおおよそ10時の方向から2時の方向の間で対面している。これらの第一,第三内方開口部11c,13cの対面には第二溝部22が開口している。したがって、第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aは第二溝部22に連通することになる。
【0079】
一方、第二分岐流路12aの第二内方開口部12cは、弁体20に対して図示左下側から左側までの間、時計の針の方向で表せば8時〜9時の方向で対面している。しかし、第二溝部22は、この方向には開口していない。したがって、第二分岐流路12aは、第二溝部22に連通していない。
【0080】
上記の状態において、第一分岐管11に接続された医療用チューブから流れる薬液は、第一分岐流路11aに流れる。第一分岐流路11aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通しているが、流出先である第二分岐流路12aは第一溝部21にも第二溝部22にも連通していないので、第一分岐流路11aが第二分岐流路12aに連通することはない。同様に、第三分岐流路13aは、第一溝部21にも第二溝部22にも連通しているが、流出先である第二分岐流路12aが第一溝部21にも第二溝部22にも連通していないので、第三分岐流路13aが第二分岐流路12aに連通することはない。したがって、第二分岐流路12a側へは、主流路である第一分岐流路11a側からの薬液の流通も、混注路である第三分岐流路13a側からの薬液の流通も遮断される。
【0081】
ここで、上述したように、第三分岐流路13aに差し込まれるシリンジのルアー部は、弁体20の第一溝部21が形成されている部分の軸方向位置に対面する状態とされるが、第一溝部21は、ルアー部の対面位置には形成されていない。しかし、図15(a)に示すように、ルアー部の直下には、第二溝部22の軸方向溝部22bが対面している。このため、ルアー部から滴下または流下される薬液は、第二溝部22に確実に受け取られることになる。こうして第二溝部22に受け取られた薬液は、第二溝部22から第一分岐流路11a側に流れ、第一分岐流路11aから流れる薬液と混合される。混合された薬液は、把持部30の回動によって流路が連通されると、混合液の状態で分岐流路を流れる。
【0082】
このように、本実施形態の三方活栓100は、弁体20の回動操作によって、主流路と混注路とを合流させて流す場合、または主流路のみを流す場合(図12(a),(b)の場合)、混注路のみを流す場合(図13(a),(b)の場合)、主流路も混注路も流れを遮断する場合(図15(a),(b)の場合)、さらには、混注路に他のチューブやシリンジを接続している状態で、混注路の流れを遮断して、主流路のみを流す場合(図14(a),(b)の場合)のいずれもが実現できるものである。
【0083】
以上の説明のように、本実施形態の三方活栓100は、弁体20に、第一連通流路としての第一溝部21と、第二連通流路としての第二溝部22とが形成されるとともに、隔壁部20aによって第一溝部21と第二溝部22とが弁体20内で連通することが遮断されている。このため、図12(a)に示す場合、すなわち、第一溝部21が第一分岐流路11aおよび第三分岐流路13aの双方に連通しているとともに第二分岐流路12aとの連通が遮断され、第二溝部22が第二分岐流路12aと第三分岐流路13aの双方に連通しているとともに第一分岐流路11aとの連通が遮断されている場合、には、主流路を構成する流れは、第一分岐流路11aから第一溝部21に流れ、第一溝部21から、一旦、第三分岐流路13aに送り込まれ、ついで、第三分岐流路13aから第二溝部22に流れ、最終的に第二分岐流路12aに至る。
【0084】
このように、主流路の流れを混注路である第三分岐流路13aにまで及ぼすことによって、第三分岐流路13a内のデッドスペースを減少することができる。したがって、第三分岐流路13aから送られて主流路に混入する液体は、主流路に混ざって確実に送られることになるので、第三分岐流路13a内での液体の残留や滞留が減少する。さらに、この部分に気泡が滞留した場合であっても、初期のプライミング操作などで気泡が薬液とともに押し流される。よって、別途気泡を取り除く作業を要しないので、作業性を十分に良好にすることができる。
【0085】
また、第一溝部21と第二溝部22とが、弁体20の外周において並行に形成されているので、両溝部21,22を近づけて形成することができる。このため、第三分岐流路13aの第三内方開口部13cを第一溝部21と第二溝部22のそれぞれに連通させるときに、開口が不要に大きくなるのを防止することができる。
【0086】
また、本実施形態では、第二溝部22を、弁体20の周方向に形成された周方向溝部22aと、この周方向溝部22aの端部から弁体の軸方向に延びて形成された軸方向溝部22bとで構成している。この軸方向溝部22bが形成されていることにより、軸方向に広く第二溝部22を形成することができ、図15(a)に示すように第三分岐流路13aに差し込まれたシリンジのルアー部からの液体を、第二溝部22に確実に流し込むことができる。
【0087】
また、弁体20の回動中心軸(円筒状空間15aの中心O)は、流路軸L1−2(第一内方開口部11cの中心と第二内方開口部12cの中心とを結ぶ直線)からオフセットされているため、弁体20が180度回転する前と後とで、各分岐流路の内方開口部11c,12c,13cと弁体20の第一溝部21,第二溝部22との配置状態を異ならせることができる。これを利用して弁体20を回転させることで、様々な流路の連通を実現することができる。
【0088】
図16は、本発明の他の実施形態である三方活栓の断面図であり、上記実施形態における図12に対応する図である。この実施形態における三方活栓は、上記実施形態における三方活栓の構成に加え、第三分岐流路13a内に第二隔壁部41を設けている点に特徴を有する。この第二隔壁部41は、図16(a)および(b)に示すように、第三分岐流路13aにて、本体10の内壁に形成されている。また、第二隔壁部41は、弁体20の第一溝部21と第二溝部22との間に形成されている隔壁部20aに液密的に当接可能な位置に形成されており、図に示す状態となるように弁体20を回転させた場合には、丁度隔壁部20aの図示上部に配置する。そして、隔壁部20aから第三分岐流路13aの流路軸方向に延設して形成され、あたかも隔壁部20aを嵩上げしたような状態とされる。
【0089】
このため、第一分岐流路11aから第一溝部21内に流れた液体が第三分岐流路13aを経由して第二溝部22内に流れ込むためには、隔壁部20aに加えて第二隔壁部41をも乗り越えなければならない。ここで、第二隔壁部41は、第三分岐流路13aの流路軸方向に延びて形成されているため、この第二隔壁部41によって、図に示すように、第一溝部21から第二溝部22に流れ込むべき液体が第三分岐流路13aを通過する際の流路断面積が減少する。この流路断面積の減少により、第一溝部21内から溢れ出る液体が、第三分岐流路13aのほぼ全ての流路断面を余すことなく通過して、第二溝部22内に流れ込む。よって、確実に第三分岐流路13aでの液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【0090】
また、図からわかるように、第二隔壁部41の延設方向の先端面41aはフラットに形成されており、第三分岐流路13aの流路軸に対して垂直になるような平面として形成されている。このため、第一溝部21から溢れ出て第三分岐流路13aに流れる液体が、第二隔壁部41の先端面41aから均一に溢れ出るので、第三分岐流路13a内を均一に流れる。このため、より確実に第三分岐流路13aでの液体の滞留や気泡の滞留を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態に係る医療用活栓の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る医療用活栓の正面図である。
【図3】図2におけるA方向矢視図である。
【図4】図2におけるB−B断面において、本体のみの断面を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の右側面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の左側面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る弁体および把持部の斜視図である。
【図9】図5におけるC−C断面図に、同方向から見た把持部を加えた図であり、第一溝部の断面形状を示す図である。
【図10】図5におけるD−D断面図に、同方向から見た把持部を加えた図であり、第二溝部の断面形状を示す図である。
【図11】本発明の実施形態にかかる医療用活栓を医療用チューブに接続し、シリンジを差し込んだ状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路および混注路が全て連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図13】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路の流れが遮断されて、混注路のみが連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図14】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、混注路の流れが遮断されて、主流路のみが連通する場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図15】本発明の実施形態に係る医療用活栓において、主流路および混注路の流れが遮断される場合の本体、弁体および把持部の配置関係を示す図であり、(a)が弁体中の第一溝部の状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の状態を示した図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係る医療用活栓の断面図であり、(a)が弁体中の第一溝部の配置状態を示した図、(b)が弁体中の第二溝部の配置状態を示した図である。
【符号の説明】
【0092】
10…本体、11…第一分岐管、11a…第一分岐流路、11b…第一外方開口部、11c…第一内方開口部(第一開口部)、12…第二分岐管、12a…第二分岐流路、12b…第二外方開口部、12c…第二内方開口部(第二開口部)、13…第三分岐管、13a…第三分岐流路、13b…第三外方開口部、13c…第三内方開口部(第三開口部)、14…シール部材、14a…スリット、15…筒状部、15a…円筒状空間、15b…内壁、20…弁体、20a…隔壁部、21…第一溝部(第一連通流路)、21a…一方端部、22…第二溝部(第二連通流路)、22a…周方向溝部、22b…軸方向溝部、30…把持部、31…第一腕部、32…第二腕部、33…第三腕部、41…第二隔壁部、41a…先端面、100…三方活栓
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、
前記弁体には、前記第一分岐流路および前記第三分岐流路に連通可能な第一連通流路と、前記第一連通流路が前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通しているとともに前記第二分岐流路との連通が遮断されているときに、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通可能であるとともに前記第一分岐流路との連通が遮断される状態を採り得る第二連通流路とが形成され、前記第一連通流路と前記第二連通流路は、前記弁体内での連通が遮断されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用活栓において、前記弁体には、前記第一連通流路と前記第二連通流路とが前記弁体内で連通するのを妨げる隔壁部が形成されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用活栓において、前記第一連通流路は、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部であり、前記第二連通流路は、前記第一溝部に並行になるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部であることを特徴とする医療用活栓。
【請求項4】
内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、
前記弁体には、前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部と、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記第一溝部と並行に、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部と、前記第一溝部と前記第二溝部との間に形成され、前記第一溝部と前記第二溝部とが前記弁体内で連通するのを遮断する隔壁部とが形成されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項5】
請求項3または4に記載の医療用活栓において、前記第一溝部および前記第二溝部の少なくともいずれか一方には、前記弁体の軸方向に延びて形成される軸方向溝部が連結されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用活栓において、前記弁体の回動中心軸は、前記第一開口部の中心と前記第二開口部の中心とを結ぶ直線からオフセットしていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の医療用活栓において、前記第三分岐流路内には、前記隔壁部に液密的に当接可能に配置されるとともに、前記隔壁部から前記第三分岐流路の流路軸方向に延設された第二隔壁部が設けられていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項1】
内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、
前記弁体には、前記第一分岐流路および前記第三分岐流路に連通可能な第一連通流路と、前記第一連通流路が前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通しているとともに前記第二分岐流路との連通が遮断されているときに、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との双方に連通可能であるとともに前記第一分岐流路との連通が遮断される状態を採り得る第二連通流路とが形成され、前記第一連通流路と前記第二連通流路は、前記弁体内での連通が遮断されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項2】
請求項1に記載の医療用活栓において、前記弁体には、前記第一連通流路と前記第二連通流路とが前記弁体内で連通するのを妨げる隔壁部が形成されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項3】
請求項1または2に記載の医療用活栓において、前記第一連通流路は、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部であり、前記第二連通流路は、前記第一溝部に並行になるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部であることを特徴とする医療用活栓。
【請求項4】
内壁を有する筒状部と、前記内壁に開口する第一開口部を有するとともにこの第一開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第一分岐流路と、前記内壁に開口する第二開口部を有するとともにこの第二開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第二分岐流路と、前記内壁に開口する第三開口部を有するとともにこの第三開口部から前記筒状部の外方に向かって貫通して形成された第三分岐流路とを備える本体と、前記筒状部の内周側に装着されるとともに前記筒状部の軸周り方向に回動可能とされ、回動することによって前記第一分岐流路、前記第二分岐流路、前記第三分岐流路の連通および遮断を切換える弁体とを有する医療用活栓において、
前記弁体には、前記第一分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記弁体の外周に周方向に形成された第一溝部と、前記第二分岐流路と前記第三分岐流路との連通が可能となるように、前記第一溝部と並行に、前記弁体の外周に周方向に形成された第二溝部と、前記第一溝部と前記第二溝部との間に形成され、前記第一溝部と前記第二溝部とが前記弁体内で連通するのを遮断する隔壁部とが形成されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項5】
請求項3または4に記載の医療用活栓において、前記第一溝部および前記第二溝部の少なくともいずれか一方には、前記弁体の軸方向に延びて形成される軸方向溝部が連結されていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用活栓において、前記弁体の回動中心軸は、前記第一開口部の中心と前記第二開口部の中心とを結ぶ直線からオフセットしていることを特徴とする医療用活栓。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の医療用活栓において、前記第三分岐流路内には、前記隔壁部に液密的に当接可能に配置されるとともに、前記隔壁部から前記第三分岐流路の流路軸方向に延設された第二隔壁部が設けられていることを特徴とする医療用活栓。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−143830(P2007−143830A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341961(P2005−341961)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000228888)日本シャーウッド株式会社 (170)
【Fターム(参考)】
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