説明

医療用輸液チューブ

【課題】留置状態の間に患者が動いても捩れ合い難くて、接続部が外れるような事故が起こり難い安全性の高い医療用輸液チューブを提供すること。
【解決手段】医療用の輸液の流路を形成する可撓性の合成樹脂材からなる医療用輸液チューブ1であって、中心軸周りの一定方向に、他の部分1Bより可撓性が小さくて曲げ動作に対する抵抗が大きい硬質部1Aが同じ向きに形成されていることにより、留置状態の間に患者が動いても、硬質部1Aが外周側に位置する大きな弧状になって捩れ合った状態にはならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用輸液チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用輸液チューブは、体内への輸血、薬液或いは栄養液等の注入、又は体内からの排液(ドレナージ)や人工透析等を行うために、数時間以上にわたって留置されるものであり、可撓性のある合成樹脂材製のチューブで形成されている(例えば、特許文献1、2)。
【特許文献1】 特開2004−173844号公報
【特許文献2】 特開平8−52211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療用輸液チューブは一般に、高い位置に吊り下げられた輸液バッグ等に接続されて、チューブの先端に接続された穿刺具等が、その下方に横たわっている患者に穿刺された状態で長時間留置され、その間に患者が動くことは避けられない。すると、例えば図4に示されるように、輸液チューブ1が患者の動作で捩じれ合って弛みがなくなり(又は少なくなり)、引っ張られ易い状態になるため、その後の患者の動きによって接続部が外れてしまったり、輸液が正常に行われなくなってしまうおそれがあった。
【0004】
本発明はそのような問題を解決するためになされたものであり、留置状態の間に患者が動いても捩れ合い難くて、接続部が外れるような事故が起こり難い安全性の高い医療用輸液チューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
医療用の輸液の流路を形成する可撓性の合成樹脂材からなる医療用輸液チューブであって、中心軸周りの一定方向に、他の部分より可撓性が小さくて曲げ動作に対する抵抗が大きい硬質部が同じ向きに形成されている。
なお、硬質部が他の部分より硬質の合成樹脂材で形成されているとよく、硬質部が他の部分と同じ又は同系の材質で形成されていてもよい。また、硬質部が中心軸周りの四分の一周ないし四分の三周の範囲に形成されていてもよく、三分の一周ないし三分の二周の範囲に形成されているとより好ましい。また、硬質部が中心軸周りの略半周の範囲に形成されていてもよい。
【0006】
また、硬質部の硬度がJIS−K6253デュロメータータイプAの硬度に準拠した場合に、他の部分の2倍以上の硬度であるとよく、硬質部の硬度が60°ないし90°、他の部分の硬度が20°ないし30°であってもよい。そして、硬質部が全長にわたって形成されていてもよいが、硬質部が全長の一部分に形成されていてもよく、硬質部が形成されているのが全長のうちの0.5mないし1.5mの範囲であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の医療用輸液チューブによれば、中心軸周りの一定方向に、他の部分より可撓性が小さくて曲げ動作に対する抵抗が大きい硬質部が同じ向きに形成されていることにより、留置状態の間に患者が動いても、硬質部が外周側に位置する大きな弧状になって捩れ合った状態にはならないので、引っ張られれば真っ直ぐな状態に戻って、接続部が外れるような事故が起こり難く非常に安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。
図3は、医療用輸液チューブを示しており、医療用の輸液の流路を形成する可撓性の合成樹脂材からなる輸液チューブ1の一端側には、図示されていない輸液バッグ等に接続される接続針2が取り付けられ、他端側には図示されていない穿刺針等が接続されるコネクタ3が取り付けられている。ただし本発明においては、輸液チューブ1の両端にどのような部材が取り付けられていても差し支えない。輸液チューブ1は、例えばポリエチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、軟質塩化ビニル樹脂又はそれらの混合樹脂等のような可撓性を有する高分子材料により、全長にわたり内外径が一定の円形の断面形状に形成されている。ただし、途中で径が変化していてもよく、円形以外の断面形状であっても差し支えない。
【0009】
輸液チューブ1は、A−A線で切断した断面図である図1に示されるように、中心軸周りの略半周の範囲に他の部分より可撓性が小さくて曲げ動作に対する抵抗が大きい硬質部1Aが形成されていて、残りの部分が全部非硬質部1Bになっている。硬質部1Aは、中心軸周りの一定方向に同じ向き(即ち、中心軸から見て同じ方向)に、非硬質部1Bと硬度だけが相違する同じ材質で形成されている。したがって、硬質部1Aと非硬質部1Bとは製造時に溶融されたときに境界部で一体に融合している。ただし、硬質部1Aと非硬質部1Bとが同系の材質であれば融合性がよい。また、融合性がよければ、硬質部1Aと非硬質部1Bとが別の材質であっても差し支えない。
【0010】
硬質部1Aの硬度は、JIS−K6253デュロメータータイプAの硬度に準拠した場合に、非硬質部1Bの2倍以上の硬度を有している。具体的には、非硬質部1Bの硬度が20°ないし30°であるのに対して、硬質部1Aの硬度が60°ないし90°の範囲であり、輸液チューブ1は全長においてそのように構成されている。その結果、コネクタ3に接続された穿刺具等が患者に穿刺された状態で長時間留置された場合に、途中で患者が動いても、曲げ動作に対する抵抗が非硬質部1Bより大きい硬質部1Aが同じ向きに形成されている輸液チューブ1は、相対的に伸び難い硬質部1Aが全体において内周側に位置する大きな弧状になって、図4に示されるような捩れ合った状態にはならないので、引っ張り力が作用するとすぐに真っ直ぐな状態に戻って、接続部が外れたり輸液状態に異常が発生するような事故が起こり難く、安全性が非常に高い。
【0011】
なお、そのような特性を得るためには、硬質部1Aが必ずしも輸液チューブ1の断面の半周に形成されている必要はなく、硬質部1Aが輸液チューブ1の中心軸周りの四分の一周ないし四分の三の周の範囲(即ち、図2において90°≦θ≦270°)に形成されていればよく、三分の一周ないし三分の二周の範囲(即ち、図2において120°≦θ≦240°)に形成されていれば、より好ましい。また、硬質部1Aが必ずしも輸液チューブ1の全長にわたって形成されている必要もなく、例えば、輸液チューブ1の全長が1mないし3m程度ある場合に、硬質部1Aは、捩じれ合いが発生し易い部分を中心に全長の半分の0.5mないし1.5mの範囲に形成されていれば、捩じれ合い防止の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る医療用輸液チューブにおいて、図3に示されるA−A線で切断した輸液チューブの断面図。
【図2】本発明の実施の形態に係る医療用輸液チューブにおける、輸液チューブの変形例のA−A線で切断した断面図。
【図3】本発明の実施の形態の医療用輸液チューブの側面図。
【図4】従来の医療用輸液チューブが捩れ合った状態の側面図。
【符号の説明】
【0013】
1…輸液チューブ
1A…硬質部
1B…非硬質部(他の部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用の輸液の流路を形成する可撓性の合成樹脂材からなる医療用輸液チューブであって、
中心軸周りの一定方向に、他の部分より可撓性が小さくて曲げ動作に対する抵抗が大きい硬質部が同じ向きに形成されていることを特徴とする医療用輸液チューブ。
【請求項2】
請求項1に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が他の部分より硬質の合成樹脂材で形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項3】
請求項2に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が他の部分と同じ又は同系の材質で形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が中心軸周りの四分の一周ないし四分の三周の範囲に形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項5】
請求項4に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が中心軸周りの三分の一周ないし三分の二周の範囲に形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項6】
請求項5に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が中心軸周りの略半周の範囲に形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部の硬度がJIS−K6253デュロメータータイプAの硬度に準拠した場合に、他の部分の2倍以上の硬度である医療用輸液チューブ。
【請求項8】
請求項7に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部の硬度が60°ないし90°、他の部分の硬度が20°ないし30°である医療用輸液チューブ。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が全長にわたって形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項10】
請求項1から8の何れかに記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が全長の一部分に形成されている医療用輸液チューブ。
【請求項11】
請求項10に記載された医療用輸液チューブにおいて、前記硬質部が形成されているのが全長のうちの0.5mないし1.5mの範囲である医療用輸液チューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−254764(P2009−254764A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127686(P2008−127686)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(597089576)有限会社リバー精工 (65)
【Fターム(参考)】