説明

医療用電動式吸引器

【課題】 患者の体腔等から吸引ポンプの作動で吸引した排液を収容する集液バックと、その下流にオーバフローリザーバ用のクッション瓶30とを備え、これらを吸引ポンプに配管する気道回路を形成し、集液バックを本体に着脱自在に取り付ける医療用電動式吸引器において、クッション瓶や気道回路の状態を常時目視で確認可能とし、これらの回路部材の洗浄、廃棄、交換を容易に行うことができ、安全性を向上させた医療用電動式吸引器を提案する。
【解決手段】 本体10内に収納した吸引ポンプの吸引口に連通した接続口を本体10に形成し、この接続口に接続する気道回路の上流に位置する部材(配管チューブ類等)を、露出した状態で本体10に取り付け、これらの部材が取り外し自在であるとともに分解可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、患者の体腔等に貯留する気体(空気)及び液体(腹水、血液、膿)を排出するために用いる医療用電動式吸引器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
術後の患者の体腔等から空気、腹水、血液、膿等を吸引ポンプの作動で吸引し、これを
外部に排出する治療に医療用電動式吸引器が使用される。ドレナージを目的とした電動式吸引器で腹腔内に貯留する腹水や胸腔内に貯留する胸水や空気を持続的に排出する用途として、低圧持続吸引器や持続的胸腔ドレナージ等がある。吸引した排液を収容するプラスチック製の集液バックと、その下流にオーバーフローリザーバ用のクッション瓶とを備え、これらを吸引ポンプに配管する気道回路を形成し、本体内に吸引ポンプ及びクッション瓶を収納し、本体前面に、その吸引器専用の集液バックを着脱自在に取り付ける構造が一般的である。そして、吸引ポンプの作動による所定陰圧で腹水等を吸引し、これを集液バックに収容し、この使用済みの集液バックは廃棄処分されるが、本体内のクッション瓶及び気道回路は、特に交換することなく継続的に使用される。
【0003】
一方、医療用電動式吸引器は、患者の膿等の排液を収集するものであるから、機器内部を細菌等で汚染される潜在的リスクがあり、継続使用される回路部材に対しては、患者ごとに洗浄、消毒処理することが奨励されている。また、集液バックのオーバフロー等により、その下流の回路部材の感染が疑われる場合は、これらを廃棄、交換する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる医療用電動式吸引器の洗浄は、シリンジ等で洗浄液を気道回路に注入して行うが、本体内に収納された回路部材は、その様子や効果を目視で確認することができない。また、感染が疑われる回路部材を廃棄するには本体の分解、再組立ての作業が必要とされ、これらの部材の交換が極めて困難であるなど、安全上の課題がある。
【0005】
この発明は、こうした課題を解決することを目的とするもので、集液バックの下流のクッション瓶や気道回路の状態を常時目視で確認可能とし、回路部材の洗浄、廃棄、交換を容易に行うことができ、安全性の著しい向上を図った医療用電動式吸引器を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の構成は、患者の体腔等から吸引ポンプ15の作動で吸引した排液を収容する集液バック20と、その下流にオーバフローリザーバ用のクッション瓶30とを備え、これらを吸引ポンプ15に配管する気道回路を形成し、集液バック20を本体10に着脱自在に取り付ける医療用電動式吸引器において、本体10内に収納した吸引ポンプ15の吸引口に連通した接続口35を本体10に形成し、この接続口35に接続する気道回路の上流に位置する部材(配管チューブ類等)を、露出した状態で本体10に取り付け、これらの部材が取り外し自在であるとともに分解可能としたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載の構成は、本体10に凹部28、33、34を形成し、上記の部材を凹部28、33、34に収容するとともに、これらを保持するものである。
【0008】
請求項3に記載の構成は、本体10に、吸引圧を調圧する電磁弁40及び圧力センサ41の収納室42を形成し、この収納室42を蓋する取り外し自在のカバー43を設け、電磁弁40及び圧力センサ41を取り外し可能とするものである。
【0009】
請求項4に記載の構成は、集液バック20の上辺に沿った一対の取付孔21に挿通する一対のフック16を、本体10前面に突設し、各フック16を水平方向の溝17を無段階にスライド自在とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、従来本体10内に収納されていたクッション瓶30や配管チューブ類が、露出した状態で本体10に取り付けられ、その状態を常時目視で確認可能である。また、これらの継続使用される回路部材に直接アクセス可能であり、本体10から取り外して分解し、個別に洗浄することができ、集液バック20のオーバフロー等により感染が疑われる場合は、簡単に廃棄、交換することができ、安全性の著しい向上を図ることができる。
【0011】
請求項2の構成によれば、凹部28、33、34にクッション瓶30や配管チューブ類が収容、保持され、本体10に邪魔な突出部を無くすとともに、運搬時の振動等による外れや離脱を防止することができる。
【0012】
請求項3の構成によれば、電磁弁40及び圧力センサ41の汚染が疑われる場合に、カバー43を取り外してこれらの洗浄、交換を容易に行うことができる。
【0013】
請求項4の構成によれば、集液バック20の取付孔21の間隔に応じてフック16をスライドさせ、フック16の間隔を自由に設定することができ、専用のものに限定されずに様々な取り付け間隔の集液バック20が使用可能であり、汎用性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下にこの発明の最良の実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。
図面は、吸引ポンプの作動による所定陰圧で腹水等を持続的に排出する電動式低圧持続吸引器に、この発明を適用したもので、図1は側面図、図2は背面図、図3は平面図、図4は正面図である。図に示すように、膨出成形したフロントパネル11とリヤパネル12を接合して本体10が形成され、上面に運搬用の把手13を設け、本体10内に、吸引ポンプ15、所定制御回路からなるコントローラ、非常時用のバッテリ等を収納している。
【0015】
フロントパネル11の前面に、一方の接続口を吸引カテーテルと接続する集液バック20が取り付けられ、集液バック20の上辺に沿った一対の取付孔21に、フロントパネル11の前面上部に突設した一対のフック16を挿通し、集液バック20は着脱自在とされている。フロントパネル11の上面には、操作用タッチボタン、運転状態を示す液晶表示部等を設けた操作パネル19が形成され、リヤパネル12の上面端部に陽圧防止弁25が取り付けられ、集液バック20の他方の接続口と陽圧防止弁25がチューブ26で接続される。
【0016】
リヤパネル12の左半部に、十分な奥行きで上面に至る凹部28が形成され、凹部28の下半の空間に、クランプ31で保持してクッション瓶30が収容される。陽圧防止弁25とクッション瓶30はチューブ29で接続され、陽圧防止弁25から垂下するチューブ29は凹部28の上半の空間に収容されている。
【0017】
リヤパネル12の右半部下半位置に、同じく十分な奥行きの凹部34が形成され、凹部34の底面に、吸引ポンプ15の吸引口に連通した接続口35が形成されている。この接続口35に除菌フィルター36が取り付けられ、クッション瓶30と除菌フィルター36がチューブ32で接続される。チューブ32は、凹部28と凹部34を連通する湾曲した凹溝33に埋設され、離脱することがないように係止されている(図8参照)。
【0018】
リヤパネル12の右半部上方位置には、吸引圧を調圧する電磁弁40とこの電磁弁40に接続した圧力センサ41の収納室42が形成され、電磁弁40はチューブ44でチューブ29に連通されている。この収納室42を蓋する取り外し自在のカバー43が設けられ、図5に示すように、カバー43を取り外すことで、電磁弁40及び圧力センサ41を取り外し可能としている。
【0019】
図6に、フロントパネル11の上部を示す。図において、集液バック20の取付孔21に挿通する一対のフック16は、水平方向の溝17を無段階にスライド自在とされ、摘み18の回転でロック解除され、各フック16が独立してその横方向位置を設定可能とされている。したがって、集液バック20の取付孔21の間隔に応じてフック16の間隔を自由に設定することができ、様々な取り付け間隔の集液バック20を使用可能としている。
【0020】
図7に、この電動式低圧持続吸引器の気道回路の全体を示す。図に示すように、気道回路の上流から、集液バック20、陽圧防止弁25、クッション瓶30、除菌フィルター36の順に接続され、配管チューブ類を含むこれらの部材が全て露出した状態で本体10に取り付けられ、また、これらの部材は取り外し自在であるとともに分解可能である。除菌フィルター36は気道回路の最下流に位置し、本体10内の吸引ポンプの汚染が防止される。
【0021】
図8は、集液バック20を取り付ける前の状態を示す斜視図である。図に示すように、凹部28、凹溝33、凹部34に、クッション瓶30、除菌フィルター36、配管チューブ類が収容、保持され、リヤパネル12には邪魔な突出部が無く、露出した状態であるからこれらの回路部材に直接アクセス可能である。
【0022】
以上、電動式低圧持続吸引器におけるこの発明の適用例について説明したが、この発明は、同様の構成の他の医療用電動式吸引器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例の側面図
【図2】背面図。
【図3】平面図。
【図4】正面図。
【図5】カバーを取り外した状態の背面上部を示す説明図。
【図6】正面上部を示す説明図。
【図7】気道回路の全体を示す説明図。
【図8】集液バックを取り付ける前の状態の斜視図。
【符号の説明】
【0024】
10 本体
15 吸引ポンプ
16 フック
17 溝
20 集液バック
21 取付孔
28、33、34 凹部
30 クッション瓶
35 接続口
40 電磁弁
41 圧力センサ
42 収納室
43 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体腔等から吸引ポンプ15の作動で吸引した排液を収容する集液バック20と、その下流にオーバフローリザーバ用のクッション瓶30とを備え、これらを吸引ポンプ15に配管する気道回路を形成し、集液バック20を本体10に着脱自在に取り付ける医療用電動式吸引器において、
本体10内に収納した吸引ポンプ15の吸引口に連通した接続口35を本体10に形成し、この接続口35に接続する気道回路の上流に位置する部材(配管チューブ類等)を、露出した状態で本体10に取り付け、これらの部材が取り外し自在であるとともに分解可能としたことを特徴とする医療用電動式吸引器。
【請求項2】
本体10に凹部28、33、34を形成し、請求項1に記載の部材を凹部28、33、34に収容するとともに、これらを保持した医療用電動式吸引器。
【請求項3】
本体10に、吸引圧を調圧する電磁弁40及び圧力センサ41の収納室42を形成し、この収納室42を蓋する取り外し自在のカバー43を設け、電磁弁40及び圧力センサ41を取り外し可能とした請求項1又は2に記載の医療用電動式吸引器。
【請求項4】
集液バック20の上辺に沿った一対の取付孔21に挿通する一対のフック16を、本体10の前面に突設し、各フック16を水平方向の溝17を無段階にスライド自在とした請求項1、2又は3に記載の医療用電動式吸引器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−20658(P2006−20658A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198637(P2004−198637)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(596170103)株式会社興伸工業 (3)
【Fターム(参考)】