説明

医薬品の品質を判断するための方法及びシステム

サーモグラフィ画像を使用して、製造プロセスにおける薬剤108の品質パラメータをモニタリングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製造プロセスに関し、特に製造プロセス及びその製品の信頼性及び品質保証(QA)に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス分析技術(PAT)が、重要な品質特性に影響を及ぼす重要なプロセスパラメータの測定を通した医薬品製造プロセスの設計、分析、及び制御のためのメカニズムとして、米国食品医薬品局(FDA)によって既定されている。このようなコンセプトは、重要なプロセスパラメータを既定し、それに沿ってタイムリーにそれらをモニタリングすることによって、プロセスを理解することを目的としており、プロセスが過剰にならず整合性が促進されたより効果的な品質保証検査を得る。
【0003】
PATで現在使用されている様々な分光学的方法が、分子を識別するはっきりした特徴を与える。分子のオーバートーン及び複合振動に基づく近赤外分光法(NIRS)は、電磁スペクトルの近赤外領域を利用するものであり、様々な分子を特徴付ける。ラマン分光法は、分子によるフォトンの非弾性散乱に基づくものであり、振動、回転及び他の低周波モードを調査するものである。
【0004】
様々な開示が、製造プロセスの際のIRの分光法を議論している。
【0005】
Naughtonらの米国特許第6,395,538号は、その場のバイオ製造プロセスのリアルタイムのモニタリング及びIR分光法に応じた制御を提供するための方法及びシステムを開示している。
【0006】
Goetz A.の米国特許第6,853,447号は、薬剤又は食品といった製品のパッケージの内容物を確認するための方法を開示しており、この方法は一列のIR画像分光計を利用するものである。
【0007】
Paige M.E.らの米国特許第7,126,685号は、薬品ビンといった容器のサンプルを特徴付けるための分光学的方法を開示している。
【0008】
DE19908410は、品物が本物であるかどうかを検査するためのプロセスを説明しており、検査物が熱放射感応装置を用いて所定の温度まで加熱され、品物から放射される熱が検出され、品物が本物であることを判断するのに使用される。
【0009】
DE19629101は、温度感応センサ温度IRカメラによって、パッケージ及びその内容物を特定、検査及び制御するためのユニットを説明しており、偽の内容物を見分けて取り除く。
【0010】
FDAのPATの取り組みは、医薬品製造プロセスの一定のモニタリングのための新たな分析技術の開発を奨励している。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、製造プロセスによって得られる物質の品質を確認するために、製造プロセスをモニタリングするためのサーモグラフィ画像を利用する新たな概念に基づく。
【0012】
このため、一態様では、本発明は、製造プロセスで得られる物質の品質を判断するための方法を提供し、この方法は:
(a)その視野における中波長から非常に長い波長までの物質の放射を検出するよう動作し得るIR検出器によって物質の赤外線(IR)画像を生成するステップと;
(b)IR画像を処理して物質の品質を示す出力を発生させるステップと;
(c)出力を表示又は出力を利用して、又はそれを組み合わせて、製造プロセスを変更するステップと;
を具える。
【0013】
別の態様では、本発明は、製造プロセスで得られた物質の品質を判断するためのシステムを提供しており、このシステムは:
(a)中波長から非常に長い波長までの物質の放射をその視野で検出し、物質からそれぞれのIR画像を生成するよう動作し得るIR検出器を具えるIR画像生成装置と;
(b)IR画像を処理して物質の品質を示す出力を生成するための処理ユーティリティと;
(c)出力を表示するよう又は出力を利用して製造プロセスを変更するよう又はそれらを組み合わせるよう構成された制御ユニットと;
を具える。
【0014】
また、本発明の範囲内で、パッケージが本物であるかどうか又はパッケージの品質を判断するための方法が提供され、この方法は:
(a)パッケージをその視野で検出するよう動作し得る、近赤外線(NIR)、紫外線(UV)又は超音波(US)検出器によって、1又はそれ以上のパッケージの画像を生成するステップと;
(b)参照パッケージを具えた1又はそれ以上のパッケージの画像を具えるステップと;
(c)比較又は比較を表す定量値を示すことで、パッケージが本物であるかどうかを判断し得るステップと;
を具える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明を理解し、実際にどのように実施するのかを理解するために、ここで、添付図面を参照して実施例を単なる非限定的な例で説明することとする。
【0016】
【図1】図1A及び1Bは、本発明の非限定的な実施例で使用される2つのプロトタイプのシステムを示しており、第1のプロトタイプは、冷却InSb検出器(図1A)を使用し、第2のプロトタイプは非冷却VOx検出器(図1B)を使用する。
【図2】図2A及び2Bは、本発明の一実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図2A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図2B)得られた、2mm(画像の上部)及び1mm(画像の下部)の間でのNaCl粒子の画像の比較を示す。
【図3】図3A及び3Bは、本発明にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図3A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図3B)得られた、乾燥(画像の上部)及び湿った(画像の下部)ACAMOL(登録商標)粉末薬剤間での比較した画像を示す。
【図4】図4A及び4Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図4A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図4B)得られた、高含水率(画像の上部)及び低含水率(画像の下部)のACAMOL(登録商標)粉末薬剤間で比較した画像を示す。
【図5】図5A及び5Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図5A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図5B)得られた、高含水率(画像の上部、湿った点として現れている)及び低含水率(画像の下部)のトウモロコシ粉の間で比較した画像を示す。
【図6】図6A及び6Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図6A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図6B)得られた、様々な形態(上側のサンプルは下側のサンプルよりも密ではない)のトウモロコシ粉の間で比較した画像を示す。
【図7】図7A及び7Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図7A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図7B)得られた、異なる温度(画像の上部は20℃、画像の下部は35℃)でのトウモロコシ粉の間で比較した画像を示す。
【図8】図8A及び8Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図8A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図8B)得られた、熱気に晒されて画像に熱気の分散が観察されるサンプル間で比較した画像を示す。
【図9】図9A及び9Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図9A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図9B)得られた、CIALIS(登録商標)の真正製品(画像の上部)と偽の粉末(画像の下部)間で比較した画像を示す。
【図10】図10A及び10Bは、本発明の実施例にしたがって8乃至12μmの波長範囲の非冷却VOx検出器を用いて(図10A)及びCCD(VIS)カメラの使用によって(図10B)得られた、VIAGRA(登録商標)の本物のパッケージ(各図の右側のパッケージ)と偽のパッケージ(画像の左側のパッケージ)間で比較した画像を示す。
【図11】図11A乃至11Dは、サーモグラフィの長波長ボロメータVOxカメラ(図11A)、NIR InSbカメラ(図11B)及びCCD(VIS)カメラ(図11C)で得られた、本物のVIAGRA(登録商標)と偽のパッケージ間で比較した画像を示す。
【図12】図12A及び12Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図12A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図12B)得られた、様々な投与においてエナラプリル活性化合物のブリスター間で比較した画像を示す。
【図13】図13A及び13Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図13A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図13B)得られた、10mg(左側)及び20mg(右側)のエナラプリル活性成分を含むENALADEX(登録商標)パッケージ間で比較した画像を示す。
【図14】図14A及び14Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図14A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図14B)得られた、錠剤を含むAlu−Aluブリスタータイプのパッケージ間で比較した画像を示す。
【図15】図15A及び15Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図15A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図15B)得られた、異なる量の水を含む2つの不透明はボトル間で比較した画像を示す。
【図16】図16A及び16Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図16A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図16B)得られた、2つのタイプの辛口赤ワインのボトル、すなわち第1の製品であるBARKAN(登録商標)ワイン及び第2の製品であるSEGAL(登録商標)ワイン間で比較した画像を示す。
【図17】図17A及び17Bは、本発明の実施例にしたがって3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を用いて(図17A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図17B)得られた、プラスチック製品を含む白砂糖粒子間で比較した画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(「熱画像」という用語でも知られる)サーモグラフィ画像は、物質から発せられる放射が材料にわたる様々な場所での温度及び放射率に基づいて(黒体放射の法則に従って)検出される赤外線画像のタイプであり、画像が検出された温度及び放射率にしたがって生成される。特に、物質から発せられる放射量温度にしたがって増加するため;サーモグラフィは温度及び放射率の変化を見ることができる。サーモグラフィカメラを見る場合、暖かい材料が冷たい背景に対して際立つ。
【0018】
このため、一態様では、本発明は、製造プロセスで得られる物質の品質を判断するための方法を提供し、この方法は:
(a)その視野における中波長から非常に長い波長までの物質の放射を検出するよう動作し得るIR検出器によって物質の赤外線(IR)画像を生成するステップと;
(b)IR画像を処理して物質の品質を示す出力を発生させるステップと;
(c)出力を表示又は出力を利用して、又はそれを組み合わせて、製造プロセスを変更するステップと;
を具える。
【0019】
別の態様によれば、本発明は、製造プロセスで得られた物質の品質を判断するためのシステムを提供しており、このシステムは:
(a)中波長から非常に長い波長までの物質の放射をその視野で検出し、物質からそれぞれのIR画像を生成するよう動作し得るIR検出器を具えるIR画像生成装置と;
(b)IR画像を処理して物質の品質を示す出力を生成するための処理ユーティリティと;
(c)出力を表示するよう又は出力を利用して製造プロセスを変更するよう又はそれらを組み合わせるよう構成された制御ユニットと;
を具える。
【0020】
ある実施例では、物質の放射は、中波長のIRから非常に長いIRまでの波長範囲であり、物質の放射は中波長のIR、長波長のIR及び非常に長い波長のIRから選択される特定の波長である。この目的を達成するために、このシステムは以下で説明するような1又はそれ以上のIRフィルタを有する。
【0021】
本発明の方法及びシステムは、品質保証が要求される任意の材料の製造に関して適用できる。ここで使用される「物質」という用語は、最終製品の製造で行われるプロセスにおいて、最終製品とともに(入ってくる原材料を特定及び確認するための)出発(原)材料、中間材料を構成する物質の組み合わせとともに1つの物質を含む。時として、「材料」又は「パッケージ」という用語(例えば後者では、製造プロセスでの最終製品を称する場合)と「製品」を相互に使用する。
【0022】
産業界で熟知されているように、本発明が適用可能な方法に関する最終製品の非限定的なリストがある。このような最終製品は、薬剤といった医薬品;化粧品;(例えば宝石が作られた材料の純度といった宝石の品質を判定するための)宝石;農薬;例えばソフトドリンク、牛乳、水、ワインといった飲料、例えば魚、肉、パンといった食品又は例えば砂糖、小麦粉といった食品サプリメント製品;燃料(成分又はその純度);塗料;又は品質の判定を必要とする他の製品を含む。製品の品質を保証するためにこのような製品の中の異物の存在を判断するのに本発明の方法及びシステムを適用できることに留意されたい。
【0023】
ここで使用される「異物」という用語は、製品に含まれることを意図しない任意の物体又は粒子状物質を示す。異物は、例えば、ヒレ肉に残留した骨といった製品の原料に由来する物体、又は準備の際に材料に意図せずに導入されたものとすることができる。このような物体の非限定的な例は、プラスチック、ガラス、砂、残留した骨又は骨の粒子を含んでいる。
【0024】
また、本発明は、保存の後の製品の品質を確認するために及び/又は保存の後に製品の品質に基づいて製品の保存状態が適切であったか否かを判断するために適用し得る。本発明のシステムの方法に基づいて判断される保存のパラメータは、保存の際の湿度及び/又は温度を含むがこれらに限定されない。
【0025】
また、本発明は、例えば偽造といった偽の製品である場合に製品の品質を判断するために適用できる。例えば、以下で説明するように、最終製品は真正製品のパッケージと比較して本発明にしたがって分析すべきパッケージである。
【0026】
さらに、本発明の状況では、最終製品は、ドラッグストア、病院等で患者に与えられる薬剤が有効であると認証すること(すなわち、患者に与えられる意図する薬剤/投与であったことを認証すること)に関する。これは、配布される薬剤が、ラベルを具えた個々に密封されたパッケージで包装されず、大きな容器で販売業者に提供される場合に特別な関連性がある。偶然にも、時としてドラッグストアでは、様々な容器の様々な薬剤が意図せずに混ざるが、本発明の方法及びシステムを使用して、意図しない混合にもかかわらず消費者が正しい薬剤を受け取ったことを確認する。
【0027】
さらに、本発明の方法及びシステムを使用して、適切なパッケージを確認し及び/又は製品のパッケージの穴又は破損といった目では見付けることができない欠陥の検出をするとともに、製品のラベルすなわちパッケージと素の中に含まれる製品との関係を確認できる。
【0028】
1つの好適な実施例では、製品は薬剤であり、医薬品の製造プロセスの品質保証を確認するために本発明の方法及びシステムを適用できる。
【0029】
生成されるIR画像は、受動的サーモグラフィ又は能動的サーモグラフィによって生成されるサーモグラフィ(熱)画像である。
【0030】
「受動的サーモグラフィ」という用語は、定常温度(すなわち、物質の予熱又は冷却なし)の物質から発せられる放射の画像の生成を表すことを理解すべきである。「能動的サーモグラフィ」という用語は、定常平衡状態から非定常状態に物質の温度が変化するように、物質が加熱又は冷却(例えば、熱パルス、連続的な熱放射又は周期的(正弦波)変調)を受けた後に、物質の1又はそれ以上のIR画像の生成を表すことを理解すべきである。
【0031】
一実施例では、本発明の方法及びシステムが、能動的サーモグラフィを利用するものであり、すなわち、本方法及びシステムが物質への少なくとも1の熱パルスの適用を含む。熱パルスは、放射、又は温度伝導、温度対流、摩擦等、又はターゲットとする物質に温度変化を誘導するための他の適用可能な方法で適用できる。熱パルスにより、物質に熱を適用することによって又は物質を冷却することによって又は例えば、加熱後の冷却又は冷却後の加熱といった(例えば、デルタ関数)それらの組み合わせによって、物質の温度に変化が起きる。
【0032】
熱パルスを、周期的変調とともに、例えば加熱パルス又は冷却パルスといった1つの熱パルスとして、1又はそれ以上の一連の熱パルスとして、物質に適用できる。パルスの時間は1秒未満から最大数分である(一般に、3分未満である)。
【0033】
当技術分野で知られた様々な熱パルス発生器によって熱パルスを物質に適用できる。このような装置は、レーザビーム、IRランプ、マイクロ波、超音波、超音波、冷却チャンバ、加熱炉、(加熱及び冷却両用の)熱電子チップ(TEC)、(加熱及び冷却両用の)黒体放射源、(加熱及び冷却両用の)ガス膨張、冷蔵庫及び熱安定化チャンバを含むが、これらに限定されない。
【0034】
本発明によれば、物質を加熱、冷却又はそれらを組み合わせることができることに留意されたい。それにもかかわらず、基本的に加熱又は冷却は、物質が損なわれる、例えば過度の加熱又は濃縮による分解又は過度の冷却による凍結が起きるような所定の温度閾値を(それぞれ)超えて上下するものではない。このような温度閾値は、一般に、真正材料の製造者によって与えられる。さらに、一実施例では、物質を例えば約15℃に冷却し、冷却の後に任意に物質を室温(22℃〜25℃)に、又は例えば限定されないが約30℃乃至約35℃に室温を超えて加熱する。
【0035】
能動的サーモグラフィは、いくつかの構成で使用される。例えば:
【0036】
反射:物質の表面を加熱及び/又は冷却し、同時に物質の表面から反射されるIRが検出される;物質の表面を加熱及び/又は冷却し、加熱源又は冷却源を除去して、物質の表面から発せられるIR放射を検出する。
【0037】
バルク加熱/冷却:(例えば、加熱又は冷却チャンバでの)物質全体の加熱及び/又は冷却、加熱及び/又は冷却と同時又はそれに続く検出、物質の塊から伝わる熱のIR放射(バルク放射)
【0038】
伝達:物質の背面を加熱及び/又は冷却し、伝達する加熱/冷却パルスを物質の正面から測定する。
【0039】
一実施例では、物質に適用される熱パルスが、デルタ関数熱パルス、ステップ関数熱パルス、矩形関数熱パルス、鋸歯関数熱パルス、周期関数熱パルス又はそれらの組み合わせの形式の熱パルスであるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の方法及びシステムにより、中波長IR(MWIR)から非常の長い波長のIR(VLWIR)までの物質の放射をその視野において検出するよう動作可能なIR検出器を具える画像生成装置の使用によって、IR画像の生成が可能となる。本発明の状況では、放射が3μm乃至約20μmを含み、すなわち、3乃至5μmの間のMWIR;8乃至12又は7乃至14μmの間のLWIR;本発明の目的では12乃至20μmの間のVLWIRを含んでいる。本発明では、5乃至8μmの範囲の物体から発せられる放射を吸収する水分子の固有の傾向を使用して、(例えば、サンプルにおける湿った領域の特定のために)検査用サンプルにおける水分子の存在を検出する。このような検出は、(物体の長距離の検出とは対照的に)検出用サンプルと検出器との間の比較的短い距離(一般に、数センチ乃至数メートル)により、このような距離では水分子の大気吸収を無視できることで検出を妨げず、本発明で可能である。
【0041】
当技術分野で知られた様々な装置によってIR画像を生成できる。一般に、他を排するものではないが、レンズの焦点面に1列の光検出ピクセルを具える画像検出装置である焦点面アレイ(FPA)の使用によってIR画像を生成する。この目的を達成するために、IR検出器が光配列とともに動作可能である。光配列は、IR検出器又は屈折、反射、ピンホール、回折等によってIR放射を集束し得る他の光デバイスに物質の放射を集束するためのレンズ;検出された放射を所定のスペクトル範囲に制限するためのフィルタ;非偏光ビーム又は組み合わさった偏光ビームを、1つの偏光状態のビームに変換するための偏光板(例えば、同調可能な偏光板);光等を散乱させるための拡散器;を具える。一般に、本発明ではFPAの使用が好適であるが、時として、シングルピクセルの検出器の使用が最適である。このような目的のために、シングルピクセルの検出器を、サンプルの像を取得すえように置かれたミラーの配列と組み合わせて使用できる。
【0042】
当業者に知られているように、光配列を調整して、IR透過とともにIR反射を捕らえる。IR放射は製品の表面から発せられ、バルク材料の温度とともに表面の温度を反射する。
【0043】
光配列と組み合わせたIR検出器を使用して、グレースケール又はカラーのIR画像を生成できる。さらに、一般に、画像は2次元(2D)画像であるが、生成するために、3次元(3D)[x,y,時間(フレーム)]画像を本方法を同じように使用できる。3D画像は、画像を生成するためのさらなるパラメータとして、例えば時間、波長、偏光を考慮に入れる。この方法は、さらに、例えば、時間の関数)[x,y,信号(λ)/時間(フレーム)]として化学的画像を適用することによって、4次元(4D)画像を生成するために使用できる。このように、座標[x,y]を時間、波長、偏光のうちの1又はそれ以上と組み合わせることによって、画像を生成できる。
【0044】
一実施例では、本発明のシステム及び方法が、MWIRのサーモグラフィベースの化学的画像をVLWIRに適用するために、同調可能なバンドパスフィルタを有する。サーモグラフィベースの化学的画像は、様々な波長における一連の画像からの画像の生成に関する。したがって、画像の各ピクセルは、例えば適用された熱の結果として、画像全体の点のスペクトル挙動を示す(受動的サーモグラフィとともに能動的サーモグラフィで化学的画像を取得できる)。化学的画像は、同調可能なフィルタでサーモグラフィ信号(受動的又は能動的)を測定し、その後で3D画像をそれから作製することによって取得される。さらに、[x,y,信号(λ)/時間(フレーム)]に基づいて4D画像を取得するように、4次元、すなわち時間を考慮に入れる。
【0045】
光配列を有するIR検出器は、一般に、IR(サーモグラフィ)カメラに関する。FPAを利用する最も一般的なタイプのカメラは、アンチモン化インジウム(InSb)カメラ、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)カメラ、水銀カドミウムテルル(MCT)(HgCdTe)カメラ、又は量子井戸赤外光検出器(QWIP)カメラ、非冷却酸化バナジウム(VOx)カメラ、非冷却アモルファスシリコン(aSi)カメラであるが、これらに限定されない。
【0046】
そして、サーモグラフィカメラを使用して取得されるIR画像が、撮像された物質の品質及び/又は信頼性を示す出力に処理される。出力は、例えば、ユーザによる目視検査及び意思決定のための適切な表示ユニットで動かされる画像の形式であり、又は出力は、物質の品質を示す物質の1又はそれ以上のパラメータであり、すなわち、撮像された画像を特徴付ける1又はそれ以上のパラメータが専用のIR画像処理ユーティリティによって処理される。ここで「物質のパラメータ」と称するパラメータを使用して、物質の品質に関する情報を提供する(製造プロセスによって取得される)物質の何らかの特徴を示す。パラメータは、含水率、湿度分布、物質の密度、物質の粒度及び粒度分布、多形構造、結晶構造、温度及び温度分布、均質性、形態、テクスチャ、空孔率、製品の適切なコーティング(例えば、コーティングされた錠剤又はカプセルの製造では、コーティングが均一であるかを確実にするために)、例えば、密封したブリスターの錠剤が欠落した場合又は容器の液体が無くなっており又は必要とするものよりも少ない場合に欠落した物質、例えば製品が破損、破壊又は不完全な場合に物質の完全性、IR画像から推定される物質の信頼性及び他の特徴的態様から成る群から選択される1又はそれ以上を有するが、これらに限定されない。
【0047】
パラメータは、比較可能な値、すなわち所定の閾値パラメータと比較される値の形式である。「所定の閾値パラメータ」という用語は、同じ物質に関して要求される基準を満たす品質を具えた参照物質に基づいて予め規定された基本的に区別できる値又は値の範囲を示すようここで使用される。
【0048】
画像処理は、画像コントラスト解析、エッジ検出、画像演算、画像間の相互相関、画像間又は画像から所定のカーネルへの畳み込み、空間的周波数変換及び/又は空間的フィルタリング法、時間周波数変換及び時間フィルタリング法、フーリエ変換、離散フーリエ変換、離散余弦変換、形態学的な画像処理、山及び谷(低強度及び高強度の領域)の発見、画像輪郭の認識、境界の追跡、線の検出、テクスチャ解析、ヒストグラム平坦化、画像のぼやけの修正、クラスター解析等を使用し、これらは総て画像処理の技術で知られている。
【0049】
一実施例では、MATLAB(The Mathworks,Inc)ソフトウェアを用いて画像処理を実施する。認められているように、当技術分野で知られた画像及び信号処理アルゴリズムを、本発明の状況で同じように適用できる。解析は、空間ドメイン又は時間ドメイン又は双方である。
【0050】
一実施例では、出力が、例えば所定の閾値と比較して検査する物質の画像に以上が存在することを示すために、座標(x,y)又は複数の座標[(x,y),(x,y)...]の形式である。
【0051】
また、所定の閾値パラメータは、測定される物体の画像と比較されるデータベースの画像とすることができ、2つの画像間の相関関係が所定の閾値を超える場合に本物と見なされ、そうでない場合に、低品質/不適合又は偽物と見なされる。
【0052】
そして、取得されたIR画像から推定される物質のパラメータは、特定の製造プロセスに関する予め規定された閾値パラメータと関連付けられ(比較され)、相関関係が出力応答となる。例えば、物質のパラメータが(時間0.1又は0.05でP値が0.5以下であるtテストといった従来の統計的な検査による)閾値パラメータと統計的に顕著に異なる場合、出力は欠陥を有する物質に対応する;物質のパラメータが閾値パラメータの範囲内にある場合、出力が所望の品質を具えた物質に対応する。
【0053】
本発明にしたがって取得されたサーモグラフィ画像を、画像融合として当技術分野で知られたものを形成するために、近IR(例えば、シリコン、InSb又はInGaAs検出器を用いたNIR)、可視光(例えば、CCDカメラを用いたVIS)、紫外線(UV検出器を用いたUV)、(テラヘルツ検出器を用いた)テラヘルツ、及び従来の超音波検出器を用いた超音波(US)のうちの1又はそれ以上から選択される波長で取得された画像と組み合わせることによって処理できることに留意されたい。得られた組み合わせ画像は、このような画像の融合である。画像の融合は、画像全体又は画像の選択部分の融合である。画像の融合技術は、当技術分野で知られており、1又はそれ以上の画像を一方を他方の上に重ね合わせ得るデバイスを有する。
【0054】
本発明によれば、出力を表示し及び/又はプロセスの変更の原因とする。例えば、出力が欠陥のある物質に対応する場合、すなわち、最終製品に向けてさらに処理できない低品質の物質の場合、又は満足のいく品質を具えた最終製品として見なすことができない場合、このプロセスを終了し、このようなプロセスを繰り返し、異なる製造プロセスに物質を向け、プロセス条件を変更する等によって、このプロセスを変更する。さらに、物質が低品質に関する適切な通知が作成され、このような通知が可視的なディスプレイユニット(例えば、モニタ)に表示され、及び/又は(音声デバイスを用いて)音声警報を生成する。
【0055】
一実施例では、本発明のシステムが、製造プロセスの履歴及びそれに対応する出力;プロセス変更等を記録するために、製造プロセスの所定の閾値パラメータの1又はそれ以上の記憶データベースのメモリを具える。
【0056】
動作中に、物質のパラメータが、データベースからの所定の閾値パラメータと、又は所望の条件及び/又は特定の製造プロセスに関する閾値パラメータの入力が可能なユーザインタフェースを使用することによって、製造プロセスを開始する前にユーザ(システムのオペレータ)によって規定される所定の閾値パラメータと比較される。そして、物質のパラメータが、データベースからの又はシステムに導入される閾値パラメータと関連付けられる。
【0057】
相関の結果は、オンラインの出力を与える。換言すれば、出力が、物質が不良品であることを示す場合、システムはユーザに即座に警告するよう構成され、時として製造プロセスを自動的に変更する。同様に、出力が、物質が所望の品質であると表示する場合、対応する通知が生成され、その後、物質は次の処理段階又は完了段階に自動的に進められる。
【0058】
さらに、品質及び包装品の信頼性が、(例えば、シリコン、InSb、InGaAs検出器又は非冷却VOx検出器を用いた)NIR、(例えば、InSb検出器を用いた)MWIR、(例えば、CCDカメラを用いた)VIS、(UV検出器を用いた)UV、(テラヘルツ検出器を用いた)テラヘルツ、及び(従来の超音波検出器を用いた)USの波長のうちの1つから取得されるパッケージの画像の分析を介して判定されることが、発明者によって予測される。これらの波長のうちの1又はそれ以上の画像を取得するために、(大部分はNIR及び/又はVISスペクトルの検出器を用いて画像が生成される場合に)製品が好適には光に晒され、その後で、反射光から画像が取得される。ある実施例では、光照射が例えば35ワットのハロゲン光の照射であり;他の実施例では、光の照射が電球からの光であり;さらに他の実施例では光がUV光である。
【0059】
このように、本発明のさらなる態様では、パッケージ又はパッケージの品質の信頼性を判断するための方法が提供されており、この方法は:
(a)可視光(VIS)検出器に、近IR(NIR)検出器、紫外線(UV)検出器、超音波(US)、MWIR検出器又はテラヘルツ検出器によってパッケージの1又はそれ以上の視野内での画像を生成するステップであって、1又はそれ以上の画像がVIS検出器によって又はNIR検出器によって生成され、パッケージが画像生成の間に照射され、1又はそれ以上の画像がVIS検出器によって生成され照射がUV光であるステップと;
(b)参照パッケージ(例えば、信頼性のあるパッケージの画像)とパッケージの1又はそれ以上の画像とを比較するステップと;
(c)比較又は比較を表す定量値を表示することで、パッケージの信頼性を判断し得るステップと;
を具える。
【0060】
パッケージの信頼性又はパッケージの品質を判断するための上記の方法を実施するために、上述のシステムは、検出器がNIR、VIS、UV、テラヘルツ、及びUS検出器であることを除いて使用される。
【0061】
ある好適な実施例では、パッケージの信頼性又はパッケージの品質を判断するための本方法が、1又はそれ以上の画像を取得する間にパッケージを照射するステップを具える。
【0062】
さらに、ある実施例では、照射が、ハロゲン光、UV光、及び電球から成る群から選択される光源を用いて実施されるが、これらに限定されない。
【0063】
上述のように、本発明のシステムは、(IR検出器を含む)IR画像生成器、光学配置、プロセシングユーティリティ、メモリ、ユーザインタフェース等を含むいくつかの構成要素を具える。当業者に認められているように、これらの構成要素は、有線又は無線通信モジュールを用いて通信できる。
【0064】
ここで、本発明の一実施例に係るサーモグラフィ画像システムを例示する図1Aを参照することとする。図によれば、システム(100)が、特に、SCD(半導体デバイス)で作製されたアンチモン化インジウム(InSb)IR検出器といった冷却検出器、OPHIR光学素子で作製された光学配置(104)及びCI機器によって作製された黒体放射源(106)を有する。試験材(108及び108’)が、黒体放射源(106)の上部の平らなガラス板(110)の上に置かれている。また、このシステムは、IR画像を処理して材料の質を示す出力を生成するための処理ユーティリティー(112)を有する。処理ユーティリティーは、検出器(102)から得られるアナログ信号をデジタル信号に変換し、一連のデジタル信号を画像フォーマットに変換するよう使用される。また、このシステムは、上述の構成要素を制御し出力を表示するための、又は出力を利用して製造プロセスを変えるための、又はその組み合わせのための制御ユニット(図示せず)を有する。
【0065】
図1Aに示す特定の実施例では、検出器(102)が、一般にMWIR領域の放射線の検出のためであるがこれに限定されない冷却検出器を具える。同様に、このシステムは、一般にVLWIR範囲とともにLWIRでの放射線の検出であるがこれに限定されない非冷却検出器を有する。これに関連して、図1Bは、非冷却検出器を使用するシステム200を示す。簡単のために、図1Aで使用されているのと同じ符号に(100)を加えたものを、図1Bと同じ機能を有する部品を特定するために使用する。例えば、図1Aの冷却検出器(102)が図1Bの冷却VOx検出器(202)に置き換えられる。図1Bは、本物の薬品包装(208)及び偽の包装(208’)が置かれた試料ホルダ(214);非冷却VOx検出器(202)及び光学配置(204)を示す。また、制御及び表示ユニット(216)を示す。このような特定の実施例では、試験材は黒体の上に置かれず、画像取得の前に冷却された。包装の中の製品の違いがモニタに表示され、本物の薬品包装(208)の画像が画像(220)として示され、偽の包装が異なる画像(220’)を示す。
【0066】
非限定的な実施例では、InSb検出器(102)の使用がMWIR(3乃至5μmの範囲の波長)の検出を可能にする一方、VOx検出器(202)の使用がLWIR(8乃至12μmの範囲の波長)の検出が可能である。
【0067】
ここで、上記とともに本発明を非限定的な方法で示す以下の非限定的な実施例を示す。以下の非限定的な実施例は、能動的熱パルスを適用した後の10秒の特定の時間、空間的ドメインに基づき、時間ドメイン及びその組み合わせが等しい結果の値を有する。
【0068】
非限定的な実施例の説明
概要
以下の非限定的な実施例の図2乃至17において、検出した試料のサーモグラフィ画像を、冷却検出器の640×512の個々の画素及び非冷却検出器の384*288の個々の画素を具える検出器アレイを用いて示す。様々な実施例で生成される画像は、カラーディスプレイを含むことに留意されたい。このため、本発明の方法及びシステムにより、ここで説明されるグレイスケール画像と比較して、所望の製品との不一致の特定が容易である色の違いを使用する様々なサンプルにおいて比較できる。
【0069】
実施例1:粒径の大きさのモニタリング(2つの異なる大きさのNaCl粒子)
サンプルの調整:
直径約1mmの大きさ及び直径約2mmのわずかな量のNaCl粒子を、黒体放射源の上部の平らなガラスプレートにそれぞれ置いた。
【0070】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源の温度を15℃に設定した。次に、温度のステップ関数を用いて、コントローラを15℃(黒体の初期温度)乃至20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲットを適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、被検体のIR画像を生成した。
【0071】
結果
図2A及び2Bは、本発明の一実施例に係る方法及びシステム(図2A)及びCCD(VIS)カメラ(図2B)によって得られた、異なる大きさのNaCl粒子間での比較を示す。特に、図2A及び2Bの上部は、約2mmの直径のNaClの粒の画像を示しており;図2A及び2Bの下部は、約1mmの直径のNaClの粒の画像を示す。NaCl粒子の大きさの差はCCD画像(図2B)では区別できないが、生成されたサーモグラフィ画像(図2A)では明らかに見ることができた。
【0072】
得られた画像を視覚的に解析したが、測定された粉末のIR信号強度を、2次元画像に空間的なフーリエ変換を適用して主要な空間周波数を解析することによって、解析できることが明らかであるが、これに限定されない。後で、2次元画像のヒストグラム及び標準偏差を適用できる。様々な大きさの粒子をその空間周波数から区別することが明らかである;粒径が大きくなるほど、その主要な空間周波数が低くなり、又はその逆がいえる。
【0073】
実施例2:含水率のモニタリング(乾燥及び含水ACAMOL(登録商標))
サンプルの調整:
ACAMOL(登録商標)錠剤(Teva Pharmaceutical Industries Ltd.)を磨り潰し、形成された粉末を黒体放射源の上部の平らなガラスに拡げた。約10μlの水滴を拡げた物質にかけ、水滴を形成した。
【0074】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0075】
結果
図3A及び3Bは、本発明の一実施例に係るサーモグラフィ(図3A)及びCCD(VIS)カメラ(図3B)の使用によって得られた、乾燥及び含水ACAMOL(登録商標)粉末の画像間での比較を示す。特に、図3A及び3Bの上部は、乾燥粉末から得られる画像を示しており;図3A及び3Bの下部は、含水粉末の画像を示す。CCDカメラを用いて得られた画像(図3B)では水分含有及び乾燥粉末に差は観察されなかったが、この差はサーモグラフィ画像でははっきり分かり、図3Aの下部に暗点を示しており、これは乾燥ACAMOL(登録商標)粉末(図3Aの上部)には無い物質の中の湿潤領域を示す。
【0076】
得られた画像を視覚的に解析した。しかしながら、測定されたACAMOL(登録商標)粉末のIR信号強度を、2次元画像に空間的なフーリエ変換を適用し主要な空間周波数を解析することによって、さらに解析できることが明らかであるが、これに限定されない。後で、2次元フーリエ変換にバンドパスフィルタを適用して、湿潤点の座標を取得できる。湿潤領域は、乾燥領域よりもSTD値が高いことを特徴とする。湿度は適宜検出できる。
【0077】
実施例3:含水率のモニタリング(様々な含水率のACAMOL(登録商標))
サンプルの調整:
2つのACAMOL(登録商標)錠剤を磨り潰し、約200μl又は約50μlの水のいずれかと混ぜた。2つの混合物を黒体放射源の上部の平らなガラスに拡げた。
【0078】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。得られた画像を視覚的に解析した。
【0079】
結果
図4A及び4Bは、高含水率及び低含水率のACAMOL(登録商標)粉末の画像間での比較を示しており、図4Aは本発明にしたがって得られたサーモグラフィ画像を示し、図4BはCCD(VIS)カメラによって得られた画像を示す。特に、図4A及び4Bの上部は、顕著に湿ったACAMOL(登録商標)粉末の画像を示しており;図4A及び4Bの下部は、図4A及び4Bの上部の粉末と比較してわずかに湿った、ACAMOL(登録商標)粉末の画像を示す。
【0080】
CCD画像(図4B)では粉末の含水率の差は観察されなかったが、この差はサーモグラフィ画像でははっきり分かり、図4Aの下部に暗点を示しており、基本的に粉末全体が湿っていることを示す湿潤粉末を示す一方、図4Aの上部の粉末は完全に暗い。
【0081】
本実施例は、本発明にしたがって物質の含水率を検出できるという証拠を与え、これにより本発明の方法は、湿度及び含水率のレベルが重要である場合にプロセスの質を判定するのに利用できる。また、本実施例は、乾燥条件を要する場合に保存条件及び品質を保証するために本発明の適用可能性のための証拠を与える。
【0082】
実施例4:含水率のモニタリング(表面の湿潤点を具えたトウモロコシ粉)
サンプルの調整:
わずかな量のトウモロコシ粉を黒体放射源の上部の平らなガラスに拡げた。約50μlの水滴を物質にかけ、水滴を形成した。一定量(湿潤スポットを覆うのに十分な量)の乾燥トウモロコシ粉で湿潤スポットを覆った。
【0083】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0084】
結果
図5A及び5Bは、様々な含水率のトウモロコシ粉の画像間での比較を示しており、図5Aは本発明にしたがって得られたサーモグラフィ画像を示し、図5BはCCD(VIS)カメラによって得られた画像を示す。特に、図5A及び5Bの上部は、表面の湿潤スポットを含むトウモロコシ粉の画像を示しており;図5A及び5Bの下部は、乾燥トウモロコシ粉の画像を示す。
【0085】
CCD画像(図5Bの上部)では下面水滴が観察されなかったが、図5Aの暗点がある上部に示すサーモグラフィ画像でははっきり分かり、これは下面水滴を示す。
【0086】
得られた画像を視覚的に解析した。空間的フーリエ変換を2次元画像に適用し、主要な空間周波数を解析できる。さらに、2次元フーリエ変換にバンドパスフィルタを適用して、湿潤点の座標を取得でき、その後でスポットの境界を認識(エッジ検出)するために2次元空間導出カーネルを適用する。
【0087】
上記の実施例2乃至4は、被検体の異なる含水率領域の「カラーリング」を可能にすることで、本発明の方法及びシステムに関する概念の証拠を与える。これらの特定の実施例の「カラーリング」は、様々なIR放射強度につながるサンプルの含水量の差に関する。このため、本発明の方法及びシステムを使用して、湿度が異なる2又はそれ以上のサンプル間の混合の均一性をモニタリングする。
【0088】
実施例5:粉末形態のモニタリング(稠密/圧縮トウモロコシ粉対非圧縮性粉末サンプル)
サンプルの調整:
わずかな量のトウモロコシ粉を手で押し固めて、平らなガラス上に物質の滑らかな圧縮層を形成し、黒体放射源の上部に置いた。
【0089】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0090】
結果:
図6A及び6Bは、本発明の実施例に係る方法及びシステムによって(図6A)又はCCD(VIS)カメラによって(図6B)取得された、粉末形態のトウモロコシ粉間での比較を示す。特に、図6A及び6Bの上部は、非圧縮トウモロコシ粉の画像を示しており;図6A及び6Bの下部は、圧縮トウモロコシ粉の画像を示す。圧縮及び非圧縮トウモロコシ粉は、サーモグラフィ画像(図6A)とともにCCD画像(図6B)で視覚的に区別できる。
【0091】
画像を視覚的に解析する一方、さらに処理したことに留意されたい。さらなる処理は、2次元画像のヒストグラム及び標準偏差を含んでおり、それに続いて、2次元画像に空間的フーリエ変換を適用し主要な空間周波数を解析する。スポットの境界を認識(エッジ検出)するために2次元空間導出カーネルを適用できる。
【0092】
実施例6:粉末混合モニタリング(トウモロコシ粉の加熱「カラーリング」)
サンプルの調整:
いずれもLAIRD TechnologiesのTEC (Thermo Electric Cooler)で一方が25℃に予熱され、他方が20℃に予熱された2つのわずかな量のトウモロコシ粉を、15℃で安定した黒体放射源の上部の平らなガラスに拡げた。
【0093】
能動的サーモグラフィ:
サンプルを黒体放射源に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。
【0094】
3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0095】
結果:
図7A及び7Bは、本発明の一実施例に係る方法及びシステムによって(図7A)又はCCD(VIS)カメラによって(図7B)取得された、様々な温度における、トウモロコシ粉間での比較を示す。特に、図7A及び7Bの上部は、20℃でのトウモロコシ粉の画像を示しており;図7A及び7Bの下部は、25℃でのトウモロコシ粉の画像を示す。粉末のCCD画像では2つの温度(図7B)で差は見られなかったが、生成されたサーモグラフィ画像(図7A)では画像間で明らかに差が視覚化されている。特定の実施例は、加熱又は冷却によって検出したサンプルを「彩色する」ための本発明の方法及びシステムの能力を示す。特に、サンプルの温度差は、検出サンプルのIR放射の異なる強度につながる。このため、本発明の方法及びシステムを使用して、様々な温度のサンプルが混合される程度をモニタリングできる。
【0096】
実施例7:乾燥プロセスのモニタリング(温度分布特性)
ファンを用いて黒体放射源に熱気を送った。本発明のシステムによって熱気をモニタリングした。
【0097】
結果:
図8A及び8Bは、本発明の実施例によって(図8A)又はCCD(VIS)カメラによって(図8B)取得された、熱気分布の画像間での比較を示す。CCDカメラ(図8B)によっては空気が取り込まれない一方、生成されるサーモグラフィ画像(図8A)で熱気の分布を視覚化できることが明らかに分かる。このため、均一な製品を実現するために均一な気流を必要とする加熱/乾燥/焼成プロセスで、熱気流の均一性の程度を示すよう、サーモグラフィをリアルタイムで使用できる。これにより、このようなプロセスの最適化又は調整を実現できる。
【0098】
実施例8:粉末の特定(CIALIS(登録商標)対偽の粉末)
サンプルの調整:
本物のCIALIS(登録商標)薬剤及び間違った/偽の薬剤を磨り潰して、黒体放射源の上部の平らなガラスに拡げた。
【0099】
以下の実施例9及び10とともに本実施例の目的は、特に、本発明の方法及びシステムが真正製品及び偽製品の品質を判断するのに利用できることを示すことである。
【0100】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0101】
結果:
図9A及び9Bは、本発明の一実施例に係る方法及びシステムによって(図9A)又はCCD(VIS)カメラによって(図9B)取得された、本物のCIALIS(登録商標)粉末及び偽の粉末間での比較を示す。特に、図9A及び9Bの上部は、本物の粉末の画像を示しており;図9A及び9Bの下部は、偽の粉末の画像を示す。本物及び偽の粉末は、CCD画像(図9B)では区別できないが、生成したサーモグラフィ画像(図9A)では視覚的に区別される。
【0102】
実施例9:薬剤の特定(本物/真正のVIAGRA(登録商標)対偽の製品)
サンプルの調整:
本物のVIAGRA(登録商標)(Pfizer)及び偽のVIAGRAのパッケージを、黒体放射源の上部に置いた。
【0103】
能動的サーモグラフィ:
黒体放射源コントローラを温度のステップ関数を用いて15℃(黒体の開始温度)から20℃に変化する温度に設定し、コントローラに20℃の熱ターゲット(熱パルス)を適用した後に、10秒間画像を取り込んだ。8乃至12μmの波長範囲の非冷却VOx検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0104】
結果:
図10A及び10Bは、本発明の一実施例に係る方法及びシステムによって(図10A)又はCCD(VIS)カメラによって(図10B)取得された、本物のVIAGRA(登録商標)及び偽のVIAGRA(登録商標)パッケージ間での比較を示す。本物及び偽のVIAGRA(登録商標)パッケージは、CCD画像(図10B)では区別できないが、生成されるサーモグラフィ画像(図10A)では視覚的に区別される。本実施例は、薬剤といった偽の製品の検出がどのように実現できるかを示す。疑わしい偽の製品の検査は、予め取得された本物の製品のIR画像との比較によるものである。特定の程度は、その製品が本物であるか否かを示す。予め取得された画像は、データベースの一部とすることができる。
【0105】
上記の例は、密封されたパッケージの中の製品の品質を判定するための、本発明の方法及びシステムの実現可能性を示す。
【0106】
実施例10:画像の融合による薬剤の特定(真正/本物のVIAGRA(登録商標)対偽の製品)
サンプルの調整:
本物のVIAGRA(登録商標)(Pfizer)及び偽のVIAGRAのパッケージを、5℃で2分間冷却チャンバに置いた。特に、これらのサンプルは、チャンバで所定の5℃に冷却することによって、加熱ステップ関数を与えられ、その後でチャンバからサンプルを除去し室温でサンプルホルダに置く。
【0107】
能動的サーモグラフィ:
サンプルをチャンバから取り除いて室温に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。サーモグラフィの長波長ボロメータのVOxカメラ及びNIR InSbカメラを使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0108】
結果:
図11A乃至11Dは、サーモグラフィの長波長ボロメータのVOxカメラによって(図11A)、NIR InSbカメラによって(図11B)、及びCCD(VIS)カメラによって(図11C)取得された、本物のVIAGRA(登録商標)及び偽のVIAGRA(登録商標)パッケージ間での比較を示す。図11A及び図11Bで取得された画像の融合を図11Dに示す。本物及び偽の薬剤間の差は、図11Aで容易に検出される。本物の薬剤のPfizerのラベルがNIR領域で観察される一方、偽のラベルを観察できないことが分かる(図11B)。さらに、VISスペクトルにおける偽の薬剤の青色は、本物の薬剤よりもわずかに濃いことが分かる(図11C)。
【0109】
本実施例は、薬剤の各スペクトル画像、すなわち、VIS、NIR、熱(MWIR又はLWIR)が、偽物の検出(又は品質確証)にある程度寄与することを示す。さらに、本実施例は、2以上のスペクトルの融合画像の適用して認識及び/又は検出能力を改善する可能性を示す。
【0110】
実施例11:投与量の調査(エナラプリル(登録商標)20mg対10mg)
サンプルの調整:
10mgの1ブリスター及び20mgの1ブリスターのエナラプリルの活性成分を冷却チャンバに置いて、サンプルの温度を5℃に下げた。特に、サンプルは、所定の温度である5℃にチャンバで冷却することによって、ステップ熱関数を与え、その後でサンプルをチャンバから除去して、室温でサンプルホルダに置いた。
【0111】
能動的サーモグラフィ:
サンプルをチャンバから取り出して室温に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0112】
結果:
図12A及び12Bは、本発明の実施例にしたがって(図12A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図12B)取得された、異なる投与でのエナラプリル活性成分のブリスター間での比較を示す。特に、図12A及び12Bの上部は、ブリスターの中の10mg投与の画像を示しており;図12A及び12Bの下部は、20mg投与の画像を示す。ブリスターの中の10mg及び20mg投与のCCD画像は同じである(図12B)が、生成されたサーモグラフィ画像(図12A)では視覚的に区別され、本発明が密封された物質にも適用できることを示している。
【0113】
本実施例は、本発明の方法及びシステムを、包装された製品がパッケージにラベルが付いた製品を有することを確認するのにリアルタイムで使用できることを示す。本実施例は、物質の量の差(10mg対20mg)を示すが、本発明の方法は、以下のように物質の存在又は不存在を示すのにも利用できる。
【0114】
実施例12:投与量の調査(ENALADEX(登録商標)20mg対10mg)
サンプルの調整:
10mg及び20mgのエナラプリルの活性成分を含むENALADEX(登録商標)(Dexcel LTD)のパッケージを冷却チャンバに置いて、サンプルの温度を5℃に下げた。特に、サンプルは、所定の温度である5℃にチャンバで冷却することによって、ステップ熱関数を与え、その後でサンプルをチャンバから除去して、室温でサンプルホルダに置いた。
【0115】
能動的サーモグラフィ:
サンプルをチャンバから取り除いて室温に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0116】
結果:
図13A及び13Bは、本発明の実施例にしたがって(図13A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図13B)取得された、10mg及び20mgのエナラプリル活性成分を含むENALADEXパッケージ間での比較を示す。特に、図13A及び13Bの左部は、10mgのカプセルを含むパッケージの画像であり;図13A及び13Bの右部は、20mgのカプセルを含むパッケージの画像を示す。CCDカメラによって生成された10mg及び20mgのENALADEXパッケージの画像は、表示情報を具えた目に見えるパッケージ(図13B)を示す一方、生成されたサーモグラフィ画像は、一定量の活性物質が中に含まれているということを示しており(図13A)、2つのパッケージ間で明らかな差を示す。
【0117】
実施例13:ブリスターの中の壊れた錠剤又は紛失した錠剤の検出
サンプルの調整:
錠剤を含むブリスタータイプのパッケージを、8℃で2分間冷却チャンバに置いた。特に、パッケージは、所定の温度である8℃にチャンバで冷却することによって、ステップ熱関数を与え、その後でサンプルをチャンバから除去して、室温でサンプルホルダに置いた。
【0118】
能動的サーモグラフィ:
サンプルをチャンバから取り出して室温に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0119】
結果:
図14A及び14Bは、冷却InSb検出器を用いた本発明の実施例にしたがって(図14A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図14B)取得された、異なる投与でのエナラプリル活性成分のブリスターの画像間での比較を示す。図14A及び14Bの上下部は、1ブリスターの紛失した錠剤の画像を示しており;下部は、壊れた錠剤を示す。CCD画像(図14B)では紛失した錠剤又は壊れた錠剤の検出を実現できなかったが、本発明に係るサーモグラフィ画像は、紛失又は壊れた錠剤があることを明らかに示す(図14A)。
【0120】
本実施例は、例えば、ブリスターの中の錠剤の存在、壊れた錠剤といった欠陥を有する錠剤の確認といった、包装された製品の品質の保証のために本発明を使用できることを示す。さらに、本実施例は、本発明を使用して、ブリスターに含まれている状態で錠剤のコーティングの欠陥又は欠陥を有するカプセルを特定できることを示す。
【0121】
実施例14:密封されたビンの中の液体レベルのモニタリング
サンプルの調整:
異なる量の水を含む2つの不透明なビンを、8℃で2分間冷却チャンバに置いた。特に、所定の温度である8℃にチャンバで冷却することによって、ステップ熱関数を与え、その後でサンプルをチャンバから除去して、室温でサンプルホルダに置いた。
【0122】
能動的サーモグラフィ:
ビンをチャンバから取り出して室温に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0123】
結果:
図15A及び15Bは、本発明の実施例にしたがって(図15A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図15B)取得された、異なる量の水を含むビンの画像間での比較を示す。CCD画像(図15B)を用いて2つのビンの内容物を区別できなかったが、本発明に係るサーモグラフィ画像ではそれらを区別でき、すなわち、ビンそれ自体は不透明であって密封され、中味を目で視ることができないが、ビンに含まれる異なる量の水が明らかに検出された(図15A)。
【0124】
本実施例は、本発明が密封容器の中の内容物を検出するのに利用できることを示す。このタイプの容器及び内容物は、本発明を実施するのに問題ではない。本発明は、いかなるタイプの容器、例えば、プラスチックボトル、濃い色のガラスビン、テープを貼ったビン等に利用できる。
【0125】
液体がビンよりも冷たい場合に、例えばビンに液体を入れた後に直ぐに検出する場合に、時として、容器の液体レベルの検出を改善できる。冷えた液体がビンに入れられる場合、ビンの内壁のみが液体の温度に冷える一方、ビンの残りは元の温度のままである。これにより、製造プロセスの包装の際に液体の正確な量がビンの中に入ったというリアルタイムの確認が可能となる。
【0126】
実施例15:飲料の区別(BARKAN対SEGALカベルネ・ソービニヨン)
サンプルの調整:
1本の辛口赤ワインであるBARKAN(登録商標)のボトル及び2本の辛口赤ワインであるSEGAL(登録商標)カベルネ・ソービニヨンのボトルを、黒体放射源に置き、30℃に加熱した。特に、ワインボトルは、黒体放射源から取り出して室温(23℃)に置くことでステップ熱関数を与えた。
【0127】
能動的サーモグラフィ:
ボトルを黒体放射源から取り出して室温(23℃)に置いた後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用ボトルのIR画像を生成した。
【0128】
結果:
図16A及び16Bは、本発明の実施例にしたがって(図16A)又はCCD(VIS)カメラの使用によって(図16B)取得された、1本のBARKAN(登録商標)(右側のボトル)及び2本のSEGAL(登録商標)(中央及び左側のボトル)カベルネ・ソービニヨンの辛口赤ワインの画像間での比較を示す。CCD装置(図16B)では、BARKAN(登録商標)及びSEGAL(登録商標)のワインボトルを区別できない一方、サーモグラフィ画像(図16A)を用いてボトルの差を容易に視覚化できる。このように、本実施例は、ワインボトルといった様々なブランドの飲料を、本発明によってどのようにして認識できるのかを示す。換言すれば、本発明は医薬品産業に限定すべきではなく、ワイン醸造といった製造プロセスにも適用し得る。
【0129】
実施例16:異物の検出
サンプルの調整:
プラスチック製品を含む白砂糖粒をプレート上に置いた。プレートを25℃の温度で黒体放射源に置いた。砂糖とプラスチック製品の混合物は、黒体放射源の温度を15℃に低下させることでステップ熱関数を与えた。
【0130】
能動的サーモグラフィ:
ステップ関数を適用した後に、10秒間サーモグラフィ画像を取得した。3乃至5μmの波長範囲の冷却InSb検出器を使用して、検出用サンプルのIR画像を生成した。
【0131】
結果:
図17A及び17Bは、本発明の実施例にしたがった(図17A)又はCCD(VIS)カメラの使用による(図17B)、プラスチック製品を含む白砂糖の粒の画像間での比較を示す。CCDカメラを用いてプラスチック製品の存在を検出できないが、サーモグラフィ画像では明らかに観察できる。
【0132】
本実施例は、食品中の異物を検出するのに本発明をどのようにして使用できるかを示す。
【0133】
実施例17−パッケージの信頼性又はパッケージの欠陥
(1)本物の薬剤及び偽の薬剤のパッケージをサンプルホルダに並べ、ハロゲンランプ(35ワット)を照射する。InSb冷却検出器(SCD製)及び20mmの焦点レンズを使用して、近赤外スナップショット画像を取得した。本物のパッケージの画像と偽物のパッケージの画像との間に差が見られた(図示せず)。このように、照射によるNIR画像を使用して、例えば薬剤のパッケージの信頼性を判断できる。
(2)本物の薬剤及び偽の薬剤のパッケージをサンプルホルダに並べ照射した。1.4メガピクセル及び20mmの焦点長さのレンズ及びパッケージに照射する標準的な電球光を具えたCMOS検出器を用いて、可視光波長でスナップショット画像を取得した。パッケージ間の差は検出され、本物及び偽物のパッケージを特定した。

【図1A】

【図1B】

【図2A−2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造プロセスで取得された材料の品質を判定するための方法であって、
(a)中波長から非常に長いIR波長の前記材料の放射線をその視野で感知するよう動作可能なIR検出器によって前記材料の赤外線(IR)画像を生成するステップと;
(b)前記IR画像を処理して、前記材料の品質を示す出力を生成するステップと;
(c)前記出力を表示し、又は前記出力を使用して前記製造プロセスを変更し又はそれを組み合わせるステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記製造プロセスが、治療薬、飲料、化粧品、化学品、食品又は補助食品、燃料から選択される製品を提供することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療薬が薬剤であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記IR画像が、サーモグラフィの画像であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記IR画像が、能動的サーモグラフィ又は受動的サーモグラフィによって生成されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記能動的サーモグラフィが、前記材料に少なくとも1の熱パルスを適用することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記熱パルスが、前記材料の加熱、前記材料の冷却、前記材料の冷却後の加熱、及び前記材料加熱後の冷却から選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱パルスが、1つの熱パルス又は2又はそれ以上の一連の熱パルスとして、前記材料に適用されることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記熱パルスが、レーザビーム、IRランプ、マイクロ波、超音波、冷却チャンバ、加熱炉、冷却又は加熱黒体放射源、冷却又は加熱ガス膨張、冷却又は加熱熱電気冷却器、冷蔵庫及び熱安定チャンバから成る群から選択される熱パルス発生器の使用によって与えられることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱パルスが、デルタ関数熱パルス、ステップ関数熱パルス、矩形関数熱パルス、鋸歯関数熱パルス又は周期関数熱パルス又はそれらの組み合わせの形式で適用されることを特徴とする請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記中波長から非常に長いIR波長が、3μm乃至約20μmの波長を含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記IR画像が、前記IR検出器に前記材料の前記放射線を集束するための光学配置と組み合わせた前記IR検出器によって生成されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
グレイスケール又はカラーのIR画像を生成するための請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
2次元(2D)、3次元(3D)又は4次元(4D)のIR画像を生成するための請求項1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記IR画像が、NIR、VIS、UVで取得される前記材料の1又はそれ以上の画像と組み合わされることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記出力が、前記IR画像又は含水量、湿度分布、密度、粒径、多形構造、結晶構造、温度、温度分布、材料の均質性、形態、テクスチャ、コーティングの質、空孔率、材料の信頼性から選択される少なくとも1の材料パラメータ、又は画像と前記少なくとも1の材料パラメータとの組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記製造プロセスのために所定の閾値パラメータに前記材料パラメータを関連付けるステップと;
そこから前記出力を生成するステップと;
を具えることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記閾値パラメータが、前記製造プロセスによって用意された前記材料の所望の品質を表す本質的に異なる値又は値の範囲を具えることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記材料パラメータが、前記閾値パラメータとは異なり、
前記出力が、前記材料の欠陥を示すことを特徴とする請求項16又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記材料パラメータが、前記閾値パラメータの範囲内にあり、
前記出力が、前記材料が所望の品質であることを示すことを特徴とする請求項17乃至19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記材料の欠陥を示す出力に関して、前記出力の表示、前記製造プロセスの変更、又はそれらの組み合わせを具えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記製造プロセスの変更が、前記プロセスの終了、前記プロセスの繰り返し、異なる製造プロセスへの前記材料の誘導、プロセス条件の変更のうちの1又はそれ以上を具えることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記出力が、視覚的な表示ユニット、音響装置又はそれらの組み合わせに示されることを特徴とする請求項16乃至22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記欠陥が、前記材料への異物の混入を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項25】
製造プロセスで取得された材料の品質を判断するためのシステムであって、
(a)中波長から非常に長いIR波長の前記材料の放射線をその視野で感知するよう動作可能なIR検出器を具え、そこから前記材料のそれぞれのIR画像を生成するIR画像生成装置と;
(b)前記IRを処理して前記材料の品質を示す出力を生成するための処理ユーティリティーと;
(c)前記出力を表示し又は前記出力を利用して前記製造プロセスを変更し又はそれを組み合わせるよう構成された制御ユニットと;
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項26】
前記IR画像生成装置が、サーモグラフィ画像を生成するよう動作可能であることを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記サーモグラフィ画像が、能動的サーモグラフィ又は受動的サーモグラフィであり、
前記システムが、前記材料に少なくとも1の熱パルスを適用するよう動作可能な熱パルス発生器を具えることを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記熱パルス発生器が、熱源、冷却源又はその組み合わせを具えることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記熱パルス源が、前記材料に1つの熱パルス又は2又はそれ以上の一連の熱パルスを適用するよう構成されていることを特徴とする請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記熱パルス発生器が、レーザビーム、IRランプ、マイクロ波、超音波、冷却チャンバ、加熱炉、熱電子チップ(TEC)、黒体放射源、ガス膨張及び冷蔵庫から成る群から選択されることを特徴とする請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記熱パルスが、デルタ関数熱パルス、ステップ関数熱パルス、矩形関数熱パルス、鋸歯関数熱パルス又は周期関数熱パルス又はそれらの組み合わせの形式で適用されることを特徴とする請求項29又は30に記載のシステム。
【請求項32】
前記中波長から非常に長いIR波長が、3μm乃至約20μmを含むことを特徴とする請求項25乃至31に記載のシステム。
【請求項33】
前記IR生成装置が、前記IR検出器に前記材料の前記放射線を集束するための光学配置を具えることを特徴とする請求項25乃至32に記載のシステム。
【請求項34】
前記IR生成装置が、グレイスケール又はカラーのIR画像を与えるよう構成されることを特徴とする請求項25乃至33のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項35】
前記IR生成装置が、2次元(2D)、3次元(3D)又は4次元(4D)のIR画像を与えるよう構成されることを特徴とする請求項25乃至34のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項36】
前記処理ユーティリティーが、前記IR画像又は含水量、湿度分布、密度、粒径、多形構造、結晶構造、温度、温度分布、材料の均質性、形態、テクスチャ、コーティングの質、空孔率、材料の信頼性、紛失した材料、材料の完全性から選択される少なくとも1の材料パラメータ又は前記IR画像と前記少なくとも1の材料パラメータとも組み合わせを含む出力を生成するよう動作可能であることを特徴とする請求項25乃至35に記載のシステム。
【請求項37】
前記処理ユーティリティーが、前記製造プロセスのために所定の閾値パラメータに前記材料パラメータを関連付け、そこから前記出力を生成するよう構成されることを特徴とする請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
製造プロセスの所定の閾値パラメータのデータベースを具えるメモリを具えており、
前記材料パラメータが、前記データベースからの閾値パラメータに関連付けられることを特徴とする請求項25乃至37のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項39】
所定の閾値パラメータの前記データベースが、各閾値パラメータに関して、前記所定の閾値に関連する製造プロセスによって取得される材料の品質を示す基本的に区別できる値又は値の範囲を具えることを特徴とする請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記制御ユニットが、前記出力を受信して前記出力を表示し、前記制御プロセスを変更し、又はそれらを組み合わせるよう構成されることを特徴とする請求項25乃至39のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項41】
前記出力が前記材料の欠陥を示すときに、前記制御ユニットが前記制御プロセスを変更するよう構成されることを特徴とする請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記材料の欠陥が前記材料の中の異物の存在を含むことを特徴とする請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記制御ユニットが、前記プロセスの終了、前記プロセスの繰り返し、異なる製造プロセスへの前記材料の誘導、プロセス条件の変更のうちの1又はそれ以上によって、前記制御プロセスを変更するよう動作可能であることを特徴とする請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記出力を表示するための表示ユニットを具えており、
前記表示ユニットが、視覚的な表示ユニット、音響装置又はそれらの組み合わせを具えることを特徴とする請求項25乃至43のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項45】
製造プロセスに関する1又はそれ以上の所定の閾値パラメータをユーザが前記処理ユーティリティーの中に導入し得るためのユーザインタフェースを具えることを特徴とする請求項25乃至44のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項46】
前記IR画像生成装置、処理ユーティリティー、制御ユニット、メモリ又はユーザインタフェースのうちのいずれか1つ間での有線又は無線通信を具えることを特徴とする請求項45に記載のシステム。
【請求項47】
前記処理ユーティリティーが、前記IR画像をNIR、VIS、UVで取得された前記材料の1又はそれ以上の画像と組み合わせるよう構成されることを特徴とする請求項25乃至46のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項48】
パッケージの真正性又はパッケージの品質を判定するための方法であって、
(a)前記パッケージをその視野で検出するよう動作可能な、可視光検出器(VIS)、近赤外(NIR)検出器、紫外線(UV)検出器、超音波(US)検出器、MWIR検出器又はテラヘルツ検出器によって、前記パッケージの1又はそれ以上の画像を生成するステップであって、前記1又はそれ以上の画像がVIS検出器によって又はNIR検出器によって生成され、前記パッケージが画像生成の間に照射され、前記1又はそれ以上の画像がVIS検出器によって生成されるときに前記照射がUV光であるステップと;
(b)前記パッケージの前記1又はそれ以上の画像と参照パッケージとを比較するステップと;
(c)前記比較又は前記比較の定量値を表示することで、前記パッケージの真正性を判定し得るステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項49】
前記1又はそれ以上の画像を取得する際に前記パッケージを照射するステップを具えることを特徴とする請求項48に記載の方法。
【請求項50】
照射が、ハロゲン光、UV光、及び電球から成る群から選択される光源を用いて実行されることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記参照パッケージが、本物のパッケージの画像であることを特徴とする請求項48乃至50のいずれか1項に記載の方法。


【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A−7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A−12B】
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【図13A−13B】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【公表番号】特表2012−517013(P2012−517013A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548845(P2011−548845)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/IL2010/000102
【国際公開番号】WO2010/089744
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511186701)ディー.アイ.アール.テクノロジーズ (ディテクション アイアール)リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】D.I.R.TECHNOLOGIES(DETECTION IR) LTD.
【Fターム(参考)】