医薬品を送達するための改良型装置及び方法
本開示は、ガス状担体中のニコチン濃度を促進する改善された方法に関する。様々な疾患における治療効果のためのニコチン、特にタバコ物品の使用停止、置換及び/又は害の低減のためのニコチンの送達に対して、種々の方法が適応可能である。本明細書は更に、これらの方法を実施する様々な装置及び装置設計原理に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに医薬品を送達する装置及び方法に関する。より詳細には、本発明は、ユーザの肺に医薬品のエアロゾルを送達する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経肺薬剤送達システムは、呼吸器疾患を治療する医薬品を送達するために何十年にもわたって使用されている。経肺薬剤送達の背後にある原理は、細気管支及び肺胞に送達されることになる薬剤化合物のエアロゾル化である。粒子サイズ最適化及び劣化等の課題に直面したが、複数の企業が、糖尿病、片頭痛、骨粗鬆症及び癌の治療薬を送達する技術を開発している。
【0003】
利用可能な送達システムは、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)及びネブライザを含む。MDIは、1950年代中頃に米国で初めて導入されたものの1つであった。HFAベースの(加圧式)MDIは、1995年米国で導入された。DPIは1970年代に導入されたが、MDIの圧倒的な優位に起因して、その使用は限定されたものであった。ネブライザは、一般に病院環境内で使用されている。経肺薬剤送達技術市場での技術的進歩は、非CFCベースのMDI、DPI及び液体ベースの吸入器(LBI)において行われている。
【0004】
多くの前臨床試験及び治験の結果、医薬品の経肺送達が呼吸器疾患及び全身性疾患の効率的な治療方法であることがわかっている。経肺送達の多くの利点は、十分に認識されており、迅速な発現、患者の自己投与、副作用の低減、吸入による送達の容易さ、及び針の排除が挙げられる。
【0005】
それにもかかわらず、大部分の医薬品の投与は、吸入を介した経肺送達を含めて、従来の静脈内経路/筋肉内経路及び経口経路を介した送達からあまり大きく逸脱したものではなかった。経肺送達の使用は、これまでは主として喘息治療の医薬品の投与に限定されている。
【0006】
下部呼吸領域に直接に粉体を送達するために、粉体は5μm未満の粒子サイズを一般的に有するべきであることが報告されている。更に、5〜10μmの範囲の粉体は、あまり深く浸透せず、むしろ上部気道領域を刺激する傾向があることが分かっている。
【0007】
ドライパウダー吸入器(DPI)用の製剤を製造する際には、医薬品は、最初に、経肺送達用に許容可能な粒子サイズを得るように製粉しなければならない。この微粉ステップは、製造中に様々な問題を発生する可能性がある。例えば、製粉中に発生する熱により医薬品の劣化を生じる可能性がある。更に、金属が一部の製粉機から剥がれ落ちて医薬品に混入する可能性がある。更に、粒子のサイズが小さいために、ドライパウダー製剤は、特に湿度がある場合には凝集する傾向がある。
【0008】
凝集の結果、粒子の流動性が低くなり、これによりドライパウダー製剤の有効性が低下する。その結果として、ドライパウダーエアロゾルが確実に適切に送達されるように、製粉、配合、粉体流動、充填及び投与中にも注意深く管理することが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,830,643号明細書
【特許文献2】米国特許仮出願第60/909,302号明細書
【特許文献3】米国特許仮出願第61/160,904号明細書
【特許文献4】国際出願PCT/US08/58122号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Katz IM、Schroeter JD、Martonen TB共著、エアロゾル化インシュリンの析出に影響を与える諸要因、糖尿病技術及び治療学、第3巻(3)、2001年、387〜397頁
【非特許文献2】米国シガレットのタール、ニコチン及び炭素一酸化物収量を求めるためのFTCシガレット試験方法、NCI専門委員会報告書、喫煙及びタバコ管理モノグラフ#7、Dr.R.Shopland(編)、Darby、PA:Diane Pub1ishing Co、1996
【非特許文献3】Pillsbury HC著、「低着火性シガレットからの全粒子状物質及びガスを収集するための喫煙機械パラメータ」(1993年3月14日、米国消費者製品安全委員会との契約による、#CPSC−S−92−5472 Ii)
【非特許文献4】Levin ED、Rose JE及びBehm F共著、「喫煙トポロジーを乱さない吸煙容積の制御」(挙動調査方法計装及びコンピュータ、21:383〜386、1989年)
【非特許文献5】PM Dunlap及びSR Faris共著、水酸化カリウム水溶液の表面張力、Nature 196、1312〜1313頁、1962年
【非特許文献6】C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)
【非特許文献7】Schmit、D.Vogelpohl、A.共著(1983)、酢酸カリウム存在下のエタノール水溶液の蒸留、分離科学と技術、18(6)、547〜554頁
【非特許文献8】R.T.P.Pinto、M.R.Wolf―Maciel、L.Lintomen共著、エタノール精製のための塩分抽出蒸留プロセス、コンピュータ及び化学工学、第24巻、2−7号、2000年7月15日、1689〜1694頁
【非特許文献9】Mario Llano―Restrepo、Jaime Aguilar−Arias共著、無水エタノール生産用の塩類抽出蒸留塔のモデル化及びシミュレーション、コンピュータ及び化学工学、第27巻、4号、2003年4月15日、527〜549頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、医薬品送達のためのエアロゾルを調製する新しい方法に対する必要性がある。本開示は、1つには、溶剤を含む付形剤又は他の添加剤を必要とすることなく、ガス流中で送達促進化合物とニコチン又は他の医薬品を組み合わせて経肺送達のエアロゾルを生成する方法を記載している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一部の実施形態において、本開示は、吸入により被験者にニコチンを送達する方法に関し、本方法は、a)第1に、ニコチンを含むニコチン源と連通させて送達促進化合物を含むガス状担体を配置するステップと、b)第2に、被験者にニコチンを含むガス状担体を供給するステップと、を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップを更に含む、段落〔0012〕の方法に関する。
【0014】
一部の実施形態において、本開示は、〔0013〕の方法に関し、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップは、ニコチン源と連通させて送達促進化合物を含むガス状担体を配置するステップに先行する。
【0015】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕、〔0013〕、又は〔0014〕の方法に関し、送達促進化合物源は、2つ又はそれ以上の前駆体化合物を含む複数の区画を備える。
【0016】
一部の実施形態において、本開示は、〔0015〕の方法に関し、送達促進化合物は、塩化アンモニウムを含み、2つ又はそれ以上の前駆体化合物は、アンモニア及び塩化水素を含む。
【0017】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0015〕、又は〔0016〕の方法に関し、ガス状担体中のニコチン濃度は、送達促進化合物がないガス状担体中に含有されるニコチン濃度に対して増大する。
【0018】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0016〕、又は〔0017〕の方法に関し、送達促進化合物は酸を含む。
【0019】
一部の実施形態において、本開示は、〔0018〕の方法に関し、酸は有機酸である。
【0020】
一部の実施形態において、本開示は、〔0019〕の方法に関し、有機酸は、所与の温度にてニコチン塩基よりも高い蒸気圧を有する。
【0021】
一部の実施形態において、本開示は、〔0020〕の方法に関し、所与の温度は、25℃、30℃、40℃、45℃、70℃、又は100℃である。
【0022】
一部の実施形態において、本開示は、〔0018〕〜〔0020〕又は〔0021〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、プロピオン酸、蟻酸、酢酸及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。企図される1つの特定の組み合わせは、プロピオン酸、蟻酸及び酢酸であり、酢酸:蟻酸の比率が2:1であることが好ましい。
【0023】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0021〕又は〔0022〕の方法に関し、送達促進化合物は、ニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0024】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0025】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が1ミクロン未満である。
【0026】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0027】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物、送達促進化合物源、ニコチン、ニコチン源及び/又はガス状担体の温度を上昇させるステップを更に含む、〔0012〕〜〔0025〕又は〔0026〕の方法に関する。
【0028】
一部の実施形態において、本開示は、〔0027〕の方法に関し、温度は、少なくとも30℃まで上昇される。
【0029】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0027〕又は〔0028〕の方法に関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0030】
一部の実施形態において、本開示は、〔0029〕の方法に関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0031】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法の1つ又はそれ以上を含み、且つタバコ物品から導出されるニコチンと少なくとも部分的に置き換えるために治療上有効量のニコチンの被験者への送達を更に含む、タバコ物品使用停止の方法に関する。
【0032】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法の1つ又はそれ以上を含むニコチンが治療的に有益である疾患を治療する方法に関し、治療上に有効な量のニコチンが被験者に供給される。
【0033】
一部の実施形態において、本開示は、〔0032〕の方法に関し、疾患は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0034】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品から導出されたニコチンと置き換えるために、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法により被験者にニコチンを送達するステップを含む、タバコ物品を置換する方法に関する。
【0035】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品から導出されたニコチンと置き換えるために、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法により被験者にニコチンを送達するステップを含む、タバコ物品の害を低減する方法に関する。
【0036】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0034〕又は〔0035〕の方法を実施することができるように構成された装置に関する。
【0037】
一部の実施形態において、本開示は、被験者にニコチンを送達するための装置に関し、該装置はハウジングを含み、ハウジングは、a)互いに連通した入口及び出口を含み、ガス状担体が、入口を通ってハウジングに入り、該ハウジングを通り、出口を通ってハウジングから出ることができるように適合されており、装置は直列で入口から出口までを含み、ハウジングが更に、b)入口と連通し、送達促進化合物源を含む第1の内部区域と、c)第1の内部区域と連通し、ニコチン源を含む第2の内部区域と、d)任意選択的に、第2の内部区域及び出口と連通している第3の内部区域と、を含む。
【0038】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕の装置に関し、出口における部分真空により、ガス状担体を、入口、第1の区画、第2の区画、存在する場合に第3の区画、次いで出口を通って引き込むことができる。
【0039】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕又は〔0038〕の装置に関し、送達促進化合物源は、その上に送達促進化合物が吸着された吸着要素を含み、及び/又は、ニコチン源は、その上にニコチンが吸着された吸着要素を含む。
【0040】
一部の実施形態において、本開示は、〔0039〕の装置に関し、吸着要素又は要素は、ガラス、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン?)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)(ePTFEは、例えば、米国特許第4,830,643号明細書に記載されている)、及びBAREX(登録商標)の少なくとも1つを含む。
【0041】
一部の実施形態において、本開示は、第1の内部区域と連通している第1のリザーバを更に備える、〔0037〕〜〔0039〕又は〔0040〕の装置に関し、第1のリザーバは、送達促進化合物を含む。
【0042】
一部の実施形態において、本開示は、第2の内部区域と連通している第2のリザーバを更に備える、〔0037〕〜〔0040〕又は〔0041〕の装置に関し、第2のリザーバは、ニコチンを含む。
【0043】
一部の実施形態において、本開示は、第3の内部区域を備える、〔0037〕〜〔0041〕又は〔0042〕の装置に関し、第3の内部区域は、第3の内部区域要素を含む。
【0044】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、浄化剤を含む。
【0045】
一部の実施形態において、本開示は、〔0044〕の装置に関し、浄化剤は、活性炭を含む。
【0046】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕、〔0044〕又は〔0045〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、香味剤を含む。
【0047】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕〜〔0045〕又は〔0046〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、医薬品を含む。
【0048】
一部の実施形態において、本開示は、〔0047〕の装置に関し、医薬品は、ニコチンを含む。
【0049】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0047〕又は〔0048〕の装置に関し、ハウジングは、タバコ喫煙物品を模擬する。
【0050】
一部の実施形態において、本開示は、〔0049〕の装置に関し、タバコ喫煙物品は、シガレットである。
【0051】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0047〕又は〔0048〕の装置に関し、ハウジングは、製薬吸入装置を模擬する。
【0052】
一部の実施形態において、本開示は、[0051]の装置に関し、模擬された製薬吸入装置は、定量吸入器、加圧式定量吸入器、ドライパウダー吸入器、ネブライザ及び液体ベースの吸入器から成る群から選択される。
【0053】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含むガス状担体を、ニコチンを含むニコチン源と連通させて配置するステップを含む、ガス状担体中のニコチン濃度を増大させる方法に関する。
【0054】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップを更に含む、〔0053〕の方法に関する。
【0055】
一部の実施形態において、本開示は、〔0054〕の方法に関し、送達促進化合物源とガス状担体を連通させるステップは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップに先行する。
【0056】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕、〔0054〕又は〔0055〕の方法に関し、送達促進化合物源は、2つ又はそれ以上の前駆体化合物を含む複数の区画を含む。
【0057】
一部の実施形態において、本開示は、〔0056〕の方法に関し、送達促進化合物は、塩化アンモニウムを含み、2つ又はそれ以上の前駆体化合物は、アンモニア及び塩化水素を含む。
【0058】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0056〕又は〔0057〕の方法に関し、ガス状担体中のニコチン濃度は、送達促進化合物がないガス状担体中に含有されるニコチン濃度に対して増大する。
【0059】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0057〕又は〔0058〕の方法に関し、送達促進化合物は酸を含む。
【0060】
一部の実施形態において、本開示は、〔0059〕の方法に関し、酸は有機酸である。
【0061】
一部の実施形態において、本開示は、〔0060〕の方法に関し、有機酸は所与の温度にてニコチンよりも高い蒸気圧を有する。
【0062】
一部の実施形態において、本開示は、〔0061〕の方法に関し、所与の温度は、25℃、30℃、40℃、45℃、70℃、又は100℃である。
【0063】
一部の実施形態において、本開示は、〔0059〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、プロピオン酸、蟻酸、酢酸及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。企図される1つの特定の組み合わせは、プロピオン酸、蟻酸及び酢酸であり、酢酸:蟻酸の比率が2:1であることが好ましい。
【0064】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0062〕又は〔0063〕の方法に関し、送達促進化合物は、ニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0065】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の一部又は全ては、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0066】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の一部又は全ては、空気動力学的質量中央径が1ミクロン未満である。
【0067】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0068】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物、送達促進化合物源、ニコチン、ニコチン源及び/又はガス状担体の温度を上昇させるステップを更に含む、〔0053〕〜〔0066〕又は〔0067〕の方法に関する。
【0069】
一部の実施形態において、本開示は、〔0068〕の方法に関し、温度は、少なくとも30℃まで上昇される。
【0070】
一部の実施形態において、本開示は、〔0069〕の方法に関し、温度は、複数の加熱ステップにより高められる。
【0071】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品使用停止用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に、被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0072】
一部の実施形態において、本開示は、〔0071〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されるガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0073】
一部の実施形態において、本開示は、〔0072〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0074】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品害の低減用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0075】
一部の実施形態において、本開示は、〔0074〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0076】
一部の実施形態において、本開示は、〔0075〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0077】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品置換用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0078】
一部の実施形態において、本開示は、〔0077〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0079】
一部の実施形態において、本開示は、〔0078〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0080】
一部の実施形態において、本開示は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾病の治療用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0081】
一部の実施形態において、本開示は、a)〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法を実行することができるように構成され、及び/又は、b)〔0071〕〜〔0079〕又は〔0080〕のニコチンを送達することができるように構成された装置に関する。
【0082】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のための医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0083】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品使用停止用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0084】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品の害の低減用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0085】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品置換用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0086】
一部の実施形態において、本開示は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾患の治療用医薬品の製造におけるニコチンの使用に関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0087】
一部の実施形態において、本開示は、医薬品をユーザに送達する方法に関し、本方法は、第1の物質の上にガスストリームを通過させて第1の蒸気含有ガス流を生成するステップと、第2の物質の上に第1の蒸気含有ガス流を通過させて、ガスストリーム中に粒子を生成するステップと、粒子を含むガスストリームをユーザに送達するステップと、を含む。
【0088】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕の方法に関し、第1の蒸気含有ガス流を生成するステップは、ガスストリームにおいて第1の物質の蒸気を捕捉するステップを含む。
【0089】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕又は〔0088〕の方法に関し、粒子を生成するステップは、第2の物質の蒸気を第1の蒸気含有ガス流と接触させるステップを含む。
【0090】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕、〔0088〕又は〔0089〕の方法に関し、粒子を生成するステップは、第1及び第2の物質間で相互作用をさせるステップを含む。
【0091】
一部の実施形態において、本開示は、〔0090〕の方法に関し、上記の相互作用は、酸塩基反応を含む。
【0092】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0090〕又は〔0091〕の方法に関し、第1及び第2の物質は、揮発性物質である。
【0093】
一部の実施形態において、本開示は、〔0092〕の方法に関し、第1の物質は、環境温度にて第2の物質よりもうより揮発性である。
【0094】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0092〕又は〔0093〕の方法に関し、第1の物質及び/又は第2の物質の1つがニコチンを含む。
【0095】
一部の実施形態において、本開示は、〔0094〕の方法に関し、ニコチンは、遊離塩基ニコチンを含む。
【0096】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0094〕又は〔0095〕の方法に関し、粒子は、ニコチン含有粒子を含む。
【0097】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0095〕又は〔0096〕の方法に関し、ユーザに送達されたガスストリームは、20マイクログラムを上回るニコチン含有粒子を含有する。
【0098】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0096〕又は〔0097〕の方法に関し、粒子は、ニコチン塩含有粒子を含む。
【0099】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0097〕又は〔0098〕の方法に関し、第1の物質が酸を含む。
【0100】
一部の実施形態において、本開示は、〔0099〕の方法に関し、酸は、ピルビン酸を含む。
【0101】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0099〕又は〔0100〕の方法に関し、粒子は、ピルビン酸ニコチンを含む。
【0102】
一部の実施形態において、本開示は、〔0099〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソブタン酸を含む。
【0103】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0101〕又は〔0102〕の方法に関し、粒子は、ニコチン3−メチル−2−オキソブタン酸を含む。
【0104】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0102〕又は〔0103〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、可視粒子である。
【0105】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0103〕又は〔0104〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、ユーザの肺に送達される。
【0106】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0104〕又は〔0105〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0107】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0105〕又は〔0106〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0108】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法、又は〔0082〕の使用に関し、〔0134〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕に記載された医薬品は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕に記載されたニコチンの代わりに又はこれに加えて使用される。
【0109】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0051〕又は〔0052〕の装置に関し、を備え、装置は、ニコチンの代わりに又はこれに加えて、〔0134〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕に記載された医薬品を送達するように適合される。
【0110】
一部の実施形態において、本開示は、医薬品が治療上に有効である疾患の治療における〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕又は〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のため、〔0132〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕の医薬品の使用に関する。
【0111】
改善されたニコチン源
【0112】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0034〕又は〔0035〕、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕、〔0071〕〜〔0079〕又は〔0080〕、〔0082〕〜〔0085〕又は〔0086〕の方法、又は、この方法を実施する先に記載した装置に関し、ニコチン源は、ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含む。
【0113】
一部の実施形態において、〔0112〕の方法の電解質形成化合物は、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、又は、酸化アルカリ土類金属、又は塩(塩基を含む)であるか、又は、塩基水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び水酸化カリウム(KOH)及びこれらの組み合わせなどの〔0374〕の表11に記載された化合物から成る群から選択される。
【0114】
一部の実施形態において、〔0112〕又は〔0113〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基、及び、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩及びこれらの組み合わせから選択される。
【0115】
一部の実施形態において、〔0112〕、〔0113〕又は〔0114〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基及び酒石酸ニコチン及びこれらの組み合わせから選択され、電解質形成化合物は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0116】
一部の実施形態において、〔0112〕、〔0113〕又は〔0114〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基及び酒石酸ニコチン及びこれらの組み合わせから選択され、電解質形成化合物は、KOHを含む。
【0117】
〔0112〕〜〔0115〕又は〔0116〕の方法の一部の実施形態において、水溶液のpHは、pH10、pH11、pH12、pH13、又はpH14に等しいか又はこれを上回るなど、9.0に等しいか又はこれを上回る。
【0118】
電解質形成化合物がKOHである〔0112〕〜〔0116〕又は〔0117〕の方法の実施形態において、KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率は、10:40、10:60、10:80又は10:100であり、10:60が好ましい。これらの点は、範囲10:40〜10:100などの本発明内の様々な例示的な範囲の境界を成す。
【0119】
〔0112〕〜〔0115〕又は〔0116〕の方法の一部の実施形態において、水溶液中で電解質形成化合物をニコチンと混合するステップを含む。
【0120】
〔0117〕の方法の一部の実施形態において、電解質形成化合物は、水溶液に溶解されたときに発熱し、約80℃又はそれ以上など、ニコチンの水溶液の温度を高めるために十分な量が添加されることが好ましい。
【0121】
以上は、この後に続く本発明の詳細な説明をより良く理解できるように、本発明の特徴及び技術的利点をかなり大まかに概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を成す本発明の更なる特徴及び利点を以下で説明する。開示する概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施する他の構造を修正又は設計の根拠として直ちに利用できることを当業者であれば認識されるはずである。このような均等的な構造は特許請求の範囲に記載する本発明の精神及び範囲から逸脱するものではない点も当業者は認識すべきである。本発明を特徴付けるものとみなされる新規の特徴は、その編成及び操作方法の両方に関して及び更に別の目的及び利点と共に添付図面に関連して考慮したときに以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、図の各々は、単に例示及び説明の目的で提示されており、本発明の外延を定義するものではないことを明示的に理解されたい。
【0122】
ここで、本発明をより完全に理解するために添付図面と併せて以下で説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】タバコを模擬する例示的な送達装置の外部の斜視図である。
【0124】
【図2】タバコを模擬する例示的な送達装置の内部の斜視図である。
【0125】
【図3】使用中の図1及び図2の例示的な送達装置の斜視図である。
【0126】
【図4】装置で使用される構成部品の組立ステップ及び最終構成を示す例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0127】
【図5】ニコチン又は他医薬品及び送達促進化合物を供給する様々な供給源要素の斜視図である。
【0128】
【図6】再使用可能及び使い捨て部分を示す例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0129】
【図7】装置及びニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を供給する再充填ユニットを示す再使用可能な例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0130】
【図8】装置及びニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を供給する再充填ユニットを示す再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【0131】
【図9A】再使用可能な例示的な送達装置の再充填ユニットの断面図である。
【図9B】再充填ユニット内に着座した再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【図9C】ニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を再供給する再充填ユニットの計量ポンプの圧縮後の再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【0132】
【図10A】別個の構成部品として斜視図に示す加熱構成部品を有する例示的な送達装置の断面図である。
【図10B】送達装置が装置及び/又は構成要素の温度制御に向けて着座する外部加熱ユニットを有する例示的な送達装置を示す図である。
【0133】
【図11】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0134】
【図12】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0135】
【図13】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する(?)例示的な装置の断面図である。
【0136】
【図14】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0137】
【図15】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本明細書で使用される「粒子」は、液滴、固体粒子又は固体粒子により核化された液滴のような両方の組み合わせを意味することができる。
【0139】
本明細書で使用される「治療上有効量」は、被験者、一般的にヒト被験者において治療効果を達成するニコチン又は他の医薬品の濃度又は量を指すことができる。被験者は、疾患又は医学的に定義された条件下において改善が得られる。改善は、疾患に関連した症状のあらゆる好転又は修復である。改善は、観察可能な又は測定可能な改善である。従って、当業者は、治療が疾患状態を改善することができるが、その疾患を完全に治癒できない場合があることを認識している。一部の実施形態では、治療上の効果は、ニコチン中毒の被験者又はニコチン使用禁断症状を受ける被験者が渇望するニコチンの低減又は除去を挙げることができる。
【0140】
本明細書で使用する「電解質形成化合物」とは、溶液中でイオンに解離する中性物質又はイオン性物質を意味することができる。
【0141】
本発明の概念の理解を助けるために、本明細書において各実施形態は、ニコチン送達のための装置及び方法に関して説明する。〔0134〕に記載された医薬品は本明細書の教示に従ってニコチンの代わりに、又はこれに加えて使用できることは当業者には理解されるであろう。
【0142】
本明細書で説明する方法は、ニコチン送達装置から得られるニコチンの投与に関する驚くべき発見に関する。発明者らは、吸入により被験者に送達されるニコチンの投与を増大させる方法を予想外に確認した。この発見の重要性は、タバコ及び同様のタバコ物品を喫煙しているニコチン送達被験者の経験と置き換える機能の改善にある。改善されたニコチン送達プロファイルでは、本明細書で説明する方法を適用する被験者は、禁煙、害の低減及び/又は置換の試行中に優れたニコチン代替療法を提供することになる。喫煙に関連した健康上の課題の持続する世界的な問題に関して、本明細書で説明する種々の方法は、喫煙者の禁煙を支援しようとする医学的取り組みの重要な必要性に対処するものである。
【0143】
理論に束縛されるものではないが、ニコチン源の上に揮発性の第1の物質(すなわち送達促進化合物)の蒸気を通過させることにより液体又は固体状態の粒子が形成され、これにより、引き続きニコチンのより多くが蒸発して第1の物質と結合し、更なる粒子が生成できると考えられる。所与の温度での粒子形成の量(送達される質量)は、ニコチンの蒸気が第2の揮発性物質の上に通過するときに形成される量よりも多い。同様に、粒子形成の量がより低い揮発性の物質によって制限され、他方の物質を含むガスの容積と混合することによる活性物質の希釈に起因して、所与の温度での粒子形成の量は、2つの物質の蒸気が並列混合装置(従来技術で開示されている)において組み合わされたときに形成される量よりも多い。また、第2の物質の上に1つの物質を順次的に通過できるようにすることにより、従来技術で開示される並列混合に比べて2つの物質をより効率的に組み合わせることを可能にすることができる。別の可能性は、第1及び第2の物質間の相互作用が発熱性プロセスであるという点である。換言すると、エネルギーは、発熱相互作用の結果として熱の形態で放出される。理論に束縛されるものではないが、放出される熱は、ニコチンの蒸発を促進することができると考えられる。
【0144】
一部の実施形態において、本方法は、ガス状担体をニコチン源と連通させるステップを含む。これらの実施形態のガス状担体は、送達促進化合物のないガス状担体である場合のニコチンの量に対して、ガス状担体中のニコチン量を増大させることができる送達促進化合物を含有する。一部の実施形態において、送達促進化合物は、ニコチン塩基又は他の医薬品と反応して塩を形成することができる。特定の実施形態において、送達促進化合物は、ニコチン塩基と反応して塩粒子を形成することができる。好適な実施形態において、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満、より好ましくは1ミクロン未満である。(空気動力学的質量中央径の決定については、本教示のために引用により組み入れられる、Katz IM、Schroeter JD、Martonen TB共著、エアロゾル化インシュリンの析出に影響を与える諸要因、糖尿病技術及び治療学、第3巻(3)、2001年、387〜397頁を参照されたい)。
【0145】
本明細書で開示される方法は、ニコチンに類似した生物物理学的特性及び/又は化学的特性を有する様々な他の医薬品と共に用いるよう適合させることができる。以下の化合物は、窒素原子が複素環又は非環式鎖(置換)内に存在する脂肪族又は芳香族、飽和又は不飽和窒素含有塩基(窒素含有水素イオン又はルイス酸受容性化合物)である。更に、化合物は、揮発に有利になると予想される融点(150℃未満)又は沸点(300℃未満)に基づいて選択したものである。
ニコチン以外の医薬品
1.7−ヒドロキシミトラギニン
2.アンフェタミン
3.アレコリン
4.アトロピン
5.ブプロピオン
6.カチン(D−ノルプソイドエフェドリン)
7.カチノン(β−ケトアンフェタミン)
8.クロルフェネラミン
9.ジブカイン
10.ジメモルファン
11.ジメチルトリプタミン
12.ジフェンヒドラミン
13.エフェドリン
14.ホルデニン
15.ヒヨスチアミン
16.イソアレコリン
17.レボルファノール
18.ロベリン
19.メスカリン
20.メセンブリン
21.ミトラギニン
22.ムスカリン
23.パラヒドロキシアンフェタミン
24.プロカイン
25.疑似エフェドリン
26.ピリラミン
27.ラクロプリド
28.リトドリン
29.スコポラミン
30.スパルテイン(ルピニジン)
31.チクロピジン
タバコの煙成分
32.1、2、3、4−テトラヒドロイソキノリン
33.アナバシン
34.アナタビン
35.コチニン
36.ミオスミン
37.ニコトリン
38.ノルコチニン
39.ノルニコチン
抗喘息薬
40.オルシプレナリン
41.プロプラノロール
42.テルブタリン
抗狭心症薬
43.ニコランジル
44.オクスプレノロール
45.ベラパミル
抗不整脈薬
46.リドカイン
ニコチン受容体剤
A.ニコチン作動薬
47.エピバチジン
48.5‐(2R)‐アゼチジニルメトキシ)‐2‐クロロピリジン(ABT−594)
49.(S)−3−メチル−5−(1−メチル−2−ピロリジニル)イソオキサゾール(ABT 418)
50.(±)−2−(3−ピリジニル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(RJR−2429)
B.ニコチン遮断薬
51.メチルリカコニチン
52.メカミラミン
C.アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
53.ガランタミン
54.ピリドスチグミン
55.フィゾスチグミン
56.タクリン
モノアミン酸化酵素阻害剤
57.5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン
58.5−メトキシ−α−メチルトリプタミン
59.アルファ−メチルトリプタミン
60.イプロクロジド
61.イプロニアジド
62.イソカルボキサジド
63.リネゾリド
64.メクロベミド
65.N、N−ジメチルトリプタミン
66.フェネルジン
67.フェニルエチラアミン
68.トロキサトン
69.トラニルシプロミン
70.トリプタミン
【0146】
ガス状担体及びその供給源
【0147】
ガス状担体は、ニコチン塩基及び送達促進化合物を含むことができるあらゆるガスとすることができる。当業者は、使用目的、ニコチン及び特定の送達促進化合物の形態に基づいて適切なガス状担体を容易に選択することができるであろう。好適な実施形態において、ガス状担体は、少なくとも被験者に対する送達のために企図される時間期間にわたってニコチン及び/又は担持される送達促進化合物の形態に関して実質的に不活性である。一部の実施形態において、ガス状担体は外気である。他の実施形態において、ガス状担体は、二酸化炭素又は窒素ガスなどの実質的に純ガス又はこのようなガスの配合物である。このような実施形態において、ガス状担体は、本明細書で説明する種々の方法を達成するためにガス状担体を保持し送達するように設計された容器から供給される。例えば、定量吸入器装置を使用する実施形態において、ガス状担体は、推進薬としてヒドロフルオロアルカン(HFA)を含むハイドロフルオロカーボンを含むことができる。これらの実施形態の一部においては、HFAは、HFA134a及びHFA227の1つ又はそれ以上である。
【0148】
送達促進化合物
【0149】
送達促進化合物は、ガス状担体がニコチン源と連通して置かれたときに該ガス状担体中のニコチンの総濃度を増大させることができる化合物である。ニコチンは、25℃にて0.04mm Hgの蒸気圧を有する。環境温度が使用される場合には、所与の温度でニコチンよりも高い蒸気圧を有する送達促進化合物が好ましい。非限定的な実施例としては、塩化水素酸、臭化水素酸又は硫酸などの無機酸、並びに飽和及び不飽和脂肪酸、飽和及び不飽和脂環式酸、芳香族酸(複素環芳香族を含む)、ポリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸、ケト酸、オキソ酸、チオ酸、及びアミノ酸を含む有機酸が挙げられ、上記の各々は、任意選択的に、限定ではないがハロゲンを含む1つ又はそれ以上のヘテロ原子で置換される。一部の実施形態において、送達促進化合物は、カルボン酸である。これらの実施形態の一部において、カルボン酸は「2−オキソ酸」と呼ばれるクラスに入る。これらの実施形態の一部において、カルボン酸は、「2−ケト酸」として知られているα−ケト酸と呼ばれるクラスに入る。これらの実施形態の一部において、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態において、送達促進化合物は、例えば、食塩粒子のような固体粒子を形成する。他の実施形態において、送達促進化合物は、液滴エアロゾルを形成する。
【0150】
代替的に、送達促進化合物は、粒子状エアロゾルを形成し、その粒子は、例えば、ニコチン塩基を吸着又は吸収することができる。特定の実施形態において、粒子状エアロゾルは、塩化アンモニウム塩粒子を含む。ニコチン粒子形成又は粒子上にニコチン吸着/吸収を含む実施形態において、形成される粒子のサイズは、好ましくは6ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満又は1ミクロン未満である。
【0151】
ニコチン(又は他の医薬品)源
【0152】
ニコチン源の種々の実施形態は、ニコチン塩基又はニコチン塩類(例えばニコチン−HCl、−酒石酸水素塩、−二酒石酸塩)などの揮発性の形態のニコチンを供給することができるあらゆる化学物質を含む化合物を使用する。2つ以上の形態のニコチンを使用することができるが、遊離塩基ニコチンが好ましい。ニコチン源は、ニコチンを安定させる酸化防止剤(例えば、BHA、BHT及びアスコルビン酸塩)などの他の化合物を含むことができる。一部の実施形態において、ニコチンは、ニコチン源を提供する要素上で吸着される。吸着されたニコチンは、相対的に不活性材料の表面上に保持される。吸着要素材料の非限定的な実施例としては、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。吸着は、気体、液体、又は固体溶質が固体又は、より稀には液体(吸着剤)の表面上に蓄積したときに起こり、分子膜又は原子膜(吸着質)を形成するプロセスである。物理的吸着は、典型的には、吸着質分子と吸着性表面を構成する原子との間のファンデルワールス力及び静電気力の結果である。従って、吸着剤は、表面積及び極性などの表面特性によって特徴付けられる。
【0153】
大きな比表面積は、大きな吸着容積を実現する上で好ましいが、限られた容積内で大きな内部表面積を生成することにより、吸着面間に多数の小孔が必然的に生じる。微細孔のサイズにより内部吸着面への吸着質分子の接近性が決まるので、微細孔の孔サイズの分布は、吸着剤の吸着性を特徴付けるもう1つの重要な特性である。表面の極性は、水又はアルコールなどの極性物質との親和性に対応する。従って、極性吸着剤は「親水性」と呼ばれ、ゼオライト、多孔性アルミナ、シリカゲル又はシリカアルミナなどのアルミノ珪酸塩は、この種の吸着剤の例である。他方、非極性吸着剤は、一般的に「疎水性」である。炭素質吸着剤、ポリマー吸着剤及びシリカライトは、典型的な非極性吸着剤である。これらの吸着剤は、水よりも油又は炭化水素と親和性を有する。一部の実施形態において、吸着面はまた、吸着剤が液体状態であるときに毛管作用によって吸着される物質を吸い上げる。吸い上げは、液体と吸着面との間の分子間の接着力が液体内部の分子間の凝縮力よりも強いときに発生する。この作用により、物質が垂直吸着面に触れているところに凹状メニスカスが形成されるようになる。吸着面は、親水性又は疎水性液体を吸い上げるように選択又は設計することができる。
【0154】
代替の実施形態において、ニコチン源要素は、吸収(多孔性又は非多孔性)材料を含むことができる。ニコチン源要素材料の非限定的な実施例には、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)が含まれる。
【0155】
ニコチン源は、一部の実施形態において、ニコチンリザーバであるか、又はニコチンリザーバと連通することができる。一部の実施形態において、リザーバは、液体リザーバが吸着又は吸収ニコチン源要素と連通している液体状態のある容積のニコチンを含む。他の実施形態において、ニコチンリザーバは、ニコチン源要素であるか又はニコチン源要素の一部を形成する。このような組み合わせの供給源及びリザーバの非限定的な実施例は、ニコチン溶液で飽和した材料(例えば、PE又はP)であると考えられる。特定の実施形態において、リザーバは、送達装置が所望の時間枠にわたって治療上有効なニコチン投与を提供することができる十分なニコチン溶液を供給する。非限定的な実施例は、所望の日数(例えば、1〜7日)にわたって1日当たりに所望の回数(例えば、200回)の吸煙に対して、ガス状担体の35立方センチメートル容積「吸煙」当たりに0〜100マイクログラムのニコチンを送達することができる装置である。特定の実施形態において、送達されるニコチンの量は、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たりに10マイクログラムと110マイクログラムの間、20マイクログラムと100マイクログラムの間、50マイクログラムと100マイクログラムの間、又は、40マイクログラムと60マイクログラムの間のニコチンである。
【0156】
〔0134〕に記載された他の医薬品は、上記の例示的な化学種のようにニコチン塩基に適用される同じ原理を用いて医薬品の供給源を形成するためにニコチンの代わりに又はこれに加えて使用することができる。
【0157】
改善されたニコチン源
【0158】
ニコチンが医薬品であったこの改善用途の前の実施形態において、ニコチン送達は、特定の回数の吸煙後では望ましくないほど低レベルにまで低下され、かなりの量のニコチンが従来の装置内に残留していた。ニコチン送達プロファイルの低下は、より多くのニコチンを含めることによって対処していた。しかしながら、このニコチン量がより増えることにより、エアロゾル送達が有用なレベルを下回った後にニコチン源内に更に多くのニコチン残留物が残っていた。従来技術の装置は、治療効果が得られるようにニコチンを送達する上では十分に機能したが、次の制限事項、すなわち、a)必要なニコチン量、及びb)使用後の残量ニコチン含有量により、商業生産に向けて効率的なエアロゾル装置を設計する上での問題が発生した。例えば、装置内のかなりの残留ニコチンにより、幾つかの国で規制認可に関する問題が引き起こされる可能性があった。
【0159】
先行の用途によれば、ニコチン使用の効率を高めてニコチン含有量の単位当たりの吸煙数を増やして有用な送達プロファイルを拡張する1つの方法は、熱を加えることである。ニコチン塩基に熱を加えると、ニコチン送達量が飛躍的に増大し、有用なニコチン送達量レベルを有する吸煙回数も増大した。従って、ニコチン塩基への加熱は、ニコチンエアロゾル送達を促進するのに有用であり、経時的に吸煙当たりのニコチン濃度の低下の割合を低減する助けとなるとの結論に達した。しかしながら、この技術は、最終的に消費者に転嫁される製造コストを増大させ、規制認可への道もより困難なものとなる可能性があるので、ニコチン送達を促進するために装置内の発熱体の使用を回避することが目標であった。
【0160】
従って、送達効率を高め、且つ使用完了後の装置内の残留ニコチン量を低減するために加熱に代わるものを模索した。ニコチン源で実験する際に、水/ニコチン溶液中のニコチン塩又はニコチン塩基に電解質形成化合物を添加すると、電解質形成化合物を有していないニコチン水溶液及び電解質形成化合物を添加しないニコチン塩基と比較して、送達及び残留ニコチン低減が劇的に改善されることを予想外に発見した。例示的な電解質形成化合物は、以下の表11で見られ、水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)などの強塩基が含まれ、KOHが特に好ましい。改善された供給源で使用する好ましい形のニコチンは、ニコチン塩基及び/又は酒石酸ニコチンである。特に好ましい組み合わせは、水中でのニコチン塩基及びKOHである。これらの改善されたニコチンと電解質形成化合物の製剤は、前例の用途の装置及び組成と完全に互換性がある。これらの修飾ニコチン源で見られる劇的で驚くべき改善を以下の追加改善実験#1〜#6及び計画#1〜3に示す。
【0161】
送達促進化合物源
【0162】
本方法の一部の実施形態において、ガス状担体は、送達促進化合物と予め結合して提供される。本明細書で説明する方法の他の実施形態は、ニコチン源の上にガス状担体を通過させる前又は通過と同時にガス状担体に送達促進化合物を充填するステップを含む。ガス状担体に送達促進化合物を充填するステップを含む実施形態において、送達促進化合物は、一般的に送達促進化合物源の形態で提供される。これらの実施形態におけるガス状担体は、送達促進化合物が送達促進化合物源からガス状担体に入ることができるように送達促進化合物源と直接連通させる。一部の実施形態において、送達促進化合物源は、送達促進化合物を吸着又は吸収する材料を含有する送達促進化合物源要素を含む。送達促進化合物源要素材料は、一般的に、送達促進化合物に対して不活性となる。一部の実施形態において、送達促進化合物は、上述のように酸である。このような実施形態における吸着要素材料の非限定的な例には、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。このような実施形態の吸収要素材料の非限定的な例には、PE及びPPが含まれる。
【0163】
送達促進化合物源は、一部の実施形態においては送達促進化合物リザーバとすることができ、又はニコチンリザーバと連通することができる。一部の実施形態において、リザーバは、吸着又は吸収送達促進化合物源要素と連通した液体リザーバを用いて、液体状態のある容積の送達促進化合物を含む。他の実施形態において、ニコチンリザーバは、送達促進化合物源要素であるか、又は送達促進化合物源要素の一部を形成する。このような組み合わせの供給源及びリザーバの非限定的な例は、送達促進化合物溶液で飽和した材料(例えば、PE又はPP)であると考えられる。特定の実施形態において、リザーバは、送達装置が所望の時間枠にわたって治療上に有効なニコチン投与を供給可能にする十分な送達促進化合物溶液を供給する。非限定的な実施例は、所望の日数(例えば、1〜7日)にわたって1日当たりの所望の回数(例えば、200回)の吸煙に対して、ガス状担体の35立方センチメートル容積「吸煙」当たりに0〜100マイクログラムのニコチンの送達を可能にする十分な送達促進化合物を送達することができる装置である。特定の実施形態において、送達されるニコチンの量は、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たりに10マイクログラムと110マイクログラムの間、20マイクログラムと100マイクログラムの間、50マイクログラムと100マイクログラムの間、又は40マイクログラムと60マイクログラムの間のニコチンである。0マイクログラムのニコチンを送達する実施形態は、一般的に、漸進的なニコチン低減ベースのタバコ物品中止プログラムの最終ポイントであることが意図されている。
【0164】
温度
【0165】
本方法の一部の実施形態において、本方法は、ガス状担体、ニコチン源及び/又は促進物質源(存在する場合)の1つ又はそれ以上の温度を上昇させるステップを含む。このような温度制御ステップは、一般的に、ニコチン送達量を調節又は更に増大させるのに用いる。一部の実施形態において、温度の上昇は、送達されるニコチンレベルが他の方法では所望の最小値未満に低下することが予想される場合に限り用いられる。一部の実施形態において、これは、35cc容積吸煙当たりにニコチンが20マイクログラムを上回る、好ましくは30マイクログラムを上回る、より好ましくは40マイクログラムを上回るようにすることができる。例えば、一般的な目標送達濃度は、ニコチン送達分野で公知の技術で測定して、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たり40〜50マイクログラムのニコチンである。米国シガレットのタール、ニコチン及び炭素一酸化物収量を求めるためのFTCシガレット試験方法、NCI専門委員会報告書、喫煙及びタバコ管理モノグラフ#7、Dr.R.Shopland(編)、Darby、PA:Diane Pub1ishing Co、1996を参照されたい。一部の実施形態において、一般的に、最初に低い温度が使用され、時間と共に温度を上昇させ、ニコチン源からの所望のニコチン送達濃度を維持する。他の実施形態において、使用中に一定温度を維持する。一部の実施形態において、温度を最高100℃まで、最高70℃まで、又は40±5℃まで高める。例えば、送達促進化合物としてのピルビン酸を40℃まで加熱して、所望のニコチン濃度範囲(例えば吸煙当たりに20〜50マイクログラム)で複数の吸煙にわたってニコチン送達の持続を可能にすることができる。温度制御は、一部の実施形態においては温度制御要素により行うことができる。このような要素は、ガス状担体、ニコチン及び/又は送達促進化合物において所望の目標温度を達成できるあらゆる公知の機構とすることができる。提供される例示的な装置における温度制御要素の特定の実施例を以下に示す。或いは、ニコチン送達を促進するために発熱化学反応熱を利用してもよい。例えば、主剤をエアロゾル形成時にニコチン及び/又は水と混合して発熱を生成し、これによってニコチン使用の効率を増大させ、室温でのエアロゾル形成に対する吸煙回数が増えることによりニコチン送達を持続することができる。発熱反応は、温度上昇のために単に熱のみを発生させるために、例えば水−KOH混合物のようなニコチン源から隔離することができる。塩基は、水の有無を問わないが、好ましくは水と共にニコチン源のニコチンと混合されて熱を発生し、また、改善されたニコチン源において考察したようにニコチン送達を更に促進させることもできる。いずれの場合においても、発熱を利用して、ガス状担体、ニコチン源、及び/又は促進物質源(存在する場合)の1つ又はそれ以上のような送達装置のあらゆる成分;及びニコチン/ガス状担体を吸入に更に好ましいものにする香味化合物のような他の成分の温度を引き上げることができる。
【0166】
装置
【0167】
本明細書で説明する方法は、一般的に、装置の作動中に本明細書で説明する方法を実施するよう構成された特別に適合された送達装置を使用して実施する。当業者は、上記の指針を用いて様々な送達装置を設計及び製造することができることになる。しかしながら、発明者らは、特定の実施例として本明細書において方法及び実施可能な用途を更に例示するために本明細書で幾つかの送達装置構成を提示している。装置のユーザに送達されるガス状担体は、禁煙、害の低減及び/又は置換のためニコチンの治療上効果のある投与を含むことができる。好ましい送達装置の実施形態は、経肺送達システムである。経肺送達システムは、粒子サイズが好適で且つ粒子サイズ変動の小さい一貫した投与を肺深部に送達する機能を有する。経肺薬剤送達の利点は、無針投与並びにこれに付随する患者の受容及び適応上の改善に限定されない。鼻、経皮的、口腔及び無針注射を含む利用可能な様々な非侵襲的薬剤送達技術のうち、経肺送達は、正確な投与滴定、迅速な吸収、及び高い生体利用効率に対して固有の可能性を提供し、新規の治療を行い且つ既存の化合物の送達を改善する。
【0168】
発明の実施の形態
ニコチンエアロゾル形成の適切な実験計画のための選別
【0169】
幾つかの実験計画の試験を以下で説明するように行い、酸の蒸気を塩基蒸気と直ちに反応させることによりエアロゾル粒子の生成を評価した。
【0170】
実験#1:塩化水素酸及びアンモニアを使用して「Y」字管中に蒸気の混合物を生成して、これをニコチン遊離塩基の上に通過させた。
【0171】
目的:
この目的は、ニコチン遊離塩基をエアロゾル化する十分な特性のエアロゾルを生成するために化学的に頑健な酸/塩基システムの有効性を評価することであった。
【0172】
実験計画:
実験計画は、「Y」形状管を介して接続された2本の同一のガラス試験管(管Aは、5mlの塩化水素酸(HCl)を含み、管Bは5mlのアンモニア(NH3)を含んでいた)を含み、該「Y」形状管は、2本の試験管からの蒸気を「Y」字管内で直ちに混合させた後、これを制御吸煙容積装置CPVA(100回(100回の吸煙)に対して2秒の持続時間(3秒間隔)で40ccの空気)を使用してニコチン遊離塩基の上に通過させることができるように設計されていた。HCl蒸気及びNH3蒸気の混合により白色の濃い可視雲が生成された。
【0173】
結果:
【0174】
表1 ニコチンの上にHCl及びNH3を通過させた後に得られたニコチンの量
【0175】
考察:
【0176】
塩化水素酸、アンモニア及びニコチンの使用により、表1に示すように、ニコチンのみに対してかなりのニコチン送達がもたらされた。しかしながら、この実験用に選んだ酸及び塩基の化学反応性及び腐食性に起因して、揮発性及び低揮発性の有機酸(例えば、脂肪酸)を含む、非腐食性の酸代替物のようなヒト用により適した代替成分を評価した。
【0177】
実験#2:ニコチン塩基エアロゾル送達構成にわたる酸の展開に使用する適切な酸候補の選別
【0178】
目的:
【0179】
この実験の目的は、経肺送達に好適なエアロゾルを形成するためにニコチン遊離塩基と混合する能力について一連の酸候補を評価することであった。μg/吸煙として表されたニコチン遊離塩基の最大質量を含有するエアロゾルを生成した優良候補を更に評価するために選択した。比較的高い揮発性であること、及び食品添加物、香味剤及び甘味剤などのヒトが消費するためのシガレット及び他の商品の成分であることの理由から、揮発性カルボン酸を最適な有機酸として選んだ。
【0180】
実験計画:
【0181】
長さ4cmx2cm×1cmの2つの同一の矩形ガラス試験容器は各々、試験容器の中央から離れて90°転向する前に容器の頂部を外方に延通する2つの入口ポート/出口ポートを含むものであった。これらのポートは、容器の縁部付近で両側に位置付けされていた。内部的には、これらのポートは、容器の底部付近まで延在する中空ガラス管から成るものであった。これらのポートの目的は、ニコチン遊離塩基(容器「B」)又は候補酸(容器「A」)の容積にわたって空気が移動する制御通路を提供することである。この実験において、容器Bにニコチン遊離塩基200μLを充填し、容器Aにはピルビン酸200μLを充填した。ニコチン遊離塩基及びピルビン酸の容積は、エッペンドルフピペットにより添加した。純ニコチン遊離塩基及び純ピルビン酸を4℃の窒素ガス下で保管した。ニコチン遊離塩基及びピルビン酸の作動容積を窒素下ではなく冷蔵状態で保管した。作動容積は容器に移す前に室温にした。温度プローブを使用して作動容積が室温に達したことを確認した。充填注入口を各容器に作製して頂部中央パネル上に位置決めし、容器に適切な反応剤を充填するのに使用した。適切な容積を個々の容器に添加した後、注入口をPARAFILM(登録商標)のプラグを用いて封止し、プラグの外側はTEFLON(登録商標)テープを重ね巻きした。その後、TEFLON(登録商標)管材を使用して容器を順次的に接続し、PARAFILM(登録商標)で固定した。次に、反応生成物を収集するのに使用するケンブリッジフィルタ(44mm直径)を含むフィルタホルダに容器Bからの出口をTYGON(登録商標)管材を用いて接続した。Pillsbury HC著、「低着火性シガレットからの全粒子状物質及びガスを収集するための喫煙機械パラメータ」(1993年3月14日、米国消費者製品安全委員会との契約による、#CPSC−S−92−5472 Ii)を参照されたい。フィルタハウジングの反対側は、TYGON(登録商標)管材により100cc注射器に接続した。この注射器は、制御吸煙容積装置(CPVA)を構成する自動化システムに固定した。詳細な方法論については、Levin ED、Rose JE及びBehm F共著、「喫煙トポロジーを乱さない吸煙容積の制御」(挙動調査方法計装及びコンピュータ、21:383〜386、1989年)を参照されたい。この教示内容は引用により本明細書に組み入れられる。第1の容器を充填してから第1のサンプリング間隔を開始するまでの設定を準備をする総時間は約5分であった。CPVAは、20回(20回吸煙)、2秒の持続時間(30秒間隔)で容積35ccの空気を引き込むようにプログラムされていた。充填後の容器を半分の高さで水浴中に浸漬させ、サンプリング前に10分間、70℃で平衡させることができるようにした。
【0182】
候補酸の評価を行う前に対照実験を行い、該対照実験では、ニコチン遊離塩基のみを容器内に保持し、ニコチン蒸気を20回(2秒の持続時間及び30秒の吸煙間隔で35ccの空気の20回吸煙)でケンブリッジフィルタを介して引き込んだ。NPD(窒素リン検出器)を利用するガスクロマトグラフィ(GC)により全ての試料を定量化した。
【0183】
結果:
【0184】
以下の表は、酸性選別並びに対照実験の結果を示している。結果は、各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0185】
表2 〜70℃での塩基上への酸のニコチン送達
【0186】
考察:
【0187】
実験結果は、約70℃にて、ニコチン上の3−メチル−2−オキソ吉草酸が最大量のニコチン(363.89μg/吸煙)を送達し、次に、ピルビン酸(362.28μg/吸煙)、2−オキソ吉草酸(297.75μg/吸煙)、4−メチル−2−オキソ吉草酸(281.39μg/吸煙)、3−メチル−2−オキソブタン酸(213.99μg/吸煙)及び2−オキソオクタン酸(90.48μg/吸煙)であることを示している。これらの候補は、以下の実験で説明するように環境条件下で評価した。3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸及び2−オキソオクタン酸は、「2−ケト酸」又は「アルファ−ケト酸」と呼ばれるカルボン酸の属を表している。
【0188】
実験#3:環境温度下での主要酸候補の評価
【0189】
目的:
【0190】
この実験の目的は、上述の実験から選択された主酸候補のどれが環境条件下で最大量のニコチンを送達するかを評価することであった。
【0191】
実験計画:
【0192】
この実験は、ガラス試験容器を加熱した水浴中に浸漬せずに環境温度にてサンプリングしたという点を除き、前回の実験で説明したように実施した。個々の実験は、選択された酸候補、すなわち、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、及び2−オキソオクタン酸を使用して実施した。各実験では、容器Bにニコチン遊離塩基を用いた前回の実験と同様に、容器Aに異なる酸を配置した。前回の実験と同様に、ニコチン遊離塩基対照実験も行った。
【0193】
結果:
【0194】
以下の表は、環境条件下でサンプリングした主酸候補の評価結果を示している。結果は、各吸煙において測定したニコチン量として表している。
【0195】
表3 塩基上の選択した酸を使用したニコチン送達量(環境温度)
【0196】
考察:
【0197】
環境温度からのデータは、ピルビン酸が44.68μg/吸煙の送達でニコチンエアロゾルを形成する優良な候補であることを示している。
【0198】
実験#4:エアロゾル生成のための従来技術の設計を利用した前回の70℃及び環境温度実験(それぞれ実験#2及び実験#3)に基づく主酸候補の評価
【0199】
目的:
【0200】
この実験の目的は、従来技術による構成と酸及び塩基の順次的な配向とを比較して、どちらの方がより高いニコチン送達が得られるかを判断することであった。〜70℃にて類似のニコチン送達を発生した2つの主酸候補と、環境温度下で最大量のニコチンを送達した1つの酸候補(実験#2〜#3から)をそれぞれ70℃及び環境条件下で試験した。
【0201】
実験計画:
【0202】
この実験において、実験#2で使用したものと相違しない2つの同一の矩形のガラス試験容器を利用した。容器Aには200μLの主酸を含み、容器Bには200μLのニコチン遊離塩基を含んでいた。2つの容器を「Y」字形ガラスコネクタを介して接続し、次いで、「Y」字形ガラスコネクタを、上述のようなケンブリッジフィルタを含む同じPTFEハウジングに接続した。管からの蒸気は、制御吸煙容積装置(CPVA)を使用して20回(20回の吸煙)、2秒の持続時間(30秒間隔)で容積35ccの空気を引き込むと、「Y」字形ガラスコネクタ内で直ちに混合できるようにした。高温の実験では、酸容器及びニコチン容器は約70℃の水温の水浴中に半分の高さで浸漬させた。これらの容器は、サンプリング前に10分間平衡できるようにした。室温環境での実験では、両方の容器を実験台上に設置した。収集した試料は、窒素リン検出器によるガスクロマトグラフィを用いてニコチンを分析した。
【0203】
結果:
【0204】
以下の表は、従来技術のシステムを利用して、高温(約70℃にて)及び環境条件にてサンプリングした主酸候補の評価の結果を示しており、また、順次的な塩基上酸設計(実験#2〜#3から)を使用した結果を比較のため表している。結果は、各吸煙で測定されたニコチンの質量として表されている。
【0205】
表4 「Y」字形設計(従来技術)を使用したニコチン送達
【0206】
考察:
【0207】
このデータに基づくと、従来技術による設計のニコチン送達は、順次的設計よりも有意に低く、従って、順次的設計の方がニコチンエアロゾルの送達に優れた方法である。
【0208】
実験#5:十分なニコチン濃度を有するエアロゾルプルームの展開において塩基上の酸環境を実現するための酸リザーバ及び塩基リザーバの順次的配置の効果
【0209】
目的:
【0210】
この実験の目的は、酸蒸気をニコチン遊離塩基容器内に入れてニコチン上に上昇させ、十分な量のニコチン遊離塩基を有するプルーム雲を生成することを可能にする、酸及び塩基リザーバの順次的構成の影響を判断することであった。この実験で使用するためにピルビン酸を選択した。
【0211】
実験計画:
【0212】
この実験計画は実験#2と同じであった。この実験は2つの部分A及びBに分けた。第1の部分Aは、3つの試料(試料当たり20回の吸煙)にわたって収集した別個の容器内での各々200μLのニコチン遊離塩基及びピルビン酸の使用の評価を含めた。実験の第2の部分(パートB)は、環境条件及び40℃の条件下で試験した上記のシステムを比較し、エアロゾル形成及びニコチン送達に及ぼす緩い加熱の影響を評価することを含めた。
【0213】
結果(パートA):
【0214】
以下の表は、環境条件下でのニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験(パートA)の結果を示している。結果は、ニコチンの全質量及び各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0215】
表5 塩基上の酸のニコチン送達
【0216】
考察(パートA):
【0217】
これらの結果は、第1の試料から最後の試料まで約32%の全体的なニコチン収量の減少があることを示している。
【0218】
結果(パートB)
【0219】
以下の表は、40℃でのニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験結果を示している。結果は、ニコチンの全質量及び各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0220】
表6 40℃における塩基上の酸のニコチン送達
【0221】
考察(パートB):
【0222】
環境条件と比較したときに、加熱条件下でニコチンの質量/吸煙の3〜4倍の増加が観察された。更に、変動係数は、送達動特性の良好な制御を表す約5%にまで著しく改善された。その上、吸煙全体にわたってニコチン送達の有意な減少はなかった。
【0223】
実験#6: 小型化/シガレットサイズ装置(長さ8cm、ID8mm)におけるピルビン酸での順次的セットアップを用いることによるニコチンエアロゾルの形成及び送達の調査
【0224】
材料及び方法:
【0225】
使用したマトリクス材料:
【0226】
PE繊維及びPP繊維の混合(Porex Technologiesが提供するX−40495繊維として販売されている)で作られた芳香剤用芯試料をピルビン酸が充填されたマトリクスとして使用し、不織PET膜支持体を有する延伸PTFE医療用膜から成るGORE(登録商標)Medical Membrane(0.2ミクロンの細孔サイズ)(W.L.Gore & Associates社から提供されるSMPL−MMT314として販売されている)をニコチン遊離塩基を充填するためのマトリクスとして使用した。膜シートは、ID1.5mmのおよその寸法を有するポリエステル内壁及びTEFLON(登録商標)外壁を実現するストロー構造に巻いて長さ4cmの小片に切断した。
【0227】
実験計画:
【0228】
芳香剤用芯の1つの小片に180μLのピルビン酸(ピルビン酸供給源要素)を充填し、長さ4cm、IDが1.5mmのロール状医療用膜の3つの小片の内壁(ポリエステル側)に90μL(3x30μL)のニコチン遊離塩基をコーティングした。ピルビン酸を充填させた芳香剤をIDが8mm、長さが9cmの透明なTEFLON(登録商標)管の遠位端に挿入し、ニコチン遊離塩基を有する医療用膜の3つの小片を、3つの穴を有するTEFLON(登録商標)ワッシャーに緊密に挿入した(ニコチン源要素)。ニコチン源要素は、ピルビン酸供給源要素とニコチン源要素との間に2cmの空隙を残して、ピルビン酸供給源要素を有する長さが9cm、内径(ID)が8mmのTEFLON(登録商標)管に挿入した。供給源要素は、自動シリンジポンプによって引かれた測定容積の空気(20回、2秒の持続時間及び30秒の吸煙間隔で35cc)が最初にピルビン酸供給源要素を通り、その後、ニコチン源要素を通過してエアロゾルを形成するようにして配置された。装置の近位端は、ケンブリッジフィルタ(エアロゾル生成物を収集するための)を含む制御吸煙容積装置(CPVA)に接続した。高温(40℃)の実験では、長さ9cmの装置(ピルビン酸及びニコチンの両方の供給源要素を有する)を水浴中に完全に浸漬させ、サンプリング前に10分間平衡させた。環境条件下での実験は、実験台上に容器を設置することにより行った。
【0229】
結果:
【0230】
試料をニコチン含有量について分析し、表7及び表8に表した。
【0231】
表7 〜40℃での小型化装置の実験におけるニコチン送達
【0232】
表8 環境温度での小型化装置の実験におけるニコチン送達
【0233】
考察:
【0234】
このデータは、酸及び塩基の両方がマトリクス(この場合、酸に対して芳香剤用芯、ニコチン遊離塩基に対しては医療用膜)に充填されたときに、実験#5で使用した前の実験用装置の場合と同等のニコチン送達が得られたことを示している。加えて、〜40℃の条件では、環境条件と比較するとニコチン送達が有意に増えた(約3倍)ことを示した。
【0235】
改善実験
【0236】
実験#1 ピルビン酸を用いたエアロゾル形成の効率を改善するためのニコチンに対する好適な化学剤の選別
【0237】
目的:
【0238】
この実験は、ピルビン酸蒸気により効率的なエアロゾルを形成するためのニコチンに対する好適な化学剤を特定するために行った。
【0239】
材料及び方法:
【0240】
酒石酸ニコチン溶液:以下の手順に従ってニコチン塩基を調製した。
【0241】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化ナトリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[NaOHニコチン塩基]。
【0242】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化カルシウムと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[(Ca(OH)2ニコチン塩基]。
【0243】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化カリウムと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[KOHニコチン塩基]。
【0244】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)を1mLの蒸留水中に溶解させ、75〜80℃(発熱条件に匹敵する温度)まで加熱した[発熱実験に対する対照]。
【0245】
サイドアーム試験管内の約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)を1mの蒸留水中に溶解させた[環境温度実験に対する対照]。
【0246】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0247】
試験手順:この実験では、2つの同一のサイドアームガラス管(管A及びB)を使用した。管Aには約1mlのピルビン酸が含まれ、管Bにはアルカリ化ニコチンが含まれていた。独立したサイドアーム試験管内の塩基を有するニコチン又はニコチン単独(対照)を直接ピルビン酸源に接続した(選択した塩基への加水により生じる発熱過程の指標として温度を測定する)。環境温度条件での実験では、ピルビン酸管に接続する前に、ニコチン管を室温にまで冷却した。化学剤(管B)と混合したニコチンの上にピルビン酸蒸気(管Aからの)を通過させ、管Bからの出口をケンブリッジフィルタに接続して、自動シリンジポンプを使用することにより20回(20回の吸煙)、10回(10回の吸煙)、20回(20回の吸煙)、又は50回(50回の吸煙)、2秒の持続時間(5秒間隔)で容積35ccの空気を引き込んだときに反応生成物を収集するようにした。管A内に形成された蒸気は、チューブAに取り付けられたガラスピペットを流れる空気によりチューブB内に導入した。NPD(窒素リン検出器)を利用してガスクロマトグラフィ(GC)により全ての試料を定量化した。
【0248】
結果:
【0249】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの形態で送達されたニコチンの平均量を表1A及び表1Bに示す。
【0250】
表1A 発熱条件下で酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0251】
表1B 環境温度にて酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0252】
考察:
【0253】
3つの異なる塩基[NaOH、KOH及びCa(OH)2]をニコチン塩基と混合することにより行った実験から得られたニコチンエアロゾル送達は、区別できる結果を明らかにした。加えて、2つの実験条件(発熱条件及び環境温度条件下)によってもニコチンエアロゾル送達に関して異なる結果がもたらされた。
【0254】
発熱条件下で、平均ニコチンエアロゾル送達は、ニコチン塩基が水酸化ナトリウム(NaOH)と混合されたときに31.33μg/吸煙、ニコチン塩基が水酸化カルシウム[Ca(OH)2]と混合されたときに0.66μg/吸煙、及びニコチン塩基が水酸化カリウム(KOH)と混合されたときに29.79μg/吸煙であった。対照実験では、化学剤(塩基)なしで同一の実験条件下で約1.25μg/吸煙のニコチンエアロゾルが送達された。[Ca(OH)2]が水及びニコチン塩基と混合しても熱は生成されず、一方、他の2つの塩基(NaOH及びKOH)により熱が生成された点に留意することが重要である。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、「アルカリ金属水酸化物」として知られており、一方、水酸化カルシウムは、「アルカリ土類金属水酸化物」として知られている。この実験結果は、ニコチンエアロゾル送達は、同一の試験条件下のアルカリ土類金属水酸化物と比較すると、ニコチン塩基がアルカリ金属水酸化物と混合したときに有意に促進されたことを示している。
【0255】
実験を環境温度(室温)で行った場合、平均ニコチンエアロゾル送達は、ニコチン塩基が水酸化ナトリウム(NaOH)と混合したときに27.26μg/吸煙、ニコチン塩基が水酸化カルシウム[Ca(OH)2]と混合したときに0.43μg/吸煙、及びニコチン塩基が水酸化カリウム(KOH)と混合したときに29.57μg/吸煙であった。対照実験では、どのような塩基もなしで同一の実験条件下で約0.55μg/吸煙のニコチンエアロゾルを送達した。興味深いことに、室温では、ニコチンエアロゾル送達は、NaOHと比較するとニコチン塩基がKOHと混合したときの方が若干高かった。
【0256】
水酸化カリウム(アルカリ金属水酸化物)を使用した実験でのニコチン送達は、NaOHに対して若干増大した。従って、以下の実験は、好ましい薬剤として水酸化カリウムを使用して行った。
【0257】
実験#2:発熱下で酒石酸ニコチン及び水酸化カリウム混合物の上に通過させたピルビン酸
【0258】
目的:
【0259】
先の実験において、発熱反応から放出された熱は、エアロゾルの形態で初期ニコチン送達を促進する重要な役割を果たすことに注目した。この調査は、発熱によるニコチンエアロゾル送達の促進の持続性を試験するために実施した。この実験においてニコチン塩基の供給源として酒石酸ニコチンを使用した。
【0260】
材料及び方法:
【0261】
アルカリ化した酒石酸ニコチン溶液:以下の手順を使用してアルカリ化したニコチン塩基の2つの異なる濃度を調製した。
【0262】
約250mgの酒石酸ニコチン塩(81mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で500mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0263】
約125mgの酒石酸ニコチン塩(40mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で250mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0264】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0265】
試験手順:実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液をピルビン酸源に接続した。
【0266】
結果:
【0267】
ニコチン含有量について試料を分析し、最大150回吸煙の各々50回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表2に示す。
【0268】
表2 発熱条件下で酒石酸ニコチン溶液の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0269】
考察:
【0270】
第1の50回の吸煙で送達されたニコチン量を示す結果(実験Aでは76.7μg/吸煙、実験Bでは57.8μg/吸煙)は、水酸化カリウムと水の反応の結果として発熱反応により発生する熱が第1の50回吸煙におけるピルビン酸でのニコチンエアロゾル形成を飛躍的に促進させたことを示唆しており、50回吸煙を完了するのに必要な時間は約30分であり、その間、発熱反応により発生した熱は高温を持続した。この実験結果は、第1の50回吸煙においてニコチン送達の促進を得るために外部加熱を必要としなかったという意味では、重要且つ固有なものである。この結果はまた、出願人の先願において熱を使用してニコチンの送達が促進されることを確認しており、加熱のこの代替機構を適用すると、実用的且つ商業的に実現可能な選択肢に相当する吸煙数において送達を促進できることを実証している。適切な断熱を行えば、発熱は、本明細書で示される50回を更に上回る吸煙でも送達の促進に有用となるはずである。
【0271】
実験#3:酒石酸ニコチンと水酸化カリウムの混合物の上に通過させたピルビン酸
【0272】
目的:この実験は、ピルビン酸の蒸気をアルカリ化したニコチン塩基の上に通過させたときのエアロゾルの形態でのニコチン送達を調査するために設計されたものである。ニコチン塩基の供給源として酒石酸ニコチンを使用した。
【0273】
材料及び方法:
【0274】
アルカリ化した酒石酸ニコチン溶液:約500mgの酒石酸ニコチン塩(162mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で1gの水酸化カリウムペレットと混合させ、2mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0275】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0276】
試験手順:
【0277】
実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液を直接(これにより発熱を測定できる)ピルビン酸源に接続した。
【0278】
結果:
【0279】
ニコチン含有量について試料を分析し、35ccの容積の各50回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表3に示す。結果は、相対的当量(700μL)のピルビン酸及び量が著しく多量(700mg)の非アルカリ化ニコチン塩基を使用した同一の実験計画から得られたデータと比較した。
【0280】
表3 非アルカリ化ニコチン塩基からのニコチン送達と比較した、室温でピルビン酸の蒸気がアルカリ化した酒石酸ニコチン溶液の上に通過したときのニコチン送達
【0281】
考察:
【0282】
この実験の200回吸煙でのニコチン送達(平均値71.12μg/吸煙)は、これまでの実験結果(平均ニコチン値は21.66μg/吸煙であった)と比較すると飛躍的に増大した(約3.5倍)ことは注目に値するものであった。更に重要なことに、この実験で使用した全ニコチン遊離塩基の量は、前回の実験(700mg)よりも有意に少なかった(162mg)。もう1つの重要な発見は、第1の50回吸煙で送達されたニコチンはその後の吸煙よりも多かったことであった。ニコチン塩が水酸化カリウム及び水と反応したときに熱(発熱)の形態で放出されたかなりの量のエネルギーがあったことを観察した。高温(約80℃)は、約15〜20分間持続させた。従って、第1の50回吸煙でのニコチン送達の増大は、恐らくは発熱に起因するものである。しかしながら、重要なことに、吸煙回数100〜200でのニコチン送達の促進は、容易には過渡的な発熱反応によるものとすることはできない。むしろ、ニコチン自体に関するアルカリ金属水酸化物の添加(すなわち発熱性加熱を超える塩基添加によるある程度の作用)は、ニコチンエアロゾルの収量の持続的増大の要因となると思われる。この実験データから、アルカリ金属水酸化物からの薬剤の使用は、対照実験(アルカリ金属水酸化物が存在しなかった場合)と比較すると、ニコチンエアロゾル送達を有意に促進したことにより効率的なエアロゾルを形成するのに必要なニコチン塩基の量を低減する一助となったと結論付けることができる。
【0283】
これらの観察結果により、少量のニコチン塩類を用いた次の1組の実験を行った。
【0284】
実験#4:室温で水酸化カリウム混合物中の少量の酒石酸ニコチンの上に通過させたピルビン酸
【0285】
目的:
【0286】
この実験は、ピルビン酸の蒸気で効率的なエアロゾルを形成するのに用いることができる酒石酸ニコチンの最少量を判断するために設計されたものである。この目的において、酒石酸ニコチンの3つの異なる量をニコチン塩基の供給源として使用して、ピルビン酸の蒸気でエアロゾルを形成した。エアロゾル試料は、試験管が室温になるのを待機することにより発熱のない状態で収集した。
【0287】
材料及び方法:
【0288】
酒石酸ニコチン溶液:この実験におけるアルカリ化した3つの異なる濃度のニコチン塩基を以下のように調製した。
【0289】
約32mgの酒石酸ニコチン塩(10mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0290】
約20mgの酒石酸ニコチン塩(6.5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0291】
約9mgの酒石酸ニコチン塩(2.9mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0292】
独立したサイドアーム試験管内の上記の溶液を20分間室温に保ち、試験管を室温にした。
【0293】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0294】
試験手順:ここでは実験#1で説明した方法に従った。
【0295】
結果:ニコチン含有量について試料を分析し、第1の100回の吸煙において各10回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表4に示す。
【0296】
表4 室温にて低濃度のニコチン及び水酸化カリウム溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0297】
考察:
【0298】
実験結果は、第1の100回吸煙で送達されたニコチンの平均量は、水酸化カリウム溶液中の少量(10mg)ニコチンで35.55μg/吸煙、水酸化カリウム溶液中の更に少量(6.5mg)のニコチンで28.077μg/吸煙、及び水酸化カリウム溶液中の最少量(2.9mg)のニコチンで25.10μg/吸煙であったことを示している。3つの実験は全て、約700mgのニコチン塩基を使用した先の実験(表3)と比較すると、ニコチンが有意に低レベルであってもかなりのニコチンエアロゾル送達を示した。ちなみに、最少量(2.9mg)のアルカリ化したニコチンでのニコチンエアロゾル送達は、700mgのニコチン塩基を使用した実験よりも優れたものであった。酒石酸ニコチン溶液に水酸化カリウムを添加すると少量のニコチンを使用してもこのような効率的なニコチンエアロゾルが形成される点に留意することは注目に値することであった。
【0299】
水酸化カリウムと酒石酸ニコチンの組み合わせは、ニコチン塩基の著しい低濃度であっても第1の100回吸煙に対してニコチンエアロゾル送達の低下を克服するのに有効であったと結論付けることができる。
【0300】
実験#5:酒石酸ニコチン及び水酸化カリウムの混合物の上にピルビン酸を通過させたときのエアロゾルで送達されたニコチンに対する質量バランスの評価
【0301】
目的:
【0302】
現在の実験の主な目的は、エアロゾルの形態で送達されたニコチン量を調査して、ニコチンに関する回収の百分率を算出することであった。二次的な目的は、酒石酸ニコチン溶液及び水酸化カリウム溶液の2つの異なる濃度における望ましい量のニコチン送達の持続性を判断することであった。
【0303】
材料及び方法:
【0304】
酒石酸ニコチン溶液:ニコチン塩基の2つの異なる濃度を以下の手順を使用して調製した。
【0305】
約32mgの酒石酸ニコチン塩(10mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0306】
約9mgの酒石酸ニコチン塩(2.9mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0307】
独立したサイドアーム試験管内の上記の溶液は、20分間室温に保ち、ニコチンエアロゾル形成に及ぼす発熱の影響を防いだ。
【0308】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0309】
試験手順:実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液をピルビン酸源に接続した。
【0310】
結果:
【0311】
ニコチン含有量について試料を分析し、各10回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表5に示す。
【0312】
表5 酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0313】
考察:
【0314】
水酸化カリウム中に10mgのニコチンを含有する実験による第1の280回吸煙で送達されたニコチンの全量は約7.9mgであり、平均ニコチン量は31.13μg/吸煙であった。約2.9mgのアルカリ化したニコチン塩基を含有する実験において送達された(120回の吸煙で)ニコチンの合計が2.88mgであり、平均ニコチン量は241.03μg/吸煙であった。エアロゾル形成及び送達は、約10mgのアルカリ化したニコチンを含有する実験においても依然として存在しており(280回目の吸煙にて観察された二桁のニコチン送達から立証されるように)、一方、エアロゾル形成は、約2.9mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した実験においてはわずか120回吸煙しか持続しなかった。回収率は、2.88mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した実験においては約99.3%であり、10mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した場合には79.0%の回収率であった点に留意することは注目に値することであった。従って、この実験結果は、大部分の(79%を上回る)ニコチンがピルビン酸でエアロゾルを形成するのに効率的に利用されたことを明確に実証した。更に、この実験結果は、ニコチンエアロゾル送達の持続性が使用した水酸化カリウム中のニコチン量に左右されることを示していた。
【0315】
実験#6:ピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達する適切な装置を展開するための調査
【0316】
目的:
【0317】
この1組の実験の目的は、実験計画を商業的に使用可能な装置の作製に近付けることであった。
【0318】
計画#1:サイドアーム試験管内のピルビン酸及びID2mmのガラス管内のニコチン塩基
【0319】
材料及び方法:
【0320】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。この溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0321】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0322】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続し、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0323】
計画#1:サイドアーム試験管内のピルビン酸及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングした水酸化カリウム中のニコチン
【0324】
材料及び方法:
【0325】
ニコチン塩基溶液:
【0326】
約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム(KOH)溶液と混合した。溶液を長さが10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、このコーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液1。
【0327】
約20μL(20mg)のニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さが10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液2
【0328】
約30μL(30mg)のニコチン塩基を10μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液3
【0329】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0330】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続し、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0331】
結果:
【0332】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各10回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表6に示す。
【0333】
表6: ガラス管上にコーティングしたアルカリ化したニコチン塩基の上にサイドアーム試験管内のピルビン酸を通過させたときのニコチン送達
* 約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
**約20μL(20mg)のニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
***約30μL(30mg)のニコチン塩基を10μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
【0334】
計画#2:ピルビン酸、及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングした水酸化カリウム中のニコチン
【0335】
材料及び方法:
【0336】
ニコチン塩基溶液:約2.7mgのニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の内面上にコーティングし、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0337】
ピルビン酸:約20μLのピルビン酸(PA)を長さ10cmでID2mmのガラス管の内面上にコーティングし、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ピルビン酸ユニット)内に収納した。
【0338】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0339】
結果:
【0340】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各5回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表7に示す。結果は、ニコチン塩基を水酸化カリウム溶液と混合しなかったという点を除き、同一の実験から得られたデータと比較した。
【0341】
表7:ガラス管内にコーティングした水酸化カリウム(KOH)中のニコチンの上にガラス管内にコーティングしたピルビン酸が通過したときのニコチン送達
【0342】
計画#3:芳香剤プラグ上に充填したピルビン酸及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングしたニコチン
【0343】
材料及び方法:
【0344】
ニコチン塩基:約5mgのニコチン塩基を15μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管2本(並列に配置)の内面上にコーティングし、同じ寸法のもう2本の空のガラス管(コーティングなし)を空気希釈のために含めた。全ての管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0345】
ピルビン酸:約140μLのピルビン酸(PA)をPE繊維及びPP繊維の混合(Porex TechnologiesによりX―40495繊維として販売)で作られた芳香剤用芯試料に充填し、ID6mmのテフロン管(ピルビン酸ユニット)内に挿入した。
【0346】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0347】
結果:
【0348】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各10回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表8に示す。結果は、ニコチン塩基をアルカリ化しなかった(非アルカリ化ニコチン)という点を除き、同一の実験から得られたデータと比較した。
【0349】
表8:ガラス管内にコーティングした水酸化カリウム中のニコチンの上に芳香剤に充填したニコチンピルビン酸を通過させたときのニコチン送達
【0350】
考察:実験6の結果は、吸入のためニコチンエアロゾルを送達する実施可能な製品設計において利用できるものと類似の装置構成部品の使用を示す。ニコチン収量の持続的促進は、発熱反応とは関係なく、先に説明した計画#1〜#3の場合と同様にニコチンとアルカリ金属水酸化物の使用によって得られるものである。全ての場合において、外部に発熱体がない場合のニコチンの実質的な送達は、ニコチン収量を促進するためにニコチンと組み合わせてアルカリ金属水酸化物を利用することの有用性を実証している。
【0351】
実験#7:ピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するためにニコチン及び水酸化カリウムの適切な比率を選択するための調査
【0352】
目的:
【0353】
この実験の目標は、持続可能な量のピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するために水酸化カリウム:ニコチンの適切な比率を選択することであった。
【0354】
材料及び方法:
【0355】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を、10、20、40、60、80、100、又は200mgの水酸化カリウムを含有する200μLの水とサイドアーム試験管内で混合した(ニコチン塩基ユニット)。実験前にニコチン塩基ユニットを20分間室温に保った(発熱の発生後に冷却するため)。
【0356】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0357】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0358】
結果:
【0359】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各20回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表10に示す。
【0360】
表10:異なる比率の水酸化カリウム及びニコチン塩基の上にピルビン酸蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0361】
考察:
【0362】
実験7の結果は、水中の水酸化カリウム:ニコチン塩基の異なる比率でのニコチンエアロゾル送達を示している。ニコチン送達の持続的促進は、10:40、10:60、10:80及び10:100のニコチンと水酸化カリウムの比率で達成されたが、10:60の比率が、他の3つの比率よりも優れていると思われる点に留意することが重要である。従って、水酸化カリウム濃度:ニコチン塩基の比率を調節することにより、必要に応じてニコチンエアロゾル送達を最適レベルに制御することができる。pHは、水酸化カリウム量の増加毎に高くなった。従って、より高いアルカリ性pH自体は、ニコチン送達性と相関はなかった。
【0363】
KOHの中程度の濃度でのニコチンの送達の増大は、むしろ、KOHの水溶液中に懸濁したニコチンの小滴から成る乳濁液の出現と相関していた。KOHの低濃度(例えば200マイクロリットルの水中に10mgのKOH)は、この相分離を誘起するには不十分であった。相分離を誘起している間の非常に高い濃度(例えば200マイクロリットルの水中に200mgのKOH)では、KOH溶液により囲まれた小滴のニコチンから成るKOH中のニコチンエマルジョンが安定しなかった。むしろ、恐らくはKOHの高濃度水溶液の表面張力が増大したことに起因して、ニコチンの連続層が形成された(PM Dunlap及びSR Faris共著、水酸化カリウム水溶液の表面張力、Nature 196、1312〜1313頁、1962年)。安定エマルジョンがなければ、多数回の吸煙でのニコチン収量の促進は、試験した条件下では見られなかった。すなわち、ニコチン送達の促進は、ニコチン含有の小滴を囲むKOH溶液中のピルビン酸の隔離に左右されると考えられる。
【0364】
実験#8:効率的なピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するための追加の薬剤の選別
【0365】
目的:
【0366】
この実験の目的は、持続可能な量のピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するために、水酸化カリウムに加えて一部の追加の薬剤(好ましくはアルカリ金属水酸化物/酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物/酸化物)及び塩類を調査することであった。
【0367】
材料及び方法:
【0368】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を100mgの選択した塩基及び塩を含んだ300μLの水とサイドアーム試験管内で混合した(ニコチンユニット)。実験前に、(発熱があった場合に冷却するために)ニコチンユニットを20分間室温に保った。持続可能なニコチンエアロゾル送達を促進する機能に対して以下のリストの候補を選別した。
【0369】
アルカリ金属水酸化物及び酸化物:
水酸化カリウム(KOH)
第三ブトキシカリウム[(CH3)3COK]
超酸化カリウム(KO2)
水酸化ナトリウム(NaOH)
ブトキシドナトリウム[CH3(CH2)3ONa]
第三ブトキシドナトリウム[(CH3)3CONa]
酸化リチウム(Li2O)
【0370】
アルカリ土類金属酸化物:
酸化カルシウム(CaO)
酸化ベリリウム(BeO)
酸化バリウム(BaO)
過酸化バリウム(BaO2)
【0371】
塩類:
塩化カリウム(KCl)
塩化ナトリウム(NaCl)
炭酸ナトリウム(Na2CO3)
クエン酸ナトリウム[HOC(COONa)(CH2COONa)2]
硫酸アンモニウム[(NH4)2SO4]
【0372】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0373】
試験手順:ニコチンユニットをピルビン酸ユニットに接続して、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0374】
結果:
【0375】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各60回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表11に示す。
【0376】
表11 室温にてニコチンの一部のアルカリ金属水酸化物/酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び塩類の混合物の上にピルビン酸蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0377】
考察:実験8の結果は、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム及びリチウム)水酸化物/酸化物が、アルカリ土類金属(ベリリウム、カルシウム及びバリウム)酸化物に比べて、エアロゾルでの持続可能且つ促進された量のニコチンを生成及び送達するのに最も効果的なグループであることを明確に示している。試験したアルカリ金属水酸化物/酸化物のうち、カリウム及び水酸化リチウム/酸化物は、エアロゾルでの促進されたニコチン送達をもたらす優れた候補であることが確認されている。
【0378】
更に、塩溶液をニコチン塩基と混合した実験において送達されたニコチンエアロゾルが、興味深い結果をもたらすことが分かった。対照実験(水、塩又はアルカリ金属水酸化物/酸化物及びアルカリ土類金属酸化物なし)では、エアロゾルで約25.62μg/吸煙のニコチンを送達したが、選択した塩溶液をニコチン塩基と混合することは、対照実験の結果と比較すると、以下の2つの理由でエアロゾルでのニコチン送達を促進するのに有利であることを証明できた。
【0379】
(1)ニコチンは、水と共に共沸混合物を形成することが知られており、ニコチン濃度及び温度の一定の範囲内で別々のニコチン相と水相に分解することができる。C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)。先の実験#7で分かるように、共沸水溶液からのニコチンの分離を引き起こすことによって、ニコチンの送達は、同じ容積の水で希釈されたニコチンと比較して促進されることになる。
【0380】
(2)純粋なニコチン塩基とよりも大きい溶液容積の使用を可能にすることによって、溶液をより大きな表面積にわたって分散させ、ニコチンの有効揮発を更に促進することができる。
【0381】
機構のどのような特定の理論に束縛される意図はないが、例えば、上記で見られるKCl及びKOHを有するニコチン水溶液からのニコチン蒸気の増大は、溶液からニコチン塩基を「塩析」する電解質の作用を表すことができる。工業化学において、これは、概念的には、水及びエタノールの共沸混合物を分離する際の酢酸カリウムの使用などの塩効果蒸留に相当することになる。Schmit、D.Vogelpohl、A.共著(1983)、酢酸カリウム存在下のエタノール水溶液の蒸留、分離科学と技術、18(6)、547〜554頁。一般に、この塩析効果は、電解液が、水中で溶解度が高く、ニコチン塩基中で溶解度が低いような、ニコチン塩基及び水中で極めて相違した溶解度を有する場合に最も効果的であるはずである。水性共沸混合物からのエタノールの塩効果蒸留におけるバイオエタノール生産分野で開発されたこの技術により、本明細書で試験したものに加えて他の塩類を評価する解析フレームワークが提供される。R.T.P.Pinto、M.R.Wolf―Maciel、L.Lintomen共著、エタノール精製のための塩分抽出蒸留プロセス、コンピュータ及び化学工学、第24巻、2−7号、2000年7月15日、1689〜1694頁;Mario Llano―Restrepo、Jaime Aguilar−Arias共著、無水エタノール生産用の塩類抽出蒸留塔のモデル化及びシミュレーション、コンピュータ及び化学工学、第27巻、4号、2003年4月15日、527〜549頁。
【0382】
表11の物質の溶液の質量モル濃度を算出することにより、濃度に対するニコチンエアロゾル化の依存性を試験した。下のグラフは、良好な相関関係(相関係数r=0.76及びp値=0.016)があることを証明している。比較のために、酸化ベリリウム又は酸化カルシウムなどの不溶性化合物では、対照水溶液上へのニコチン送達は改善しなかった(データは図示せず)。試験した他の電解質形成化合物には、第三ブトキシカリウム、超酸化カリウム、ナトリウムブトキシド、第三ブトキシドナトリウム及び過酸化バリウムが含まれる。
Regression Plot:回帰プロット
Row exclusion:Nicotine pyruvate delivery vs cone
:行排除:ニコチンピルビン酸送達対コーン
Nicotine yield:ニコチン収量
Molality:質量モル濃度
【0383】
塩析効果に加えて、二相のニコチン及び水状態への移行を誘起させるように緩い加熱が十分に確立される。C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)。イオン強度の十分な増加により位相シフト温度が変化し、この移行を誘起するためにより低い程度の加熱を必要とするか、又は加熱を不要にすることができる。
【0384】
塩析混合物の加熱は更に、概念的には、上記で考察した塩効果蒸留に相当する。これは、強塩基(KOH、NaOH)対塩類(KCl、NaCl)に対する高い初期ニコチン送達の一般的傾向と合致する。従って、特定の実施形態においては水中に溶解したときに発熱する電解液生成化合物が好ましい。
【0385】
送達促進化合物がピルビン酸のような酸である実施形態において、酸は、時間の経過に伴ってニコチン源に溶解しこれを酸性にすることができる。この酸性化は、恐らくはニコチン塩基の中和(プロトン化されたニコチンのpKaは8.5である)により、経時的なニコチン送達の減少と関連付けられる。従って、これらの実施形態において、好ましい電解液生成化合物は、水中で溶解すると発熱性があり、更に強塩基(すなわち、ニコチン/水pHは>11、12、13又は14)である。この点に関して特に好ましい化学種はKOHである。
【0386】
本明細書の方法と共に使用するよう適合された例示的な装置
【0387】
一部の実施形態の送達装置は、タバコ喫煙物品を模擬したハウジングを含む。ハウジングは、タバコ物品を喫煙するのに使用されるあらゆる物品のサイズ、形状及び/又は構成を模擬することができる。本発明による喫煙物品の非限定的な実施例としては、シガレット、シガー、シガリロ及びパイプが挙げられる。
【0388】
一部の実施形態の送達装置は、製薬吸入装置を模擬するハウジングを含む。ハウジングは、吸入に使用されるあらゆる製薬装置のサイズ、形状及び/又は構成を模擬することができる。本発明による製薬吸入装置の非限定的な実施例は、定量吸入器、加圧式定量吸入器、ドライパウダー吸入器、ネブライザ、及び液体ベースの吸入器を含む。
【0389】
例示的な装置1
【0390】
図1を参照すると、本発明の1つの実施形態による、ニコチンエアロゾルの形成及びユーザへの送達のための装置が示されている。具体的には、シガレットのサイズ、形状及び外観を有するニコチン吸入器10が示されている。ニコチン吸入器10は、細長い円筒形で且つ中空のハウジング12から成る。ガスが吸入器10を通過できるようにするために、ハウジング12は、対向する端部上にガス入口14及びガス出口16を含む。
【0391】
ハウジング12のガス入口14とガス出口16との間の部分は、第1、第2、及び/又は第3の物質を保持できる3つの区画に分けられている。第1、第2又は第3の物質は、ニコチンなどの医薬品を形成する蒸気を含むことができる。
【0392】
図2に示すように、ニコチン吸入器10は、第1の区画18、第2の区画20及び第3の区画22を含む。ニコチンは、好ましくは遊離塩基の形態で、3つの区画の何れかに配置することができる。例えば、ニコチンは、第2の区画20内に配置することができる。酸などの適切な送達促進化合物は、第1の区画18内に配置される。あらゆる適切な酸を使用することができる。例えば、ピルビン酸は、第1の区画18内に配置することができる。ピルビン酸は、室温にて実質的な蒸気圧を有する揮発性物質である。この点を踏まえて、第1の区画18内のあらゆる空き領域にピルビン酸蒸気、すなわち気体のピルビン酸がある程度まで充填されることになる。ニコチンの蒸気圧はピルビン酸の蒸気圧よりも低いが、ニコチンもまた揮発性物質である。同様に、第2の区画20内のあらゆる空き領域は、ある程度までニコチン蒸気が充填されることになる。
【0393】
ピルビン酸は、送達促進化合物源要素(図示せず)上で第1の区画18内に保持され、ニコチンは、ニコチン源要素(図示せず)上で第2の区画20内に保持される点を理解されたい。加えて、第3の物質は、第3の区画22内の第3の供給源要素(図示せず)上に保持することができる。更に、供給源要素の1つ又はそれ以上は、区画18、20及び22それぞれと一体化とするか、又はその一部とすることができる。
【0394】
送達促進化合物源要素は、ガスストリームが酸の蒸気と接触して第1の区画18を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。ニコチン源要素は、ガスストリームがニコチンの蒸気と接触して第2の区画20を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。第3の供給源要素は、ガスストリームが第3の物質と接触して第3の区画22を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。
【0395】
送達促進化合物源要素は、酸蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら、表面上に酸を保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。ニコチン源要素は、ニコチン蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら、表面上にニコチンを保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。第3の供給源要素は、第3の物質を保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。特定の実施形態において、適切な材料は、第3の物質の蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら表面上に第3の物質を保持する。
【0396】
好ましくは、適切な供給源要素材料は、表面上に設置されることになるあらゆる物質に対して不活性である。加えて、適切な材料は、上記の物質が材料の表面で吸着されるように表面上に配置されることになるあらゆる物質に関して吸着性であることが好ましい。吸収特性及び吸着特性を有する材料を利用することができるが、吸着を介して1つ又は複数の送達促進化合物、ニコチン及び/又は第3の物質を保持することができる材料が好ましい。非限定的な実施例には、好ましくは繊維網の形態で、ガラス、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。
【0397】
吸着材料は、毛管作用を介して吸着材料の表面に連続的に物質を供給するよう機能することができる。
【0398】
第3の区画22は、浄化剤を含有することができる。例えば、結果として得られる第3の区画22にガス精製能力を与えるあらゆる方法を用いて、活性炭を第3の区画22に組み込むことができる。適切な幾つかの方法が当技術分野でよく知られている。例えば、木炭は、木炭プラグ又はフィルタとして第3の区画22内に配置することができる。
【0399】
作動中、ユーザは、図3に示すようにニコチン吸入器10のガス出口16において吸煙する。吸煙作用により生成された部分真空が、ガス入口14を介してガスストリームをハウジング12に引き込む。ガスストリームは、第1の区画18に入ると、第1の区画18内に保持されたピルビン酸供給源要素の上を通過することにより酸の蒸気を捕捉する。第1の区画18から出た後に第2の区画20に入るガスストリームは、酸含有ガスストリームである。酸含有ガスストリームは、第2の区画20内でニコチン源要素により保持されたニコチンの上を通過することによりニコチン含有粒子の流れを生成する。ニコチン含有粒子の流れは、第3の区画22を通過してガス出口16から出るとユーザの口に入る。あらゆる未反応の酸は、第3の区画22内の活性炭フィルタを介してニコチン含有粒子のストリームから除去される。ピルビン酸は第1の区画18内の第1の要素上に保持することができ、及び/又はニコチンは第2の区画20内の第2の要素上に保持することができることを認識されたい。加えて、浄化剤又は香味剤などの第3の物質は、第3の区画22内の第3の要素上に保持することができる。更に、第1、第2又は第3の要素は、それぞれ、区画18、20及び22と一体化とするか、又はその一部とすることができる。
【0400】
例示的な装置2
【0401】
この例示的な装置を図4〜図6を参照して図示し説明する。図4では、この装置の要素が組立フローチャートで示されている。送達促進化合物源30及びニコチン源40は、一般的に端部上にヒートシールされた脆弱な障壁エンドキャップ35及び45を有する独立構成部品として任意選択的に製造及び貯蔵される。これらの2つの要素30及び40は、第1のハウジング50に挿入される。送達促進化合物源30及びニコチン源40を含有する第1ハウジング50は、次いで、第2のハウジング100に挿入される。ハウジング50及び100並びに要素30及び40は、一般的に押出成形プラスチック管である。また、第2のハウジング100には発熱体95も挿入される。発熱体95は、一般的に、ハウジング50を巻回し、所望の温度(例えば40°C)まで送達促進化合物源30及び/又はニコチン源40を加熱することを可能にするのに十分にハウジング50に接触するように構成されている薄い可撓性加熱フォイルである。発熱体95はまた、加熱フォイル要素95に電力を供給するためにバッテリ130にも接触するように適合されている。
【0402】
フィルタエレメント80は、第2のハウジング100を摺動可能に挿入してスナップロックするように適合されている。フィルタエレメント80は、フィルタ70を収容するように適合されたフィルタキャビティ75を含む。フィルタ70は、一般的に、活性炭フィルタであり、シガレットで一般的に使用されている香味剤などの追加の揮発化合物を含有することができる。フィルタエレメント80は、組付け後の使用前の構成160を封止するフォイルシール150を有することができる。
【0403】
フィルタエレメント80は、第2のハウジング100のアパーチャ110と位置合わせされるアパーチャ90を有する。組み付けられると、空気入口140が形成される。フィルタエレメント80及び第2のハウジング100は、所望の空気入口140のアパーチャ寸法を選択するために摺動可能な回転を許容するように構成されている。空気入口140は、フィルタエレメント80が参照符号170で示されるように第2のハウジング100に完全に挿入されたときに形成される。また、フィルタエレメント80の完全な挿入により、脆弱な障壁35及び45を通る貫通要素60を押し込んでこれらの要素を封止解除し、空気入口140から粒子送達量アパーチャ180まで遮るものがない空気流路が得られるようにする。
【0404】
図5は、送達促進化合物源30及びニコチン源40の様々な代替構造を示す。この構成における送達促進化合物は、一般的に、焼結プラグ310、PE芯320、繊維束330、多孔管340又は350、織り又は不織PET、PBT又はPETG織物材料360、PET静的ミキサ370、又は不織材料380で巻かれた螺旋状経路上への吸着により保持することができる揮発性酸である。
【0405】
図6は、この装置の一部の実施形態を示しており、装置は再使用可能な部分210及び使い捨て部分200を含む。図1を参照すると、使い捨て部分200は、送達促進化合物源30及びニコチン源40(第1のハウジング50)及びフィルタエレメント80を含む。再使用可能な部分210は、第2のハウジング100、発熱体95及びバッテリ130を含む。
【0406】
例示的な装置3
【0407】
完全に再使用可能な例示的な装置が図7に示されている。2つの代替構成が図示されており、部分410及び420又は430及び440は可逆的に取り付け可能である。例えば、各部分は、反復スナップロック及び除去の繰返しを可能にするように適合され且つそのような寸法にされた押出成形プラスチックとすることができる。取り外し可能部分420又は440は、送達促進化合物源445及びニコチン源435と連通するためのアパーチャ430及び440を含む。部分420又は440は、アパーチャ460を介して再充填要素450に摺動可能に挿入する。要素470は、送達促進化合物源445及びニコチン源435を再充填するときにリザーバを密封するシールOリングである。充填アパーチャ480及び490は、部分420が再充填要素450内に着座すると送達促進化合物源445及びニコチン源435と連通するように構成されている。一部の実施形態において、重力により、それぞれ送達促進化合物リザーバ500及びニコチンリザーバ510から送達促進化合物源445及びニコチン源435への流れが推進される。一部の実施形態において、リザーバから供給源への流れは、一部には、供給源要素によるリザーバ液体の吸い上げによるものである。例えば、送達促進化合物源445及びニコチン源435は、供給源445及び435の急速な吸い上げ及び再充填をもたらすためにPETを含有する供給源要素を含むことができる。
【0408】
例示的な装置4
【0409】
別の例示的な装置が図8及び図9で示されている。この例示的な装置は、再充填可能であり、典型的なシガレットパックを模擬するように構成されている。図8を参照すると、送達装置600は、貯蔵アパーチャ620及び再充填アパーチャ630を介して再充填ユニット610に挿入されるように構成されている。再充填要素640上で再充填ユニット610に完全に着座されると、装置600は、送達促進化合物及び/又はニコチンが再充填される。
【0410】
図9は、再充填要素640を詳細に示している。図9Aでは、充填アパーチャ660及び670を有する注入要素650は、定量アクチュエータポンプ680及び690及び管体700及び710を介してリザーバ720及び730と流れ連通している。図9Bでは、送達量装置600は、再充填ユニット640内に着座して示されている。注入要素650が送達量装置の基部にある再充填アパーチャを通過して上記の装置に入り、アパーチャ660及び670がニコチン源要素740及び送達促進化合物源要素750と連通するようになる。図9Cでは、送達量装置600は、更に再充填ユニット640に挿入され、ポンプ680及び690を作動させて、それぞれアパーチャ660及び670を介して、及びそれぞれニコチン源要素740及び送達促進化合物源要素750内に計量用量のニコチン770及び計量用量の送達促進化合物760を送達するようにする。
【0411】
例示的な装置5
【0412】
この例示的な装置は、図10で示されている。この装置構成は、送達量装置800の外部にある発熱体850を有する。発熱体850に送達装置800が挿入されると、電気接点840がリード線825と接触し、リード線825は、バッテリ830がフォイル発熱体860を加熱して、送達促進化合物源870及びニコチン源880の温度を例えば40±5℃に制御することが可能になる。代替構成では、図4に示すように加熱フォイル860が送達量装置800内に配置される。
【0413】
例示的な装置6
【0414】
前出の例示的な装置は、一般的にシガレット及びシガレットパックを模擬するように構成されている。本明細書の方法と共に使用するのに好適な送達装置は、様々な手法で容易に構成される。1つの実施例が図11に示されている。この例示的な装置は、吸入医薬品の製薬送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬している。送達装置900は、第1のハウジング及び第2のハウジングを含む。第2のハウジング920は、バッテリ990の充電又は交換のため摺動可能に出(図11A)入り(図11B)する。この所定位置により、電気接点1050及び1060が連通し、これによりバッテリ990がフォイル発熱体950を加熱し、送達促進化合物源960及びニコチン源970の温度を制御できるようにする。吸気アクチュエータ930は、図11A〜11Bの位置からどこかに摺動するように構成されている。加熱フォイル要素950用の電源は、吸気アクチュエータ930又は別個のスイッチング手段(図示せず)を使用して任意選択的にオン又はオフにすることができる。次いで、吸気アパーチャ940は、選択した程度まで開放され、これにより吸入当たりの空気容積及びその結果としてニコチン量を制御することができる。この特徴は、図1の調整可能な吸気アパーチャ140と類似のものである。作動時には、空気は、吸気アパーチャ940を介してチャンバ1000に引き込まれ、導管1010を通り、送達促進化合物源要素960を通って、ここで送達促進化合物が空気流において捕捉される。例えば、ピルビン酸の蒸気は、そこで吸着された液体ピルビン酸を有するPET供給源要素から発散することができる。この蒸気は、空気流により導管1020を通ってニコチン源970内に移動する。ここで、送達促進化合物は、送達促進化合物がない場合に空気流の同じ容積内に含有されることになるニコチン蒸気の量に対して空気流中のニコチンの濃度を増大させる。ピルビン酸の場合、ピルビン酸ニコチン塩微粒子を形成し、被験者へのニコチンの送達を促進することができる。送達は更に、発熱体950によって例えばピルビン酸及びニコチンの温度を高め、これらの化合物の蒸気圧を増大させることにより促進することができる。ここで、ニコチンを含有する空気流は、導管1030を通過して、活性炭フィルタ980を通って吸入アパーチャ1040から出る。
【0415】
図11C及びDは、例示的な吸入器装置900の1つの実施形態を示しており、ここで装置の一部は、使い捨てハウジング1050において送達促進化合物源960及びニコチン源970を有し、該使い捨てハウジング1050は、再使用可能なハウジング1060の内外に摺動して、装置900と機能的に同じ装置を形成するよう構成されている。バッテリハウジング要素1070は、使い捨て要素1050から取り外し可能であり、従って部分1060及び交換要素1050と共に再使用可能である。
【0416】
例示的な装置7
【0417】
図12A〜12Cは、吸入装置の別の構成を示している。この構成において、送達促進化合物源及びニコチン源は、分割内側管体1100の下部及び上部表面区域である。使用構成12Aにおいて、不透過性カバー1110が、ニコチンリザーバ1120及び送達促進化合物リザーバ1130を覆って所定位置にある。不透過性カバー1110は、リザーバからの蒸発損失を低減し、且つリザーバを分割内側管体1100から物理的に分離する。使用時には、摺動可能底部ハウジング1180は、第1の受けバネ1140が12Bに示す位置でロックされるまで主ハウジング1190に押し込められる。これにより、リザーバ1120及び1130が、分割内側管体1100の近傍に平行に配置される。図9Cに示すように、底部ハウジング1180は更に、第2の受けバネ1150が図12Cに示す位置でロックされるまで主ハウジング1190内に挿入される。この第3の位置では、圧力要素1160は、分割内側管体1100を圧搾し、壁部1170を強制的にリザーバ1120及び1130と接触させるようにする。この作用により、ニコチン及び送達促進化合物(例えばピルビン酸)が壁部1170の内面上に押し付けられ、ニコチン源及び送達促進化合物源としてこの表面を再充填するようになる。
【0418】
例示的な装置8
【0419】
図13は、図12の装置の変形を示している。この変形形態では、底部ハウジング1250は、円錐バネ1230に当接して押圧され、リザーバカバー1200を通ってニコチンリザーバ1210及び送達促進化合物リザーバ1220を円錐内側管体1240の内側表面と接触させるようにし、これにより、この表面がニコチン及び送達促進化合物(図13B)でコーティングされることになる。
【0420】
例示的な装置9
【0421】
図14は、図12の装置の別の変形を示す。この変形形態では、外側ハウジング1300は、スイッチ1310及び図示の様々な内部要素である移動構成部品と隣接している。スイッチ1310は、接続バー1320により供給源着座要素1330に接続されている。スイッチ1310を上に移動させると、剛性の着座要素1330がポール1360に沿って移動する。充填位置において、リザーバ要素1340及び1350は、変形可能要素1370と接触状態にされ、該変形可能要素はまた剛性着座要素1330とも接触状態にされる。剛性着座要素1330は、変形可能な要素1370を圧搾して摺動運動(図14B)の最終部分でリザーバ要素1340及び1350と接触するような寸法にされる。この動作により、変形可能要素1370の上部が、例えばリザーバ1350からのニコチン塩基溶液でコーティングされ、変形可能な要素1370の下部が、リザーバ1340からのピルビン酸でコーティングされ、それぞれ、ニコチン源及び送達促進化合物源を生成する。リザーバ1350の頂面は、作動位置(図14A)にあるときにリザーバからの医薬品及び送達促進化合物の揮発量を制限するために、不透過性材料により覆うことができる。可撓性の不透過性材料からなる円形フラップが要素1320又は1330から延びて、リザーバ1350の下方の容積を閉鎖し、更に揮発を制限することができる。充填位置(図14B)では、フラップは、変形可能要素1370により下方に力が加えられ、リザーバから離される。
【0422】
例示的な装置10
【0423】
図15は、別の送達装置構成を示している。図15Aは、使用モードの装置1400を示す。空気は、吸気口1410から送達促進化合物源1500、ニコチン源1490を通過し、出口1415を通って出る。ニコチン及び送達促進化合物は、それぞれの供給源の側壁上にコーティングされる。供給源を再充填するために、送達促進化合物リザーバ1430及びニコチンリザーバ1420が設けられている。スイッチ1460をユーザの親指で作動させて、供給源を再充電することができる。スイッチ1460により起動されると、ベース1510が、ガイドロッド1470に沿って送達促進化合物源1500及びニコチン源1490に向かって移動する。図15Bに示すように、送達促進化合物源1500、ニコチン源1490及び上部停止要素1480と接触すると、不透過性キャップ1440及び1450は、リザーバを圧縮し、送達促進化合物及びニコチンを供給源1490及び1500の表面上に押し出す。この装置内のリザーバは、ニコチン又は送達促進溶液を保持できるあらゆる変形可能な吸着又は吸収性材料で作ることができる。リザーバは、一般的には、供給源に再充填した後に自動的にガイドポール1470の下方に後退し、その結果、当該装置が好都合に操作される「1クリック」装置となる。リザーバの動きは、あらゆる好都合な手段により達成することができる。例えば、移動ワイヤ1520をガイドポール1470上の溝内に設けることができる。移動ワイヤ1520は、ベース1510に取り付けて、モータ回転要素(図示せず)によりガイドポール1470を上下に移動させることができる。この装置構成の幾つかの変形形態において、装置1400の頂部外側部分は、図4に示す要素140と類似した入口1410のサイズを定めるように回転することができる。
【0424】
(産業上の利用可能性)
【0425】
本明細書の方法及び装置は、禁煙、害の低減、及び/又は置換のためのニコチンの治療上の送達に有用である。更に、本明細書の装置及び方法は、タバコベースの製品の代わりの汎用代替ニコチン送達システムとして有用である。本明細書の方法及び装置は更に、本明細書で説明されるような他の医薬品の送達にも有用である。
【0426】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、特許請求項の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び修正を本明細書で行うことができることを理解されたい。更に、本発明の範囲は。本明細書で説明する工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図したものではない。当業者が本発明の本開示から容易に認識するように、本明細書で説明した対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、又は実質的に同じ結果を達成する現在存在するか又は将来開発される工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法又はステップは、本発明に従って利用することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、当該工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法又はステップをこれらの範囲に含むことを意図している。
【0427】
本明細書に引用され、又は他の方法で特定された全ての参考文献及び他の情報は、各々が別々に組み込まれたように、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。2007年3月30日に出願された米国特許仮出願第60/909,302号、2009年3月17日に出願された米国特許仮出願第61/160,904号、及び2008年3月25日に出願されたPCT/US08/58122もまた、引用により本明細書に全体が組み入れられる。
【符号の説明】
【0428】
1400 送達装置
1410 吸気口
1415 出口
1420 ニコチンリザーバ
1430 送達促進化合物リザーバ
1440 不透過性キャップ
1460 スイッチ
1470 ガイドポール
1490 ニコチン源
1500 送達促進化合物源
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザに医薬品を送達する装置及び方法に関する。より詳細には、本発明は、ユーザの肺に医薬品のエアロゾルを送達する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
経肺薬剤送達システムは、呼吸器疾患を治療する医薬品を送達するために何十年にもわたって使用されている。経肺薬剤送達の背後にある原理は、細気管支及び肺胞に送達されることになる薬剤化合物のエアロゾル化である。粒子サイズ最適化及び劣化等の課題に直面したが、複数の企業が、糖尿病、片頭痛、骨粗鬆症及び癌の治療薬を送達する技術を開発している。
【0003】
利用可能な送達システムは、定量吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)及びネブライザを含む。MDIは、1950年代中頃に米国で初めて導入されたものの1つであった。HFAベースの(加圧式)MDIは、1995年米国で導入された。DPIは1970年代に導入されたが、MDIの圧倒的な優位に起因して、その使用は限定されたものであった。ネブライザは、一般に病院環境内で使用されている。経肺薬剤送達技術市場での技術的進歩は、非CFCベースのMDI、DPI及び液体ベースの吸入器(LBI)において行われている。
【0004】
多くの前臨床試験及び治験の結果、医薬品の経肺送達が呼吸器疾患及び全身性疾患の効率的な治療方法であることがわかっている。経肺送達の多くの利点は、十分に認識されており、迅速な発現、患者の自己投与、副作用の低減、吸入による送達の容易さ、及び針の排除が挙げられる。
【0005】
それにもかかわらず、大部分の医薬品の投与は、吸入を介した経肺送達を含めて、従来の静脈内経路/筋肉内経路及び経口経路を介した送達からあまり大きく逸脱したものではなかった。経肺送達の使用は、これまでは主として喘息治療の医薬品の投与に限定されている。
【0006】
下部呼吸領域に直接に粉体を送達するために、粉体は5μm未満の粒子サイズを一般的に有するべきであることが報告されている。更に、5〜10μmの範囲の粉体は、あまり深く浸透せず、むしろ上部気道領域を刺激する傾向があることが分かっている。
【0007】
ドライパウダー吸入器(DPI)用の製剤を製造する際には、医薬品は、最初に、経肺送達用に許容可能な粒子サイズを得るように製粉しなければならない。この微粉ステップは、製造中に様々な問題を発生する可能性がある。例えば、製粉中に発生する熱により医薬品の劣化を生じる可能性がある。更に、金属が一部の製粉機から剥がれ落ちて医薬品に混入する可能性がある。更に、粒子のサイズが小さいために、ドライパウダー製剤は、特に湿度がある場合には凝集する傾向がある。
【0008】
凝集の結果、粒子の流動性が低くなり、これによりドライパウダー製剤の有効性が低下する。その結果として、ドライパウダーエアロゾルが確実に適切に送達されるように、製粉、配合、粉体流動、充填及び投与中にも注意深く管理することが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,830,643号明細書
【特許文献2】米国特許仮出願第60/909,302号明細書
【特許文献3】米国特許仮出願第61/160,904号明細書
【特許文献4】国際出願PCT/US08/58122号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Katz IM、Schroeter JD、Martonen TB共著、エアロゾル化インシュリンの析出に影響を与える諸要因、糖尿病技術及び治療学、第3巻(3)、2001年、387〜397頁
【非特許文献2】米国シガレットのタール、ニコチン及び炭素一酸化物収量を求めるためのFTCシガレット試験方法、NCI専門委員会報告書、喫煙及びタバコ管理モノグラフ#7、Dr.R.Shopland(編)、Darby、PA:Diane Pub1ishing Co、1996
【非特許文献3】Pillsbury HC著、「低着火性シガレットからの全粒子状物質及びガスを収集するための喫煙機械パラメータ」(1993年3月14日、米国消費者製品安全委員会との契約による、#CPSC−S−92−5472 Ii)
【非特許文献4】Levin ED、Rose JE及びBehm F共著、「喫煙トポロジーを乱さない吸煙容積の制御」(挙動調査方法計装及びコンピュータ、21:383〜386、1989年)
【非特許文献5】PM Dunlap及びSR Faris共著、水酸化カリウム水溶液の表面張力、Nature 196、1312〜1313頁、1962年
【非特許文献6】C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)
【非特許文献7】Schmit、D.Vogelpohl、A.共著(1983)、酢酸カリウム存在下のエタノール水溶液の蒸留、分離科学と技術、18(6)、547〜554頁
【非特許文献8】R.T.P.Pinto、M.R.Wolf―Maciel、L.Lintomen共著、エタノール精製のための塩分抽出蒸留プロセス、コンピュータ及び化学工学、第24巻、2−7号、2000年7月15日、1689〜1694頁
【非特許文献9】Mario Llano―Restrepo、Jaime Aguilar−Arias共著、無水エタノール生産用の塩類抽出蒸留塔のモデル化及びシミュレーション、コンピュータ及び化学工学、第27巻、4号、2003年4月15日、527〜549頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、医薬品送達のためのエアロゾルを調製する新しい方法に対する必要性がある。本開示は、1つには、溶剤を含む付形剤又は他の添加剤を必要とすることなく、ガス流中で送達促進化合物とニコチン又は他の医薬品を組み合わせて経肺送達のエアロゾルを生成する方法を記載している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一部の実施形態において、本開示は、吸入により被験者にニコチンを送達する方法に関し、本方法は、a)第1に、ニコチンを含むニコチン源と連通させて送達促進化合物を含むガス状担体を配置するステップと、b)第2に、被験者にニコチンを含むガス状担体を供給するステップと、を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップを更に含む、段落〔0012〕の方法に関する。
【0014】
一部の実施形態において、本開示は、〔0013〕の方法に関し、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップは、ニコチン源と連通させて送達促進化合物を含むガス状担体を配置するステップに先行する。
【0015】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕、〔0013〕、又は〔0014〕の方法に関し、送達促進化合物源は、2つ又はそれ以上の前駆体化合物を含む複数の区画を備える。
【0016】
一部の実施形態において、本開示は、〔0015〕の方法に関し、送達促進化合物は、塩化アンモニウムを含み、2つ又はそれ以上の前駆体化合物は、アンモニア及び塩化水素を含む。
【0017】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0015〕、又は〔0016〕の方法に関し、ガス状担体中のニコチン濃度は、送達促進化合物がないガス状担体中に含有されるニコチン濃度に対して増大する。
【0018】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0016〕、又は〔0017〕の方法に関し、送達促進化合物は酸を含む。
【0019】
一部の実施形態において、本開示は、〔0018〕の方法に関し、酸は有機酸である。
【0020】
一部の実施形態において、本開示は、〔0019〕の方法に関し、有機酸は、所与の温度にてニコチン塩基よりも高い蒸気圧を有する。
【0021】
一部の実施形態において、本開示は、〔0020〕の方法に関し、所与の温度は、25℃、30℃、40℃、45℃、70℃、又は100℃である。
【0022】
一部の実施形態において、本開示は、〔0018〕〜〔0020〕又は〔0021〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、プロピオン酸、蟻酸、酢酸及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。企図される1つの特定の組み合わせは、プロピオン酸、蟻酸及び酢酸であり、酢酸:蟻酸の比率が2:1であることが好ましい。
【0023】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0021〕又は〔0022〕の方法に関し、送達促進化合物は、ニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0024】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0025】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が1ミクロン未満である。
【0026】
一部の実施形態において、本開示は、〔0023〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0027】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物、送達促進化合物源、ニコチン、ニコチン源及び/又はガス状担体の温度を上昇させるステップを更に含む、〔0012〕〜〔0025〕又は〔0026〕の方法に関する。
【0028】
一部の実施形態において、本開示は、〔0027〕の方法に関し、温度は、少なくとも30℃まで上昇される。
【0029】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0027〕又は〔0028〕の方法に関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0030】
一部の実施形態において、本開示は、〔0029〕の方法に関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0031】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法の1つ又はそれ以上を含み、且つタバコ物品から導出されるニコチンと少なくとも部分的に置き換えるために治療上有効量のニコチンの被験者への送達を更に含む、タバコ物品使用停止の方法に関する。
【0032】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法の1つ又はそれ以上を含むニコチンが治療的に有益である疾患を治療する方法に関し、治療上に有効な量のニコチンが被験者に供給される。
【0033】
一部の実施形態において、本開示は、〔0032〕の方法に関し、疾患は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0034】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品から導出されたニコチンと置き換えるために、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法により被験者にニコチンを送達するステップを含む、タバコ物品を置換する方法に関する。
【0035】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品から導出されたニコチンと置き換えるために、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法により被験者にニコチンを送達するステップを含む、タバコ物品の害を低減する方法に関する。
【0036】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0034〕又は〔0035〕の方法を実施することができるように構成された装置に関する。
【0037】
一部の実施形態において、本開示は、被験者にニコチンを送達するための装置に関し、該装置はハウジングを含み、ハウジングは、a)互いに連通した入口及び出口を含み、ガス状担体が、入口を通ってハウジングに入り、該ハウジングを通り、出口を通ってハウジングから出ることができるように適合されており、装置は直列で入口から出口までを含み、ハウジングが更に、b)入口と連通し、送達促進化合物源を含む第1の内部区域と、c)第1の内部区域と連通し、ニコチン源を含む第2の内部区域と、d)任意選択的に、第2の内部区域及び出口と連通している第3の内部区域と、を含む。
【0038】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕の装置に関し、出口における部分真空により、ガス状担体を、入口、第1の区画、第2の区画、存在する場合に第3の区画、次いで出口を通って引き込むことができる。
【0039】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕又は〔0038〕の装置に関し、送達促進化合物源は、その上に送達促進化合物が吸着された吸着要素を含み、及び/又は、ニコチン源は、その上にニコチンが吸着された吸着要素を含む。
【0040】
一部の実施形態において、本開示は、〔0039〕の装置に関し、吸着要素又は要素は、ガラス、アルミニウム、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン?)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)(ePTFEは、例えば、米国特許第4,830,643号明細書に記載されている)、及びBAREX(登録商標)の少なくとも1つを含む。
【0041】
一部の実施形態において、本開示は、第1の内部区域と連通している第1のリザーバを更に備える、〔0037〕〜〔0039〕又は〔0040〕の装置に関し、第1のリザーバは、送達促進化合物を含む。
【0042】
一部の実施形態において、本開示は、第2の内部区域と連通している第2のリザーバを更に備える、〔0037〕〜〔0040〕又は〔0041〕の装置に関し、第2のリザーバは、ニコチンを含む。
【0043】
一部の実施形態において、本開示は、第3の内部区域を備える、〔0037〕〜〔0041〕又は〔0042〕の装置に関し、第3の内部区域は、第3の内部区域要素を含む。
【0044】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、浄化剤を含む。
【0045】
一部の実施形態において、本開示は、〔0044〕の装置に関し、浄化剤は、活性炭を含む。
【0046】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕、〔0044〕又は〔0045〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、香味剤を含む。
【0047】
一部の実施形態において、本開示は、〔0043〕〜〔0045〕又は〔0046〕の装置に関し、第3の内部区域要素は、医薬品を含む。
【0048】
一部の実施形態において、本開示は、〔0047〕の装置に関し、医薬品は、ニコチンを含む。
【0049】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0047〕又は〔0048〕の装置に関し、ハウジングは、タバコ喫煙物品を模擬する。
【0050】
一部の実施形態において、本開示は、〔0049〕の装置に関し、タバコ喫煙物品は、シガレットである。
【0051】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0047〕又は〔0048〕の装置に関し、ハウジングは、製薬吸入装置を模擬する。
【0052】
一部の実施形態において、本開示は、[0051]の装置に関し、模擬された製薬吸入装置は、定量吸入器、加圧式定量吸入器、ドライパウダー吸入器、ネブライザ及び液体ベースの吸入器から成る群から選択される。
【0053】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含むガス状担体を、ニコチンを含むニコチン源と連通させて配置するステップを含む、ガス状担体中のニコチン濃度を増大させる方法に関する。
【0054】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物を含む送達促進化合物源と連通させてガス状担体を配置するステップを更に含む、〔0053〕の方法に関する。
【0055】
一部の実施形態において、本開示は、〔0054〕の方法に関し、送達促進化合物源とガス状担体を連通させるステップは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップに先行する。
【0056】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕、〔0054〕又は〔0055〕の方法に関し、送達促進化合物源は、2つ又はそれ以上の前駆体化合物を含む複数の区画を含む。
【0057】
一部の実施形態において、本開示は、〔0056〕の方法に関し、送達促進化合物は、塩化アンモニウムを含み、2つ又はそれ以上の前駆体化合物は、アンモニア及び塩化水素を含む。
【0058】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0056〕又は〔0057〕の方法に関し、ガス状担体中のニコチン濃度は、送達促進化合物がないガス状担体中に含有されるニコチン濃度に対して増大する。
【0059】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0057〕又は〔0058〕の方法に関し、送達促進化合物は酸を含む。
【0060】
一部の実施形態において、本開示は、〔0059〕の方法に関し、酸は有機酸である。
【0061】
一部の実施形態において、本開示は、〔0060〕の方法に関し、有機酸は所与の温度にてニコチンよりも高い蒸気圧を有する。
【0062】
一部の実施形態において、本開示は、〔0061〕の方法に関し、所与の温度は、25℃、30℃、40℃、45℃、70℃、又は100℃である。
【0063】
一部の実施形態において、本開示は、〔0059〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、プロピオン酸、蟻酸、酢酸及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。企図される1つの特定の組み合わせは、プロピオン酸、蟻酸及び酢酸であり、酢酸:蟻酸の比率が2:1であることが好ましい。
【0064】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0062〕又は〔0063〕の方法に関し、送達促進化合物は、ニコチンと相互作用して粒子を形成する。
【0065】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の一部又は全ては、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0066】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の一部又は全ては、空気動力学的質量中央径が1ミクロン未満である。
【0067】
一部の実施形態において、本開示は、〔0064〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0068】
一部の実施形態において、本開示は、送達促進化合物、送達促進化合物源、ニコチン、ニコチン源及び/又はガス状担体の温度を上昇させるステップを更に含む、〔0053〕〜〔0066〕又は〔0067〕の方法に関する。
【0069】
一部の実施形態において、本開示は、〔0068〕の方法に関し、温度は、少なくとも30℃まで上昇される。
【0070】
一部の実施形態において、本開示は、〔0069〕の方法に関し、温度は、複数の加熱ステップにより高められる。
【0071】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品使用停止用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に、被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0072】
一部の実施形態において、本開示は、〔0071〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されるガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0073】
一部の実施形態において、本開示は、〔0072〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0074】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品害の低減用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0075】
一部の実施形態において、本開示は、〔0074〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0076】
一部の実施形態において、本開示は、〔0075〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0077】
一部の実施形態において、本開示は、タバコ物品置換用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0078】
一部の実施形態において、本開示は、〔0077〕のニコチンに関し、ガス状担体は、被験者に供給されたガス状担体の容積において少なくとも20マイクログラムのニコチンを含む。
【0079】
一部の実施形態において、本開示は、〔0078〕のニコチンに関し、被験者に送達されるガス状担体の容積は、単一の容積として供給される。
【0080】
一部の実施形態において、本開示は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾病の治療用ニコチンに関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0081】
一部の実施形態において、本開示は、a)〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法を実行することができるように構成され、及び/又は、b)〔0071〕〜〔0079〕又は〔0080〕のニコチンを送達することができるように構成された装置に関する。
【0082】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のための医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0083】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品使用停止用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0084】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品の害の低減用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0085】
一部の実施形態において、本開示は、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のためのタバコ物品置換用の医薬品製造におけるニコチンの使用に関する。
【0086】
一部の実施形態において、本開示は、ニコチン中毒、肥満、アルツハイマ病、パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症、欝病、精神分裂症、疼痛管理、ADHD及びこれらの組み合わせから成る群から選択される疾患の治療用医薬品の製造におけるニコチンの使用に関し、ニコチンは、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップの後に被験者にガス状担体を供給するステップを更に含む〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法により送達される。
【0087】
一部の実施形態において、本開示は、医薬品をユーザに送達する方法に関し、本方法は、第1の物質の上にガスストリームを通過させて第1の蒸気含有ガス流を生成するステップと、第2の物質の上に第1の蒸気含有ガス流を通過させて、ガスストリーム中に粒子を生成するステップと、粒子を含むガスストリームをユーザに送達するステップと、を含む。
【0088】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕の方法に関し、第1の蒸気含有ガス流を生成するステップは、ガスストリームにおいて第1の物質の蒸気を捕捉するステップを含む。
【0089】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕又は〔0088〕の方法に関し、粒子を生成するステップは、第2の物質の蒸気を第1の蒸気含有ガス流と接触させるステップを含む。
【0090】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕、〔0088〕又は〔0089〕の方法に関し、粒子を生成するステップは、第1及び第2の物質間で相互作用をさせるステップを含む。
【0091】
一部の実施形態において、本開示は、〔0090〕の方法に関し、上記の相互作用は、酸塩基反応を含む。
【0092】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0090〕又は〔0091〕の方法に関し、第1及び第2の物質は、揮発性物質である。
【0093】
一部の実施形態において、本開示は、〔0092〕の方法に関し、第1の物質は、環境温度にて第2の物質よりもうより揮発性である。
【0094】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0092〕又は〔0093〕の方法に関し、第1の物質及び/又は第2の物質の1つがニコチンを含む。
【0095】
一部の実施形態において、本開示は、〔0094〕の方法に関し、ニコチンは、遊離塩基ニコチンを含む。
【0096】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0094〕又は〔0095〕の方法に関し、粒子は、ニコチン含有粒子を含む。
【0097】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0095〕又は〔0096〕の方法に関し、ユーザに送達されたガスストリームは、20マイクログラムを上回るニコチン含有粒子を含有する。
【0098】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0096〕又は〔0097〕の方法に関し、粒子は、ニコチン塩含有粒子を含む。
【0099】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0097〕又は〔0098〕の方法に関し、第1の物質が酸を含む。
【0100】
一部の実施形態において、本開示は、〔0099〕の方法に関し、酸は、ピルビン酸を含む。
【0101】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0099〕又は〔0100〕の方法に関し、粒子は、ピルビン酸ニコチンを含む。
【0102】
一部の実施形態において、本開示は、〔0099〕の方法に関し、酸は、3−メチル−2−オキソブタン酸を含む。
【0103】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0101〕又は〔0102〕の方法に関し、粒子は、ニコチン3−メチル−2−オキソブタン酸を含む。
【0104】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0102〕又は〔0103〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、可視粒子である。
【0105】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0103〕又は〔0104〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、ユーザの肺に送達される。
【0106】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0104〕又は〔0105〕の方法に関し、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満である。
【0107】
一部の実施形態において、本開示は、〔0087〕〜〔0105〕又は〔0106〕の方法に関し、粒子の少なくとも一部は、空気動力学的質量中央径が0.5ミクロンと5ミクロンの間である。
【0108】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕の方法、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法、又は〔0082〕の使用に関し、〔0134〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕に記載された医薬品は、〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕に記載されたニコチンの代わりに又はこれに加えて使用される。
【0109】
一部の実施形態において、本開示は、〔0037〕〜〔0051〕又は〔0052〕の装置に関し、を備え、装置は、ニコチンの代わりに又はこれに加えて、〔0134〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕に記載された医薬品を送達するように適合される。
【0110】
一部の実施形態において、本開示は、医薬品が治療上に有効である疾患の治療における〔0012〕〜〔0029〕又は〔0030〕又は〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕の方法による送達のため、〔0132〕において番号1〜70で特定される化合物などの〔0134〕の医薬品の使用に関する。
【0111】
改善されたニコチン源
【0112】
一部の実施形態において、本開示は、〔0012〕〜〔0034〕又は〔0035〕、〔0053〕〜〔0069〕又は〔0070〕、〔0071〕〜〔0079〕又は〔0080〕、〔0082〕〜〔0085〕又は〔0086〕の方法、又は、この方法を実施する先に記載した装置に関し、ニコチン源は、ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含む。
【0113】
一部の実施形態において、〔0112〕の方法の電解質形成化合物は、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、又は、酸化アルカリ土類金属、又は塩(塩基を含む)であるか、又は、塩基水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)及び水酸化カリウム(KOH)及びこれらの組み合わせなどの〔0374〕の表11に記載された化合物から成る群から選択される。
【0114】
一部の実施形態において、〔0112〕又は〔0113〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基、及び、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩及びこれらの組み合わせから選択される。
【0115】
一部の実施形態において、〔0112〕、〔0113〕又は〔0114〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基及び酒石酸ニコチン及びこれらの組み合わせから選択され、電解質形成化合物は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0116】
一部の実施形態において、〔0112〕、〔0113〕又は〔0114〕の方法のニコチンは、ニコチン塩基及び酒石酸ニコチン及びこれらの組み合わせから選択され、電解質形成化合物は、KOHを含む。
【0117】
〔0112〕〜〔0115〕又は〔0116〕の方法の一部の実施形態において、水溶液のpHは、pH10、pH11、pH12、pH13、又はpH14に等しいか又はこれを上回るなど、9.0に等しいか又はこれを上回る。
【0118】
電解質形成化合物がKOHである〔0112〕〜〔0116〕又は〔0117〕の方法の実施形態において、KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率は、10:40、10:60、10:80又は10:100であり、10:60が好ましい。これらの点は、範囲10:40〜10:100などの本発明内の様々な例示的な範囲の境界を成す。
【0119】
〔0112〕〜〔0115〕又は〔0116〕の方法の一部の実施形態において、水溶液中で電解質形成化合物をニコチンと混合するステップを含む。
【0120】
〔0117〕の方法の一部の実施形態において、電解質形成化合物は、水溶液に溶解されたときに発熱し、約80℃又はそれ以上など、ニコチンの水溶液の温度を高めるために十分な量が添加されることが好ましい。
【0121】
以上は、この後に続く本発明の詳細な説明をより良く理解できるように、本発明の特徴及び技術的利点をかなり大まかに概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を成す本発明の更なる特徴及び利点を以下で説明する。開示する概念及び特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実施する他の構造を修正又は設計の根拠として直ちに利用できることを当業者であれば認識されるはずである。このような均等的な構造は特許請求の範囲に記載する本発明の精神及び範囲から逸脱するものではない点も当業者は認識すべきである。本発明を特徴付けるものとみなされる新規の特徴は、その編成及び操作方法の両方に関して及び更に別の目的及び利点と共に添付図面に関連して考慮したときに以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、図の各々は、単に例示及び説明の目的で提示されており、本発明の外延を定義するものではないことを明示的に理解されたい。
【0122】
ここで、本発明をより完全に理解するために添付図面と併せて以下で説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】タバコを模擬する例示的な送達装置の外部の斜視図である。
【0124】
【図2】タバコを模擬する例示的な送達装置の内部の斜視図である。
【0125】
【図3】使用中の図1及び図2の例示的な送達装置の斜視図である。
【0126】
【図4】装置で使用される構成部品の組立ステップ及び最終構成を示す例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0127】
【図5】ニコチン又は他医薬品及び送達促進化合物を供給する様々な供給源要素の斜視図である。
【0128】
【図6】再使用可能及び使い捨て部分を示す例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0129】
【図7】装置及びニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を供給する再充填ユニットを示す再使用可能な例示的な送達装置の下位構成部品の断面図である。
【0130】
【図8】装置及びニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を供給する再充填ユニットを示す再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【0131】
【図9A】再使用可能な例示的な送達装置の再充填ユニットの断面図である。
【図9B】再充填ユニット内に着座した再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【図9C】ニコチン又は他の医薬品及び送達促進化合物を再供給する再充填ユニットの計量ポンプの圧縮後の再使用可能な例示的な送達装置の断面図である。
【0132】
【図10A】別個の構成部品として斜視図に示す加熱構成部品を有する例示的な送達装置の断面図である。
【図10B】送達装置が装置及び/又は構成要素の温度制御に向けて着座する外部加熱ユニットを有する例示的な送達装置を示す図である。
【0133】
【図11】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0134】
【図12】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0135】
【図13】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する(?)例示的な装置の断面図である。
【0136】
【図14】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【0137】
【図15】吸入医薬品の医薬品送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬する例示的な装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0138】
本明細書で使用される「粒子」は、液滴、固体粒子又は固体粒子により核化された液滴のような両方の組み合わせを意味することができる。
【0139】
本明細書で使用される「治療上有効量」は、被験者、一般的にヒト被験者において治療効果を達成するニコチン又は他の医薬品の濃度又は量を指すことができる。被験者は、疾患又は医学的に定義された条件下において改善が得られる。改善は、疾患に関連した症状のあらゆる好転又は修復である。改善は、観察可能な又は測定可能な改善である。従って、当業者は、治療が疾患状態を改善することができるが、その疾患を完全に治癒できない場合があることを認識している。一部の実施形態では、治療上の効果は、ニコチン中毒の被験者又はニコチン使用禁断症状を受ける被験者が渇望するニコチンの低減又は除去を挙げることができる。
【0140】
本明細書で使用する「電解質形成化合物」とは、溶液中でイオンに解離する中性物質又はイオン性物質を意味することができる。
【0141】
本発明の概念の理解を助けるために、本明細書において各実施形態は、ニコチン送達のための装置及び方法に関して説明する。〔0134〕に記載された医薬品は本明細書の教示に従ってニコチンの代わりに、又はこれに加えて使用できることは当業者には理解されるであろう。
【0142】
本明細書で説明する方法は、ニコチン送達装置から得られるニコチンの投与に関する驚くべき発見に関する。発明者らは、吸入により被験者に送達されるニコチンの投与を増大させる方法を予想外に確認した。この発見の重要性は、タバコ及び同様のタバコ物品を喫煙しているニコチン送達被験者の経験と置き換える機能の改善にある。改善されたニコチン送達プロファイルでは、本明細書で説明する方法を適用する被験者は、禁煙、害の低減及び/又は置換の試行中に優れたニコチン代替療法を提供することになる。喫煙に関連した健康上の課題の持続する世界的な問題に関して、本明細書で説明する種々の方法は、喫煙者の禁煙を支援しようとする医学的取り組みの重要な必要性に対処するものである。
【0143】
理論に束縛されるものではないが、ニコチン源の上に揮発性の第1の物質(すなわち送達促進化合物)の蒸気を通過させることにより液体又は固体状態の粒子が形成され、これにより、引き続きニコチンのより多くが蒸発して第1の物質と結合し、更なる粒子が生成できると考えられる。所与の温度での粒子形成の量(送達される質量)は、ニコチンの蒸気が第2の揮発性物質の上に通過するときに形成される量よりも多い。同様に、粒子形成の量がより低い揮発性の物質によって制限され、他方の物質を含むガスの容積と混合することによる活性物質の希釈に起因して、所与の温度での粒子形成の量は、2つの物質の蒸気が並列混合装置(従来技術で開示されている)において組み合わされたときに形成される量よりも多い。また、第2の物質の上に1つの物質を順次的に通過できるようにすることにより、従来技術で開示される並列混合に比べて2つの物質をより効率的に組み合わせることを可能にすることができる。別の可能性は、第1及び第2の物質間の相互作用が発熱性プロセスであるという点である。換言すると、エネルギーは、発熱相互作用の結果として熱の形態で放出される。理論に束縛されるものではないが、放出される熱は、ニコチンの蒸発を促進することができると考えられる。
【0144】
一部の実施形態において、本方法は、ガス状担体をニコチン源と連通させるステップを含む。これらの実施形態のガス状担体は、送達促進化合物のないガス状担体である場合のニコチンの量に対して、ガス状担体中のニコチン量を増大させることができる送達促進化合物を含有する。一部の実施形態において、送達促進化合物は、ニコチン塩基又は他の医薬品と反応して塩を形成することができる。特定の実施形態において、送達促進化合物は、ニコチン塩基と反応して塩粒子を形成することができる。好適な実施形態において、粒子は、空気動力学的質量中央径が6ミクロン未満、より好ましくは1ミクロン未満である。(空気動力学的質量中央径の決定については、本教示のために引用により組み入れられる、Katz IM、Schroeter JD、Martonen TB共著、エアロゾル化インシュリンの析出に影響を与える諸要因、糖尿病技術及び治療学、第3巻(3)、2001年、387〜397頁を参照されたい)。
【0145】
本明細書で開示される方法は、ニコチンに類似した生物物理学的特性及び/又は化学的特性を有する様々な他の医薬品と共に用いるよう適合させることができる。以下の化合物は、窒素原子が複素環又は非環式鎖(置換)内に存在する脂肪族又は芳香族、飽和又は不飽和窒素含有塩基(窒素含有水素イオン又はルイス酸受容性化合物)である。更に、化合物は、揮発に有利になると予想される融点(150℃未満)又は沸点(300℃未満)に基づいて選択したものである。
ニコチン以外の医薬品
1.7−ヒドロキシミトラギニン
2.アンフェタミン
3.アレコリン
4.アトロピン
5.ブプロピオン
6.カチン(D−ノルプソイドエフェドリン)
7.カチノン(β−ケトアンフェタミン)
8.クロルフェネラミン
9.ジブカイン
10.ジメモルファン
11.ジメチルトリプタミン
12.ジフェンヒドラミン
13.エフェドリン
14.ホルデニン
15.ヒヨスチアミン
16.イソアレコリン
17.レボルファノール
18.ロベリン
19.メスカリン
20.メセンブリン
21.ミトラギニン
22.ムスカリン
23.パラヒドロキシアンフェタミン
24.プロカイン
25.疑似エフェドリン
26.ピリラミン
27.ラクロプリド
28.リトドリン
29.スコポラミン
30.スパルテイン(ルピニジン)
31.チクロピジン
タバコの煙成分
32.1、2、3、4−テトラヒドロイソキノリン
33.アナバシン
34.アナタビン
35.コチニン
36.ミオスミン
37.ニコトリン
38.ノルコチニン
39.ノルニコチン
抗喘息薬
40.オルシプレナリン
41.プロプラノロール
42.テルブタリン
抗狭心症薬
43.ニコランジル
44.オクスプレノロール
45.ベラパミル
抗不整脈薬
46.リドカイン
ニコチン受容体剤
A.ニコチン作動薬
47.エピバチジン
48.5‐(2R)‐アゼチジニルメトキシ)‐2‐クロロピリジン(ABT−594)
49.(S)−3−メチル−5−(1−メチル−2−ピロリジニル)イソオキサゾール(ABT 418)
50.(±)−2−(3−ピリジニル)−1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン(RJR−2429)
B.ニコチン遮断薬
51.メチルリカコニチン
52.メカミラミン
C.アセチルコリンエステラーゼ阻害剤
53.ガランタミン
54.ピリドスチグミン
55.フィゾスチグミン
56.タクリン
モノアミン酸化酵素阻害剤
57.5−メトキシ−N,N−ジメチルトリプタミン
58.5−メトキシ−α−メチルトリプタミン
59.アルファ−メチルトリプタミン
60.イプロクロジド
61.イプロニアジド
62.イソカルボキサジド
63.リネゾリド
64.メクロベミド
65.N、N−ジメチルトリプタミン
66.フェネルジン
67.フェニルエチラアミン
68.トロキサトン
69.トラニルシプロミン
70.トリプタミン
【0146】
ガス状担体及びその供給源
【0147】
ガス状担体は、ニコチン塩基及び送達促進化合物を含むことができるあらゆるガスとすることができる。当業者は、使用目的、ニコチン及び特定の送達促進化合物の形態に基づいて適切なガス状担体を容易に選択することができるであろう。好適な実施形態において、ガス状担体は、少なくとも被験者に対する送達のために企図される時間期間にわたってニコチン及び/又は担持される送達促進化合物の形態に関して実質的に不活性である。一部の実施形態において、ガス状担体は外気である。他の実施形態において、ガス状担体は、二酸化炭素又は窒素ガスなどの実質的に純ガス又はこのようなガスの配合物である。このような実施形態において、ガス状担体は、本明細書で説明する種々の方法を達成するためにガス状担体を保持し送達するように設計された容器から供給される。例えば、定量吸入器装置を使用する実施形態において、ガス状担体は、推進薬としてヒドロフルオロアルカン(HFA)を含むハイドロフルオロカーボンを含むことができる。これらの実施形態の一部においては、HFAは、HFA134a及びHFA227の1つ又はそれ以上である。
【0148】
送達促進化合物
【0149】
送達促進化合物は、ガス状担体がニコチン源と連通して置かれたときに該ガス状担体中のニコチンの総濃度を増大させることができる化合物である。ニコチンは、25℃にて0.04mm Hgの蒸気圧を有する。環境温度が使用される場合には、所与の温度でニコチンよりも高い蒸気圧を有する送達促進化合物が好ましい。非限定的な実施例としては、塩化水素酸、臭化水素酸又は硫酸などの無機酸、並びに飽和及び不飽和脂肪酸、飽和及び不飽和脂環式酸、芳香族酸(複素環芳香族を含む)、ポリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸、ケト酸、オキソ酸、チオ酸、及びアミノ酸を含む有機酸が挙げられ、上記の各々は、任意選択的に、限定ではないがハロゲンを含む1つ又はそれ以上のヘテロ原子で置換される。一部の実施形態において、送達促進化合物は、カルボン酸である。これらの実施形態の一部において、カルボン酸は「2−オキソ酸」と呼ばれるクラスに入る。これらの実施形態の一部において、カルボン酸は、「2−ケト酸」として知られているα−ケト酸と呼ばれるクラスに入る。これらの実施形態の一部において、酸は、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、2−オキソオクタン酸、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。一部の実施形態において、送達促進化合物は、例えば、食塩粒子のような固体粒子を形成する。他の実施形態において、送達促進化合物は、液滴エアロゾルを形成する。
【0150】
代替的に、送達促進化合物は、粒子状エアロゾルを形成し、その粒子は、例えば、ニコチン塩基を吸着又は吸収することができる。特定の実施形態において、粒子状エアロゾルは、塩化アンモニウム塩粒子を含む。ニコチン粒子形成又は粒子上にニコチン吸着/吸収を含む実施形態において、形成される粒子のサイズは、好ましくは6ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満又は1ミクロン未満である。
【0151】
ニコチン(又は他の医薬品)源
【0152】
ニコチン源の種々の実施形態は、ニコチン塩基又はニコチン塩類(例えばニコチン−HCl、−酒石酸水素塩、−二酒石酸塩)などの揮発性の形態のニコチンを供給することができるあらゆる化学物質を含む化合物を使用する。2つ以上の形態のニコチンを使用することができるが、遊離塩基ニコチンが好ましい。ニコチン源は、ニコチンを安定させる酸化防止剤(例えば、BHA、BHT及びアスコルビン酸塩)などの他の化合物を含むことができる。一部の実施形態において、ニコチンは、ニコチン源を提供する要素上で吸着される。吸着されたニコチンは、相対的に不活性材料の表面上に保持される。吸着要素材料の非限定的な実施例としては、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。吸着は、気体、液体、又は固体溶質が固体又は、より稀には液体(吸着剤)の表面上に蓄積したときに起こり、分子膜又は原子膜(吸着質)を形成するプロセスである。物理的吸着は、典型的には、吸着質分子と吸着性表面を構成する原子との間のファンデルワールス力及び静電気力の結果である。従って、吸着剤は、表面積及び極性などの表面特性によって特徴付けられる。
【0153】
大きな比表面積は、大きな吸着容積を実現する上で好ましいが、限られた容積内で大きな内部表面積を生成することにより、吸着面間に多数の小孔が必然的に生じる。微細孔のサイズにより内部吸着面への吸着質分子の接近性が決まるので、微細孔の孔サイズの分布は、吸着剤の吸着性を特徴付けるもう1つの重要な特性である。表面の極性は、水又はアルコールなどの極性物質との親和性に対応する。従って、極性吸着剤は「親水性」と呼ばれ、ゼオライト、多孔性アルミナ、シリカゲル又はシリカアルミナなどのアルミノ珪酸塩は、この種の吸着剤の例である。他方、非極性吸着剤は、一般的に「疎水性」である。炭素質吸着剤、ポリマー吸着剤及びシリカライトは、典型的な非極性吸着剤である。これらの吸着剤は、水よりも油又は炭化水素と親和性を有する。一部の実施形態において、吸着面はまた、吸着剤が液体状態であるときに毛管作用によって吸着される物質を吸い上げる。吸い上げは、液体と吸着面との間の分子間の接着力が液体内部の分子間の凝縮力よりも強いときに発生する。この作用により、物質が垂直吸着面に触れているところに凹状メニスカスが形成されるようになる。吸着面は、親水性又は疎水性液体を吸い上げるように選択又は設計することができる。
【0154】
代替の実施形態において、ニコチン源要素は、吸収(多孔性又は非多孔性)材料を含むことができる。ニコチン源要素材料の非限定的な実施例には、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)が含まれる。
【0155】
ニコチン源は、一部の実施形態において、ニコチンリザーバであるか、又はニコチンリザーバと連通することができる。一部の実施形態において、リザーバは、液体リザーバが吸着又は吸収ニコチン源要素と連通している液体状態のある容積のニコチンを含む。他の実施形態において、ニコチンリザーバは、ニコチン源要素であるか又はニコチン源要素の一部を形成する。このような組み合わせの供給源及びリザーバの非限定的な実施例は、ニコチン溶液で飽和した材料(例えば、PE又はP)であると考えられる。特定の実施形態において、リザーバは、送達装置が所望の時間枠にわたって治療上有効なニコチン投与を提供することができる十分なニコチン溶液を供給する。非限定的な実施例は、所望の日数(例えば、1〜7日)にわたって1日当たりに所望の回数(例えば、200回)の吸煙に対して、ガス状担体の35立方センチメートル容積「吸煙」当たりに0〜100マイクログラムのニコチンを送達することができる装置である。特定の実施形態において、送達されるニコチンの量は、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たりに10マイクログラムと110マイクログラムの間、20マイクログラムと100マイクログラムの間、50マイクログラムと100マイクログラムの間、又は、40マイクログラムと60マイクログラムの間のニコチンである。
【0156】
〔0134〕に記載された他の医薬品は、上記の例示的な化学種のようにニコチン塩基に適用される同じ原理を用いて医薬品の供給源を形成するためにニコチンの代わりに又はこれに加えて使用することができる。
【0157】
改善されたニコチン源
【0158】
ニコチンが医薬品であったこの改善用途の前の実施形態において、ニコチン送達は、特定の回数の吸煙後では望ましくないほど低レベルにまで低下され、かなりの量のニコチンが従来の装置内に残留していた。ニコチン送達プロファイルの低下は、より多くのニコチンを含めることによって対処していた。しかしながら、このニコチン量がより増えることにより、エアロゾル送達が有用なレベルを下回った後にニコチン源内に更に多くのニコチン残留物が残っていた。従来技術の装置は、治療効果が得られるようにニコチンを送達する上では十分に機能したが、次の制限事項、すなわち、a)必要なニコチン量、及びb)使用後の残量ニコチン含有量により、商業生産に向けて効率的なエアロゾル装置を設計する上での問題が発生した。例えば、装置内のかなりの残留ニコチンにより、幾つかの国で規制認可に関する問題が引き起こされる可能性があった。
【0159】
先行の用途によれば、ニコチン使用の効率を高めてニコチン含有量の単位当たりの吸煙数を増やして有用な送達プロファイルを拡張する1つの方法は、熱を加えることである。ニコチン塩基に熱を加えると、ニコチン送達量が飛躍的に増大し、有用なニコチン送達量レベルを有する吸煙回数も増大した。従って、ニコチン塩基への加熱は、ニコチンエアロゾル送達を促進するのに有用であり、経時的に吸煙当たりのニコチン濃度の低下の割合を低減する助けとなるとの結論に達した。しかしながら、この技術は、最終的に消費者に転嫁される製造コストを増大させ、規制認可への道もより困難なものとなる可能性があるので、ニコチン送達を促進するために装置内の発熱体の使用を回避することが目標であった。
【0160】
従って、送達効率を高め、且つ使用完了後の装置内の残留ニコチン量を低減するために加熱に代わるものを模索した。ニコチン源で実験する際に、水/ニコチン溶液中のニコチン塩又はニコチン塩基に電解質形成化合物を添加すると、電解質形成化合物を有していないニコチン水溶液及び電解質形成化合物を添加しないニコチン塩基と比較して、送達及び残留ニコチン低減が劇的に改善されることを予想外に発見した。例示的な電解質形成化合物は、以下の表11で見られ、水酸化ナトリウム(NaOH)及び水酸化カリウム(KOH)などの強塩基が含まれ、KOHが特に好ましい。改善された供給源で使用する好ましい形のニコチンは、ニコチン塩基及び/又は酒石酸ニコチンである。特に好ましい組み合わせは、水中でのニコチン塩基及びKOHである。これらの改善されたニコチンと電解質形成化合物の製剤は、前例の用途の装置及び組成と完全に互換性がある。これらの修飾ニコチン源で見られる劇的で驚くべき改善を以下の追加改善実験#1〜#6及び計画#1〜3に示す。
【0161】
送達促進化合物源
【0162】
本方法の一部の実施形態において、ガス状担体は、送達促進化合物と予め結合して提供される。本明細書で説明する方法の他の実施形態は、ニコチン源の上にガス状担体を通過させる前又は通過と同時にガス状担体に送達促進化合物を充填するステップを含む。ガス状担体に送達促進化合物を充填するステップを含む実施形態において、送達促進化合物は、一般的に送達促進化合物源の形態で提供される。これらの実施形態におけるガス状担体は、送達促進化合物が送達促進化合物源からガス状担体に入ることができるように送達促進化合物源と直接連通させる。一部の実施形態において、送達促進化合物源は、送達促進化合物を吸着又は吸収する材料を含有する送達促進化合物源要素を含む。送達促進化合物源要素材料は、一般的に、送達促進化合物に対して不活性となる。一部の実施形態において、送達促進化合物は、上述のように酸である。このような実施形態における吸着要素材料の非限定的な例には、ガラス、ステンレス鋼、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。このような実施形態の吸収要素材料の非限定的な例には、PE及びPPが含まれる。
【0163】
送達促進化合物源は、一部の実施形態においては送達促進化合物リザーバとすることができ、又はニコチンリザーバと連通することができる。一部の実施形態において、リザーバは、吸着又は吸収送達促進化合物源要素と連通した液体リザーバを用いて、液体状態のある容積の送達促進化合物を含む。他の実施形態において、ニコチンリザーバは、送達促進化合物源要素であるか、又は送達促進化合物源要素の一部を形成する。このような組み合わせの供給源及びリザーバの非限定的な例は、送達促進化合物溶液で飽和した材料(例えば、PE又はPP)であると考えられる。特定の実施形態において、リザーバは、送達装置が所望の時間枠にわたって治療上に有効なニコチン投与を供給可能にする十分な送達促進化合物溶液を供給する。非限定的な実施例は、所望の日数(例えば、1〜7日)にわたって1日当たりの所望の回数(例えば、200回)の吸煙に対して、ガス状担体の35立方センチメートル容積「吸煙」当たりに0〜100マイクログラムのニコチンの送達を可能にする十分な送達促進化合物を送達することができる装置である。特定の実施形態において、送達されるニコチンの量は、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たりに10マイクログラムと110マイクログラムの間、20マイクログラムと100マイクログラムの間、50マイクログラムと100マイクログラムの間、又は40マイクログラムと60マイクログラムの間のニコチンである。0マイクログラムのニコチンを送達する実施形態は、一般的に、漸進的なニコチン低減ベースのタバコ物品中止プログラムの最終ポイントであることが意図されている。
【0164】
温度
【0165】
本方法の一部の実施形態において、本方法は、ガス状担体、ニコチン源及び/又は促進物質源(存在する場合)の1つ又はそれ以上の温度を上昇させるステップを含む。このような温度制御ステップは、一般的に、ニコチン送達量を調節又は更に増大させるのに用いる。一部の実施形態において、温度の上昇は、送達されるニコチンレベルが他の方法では所望の最小値未満に低下することが予想される場合に限り用いられる。一部の実施形態において、これは、35cc容積吸煙当たりにニコチンが20マイクログラムを上回る、好ましくは30マイクログラムを上回る、より好ましくは40マイクログラムを上回るようにすることができる。例えば、一般的な目標送達濃度は、ニコチン送達分野で公知の技術で測定して、35立方センチメートルの容積「吸煙」当たり40〜50マイクログラムのニコチンである。米国シガレットのタール、ニコチン及び炭素一酸化物収量を求めるためのFTCシガレット試験方法、NCI専門委員会報告書、喫煙及びタバコ管理モノグラフ#7、Dr.R.Shopland(編)、Darby、PA:Diane Pub1ishing Co、1996を参照されたい。一部の実施形態において、一般的に、最初に低い温度が使用され、時間と共に温度を上昇させ、ニコチン源からの所望のニコチン送達濃度を維持する。他の実施形態において、使用中に一定温度を維持する。一部の実施形態において、温度を最高100℃まで、最高70℃まで、又は40±5℃まで高める。例えば、送達促進化合物としてのピルビン酸を40℃まで加熱して、所望のニコチン濃度範囲(例えば吸煙当たりに20〜50マイクログラム)で複数の吸煙にわたってニコチン送達の持続を可能にすることができる。温度制御は、一部の実施形態においては温度制御要素により行うことができる。このような要素は、ガス状担体、ニコチン及び/又は送達促進化合物において所望の目標温度を達成できるあらゆる公知の機構とすることができる。提供される例示的な装置における温度制御要素の特定の実施例を以下に示す。或いは、ニコチン送達を促進するために発熱化学反応熱を利用してもよい。例えば、主剤をエアロゾル形成時にニコチン及び/又は水と混合して発熱を生成し、これによってニコチン使用の効率を増大させ、室温でのエアロゾル形成に対する吸煙回数が増えることによりニコチン送達を持続することができる。発熱反応は、温度上昇のために単に熱のみを発生させるために、例えば水−KOH混合物のようなニコチン源から隔離することができる。塩基は、水の有無を問わないが、好ましくは水と共にニコチン源のニコチンと混合されて熱を発生し、また、改善されたニコチン源において考察したようにニコチン送達を更に促進させることもできる。いずれの場合においても、発熱を利用して、ガス状担体、ニコチン源、及び/又は促進物質源(存在する場合)の1つ又はそれ以上のような送達装置のあらゆる成分;及びニコチン/ガス状担体を吸入に更に好ましいものにする香味化合物のような他の成分の温度を引き上げることができる。
【0166】
装置
【0167】
本明細書で説明する方法は、一般的に、装置の作動中に本明細書で説明する方法を実施するよう構成された特別に適合された送達装置を使用して実施する。当業者は、上記の指針を用いて様々な送達装置を設計及び製造することができることになる。しかしながら、発明者らは、特定の実施例として本明細書において方法及び実施可能な用途を更に例示するために本明細書で幾つかの送達装置構成を提示している。装置のユーザに送達されるガス状担体は、禁煙、害の低減及び/又は置換のためニコチンの治療上効果のある投与を含むことができる。好ましい送達装置の実施形態は、経肺送達システムである。経肺送達システムは、粒子サイズが好適で且つ粒子サイズ変動の小さい一貫した投与を肺深部に送達する機能を有する。経肺薬剤送達の利点は、無針投与並びにこれに付随する患者の受容及び適応上の改善に限定されない。鼻、経皮的、口腔及び無針注射を含む利用可能な様々な非侵襲的薬剤送達技術のうち、経肺送達は、正確な投与滴定、迅速な吸収、及び高い生体利用効率に対して固有の可能性を提供し、新規の治療を行い且つ既存の化合物の送達を改善する。
【0168】
発明の実施の形態
ニコチンエアロゾル形成の適切な実験計画のための選別
【0169】
幾つかの実験計画の試験を以下で説明するように行い、酸の蒸気を塩基蒸気と直ちに反応させることによりエアロゾル粒子の生成を評価した。
【0170】
実験#1:塩化水素酸及びアンモニアを使用して「Y」字管中に蒸気の混合物を生成して、これをニコチン遊離塩基の上に通過させた。
【0171】
目的:
この目的は、ニコチン遊離塩基をエアロゾル化する十分な特性のエアロゾルを生成するために化学的に頑健な酸/塩基システムの有効性を評価することであった。
【0172】
実験計画:
実験計画は、「Y」形状管を介して接続された2本の同一のガラス試験管(管Aは、5mlの塩化水素酸(HCl)を含み、管Bは5mlのアンモニア(NH3)を含んでいた)を含み、該「Y」形状管は、2本の試験管からの蒸気を「Y」字管内で直ちに混合させた後、これを制御吸煙容積装置CPVA(100回(100回の吸煙)に対して2秒の持続時間(3秒間隔)で40ccの空気)を使用してニコチン遊離塩基の上に通過させることができるように設計されていた。HCl蒸気及びNH3蒸気の混合により白色の濃い可視雲が生成された。
【0173】
結果:
【0174】
表1 ニコチンの上にHCl及びNH3を通過させた後に得られたニコチンの量
【0175】
考察:
【0176】
塩化水素酸、アンモニア及びニコチンの使用により、表1に示すように、ニコチンのみに対してかなりのニコチン送達がもたらされた。しかしながら、この実験用に選んだ酸及び塩基の化学反応性及び腐食性に起因して、揮発性及び低揮発性の有機酸(例えば、脂肪酸)を含む、非腐食性の酸代替物のようなヒト用により適した代替成分を評価した。
【0177】
実験#2:ニコチン塩基エアロゾル送達構成にわたる酸の展開に使用する適切な酸候補の選別
【0178】
目的:
【0179】
この実験の目的は、経肺送達に好適なエアロゾルを形成するためにニコチン遊離塩基と混合する能力について一連の酸候補を評価することであった。μg/吸煙として表されたニコチン遊離塩基の最大質量を含有するエアロゾルを生成した優良候補を更に評価するために選択した。比較的高い揮発性であること、及び食品添加物、香味剤及び甘味剤などのヒトが消費するためのシガレット及び他の商品の成分であることの理由から、揮発性カルボン酸を最適な有機酸として選んだ。
【0180】
実験計画:
【0181】
長さ4cmx2cm×1cmの2つの同一の矩形ガラス試験容器は各々、試験容器の中央から離れて90°転向する前に容器の頂部を外方に延通する2つの入口ポート/出口ポートを含むものであった。これらのポートは、容器の縁部付近で両側に位置付けされていた。内部的には、これらのポートは、容器の底部付近まで延在する中空ガラス管から成るものであった。これらのポートの目的は、ニコチン遊離塩基(容器「B」)又は候補酸(容器「A」)の容積にわたって空気が移動する制御通路を提供することである。この実験において、容器Bにニコチン遊離塩基200μLを充填し、容器Aにはピルビン酸200μLを充填した。ニコチン遊離塩基及びピルビン酸の容積は、エッペンドルフピペットにより添加した。純ニコチン遊離塩基及び純ピルビン酸を4℃の窒素ガス下で保管した。ニコチン遊離塩基及びピルビン酸の作動容積を窒素下ではなく冷蔵状態で保管した。作動容積は容器に移す前に室温にした。温度プローブを使用して作動容積が室温に達したことを確認した。充填注入口を各容器に作製して頂部中央パネル上に位置決めし、容器に適切な反応剤を充填するのに使用した。適切な容積を個々の容器に添加した後、注入口をPARAFILM(登録商標)のプラグを用いて封止し、プラグの外側はTEFLON(登録商標)テープを重ね巻きした。その後、TEFLON(登録商標)管材を使用して容器を順次的に接続し、PARAFILM(登録商標)で固定した。次に、反応生成物を収集するのに使用するケンブリッジフィルタ(44mm直径)を含むフィルタホルダに容器Bからの出口をTYGON(登録商標)管材を用いて接続した。Pillsbury HC著、「低着火性シガレットからの全粒子状物質及びガスを収集するための喫煙機械パラメータ」(1993年3月14日、米国消費者製品安全委員会との契約による、#CPSC−S−92−5472 Ii)を参照されたい。フィルタハウジングの反対側は、TYGON(登録商標)管材により100cc注射器に接続した。この注射器は、制御吸煙容積装置(CPVA)を構成する自動化システムに固定した。詳細な方法論については、Levin ED、Rose JE及びBehm F共著、「喫煙トポロジーを乱さない吸煙容積の制御」(挙動調査方法計装及びコンピュータ、21:383〜386、1989年)を参照されたい。この教示内容は引用により本明細書に組み入れられる。第1の容器を充填してから第1のサンプリング間隔を開始するまでの設定を準備をする総時間は約5分であった。CPVAは、20回(20回吸煙)、2秒の持続時間(30秒間隔)で容積35ccの空気を引き込むようにプログラムされていた。充填後の容器を半分の高さで水浴中に浸漬させ、サンプリング前に10分間、70℃で平衡させることができるようにした。
【0182】
候補酸の評価を行う前に対照実験を行い、該対照実験では、ニコチン遊離塩基のみを容器内に保持し、ニコチン蒸気を20回(2秒の持続時間及び30秒の吸煙間隔で35ccの空気の20回吸煙)でケンブリッジフィルタを介して引き込んだ。NPD(窒素リン検出器)を利用するガスクロマトグラフィ(GC)により全ての試料を定量化した。
【0183】
結果:
【0184】
以下の表は、酸性選別並びに対照実験の結果を示している。結果は、各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0185】
表2 〜70℃での塩基上への酸のニコチン送達
【0186】
考察:
【0187】
実験結果は、約70℃にて、ニコチン上の3−メチル−2−オキソ吉草酸が最大量のニコチン(363.89μg/吸煙)を送達し、次に、ピルビン酸(362.28μg/吸煙)、2−オキソ吉草酸(297.75μg/吸煙)、4−メチル−2−オキソ吉草酸(281.39μg/吸煙)、3−メチル−2−オキソブタン酸(213.99μg/吸煙)及び2−オキソオクタン酸(90.48μg/吸煙)であることを示している。これらの候補は、以下の実験で説明するように環境条件下で評価した。3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸及び2−オキソオクタン酸は、「2−ケト酸」又は「アルファ−ケト酸」と呼ばれるカルボン酸の属を表している。
【0188】
実験#3:環境温度下での主要酸候補の評価
【0189】
目的:
【0190】
この実験の目的は、上述の実験から選択された主酸候補のどれが環境条件下で最大量のニコチンを送達するかを評価することであった。
【0191】
実験計画:
【0192】
この実験は、ガラス試験容器を加熱した水浴中に浸漬せずに環境温度にてサンプリングしたという点を除き、前回の実験で説明したように実施した。個々の実験は、選択された酸候補、すなわち、3−メチル−2−オキソ吉草酸、ピルビン酸、2−オキソ吉草酸、4−メチル−2−オキソ吉草酸、3−メチル−2−オキソブタン酸、及び2−オキソオクタン酸を使用して実施した。各実験では、容器Bにニコチン遊離塩基を用いた前回の実験と同様に、容器Aに異なる酸を配置した。前回の実験と同様に、ニコチン遊離塩基対照実験も行った。
【0193】
結果:
【0194】
以下の表は、環境条件下でサンプリングした主酸候補の評価結果を示している。結果は、各吸煙において測定したニコチン量として表している。
【0195】
表3 塩基上の選択した酸を使用したニコチン送達量(環境温度)
【0196】
考察:
【0197】
環境温度からのデータは、ピルビン酸が44.68μg/吸煙の送達でニコチンエアロゾルを形成する優良な候補であることを示している。
【0198】
実験#4:エアロゾル生成のための従来技術の設計を利用した前回の70℃及び環境温度実験(それぞれ実験#2及び実験#3)に基づく主酸候補の評価
【0199】
目的:
【0200】
この実験の目的は、従来技術による構成と酸及び塩基の順次的な配向とを比較して、どちらの方がより高いニコチン送達が得られるかを判断することであった。〜70℃にて類似のニコチン送達を発生した2つの主酸候補と、環境温度下で最大量のニコチンを送達した1つの酸候補(実験#2〜#3から)をそれぞれ70℃及び環境条件下で試験した。
【0201】
実験計画:
【0202】
この実験において、実験#2で使用したものと相違しない2つの同一の矩形のガラス試験容器を利用した。容器Aには200μLの主酸を含み、容器Bには200μLのニコチン遊離塩基を含んでいた。2つの容器を「Y」字形ガラスコネクタを介して接続し、次いで、「Y」字形ガラスコネクタを、上述のようなケンブリッジフィルタを含む同じPTFEハウジングに接続した。管からの蒸気は、制御吸煙容積装置(CPVA)を使用して20回(20回の吸煙)、2秒の持続時間(30秒間隔)で容積35ccの空気を引き込むと、「Y」字形ガラスコネクタ内で直ちに混合できるようにした。高温の実験では、酸容器及びニコチン容器は約70℃の水温の水浴中に半分の高さで浸漬させた。これらの容器は、サンプリング前に10分間平衡できるようにした。室温環境での実験では、両方の容器を実験台上に設置した。収集した試料は、窒素リン検出器によるガスクロマトグラフィを用いてニコチンを分析した。
【0203】
結果:
【0204】
以下の表は、従来技術のシステムを利用して、高温(約70℃にて)及び環境条件にてサンプリングした主酸候補の評価の結果を示しており、また、順次的な塩基上酸設計(実験#2〜#3から)を使用した結果を比較のため表している。結果は、各吸煙で測定されたニコチンの質量として表されている。
【0205】
表4 「Y」字形設計(従来技術)を使用したニコチン送達
【0206】
考察:
【0207】
このデータに基づくと、従来技術による設計のニコチン送達は、順次的設計よりも有意に低く、従って、順次的設計の方がニコチンエアロゾルの送達に優れた方法である。
【0208】
実験#5:十分なニコチン濃度を有するエアロゾルプルームの展開において塩基上の酸環境を実現するための酸リザーバ及び塩基リザーバの順次的配置の効果
【0209】
目的:
【0210】
この実験の目的は、酸蒸気をニコチン遊離塩基容器内に入れてニコチン上に上昇させ、十分な量のニコチン遊離塩基を有するプルーム雲を生成することを可能にする、酸及び塩基リザーバの順次的構成の影響を判断することであった。この実験で使用するためにピルビン酸を選択した。
【0211】
実験計画:
【0212】
この実験計画は実験#2と同じであった。この実験は2つの部分A及びBに分けた。第1の部分Aは、3つの試料(試料当たり20回の吸煙)にわたって収集した別個の容器内での各々200μLのニコチン遊離塩基及びピルビン酸の使用の評価を含めた。実験の第2の部分(パートB)は、環境条件及び40℃の条件下で試験した上記のシステムを比較し、エアロゾル形成及びニコチン送達に及ぼす緩い加熱の影響を評価することを含めた。
【0213】
結果(パートA):
【0214】
以下の表は、環境条件下でのニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験(パートA)の結果を示している。結果は、ニコチンの全質量及び各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0215】
表5 塩基上の酸のニコチン送達
【0216】
考察(パートA):
【0217】
これらの結果は、第1の試料から最後の試料まで約32%の全体的なニコチン収量の減少があることを示している。
【0218】
結果(パートB)
【0219】
以下の表は、40℃でのニコチン遊離塩基上のピルビン酸の実験結果を示している。結果は、ニコチンの全質量及び各吸煙で測定されたニコチンの量で表している。
【0220】
表6 40℃における塩基上の酸のニコチン送達
【0221】
考察(パートB):
【0222】
環境条件と比較したときに、加熱条件下でニコチンの質量/吸煙の3〜4倍の増加が観察された。更に、変動係数は、送達動特性の良好な制御を表す約5%にまで著しく改善された。その上、吸煙全体にわたってニコチン送達の有意な減少はなかった。
【0223】
実験#6: 小型化/シガレットサイズ装置(長さ8cm、ID8mm)におけるピルビン酸での順次的セットアップを用いることによるニコチンエアロゾルの形成及び送達の調査
【0224】
材料及び方法:
【0225】
使用したマトリクス材料:
【0226】
PE繊維及びPP繊維の混合(Porex Technologiesが提供するX−40495繊維として販売されている)で作られた芳香剤用芯試料をピルビン酸が充填されたマトリクスとして使用し、不織PET膜支持体を有する延伸PTFE医療用膜から成るGORE(登録商標)Medical Membrane(0.2ミクロンの細孔サイズ)(W.L.Gore & Associates社から提供されるSMPL−MMT314として販売されている)をニコチン遊離塩基を充填するためのマトリクスとして使用した。膜シートは、ID1.5mmのおよその寸法を有するポリエステル内壁及びTEFLON(登録商標)外壁を実現するストロー構造に巻いて長さ4cmの小片に切断した。
【0227】
実験計画:
【0228】
芳香剤用芯の1つの小片に180μLのピルビン酸(ピルビン酸供給源要素)を充填し、長さ4cm、IDが1.5mmのロール状医療用膜の3つの小片の内壁(ポリエステル側)に90μL(3x30μL)のニコチン遊離塩基をコーティングした。ピルビン酸を充填させた芳香剤をIDが8mm、長さが9cmの透明なTEFLON(登録商標)管の遠位端に挿入し、ニコチン遊離塩基を有する医療用膜の3つの小片を、3つの穴を有するTEFLON(登録商標)ワッシャーに緊密に挿入した(ニコチン源要素)。ニコチン源要素は、ピルビン酸供給源要素とニコチン源要素との間に2cmの空隙を残して、ピルビン酸供給源要素を有する長さが9cm、内径(ID)が8mmのTEFLON(登録商標)管に挿入した。供給源要素は、自動シリンジポンプによって引かれた測定容積の空気(20回、2秒の持続時間及び30秒の吸煙間隔で35cc)が最初にピルビン酸供給源要素を通り、その後、ニコチン源要素を通過してエアロゾルを形成するようにして配置された。装置の近位端は、ケンブリッジフィルタ(エアロゾル生成物を収集するための)を含む制御吸煙容積装置(CPVA)に接続した。高温(40℃)の実験では、長さ9cmの装置(ピルビン酸及びニコチンの両方の供給源要素を有する)を水浴中に完全に浸漬させ、サンプリング前に10分間平衡させた。環境条件下での実験は、実験台上に容器を設置することにより行った。
【0229】
結果:
【0230】
試料をニコチン含有量について分析し、表7及び表8に表した。
【0231】
表7 〜40℃での小型化装置の実験におけるニコチン送達
【0232】
表8 環境温度での小型化装置の実験におけるニコチン送達
【0233】
考察:
【0234】
このデータは、酸及び塩基の両方がマトリクス(この場合、酸に対して芳香剤用芯、ニコチン遊離塩基に対しては医療用膜)に充填されたときに、実験#5で使用した前の実験用装置の場合と同等のニコチン送達が得られたことを示している。加えて、〜40℃の条件では、環境条件と比較するとニコチン送達が有意に増えた(約3倍)ことを示した。
【0235】
改善実験
【0236】
実験#1 ピルビン酸を用いたエアロゾル形成の効率を改善するためのニコチンに対する好適な化学剤の選別
【0237】
目的:
【0238】
この実験は、ピルビン酸蒸気により効率的なエアロゾルを形成するためのニコチンに対する好適な化学剤を特定するために行った。
【0239】
材料及び方法:
【0240】
酒石酸ニコチン溶液:以下の手順に従ってニコチン塩基を調製した。
【0241】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化ナトリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[NaOHニコチン塩基]。
【0242】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化カルシウムと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[(Ca(OH)2ニコチン塩基]。
【0243】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で200mgの水酸化カリウムと混合させ、1mLの蒸留水を添加してかき混ぜた[KOHニコチン塩基]。
【0244】
約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)を1mLの蒸留水中に溶解させ、75〜80℃(発熱条件に匹敵する温度)まで加熱した[発熱実験に対する対照]。
【0245】
サイドアーム試験管内の約16mgの酒石酸ニコチン(5mgのニコチン塩基に相当)を1mの蒸留水中に溶解させた[環境温度実験に対する対照]。
【0246】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0247】
試験手順:この実験では、2つの同一のサイドアームガラス管(管A及びB)を使用した。管Aには約1mlのピルビン酸が含まれ、管Bにはアルカリ化ニコチンが含まれていた。独立したサイドアーム試験管内の塩基を有するニコチン又はニコチン単独(対照)を直接ピルビン酸源に接続した(選択した塩基への加水により生じる発熱過程の指標として温度を測定する)。環境温度条件での実験では、ピルビン酸管に接続する前に、ニコチン管を室温にまで冷却した。化学剤(管B)と混合したニコチンの上にピルビン酸蒸気(管Aからの)を通過させ、管Bからの出口をケンブリッジフィルタに接続して、自動シリンジポンプを使用することにより20回(20回の吸煙)、10回(10回の吸煙)、20回(20回の吸煙)、又は50回(50回の吸煙)、2秒の持続時間(5秒間隔)で容積35ccの空気を引き込んだときに反応生成物を収集するようにした。管A内に形成された蒸気は、チューブAに取り付けられたガラスピペットを流れる空気によりチューブB内に導入した。NPD(窒素リン検出器)を利用してガスクロマトグラフィ(GC)により全ての試料を定量化した。
【0248】
結果:
【0249】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの形態で送達されたニコチンの平均量を表1A及び表1Bに示す。
【0250】
表1A 発熱条件下で酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0251】
表1B 環境温度にて酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0252】
考察:
【0253】
3つの異なる塩基[NaOH、KOH及びCa(OH)2]をニコチン塩基と混合することにより行った実験から得られたニコチンエアロゾル送達は、区別できる結果を明らかにした。加えて、2つの実験条件(発熱条件及び環境温度条件下)によってもニコチンエアロゾル送達に関して異なる結果がもたらされた。
【0254】
発熱条件下で、平均ニコチンエアロゾル送達は、ニコチン塩基が水酸化ナトリウム(NaOH)と混合されたときに31.33μg/吸煙、ニコチン塩基が水酸化カルシウム[Ca(OH)2]と混合されたときに0.66μg/吸煙、及びニコチン塩基が水酸化カリウム(KOH)と混合されたときに29.79μg/吸煙であった。対照実験では、化学剤(塩基)なしで同一の実験条件下で約1.25μg/吸煙のニコチンエアロゾルが送達された。[Ca(OH)2]が水及びニコチン塩基と混合しても熱は生成されず、一方、他の2つの塩基(NaOH及びKOH)により熱が生成された点に留意することが重要である。水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムは、「アルカリ金属水酸化物」として知られており、一方、水酸化カルシウムは、「アルカリ土類金属水酸化物」として知られている。この実験結果は、ニコチンエアロゾル送達は、同一の試験条件下のアルカリ土類金属水酸化物と比較すると、ニコチン塩基がアルカリ金属水酸化物と混合したときに有意に促進されたことを示している。
【0255】
実験を環境温度(室温)で行った場合、平均ニコチンエアロゾル送達は、ニコチン塩基が水酸化ナトリウム(NaOH)と混合したときに27.26μg/吸煙、ニコチン塩基が水酸化カルシウム[Ca(OH)2]と混合したときに0.43μg/吸煙、及びニコチン塩基が水酸化カリウム(KOH)と混合したときに29.57μg/吸煙であった。対照実験では、どのような塩基もなしで同一の実験条件下で約0.55μg/吸煙のニコチンエアロゾルを送達した。興味深いことに、室温では、ニコチンエアロゾル送達は、NaOHと比較するとニコチン塩基がKOHと混合したときの方が若干高かった。
【0256】
水酸化カリウム(アルカリ金属水酸化物)を使用した実験でのニコチン送達は、NaOHに対して若干増大した。従って、以下の実験は、好ましい薬剤として水酸化カリウムを使用して行った。
【0257】
実験#2:発熱下で酒石酸ニコチン及び水酸化カリウム混合物の上に通過させたピルビン酸
【0258】
目的:
【0259】
先の実験において、発熱反応から放出された熱は、エアロゾルの形態で初期ニコチン送達を促進する重要な役割を果たすことに注目した。この調査は、発熱によるニコチンエアロゾル送達の促進の持続性を試験するために実施した。この実験においてニコチン塩基の供給源として酒石酸ニコチンを使用した。
【0260】
材料及び方法:
【0261】
アルカリ化した酒石酸ニコチン溶液:以下の手順を使用してアルカリ化したニコチン塩基の2つの異なる濃度を調製した。
【0262】
約250mgの酒石酸ニコチン塩(81mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で500mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0263】
約125mgの酒石酸ニコチン塩(40mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で250mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、1mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0264】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0265】
試験手順:実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液をピルビン酸源に接続した。
【0266】
結果:
【0267】
ニコチン含有量について試料を分析し、最大150回吸煙の各々50回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表2に示す。
【0268】
表2 発熱条件下で酒石酸ニコチン溶液の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0269】
考察:
【0270】
第1の50回の吸煙で送達されたニコチン量を示す結果(実験Aでは76.7μg/吸煙、実験Bでは57.8μg/吸煙)は、水酸化カリウムと水の反応の結果として発熱反応により発生する熱が第1の50回吸煙におけるピルビン酸でのニコチンエアロゾル形成を飛躍的に促進させたことを示唆しており、50回吸煙を完了するのに必要な時間は約30分であり、その間、発熱反応により発生した熱は高温を持続した。この実験結果は、第1の50回吸煙においてニコチン送達の促進を得るために外部加熱を必要としなかったという意味では、重要且つ固有なものである。この結果はまた、出願人の先願において熱を使用してニコチンの送達が促進されることを確認しており、加熱のこの代替機構を適用すると、実用的且つ商業的に実現可能な選択肢に相当する吸煙数において送達を促進できることを実証している。適切な断熱を行えば、発熱は、本明細書で示される50回を更に上回る吸煙でも送達の促進に有用となるはずである。
【0271】
実験#3:酒石酸ニコチンと水酸化カリウムの混合物の上に通過させたピルビン酸
【0272】
目的:この実験は、ピルビン酸の蒸気をアルカリ化したニコチン塩基の上に通過させたときのエアロゾルの形態でのニコチン送達を調査するために設計されたものである。ニコチン塩基の供給源として酒石酸ニコチンを使用した。
【0273】
材料及び方法:
【0274】
アルカリ化した酒石酸ニコチン溶液:約500mgの酒石酸ニコチン塩(162mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で1gの水酸化カリウムペレットと混合させ、2mLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0275】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0276】
試験手順:
【0277】
実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液を直接(これにより発熱を測定できる)ピルビン酸源に接続した。
【0278】
結果:
【0279】
ニコチン含有量について試料を分析し、35ccの容積の各50回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表3に示す。結果は、相対的当量(700μL)のピルビン酸及び量が著しく多量(700mg)の非アルカリ化ニコチン塩基を使用した同一の実験計画から得られたデータと比較した。
【0280】
表3 非アルカリ化ニコチン塩基からのニコチン送達と比較した、室温でピルビン酸の蒸気がアルカリ化した酒石酸ニコチン溶液の上に通過したときのニコチン送達
【0281】
考察:
【0282】
この実験の200回吸煙でのニコチン送達(平均値71.12μg/吸煙)は、これまでの実験結果(平均ニコチン値は21.66μg/吸煙であった)と比較すると飛躍的に増大した(約3.5倍)ことは注目に値するものであった。更に重要なことに、この実験で使用した全ニコチン遊離塩基の量は、前回の実験(700mg)よりも有意に少なかった(162mg)。もう1つの重要な発見は、第1の50回吸煙で送達されたニコチンはその後の吸煙よりも多かったことであった。ニコチン塩が水酸化カリウム及び水と反応したときに熱(発熱)の形態で放出されたかなりの量のエネルギーがあったことを観察した。高温(約80℃)は、約15〜20分間持続させた。従って、第1の50回吸煙でのニコチン送達の増大は、恐らくは発熱に起因するものである。しかしながら、重要なことに、吸煙回数100〜200でのニコチン送達の促進は、容易には過渡的な発熱反応によるものとすることはできない。むしろ、ニコチン自体に関するアルカリ金属水酸化物の添加(すなわち発熱性加熱を超える塩基添加によるある程度の作用)は、ニコチンエアロゾルの収量の持続的増大の要因となると思われる。この実験データから、アルカリ金属水酸化物からの薬剤の使用は、対照実験(アルカリ金属水酸化物が存在しなかった場合)と比較すると、ニコチンエアロゾル送達を有意に促進したことにより効率的なエアロゾルを形成するのに必要なニコチン塩基の量を低減する一助となったと結論付けることができる。
【0283】
これらの観察結果により、少量のニコチン塩類を用いた次の1組の実験を行った。
【0284】
実験#4:室温で水酸化カリウム混合物中の少量の酒石酸ニコチンの上に通過させたピルビン酸
【0285】
目的:
【0286】
この実験は、ピルビン酸の蒸気で効率的なエアロゾルを形成するのに用いることができる酒石酸ニコチンの最少量を判断するために設計されたものである。この目的において、酒石酸ニコチンの3つの異なる量をニコチン塩基の供給源として使用して、ピルビン酸の蒸気でエアロゾルを形成した。エアロゾル試料は、試験管が室温になるのを待機することにより発熱のない状態で収集した。
【0287】
材料及び方法:
【0288】
酒石酸ニコチン溶液:この実験におけるアルカリ化した3つの異なる濃度のニコチン塩基を以下のように調製した。
【0289】
約32mgの酒石酸ニコチン塩(10mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0290】
約20mgの酒石酸ニコチン塩(6.5mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0291】
約9mgの酒石酸ニコチン塩(2.9mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0292】
独立したサイドアーム試験管内の上記の溶液を20分間室温に保ち、試験管を室温にした。
【0293】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0294】
試験手順:ここでは実験#1で説明した方法に従った。
【0295】
結果:ニコチン含有量について試料を分析し、第1の100回の吸煙において各10回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表4に示す。
【0296】
表4 室温にて低濃度のニコチン及び水酸化カリウム溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0297】
考察:
【0298】
実験結果は、第1の100回吸煙で送達されたニコチンの平均量は、水酸化カリウム溶液中の少量(10mg)ニコチンで35.55μg/吸煙、水酸化カリウム溶液中の更に少量(6.5mg)のニコチンで28.077μg/吸煙、及び水酸化カリウム溶液中の最少量(2.9mg)のニコチンで25.10μg/吸煙であったことを示している。3つの実験は全て、約700mgのニコチン塩基を使用した先の実験(表3)と比較すると、ニコチンが有意に低レベルであってもかなりのニコチンエアロゾル送達を示した。ちなみに、最少量(2.9mg)のアルカリ化したニコチンでのニコチンエアロゾル送達は、700mgのニコチン塩基を使用した実験よりも優れたものであった。酒石酸ニコチン溶液に水酸化カリウムを添加すると少量のニコチンを使用してもこのような効率的なニコチンエアロゾルが形成される点に留意することは注目に値することであった。
【0299】
水酸化カリウムと酒石酸ニコチンの組み合わせは、ニコチン塩基の著しい低濃度であっても第1の100回吸煙に対してニコチンエアロゾル送達の低下を克服するのに有効であったと結論付けることができる。
【0300】
実験#5:酒石酸ニコチン及び水酸化カリウムの混合物の上にピルビン酸を通過させたときのエアロゾルで送達されたニコチンに対する質量バランスの評価
【0301】
目的:
【0302】
現在の実験の主な目的は、エアロゾルの形態で送達されたニコチン量を調査して、ニコチンに関する回収の百分率を算出することであった。二次的な目的は、酒石酸ニコチン溶液及び水酸化カリウム溶液の2つの異なる濃度における望ましい量のニコチン送達の持続性を判断することであった。
【0303】
材料及び方法:
【0304】
酒石酸ニコチン溶液:ニコチン塩基の2つの異なる濃度を以下の手順を使用して調製した。
【0305】
約32mgの酒石酸ニコチン塩(10mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0306】
約9mgの酒石酸ニコチン塩(2.9mgのニコチン塩基に相当)をサイドアーム試験管内で100mgの水酸化カリウムペレットと混合させ、200μLの蒸留水を添加して完全に混合させた。
【0307】
独立したサイドアーム試験管内の上記の溶液は、20分間室温に保ち、ニコチンエアロゾル形成に及ぼす発熱の影響を防いだ。
【0308】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペットを介して空気流を導入した。
【0309】
試験手順:実験#1で説明した方法に従って、独立したサイドアーム試験管内のアルカリ化したニコチン塩基溶液をピルビン酸源に接続した。
【0310】
結果:
【0311】
ニコチン含有量について試料を分析し、各10回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表5に示す。
【0312】
表5 酒石酸ニコチン溶液及びニコチン塩基溶液の混合物の上にピルビン酸の蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0313】
考察:
【0314】
水酸化カリウム中に10mgのニコチンを含有する実験による第1の280回吸煙で送達されたニコチンの全量は約7.9mgであり、平均ニコチン量は31.13μg/吸煙であった。約2.9mgのアルカリ化したニコチン塩基を含有する実験において送達された(120回の吸煙で)ニコチンの合計が2.88mgであり、平均ニコチン量は241.03μg/吸煙であった。エアロゾル形成及び送達は、約10mgのアルカリ化したニコチンを含有する実験においても依然として存在しており(280回目の吸煙にて観察された二桁のニコチン送達から立証されるように)、一方、エアロゾル形成は、約2.9mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した実験においてはわずか120回吸煙しか持続しなかった。回収率は、2.88mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した実験においては約99.3%であり、10mgのアルカリ化したニコチン塩基を使用した場合には79.0%の回収率であった点に留意することは注目に値することであった。従って、この実験結果は、大部分の(79%を上回る)ニコチンがピルビン酸でエアロゾルを形成するのに効率的に利用されたことを明確に実証した。更に、この実験結果は、ニコチンエアロゾル送達の持続性が使用した水酸化カリウム中のニコチン量に左右されることを示していた。
【0315】
実験#6:ピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達する適切な装置を展開するための調査
【0316】
目的:
【0317】
この1組の実験の目的は、実験計画を商業的に使用可能な装置の作製に近付けることであった。
【0318】
計画#1:サイドアーム試験管内のピルビン酸及びID2mmのガラス管内のニコチン塩基
【0319】
材料及び方法:
【0320】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。この溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0321】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0322】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続し、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0323】
計画#1:サイドアーム試験管内のピルビン酸及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングした水酸化カリウム中のニコチン
【0324】
材料及び方法:
【0325】
ニコチン塩基溶液:
【0326】
約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム(KOH)溶液と混合した。溶液を長さが10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、このコーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液1。
【0327】
約20μL(20mg)のニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さが10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液2
【0328】
約30μL(30mg)のニコチン塩基を10μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の4つの小片の内面上にコーティングし(4x10μL)、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した−溶液3
【0329】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0330】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続し、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0331】
結果:
【0332】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各10回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表6に示す。
【0333】
表6: ガラス管上にコーティングしたアルカリ化したニコチン塩基の上にサイドアーム試験管内のピルビン酸を通過させたときのニコチン送達
* 約10μL(10mg)のニコチン塩基を30μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
**約20μL(20mg)のニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
***約30μL(30mg)のニコチン塩基を10μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。
【0334】
計画#2:ピルビン酸、及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングした水酸化カリウム中のニコチン
【0335】
材料及び方法:
【0336】
ニコチン塩基溶液:約2.7mgのニコチン塩基を20μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管の内面上にコーティングし、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0337】
ピルビン酸:約20μLのピルビン酸(PA)を長さ10cmでID2mmのガラス管の内面上にコーティングし、コーティングしたガラス管をID8mmのテフロン管(ピルビン酸ユニット)内に収納した。
【0338】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0339】
結果:
【0340】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各5回吸煙で送達されたニコチンの平均量を表7に示す。結果は、ニコチン塩基を水酸化カリウム溶液と混合しなかったという点を除き、同一の実験から得られたデータと比較した。
【0341】
表7:ガラス管内にコーティングした水酸化カリウム(KOH)中のニコチンの上にガラス管内にコーティングしたピルビン酸が通過したときのニコチン送達
【0342】
計画#3:芳香剤プラグ上に充填したピルビン酸及びID2mmのガラス管の内面上にコーティングしたニコチン
【0343】
材料及び方法:
【0344】
ニコチン塩基:約5mgのニコチン塩基を15μLの飽和水酸化カリウム溶液と混合した。溶液を長さ10cmでID2mmのガラス管2本(並列に配置)の内面上にコーティングし、同じ寸法のもう2本の空のガラス管(コーティングなし)を空気希釈のために含めた。全ての管をID8mmのテフロン管(ニコチン塩基ユニット)内に収納した。
【0345】
ピルビン酸:約140μLのピルビン酸(PA)をPE繊維及びPP繊維の混合(Porex TechnologiesによりX―40495繊維として販売)で作られた芳香剤用芯試料に充填し、ID6mmのテフロン管(ピルビン酸ユニット)内に挿入した。
【0346】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、発熱反応による熱が放散するように20分間待機した後に、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0347】
結果:
【0348】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各10回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表8に示す。結果は、ニコチン塩基をアルカリ化しなかった(非アルカリ化ニコチン)という点を除き、同一の実験から得られたデータと比較した。
【0349】
表8:ガラス管内にコーティングした水酸化カリウム中のニコチンの上に芳香剤に充填したニコチンピルビン酸を通過させたときのニコチン送達
【0350】
考察:実験6の結果は、吸入のためニコチンエアロゾルを送達する実施可能な製品設計において利用できるものと類似の装置構成部品の使用を示す。ニコチン収量の持続的促進は、発熱反応とは関係なく、先に説明した計画#1〜#3の場合と同様にニコチンとアルカリ金属水酸化物の使用によって得られるものである。全ての場合において、外部に発熱体がない場合のニコチンの実質的な送達は、ニコチン収量を促進するためにニコチンと組み合わせてアルカリ金属水酸化物を利用することの有用性を実証している。
【0351】
実験#7:ピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するためにニコチン及び水酸化カリウムの適切な比率を選択するための調査
【0352】
目的:
【0353】
この実験の目標は、持続可能な量のピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するために水酸化カリウム:ニコチンの適切な比率を選択することであった。
【0354】
材料及び方法:
【0355】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を、10、20、40、60、80、100、又は200mgの水酸化カリウムを含有する200μLの水とサイドアーム試験管内で混合した(ニコチン塩基ユニット)。実験前にニコチン塩基ユニットを20分間室温に保った(発熱の発生後に冷却するため)。
【0356】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0357】
試験手順:ニコチン塩基ユニットをピルビン酸ユニットに接続して、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0358】
結果:
【0359】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各20回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表10に示す。
【0360】
表10:異なる比率の水酸化カリウム及びニコチン塩基の上にピルビン酸蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0361】
考察:
【0362】
実験7の結果は、水中の水酸化カリウム:ニコチン塩基の異なる比率でのニコチンエアロゾル送達を示している。ニコチン送達の持続的促進は、10:40、10:60、10:80及び10:100のニコチンと水酸化カリウムの比率で達成されたが、10:60の比率が、他の3つの比率よりも優れていると思われる点に留意することが重要である。従って、水酸化カリウム濃度:ニコチン塩基の比率を調節することにより、必要に応じてニコチンエアロゾル送達を最適レベルに制御することができる。pHは、水酸化カリウム量の増加毎に高くなった。従って、より高いアルカリ性pH自体は、ニコチン送達性と相関はなかった。
【0363】
KOHの中程度の濃度でのニコチンの送達の増大は、むしろ、KOHの水溶液中に懸濁したニコチンの小滴から成る乳濁液の出現と相関していた。KOHの低濃度(例えば200マイクロリットルの水中に10mgのKOH)は、この相分離を誘起するには不十分であった。相分離を誘起している間の非常に高い濃度(例えば200マイクロリットルの水中に200mgのKOH)では、KOH溶液により囲まれた小滴のニコチンから成るKOH中のニコチンエマルジョンが安定しなかった。むしろ、恐らくはKOHの高濃度水溶液の表面張力が増大したことに起因して、ニコチンの連続層が形成された(PM Dunlap及びSR Faris共著、水酸化カリウム水溶液の表面張力、Nature 196、1312〜1313頁、1962年)。安定エマルジョンがなければ、多数回の吸煙でのニコチン収量の促進は、試験した条件下では見られなかった。すなわち、ニコチン送達の促進は、ニコチン含有の小滴を囲むKOH溶液中のピルビン酸の隔離に左右されると考えられる。
【0364】
実験#8:効率的なピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するための追加の薬剤の選別
【0365】
目的:
【0366】
この実験の目的は、持続可能な量のピルビン酸ニコチンエアロゾルを生成及び送達するために、水酸化カリウムに加えて一部の追加の薬剤(好ましくはアルカリ金属水酸化物/酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物/酸化物)及び塩類を調査することであった。
【0367】
材料及び方法:
【0368】
ニコチン塩基溶液:約10μL(10mg)のニコチン塩基を100mgの選択した塩基及び塩を含んだ300μLの水とサイドアーム試験管内で混合した(ニコチンユニット)。実験前に、(発熱があった場合に冷却するために)ニコチンユニットを20分間室温に保った。持続可能なニコチンエアロゾル送達を促進する機能に対して以下のリストの候補を選別した。
【0369】
アルカリ金属水酸化物及び酸化物:
水酸化カリウム(KOH)
第三ブトキシカリウム[(CH3)3COK]
超酸化カリウム(KO2)
水酸化ナトリウム(NaOH)
ブトキシドナトリウム[CH3(CH2)3ONa]
第三ブトキシドナトリウム[(CH3)3CONa]
酸化リチウム(Li2O)
【0370】
アルカリ土類金属酸化物:
酸化カルシウム(CaO)
酸化ベリリウム(BeO)
酸化バリウム(BaO)
過酸化バリウム(BaO2)
【0371】
塩類:
塩化カリウム(KCl)
塩化ナトリウム(NaCl)
炭酸ナトリウム(Na2CO3)
クエン酸ナトリウム[HOC(COONa)(CH2COONa)2]
硫酸アンモニウム[(NH4)2SO4]
【0372】
ピルビン酸:各実験用に約1mLのピルビン酸(PA)を測り、サイドアームガラス試験管に入れ、パスツールピペット(ピルビン酸ユニット)を介して空気流を導入した。
【0373】
試験手順:ニコチンユニットをピルビン酸ユニットに接続して、実験#1で説明した方法に従ってエアロゾル試料を収集した。
【0374】
結果:
【0375】
ニコチン含有量について試料を分析し、エアロゾルの各60回の吸煙で送達されたニコチンの平均量を表11に示す。
【0376】
表11 室温にてニコチンの一部のアルカリ金属水酸化物/酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び塩類の混合物の上にピルビン酸蒸気を通過させたときのニコチン送達
【0377】
考察:実験8の結果は、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム及びリチウム)水酸化物/酸化物が、アルカリ土類金属(ベリリウム、カルシウム及びバリウム)酸化物に比べて、エアロゾルでの持続可能且つ促進された量のニコチンを生成及び送達するのに最も効果的なグループであることを明確に示している。試験したアルカリ金属水酸化物/酸化物のうち、カリウム及び水酸化リチウム/酸化物は、エアロゾルでの促進されたニコチン送達をもたらす優れた候補であることが確認されている。
【0378】
更に、塩溶液をニコチン塩基と混合した実験において送達されたニコチンエアロゾルが、興味深い結果をもたらすことが分かった。対照実験(水、塩又はアルカリ金属水酸化物/酸化物及びアルカリ土類金属酸化物なし)では、エアロゾルで約25.62μg/吸煙のニコチンを送達したが、選択した塩溶液をニコチン塩基と混合することは、対照実験の結果と比較すると、以下の2つの理由でエアロゾルでのニコチン送達を促進するのに有利であることを証明できた。
【0379】
(1)ニコチンは、水と共に共沸混合物を形成することが知られており、ニコチン濃度及び温度の一定の範囲内で別々のニコチン相と水相に分解することができる。C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)。先の実験#7で分かるように、共沸水溶液からのニコチンの分離を引き起こすことによって、ニコチンの送達は、同じ容積の水で希釈されたニコチンと比較して促進されることになる。
【0380】
(2)純粋なニコチン塩基とよりも大きい溶液容積の使用を可能にすることによって、溶液をより大きな表面積にわたって分散させ、ニコチンの有効揮発を更に促進することができる。
【0381】
機構のどのような特定の理論に束縛される意図はないが、例えば、上記で見られるKCl及びKOHを有するニコチン水溶液からのニコチン蒸気の増大は、溶液からニコチン塩基を「塩析」する電解質の作用を表すことができる。工業化学において、これは、概念的には、水及びエタノールの共沸混合物を分離する際の酢酸カリウムの使用などの塩効果蒸留に相当することになる。Schmit、D.Vogelpohl、A.共著(1983)、酢酸カリウム存在下のエタノール水溶液の蒸留、分離科学と技術、18(6)、547〜554頁。一般に、この塩析効果は、電解液が、水中で溶解度が高く、ニコチン塩基中で溶解度が低いような、ニコチン塩基及び水中で極めて相違した溶解度を有する場合に最も効果的であるはずである。水性共沸混合物からのエタノールの塩効果蒸留におけるバイオエタノール生産分野で開発されたこの技術により、本明細書で試験したものに加えて他の塩類を評価する解析フレームワークが提供される。R.T.P.Pinto、M.R.Wolf―Maciel、L.Lintomen共著、エタノール精製のための塩分抽出蒸留プロセス、コンピュータ及び化学工学、第24巻、2−7号、2000年7月15日、1689〜1694頁;Mario Llano―Restrepo、Jaime Aguilar−Arias共著、無水エタノール生産用の塩類抽出蒸留塔のモデル化及びシミュレーション、コンピュータ及び化学工学、第27巻、4号、2003年4月15日、527〜549頁。
【0382】
表11の物質の溶液の質量モル濃度を算出することにより、濃度に対するニコチンエアロゾル化の依存性を試験した。下のグラフは、良好な相関関係(相関係数r=0.76及びp値=0.016)があることを証明している。比較のために、酸化ベリリウム又は酸化カルシウムなどの不溶性化合物では、対照水溶液上へのニコチン送達は改善しなかった(データは図示せず)。試験した他の電解質形成化合物には、第三ブトキシカリウム、超酸化カリウム、ナトリウムブトキシド、第三ブトキシドナトリウム及び過酸化バリウムが含まれる。
Regression Plot:回帰プロット
Row exclusion:Nicotine pyruvate delivery vs cone
:行排除:ニコチンピルビン酸送達対コーン
Nicotine yield:ニコチン収量
Molality:質量モル濃度
【0383】
塩析効果に加えて、二相のニコチン及び水状態への移行を誘起させるように緩い加熱が十分に確立される。C.S.Hudson著、Zeit.phys.chem.47、113頁(1904年)。イオン強度の十分な増加により位相シフト温度が変化し、この移行を誘起するためにより低い程度の加熱を必要とするか、又は加熱を不要にすることができる。
【0384】
塩析混合物の加熱は更に、概念的には、上記で考察した塩効果蒸留に相当する。これは、強塩基(KOH、NaOH)対塩類(KCl、NaCl)に対する高い初期ニコチン送達の一般的傾向と合致する。従って、特定の実施形態においては水中に溶解したときに発熱する電解液生成化合物が好ましい。
【0385】
送達促進化合物がピルビン酸のような酸である実施形態において、酸は、時間の経過に伴ってニコチン源に溶解しこれを酸性にすることができる。この酸性化は、恐らくはニコチン塩基の中和(プロトン化されたニコチンのpKaは8.5である)により、経時的なニコチン送達の減少と関連付けられる。従って、これらの実施形態において、好ましい電解液生成化合物は、水中で溶解すると発熱性があり、更に強塩基(すなわち、ニコチン/水pHは>11、12、13又は14)である。この点に関して特に好ましい化学種はKOHである。
【0386】
本明細書の方法と共に使用するよう適合された例示的な装置
【0387】
一部の実施形態の送達装置は、タバコ喫煙物品を模擬したハウジングを含む。ハウジングは、タバコ物品を喫煙するのに使用されるあらゆる物品のサイズ、形状及び/又は構成を模擬することができる。本発明による喫煙物品の非限定的な実施例としては、シガレット、シガー、シガリロ及びパイプが挙げられる。
【0388】
一部の実施形態の送達装置は、製薬吸入装置を模擬するハウジングを含む。ハウジングは、吸入に使用されるあらゆる製薬装置のサイズ、形状及び/又は構成を模擬することができる。本発明による製薬吸入装置の非限定的な実施例は、定量吸入器、加圧式定量吸入器、ドライパウダー吸入器、ネブライザ、及び液体ベースの吸入器を含む。
【0389】
例示的な装置1
【0390】
図1を参照すると、本発明の1つの実施形態による、ニコチンエアロゾルの形成及びユーザへの送達のための装置が示されている。具体的には、シガレットのサイズ、形状及び外観を有するニコチン吸入器10が示されている。ニコチン吸入器10は、細長い円筒形で且つ中空のハウジング12から成る。ガスが吸入器10を通過できるようにするために、ハウジング12は、対向する端部上にガス入口14及びガス出口16を含む。
【0391】
ハウジング12のガス入口14とガス出口16との間の部分は、第1、第2、及び/又は第3の物質を保持できる3つの区画に分けられている。第1、第2又は第3の物質は、ニコチンなどの医薬品を形成する蒸気を含むことができる。
【0392】
図2に示すように、ニコチン吸入器10は、第1の区画18、第2の区画20及び第3の区画22を含む。ニコチンは、好ましくは遊離塩基の形態で、3つの区画の何れかに配置することができる。例えば、ニコチンは、第2の区画20内に配置することができる。酸などの適切な送達促進化合物は、第1の区画18内に配置される。あらゆる適切な酸を使用することができる。例えば、ピルビン酸は、第1の区画18内に配置することができる。ピルビン酸は、室温にて実質的な蒸気圧を有する揮発性物質である。この点を踏まえて、第1の区画18内のあらゆる空き領域にピルビン酸蒸気、すなわち気体のピルビン酸がある程度まで充填されることになる。ニコチンの蒸気圧はピルビン酸の蒸気圧よりも低いが、ニコチンもまた揮発性物質である。同様に、第2の区画20内のあらゆる空き領域は、ある程度までニコチン蒸気が充填されることになる。
【0393】
ピルビン酸は、送達促進化合物源要素(図示せず)上で第1の区画18内に保持され、ニコチンは、ニコチン源要素(図示せず)上で第2の区画20内に保持される点を理解されたい。加えて、第3の物質は、第3の区画22内の第3の供給源要素(図示せず)上に保持することができる。更に、供給源要素の1つ又はそれ以上は、区画18、20及び22それぞれと一体化とするか、又はその一部とすることができる。
【0394】
送達促進化合物源要素は、ガスストリームが酸の蒸気と接触して第1の区画18を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。ニコチン源要素は、ガスストリームがニコチンの蒸気と接触して第2の区画20を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。第3の供給源要素は、ガスストリームが第3の物質と接触して第3の区画22を通過できるようなあらゆるサイズ及び形状とすることができる。
【0395】
送達促進化合物源要素は、酸蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら、表面上に酸を保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。ニコチン源要素は、ニコチン蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら、表面上にニコチンを保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。第3の供給源要素は、第3の物質を保持することができるあらゆる適切な材料で構成することができる。特定の実施形態において、適切な材料は、第3の物質の蒸気が周囲の区域に漏出することを可能にしながら表面上に第3の物質を保持する。
【0396】
好ましくは、適切な供給源要素材料は、表面上に設置されることになるあらゆる物質に対して不活性である。加えて、適切な材料は、上記の物質が材料の表面で吸着されるように表面上に配置されることになるあらゆる物質に関して吸着性であることが好ましい。吸収特性及び吸着特性を有する材料を利用することができるが、吸着を介して1つ又は複数の送達促進化合物、ニコチン及び/又は第3の物質を保持することができる材料が好ましい。非限定的な実施例には、好ましくは繊維網の形態で、ガラス、アルミニウム、PET、PBT、PTFE、ePTFE及びBAREX(登録商標)が含まれる。
【0397】
吸着材料は、毛管作用を介して吸着材料の表面に連続的に物質を供給するよう機能することができる。
【0398】
第3の区画22は、浄化剤を含有することができる。例えば、結果として得られる第3の区画22にガス精製能力を与えるあらゆる方法を用いて、活性炭を第3の区画22に組み込むことができる。適切な幾つかの方法が当技術分野でよく知られている。例えば、木炭は、木炭プラグ又はフィルタとして第3の区画22内に配置することができる。
【0399】
作動中、ユーザは、図3に示すようにニコチン吸入器10のガス出口16において吸煙する。吸煙作用により生成された部分真空が、ガス入口14を介してガスストリームをハウジング12に引き込む。ガスストリームは、第1の区画18に入ると、第1の区画18内に保持されたピルビン酸供給源要素の上を通過することにより酸の蒸気を捕捉する。第1の区画18から出た後に第2の区画20に入るガスストリームは、酸含有ガスストリームである。酸含有ガスストリームは、第2の区画20内でニコチン源要素により保持されたニコチンの上を通過することによりニコチン含有粒子の流れを生成する。ニコチン含有粒子の流れは、第3の区画22を通過してガス出口16から出るとユーザの口に入る。あらゆる未反応の酸は、第3の区画22内の活性炭フィルタを介してニコチン含有粒子のストリームから除去される。ピルビン酸は第1の区画18内の第1の要素上に保持することができ、及び/又はニコチンは第2の区画20内の第2の要素上に保持することができることを認識されたい。加えて、浄化剤又は香味剤などの第3の物質は、第3の区画22内の第3の要素上に保持することができる。更に、第1、第2又は第3の要素は、それぞれ、区画18、20及び22と一体化とするか、又はその一部とすることができる。
【0400】
例示的な装置2
【0401】
この例示的な装置を図4〜図6を参照して図示し説明する。図4では、この装置の要素が組立フローチャートで示されている。送達促進化合物源30及びニコチン源40は、一般的に端部上にヒートシールされた脆弱な障壁エンドキャップ35及び45を有する独立構成部品として任意選択的に製造及び貯蔵される。これらの2つの要素30及び40は、第1のハウジング50に挿入される。送達促進化合物源30及びニコチン源40を含有する第1ハウジング50は、次いで、第2のハウジング100に挿入される。ハウジング50及び100並びに要素30及び40は、一般的に押出成形プラスチック管である。また、第2のハウジング100には発熱体95も挿入される。発熱体95は、一般的に、ハウジング50を巻回し、所望の温度(例えば40°C)まで送達促進化合物源30及び/又はニコチン源40を加熱することを可能にするのに十分にハウジング50に接触するように構成されている薄い可撓性加熱フォイルである。発熱体95はまた、加熱フォイル要素95に電力を供給するためにバッテリ130にも接触するように適合されている。
【0402】
フィルタエレメント80は、第2のハウジング100を摺動可能に挿入してスナップロックするように適合されている。フィルタエレメント80は、フィルタ70を収容するように適合されたフィルタキャビティ75を含む。フィルタ70は、一般的に、活性炭フィルタであり、シガレットで一般的に使用されている香味剤などの追加の揮発化合物を含有することができる。フィルタエレメント80は、組付け後の使用前の構成160を封止するフォイルシール150を有することができる。
【0403】
フィルタエレメント80は、第2のハウジング100のアパーチャ110と位置合わせされるアパーチャ90を有する。組み付けられると、空気入口140が形成される。フィルタエレメント80及び第2のハウジング100は、所望の空気入口140のアパーチャ寸法を選択するために摺動可能な回転を許容するように構成されている。空気入口140は、フィルタエレメント80が参照符号170で示されるように第2のハウジング100に完全に挿入されたときに形成される。また、フィルタエレメント80の完全な挿入により、脆弱な障壁35及び45を通る貫通要素60を押し込んでこれらの要素を封止解除し、空気入口140から粒子送達量アパーチャ180まで遮るものがない空気流路が得られるようにする。
【0404】
図5は、送達促進化合物源30及びニコチン源40の様々な代替構造を示す。この構成における送達促進化合物は、一般的に、焼結プラグ310、PE芯320、繊維束330、多孔管340又は350、織り又は不織PET、PBT又はPETG織物材料360、PET静的ミキサ370、又は不織材料380で巻かれた螺旋状経路上への吸着により保持することができる揮発性酸である。
【0405】
図6は、この装置の一部の実施形態を示しており、装置は再使用可能な部分210及び使い捨て部分200を含む。図1を参照すると、使い捨て部分200は、送達促進化合物源30及びニコチン源40(第1のハウジング50)及びフィルタエレメント80を含む。再使用可能な部分210は、第2のハウジング100、発熱体95及びバッテリ130を含む。
【0406】
例示的な装置3
【0407】
完全に再使用可能な例示的な装置が図7に示されている。2つの代替構成が図示されており、部分410及び420又は430及び440は可逆的に取り付け可能である。例えば、各部分は、反復スナップロック及び除去の繰返しを可能にするように適合され且つそのような寸法にされた押出成形プラスチックとすることができる。取り外し可能部分420又は440は、送達促進化合物源445及びニコチン源435と連通するためのアパーチャ430及び440を含む。部分420又は440は、アパーチャ460を介して再充填要素450に摺動可能に挿入する。要素470は、送達促進化合物源445及びニコチン源435を再充填するときにリザーバを密封するシールOリングである。充填アパーチャ480及び490は、部分420が再充填要素450内に着座すると送達促進化合物源445及びニコチン源435と連通するように構成されている。一部の実施形態において、重力により、それぞれ送達促進化合物リザーバ500及びニコチンリザーバ510から送達促進化合物源445及びニコチン源435への流れが推進される。一部の実施形態において、リザーバから供給源への流れは、一部には、供給源要素によるリザーバ液体の吸い上げによるものである。例えば、送達促進化合物源445及びニコチン源435は、供給源445及び435の急速な吸い上げ及び再充填をもたらすためにPETを含有する供給源要素を含むことができる。
【0408】
例示的な装置4
【0409】
別の例示的な装置が図8及び図9で示されている。この例示的な装置は、再充填可能であり、典型的なシガレットパックを模擬するように構成されている。図8を参照すると、送達装置600は、貯蔵アパーチャ620及び再充填アパーチャ630を介して再充填ユニット610に挿入されるように構成されている。再充填要素640上で再充填ユニット610に完全に着座されると、装置600は、送達促進化合物及び/又はニコチンが再充填される。
【0410】
図9は、再充填要素640を詳細に示している。図9Aでは、充填アパーチャ660及び670を有する注入要素650は、定量アクチュエータポンプ680及び690及び管体700及び710を介してリザーバ720及び730と流れ連通している。図9Bでは、送達量装置600は、再充填ユニット640内に着座して示されている。注入要素650が送達量装置の基部にある再充填アパーチャを通過して上記の装置に入り、アパーチャ660及び670がニコチン源要素740及び送達促進化合物源要素750と連通するようになる。図9Cでは、送達量装置600は、更に再充填ユニット640に挿入され、ポンプ680及び690を作動させて、それぞれアパーチャ660及び670を介して、及びそれぞれニコチン源要素740及び送達促進化合物源要素750内に計量用量のニコチン770及び計量用量の送達促進化合物760を送達するようにする。
【0411】
例示的な装置5
【0412】
この例示的な装置は、図10で示されている。この装置構成は、送達量装置800の外部にある発熱体850を有する。発熱体850に送達装置800が挿入されると、電気接点840がリード線825と接触し、リード線825は、バッテリ830がフォイル発熱体860を加熱して、送達促進化合物源870及びニコチン源880の温度を例えば40±5℃に制御することが可能になる。代替構成では、図4に示すように加熱フォイル860が送達量装置800内に配置される。
【0413】
例示的な装置6
【0414】
前出の例示的な装置は、一般的にシガレット及びシガレットパックを模擬するように構成されている。本明細書の方法と共に使用するのに好適な送達装置は、様々な手法で容易に構成される。1つの実施例が図11に示されている。この例示的な装置は、吸入医薬品の製薬送達に一般的に使用される定量吸入器を模擬している。送達装置900は、第1のハウジング及び第2のハウジングを含む。第2のハウジング920は、バッテリ990の充電又は交換のため摺動可能に出(図11A)入り(図11B)する。この所定位置により、電気接点1050及び1060が連通し、これによりバッテリ990がフォイル発熱体950を加熱し、送達促進化合物源960及びニコチン源970の温度を制御できるようにする。吸気アクチュエータ930は、図11A〜11Bの位置からどこかに摺動するように構成されている。加熱フォイル要素950用の電源は、吸気アクチュエータ930又は別個のスイッチング手段(図示せず)を使用して任意選択的にオン又はオフにすることができる。次いで、吸気アパーチャ940は、選択した程度まで開放され、これにより吸入当たりの空気容積及びその結果としてニコチン量を制御することができる。この特徴は、図1の調整可能な吸気アパーチャ140と類似のものである。作動時には、空気は、吸気アパーチャ940を介してチャンバ1000に引き込まれ、導管1010を通り、送達促進化合物源要素960を通って、ここで送達促進化合物が空気流において捕捉される。例えば、ピルビン酸の蒸気は、そこで吸着された液体ピルビン酸を有するPET供給源要素から発散することができる。この蒸気は、空気流により導管1020を通ってニコチン源970内に移動する。ここで、送達促進化合物は、送達促進化合物がない場合に空気流の同じ容積内に含有されることになるニコチン蒸気の量に対して空気流中のニコチンの濃度を増大させる。ピルビン酸の場合、ピルビン酸ニコチン塩微粒子を形成し、被験者へのニコチンの送達を促進することができる。送達は更に、発熱体950によって例えばピルビン酸及びニコチンの温度を高め、これらの化合物の蒸気圧を増大させることにより促進することができる。ここで、ニコチンを含有する空気流は、導管1030を通過して、活性炭フィルタ980を通って吸入アパーチャ1040から出る。
【0415】
図11C及びDは、例示的な吸入器装置900の1つの実施形態を示しており、ここで装置の一部は、使い捨てハウジング1050において送達促進化合物源960及びニコチン源970を有し、該使い捨てハウジング1050は、再使用可能なハウジング1060の内外に摺動して、装置900と機能的に同じ装置を形成するよう構成されている。バッテリハウジング要素1070は、使い捨て要素1050から取り外し可能であり、従って部分1060及び交換要素1050と共に再使用可能である。
【0416】
例示的な装置7
【0417】
図12A〜12Cは、吸入装置の別の構成を示している。この構成において、送達促進化合物源及びニコチン源は、分割内側管体1100の下部及び上部表面区域である。使用構成12Aにおいて、不透過性カバー1110が、ニコチンリザーバ1120及び送達促進化合物リザーバ1130を覆って所定位置にある。不透過性カバー1110は、リザーバからの蒸発損失を低減し、且つリザーバを分割内側管体1100から物理的に分離する。使用時には、摺動可能底部ハウジング1180は、第1の受けバネ1140が12Bに示す位置でロックされるまで主ハウジング1190に押し込められる。これにより、リザーバ1120及び1130が、分割内側管体1100の近傍に平行に配置される。図9Cに示すように、底部ハウジング1180は更に、第2の受けバネ1150が図12Cに示す位置でロックされるまで主ハウジング1190内に挿入される。この第3の位置では、圧力要素1160は、分割内側管体1100を圧搾し、壁部1170を強制的にリザーバ1120及び1130と接触させるようにする。この作用により、ニコチン及び送達促進化合物(例えばピルビン酸)が壁部1170の内面上に押し付けられ、ニコチン源及び送達促進化合物源としてこの表面を再充填するようになる。
【0418】
例示的な装置8
【0419】
図13は、図12の装置の変形を示している。この変形形態では、底部ハウジング1250は、円錐バネ1230に当接して押圧され、リザーバカバー1200を通ってニコチンリザーバ1210及び送達促進化合物リザーバ1220を円錐内側管体1240の内側表面と接触させるようにし、これにより、この表面がニコチン及び送達促進化合物(図13B)でコーティングされることになる。
【0420】
例示的な装置9
【0421】
図14は、図12の装置の別の変形を示す。この変形形態では、外側ハウジング1300は、スイッチ1310及び図示の様々な内部要素である移動構成部品と隣接している。スイッチ1310は、接続バー1320により供給源着座要素1330に接続されている。スイッチ1310を上に移動させると、剛性の着座要素1330がポール1360に沿って移動する。充填位置において、リザーバ要素1340及び1350は、変形可能要素1370と接触状態にされ、該変形可能要素はまた剛性着座要素1330とも接触状態にされる。剛性着座要素1330は、変形可能な要素1370を圧搾して摺動運動(図14B)の最終部分でリザーバ要素1340及び1350と接触するような寸法にされる。この動作により、変形可能要素1370の上部が、例えばリザーバ1350からのニコチン塩基溶液でコーティングされ、変形可能な要素1370の下部が、リザーバ1340からのピルビン酸でコーティングされ、それぞれ、ニコチン源及び送達促進化合物源を生成する。リザーバ1350の頂面は、作動位置(図14A)にあるときにリザーバからの医薬品及び送達促進化合物の揮発量を制限するために、不透過性材料により覆うことができる。可撓性の不透過性材料からなる円形フラップが要素1320又は1330から延びて、リザーバ1350の下方の容積を閉鎖し、更に揮発を制限することができる。充填位置(図14B)では、フラップは、変形可能要素1370により下方に力が加えられ、リザーバから離される。
【0422】
例示的な装置10
【0423】
図15は、別の送達装置構成を示している。図15Aは、使用モードの装置1400を示す。空気は、吸気口1410から送達促進化合物源1500、ニコチン源1490を通過し、出口1415を通って出る。ニコチン及び送達促進化合物は、それぞれの供給源の側壁上にコーティングされる。供給源を再充填するために、送達促進化合物リザーバ1430及びニコチンリザーバ1420が設けられている。スイッチ1460をユーザの親指で作動させて、供給源を再充電することができる。スイッチ1460により起動されると、ベース1510が、ガイドロッド1470に沿って送達促進化合物源1500及びニコチン源1490に向かって移動する。図15Bに示すように、送達促進化合物源1500、ニコチン源1490及び上部停止要素1480と接触すると、不透過性キャップ1440及び1450は、リザーバを圧縮し、送達促進化合物及びニコチンを供給源1490及び1500の表面上に押し出す。この装置内のリザーバは、ニコチン又は送達促進溶液を保持できるあらゆる変形可能な吸着又は吸収性材料で作ることができる。リザーバは、一般的には、供給源に再充填した後に自動的にガイドポール1470の下方に後退し、その結果、当該装置が好都合に操作される「1クリック」装置となる。リザーバの動きは、あらゆる好都合な手段により達成することができる。例えば、移動ワイヤ1520をガイドポール1470上の溝内に設けることができる。移動ワイヤ1520は、ベース1510に取り付けて、モータ回転要素(図示せず)によりガイドポール1470を上下に移動させることができる。この装置構成の幾つかの変形形態において、装置1400の頂部外側部分は、図4に示す要素140と類似した入口1410のサイズを定めるように回転することができる。
【0424】
(産業上の利用可能性)
【0425】
本明細書の方法及び装置は、禁煙、害の低減、及び/又は置換のためのニコチンの治療上の送達に有用である。更に、本明細書の装置及び方法は、タバコベースの製品の代わりの汎用代替ニコチン送達システムとして有用である。本明細書の方法及び装置は更に、本明細書で説明されるような他の医薬品の送達にも有用である。
【0426】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、特許請求項の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び修正を本明細書で行うことができることを理解されたい。更に、本発明の範囲は。本明細書で説明する工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図したものではない。当業者が本発明の本開示から容易に認識するように、本明細書で説明した対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、又は実質的に同じ結果を達成する現在存在するか又は将来開発される工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法又はステップは、本発明に従って利用することができる。従って、添付の特許請求の範囲は、当該工程、機械、製造、物質の組成、手段、方法又はステップをこれらの範囲に含むことを意図している。
【0427】
本明細書に引用され、又は他の方法で特定された全ての参考文献及び他の情報は、各々が別々に組み込まれたように、その全体が引用により本明細書に組み入れられる。2007年3月30日に出願された米国特許仮出願第60/909,302号、2009年3月17日に出願された米国特許仮出願第61/160,904号、及び2008年3月25日に出願されたPCT/US08/58122もまた、引用により本明細書に全体が組み入れられる。
【符号の説明】
【0428】
1400 送達装置
1410 吸気口
1415 出口
1420 ニコチンリザーバ
1430 送達促進化合物リザーバ
1440 不透過性キャップ
1460 スイッチ
1470 ガイドポール
1490 ニコチン源
1500 送達促進化合物源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者にニコチンを送達するための装置であって、
ハウジング
を備え、
前記ハウジングが、
a)互いに連通した入口及び出口を含み、ガス状担体が、前記入口を通って前記ハウジングに入り、該ハウジングを通り、前記出口を通って前記ハウジングから出ることができるように適合されており、前記装置が直列で入口から出口までを含み、
前記ハウジングが更に、
b)前記入口と連通し、送達促進化合物源を含む第1の内部区域と、
c)前記第1の内部区域と連通し、ニコチン源を含む第2の内部区域と、
を含み、
i)前記ニコチン源が、前記ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含み、
前記ハウジングが更に、
d)任意選択的に、前記第2の内部区域及び前記出口と連通している第3の内部区域を含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電解質形成化合物が、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、酸化アルカリ土類金属、又は塩である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電解質形成化合物が、〔0376〕の表11に記載された化合物及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ニコチンが、ニコチン塩基と、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩と、これらの組み合わせとから選択される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項6】
ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物がKOHを含む、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記水溶液のpHが、9.0に等しいか又はこれを上回る、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項8】
KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率が、10:40〜10:100である、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
吸入により被験者にニコチンを送達する方法であって、
a)第1に、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップと、
b)第2に、被験者に前記ニコチンを含む前記ガス状担体を供給するステップと、
を含み、
i)前記ニコチン源が、前記ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記電解質形成化合物が、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、酸化アルカリ土類金属、又は塩である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電解質形成化合物が、〔0376〕の表11に記載された化合物及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ニコチンが、ニコチン塩基と、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩と、これらの組み合わせとから選択される、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物がKOHを含む、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液のpHが、9.0に等しいか又はこれを上回る、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項16】
KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率が、10:40〜10:100である、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項1】
被験者にニコチンを送達するための装置であって、
ハウジング
を備え、
前記ハウジングが、
a)互いに連通した入口及び出口を含み、ガス状担体が、前記入口を通って前記ハウジングに入り、該ハウジングを通り、前記出口を通って前記ハウジングから出ることができるように適合されており、前記装置が直列で入口から出口までを含み、
前記ハウジングが更に、
b)前記入口と連通し、送達促進化合物源を含む第1の内部区域と、
c)前記第1の内部区域と連通し、ニコチン源を含む第2の内部区域と、
を含み、
i)前記ニコチン源が、前記ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含み、
前記ハウジングが更に、
d)任意選択的に、前記第2の内部区域及び前記出口と連通している第3の内部区域を含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電解質形成化合物が、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、酸化アルカリ土類金属、又は塩である、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電解質形成化合物が、〔0376〕の表11に記載された化合物及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ニコチンが、ニコチン塩基と、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩と、これらの組み合わせとから選択される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項6】
ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物がKOHを含む、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項7】
前記水溶液のpHが、9.0に等しいか又はこれを上回る、ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の装置。
【請求項8】
KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率が、10:40〜10:100である、ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
吸入により被験者にニコチンを送達する方法であって、
a)第1に、送達促進化合物を含むガス状担体をニコチン源と連通させて配置するステップと、
b)第2に、被験者に前記ニコチンを含む前記ガス状担体を供給するステップと、
を含み、
i)前記ニコチン源が、前記ニコチンと電解質形成化合物とを共に水溶液中に含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記電解質形成化合物が、アルカリ金属水酸化物又は酸化物、酸化アルカリ土類金属、又は塩である、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電解質形成化合物が、〔0376〕の表11に記載された化合物及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ニコチンが、ニコチン塩基と、ニコチン−HCl、酒石酸ニコチン又はニコチン−二酒石酸塩などのニコチン塩と、これらの組み合わせとから選択される、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項13】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物が、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化カリウム(KOH)、及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記ニコチンが、ニコチン塩基、酒石酸ニコチン、及びこれらの組み合わせから選択され、前記電解質形成化合物がKOHを含む、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項15】
前記水溶液のpHが、9.0に等しいか又はこれを上回る、ことを特徴とする請求項9〜11の何れかに記載の方法。
【請求項16】
KOH:ニコチン塩基(又は塩基等価物)の比率が、10:40〜10:100である、ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【公表番号】特表2013−505240(P2013−505240A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529786(P2012−529786)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047271
【国際公開番号】WO2011/034723
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(596060424)フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム (222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2010/047271
【国際公開番号】WO2011/034723
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(596060424)フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム (222)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]