説明

半導体インプリント用テンプレート

【課題】隣接するフィールドへのレジストの浸み出しを防止し、ショット間の隙間を小さくし、インプリント装置に複雑な吸引機構を必要としないテンプレートを提供する。
【解決手段】凹凸パターンを形成したテンプレートを、光硬化性材料に押し付けると共に、前記光硬化性材料を光硬化させて前記凹凸パターンを転写するインプリント用テンプレートであって、インプリントに際して、前記光硬化性材料が毛細管力によって前記テンプレートのフィールドエッジに沿って均一に濡れ広がるのを補助し、かつ余分な前記光硬化性材料を吸収するための補助パターンが設けられており、前記補助パターンが、前記フィールドエッジの周辺に、前記フィールドエッジに平行に設けられているセグメント化された複数の凹部からなるラインパターンであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンを形成するインプリント法に用いるテンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に半導体デバイスにおいては、微細化の一層の進展により高速動作、低消費電力動作が求められ、また、システムLSIという名で呼ばれる機能の統合化などの高い技術が求められている。このような中、半導体デバイスのパターンを作製する要となるリソグラフィ技術は、デバイスパターンの微細化が進むにつれ露光波長の問題などからフォトリソ方式の限界が指摘され、また、露光装置などが極めて高価になってきている。
【0003】
その対案として、近年、微細凹凸パターンを用いたナノインプリントリソグラフィ(NIL)法が注目を集めている。1995年Princeton大学のChouらによって提案されたインプリント法は、装置価格や使用材料などが安価でありながら、10nm程度の高解像度を有する微細パターンを形成できる技術として期待されている(特許文献1参照)。
【0004】
インプリント法は、予め表面にナノメートルサイズの凹凸パターンを形成したテンプレートを、被加工基板表面に塗布形成された樹脂などの転写材料に押し付けて力学的に変形させて凹凸パターンを精密に転写し、パターン形成されたインプリント材料をレジストマスクとして被加工基板を加工する技術である。一度テンプレートを作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため高いスループットが得られて経済的であるとともに、有害な廃棄物が少ないナノ加工技術であるため、近年、半導体デバイスに限らず、さまざまな分野への応用が進められている。
【0005】
このようなインプリント法には、熱可塑性樹脂を用いて熱により凹凸パターンを転写する熱インプリント法や、光硬化性材料を用いて紫外線により凹凸パターンを転写する光インプリント法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。転写材料としては、熱インプリント法では熱可塑性樹脂、光インプリント法では光硬化性樹脂などの光硬化性材料(本発明では、レジストとも言う)が用いられる。光インプリント法は、室温で低い印加圧力でパターン転写でき、熱インプリント法のような加熱・冷却サイクルが不要でテンプレートや樹脂の熱による寸法変化が生じないために、解像性、アライメント精度、生産性などの点で優れていると言われている。
【0006】
インプリント法で用いられるテンプレートには、パターン寸法の安定性、耐薬品性、加工特性などが求められる。インプリント法においては、テンプレートのパターン形状を忠実に樹脂などの転写材料に転写しなければならないので、光インプリント法の場合を例に取ると、一般的には光硬化に用いる紫外線を透過する石英ガラスがテンプレートに用いられている。
【0007】
インプリント法における転写材料の塗布方法には、スピンコート方式やインクジェット方式などが用いられる。スピンコート方式はレジスト塗布面全面が均一膜厚となる塗布方法である。しかし、インプリント法では、塗布するレジストの必要量を転写すべきパターン密度に応じて変化させる必要が生じるため、インクジェット方式を用いてパターン領域ごとに必要な量の転写材料を塗布する方法が用いられる場合が多い。図面を用いて説明する。
【0008】
図3は、光インプリント法におけるテンプレートの1フィールド31に、例えばパターン密度の異なる2つのパターンA32とパターンB33が存在する場合を示す平面模式図である。1フィールドはインプリントする際の1ショットサイズに相当する。パターンAのパターン密度比が50%、パターンBのパターン密度比が30%であるとすると、このテンプレートを被加工基板上の塗布膜厚が均一なレジストに押し付けてパターン形成したとき、被加工基板上のレジストパターンの断面模式図は図4のようになる。図4(a)はパターンA、図4(b)はパターンBによる転写レジスト像である。
【0009】
図4(a)、図4(b)に示すように、レジストパターン41の膜厚T1とレジストパターン43の膜厚T2は同じである(T1=T2)。しかし、レジスト塗布膜厚が均一で同じであると、パターンAとパターンBとではテンプレートの凹部を充填するレジスト量が異なるので、インプリント後のパターンAの残膜42の膜厚t1とパターンBの残膜44の膜厚t2は異なり、パターン密度比が小さいパターンBの残膜の方が厚くなる(t1<t2)。残膜は後のドライエッチング工程で除去されるが、残膜厚に膜厚差があるとエッチングが不均一となってパターン寸法にばらつきを生じ、目的とするレジストパターンを形成することができなくなる。そのために、インプリント法においては、フィールド内を所定の領域毎に分けて塗布量を制御してレジスト塗布することが可能なインクジェット方式がよく用いられている。
【0010】
インクジェット方式は、液滴状のインプリント用レジストを被加工基板上に塗布するが、通常、1滴の滴下量は1ピコリットル〜10ピコリットルの範囲である。インクジェット方式を用いる場合、パターンサイズとそこから導きだされるレジスト高さやパターン部以外に形成される残膜の膜厚の許容値などから計算される必要レジスト量と、現行のインクジェット技術で現実的である1滴の滴下量を考慮すると、インクジェットによる滴下の間隔は100μm前後になる。さらに、インプリントするパターン密度なども考慮し、被加工基板と対向するテンプレートの表面に形成された所定のパターン(以下、インプリント用パターンという。)の内部にインプリント用レジストが行き渡るように、被加工基板上のレジスト塗布量が制御される。
【0011】
一方、半導体用インプリントではステップアンドリピート方式によるインプリントが前提であり、ショット間に隙間があると1枚のウェハ上に形成できるチップ数が減少するので、ショット間の隙間領域を小さくし、望ましくはショット間の隙間はゼロとすることが求められている。フィールドの端部(フィールドエッジと称する)でのレジストの挙動を見ると、フィールドエッジでは毛細管力が消失することやインクジェット方式で使用されるレジストが揮発し易いことから、フィールドエッジに沿ったレジストが形成されることが期待される。
【0012】
しかしながら、インクジェット方式ではレジスト滴下に近い場所では過剰なレジストが供給されることから、フィールドエッジからレジストが浸み出すことが知られている。図5は、その説明図である。図5に示すように、フィールドエッジ54から離れた位置に滴下されたレジスト55aは、滴下後、その周辺に均一に広がった展開状態55となるが、フィールド51内にとどまっている。一方、フィールドエッジ54に近い位置に滴下したレジスト56aは、滴下後、その周辺に均一に広がった展開状態56となるが、フィールドエッジ54から浸み出してしまう。浸み出したレジストは隣接する次のフィールドのショットのときに、レジストが重なることになり、レジストパターン形成に支障をきたすという問題があった。
【0013】
そこで、テンプレートに、転写パターンとは別に余剰なインプリント材料(レジスト)を吸収するためのダミー溝を形成し、近隣チップへの余剰レジストの漏出を防ぐテンプレートが提案されている(特許文献3参照)。また、テンプレートの所定の領域に貫通溝を設けて、貫通溝から余剰のレジスト材料を吸引するパターン転写方法が開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特表2004−504718号公報
【特許文献2】特開2002−93748号公報
【特許文献3】特開2008−91782号公報
【特許文献4】特開2011−23660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献3に記載のテンプレートを用いても、ダミー溝の形成領域はダイシング領域などに限定されており、この限定された領域だけで余剰なレジストを全て吸収するという効果はあまり期待できなかった。また、特許文献3に記載されるような単なる液溜めを設けたテンプレートでは、余剰レジストの量や広がる方向性を正確に制御することが難しいため、塗布量にばらつきが生じた場合には、フィールドエッジからレジストが浸み出してパターンの加工などに支障をきたし、歩留まりの低下を招くという問題があった。
【0016】
また、特許文献4に記載の方法は、厚い石英基板などに微細な貫通溝を形成してテンプレートとするのが困難であり、貫通溝ゆえテンプレートの機械的強度低下による破損のおそれも生じ、さらにインプリント装置に余剰レジストの吸引機構を備えなければならないという問題があった。
【0017】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、隣接するフィールドへのレジストの浸み出しを防止し、ショット間の隙間を小さくし、インプリント装置に複雑な吸引機構を必要としないインプリント用テンプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明に係るインプリント用テンプレートは、光透過性基材の一主面に凹凸パターンを形成したテンプレートを、被加工基板上の光硬化性材料に押し付けると共に、前記テンプレートを介して前記光硬化性材料を感光させる光を照射することによって、前記光硬化性材料を光硬化させて前記凹凸パターンを転写するインプリント用テンプレートであって、インプリントに際して、前記光硬化性材料が毛細管力によって前記テンプレートのフィールドエッジに沿って均一に濡れ広がるのを補助し、かつ余分な前記光硬化性材料を吸収するための補助パターンが設けられており、前記補助パターンが、前記フィールドエッジの周辺に、前記フィールドエッジに平行に設けられているセグメント化された複数の凹部からなるラインパターンであることを特徴とするものである。フィールドエッジに沿ってセグメント化した複数の凹部からなるラインパターンを形成することにより、毛細管力を利用してレジストが凹部からなるラインに沿って広がり、フィールドエッジでの余分なレジストの浸み出しを抑えることができる。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明に係るインプリント用テンプレートは、請求項1に記載のインプリント用テンプレートにおいて、前記光硬化性材料が、インクジェット方式で塗布形成されたことを特徴とするものである。本発明のテンプレートをインクジェット方式の塗布方式と組み合わせた場合、フィールド内を所定の領域毎に分けて塗布量を制御してレジスト塗布するインクジェット方式の利点を生かして、レジスト残膜厚が均一でフィールドエッジからのレジストの浸み出しがないレジストパターンの形成が可能となる。
【0020】
本発明の請求項3に記載の発明に係るインプリント用テンプレートは、請求項1または請求項2に記載のインプリント用テンプレートにおいて、前記ラインパターンが、パターン幅500nm以下であることを特徴とするものである。凹部からなるラインパターン幅を500nm以下とすることにより、毛細管力を利用して、ラインパターンに沿ってレジストを広がらせることができ、フィールドエッジからのレジストの浸み出しを抑制することができる。パターン幅が500nmを超えると、レジストは不定形で広がりフィールドエッジから浸み出してくるからである。
【0021】
本発明の請求項4に記載の発明に係るインプリント用テンプレートは、請求項1から請求項3までのうちのいずれか1項に記載のインプリント用テンプレートにおいて、前記補助パターンが、前記フィールドのスクライブ領域でない前記フィールドエッジの周辺に設けられていることを特徴とするものである。本発明の補助パターンはセグメント化されたラインパターンであるので、主パターンの寸法、形状およびパターン密度に応じて、補助パターンをスクライブ領域でない転写パターン領域に設けることも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のインプリント用テンプレートによれば、フィールドエッジに沿ってセグメント化した複数の凹部からなるラインパターンを形成することにより、フィールドエッジでの余分なレジストの浸み出しを抑えることにより、良好なフィールドエッジ形成が可能となり、また、フィールドエッジ形成のために要していた時間を低減させ、スループット改善にも寄与する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のインプリント用テンプレートの実施形態の一例を示す平面模式図および断面模式図である。
【図2】本発明の補助パターンが設けられテンプレートと、インクジェット方式で塗布したレジスト液滴への作用効果を説明する模式図である。
【図3】テンプレートの1フィールドに、パターン密度の異なる2つのパターンAとパターンBが存在する場合を示す平面模式図である。
【図4】図3に示すテンプレートを被加工基板上のインプリント用レジストに押し付けてパターン形成したときのレジストパターンの部分断面模式図である。
【図5】フィールドエッジ周辺におけるインクジェット方式で塗布したレジスト液滴の挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るインプリント用テンプレートについて詳細に説明する。
【0025】
本発明では、テンプレートのフィールドエッジでのレジストのエッジに沿う方向への拡散を促すとともに、レジストがエッジから浸み出ししないように補助パターンを設けることで、良好なフィールドエッジを形成することができるテンプレートを提供する。
【0026】
図1は、本発明のインプリント用テンプレートの実施形態の一例を示す平面模式図(図1(a))、および図1(a)のA−A線における断面模式図(図1(b))である。図1において、テンプレート10は光透過性基材11の一主面に転写すべき凹凸パターン(主パターンと称する)12が形成されており、インプリントに際して、被加工基板上の光硬化性材料が毛細管力によってテンプレート10のフィールドエッジ14に沿って均一に濡れ広がるのを補助し、かつ余分な光硬化性材料を吸収して溜めるための補助パターン13が設けられている。補助パターン13は、セグメント化された複数の凹部からなるラインパターンであり、フィールドエッジ14の周辺にフィールドエッジ14に平行に設けられている。図面ではアライメントマークなどは省略してある。図1に示す実施形態の例では、テンプレート10がインプリントで転写される1フィールドとなり、1ショットでインプリントされる。
【0027】
図2は、本発明のセグメント化された複数の凹部状のラインパターンからなる補助パターン13を、フィールドエッジ14の周辺に設けたテンプレート10の作用効果を説明する模式図である。図2は被加工基板側から見たインプリント時の平面模式図であり、図面ではインクジェット方式により被加工基板上に塗布したレジスト15の液滴は示してあるが、被加工基板は省略して図示している。また、図1と同じ箇所を示す場合には同じ符号を用いている。
【0028】
図2に示すように、フィールドエッジ14の周辺に、フィールドエッジ14に沿う方向に複数のセグメント化した凹部からなるラインパターンを補助パターン13として設ける。こうすることでインクジェット方式により被加工基板上に塗布したレジスト15の液滴が広がるに際して、フィールドエッジ14方向(太矢印方向)に対しては、補助パターン(ラインパターン)13の長手方向(細矢印方向)に沿った方向に発生する表面張力に起因する毛細管力で、レジスト15はフィールドエッジ14に沿った方向に拡散するとともに、余分な量のレジスト15が補助パターン13に吸収され、フィールドエッジ14からのレジスト15の浸み出しが抑制される。
【0029】
レジストを吸収する凹部のスペースは広いほうが望ましいが、凹部からなる補助パターン(ラインパターン)13幅が広すぎると毛細管力を発生させずにレジストを拡散させないだけでなく、パターン内部で均一なレジスト形成が行われず、逆に異物や充填不良などの欠陥の原因となる。したがって、本発明において補助パターン(ラインパターン)13のパターン幅は、毛細管力が有効に作用し、フィールドエッジ14からのレジスト15の浸み出しを抑制する500nm以下とするのが好ましい。補助パターン(ラインパターン)13のパターン幅が500nmを超えると、毛細管力の作用は低減もしくは消滅し、レジスト15は不定形に広がり、フィールドエッジ14から浸み出してくる恐れが生じる。
【0030】
本発明において、補助パターンとして複数の切片状のセグメント化した凹部からなるラインパターンを用いるのは、単なる長い通常のラインパターンなどに比べて、セグメントパターンは種々の転写パターンのパターン密度に対して毛細管力が効果的なセグメント寸法を適用できるからである。セグメント化した凹部からなるラインパターンは、上記のように、幅0.5μm以下で、長さは、例えば、1μm〜数100μmの範囲で用いるのが好ましい。セグメントパターンは、フィールドエッジの周辺にフィールドエッジに平行に1列あるいは複数列を設けて用いられる。そのパターンピッチは、主パターンの寸法、形状やパターン密度に応じて任意に適切な値を設定できる。
【0031】
本発明におけるテンプレートのセグメント化した凹部からなるラインパターンは、レジストの塗布状態の調整機構となるパターンであり、場合によっては全てのパターンがレジストで充填されきらずに、一部が完全に充填され一部は完全に充填されない状態が起きうる。これに対して、セグメント化されていない単なる長い通常のラインパターンの場合は、レジストで充填された部分と充填されない部分の界面は必ずパターンの掘込部(凹部)に形成され、必ずしも急峻な境界面を形成するとは限らない。その場合、毛細管現象でテンプレート凹部の掘り込み壁面にレジストが濡れ広がりやすく、レジストに凹形形状を作りだす。こうした凹形の不安定な形状はインプリント加工中に破壊されやすくパーティクルの原因となり、転写レジストパターンの欠陥を増加させたり、テンプレートを汚染したりする。一方で、本発明に示すように、パターンをセグメント化した場合には、まずパターンを充填させる方にレジストが消費されるため、そうした不安定な凹形形状のレジスト境界面を形成することがない。そのためパーティクルの発生が抑制され、転写レジストパターンの欠陥が増えることがなく、テンプレートの汚染が生じにくいという利点を有する。
【0032】
補助パターンを設ける領域は、主パターンに影響を与えないスクライブ領域が好ましい。しかし、本発明の補助パターンのセグメント化されたラインパターンという特長を生かして、主パターンの寸法、形状およびパターン密度に応じて、補助パターンをスクライブ領域でないフィールドエッジの周辺に設けることも可能である。転写すべきパターン形状が複雑になるほど、セグメント化された凹部からなるラインパターンを補助パターンとして用いる本発明は、転写レジストパターンの均一化に効果的である。
【0033】
本発明において、光透過性基材11を構成する材料としては、光学研磨された合成石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウムなどが挙げられるが、合成石英ガラスは、フォトマスク用基板としての使用実績が高く品質が安定しており、凹凸パターンを設けることにより一体化した光透過性の構造とすることができ、高精度の微細な凹凸パターンを形成できるので、より好ましい。
【0034】
本発明において、光透過性基材11の一主面を掘り込んで形成した凹凸パターン(主パターン)の凹部の深さは、被加工基板に転写形成するレジストパターンの所望するパターン厚さに依存するが、例えば、凹凸パターンの凹部の深さが40nm〜100nmの範囲で用いられる。本発明において、補助パターンの凹部と主パターンの凹部とを同時に形成する場合には、両者は同じ深さとなるので、主パターンの凹部と補助パターンの凹部は同じ深さに設定するのが、パターン作製が容易となり好ましい。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
石英ガラス上にスパッタリング法により石英エッチングマスク膜としてクロム膜を10nmの厚さに成膜した。次に、クロム膜上に電子線レジストを塗布し、電子線描画し、現像して、主パターンと補助パターンのレジストパターンを形成した。
【0036】
次に、レジストパターンをマスクとして、クロム膜を塩素と酸素の混合ガス、石英ガラスをCF4ガスで順にドライエッチングした後、レジストパターンとクロム膜を剥離して、石英ガラスに主パターンとなる凹凸パターンと補助パターンとなるセグメント化された複数の凹部からなるラインパターンを形成したテンプレートを作製した。
【0037】
作製したテンプレートのパターンの凹部の深さは、主パターンおよび補助パターンともに50nmとした。主パターンは、凹部の幅40nm、ピッチ80nmの複数のラインアンドスペースパターンと、凹部の幅20nm、ピッチ40nmの複数のラインアンドスペースパターンとの2つのパターンとした。補助パターンは、スクライブ領域に、1セグメントの凹部が幅300nm、長さ10μmのラインパターンで、幅方向のピッチ0.4μm、長さ方向のギャップ0.1μmで、幅方向に3列の凹部とし、4辺のフィールドエッジの周辺に、それぞれのフィールドエッジごとにフィールドエッジに平行に設けた。
【0038】
次に、シリコンウェハ基板上にインプリント用のレジスト(光硬化性材料)をインクジェット方式でパターンごとに塗布量を変え、1フィールド分を塗布した。続いて、上記のテンプレートを用いて、ウェハ基板上のレジストに押し付けると共に、テンプレートを介してレジストを感光させる紫外光を照射して、レジストを光硬化させた後、テンプレートをレジストから剥がして、ウェハ基板上のレジストに主パターンと補助パターンを転写した。ウェハ基板上のレジストパターンはレジストのフィールドからの浸み出しは無く、フィールド内にレジスト高さ50nm、残膜厚15nmの均一な膜厚のパターンが形成された。
【0039】
続いて、上記の工程を順次繰り返して所定のフィールド数をインプリントした。本実施例のインプリント用テンプレートは、フィールドエッジでの過剰なレジストの浸み出しを抑えることにより、良好なフィールドエッジ形成が可能となり、高品質の転写レジストパターンが得られた。上記のレジストパターンをマスクとしてウェハ基板を加工し、目的とするパターンをウェハ基板に作製した。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同様にして、石英ガラスに主パターンとなる凹凸パターンと補助パターンとなるセグメント化された複数の凹部からなるラインパターンを形成したテンプレートを作製した。
【0041】
作製したテンプレートのパターンは、1フィールドの主パターンの片側のみにスクライブ領域が設けられており、反対側は隣接ショットのスクライブを共有する形で、周辺ショットの組み合わせで、4つのフィールドの外周でスクライブするように構成されている。補助パターンとしては、1フィールドの4箇所のフィールドエッジの周辺に、それぞれのフィールドエッジごとに、セグメント化された複数の凹部からなるラインパターンをフィールドエッジに平行に設けた。したがって、補助パターンは、スクライブ領域でないフィールドエッジの周辺にも設けられている。
【0042】
次に、実施例1と同様に、ウェハ基板上にインクジェット方式で塗布したレジストに、上記のテンプレートパターンを押圧し、主パターンと補助パターンを転写してレジストパターンを形成した。
【0043】
本実施例のインプリント用テンプレートは、スクライブラインとなる領域とスクライブラインとはならない領域を含め、補助パターンによりフィールドエッジでのレジストの浸み出しを抑えることにより、高品質の転写レジストパターンが得られた。このレジストパターンをマスクとしてウェハ基板を加工し、目的とするパターンをウェハ基板に作製した。
【符号の説明】
【0044】
10 テンプレート
11 光透過性基材
12 主パターン
13 補助パターン
14 フィールドエッジ
15 レジスト
31 フィールド
32 パターンA
33 パターンB
41、43 レジストパターン
42、44 残膜
54 フィールドエッジ
55 展開したレジスト
55a 滴下レジスト
56 展開したレジスト
56a 滴下レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材の一主面に凹凸パターンを形成したテンプレートを、被加工基板上の光硬化性材料に押し付けると共に、前記テンプレートを介して前記光硬化性材料を感光させる光を照射することによって、前記光硬化性材料を光硬化させて前記凹凸パターンを転写するインプリント用テンプレートであって、
インプリントに際して、前記光硬化性材料が毛細管力によって前記テンプレートのフィールドエッジに沿って均一に濡れ広がるのを補助し、かつ余分な前記光硬化性材料を吸収するための補助パターンが設けられており、
前記補助パターンが、前記フィールドエッジの周辺に、前記フィールドエッジに平行に設けられているセグメント化された複数の凹部からなるラインパターンであることを特徴とするインプリント用テンプレート。
【請求項2】
前記光硬化性材料が、インクジェット方式で塗布形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項3】
前記ラインパターンが、パターン幅500nm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインプリント用テンプレート。
【請求項4】
前記補助パターンが、前記フィールドのスクライブ領域でない前記フィールドエッジの周辺に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3までのうちのいずれか1項に記載のインプリント用テンプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−33878(P2013−33878A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169829(P2011−169829)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】