説明

半導体ウェーハの形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置

【課題】大口径ウェーハに用いることができる半導体ウェーハの端部形状を測定する方法およびそれに用いる形状測定装置を提供する。
【解決手段】発光部2aが発する光を半導体ウェーハ12の端部で反射させ、受光部2bで検出して端部との距離を測定する距離測定手段2と、距離測定手段2を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構とを備える形状測定装置を用いる形状測定方法であって、第2揺動機構の所定角度ごとにおいて、距離測定手段2の発光部2aが発する光を端部に反射させ、受光部2bで受光量を測定し、受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求め、当該角度における距離測定手段による測定距離と、第1揺動機構の当該角度および第2揺動機構の所定角度から座標変換により輪郭点を算出し、端部の輪郭形状を示す点郡データを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの端部の形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置に関し、さらに詳しくは、半導体ウェーハと測定機器が接触することによる半導体ウェーハに傷および欠陥が発生することを抑制できるとともに、大口径ウェーハに用いることができる形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スライス工程や研磨工程により半導体ウェーハの表面を加工すると、ウェーハ外周が鋭角となり、搬送装置と接触した際にウェーハの割れや欠けを誘発する。このため、ウェーハ外周の鋭角部を除去し、外周をラウンド形状や面取り形状とする面取り加工をウェーハに施す。面取り加工により成形されるウェーハ端部の形状および諸寸法は、業界団体が定める規格または客先の要求により決定され、その範囲内に仕上げる必要がある。したがって、ウェーハの製造工程では、例えば面取り加工後または仕上げ研磨加工後に、ウェーハ端部の形状を測定し、所定の範囲内となっているか確認する適否検査が行われる。
【0003】
ウェーハ端部の形状測定に関し、例えば特許文献1には、ウェーハ外周の先端部が回転中心となるようにウェーハを回転可能に支持し、形状測定器の触針をウェーハ端部に押し当てた状態で、ウェーハを外周の先端部を中心に回転させ、回転角度ごとの触針の接触位置を測定する。その後、演算手段により座標変換を行いウェーハの輪郭形状を算出することにより、ウェーハ端部の形状を測定するとしている。
【0004】
特許文献1に記載の方法では、ウェーハに触針を押し当てて測定を行うので、ウェーハに傷が発生する恐れがあるとともに、接触により粉塵が発生し、ウェーハ表面に付着することによりウェーハの欠陥を誘発する恐れがある。
【0005】
ウェーハ端部の形状測定による傷および欠陥の発生を抑制するために、ウェーハ端部に平行光を照射し、映し出される影を測定することにより、端部の形状を測定する方法が用いられる。
【0006】
図1は、従来の投影法によりウェーハ端部の形状を測定する方法を示す図である。同図に示す測定装置は、ウェーハ端部に平行光を照射する照射部16と、平行光によるウェーハ端部の影を映し出す投影部17を備えている。同図に示す測定装置を用いてウェーハ端部の形状を測定する際は、照射部16と投影部17の間にウェーハ12を配置した後、照射部16が平行光をウェーハに照射し、投影部17に影を映し出し、その影を画像処理することにより、面取り部の各種寸法を算出して測定を行う。
【0007】
投影法によるウェーハ端部の形状測定方法では、ウェーハ端部に触針等を接触させることなく、形状を測定することができるので、測定によるウェーハ端部への傷および表面への欠陥の発生を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、ウェーハが大口径になると、ウェーハを支持する際の支持点に生じる荷重やウェーハの自重が増加するので、それに伴いウェーハに生じる歪みが増加し、その結果、端部でたわみが発生する。このため、ウェーハに平行光を照射して投影部に影を映し出すと、影の輪郭がぼやけてしまう。また、平行光の照射による映し出される影も、ウェーハ面取り部の面方向広範囲の影を映し出すことになり、平行方向の形状にむらがあると、映し出される影の輪郭がぼやけてしまう。これらの事象から、画像処理により面取り部の各種寸法を正確に算出することができない。したがって、投影法による形状測定方法を大口径ウェーハ、特に直径が400mmを超えるウェーハの測定に用いることはできなかった。
【0009】
また、結晶方位の指標として、ウェーハ外周に切り欠き状のノッチを設ける場合がある。投影法による形状測定方法では、切り欠きの部分について影を映し出すことができないことから、ノッチ部の形状を測定することはできない。同様に結晶方位の指標として、ウェーハ外周にオリエンテーションフラットを設け、ウェーハ外周の一部を直線状とする場合がある。オリエンテーションフラット部のウェーハ外周は直線であるが、その加工方法に起因して、直線部におけるラウンドの半径等の面取り形状は漸次変化するので、投影法では影を得ることができず、形状を測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−208969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述の通り、従来の接触式による半導体ウェーハの端部の形状測定方法では、触針の接触によりウェーハ端部に傷および表面に欠陥が発生する問題がある。また、投影法による形状測定方法では、大口径ウェーハについて形状測定することができず、ノッチ部およびオリエンテーションフラット部についても形状測定することができない。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ウェーハと測定対象となる部位が接触することによる傷および欠陥の発生を抑制することができるとともに、大口径ウェーハの端部のみならず、ノッチ部およびオリエンテーションフラット部の形状も測定することができる半導体ウェーハの形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記問題を解決するため、発光部が発する光をウェーハ端部で反射させ、受光部で検出することによりウェーハ端部との距離を測定する距離測定手段を用いてウェーハ端部の形状を測定する方法について、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた。その結果、距離測定手段と、距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構とを備える形状測定装置を用いることにより、ウェーハ端部の形状を測定できることを知見した。
【0014】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記(1)〜(3)の半導体ウェーハの形状測定方法、および下記(4)〜(6)の半導体ウェーハの形状測定装置を要旨としている。
【0015】
(1)発光部が発する光を半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより前記半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、前記第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、前記第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構とを備える形状測定装置を用いて半導体ウェーハの端部形状を測定する方法であって、
前記半導体ウェーハの表面と前記第2揺動機構の揺動軸を平行にして、前記半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した後、前記第2揺動機構の所定角度ごとにおいて、前記距離測定手段の発光部が発する光を前記半導体ウェーハの端部に反射させ、受光部で受光量を測定し、受光量が最大となる前記第1揺動機構の角度を求め、当該角度における前記距離測定手段により測定した距離と、前記第1揺動機構の当該角度および前記第2揺動機構の所定角度から座標変換により輪郭点を算出することにより、前記半導体ウェーハの端部の輪郭形状を示す点郡データを得ることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定方法である。
【0016】
(2)上記(1)に記載の形状測定方法において、前記点郡データから求められる輪郭形状を画像解析することにより、半導体ウェーハの端部の寸法を測定するのが好ましい。
【0017】
(3)上記(1)または(2)に記載の形状測定方法において、前記所定角度を、前記第2揺動機構の測定を開始する角度から測定を終了する角度までを一定角度ごととするのが好ましい。
【0018】
(4)半導体ウェーハの端部形状を測定する装置であって、発光部が発する光を前記半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより前記半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、前記距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、前記第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、前記第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構と、前記半導体ウェーハの表面と前記第2揺動機構の揺動軸を平行にして、前記半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した状態で支持するガイドと、前記距離測定手段、前記第1揺動機構および前記第2揺動機構を動作させる制御手段と、前記距離測定手段により測定された距離および前記第1揺動機構ならびに前記第2揺動機構の角度から座標変換により輪郭点を算出する座標変換手段とを備えることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定装置。
【0019】
(5)上記(4)に記載の形状測定装置は、さらに、得られた点郡データが示す輪郭形状を画像解析することにより、半導体ウェーハの端部の寸法を演算する画像解析手段を備えるのが好ましい。
【0020】
(6)上記(4)または(5)に記載の形状測定装置において、前記ガイドは、半導体ウェーハを周方向に回転可能に支持するのが好ましい。
【0021】
本発明において、「測定領域」とは、半導体ウェーハの端部を形状測定装置により測定することができる領域を意味する。測定領域は、形状測定装置が備える距離測定手段により測定することができる距離範囲、および第1揺動機構の揺動軸と第2揺動機構の揺動軸との距離により定まる。後述する図3において、測定領域を例示する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の形状測定方法は、半導体ウェーハの端部と接触することなく距離を測定する距離測定手段を用い、測定された距離およびその時の角度から輪郭点を算出することにより、輪郭形状を示す点郡データを得て形状測定する。このため、ウェーハにおいて端部の傷および表面の欠陥の発生を抑制することができるとともに、大口径ウェーハの端部のみならず、ノッチおよびオリエンテーションフラットが設けられた端部の形状も測定することができる。
【0023】
また、本発明の形状測定装置によれば、制御手段により、距離測定手段、第1揺動機構および第2揺動機構を動作させることにより、本発明の形状測定方法を省力化して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の投影法によりウェーハ端部の形状を測定する方法を示す図である。
【図2】本発明の形状測定方法に用いる形状測定装置を模式的に示す正面図である。
【図3】本発明の形状測定方法に用いる形状測定装置の測定領域を説明する側面図であり、同図(a)は測定領域内に半導体ウェーハの端部が載置された状態、同図(b)は測定領域外に半導体ウェーハの端部が載置された状態を示す。
【図4】本発明の形状測定方法における測定手順を説明する図であり、同図(a)はウェーハ配置時、同図(b)は第2揺動機構を所定角度とした時、同図(c)は受光量が最大となる角度の探求時、および同図(d)は距離測定時のそれぞれの測定要領を示す。
【図5】本発明の半導体ウェーハの形状測定装置の構成例を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図6】本発明の形状測定装置であって、半導体ウェーハを周方向に回転可能に支持するガイドを備える形状測定装置を示す図である。
【図7】本発明の形状測定方法における座標変換による輪郭点の算出要領を説明する図である。
【図8】ウェーハ厚さの中心面上に第2揺動機構の揺動軸を配置した場合に、算出された輪郭点の分布状態を示す図である。
【図9】ウェーハ厚さの中心と第2揺動機構の揺動軸との間に距離を設けて配置した場合に、算出された輪郭点の分布状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の半導体ウェーハの形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置について詳細に説明する。
【0026】
[半導体ウェーハの形状測定方法]
本発明の形状測定方法は、発光部が発する光を半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構とを備える形状測定装置を用いて半導体ウェーハの端部形状を測定する方法である。
【0027】
図2は、本発明の形状測定方法に用いる形状測定装置を模式的に示す正面図である。同図に示す形状測定装置1は、距離測定手段である距離測定センサー2と、距離測定センサー2を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構3と、第1揺動機構3を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構4とを備えている。距離測定センサー2は、発光部2aが発する光をウェーハ12の端部で反射させ、受光部2bで検出することによりウェーハ12の端部との距離を測定する。第2揺動機構の揺動軸4aは、第1揺動機構の揺動軸3aと平行であるとともに、所定の距離を設けて配置されている。
【0028】
距離測定センサー2では、その測定可能な距離は、発光部2aで発する光の反射光を、受光部2bで受光できる範囲に制限される。すなわち、ウェーハ端部との距離が近すぎる場合およびウェーハ端部との距離が遠すぎる場合には、距離測定センサー2では、発光部で発した光の反射光が受光部に到達しないことから、距離を測定することができない。したがって、形状測定装置1で、ウェーハ12の端部形状を測定する場合には、ウェーハ端部を形状測定装置により測定することができる領域(測定領域)内に配置する必要がある。測定領域は、形状測定装置が備える距離測定手段により測定することができる距離範囲、および第1揺動機構の揺動軸と第2揺動機構の揺動軸との距離により定まる。
【0029】
図3は、本発明の形状測定方法に用いる形状測定装置の測定領域を説明する側面図であり、同図(a)は測定領域内に半導体ウェーハの端部が載置された状態、同図(b)は測定領域外に半導体ウェーハの端部が載置された状態を示す。同図は形状測定装置を模式的に示す側面図であり、距離測定センサー2と、第1揺動機構の揺動軸3aと、第2揺動機構の揺動軸4aと、ウェーハ12とを示す。
【0030】
同図においてハッチングが施された領域が測定領域eであり、ウェーハ端部を測定領域内に配置する必要がある。同図(a)に示すようにウェーハ12の端部が測定領域内に配置される場合は、形状測定が可能であり、同図(b)に示すようにウェーハ12の端部の一部が測定領域外となる場合は、その部分の形状を測定することができない。
【0031】
本発明の形状測定方法は、上述の構成の形状測定装置を用いて半導体ウェーハの端部形状を測定する方法であって、半導体ウェーハの表面と第2揺動機構の揺動軸を平行にして、半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した後、第2揺動機構の所定角度ごとにおいて、距離測定手段の発光部が発する光を半導体ウェーハの端部に反射させ、受光部で受光量を測定し、受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求め、当該角度における距離測定手段により測定した距離と、第1揺動機構の当該角度および第2揺動機構の所定角度から座標変換により輪郭点を算出することにより、半導体ウェーハの端部の輪郭形状を示す点郡データを得ることを特徴とする。上記の本発明の形状測定方法による測定手順の一例を図4に基づいて説明する。
【0032】
図4は、本発明の形状測定方法における測定手順を説明する図であり、同図(a)はウェーハ配置時、同図(b)は第2揺動機構を所定角度とした時、同図(c)は受光量が最大となる角度の探求時、および同図(d)は距離測定時のそれぞれの測定要領を示す。
【0033】
本発明の形状測定方法では、同図(a)に示すように、ウェーハ表面と第2揺動機構の揺動軸を平行にして、ウェーハ12を配置する。ウェーハ表面12bと第2揺動機構の揺動軸が角度を有すると、得られる輪郭形状から、ラウンド部の半径や面取り部の角度等の寸法を測定した場合に誤差が生じ、ウェーハ端部の適否検査を正確に行うことができないからである。また、前述の通り、ウェーハ端部の形状測定を可能とするために、ウェーハ12の配置は測定領域内に行う。
【0034】
ウェーハ12を配置した後、同図(b)に示すように、第2揺動機構4を揺動させて所定角度とする。
【0035】
第2揺動機構を所定角度とした後、距離測定センサー2の発光部が発する光をウェーハに反射させ、受光部で受光量を測定し、受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求める。
【0036】
受光量は距離測定センサー2が発する光の入射角αが0°となるときに最大となり、入射角αが0°より大きくなると、ウェーハに反射された光の一部が受光部に到達しないので、受光量が低下する。入射角αがさらに大きくなると、同図(c)に示す通り、発光部2aが発する光は受光部2bに到達することがないので、受光量がさらに低下する。通常、測定対象となるウェーハの表面および端部は研磨加工されていることから、受光量は入射角0°で明確なピークを示すので、受光量が最大となる角度を容易に求めることができる。
【0037】
同図(d)に示すように受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求め、当該角度における距離測定手段により測定された距離と、第1揺動機構の当該角度および第2揺動機構の所定角度から座標変換により、ウェーハの輪郭上の点(輪郭点)Xを算出する。
【0038】
輪郭点を算出した後、第2揺動機構を揺動させて別の所定角度においても、上述の手順により受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求め、当該角度における距離測定手段により測定した距離と、第1揺動機構の当該角度および第2揺動機構の所定角度から座標変換により輪郭点を算出する。このように、複数の所定角度ごとにおいて輪郭点を算出し、ウェーハの端部の輪郭形状を示す点郡データを得ることにより、端部の形状を測定できる。
【0039】
投影法を用いる場合と異なり、本発明の形状測定方法は測定対象部であるウェーハ端部を直接測定することから、ノッチおよびオリエンテーションフラットが設けられている端部でも、形状測定を行うことができる。
【0040】
本発明の形状測定方法では、点郡データから得られる輪郭形状を画像解析することにより、ウェーハの端部の寸法を測定するのが好ましい。画像解析により寸法を測定することにより、寸法が所定範囲内であるかの適否検査が容易となるからである。画像解析は、従来から用いられる解析手法を用いることができる。
【0041】
本発明の形状測定方法では、第2揺動機構の所定角度ごとに、受光量が最大となる第1揺動機構の角度を求め、輪郭点を算出して形状測定を行う。輪郭点を算出する第2揺動機構の所定角度は、ウェーハ端部の形状により適宜決定することができる。
【0042】
本発明の形状測定方法では、輪郭点を算出する第2揺動機構の所定角度は、第2揺動機構の測定を開始する角度から測定を終了する角度までを一定角度ごととすることが好ましい。後述する図8で説明する通り、ウェーハの表面と外周面での算出される輪郭点が疎らとなり、ラウンド部での算出される輪郭点が密となるので、端部の適否検査において重要なラウンド部を正確に測定することができるからである。
【0043】
本発明の形状測定方法では、第2揺動機構の所定角度ごとにおいて、距離測定手段の受光部における受光量が最大となる第1揺動機構の角度は、種々の方法により求めることができる。例えば、受光量を測定しつつ、第1揺動機構を揺動させて行うことができる。測定対象となるウェーハ端部の形状が限定される場合は、最大となる第1揺動機構の角度を予測し、予測された角度およびその近傍から受光量を測定することにより、受光量が最大となる角度を求めるのに要する時間を短縮できる。
【0044】
本発明の形状測定方法では、ウェーハ端部を測定領域に配置する際は、ウェーハの厚さ中心上に、第2揺動機構の揺動軸が位置するように配置するのが好ましい。後述する図8および図9で説明する通り、ウェーハの厚さ中心上に第2揺動機構の揺動軸が位置すれば、ウェーハ上で測定される輪郭点の数がウェーハ厚さ中心の両側で同数となり、両側とも同じ精度で測定することができるからである。
【0045】
[半導体ウェーハの形状測定装置]
図5は、本発明の半導体ウェーハの形状測定装置の構成例を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。同図に示す形状測定装置1は、測定対象物との距離を測定する距離測定センサー2と、距離測定センサー2を装着する固定台5と、固定台5に装着された距離測定センサー2を一定の角度範囲で揺動可能に支持するクランクアーム7と、クランクアーム7を一定の角度範囲で揺動可能に支持する架台9と、固定台5の揺動を駆動するセンサー用モーター6と、クランクアーム7の揺動を駆動するクランク用モーター8とから構成されている。
【0046】
同図に示す形状測定装置は、図示しないが、距離測定センサー2、センサー用モーター6およびクランク用モーター8を動作させる制御部と、距離測定センサー2により測定された距離およびセンサー用モーター6ならびにクランク用モーター8の角度から座標変換により輪郭点を算出する座標変換部を備えている。また、形状測定装置1は、同図(b)に想像線で示すように、ウェーハ12を載置するガイド10を備える。
【0047】
同図に示す形状測定装置は、距離測定手段である距離測定センサー2と、固定台5とセンサー用モーター6により第1揺動機構が構成され、クランクアーム7とクランク用モーター8により第2揺動機構が構成される。また、距離測定センサー2が装着される固定台5(第1揺動機構)の揺動軸5aと、クランクアーム7(第2揺動機構)の揺動軸7aは、平行であるとともに、所定の距離が設けられている。
【0048】
本発明の形状測定装置は、半導体ウェーハの端部形状を測定する装置であって、発光部が発する光を半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構と、半導体ウェーハの表面と第2揺動機構の揺動軸を平行にして、半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した状態で支持するガイドと、距離測定手段、第1揺動機構および第2揺動機構を動作させる制御手段と、距離測定手段により測定された距離および第1揺動機構ならびに第2揺動機構の角度から座標変換により輪郭点を算出する座標変換手段とを備えることを特徴とする。
【0049】
ガイド10を備えるのは、簡便に、ウェーハ表面と第2揺動機構の揺動軸を平行にして、ウェーハ端部を測定領域に配置するためである。距離測定手段(距離測定センサー2)は、発光部2aが発する光をウェーハ端部で反射させ、受光部2bで検出することによりウェーハ端部との距離を測定する。このような距離測定手段を備えることにより、ウェーハ端部と接触することなく形状を測定するので、ウェーハへの傷の形成を抑制することができるとともに、接触により粉塵が発生し、ウェーハ表面に付着することによる欠陥の誘発を抑制できる。
【0050】
第1揺動機構を備えることにより、距離測定手段の角度が変更可能となり、距離測定手段が発する光の入射角を0°としてウェーハ端部に反射させることができ、距離測定手段による距離測定が可能となる。また、座標変換手段を備えることにより、ウェーハ端部の輪郭形状を示す輪郭点を算出することができる。さらに、第2揺動機構を備えることにより、ウェーハ端部の複数の輪郭点を算出することができ、輪郭形状を示す点郡データを得ることが可能となる。
【0051】
制御手段を用いて、距離測定手段、第1揺動機構および第2揺動機構を動作させることにより、正確にウェーハ端部の輪郭形状の測定できるとともに、形状測定に要する手間を省力化できる。
【0052】
本発明の形状測定装置は、投影法を用いる場合と異なり、測定対象部であるウェーハ端部を直接測定することから、ノッチおよびオリエンテーションフラットが設けられているウェーハ端部でも、ノッチ最深部、オリエンテーションフラット中央部の反射光を受光でき、その形状測定を行うことができる。ノッチおよびオリエンテーションフラットの直線部は、さらに第2揺動機構を傾ける機構を付加して、直線部と第2揺動機構の揺動軸を平行にすれば、その形状測定を行うことができる。
【0053】
本発明の形状測定装置は、さらに、得られる点郡データが示す輪郭形状を画像解析することにより、半導体ウェーハの端部の寸法を演算する画像解析手段を備えるのが好ましい。画像解析手段により寸法を測定することにより、寸法が所定範囲内であるかの適否検査が容易となるからである。
【0054】
本発明の形状測定装置は、ガイドにより、半導体ウェーハを周方向に回転可能に支持するのが好ましい。ガイドがウェーハを回転させることにより、ウェーハを着脱することなく、ウェーハの複数の箇所について端部の形状測定できるからである。例えば、ウェーハを90°ごとに回転させ、計4箇所についてウェーハの端部の形状測定を行い、ウェーハ端部の形状について適否検査を実施すことができる。後述する図6に、ウェーハを回転可能に支持するガイドの構成例を示す。
【0055】
図6は、本発明の形状測定装置であって、半導体ウェーハを周方向に回転可能に支持するガイドを備える形状測定装置を示す図である。同図に示すガイドは、ウェーハ端部を受け入れる凹部が設けられた複数のローラー13と、ローラー13を回転可能に支持するローラー固定部14と、ローラーの回転を駆動するローラー用モーター15とを備えている。同図に示すガイドでは、複数のローラー13をウェーハ12の外周に配置し、ローラー凹部によりウェーハ端部を受け入れて支持する。また、ローラー13の一つが、ローラー用モーターの回転により駆動されるので、ローラーの回転にしたがってウェーハが周方向に回転する。
【実施例】
【0056】
本発明の半導体ウェーハの形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置による形状測定の実施例を説明する。
【0057】
実施例では、前記図5に示す形状測定装置を用い、前記図4で説明した手順によりウェーハ端部を形状測定した。形状測定装置のガイドにウェーハを載置した後、クランク用モーターの回転によりクランクアームを測定開始角度とし、その後、距離測定センサーにより受光量を測定しつつ、センサー用モーターの回転により距離測定センサーの角度を変更して、受光量が最大となる角度を求めた。
【0058】
受光量が最大となる角度において距離測定センサーにより測定された距離と、センサー用モーターおよびクランク用モーターの角度から座標変換により輪郭点を算出する。クランク用モーターの回転により、クランクアームを測定終了角度まで一定角度ごとに揺動させ、それぞれの角度において受光量が最大となるセンサー用モーターの角度を求め、輪郭点を算出して点郡データを得た。実施例ではクランク用モーターの測定開始角度は−99°、測定終了角度は+99°とし、測定開始角度から測定終了角度まで3°ごとに揺動させた。また、ウェーハは、外周にラウンドを施したものを用いた。
【0059】
[座標変換による輪郭点の算出例]
図7は、本発明の形状測定方法における座標変換による輪郭点の算出要領を説明する図である。同図は、第1揺動機構の揺動軸3aと、第2揺動機構の揺動軸4aと、ウェーハ端部における点であって受光量が最大となる輪郭点Xを示す。第1揺動機構の揺動軸3aと第2揺動機構の揺動軸4aとの軸間距離lは、装置仕様により決定される定数であり、第1揺動機構の揺動軸と輪郭点Xとの測定距離dは、距離測定手段により測定された距離である。同図に示す通り、第1揺動機構の揺動角度をθ1とし、第2揺動機構の揺動角度をθ2とする。
【0060】
軸間ベクトルBを第2揺動機構の揺動軸4aを始点、第1揺動機構の揺動軸3aを終点とするベクトルとし、距離ベクトルAを第1揺動機構の揺動軸を始点、輪郭点Xを終点とするベクトルとした場合、輪郭点Xは、軸間ベクトルBと距離ベクトルAの和により現すことができる。
【0061】
角度をθ回転させる座標変換行列をR(θ)、θ2が0°の時の軸間ベクトルBをB0、θ1が0°の時の距離ベクトルAをA0とした場合、第2揺動機構の回転角度がθ2の時の軸間ベクトルBは、R(θ2)B0となる。また、距離ベクトルAは、第2揺動機構により揺動(回転)させた後、さらに第1揺動機構により揺動(回転)させると考えることにより、R(θ1+θ2)A0となる。
【0062】
ここで、θ2が0°の時の軸間ベクトルB0は(0,l)、θ1が0°の時の距離ベクトルA0は(0,−d)である。したがって、輪郭点の座標を(x,y)とすると、その座標値の算出式は式(1)となる。
【0063】
【数1】

【0064】
[輪郭点の分布]
上記条件により算出された輪郭点の分布を確認し、輪郭形状を正確に得ることができるか確認した。輪郭点の分布の確認は、ウェーハ厚さの中心面上に第2揺動機構の揺動軸を配置した場合と、ウェーハ厚さの中心と第2揺動機構の揺動軸との間に距離を設けて配置した場合とについて行った。
【0065】
図8は、ウェーハ厚さの中心面上に第2揺動機構の揺動軸を配置した場合に、算出された輪郭点の分布状態を示す図である。同図に示す通り、ウェーハの厚さ中心12a上に第2揺動機構の揺動軸4aを配置した。揺動軌道nは、第2揺動機構により揺動(回転)する第1揺動機構の揺動軸の軌跡を示し、線分mは、第2揺動機構の各所定角度において受光量が最大となる角度を示し、線分mのウェーハ側の終点は輪郭点を示す。
【0066】
線分mのウェーハ側の終点(輪郭点)は、ウェーハの表面12bと外周面12cで疎らとなるのに対し、ラウンド部12dで密となり、その分布はウェーハ中心で線対称となっていることが確認できた。同図より、得られる点郡データから、ウェーハ端部の輪郭形状を得ることができ、端部の形状測定が可能であることが確認できた。
【0067】
図9は、ウェーハ厚さの中心と第2揺動機構の揺動軸との間に距離を設けて配置した場合に、算出された輪郭点の分布状態を示す図である。同図に示す通り、ウェーハの厚さ中心12aと第2揺動機構の揺動軸4aとを距離を設けて配置した。
【0068】
線分mのウェーハ側の終点(輪郭点)は、ウェーハの表面12bと外周面12cで疎らとなるのに対し、ラウンド部12dで密となる。また、2箇所存在するラウンド部12dで、終点(輪郭点)の数が異なっていることが確認できた。したがって、同図から、ウェーハ厚さの中心と第2揺動機構の揺動軸との間に距離を設けて配置した場合でも形状が測定できることが確認できた。また、同図および前記図8から、ウェーハ厚さの中心面上に第2揺動機構の揺動軸を配置するのが、輪郭点の分布がウェーハ厚さの中心の両側で同数となり、両側を同じ精度で形状測定できることから、好ましいことが確認できた。
【0069】
これらから、本発明の形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置により、ウェーハの端部の輪郭形状を測定できることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の形状測定方法は、半導体ウェーハの端部と接触することなく距離を測定する距離測定手段を用い、測定された距離およびその時の角度から輪郭点を算出することにより、輪郭形状を示す点郡データを得て形状測定する。このため、ウェーハにおいて端部の傷および表面の欠陥の発生を抑制することができるとともに、大口径ウェーハの端部のみならず、ノッチおよびオリエンテーションフラットが設けられた端部の形状も測定することができる。
【0071】
また、本発明の形状測定装置によれば、制御手段により、距離測定手段、第1揺動機構および第2揺動機構を動作させることにより、本発明の形状測定方法を省力化して実施することができる。
【0072】
したがって、本発明の形状測定方法およびそれに用いる形状測定装置を、半導体ウェーハの製造に適用すれば、ウェーハにおいて端部の傷および表面の欠陥の発生による製品歩留りの悪化を抑制して、大口径ウェーハの端部の適否検査を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
1:形状測定装置、 2:距離測定センサー、 2a:発光部、 2b:受光部、
3:第1揺動機構、 3a:第1揺動機構の揺動軸、 4:第2揺動機構、
4a:第2揺動機構の揺動軸、 5:固定台、 5a:固定台の揺動軸、
6:センサー用モーター、 7:クランクアーム、 7a:クランクアームの揺動軸、
8:クランク用モーター、 9:架台、 10:ガイド、 12:半導体ウェーハ、
12a:ウェーハ厚さ中心、 12b:ウェーハ表面、 12c:ウェーハ外周面、
12d:ラウンド部、 13:ローラー、 14:ローラー固定部、
15:ローラー用モーター、 16:照射部、 17:投影部、
A:距離ベクトル、 B:軸間ベクトル、 d:測定距離、 e:測定領域、
l:軸間距離、 m:線分、n:第2揺動機構の揺動軌道、 X:輪郭点、
α:入射角、 θ1:第1揺動機構の揺動角度、 θ2:第2揺動機構の揺動角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部が発する光を半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより前記半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、
前記第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、前記第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構とを備える形状測定装置を用いて半導体ウェーハの端部形状を測定する方法であって、
前記半導体ウェーハの表面と前記第2揺動機構の揺動軸を平行にして、前記半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した後、
前記第2揺動機構の所定角度ごとにおいて、
前記距離測定手段の発光部が発する光を前記半導体ウェーハの端部に反射させ、受光部で受光量を測定し、受光量が最大となる前記第1揺動機構の角度を求め、当該角度における前記距離測定手段により測定した距離と、前記第1揺動機構の当該角度および前記第2揺動機構の所定角度から座標変換により輪郭点を算出することにより、
前記半導体ウェーハの端部の輪郭形状を示す点郡データを得ることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体ウェーハの形状測定方法において、前記点郡データから求められる輪郭形状を画像解析することにより、前記半導体ウェーハの端部の寸法を測定することを特徴とする半導体ウェーハの形状測定方法。
【請求項3】
前記所定角度を、前記第2揺動機構の測定を開始する角度から測定を終了する角度までを一定角度ごととすることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウェーハの形状測定方法。
【請求項4】
半導体ウェーハの端部形状を測定する装置であって、
発光部が発する光を前記半導体ウェーハの端部で反射させ、受光部で検出することにより前記半導体ウェーハの端部との距離を測定する距離測定手段と、
前記距離測定手段を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第1揺動機構と、
前記第1揺動機構の揺動軸と平行かつ所定の距離を設けた位置に揺動軸を有し、前記第1揺動機構を一定の角度範囲で揺動可能に支持する第2揺動機構と、
前記半導体ウェーハの表面と前記第2揺動機構の揺動軸を平行にして、前記半導体ウェーハの端部を測定領域に配置した状態で支持するガイドと、
前記距離測定手段、前記第1揺動機構および前記第2揺動機構を動作させる制御手段と、
前記距離測定手段により測定された距離および前記第1揺動機構ならびに前記第2揺動機構の角度から座標変換により輪郭点を算出する座標変換手段とを備えることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体ウェーハの形状測定装置が、さらに、得られる点郡データが示す輪郭形状を画像解析することにより、前記半導体ウェーハの端部の寸法を演算する画像解析手段を備えることを特徴とする半導体ウェーハの形状測定装置。
【請求項6】
前記ガイドが、前記半導体ウェーハを周方向に回転可能に支持することを特徴とする請求項4または5に記載の半導体ウェーハの形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−112384(P2011−112384A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266535(P2009−266535)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】