説明

半導体ウェーハ吸着保持装置

【課題】大口径の半導体ウェーハであっても安定に吸着保持することが可能な吸着保持装置を提供すること。
【解決手段】使用者が片手の掌全体で把持可能な支持部と、上記支持部側面の長手方向に一列に立設配置され、かつ該支持部内部に設けられた吸引流路と連通する吸引流路を内部に有する連結管部と、上記連結管部の先端に取り付けられ連結管部からの吸引負圧により被吸着物を吸着する吸着板と、を有し、かつ、全吸着板は同一方向から半導体ウェーハの一主表面を吸着保持する、半導体ウェーハ吸着保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ吸着保持装置に関するものであり、詳しくは、大口径の半導体ウェーハを安定に吸着保持することが可能な吸着保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを収容ケースから取り出し検査用ステージに載せる際には、半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」ともいう)を真空吸引により吸着保持する、真空ピンセットと呼ばれる吸着保持装置が広く用いられている。現在汎用されている真空ピンセットは、一般に図4に示すようにフィンガーグリップ構造を有するものである。
【0003】
しかし半導体ウェーハが大口径化(例えばφ300mm以上)するとウェーハの重量が増加するため、フィンガーグリップ構造の真空ピンセットでは図4に矢印で示すような大きな回転モーメントが発生してしまう。回転モーメントに対して吸着板の吸着力が不足すると、ウェーハを安定に吸着保持することができずウェーハを落下させる危険性が増大する。そこで回転モーメントに耐え得る吸着力を確保するために吸着板を大きくすることも考えられる。しかし吸着板を大きくするほど真空ピンセット先端部の重量が増加するため、ピンセットの操作が不安定となって、ウェーハを取り出す際に収容ケースや隣接するウェーハに接触して発塵、割れ、カケを発生させるおそれがある。
【0004】
例えば特許文献1には、大口径ウェーハを安定に移送するために、先端部に複数の吸着板を有する真空ピンセットが提案されている。しかし特許文献1に記載の真空ピンセットのように先端部に複数の吸着板を設けると、その分先端部が重くなるため上記と同様にピンセットの操作が不安定となることが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−29185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の目的は、大口径の半導体ウェーハであっても安定に吸着保持することが可能な吸着保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、
[1]使用者が片手の掌全体で把持可能な支持部と、
上記支持部側面の長手方向に一列に立設配置され、かつ該支持部内部に設けられた吸引流路と連通する吸引流路を内部に有する連結管部と、
上記連結管部の先端に取り付けられ連結管部からの吸引負圧により被吸着物を吸着する吸着板と、
を有し、かつ、
全吸着板は同一方向から半導体ウェーハの一主表面を吸着保持する、半導体ウェーハ吸着保持装置、
により達成される。本発明の半導体ウェーハ吸着保持装置は、使用者が片手の掌全体で支持部を把持した状態で、複数の吸着板によって半導体ウェーハの一主表面を吸着保持することができるため、大口径ウェーハを吸着保持して収容ケースから持ち上げた際に発生する大きな回転モーメントに耐えることができる。これにより、ウェーハ落下の危険性を低減することができる。更に、複数の吸着板が支持部の長手方向に分散配置されているため、一部分のみが重くなり操作が不安定となることはなく、しかも片手の掌全体で支持部を把持することができるため安定に操作することができる。
即ち本発明によれば、大口径の半導体ウェーハであっても安定に吸着保持することが可能となる。
【0008】
本発明の半導体ウェーハ吸着保持装置の好ましい態様は、以下の通りである。
[2]前記連結管部は支持部から着脱可能である、[1]に記載の半導体ウェーハ吸着保持装置。
[3]前記支持部に、前記吸引負圧の発生および停止を制御する制御機構を有する、[1]または[2]に記載の半導体ウェーハ吸着保持装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大口径ウェーハを収容ケースから傷つけることなく取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の吸着保持装置の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の吸着保持装置の他の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の吸着保持装置の支持部の一例を示す。
【図4】従来の真空ピンセットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の半導体ウェーハ吸着保持装置は、
使用者が片手の掌全体で把持可能な支持部と、
上記支持部側面の長手方向に一列に立設配置され、かつ該支持部内部に設けられた吸引流路と連通する吸引流路を内部に有する連結管部と、
上記連結管部の先端に取り付けられ連結管部からの吸引負圧により被吸着物を吸着する吸着板と、
を有するものであり、全吸着板は同一方向から半導体ウェーハの一主表面を吸着保持する。したがって、複数の吸着板が同一平面上に配置されるように構成されている。
以下、図面に基づき、本発明の吸着保持装置について、更に詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の吸着保持装置の一例を示す説明図である。図1では、支持部の一方の端部と他方の端部に、各1本の連結管部が配置され、それぞれの支持部先端には吸着板が取り付けられている。各吸着板は、吸着面に1つ以上の吸引口を有し、連結管からの吸引負圧によって被吸着物、即ち半導体ウェーハの一主表面を吸着する構成となっている。以下、支持部側面に立設配置された連結管部と吸着板からなる部分を吸着保持部と呼ぶが、吸着保持部としては、公知の構造を有する真空ピンセットや市販されている真空ピンセットを使用することができる。
【0013】
本発明の吸着保持装置は、図1に示すように、複数の連結管が支持部側面の長手方向に一列に立設配置されている。本発明の吸着保持装置は、このように支持部に対して垂直に複数の吸着保持部が配置されているため、半導体ウェーハを吸着保持する際に支持部に対して加わる力が1点に集中せず2点以上に分散される。これにより大口径で重いウェーハを吸着保持する際の安定性が高まるうえに、発生する回転モーメントに耐えることができウェーハ落下の可能性を低減することができる。ウェーハを吸着保持する際に支持部に加わる力を均等に分散させ保持の安定性を高めるためには、上記連結管は支持部側面に等間隔に配置することが好ましい。例えば、2本の連結管を配置する場合には、支持部中心から等しい距離で2本の支持部を立設配置することが好ましい。また、使用者が片手の掌全体で支持部を把持した状態において、図1に示すように把持されていない両端部にそれぞれ連結管部が位置するように、複数の連結管部が支持部側面に立設配置されていると、ウェーハを吸着保持し持ち上げる際にバランスが取れるため好ましい。
【0014】
また、本発明では支持部側面に立設配置される連結管の数は2本に限定されるものではなく、3本、4本または5本以上とすることもできる。一例として、4つの吸着保持部を有する本発明の吸着保持装置の概略図を図2に示す。図2に示す吸着保持装置では、4本の連結管部が支持部側面の長手方向に一列に等間隔に配置されている。なお、支持部に取り付ける吸着保持部の本数が多くなるほど吸着板が増え吸着力は高まるが、多くなるほど装置全体が重くなるため、安定保持のために要する吸着力と使用する吸着保持部の重量を考慮して本数を決定することが好ましい。φ300mm程度のウェーハであれば、通常の真空ピンセット2〜5本程度で十分安定な吸着保持が可能である。
【0015】
上記吸着保持部と連結される支持部は、使用者が片手の掌全体で把持可能なものである。使用者が片手の掌全体で把持可能な構造であるため、従来のフィンガーグリップ構造の真空ピンセットでは耐えることが困難であった大口径ウェーハからの大きな回転モーメントに耐えることができ、大口径ウェーハであっても落下させずに吸着保持することが可能となる。
【0016】
上記支持部は、内部に吸引流路を有するとともに外形が使用者が片手の掌全体で把持可能なものであればよい。図3に支持部の一例を示すが、一般的な使用者の掌の大きさを考慮すると、図3に示すように正面視で長さが100mm超、幅が20〜40mm、側面視で幅が10〜20mmであることが、支持部を安定に把持しやすく好ましい。また、支持部と連結管とは一体成形されていてもよいが、支持部側面に設けた挿入孔に連結管を挿入し装着する構造とし、連結管部を支持部から着脱可能な構成とすることが、市販の真空ピンセットが利用可能となり、また吸着保持するウェーハの大きさに応じて吸着保持部の数を変更できるため好ましい。なお、連結管を挿入しない挿入孔をシール部材によって封止すれば、吸着負圧を弱めることなく吸着保持部の数を減らすことができる。
【0017】
通常の真空ピンセットは、図4に示すようにピンセットグリップ部の一端に、吸着板に吸引負圧を与える真空圧源と連結されたバキュームホースが接続される。これに対し本発明の吸着保持装置では、図1〜3に示すように、支持部にバキュームホースを接続することが好ましく、バキュームホースを介して与えられる吸着負圧を容易に制御するために、吸引負圧の発生および停止を制御する制御機構を支持部に設けることが更に好ましい。上記制御機構としては、図1〜3に示すバキュームオン・オフスイッチを挙げることができる。支持部に設けるバキュームオン・オフスイッチは、通常の真空ピンセットが有するバキュームオン・オフスイッチと同様の構成とすることができる。
【0018】
例えば支持部に設けたバキュームオン・オフスイッチをオンにすると、真空圧源と連結されたバキュームホースからの吸引が開始される。この吸引により発生した負圧は支持部内部の吸引流路から、該流路と連通した各連結管部内の吸引流路を経て連結管部先端の吸着板に達する。これにより、各吸着板が半導体ウェーハの一主表面を吸着保持することができる。
【0019】
以上説明した構成を有する本発明の半導体ウェーハ吸着保持装置によれば、大口径ウェーハであっても安定に吸着保持することができるため、例えば収容ケースから検査用ステージに大口径ウェーハを移送する際にも、ウェーハの落下や発塵、割れ、カケの発生の危険性を大きく低減することができる。本発明は、φ200mmの半導体ウェーハはもちろんのこと、φ300mm、その他、特に大型化したφ400〜500mm等の大口径ウェーハに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、大口径半導体ウェーハの製造分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が片手の掌全体で把持可能な支持部と、
上記支持部側面の長手方向に一列に立設配置され、かつ該支持部内部に設けられた吸引流路と連通する吸引流路を内部に有する連結管部と、
上記連結管部の先端に取り付けられ連結管部からの吸引負圧により被吸着物を吸着する吸着板と、
を有し、かつ、
全吸着板は同一方向から半導体ウェーハの一主表面を吸着保持する、半導体ウェーハ吸着保持装置。
【請求項2】
前記連結管部は支持部から着脱可能である、請求項1に記載の半導体ウェーハ吸着保持装置。
【請求項3】
前記支持部に、前記吸引負圧の発生および停止を制御する制御機構を有する、請求項1または2に記載の半導体ウェーハ吸着保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43974(P2012−43974A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183862(P2010−183862)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】