説明

半導体パッケージの開封方法、及び半導体パッケージの検査方法

【課題】半導体素子や配線に与える損傷を低減し、半導体素子を動作させるための電気的な検査が可能な状態で半導体パッケージを開封することが可能な半導体パッケージの開封方法を提供する。
【解決手段】プリント基板4に半導体素子3がフリップチップ実装され封止樹脂5により封止された半導体パッケージを準備する工程と、前記プリント基板4の外側面に第一の板1を設置し、前記半導体素子3の外側面に第二の板2を配置して、前記半導体パッケージを間に挟持するよう、前記第一の板1と前記第二の板2を対向して設置する工程と、前記第一の板1と前記第二の板2の間に荷重を加えて前記半導体パッケージを固定する工程と、前記固定された前記半導体パッケージに、前記封止樹脂4を溶解する処理液を付与する工程と、を備える、前記封止樹脂4を除去する半導体パッケージの開封方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体パッケージの開封方法、及び半導体パッケージの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング接続やフリップチップ接続によって基板やリードフレーム上に実装される半導体素子は、物理的保護や絶縁を目的としてその一部もしくは全体が封止樹脂によって封止され、半導体パッケージとして使用されている。封止の方式には、半導体素子実装体を金型に入れて封止樹脂を注入、硬化させるトランスファーモールド方式や、フリップチップ接続で実装された半導体素子と実装基板との隙間に封止樹脂を注入し硬化させるアンダーフィル方式などが採用されている。近年では半導体素子の大容量化、高集積化や回路のファインピッチ化が進んだことにより、極めて狭いギャップや複雑な半導体素子積層体に封止樹脂が充填されることが多い。
【0003】
前記半導体パッケージは電子機器に組み込まれるに先立ち、種々の試験による信頼性評価が行われ、半導体素子や接続端子部分の観察、分析が行われる。また電子機器として使用された後も、駆動時間の経過と共に発生した不具合の解析や、故障原因の究明を目的として、電気的な検査、半導体素子や接続端子部分の観察、分析が行われる。このような検査、観察、分析を行う際は、その目的に応じて適切な手段で半導体パッケージを解体し、又は封止樹脂を除去(開封)する必要が生じる。
【0004】
半導体パッケージを解体、開封する方法として、一般的なトランスファーモールド型の半導体パッケージを参考に例示すると、第一の方法として、「観察、分析部位近傍を切断し、或いは機械的応力を加えて破壊する方法」、第二の方法として、「レーザーによって封止樹脂を除去する方法」、第三の方法として、「溶液中に浸漬し、或いは溶液を滴下して封止樹脂を溶解する方法」などが挙げられる。
【0005】
特許文献1〜2に示される第一の方法では、半導体パッケージを注型用エポキシ樹脂中に埋め込んで硬化させ、観察、分析部位近傍をカッターなどで切断したのち切断面を研磨することで、断面を観察することができる(第一の従来技術)。
【0006】
特許文献3〜4に示される第二の方法では、レーザーの焦点を絞ることで観察、分析を行う部分のみ封止樹脂を除去することができ、また開封後も半導体素子を動作させるための電気的な検査が可能である(第二の従来技術)。
【0007】
特許文献5〜7に示される第三の方法では、発煙硝酸や混酸等の溶液を用いて封止樹脂を溶解(エッチング)することで半導体パッケージを開封する。半導体素子と基板との接続を保持したまま観察、分析も可能であり、半導体素子を動作させるための電気的な検査も可能である(第三の従来技術)。
【0008】
さらに特許文献3に示すように、第二の方法と第三の方法とを併用することも可能である。また、特許文献8〜9に示すように、半導体パッケージの開封が目的ではないが、樹脂硬化物を溶解しうる溶液を積極的に応用することでも封止樹脂を溶解することが可能である。
【0009】
特に第三の方法は、半導体パッケージを切断したり、電気的接続を断線したりすることなく、またレーザーのような特殊な設備を必要とせずに半導体パッケージを開封できる特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−130318号公報
【特許文献2】特開平10−150255号公報
【特許文献3】特開2000−21912号公報
【特許文献4】特開2006−344655号公報
【特許文献5】特開平6−61286号公報
【特許文献6】特開2001−358158号公報
【特許文献7】特開2006−196592号公報
【特許文献8】特許第4428052号明細書
【特許文献9】特許第3624967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、半導体素子や配線に与える損傷を低減し、半導体素子を動作させるための電気的な検査が可能な状態で、半導体パッケージを開封することが可能な半導体パッケージの開封方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは半導体パッケージの開封方法について検討を行った。上述の第一の従来技術を用いて半導体パッケージを開封した場合には、半導体パッケージが部分的に破壊されるため、半導体素子を動作させる電気的な検査ができないという問題がある。
また、第一の従来技術とは異なるが、Chip on Film(COF)特有の手法として、図5に示すように半導体素子3から樹脂基板4を引き剥がすことによって、より詳細に半導体素子3の回路面や接続端子9部分を観察する方法も考えられる。しかしこの方法は配線8の切断を伴うため、半導体素子3を動作させる電気的な検査が困難という問題がある。
また、第二の従来技術では、レーザーを使用するための特殊な設備を予め準備しなければならないという問題がある。
【0013】
本発明者らは半導体素子を動作させるための電気的な検査を行うことを想定し、またレーザーのような特殊な設備を必要とせずに半導体パッケージを開封できる第三の方法での検討を行った。そして近年ファインピッチ化が進んでいる半導体パッケージの一例としてフリップチップ接続方式の半導体パッケージの開封を試みた。その結果、以下のことが明らかになった。
【0014】
第三の従来技術により開封処理を施したフレキシブル基板(COF)を注意深く観察した結果、封止樹脂の溶解除去は可能であったが、図6に示すように半導体素子3に設けられた接続端子9とFPCの配線8との接続部分付近で、配線の一部に断線10が生じていることが分かった。さらに接続端子9直下のFPCの配線8において、FPCにおける樹脂基板4と配線8の間に剥離11が発生する場合があることが分かった。
【0015】
これはCOFの組立工程のうち、FPCに半導体素子3を接続する工程(ILB:インナーリードボンディング)および封止樹脂の熱硬化の工程において接続部付近の配線8に応力が加わったこと、封止樹脂の開封によってこの応力が開放されたこと、開封処理の際に溶解液が封止樹脂中に浸入し封止樹脂が膨潤したこと、さらに溶解液の対流や溶解後に用いる洗浄液の対流によって損傷を受けたこと等が原因と考えられるが、封止樹脂の溶解前に断線10や剥離11が発生していた場合も想定される。このため断線10や剥離11の原因を特定することが困難となり、また半導体素子を動作させるための電気的な検査も困難な場合があることが分かった。
【0016】
このように、フリップチップ接続方式の半導体パッケージではファインピッチな接続端子間隔および配線間隔を有するため、半導体素子や接続端子、配線に損傷を与えることなく、かつ封止樹脂のみを効率よく除去することが、トランスファーモールドタイプの半導体パッケージと比較して極めて困難であることが分かった。また封止樹脂が除去できた場合であっても、配線の断線が生じることがあり、半導体素子を動作させるための電気的な検査が困難となることが課題として明らかになった。
【0017】
上記現象を踏まえ、上記課題を解決する方法として本発明に至った。すなわち、本発明の半導体パッケージの開封方法は、プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装され樹脂封止された半導体パッケージを開封する方法であり、封止樹脂を溶解する処理液を付与する際に、半導体パッケージを挟持するよう2枚の板を配置し、この2枚の板に荷重を加え半導体パッケージを固定するというものである。具体的に、本発明は以下の通りである。
【0018】
<1> プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装され封止樹脂により封止された半導体パッケージを準備する工程と、
前記プリント基板側の外側面に第一の板を設置し、前記半導体素子側の外側面に第二の板を配置して、前記半導体パッケージを間に挟持するよう、前記第一の板と前記第二の板を対向して設置する工程と、
前記第一の板と前記第二の板の間に荷重を加えて前記半導体パッケージを固定する工程と、
前記固定された前記半導体パッケージに、前記封止樹脂を溶解する処理液を付与する工程と、
を備える、前記封止樹脂を除去する半導体パッケージの開封方法。
【0019】
<2> 前記第一の板と前記第二の板の間の荷重が、5N以上350N以下である前記<1>に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0020】
<3> 前記第一の板及び前記第二の板の曲げ弾性率が、付与する前記処理液の温度において、それぞれ1GPa以上200GPa以下である前記<1>又は<2>に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0021】
<4> 前記半導体素子の面方向の面積を短辺a(mm)×長辺b(mm)とし、前記第二の板の面方向の面積を短辺x(mm)×長辺y(mm)とし、短辺aと短辺x、長辺bと長辺yとが同じ方向となるように第二の板を配置したときに、x及びyの値がa≦x≦a+10及びb≦y≦b+10の少なくとも一方の関係を満たす前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0022】
<5> 前記第一の板の可視光領域における光透過率が、70%以上98%以下である前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0023】
<6> 前記処理液が、アルカリ金属リン酸類の塩又はその水和物、及び溶媒としてモノアルコールを含有する前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0024】
<7> 前記半導体パッケージに付与するときの前記処理液の温度が130℃以上210℃以下であり、前処理液を付着させる時間が50分以上120分以下である前記<6>に記載の半導体パッケージの開封方法。
【0025】
<8> 前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法を用いて、前記半導体パッケージから封止樹脂を除去した後、下記第1〜第6の工程のうちの少なくとも1工程を行う、半導体パッケージの検査方法。
第1の工程:前記半導体パッケージのプリント基板側の外側面に配置された第一の板および半導体素子側の外側面に配置された第二の板を配置したまま、電気的検査を行う。
第2の工程:前記第一の板および前記第二の板を配置したまま、前記第一の板を介して外観観察を行う。
第3の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、外観観察を行う。
第4の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の外観観察を行う。
第5の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の表面に存在する成分の分析を行う。
第6の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、プリント基板を取り外し、更に切断、研磨又は掘削加工を行い、前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の内部構造の外観観察および構成成分の少なくとも一方の分析を行う。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、半導体素子や配線に与える損傷を低減し、半導体素子を動作させるための電気的な検査が可能な状態で半導体パッケージを開封することが可能な半導体パッケージの開封方法を提供することができ、また検査及び不良解析の精度向上が図られた半導体パッケージの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】半導体パッケージに荷重を加え保持した状態を示す概略断面図である。
【図2】封止樹脂を除去し、開封した半導体パッケージを示す図である。
【図3】開封後の半導体パッケージから第一の板、第二の板および固定治具を取り外した状態を示す図であり、図3(a)はチップ長辺から見た断面図であり、図3(b)はチップ短辺から見た断面図である。
【図4】本発明の半導体パッケージの検査方法の第4又は第5の工程におけるプリント基板を取り外した様子の一例を示す図である。
【図5】従来技術によって故障解析を行うために半導体パッケージを部分的に破壊する過程を示す図である。
【図6】第三の従来技術により開封した半導体パッケージに配線の剥離や断線が生じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の半導体パッケージの開封方法は、プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装され封止樹脂により封止された半導体パッケージを開封する方法であり、封止樹脂を溶解する処理液を付与する際に、半導体パッケージを挟持するよう2枚の板を配置し、この2枚の板に荷重を加え半導体パッケージを固定するというものである。ここで、「半導体パッケージの開封」とは、半導体パッケージから封止樹脂を除去することをいい、封止樹脂を除去した後においても電気的接続が保持された状態にあることをいう。電気的接続が保持された状態にある点で、解体とは異なる。
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態では開封する半導体パッケージとしてChip on Film(COF)方式の半導体パッケージを対象に例示するが、フリップチップ実装される半導体パッケージであれば対象は特に限定されない。
【0030】
<半導体パッケージの開封方法>
本発明の半導体パッケージの開封方法は、(1)プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装され封止樹脂により封止された半導体パッケージを準備する工程と、(2)前記プリント基板側の外側面に第一の板を設置し、前記半導体素子側の外側面に第二の板を配置して、前記半導体パッケージを間に挟持するよう、前記第一の板と前記第二の板を対向して設置する工程と、(3)前記第一の板と前記第二の板の間に荷重を加えて前記半導体パッケージを固定する工程と、(4)前記固定された前記半導体パッケージに、前記封止樹脂を溶解する処理液を付与する工程と、を備える。これらの工程を経て前記封止樹脂が除去され、半導体パッケージが開封される。
【0031】
(1)半導体パッケージを準備する工程
本発明の開封方法に用いる半導体パッケージは、プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装されたものであり、プリント基板と半導体素子との隙間が封止樹脂により封止されている。図1を参照しながら、本発明に用いる半導体パッケージを説明する。図1は半導体素子の長辺から見た断面を示している。なお、一般的にLCD用ドライバICに用いられる半導体素子は積層方向から見たときに長方形であることが多く、長辺と短辺を有している。
【0032】
図1に示すように、本発明の開封方法の対象物である半導体パッケージにおいて、半導体素子3はプリント基板(以下「フレキシブル基板(FPC)」として説明する)の配線8上にフリップチップ実装されており、半導体素子3と配線8は接続端子(バンプ)9において接続されている。COFの場合、FPC側にはSnめっきされたCu配線8が、半導体素子3側にはAu又はAuめっきされたCuを用いたバンプ9が形成されており、両者はAu/Snの共晶によって接続される。また、フリップチップ接続方式の半導体パッケージでは、はんだバンプによる接続も多く行われている。なお、フレキシブル基板(FPC)は、樹脂基板4の上に配線8が配置されている。
【0033】
隣接する接続端子9間のギャップは10μm〜15μm程度であり、半導体素子3とFPCの隙間は20μm〜30μm程度である。この狭い隙間に封止樹脂5が充填されており、接続端子9間の絶縁と物理的保護の役割を果たしている。また、ソルダレジスト7は封止樹脂5がFPC上で流れ拡がらないよう堰としての役割も担っている。
【0034】
本発明では、封止樹脂5を除去して半導体パッケージを開封する。封止樹脂5としては、接続端子9間および配線8間を絶縁すると共に、半導体素子3とFPCとを接着し、物理的強度を保持するものであれば、特に制限されない。このような効果を有する封止樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂硬化物、フェノール樹脂硬化物、不飽和ポリエステル樹脂硬化物、アルキド樹脂硬化物などを挙げることができ、接着性、耐薬品性、電気絶縁性、充填性などの観点から、半導体パッケージの封止樹脂として広くエポキシ樹脂硬化物が採用されている。
【0035】
前記エポキシ樹脂硬化物は、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる。エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂用硬化剤などを含有し、さらに必要に応じて硬化促進剤、カップリング剤、溶剤、エラストマ、難燃剤、充填剤、着色剤などを含んでいてもよい。
【0036】
エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などがある。これらは、複数種が併用されていてもよい。
【0037】
上記のエポキシ樹脂のうち、ハロゲン化ビスフェノール化合物(テトラブロモビスフェノールAなど)とエピクロルヒドリンとを反応させて得られるエポキシ樹脂(ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールS型エポキシ樹脂など)のように、エーテル基が結合しているベンゼン環の、エーテル基に対してオルト位が塩素、臭素等のハロゲン原子で置換されているエポキシ樹脂が用いられている場合、電子吸引性のハロゲン原子がベンゼン環に結合することによりエーテル結合の開裂が起こりやすくなり、その結果、処理液によるエポキシ樹脂硬化物の分解・溶解の効率が特に良好になる傾向にある。
【0038】
エポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定されず、例えば、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物およびこれらのハロゲン化物などが挙げられる。これらは単独で使用されていてもよいし、2種以上を任意の組み合わせで用いられていてもよい。
【0039】
エポキシ樹脂用硬化剤の配合量は、エポキシ基の硬化反応を進行させることができれば特に限定はされず、好ましくは、エポキシ基1モルに対して、0.01当量〜5.0当量の範囲で、より好ましくは0.8当量〜1.2当量の範囲で使用される。
【0040】
多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール等の単環二官能フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフタレンジオール、ビフェノール等の多環二官能フェノール、およびこれらのハロゲン化物、アルキル基置換体などが挙げられる。さらに、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック、レゾールを用いることもできる。
【0041】
アミン類としては、脂肪族または芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩および脂肪族環状アミン類、グアニジン類、尿素誘導体などが挙げられる。これらの化合物の一例としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.4.0]−5−ノネン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピコリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリフェニルアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジシアンジアミド、トリルビグアニド、グアニル尿素、ジメチル尿素などが挙げられる。
【0042】
イミダゾール化合物としては、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4,5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン、ベンゾイミダゾール、1−シアノエチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0043】
酸無水物としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸、メチルハイミック酸無水物、ハイミック酸無水物、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、クロレンド酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸マレイン酸付加物、メチルヘキサヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物、無水マレイン酸とジエン化合物からディールス・アルダー反応で得られ、複数のアルキル基を有するトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。
【0044】
有機リン化合物は、有機基を有するリン化合物であれば特に限定されず、例えば、ヘキサメチルリン酸トリアミド、リン酸トリス(ジクロロプロピル)、リン酸トリス(クロロプロピル)、亜リン酸トリフェニル、リン酸トリメチル、フェニルホスホン酸、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、ジフェニルホスフィンなどが挙げられる。
【0045】
以上のような構成成分を含有するエポキシ樹脂組成物を任意の方法で硬化させることにより、本発明の処理対象となる半導体パッケージの封止樹脂を得ることができる。その硬化条件は、反応が進行する条件を任意に選択すればよい。例えば、温度に関しては、反応が進行するのであればどのような温度でもよいが、一般には室温(25℃程度)〜250℃の範囲で硬化させることが好ましい。また、この硬化反応は、加圧下、大気圧下または減圧下のいずれの条件で行ってもよい。
【0046】
(2)第一の板及び第二の板を設置する工程
次に、FPC側の外側面に第一の板1を設置し、半導体素子3側の外側面に第二の板2を配置して、前記半導体パッケージを間に挟持するよう、第一の板1と第二の板2を対向して設置する。
【0047】
第一の板1及び第二の板2は後工程において処理液に晒されるため、処理液に対して耐性を有するものであればよい。また、第一の板1及び第二の板2に荷重を加えるため、荷重によって割れや変形がない材料であればよい。
【0048】
第一の板1及び第二の板2のそれぞれの曲げ弾性率は、半導体パッケージに付与される際の処理液の温度において、好ましくは1GPa以上200GPa以下、より好ましくは10GPa以上100GPa以下である。1GPa以上とすることで固定治具6により固定した際の板のたわみや、半導体パッケージに加わる荷重の不均一化を避けることができる。また、200GPa以下となる板を選択することにより、半導体素子3を固定するための適切なサイズに加工することが容易となる利点がある。
【0049】
なお、樹脂基板4側に配置される第一の板1は、封止樹脂を除去した後に第一の板1を取り外すことなく半導体素子3の回路面を観察する観点からは、透明であることが望ましい。具体的には、第一の板1の可視光領域における光透過率が、好ましくは70%以上98%以下、さらに好ましくは80%以上95%以下である。
第一の板1の可視光領域における光透過率を70%以上とすることで、封止樹脂を溶解した後で、半導体素子の回路面を容易に観察することができ、また98%以下とすることで価格や弾性率、耐薬品性との両立を図ることができる。
【0050】
第一の板1において、上記物性を有する材料の一例としては、可視光領域における光透過率が70%以上の石英ガラス、ソーダガラス、及び硼珪酸ガラス等を挙げることができる。第一の板1の厚さとしては、0.5mm〜5mm程度であることが好ましく、1mm〜2mm程度であることがより好ましい。
【0051】
第一の板1の寸法については樹脂基板4と同程度であることが好ましく、具体的には樹脂基板4の寸法が短辺p(mm)×長辺q(mm)とし、第一の板1の寸法が短辺r(mm)×長辺s(mm)とし、短辺pと短辺r、長辺qと長辺s、が同じ方向となるように第一の板1を配置したときに、「0.7×p≦r≦1.2×p」および「0.7×q≦s≦1.2×q」の少なくとも一方の式を満たすことが好ましく、両式を同時に満たすことがより好ましい。更に好ましくは「0.8×p≦r≦1.1×p」および「0.8×q≦s≦1.1×q」の少なくとも一方の式を満たす場合であり、両式を同時に満たすことがより好ましい。特に好ましくは「0.9×p≦r≦p」および「0.9×q≦s≦q」の少なくとも一方の式を満たす場合であり、両式を同時に満たすことがより好ましい。なお、「p=q」、「r=s」と樹脂基板4、第一の板1がそれぞれ正方形であってもよい。
【0052】
「0.7×p≦r」とすることで、樹脂基板4に加わる荷重を均一化し、封止樹脂を除去した際の配線8の断線を防ぎ、また樹脂基板4の割れを防ぐことができる。また「r≦1.2×p」とすることで、第一の板1のたわみによって樹脂基板4に加わる荷重が不均一となることを防ぎ、また封止樹脂5を開封する処理液を浸透しやすくすることができる。「0.7×q≦s」の場合や「s≦1.2×q」の場合についても、「0.7×p≦r」や「r≦1.2×p」とする場合と同様のことが言える。
【0053】
ただし、半導体素子3と樹脂基板4の面積の差によっては固定治具6で加重を加えることが物理的に困難となる場合が生じる。この場合は半導体素子3の電気的な検査や観察、分析に支障のない範囲で適宜樹脂基板4を切断することで適切な大きさに加工し、この加工した樹脂基板4の面積に合わせて第一の板1の大きさを選択することができる。
【0054】
また、第二の板2の大きさは、以下の関係を満たすことが好ましい。
第二の板2のサイズを短辺x(mm)×長辺y(mm)とし、フリップチップ実装された半導体素子3のサイズを短辺a(mm)×長辺b(mm)とし、短辺aと短辺x、長辺bと長辺y、が同じ方向となるように第二の板2を配置したときに、「a≦x≦a+10」及び「b≦y≦b+10の少なくとも一方の式を満たすことが好ましく、両式を同時に満たすことがより好ましい。
【0055】
a≦xとすることで、半導体素子3に加わる荷重を均一化し、封止樹脂を除去した際の配線8の断線を防ぎ、また半導体素子3の割れを防ぐことができる。さらに固定治具6を取り外すことなく第一の板1を介して半導体素子3の回路面を観察する場合に、固定治具6に妨げられることなく観察することができる。
【0056】
また「x≦a+10(mm)」とすることで、第二の板2のたわみによって半導体素子3に加わる荷重が不均一となることを防ぎ、また封止樹脂5を開封する処理液を浸透しやすくすることができる。「b≦y」の場合や「y≦b+10(mm)」の場合についても、「a≦x」や「x≦a+10」とする場合と同様のことが言える。
【0057】
第二の板2としての材料は、石英ガラスや金属が好適に使用できる。第二の板2の厚さとしては、0.5mm〜5mm程度であることが好ましく、1mm〜2mm程度であることがより好ましい。
【0058】
(3)荷重を加えて半導体パッケージを固定する工程
図1に示すように、第一の板1及び第二の板2は、固定治具6によって荷重を加えた状態で固定される。荷重を加えて第一の板1及び第二の板2、更には半導体パッケージを固定する方法としては、公知の方法を適宜採用することができる。
【0059】
固定治具6は、樹脂を溶解する処理液に浸漬することを考慮して、処理液を入れる試験管やビーカー等の容器に入る程度の大きさであることが好ましく、また処理液の進入を阻害しないような形状であることが好ましい。
また、固定治具6は、処理液によって腐食、溶解、強度低下が生じることのない材質で構成されていることが好ましい。
【0060】
固定治具6として具体的には、図1に示すような半導体パッケージ両端から挟み込んで固定するネジ式の金属製治具およびばね式金属製クリップ等を挙げることができる。
【0061】
固定治具6の固定位置は、半導体素子3の回路面の観察を妨げない範囲で第二の板2の端部とすることが好ましい。前記端部で固定することにより、封止樹脂を溶解した後、半導体素子3の回路面や接続端子9部分の観察を行うことができる。図1では、固定治具6を半導体素子3の短辺側から挟む構造を示しているが、長辺側から挟む構造であってもよい。
【0062】
固定治具6によって第一の板1及び第二の板2に加える荷重は、好ましくは5N以上350N以下、より好ましくは10N以上300N以下である。5N以上とすることで、処理液に浸漬し、洗浄する工程において、固定治具6から半導体パッケージが外れて配線8が断線する現象を避けることができる。また350N以下とすることで半導体素子3の割れを避けることができる。
固定治具6によって第一の板1及び第二の板2並びに半導体パッケージに加わる荷重は、例えば簡易的なフォースゲージ等によって実測することができる。
【0063】
(4)処理液を付与する工程
固定治具6によって第一の板1及び第二の板2が固定され、そして荷重が加えられた状態の前記半導体パッケージに、封止樹脂5を溶解する処理液を付与する。
【0064】
封止樹脂を溶解する処理液としては、例えば発煙硝酸、混酸等の酸性溶液、エチレングリーコル等のグリコール溶液、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液、N−メチル2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶液、濃硫酸、クロム酸溶液、過マンガン酸溶液などを用いることができる。
【0065】
常圧で開封処理が可能であり、半導体素子や配線の腐食を生じる恐れが少なく、封止樹脂のみを効率良く除去できる処理液としては、アルカリ金属化合物を含む触媒(以下「特定触媒」と称する場合がある)を含有することが好ましい。アルカリ金属化合物を含む触媒は、エポキシ樹脂硬化物のエーテル結合開裂のための触媒として作用する。
【0066】
アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属の水素化物、水酸化物、ホウ水素化物、アミド化合物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、アルコラート、フェノラートなどが挙げられる。なかでも、有機溶剤への溶解性が良好で、触媒効果(イオン活性)が高く、イオンとしての毒性が低いなどの観点から、アルカリ金属塩を用いることが好ましく、さらに半導体パッケージの封止樹脂をより効率的に分解するための化合物としては、アルカリ金属リン酸類の塩が好ましい。
【0067】
アルカリ金属塩としては、上記アルカリ金属のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、アルコラート、フェノラートなどが挙げられる。リン酸類としては、リン酸、メタリン酸、次リン酸、亜リン酸(ホスホン酸)、次亜リン酸(ホスフィン酸)、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ピロ亜リン酸などが挙げられ、リン酸類の塩は、これらのリン酸類の陰イオンと、アルカリ金属の陽イオンとの塩である。なかでも、有機溶剤への溶解性の観点から、アルカリ金属リン酸類の塩の水和物を用いることが好ましい。これらの塩は、1個の金属イオンと2個の水素イオンを有する第一塩、2個の金属と1個の水素を有する第二塩、3個の金属を有する第三塩のいずれでもよく、酸性塩、アルカリ性塩、中性塩のいずれでもよい。
【0068】
特定触媒は、アルカリ金属化合物を含んでいれば、その他の任意の化合物が含有されていてもよいし、不純物が含まれていてもよい。充分なエポキシ樹脂硬化物の分解を鑑みれば、特定触媒中のアルカリ金属化合物の含有率は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、実質的にアルカリ金属化合物のみで構成されていることが望ましい。
【0069】
特定触媒は、総量として、有機溶剤中に0.001質量%〜80質量%の濃度で含有することが好ましく、0.1質量%〜30質量%の濃度で含有することがより好ましい。0.001質量%以上とすることで充分なエポキシ樹脂硬化物の分解速度が得られやすくなる。また、80質量%以下とすることで処理液を容易に調製することができる。
【0070】
特定触媒は、必ずしもすべてが溶解している必要はない。非溶解分が存在する飽和溶液においては、溶質は平衡状態にあり、溶解した化合物が失活した場合には非溶解分が溶解してそれを補うことになるので、そのような飽和溶液の使用も有用である。
【0071】
特定触媒は、エポキシ樹脂硬化物を効果的に分解させる観点から、乾燥処理してから使用することが好ましい。乾燥した特定触媒は、カールフィッシャー滴定法により測定する水分量として、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましい。
【0072】
特定触媒は、有機溶剤とともに用いることが好ましい。有機溶剤としては、前記特定触媒の少なくとも一部の量が溶解することができるものであれば特に限定されない。前記特定触媒がアルカリ金属化合物の塩のようにイオン性触媒である場合には、イオン性触媒の溶解性の観点から、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤の中から選ばれる1種以上を好ましく用いることができるが、これらに限定されることはなく、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類、アセタール、脂肪酸、酸無水物、エステル、窒素化合物、硫黄化合物(ジメチルスルホキシドなど)等の溶剤や、2以上の官能基を持つ溶剤(エステルとエーテル、アルコールとエーテルなど)も用いることができる。
【0073】
これらの有機溶剤は、単独で使用しても、数種類を組み合わせて(例えば、アミド系溶剤どうし、または、アミド系溶剤とアミド系以外の溶剤)使用してもよい。また、これらの有機溶剤以外に、任意の溶剤を併用してもよく、無機溶剤である水、アンモニアなどを混合することも可能である。
【0074】
アミド系溶剤としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、カプロラクタム、カルバミド酸エステルなどを好ましく使用できる。
【0075】
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、iso−ペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜400)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール、tert−ブチルベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール及びこれらの異性体などが挙げられる。封止樹脂を効率よく開封する観点からは、モノアルコールが好適である。
【0076】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロンなどが挙げられる。
【0077】
エーテル系溶剤としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセタール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが挙げられる。
【0078】
これらの有機溶剤の中でも、エポキシ樹脂硬化物の除去性、人体への有害性、取扱いの安全性の観点からアルコール系溶剤であることが好ましく、更にその中でもモノアルコールであることが好適である。この理由は明らかではないが次のように推測される。本発明の処理方法では、エポキシ樹脂硬化物に含まれるエステル結合が切断されることによってエポキシ樹脂硬化物が除去される。この際、イオン化した触媒と共に溶媒のアルコール性水酸基が、前記切断箇所に作用することによって、エステル交換反応が効果的に進むと考えられる。また、一般に水酸基を2つ以上有する多価アルコールは粘性が高くなる傾向が見られるため、半導体パッケージの微小な隙間に進入し、エポキシ樹脂硬化物を効率良く除去する観点からはモノアルコールを使用することが好ましい。
【0079】
前記モノアルコールの中でも、沸点が100℃〜250℃のモノアルコールが好ましく、沸点が130℃〜210℃のモノアルコールが更に好ましい。有機溶剤としてのモノアルコールの沸点が上記範囲内にあると、エポキシ樹脂硬化物を溶解させるときの加熱温度での分解や蒸発を抑えることができる。
【0080】
また、半導体パッケージの微小な隙間に進入し、エポキシ樹脂硬化物を効率良く除去するためには、室温における粘度が0.1mPa・S〜100mPa・Sのモノアルコールが好ましく、0.5mPa・S〜10mPa・Sのモノアルコールがさらに好ましい。粘度は低いほうが微少な隙間への侵入しやすいことから、粘度の下限値は特に制限はないが、粘度が低い有機溶媒は、沸点が低い傾向があり、沸点とのバランスの観点からは、0.1mPa・s以上が好ましく、0.5mPa・s以上がより好ましい。
【0081】
さらにエポキシ樹脂硬化物との親和性、相溶性の観点から、芳香族基を有するモノアルコールが好ましく、沸点や粘度の観点からフェニル基を有するモノアルコールであることがより好ましい。このようなモノアルコールとしては、具体的には、ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール、t−ブチルベンジルアルコール、2,4―ジメチルベンジルアルコール、および3−フェニル−1−プロパノールなどが挙げられ、エポキシ樹脂硬化物の溶解性、人体への有害性、薬品の安全性を考慮するとベンジルアルコールであることが好適である。
【0082】
前記処理液の好適な態様としては、特定触媒としてアルカリ金属リン酸類の塩又はその水和物と、溶媒としてモノアルコールとを含有するものを挙げることができる。
【0083】
封止樹脂を溶解する処理液の温度は使用する処理液に応じて適切な値に設定する必要がある。例えば前記発煙硝酸や混酸の場合は室温(約25℃)〜120℃の範囲で使用されることが多い。
また、特定触媒としてアルカリ金属リン酸類の塩又はその水和物、及び溶媒としてモノアルコールを含む処理液を使用する場合について例示すれば、好ましくは130℃以上210℃以下であり、より好ましくは150℃以上200℃以下である。130℃以上とすることで溶解反応が十分に進み、封止樹脂5を完全に溶解することが容易になる。また、210℃以下とすることで、樹脂基板4や封止樹脂5に著しく処理液が浸透し、樹脂基板4や封止樹脂5が膨潤して配線が断線する現象を避けることができ、取り扱いに困難を伴う高沸点の溶媒を選択する必要性を避けることができる。
【0084】
半導体パッケージに処理液を付与する方法としては、処理液中に半導体パッケージを浸漬することによって行ってもよいし、スプレーなどによって処理液を半導体パッケージに吹き付けてもよい。処理液は、撹拌機、ポンプ、気体の吹き込みなどによって撹拌してもよいし、また、浸漬処理を行う場合には、超音波により振動を与えながら処理を行うこともできる。本発明では、第一の板1及び第二の板2によって半導体パッケージが固定されるため、浸漬方法が好適に適用できる。
【0085】
封止樹脂5を溶解する処理液を半導体パッケージに付与させておく時間(例えば浸漬時間)は使用する処理液の種類や付与方法に応じて適切な値に設定する必要がある。例えば前記発煙硝酸や混酸に浸漬する場合は1分〜10分の範囲で使用されることが多い。
また、特定触媒としてアルカリ金属リン酸類の塩又はその水和物、及び溶媒としてモノアルコールを含む処理液に浸漬する場合について例示すれば、50分以上120分以下が好ましく、より好ましくは60分以上90分以下である。50分以上とすることで溶解反応が十分に進み、封止樹脂5を除去することができる。また、120分以下とすることで、半導体素子に異物等の欠陥があった場合に欠陥部分を保持したまま封止樹脂5のみを除去することができる。
【0086】
また、処理液を調製する際の雰囲気は、大気中でも不活性気体中でもよく、大気圧下(常圧下)、減圧下、加圧下のいずれでもよい。また、このようにして得られた処理液に、界面活性剤などを添加して使用することもできる。
【0087】
処理液の粘度は、適用する半導体パッケージの接続端子9間のギャップや、半導体素子3とFPCの隙間の大きさに合わせて適宜調整することが好ましく、例えば、室温における粘度が0.5mPa・s〜10mPa・s程度の処理液を使用することが好適である。また、処理液のエポキシ樹脂硬化物に対する接触角は50°以下さらに好ましくは40°以下とすることで封止樹脂をより効率的に除去することができる。
【0088】
前記処理液の粘度は、公知のE型粘度計によって室温(25℃)の条件下で測定したときの値である。また、前記処理液の接触角は、公知の接触角測定装置を用い、液滴法によってエポキシ樹脂硬化物表面の接触角を室温(25℃)の条件下で測定したときの値である。
【0089】
封止樹脂5を除去した半導体パッケージは、室温に冷却後、半導体パッケージに付着した処理液を除去する。処理液を除去するための洗浄液としては、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール、アセトン、純水およびこれらの組み合わせによって行うことが好ましい。半導体パッケージに付着した処理液を除去した後は、洗浄液を除去するための乾燥を行うことが好ましい。
【0090】
本発明の半導体パッケージの開封方法では、半導体素子3や配線8に与える損傷が低減されるため、半導体パッケージの開封前の電気的接続の状態を実質的に変えずに、半導体パッケージを開封することが可能となる。それゆえ、本発明の半導体パッケージの開封方法によれば、半導体素子3を動作させるための電気的な検査や、観察、分析が可能な状態で半導体パッケージを開封することが可能となる。これによって半導体パッケージの検査、不良解析の精度向上を図ることができるため、その工業的価値は大である。特にリジッドおよびフレキシブル配線板などに実装されたファインピッチな半導体パッケージの開封方法として有用である。
【0091】
<半導体パッケージの検査方法>
洗浄、乾燥が完了した開封済みの半導体パッケージは、図2のように封止樹脂5が除去されており、電気的検査や観察を行うことができる。本発明の半導体パッケージの検査方法では、開封済み半導体パッケージについて、下記第1〜第6の工程のうちの少なくとも1工程を行う。
【0092】
第1の工程:前記半導体パッケージのプリント基板側の外側面に配置された第一の板および半導体素子側の外側面に配置された第二の板を配置したまま、電気的検査を行う。
第2の工程:前記第一の板および前記第二の板を配置したまま、前記第一の板を介して外観観察を行う。
第3の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、外観観察を行う。
第4の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の外観観察を行う。
第5の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の表面に存在する成分の分析を行う。
第6の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、プリント基板を取り外し、更に切断、研磨又は掘削加工を行い、前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の内部構造の外観観察および構成成分の少なくとも一方の分析を行う。
【0093】
本発明の半導体パッケージの開封方法によれば、配線および半導体素子の腐食が抑えられるため、上記第1の工程のように、前記半導体パッケージの開封前の電気的接続の状態を実質的に変えずに、電気的検査を行うことが可能となる。
【0094】
前記電気的検査としては、前記半導体素子の電源端子に動作用電源、信号入力端子にディジタル信号もしくは/およびアナログ信号を印加し、出力端子から得られる応答をデータロガーや各種の信号解析装置、オシロスコープ等で観測する方法、外部回路と連動させて実際の動作状態を再現する方法、半導体検査装置を使用した動作検証方法などが挙げられる。
また、第2の工程のように前記半導体パッケージの開封前の電気的接続の状態を実質的に変えずに外観観察を行うことが可能であることから、電気的接続の不良箇所を外観から特定することも可能である。
【0095】
更に第一の板1が透明である場合には、上記第2の工程のように、第一の板1および第二の板2を配置したまま、前記プリント基板側の外側面に配置された前記第一の板1を介して、半導体素子3の回路面、接続端子9、配線8等を観察し、不具合や異常の有無を検査することができる。これにより、第一の板1および第二の板2を配置したまま、これらの部位における異物などによる電気的接続の異常を外観から確認することができる。このとき上記第1の工程で示した電気的な検査を同時に行うことも可能である。
【0096】
第1の工程による電気的な検査の結果、例えば接続不良が発生していることが明らかとなった場合は、第3の工程のように、第一の板1および第二の板2を取り外すことで、更には、上記第4の工程のようにFPCを半導体素子3から取り離すことで、半導体素子3の回路面や接続端子9周辺等の外観をより詳細に観察することが可能である。図3に開封後の半導体パッケージから第一の板、第二の板および固定治具を取り外した状態を示す。なお、図3(a)はチップ長辺から見た断面図であり、図3(b)はチップ短辺から見た断面図である。
【0097】
半導体素子3の回路面や接続端子9周辺等の外観のより詳細な観察では、具体的には、接続端子間の異物の有無や絶縁不良発生箇所の有無、半導体素子および/またはプリント基板の回路面の異常個所等を確認することができる。
【0098】
前記外観観察としては、金属顕微鏡、蛍光顕微鏡等の光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型イオン顕微鏡(SIM)等を用いて、半導体素子および/またはプリント基板の回路面や、これらの接続端子部分を観察したり、回路面に付着した異物、絶縁破壊痕、イオンマイグレーション等によって生じた配線や接続端子の絶縁劣化痕の形状の観察が挙げられる。
【0099】
また、上記第5の工程のように、前記半導体素子3および/またはプリント基板の回路面に存在する成分の分析を精密に行うことも可能である。前記成分分析の方法としては、エネルギー分散型X線分析法(EDX)、X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法、質量分析法(MS、TOF−SIMS等)、赤外分光法(IR)等を用いて半導体素子および/またはプリント基板の回路面を構成する金属・非金属元素、有機物を分析したり、回路面に付着した異物の成分、絶縁破壊痕、イオンマイグレーション等によって生じた配線や接続端子の劣化生成物の分析が挙げられる。なお、異物としては製造工程中で発生しうる人体起因の異物、製造工程の環境中、および搬送トレイやラック等の容器から発生しうる有機物、金属等が考えられる。
【0100】
図4は、第4または第5の工程の一例を示す図である。本発明の方法を用いて半導体パッケージを開封し、それから第一の板1、第二の板2および固定治具6を取り外したのち、樹脂基板4も取り外す。この状態の半導体素子3やプリント基板について、第4の工程では外観観察を行い、第5の工程では表面に存在する成分の分析を行う。図4に示されるように、樹脂基板4を取り外す際に、配線8の一部が切断されてもよい。
【0101】
更には第6の工程のように、第5の工程で確認した分析対象を詳細に調査することを目的に、研磨装置や切断装置によって切断した断面を形成し、或いはFIB(Focused Ion Beam)法やCP(Cross-section Polishing)法等を用いて前記半導体素子や前記プリント基板の特定箇所の断面を形成して、内部構造の観察や成分の分析を行うことも可能である。
【0102】
これらの電気的検査、外観観察、及び成分分析は、適宜これらの方法を組み合わせて実施することもでき、これにより例えばイオンマイグレーションによる絶縁不良箇所や異物の分析も可能となる。
【実施例】
【0103】
以下の実施例および比較例では半導体パッケージを開封する対象としてCOF方式の半導体パッケージを例示するが、プリント基板上にフリップチップ実装される半導体パッケージであれば対象は特に限定されない。なお、以下の実施例において、%は質量%を表す。
【0104】
[実施例1]
<半導体パッケージの準備>
半導体パッケージのFPCのサイズは短辺25mm×長辺40mm、FPC上に実装されている半導体素子のサイズは短辺2mm×長辺20mmのものを使用した。また、フリップチップ実装に先立ち、半導体素子の回路面には異物を模擬して油性ペンで予め点状のマーキングを1点施した。FPCとしては、住友金属鉱山社製の製品名S’perflex(厚み30μm)を用いた。
【0105】
FPCにはSnめっきされたCu配線が形成され、半導体素子にはAuバンプが形成され、Cu配線とAuバンプとがAu/Snの共晶によって接続されている。隣接するAuバンプ間のギャップは約10μmであり、半導体素子とFPCの隙間は約20μmである。この隙間にエポキシ樹脂硬化物が充填されている。
【0106】
また、前記エポキシ樹脂硬化物は、以下のようにして形成した。
エポキシ当量160のビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(東都化成株式会社製商品名YDF−8170C)80質量部、エポキシ当量140のナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ工業株式会社製商品名HP−4032D)20質量部、硬化剤として環状酸無水物(ジャパンエポキシレジン株式会社商品名エポキュアYH306)135質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製商品名2E4MZ)1質量部、カップリング剤としてγ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(チッソ株式会社製商品名サイラエースS510)1質量部を配合し、らいかい機にて混練分散した後、真空脱泡して液状エポキシ樹脂組成物を調整した。
調整した液状エポキシ樹脂組成物を上記隙間にディスペンス方式でアンダーフィルした後、150℃、120分間加熱処理して硬化することで作製した。
【0107】
<半導体パッケージの固定>
第一の板及び第二の板として、2枚の透明石英ガラス板(ジーエルサイエンス株式会社製)を準備した。透明石英ガラス板の厚さは1mmであり、180℃における曲げ弾性率は65GPaであった。可視光領域における光透過率は90%であった。第一の板のサイズはFPCと同じサイズ(短辺25mm×長辺40mm)とし、第二の板のサイズは短辺7mm×長辺25mmとした。
【0108】
前記半導体パッケージを2枚の前記透明石英ガラス板で挟み、2つの金属製クランプ(株式会社ライオン事務器社製、蛇の目クリップ#54)により荷重を加えて固定した。なお、第一の板はFPC側に、第二の板は半導体素子側に配置した。また、第一の板及び第二の板は、それぞれが半導体素子と短辺同士および長辺同士が同一の方向となるように配置し、短辺をそれぞれクランプで挟んだ。第一の板及び第二の板に加えた荷重は120Nであった。
【0109】
<処理液の調製>
試験管に10gのベンジルアルコールと0.7gのリン酸三カリウムを入れて処理液Aを調製した。アルカリ金属化合物は乾燥処理してから使用した。アルカリ金属化合物の乾燥処理は、300℃の乾燥機中で1時間加熱して行った。乾燥後の水分量をカールフィッシャー滴定法により測定した結果、2%程度であった。また、調製した処理液の粘度は、5Pa・s程度であった。この試験管をオイルバス中にて180℃に保持した。
【0110】
<半導体パッケージの開封>
第一の板及び第二の板に挟持され荷重が加えられた状態の半導体パッケージを、試験管の処理液Aの中に浸漬し、70分間保持したのち取り出した。取り出した半導体パッケージは室温まで冷却した後、イソプロピルアルコール、アセトン、純水の順に洗浄し、その後80℃の乾燥機中で1時間乾燥した。
【0111】
[実施例2〜13]
実施例1において、第一の板の材質または光透過率;第二の板の大きさ、材質または曲げ弾性率;処理液の種類、温度または時間;第一の板及び第二の板に加える荷重;を表1に示す種々の条件に変えて処理した。
【0112】
[比較例1]
半導体パッケージに第一の板及び第二の板を配置せずに、実施例1と同じ処理液、溶解条件で処理した。処理条件を表1に示す。
【0113】
[比較例2〜3]
半導体パッケージに第一の板及び第二の板を配置せずに、処理液として発煙硝酸または混酸を使用した。処理条件を表1に示す。
【0114】
[比較例4]
半導体パッケージを注型用エポキシ樹脂中に埋め込んで硬化させ、半導体素子のAuバンプ近傍をカッターで切断した後、切断面を研磨した。注型用エポキシ樹脂はビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製エピコート815)10質量部にアミン系硬化剤(和光純薬社製トリエチレンテトラミン)1質量部を配合したものを使用した。
【0115】
[比較例5]
ビルドアップ基板の製造等に使用されるレーザービア穴あけ装置(日立ビアメカニクス社製、COレーザー加工機LCO−1B21)を使用し、炭酸ガスレーザーを半導体パッケージのFPC面から照射した。レーザーの焦点は半導体素子の回路面に施した前記の模擬異物に設定した。照射条件は、ビーム径80μm、周波数1000Hz、パルス幅8μsec、ショット数5とした。
【0116】
【表1】

【0117】
表1における表記は、以下のものを示す。
・着色石英ガラス:実施例1で使用した石英ガラスにPtスパッタ処理を施したもの。石英ガラスの厚さは実施例と同じ1mmである。
・フッ素樹脂:ニチアス株式会社社製、商品名ナフロン、厚さ1mm
【0118】
実施例1〜13および比較例1〜5を以下の評価項目で評価した。評価結果を表2に示す。
【0119】
1)配線の断線の有無:
半導体パッケージのFPC面から顕微鏡で観察し、配線の断線の有無および断線した配線の数を検査した。評価基準は以下の通りである。
G1:断線なし
G2:一箇所以上3割未満の配線に断線が見られた
G3:3割以上の配線に断線が見られた
【0120】
2)封止樹脂残り:
FPCを半導体素子から剥離し、半導体素子の回路面を蛍光顕微鏡で観察して回路面上に付着した樹脂の有無を検査した。評価基準は以下の通りである。
G1:樹脂残りなし
G2:接続端子間に樹脂残りあり
G3:樹脂溶解なし
【0121】
3)接続端子や配線の腐食状態:
前記2)の検査の後、顕微鏡で接続端子や配線の腐食状態を検査した。評価基準は以下の通りである。
G1:腐食なし
G2:接続端子、配線の一部が腐食により欠けている
G3:接続端子、配線の一部が腐食により消失している
【0122】
4)その他:
半導体素子の割れや封止樹脂溶解後の異物の残存状態等、1)〜3)以外に半導体素子の電気的検査や観察を妨げる現象を検査した。
【0123】
【表2】

【0124】
表2に示すように、本発明に係る半導体パッケージの封止樹脂の開封方法によれば、配線の断線、封止樹脂残りがなく、また接続端子や配線の腐食がなく封止樹脂を除去し、半導体素子の観察や可能であることが示された。さらに半導体素子の回路面に異物が存在した場合は、異物の観察も可能であることが示された。
なお、350Nを超えて荷重を加えた場合には、半導体素子の割れが発生する場合があった。
【符号の説明】
【0125】
1 第一の板
2 第二の板
3 半導体素子
4 樹脂基板
5 封止樹脂
6 固定治具
7 ソルダレジスト
8 配線
9 接続端子(バンプ)
10 配線の断線箇所
11 樹脂基板4と配線8の剥離箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板に半導体素子がフリップチップ実装され封止樹脂により封止された半導体パッケージを準備する工程と、
前記プリント基板側の外側面に第一の板を設置し、前記半導体素子側の外側面に第二の板を配置して、前記半導体パッケージを間に挟持するよう、前記第一の板と前記第二の板を対向して設置する工程と、
前記第一の板と前記第二の板の間に荷重を加えて前記半導体パッケージを固定する工程と、
前記固定された前記半導体パッケージに、前記封止樹脂を溶解する処理液を付与する工程と、
を備える、前記封止樹脂を除去する半導体パッケージの開封方法。
【請求項2】
前記第一の板と前記第二の板の間の荷重が、5N以上350N以下である請求項1に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項3】
前記第一の板及び前記第二の板の曲げ弾性率が、付与する前記処理液の温度において、それぞれ1GPa以上200GPa以下である請求項1又は請求項2に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項4】
前記半導体素子の面方向の面積を短辺a(mm)×長辺b(mm)とし、前記第二の板の面方向の面積を短辺x(mm)×長辺y(mm)とし、短辺aと短辺x、長辺bと長辺yとが同じ方向となるように第二の板を配置したときに、x及びyの値がa≦x≦a+10及びb≦y≦b+10の少なくとも一方の関係を満たす請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項5】
前記第一の板の可視光領域における光透過率が、70%以上98%以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項6】
前記処理液が、アルカリ金属リン酸類の塩又はその水和物、及び溶媒としてモノアルコールを含有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項7】
前記半導体パッケージに付与するときの前記処理液の温度が130℃以上210℃以下であり、前処理液を付着させる時間が50分以上120分以下である請求項6に記載の半導体パッケージの開封方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の半導体パッケージの開封方法を用いて、前記半導体パッケージから封止樹脂を除去した後、下記第1〜第6の工程のうちの少なくとも1工程を行う、半導体パッケージの検査方法。
第1の工程:前記半導体パッケージのプリント基板側の外側面に配置された第一の板および半導体素子側の外側面に配置された第二の板を配置したまま、電気的検査を行う。
第2の工程:前記第一の板および前記第二の板を配置したまま、前記第一の板を介して外観観察を行う。
第3の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、外観観察を行う。
第4の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の外観観察を行う。
第5の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、更にプリント基板を取り外して前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の表面に存在する成分の分析を行う。
第6の工程:前記第一の板および前記第二の板を取り外した後、プリント基板を取り外し、更に切断、研磨又は掘削加工を行い、前記半導体素子および前記プリント基板の少なくとも一方の内部構造の外観観察および構成成分の少なくとも一方の分析を行う。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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