説明

半導体モジュール

【課題】本明細書では、基板基材が熱によって劣化することを抑制することができる構造の半導体モジュールを開示する。
【解決手段】半導体モジュール2は、基板基材4内にIGBT10、ダイオード20、プリント配線30〜44、及び、断熱部50が配置されて形成されている。IGBT10とダイオード20は、基板基材4内に並べて配置されている。プリント配線30は、IGBT10及びダイオード20と接続されている。同様に、プリント配線34、36は、IGBT10と接続されている。また、プリント配線38は、ダイオード20と接続されている。プリント配線30〜44の一部は、基板基材4の表面に露出している。断熱部50は、IGBT10と基板基材4との間、ダイオード20と基板基材4との間、及び、プリント配線30、34、36、38と基板基材4との間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電子素子と、電子素子に接続されている回路パターンとが基板基材内に内蔵されている半導体モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−198999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の半導体モジュールでは、電子素子の作動時に電子素子が発する熱によって、電子素子及び回路パターンが高温となる場合がある。その場合に、電子素子及び回路パターンの周囲に配置されている基板基材が熱によって劣化するおそれがある。
【0005】
本明細書では、基板基材が熱によって劣化することを抑制することができる半導体モジュールを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示する半導体モジュールは、基板基材と、基板基材の内部に配置されている半導体素子と、半導体素子に接続され、基板基材を貫通して基板基材の表面にまで伸びる導電部と、半導体素子と基板基材との間、及び、導電部と基板基材との間に配置されている断熱部と、を有する。
【0007】
上記の半導体モジュールでは、半導体素子と基板基材との間、及び、導電部と基板基材との間に断熱部が配置されている。そのため、半導体素子及び導電部が高温になる場合であっても、断熱部によって基板基材に熱が伝わりにくくなる。そのため、基板基材が熱によって劣化することを抑制することができる。
【0008】
前記断熱部は、当該断熱部が伸びる方向に沿って伸びる高熱伝導部材と、高熱伝導部材の表面を被覆し、高熱伝導部材より熱伝導率が低い低熱伝導部材とを含んでいてもよい。高熱伝導部材は、断熱部が伸びる方向への熱伝導率が、断熱部が伸びる方向と直交する方向への熱伝導率よりも低くてもよい。この構成によると、半導体素子及び導電部が高温になる場合であっても、半導体素子及び導電部から、基板基材に熱がより伝わり難くなる。その結果、基板基材が熱によって劣化することをより効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施例の半導体モジュールを模式的に示す断面図。
【図2】第2実施例の半導体モジュールを模式的に示す部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施例)
図1に示すように、本実施例の半導体モジュール2は、基板基材4内に、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)10、ダイオード20、プリント配線30〜44、及び、断熱部50の各要素が配置されて形成されている。IGBT10とダイオード20は、基板基材4内に並べて配置されている。プリント配線30は、IGBT10及びダイオード20と接続されている。プリント配線34、36は、IGBT10と接続されている。また、プリント配線38は、ダイオード20と接続されている。プリント配線30〜44の一部は、基板基材4の表面に露出している。断熱部50は、IGBT10と基板基材4との間、ダイオード20と基板基材4との間、及び、プリント配線30、34、36、38と基板基材4との間にそれぞれ配置されている。以下、各部材について詳しく説明する。
【0011】
基板基材4は、本実施例の半導体モジュール2の基板を構成するための基材である。基板基材4は、上記のIGBT10、ダイオード20、各プリント配線30〜44、及び、断熱部50を内蔵している。本実施例では、基板基材4には、FR−4(ガラス繊維製の布材にエポキシ樹脂を含ませて熱硬化処理を行ったもの)が用いられている。図1に示すように、基板基材4は、上記のIGBT10、ダイオード20、各プリント配線30〜44、及び、断熱部50の周囲を覆うように配置(形成)されている。
【0012】
IGBT10は、縦型のIGBTである。IGBT10は、半導体基板11の表面(図中の上面)にエミッタ電極12及びゲート電極パッド14を備え、半導体基板11の裏面(図中の下面)にコレクタ電極16を備える。本実施例では、半導体基板11には、SiC基板が用いられている。また、エミッタ電極12、ゲート電極パッド14、コレクタ電極16には、それぞれ、Alが用いられている。半導体基板11には、図示しない半導体素子構造が形成されている。エミッタ電極12は、半導体基板11の表面側に形成されたエミッタ領域(図示省略)にオーミック接続している。ゲート電極パッド14は、半導体基板11の表面側に形成されたゲート電極(図示省略)に電気的に接続されている。コレクタ電極16は、半導体基板11の裏面側に形成されたコレクタ領域(図示省略)にオーミック接続している。IGBT10は、スイッチング素子として機能する。本実施例では、IGBT10が動作すると、IGBT10が高温になる場合がある。
【0013】
ダイオード20は、縦型のダイオード素子である。本実施例では、ダイオード20は、基板基材4内で、上記のIGBT10と並べて配置されている。ダイオード20は、半導体基板21の表面(図中の上面)にアノード電極22を備え、裏面(図中の下面)にカソード電極24を備える。本実施例では、半導体基板21にはSiC基板が用いられている。半導体基板21には、図示しない半導体素子構造が形成されている。アノード電極22は、半導体基板21の表面側(図中の上面側)に形成されたアノード領域(図示省略)にオーミック接続している。カソード電極24は、半導体基板21の裏面側(図中の下面側)に形成されたカソード領域(図示省略)にオーミック接続している。本実施例では、ダイオード20が動作すると、ダイオード20が高温になる場合がある。
【0014】
プリント配線30〜44は、いずれも、導電性部材によって形成された部材である。本実施例では、プリント配線30〜44には、Cuが用いられている。他の例では、プリント配線30〜44には、W等を用いることもできる。
【0015】
プリント配線30は、基部30a及び貫通ビア部30b、30cを有する。基部30aは、板状であって、その表面(図中の上面側)が、IGBT10のコレクタ電極16と、ダイオード20のカソード電極24とに電気的に接続される。基部30aの一端(図中の左側端部)は、基板基材4を貫通して基板基材4の側面(図中の左側面)に露出する。なお、基部30aの他端(図中の右側端部)は、断熱部50によって覆われている。貫通ビア部30b、30cは、基部30aの裏面(図中の下面側)に対して直交する向きに設けられている。貫通ビア部30b、30cの端部(図中の下端部)は、基板基材4を貫通して基板基材4の裏面(図中の下側面)に露出する。
【0016】
プリント配線32は、図示しない位置において、図示しない他のプリント配線や素子等と接続されている。プリント配線32は、IGBT10とダイオード20のいずれにも接続されていない。そのため、本実施例では、プリント配線32の周囲には断熱部50が配置されていない。
【0017】
プリント配線34は、基部34a及び貫通ビア部34bを有する。基部34aは、その裏面(図中の下面)がIGBT10のエミッタ電極12に電気的に接続される。基部34aに対して直交する向きに設けられている貫通ビア部34bの端部(図中の上端部)は、基板基材4を貫通して基板基材4の表面(図中の上面)に露出する。
【0018】
プリント配線36は、一端(図中の下端部)がゲート電極パッド14と接続されている。プリント配線36は、ゲート電極パッド14に対して直交する方向に伸びている。プリント配線36の他端(図中の上端部)は、基板基材4を貫通して基板基材4の表面(図中の上面)に露出する。
【0019】
プリント配線38は、基部38a及び貫通ビア部38bを有する。基部38aは、その裏面(図中の下面)がダイオード20のアノード電極22に電気的に接続される。基部38aに対して直交する向きに設けられている貫通ビア部38bの端部(図中の上端部)は、基板基材4を貫通して基板基材4の表面(図中の上面)に露出する。なお、基部38aの端部(図中の右側端部)は、断熱部50によって覆われている。
【0020】
プリント配線40は、一部が基板基材4の表面(図中の上面)に露出する位置に設けられている。また、プリント配線42、44は、一部が基板基材4の裏面(図中の下面)に露出する位置に設けられている。プリント配線40〜44は、いずれも、IGBT10及びダイオード20と接続されていない。そのため、本実施例では、プリント配線40〜44のいずれの周囲にも断熱部50が配置されていない。
【0021】
断熱部50は、熱伝導率の低い低熱伝導部材によって形成されている。本実施例では、断熱部50は、熱伝導率の低い低熱伝導部材であるポリイミドによって形成されている。本実施例では、断熱部50は、主に、IGBT10と基板基材4との間、ダイオード20と基板基材4との間、及び、プリント配線30、34、36、38と各基板基材4との間に、それぞれ配置されている。また、断熱部50は、並んで配置されているIGBT10とダイオード20の間にも配置されている。さらに、断熱部50は、ダイオード20の端部(図中右側端部)、基部30aの端部、及び、基部38aの端部を覆うように配置されている。本実施例の半導体モジュール2では、断熱部50を備えるため、IGBT10、ダイオード20、及び、プリント配線30、34、36、38が高温になる場合であっても、基板基材4に熱が伝わりにくくなる。
【0022】
以上、本実施例の半導体モジュール2の構成を説明した。なお、本実施例では、図1に示すように、半導体モジュール2には、外部素子60、66が接続されている。外部素子60は、例えばICであって、端子62、64を備えている。端子62は上記の貫通ビア部34bの露出部分に接続され、端子64は上記のプリント配線40の露出部分に接続されている。これにより、外部素子60が半導体モジュール2に接続される。また、外部素子66は、例えば任意の電子部品であって、上記のプリント配線42、44の露出部分に接続されている。これにより、外部素子66も半導体モジュール2に接続される。本実施例の半導体モジュール2では、IGBT10及びダイオード20が基板基材4内に配置されているため、図1のように、基板の両面に外部素子60、66を配置することができる。
【0023】
本実施例の半導体モジュール2では、IGBT10及びダイオード20が作動すると、IGBT10及びダイオード20が発熱する。IGBT10及びダイオード20で発生した熱は、プリント配線30、34、36、38に伝えられる。プリント配線30、34、36、38の一端は基板基材4の表面に露出しているため、プリント配線30、34、36、38に伝えられた熱は基板基材4の表面から外部に放熱される。ここで、IGBT10及びダイオード20が高温になると、IGBT10及びダイオード20と接続されているプリント配線30、34、36、38も高温となる。本実施例の半導体モジュール2では、上記の通り、断熱部50が設けられている。そのため、IGBT10、ダイオード20、及び、プリント配線30、34、36、38が高温になる場合であっても、断熱部50によって基板基材4に熱が伝わりにくくなる。そのため、基板基材4が熱によって劣化することを抑制することができる。なお、本実施例では、IGBT10及びダイオード20が「半導体素子」の一例である。また、プリント配線30、34、36、38が「導電部」の一例である。
【0024】
(第2実施例)
第2実施例の半導体モジュールについて、図2を参照して、第1実施例と異なる点を中心に説明する。図2は、第2実施例の半導体モジュール2を示す部分拡大断面図であって、図1の一点鎖線部に相当する部分のみを拡大して図示したものである。第2実施例では、半導体モジュール2の基本的構成は第1実施例の半導体装置2(図1参照)と共通する。ただし、第2実施例の半導体モジュール2では、図2に示すように、断熱部50の構造が第1実施例とは異なる。第2実施例では、図2に示すように、断熱部50は、高熱伝導部材100と、低熱伝導部材52とを有している。
【0025】
高熱伝導部材100は、断熱部50が伸びる方向に沿って伸びている。高熱伝導部材100の表面は、高熱伝導部材100より熱伝導率が低い低熱伝導部材52によって被覆されている。低熱伝導部材52は、上記の第1実施例の断熱部50を構成する低熱伝導部材と同様の部材であり、ポリイミドにより形成されている。高熱伝導部材100は、低熱伝導部材52よりも熱伝導率が高い部材である。また、本実施例では、高熱伝導部材100は、断熱部50が伸びる方向(図2の矢印A方向)への熱伝導率が、断熱部50が伸びる方向と直交する方向(図2の矢印B方向)への熱伝導率よりも低い部材である。即ち、本実施例の高熱伝導部材100は、熱伝導率の異方性を備える部材である。本実施例では、高熱伝導部材100には、カーボンナノチューブが用いられている。
【0026】
従って、高熱伝導部材100は、IGBT10、ダイオード20、及び、プリント配線30、34、36、38から当該高熱伝導部材100に伝導された熱の大部分を、断熱部50が伸びる方向に伝導させることができる。同時に、高熱伝導部材100は、当該高熱伝導部材100に伝導された熱が、基板基材4に伝わることを抑制することもできる。なお、第2実施例では、図2に図示した部分以外の断熱部50も、同様の構成を備えている。
【0027】
以上、第2実施例の半導体モジュール2の構成を説明した。第2実施例の半導体モジュール2では、断熱部50は、低熱伝導部材52と高熱伝導部材100とを備える。高熱伝導部材100は、上記の通り、熱伝導率の異方性を備えている。そのため、第2実施例の半導体モジュール2では、IGBT10、ダイオード20、及び、プリント配線30、34、36、38が高温になる場合であっても、断熱部50によって基板基材4に熱が伝わりにくくなる。そのため、基板基材4が熱によって劣化することをより効果的に抑制することができる。
【0028】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0029】
(変形例1) 半導体モジュール2には、上記のIGBT10及びダイオード20に限らず、MOSFET等、他の半導体素子が備えられていてもよい。また、備えられる半導体素子の数も、2個には限られない。また、IGBT10の半導体基板11及びダイオード20の半導体基板21も、上記のSiC製のものには限られず、Si製のものやGaN製のものであってもよい。
【0030】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0031】
2:半導体モジュール
4:基板基材
10:IGBT
11:半導体基板
12:エミッタ電極
14:ゲート電極パッド
16:コレクタ電極
20:ダイオード
21:半導体基板
22:アノード電極
24:カソード電極
30、32、34、36、38、40、42、44:プリント配線
50:断熱部
52:低熱伝導部材
60、66:外部素子
62、64:端子
100:高熱伝導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板基材と、
基板基材の内部に配置されている半導体素子と、
前記半導体素子に接続され、前記基板基材を貫通して前記基板基材の表面にまで伸びる導電部と、
前記半導体素子と前記基板基材との間、及び、前記導電部と前記基板基材との間に配置されている断熱部と、を有する半導体モジュール。
【請求項2】
前記断熱部は、当該断熱部が伸びる方向に沿って伸びる高熱伝導部材と、高熱伝導部材の表面を被覆し、高熱伝導部材より熱伝導率が低い低熱伝導部材とを含んでおり、
前記高熱伝導部材は、前記断熱部が伸びる方向への熱伝導率が、前記断熱部が伸びる方向と直交する方向への熱伝導率よりも低い、請求項1に記載の半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−115102(P2013−115102A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257446(P2011−257446)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】