説明

半導体レーザ及びそれを備えた光モジュール、光通信装置、光通信システム

【課題】垂直方向の遠視野像を狭くすること。
【解決手段】本発明は、半導体基板10上に設けられたn型の下部クラッド層12と、下部クラッド層12上に設けられ、複数の量子ドット38が形成された量子ドット層30と複数の量子ドットを覆うバリア層32とが交互に複数積層された量子ドット活性層14と、量子ドット活性層上に設けられたp型の上部クラッド層16と、を備え、量子ドット活性層は、複数のバリア層のうち最も高い屈折率を有するバリア層よりも下部クラッド層側及び上部クラッド層側にあるバリア層の少なくとも一方で、バリア層の屈折率が、最も高い屈折率を有するバリア層から下部クラッド層又は上部クラッド層に最も近いバリア層に向かって低下する半導体レーザである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ及びそれを備えた光モジュール、光通信装置、光通信システムに関し、特に量子ドット活性層を用いた半導体レーザ及びそれを備えた光モジュール、光通信装置、光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、量子ドット活性層を用いた半導体レーザ(以下、量子ドット半導体レーザと称す)が開発されている(例えば、特許文献1)。量子ドットは、3次元の狭い領域にキャリアを閉じ込めた構造をしており、量子ドット内のキャリアは、運動が量子化され、離散的なエネルギー準位を形成する。これにより、量子ドット半導体レーザは、発振閾値の低下、温度特性の改善といった優れた特性が得られることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−85665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
量子ドット活性層は、複数の量子ドットが形成された量子ドット層と、複数の量子ドットを覆うバリア層と、が交互に積層された構造を有する。量子ドットには大きな歪みが生じることから、その歪みを抑えるため、バリア層を厚くしている。また、量子ドットは小さく、1つの量子ドットから発光できる光強度は小さいため、十分な光強度を得るために、量子ドット層とバリア層とを交互に複数積層している。これらのため、量子ドット半導体レーザでは、活性層が厚くなる傾向にある。
【0005】
このように、量子ドット半導体レーザでは、活性層が厚くなるため、垂直方向(活性層の膜厚方向)の遠視野像(FFP:Far Field Pattern)が拡がる傾向にある。半導体レーザと光ファイバとの光結合効率を向上させるには、半導体レーザからのレーザ光は円形に近いことが求められる。しかしながら、量子ドット半導体レーザでは、垂直方向の遠視野像が拡がってしまうことから、光ファイバに効率よく光結合させることが難しい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、量子ドット活性層を用いた半導体レーザにおいて、垂直方向の遠視野像を狭くすることが可能な半導体レーザ及びそれを備えた光モジュール、光通信装置、光通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基板上に設けられ、第1導電型を有する下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に設けられ、複数の量子ドットが形成された量子ドット層と前記複数の量子ドットを覆うバリア層とが交互に複数積層された量子ドット活性層と、前記量子ドット活性層上に設けられ、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型を有する上部クラッド層と、を備え、前記量子ドット活性層は、複数の前記バリア層のうち最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記下部クラッド層側にあるバリア層及び前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記上部クラッド層側にあるバリア層の少なくとも一方で、前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって又は前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下することを特徴とする半導体レーザである。本発明によれば、量子ドット活性層の光の閉じ込め効果が弱まるため、垂直方向の近視野像を伸ばすことができ、その結果、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0008】
上記構成において、前記量子ドット活性層は、前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記下部クラッド層側にある前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下し、且つ、前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記上部クラッド層側にある前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下する構成とすることができる。この構成によれば、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができるため、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。
【0009】
上記構成において、前記最も高い屈折率を有するバリア層は、前記量子ドット活性層の膜厚方向の中央部にある構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記下部クラッド層の屈折率と同じ大きさであり、前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記上部クラッド層の屈折率と同じ大きさである構成とすることができる。この構成によれば、量子ドット活性層の屈折率の高い領域を量子ドット活性層の膜厚方向の中央近傍に寄せることができる。このため、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができるため、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。
【0011】
上記構成において、前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記下部クラッド層の屈折率よりも低く、前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記上部クラッド層の屈折率よりも低い構成とすることができる。この構成によれば、量子ドット活性層とクラッド層との間の実効的な屈折率の差を小さくでき、量子ドット活性層の屈折率が高い領域を量子ドット活性層の膜厚方向の中央近傍により寄せることができる。このため、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができるため、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。
【0012】
上記構成において、前記下部クラッド層の屈折率と前記上部クラッド層の屈折率とは同じ大きさであり、複数の前記バリア層の屈折率は、前記量子ドット活性層の膜厚方向の中央部に位置する前記バリア層を軸に対称となっている構成とすることができる。この構成によれば、近視野像の垂直方向の対象性を良好にすることができる。
【0013】
上記構成において、1つの前記バリア層の屈折率は、前記バリア層の膜厚方向で一定である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記量子ドット活性層は、前記量子ドット層が6層以上積層されていて、前記複数の量子ドットを覆う前記バリア層の膜厚は25nm以上である構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光モジュールである。本発明によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザを用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光モジュールを得ることができる。
【0016】
本発明は、上記記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光通信装置である。本発明によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザを用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光通信装置を得ることができる。
【0017】
本発明は、上記記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光通信システムである。本発明によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザを用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光通信装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、量子ドット活性層の光の閉じ込め効果が弱まるため、垂直方向の近視野像を伸ばすことができ、その結果、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、実施例1に係る半導体レーザの断面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)の一点鎖線領域の拡大図である。
【図2】図2は、量子ドット層とバリア層とが1層ずつ積層された状態の断面模式図の例である。
【図3】図3は、比較例1に係る半導体レーザの量子ドット活性層が有するバリア層の屈折率分布を説明する模式図の例である。
【図4】図4は、実施例1に係る半導体レーザの量子ドット活性層が有するバリア層の屈折率分布を説明する模式図の例である。
【図5】図5は、比較例2に係る半導体レーザの断面模式図の例である。
【図6】図6は、比較例2に係る半導体レーザの屈折率分布を説明する模式図の例である。
【図7】図7は、実施例2に係る半導体レーザの量子ドット活性層が有するバリア層の屈折率分布を説明する模式図の例である。
【図8】図8(a)は、実施例2に係る半導体レーザの実効的な屈折率を説明する模式図の例であり、図8(b)は、実施例1に係る半導体レーザの実効的な屈折率を説明する模式図の例である。
【図9】図9は、下部クラッド層に最も近いバリア層から連続する2層のバリア層及び上部クラッド層に最も近いバリア層から連続する2層のバリア層のAl組成比に対する、垂直方向遠視野像の半値全幅のシミュレーション結果である。
【図10】図10は、実施例3に係る光モジュールのブロック図の例である。
【図11】図11は、実施例4に係る光通信装置のブロック図の例である。
【図12】図12は、実施例5に係る光通信システムのブロック図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1(a)は、実施例1に係る半導体レーザの断面模式図の例であり、図1(b)は、図1(a)の一点鎖線領域の拡大図である。図1(a)のように、実施例1に係る半導体レーザ100は、n型GaAs半導体基板10上に、n型AlGaAs層からなる下部クラッド層12が設けられている。下部クラッド層12上に、量子ドット活性層14が設けられている。量子ドット活性層14の詳細については後述する。量子ドット活性層14上に、p型AlGaAs層からなる上部クラッド層16が設けられている。なお、下部クラッド層12と上部クラッド層16とは、反対の導電型であれば良く、例えば、p型GaAs基板を用い、下部クラッド層12がp型クラッド層、上部クラッド層16がn型クラッド層である場合でもよい。
【0022】
上部クラッド層16上に、p型GaAs層からなるコンタクト層18が設けられている。上部クラッド層16及びコンタクト層18は、リッジ部20を形成している。リッジ部20の幅Wは2μmである。リッジ部20の両側には、量子ドット活性層14に達して、その表面を露出させる凹部22が形成されている。凹部22には、酸化シリコン膜からなる保護膜24が埋め込まれている。リッジ部20のコンタクト層18上に、p電極26が設けられている。n型GaAs半導体基板10の下面には、n電極28が設けられている。
【0023】
図1(b)のように、量子ドット活性層14は、複数の量子ドットが形成された量子ドット層30と、量子ドット層30上に設けられ、複数の量子ドットを覆うバリア層32と、が交互に複数積層されている。量子ドット層30の積層数は10層である。量子ドット活性層14と下部クラッド層12との間には、AlGaAs層からなる下部ガイド層34が設けられている。量子ドット活性層14と上部クラッド層16との間には、AlGaAs層からなる上部ガイド層36が設けられている。上部ガイド層36は、量子ドット活性層14の最上層の量子ドット層30に形成された量子ドットを覆うバリア層としての機能も有する。
【0024】
図2は、量子ドット層30とバリア層32とが1層ずつ積層された状態の断面模式図の例である。図2のように、量子ドット層30には、水平方向に設けられた複数の量子ドット38が形成されている。量子ドット38は、InAsにより形成され、その高さは5nmである。量子ドット38間には、膜厚が5nmのGaAs層40が設けられている。即ち、量子ドット層30は、量子ドット38と、その間に設けられたGaAs層40と、で構成される。量子ドット層30上には、量子ドット38及びGaAs層40を覆って、膜厚が35nmのAlGaAs層からなるバリア層32が設けられている。なお、GaAs層40の代わりにAlGaAs層を設けてもよい。
【0025】
上述したように、下部クラッド層12、下部ガイド層34、量子ドット活性層14を構成するバリア層32、上部ガイド層36、及び上部クラッド層16は、全てAlGaAs層からなる。そこで、表1を用いて、各層のAl組成比について説明する。表1のように、下部クラッド層12と上部クラッド層16(以下、下部クラッド層12と上部クラッド層16とを総称してクラッド層と称する)とのAl組成比は同じである。下部ガイド層34及び上部ガイド層36のAl組成比は、クラッド層と同じである。
【0026】
量子ドット活性層14を構成するバリア層32のAl組成比は、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32で0である。中央部に位置するバリア層32から下部クラッド層12側及び上部クラッド層16側に向かって、バリア層32のAl組成比は、クラッド層のAl組成比の1/3、2/3の順に高くなる。Al組成比がクラッド層の2/3となるバリア層32よりも下部クラッド層12側及び上部クラッド層16側にあるバリア層32のAl組成比は、クラッド層のAl組成比と同じである。つまり、下部クラッド層12側から連続する2層のバリア層32のAl組成比と上部クラッド層16側から連続する2層のバリア層32のAl組成比は、クラッド層のAl組成比と同じである。
【表1】

【0027】
次に、比較例1に係る半導体レーザについて説明する。比較例1に係る半導体レーザは、量子ドット活性層14を構成するバリア層32をGaAs層とし、下部ガイド層34及び上部ガイド層36もGaAs層とした場合の例である。その他の構成については、図1(a)から図2を用いて説明した実施例1に係る半導体レーザと同じであるため詳細な説明は省略する。
【0028】
ここで、実施例1に係る半導体レーザと比較例1に係る半導体レーザとについて、垂直方向(量子ドット活性層14の膜厚方向)の遠視野像についてシミュレーションを行った。シミュレーションは、クラッド層のAl組成比が0.25、0.30、0.35である場合について、比率で各層の屈折率を出して半値全幅を計算した。表2は、シミュレーション結果である。表2のように、実施例1に係る半導体レーザの垂直方向の遠視野像は、比較例1に係る半導体レーザの垂直方向の遠視野像に比べて狭くなり、半値全幅が6°〜8°程度低減されている。
【表2】

【0029】
このように、実施例1に係る半導体レーザでは、比較例1に係る半導体レーザに比べて垂直方向の遠視野像が狭くなるが、この理由を以下に説明する。
【0030】
図3は、比較例1に係る半導体レーザの量子ドット活性層14が有するバリア層32の屈折率分布を説明する模式図の例である。図3のように、量子ドット活性層14を構成するバリア層32は全てGaAs層であるため、バリア層32の屈折率は、AlGaAs層であるクラッド層の屈折率に対して相対的に高い。このため、量子ドット活性層14は、量子ドット活性層14で生成された光を閉じ込める効果が強く、比較例1に係る半導体レーザの近視野像(NFP:Near Field Pattern)は図3の一点鎖線のように表され、垂直方向の近視野像は矢印線のような拡がりを持つ。
【0031】
図4は、実施例1に係る半導体レーザの量子ドット活性層14が有するバリア層32の屈折率分布を説明する模式図の例である。図4のように、量子ドット活性層14を構成するバリア層32の屈折率は、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32のAl組成比が0であることから、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部で最も高くなる。中央部に位置するバリア層32よりも下部クラッド層12側及び上部クラッド層16側に位置するバリア層32は、下部クラッド層12及び上部クラッド層16に向かうに連れてAl組成比が順々に高くなるため、屈折率は順々に低下する。そして、下部クラッド層12側から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層12側から連続する2層のバリア層32は、クラッド層とAl組成比が同じであるため、屈折率はクラッド層と同じ大きさになる。
【0032】
このように、実施例1に係る半導体レーザでは、複数のバリア層32の屈折率は、中央部に位置するバリア層32が最も高く、中央部に位置するバリア層32から下部クラッド層12に最も近いバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かって低下する。このため、量子ドット活性層14は、量子ドット活性層14で生成された光を閉じ込める効果が弱まり、近視野像は図4の一点鎖線のように表せ、比較例1に係る半導体レーザに比べて、垂直方向の近視野像が伸びることとなる(矢印線参照)。この結果、実施例1に係る半導体レーザの遠視野像は、比較例1に係る半導体レーザの遠視野像に比べて狭くなる。
【0033】
以上説明してきたように、実施例1によれば、図4のように、量子ドット活性層14は、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32の屈折率が最も高い。そして、中央部に位置するバリア層32よりも下部クラッド層12側にあるバリア層32の屈折率は下部クラッド層12に向かって低下し、中央部に位置するバリア層32よりも上部クラッド層16側にあるバリア層32の屈折率は上部クラッド層16に向かって低下する。即ち、最も高い屈折率を有するバリア層32よりも下部クラッド層12側にあるバリア層32の屈折率は、最も高い屈折率を有するバリア層32から下部クラッド層12に最も近いバリア層32に向かって低下する。そして、最も高い屈折率を有するバリア層32よりも上部クラッド層16側にあるバリア層32の屈折率は、最も高い屈折率を有するバリア層32から上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かって低下する。これにより、光の閉じ込め効果が弱まるため垂直方向の近視野像を伸ばすことができ、その結果、表2のように、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。よって、光ファイバとの光結合効率を改善することができる。
【0034】
実施例1では、図4のように、最も高い屈折率を有するバリア層32よりも下部クラッド層12側にあるバリア層32の屈折率は、最も高い屈折率を有するバリア層32から下部クラッド層12に最も近いバリア層32に向かって低下し、且つ、最も高い屈折率を有するバリア層32よりも上部クラッド層16側にあるバリア層32の屈折率は、最も高い屈折率を有するバリア層32から上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かって低下する場合を例に示したがこれに限られる訳ではない。最も高い屈折率を有するバリア層32よりも下部クラッド層12側にあるバリア層32及び上部クラッド層16側にあるバリア層32の少なくとも一方で、バリア層32の屈折率が、最も高い屈折率を有するバリア層32から下部クラッド層12に最も近いバリア層32に向かって又は上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かって低下する場合であればよい。この場合でも、垂直方向の近視野像を伸ばすことができるため、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0035】
しかしながら、図4のように、最も高い屈折率を有するバリア層32よりも下部クラッド層12側にあるバリア層32及び上部クラッド層16側にあるバリア層32の両方で、バリア層32の屈折率が、最も高い屈折率を有するバリア層32から下部クラッド層12又は上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かって低下する場合が好ましい。この場合では、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができ、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。
【0036】
実施例1では、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32の屈折率が最も高い場合を例に示しているが、これに限られる訳ではない。最も高い屈折率を有するバリア層32は、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部から下部クラッド層12側又は上部クラッド層16側にずれている場合であってもよいし、また、最も高い屈折率を有するバリア層32が複数層ある場合でもよい。これらの場合でも、垂直方向の近視野像を伸ばすことができるため、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0037】
ここで、量子井戸活性層を用いた半導体レーザ(以下、量子井戸半導体レーザと称す)においては、傾斜屈折率分離閉じ込めヘテロ(GRIN−SCH)構造とすることで、ビーム形状を円形化できることが知られている。図5は、比較例2に係る半導体レーザの断面模式図の例であり、GRIN−SCH構造の多重量子井戸半導体レーザの断面模式図の例である。図5のように、半導体基板50上に、下部クラッド層52が設けられている。下部クラッド層52上には、屈折率が徐々に変化する第1中間層54が設けられている。第1中間層54上に、井戸層とバリア層とが交互に複数積層された多重量子井戸構造の活性層56が設けられている。活性層56上に、屈折率が徐々に変化する第2中間層58が設けられている。第2中間層58上に、上部クラッド層60が設けられている。第1中間層54の屈折率は、下部クラッド層52の屈折率と活性層56が有するバリア層の屈折率との間を徐々に変化する。同様に、第2中間層58の屈折率は、上部クラッド層60の屈折率と活性層56が有するバリア層の屈折率との間を徐々に変化する。
【0038】
図6は、比較例2に係る半導体レーザの屈折率分布を説明する模式図の例である。図6のように、下部クラッド層52と活性層56との間に第1中間層54が設けられていることで、下部クラッド層52から活性層56にかけて屈折率が徐々に変化している。同様に、上部クラッド層60と活性層56との間に第2中間層58が設けられていることで、上部クラッド層60から活性層56にかけて屈折率が徐々に変化している。
【0039】
比較例2に係る半導体レーザによれば、図6のように、下部クラッド層52と活性層56との間及び上部クラッド層60と活性層56との間に、屈折率が徐々に変化する第1中間層54及び第2中間層58が設けられている。これにより、近視野像は、第1中間層54と第2中間層58とによって制限され、垂直方向の近視野像を伸ばすことができる。その結果、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0040】
しかしながら、量子ドット半導体レーザでは、下部クラッド層と量子ドット活性層との間及び上部クラッド層と量子ドット活性層との間に、屈折率が徐々に変化する中間層を設けたとしても、垂直方向の遠視野像が狭まる効果は小さい。以下に、この理由を説明する。
【0041】
発明が解決しようとする課題で述べたように、量子ドット活性層の膜厚は、量子ドットの歪みを抑える点、十分な光強度を得る点、から厚くなる傾向にある。例えば、量子ドットの歪みを抑えるために、バリア層の厚さは、25nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、35nm以上がさらに好ましい。また、例えば、十分な利得を実現するために量子ドット層の層数は、6層以上が好ましく、8層以上がより好ましく、10層以上がさらに好ましい。
【0042】
一方、多重量子井戸構造の活性層の場合は、バリア層の厚さを、量子ドット活性層ほど厚くせずに済む。例えば、多重量子井戸構造でのバリア層の厚さは、10nm程度でよい。つまり、多重量子井戸構造の活性層の膜厚はあまり厚くならずに済む。このため、多重量子井戸半導体レーザでは、下部クラッド層と活性層との間及び上部クラッド層と活性層との間に、屈折率が徐々に変化する中間層を設けたGRIN−SCH構造とすることで、近視野像が中間層によって制限されて、垂直方向の近視野像を伸ばすことができる。
【0043】
これに対して、量子ドット半導体レーザでは、量子ドット活性層の膜厚が厚くなるため、下部クラッド層と量子ドット活性層との間及び上部クラッド層と量子ドット活性層との間に、屈折率が徐々に変化する中間層を設けたとしても、近視野像は量子ドット活性層によって制限されてしまう。このため、垂直方向の近視野像の伸びが抑えられてしまう。したがって、量子ドット半導体レーザでは、GRIN−SCH構造を採用したとしても、垂直方向の遠視野像を狭める効果は小さい。
【0044】
そこで、実施例1では、量子ドット活性層14を構成するバリア層32を、量子ドット活性層14の膜厚方向で中央部から端部にかけて屈折率が変化する構成としている。これにより、図4で説明したように、垂直方向の近視野像を伸ばすことができ、その結果、表2に示したように、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0045】
実施例1では、図4のように、1つのバリア層32における屈折率は、バリア層32の膜厚方向で一定である。このように、1つのバリア層32自体の屈折率は変化させずとも、量子ドット活性層14全体として、膜厚方向の中央部から端部にかけて屈折率を変化させることで、垂直方向の近視野像を伸ばすことができる。また、1つのバリア層32における屈折率を変化させる場合でもよいが、製造容易性及び特性の点からは、1つのバリア層32における屈折率は一定である場合が好ましい。
【0046】
また、図4のように、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32の屈折率が下部クラッド層12の屈折率と同じ大きさであり、上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32の屈折率が上部クラッド層16の屈折率と同じ大きさである場合が好ましい。この場合、量子ドット活性層14の屈折率の高い領域を量子ドット活性層14の膜厚方向の中央近傍に寄せることができる。このため、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができ、その結果、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。なお、この場合に限られるわけではなく、下部クラッド層12に最も近いバリア層32の屈折率が下部クラッド層12の屈折率と異なる場合や、上部クラッド層16に最も近いバリア層32の屈折率が上部クラッド層16の屈折率と異なる場合であってもよい。この場合でも、最も高い屈折率を有するバリア層32から下部クラッド層12に最も近いバリア層32又は上部クラッド層16に最も近いバリア層32に向かってバリア層32の屈折率が低下する場合であれば、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。
【0047】
また、図4のように、下部クラッド層12の屈折率と上部クラッド層16の屈折率とが同じ大きさであり、量子ドット活性層14を構成する複数のバリア層32の屈折率が量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32を軸に対称である場合が好ましい。この場合、近視野像の垂直方向の対象性を良好にすることができる。なお、この場合に限られるわけではなく、下部クラッド層12の屈折率と上部クラッド層16の屈折率との大きさが異なる場合や、複数のバリア層32の屈折率が、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部であるバリア層32を軸に対称となっていない場合でもよい。
【0048】
図4のように、バリア層32の屈折率が、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32から下部クラッド層12側及び上部クラッド層16側に向かって規則的に変化する場合を例に示したが、この場合に限られる訳ではなく、不規則に変化する場合でもよい。つまり、バリア層32の屈折率が、一定の大きさで変化する場合でもよいし、大きさが各ステップで変わる場合でもよい。
【0049】
実施例1では、量子ドット活性層14を構成するバリア層32は、AlGaAs層である場合を例に示したが、これに限らず、その他の材料の場合でもよい。例えば、バリア層32は、AlGaAsSb層等である場合でもよい。バリア層32をAlGaAs層やAlGaAsSb層とした場合は、比較例1に係る半導体レーザのようにバリア層32をGaAs層とした場合に比べて、エネルギーバンドギャップが大きくなるため、電子の閉じ込め効果が向上し、特性の向上が図れる。また、量子ドット活性層14を構成する量子ドット38は、InAsである場合を例に示したが、これに限らず、その他の材料の場合でもよい。例えば、量子ドット38は、InGaAs、InAlAs等である場合でもよい。
【実施例2】
【0050】
実施例2に係る半導体レーザは、量子ドット活性層14を構成するバリア層32のうち、下部クラッド層12側から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16側から連続する2層のバリア層32のAl組成比、並びに、下部ガイド層34及び上部ガイド層36のAl組成比を、クラッド層のAl組成比よりも高くする場合の例である。その他の構成については、実施例1と同じであり、図1(a)から図2で説明しているため、ここでは説明を省略する。
【0051】
表3は、下部クラッド層12、下部ガイド層34、量子ドット活性層14を構成するバリア層32、上部ガイド層36、及び上部クラッド層16のAl組成比を説明する表である。表3のように、下部クラッド層12と上部クラッド層16とのAl組成比は同じである。下部ガイド層34及び上部ガイド層36のAl組成比は、クラッド層のAl組成比よりも高い。
【0052】
量子ドット活性層14を構成するバリア層32のAl組成比は、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32で、クラッド層のAl組成比よりも高い。量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に位置するバリア層32のAl組成比は、実施例1と同じく0であり、中央部に位置するバリア層32から下部クラッド層12及び上部クラッド層16に向かって、バリア層32のAl組成比は、実施例1と同じく、クラッド層のAl組成比の1/3、2/3の順に高くなる。
【表3】

【0053】
図7は、実施例2に係る半導体レーザの量子ドット活性層14が有するバリア層32の屈折率分布を説明する模式図の例である。図7のように、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32は、Al組成比がクラッド層よりも高いため、屈折率はクラッド層よりも低くなる。
【0054】
ここで、実効的な屈折率について説明する。量子ドット活性層14を構成するバリア層32の屈折率が、量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部から端部にかけて変化する場合、量子ドット活性層14と下部クラッド層12との間の実効的な屈折率は、量子ドット活性層14の屈折率の平均値と下部クラッド層12の屈折率値とに依存する。同様に、量子ドット活性層14と上部クラッド層16との間の実効的な屈折率は、量子ドット活性層14の屈折率の平均値と上部クラッド層16の屈折率値とに依存する。
【0055】
図8(a)は、実施例2に係る半導体レーザの実効的な屈折率を説明する模式図の例である。また、比較のために、図8(b)に、実施例1に係る半導体レーザの実効的な屈折率を説明する模式図の例を記載する。図8(a)のように、実施例2に係る半導体レーザでは、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32の屈折率が、クラッド層の屈折率よりも低いことから、量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率差は小さくなる(図8(a)の楕円参照)。一方、図8(b)のように、実施例1に係る半導体レーザでは、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32の屈折率は、クラッド層の屈折率と同じ大きさであることから、量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率差は大きくなる(図8(b)の楕円参照)。
【0056】
ここで、表3に示す構造を基に、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32、並びに、下部ガイド層34及び上部ガイド層36のAl組成比を変化させて、垂直方向の遠視野像がどのように変化するかシミュレーションを行った。図9は、シミュレーション結果であり、横軸にAl組成比を、縦軸に垂直方向遠視野像の半値全幅を示している。図9中の太実線は、クラッド層のAl組成比が0.25の場合、太一点鎖線は0.30の場合、太二点鎖線は0.35の場合のシミュレーション結果である。なお、参考に、量子ドット活性層14を構成するバリア層32をGaAs層とした比較例1に係る半導体レーザについての垂直方向遠視野像のシミュレーション結果を細実線、細一点鎖線、及び細二点鎖線で示す。細実線は、クラッド層のAl組成比が0.25の場合、細一点鎖線は0.30の場合、細二点鎖線は0.35の場合のシミュレーション結果である。
【0057】
図9のように、クラッド層のAl組成比が0.25、0.30、0.35のいずれの場合であっても、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32のAl組成比が高くなるほど、垂直方向の遠視野像の半値全幅が小さくなることがわかる。
【0058】
例えば、クラッド層のAl組成比が0.25の場合(太実線)を見ると、クラッド層に近いバリア層32のAl組成比が、クラッド層のAl組成比と同じ0.25の場合では、半値全幅が42.5°であるのに対し、クラッド層のAl組成比よりも高い0.45の場合では、半値全幅が35°程度となり、約7.5°低減されている。同様に、クラッド層のAl組成比が0.30、0.35の場合でも、クラッド層に近いバリア層32のAl組成比が、クラッド層のAl組成比と同じ大きさである場合の半値全幅に対して、クラッド層のAl組成比よりも高い0.45の場合の半値全幅では、約3°〜5.5°低減されている。
【0059】
このように、下部クラッド層12及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する2層のバリア層32のAl組成比を、クラッド層のAl組成比よりも高くすることで、垂直方向の遠視野像の半値全幅がより小さくなるのは、図8(a)のように、量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率差を小さくでき、屈折率の高い領域を量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部に寄せることができるため、遠視野像狭窄化の効果が大きくなったことによるものである。
【0060】
以上説明してきたように、実施例2によれば、図7のように、量子ドット活性層14を構成するバリア層32のうち、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32の屈折率を下部クラッド層12の屈折率よりも低くし、上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32の屈折率を上部クラッド層16の屈折率よりも低くしている。これにより、図8(a)のように、量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率の差を小さくでき、屈折率の高い領域を量子ドット活性層14の膜厚方向の中央部により寄せることができる。このため、垂直方向の近視野像をより伸ばすことができ、その結果、垂直方向の遠視野像をより狭くすることができる。
【0061】
図9のように、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32のAl組成比を高くするほど、垂直方向の遠視野像を狭くすることができる。しかしながら、Al組成比が高くなると抵抗が高くなるため、Al組成比は0.50以下の場合が好ましく、0.45以下の場合がより好ましい。
【0062】
量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率差が小さいほど、遠視野像狭窄化の効果が大きくなる。よって、下部クラッド層12に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32及び上部クラッド層16に最も近いバリア層32から連続する少なくとも1層のバリア層32の屈折率は、量子ドット活性層14とクラッド層との間の実効的な屈折率の差が無くなるように設定する場合が好ましい。
【実施例3】
【0063】
実施例3は、実施例1又は2に係る半導体レーザを備えた光モジュールの例である。図10は、実施例3に係る光モジュールのブロック図の例である。図10のように、実施例3に係る光モジュール200は、実施例1又は2に係る半導体レーザ100、光導波部210、光変調部220を有する。半導体レーザ100から出射されたレーザ光は、光導波部210を通って光変調部220に導かれる。光変調部220では、入射された光を変調する。変調された光は光導波部210を通って、光ファイバ結合部230で光結合した光ファイバに入射され、光ファイバ内を伝搬する。
【0064】
実施例3によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザ100を用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光モジュールを得ることができる。
【実施例4】
【0065】
実施例4は、実施例3に係る光モジュールを備えた光通信装置の例である。図11は、実施例4に係る光通信装置のブロック図の例である。図11のように、実施例4に係る光通信装置300は、送信部として機能する実施例3に係る光モジュール200、受信部310、制御部320を有する。光モジュール200は、制御部320からの送信データ信号を光に変換して出射する。出射された光は、光ファイバに入射され、光ファイバ内を伝搬する。受信部310は、光ファイバ内を伝搬してきた光を受光し、受信データとして制御部320に出力する。
【0066】
実施例4によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザ100を用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光通信装置を得ることができる。
【実施例5】
【0067】
実施例5は、実施例4に係る光通信装置を備えた光通信システムの例である。図12は、実施例5に係る光通信システムのブロック図の例である。図12のように、光通信システム400は、第1の光通信装置300a、第2の光通信装置300b、及び第1の光通信装置300aと第2の光通信装置300bとを接続する光ファイバ410、を有する。第1の光通信装置300aは、光モジュール200a、受信部310a、及び制御部320aを有する。第2の光通信装置300bは、光モジュール200b、受信部310b、及び制御部320bを有する。例えば、第1の光通信装置300aの光モジュール200aが、制御部320aからの送信データ信号を光に変換して出射すると、出射された光は、光ファイバ410内を伝搬し、第2の光通信装置300bの受信部310bで受光される。受信部310bで光を受光すると、受信データが制御部320bに出力される。同様に、第2の光通信装置300bの光モジュール200bが、制御部320bからの送信データ信号を光に変換して出射すると、出射された光は、光ファイバ410内を伝搬し、第1の光通信装置300aの受信部310aで受光される。受信部310aで光を受光すると、受信データが制御部320aに出力される。これにより、第1の光通信装置300aと第2の光通信装置300bとの間でデータ通信を行うことができる。
【0068】
実施例5によれば、垂直方向の遠視野像が改善されて狭くなった半導体レーザ100を用いているため、光ファイバへの結合効率が改善された光通信システムを得ることができる。
【0069】
実施例5のように、第1の光通信装置300aと第2の光通信装置300bとの間で光ファイバ410を用いてデータ通信を行う光通信システム400は、FTTH(Fiber To The Home)や光通信基幹網に用いられる場合が好ましい。また、光ファイバ410を用いずに、第1の光通信装置300aと第2の光通信装置300bとが、空間に出射した光を受光することで、データ通信を行う場合でもよい。この場合、第1の光通信装置300aと第2の光通信装置300bとは、例えばパーソナルコンピュータとすることができ、また、第1の光通信装置300a及び第2の光通信装置300bの一方はパーソナルコンピュータとし、他方は携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等の電子機器やプロジェクタとしてもよい。
【0070】
以上、発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 半導体基板
12 下部クラッド層
14 量子ドット活性層
16 上部クラッド層
18 コンタクト層
20 リッジ部
22 凹部
24 保護膜
26 p電極
28 n電極
30 量子ドット層
32 バリア層
34 下部ガイド層
36 上部ガイド層
38 量子ドット
40 GaAs層
50 半導体基板
52 下部クラッド層
54 第1中間層
56 活性層
58 第2中間層
60 上部クラッド層
100 半導体レーザ
200 光モジュール
210 光導波部
220 光変調部
230 光ファイバ結合部
300 光通信装置
310 受信部
320 制御部
400 光通信システム
410 光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられ、第1導電型を有する下部クラッド層と、
前記下部クラッド層上に設けられ、複数の量子ドットが形成された量子ドット層と前記複数の量子ドットを覆うバリア層とが交互に複数積層された量子ドット活性層と、
前記量子ドット活性層上に設けられ、前記第1導電型と反対の導電型である第2導電型を有する上部クラッド層と、を備え、
前記量子ドット活性層は、複数の前記バリア層のうち最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記下部クラッド層側にあるバリア層及び前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記上部クラッド層側にあるバリア層の少なくとも一方で、前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって又は前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下することを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記量子ドット活性層は、前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記下部クラッド層側にある前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下し、且つ、前記最も高い屈折率を有するバリア層よりも前記上部クラッド層側にある前記バリア層の屈折率が、前記最も高い屈折率を有するバリア層から前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層に向かって低下することを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記最も高い屈折率を有するバリア層は、前記量子ドット活性層の膜厚方向の中央部にあることを特徴とする請求項2記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記下部クラッド層の屈折率と同じ大きさであり、前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記上部クラッド層の屈折率と同じ大きさであることを特徴とする請求項2又は3記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記下部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記下部クラッド層の屈折率よりも低く、前記上部クラッド層に最も近い前記バリア層から連続する少なくとも1層の前記バリア層の屈折率は前記上部クラッド層の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項2又は3記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記下部クラッド層の屈折率と前記上部クラッド層の屈折率とは同じ大きさであり、
複数の前記バリア層の屈折率は、前記量子ドット活性層の膜厚方向の中央部を軸に対称となっていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項記載の半導体レーザ。
【請求項7】
1つの前記バリア層の屈折率は、前記バリア層の膜厚方向で一定であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記量子ドット活性層は、前記量子ドット層が6層以上積層されていて、前記複数の量子ドットを覆う前記バリア層の膜厚は25nm以上であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項記載の半導体レーザ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光モジュール。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光通信装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項記載の半導体レーザを備えることを特徴とする光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−151309(P2012−151309A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9286(P2011−9286)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(506423051)株式会社QDレーザ (26)
【Fターム(参考)】