説明

半導体レーザ素子及びその製造方法

【課題】CODが生じにくい窒化物系の半導体レーザ素子を実現できるようにする。
【解決手段】半導体レーザ素子は、空洞部101aを有する基板101と、基板101の上に順次形成された第1導電型の第1クラッド層122、活性層124及び第2導電型の第2クラッド層126を含む半導体層積層体102とを備えている。半導体層積層体102は、第1の端面151と第2の端面152との間に延びるストライプ状の光導波路を有している。空洞部101aは、その壁面からその周囲に応力を及ぼし、活性層124における光導波路の第1の端面を含む部分におけるバンドギャップは、活性層124における他の部分よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子及びその製造方法に関し、特に窒化物半導体装置を用いた半導体レーザ素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスク等の光情報処理装置の光源として半導体レーザ素子が広く用いられている。光情報処理装置の高速化等のために光源の高出力化が望まれている。しかし、半導体レーザ素子の出力を高くすると、共振器端面における光密度が高くなり、半導体結晶が光により破壊されるCOD(Catastrophic Optical Damage;光学的損傷)が発生する。CODは、共振器端面において出力光が吸収されて熱が発生することにより共振器端面の温度が上昇し、共振器端面におけるバンドギャップが減少する結果、さらに出力光の吸収が増加するという正帰還により発生する。
【0003】
CODの発生を抑えるために、ガリウムヒ素系(GaAs)のレーザ素子では端面部分を発振波長に対して透明にした窓構造を用いる技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照。)。図6は従来の窓構造を有する半導体レーザ素子を示している。n型GaAsからなる基板501上に、半導体層積層体が形成されている。半導体層積層体は、基板501側から順次形成された、n型AlGaInPからなるn型クラッド層502、活性層503、p型AlGaInPからなる第1のp型クラッド層504、n型GaAsからなる電流ブロック層505、p型AlGaInPからなる第2のp型クラッド層506及びp型GaAsからなるコンタクト層507を有している。コンタクト層507上に表面電極510が形成され、n型GaAs基板501の下面に裏面電極511が形成されている。電流ブロック層505はストライプ状に除去されており、ストライプ状の光導波路が形成されている。共振器端面において、n型クラッド層502、活性層503及び第1のp型クラッド層504の光導波路を構成する部分には窓構造514が形成されている。
【0004】
窓構造514は、以下のようにして形成する。共振器端面を作製する劈開工程の前に、劈開を行う位置において、光導波路となる部分の上に酸化亜鉛(ZnO)を蒸着する。この後、600℃の温度でアニールすことにより、ZnO中のZnを下方に拡散させる。半導体層積層体のZnが拡散された部分は無秩序化されため、バンドギャップが大きくなり、光の吸収が抑制された窓構造514となる。窓構造を形成することにより共振器端面近傍における光吸収等を抑制でき、CODを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−196693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、窒化物系の半導体の場合には、高温にしなければ不純物を拡散させることができない。このため、不純物を拡散させて無秩序化した窓構造を窒化物系の半導体レーザ素子に適用することは困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、前記の問題を解決し、CODが生じにくい窒化物系の半導体レーザ素子を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は半導体レーザ素子を、基板に空洞部を設けることにより活性層に選択的に歪みを加え、活性層のバンドギャップを大きくすることにより窓構造を形成した構成とする。
【0009】
具体的に、本発明に係る半導体レーザ素子は、第1の空洞部を有する基板と、基板の上に順次形成された第1導電型層、活性層及び第2導電型層を含む半導体層積層体とを備え、半導体層積層体は、第1の端面と、第1の端面と反対側の第2の端面との間に延びるストライプ状の光導波路を有し、第1の空洞部は、その壁面から周囲に応力を及ぼし、活性層における光導波路の第1の端面を含む部分のバンドギャップは、活性層における他の部分よりも大きい。
【0010】
本発明の半導体レーザ素子は、壁面からその周囲に及ぼす空洞部が形成されている。このため、活性層における光導波路を構成し且つ第1の端面に露出した部分におけるバンドギャップが、活性層における他の部分よりも大きくなり、良好な窓構造が形成できる。従って、CODが生じにくい半導体レーザ素子を実現できる。
【0011】
本発明の半導体レーザ素子は、式(12)により表される波長変動量Δλcが5nm以上であればよく、10nm以上であることが好ましい。但し、r0は第1の空洞部の半径であり、rは第1の空洞部の中心から活性層における光導波路の第1の端面部分までの距離であり、Kは定数で14[nm/%]である。
【0012】
本発明の半導体レーザ素子において、第1の空洞部は、第1の端面に開口していればよい。
【0013】
本発明の半導体レーザ素子において、基板は、第2の端面に開口した第2の空洞部を有していてもよい。
【0014】
本発明の半導体レーザ素子において、第1の空洞部は、光導波路の直下に形成されていればよい。
【0015】
本発明の半導体レーザ素子において、活性層における第1の空洞部の直上に形成されている部分には、電流が注入されないようにしてもよい。
【0016】
本発明に係る半導体レーザ素子の製造方法は、基板の上に、順次積層された第1導電型層、活性層及び第2導電型層を含み、ストライプ状の光導波路を有する半導体層積層体を形成する工程と、半導体層積層体を形成する工程よりも後に、基板の内部の所定の領域において、基板を構成する物質を気化させることにより、周囲に圧縮応力を及ぼす空洞部を形成し、活性層にバンドギャップが活性層の他の部分よりも大きい部分を選択的に形成する工程と、基板及び半導体層積層体を劈開することにより第1の端面及び第2の端面を有する共振器構造を形成する工程とを備え、劈開は、活性層におけるバンドギャップが大きい部分が第1の端面に露出するように行う。
【0017】
本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、半導体層積層体を形成した後、周囲に圧縮応力を及ぼす空洞部を形成し、活性層にバンドギャップが活性層の他の部分よりも大きい部分を選択的に形成する。また、劈開は、活性層におけるバンドギャップが大きい部分が第1の端面に露出するように行う。このため、不純物の拡散等を行うことなく、窓領域を形成することができる。
【0018】
本発明の半導体レーザ素子の製造方法において、空洞部を形成する工程は、所定の領域において収束するようにパルスレーザ光を照射する工程であり、基板は、パルスレーザ光に対して透明であればよい。
【0019】
本発明の半導体レーザ素子の製造方法において、パルスレーザ光は、パルス幅が1ナノ秒以下であればよく、1ピコ秒以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の半導体レーザ素子の製造方法において、空洞部を形成する工程は、共振器構造を形成する工程よりも前に行うことが好ましい。
【0021】
本発明の半導体レーザ素子の製造方法は、空洞部の位置において劈開を行えばよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る半導体レーザ素子によれば、CODが生じにくい窒化物系の半導体レーザ素子を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】一実施形態に係る半導体レーザ素子を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】一実施形態に係る半導体レーザ素子の製造方法の変形例の一工程を示す断面図である。
【図4】空洞部による応力の発生を説明する図である。
【図5】一実施形態に係る半導体レーザ素子の変形例を示す斜視図である。
【図6】従来の半導体レーザ素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1に示すように、一実施形態に係る半導体レーザ素子は、空洞部101aを有する基板101の上に形成された半導体層積層体102を備えている。半導体層積層体102は、基板101側から順次形成された、n型の第1クラッド層122、n型の第1ガイド層123、活性層124、p型の第2ガイド層125、p型の第2クラッド層126及びp型のコンタクト層127を有している。半導体層積層体102を構成する各半導体層の材料はAlxInyGa1-x-yN(但し、0≦x,y≦1、x+y≦1)とし、光導波路を形成するようにその混晶比を適宜選択すればよい。基板は窒化物からなる半導体層積層体102が結晶成長できればよく、例えばn型のGaN等からなる窒化物半導体結晶基板とすればよい。
【0025】
基板101及びその上に形成された半導体層積層体102は、劈開により形成された第1の端面及び第2の端面を有している。第2クラッド層126とコンタクト層127は、一部がエッチングされており、第1の端面と第2の端面との間に延びるストライプ状のリッジが形成されている。第2クラッド層126のリッジを除く部分には、誘電体からなる電流ブロック層131が形成されている。コンタクト層127と電流ブロック層131とを覆うようにp側電極(図示せず)が形成され、基板101の半導体層積層体102と反対側の面(裏面)にはn側電極(図示せず)が形成されている。
【0026】
リッジにより、活性層124に注入される電流が制限され、また活性層124において生じた光が屈折率差により閉じ込められる。このため、半導体層積層体102における活性層124を含むリッジの直下の部分にはストライプ状の光導波路が形成される。第1の端面をレーザ光出力が大きい前方端面とし、第2の端面を第1の端面よりもレーザ光出力が小さい後方端面とすることにより、共振器構造が実現できる。第2の端面をレーザ光出力が大きい前方端面とし、第1の端面を第2の端面よりもレーザ光出力が小さい後方端面とすることも可能である。また第1の端面と第2の端面とのレーザ光出力を等しくすることも可能である。
【0027】
図1において、空洞部101aはリッジの直下に形成され且つ第1の端面に開口している。空洞部101aをこの位置に設けることにより、活性層124における光導波路の第1の端面に露出した部分に、レーザ光の光吸収が生じにくい窓構造が形成される。なお、空洞部101aは、第1の端面の近傍に形成されていればよく、第1の端面に開口を有していなくてもよい。また、図示されていないが第2の端面側にも空洞部101aが形成されている。但し、第2の端面側に空洞部101aが形成されていなくてもよい。
【0028】
以下に、本実施形態の半導体レーザ素子の作製方法について説明する。まず、ウェハ状の基板101の上に第1クラッド層122からコンタクト層127の各層をエピタキシャル成長した後、コンタクト層127及び第2クラッド層126の一部をエッチングしてリッジ部を形成する。この後、リッジ部を除く第2クラッド層126の上に電流ブロック層131を形成する。
【0029】
次に、基板101に空洞部101aを形成する。空洞部101aは、図2に示すように基板101の吸収端波長よりも波長が長いパルスレーザ光200を、光学系210を用いて基板101の裏面側から基板101内の所定の位置に集光するように照射して形成すればよい。基板101は、吸収端波長よりも波長が長い光に対して透明であり、通常は吸収端波長よりも波長が長いパルスレーザ光200は基板101に吸収されない。しかし、集光点においては光強度が極端に高くなるため、2光子吸収によりパルスレーザ光200が基板101に吸収される。集光点において基板101に吸収されたパルスレーザ光200のエネルギーは熱に変化するため、基板は局所的に加熱されて溶融し、さらに中心部は気化して膨張する。その結果、パルスレーザ光200の集光点には空洞部101aが形成される。
【0030】
基板101がGaN基板である場合、波長が780nmのレーザ光を用いれば、基板101にほとんど吸収されることなく、基板101内にパルスレーザ光200を集光することができる。2光子吸収を効率良く発生させるためには、集光点における光密度を高くする必要がある。一方、レーザ光を長時間集光すると、光吸収により生じた熱が周囲に拡散し、基板の上に形成した半導体層が劣化してしまう。このため、エネルギーを短時間に集中する必要があり、パルスレーザ光200のパルス幅は1ナノ秒以下とすることが好ましく、1ピコ秒以下とすることがさらに好ましい。
【0031】
パルスレーザ光200の集光点において、基板101が加熱されることにより、基板101を構成する物質が気化して膨張するため空洞部101aが形成される。空洞部101aが形成されることにより、空洞部101aの壁面からその周囲へ大きな圧縮応力が加わる。応力は、活性層124における空洞部101aの直上に形成された部分にも及び、活性層124の応力が及ぶ部分には圧縮歪みが生じる。活性層124における圧縮歪みが生じた部分では、バンドギャップが大きくなるため、発振波長の光の吸収が低減される。このため、活性層124における空洞部101aからの応力が及ぶ部分が光導波路の共振器の端面となるようにすれば、窓構造が形成できる。
【0032】
図2に示すようにウェハ内の共振器の端面となる位置すべてに空洞部101aを形成し、p側電極及びn側電極を形成した後、例えばAの位置においてそれぞれ劈開を行うことにより、共振器の端面に窓構造を有する半導体レーザ素子が実現できる。この場合には、第1の端面に開口する空洞部と第2の端面に開口する空洞部とが形成される。また、活性層124における空洞部101aからの応力が及ぶ部分が共振器の端面となればよいため、図2のBの位置等において劈開を行ってもよい。この場合には、第1の端面の近傍に開口を有さない空洞部が形成される。
【0033】
なお、半導体層積層体102がパルスレーザ光200に対して透明である場合には、図3に示すようにパルスレーザ光200を半導体層積層体102側から基板101に照射してもよい。基板101の裏面側からパルスレーザ光200を照射した方が、半導体層積層体102による散乱等の影響を受けないため、光エネルギーを効率良く基板101内の所定の位置に供給することができる。しかし、基板101の裏面が不透明な材料により被覆されている場合又は基板101の裏面が粗面となっている場合には、半導体層積層体102側からのパルスレーザ光200の照射が有用である。
【0034】
また、ウェハの状態で空洞部101aを形成した後、劈開を行う例を示したが、劈開を行った後、共振器ごとに空洞部101aの形成を行うことも可能である。
【0035】
以下に、空洞部101aと窓構造との関係についてさらに詳細に説明する。図4は空洞部101aとその周辺の媒質における応力との関係を示している。説明においては、媒質が均質な等方性であり、空洞部101aが球であるとする。空洞部101aの半径をr0,空洞部101aの中心から距離rの位置の応力をp(r)とすると、体積Vの媒質をΔだけ体積変化させた場合に発生する応力Pは、次の式(1)で表される。但し、Bは体積弾性率である。
【0036】
【数1】

【0037】
位置rでの微小領域drの体積dVは、次の式(2)で与えられる。
【0038】
【数2】

【0039】
この領域における体積変化をdΔとすると、式(1)より次の式(3)の関係が成り立つ。
【0040】
【数3】

【0041】
dΔを領域drの厚さ変化dlで表すと、次の式(4)のように表される。
【0042】
【数4】

【0043】
応力p(r)は半径rの2乗に反比例するため、次の式(5)が成り立つ。 但し、p0は比例定数である。
【0044】
【数5】

【0045】
式(4)及び式(5)を式(3)に代入して整理すると、次の式(6)のように表される。
【0046】
【数6】

【0047】
空洞部101aは内部応力歪で発生するため、次の式(7)が成り立つ。
【0048】
【数7】

【0049】
よって比例定数p0は、次の式(8)となる。
【0050】
【数8】

【0051】
式(5)より空洞部101aの半径がr0の時の応力p(r)は、次の式(9)で表される。
【0052】
【数9】

【0053】
一方、吸収端波長は結晶歪量に比例する。吸収端波長のシフト量をΔλcとすると、次の式(10)が成り立つ。但し、Kは比例定数、εは歪量である。
【0054】
【数10】

【0055】
歪量εと応力の関係は式(1)で与えられるので、次の式(11)のように表すことができる。
【0056】
【数11】

【0057】
よって、吸収端波長のシフト量Δλcは、次の式(12)のように表すことができる。
【0058】
【数12】

【0059】
以上のように、空洞部101aによって生じた応力の影響が、活性層124における空洞部101aの直上の部分にも及び、活性層124に圧縮歪εが加わる。活性層124における圧縮歪を受けた部分ではバンドギャップが広がり、半導体レーザ素子の発振波長の光に対して透明となるため、窓構造を形成することができる。吸収端波長のシフト量Δλcの値は、空洞部101aのサイズ(r0)及び位置(r)により決まる。従って、吸収端波長のシフト量Δλcが5nm以上、好ましくは10nm以上となるように、空洞部101aのサイズ(r0)及び位置(r)を選択すればよい。
【0060】
窓構造は、光出力が大きい前方端面に少なくとも形成すればよい。空洞部が端面に開口するように劈開を行う場合には、通常は前方端面及び後方端面の両方に窓構造が形成される。劈開位置によっては、後方端面側に窓構造が形成されない場合があるが問題ない。
【0061】
GaN系のレーザ素子の場合 比例定数Kは14nm/%と見積もられるので、空洞部101aの半径を0.1μmとし、空洞部101aと活性層124との距離は180μm以下となるようにすればよい。
【0062】
基板101に空洞部101aを設けることにより、活性層124に窓構造を形成して、端面近傍における光吸収等が抑制可能となる。従って、CODが防止でき、高出力動作が可能な半導体レーザ素子が実現できる。本実施形態における半導体レーザ素子は、基板101に空洞部101aを形成することにより、活性層124における光導波路を構成し且つ端面に露出した部分の結晶構造に歪みを加えてバンドギャップを広げている。このため、従来の不純物を拡散させることにより窓構造を形成する場合と異なり、窓構造が形成された領域も、窓構造を形成するための不純物を含んでいない。
【0063】
空洞部101aは、活性層124に圧縮歪みを加えることができれば、どのような形状としてもよい。例えば、図5に示すようにリッジの方向と一致した方向に延びる円柱形状の空洞部101bを形成してもよい。円柱形状の空洞部101bは、集光位置をずらしながらパルスレーザ光を繰り返し照射すれば容易に形成することができる。円柱形状の空洞部101bは、球状の空洞部が連続的に複数形成されているとみなすことができ、球状の空洞部を形成した場合と同様の効果が得られる。また、球状の空洞部が形成されている場合よりも広い範囲に圧縮歪みを加えることができるため、均一な窓構造を形成することができ、球状の空洞部を形成した場合よりも高出力化することが可能となる。
【0064】
なお、窓構造が形成された窓領域にも電流が注入されている構造について説明したが、窓領域に電流を注入する必要はない。窓領域に電流を注入しないことにより発熱を抑制することができ、より高出力の動作が可能となる。窓領域に電流が注入されないようにする場合には、p側電極及びn側電極の形成位置を調整すればよい。また、電極の下に高抵材料により形成した高抵抗層又はコンタクト層をイオン注入等により改質した高抵抗層を形成してもよいい。
【0065】
本実施形態に置いては、リッジストライプ型のレーザ素子について説明したが、埋め込み型のレーザ素子においても同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る半導体レーザ素子及びその製造方法は、CODが生じにくい窒化物系の半導体レーザ素子を実現でき、特に高出力の半導体レーザ素子及びその製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
101 基板
101a 空洞部
101b 空洞部
102 半導体層積層体
122 第1クラッド層
123 第1ガイド層
124 活性層
125 第2ガイド層
126 第2クラッド層
127 コンタクト層
131 電流ブロック層
200 パルスレーザ光
210 光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の空洞部を有する基板と、
前記基板の上に順次形成された第1導電型層、活性層及び第2導電型層を含む半導体層積層体とを備え、
前記半導体層積層体は、第1の端面と、前記第1の端面と反対側の第2の端面との間に延びるストライプ状の光導波路を有し、
前記第1の空洞部は、その壁面から周囲に応力を及ぼし、
前記活性層における前記光導波路の第1の端面を含む部分のバンドギャップは、前記活性層における他の部分よりも大きいことを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項2】
式(12)により表される波長変動量Δλcが5nm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子。
【数12】

但し、r0は前記第1の空洞部の半径であり、rは前記第1の空洞部の中心から前記活性層における前記光導波路の第1の端面を構成する部分までの距離であり、Kは定数で14[nm/%]である。
【請求項3】
前記波長変動量Δλcが10nm以上であることを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子。
【請求項4】
前記第1の空洞部は、前記第1の端面に開口していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項5】
前記基板は、前記第2の端面に開口した第2の空洞部を有していることを特徴とする請求項4に記載の半導体レーザ素子。
【請求項6】
前記第1の空洞部は、前記光導波路の直下に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項7】
前記活性層における前記第1の空洞部の直上に形成されている部分には、電流が注入されないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子。
【請求項8】
基板の上に、順次積層された第1導電型層、活性層及び第2導電型層を含み、ストライプ状の光導波路を有する半導体層積層体を形成する工程と、
前記半導体層積層体を形成する工程よりも後に、前記基板の内部の所定の領域において、前記基板を構成する物質を気化させることにより、周囲に圧縮応力を及ぼす空洞部を形成し、前記活性層にバンドギャップが前記活性層の他の部分よりも大きい部分を選択的に形成する工程と、
前記基板及び前記半導体層積層体を劈開することにより第1の端面及び第2の端面を有する共振器構造を形成する工程とを備え、
前記劈開は、前記活性層におけるバンドギャップが大きい部分が前記第1の端面に露出するように行うことを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項9】
前記空洞部を形成する工程は、前記所定の領域において収束するようにパルスレーザ光を照射する工程であり、
前記基板は、前記パルスレーザ光に対して透明であることを特徴とする請求項8に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項10】
前記パルスレーザ光は、パルス幅が1ナノ秒以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項11】
前記パルスレーザ光は、パルス幅が1ピコ秒以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項12】
前記空洞部を形成する工程は、前記共振器構造を形成する工程よりも前に行うことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の製造方法。
【請求項13】
前記空洞部の位置において前記劈開を行うことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−199322(P2012−199322A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61459(P2011−61459)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】