半導体レーザ装置
【課題】半導体レーザの共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく、しきい値電流が低く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】共振器端面に密着して、層厚がλ/2(λは媒質内波長)のSiO2膜40を配設し、このSiO2膜40の上に、SiO2膜40に密着する第1層は層厚がλ/4のa−Si膜42aと第2層は層厚がλ/4のSiO2膜42bとから構成される二重誘電体膜42を適宜重ねることにより、前部高反射率膜28或いは後部高反射率膜30を構成する。
【解決手段】共振器端面に密着して、層厚がλ/2(λは媒質内波長)のSiO2膜40を配設し、このSiO2膜40の上に、SiO2膜40に密着する第1層は層厚がλ/4のa−Si膜42aと第2層は層厚がλ/4のSiO2膜42bとから構成される二重誘電体膜42を適宜重ねることにより、前部高反射率膜28或いは後部高反射率膜30を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ装置に係り、特に、光通信に使用され、波長が1250nm以上で半導体レーザの共振器端面に誘電体膜を備えた半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信需要量の飛躍的な増加に伴って、通信システムの大容量化が図られてきている。
光通信の伝送系においては信号光として、主に1.3μm帯の信号光と1.55μm帯の信号光が使用されている。
【0003】
1.55μm帯の信号光は光ファイバ損失が小さく長距離通信系の信号光として使用される。これは都市間通信(幹線系)とよばれて、例えば東京−大阪間のように大都市間の通信に使用される。
一方1.3μm帯の信号光は光ファイバ損失は大きいが波長分散が少なく、短距離通信系の信号光として使用される。これは例えば、都市内通信とよばれ大都市内の通信に使用されている。また1.3μm帯の信号光は、アクセス系と呼ばれる基地局−各家庭間の通信にも使用される。
これらの信号光を含む波長が1.25μm以上の信号光を発生させる長波長半導体レーザも低動作電流で高速応答が求められている。
【0004】
光通信用の長波長半導体レーザは、通常、端面出射型半導体レーザが使用される。端面出射型半導体レーザは、結晶を劈開もしくはエッチングにより互いに対向する一対の端面を形成し、これら端面での反射により光を往復させレーザ発振に必要な光帰還を得るのが一般的である。このような半導体レーザはファブリ・ペロー型半導体レーザとして知られている。
また、これ以外に回折格子を利用した分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザといったレーザが知られているが、これらのレーザも回折格子による光帰還に加え端面における反射を利用する構造となっているものが多い。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザの半導体レーザ本体は、n型クラッド層、活性層、およびp型クラッド層の積層構造の共振器を有している。この共振器の前端面はAl2O3からなる厚さλ/2の単層膜が形成されている。
ここでλは媒質内波長であり、λ=(半導体レーザ本体から出射される光の真空中の波長)÷(レーザ光が伝播する媒質の屈折率)で定義される。
【0005】
共振器端面にAl2O3からなる厚さλ/2の単層膜が形成されている場合は、端面における光の反射率は共振器を構成する半導体と空気との屈折率によって決定される。例えば半導体の屈折率が3.2の場合、反射率は30%程度となる。
また、共振器の後端面には例えば、SiO2膜とSi膜からなる多層膜が形成されている。各々の層厚をλ/4として、SiO2膜、Si膜、およびSiO2膜の3層を積層した多層膜の場合、反射率は約60%となる。SiO2膜の外側に、さらに同様のSi膜とSiO2膜の2層を積層すると、反射率は約90%となる。
また例えば分布帰還型半導体レーザの場合では、共振器の活性層に沿って回折格子が設けられるとともに、前端面には反射防止膜が、後端面には先のファブリ・ペロー型半導体レーザと同様の高反射膜が形成される。
【0006】
一般に、半導体レーザは一定以上の電流を流すとレーザ発振をする。このときの電流値をしきい値電流という。しきい値電流はレーザの発光に寄与しない電流であり、一般には低い方が望ましい。しきい値電流は、電流注入によって生じる利得と共振器損失とがつりあう電流値に相当する。ここで、共振器損失は内部損失(吸収損失など)とミラー損失の和である。
ミラー損失は端面の反射率が低いほど大きいので、端面の反射率を上げることによりミラー損失が減少し、しきい値電流を下げることができる。
また、分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザでは、回折格子が光に与える影響の度合い(規格化結合係数)もミラー損失に大きな影響を与えるが端面反射率も大きな影響を与える。ただ規格化結合係数については、これを高くすることによりミラー損失を低減することが可能である。
【0007】
しかし、いすれの半導体レーザにおいても端面の反射率を上げると端面における光密度が増加する。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザにおいて、前端面反射率30%、後端面反射率60%のファブリ・ペロー型半導体レーザと比較して、前端面反射率60%、後端面反射率90%のファブリ・ペロー型半導体レーザの前端面における光密度は、同一光出力時において約2倍となる。
また、前端面を反射防止膜、後端面を高反射膜とした分布帰還型半導体レーザにおいては、後端面における回折格子の位相にも依存するが、後端面の光密度が高くなる素子が多い。特にしきい値電流を低下させるために規格化結合係数を大きくした場合や後端面の反射率を高くした場合には、この傾向が顕著となり、規格化結合係数1.4、前端面反射率0%、後端面反射率90%とした場合の後端面における光密度は前端面のそれより最大で約7倍となる。
【0008】
一方、半導体と端面コート膜の界面は、一般に界面準位が多く最もレーザの劣化が発生しやすい箇所であり、この部分で光の電界強度が極大となるように端面コート膜が設計されている場合にはレーザの劣化を招きやすくなる。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザの共振器においては、共振器後端面には次のような高反射膜が配設される。すなわち、共振器後端面に媒質内波長λの1/4の厚みを有する第1層のSiO2膜を密着し、この上にλ/4の厚みの第2層のアモルファスSi(以下、a−Siと記載する。)膜を重ね、さらにこの上にλ/4の厚みの第3層のSiO2膜を重ねた高反射膜である。
この高反射膜は言い換えれば、共振器後端面上に、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜およびλ/4の厚みの低屈折率膜により構成されていることになる。
【0009】
この場合、共振器後端面近傍と反射膜とにおける電界強度分布は、共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面で極大となり、第1層のSiO2膜と第2層のa−Si膜との界面で極小となり、第2層のa−Si膜と第3層のSiO2膜との界面で極大となり、第3層のSiO2膜と空気層との界面において極小となる。
第2層のa−Si膜と第3層のSiO2膜との界面での極大値は共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面での極大値よりも小さくなるので、異種材料により形成される界面での電界強度は、共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面において最も高くなる。
例えば公知の長波長レーザの高反射膜の構成は、劈開法によって形成された端面上に、SiO2/アモルファスSi/SiO2/アモルファスSi/SiO2の5層構造を用いるもので、これにより反射率が90%以上得られている。或いは端面上にSiNからなるλ/4膜を形成し、この上にアモルファスSi/SiN/アモルファスSi/SiNを多層し、SiN/アモルファスSi/SiN/アモルファスSi/SiNの5層構造で反射率90%の高反射膜が形成されている(例えば特許文献1、段落番号0056−0057参照)。
この場合の高反射膜の構成は、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、λ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、およびλ/4の厚みの低屈折率膜の5層により構成されていることになる。
【0010】
共振器端面の界面における電界強度を小さくするために次のような構成を有する半導体レーザが知られている。
この構成は、GaAlAs系半導体レーザの発光端面に、レーザ素子の屈折率と略等しい屈折率を有するアモルファスシリコン(屈折率nc〜3.5)で形成された膜厚値がλ/4ncの誘電体膜を設け、このアモルファスシリコンの誘電体膜上に密着させてSiO2膜等の低屈折率(nd)の誘電体膜からなる厚さλ/2ndの低屈折率反射膜と高屈折率からなる高屈折率反射膜が交互に複数組設けられたものである。この構成により発光端面での光の電界強度を最低値にするとしている(例えば、特許文献2、第2頁左下欄および右下欄)。
【0011】
また、レーザの発振波長が約740nmの半導体レーザーにおいて、端面に接して光学的な厚さがλ/2のAl2O3膜或いはSiO2膜を設け、光学的厚さがλ/4のTiO2層とSiO2層とを順次配設した積層ペアを、λ/2のAl2O3膜或いはSiO2膜の上に、出射端面側には3ペアを、反対側の反射面側には6ペア積層した例が開示されている(例えば、特許文献3、段落番号0010−0011)。
また、半導体レーザ装置において多層コートを行う際に、奇数番目の層としてAl2O3、SiO2、Si3N4などの誘電体を、偶数番目の層としてSiをコートしていたが、Siが最上層になると酸化されやすいので、発振波長8300ÅのGaAs−GaAlAs系半導体レーザのキャビティ端面に順次、Si、Al2O3、Si、Al2O3を積層し、最上層にAl2O3層を設け、Siの酸化を防いだ例が記載されている(例えば、特許文献4、第1頁右欄から第2頁左欄)。
【0012】
また、発熱量の大きい高出力タイプの半導体レーザ素子の端面に、Al2O3膜に変えてAlN膜を密着して使用した例が開示されている(例えば、特許文献5)。
このように、しきい値電流を下げるためには、共振器端面における反射率を高くしたり、回折格子の規格化結合係数を大きくすることにより、共振器端面における光密度が増加する。さらに共振器端面と反射膜との界面における光の電界強度が極大となる構成の場合には、共振器端面における光密度が高いことに加え光の電界強度が極大となる場合には、半導体レーザの劣化が一層生じやすくなるなど信頼性が大きく低下する場合がある。さらに共振器端面と反射膜との界面における機械的強度が低い場合には半導体レーザ装置の組立の際の加熱によって、界面において剥離が発生し、このために歩留まりが低下する場合があった。このように上記の従来の半導体レーザの構成では、しきい値電流を低くすることと高い信頼性を得ることとの両立が困難で、歩留まりも低くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−290052号公報
【特許文献2】特開昭63−220589号公報
【特許文献3】特開平7−45910号公報
【特許文献4】特開昭60−130187号公報
【特許文献5】実開昭63−162558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように従来の長波長半導体レーザにおける高反射膜の構成においては、特許文献1におけるように、高反射膜の構成が、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、λ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、およびλ/4の厚みの低屈折率膜の5層により構成されている場合には、共振器端面と第1層の低屈折率膜との界面における光の電界強度が必ずしも極小値にならず、むしろ電界強度が高くなってしまうという場合があるという問題点がある。
【0015】
また特許文献2におけるように、共振器端面にa−Siを成膜した場合には共振器を構成する半導体とa−Siの密着性が必ずしもよくない。レーザチップをパッケージに組み立てる際にはハンダ付けによる熱が加わるため、共振器端面へのa−Si膜の密着性が悪い場合には、その熱応力により共振器端面のa−Si膜が剥がれてしまう場合があるという問題があった。さらに高反射膜を構成する時には低屈折率膜と高屈折率膜とのペアを多数対重ねる必要があるが、共振器端面へのa−Si膜の密着性が悪いと低屈折率膜と高屈折率膜とのペアを多数対重ねることが難しくなる場合があり、歩留まりが下がるという問題点がある。
【0016】
また特許文献3におけるように、高屈折膜をTiO2層とし低屈折率膜をSiO2層としこの積層ペアを重ねることにより高反射膜を構成するとすれば、特許文献3記載の波長の3倍以上の波長を有する長波長レーザの場合には、屈折率が2程度しかないTiO2と例えば屈折率が1.40〜1.45のSiO2との組み合わせで80%以上の反射率を得るためには、TiO2膜とSiO2膜との対を7対積層する必要がある。この場合、端面コート膜の厚さが、極めて厚くなり組立時の熱応力により膜剥がれが起きやすくなるという問題点があった。
【0017】
この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、第1の目的は半導体レーザの共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく、しきい値電流が低く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る半導体レーザ装置においては、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける光の電界強度が極小値を示し、これらの界面における光の吸収が抑制され、COD(Catastrophic Optical Damage)の発生を抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの前部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図4】この発明に係る実施の形態1の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図6】この発明に係る実施の形態2の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図7】この発明に係る誘電体膜の厚みに対する界面での電界強度を示すグラフである。
【図8】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図9】この発明に係る実施の形態3の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図10】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図11】この発明に係る実施の形態4の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
以下の説明において、半導体レーザはファブリ・ペロー型半導体レーザを一例として説明するが、分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザに適用しても同様の効果がある。
図1はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。なお以下の図において同じ符号は同一のものか相当のものを示す。
図1の半導体レーザ10の断面図は半導体レーザの導波路方向に並行する断面における断面図で、矢印は半導体レーザ10の出射光12である。
この半導体レーザ10は、発振波長が1250nm〜1650nmの範囲の長波長半導体レーザである。
半導体レーザ10は、例えばn型(以下n型は「n−」、p型は「p−」、特に不純物を注入していない真性の場合は「i−」と記載する。)のInP基板14とこのInP基板14の上に順次配設されたn−InPのn型クラッド層16、InGaAsPの活性層18、およびp−InPのp型クラッド層20が配設され、n型クラッド層16、活性層18、およびp型クラッド層20によって共振器22が形成されている。またp型クラッド層20の表面上にはp電極32が、InP基板14の裏面上にはn電極34がそれぞれ配設されている。
【0022】
半導体レーザ本体36は、InP基板14、このInP基板14の上に配設された共振器22、p電極32、及びn電極34により構成されている。
レーザ光を出射する側の共振器22の前端面を含む劈開面をここでは半導体レーザ本体36の前端面24とし、半導体レーザ本体36を介して前端面24と互いに対向する劈開面をここでは半導体レーザ本体36の後端面26とする。そして半導体レーザ本体36の前端面24の表面に密着して前部高反射膜28が配設され、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して後部高反射膜30が配設されている。
半導体レーザ本体36の構造は、例えば活性層にAlGaInAsを用いた場合の半導体レーザでは、n−InPのn型クラッド層とAlGaInAs活性層との間にn−AlInAs層を、p−InPのp型クラッド層とAlGaInAs活性層との間にp−AlInAs層を挟んだ構造が知られている。
【0023】
図2はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの前部高反射膜近傍の部分断面図である。
前部高反射膜28は、反射率が例えば60%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の前端面24に密着して誘電体膜としての、例えば膜厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。
ここでλは媒質内波長で、先にも定義したがλ=(半導体レーザ本体から出射される光の真空中の波長)÷(レーザ光が伝播する媒質の屈折率)であり、レーザ光が伝播する媒質により、λは変化する。以下の説明においてもλは媒質内波長を意味する。
【0024】
次いで、このSiO2膜40の上に第1の二重誘電体膜としての二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
二重誘電体膜42は、SiO2膜40に密着した第1層目の層厚がλ/4のa−Si膜42aと、このa−Si膜42aの上に重ねて配設された第2層目の層厚がλ/4のSiO2膜42bとから構成されている。二重誘電体膜42を2対重ねて配設する場合には二重誘電体膜42を構成する第1層目の誘電体膜と第2層目の誘電体膜が同じ順序になるように2対重ねられている。
従って前部高反射膜28は、半導体レーザ本体36の前端面24の上に、半導体レーザ本体36の前端面24に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設されている。
【0025】
SiO2の屈折率は1.40〜1.45であるので、発振波長が1250nm〜1650nmであるとすると、SiO2膜40は約420nm〜600nm程度の厚みとなる。
またa−Siの屈折率は3〜3.4であるので、a−Si膜42aは約90nm〜140nm、SiO2膜42bの厚みは約210nm〜300nm程度である。
また共振器22の長さは用途に応じて種々あるが、概ね200μm〜1500μm程度である。共振器22を構成するInPの屈折率は3.2程度で、InGaAsPとAlGaInAsはいずれも3.2〜3.5程度である。従って共振器22の屈折率はa−Si膜42aとほぼ等しい屈折率を有している。
【0026】
図3はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
後部高反射膜30は、反射率が例えば90%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、例えば層厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。次いで、このSiO2膜40の上に二重誘電体膜42が3対重ねて配設されている。
従って後部高反射膜30は、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設されている。
【0027】
この構成では半導体レーザ本体36の前端面24や後端面26に密着する誘電体膜としてSiO2膜40を使用している。これは半導体との密着性がよく、使用実績のある材料であり、かつ次に重ねられる層(この例の場合はa−Si膜42a)の屈折率よりも小さければよい。従って、例えばAl2O3やSi3N4やAlNなどでもよい。
また二重誘電体膜42の第2層目としてSiO2膜42bが使用されているが、この層もa−Si膜42aより屈折率が低い材料であればよいので、SiO2膜に変えてAl2O3膜を使用してもよい。
【0028】
従来のファブリ・ペロー型半導体レーザでは、共振器の前端面にAl2O3の厚さλ/2の単層膜が形成されている場合は反射率が30%程度で、共振器の後端面に各層厚がλ/4のSiO2膜、Si膜、およびSiO2膜の3層を積層した膜の場合は反射率が約60%となる。
この実施の形態においては、前部高反射膜28の反射率が60%で、後部高反射膜30の反射率が90%であるので、従来のファブリ・ペロー型半導体レーザと比較してミラー損失が低減され、しきい値電流の低い半導体レーザを得ることが可能である。
なおレーザ光の出射端面である前部高反射膜28に比べて後部高反射膜30の反射率が高くなるので、二重誘電体膜42を重ねる対の数が多くなり、後部高反射膜30の全層厚が厚くなるが、全層厚が2μmを越えると組立時の熱応力により、膜の剥がれが起きやすくなる。このため後部高反射膜30の全層厚は2μm以下になることが望ましい。
この構成のように二重誘電体膜42の第1層目としてa−Si膜42aが使用されているが、a−Siは屈折率が高いので後部高反射膜30の厚みを2μm以下にしたい場合であっても、1.3nm帯や1.5nm帯の半導体レーザにおいて80%以上の反射率を得ることができる。
【0029】
図4はこの発明に係る実施の形態1の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図4における高反射膜は、一例として後部高反射膜30について説明しているが、前部高反射膜28においても同様である。
図4において、曲線46は光の電界強度分布を示している。曲線46の上に凸の部分はそれぞれ光の電界強度の極大値を示し、下端はそれぞれ極小値を示している。
後部高反射膜30とその近傍における光の電界強度の分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜40との境界において光の電界強度は極小値を示し、SiO2膜40と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界においても極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜42と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。
【0030】
一方それぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。
半導体レーザ本体36の後端面26上に配設された後部高反射膜30とその近傍における各層の構成を屈折率に関して述べると、後部高反射膜30は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
そしてこの構成を有するので、半導体レーザ本体36の共振器22と層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)との界面における光の電界強度が極小値を示し、図4に示されるような光の電界強度分布を示すのである。
【0031】
本来異種材料の界面では光の吸収が生じやすい。半導体レーザの劣化の主要因のひとつとして異種材料界面における光の吸収とそれに伴う発熱が知られている。このような劣化の中で最もよく知られているのがCODで、半導体材料と反射膜第1層との界面における光吸収により発生しやすい。
異種材料界面における光の吸収を抑制するためには、その部分における光子密度を低減することが有効である。光子密度が低ければ光の吸収が起こりにくいからである。光子密度は光の電界強度によって決定され、光の電界強度が高い部分は光子密度が大きい。このため異種材料界面における光の電界強度を下げることが半導体レーザの劣化の抑制に有効である。
【0032】
従ってこの実施の形態1に係る後部高反射膜30の構成では、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bを有し、反射率の高い高反射膜が構成され、ミラー損失を少なくして半導体レーザのしきい値電流をさげるとともに、さらに半導体レーザ本体36の共振器22と層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)との界面における光の電界強度を極小にすることにより、この界面における光子密度を低減し、光吸収とそれに伴う発熱を少なくして、半導体レーザ本体36の共振器22端面とSiO2膜40との界面におけるCODの発生を抑制することができる。すなわちしきい値電流の低減とCODの発生の抑制とを両立させることが可能となる。
【0033】
しかも半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料とSiO2膜40との密着性が高く機械的強度が高い。同様にSiO2膜40とa−Si膜42aとの界面における密着性も高く機械的強度も高い。このため後部高反射膜30を半導体レーザ本体36の後端面26の上に強固に積層することができる。従って後部高反射膜30を構成する二重誘電体膜42を多く積層しても、組立の際の加熱により半導体レーザ本体36の後端面26からの後部高反射膜30の剥離の発生を抑制でき、製品の歩留まりを高めることができる。
【0034】
なおこれまでの説明ではファブリ・ペロー型半導体レーザを一例として説明したが、レーザ光の出射端面側に、例えば共振器を構成する材料の屈折率の平方根に近い屈折率を有する材料の膜、例えば層厚がλ/4のSi3N4膜を反射防止膜として使用し、後端面に後部高反射膜30と同様の反射膜を形成することにより、ファブリ・ペロー型半導体レーザである半導体レーザ10と同様の効果がある。
とくに分布帰還型半導体レーザにおいては後部高反射膜側で光密度が高くなるが、共振器と後部高反射膜との界面における光の電界強度を低くすることができるので、レーザの劣化を抑制することができる。また後部高反射膜が半導体レーザ本体の端面から剥離することを抑制することができる。
【0035】
また分布反射型半導体レーザでは、共振器の後端面側に配設された活性層に連続して、活性層の出射端面側にパッシブ導波路が接続され、このパッシブ導波路に沿って回折格子が形成されている構成であるが、パッシブ導波路側の出射端面に反射防止膜が形成され、後端面側に、実施の形態1の後部高反射膜30と同様の反射膜を形成することにより、ファブリ・ペロー型半導体レーザである半導体レーザ10と同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0037】
この構成により誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよくの形成することができる。さらに共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける光の電界強度が極小値を示し、これらの界面における光の吸収が抑制され、COD(Catastrophic Optical Damage)の発生を抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0038】
実施の形態2.
図5はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態2の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図5において、後部反射膜50は、二重誘電体膜42が3対重ねて配設されていることは実施の形態1の後部反射膜30と同じであるが、後部反射膜30では半導体レーザ本体36の後端面26に密着して層厚がλ/2のSiO2膜40が配設され、この上に重ねて二重誘電体膜42が3対配設されているのに対して、後部反射膜50においては、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、SiO2の薄膜、例えば層厚がλ/25のSiO2膜52が配設され、この上に重ねて二重誘電体膜42が3対配設されている。
【0039】
すなわち、後部高反射膜50は、反射率が例えば90%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の後端面26に密着して層厚がλ/25のSiO2膜52が配設される。次いで、このSiO2膜52の上に二重誘電体膜42が3対重ねて配設されている。
従って後部高反射膜50は、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着した層厚がλ/25の低屈折率膜(SiO2膜52)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0040】
この構成では半導体レーザ本体36の後端面26に密着する誘電体膜としてSiO2膜52を使用している。これは実施の形態1と同様に例えばSi3N4や、Al2O3や、AlNなどでもよい。
この実施の形態2の構成では半導体レーザ本体36とa−Si膜42aとはほぼ同じ程度の屈折率を有しており、例え薄いSiO2膜52が半導体レーザ本体36とa−Si膜42aと間に介在していたとしても、光の電界強度の分布は半導体レーザ本体36とa−Si膜42aの仕様により決定される。
【0041】
図6はこの発明に係る実施の形態2の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図6において、後部高反射膜50とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示され、後部高反射膜50の光の電界強度は、半導体レーザ本体36とSiO2膜52との界面が極小値ではなく、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界において極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜42と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。一方それぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。
半導体レーザ本体36の共振器22とλ/25厚みの低屈折率膜(SiO2膜52)との界面における光の電界強度は極小値ではないが、SiO2膜52の厚みが薄いので、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界における極小値に近接した値を示す。
【0042】
図7はこの発明に係る誘電体膜の厚みに対する界面での電界強度を示すグラフである。
図7において横軸は媒質内波長に対する層厚の比、即ち層厚/媒質内波長であり、縦軸は界面での規格化電界強度を示している。横軸が0.25、即ち層厚がλ/4の時の界面での規格化された電界強度を1としている。
すなわち図5及び図6において説明すると、SiO2膜52の膜厚がλ/4の時に、半導体レーザ本体36の共振器22とSiO2膜52との界面における光の電界強度が極大値である1であることを示している。
【0043】
実施の形態1の場合、半導体レーザ本体36の共振器22の端面に厚みがλ/2のSiO2膜40が配設されているが、a−Siが熱伝導率が高いのに対して、SiO2は熱伝導率が低く、共振器22と後部高反射膜30との界面における発生熱の放熱が順調に行われがたい場合がある。このような場合には、SiO2膜を薄くすることによって熱伝導をよくすることが考えられる。
この実施の形態2ではこの考えに基づき厚みを薄くしたSiO2膜52を配設している。
先にも記載したが、半導体レーザ本体36の共振器22とSiO2膜52との界面では、光の電界強度は最小値にならず、SiO2膜52の厚みにより、先の図7において示した界面での規格化電界強度を有することになる。従ってSiO2膜52の厚みの上限値は光の電界強度を何処まで許容できるかにより決定される。
【0044】
この実施の形態では、例えば層厚をλ/25としていることは次の理由による。
従来のファブリ・ペロー型半導体レーザの場合、前端面の反射率を30%、後端面の反射率を60%とした半導体レーザと比較して、実施の形態1において示した前端面の反射率を60%、後端面の反射率を90%とした半導体レーザでは後端面における光密度は2倍高くなる。従って光の電界強度を従来の半導体レーザの1/2にすれば、同等の信頼性を確保することができる。
図7を参照して、界面における規格化電界強度が1/2となる膜厚は、層厚/媒質内波長の値が概ね0.04のところであり、これは即ち層厚がλ/25であることを示している。
この実施の形態2ではSiO2膜52の厚みを、例えばλ/25としているが、SiO2膜52の膜厚をλ/25以下とすることにより、共振器22と後部高反射膜30との界面における発生熱の放熱を一層よくするとともに、共振器22とSiO2膜52との界面における光の電界強度をより低くすることができる。延いてはCODに対する信頼性がより高い半導体レーザを構成することができる。
【0045】
従ってこの実施の形態2に係る後部高反射膜50の構成では、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜52、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設された構成を有しているので、反射率の高い高反射膜が構成され、ミラー損失を少なくして半導体レーザのしきい値電流を低減することができる。さらに、半導体レーザ本体36の共振器22と薄い低屈折率膜(SiO2膜52)との界面における光の電界強度をできるだけ極小値に近づけることにより光吸収とそれに伴う発熱を少なくして、さらに半導体レーザ本体36の共振器22端面とSiO2膜52との界面近傍における放熱を良くして、CODに対する信頼性を高めることができる。
【0046】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0047】
この構成により、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに誘電体膜は第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有するので、共振器端面と誘電体膜との界面における光の電界強度を極小値に近接させることにより、この界面での光の吸収を抑制するとともに、この界面近傍の放熱を良くして、CODの発生をより一層抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性の高い、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0048】
実施の形態3.
図8はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態3の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図8において、後部反射膜60は、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、例えば層厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。次いで、このSiO2膜40の上に第2の二重誘電体膜としての、二重誘電体膜62が1対重ねて配設され、この二重誘電体膜62の上に二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
【0049】
二重誘電体膜62はSiO2膜40に密着した第1層目の層厚が、例えば3λ/8のa−Si膜62aと、このa−Si膜62aの上に重ねて配設された第2層目の層厚がλ/8のSiO2膜62bとから構成されている。
すなわち、後部高反射膜60は、次のような構成となっており、反射率は90%から多少変化している。
後部高反射膜60は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)、層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)、層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0050】
図9はこの発明に係る実施の形態3の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図9において、後部高反射膜60とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示されている。
後部高反射膜60とその近傍における光の電界強度分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜40との境界において光の電界強度は極小値を示し、SiO2膜40と第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとの境界においても極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜62と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。これは実施の形態1の後部高反射膜30と同じである。
またそれぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。これは実施の形態1の後部高反射膜30と同じである。
【0051】
しかしながら、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。
実施の形態1の説明においても述べたように、CODを抑制するためには異種材料界面における光の電界強度を下げることが有効である。特に実施の形態1および2において示した構成により半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料と後部或いは前部高反射膜との境界での光の電界強度が低減された場合、次いで電界強度が高くなっている異種材料界面は、第1対目の二重誘電体膜の第1層と第2層との界面であり、実施の形態1の後部高反射膜30で云えば、第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとSiO2膜42bとの界面である。
この界面における電界強度を下げるために、実施の形態3では二重誘電体膜62では第1層を層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)とし、第2層を層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)とすることにより、これらの界面が光の電界強度の極大値の位置と一致しないようにしている。
【0052】
なおここでは、第1層の層厚を3λ/8、第2層の層厚をλ/8としているが、これに限らず、第1層がλ/4を越えかつλ/2未満の厚みを有し、第2層がλ/4未満の厚みを有すればよい。
さらにこの実施の形態では第1層の層厚を厚く、第2層の層厚を薄くしているがこれに限らず、第1層の層厚を薄く、第2層の層厚を厚くしても良い。
すなわち第1層がλ/4未満の厚みを有し、第2層がλ/4を越えかつλ/2未満の厚みを有する構成でも同様の効果がある。
さらに二重誘電体膜62の第1層と第2層の厚みを変化させることにより、高反射膜全体としての反射率を比較的自由に選択することができて、高反射膜の設計の自由度を高めることができる。
【0053】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0054】
また、この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0055】
この構成により、実施の形態1の効果に加えて、第2の二重誘電体膜を構成する異種材料界面における光の電界強度を低減することができ、さらにCODに対する信頼性を高めることができる。延いては共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくくし、しきい値電流が低く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0056】
実施の形態4.
図10はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態4の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図10において、後部反射膜70は、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての例えば層厚がλ/25のSiO2膜52が配設される。次いでこのSiO2膜52の上に二重誘電体膜62が1対重ねて配設され、この二重誘電体膜62の上に二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
すなわち、後部高反射膜70は、次のような構成となっており、反射率は90%から多少変化している。
後部高反射膜70は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/25の低屈折率膜(SiO2膜52)、層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)、層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0057】
図11はこの発明に係る実施の形態4の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図11において、後部高反射膜70とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示されている。
後部高反射膜70とその近傍の電界強度分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜52との界面が極小値ではなく、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとの境界において極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜62と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。
また第2対目および第3対目の二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示しているが、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。
【0058】
半導体レーザ本体36の共振器22の端面26に密着しているSiO2膜52は、その熱伝導率がa−Siの熱伝導率に比べて小さいので、薄い方が放熱がよい。SiO2膜52の層厚は実施の形態2において述べた如くλ/25以下にするのが望ましい。
この構成により、実施の形態2に記載した効果を有する。
さらに、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料と後部或いは前部高反射膜との境界での光の電界強度が低減された場合、次いで電界強度が高くなっている異種材料界面は、第1対目の二重誘電体膜の第1層と第2層との界面であり、この界面における電界強度を下げるために、実施の形態3では二重誘電体膜62では第1層を層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)とし第2層を層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)とすることにより、これらの界面が光の電界強度の極値の位置と一致しないようにしている。
なお、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bの厚みは実施の形態3で述べたのと同様に決定される。
従って実施の形態4に係る発明は、実施の形態2の効果に加えて実施の形態3の効果をも兼ね備えている。
【0059】
以上のように、この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0060】
またこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0061】
この構成により、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに誘電体膜は第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有するので、共振器端面と誘電体膜との界面における光の電界強度を極小値に近づけることによりこの界面での光の吸収を抑制するとともに、この界面近傍の放熱を良くして、CODの発生をより一層抑制することができる。
さらに第2の二重誘電体膜を構成する異種材料界面における光の電界強度を低減することができ、さらにCODに対する信頼性を高めることができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
なお以上の各実施の形態において、CODを抑制することが可能となるので耐久性が向上し、しきい値電流が低くなるのでエネルギー消費の削減に繋がり、歩留まりが向上し、環境負荷を低減するなどの効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、この発明に係る半導体レーザ装置は、光通信システムなどの使用に対して有用である。
【符号の説明】
【0063】
36 半導体レーザ本体、 40 SiO2膜、 42 二重誘電体膜、 52 SiO2膜、 62 二重誘電体膜。
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体レーザ装置に係り、特に、光通信に使用され、波長が1250nm以上で半導体レーザの共振器端面に誘電体膜を備えた半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信需要量の飛躍的な増加に伴って、通信システムの大容量化が図られてきている。
光通信の伝送系においては信号光として、主に1.3μm帯の信号光と1.55μm帯の信号光が使用されている。
【0003】
1.55μm帯の信号光は光ファイバ損失が小さく長距離通信系の信号光として使用される。これは都市間通信(幹線系)とよばれて、例えば東京−大阪間のように大都市間の通信に使用される。
一方1.3μm帯の信号光は光ファイバ損失は大きいが波長分散が少なく、短距離通信系の信号光として使用される。これは例えば、都市内通信とよばれ大都市内の通信に使用されている。また1.3μm帯の信号光は、アクセス系と呼ばれる基地局−各家庭間の通信にも使用される。
これらの信号光を含む波長が1.25μm以上の信号光を発生させる長波長半導体レーザも低動作電流で高速応答が求められている。
【0004】
光通信用の長波長半導体レーザは、通常、端面出射型半導体レーザが使用される。端面出射型半導体レーザは、結晶を劈開もしくはエッチングにより互いに対向する一対の端面を形成し、これら端面での反射により光を往復させレーザ発振に必要な光帰還を得るのが一般的である。このような半導体レーザはファブリ・ペロー型半導体レーザとして知られている。
また、これ以外に回折格子を利用した分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザといったレーザが知られているが、これらのレーザも回折格子による光帰還に加え端面における反射を利用する構造となっているものが多い。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザの半導体レーザ本体は、n型クラッド層、活性層、およびp型クラッド層の積層構造の共振器を有している。この共振器の前端面はAl2O3からなる厚さλ/2の単層膜が形成されている。
ここでλは媒質内波長であり、λ=(半導体レーザ本体から出射される光の真空中の波長)÷(レーザ光が伝播する媒質の屈折率)で定義される。
【0005】
共振器端面にAl2O3からなる厚さλ/2の単層膜が形成されている場合は、端面における光の反射率は共振器を構成する半導体と空気との屈折率によって決定される。例えば半導体の屈折率が3.2の場合、反射率は30%程度となる。
また、共振器の後端面には例えば、SiO2膜とSi膜からなる多層膜が形成されている。各々の層厚をλ/4として、SiO2膜、Si膜、およびSiO2膜の3層を積層した多層膜の場合、反射率は約60%となる。SiO2膜の外側に、さらに同様のSi膜とSiO2膜の2層を積層すると、反射率は約90%となる。
また例えば分布帰還型半導体レーザの場合では、共振器の活性層に沿って回折格子が設けられるとともに、前端面には反射防止膜が、後端面には先のファブリ・ペロー型半導体レーザと同様の高反射膜が形成される。
【0006】
一般に、半導体レーザは一定以上の電流を流すとレーザ発振をする。このときの電流値をしきい値電流という。しきい値電流はレーザの発光に寄与しない電流であり、一般には低い方が望ましい。しきい値電流は、電流注入によって生じる利得と共振器損失とがつりあう電流値に相当する。ここで、共振器損失は内部損失(吸収損失など)とミラー損失の和である。
ミラー損失は端面の反射率が低いほど大きいので、端面の反射率を上げることによりミラー損失が減少し、しきい値電流を下げることができる。
また、分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザでは、回折格子が光に与える影響の度合い(規格化結合係数)もミラー損失に大きな影響を与えるが端面反射率も大きな影響を与える。ただ規格化結合係数については、これを高くすることによりミラー損失を低減することが可能である。
【0007】
しかし、いすれの半導体レーザにおいても端面の反射率を上げると端面における光密度が増加する。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザにおいて、前端面反射率30%、後端面反射率60%のファブリ・ペロー型半導体レーザと比較して、前端面反射率60%、後端面反射率90%のファブリ・ペロー型半導体レーザの前端面における光密度は、同一光出力時において約2倍となる。
また、前端面を反射防止膜、後端面を高反射膜とした分布帰還型半導体レーザにおいては、後端面における回折格子の位相にも依存するが、後端面の光密度が高くなる素子が多い。特にしきい値電流を低下させるために規格化結合係数を大きくした場合や後端面の反射率を高くした場合には、この傾向が顕著となり、規格化結合係数1.4、前端面反射率0%、後端面反射率90%とした場合の後端面における光密度は前端面のそれより最大で約7倍となる。
【0008】
一方、半導体と端面コート膜の界面は、一般に界面準位が多く最もレーザの劣化が発生しやすい箇所であり、この部分で光の電界強度が極大となるように端面コート膜が設計されている場合にはレーザの劣化を招きやすくなる。
例えばファブリ・ペロー型半導体レーザの共振器においては、共振器後端面には次のような高反射膜が配設される。すなわち、共振器後端面に媒質内波長λの1/4の厚みを有する第1層のSiO2膜を密着し、この上にλ/4の厚みの第2層のアモルファスSi(以下、a−Siと記載する。)膜を重ね、さらにこの上にλ/4の厚みの第3層のSiO2膜を重ねた高反射膜である。
この高反射膜は言い換えれば、共振器後端面上に、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜およびλ/4の厚みの低屈折率膜により構成されていることになる。
【0009】
この場合、共振器後端面近傍と反射膜とにおける電界強度分布は、共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面で極大となり、第1層のSiO2膜と第2層のa−Si膜との界面で極小となり、第2層のa−Si膜と第3層のSiO2膜との界面で極大となり、第3層のSiO2膜と空気層との界面において極小となる。
第2層のa−Si膜と第3層のSiO2膜との界面での極大値は共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面での極大値よりも小さくなるので、異種材料により形成される界面での電界強度は、共振器後端面と第1層のSiO2膜との界面において最も高くなる。
例えば公知の長波長レーザの高反射膜の構成は、劈開法によって形成された端面上に、SiO2/アモルファスSi/SiO2/アモルファスSi/SiO2の5層構造を用いるもので、これにより反射率が90%以上得られている。或いは端面上にSiNからなるλ/4膜を形成し、この上にアモルファスSi/SiN/アモルファスSi/SiNを多層し、SiN/アモルファスSi/SiN/アモルファスSi/SiNの5層構造で反射率90%の高反射膜が形成されている(例えば特許文献1、段落番号0056−0057参照)。
この場合の高反射膜の構成は、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、λ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、およびλ/4の厚みの低屈折率膜の5層により構成されていることになる。
【0010】
共振器端面の界面における電界強度を小さくするために次のような構成を有する半導体レーザが知られている。
この構成は、GaAlAs系半導体レーザの発光端面に、レーザ素子の屈折率と略等しい屈折率を有するアモルファスシリコン(屈折率nc〜3.5)で形成された膜厚値がλ/4ncの誘電体膜を設け、このアモルファスシリコンの誘電体膜上に密着させてSiO2膜等の低屈折率(nd)の誘電体膜からなる厚さλ/2ndの低屈折率反射膜と高屈折率からなる高屈折率反射膜が交互に複数組設けられたものである。この構成により発光端面での光の電界強度を最低値にするとしている(例えば、特許文献2、第2頁左下欄および右下欄)。
【0011】
また、レーザの発振波長が約740nmの半導体レーザーにおいて、端面に接して光学的な厚さがλ/2のAl2O3膜或いはSiO2膜を設け、光学的厚さがλ/4のTiO2層とSiO2層とを順次配設した積層ペアを、λ/2のAl2O3膜或いはSiO2膜の上に、出射端面側には3ペアを、反対側の反射面側には6ペア積層した例が開示されている(例えば、特許文献3、段落番号0010−0011)。
また、半導体レーザ装置において多層コートを行う際に、奇数番目の層としてAl2O3、SiO2、Si3N4などの誘電体を、偶数番目の層としてSiをコートしていたが、Siが最上層になると酸化されやすいので、発振波長8300ÅのGaAs−GaAlAs系半導体レーザのキャビティ端面に順次、Si、Al2O3、Si、Al2O3を積層し、最上層にAl2O3層を設け、Siの酸化を防いだ例が記載されている(例えば、特許文献4、第1頁右欄から第2頁左欄)。
【0012】
また、発熱量の大きい高出力タイプの半導体レーザ素子の端面に、Al2O3膜に変えてAlN膜を密着して使用した例が開示されている(例えば、特許文献5)。
このように、しきい値電流を下げるためには、共振器端面における反射率を高くしたり、回折格子の規格化結合係数を大きくすることにより、共振器端面における光密度が増加する。さらに共振器端面と反射膜との界面における光の電界強度が極大となる構成の場合には、共振器端面における光密度が高いことに加え光の電界強度が極大となる場合には、半導体レーザの劣化が一層生じやすくなるなど信頼性が大きく低下する場合がある。さらに共振器端面と反射膜との界面における機械的強度が低い場合には半導体レーザ装置の組立の際の加熱によって、界面において剥離が発生し、このために歩留まりが低下する場合があった。このように上記の従来の半導体レーザの構成では、しきい値電流を低くすることと高い信頼性を得ることとの両立が困難で、歩留まりも低くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−290052号公報
【特許文献2】特開昭63−220589号公報
【特許文献3】特開平7−45910号公報
【特許文献4】特開昭60−130187号公報
【特許文献5】実開昭63−162558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように従来の長波長半導体レーザにおける高反射膜の構成においては、特許文献1におけるように、高反射膜の構成が、端面に密着するλ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、λ/4の厚みの低屈折率膜、λ/4の厚みの高屈折率膜、およびλ/4の厚みの低屈折率膜の5層により構成されている場合には、共振器端面と第1層の低屈折率膜との界面における光の電界強度が必ずしも極小値にならず、むしろ電界強度が高くなってしまうという場合があるという問題点がある。
【0015】
また特許文献2におけるように、共振器端面にa−Siを成膜した場合には共振器を構成する半導体とa−Siの密着性が必ずしもよくない。レーザチップをパッケージに組み立てる際にはハンダ付けによる熱が加わるため、共振器端面へのa−Si膜の密着性が悪い場合には、その熱応力により共振器端面のa−Si膜が剥がれてしまう場合があるという問題があった。さらに高反射膜を構成する時には低屈折率膜と高屈折率膜とのペアを多数対重ねる必要があるが、共振器端面へのa−Si膜の密着性が悪いと低屈折率膜と高屈折率膜とのペアを多数対重ねることが難しくなる場合があり、歩留まりが下がるという問題点がある。
【0016】
また特許文献3におけるように、高屈折膜をTiO2層とし低屈折率膜をSiO2層としこの積層ペアを重ねることにより高反射膜を構成するとすれば、特許文献3記載の波長の3倍以上の波長を有する長波長レーザの場合には、屈折率が2程度しかないTiO2と例えば屈折率が1.40〜1.45のSiO2との組み合わせで80%以上の反射率を得るためには、TiO2膜とSiO2膜との対を7対積層する必要がある。この場合、端面コート膜の厚さが、極めて厚くなり組立時の熱応力により膜剥がれが起きやすくなるという問題点があった。
【0017】
この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、第1の目的は半導体レーザの共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく、しきい値電流が低く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る半導体レーザ装置においては、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける光の電界強度が極小値を示し、これらの界面における光の吸収が抑制され、COD(Catastrophic Optical Damage)の発生を抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの前部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図3】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図4】この発明に係る実施の形態1の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図5】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図6】この発明に係る実施の形態2の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図7】この発明に係る誘電体膜の厚みに対する界面での電界強度を示すグラフである。
【図8】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図9】この発明に係る実施の形態3の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【図10】この発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
【図11】この発明に係る実施の形態4の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
以下の説明において、半導体レーザはファブリ・ペロー型半導体レーザを一例として説明するが、分布帰還型半導体レーザや分布反射型半導体レーザに適用しても同様の効果がある。
図1はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの断面図である。なお以下の図において同じ符号は同一のものか相当のものを示す。
図1の半導体レーザ10の断面図は半導体レーザの導波路方向に並行する断面における断面図で、矢印は半導体レーザ10の出射光12である。
この半導体レーザ10は、発振波長が1250nm〜1650nmの範囲の長波長半導体レーザである。
半導体レーザ10は、例えばn型(以下n型は「n−」、p型は「p−」、特に不純物を注入していない真性の場合は「i−」と記載する。)のInP基板14とこのInP基板14の上に順次配設されたn−InPのn型クラッド層16、InGaAsPの活性層18、およびp−InPのp型クラッド層20が配設され、n型クラッド層16、活性層18、およびp型クラッド層20によって共振器22が形成されている。またp型クラッド層20の表面上にはp電極32が、InP基板14の裏面上にはn電極34がそれぞれ配設されている。
【0022】
半導体レーザ本体36は、InP基板14、このInP基板14の上に配設された共振器22、p電極32、及びn電極34により構成されている。
レーザ光を出射する側の共振器22の前端面を含む劈開面をここでは半導体レーザ本体36の前端面24とし、半導体レーザ本体36を介して前端面24と互いに対向する劈開面をここでは半導体レーザ本体36の後端面26とする。そして半導体レーザ本体36の前端面24の表面に密着して前部高反射膜28が配設され、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して後部高反射膜30が配設されている。
半導体レーザ本体36の構造は、例えば活性層にAlGaInAsを用いた場合の半導体レーザでは、n−InPのn型クラッド層とAlGaInAs活性層との間にn−AlInAs層を、p−InPのp型クラッド層とAlGaInAs活性層との間にp−AlInAs層を挟んだ構造が知られている。
【0023】
図2はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの前部高反射膜近傍の部分断面図である。
前部高反射膜28は、反射率が例えば60%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の前端面24に密着して誘電体膜としての、例えば膜厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。
ここでλは媒質内波長で、先にも定義したがλ=(半導体レーザ本体から出射される光の真空中の波長)÷(レーザ光が伝播する媒質の屈折率)であり、レーザ光が伝播する媒質により、λは変化する。以下の説明においてもλは媒質内波長を意味する。
【0024】
次いで、このSiO2膜40の上に第1の二重誘電体膜としての二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
二重誘電体膜42は、SiO2膜40に密着した第1層目の層厚がλ/4のa−Si膜42aと、このa−Si膜42aの上に重ねて配設された第2層目の層厚がλ/4のSiO2膜42bとから構成されている。二重誘電体膜42を2対重ねて配設する場合には二重誘電体膜42を構成する第1層目の誘電体膜と第2層目の誘電体膜が同じ順序になるように2対重ねられている。
従って前部高反射膜28は、半導体レーザ本体36の前端面24の上に、半導体レーザ本体36の前端面24に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設されている。
【0025】
SiO2の屈折率は1.40〜1.45であるので、発振波長が1250nm〜1650nmであるとすると、SiO2膜40は約420nm〜600nm程度の厚みとなる。
またa−Siの屈折率は3〜3.4であるので、a−Si膜42aは約90nm〜140nm、SiO2膜42bの厚みは約210nm〜300nm程度である。
また共振器22の長さは用途に応じて種々あるが、概ね200μm〜1500μm程度である。共振器22を構成するInPの屈折率は3.2程度で、InGaAsPとAlGaInAsはいずれも3.2〜3.5程度である。従って共振器22の屈折率はa−Si膜42aとほぼ等しい屈折率を有している。
【0026】
図3はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
後部高反射膜30は、反射率が例えば90%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、例えば層厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。次いで、このSiO2膜40の上に二重誘電体膜42が3対重ねて配設されている。
従って後部高反射膜30は、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設されている。
【0027】
この構成では半導体レーザ本体36の前端面24や後端面26に密着する誘電体膜としてSiO2膜40を使用している。これは半導体との密着性がよく、使用実績のある材料であり、かつ次に重ねられる層(この例の場合はa−Si膜42a)の屈折率よりも小さければよい。従って、例えばAl2O3やSi3N4やAlNなどでもよい。
また二重誘電体膜42の第2層目としてSiO2膜42bが使用されているが、この層もa−Si膜42aより屈折率が低い材料であればよいので、SiO2膜に変えてAl2O3膜を使用してもよい。
【0028】
従来のファブリ・ペロー型半導体レーザでは、共振器の前端面にAl2O3の厚さλ/2の単層膜が形成されている場合は反射率が30%程度で、共振器の後端面に各層厚がλ/4のSiO2膜、Si膜、およびSiO2膜の3層を積層した膜の場合は反射率が約60%となる。
この実施の形態においては、前部高反射膜28の反射率が60%で、後部高反射膜30の反射率が90%であるので、従来のファブリ・ペロー型半導体レーザと比較してミラー損失が低減され、しきい値電流の低い半導体レーザを得ることが可能である。
なおレーザ光の出射端面である前部高反射膜28に比べて後部高反射膜30の反射率が高くなるので、二重誘電体膜42を重ねる対の数が多くなり、後部高反射膜30の全層厚が厚くなるが、全層厚が2μmを越えると組立時の熱応力により、膜の剥がれが起きやすくなる。このため後部高反射膜30の全層厚は2μm以下になることが望ましい。
この構成のように二重誘電体膜42の第1層目としてa−Si膜42aが使用されているが、a−Siは屈折率が高いので後部高反射膜30の厚みを2μm以下にしたい場合であっても、1.3nm帯や1.5nm帯の半導体レーザにおいて80%以上の反射率を得ることができる。
【0029】
図4はこの発明に係る実施の形態1の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図4における高反射膜は、一例として後部高反射膜30について説明しているが、前部高反射膜28においても同様である。
図4において、曲線46は光の電界強度分布を示している。曲線46の上に凸の部分はそれぞれ光の電界強度の極大値を示し、下端はそれぞれ極小値を示している。
後部高反射膜30とその近傍における光の電界強度の分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜40との境界において光の電界強度は極小値を示し、SiO2膜40と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界においても極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜42と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。
【0030】
一方それぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。
半導体レーザ本体36の後端面26上に配設された後部高反射膜30とその近傍における各層の構成を屈折率に関して述べると、後部高反射膜30は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
そしてこの構成を有するので、半導体レーザ本体36の共振器22と層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)との界面における光の電界強度が極小値を示し、図4に示されるような光の電界強度分布を示すのである。
【0031】
本来異種材料の界面では光の吸収が生じやすい。半導体レーザの劣化の主要因のひとつとして異種材料界面における光の吸収とそれに伴う発熱が知られている。このような劣化の中で最もよく知られているのがCODで、半導体材料と反射膜第1層との界面における光吸収により発生しやすい。
異種材料界面における光の吸収を抑制するためには、その部分における光子密度を低減することが有効である。光子密度が低ければ光の吸収が起こりにくいからである。光子密度は光の電界強度によって決定され、光の電界強度が高い部分は光子密度が大きい。このため異種材料界面における光の電界強度を下げることが半導体レーザの劣化の抑制に有効である。
【0032】
従ってこの実施の形態1に係る後部高反射膜30の構成では、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜40、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bを有し、反射率の高い高反射膜が構成され、ミラー損失を少なくして半導体レーザのしきい値電流をさげるとともに、さらに半導体レーザ本体36の共振器22と層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)との界面における光の電界強度を極小にすることにより、この界面における光子密度を低減し、光吸収とそれに伴う発熱を少なくして、半導体レーザ本体36の共振器22端面とSiO2膜40との界面におけるCODの発生を抑制することができる。すなわちしきい値電流の低減とCODの発生の抑制とを両立させることが可能となる。
【0033】
しかも半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料とSiO2膜40との密着性が高く機械的強度が高い。同様にSiO2膜40とa−Si膜42aとの界面における密着性も高く機械的強度も高い。このため後部高反射膜30を半導体レーザ本体36の後端面26の上に強固に積層することができる。従って後部高反射膜30を構成する二重誘電体膜42を多く積層しても、組立の際の加熱により半導体レーザ本体36の後端面26からの後部高反射膜30の剥離の発生を抑制でき、製品の歩留まりを高めることができる。
【0034】
なおこれまでの説明ではファブリ・ペロー型半導体レーザを一例として説明したが、レーザ光の出射端面側に、例えば共振器を構成する材料の屈折率の平方根に近い屈折率を有する材料の膜、例えば層厚がλ/4のSi3N4膜を反射防止膜として使用し、後端面に後部高反射膜30と同様の反射膜を形成することにより、ファブリ・ペロー型半導体レーザである半導体レーザ10と同様の効果がある。
とくに分布帰還型半導体レーザにおいては後部高反射膜側で光密度が高くなるが、共振器と後部高反射膜との界面における光の電界強度を低くすることができるので、レーザの劣化を抑制することができる。また後部高反射膜が半導体レーザ本体の端面から剥離することを抑制することができる。
【0035】
また分布反射型半導体レーザでは、共振器の後端面側に配設された活性層に連続して、活性層の出射端面側にパッシブ導波路が接続され、このパッシブ導波路に沿って回折格子が形成されている構成であるが、パッシブ導波路側の出射端面に反射防止膜が形成され、後端面側に、実施の形態1の後部高反射膜30と同様の反射膜を形成することにより、ファブリ・ペロー型半導体レーザである半導体レーザ10と同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0037】
この構成により誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよくの形成することができる。さらに共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面それぞれにおける光の電界強度が極小値を示し、これらの界面における光の吸収が抑制され、COD(Catastrophic Optical Damage)の発生を抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0038】
実施の形態2.
図5はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態2の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図5において、後部反射膜50は、二重誘電体膜42が3対重ねて配設されていることは実施の形態1の後部反射膜30と同じであるが、後部反射膜30では半導体レーザ本体36の後端面26に密着して層厚がλ/2のSiO2膜40が配設され、この上に重ねて二重誘電体膜42が3対配設されているのに対して、後部反射膜50においては、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、SiO2の薄膜、例えば層厚がλ/25のSiO2膜52が配設され、この上に重ねて二重誘電体膜42が3対配設されている。
【0039】
すなわち、後部高反射膜50は、反射率が例えば90%の場合、次のような構成となっている。
半導体レーザ本体36の後端面26に密着して層厚がλ/25のSiO2膜52が配設される。次いで、このSiO2膜52の上に二重誘電体膜42が3対重ねて配設されている。
従って後部高反射膜50は、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着した層厚がλ/25の低屈折率膜(SiO2膜52)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0040】
この構成では半導体レーザ本体36の後端面26に密着する誘電体膜としてSiO2膜52を使用している。これは実施の形態1と同様に例えばSi3N4や、Al2O3や、AlNなどでもよい。
この実施の形態2の構成では半導体レーザ本体36とa−Si膜42aとはほぼ同じ程度の屈折率を有しており、例え薄いSiO2膜52が半導体レーザ本体36とa−Si膜42aと間に介在していたとしても、光の電界強度の分布は半導体レーザ本体36とa−Si膜42aの仕様により決定される。
【0041】
図6はこの発明に係る実施の形態2の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図6において、後部高反射膜50とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示され、後部高反射膜50の光の電界強度は、半導体レーザ本体36とSiO2膜52との界面が極小値ではなく、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界において極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜42と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。一方それぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。
半導体レーザ本体36の共振器22とλ/25厚みの低屈折率膜(SiO2膜52)との界面における光の電界強度は極小値ではないが、SiO2膜52の厚みが薄いので、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとの境界における極小値に近接した値を示す。
【0042】
図7はこの発明に係る誘電体膜の厚みに対する界面での電界強度を示すグラフである。
図7において横軸は媒質内波長に対する層厚の比、即ち層厚/媒質内波長であり、縦軸は界面での規格化電界強度を示している。横軸が0.25、即ち層厚がλ/4の時の界面での規格化された電界強度を1としている。
すなわち図5及び図6において説明すると、SiO2膜52の膜厚がλ/4の時に、半導体レーザ本体36の共振器22とSiO2膜52との界面における光の電界強度が極大値である1であることを示している。
【0043】
実施の形態1の場合、半導体レーザ本体36の共振器22の端面に厚みがλ/2のSiO2膜40が配設されているが、a−Siが熱伝導率が高いのに対して、SiO2は熱伝導率が低く、共振器22と後部高反射膜30との界面における発生熱の放熱が順調に行われがたい場合がある。このような場合には、SiO2膜を薄くすることによって熱伝導をよくすることが考えられる。
この実施の形態2ではこの考えに基づき厚みを薄くしたSiO2膜52を配設している。
先にも記載したが、半導体レーザ本体36の共振器22とSiO2膜52との界面では、光の電界強度は最小値にならず、SiO2膜52の厚みにより、先の図7において示した界面での規格化電界強度を有することになる。従ってSiO2膜52の厚みの上限値は光の電界強度を何処まで許容できるかにより決定される。
【0044】
この実施の形態では、例えば層厚をλ/25としていることは次の理由による。
従来のファブリ・ペロー型半導体レーザの場合、前端面の反射率を30%、後端面の反射率を60%とした半導体レーザと比較して、実施の形態1において示した前端面の反射率を60%、後端面の反射率を90%とした半導体レーザでは後端面における光密度は2倍高くなる。従って光の電界強度を従来の半導体レーザの1/2にすれば、同等の信頼性を確保することができる。
図7を参照して、界面における規格化電界強度が1/2となる膜厚は、層厚/媒質内波長の値が概ね0.04のところであり、これは即ち層厚がλ/25であることを示している。
この実施の形態2ではSiO2膜52の厚みを、例えばλ/25としているが、SiO2膜52の膜厚をλ/25以下とすることにより、共振器22と後部高反射膜30との界面における発生熱の放熱を一層よくするとともに、共振器22とSiO2膜52との界面における光の電界強度をより低くすることができる。延いてはCODに対する信頼性がより高い半導体レーザを構成することができる。
【0045】
従ってこの実施の形態2に係る後部高反射膜50の構成では、半導体レーザ本体36の後端面26の上に、半導体レーザ本体36の後端面26に密着したSiO2膜52、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、SiO2膜42b、a−Si膜42a、およびSiO2膜42bの順序で重ねて配設された構成を有しているので、反射率の高い高反射膜が構成され、ミラー損失を少なくして半導体レーザのしきい値電流を低減することができる。さらに、半導体レーザ本体36の共振器22と薄い低屈折率膜(SiO2膜52)との界面における光の電界強度をできるだけ極小値に近づけることにより光吸収とそれに伴う発熱を少なくして、さらに半導体レーザ本体36の共振器22端面とSiO2膜52との界面近傍における放熱を良くして、CODに対する信頼性を高めることができる。
【0046】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0047】
この構成により、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに誘電体膜は第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有するので、共振器端面と誘電体膜との界面における光の電界強度を極小値に近接させることにより、この界面での光の吸収を抑制するとともに、この界面近傍の放熱を良くして、CODの発生をより一層抑制することができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性の高い、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0048】
実施の形態3.
図8はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態3の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図8において、後部反射膜60は、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての、例えば層厚がλ/2のSiO2膜40が配設される。次いで、このSiO2膜40の上に第2の二重誘電体膜としての、二重誘電体膜62が1対重ねて配設され、この二重誘電体膜62の上に二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
【0049】
二重誘電体膜62はSiO2膜40に密着した第1層目の層厚が、例えば3λ/8のa−Si膜62aと、このa−Si膜62aの上に重ねて配設された第2層目の層厚がλ/8のSiO2膜62bとから構成されている。
すなわち、後部高反射膜60は、次のような構成となっており、反射率は90%から多少変化している。
後部高反射膜60は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/2の低屈折率膜(SiO2膜40)、層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)、層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0050】
図9はこの発明に係る実施の形態3の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図9において、後部高反射膜60とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示されている。
後部高反射膜60とその近傍における光の電界強度分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜40との境界において光の電界強度は極小値を示し、SiO2膜40と第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとの境界においても極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜62と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。これは実施の形態1の後部高反射膜30と同じである。
またそれぞれの二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示している。これは実施の形態1の後部高反射膜30と同じである。
【0051】
しかしながら、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。
実施の形態1の説明においても述べたように、CODを抑制するためには異種材料界面における光の電界強度を下げることが有効である。特に実施の形態1および2において示した構成により半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料と後部或いは前部高反射膜との境界での光の電界強度が低減された場合、次いで電界強度が高くなっている異種材料界面は、第1対目の二重誘電体膜の第1層と第2層との界面であり、実施の形態1の後部高反射膜30で云えば、第1対目の二重誘電体膜42のa−Si膜42aとSiO2膜42bとの界面である。
この界面における電界強度を下げるために、実施の形態3では二重誘電体膜62では第1層を層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)とし、第2層を層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)とすることにより、これらの界面が光の電界強度の極大値の位置と一致しないようにしている。
【0052】
なおここでは、第1層の層厚を3λ/8、第2層の層厚をλ/8としているが、これに限らず、第1層がλ/4を越えかつλ/2未満の厚みを有し、第2層がλ/4未満の厚みを有すればよい。
さらにこの実施の形態では第1層の層厚を厚く、第2層の層厚を薄くしているがこれに限らず、第1層の層厚を薄く、第2層の層厚を厚くしても良い。
すなわち第1層がλ/4未満の厚みを有し、第2層がλ/4を越えかつλ/2未満の厚みを有する構成でも同様の効果がある。
さらに二重誘電体膜62の第1層と第2層の厚みを変化させることにより、高反射膜全体としての反射率を比較的自由に選択することができて、高反射膜の設計の自由度を高めることができる。
【0053】
以上のようにこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0054】
また、この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0055】
この構成により、実施の形態1の効果に加えて、第2の二重誘電体膜を構成する異種材料界面における光の電界強度を低減することができ、さらにCODに対する信頼性を高めることができる。延いては共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくくし、しきい値電流が低く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
【0056】
実施の形態4.
図10はこの発明の一実施の形態に係る半導体レーザの後部高反射膜近傍の部分断面図である。
この実施の形態4の説明は、後部高反射膜において説明するが、前部高反射膜に適用しても同様の効果がある。
図10において、後部反射膜70は、半導体レーザ本体36の後端面26に密着して誘電体膜としての例えば層厚がλ/25のSiO2膜52が配設される。次いでこのSiO2膜52の上に二重誘電体膜62が1対重ねて配設され、この二重誘電体膜62の上に二重誘電体膜42が2対重ねて配設されている。
すなわち、後部高反射膜70は、次のような構成となっており、反射率は90%から多少変化している。
後部高反射膜70は、半導体レーザ本体36の共振器22に密着する層厚がλ/25の低屈折率膜(SiO2膜52)、層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)、層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)、層厚がλ/4の高屈折率膜(a−Si膜42a)、および層厚がλ/4の低屈折率膜(SiO2膜42b)から構成されている。
【0057】
図11はこの発明に係る実施の形態4の半導体レーザの高反射膜における光の電界強度を説明した模式図である。
図11において、後部高反射膜70とその近傍における光の電界強度の分布は曲線46で示されている。
後部高反射膜70とその近傍の電界強度分布は、半導体レーザ本体36とSiO2膜52との界面が極小値ではなく、SiO2膜52と第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとの境界において極小値を示し、第1対目の二重誘電体膜62と第2対目の二重誘電体膜42との境界、第2対目の二重誘電体膜42と第3対目の二重誘電体膜42との境界、および第3対目の二重誘電体膜42の空気の露呈面において極小値を示している。
また第2対目および第3対目の二重誘電体膜42の第1層のa−Si膜42aと第2層のSiO2膜42bとの境界において光の電界強度が極大値を示しているが、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。
【0058】
半導体レーザ本体36の共振器22の端面26に密着しているSiO2膜52は、その熱伝導率がa−Siの熱伝導率に比べて小さいので、薄い方が放熱がよい。SiO2膜52の層厚は実施の形態2において述べた如くλ/25以下にするのが望ましい。
この構成により、実施の形態2に記載した効果を有する。
さらに、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bとの界面における光の電界強度は極大値ではなく、極大値よりも低減されている。半導体レーザ本体36の共振器22を構成する半導体材料と後部或いは前部高反射膜との境界での光の電界強度が低減された場合、次いで電界強度が高くなっている異種材料界面は、第1対目の二重誘電体膜の第1層と第2層との界面であり、この界面における電界強度を下げるために、実施の形態3では二重誘電体膜62では第1層を層厚が3λ/8の高屈折率膜(a−Si膜62a)とし第2層を層厚がλ/8の低屈折率膜(SiO2膜62b)とすることにより、これらの界面が光の電界強度の極値の位置と一致しないようにしている。
なお、第1対目の二重誘電体膜62のa−Si膜62aとSiO2膜62bの厚みは実施の形態3で述べたのと同様に決定される。
従って実施の形態4に係る発明は、実施の形態2の効果に加えて実施の形態3の効果をも兼ね備えている。
【0059】
以上のように、この発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0060】
またこの発明に係る半導体レーザ装置は、互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、この誘電体膜上に配設され、誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、第1層が第2の屈折率と出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、第2層が第3の屈折率と出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、を備えたものである。
【0061】
この構成により、誘電体膜がSiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるので共振器端面と誘電体膜との界面および誘電体膜と第1の二重誘電体膜の第1層であるa−Siとの界面における接着強度が高く、第1の二重誘電体膜を強固に積層することができ、高反射率膜を歩留まりよく形成することができる。さらに誘電体膜は第1の屈折率と化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有するので、共振器端面と誘電体膜との界面における光の電界強度を極小値に近づけることによりこの界面での光の吸収を抑制するとともに、この界面近傍の放熱を良くして、CODの発生をより一層抑制することができる。
さらに第2の二重誘電体膜を構成する異種材料界面における光の電界強度を低減することができ、さらにCODに対する信頼性を高めることができる。延いてはしきい値電流が低く、共振器端面と反射膜との界面近傍において劣化が起こりにくく信頼性が高く、歩留まりの高い半導体レーザ装置を提供することができる。
なお以上の各実施の形態において、CODを抑制することが可能となるので耐久性が向上し、しきい値電流が低くなるのでエネルギー消費の削減に繋がり、歩留まりが向上し、環境負荷を低減するなどの効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、この発明に係る半導体レーザ装置は、光通信システムなどの使用に対して有用である。
【符号の説明】
【0063】
36 半導体レーザ本体、 40 SiO2膜、 42 二重誘電体膜、 52 SiO2膜、 62 二重誘電体膜。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項2】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項3】
第1の二重誘電体膜が複数層配設されたことを特徴とした請求項1または2記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項5】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項6】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項7】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項8】
第2の二重誘電体膜あるいは第3の二重誘電体膜の上にさらに、第1の二重誘電体膜が1層または複数層配設されたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【請求項1】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項2】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4の厚みを有する第1の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項3】
第1の二重誘電体膜が複数層配設されたことを特徴とした請求項1または2記載の半導体レーザ装置。
【請求項4】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項5】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第2の媒質内波長の1/2未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4未満の厚みを有する第2の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項6】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の正整数倍を2で除した厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項7】
互いに対向する共振器端面を有する化合物半導体レーザ本体と、
この化合物半導体レーザ本体の共振器端面に密着して配設され、SiO2、Si3N4、Al2O3およびAlNのうちのいずれかひとつの材料により形成されるとともに、この材料の第1の屈折率と上記化合物半導体レーザ本体の出射光の波長から定まる第1の媒質内波長の1/25以下の厚みを有する誘電体膜と、
この誘電体膜上に配設され、上記誘電体膜に近接した第1層がアモルファスシリコンにより形成され、この第1層の上に配設された第2層がアモルファスシリコンの第2の屈折率より低い第3の屈折率を有する材料により構成されるとともに、上記第1層が上記第2の屈折率と上記出射光の波長から定まる第2の媒質内波長の1/4未満の厚みを有し、上記第2層が上記第3の屈折率と上記出射光の波長から定まる第3の媒質内波長の1/4を越えかつ上記第3の媒質内波長の1/2未満の厚みを有する第3の二重誘電体膜と、
を備えた半導体レーザ装置。
【請求項8】
第2の二重誘電体膜あるいは第3の二重誘電体膜の上にさらに、第1の二重誘電体膜が1層または複数層配設されたことを特徴とする請求項4乃至7のいずれか1項に記載の半導体レーザ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−226056(P2010−226056A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74678(P2009−74678)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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