説明

半導体接合ウエハの製造方法

【課題】 接合界面の不整合欠陥から活性層を離す。
【解決手段】 不純物が高濃度の層1と低濃度の層2を接合させ、所定温度の固着熱処理で、不純物が低濃度の層2に高濃度の層1の不純物を拡散させて、不純物が高濃度の拡散層3を形成し、これら不純物が低濃度の層2と高濃度の拡散層3に亘ってトレンチ11を設け、該トレンチ11に沿って不純物が低濃度の層2及び高濃度の拡散層3と連通する層12を形成することにより、これらトレンチ11及びそれに沿った層12が、高濃度層1と低濃度層2との接合界面A1から離れて配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば絶縁ゲート型電解効果トランジスタ(MOSFET)、伝導度変調型MOSFET(IGBT)、バイポーラトランジスタ、ダイオード等に適用可能な半導体接合ウエハの製造方法に関する。
詳しくは、不純物が高濃度の層と低濃度の層が貼り合わされた接合ウエハを用い、これらの濃度が異なる層に亘りトレンチを設け、該トレンチに沿って層を形成する半導体接合ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体接合ウエハの製造方法として、高濃度のn+層と低濃度のn-ドリフト層の貼り合わせた接合ウエハを用いるか、又はこの接合ウエハに代えて低濃度の基板に高濃度の層を拡散させて形成するか、若しくはエピタキシャル成長により高濃度の層または低濃度の層を形成したウエハを用い、先ず、低濃度のドリフト層側に不純物層等を形成し、その次にドリフト層のオン状態で導電しオフ状態で空乏となる部分に、気相エッチングや液相エッチングを用いて分離溝を形成し、またその次に欠陥及びダメージ層をエッチングし取り除き、さらにその次に、分離溝の側面にエピタキシャル成長やイオン打ち込み法によって、n-ドリフト層(ドリフト層)と反対の導電型であるp-層(低濃度層)を形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−319974号公報(第15−16頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来の半導体接合ウエハの製造方法では、高濃度層と低濃度層が貼り合わされた接合ウエハを用いた場合、インゴットスライス時の傾き誤差や貼り合せズレなどよって接合界面に不整合欠陥が発生するため、この接合界面を貫通して高濃度層と低濃度層に亘りトレンチ(分離溝)が形成され、該トレンチに沿って低濃度層が形成される縦型DMOSなどして使用すると、前記接合界面の不整合転位の影響でリーク電流が発生してデバイスの電気特性に大きく影響するという問題があった。
また、接合ウエハに代えて低濃度の基板に高濃度の層が拡散させるウエハを用いた場合には、接合ウエハのような接合界面にゲッタリング源として機能する不整合欠陥が無いため、主として重金属汚染などの汚染不純物による悪影響を受け易いという問題があった。
さらに、エピタキシャル成長により層が形成されるウエハを用いた場合には、エピタキシャル層を数ミクロン以上に厚く、しかも数千オーム以上の高抵抗に形成することは現状で困難であって、コスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明は、接合界面の不整合欠陥から活性層を離すことを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明は、不純物が高濃度の層と低濃度の層を接合させ、所定温度の固着熱処理で、不純物が低濃度の層に高濃度の層の不純物を拡散させて、不純物が高濃度の拡散層を形成し、これら不純物が低濃度の層と高濃度の拡散層に亘ってトレンチを設け、該トレンチに沿って不純物が低濃度の層及び高濃度の拡散層と連通する層を形成することを特徴とするものである。
さらに、前記固着熱処理が、1.0℃/分以下の遅い昇温速度で1300℃まで昇温させることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、不純物が高濃度の層と低濃度の層を接合させ、所定温度の固着熱処理で、不純物が低濃度の層に高濃度の層の不純物を拡散させて、不純物が高濃度の拡散層を形成し、これら不純物が低濃度の層と高濃度の拡散層に亘ってトレンチを設け、該トレンチに沿って不純物が低濃度の層及び高濃度の拡散層と連通する層を形成することにより、これらトレンチ及びそれに沿った層が、高濃度層と低濃度層との接合界面から離れて配置される。
したがって、接合界面の不整合欠陥から活性層を離すことができる。
その結果、接合ウエハを用いて高濃度層と低濃度層に亘り形成されるトレンチに沿って層を形成する従来のものに比べ、リーク電流の発生を防止できて、デバイスの電気特性を向上できる。
また、接合ウエハに代えて低濃度の基板に高濃度の層が拡散させるウエハを用いる従来のものに比べ、接合ウエハの接合界面にゲッタリング源として機能する不整合欠陥を有するため、主として重金属汚染などの汚染不純物をデバイス形成領域から除去でき、それにによる悪影響を抑えることができる。
さらに、エピタキシャル成長により層が形成されるウエハを用いる従来のものに比べ、低コストで容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の半導体接合ウエハの製造方法の実施形態は、図1に示す如く、不純物濃度が高く低抵抗のベース層(第1シリコン基板:ベースウエハ)1と、不純物濃度が低く高抵抗のボンド層(第2シリコン基板:ボンドウエハ)2を接合させ、その後、所定温度の固着熱処理を行うことにより、これら不純物が高濃度のベース層1と低濃度のボンド層2が所望の接合強度に貼り合わされて接合ウエハAとなると同時に、不純物が低濃度のボンド層2に高濃度のベース層1の不純物を拡散させて高濃度の拡散層3が形成される。
【0009】
さらに、これらベース層1とボンド層2の接合前において、それらの接合面1a,2aを鏡面研磨し、これら接合面1a,2aに形成されている自然酸化膜を除去することが好ましい。
このように鏡面研磨された接合面1a,2aを、清浄な雰囲気下で密接させるが、その際に、密接させる様子を赤外線透過影像法によって未接着部分(ボイド)が無いことを確認しながら貼り合せることが好ましい。
【0010】
また、これらベース層1とボンド層2を接合させるとともに拡散層3を内部形成するために行う固着熱処理条件の特徴は、2枚のシリコンウエハの接合強固を高めるだけでその内部に熱拡散させる必要がない通常の固着熱処理条件に比べ、加熱最高温度を高温化しつつ長時間に亘り加熱し続けて、より多くの熱量が緩やかに与えられるように温度制御している。
【0011】
そして、このような接合工程の後は、これら不純物が低濃度のボンド層2と高濃度の拡散層3に亘ってトレンチ11を設け、該トレンチ11に沿って不純物が低濃度の層2及び高濃度の拡散層3と連通する層12を形成することにより、これらトレンチ11及び層12が配置される活性層(ボンド層2及びそれを含むデバイス形成層)を、接合ウエハAにおけるベース層1とボンド層2との接合界面A1から離して配置することが可能になる。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
この実施例1は、図1(a)〜(d)に示す如く、前記不純物が高濃度のベース層(ベースウエハ)1としてn+層と、前記不純物が低濃度のボンド層(ボンドウエハ)2としてn-層を接合し、前記所定温度の固着熱処理により、低濃度のn-層2に高濃度のn+層1を拡散させて高濃度のn+層3を形成し、その後工程で、低濃度のn-層2の表面にp-層13とp+層14を順次形成した後に、これらp-層13、p+層14及びn-層(ボンド層)2と拡散した高濃度のn+層3とに亘ってトレンチ11を凹設し、該トレンチ11に沿って、p-層13、p+層14、n-層(ボンド層)2、拡散した高濃度のn+層3及び拡散した高濃度のn+層3と夫々連通するp-層12を形成し、例えば縦型DMOSなどして使用される場合を示している。
【0013】
そして、斯かる半導体接合ウエハの製造方法を工程順に詳しく説明する。
先ず、夫々直径が6インチ、N型の結晶方位<100>、厚さ650μmで、支持基板となる不純物濃度が高くて比抵抗0.01Ωcmのベースウエハ1と、デバイスが作製される側の不純物濃度が低くて比抵抗1500Ωcmのボンドウエハ2を用意し、これらベースウエハ1とボンドウエハ2の接合面1a,2aを鏡面研磨し、必要に応じて図1(a)に示す如く、これら接合面1a,2aに形成されている自然酸化膜を、例えば1.5重量%程度のフッ酸(HF)水溶液Bに約4分間浸漬して除去する。
【0014】
次に、5リットル/分速度の流量で流れる超純水で8分間水洗して、ベースウエハ1及びボンドウエハ2の表面をスピン乾燥させる。
このように処理されたベースウエハ1及びボンドウエハ2の接合面1a,2aを、図1(b)に示す如く、清浄な雰囲気下で重ね合わせ、室温で接着させる。
この時、接着させる様子を赤外線透過影像法によって未接着部分(ボイド)が無いことを確認しながら重ね合せる。
【0015】
その後、これら接着されたベースウエハ1とボンドウエハ2の結合を強固にするとともに内部に熱拡散させるため、図1(c)に示す如く、所定温度の固着熱処理を行う。
この固着熱処理条件の特徴は、2枚のシリコンウエハの接合強固を高めるだけでその内部に熱拡散させる必要がない通常の固着熱処理条件が900〜1100℃の温度で約2時間程度の熱処理を施すのに対し、約1300℃で約30時間程度に亘り熱処理することで、接合プロファイルを緩やかにしている。
【0016】
更に詳しく説明すると、予め約600℃の温度に保持された熱処理炉に、室温で接着されたベースウエハ1とボンドウエハ2を挿入し、約1.0℃/分以下の遅い昇温速度で約1300℃まで昇温させ、そのまま約30時間程度に亘り熱処理している。
なお図中、符号4は固着熱処理により形成された酸化膜である。
【0017】
それにより、図1(c)の二点鎖線及び図1(d)の実線に示す如く、不純物が低濃度のボンドウエハ(n-層)2に、高濃度のベースウエハ(n+層)1から不純物が拡散して、高濃度の拡散層(n+層)3が約10μm以上形成される。
【0018】
その後の加工工程で、図1(d)の二点鎖線に示す如く、酸化膜4を除去した後に、ボンドウエハ(n-層)2の表面に、p-層13とp+層14を順次形成し、その後、これらp-層13、p+層14及びボンドウエハ(n-層)2と高濃度の拡散層(n+層)3とに亘って、気相エッチングや液相エッチングによりトレンチ11を凹設する。
【0019】
このトレンチ11の側面に沿ってエピタキシャル成長やイオン打ち込み法によりp-層12を形成し、該p-層12とp-層13、p+層14、ボンドウエハ(n-層)2及び高濃度の拡散層(n+層)3を夫々連通させ、その後に図示しないが必要な加工を加えて例えば縦型DMOSなどのデバイスが形成される。
【0020】
このようなデバイスを用いて実験したところ、トレンチ11に沿ったp-層12が配置される活性層(デバイス形成層)は、接合ウエハAにおけるベースウエハ(n+層)1とボンドウエハ(n-層)2との接合界面A1から離れるため、リーク電流が全く発生しないことを実証できた。
【0021】
なお、前示実施例では、不純物が低濃度のn-層(ボンド層)2の表面にp-層13とp+層14を順次形成した後に、これらp-層13、p+層14及びn-層(ボンド層)2と拡散した高濃度のn+層3とに亘ってトレンチ11を凹設し、該トレンチ11に沿ってp-層12が形成される場合を示したが、これに限定されず、不純物が低濃度の層2と高濃度の拡散層3に亘って凹設されるトレンチ11に沿って、少なくとも低濃度層2及び高濃度の拡散層3と連通する層12を形成すれば、縦型DMOS以外のデバイスであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の半導体接合ウエハの製造方法の一実施例を示す工程図であり、(a)が洗浄時の縦断側面図であり、(b)が接着時の側面図であり、(c)が熱処理時の部分断面図であり、(d)が加工時の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
A 接合ウエハ A1 接合界面
1 不純物が高濃度の層(ベース層) 1a 接合面
2 不純物が低濃度の層(ボンド層) 2a 接合面
3 拡散層 4 酸化膜
11 トレンチ 12 層(p-層)
13 p-層 14 p+
B フッ酸水溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物が高濃度の層(1)と低濃度の層(2)が貼り合わされた接合ウエハ(A)を用い、これらの濃度が異なる層に亘りトレンチ(11)を設け、該トレンチ(11)に沿って層(12)を形成する半導体接合ウエハの製造方法において、
前記不純物が高濃度の層(1)と低濃度の層(2)を接合させ、所定温度の固着熱処理により、不純物が低濃度の層(2)に高濃度の層(1)の不純物を拡散させて、不純物が高濃度の拡散層(3)を形成し、これら不純物が低濃度の層(2)と高濃度の拡散層(3)に亘って前記トレンチ(11)を設け、該トレンチ(11)に沿って前記不純物が低濃度の層(2)及び高濃度の拡散層(3)と連通する前記層(12)を形成することを特徴とする半導体接合ウエハの製造方法。
【請求項2】
前記固着熱処理が、1.0℃/分以下の遅い昇温速度で1300℃まで昇温させた請求項1記載の半導体接合ウエハの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−98043(P2010−98043A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266260(P2008−266260)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000214928)直江津電子工業株式会社 (37)